説明

バシルススブチリス(B.subtilis)由来アルファ‐アミラーゼを用いるデンプンからのグルコースの生産

バシルス スブチリス(Bacillus. subtilis)由来アルファ‐アミラーゼ(AmyE)は、野菜デンプン、マルトヘプタオース、及びマルトトリオースを含む多様な炭水化物基質から大量のグルコースを生成する。とりわけ、この有利な特性によりAmyE又はその変異体はグルコアミラーゼの必要性を低減又は除去する糖化反応に用いられる。グルコアミラーゼの必要性の低減又は除去は、例えば、エタノール又は高フルクトーストウモロコシシロップ(HFCS)の生産の効率性を顕著に改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連文献
本出願は2008年6月6日提出の米国仮出願番号61/059,535に基づいて優先権を主張する。この米国仮出願は、ここに参照することにより本明細書に取り込まれる。
【0002】
配列表
配列番号1から24を含む配列表を添付する。ここに、その全体を参照することにより本明細書に取り込む。
【背景技術】
【0003】
本発明は、バシルス スブチリス(Bacillus. subtilis)由来アルファ‐アミラーゼ(AmyE)、その変異体、それらをコードする核酸、核酸を含む宿主細胞を提供する。AmyE又はその変異体の使用方法を開示し、とりわけ、デンプンの液化及び/又は糖化方法を含む。そのような方法は例えば、エタノール生産又は高フルクトーストウモロコシシロップ生産に有用な糖を生産できる。
【0004】
背景
野菜デンプン、例えば、トウモロコシデンプンはシロップ及びバイオ燃料など工業製造製品に広く用いられる。例えば、高フルクトーストウモロコシシロップ(HFCS)は高いフルクトース含有量を有するトウモロコシシロップの処理された形態であり、糖に匹敵する甘味料であり、HFCSはソフトドリンク及び他の加工食品における糖の代替品として有用になっている。現在、HFCS生産は10億ドル産業となっている。また、バイオ燃料としてのエタノールの生産も成長中の産業である。
【0005】
シロップ及びバイオ燃料をデンプンのグルコースへの分解を触媒する酵素的処理によってデンプンから生産できる。この酵素処理は一般的に一連の酵素―触媒反応を含む。
【0006】
(1)液化:アルファ‐アミラーゼ(EC 3.2.1.1)は最初にデンプン懸濁液のマルトデキストランへの分解を触媒する。デンプン懸濁液は、30‐40%w/w 乾燥固体(ds)を含むことができる。アルファ‐アミラーゼは内部のアルファ‐1,4‐D−グルコシド結合の不規則な切断を触媒するエンドヒドロラーゼ類である。一般的に液化は高い温度、例えば90‐100℃にて行なわれるので、バシルス種(Bacillus sp.)由来アルファ‐アミラーゼなど熱安定性アルファ‐アミラーゼがこの工程に好ましい。現在この工程に用いるアルファ‐アミラーゼ、例えば、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)、バシルス アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)、及びバシルス ステアロテルモフィルス(B. stearothermophilus)(AmyS)由来アルファ‐アミラーゼは、大量のグルコースを生産していない。それどころか、得られる液化物は低いデキストロース当量(DE)であり、マルトース及び高い重合度(DPn)を有する糖類を含む。
【0007】
(2)糖化:グルコアミラーゼ及び/又はマルトジェニックアルファ‐アミラーゼは、液化後形成されたマルトデキストランの非還元末端の加水分解を触媒し、D−グルコース、マルトース、及びイソマルトースを放出する。糖化はグルコースリッチシロップ又は高マルトースシロップのいずれかを生産する。前者の場合、一般的にグルコアミラーゼは例えば、60℃、pH4.3のように、酸性条件下で上昇温度にて糖化を触媒する。このプロセスで用いるグルコアミラーゼは、典型的には、菌類から得られ、その菌類は、例えば、Optidex(商標)L400中に用いられるアスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ又はフミコーラ グリセア(Humicola grisea)グルコアミラーゼである。プルラナーゼのような脱分岐酵素は糖化を助けることができる。
【0008】
あるいは、マルトジェニックアルファ‐アミラーゼは高マルトースシロップを生成するために糖化を触媒してよい。一般的にマルトジェニックアルファ‐アミラーゼは、グルコアミラーゼより高い最適pH及び低い最適温度を有し、一般的にマルトジェニックアミラーゼはCa2+を必要とする。現在この用途に用いるマルトジェニックアルファ‐アミラーゼはバシルス スブチリス(B. subtilis)アルファ‐アミラーゼ、植物アミラーゼ、Clarase(商標)Lの活性成分であるアスペルギルス オリザエ(Aspergillus oryzae)由来アルファ‐アミラーゼを含む。多様な産物を生産するために使用する糖化反応の例を下記に示す。

