説明

バウンドストッパ

【課題】ストッパ作用の開始時点からある程度の適正な大きさのばね特性を発現しつつ、変位の増大とともにほぼ直線的にばねが増大して車輪側の上下動部材の変位を小さく抑制でき、また限界変位近傍でのばね特性の急激な立上りを良好に抑制し得るバウンドストッパを提供する。
【解決手段】カップ状の剛性の取付部材12と、ゴム弾性体14とを有するバウンドストッパ10において、取付部材12の周壁部18とゴム弾性体14の外周面との間に径方向の外側空隙40を設けるとともに、ゴム弾性体14の中心部において底面38から当り部32に向って軸線方向に延びる非貫通の内側空隙42を設け、ストッパ作用時に外側空隙40,内側空隙42を漸次埋めるようにゴム弾性体14を弾性変形させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のサスペンションアームやリーフスプリング等車輪とともに上下動する部材の車体側への過度の変位を規制する緩衝部材としてのバウンドストッパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両においては走行中路面の凹凸等による車輪の大きな上下動によりサスペンションアームやリーフスプリング等のサスペンション装置の一部、即ち車輪とともに上下動する車輪側の上下動部材が車体側に過度に変位し、車体に当って衝撃を直接車体に伝えてしまうのを防ぐために、緩衝部材としてのバウンドストッパをサスペンション装置側或いは車体側に取り付けることが行われている。
このバウンドストッパはゴム弾性体を主要素として有しており、車輪側の上記の上下動部材が車体側に大きく変位したときに、ゴム弾性体が弾性変形することで衝撃を緩和し、また上下動部材の過度の車体側への変位を規制する。
【0003】
通常このバウンドストッパは、ストッパ作用時の初期変形時には低反力特性即ち低ばね特性を示し、変形が順次進むにつれて反力が大となり、そして上下動部材の限界変位近傍では急速に反力が大となってばね特性曲線が急激に立ち上るようにゴム弾性体の特性が設定される。
これを実現するためのゴム弾性体の形状として、従来図7(イ)に示すような形状が用いられてきた。
【0004】
図7(イ)において、202はバウンドストッパ200におけるゴム弾性体で、204は金属製の剛性の取付部材、206はバウンドストッパ200を車輪側の上下動部材と車体側との一方に締結するための締結ボルトである。
図示のようにゴム弾性体202は、ストッパ作用時の初期の当りを軟らかく、また後期から限界変位にかけて変位規制力を急激に大きくするために、その形状が砲弾形状即ち断面山形状とされている。
【0005】
ところで、例えばピックアップトラック等のトラックにおいては、近年乗り心地性能の向上のためにリーフスプリングに用いる板ばねとして、ばねの軟らかいものを用いるようになってきており、この場合板ばねを軟らかくした分、路面の凹凸等を乗り越える際のリーフスプリングの変位が大きくなり、バウンドストッパがストッパ作用する回数もまた多くなる。
【0006】
リーフスプリングが常時大きく変位すると、リーフスプリングの耐久性が悪化することとなり、そこでこれを防ぐべくリーフスプリングがある程度変位したところで、バウンドストッパにてストッパ作用させ、その変位を規制することが必要となる。そしてそのことによってバウンドストッパのストッパ作用の回数が多くなる。
【0007】
このとき、図7(イ)に示すバウンドストッパ200の場合、ストッパ当りの初期にはゴム弾性体202の図中の上部202Aが比較的容易に変形してリーフスプリングの変位を弾性吸収することができるものの、ブロック状をなすゴム弾性体202が中実構造をなしているため、上部202Aの変形により初期当りの際の衝撃を吸収した後、ゴム弾性体202の変形抵抗(ゴム反力)が急速に増大し、その結果この(イ)に示すバウンドストッパ200の場合、図5中のAのばね特性曲線(荷重−撓み特性曲線)で示すように、ゴム弾性体202の変形抵抗の急速な増大により、早い段階でばね特性曲線が急激に立ち上ってしまう。
【0008】
つまり相手部材208に対してゴム弾性体202の上部202Aが当って後、比較的僅かな変位でゴム弾性体202のばね特性が急激に立ち上り、その反力を車体側に伝えてしまう。