【0009】
(3)さらなる処理:プロセスにおける分岐点は、上記反応経路の左側に示すグルコースリッチシロップの生産後に生じる。もし最終の所望の製品がバイオ燃料の場合、酵母はグルコースリッチシロップをエタノールへ発酵できる。一方、最終の所望の製品がフルクトースリッチシロップの場合、グルコース イソメラーゼはグルコースリッチシロップのフルクトースへの転換を触媒できる。
【0010】
糖化はグルコースリッチシロップの生産における律速段階である。一般的に糖化は48−72時間かけておこり、その時間により多くの菌類グルコアミラーゼは著しく活性を消失する。さらに、マルトジェニックアルファ‐アミラーゼ及びグルコアミラーゼ両者は糖化を触媒するけれども、一般的に酵素は、上記に示すように、異なる最適pH及び温度にて操作する。両酵素を連続的に用いる場合、両酵素間の反応条件における違いによりpH及び温度の調整を余儀なくされ、全体のプロセスを遅延し、不溶性アミロース凝集物の形成を生じうる。
【0011】
従って、当分野において、デンプンから工業的製品を製造する改良された方法の必要性が存在する。特に糖化段階における改善された効率性が必要とされる。
【発明の概要】
【0012】
バシルス スブチリス(Bacillus. subtilis)由来アルファ‐アミラーゼ(AmyE)は、野菜デンプン、マルトヘプタオース、及びマルトトリオースを含む多様な炭水化物基質からかなりの量のグルコースを生成する。とりわけ、この有利な特性によりAmyE又はその変異体はグルコアミラーゼの必要性を低減又は除去する糖化反応に用いられる。グルコアミラーゼの必要性の低減又は除去は、例えば、エタノール又は高フルクトーストウモロコシシロップ(HFCS)の生産の効率性を顕著に改善する。
【0013】
本発明は、
(i)AmyE又はその変異体をマルトース、マルトヘプタオース、又はマルトトリオースを含む基質溶液と接触させること、及び
(ii)基質溶液をかなりの量のグルコースへ転換させること、
を含む、
バシルス スブチリス(Bacillus. subtilis)アルファ‐アミラーゼ(AmyE)又はその変異体を用いるかなりの量のグルコースを含む溶液を生成する方法であり、
ここで、AmyE又はその変異体が配列番号1のアミノ酸配列を有し、又は配列番号1と少なくとも約85%の配列同一性であるアミノ酸配列を有し、及びアルファ‐アミラーゼ活性を有する方法に関する。溶液中のグルコースの最終濃度は20% w/w以上であり得る。基質溶液はグルコアミラーゼを添加しないで、AmyE又はその変異体と有利に接触させてよい。ある実施態様においては、基質溶液をグルコアミラーゼ存在下AmyE又はその変異体と接触させてよい。ここで、溶液のpHは約pH4.0からpH4.5であり、任意にCa2+非添加としてよい。
【0014】
ある実施態様においては、オリゴサッカロイド溶液は主にマルトヘプタオース(DP7)又は高級オリゴサッカロイドを含む。別の実施態様においては、デンプン溶液は未処理のトウモロコシデンプンである。
【0015】
さらに別の実施態様においては、基質溶液の転換の間、基質溶液のpHは約5.6から約pH5.8である。ある実施態様においては、基質溶液の転換は基質溶液をグルコアミラーゼと接触させることを含まない。
【0016】
ある実施態様においては、工程(i)がデンプン基質をグルコアミラーゼと接触させることをさらに含む。ある実施態様においては、グルコアミラーゼを約0.5GAU/g ds未満の濃度で添加する。さらなる実施態様においては、グルコアミラーゼを約0.02GAU/g ds未満の濃度で添加する。
【0017】
ある実施態様においては、グルコースを含む溶液が少なくとも約0.2g/Lのグルコースを含む。別の実施態様においては、グルコースを含む溶液が少なくとも約0.4g/Lのグルコースを含む。さらなる実施態様においては、グルコースを含む溶液が少なくとも約1.4g/Lのグルコースを含む。
【0018】
自然に発生するAmyEは、すべて本発明の方法に有用である。例えば、AmyEは配列番号1のアミノ酸配列を含んでよく、又は配列番号3(Amy31A)のアミノ酸配列を有するAmyEなど、デフォルトマッチングパラメーターを有するBLAST配列アライメントアルゴリズムで測定して、配列番号1と少なくとも約85%、90%、95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。Amy31Aは、Ohdan他、“Characteristics of two forms of alpha-amylases and structural implication,” Appl. Environ. Microbiol. 65(10): 4652-58 (1999)に開示される。Amy31Aは、BLASTアルゴリズムを用いて計測すると、配列番号1のAmyEと約86%の配列同一性を有する。また、AmyE変異体も有用であり、自然に発生するAmyEの配列と異なるアミノ酸配列を有する。変異体はC末端デンプン結合領域の欠失を有するAmyEを含む。これは例えば、配列番号2(AmyE‐tr)のアミノ酸配列を有する欠失AmyEであり、これは配列番号1のD425残基から欠失したAmyEである。また、本発明はAmyE及びAmyE変異体をコードするポリヌクレオチドも提供する。さらに、ポリヌクレオチドを発現するのに有用なベクター及び宿主細胞も提供する。
【0019】
ある実施態様においては、AmyEは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、NCBI アクセション番号 ABW75769、NCBI アクセション番号 ABK54355、NCBI アクセション番号 AAF14358、NCBI アクセション番号 AAT01440、NCBI アクセション番号 AAZ30064、NCBI アクセション番号 NP_388186、NCBI アクセション番号 AAQ83841、及びNCBI アクセション番号BAA31528に記載のアミノ酸配列を含むAmyEからなる群から選択される。
【0020】
デンプンを糖化する方法は、糖化デンプン溶液を発酵させて、エタノールなどバイオ燃料を生成することをさらに含む。ある実施態様においては、バッチ発酵プロセスをクローズドシステムで用いてよく、培地組成を発酵の最初にセットし、発酵の間変更しない。別の実施態様においては、「流加培養法」システムを用い、物質を発酵進行にともない複数回に分けて加える。さらに別の実施態様においては、連続発酵システムを用い、規定発酵培地を連続的にバイオリアクターに添加し、同量の調整培地を処理のために同時に除く。
【0021】
ある実施態様においては、さらなる工程は、(iii)グルコースを含む溶液を発酵させて、エタノールを生成することを含む。ある実施態様においては、エタノール濃度が少なくとも約6%v/vのエタノールである。別の実施態様においては、エタノール濃度が少なくとも約14%v/vのエタノールである。
【0022】
また、方法は、糖化デンプン溶液をグルコース イソメラーゼと接触させることをさらに含むことも提供する。従って、ある実施態様においては、さらなる工程(iii)グルコースを含む溶液をグルコース イソメラーゼと接触させて、高フルクトーストウモロコシシロップを生成することを含む。ある実施態様においては、糖化デンプン溶液は、外から加えられたCa2+を含まない。糖化デンプン溶液をHFCSなど、フルクトース‐デンプンベースシロップ(HFSS)に転換してよい。糖化デンプンのHFSSへの転換は、pH約6.0から約8.0、例えば、pH7.5にて触媒されてよい。ある実施態様においては、生産物は約40−45%のフルクトースを含む。
【0023】
また、本発明は、AmyE又はその変異体及び任意にグルコアミラーゼ、プルラナーゼ、ベータ‐アミラーゼ、菌類アルファ‐アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、イソアミラーゼ、又はそれらの組み合わせを含むデンプン処理組成物を提供する。
【0024】
また、本発明は、溶液中またはゲル中にAmyE又はその変異体を含む焼成組成物も提供する。焼成の方法は、焼成組成物を焼かれるべき物質に添加すること及びその物質を焼くことを含む。
【0025】
また、本発明は、水溶液中にAmyE又はその変異体を含む、及び任意に別の酵素ともに含む織物湯通し組成物を提供する。織物を湯通しする方法は、織物を湯通しするのに十分な時間、湯通し組成物を織物と接触させることを含む。ある実施態様においては、織物を湯通しする方法は、
(i)織物をAmyEと接触させること、及び
(ii)織物を湯通しすることを
含み、
ここで、AmyEは、配列番号1のAmyEと少なくとも約85%の配列同一性であるアミノ酸配列を含む。
【0026】
また、本発明は、水溶液中AmyE又はその変異体、及び任意に別の酵素、洗剤及び/又は漂白剤を含む洗浄組成物を提供する。洗浄溶液を例えば、洗濯又は食器洗浄に用いる。本発明の方法は、洗浄するのに十分な時間、洗浄組成物を洗浄すべきもの、例えば、食器又は洗濯物と接触させることを含む。
【0027】
ある実施態様においては、物を洗浄する方法を提供し、
(i)洗浄すべき物をAmyEを含む洗剤組成物と接触させること、及び
(ii)物を洗浄すること
を含み、
ここで、AmyEは配列番号1のAmyEと少なくとも約85%の配列同一性であるアミノ酸配列を含む。
【0028】
ある実施態様においては、洗浄すべき物は食器又は衣料である。別の実施態様においては、洗剤組成物は非粉塵粒質物又は安定化溶液である。さらなる実施態様においては、洗剤組成物は、セルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、又はそれらの組み合わせを含む。ある実施態様においては、アミラーゼはアルファ‐アミラーゼ、ベータ‐アミラーゼ、又はグルコアミラーゼである。さらなる実施態様においては、洗剤組成物はリパーゼ、ペルオキシダーゼ、マンナナーゼ、ペクチン リアーゼ、又はそれらの組み合わせをさらに含む。ある実施態様においては、洗剤組成物は手作業又は自動食器洗浄洗剤組成物である。別の実施態様においては、洗剤組成物はプロテアーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、マンナナーゼ、ペクチン リアーゼ、又はそれらの組み合わせをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
添付図面は本明細書に取り込まれるが、多様な実施態様の説明を限定するものではない。
【0030】
図1は配列番号1(「AmyE完全長」)のアミノ酸配列を有するAmyEと配列番号25(成熟「Amy31A」)のアミノ酸配列を有するAmyEとの間の配列アライメントを示す。アミノ酸配列中の相違を太字で示す。残基は酵素の成熟体における最初のアミノ酸から数える。
【0031】
図2はAmyE‐tr(配列番号2)をコードするポリヌクレオチド(「SAMY425aa」と示す)を含むプラスミドpME630−7を示す。プラスミドは、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)アルファ‐アミラーゼ(「preLAT」と示す)由来シグナル配列をコードするSAMY遺伝子を有するポリヌクレオチドインフレームを含む。
【0032】
図3は、pH4.3及びpH5.8にて従来の発酵におけるAmyE‐tr(「欠失AmyE」)及びスペザイム(商標)エクストラ(Spezyme(商標)Xtra)アミラーゼ(「Xtra」)によるエタノール発酵を示す。
【0033】
図4は、アスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachii)アルファ‐アミラーゼ(AkAA)単独又はアスペルギルス カワチ(A. kawachii)アルファ‐アミラーゼ及びトリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼ(TrGA)の混合物と比較した、pH4.3及びpH5.8での完全長AmyE(「AmyE FL」)及びAmyE‐trによる不溶性粒状(未処理)デンプンのエタノールへの加水分解を示す。
【0034】
図5は、ゲオバシルス ステアロテルモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)アルファ‐アミラーゼ(AmyS、配列番号4)と比較した、pH4.5及びpH5.6でのAmyE(「AmyE完全長」)、AmyE‐tr(「欠失AmyE」)、及びAmy31Aによるグルコース発酵を示す。
【0035】
図6は、マルトヘプタオース(DP7)を用いるAmyE‐trの0時間(上図)及び72時間インキュベーション(下図)のHPLCによる検出された分解産物を示す。
【0036】
図7は、DP7基質を用いるAmySの0時間、2時間、4時間及び24時間(上から下の図)インキュベーション(下図)のHPLCによる検出された分解産物を示す。
【0037】
図8は、DP7基質を用いるスペザイム(商標)フレッド(SPEZYME(商標)FRED)(「フレッド(Fred)」)の0時間、1時間、2時間及び3時間(上から下の図)インキュベーションのHPLCによる検出された分解産物を示す。
【0038】
図9は、生トウモロコシ粉デンプンを用いるAmyE(配列番号1)の0分、30分、及び90分(上から下の図)インキュベーションのHPLCにより検出された分解産物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
バシルス スブチリス(Bacillus subtilis)由来アルファ‐アミラーゼ(AmyE)は多様な炭水化物基質であって、野菜デンプン、マルトヘプタオース、及びマルトトリオースを含む炭水化物基質から大量のグルコースを生成する。とりわけ、この有利な特性はAmyE又はその変異体をグルコアミラーゼを低減する又は除く必要性を有する糖化反応において用いることができる。グルコアミラーゼの必要性を低減又は除去することにより、例えば、エタノール又は高フルクトーストウモロコシシロップの生産の効率性を顕著に改善する。
【0040】
1.定義及び略語
本明細書の詳細な説明に従って、次の略語及び定義を適用する。本明細書にて使用する単数形「a」「an」及び「the」は、内容が明らかに他の事を指し示していない限り、複数の指示対象を含む。すなわち、例えば、「酵素」の意味は該当酵素の複数を含み、「製剤(the formulation)」の意味は一以上の製剤及び当業者に公知のこれらに均等な製剤を含む。
【0041】
別段の指示がない限り、本明細書にて用いるすべての技術用語及び科学用語は当業者が通常理解するものと同様の意味を有する。次の用語を以下に示す。
【0042】
1.1. 定義
本明細書にて用いる「アミノ酸配列」は用語「ポリペプチド」及び/又は用語「タンパク質」と同義語である。ある場合は、用語「アミノ酸配列」は用語「ペプチド」と同義語である。ある場合は、用語「アミノ酸配列」は用語「酵素」と同義語である。
【0043】
本明細書にて用いる「ハイブリダイゼーション」は、核酸の一本鎖が塩基対を通して相補鎖に結合する過程及びポリメラーゼチェーン反応(PCR)において実施する場合の増幅する過程も含む。ハイブリダイズした核酸は、一本鎖又は二本鎖DNA又はRNA、RNA/DNAへテロ二本鎖又はRNA/DNAコポリマーを含んでよい。本明細書にて用いる「コポリマー」は、リボヌクレオチド及びデオキシヌクレオチド両者を含む1本鎖核酸をいう。核酸は「高いストリンジェンシー条件」下にて本明細書に記載の核酸にハイブリダイズするものを含む。「高いストリンジェンシー条件」は50℃、0.2XSSC又は65℃、0.1XSSC(1XSSC=0.15NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)でのハイブリダイゼーションとして定義される。
【0044】
本明細書にて用いる用語「ヌクレオチド配列」又は「核酸配列」は、ゲノム、合成又は組み換え体由来をいい、センス鎖又はアンチセンス鎖を表すかどうかで、二本鎖又は一本鎖でよい。本明細書にて用いるように、その用語「核酸」はゲノムDNA、cDNA、合成DNA、及びRNAをいう。核酸の残基は、通常知られ、当分野で用いる任意の化学的修飾を含んでよい。
【0045】
「単離される」は物質が、それが自然に結合している少なくとも一つの自然の成分から少なくとも実質的に除去されることを意味する。
【0046】
用語「精製される」は、物質が相対的に純粋状態、例えば少なくとも約90%純粋、又は少なくとも約95%純粋、又は少なくとも約98%純粋であることを意味する。
【0047】
用語「熱安定性」は、高い温度にさらされた後、酵素が活性を維持することを意味する。AmyEの熱安定性はその半減期(t1/2)によって測定され、半減期により半分の酵素活性が消失する。半減期は所定の温度、特に具体的な適用に用いる温度にて一定時間経過後残存する具体的なアルファ‐アミラーゼ活性を測定することにより計算される。
【0048】
本明細書にて用いる「食品」は消費者に任意の良い効果を提供できる調製食品及び小麦粉のような食品用原料を含む。「食品原料」は食品又は食品(foodstuff)に添加する又は添加できる製剤を含み、例えば、酸性化又は乳液化に必要な広範囲の製品において低いレベルにて用いる製剤を含む。食品原料は使用及び/又は適用様式及び/又は投与様式により液体の形態又は固体としての形態であってよい。
【0049】
「オリゴサッカロイド」は3‐20モノサッカライドから構成される炭水化物分子を意味する。
【0050】
「相同体」は、対象アミノ酸配列及び対象ヌクレオチド配列とある度合いの同一性又は相同性を有する物を意味する。「相同配列」は対象配列に対して少なくとも85%配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、例えば、対象配列に少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一性を有する。一般的に、相同体は対象アミノ酸配列と同様の活性部位を含む。
【0051】
本明細書に用いる「形質転換細胞」は組み換えDNA技術を用いて形質転換された細胞を含む。一般的に形質転換は細胞への一以上のヌクレオチド配列の挿入により起こる。挿入されたヌクレオチド配列は異種のヌクレオチド配列、即ち、融合タンパク質のような形質転換された細胞に本来有していない配列でもよい。
【0052】
本明細書にて用いる「作動可能に結合する」は、記載する成分が意図する機能を行うような関係であることを意味する。例えば、コード配列に作動可能に結合する調節配列は、コード配列の発現がコントロール配列に適合する条件下に行われるようなライゲーションである。
【0053】
本明細書にて用いる「生物学的活性な」とは、同じ程度とは必ずしも限らないが、自然に発生する配列と同様な構造機能、調節機能又は生物学的機能を有する配列をいう。
1.2.略語
次の略語は、他に示していない限り、以下の意味を有する。
AE アルコール エトキシレート(alcohol ethoxylate)
AEO アルコール エトキシレート(alcohol ethoxylate)
AEOS アルコール エトキシ硫酸塩(alcohol ethoxysulfate)
AES アルコール エトキシ硫酸塩(alcohol ethoxysulfate)
AGU グルコアミラーゼ活性単位(glucoamylase activity unit)
AkAA アスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachii)アルファ‐アミラーゼ
AmyE バシルス スブチリス(B. subtilis)アルファ‐アミラーゼ
AmyR スペザイム(商標)エクストラ(Spezyme(商標)Xtra)アミラーゼ
AmyS ゲオバシルス ステアロテルモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)アルファ‐アミラーゼ
AS アルコール硫酸塩(alcohol sulfate)
BAA 細菌のアルファ‐アミラーゼ(bacterial α-amylase)
cDNA 相補的DNA(complementary DNA)
CMC カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)
DE デキストロース等量(Dextrose Equivalent)
DI 蒸留された、脱イオンされた(distilled, deionized)
DNA デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)
DP3 3つのサブユニットを有する重合度(degree of polymerization with three subunits)
DPn n個のサブユニットを有する重合度(degree of polymerization with n subunits)
DS 又は ds 乾燥固体(dry solid)
DTMPA ジエチルトリアミンペンタ酢酸(diethyltriaminepentaacetic acid)
EC 酵素委員会(enzyme commission for enzyme classification)
EDTA エチレンジアミンテトラ酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid)
EDTMPA エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(ethylenediaminetetramethylene phosphonic acid)
EO エチレンオキシド(ethylene oxide)
F&HC 繊維及び家庭用ケア(fabric and household care)
GAU グルコアミラーゼ単位(glucoamylase units)
HFCS 高いフルクトーストウモロコシシロップ(high fructose corn syrup)
HFSS 高フルクトースデンプンベースシロップ(high fructose starch based syrup)
IPTG イソプロピル ベータ‐D‐チオガラクトシド(isopropyl β-D-thiogalactoside)
LA ラウリア寒天(Lauria agar)
LB ラウリア培養液(Lauria broth)
LU リパーゼ単位(Lipase Units)
L1T 1位にてロイシン(L)残基がトレオニン(T)残基で置換され、アミノ酸は、当分野で通常知られている1文字の略語により記される。
MW 分子量(molecular weight)
NCBI ナショナルセンターフォーバイオテクノロジーインフォメーション(National Center for Biotechnology Information)
nm ナノメーター(nanometer)
NOBS ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸塩nonanoyloxybenzenesulfonate
NTA ニトリロ三酢酸(nitrilotriacetic acid)
OD 吸光度(optical density)
PCR ポリメラーゼチェーン反応polymerase chain reaction
PEG ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)
pI 等電点(isoelectric point)
ppm 百万分の一(parts per million)
PVA ポリ(ビニル アルコール)(poly(vinyl alcohol))
PVP ポリ(ビニルピロリドン)(poly(vinylpyrrolidone))
RAU リファレンスアミラーゼ単位(Reference Amylase Units)
RNA リボ核酸(ribonucleic acid)
SAS 第二級アルカンスルホン酸塩(secondary alkane sulfonates)
1X SSC 0.15 M NaCl, 0.015 M クエン酸ナトリウム, pH 7.0
SSF 同時糖化発酵(simultaneous saccharification and fermentation)
SSU 可溶性デンプン単位、1分あたり放出される1mgのグルコースの還元パウダーに相当
TAED テトラアセチルエチレンジアミン(tetraacetylethylenediamine)
TNBS トリニトロベンゼンスルホン酸(trinitrobenzenesulfonic acid)
TrGA トリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼ
w/v 質量/体積(weight/volume)
w/w 質量/質量(weight/weight)
wt 野生型(wild-type)
μL マイクロリットル(microliter)
μNm マイクロニュートンxメーター(microNewton × meter)
【0054】
2. AmyE及びその変異体
本明細書に記載の方法を実施するのに有用なAmy酵素及びその変異体を提供する。AmyE及びその変異体をコードする核酸も提供し、その核酸を含むベクター及び宿主細胞を提供する。
【0055】
本明細書に記載の目的である「AmyE」は自然に発生するバシルス スブチリス(B. subtilis)由来アルファ‐アミラーゼ(EC 3.2.1.1; 1,4-α-D-グルカン グルカノヒドロラーゼ)を意味する。代表的なAmyE配列を配列番号1に記載する。配列番号1に示すAmyEのアミノ酸配列は天然のシグナル配列を含まない成熟型のものである。このAmyEの天然シグナル配列のアミノ酸配列を配列番号17に示す。このAmyEの成熟型は「AmyE完全長」として本明細書において他の個所に記載される。他のAmyE配列は、デフォルトアライメントパラメーターを有するBLAST配列アライメントを用いて配列番号1のAmyEに対して少なくとも約85%の配列同一性を有する。例えば、UniProtKB/TrEMBLアクセション番号O82953 (配列番号3)に開示されるAmy31Aとして知られるAmyEは配列番号1のAmyEに86%の配列同一性を有する。配列番号3のN末端45アミノ酸残基はAmy31Aのシグナル配列である。AmyE(配列番号1)及びAmy31A(シグナル配列が無い)間の配列アライメントを図1に示す。AmyE酵素はNCBIアクセション番号ABW75769に開示のアミノ酸配列を有するAmyEを含むが、これに限定されない。さらにAmyEタンパク質配列はNCBIアクセション番号ABK54355、AAF14358、AAT01440、AAZ30064、NP_388186、AAQ83841、及びBAA31528に開示のものを含み、その内容は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0056】
AmyE「変異体」は自然に発生するAmyE配列のアミノ酸配列修飾を含む。本明細書にて用いるように、自然に発生するAmyEも「親酵素」、「親配列」、又は「野生型AmyE」である。アミノ酸修飾はアミノ酸の置換、挿入、又は欠失を含んでよい。AmyE変異体におけるアミノ酸修飾は自然に発生する変異の結果又は下記にさらに記載するようにこの目的のために当分野で周知の方法の一つを用いてアミノ酸配列の意図的な修飾の結果得られるものでよい。代表的なAmyE変異体は同時係属出願代理人書類番号48452-0019-P1-USに記載され、その全体を本明細書に取り込む。
【0057】
AmyE変異体は、特に特定しない限り、少なくとも一つのアミノ酸の修飾を含み、しかし変異体は、デフォルトアライメントパラメーターを有するタンパク質配列のBLASTアライメントにより測定して配列番号1のAmyEと少なくとも85%の配列同一性を維持している。AmyE変異体は、配列番号1のAmyEに少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を有する。例えば、変異体は、配列番号1のアミノ酸配列に比較して、1、2、3、5まで、10まで、又は20までアミノ酸置換を有してよい。一般的に、修飾は生物学的機能を要求されないアミノ酸残基に対してなされる。修飾すべきアミノ酸残基の選択はAmyE配列間で配列相同性により導かれる。一般的に、AmyE配列においてよく保存されるアミノ酸は生物学的活性に必要とされる可能性が高い。反対に、AmyE配列の間で異なるアミノ酸の位置は生物学的活性に必要性とされる可能性が低い。例えば、AmyE及びAmy31Aの間のアライメントにおいて異なるアミノ酸残基を図1において太字で示しているが、それは生物学的活性の消失なしにAmyE変異体において修飾される可能性が高い。
【0058】
AmyE又はその変異体を例えば、発現、検出、及び/又はシグナル配列又はHis−タグのような精製を機能するAmyEの成熟型のN−及び/又はC−末端の配列を含む融合タンパク質として発現してよい。そのような配列はシグナル配列を含み、宿主生物体においてAmyEの分泌及び発現を機能する。Yang他、“Nucleotide sequence of the amylase gene from Bacillus subtilis,” Nucleic Acids Res. 11: 237-49 (1983)に記載のように、追加的なアミノ酸残基をシグナル配列の切断に続いてAmyEのN−末端から切断してよい。AmyEの「成熟型」は発現されたAmyE配列の翻訳後修飾のすべての産物として定義される。成熟型AmyEに形成するために切断される一次翻訳産物のN−末端を代替的に「シグナル配列」、「リーダー配列」、又は「プロ‐配列」と称し得る。
【0059】
シグナル配列はAmyEと同じ遺伝子によりコードされてよい。例えば、配列番号1に記載のAmyEはシグナル配列及び
MFAKRFKTSLLPLFAGFLLLFHLVLAGPAAASAETANKSNE (配列番号17)
の配列を有する追加的N末端アミノ酸とともに自然に発現される。代替的にシグナル配列は異なるAmyE由来バシルス スブチリス種(B. subtilis sp.)シグナル配列でもよく又は異なるタンパク質でもよい。さらに、シグナル配列は異なる種、例えばバシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)由来でもよい。例えば、シグナル配列を特定の宿主細胞においてAmyE又はその変異体の最適な発現を提供するために選択してよい。成熟AmyEはシグナル配列ではないN末端由来追加的な配列がタンパク質分解される結果として生成してよい。例えば、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)(「LATリーダー配列」)由来31のアミノ酸残基シグナル配列をAmyE配列とフレームにおいて結合してよい。
【0060】
本明細書においては、AmyE変異体は、自然に発生するAmyEと比較して、少なくとも部分的な1,4‐α‐D−グルカン グルカノヒドロラーゼ活性を有する。変異体は野生型AmyEと同じ活性及び特性を有してよく、又は変異体は野生型AmyEと比較して改善された特性を有してよい。改変される特性を例えば、マルトヘプタオース及び/又はマルトトリオース基質に対して2倍又は3倍高い特異的活性を有するように改変されたものでよい。代替的に又は追加的に、タンパク質の熱安定性を改変してよい。例えば、変異体はAmyEより高い熱安定性を有してよい。代替的に又は追加的に改変された特性は酵素活性に対する最適pHでもよい。例えば、変異体はより酸性の又はよりアルカリ性の最適pHを有してよい。
【0061】
「欠失」AmyE(「AmyE‐tr」)はC‐末端デンプン結合領域の全部又は一部の欠失配列を有するAmyEを意味する。例えば、配列番号2のAmyE‐trにおいて、配列番号1のAmyEがD425残基で欠失されている。このAmyE‐trの2.5Å分解能結晶構造はタンパク質データバンクアクセション番号1BAGにて入手でき、それはFujimoto他、“Crystal structure of a catalytic-site mutant alpha-amylase from B. subtilis complexed with maltopentaose,” J. Mol. Biol. 277: 393-407 (1998)に開示される。C‐末端デンプン結合領域のすべて又は一部の除去をする場合、AmyE‐trは他の場所、例えば、配列番号1のAmyEのY423、P424、D426又はI427にて欠失されてよい。
【0062】
AmyE又はその変異体をコードする核酸は、配列番号1のAmyE及びAmyE‐tr(配列番号2)をそれぞれコードする配列番号9及び10に開示のポリヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。さらに、代表的なポリヌクレオチドは、Amy31A(配列番号3)をコードする配列番号11に開示のものを含む。同様に、NCBIアクセション番号ABK54355、AAF14358、AAT01440、AAZ30064、NP_388186、AAQ83841、及びBAA31528に開示されるAmyEは公的に入手可能なデータベース中に記載のポリヌクレオチドによりコードされ、配列は、参照により本明細書に取り込まれる。核酸はDNA、mRNA、又はcDNA配列でよい。核酸は、上述の核酸のいずれかの「縮重配列」をさらに含んでよい。縮重配列は同じアミノ酸残基をコードする少なくとも一つのコドンを含むが、前述の核酸配列と異なるヌクレオチド配列を有する。例えば、核酸は、AmyE又はその変異体をコードする任意の核酸配列を含む。縮重配列特定の宿主生物体により好ましいコドンを用いることにより最適な発現を設計してよい。
【0063】
本発明は、AmyE又はその変異体をコードする核酸を含むベクターも提供する。また、ベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、AmyE変異体をコードするポリヌクレオチドを発現してよい。宿主細胞は、例えば、バシルス スブチリス(B. subtilis)のようなバシルス種(Bacillus sp.)でよい。
【0064】
2.1.AmyE変異体の特徴
AmyE変異体をそれらの核酸及び一次ポリペプチド配列により、3D構造モデリングにより、及び/又はそれらの特異的活性により特徴づけできる。AmyE変異体のさらなる特徴は安定性、Ca2+依存性、pH範囲、酸化安定性、及び熱安定性を含む。ある態様においては、野生型AmyEの性能特徴を維持しながらAmyE変異体は野生型AmyEより高いレベルで発現される。発現及び酵素活性のレベルを当業者に周知の標準試験を用いて評価できる。別の態様においては、変異体は、高温での改善された安定性又は例えば、pH4.0から6.0又はpH8.0から11.0のような多様なpH値での改善された活性のような野生型酵素と比較して改善された性能特徴をあきらかとする。
【0065】
AmyE変異体はAmyEに比較して宿主細胞において改変されたレベルにて発現されてよい。一般的に、発現は、所定の時間に対して当業者が周知の標準方法を用いる発酵培養液から回収される活性変異体の量に関係する。また、発現は、宿主細胞内で生成される又は宿主細胞により分泌される変異体の量又は割合に関連し得る。また、発現は、変異体酵素をコードするmRNAの翻訳の割合にも関係し得る。
【0066】
更なる態様においては、重要な変異は、改変された安定性又は特異的活性であって、特に例えば50℃から70℃のような、約60℃の温度にて例えば、糖化における使用に関して存在する。変異体は、変異体が他の適用及び組成物において用いられるかどうかに依存して他の温度にて改変された安定性又は特異的活性を有してよい。例えば、焼成製品において、変異体は高い温度の範囲にて改変された特異的活性を有してよい。
【0067】
また、AmyE変異体は、親AmyEと比較して、改変された酸化安定性、特に、高い酸化安定性を有してよい。例えば、増加された酸化安定性は洗剤組成物において有利であり、減少される酸化安定性はデンプン液化用組成物において有利であり得る。
【0068】
また、本明細書に記載のAmyE変異体は、約55℃から約95℃以上の上昇温度、特に約80℃にて親酵素に比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%以上半減期が延びた変異を有することができる。ある実施態様においては、AmyE変異体は80℃以上にて約1‐10分間加熱できる。
【0069】
AmyE変異体は、本明細書に記載のエキソ特異性指標により測定されるエキソ‐特異性を有してよい。AmyE変異体は親酵素又は親酵素由来のポリペプチドに比較してエキソ‐特異性が高い又は増加しているものを含む。すなわち、例えば、AmyE変異体ポリペプチドはそれらの親ポリペプチドと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、500%、1000%、5000%、10,000%より高いエキソ特異性指標を有し得る。
【0070】
ある態様においては、AmyE変異体は親配列と同じpH安定性を有してよい。別の態様においては、変異体は、より大きなpH安定性範囲を獲得する又は酵素の最終の商業的目的のための所望な領域へpHをシフトする変異を含む。例えば、ある実施態様においては、変異体は約pH5.0から約pH10.5にてデンプンを分解できる。AmyE変異体ポリペプチドは、同一の条件下にて親ポリペプチドに比較してより長い半減期又はより高い活性(試験に依存)を有してよいし、AmyE変異体は親ポリペプチドと同じ活性を有してよい。また、AmyE変異体ポリペプチドは、同一のpH条件下にてそれらの親ペプチドに比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%又はそれ以上長い半減期を有してよい。あるいは、又はさらに、AmyE変異体は同一のpH条件下にて親ポリペプチドと比較して高い特異的活性を有してよい。
【0071】
別の態様においては、本明細書に記載のAmyE変異体のいずれかをコードする核酸に相補的な核酸を提供する。さらに、相補的核酸にハイブリダイズできる核酸を提供する。別の実施態様においては、本明細書に記載の方法及び組成物に用いる配列は合成配列である。それは特定の宿主生物体の発現のための最適使用コドンをもちいて合成される配列を含むがこれらに限定されない。
【0072】
3. AmyE及びその変異体の生成
本明細書に記載の方法により又は当分野にて知られる任意の代替的方法により生成される酵素変異体をコードするDNA配列は、適切なプロモーター、オペレーター、リボゾーム結合部位、翻訳開始シグナル、及び任意にリプレッサー遺伝子又は多様なアクティベーター遺伝子をコードする制御配列を一般的に含む発現ベクターを用いて、酵素の形態で発現できる。
【0073】
3.1. ベクター
AmyE又はその変異体をコードするDNA配列を保持する組み換え発現ベクターは、便宜的に組み換えDNA手法の施される任意のベクターでよく、ベクターの選択は、しばしば、それが導入される宿主細胞で決まる。つまり、ベクターは自律的に複製するベクターでもよく、即ち、染色体外に存在するベクターでもよく、その複製はプラスミド、バクテリオファージ、又は染色体外因子、小染色体、又は人工染色体のような染色体複製から独立した複製であるものでもよい。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入される場合、宿主細胞染色体に組み込まれ、及び組み込まれてしまった染色体とともに複製されるベクターでもよい。また、組み込まれた遺伝子を抗体の選択又は必須調節遺伝子など他の選択圧により又は必須代謝経路遺伝子の補完により働く増幅可能な構築体の使用により染色体において遺伝子の複数コピーを創製するために増幅できる。
【0074】
一般的に発現ベクターは例えば、選択された宿主生物体におけるベクターの自律複製をさせる要素及び一以上の選別目的のために用いる表現型的検出マーカーのような、クローニングベクターの成分を含む。通常発現ベクターはプロモーター、オペレーター、リボゾーム結合部位、翻訳開始シグナル、及び任意にリプレッサー遺伝子又は一以上のアクティベーター遺伝子をコードする制御ヌクレオチド配列を含む。ある態様においては、用いるすべてのシグナル配列は酵素の容易な回収及び任意的な精製のために物質を細胞培養培地へ移動する。AmyE又はその変異体、プロモーター、ターミネーター、及び他の要素をそれぞれコードするDNA構築体をライゲーションし、複製に必要な情報を含む適切なベクターにそれらを挿入するために用いる方法は当業者によく知られている(例えば、Sambrook他、 MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、 2nd ed., Cold Spring Harbor, 1989及び3rd ed., 2001を参照願いたい)。
【0075】
ベクターおいて、DNA配列は適切なプロモーター配列に作動可能に結合する。プロモーターは選択された宿主細胞での転写活性を示す任意のDNA配列でよく、宿主細胞に相同のまたは異種のいずれかであるタンパク質をコードする遺伝子由来でもよい。AmyE又はその変異体をコードするDNA配列の転写を方向付ける適切なプロモーターの例は、特に細菌の宿主において、バシルス スブチリス(B. subtilis)、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)、バシルス ステアロテルモフィルス(B. stearothermophilus)、又はバシルス アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)由来アルファ‐アミラーゼプロモーターのような、多様なバシルス(Bacillus)由来プロモーターを含み、大腸菌(E. coli)のlacオペロンのプロモーター、ストレプトミセス セリカラー(Streptomyces coelicolor)アガラーゼ遺伝子dagA又はcelAプロモーター、バシルス スブチリス(Bacillus subtilis)xylA及びxylB遺伝子等である。菌類の宿主における転写のために、有用なプロモーターの例は、アスペルギルス オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、リゾムコール ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロティナーゼ、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)中性アルファ‐アミラーゼ、アスペルギルス ニガー(A. niger)酸安定アルファ‐アミラーゼ、アスペルギルス ニガー(A. niger)グルコアミラーゼ、リゾムコール ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、アスペルギルス オリザエ(A. oryzae)アルカリプロテアーゼ、アスペルギルス オリザエ(A. oryzae)トリオースリン酸イソメラーゼ又はアスペルギルス ニドゥラン(A. nidulans)アセタミダーゼをコードする遺伝子由来のプロモーターである。AmyE又はその変異体をコードする遺伝子が大腸菌(E. coli)など細菌種において発現する場合、例えば、T7プロモーター及びファージラムダプロモーターを含むバクテリオファージプロモーターから適切なプロモーターを選択できる。酵母種において発現するために適切なプロモーターの例は、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のGal1及びGal10及びピキア パストリス(Pichia pastoris)AOX1及びAOX2プロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0076】
発現ベクターはまた、適切な転写ターミネーター及び、真核生物において、アルファ‐アミラーゼ変異体をコードするDNA配列に作動可能に結合するポリアデニル化配列を含んでもよい。ターミネーション及びポリアデニル化配列はプロモーターとして同じ供給源から適切に由来してもよい。さらに、ベクターは宿主細胞内でベクターを複製可能とするDNA配列を含んでもよい。そのような配列の例は、プラスミドpUC19、pACYC177、pUB110、pE194、pAMB1、pICatH、及びpIJ702の複製の原型である。
【0077】
また、ベクターは、選択マーカーを含んでもよい。例えば、バシルス スブチリス(B. subtilis)又はバシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)由来dal遺伝子のような、宿主細胞中の欠失を補完する材料を生産する遺伝子、又は例えば、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール又はテトラサイクリン耐性のような抗生物質耐性を与える遺伝子である。さらに、ベクターは、amdS、argB、niaD、及びxxsCのようなアスペルギルス(Aspergillus)選択マーカー、ハイグロマイシン耐性を増加するマーカー、又は当分野に知られる同時形質転換によって行われる選択マーカーを含んでよい。WO 91/17243を参照願いたい。
【0078】
3.2 変異体発現及び宿主生物体
一般的にAmyE又はその変異体が培養培地へ分泌されるならば、宿主細胞において発現する場合有利である。この目的を達成するために、AmyE又はその変異体は発現酵素を培養培地へ分泌させるシグナル配列を含んでよい。所望ならば、このオリジナルシグナル配列を異なるシグナル配列により置換してよく、これは便宜的に個々のシグナル配列をコードするDNA配列の置換により達成される。例えば、AmyEをコードする核酸は図2に示す発現ベクターにおいてバシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)シグナル配列に作動可能に結合する。シグナル配列はすでに詳しく述べている。
【0079】
DNA構築体又は発現ベクターのいずれかを含む単離される細胞は、AmyE又はその変異体の組み換えの生産での宿主細胞として有効に用いられる。宿主染色体にDNA構築体(一以上のコピー)を任意に組み込むことにより、細胞はAmyE又はその変異体をコードするDNA構築体で形質転換される。DNA配列が細胞で安定的に維持される可能性が高い場合、この組み込みは有効であると一般的に考えられる。宿主染色体へのDNA構築体の組み込みは、例えば、相同の又は異種の組み換えによる、従来の方法により行われる。あるいは、細胞は、宿主細胞の異なる型について上述したように発現ベクターで形質転換されてもよい。
【0080】
適切な細菌微生物宿主生物体の例は、バシラス科(Bacillaceae)のようなグラム陽性菌であって、例えば、バシルス スブチリス(B. subtilis)、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)、バシルス レンツス(B. lentus)、バシルス ブレビス(B. brevis)、バシルス ステアロテルモフィルス(B. stearothermophilus)、バシルス アルカロフィリス(B. alkalophilus)、バシルス アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)、バシルス コアグランス(B. coagulans)、バシルス ラウツス(B. lautus)、バシルス メガテリウム(B. megaterium)、及び バシルス ツリンギエンシス(B. thuringiensis)
ストレプトミセス ムリナス(Streptomyces murinus)のようなストレプトミセス属(Streptomyces)、
ラクトコッカス ラクティス(L. lactis)のようなラクトコッカス種(Lactococcus sp.)を含む乳酸菌種
ラクトバシラス ロイテリ(L. reuteri)を含むラクトバシラス種(Lactobacillus sp.)
リューコノストック種(Leuconostoc sp.)
ペディオコッカス種(Pediococcus sp.)、及び
ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)である。さらに他の有用な宿主は、例えば、バシルス種(Bacillus sp.)A7−7である。あるいは、例えば、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)又は大腸菌(E. coli)を含むエンテロバクター科(Enterobacteriaceae)に属するグラム陰性菌を宿主生物体に選択できる。
【0081】
適切な酵母宿主生物体はバイオテクノロジー的に有効な酵母種から選択でき、これらはピキア種(Pichia sp.)ハンゼヌラ種(Hansenula sp.)、クルイベロミセス種(Kluyveromyces sp.)、ヤロウィニア種(Yarrowinia sp.)、サッカロミセス セレビシエ(S. cerevisiae)を含むサッカロミセス種(Saccharomyces sp.)又はシゾサッカロミセス ポムベ(S. pombe)のようなシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)に属する種を含むが、これらに限定されない。メチロトローフ酵母種(ピキア パストリス(Pichia pastoris)を宿主生物体として用いることができる。あるいは、宿主生物体はハンゼヌラ種(Hansenula sp.)でもよい。糸状菌間の適切な宿主生物体は例えば、アスペルギルス ニガー(A. niger)、アスペルギルス オリザエ(A.oryzae)、アスペルギルス ツビゲンシス(A. tubigensis)、アスペルギルス アワモリ(A. awamori)又はアスペルギルス ニドゥラン(A. nidulans)のようなアスペルギルス(Aspergillus)の種を含む。あるいは、例えば、フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)のようなフザリウム種(Fusarium sp.)の菌株、リゾムコール ミエヘイ(R. miehei)などリゾムコール種(Rhizomucor sp.)を宿主生物体として用いてよい。他の適切な酵母はトリコデルマ種(Trichoderma sp.)及びムコール種(Mucor sp.)を含む。菌細胞はプロトプラスト形成及びプロトプラストの形質転換とそれに続く細胞壁の再生を含む公知のプロセスにより形質転換してよい。アスペルギルス(Aspergillus)宿主細胞の形質転換にかかる適切な方法は、例えば、EP238023に記載されている。
【0082】
さらなる実施態様においては、本明細書に記載のアルファ‐アミラーゼAmyE又はその変異体を生成する方法は、変異体の生成をもたらす条件下、上述のように、宿主細胞を培養すること及び細胞及び/又は培養培地から変異体を回収する方法を含んでいる。細胞を培養のために用いる培地は、AmyE又はその変異体の発現が得られ、本発明の宿主細胞の成長に適した任意の従来の培地でよい。適切な培地及び培地成分は業者から入手可能であり、又は刊行物に記載された手順、例えば、アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection(ATCC)のカタログの記載の手順に従って調製してよい。培養培地の例としては3000Lに撹拌タンク発酵装置で実施する流加培養用のものを含むが、これに限定されない。その場合、培養培地はナトリウム、カリウム、リン酸、マグネシウム、及び硫酸、並びに微量元素の供給源としての無機塩とともに、有機化合物の供給源としてトウモロコシ浸漬固形物及び大豆粉から構成できる。一般的に、グルコースなど炭水化物供給源も初期培地の一部である。一度培養がそれ自体確立し培養が開始すると、炭水化物が、測定後タンクへ入り当技術分野で周知なように培養を維持する。サンプルを規定の間隔にて発酵装置から採取し、例えば、比色分析法を用いて酵素力価を測定する。測定に従って酵素生成速度の増加が止まった時、発酵方法を停止する。
【0083】
宿主細胞から分泌されるAmyE又はその変異体は周知の方法により、培養培地から便利に回収されてよく、遠心分離又はろ過によって培地から細胞を分離すること、及び硫酸アンモニウムのような塩を用いて培地のタンパク質成分を沈殿させ、引き続き、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー等のようなクロマトグラフィーの方法を用いて分離することを含む。
【0084】
宿主細胞は、AmyE又はその変異体を発現させる適切な条件下にて培養してよい。タンパク質の発現は、酵素が連続的に生産されるように、又は発現開始のため刺激を誘導するように構成してもよい。誘導発現の場合、タンパク質の生産は、例えば、必要により、デキサメタゾン又はIPTG又はセファロースのような誘導物質が、培養培地へ添加されることによって開始される。また、ポリペプチドを、TnT(商標)(プロメガ(Promega))ウサギ網赤血球システムのようなインビトロ、無細胞システムで組み換え的に生産できる。
【0085】
AmyE又はその変異体を発現する宿主は好気状態の下、宿主に適切な培地で培養することができる。振盪又は攪拌と給気の組み合わせは、例えば、宿主の必要とする条件及び所望のアルファ‐アミラーゼ変異体の生成に応じて約30℃から約75℃のような宿主に適切な温度で生成が得られるように提供することができる。培養は、約12から約100時間(及びそれらの間任意の時間)またはそれ以上好ましくは、24から72時間行うことができる。典型的に、培養培地は、AmyE又はその変異体の生成に関与する宿主の必要とする培養条件に応じて、pH約5.5から約8.0とする。
【0086】
発現酵素のデンプン分解活性を例えば、基質としてジャガイモデンプンを用いて測定してよい。この方法は酵素による修飾ジャガイモデンプンの分解に基づき、反応後、デンプン/酵素溶液のサンプルをヨウ素溶液と混合する。最初、黒い青色が形成されるが、デンプンの分解の間に青色が次第に弱くなり徐々に赤茶色にかわる。これを色ガラススタンダードと比較する。
【0087】
4. AmyE及びその変異体の精製
精製AmyE又はその変異体を調製するために従来の方法を用いてよい。発酵後、発酵培地を得て、原発酵材料残渣を含む微生物細胞及び種々の懸濁した固体物は、アミラーゼ溶液を得るために従来の分離方法によって除かれる。ろ過、遠心分離、マイクロろ過、回転式ドラム真空ろ過、引き続き、限外ろ過、抽出、又はクロマトグラフィー等、一般的に用いられる。
【0088】
回収の最適化を図るために発現されたAmyEまたはその変異体を含む溶液を濃縮することが望ましい。非濃縮溶液を使用すると、精製酵素を含む沈殿物を回収するためにインキュベーション時間の増加が必要となるからである。所望の酵素レベルが得られるまで、溶液を従来の方法を用いて濃縮する。酵素含有溶液の濃縮は本明細書に記載される任意の方法により行うことができる。ある実施態様においては、回転式真空ろ過及び/又は限外ろ過を用いる。あるいは、限外ろ過を用いてよい。
【0089】
精製の目的において「沈殿剤」は、溶液からAmyE又はその変異体を沈殿するのに効果的な化合物を意味し、沈殿の性質であれば何であってもよい。つまり、結晶、非結晶、又はこれらの両者の混合のいずれでもよい。沈殿は例えば、金属ハロゲン沈殿剤を用いて行われる。金属ハロゲン沈殿剤はアルカリ金属塩化物、アルカリ金属臭化物、及び二以上のこれらの金属ハロゲン化物の混合を含む。金属ハロゲン化物は塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、及び二以上のこれらの金属ハロゲン化物の混合からなる群から選択できる。適切な金属ハロゲン化物は、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを含み、特に、保存剤としてさらに用いることができる塩化ナトリウムを含む。インキュベーション時間、pH、温度、及びAmyE又はその変異体の濃度を含む最大量の回収のための沈殿条件の選択は、通常の試験後、当業者にとって容易に明らかである。
【0090】
一般的に金属ハロゲン化物の少なくとも約5%w/v(重量/体積)から約25%w/v、通常少なくとも8%w/vが濃縮酵素変異体溶液に添加される。一般的に、約25%w/v以下、普通約20%w/v以下の金属ハロゲン化物が濃縮酵素変異体溶液に添加される。金属ハロゲン沈殿剤の最適濃度は特に、とくに、特定のAmyE又はその変異体の性質及び溶液中のその濃度によって決まる。
【0091】
酵素の沈殿を行うもう一つの方法は濃縮酵素変異体溶液に添加できる有機化合物を用いることである。有機化合物沈殿剤は4‐ヒドロキシ安息香酸、4‐ヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩、4‐ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、及び二以上のこれらの有機化合物の混合を含み得る。前記有機化合物沈殿剤の添加は、金属ハロゲン沈殿剤の添加の前に、同時に、又は続いて行うことが可能であり、及び有機化合物及び金属ハロゲン化物の両者の沈殿剤の添加は、連続、又は同時に行われてもよい。さらなる記載は、例えば、Danisco A/Sの米国特許第5、281、526を参照願いたい。
【0092】
一般的に、有機沈殿剤は、ナトリウム又はカリウム塩のような4‐ヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩、及び4‐ヒドロキシ安息香酸の直鎖、分岐鎖のようなアルキルエステルであって、ここでアルキル基は1から12の炭素原子を含み、二以上のこれらの有機化合物の混合からなる群から選択される。有機化合物沈殿剤は、例えば、4‐ヒドロキシ安息香酸の直鎖又は分岐鎖アルキルエステルであり、ここでアルキル基は1から10炭素原子を含み、及び二以上のこれらの有機化合物の混合でもよい。適切な有機化合物沈殿剤は、4‐ヒドロキシ安息香酸の直鎖アルキルエステルであり、ここでアルキル基は1から6炭素原子を含み、及び二以上のこれらの有機化合物の混合でもよい。4‐ヒドロキシ安息香酸のメチルエステル、4‐ヒドロキシ安息香酸のプロピルエステル、4‐ヒドロキシ安息香酸のブチルエステル、4‐ヒドロキシ安息香酸のエチルエステル、及び二以上のこれらの有機化合物の混合もまた用いることができる。またさらなる有機化合物は4‐ヒドロキシ安息香酸のメチルエステル(メチルパラベン(methylPARABEN)、4‐ヒドロキシ安息香酸のプロピルエステル(プロピルパラベン(propylPARABEN)を含むがこれらに限定されない。この両者はアミラーゼ保存剤でもある。そのような有機化合物沈殿剤の添加によって、pH、温度、酵素の濃縮、沈殿剤の濃度、及びインキュベーション時間に関する沈殿条件に対して高い柔軟性という有益性をもたらす。一般的に少なくとも約0.01%w/v、通常少なくとも約0.02%w/vの有機化合物沈殿剤が濃縮酵素変異体溶液に加えられる。一般的に、約0.3%w/v以下の有機化合物沈殿剤が濃縮酵素変異体溶液に加えられる。通常は約0.2%w/v以下である。
【0093】