そしてそのときに乗員に対してショック感を与えてしまう。
【0009】
図7(イ)に示すような中実構造のゴム弾性体202を有するバウンドストッパ200の場合、ゴム弾性体202のゴム形状の変更だけでは、初期当りの後におけるばね特性を低ばね化することには限界がある。
そこで図7(イ)のゴム弾性体202に対し、図中上部から下向きに凹部を形成し、ゴム弾性体の肉を一部除去した形態となすことが考えられるが、この場合その凹部に水やゴミ,小石等が溜まってしまい、ストッパ作用の繰返しによってゴム摩耗が助長されたり、亀裂発生したりしてゴム弾性体202の寿命が低下してしまう。
またそのような凹部を設けたとしても、初期当りのばね特性は低くできるものの、その凹部はストッパ作用の比較的早い段階で埋ってしまい、その後においてばね特性が急激に立ち上ってしまい、そのときに上記と同様なショック感を発生してしまう。
【0010】
従来、バウンドストッパとして図7(ロ)に示すようなものも公知である。例えば下記特許文献1にこの形態のバウンドストッパが開示されている。
この図7(ロ)の示すものは、カップ状をなす金属製の剛性の取付部材210と、ゴム弾性体202とでバウンドストッパ200を構成し、そしてゴム弾性体202の取付部材210から図中上方に突き出した部分に、その外表面から軸線と直角方向の複数の溝212を設けて、同部分を空隙(すぐり部)となしたものである。
【0011】
図5において、Bはこの図7(ロ)のバウンドストッパ200のばね特性曲線を示したものである。
この図7(ロ)に示すバウンドストッパ200の場合、ゴム弾性体202が相手部材208に当って後、ゴム弾性体202が溝(空隙)212を埋めるようにして変形することができるため、図7中Bのばね特性曲線で示しているように、図7(イ)に示すバウンドストッパ200に比べてより広いストローク(変位域)に亘ってばね特性を軟らかく、低ばね化することができる。
【0012】
しかしながらこの場合、例えば上記のリーフスプリングのストッパ作用の際の変位量が大きくなり、詳しくはリーフスプリングが頻繁に大きく変位することとなり、リーフスプリングの耐久性の低下を招いてしまう。
しかもこの図7(ロ)のバウンドストッパ200の場合、溝(空隙)212が埋った後は、そこでゴム弾性体202の変形抵抗が急激に増大し、Bのばね特性曲線で示しているようにその時点でばね特性が急激に立ち上ってしまう。従ってその段階で乗員に対しショック感を与えてしまう。
【0013】
図7(ハ)は従来公知の他の形態のバウンドストッパ(下記特許文献2に開示)を示したものである。
このものは、ゴム弾性体202の上部202Aに貫通の空隙(すぐり部)214を設けたものである。
しかしながらこの図7(ハ)に示すバウンドストッパ200もまた、空隙214が埋るまでは軟らいばね特性を示し、一方空隙214が埋った後は、ばね特性が急激に立ち上るもので、図7(ロ)に示すバウンドストッパ200と基本的に同様のばね特性を示し、従って(ロ)に示すものと同様の問題点を有するものである。
【0014】
以上のように従来のバウンドストッパは、ストッパ作用の比較的早い段階からばね特性が急激に立ち上って、そこでショック感を発生してしまうものであるか、又はストッパ作用時のばね特性が軟らか過ぎて、サスペンション装置におけるリーフスプリング等の上下動部材の変位を大きくしてしまい、そのことによって耐久性を低下せしめてしまうとともに、その後ある段階でばね特性が急激に立ち上ってそこでショック感を与えてしまうものであるかのどちらかであり、何れも十分なものとは言えないものである。
【0015】
リーフスプリング等の上下動部材の変位を小さく抑制しつつ、急激なストッパ作用の反力によってショック感を与えないようにするためには、ストッパ作用時の初期当りはもとより、限界変位の直前に到るまで変形とともに直線的にばね特性が連続的に増大し、そして限界変位にかけての急激なばね特性の立上りをできるだけ抑制できるものであることが望ましい。
しかるに図7(ロ),(ハ)に示す従来公知のバウンドストッパ200の場合、ストッパ当りの初期から限界変位の直前に到るまでのばね特性が適正なばね特性よりも低く、一方で限界変位近傍域でばね特性が急激に立ち上ってしまう。
【0016】