濃縮酵素溶液は、金属ハロゲン沈殿剤及びある態様において、有機化合物沈殿剤を含有し、精製すべき酵素変異体に応じて、そのpHが調整される。一般的にpHはアミラーゼの等電点(pI)に近いレベルに調整する。例えば、pHは、等電点(pI)の下は約2.5pH単位から等電点の上は約2.5pH単位までの範囲のpHに調整する。変異体のpIが野生型のpIと異なる場合、それに応じてpHを調整する。
【0094】
精製酵素沈殿を得るために必要なインキュベーション時間は、特定の酵素の性質、酵素濃度、及び特定の沈殿剤とその濃度によって決まる。一般的に酵素変異体を沈殿するのに効果的な時間は約1時間から約30時間の間である。通常、約25時間を超えない。有機化合物沈殿剤存在下では、インキュベーション時間は、約10時間以下に減少することができ、多くの場合は約6時間にまで減少することができる。
【0095】
一般的に、インキュベーション間の温度は約4℃から約50℃の間である。通常、この方法は、約10℃から約45℃までの温度、特に、約20℃から約40℃までの温度で行う。沈殿を誘発する最適温度は溶液条件及び用いた酵素又は沈殿剤に応じて変化する。
【0096】
精製酵素沈殿の全般的な回収、及び実施過程での効率は酵素、添加金属ハロゲン化物及び添加有機化合物含有溶液を攪拌することによって改善される。攪拌段階は金属ハロゲン化物と有機化合物の添加の間及びその後のインキュベーションの間に行われる。適切な攪拌方法は機械的な攪拌若しくは振盪、激しい給気、又は任意の同様な方法を含む。
【0097】
精製酵素を、ろ過、遠心分離、マイクロろ過、回転式ドラム真空ろ過、限外ろ過、加圧ろ過、クロスメンブラン(cross membrane)マイクロろ過、クロスフローメンブラン(cross flow membrane)マイクロろ過等のような、従来の分離方法によりさらに精製する。クロスメンブランマイクロろ過は用い得る方法のひとつである。さらに、精製酵素沈殿物の精製は水で沈殿物を洗浄することで得られる。例えば、精製酵素沈殿物は金属ハロゲン沈殿剤を含有する水、例えば、金属ハロゲン及び有機化合物沈殿剤を含有する水で洗浄してよい。
【0098】
培養の間、発現酵素を培養培地中に蓄積する。発現酵素の単離及び精製のために、培養培地は細胞を除くために、遠心分離又はろ過され、得られた細胞のない溶液は酵素精製のために用い得る。ある実施態様おいては、細胞のない培養液で約70%飽和硫酸アンモニウムを用いる塩析を行う。それから、70%飽和沈殿分画を緩衝液に溶解し、セファデックス(Sephadex)G−100カラムのようなカラムにて処理し、酵素活性分画を回収するために溶出する。さらに精製するために、イオン交換クロマトグラフィーのような従来の方法を用いてよい。
【0099】
精製酵素は酵素が一般的に利用されるすべての適用に有用である。例えば、洗濯洗剤及び染み取り剤中に用いられ、食品業界では、デンプン処理及びパンの焼成に、また薬品組成物中に消化剤として用いられる。それらは、液体(液状、スラリー)又は固体(粒状、粉状)のいずれかの形で最終製品に用いられてよい。
【0100】
あるいは、酵素生成物を回収でき、更なる酵素の精製をせずにろ過又は遠心分離によって細胞又は細胞くずを除くために凝集剤を培地に添加する。
【0101】
上述の方法により生成及び精製されたAmyE及びその変異体を有用な産業的適用に用いてよい。酵素は繊維及び家庭用ケア(F&HC)に関連する利用を促進する価値ある特性を有する。例えば、AmyE又はその変異体を洗浄、食器洗浄、及び硬い表面のクリーニング洗剤組成物中の成分として用いることができる。AmyE又はその変異体は、デンプンからの甘味料及びエタノールの生産において、及び/又は織物の湯通しにも有用である。AmyE及びその変異体は特にデンプン転換プロセスであって、例えば、WO 2005/111203及びU.S. Published Application No. 2006/0014265 (Danisco A/S)に記載のように、デンプン液化及び/又は糖化プロセスに有用である。AmyE及びその変異体のこれらの使用は下記に詳しく述べる。
【0102】
5. AmyE及びその変異体の組成物及び使用
5.1. デンプンプロセス組成物及び使用
ある態様においては、AmyE又はその変異体はデンプン液化及び/又は糖化に用いてよい。プロセスはゼラチン化又は粒状デンプンのスラリーの加水分解、特に粒状デンプンの初期のゼラチン化温度未満の温度で粒状デンプンを可溶性デンプン加水分解物へ加水分解することを含んでよい。デンプンプロセスは甘味料を生産する、燃料用又は飲料用(即ち、飲料用アルコール)アルコールの生産、飲料水の生産、サトウキビの処理、又は所望の有機化合物、例えば、クエン酸、イタコン酸、乳酸、グルコン酸、ケトン、アミノ酸、抗体、酵素、ビタミン、及びホルモンの生産に有用である。デンプンのフルクトースシロップへの転換は通常三つの連続的な酵素的プロセス、液化プロセス、糖化プロセス、及び異性化プロセスからなる。
【0103】
本明細書にて用いる用語「液化(Liquefaction)」又は「液化する(liquefy)」は、デンプンがより短い鎖及びより低い粘性のデキストリンに転換するプロセスを意味する。一般的に、このプロセスはAmyE又はその変異体を同時に又はその後に添加して行なうデンプンのゼラチン化を含む。本明細書にて用いる用語「第一液化(primary liquefaction)」はスラリーの温度がそのゼラチン化温度又はそれに近い温度に上昇した場合に生ずる液化の段階をいう。温度上昇に引き続き、スラリーは熱交換器又はジェットを通して送られ、約90℃から約150℃、例えば100‐110℃の温度となる。熱交換器又はジェットの温度にさらされた後、スラリーを3‐10分間その温度で維持する。スラリーを90℃―150℃に維持するこの段階を第一液化という。
【0104】
本明細書にて用いる用語「第二液化(secondary liquefaction)」は第一液化(90℃から150℃に加熱)に引き続く液化段階をいい、このときスラリーは室温に冷やされる。この冷却段階は、30分から180分であってよく、例えば90分から120分である。本明細書にて用いる用語「第二液化の時間(minutes of secondary liquefaction)」は第二液化の開始からデキストロース当量(DE)が測定される時間までの経過時間をいう。
【0105】
液化プロセス後、デキストリンはグルコアミラーゼ(例、AMG(商標))及び任意に、イソアミラーゼ又はプルラナーゼ(例、Promozyme(商標))のような脱分岐酵素の添加によりデキストロースへ転換する。この段階の前に、pHは約4.5未満の値に下げられ、95℃以上の温度に維持され、液化アルファ‐アミラーゼ変異体の活性は変性される。それから、温度を60℃に下げ、グルコアミラーゼ及び脱分岐酵素を加える。一般的に糖化プロセスは約24時間から約72時間で行う。
【0106】
AmyE及びその変異体の利点はマルトース、マルトトリオース、及びマルトヘプタオースなど、複合糖類の分解を触媒できるAmyEの能力である。この理由により、反応は任意にグルコアミラーゼを用いずに、AmyE又はその変異体の単独により触媒されることができる。AmyE又はその変異体の更なる利点は、グルコアミラーゼに最適な同じ反応条件下にて、AmyE又はその変異体の一以上の作用により、デキストリンがデキストロースへ転換され得ることである。AmyE及びその変異体のこの有利な特性は同時係属出願代理人番号48452-0019-P1-USに開示され、参照によりその全体を本明細書に取り込まれる。AmyE及びその変異体はグルコアミラーゼと同じpH及び温度にて操作するので、AmyE及びその変異体をグルコアミラーゼとともに追加触媒の前又は後に添加してよく、またはAmyE又はその変異体及びグルコアミラーゼのカクテルにより添加してよい。即ち、グルコアミラーゼの使用を提供するために反応のpH及び温度を調整により余儀なくさせる遅れを回避できる。
【0107】
グルコアミラーゼを添加するときは、これは好ましくは、0.5グルコアミラーゼ活性単位(AGU)/g DS(即ち、乾燥固体1グラム当りのグルコアミラーゼ活性単位)以下又は未満の量で存在する。グルコアミラーゼは0.02‐2.0AGU/g DS又は0.1‐1.0AGU/g DS、例えば、0.2AGU/g DSの量で加えてよい。グルコアミラーゼは微生物又は植物由来である。例えば、グルコアミラーゼは、菌類又は細菌由来である。細菌のグルコアミラーゼの例は、アスペルギルス(Aspergillus)グルコアミラーゼであり、特に、アスペルギルス ニガー(A. niger)G1又はG2グルコアミラーゼ(Boel 他、(1984)、EMBO J. 3(5): 1097-1102)又はWO 92/00381及びWO 00/04136に記載のようなその変異体、アスペルギルス アワモリ(A. awamori)グルコアミラーゼ(WO84/02921)、アスペルギルス オリザエ(A. oryzae)グルコアミラーゼ(Agric. Biol. Chem., (1991) 55(4): 941-949)、又はその変異体又はフラグメントである。ある実施態様においては、また、プロセスは、WO98/22613に記載のタイプの炭水化物‐結合領域の使用を含む。他の考えられるアスペルギルス(Aspergillus)グルコアミラーゼ変異体は熱安定性を増強する変異体を含み、これらの変異体の例は、
G137A及びG139A(Chen他、(1996) Prot. Eng. 9: 499-505)、
D257E及びD293E/Q (Chen他、 (1995)Prot. Eng. 8: 575-582)、
N182(Chen他、 (1994) Biochem. J. 301: 275-281)、
ジスルフィド結合、A246C(Fierobe他、 (1996)Biochemistry, 35: 8698-8704)及び
A435及びS436位へのPro残基の導入(Li他、 (1997)Protein Eng. 10: 1199-1204)である。他の考えられるグルコアミラーゼはタラロミセス(Talaromyces)グルコアミラーゼ、特に、
タラロミセス エマーソニー(Talaromyces emersonii)(WO 99/28448)、
タラロミセス レイセタヌス(Talaromyces leycettanus) (U.S. Patent No. RE 32,153)、
タラロミセス デュポンチ(Talaromyces duponti)、又は
タラロミセス サーモフィリス(Talaromyces thermophilus)(U.S. Patent No. 4,587,215)
由来のものである。考えられる細菌由来グルコアミラーゼはクロストリジウム(Clostridium)属由来のグルコアミラーゼであり、特に、
クロストリジウム サーモアミロリティカム(C. thermoamylolyticum)(EP 135138)及び
クロストリジウム サーモヒドロスルフリカム(C. thermohydrosulfuricum)(WO 86/01831)
である。適切なグルコアミラーゼはアスペルギルス オリザエ(Aspergillus oryzae)由来グルコアミラーゼを含み、WO 00/04136中配列番号2に示されるアミノ酸配列と50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%の相同性を有するグルコアミラーゼなどである。また、適切なグルコアミラーゼは、AMG 200L、AMG 300L、SAN(商標)SUPER及びAMG(商標)E(Novozymes)、OPTIDEX(商標)300(Genencor Division, Danisco US Inc.製)、 AMIGASE(商標)及びAMIGASE(商標)PLUS (DSM製)、G‐ZYME(商標)G900(Enzyme Bio‐Systems製)、G‐ZYME(商標)G990 ZR(アスペルギルス ニガー(A. niger)グルコアミラーゼ及び低プロテアーゼ含有量)など、商業的に入手可能なグルコアミラーゼである。
【0108】
AmyE又はその変異体は、単独で用いてよく、又は活性の広いスペクトルをもつ「カクテル」を提供するために他のAmyE変異体、他のアルファ‐又はベータ‐アミラーゼ、又は他の酵素と組み合わせて用いてよい。例えば、デンプンを菌類のアルファ‐アミラーゼ(EC 3.2.1.1)、細菌類のアルファ‐アミラーゼ、例えば、バシルス(Bacillus)アルファ‐アミラーゼ又は非バシルス(Bacillus)アルファ‐アミラーゼ、ベータ‐アミラーゼ(EC 3.2.1.2)、及び/又はグルコアミラーゼ (EC 3.2.1.3)からなる群から選択される酵素一以上と接触させてよい。さらなる実施態様においては、イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68)又はプルラナーゼ(EC 3.2.1.41)のような別のデンプン分解酵素又は脱分岐酵素をAmyE又はその変異体に添加してよい。イソアミラーゼはアミロペクチン及びβ‐限界デキストリン中のα‐1,6‐D‐グルコシド分岐結合を加水分解する。また、イソアミラーゼがプルランを攻撃できない点及びα‐限界デキストリンに対する作用が限られている点がプルラナーゼと異なる。脱分岐酵素は当業者が周知の効果的な量で加えてよい。
【0109】
ベータ‐アミラーゼはエキソ作用を有するマルトジェニックアミラーゼ(maltogenic amylases)であり、アミロース、アミロペクチン、及び関連するグルコースポリマー中の1,4‐α‐グルコシド結合の加水分解し、それにより、マルトースを放出するプロセスを触媒する。ベータ‐アミラーゼは種々の植物及び微生物(Fogarty他、 PROGRESS IN INDUSTRIAL MICROBIOLOGY, vol. 15, pp. 112-115, 1979)から単離されてきた。これらのベータ‐アミラーゼは40℃から65℃の範囲の最適温度及び約4.5から約7.0の範囲の最適pHを有することで特徴付けられる。考えられるベータ‐アミラーゼはオオムギ由来のベータ‐アミラーゼ、Spezyme(商標)BBA 1500、Spezyme(商標)DBA、Optimalt(商標)ME、Optimal(商標)BBA(Danisco A/S)及びNovozym(商標)WBA(Novozymes A/S)を含むがこれらに限定されない。
【0110】
糖化プロセス後、デキストロースシロップを例えば固定化グルコース イソメラーゼ(Sweetzyme(商標)など)を用いて高いフルクトースシロップへ転換してよい。ある場合、プロセスの可溶性デンプン加水分解物を高フルクトーストウモロコシシロップ(HFCS)のような高フルクトースデンプンベースシロップ(HFSS)へ転換させる。この転換はグルコース イソメラーゼを用いて実施でき、特に、固体支持体に坦持されるグルコース イソメラーゼにより実施される。考えられるイソメラーゼは市販用製品Sweetzyme(商標)IT(Novozymes A/S)、G‐zyme(商標)IMGI及びG‐zyme(商標)G993, Ketomax(商標)G‐zyme(商標)G993、G‐zyme(商標)G993 liquid、GenSweet(商標)IGIを含む。
【0111】
典型的に、1mM Ca2+以上の添加がアルファ‐アミラーゼの適度の安定性を確実に維持するために必要であるが、遊離Ca2+はグルコース イソメラーゼの活性を強く阻害する。即ち、典型的に、Ca2+は、異性化の前に3‐5ppm未満の遊離Ca2+レベルに低減する範囲になるまで、高価な単位操作手段で除去する必要がある。もし、そのような操作が避けられるならば、節約ができる。
【0112】
AmyE又はその変異体は、有利なことに、安定性のために添加されるCa2+がほとんど必要ないか必要ない。この理由により、液化及び/又は糖化反応に加えるCa2+を低減又は完全に除去できる。つまり、反応混合物をグルコース イソメラーゼと接触する前にイオン交換によるCa2+の除去が回避でき、時間及びコストを節約でき、高フルクトースシロップを生産するプロセスの効率性が上がる。
【0113】
処理されるデンプンは特に塊茎、根、茎、鞘、穀物又は未精白の穀物から得られる。より具体的には、粒状デンプンはトウモロコシ、トウモロコシの穂軸、小麦、大麦、ライ麦、ミロ、サゴ、カッサバ、タピオカ、ソルガム、米、エンドウ豆、豆、バナナ、又はジャガイモから得られる。特に、トウモロコシ及び大麦のろう様又は非ろう様タイプ両方を含む。デンプンは高度に精製されるデンプン品質でよく、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99.5%の純度である。あるいは、デンプンは、麦芽残留及び繊維のような非デンプン分画を有する粉砕全粒穀物を含む材料を含有する未精製デンプンでよい。全粒穀物のような生原料の構造を破壊し、さらに処理するために、これを粉砕する。
【0114】
二つの適切な粉砕プロセスは湿式及び乾式粉砕である。乾式粉砕において、実全体を粉砕し用いる。湿式粉砕は胚芽と粉末(デンプン粒子及びタンパク質)のよい分離をもたらし、通常、シロップの生産に用いられる。乾式及び湿式粉砕両方ともデンプン処理の周知の技術であり、開示される組成物及び方法に用いるために考えられる。プロセスは限外ろ過システムで行われ、同システムにおいて、未透過の残留物(retentate)は、酵素、生デンプン及び水の存在下再循環条件で維持され、透過物は可溶性デンプン加水分解物である。別の方法は、未透過の残留物(retentate)が酵素、生デンプン及び水の存在下再循環条件で維持され、透過物が可溶性デンプン加水分解物である限外ろ過膜を有する連続的膜反応器を導入するプロセスである。また、未透過の残留物(retentate)が酵素、生デンプン及び水の存在下再循環条件で維持され、透過物が可溶性で加水分解物であるマイクロろ過膜を有する連続的膜反応器を導入するプロセスも考えられる。
【0115】
乾式粉砕穀物はデンプンに加えて、大量の非デンプン炭水化物化合物を含む。そのような異種の材料がジェットクッキングにより処理される場合、しばしば一部のデンプンゼラチン化のみしか行われない。従って、非ゼラチン化デンプンへの高い活性を有するAmyE又はその変異体は、乾式粉砕デンプンをジェットクッキング処理する液化及び/又は糖化を含むプロセスに積極的に適用してよい。
【0116】
任意の上記態様に用いるデンプンスラリーは約20%から約55%乾燥固体粒状デンプン、約25%から約40%乾燥固体粒状デンプン、又は約30%から約35%乾燥固体粒状デンプンを有してよい。酵素変異体は可溶性デンプンを少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の量の粒状デンプンの可溶性デンプン加水分解物へ転換する。
【0117】
別の実施態様においては、AmyE又はその変異体を、例えばエタノールなどの発酵産物を生産するための発酵に用いる。発酵によりデンプン含有材料からエタノールを生産するためのそのようなプロセスは
i)AmyE又はその変異体とデンプン含有材料を液化させる、
ii)得られる液化マッシュを糖化させる、及び
iii)発酵生物存在下(ii)段階で得られる材料を発酵する
ことを含む。さらに、プロセスは任意にエタノールを回収することを含む。発酵の間、エタノール含有量は少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、又は少なくとも約16%のエタノールに達する。
【0118】
糖化及び発酵プロセスは同時糖化発酵(SSF)プロセスとして行ってよい。発酵を加水分解と同時に行う場合、温度は30℃と35℃の間、特に、31℃と34℃の間である。プロセスは未透過の残留物(retentate)が酵素、生デンプン、酵母、酵母の栄養成分及び水の存在下再循環条件で維持され、透過物がエタノールを含む液体である限外ろ過システムを導入してよい。また、未透過の残留物(retentate)が酵素、生デンプン、酵母、酵母の栄養成分及び水の存在下再循環条件で維持され、透過物がエタノール含有液体である限外ろ過膜を有する連続的膜反応器を導入するプロセスも考えられる。
【0119】
また、プロセスの可溶性デンプン加水分解物は、クエン酸、グルタミン酸1ナトリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸カリウム、グルコノデルタラクトン、又はエリソルビン酸ナトリウムのような発酵産物へ処理デンプンを発酵することを含む発酵産物の生産のために用いてよい。
【0120】
5.2. 洗浄及び食器洗浄組成物及び使用
例えば、本明細書に記載のAmyE又はその変異体は、食器を洗浄する際に使用するための洗剤組成物又は他の洗浄組成物中に製剤設計されてよい。これらはゲル、粉、又は液体でよい。組成物はアルファ‐アミラーゼ変異体単独、他のデンプン分解酵素、他の洗浄酵素、及び他の洗浄組成物に共通する成分を含んでよい。
【0121】
つまり、食器洗浄洗剤組成物は界面活性剤を含んでよい。界面活性剤は陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性の又はこれらのタイプの混合でもよい。洗剤は、低い泡立ちから泡立ちがないようなエトキシ化プロポキシレート直鎖アルコールのような非イオン性界面活性剤の0wt.%から約90wt.%を含んでよい。
【0122】
洗剤適用において、AmyE又はその変異体は通常プロピレングリコール含有液体組成物に用いられる。例えば、AmyE又はその変異体は、10%塩化カルシウム含有プロピレングリコール溶液を25%体積/体積で混合することによりプロピレングリコール中で安定化させ得る。
【0123】
食器洗浄洗剤組成物は、無機及び/又は有機タイプの洗剤ビルダー塩を含んでよい。洗剤ビルダーは、リン酸を含む及びリン酸を含まないタイプに細分化される。洗剤組成物は通常約1%から約90%の洗剤ビルダーを含む。リン酸を含む無機アルカリ性洗剤ビルダーは、本発明の場合、水溶性塩、特に、アルカリ金属ピロリン酸塩、オルトリン酸塩、及びポリリン酸塩を含む。リン酸を含む有機アルカリ性洗剤ビルダーは、本発明の場合、ホスホン酸塩の水溶性塩である。リン酸を含まない無機ビルダーは、本発明の場合、水溶性アルカリ金属炭酸塩、ホウ酸、及びケイ酸塩、並びに非水溶性結晶又はアモルファスアルミノシリケートの多様なタイプを含み、ゼオライトが最もよく知られている。
【0124】
適切な有機ビルダーの例は、アルカリ金属、アンモニウムや置換アンモニウム、クエン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、脂肪酸スルホン酸塩、カルボキシメトキシコハク酸塩、アンモニウムポリアセテート、カルボン酸塩、ポリカルボン酸塩、アミノポリカルボン酸塩、ポリアセチルカルボン酸塩、及びポリヒドロキシスルホン酸塩を含む。
【0125】
他の適切な有機ビルダーは、ビルダーの特性を有している周知の高分子量ポリマーとコポリマー、例えば、適切なポリアクリル酸、ポリマレイン酸、及びポリアクリル/ポリマレイン酸コポリマー及びそれらの塩を含む。
【0126】
洗浄組成物は塩素/ホウ素タイプ又は酸素タイプの漂白剤を含んでもよい。無機塩素/ホウ素タイプ漂白剤の例は、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸ナトリウム、又は次亜塩素酸カルシウム、及び次亜臭素酸塩、並びに塩化リン酸三ナトリウムもある。有機塩素/ホウ素タイプ漂白剤の例は、トリクロロイソシアヌル酸、トリブロモイソシアヌル酸、ジブロモイソシアヌル酸、及びジクロロイソシアヌル酸、及びカリウム及びナトリウムのような水溶性陽イオンを伴うそれらの塩のような複素環N‐ブロモ‐及びN‐クロロ‐イミド類である。ヒダントイン化合物もまた有用である。
【0127】
洗浄組成物は酸素漂白剤を含み、例えば、無機過酸塩の形態、任意に漂白前駆体又は過酸化合物としての形態である。一般的な、適切な過酸漂白化合物の例は、アルカリ金属過ホウ酸塩、四水和物及び一水和物の両方、アルカリ金属過炭酸塩、過ケイ酸塩、及び過リン酸塩である。典型的な活性剤はテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)及びグリセロールトリアセテートである。また、酵素漂白活性化システムは、例えば、WO2005/056783に記載のように、過ホウ酸塩、過炭酸塩、グリセロールトリアセテート、及びペルヒドロラーゼなどである。
【0128】
洗浄組成物は、酵素用の従来の安定化剤を用いて安定化してよく、例えば、プロピレングリコールのようなポリオール、糖、糖アルコール、乳酸、ホウ酸又はホウ酸誘導体(例えば、芳香族ホウ酸エステル)である。また、洗浄組成物は他の従来の洗剤成分を含んでもよく、例えば、解膠剤、賦形剤、泡抑制剤、抗腐食剤、泥懸濁剤、金属イオン封鎖剤、抗泥再堆積剤、脱水剤、染料、抗菌剤、蛍光剤、増粘剤、及び香料を含んでよい。
【0129】
最後に、AmyE又はその変異体が、本明細書に列挙した特許及び公開された出願に開示された任意のアルファ‐アミラーゼのかわりに、又は、に加えて用いることを考慮すると、AmyE又はその変異体を従来の食器洗浄洗剤、例えば、次の特許公報に記載の任意の洗剤に用いてよい。それは、CA 2006687、GB 2200132、GB 2234980、GB 2228945、DE 3741617、DE 3727911、DE 4212166、DE 4137470、DE 3833047、DE 4205071、WO 93/25651、WO 93/18129、WO 93/04153、WO 92/06157、WO 92/08777、 WO 93/21299、WO 93/17089、WO 93/03129、EP 481547、EP 530870、EP 533239、EP 554943、EP 429124、EP 346137、EP 561452、EP 318204、EP 318279、EP 271155、EP 271156、EP 346136、EP 518719、EP 518720、EP 518721、EP 516553、EP 561446、EP 516554、EP 516555、EP 530635、EP 414197、及び米国特許第5,112,518、5,141,664、及び5,240,632である。
【0130】
5.3. 洗濯洗浄組成物及び使用
実施態様によれば、AmyE又はその変異体の一以上を洗剤組成物の成分としてよい。そのような場合、非粉塵化(dusting)粒質物、安定化した液体、又は保護された酵素の形態での洗浄組成物を含んでもよい。非粉塵化(dusting)粒質物は例えば米国特許第4,106,991、及び4,661,452に記載されるように生産されてよく、任意的に周知の方法で表面を覆ってもよい。ワックスのコーティング原料の例は、ポリ(エチレンオキシド)産物、平均分子量1、000から20、000である(ポリエチレングリコール、PEG)、16から50のエチレンオキシドの単位を有するエトキシ化ノニルフェノール、12から20炭素原子を含むアルコール及び15から80のエチレンオキシド単位が存在するエトキシ化脂肪アルコール、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸のモノ‐、ジ‐、トリグリセリドである。流動層技術による適用に有用なフィルムコーティング材料の例は、例えばGB特許第1483591に記載される。例えば、液体酵素の調製物は、確立した方法に従って、プロピレングリコールのようなポリオール、糖又は糖アルコール、乳酸又はホウ酸を添加することにより安定化される。他の酵素の安定化剤は周知の技術である。被保護酵素を例えば、US 5,879,920(Danisco A/S)又はEP 238216に記載される方法に従って調製してよい。ポリオールはタンパク質の安定化剤としても、タンパク質溶解性の改善としても長い間認められている。例えば、 Kaushik他、J. Biol. Chem. 278: 26458−65 (2003)及び そこに引用されている文献Monica Conti他、J.Chromatography 757: 237−245 (1997)を参照願いたい。
【0131】
洗剤組成物は例えば、ゲル、粉体、粒体、ペースト、又は液体として、いずれかの有用な形態でよい。一般的に、液体洗剤は、約70%までの水及び0%から約30%の有機溶剤を含有する液体でよい。また、約30%の水のみを含むコンパクトゲルタイプの形態における洗剤組成物でもよい。
【0132】
洗剤組成物はそれぞれ陰イオン、非イオン、陽イオン、又は両性イオンである界面活性剤の一以上を含む。洗剤は、通常、リニアアルキルベンゼンスルホン酸塩(linear alkylbenzenesulfonate)、アルファ‐オレフィンスルホン酸塩(α‐olefinsulfonate)、アルキル硫酸塩(alkyl sulfate)((脂肪アルコール硫酸塩(fatty alcohol sulfate))(AS)、アルコール エトキシ硫酸塩(alcohol ethoxysulfate)(AEOS又はAES)第二級アルカンスルホネート(secondary alkanesulfonates)(SAS)、アルファ‐スルホ脂肪酸メチルエステル(α‐sulfo fatty acid methyl esters)、アルキル‐又はアルケニルコハク酸(alkyl‐ or alkenylsuccinic acid)又は石鹸のような0%から約50%の陰イオン界面活性剤を含む。また、組成物は、例えばWO 92/06154に記載されるように、アルコール エトキシレート(alcohol ethoxylate)(AEO又はAE)、カルボキシル化アルコール エトキシレート(carboxylated alcohol ethoxylates)、ノニルフェノール エトキシレート(nonylphenol ethoxylate)、アルキルポリグリコシド(alkylpolyglycoside)、アルキルジメチルアミンオキシド(alkyldimethylamineoxide)、エトキシ化脂肪酸モノエタノールアミド(ethoxylated fatty acid monoethanolamide)、脂肪酸モノエタノールアミド(fatty acid monoethanolamide)、又はポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド(polyhydroxy alkyl fatty acid amide)のような0%から約40%の非イオン界面活性剤を含んでもよい。