これは(ロ),(ハ)のバウンドストッパ200の何れも、限界変位の直前に到るまでゴム弾性体202の一部分、具体的には図中の主として上部が他の下部202Bよりも大きく変形して、そこで上下動部材の変位を吸収し、ゴム弾性体202の全体的な変形に基いて変位吸収するものでないことに起因して生ずるものである。
【0017】
本発明に対する先行技術として下記特許文献3,特許文献4,特許文献5に開示されたものがある。
特許文献3に開示のものは「バウンドストッパ及びその製造方法」に関するものであるが、この特許文献3に開示のバウンドストッパは、本発明の特徴的な内側空隙を有するものでなく、本発明とは別異のものである。
【0018】
また特許文献4に開示のものは、緩衝ストッパに関するもので、このものは取付部材の周壁部とゴム弾性体の間に外側空隙を有するものでなく、また内側空隙の働きが本発明とは全く異なったもので、これもまた本発明とは別異のものである。
更に特許文献5に開示のものは、「バンプストッパ」に関するもので、これもまた剛性の取付部材の周壁部とゴム弾性体との間に外側空隙を有するものでなく、本発明とは別異のものである。
【0019】
【特許文献1】特開2004−3591号公報
【特許文献2】特開2001−159441号公報
【特許文献3】特開平11−51116号公報
【特許文献4】特開2001−153168号公報
【特許文献5】特開2000−177348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は以上のような事情を背景とし、ストッパ作用の開始時点からある程度の適正な大きさのばね特性を発現しつつ、変位の増大とともにほぼ直線的にばねが増大し、そのことによってサスペンション装置のリーフスプリング等の上下動部材の変位を小さく抑制することができ、また限界変位近傍域でのばね特性の急激な立上りを良好に抑制し得て、乗員に対しショック感を与えるのを防止し得るバウンドストッパを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
而して請求項1のものは、(イ)底部と、該底部の外周端部から立ち上る環状の周壁部とを備えたカップ状をなし、該底部において車輪側の上下動部材と車体側との一方に取り付けられる剛性の取付部材と、(ロ)ストッパ作用時の当り部を該取付部材の周壁部から該取付部材の軸線方向に突出させる状態に、且つ該当り部とは反対側の底面を該取付部材の前記底部に固着させる状態に該取付部材の径方向内側に設けられたブロック状のゴム弾性体と、を有し、前記上下動部材の前記車体側への過度の変位を規制する緩衝部材としてのバウンドストッパであって、前記取付部材の前記周壁部と前記ゴム弾性体の外周面との間に径方向の外側空隙を設けるとともに、該ゴム弾性体の中心部において前記底面から前記当り部に向って前記軸線方向に延びる非貫通の内側空隙を設け、ストッパ作用時に前記外側空隙,内側空隙を漸次埋めるように前記ゴム弾性体を弾性変形させるようになしてあることを特徴とする。
【0022】
請求項2のものは、請求項1において、前記ゴム弾性体は、前記取付部材の前記底部側の基端部の外周面が前記軸線方向に所定高さに亘って前記周壁部の内周面に全周に亘り密着させてあり、前記内側空隙は該周壁部への密着部よりも前記当り部側に高い位置まで延びていることを特徴とする。
【0023】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記周壁部と前記ゴム弾性体の外周面との間の外側空隙は全周に亘り設けてあることを特徴とする。
【0024】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記ゴム弾性体は、前記当り部から前記取付部材の底部側に向って大径化する形状をなしており、前記外側空隙の径方向の空隙幅が該底部側に向って漸次狭小化していることを特徴とする。
【0025】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記内側空隙は、前記取付部材の底部側に向って径方向の空隙幅が漸次拡大していることを特徴とする。
【0026】
請求項6のものは、請求項2において、前記ゴム弾性体は、前記基端部の外周部に径方向外方に環状に突出した鍔状部を有しており、該鍔状部の外周面が前記周壁部に密着していることを特徴とする。