【0133】
さらに、洗剤組成物は、リパーゼ、クチナーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ペルオキシダーゼ、及び/又は任意の組み合わせのラッカーゼのような一以上の酵素を含んでもよい。
【0134】
洗剤は、約1%から約65%の洗剤ビルダー又は錯化剤を含んでよく、例えば、ゼオライト、二リン酸塩、三リン酸塩、ホスホン酸塩、クエン酸塩、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTMPA)、アルキル又はアルケニルコハク酸、可溶性ケイ酸塩又は層状ケイ酸塩(layered silicates)(例えば、ヘキスト製SKS−6)である。また、洗剤は、アンビルト(unbuilt)でもよい。即ち、実質的に洗剤ビルダーがなくてもよい。酵素は酵素の安定性に適合する任意の組成物中に用いてよい。一般的に、酵素は、カプセル化という既知の形態によって有害な成分から保護され、例えば、ハイドロゲルでの粒状化及び封入である。酵素及びデンプン結合領域を有する又は有しない特定のアルファ‐アミラーゼは、洗濯及び食器洗浄に適用に限定されず、また、表面洗浄剤での使用、デンプン又はバイオマスからのエタノール生産でも用いられる。
【0135】
洗剤は、一以上のポリマーを含んでよい。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC),ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ビニル アルコール)(PVA)、ポリアクリレート、マレイン/アクリル酸コポリマー、及びラウリル メタアクリレート/アクリル酸コポリマーのようなポリカルボン酸塩を含む。
【0136】
洗剤は、漂白システムを含んでよく、それは、過ホウ酸塩、過炭酸塩のようなH供給源を含んでよく、任意に、TAED又はノナノイルオキシベンゼンスルホネート(NOBS)のような過酸形成漂白活性化剤と組み合わせてもよい。あるいは、漂白システムは、例えば、アミド、イミド、又はスルホン型のペルオキシ酸を含んでよい。また、漂白システムは、例えば、WO 2005/056783に記載される、ペルヒドロラーゼが過酸を活性化する酵素的漂白システムでもよい。
【0137】
洗剤組成物の酵素は、例えば、プロピレングリコール又はグリセロールのようなポリオール、糖又は糖アルコール、乳酸、ホウ酸又は芳香族ホウ酸エステルなどのホウ酸誘導体のような従来の安定化剤を用いて安定化されてよく、組成物が例えばWO 92/19709及びWO 92/19708に記載のように製剤設計されてもよい。
【0138】
また、洗剤は、例えばクレイ、発泡剤、石鹸泡抑制剤、抗腐食剤、泥懸濁剤、抗泥再堆積剤、染料、抗菌剤、蛍光増白剤、又は香料を含む繊維コンディショナーのような他の従来の洗剤成分を含んでもよい。pH(用いる濃度での水溶液で測定)は通常中性又はアルカリ性であり、例えば、pH約7.0から約11.0である。
【0139】
アルファ‐アミラーゼ変異体は洗剤中に従来使用される濃度で含まれてよい。本発明において、洗剤組成物中アルファ‐アミラーゼ変異体は洗浄液のリットル当たり0.00001‐1.0mg(純粋酵素タンパク質として計算)に相当する量を加えることを意図する。アルファ‐アミラーゼ変異体を含む洗剤組成物の特定の形態は次を含むように製剤設計され得る。
【0140】
1)約7%から約12%のリニアアルキルベンゼンスルホン酸塩(linear alkylbenzenesulfonate)(酸として計算)、約1%から約4%のアルコール エトキシ硫酸塩(alcohol ethoxysulfate)(例えば、C12−18アルコール、1−2エチレンオキシド(EO))、又はアルキル硫酸塩(alkyl sulfate)(例えば、C16−18)、約5%から約9%のアルコール エトキシレート(alcohol ethoxylate)(例えば、C14−15アルコール、7EO)、約14%から約20%の炭酸ナトリウム(例NaCO)、約2から約6%の可溶性ケイ酸塩、約15%から約22%のゼオライト(例、NaAlSiO)、0%から約6%の硫酸ナトリウム(例、NaSO)、約0%から約15%のクエン酸ナトリウム/クエン酸(例、CNa/C)、約11%から約18%の過ホウ酸ナトリウム(例、NaBO・HO)、約2%から約6%のTAED、0%から約2%のカルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)(CMC)、0−3%のポリマー(例、マレイン/アクリル酸コポリマー、PVP、PEG)、0.0001から0.1%のタンパク質の酵素(純粋酵素として計算)、及び0−5%の少量の成分(例、石鹸泡抑制剤、香料、蛍光増白剤、光退色)を含み、少なくとも600g/Lのかさ密度を有する粒質物として製剤設計される洗剤組成物。
【0141】
2)約6%から約11%のリニアアルキルベンゼンスルホン酸塩(linear alkylbenzenesulfonate)(酸として計算)、約1%から約3%のアルコール エトキシ硫酸塩(alcohol ethoxysulfate)(例えば、C12−18アルコール、1−2EO)、又はアルキル硫酸塩(alkyl sulfate)(例えば、C16−18)、約5%から約9%のアルコール エトキシレート(alcohol ethoxylate)(例えば、C14−15アルコール、7EO)、約15%から約21%の炭酸ナトリウム(例NaCO)、約1%から約4%の可溶性ケイ酸塩、約24%から約34%のゼオライト(例、NaAlSiO)、約4%から約10%の硫酸ナトリウム(例、NaSO)、0%から約15%のクエン酸ナトリウム/クエン酸(例、CNa/C)、0%から約2%のカルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)(CMC)、1−6%のポリマー(例、マレイン/アクリル酸コポリマー、PVP、PEG)、0.0001から0.1%のタンパク質の酵素(純粋酵素タンパク質として計算)、及び0から約5%の少量の成分(例、石鹸泡抑制剤、香料、)を含み、少なくとも600g/Lのかさ密度を有する粒質物として製剤設計される洗剤組成物。
【0142】
3)約5%から約9%のリニアアルキルベンゼンスルホン酸塩(linear alkylbenzenesulfonate)(酸として計算)、約7%から約14%のアルコール エトキシレート(alcohol ethoxylate)(例えば、C12−15アルコール、7EO)、約1から約3%脂肪酸(例、C16−22脂肪酸)としての石鹸、約10%から約17%の炭酸ナトリウム(例NaCO)、約3%から約9%の可溶性ケイ酸塩、約23%から約33%のゼオライト(例、NaAlSiO)、0%から約4%の硫酸ナトリウム(例、NaSO)、約8%から約16%の過ホウ酸ナトリウム(例、NaBO・HO)、約2%から約8%のTAED、0%から約1%のホスホン酸塩(例、EDTMPA)、0%から約2%のカルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)(CMC)、0−3%のポリマー(例、マレイン/アクリル酸コポリマー、PVP、PEG)、0.0001から0.1%のタンパク質の酵素(純粋酵素タンパク質として計算)、及び0から5%の少量の成分(例、石鹸泡抑制剤、香料、蛍光増白剤)を含み、少なくとも600g/Lのかさ密度を有する粒質物として製剤設計される洗剤組成物。
【0143】
4)約8%から約12%のリニアアルキルベンゼンスルホン酸塩(linear alkylbenzenesulfonate)(酸として計算)、約10%から約25%のアルコール エトキシレート(alcohol ethoxylate)(例えば、C12−15アルコール、7EO)、約14%から約22%の炭酸ナトリウム(NaCOとして)、約1%から約5%の可溶性ケイ酸塩、約25%から約35%のゼオライト(例、NaAlSiO)、0%から約10%の硫酸ナトリウム(NaSO)、0%から約2%のカルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)(CMC)、1−3%のポリマー(例、マレイン/アクリル酸コポリマー、PVP、PEG)、0.0001から0.1%の酵素(純粋酵素タンパク質として計算)、及び0から5%の少量の成分(例、石鹸泡抑制剤、香料)を含み、少なくとも600g/Lのかさ密度を有する粒質物として製剤設計される洗剤組成物。
【0144】
5)約15%から約21%のリニアアルキルベンゼンスルホン酸塩(linear alkylbenzenesulfonate)(酸として計算)、約12%から約18%のアルコール エトキシレート(alcohol ethoxylate)(例えば、C12−15アルコール、7EO又はC12−15アルコール、5EO)、約3%から約13%脂肪酸(例、オレイン酸)としての石鹸、0%から約13%のアルケニルコハク酸(alkenylsuccinic acid)(C12−14)、約8%から約18%のアミノエタノール、約2%から約8%のクエン酸、0%から約3%のホスホン酸塩、0%から約3%のポリマー(例、PVP、PEG)、0%から約2%のホウ酸塩(例、B)、0%から約3%のエタノール、約8%から約14%のプロピレングリコール、0.0001から0.1%の酵素(純粋酵素タンパク質として計算)、及び0から約5%の少量の成分(例、分散剤、石鹸泡抑制剤、香料、蛍光増白剤)を含む水性液体洗剤組成物。
【0145】
6)約15%から約21%のリニアアルキルベンゼンスルホン酸塩(linear alkylbenzenesulfonate)(酸として計算)、3−9%のアルコール エトキシレート(alcohol ethoxylate)(例えば、C12−15アルコール、7EO又はC12−15アルコール、5EO)、約3%から約10%脂肪酸(例、オレイン酸)としての石鹸、約14%から約22%のゼオライト(例、NaAlSiO)、約9%から約18%のクエン酸カリウム、0%から約2%のホウ酸塩(例、B)、0%から約2%のカルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)(CMC)、0から約3%のポリマー(例、PEG、PVP)、0から約3%の固着用ポリマー(例えば、ラウリルメタクリレート/アクリル酸コポリマー;モル比25:1、分子量3800)、0%から約5%のグリセロール、0.0001から0.1%の酵素(純粋酵素タンパク質として計算)、及び0から5%の少量の成分(例、分散剤、石鹸泡抑制剤、香料、蛍光増白剤)を含む水性構造化液体洗剤組成物。
【0146】
7)約5%から約10%の脂肪アルコール硫酸塩、約3%から約9%のエトキシ化脂肪酸モノエタノールアミド(ethoxylated fatty acid monoethanolamide)、0−3%脂肪酸としての石鹸、約5%から約10%の炭酸ナトリウム(例NaCO)、約1%から約4%の可溶性ケイ酸塩(例、NaO, 2SiO)、約20%から約40%のゼオライト、約2%から約8%の硫酸ナトリウム(例、NaSO)、約12%から約18%の過ホウ酸ナトリウム(例、NaBO・HO)、約2%から約7%のTAED、約1%から約5%のポリマー(例、マレイン/アクリル酸コポリマー、PEG)、0.0001から0.1%の酵素(純粋酵素タンパク質として計算)、及び0から5%の少量の成分(例、蛍光増白剤、石鹸泡抑制剤、香料)を含み、少なくとも600g/Lのかさ密度を有する粒質物として製剤設計される洗剤組成物。
【0147】
8)約8%から約14%のリニアアルキルベンゼンスルホン酸塩(linear alkylbenzenesulfonate)(酸として計算)、約5%から約11%のエトキシ化脂肪酸モノエタノールアミド(ethoxylated fatty acid monoethanolamide)、0%から約3%脂肪酸としての石鹸、約4%から約10%の炭酸ナトリウム(例NaCO)、約1%から約4%の可溶性ケイ酸塩、約30%から約50%のゼオライト(例、NaAlSiO)、約3%から約11%の硫酸ナトリウム(例、NaSO)、約5%から約12%のクエン酸ナトリウム(例、CNa)、約1%から約5%のポリマー(例、PVP、マレイン/アクリル酸コポリマー、PEG)、0.0001から0.1%の酵素(純粋酵素タンパク質として計算)、及び0から5%の少量の成分(例、石鹸泡抑制剤、香料)を含む粒質物として製剤設計される洗剤組成物。
【0148】
9)約6%から約12%のリニアアルキルベンゼンスルホン酸塩(linear alkylbenzenesulfonate)(酸として計算)、約1%から約4%の非イオン界面活性剤、約2%から約6%脂肪酸としての石鹸、約14%から約22%の炭酸ナトリウム(例NaCO)、約18%から約32%のゼオライト(例、NaAlSiO)、約5%から約20%の硫酸ナトリウム(例、NaSO)、約3%から約8%のクエン酸ナトリウム(例、CNa)、約4%から約9%の過ホウ酸ナトリウム(例、NaBO・HO)、約1%から約5%の漂白活性剤(例、NOBS又はTAED)、0%から約2%のカルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)(CMC)、約1%から約5%のポリマー(例、ポリカルボン酸塩、PEG)、0.0001から0.1%の酵素(純粋酵素タンパク質として計算)、及び0から5%の少量の成分(例、蛍光増白剤、香料)を含む粒質物として製剤設計される洗剤組成物。
【0149】
10)約15%から約23%のリニアアルキルベンゼンスルホン酸塩(linear alkylbenzenesulfonate)(酸として計算)、約8%から約15%のアルコール エトキシ硫酸塩(alcohol ethoxysulfate)(例えば、C12−15アルコール、2−3EO)、約3%から約9%のアルコール エトキシレート(alcohol ethoxylate)(例えば、C12−15アルコール、7EO又はC12−15アルコール、5EO)、0%から約3%脂肪酸(例、ラウリン酸)としての石鹸、約1%から約5%のアミノエタノール、約5%から約10%のクエン酸ナトリウム、約2%から約6%のハイドロトロープ(hydrotrope)(例トルエンスルホン酸ナトリウム(sodium toluensulfonate))、0%から約2%のホウ酸塩(例、B)、0%から約1%のカルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)、約1%から約3%のエタノール、約2%から約5%のプロピレングリコール、0.0001から0.1%の酵素(純粋酵素タンパク質として計算)、及び0から5%の少量の成分(例、ポリマー、分散剤、香料、蛍光増白剤)を含む水性液体洗剤組成物。
【0150】
11)約20%から約32%のリニアアルキルベンゼンスルホン酸塩(linear alkylbenzenesulfonate)(酸として計算)、6−12%のアルコール エトキシレート(alcohol ethoxylate)(例えば、C12−15アルコール、7EO又はC12−15アルコール、5EO)、約2%から約6%のアミノエタノール、約8%から約14%のクエン酸、約1%から約3%のホウ酸塩(例、B)、0%から約3%のポリマー(例、マレイン/アクリル酸コポリマー、例えば、ラウリルメタクリレート/アクリル酸コポリマーのような固着用ポリマー)、約3%から約8%のグリセロール、0.0001から0.1%の酵素(純粋酵素タンパク質として計算)、及び0から5%の少量の成分(例、ヒドロトロープ(hydrotrope)、分散剤、香料、蛍光増白剤)を含む水性液体洗剤組成物。
【0151】
12)約25%から約40%の陰イオン界面活性剤(リニアアルキルベンゼンスルホン酸塩(linear alkylbenzenesulfonate)、アルキル硫酸塩、アルファ‐オレフィンスルホン酸塩、アルファ‐スルホ脂肪酸メチルエステル、アルカンスルホン酸、石鹸)、約1%から約10%の非イオン界面活性剤(例、アルコールエトキシレート)、約8%から約25%の炭酸ナトリウム(例NaCO)、約5%から約15%の可溶性ケイ酸塩、0%から約5%の硫酸ナトリウム(例、NaSO)、約15%から約28%のゼオライト(例、NaAlSiO)、0%から約20%の過ホウ酸ナトリウム(例、NaBOO)、約0%から約5%の漂白活性剤(例、TAED又はNOBS)、0.0001から0.1%の酵素(純粋酵素タンパク質として計算)、及び0から3%の少量の成分(例、香料、蛍光増白剤)を含み、少なくとも600g/Lのかさ密度を有する粒質物として製剤設計される洗剤組成物。
【0152】
13)上記組成物1)−12)に記載の洗剤組成物であって、すべて又は一部のリニアアルキルベンゼンスルホン酸塩が(C12−C18)アルキル硫酸塩により置換される洗剤組成物。
【0153】
14)約9%から約15%の(C12−C18)アルキル硫酸塩、約3%から約6%のアルコール エトキシレート(alcohol ethoxylate)、約1%から約5%のポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド(polyhydroxy alkyl fatty acid amide)、約10%から約20%のゼオライト(例、NaAlSiO)、約10%から約20%の層状2ケイ酸塩(layered disilicates)(例、ヘキストからSK56)、約3%から約12%の炭酸ナトリウム(例NaCO)、0%から約6%の可溶性ケイ酸塩、約4%から約8%のクエン酸ナトリウム、約13%から約22%の過ホウ酸ナトリウム、約3%から約8%のTAED、0%から約5%のポリマー(例、ポリカルボン酸塩、及びPVP)、0.0001から0.1%の酵素(純粋酵素タンパク質として計算)、及び0から5%の少量の成分(例、蛍光増白剤、光退色、香料、石鹸泡抑制剤)を含み、少なくとも600g/Lのかさ密度を有する粒質物として製剤設計される洗剤組成物。
【0154】
15)約4%から約8%の(C12−C18)アルキル硫酸塩、約11%から約15%のアルコール エトキシレート(alcohol ethoxylate)、約1%から約4%の石鹸、約35%から約45%のゼオライトMAP又はゼオライトA、約2%から約8%の炭酸ナトリウム(例NaCO)、0%から約4%の可溶性ケイ酸塩、約13%から約22%の過炭酸ナトリウム、1―8%のTAED、0%から約3%のカルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)(CMC)、0%から約3%のポリマー(例、ポリカルボン酸塩、及びPVP)、0.0001から0.1%の酵素(純粋酵素タンパク質として計算)、及び0から3%の少量の成分(例、蛍光増白剤、ホスホン酸塩、香料、)を含み、少なくとも600g/Lのかさ密度を有する粒質物として製剤設計される洗剤組成物。
【0155】
16)追加的成分か又はすでに特定された漂白系に置換するかどちらか一方として、安定化又は封入された過酸を含むことを特徴とする、上述1)から15)に記載の洗剤製剤。
【0156】
17)過ホウ酸塩が過炭酸塩に置き換えられることを特徴とする、1)、3)、7)、9)、及び12)に上述するような洗剤製剤。
【0157】
18)マンガン触媒を追加的に含有することを特徴とする、1)、3)、7)、9)、12)、14)、及び15)に上述するような洗剤製剤。
【0158】
19)例えば、直鎖アルコキシル化第一級アルコールのような液体非イオン性界面活性剤、ビルダーシステム(例、リン酸塩)、酵素、及びアルカリを含む非水性洗剤液として製剤設計される洗剤組成物。洗剤は陰イオン界面活性剤及び/又は漂白システムを含んでもよい。
【0159】
別の実施態様おいては、2,6‐β−D−フルクタンヒドロラーゼ(2,6‐β−D−fructan hydrolase)は洗剤組成物に含まれてよく、家庭用及び/又は産業用の繊維/洗濯に存在するバイオフィルムの除去/洗浄に用いてよい。
【0160】
例えば、洗剤組成物は、染みが付いた布地の前処理に適した洗濯用添加組成物及びすすぎに添加される布地用柔軟組成物を含む手作業又は機械用の洗濯洗剤組成物として製剤設計されてよく、又は、一般的な家庭用の固い表面洗浄処理に用いるための洗剤組成物として製剤設計されてよく、又は手作業又は機械食器洗浄処理のために製剤設計されてよい。
【0161】
特定の態様においては、洗剤組成物は、プロテアーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼ、及び/又はペルオキシダーゼ、及び/又はこれらの組み合わせのような一以上の他の洗浄酵素、2,6‐β−D−フルクタンヒドロラーゼ(2,6‐β−D−fructan hydrolase)、一以上のアルファ‐アミラーゼを含んでもよい。一般的に選択される酵素の特性は、選択される洗剤(例えば、最適pH、他の酵素及び非酵素成分等との適合性)と適合すべきであり、酵素は、効果的な量で存在すべきである。
【0162】
プロテアーゼ:適切なプロテアーゼは、動物、野菜、又は微生物のものを含む。化学的に修飾され、又はタンパク質工学的に処理される変異体も適切である。プロテアーゼはアルカリ微生物プロテアーゼ、トリプシン様プロテアーゼのような、セリンプロテアーゼ又はメタロプロテアーゼでもよい。アルカリプロテアーゼの例はサブチリシン類であり、特に、例えばサブチリシンノボ(subtilisin Novo)、サブチリシンカールスバーグ(subtilisin Carlsberg)、サブチリシン309(例えば、米国特許第6,287,841号参照)、サブチリシン147、及びサブチリシン168 (例えば、WO 89/06279を参照願いたい)のようなバシルス種(Bacillus sp.)由来のものである。トリプシン様プロテアーゼの例は、トリプシン(例、豚又は牛由来の)、及びフザリウム(Fusarium)プロテアーゼ(例えば、WO 89/06270及びWO 94/25583を参照願いたい)である。また、有用なプロテアーゼの例はWO 92/19729、WO 98/20115に記載される変異体を含むが、これらに限定されない。好適な商業的に入手可能なプロテアーゼ酵素はアルカラーゼ(商標)(Alcalase)、サビナーゼ(商標)(Savinase)、プリマーゼ(商標)(Primase)、ドゥララーゼ(商標)(Duralase)、エスペラーゼ(商標)(Esperase)、及びカンナーゼ(商標)(Kannase)(ノボ ノルディスク(Novo Nordisk A/S))、マキサターゼ(商標)(Maxatase)、マキサカール(商標)(MaxacalTM)、マキサペム(商標)(Maxapem)、プロペラーゼ(商標)(Properase)、プラフェクト(商標)(Purafect)、プラフェクトOP(商標)(Purafect OxP)、FN2(商標)、及びFN3(商標)(Danisco A/S)を含むが、これらに限定されない。
【0163】
リパーゼ:適切なリパーゼは細菌又は菌類由来のものを含む。化学的に修飾され、又はタンパク質工学的に処理される変異体が含まれる。有用なリパーゼの例は、例えば、フミコーラ ラヌギノサ(H. lanuginosa (T. lanuginosus))(例えば、EP 258068及びEP 305216を参照願いたい。)及びフミコーラ インソレンス(H. insolens)(例えばWO 96/13580を参照願いたい)のようなフミコーラ(Humicola)(同義語 サーモミセス(Thermomyces))由来のリパーゼ、又はシュードモナス(Pseudomonas)リパーゼ(例えば、シュードモナス アルカリゲネス(P. alcaligenes)又はシュードモナス シュードアルカリゲネス(P. pseudoalcaligenes)由来、例えばEP 218 272を参照願いたい)、 シュードモナス セパシア(P. cepacia)(例えばEP 331 376を参照願いたい)、シュードモナス スタッチェリ(P. stutzeri)(例えば、GB 1,372,034を参照)、シュードモナス フルオレッセンス(P.fluorescens)、シュードモナス種(Pseudomonas sp.)菌株SD 705(例えば、WO 95/06720及びWO 96/27002を参照)、シュードモナス ウィスコンシネンシス(P. wisconsinensis)(例えば、WO 96/12012を参照)由来)、又は バシルス (Bacillus)リパーゼ(例えば、バシルス スブチリス由来(B. subtilis)例えばDartois他、Biochemica et Biophysica Acta, 1131 : 253−360 (1993)を参照)、バシルス ステアロテルモフィルス(B. stearothermophilus)、(例えばJP 64/744992を参照)、又はバシルス プミルス(B.pumilus(例えばWO 91/16422を参照)由来)を含むが、これらに限定されない。製剤設計の使用が考えられる更なるリパーゼ変異体は、例えば WO 92/05249、WO 94/01541、WO 95/35381、WO 96/00292、WO 95/30744、WO 94/25578、WO 95/14783、WO 95/22615、WO 97/04079、WO 97/07202、EP 407225、及びEP 260105に記載のものも含む。商業的に入手可能なリパーゼ酵素はリポラーゼ(商標)(Lipolase)及びリポラーゼウルトラ(商標)(Lipolase Ultra)(ノボ ノルディスク (Novo Nordisk A/S))である。
【0164】
ポリエステラーゼ:適切なポリエステラーゼは、例えば、WO 01/34899(Danisco A/S)及びWO 01/14629(Danisco A/S)に記載のものを含むがこれらに限定されない。および本明細書に記載の他の酵素との組み合わせを含んでよい。
【0165】
アミラーゼ:組成物は、非変異体アルファ‐アミラーゼのような他のアミラーゼとの組み合わせでもよい。これらは、デュラミル(商標)(Duramyl)、ターマミル(商標)(Termamyl)、ファンガミル(商標)(Fungamyl)、及びバン(商標)(BAN)(ノボ ノルディスク(Novo Nordisk A/S))又はラピダーゼ(商標)(Rapidase)、及びプラスター(商標)(Purastar)(Danisco A/S)のような商業的に入手可能なアミラーゼを含むがこれらに限定されない。
【0166】
セルラーゼ:セルラーゼを組成物に添加してよい。適切なセルラーゼは細菌又は菌類を含む。化学的に修飾され、又はタンパク質工学的に処理される変異体が含まれる。適切なセルラーゼは、バシルス 属(Bacillus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、フミコーラ属(Humicola)、フザリウム属(Fusarium)、チエラビア属(Thielavia)、アクレモニウム属(Acremonium)由来のセルラーゼを含む。例えば、米国特許第4,435,307、5,648,263、5,691,178、5,776,757、及びWO 89/09259に開示されるフミコーラ インソレンス(Humicola insolens)、ミセリオフトラ サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、及びフザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)から生産される菌類のセルラーゼである。一般的に使用を意図するセルラーゼは繊維に有益な色のケアを有している。そのようなセルラーゼの例は、例えば、EP 0495257、EP 0531372、WO 99/25846 (Danisco A/S)、WO 96/34108 (Danisco A/S)、WO 96/11262、WO 96/29397、及びWO 98/08940に記載のセルラーゼである。他の例では、WO 94/07998、WO 98/12307、WO 95/24471、PCT/DK98/00299、EP 531315、米国特許第5,457,046、5,686,593、及び5,763,254に記載のようなセルラーゼ変異体である。商業的に入手可能なセルラーゼはセルザイム(商標)(Celluzyme)及びケアザイム(商標)(Carezyme)(ノボ ノルディスク (Novo Nordisk A/S))又はクラジネース(商標)(Clazinase)及びプラダックス HA(商標)(Puradax HA)(Danisco A/S)及びKAC−500(B)(商標)(花王社)を含む。
【0167】
ペルオキシダーゼ/オキシダーゼ:組成物での使用が意図される適切なペルオキシダーゼ/オキシダーゼは、植物、細菌又は菌類由来のものを含む。化学的に修飾され、又はタンパク質工学的に処理される変異体が含まれる。有用なペルオキシダーゼ例は、コプリナス シネレウス(C. cinereus)由来のようなコプリナス属(Coprinus)由来のペルオキシダーゼ及びWO 93/24618、WO 95/10602、及びWO 98/15257に記載のようなそれらの変異体由来のペルオキシダーゼを含む。商業的に入手可能なペルオキシダーゼは、例えば、ガードザイム(商標)(Guardzyme)(ノボ ノルディスク (Novo Nordisk A/S))を含む。