【0027】
請求項7のものは、請求項1〜6の何れかにおいて、前記内側空隙は、前記軸線方向において前記周壁部の高さよりも低いものとなしてあることを特徴とする。
【0028】
請求項8のものは、請求項1〜6の何れかにおいて、前記内側空隙は、前記軸線方向において前記周壁部の高さよりも高いものとなしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0029】
以上のように本発明は、底部と環状の周壁部とを備えた剛性のカップ状の取付部材と、ストッパ作用時の当り部をその周壁部から取付部材の軸線方向に突出させる状態に取付部材の径方向内側に設けられたブロック状のゴム弾性体とでバウンドストッパを構成し、そして取付部材の周壁部とゴム弾性体の外周面との間に径方向の外側空隙を設けるとともに、ゴム弾性体の中心部においてその底面から上記の当り部に向かって軸線方向に延びる非貫通の内側空隙を設け、ストッパ作用時に外側空隙,内側空隙を漸次埋めるようにゴム弾性体を弾性変形させるようになしたものである。
【0030】
本発明のバウンドストッパでは、ゴム弾性体が相手部材に当ってストッパ作用をするとき、ゴム弾性体が外側空隙,内側空隙を漸次埋めながら変形することができるため、そのような空隙のない上記の図7(イ)のバウンドストッパに較べて、ストッパ作用時の初期当りはもとより、これに続くゴム弾性体の変形時の反力の増大を図7(イ)のものに較べて小さくすることができる。即ち初期当り及びこれに続くゴム弾性体の変形の際のばね特性を(イ)のものに較べて低ばね化することができる。
【0031】
しかもこのときゴム弾性体は外側空隙,内側空隙を漸次埋めながら変形するため、それら外側空隙,内側空隙が大部分埋まるまでの間、ゴムの変形による反力は連続的且つほぼ直線的に増大する。即ちゴム弾性体のばね特性を直線的(リニア)に増大させることができ且つそのようにばね特性が直線的に増大する変位域(ストローク)を大きく確保することができる。
つまりバウンドストッパにおける常用域(ストッパ作用の際に常用される変位域)でのゴム弾性体のばね特性を、直線的にばねが増大するものとなすことができる。
【0032】
但し本発明における上記の外側空隙は、ゴム弾性体の当り部とは反対側の取付部材の側に位置しており、また内側空隙は取付部材の底部からゴム弾性体の当り部の側に向かって設けてあるため、更にはその内側空隙がゴム弾性体の芯部(径方向の芯部)に位置しているため、空隙が当り部側に設けてある図7(ロ),(ハ)に示すバウンドストッパと異なって、それら空隙によってゴム弾性体の当り部側の部分が部分的に軟らかくなったり、またその当り部側が部分的に変形することによって空隙が埋まってしまうといったことがなく、本発明のバウンドストッパでは、ゴム弾性体が全体的に変形することによって始めて外側空隙,内側空隙が漸次埋まって行く。
【0033】
そのため空隙が大部分埋まるまでのゴム弾性体の変形域におけるばね特性は、それら図7(ロ),(ハ)に示すものに較べて相対的に硬いものとなる。
そしてこのことによって常用域におけるサスペンション装置のリーフスプリング等の上下動部材の変位を良好に小さく抑制することができ、その耐久寿命を高寿命化することができる。
【0034】
本発明のバウンドストッパでは、ストッパ作用時にゴム弾性体が相手部材によって軸線方向に圧縮変形され、その際にゴム弾性体は外周部分が径方向外側に拡がるように変形し、その変形によって外側空隙が漸次埋められて行く。そしてその外側空隙が多く埋められて行くと、周壁部からの反力で内側空隙が漸次埋められて行く。
【0035】
つまり本発明のバウンドストッパでは、外側空隙の減少ないし消失が内側空隙を漸次埋めるように働く。
そのような現象を生じながらゴム弾性体は漸次ばねを高めて行き、そして外側空隙,内側空隙の大部分が埋まったあたりからゴム弾性体の変形抵抗が大きく増大して、そこでばね特性曲線が立上りを生じるようになる。
【0036】
但しその際の変化は図7(ロ),(ハ)に示すものほど急激な変化とはならず、そのため限界変位近傍でのゴム弾性体のばね特性の急激な立上りが良好に抑制され、そのことによって乗員にショック感を感じさせるのを防ぐことができる。