【0168】
洗剤酵素を一以上の酵素を含む分離添加物を加えることによって又はこれらの酵素すべてを含む組合せ添加物を加えることによって洗剤組成物中に含有してもよい。洗剤添加物、すなわち、分離添加物又は組合せ添加物は、例えば粒質物、液体、スラリー等として製剤設計される。適切な粒状洗剤添加物製剤は、非粉塵化粒質物を含む。
【0169】
非粉塵化(dusting)粒質物を、例えば、米国特許第4,106,991及び4,661,452に記載のように調製してよく、任意に周知の方法でコーティングしてよい。ワックスコーティング材の例は、平均分子量1、000から20、000を有するポリ(エチレンオキシド)製品(ポリエチレングリコール、PEG)、16から50のエチレンオキシド単位を有するエトキシ化ノニルフェノール、12から20炭素原子を含むアルコール及び15から80のエチレンオキシド単位であるエトキシ化脂肪アルコール、脂肪アルコール、脂肪酸、及び脂肪酸のモノ‐、ジ‐、トリグリセロールである。流動層技術による適用に有用なフィルム形状コーティング材の例は、例えば、GB 1483591に記載される。例えば、液体酵素の調製物は、プロピレングリコールのようなポリオール、糖、糖アルコール、乳酸、ホウ酸を確立した方法に従って加えることにより、安定化されてよい。被保護酵素はEP238,216に記載の方法に従って調製されてよい。
【0170】
洗剤組成物は例えば棒状、錠剤、粉、ゲル、粒体、ペースト、又は液体のような任意の便利な形態でよい。液体洗剤は水性、典型的には、約70%水分まで、及び0%から約30%の有機溶剤まで含んでよい。約30%以下の水分を含むコンパクト洗剤ゲルもまた本発明に含まれる。洗剤組成物は一以上の界面活性剤を含み、それは、非イオン性でもよく、半極性及び/又は陰イオン性及び/又は陽イオン性及び/又は両性イオン性、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。界面活性剤は、典型的には、約0.1wt.%から約60wt.%含んでよい。
【0171】
界面活性剤が含まれる場合、洗剤は通常約1%から約40%の陰イオン性界面活性剤を含み、例えば、リニアアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファ‐オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩(脂肪アルコール硫酸塩)、アルコール エトキシ硫酸塩、第二級アルカンスルホン酸塩、アルファ‐スルホ脂肪酸メチルエステル、アルキル‐又はアルケニルコハク酸又は石鹸である。
【0172】
界面活性剤を含む場合、洗剤は通常、約0.2%から約40%の非イオン性界面活性剤を含み、例えば、アルコールエトキレート、ノニルフェノール エトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、 エトキシ化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド、又はグルコサミンのN‐アシル‐N‐アルキル誘導体(「グルカミド」)である。
【0173】
洗剤は0%から約65%の洗剤ビルダー又は錯化剤を含んでよく、例えば、ゼオライト、二リン酸塩、三リン酸塩、ホスホン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸、アルキル又はアルケニルコハク酸、可溶性ケイ酸塩又は層状ケイ酸塩(例、ヘキスト社製SKS−6)である。
【0174】
洗剤は一以上のポリマーを含んでよい。一般的にポリマーは、カルボキシメチルセルロース(CMC),ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(エチレン グリコール)(PEG)、ポリ(ビニル アルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピリジン‐N‐オキシド)、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリアクリレート、マレイン/アクリル酸コポリマー、及びラウリル メタアクリレート/アクリル酸コポリマーのようなポリカルボン酸塩を含む。
【0175】
洗剤は、過酸形成漂白活性化剤(例えば、テトラアセチルエチレンジアミン又はノナノイルオキシベンゼンスルホネート)と結合する過ホウ酸塩又は過炭酸塩のようなH供給源を含む漂白システムを含んでよい。あるいは、漂白システムは、ペルオキシ酸(例えば、アミド、イミド、又はスルホン型のペルオキシ酸)を含んでよい。また、漂白システムは、酵素的漂白システムでもよい。
【0176】
洗剤組成物の酵素を、従来の安定化剤を用いて安定化してよい。例えば、ポリオール(例えば、プロピレングリコール又はグリセロールのような)、糖又は糖アルコール、乳酸、ホウ酸、又はホウ酸誘導体(例えば、芳香族ホウ酸エステルのような)、又はフェニルホウ酸誘導体(例えば、4−ホルミルフェニルホウ酸のような)である。組成物はWO 92/19709及びWO 92/19708に記載のように製剤設計されてよい。
【0177】
また、洗剤組成物は他の従来の洗剤成分を含んでもよく、例えば、クレイ、泡増進剤、石鹸泡抑制剤、抗腐食剤、泥懸濁剤、抗泥再堆積剤、染料、抗菌剤、蛍光増白剤、ヒドロトープ、曇り防止剤、及び/又は香料を含む布地コンディショナーである。
【0178】
洗剤組成物には、酵素変異体を洗浄液1リットル当たり約0.01から約100mgの酵素タンパク質、特に、洗浄液1リットル当たり約0.05から約5.0mgの酵素タンパク質、又は特に、洗浄液1リットル当たり約0.1から約1.0mgの酵素タンパク質に相当する量を添加してよいことが本発明にて意図される。
【0179】
AmyE又はその変異体を含む洗浄組成物の有効性を試験するために用いられる代表的な試験は見本試験を含む。「見本(swatch)」は、布地に着いた染みを有する布地のような材料の一片をいう。例えば、材料を綿、ポリエステル又は天然と合成繊維の混合物から作製してよい。あるいは、材料は、フィルター紙又はニトロセルロースのような紙、又はセラミック、金属、又はグラスのような固い材料でもよい。アルファ‐アミラーゼにとって、汚れはデンプンベースであるが、血液、牛乳、インク、草、紅茶、ワイン、ホウレンソウ、肉汁、チョコレート、卵、チーズ、泥、染料、油又はこれらの化合物の混合物を含み得る。これらに限定されない。ある実施態様においては、AmyE又はその変異体はBMI(血液/牛乳/インク)試験で実施される。
【0180】
「小さな見本(smaller swatch)」は、一穴式の穴開け器でカットされている見本の切断部であり、又はカスタムメードの96穴用穴開け器であって、多数の穴が標準96穴マイクロタイタープレートに対応するようになっている穴開け器でカットされる見本の切断部、又は見本から別な方法で取り出されている部分である。見本は織物、紙、金属、又は他の適切な材料である。小さな見本は、その見本が、24‐、48‐、又は96‐穴マイクロタイタープレートに置かれる前又は後のいずれか一方にて染みが付着される。小さな見本(smaller swatch)はまた少量の材料に染みを適用して作成してもよい。例えば、小さな見本は、汚れが付いた直径5/8″又は0.25″の布地のものでよい。カスタムメード穴開け器は96穴プレートのすべてに同時に96個の見本が挿入されるように設計されている。装置は、単に同じ96穴プレートに複数回挿入することにより、穴ごとに二以上の見本の搬送をさせる。複数穴用穴開け器は、任意の設定プレートに見本の同時挿入をすることができるものであり、24‐、48‐、又は96‐穴プレートを含むがこれらに限定されない。他の考えられる方法は、汚れ試験プラットフォームが金属、プラスティック、グラス、セラミック又は汚れ物質でコートされる他の適切な材料から作られるビーズである。一以上のコートされるビーズは適切な緩衝液と酵素を含んだ96‐、48‐、又は24‐穴プレート又はより大きい穴型式のプレートに挿入される。この場合、上清は直接吸光度の測定をすることにより、又は二次的な色の発色反応後のどちらかの方法で分離する汚れを測定する。また、分離する汚れの分析を質量スペクトル解析によって処理する。
【0181】
ある実施態様においては、染みの固定度合いを制御する処理手順を提供する。結果として、例えば、試験されるべき酵素の不存在下で洗浄するとき、汚れの量を変えて放出することのできる見本の作製が可能となる。固定化見本の使用によって、洗浄試験における信号対雑音の比に劇的な改善が得られる。さらに、固定度合いの変化によって、種々の洗浄条件下、最適な結果が得られる染みの付着を与えることができる。
【0182】
種々のタイプの材料の周知の「強度(strength)」の汚れを有する見本は商業的に入手可能であり(EMPA, St. Gallen, Switzerland; wfk-Testgewebe GmbH, Krefeld Germany;又はCenter for Test Materials, Vlaardingen, The Netherlands)、及び/又は、専門家(Morris and Prato, Textile Research Journal 52(4): 280 286 (1982))によっても作成される。例えば、見本は、血液/牛乳/インク(BMI)染み、ホウレンソウの染み、草、又はチョコレート/牛乳/すすにより作成された汚れを含む綿を含む布地を含んでよい。例えば、BMI染みは0.0003%から0.3%の過酸化水素で綿に固定される。他の組み合わせは0.001%から1%のグルタルアルデヒドで固定される草又はホウレンソウ、0.001%から1%のグルタルアルデヒドで固定されるゼラチン及びクーマシィー染色又は0.001%から1%のグルタルアルデヒドで固定されるチョコレート、牛乳やすすを含む。
【0183】
また、見本は酵素及び/又は洗剤製剤でインキュベーションする間、攪拌され得る。洗浄能力データはウェル、特に96穴プレートにおける見本の方向(水平対垂直)に依存する。これは、インキュベーション期間に混合が不十分であったことを示すであろう。インキュベーション期間の十分な攪拌を確認する多くの方法があるけれども、アルミニウムの二つのプレートの間でマイクロタイタープレートを挟むプレートホルダーが設計され得る。これの設置の仕方は単純で、例えば、接着プレート用シールでウェルを覆い、二つのアルミニウムプレートを適切なタイプの商業的に入手可能なクランプで96穴プレートに固定すれば足りる。それは商業的なインキュベーター振盪機に設置可能である。振盪機を約400rpmで設定することによって非常に効率のよい攪拌が得られ、一方、漏れ又は交互の汚染がホルダーによって効果的に防止される。
【0184】
トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)は洗浄液体中アミノ基の濃度を定量するために用いる。これは、見本から除去されたタンパク質の量の測定に役立つ(例えば、Cayot and Tainturier, Anal. Biochem. 249: 184−200 (1997)を参照願いたい)。しかしながら、洗剤又は酵素のサンプルが非常に小さいペプチド断片(例えば、サンプル中のペプチダーゼの存在から)を生じる場合、より大きなTNBSシグナル、即ち「ノイズ」が生じる。
【0185】
血液/牛乳/インクの洗浄能力を測定する他の手段は、洗浄液の吸光度を測定することにより定量できるインク放出に基づく。吸光度を350nmと800nmの間の任意の波長で測定する。ある実施態様においては、波長を410nm又は620nmで測定する。また、洗浄液体を用いて、草、ホウレンソウ、ゼラチン、又はクーマシィー染色を含む汚れにおける洗浄能力を決定するために試験を行う。これらの汚れに対する適切な波長は、ホウレンソウ又は草について670nm及びゼラチン又はクーマシィーについては620nmを含む。例えば、洗浄液(例えば、一般的に96穴プレートから100‐150μL)のアリコートを除き、キュベット又はマルチウェルマイクロプレートに移す。その時これを分光光度計にセットし、吸光度を適切な波長にて測定する。またシステムを例えば衣服、プラスティック、又はセラミックのような適切な物質上の血液/牛乳/インク染みを用いて食器洗浄用の適切な酵素及び/又は洗剤組成物を決定するために用いる。
【0186】
ある態様においては、0.3%過酸化水素をBMI/綿見本に30分間25℃で処理してBMI染みを綿に固定し、又は0.03%過酸化水素をBMI/綿見本に30分間60℃で処理してBMI染みを綿に固定する。約0.25″の小さな見本をBMI/綿見本から切り離し、96穴マイクロタイタープレートのウェルに移す。各ウェルに洗剤組成物及び変異タンパク質のような酵素の周知の混合物を添加する。マイクロタイタープレートの上に粘着プレート用シールを固定した後、マイクロタイタープレートをアルミニウムプレートに挟み、約10から60分間、約250rpmでオービタルシェーカー(orbital shaker)で攪拌する。この時間の最終時点で、上清は新しいマイクロタイタープレートに移され、620nmでインクの吸光度を測定する。これは0.01%グルタルアルデヒドをホウレンソウ/綿見本又は草/綿見本に30分間25℃で処理によるホウレンソウ又は草染み固定綿で同様に試験される。同様にチョコレート、牛乳、及び/又はすすの染みで行われる。
【0187】
5.4. 織物の湯通し組成物及び使用
また、本発明は、一以上のAmyE又はその変異体を用いる布地を処理する(例えば、織物を湯通しする)組成物及び方法を含む。AmyE又はその変異体は、任意の布地処理方法を用いてよく、それは周知技術である(例えば、米国特許第6,077,316を参照願いたい)。例えば、ある態様においては、布地の手触り及び外観が、溶液中布地を酵素変異体と接触することを含む方法により改善される。ある態様においては、布地を加圧下その溶液で処理する。
【0188】
ある態様においては、酵素を織物の製織の間又は後、又は湯通し段階、又は一以上の追加する布地処理段階の間に適用してよい。織物の製織の間、糸に相当な機械的負荷がかかる。機械織機で製織する前に、伸長強度の増加及び切断防止のために、縦糸をしばしばサイジングデンプン又はデンプン誘導体でコートする。AmyE又はその変異体をこれらのサイジングデンプン又はデンプン誘導体を除去するために適用する。織物が織られた後、布地を湯通し段階へ進めてよい。これは一以上の布地処理段階を伴う。湯通しは織物からサイズを除く作用がある。製織後、さらに布地を処理する前に均一で洗浄にたえる結果物を確保するためにサイズのコーティングは除かなければならない。また、本発明は、酵素変異体の作用によりサイズの酵素的加水分解を含む湯通しの方法を提供する。
【0189】
AmyE又はその変異体を綿素材の布地を含む布地を湯通しするため単独又は他の湯通し用化学試薬及び/又は湯通し用酵素と共に用いてよく、例えば液体組成物中の洗剤添加剤として用いてよい。また、AmyE又はその変異体をインディゴ染色デニム生地及び衣類に見られるストーンウォッシュを生産する方法に及び組成物中に用いてよい。衣類製造のために、布地は衣服及び衣類に裁断及製縫され、その後完成する。特に、デニムのジーンズの製造のために種々の酵素的仕上げ方法が開発されている。衣類がデンプン分解酵素の作用を受けている間布地に柔軟性を与え、綿が次の酵素仕上げ段階をより受けやすくするためにデニム衣類の仕上げは通常酵素的湯通し段階で始まる。アルファ‐アミラーゼ変異体をデニム衣類の仕上げ(例えば、「バイオ‐ストーン処理」(bio‐stoning process)、酵素的湯通し及び布地に柔軟性を与え、及び/又はプロセスの仕上げに用いてよい。
【0190】
5.5. 焼成及び食品調製のための組成物及び方法
また、本明細書に記載のAmyE又はその変異体を焼成及び食品調製のための組成物及び方法に用いてよい。焼成及び食品生産ための商業用及び家庭用の使用には、穀粉中のアルファ‐アミラーゼ活性の適切なレベルを維持することが重要である。あまりに高い活性のレベルは粘性が高く及び/又はたるんだ及び商品にならない製品をもたらすが、不十分なアルファ‐アミラーゼ活性を有する穀粉は適切な酵母機能のための十分な糖を含有せず、その結果乾燥したもろいパンとなる。従って、AmyE又はその変異体は、それ自身又は他のアルファ‐アミラーゼと組み合わせて、穀粉中内因性アルファ‐アミラーゼ活性のレベルを増大するために穀粉に添加してよい。AmyE又はその変異体は、デンプン存在下、例えば30−90℃、50−80℃、55−75℃、又は60−70℃の範囲の最適温度を有する。最適温度はpH5.5にて可溶性デンプン1%溶液中で測定できる。
【0191】
焼成における穀物及び他の植物製品の使用に加えて、オオムギ、オートムギ、小麦、のような穀物や、トウモロコシ、ホップ、及び米のような植物成分は産業用及び家庭用醸造両方の醸造のために用いる。醸造に用いる組成物は麦芽未処理又は麦芽処理されてよく、これは部分的発芽がアルファ‐アミラーゼ含有酵素のレベルを増加をもたらすことを意味する。連続醸造のために、十分なアルファ‐アミラーゼ酵素活性が発酵のための適切な糖のレベルを確保するのに必要である。従って、AmyE又はその変異体を、それ自身により、又は別のアルファ‐アミラーゼとの組み合わせにより、醸造のために用いる成分に添加してよい。
【0192】
本明細書にて用いる用語「穀粉(flour)」は粉砕又は製粉された穀物をいう。また、用語「穀粉(flour)」は、粉砕又はつぶされたサゴ又は塊茎産物を意味する。いくつかの実施態様においては、また、穀粉はさらに、粉砕またはつぶされた穀物または植物の成分を含んでよい。追加的成分の例はパン種剤であるが、これに限定されない。穀類は、小麦、オートムギ、ライ麦、及びオオムギを含むが、これに限定されない。塊茎産物はタピオカ粉、キャッサバ粉、及びカスタード粉を含む。また、用語「穀粉(flour)」は粉砕トウモロコシ粉、トウモロコシミール、米粉、全粒ミール粉、セルフライジングフラワー、タピオカ粉、キャッサバ粉、粉砕米、補強粉、及びカスタード粉を含む。
【0193】
本明細書にて用いる、「原料(stock)」は粉砕又は破壊された穀物及び植物成分をいう。例えば、ビール生産で用いるオオムギは発酵用マッシュを生産するのにふさわしい濃度を得るために荒く粉砕又はつぶした穀物である。本明細書にて用いる用語「原料(stock)」はつぶされ又は荒く粉砕した形態の植物及び穀物の任意の前述のタイプを含む。本明細書にて述べる方法は穀粉及び原料両者におけるアルファ‐アミラーゼ活性レベルを検出するために用いてよい。
【0194】
パン製品の劣化、即ちパンの中身部分の硬化を防ぎ又は遅らせるために、AmyE又はその変異体は単独に又は他のアミラーゼとの組み合わせで添加してよい。抗劣化アミラーゼの量は、典型的に穀粉1kgあたり0.01−10mgの酵素タンパク質の範囲でよく、例えば、1−10mg/kgである。アルファ‐アミラーゼ変異体ポリペプチドと組み合わせて用いることができる追加的な抗劣化アミラーゼはエンド‐アミラーゼを含み、例えば、バシルス(Bacillus)由来細菌性エンド‐アミラーゼである。追加的なアミラーゼはマルトジェニックアルファ‐アミラーゼ(EC 3.2.1.133)、例えば、バシルス(Bacillus)由来のものである。Novamyl(商標)は、バシルス ステアロテルモフィルス(B. stearothermophilus)菌株NCIB 11837由来のマルトジェニックアルファ‐アミラーゼ(maltogenic alpha‐amylases)であり及びC. Christophersen他、 Starch 50(1): 39-45(1997)に記載される。抗劣化エンドアミラーゼの他の例はバシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)又はバシルス アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)など、バシルス(Bacillus)由来の細菌類のアルファ‐アミラーゼを含む。抗劣化アミラーゼは例えば、大豆など、植物源由来又はバシルス(Bacillus)など微生物源由来のベータ‐アミラーゼのようなエキソアミラーゼである。
【0195】
AmyE又はその変異体を含む焼成組成物は、さらにホスホリパーゼを含んでよい。ホスホリパーゼはリン脂質から脂肪酸を除去するためにA又はA活性を有し、溶解リン脂質を形成する。それはリパーゼ活性、即ちトリグリセリドに対する活性を有しても有さなくてもよい。ホスホリパーゼは30−90℃の範囲、例えば30−70℃の範囲で最適温度を有してよい。添加ホスホリパーゼは動物由来、例えば、膵臓、例えば、ウシ又はブタ膵臓、ヘビ毒又はハチ毒由来である。あるいは、ホスホリパーゼは微生物由来、例えば、糸状菌、酵母又は細菌由来でよく、例えば、
アスペルギルス(Aspergillus)属又はその種のアスペルギルス ニガー(A. niger)のような、
タマホコリカビ(Dictyostelium)属又はその種のキイロタマホコリカビ(D. discoideum)のような、
ムコール(Mucor)属又はその種のムコール ジャバニカス(M. javanicus)、ムコール ムセド(M. mucedo)、ムコール サブチリシムス(M. subtilissimus)のような、
ニューロスポラ(Neurospora)属又はその種のニューロスポラ クラッサ(N. crassa)のような、
リゾムコール(Rhizomucor)属又はその種のリゾムコール プシラス(R. pusillus)、
リゾプス(Rhizopus)属又はその種のリゾプス アルヒズス(R. arrhizus)、リゾプス ジャポニカス(R. japonicus)、リゾプス ストロニファー(R. stolonifer)のような、
スクレロティニア(Sclerotinia)属又はその種のスクレロティニア リベルチアナ(S. libertiana)のような、
トリコフィトン(Trichophyton)属又はその種のトリコフィトン ルブルム(T. rubrum)のような、
ウェトゼリニア(Whetzelinia)属又はその種のウェトゼリニア スクレロチニア(W.sclerotiorum)のような、
バシルス(Bacillus)属又はその種のバシルス メガトリウム(B. megaterium)、バシルス スブチリス(B. subtilis)のような、
サイトロバクター(Citrobacter)属又はその種のサイトロバクター フレウンディイ(C. freundii)のような、
エンテロバクター(Enterobacter)属又はその種のエンテロバクター アエロゲネス(E. aerogenes)、エンテロバクター クロアカエ(E. cloacae)のような、
エドワージエラ(Edwardsiella)属又はその種のエドワージエラ タルダ(E. tarda)のような、
エルウィニア(Erwinia)属又はその種のエルウィニア ヘルビコラ(E. herbicola)のような、
エシェリキア(Escherichia)属又はその種の大腸菌(E. coli)のような、
クレブシエラ(Klebsiella)属又はその種のクレブシエラニューモニアエ(K. pneumoniae)のような、
プロテウス(Proteus)属又はその種のプロテウス ブルガリス(P. vulgaris)のような、
プロビデンシア(Providencia)属又はその種のプロビデンシア スチュアーティイ(P. stuartii)のような、
サルモネラ(Salmonella)属又はその種のサルモネラティフィムリウム(S. typhimurium)のような、
セラチア(Serratia)属又はその種のセラチア リクファシエンス(S. liquefasciens)、セラチア マルセッセンス(S. marcescens)のような、
シゲラ(Shigella)属又はその種のシゲラ フレクスネリ(S. flexneri)のような、
ストレプトミセス(Streptomyces)属又はその種のストレプトミセス バイオラセオルバー(S. violeceoruber)のような、
エルシニア(Yersinia)属又はその種のエルシニアエンテロコリティカ(Y. enterocolitica)のような、
フザリウム(Fusarium)属又はその種のフザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)(例えば、DSM2672菌株)のようなものでよい。
【0196】
ホスホリパーゼは焼成後初期の期間、特に、最初の24時間パンのやわらかさを改善する量を加えてよい。ホスホリパーゼの量は一般的に、穀粉のkg当たり0.01−10mg酵素タンパク質、例えば、0.1−5mg/kgである。つまり、ホスホリパーゼ活性は一般的に20−1000リパーゼ単位(LU)/kg穀粉の範囲であり、ここで、リパーゼ単位は乳化剤としてアラビアゴム及び基質としてトリブチリンを有し、pH7.0、30℃で1分当たり1μmol酪酸を放出するために必要な酵素の量として定義される。
【0197】
一般的にパン生地の組成物は、小麦全粒粉又は小麦粉及び/又は他のタイプの全粒粉、トウモロコシ粉、コーンスターチ、ライ麦の全粒粉、ライ麦の粉、エンバク粉、オートミール、大豆粉、ソルガム全粒粉、ソルガム粉、ジャガイモ全粒粉、ジャガイモ粉又はジャガイモデンプンなどの粉、又はデンプンを含む。パン生地は生、冷凍又は標準的焼成(par‐baked)状態でよい。パン生地は発酵生地又は発酵されるパン生地である。パン生地は種々の方法で発酵される。薬の化学膨張剤、例えば、重曹の添加により、又はイーストを添加して、パン生地を発酵する。パン生地は例えば市場にて入手可能なサッカロミセス セレビジアエ(S. cerevisiae)の菌株であるサッカロミセス セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae)(パン用イースト)の培養物のような適切な酵母培養を添加することにより発酵される。
【0198】
また、パン生地は他の従来のパン生地成分、例えば、牛乳粉、グルテン、及び大豆、のようなタンパク質、卵(全卵、黄卵、又は卵白)、アスコルビン酸、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾジカ−ボンアミド(ADA)又は過硫酸アンモニウムのような酸化剤、L‐システインのようなアミノ酸、糖、塩化ナトリウム、酢酸カルシウム、硫酸ナトリウム、又は硫酸カルシウムのような塩を含む。さらに、パン生地は粒状脂肪又はショートニングなど、脂肪、例えば、トリグリセリドを含んでよい。パン生地は、モノ‐又はジグリセリド、モノ‐又はジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(diacetyl tartaric acid esters)、脂肪酸の糖エステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、モノグリセリドの乳酸エステル、モノグリセリドの酢酸エステル、ポリオキシエチレンステアレート(polyoxyetliylene stearates)、又は、リゾレシチンのような乳化剤を含む。特に、パン生地は、乳化剤の添加せずに作ることができる。
【0199】
任意に、追加的な酵素を抗劣化アミラーゼ及びホスホリパーゼと共に用いてよい。追加的な酵素はアミログルコシダーゼ、ベータ‐アミラーゼ、シクロデキストリン グルカノトランスフェラーゼのような第二のアミラーゼでよく、又は追加的酵素はペプチダーゼであり、特に、エキソペプチダーゼ、トランスグルタミナーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、特に、ペントサナーゼ、例えば、キシラナーゼ、プロテアーゼ、プロテインジスルフィドイソメラーゼであって、例えば、WO 95/00636記載のプロテインジスルフィドイソメラーゼ、グルカノトランスフェラーゼ、分岐酵素(1,4‐アルファ‐グルカン分岐酵素)、4‐アルファ‐グルカノトランスフェラーゼ(デキストリン グリコシルトランスフェラーゼ)又はオキシドレダクターゼ、例えば、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、グルコース オキシダーゼ、ピラノース オキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、L‐アミノ酸オキシダーゼ又は炭水化物オキシダーゼでもよい。追加的酵素は哺乳類及び植物由来や特に微生物(細菌類、酵母、又は菌類)由来を含む任意の原型に由来するものでよく、従来技術により得られる。
【0200】