その他本発明のバウンドストッパでは、上記の外側空隙及び内側空隙により、ゴム弾性体の自由長(変形可能な高さ)を長くしてもストッパ作用時にゴム弾性体が座屈し難い利点を有する。
【0037】
尚、上記内側空隙はゴム弾性体の底面で開口した形状となしておくことができる。
またゴム弾性体は、取付部材の底部側の基端部の外周面を軸線方向に所定高さに亘って周壁部の内面に全周に亘り密着させておくことができる。
その際、内側空隙は少なくとも周壁部への密着部よりも上記の当り部側に高い位置まで延びる形状となしておくことができる(請求項2)。
【0038】
このようにすることで、ゴム弾性体の変形に伴って内側空隙を効果的に埋めていくことができる。
また取付部材の周壁部とゴム弾性体の外周面との間の上記外側空隙は、全周に亘って設けておくことができる(請求項3)。
【0039】
更にゴム弾性体は、当り部から取付部材の底部側に向って大径化する形状となし、外側空隙の径方向の空隙幅を、その底部側に向かって漸次狭小化しておくことができる(請求項4)。
このようにすることで、ゴム弾性体の変形に伴ってより効果的にばね特性を連続的に高めていくことができる。
【0040】
一方内側空隙は、取付部材の底部側に向って径方向の空隙幅を漸次拡大するものとなしておくことができる(請求項5)。
このようにすることで、ゴム弾性体の変形に伴いばね特性を滑らかに連続して増大させることができる。
【0041】
次に請求項6は、ゴム弾性体における基端部を、外周部に径方向外方に環状に突出した鍔状部を有するものとなし、そしてその鍔状部の外周面を周壁部に密着させるようになしたもので、このようにすることでゴム弾性体の全体的な変形を伴って漸次埋まる形状に外側空隙を良好に形成できる。
【0042】
本発明では、バウンドストッパに求められるストッパ特性に応じて、上記の内側空隙を軸線方向において周壁部の高さよりも低いものとなし(請求項7)、或いは逆に周壁部の高さよりも高いものとなしておくことができる(請求項8)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1及び図2において、10は例えばピックアップトラックのサスペンション装置の変位規制用に用いて好適なバウンドストッパである。
ここでバウンドストッパ10は、ピックアップトラックにおけるサスペンション装置の変位規制用として用いる場合、サスペンション装置のリーフスプリング又は車体フレームの何れか一方に取り付けて使用する。
【0044】
図に示しているように、バウンドストッパ10は金属製の剛性の取付部材12と、取付部材12に一体に加硫接着された、ストッパ作用の主体をなすゴム弾性体14とを有している。
取付部材12は、平面形状が円形の底部16と、底部16の外周端から図中上向きに直角に立ち上がる円環状の周壁部18とを有するカップ状をなしている。
【0045】
周壁部18は、上端部が径方向外向きに湾曲形状で開く形状のフランジ部20とされ、また底部16の中央には円形の開口22が設けられ、そしてこの開口22と周壁部12との間に締結ボルト24が一対図中下向きに固設されている。
【0046】
バウンドストッパ10は、この締結ボルト24により取付部材12がリーフスプリング又は車体フレームの何れか一方に締結固定される。このときゴム弾性体14は、他方(図3中の相手部材48)に対して上下方向に対向した状態となる。
【0047】
底部16には、貫通の固定孔26が設けられており、締結ボルト24はセレーション部28を固定孔26の内面に食い込ませる状態に図中下向きに圧入され、底部16に固定されている。
一対の締結ボルト24は、底部16の図中上側に大径の頭部30を有しており、その頭部30がゴム弾性体14の内部に埋込状態とされている。
【0048】
ゴム弾性体14は全体として円錐形状をなしており、図中の略上半部が取付部材12から上向きに軸線方向に突出せしめられている。
そして図中上端部がストッパ作用の際の相手部材48(図3参照)への当り部32をなしている。
ここで当り部32は、当り面となる外面が曲面をなしている。
このゴム弾性体14は、その全体形状が円錐形状をなしていることから、図中上端から下端に向って、即ち当り部32側から取付部材12の底部16側に向って外径が漸次大径化している。
【0049】
ゴム弾性体14は、取付部材12の底部16側の基端部34が、径方向外方に円環状に突出した鍔状部36を有しており、その鍔状部36の外周面が取付部材12の周壁部18の内周面に全周に亘り密着した状態で、周壁部18に加硫接着されている。
またその底面38が取付部材12の底部16の図中上面に、同じく一体に加硫接着されている。
【0050】
周壁部18の内周面とゴム弾性体14の外周面、詳しくは略下半部の外周面との間には、それら周壁部18及びゴム弾性体14に沿って周方向に円環状をなす外側空隙40が全周に亘って形成されている。
ここで外側空隙40は周壁部18の上端からゴム弾性体14における上記の鍔状部36の位置にかけて形成されており、その外側空隙40の径方向の空隙幅は上端から図中下向きに、即ち取付部材12の底部16側に向って漸次狭小化している。
【0051】
ゴム弾性体14にはまた、その中心部において底面38から図中上端部の当り部32に向って軸線方向に上向きに延びる内側空隙42が設けられている。
内側空隙42はゴム弾性体14を貫通しない非貫通のもので、この実施形態ではその上端が取付部材12における周壁部18の略半分の高さ位置に位置している。
【0052】
内側空隙42は、ゴム弾性体14と略相似形状をなす円錐形状をなしており、図中上端面が曲面とされている。
ゴム弾性体14は、この内側空隙42の形成によって、その周りの部分がストッパ作用時に剪断圧縮弾性変形する環状の脚部44をなしている。
内側空隙42は、下端が底面38で開口する形状をなしており、その開口46が底部16の開口22と合致せしめられている。
内側空隙42内部の空気はこれら開口46,22を通じて外部との間で出入可能である。
【0053】
図1及び図2に示しているようにこの実施形態において、ゴム弾性体14には、その外表面で開口する溝や凹部の如きすぐり部(空隙)は設けられておらず、ゴム弾性体14はその外表面(外周面)全体が連続した凹凸のない平滑な面をなしている。
【0054】
図3及び図4は、バウンドストッパ10におけるゴム弾性体14の変形の様子を模式的に表している。
また図5のCは、本実施形態のバウンドストッパ10のばね特性曲線(荷重−撓み特性曲線)を表している。
図3(I)は、ストッパ作用を行っていないときの状態を表しており、この状態でサスペンション装置の一部(例えば上記のリーフスプリング)が車体側に大きく変位すると、そこでバウンドストッパ10がストッパ作用する。
このとき、ゴム弾性体14は先ず当り部32が相手部材48に当って変形開始する。このときのストッパ作用の初期、即ち初期当りの際には、径方向に小寸法をなす断面幅の小さな当り部32が比較的に容易に変形することができ、内側空隙42の高さがゴム弾性体14の圧縮に伴って若干低くなる程度で外側空隙40,内側空隙42は殆ど空隙が埋められることはない。
【0055】
この状態からゴム弾性体14が相手部材48によって更に図中下向きに押されると、図3(III)に示しているようにゴム弾性体14が更に大きく軸線方向に圧縮弾性変形するとともに、このときゴム弾性体14の外周部が径方向外方に拡がり変形することによって、外側空隙40が一部埋められて行く。
その際外側空隙40は、図中上側の部分が下側の部分に比べてより多くゴム弾性体14の変形にて埋められて行く。
【0056】
またこのとき内側空隙42は、図3(III)に示しているようにゴム弾性体14の軸線方向の圧縮変形に伴って、図3(II)に示す状態よりもその高さが低くなる(内側空隙の上部が一部埋められる)。
【0057】
図3(IV)は、その状態から更にゴム弾性体14が軸線方向に圧縮された状態を表している。
図示のようにこのときには、ゴム弾性体14の、周壁部18の内側に位置する部分が径方向外方により拡がり変形することによって、外側空隙40の上部がゴム弾性体14で埋まり、周壁部18の上部内周面とゴム弾性体14の外周面とが部分的に接触した状態となる。
【0058】
尚この図3(IV)に示す段階では、ゴム弾性体14の一部と周壁部18の一部とが当ることによって、ゴム弾性体14の変形抵抗がそれまでよりも大きくなり、またこれ以降ゴム弾性体14の変形に伴うばねの増大の比率が滑らかに大となる(図5のばね特性曲線CにおけるXの点は、ゴム弾性体14の一部が周壁部18に部分的に当ったときの特性値を示している)。
【0059】