一般的に、キシラナーゼは微生物由来でよく、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)の菌株、特に、セルロース高分解糸状菌(A. aculeatu)、アスペルギルス ニガー(A. niger)(例、 WO 91/19782)、アスペルギルス アワモリ(A. awamori)(例、WO 91/18977)、又はアスペルギルス ツビゲンシス(A. tubigensis)(例、WO 92/01793)由来、例えばトリコデルマ レーシ(T. reesei)のようなトリコデルマ(Trichoderma)菌株由来、又は例えばフミコーラ インソレンス(H. insolens)(例、WO 92/17573)のようなフミコーラ(Humicola)の菌株由来の細菌類又は菌類由来でよい。Pentopan(商標)及びNovozym 384(商標)はトリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)から生産される商業的に入手可能なキシラナーゼ調製品である。アミログルコシダーゼはアスペルギルス ニガー(A. niger)アミログルコシダーゼ(AMG(商標)のような)でよい。他の有用なアミラーゼ製品はGrindamyl(商標)A 1000又はA 5000(Grindsted Products製、Denmark)及びAmylase(商標)H又はAmylase(商標)P(Gist‐Brocades製、 The Netherlands)である。グルコース オキシダーゼは菌類のグルコース オキシダーゼ、特にアスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)グルコース オキシダーゼ(Gluzyme(商標)のような)でよい。典型的なプロテアーゼはNeutrase(商標)である。典型的なリパーゼはサーモミセス(Thermomyces) (フミコーラ(Humicola))、リゾムコール(Rhizomucor)、カンジダ(Candida)、アスペルギルス(Aspergillus)、リゾプス(Rhizopus)または シュードモナス(Pseudomonas)菌株由来であり、特にサーモミセス ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus) (フミコーラ ラヌギノサ(Humicola lanuginosa))、リゾムコール ミエヘイ(Rhizomucor miehei)、カンジダ アンタルティカ(Candida antarctica)、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、リゾプス デレマー(Rhizopus delemar)又はリゾプス アルヒズス(R. arrhizus)又はシュードモナス セパシア(Pseudomonas cepacia)由来である。特定の実施態様においては、リパーゼは、WO 88/02775記載のカンジダ アンタルティカ(Candida antarctica)由来リパーゼA又はリパーゼBでよく、又はリパーゼは、例えば、EP 238,023記載のリゾムコール ミエヘイ(Rhizomucor miehei)又は例えば、EP 305,216記載のフミコーラ ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)又は例えば、EP 214,761及びWO 89/01032記載のシュードモナス セパシア(Pseudomonas cepacia)由来でよい。
【0201】
本発明のプロセスは白色、ライト、ダークタイプの如何を問わず、ソフトとクリスピーとを問わず、これらのタイプのパン生地から調製される焼成生産物の任意の種類に用いてよい。その例は、パン、特に、白、全粒又はライ麦パンで、典型的にはローフ又はロール上のパン、フレンチバケットタイプのパン、ピタパン、トルティーヤ、ケーキ、パンケーキ、ビスケット、クッキー、パイクラスト、クリスプパン、蒸しパン、ピザ等の形状のパンである。
【0202】
別の実施態様においては、AmyE又はその変異体を抗劣化アミラーゼ、ホスホリパーゼ及びリン脂質とともに穀粉を含む予混合中に用いてよい。予混合は他のパン生地改善及び/又はパン改善添加剤、例えば、上述の酵素を含む任意の添加剤を含んでよい。ある態様においては、AmyE又はその変異体は、焼成添加剤として用いるために、抗劣化アミラーゼ及びホスホリパーゼを含む酵素調製物の成分である。
【0203】
酵素調製物は粒質物又は凝集粉の形態でよい。それは25から500μmの範囲の中に粒子の95wt.%以上が分布する狭い粒子サイズ分布を有してよい。粒質物及び凝集粉は従来の方法により、例えば、流動層造粒装置において担体にAmyE又はその変異体をスプレーすることにより、調製してよい。担体は適切な粒子サイズを有する粒子の核からなってよい。担体は可溶性又は不溶性でもよく、例えば、塩(NaCl又は硫酸ナトリウムのような)、糖(スクロース又はラクトースのような)、糖アルコール(ソルビトールのような)、デンプン、米、ひき割りトウモロコシ、又は大豆でもよい。
【0204】
別の態様は、AmyE又はその変異体を含む粒子の被包、つまり、アルファ‐アミラーゼ粒子を含む。被包されるアルファ‐アミラーゼ粒子を調製するために、すべてのアルファ‐アミラーゼ粒子を懸濁するために十分な量で、酵素を食品用の脂質と接触させる。本明細書にて用いる食用脂質は、水に溶けないが、炭化水素又はジエチルエーテルのような非極性有機溶剤中に溶ける任意の自然の有機化合物でよい。適切な食用脂質は飽和又は不飽和いずれかの脂肪又は油のいずれかの形態であるトリグリセリドを含むがこれに限定されない。飽和トリグリセリドを作る脂肪酸及びそれらの組み合わせの例は、酪酸(乳脂肪由来)、パルミチン酸(動物及び植物脂肪由来)、及び/又はステアリン酸(動物及び植物脂肪由来)を含むが、これに限定されない。不飽和トリグリセリドを作る脂肪酸及びそれらの組み合わせの例は、パルミトレイン酸(動物及び植物脂肪由来)、オレイン酸(動物及び植物脂肪由来)、リノール酸(植物油由来)及び/又はリノール酸(亜麻仁油由来)を含むが、これらに限定されない。他の適切な食用脂質は上述するトリグリセリド由来のモノグリセリド及びジグリセリド、リン脂質及びグリコリピッドを含むが、これらに限定されない。
【0205】
食用脂質、とりわけ液体の形態は、アルファ‐アミラーゼ粒子の粉状形態と接触し、脂質の材料がアルファ‐アミラーゼ粒子表面の少なくとも大半、例えば100%覆うようにされる。すなわち、各アルファ‐アミラーゼ粒子は個別に脂質に包まれる。例えば、アルファ‐アミラーゼ粒子のすべて、又は実質的にすべては薄く、連続的な脂質のフィルム膜を有する。これは、まず容器に多量の脂質を注ぎ、それから脂質が各アルファ‐アミラーゼ粒子の表面を全面的に濡らすようにアルファ‐アミラーゼをスラリー化することにより実施される。短時間の撹拌後、被包されるアルファ‐アミラーゼ粒子は表面に相当量の脂質を有するように覆われる。コーティングの厚みは、アルファ‐アミラーゼ粒子が用いる脂質のタイプの選択により及び必要ならば、より厚い膜を構築するためにその操作を繰り返すことにより制御できるように適用できる。
【0206】
封入輸送粒子の貯蔵、取扱い及び取り込みはパッケージ混合物の方法により実施できる。パッケージ混合物は被包アルファ‐アミラーゼを含むことができる。しかしながら、さらに、パッケージ混合物には製造業者又はパン職人が、必要に応じて、追加的な成分を加えることができる。被包アルファ‐アミラーゼをパン生地に取り込み後、職人は製パンのための通常の生産工程を続ける。
【0207】
被包されるアルファ‐アミラーゼ粒子の有利な効果は2点ある。第一に、食用脂質は焼成プロセスの間酵素が熱に不安定な場合酵素を熱変性から保護する。続いて、アルファ‐アミラーゼはプルーフィング及び焼成段階の間安定化及び保護されている間に、最終焼成産物中に保護コーティングから放出され、ポリグルカンのグルコシド結合を加水分解する。また、封入輸送媒体によって焼成産物へ活性酵素の多量な放出ができる。つまり、焼成プロセスに続いて、活性アルファ‐アミラーゼが劣化作用を弱める速度で保護コーティングから連続的に放出され、それ故、劣化作用の速度を低減できる。
【0208】
一般的に、アルファ‐アミラーゼ粒子に適用する脂質の量は、アルファ‐アミラーゼの全量の数パーセントから重量の何倍までと多様であり、これは脂質の性質、アルファ‐アミラーゼ粒子の適用方法、処理されるパン生地混合物の組成物、及び関係するパン生地混合操作の激しさで決定される。
【0209】
封入輸送媒体、即ち、脂質で被包される酵素は、焼成品の保存期間を延長できる効果的な量で焼成品を調製するために用いる成分を加えてよい。パン職人は上述のように調製する被包される所望の抗劣化効果を得るために必要なアルファ‐アミラーゼの量を計算する。被包されるアルファ‐アミラーゼの必要量を包まれる酵素の濃度に基づき及び具体的な穀粉に対するアルファ‐アミラーゼの割合に基づいて計算する。広い範囲の濃度が効果を有するが、上述のように、抗劣化に見られる改善はアルファ‐アミラーゼの濃度に正比例しない。特定の最小限レベルより上ではアルファ‐アミラーゼ濃度における大量の増加は、追加的改善があまりない。職人による不用意な測定誤差が影響しないようパン職人にある程度の保障を与えるために、特定のパン生産にて実際に用いるアルファ‐アミラーゼ濃度は必要最小限よりかなり高くてよい。酵素濃度の最低限度はパン職人が望む最小の抗劣化効果によって決定される。
【0210】
焼成品を調製する方法は、
a)脂質でコートされるアルファ‐アミラーゼ粒子の調製であって、実質的にアルファ‐アミラーゼ粒子の100%がコーティングされ、
b)穀粉を含むパン生地を混合し、
c)混合が完全になる前に脂質コーティングアルファ‐アミラーゼをパン生地に添加し、及び脂質膜がアルファ‐アミラーゼを放出する前に混合を終了し、
d)パン生地をプルーフィングし、e)パン生地を焼いて焼成品を提供することであって、アルファ‐アミラーゼは混合、プルーフィング、及び焼成段階では不活性であり、焼成品中にて活性である。
【0211】
被包アルファ‐アミラーゼを混合サイクル、例えば、混合サイクルの最終段階で生地に添加してよい。被包アルファ‐アミラーゼをパン生地全体に被包アルファ‐アミラーゼが十分に分布できる混合段階のある時点で添加し、保護膜がアルファ‐アミラーゼ粒子から剥がれる前に混合段階を終了する。パン生地のタイプ及び体積、混合作用及びスピード次第で、1分から6分以上の間が被包アルファ‐アミラーゼをパン生地に混合するために必要となるが、平均は2分から4分間である。つまり、いくつかの変数が正確な手法を決定する。第一に、被包アルファ‐アミラーゼの量は、被包アルファ‐アミラーゼをパン生地混合全体に拡散させるのに十分な全体積を有さなければならない。被包アルファ‐アミラーゼの調製品が高い濃度の場合、被包アルファ‐アミラーゼがパン生地に追加される前に、追加油を予混合物に添加する必要性がある。レシピ及び製法プロセスは具体的な改変が必要とされることがある。しかしながら、パン生地製品の処方に用いられる25%の油をパン生地に提供し、ほぼ最終の混合サイクルで添加し、濃縮被包アルファ‐アミラーゼ用の担体として用いる場合に一般的に良い結果がもたらされる。かなり低脂肪含有量(フレンチスタイルのパンのような)を有するパン又は他の焼成品レシピにおいて、約1%乾燥粉末重量の被包アルファ‐アミラーゼ混合物が被包アルファ‐アミラーゼをパン生地と適切に混合するのに十分であることがわかるが、作用するパーセントの範囲はかなり広く製造設計、最終産物、及び個別のパン職人が必要とする生産方法に依存する。第二に、パン生地への混合を仕上げるために混合サイクルを維持する十分な時間をかけて、被包アルファ‐アミラーゼ懸濁液を混合物に添加しなければならないが、過度な機械的作用が被包アルファ‐アミラーゼ粒子の大部分から保護脂質膜をはがす前でなければならない。
【0212】
別の実施態様においては、細菌のアルファ‐アミラーゼ(BAA)をAmyE又はその変異体を含む脂質コーティング酵素粒子に添加してよい。BAAは過度な耐熱性及び完全に焼いたパンの塊中で維持された活性により、パンの粘着性を低減する。しかしながら、BAAが脂質コーティング粒子に取り込まれる場合、極めて低いBAAの用量においてさえも、実質的な追加的抗劣化保護が得られる。例えば、穀粉100パウンド当たり150RAU(リファレンスアミラーゼユニット)のBAA用量は効果的である。ある実施態様においては、約50から2000RAU間のBAAを脂質コーティング酵素産物に加える。この低いBAA用量レベルは、完全に焼けたパンの塊中で酵素が自由にデンプンと接触することを避ける(水蒸気が酵素をそのコーティングから不規則に放出する場合を除く)ために保護コーティング能力を備えており、BAAのよくない副作用をもたらさずに抗劣化活性の非常に高いレベルを達成するために役立つ。
【0213】
多様な修飾及び変異が、意図する使用の特許請求の範囲を逸脱せずに組成物及びそれを使用する方法にされることは当業者にとって明らかである。つまり修飾及び変異は添付した特許請求の範囲及びその均等の範囲内である。
【0214】
本明細書に引用するすべての参照はすべての目的のためにそれら全体において参照により取り込まれる。
【実施例】
【0215】
実施例1
配列番号1のAmyE又はC末端欠失のAmyE変異体、AmyE‐tr(配列番号2)、をコードする核酸を米国特許第5,024,943に記載のように、バシルス スブチリス(B. subtilis)pHPLT発現ベクターへクローン化する。図2はAmyE‐trをコードする核酸を含むベクターを示す。
【0216】
図2に示すように、pHPLTベクターはバシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)LATプロモーター(「Plat」)、LATシグナル配列をコードする配列(「preLAT」)、続いてクローニング用のPstI及びHpaIを含む。McKenzie 他、Plasmid 15(2): 93-103 (1986)に記載のプラスミドpUB110さらなるプラスミドエレメントとして、
「ori−pUB」はpUB110由来複製のオリジンである。
「reppUB」はpUB110由来レプリカーゼ遺伝子である。
「neo」はpUB110由来ネオマイシン/カナマイシン耐性遺伝子である。
「bleo」はブレオマイシン耐性マーカーである。
「Tlat」はバシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)アミラーゼ由来転写ターミネーターである。
【0217】
AmyE及びAmyE‐trの発現用のプラスミド構築体をYang他、「Nucleotide sequence of the amylase gene from Bacillus subtilis」、Nucl. Acids Res. 11(2): 237-49 (1983)に記載のAmyEをコードする配列を用いて構築した。プラスミドpME629.5は配列番号1の完全長AmyEをコードする核酸を含む。Yang他により記載される配列と比較して、遺伝子はデンプン結合領域をコードする配列中に3つの塩基の欠失を含む。
【0218】
プラスミドpME630.7は欠失AmyE配列、AmyE‐tr、を含み、図2に示す。AmyE‐trは配列番号1のD425にて欠失される。AmyE‐trをFujimoto 他、「Crystal structure of a catalytic-site mutant alpha-amylase from Bacillus subtilis complexed with maltopentaose」、J. Mol. Biol. 277: 393-407(1998)に記載されるデンプン結合領域を欠損するAmyE変異体の結晶構造から設計した。RCSB Protein Data Bank(商標) アクセション番号1BAG、「Alpha-Amylase From Bacillus Subtilis Complexed With Maltopentaose.」を参照願いたい。
【0219】
プラスミド構築体の発現のために、AmyEをコードする核酸をHerculase(商標) (Stratagene, California)を用いてPCR増幅した。PCR産物をQiagen QIAquik(商標)PCR精製キット(Qiagen, Valencia, California)にて提供されるカラムを用いて精製し、50μLのMilli-Q(商標)精製水で再懸濁した。50μLの精製DNAをHpaI(Roche)及びPstI(Roche)を用いて連続して消化し、得られたDNAを30μLのMilli-Q(商標)精製水中に再懸濁した。10−20ng/μLのDNAをPstI及びHpaIクローニング部位を用いてプラスミドpHPLTへクローン化した。ライゲーション混合物をコンピテントバシルス スブチリス(B. subtilis)細胞(ゲノタイプ:DaprE, DnprE, degUHy32 oppA, DspoIIE3501, amyE::xylRPxylAcomK-phleo)へ直接形質転換した。SC6.1バシルス スブチリス(B. subtilis)細胞は、コンピテンシー遺伝子(comK)有し、それはキシロース誘導プロモーター下にて置かれる。DNA結合及び取り込みのコンピテンシーはキシロースの添加により誘発される。親プラスミドにおけるAmyE遺伝子は二つのPstI部位を有するので、クローニング前にPCR融合反応をこれらの部位を除去するために実施した。PCR融合を二つの分離したPCR反応後行った。次のプライマーをHpaI及びPstI部位を用いてpHPLT構築体を作るために用いた。
配列番号: 18: プライマーPSTAMYE-F'
CTTCTTGCTGCCTCATTCTGCAGCTTCAGCACTTACAGCACCGTCGATCAAAAGCGGAAC 3'
配列番号: 19: プライマー AMYENOPST-R'
CTGGAGGCACTATCCTGAAGGATTTCTCCGTATTGGAACTCTGCTGATGTATTTGTG
配列番号: 20: プライマー AMYENOPST-F'
CACAAATACATCAGCAGAGTTCCAATACGGAGAAATCCTTCAGGATAGTGCCTCCAG
配列番号: 21: プライマーHPAIAMYE-R'
CAGGAAATCCGTCCTCTGTTAACTCAATGGGGAAGAGAACCGCTTAAGCCCGAGTC
配列番号: 22: プライマー HPAIAMYE-R'
CAGGAAATCCGTCCTCTGTTAACTCAATCAGGATAAAGCACAGCTACAGACCTGG
配列番号: 23: プライマー AMYE SEQ-F'
TACACAAGTACAGTCCTATCTG 3'
配列番号: 24: プライマー AMYE SEQ-F'
CATCCTCTGTCTCTATCAATAC 3'
【0220】
プラスミドpME629.5及びpME630.7は翻訳後切断される31残基のシグナル配列を有するAmyEを発現する。それに続く10のN末端アミノ酸をYang他、(1983)により提案されるように別々に処理した。
【0221】
1.2. タンパク質発現
AmyE完全長及び欠失クローンに対する形質転換体を10μg/mLネオマイシン、1%不溶性デンプン含有LA上で選別し、37℃にて終夜インキュベートした。コロニーの周りのクリアリング(又はハロー)を示す形質転換体を選別し、バイアルを更なる研究のために作成した。形質転換体の前培養を10μg/mLネオマイシン含有LBにて8時間行った。それから30μLのこの前培養物を10μg/mLのネオマイシン及び5mMCaClを補給した30mLの培養培地(下記に記載)を満たした250mLのフラスコに添加した。培養培地は主要な窒素源として尿素、主な炭素源としてグルコース、及び活発な細胞増殖のために1%ソイトンを補給したMOPs緩衝液に基づく富栄養半規定培地であった。振盪フラスコを250rpmにて撹拌しながら37℃にて60−65時間インキュベートした。培養物を円錐管中5000rpmにて20分間遠心分離により採取した。AmyE完全長及びAmyE欠失タンパク質両方とも高いレベルにて発現したので、培養上清をさらなる精製をせずに試験ように用いた。
【0222】
実施例2
次の試験を下記に示すように実施例中にもちいた。下記に与えられる手順からのずれはいずれも実施例に示される。これらの実験において、分光光度計を反応終了後形成される生成物の吸光度を測定するために用いた。
【0223】
2.1.96穴マイクロタイタープレートにおけるタンパク質含有量決定のためのブラッドフォード試験
サンプルの上清におけるタンパク質濃度をブラッドフォードクイック スタート(商標)染色試薬(Bio-Rad、California)を用いて測定した。サンプルを280rpm及び加湿空気で振盪しながら37℃にて3日間マイクロタイタープレート(MTPs)中で培養した培養物から培地をろ過することにより得た。10μLのろ過ずみ培地を第二のMTPのウェルにおいて200μLのブラッドフォードクイック スタート(商標)染色試薬に混合した。混合後、MTPsを室温にて少なくとも10分間インキュベートした。気泡を除き、吸光度(OD)を595nmで測定した。タンパク質濃度を決定するために、バックグラウンド値(つまり、イノキュレートしていないウェルから)をサンプル値から差し引いた。
【0224】
2.2. 従来のエタノール発酵
400ppmの尿素を含むIllinois River Energyから入手した液化物(31%DS)の二つのバッチをpH4.3及びpH5.8(5N HSOを用いて)に調整した。100gの基質を125mLの三角フラスコに添加した。AmyE‐tr及びスペザイム(商標)エクストラ(Spezyme(商標)Xtra)アミラーゼを0.20mg/g DSにて投与した。発酵をDI水中45分まで前もって水を補給した0.2mlの10%(w/v)レッドスターエタノールレッド酵母で植菌した。フラスコを48時間の発酵で320rpmにて撹拌棒を用いて32℃にてインキュベートした。
【0225】
2.3. 全粒トウモロコシでのエタノール発酵
400ppmの尿素を含む32%DSトウモロコシ粉基質の二つのバッチをpH4.3及びpH5.8(5N HSOを用いて)にて調製した。100gの基質を125mL三角フラスコに添加した。完全長AmyE(配列番号1)及びAmyE‐tr(配列番号2)を0.20mg/g DSにて投与し、アスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachii)アルファ‐アミラーゼ(AkAA、配列番号6)を1.5SSU/g DSにて投与した。AkAAのアミノ酸配列は米国特許第7,332,319の配列番号4に記載されている。また、全粒トウモロコシを加水分解するAmyE及びAmyE‐trの能力を0.5GAU/gのトリコデルマ レーシ(T. reesei)グルコアミラーゼ(TrGA、配列番号7)と1.5SSU/gDSアスペルギルス カワチ(A. kawachii)の混合物と比較した。TrGAのアミノ酸配列はWO 2006/060062の配列番号3に記載されている。発酵をDI水中45分まで前もって水を補給した0.2mlの10%(w/v)レッドスターエタノールレッド酵母で植菌した。フラスコを72時間の発酵で300rpmにて撹拌棒を用いて32℃にてインキュベートした。
【0226】
2.4. HPLC測定によるグルコース生成測定
マルトース及びマルトヘプタオースの加水分解
0.5%マルトース又はマルトヘプタオース溶液を各実験で特定するように、50mM酢酸ナトリウム、pH4.5又は5.6又は50mMマレイン酸pH5.6で調製した。すべての酵素サンプルを1mg/mLに最初に希釈した。反応混合物を最終酵素濃度が1ppmになるように適切な基質溶液を用いて酵素を希釈することにより調製し、それから200μLのアリコートを滅菌スクリュー管に移し、37℃インキュベーターに置いた。反応を10mM水酸化ナトリウムへ10倍希釈することにより示した時間にて停止した。
【0227】
不溶性デンプンの加水分解
不溶性顆粒デンプンの加水分解を測定するために精製AmyE(24.5g/L)を最終濃度が20.4ppmになるようにマレイン酸緩衝液pH5.6に希釈した。それからタンパク質を最終濃度が1ppmになるようにマレイン酸緩衝液pH5.6に調製した5%トウモロコシ粉溶液に添加し、混合物を32℃にてシェーカーでインキュベートした。サンプルを定期的に採取し、50mMNaOHへ10倍希釈し、反応を止めた。
【0228】
HPLC検出方法
グルコース及び基質の他の分解産物の生成をDionex PA-1カラム及び電気化学的検出器を備えるAgilent 1100 LCシステムを用いてHPLCにより分析した。10μLのサンプルを注入し、NaOH及び酢酸ナトリウムの勾配を1.0mL/分及び25℃にて適用した。サッカライドの分布をすでに実施したスタンダードから測定した。溶出プロファイルを45分にわたって得た。生成されたグルコースの定量(g/Lとして述べる)を確認されたグルコース標準スタンダード(Sigma, MO)を用いて得、糖のピーク面積を実際の糖濃度へ変換した。
【0229】
実施例3
従来のエタノール発酵における欠失AmyEの性能を実施例2.2に記載の従来のエタノール発酵試験を用いてIllinois River Energy液化物(31%DS)で試験した。AmyE‐tr(配列番号2)の性能をpH4.3及びpH5.8にてスペザイム(商標)エクストラ(Spezyme(商標)Xtra)アミラーゼ(AmyR、配列番号5)と比較した。発酵を48時間行った。AmyE‐tr及びスペザイム(商標)エクストラ(Spezyme(商標)Xtra)アミラーゼを0.2mg/g DSで投与した。図3に示すように、pH5.8にてAmyE‐trにより生成された最終エタノール収率は12.0%(v/v)である。pH4.3でのAmyE‐trは7.3%(v/v)の最終エタノール収率であった。スペザイム(商標)エクストラ(Spezyme(商標)Xtra)アミラーゼ存在下最終エタノール収率はpH4.3にて2.7%(v/v)及びpH5.8にて3.9%(v/v)であった。すなわち、AmyE‐trはスペザイム(商標)エクストラ(Spezyme(商標)Xtra)アミラーゼより従来のエタノール発酵の液化物においてエタノールを顕著に生成する。また、この実施例はAmyE‐trがpH4.3よりpH5.8にてより多くのエタノールを生成することも証明する。
【0230】
実施例4
pH4.3及びpH5.8にて不溶性顆粒状(未処理)デンプンのエタノールへの加水分解を触媒するAmyE(配列番号1)及びAmyE‐tr(配列番号2)の能力を実施例2.3に記載の全粒トウモロコシ試験でのエタノール発酵を用いて比較した。AmyE及びAmyE‐trのエタノール生成性能をアスペルギルス カワチ(A. kawachii)アルファ‐アミラーゼ(AkAA、配列番号6)を1.5SSU/g用量にて、0.5GAU/g用量のトリコデルマ レーシ(T. reesei)グルコアミラーゼ(TrGA、配列番号7)と1.5SSU/gDS用量のアスペルギルス カワチ(A. kawachii)アルファ‐アミラーゼの混合物と比較した。AmyE完全長及び欠失AmyE両方とも0.2mg/g DSの投与量であった。
【0231】
図4はpH4.3及びpH5.8にて酵素により生成された最終エタノール収率を示す。pH5.8にて試験した場合、AmyEがTrGA/AkAAで観察されたエタノール収率を実際にこえながら、AmyE(−●‐)及びAmyE‐tr(‐■‐)両者はTrGA/AkAA(‐▲‐)と同様な性能であった。AmyE(−○‐)及びAmyE‐tr(‐□‐)はpH4.3にてエタノールを生成したが、収率はTrGA/AkAA(‐△‐)を用いて得られたほど高くなかった。比較すると、AkAAは試験した両pH(‐◆◇‐)にてほとんど性能が良くなかった。この実施例はAmyEがpH5.8あたりにて糖化反応において完全にグルコアミラーゼの代わりになると実証した。また、AmyEはpH4.3にて糖化反応において部分的または完全にグルコアミラーゼの代わりになることも実証した。
【0232】
実施例5
pH4.5及びpH5.6(酢酸ナトリウム緩衝液を用いて)にてマルトースをグルコースへ転換するAmyEの能力を実施例2.4に記載のグルコース発酵試験を用いて試験した。反応を2、5、及び8日後分析した。図5に示すように、AmyE(配列番号1)、AmyE‐tr(配列番号2)、及びAmy31A(配列番号3)はマルトースをグルコースへ効率的に転換し、ゲオバシルス ステアロテルモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)アルファ‐アミラーゼ、AmyS(配列番号4、34アミノ酸リーダー配列を用いて示される)がこれらの条件下にて最少量のグルコース形成を示した。
【0233】
実施例6
DP7又は不溶性、未処理顆粒状デンプンの加水分解を触媒するAmyE(配列番号1)及びAmyE‐tr(配列番号2)の能力を試験した。不溶性デンプンから生成されるサッカライドの検出のために用いるHPLC法は実施例2.4に記載する。分解産物を反応を開始後多様な時間にてHPLC分析により定量した。
【0234】
図6は、72時間1ppmAmyE‐tr存在下にて0.5%マルトヘプタオース基質をインキュベートした後、得られた加水分解産物を示す。図6の下の図にて見られるように、AmyE‐trは72時間でDP7基質のほとんどすべてをグルコースへ転換する。結果は、AmyEはDP7基質をグルコースへ効率的に分解できることを実証する。
【0235】
比較のために、AmyS(配列番号4)又はスペザイム(商標)フレッド(SPEZYME(商標)FRED) (「フレッド(Fred)」配列番号8)のいずれも1ppmによるDP7基質の分解を図7及び図8にそれぞれ示す。反応からのサンプルを上記実施例2.4に記載のHPLC法を用いて分析した。図7の上から下の図はAmyS添加後の0時間、2時間、4時間、及び24時間での反応産物を示す。図8の上から下の図はスペザイム(商標)フレッド(SPEZYME(商標)FRED)添加後0時間、1時間、2時間、3時間での反応産物を示す。結果は示された時間にてAmyS及びスペザイム(商標)フレッド存在下、DP7基質のかなりの量がDP2またはそれ以上の重合度にて維持されることを示す。
【0236】
図9は実施例2.4に記載の手法に従って、32℃にて1ppmAmyE(配列番号1)を用いる5%トウモロコシ粉溶液をインキュベートする結果を示す。結果はAmyEそれ自身により、不溶性顆粒状デンプンを効率的にグルコースへ転換することを示す。
【0237】
[配列表]
配列リスト
配列番号1:完全長バシルス スブチリス(Bacillus. subtilis)AmyEアミノ酸配列。天然シグナル配列を示していない。