ゴム弾性体14が相手部材48によって更に図中下向きに大きく押し潰され変形すると、これに伴って図3(IV)の段階で部分的に残っていた外側空隙40の残りの空隙が埋まるとともに、外側空隙40が埋まることによって、変形したゴムが以後内側空隙42だけに向うようになり、最終的に図4(V)に示すように内側空隙42が一部を残してその多くがゴム弾性体14にて埋った状態となる。
【0060】
このように外側空隙40が漸次埋まって行き、また内側空隙42が漸次埋まって行くことによって、ゴム弾性体14の変形抵抗,変形の反力は図5中横軸の変位(撓み)の量に比較して増大の程度を増し、ばね特性曲線Cは図中上向きの立上りを示すようになる。
但しこの実施形態のバウンドストッパ10は、ゴム弾性体14の変形し易い部分が部分的に変形することによって直ちに外側空隙40,内側空隙42が埋まるといったものではなく、ゴム弾性体14が全体的に変形しながら、その全体的な変形に伴って外側空隙40,内側空隙42が次第にゴム弾性体14の変形に応じて埋まって行く。
【0061】
そのため図5の常用変位域においては、ゴム弾性体14は図7(イ)の空隙を有しないものに較べて軟らかいばね特性を、また(ロ),(ハ)に示すものに較べて硬いばね特性を維持しながら変位とともにばね特性を連続的且つ直線的に増大させて行く。
そして空隙の大部分が埋まりかけたあたりから、ばね特性の増大比率が大となり、その結果、ばね特性が滑らかに且つ連続した立ち上がりを示すようになり、最終的に最大変位に達してサスペンション装置側の変位を設定された限界変位に変位規制する。
【0062】
以上のように本実施形態のバウンドストッパ10では、ゴム弾性体14が相手部材48に当ってストッパ作用をするとき、ゴム弾性体14が外側空隙40,内側空隙42を漸次埋めながら変形することができるため、そのような空隙のない上記の図7(イ)のバウンドストッパに較べて、ストッパ作用時の初期当りはもとより、これに続くゴム弾性体14の変形時のばね特性を低ばね化することができる。
【0063】
しかもこのときゴム弾性体14は外側空隙40,内側空隙42を漸次埋めながら変形するため、それら外側空隙40,内側空隙42が大部分埋まるまでの間、ばね特性を連続的且つほぼ直線的に変化させることができる。
【0064】
但し本実施形態における上記の外側空隙40は、ゴム弾性体14の当り部32とは反対側の取付部材12の側に位置しており、また内側空隙42は取付部材12の底部16からゴム弾性体14の当り部32の側に向かって設けてあるため、更にはその内側空隙42がゴム弾性体14の芯部(径方向の芯部)に位置しているため、空隙が当り部側に設けてある図7(ロ),(ハ)に示すバウンドストッパと異なって、それら空隙によってゴム弾性体14の当り部32側の部分が部分的に軟らかくなったり、またその当り部32側が部分的に変形することによって空隙全体が埋まってしまうといったことがなく、本実施形態のバウンドストッパ10では、ゴム弾性体14が全体的に変形することによって始めて外側空隙40,内側空隙42が漸次埋まって行く。
【0065】
そのため空隙が大部分埋まるまでのゴム弾性体14の変形域におけるばね特性は、それら図7(ロ),(ハ)に示すものに較べて相対的に硬いものとなる。
そしてこのことによって常用域におけるサスペンション装置のリーフスプリング等の上下動部材の変位を良好に小さく抑制することができ、その耐久寿命を高寿命化することができる。
【0066】
また本実施形態のバウンドストッパ10では、図5で示しているように限界変位近傍でのゴム弾性体14のばね特性の急激な立上りが良好に抑制され、そのことによって乗員にショック感を感じさせるのを防ぐことができる。
更に本実施形態のバウンドストッパ10では、上記の外側空隙40及び内側空隙42により、ゴム弾性体14の自由長(変形可能な高さ)を長くしてもストッパ作用時にゴム弾性体14が座屈し難い利点を有する。
【0067】
以上本発明の実施形態を詳述したが、これはあくまで一例示である。
例えば上記内側空隙42は、バウンドストッパ10に要求されるストッパ特性に応じて、図6に示すようにその高さを適宜変化させること、例えば取付部材12の周壁部18よりも高い位置までこれを上向きに設けておくこと、或いはその形状を他の様々な形状となすことが可能である。