配列番号2:欠失バシルス スブチリス(Bacillus. subtilis)AmyE(AmyE−tr)アミノ酸配列。天然シグナル配列を示していない。

配列番号3: バシルス スブチリス(Bacillus. subtilis)アルファ‐アミラーゼ変異体Amy31Aアミノ酸配列。(UniProtKB/TrEMBLアクセション番号O82953)天然シグナル配列を太字で示す。

配列番号4:欠失ゲオバシルス ステアロテルモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)アルファ‐アミラーゼ(AmyS, a/k/a 「エチル3(Ethyl3)」) タンパク質配列。シグナル配列を太字で示す。

配列番号5:ゲオバシルス ステアロテルモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)アルファ‐アミラーゼ (AmyR、スペザイム(商標)エクストラ(Spezyme(商標)Xtra)アミラーゼ) アミノ酸配列。

配列番号 6:アスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachii)アルファ‐アミラーゼ (AkAA)アミノ酸配列。

配列番号7:トリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼ(TrGA)アミノ酸配列(WO 2006/060062の配列番号3)。プロ配列をイタリック体で示す。



配列番号8:スペザイム(商標)フレッド(SPEZYME(商標)FRED)アルファ‐アミラーゼアミノ酸配列。

配列番号9: 配列番号1のAmyEをコードするヌクレオチド配列。



配列番号10: AmyE-tr (配列番号2)をコードするヌクレオチド配列。

配列番号 11:バシルス スブチリス(B. subtilis)Amy31A (配列番号3)をコードするヌクレオチド配列。



配列番号12:ゲオバシルス ステアロテルモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)AmyS (配列番号4)をコードするヌクレオチド配列。

配列番号13:スペザイム(商標)エクストラ(Spezyme(商標)Xtra)アミラーゼ遺伝子(配列番号5)のヌクレオチド配列。



配列番号: 14:アスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachii)アルファ‐アミラーゼ(AkAA)遺伝子(配列番号:6)のヌクレオチド配列。

配列番号15:トリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼ遺伝子(配列番号: 7)のヌクレオチド配列。

配列番号16: AmyL遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号8)。



配列番号17:配列番号1のAmyEの天然シグナル配列。
MFAKRFKTSLLPLFAGFLLLFHLVLAGPAAASAETANKSNE

配列番号18: プライマー PSTAMYE-F'
CTTCTTGCTGCCTCATTCTGCAGCTTCAGCACTTACAGCACCGTCGATCAAAAGCGGAAC'

配列番号19:プライマー AMYENOPST-R'
CTGGAGGCACTATCCTGAAGGATTTCTCCGTATTGGAACTCTGCTGATGTATTTGTG'
配列番号20:プライマー AMYENOPST-F'
CACAAATACATCAGCAGAGTTCCAATACGGAGAAATCCTTCAGGATAGTGCCTCCAG'
配列番号21:プライマー HPAIAMYE-R'
CAGGAAATCCGTCCTCTGTTAACTCAATGGGGAAGAGAACCGCTTAAGCCCGAGTC'
配列番号 22:プライマー HPAIAMYE-R'
CAGGAAATCCGTCCTCTGTTAACTCAATCAGGATAAAGCACAGCTACAGACCTGG'
配列番号23:プライマー AMYE SEQ-F'
TACACAAGTACAGTCCTATCTG'
配列番号24:プライマー AMYE SEQ-F'
CATCCTCTGTCTCTATCAATAC
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)バシルス スブチリス(Bacillus. subtilis)アルファ‐アミラーゼ(AmyE)をオリゴサッカロイド又はポリサッカロイド基質と接触させること、及び
(ii)基質溶液をグルコースを含む溶液へ転換させること、
を含む、
バシルス スブチリス(Bacillus. subtilis)アルファ‐アミラーゼ(AmyE)を用い、オリゴサッカロイド又はデンプン基質溶液からグルコースを生成する方法であり、
ここで、AmyEが配列番号1のAmyEに少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む方法。
【請求項2】
オリゴサッカロイド溶液が主にマルトヘプタオース(DP7)又は高級オリゴサッカロイドを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
デンプン溶液が未処理のトウモロコシデンプンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
転換させる間に基質溶液のpHが約pH5.6から約pH5.8であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
転換させることが基質溶液をグルコアミラーゼと接触させることを含まないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(i)がデンプン基質をグルコアミラーゼと接触させることをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
グルコアミラーゼを約0.5GAU/g ds未満の濃度で添加することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
グルコアミラーゼを約0.02GAU/g ds未満の濃度で添加することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
グルコースを含む溶液が少なくとも約0.2g/Lのグルコースを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
グルコースを含む溶液が少なくとも約0.4g/Lのグルコースを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
グルコースを含む溶液が少なくとも約1.4g/Lのグルコースを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
AmyEが配列番号1、配列番号2、配列番号3、NCBI アクセション番号 ABW75769、NCBI アクセション番号 ABK54355、NCBI アクセション番号 AAF14358、NCBI アクセション番号 AAT01440、NCBI アクセション番号 AAZ30064、NCBI アクセション番号 NP_388186、NCBI アクセション番号 AAQ83841、及びNCBI アクセション番号BAA31528に記載のアミノ酸配列を含むAmyEからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
(iii)グルコースを含む溶液を発酵させて、エタノールを生成することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
エタノール濃度が少なくとも約6%v/vのエタノールであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
エタノール濃度が少なくとも約14%v/vのエタノールであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(iii)グルコースを含む溶液をグルコース イソメラーゼと接触させて、高フルクトーストウモロコシシロップを生成することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
(i)織物をAmyEに接触させること、及び
(ii)織物を湯通しすること
を含む、
織物を湯通しする方法であり、
ここで、AmyEが配列番号1のAmyEと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む方法。
【請求項18】
(i)洗浄すべき物をAmyEを含む洗剤組成物に接触させること、及び
(ii)洗浄すべき物を洗浄させること
を含む、
物を洗浄する方法であり、
ここで、AmyEが配列番号1のAmyEと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む方法。
【請求項19】
洗浄すべき物が、食器又は衣料であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
洗剤組成物が非粉塵粒質物又は安定化液体であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
洗剤組成物がセルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
アミラーゼがアルファ‐アミラーゼ、ベータ‐アミラーゼ、又はグルコアミラーゼであることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
洗剤組成物がリパーゼ、ペルオキシダーゼ、マンナナーゼ、ぺクチン リアーゼ、又はそれらの組み合わせをさらに含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項24】
洗剤組成物が手作業又は自動食器洗浄洗剤組成物であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項25】
洗剤組成物がプロテアーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、マンナナーゼ、ペクチン リアーゼ、又はそれらの組み合わせをさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2011−522544(P2011−522544A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512655(P2011−512655)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/046279
【国際公開番号】WO2009/149271
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(509240479)ダニスコ・ユーエス・インク (81)
【Fターム(参考)】