また本発明は他の様々なバウンドストッパに適用することが可能である等、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態であるバウンドストッパの断面図である。
【図2】図1のバウンドストッパの一部切欠斜視図及び底面図である。
【図3】同実施形態のバウンドストッパの作用説明図である。
【図4】図3に続く作用説明図である。
【図5】バウンドストッパのばね特性曲線を示した図である。
【図6】本発明の他の実施形態の断面図である。
【図7】従来のバウンドストッパの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
10 バウンドストッパ
12 取付部材
14 ゴム弾性体
16 底部
18 周壁部
32 当り部
34 基端部
36 鍔状部
38 底面
40 外側空隙
42 内側空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)底部と、該底部の外周端部から立ち上る環状の周壁部とを備えたカップ状をなし、該底部において車輪側の上下動部材と車体側との一方に取り付けられる剛性の取付部材と、(ロ)ストッパ作用時の当り部を該取付部材の周壁部から該取付部材の軸線方向に突出させる状態に、且つ該当り部とは反対側の底面を該取付部材の前記底部に固着させる状態に該取付部材の径方向内側に設けられたブロック状のゴム弾性体と、を有し、前記上下動部材の前記車体側への過度の変位を規制する緩衝部材としてのバウンドストッパであって
前記取付部材の前記周壁部と前記ゴム弾性体の外周面との間に径方向の外側空隙を設けるとともに、該ゴム弾性体の中心部において前記底面から前記当り部に向って前記軸線方向に延びる非貫通の内側空隙を設け、
ストッパ作用時に前記外側空隙,内側空隙を漸次埋めるように前記ゴム弾性体を弾性変形させるようになしてあることを特徴とするバウンドストッパ。
【請求項2】
請求項1において、前記ゴム弾性体は、前記取付部材の前記底部側の基端部の外周面が前記軸線方向に所定高さに亘って前記周壁部の内周面に全周に亘り密着させてあり、前記内側空隙は該周壁部への密着部よりも前記当り部側に高い位置まで延びていることを特徴とするバウンドストッパ。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記周壁部と前記ゴム弾性体の外周面との間の外側空隙は全周に亘り設けてあることを特徴とするバウンドストッパ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記ゴム弾性体は、前記当り部から前記取付部材の底部側に向って大径化する形状をなしており、前記外側空隙の径方向の空隙幅が該底部側に向って漸次狭小化していることを特徴とするバウンドストッパ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記内側空隙は、前記取付部材の底部側に向って径方向の空隙幅が漸次拡大していることを特徴とするバウンドストッパ。
【請求項6】
請求項2において、前記ゴム弾性体は、前記基端部の外周部に径方向外方に環状に突出した鍔状部を有しており、該鍔状部の外周面が前記周壁部に密着していることを特徴とするバウンドストッパ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかにおいて、前記内側空隙は、前記軸線方向において前記周壁部の高さよりも低いものとなしてあることを特徴とするバウンドストッパ。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかにおいて、前記内側空隙は、前記軸線方向において前記周壁部の高さよりも高いものとなしてあることを特徴とするバウンドストッパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−222164(P2009−222164A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68555(P2008−68555)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】