説明

バス運行管理システム

【課題】バス管理センターにおける処理負担の軽減を図りつつ、バス停でバスを待つ乗客に対して迅速にバスの運行状況を示すこと
【解決手段】 本発明に係るバス運行管理システム1は、バス管理センター3で各バスに設置される車載装置2より運行状況情報を受信し、受信した運行状況情報をバス管理センター3より各バス停4に送信することによって、各バス停4の表示パネルにバスの運行状況を表示させるシステムである。車載装置2は、位置検出手段10より検出された走行位置よりバスの運行経路における現在位置を判断し、記録手段12に記録される運行予定データ12aにより求めた現在位置の通過予定時間と、時間検出手段10により検出された時間とを比較することによってバスの運行状況を判断する。判断された運行状況情報は、送信手段11によりバス管理センター3に送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス管理センターで各バスに設置される車載装置より運行状況情報を受信し、受信した運行状況情報をバス管理センターより各バス停に送信することによって、各バス停の表示パネルにバスの運行状況を表示させるバス運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な路線バスの運行は、バスがどの停留所に何時に到着するかを示した1日分のスタフデータ(運行予定データ)に基づいて行われる。バスの運行管理を行うバス管理センターでは、このスタフデータに基づいてバス停の発着時間管理を行っており、各バス停に掲示される時刻表もこのスタフデータに対応するものとなっている。
【0003】
通常のバスの運行に際しては、運転手がこのスタフデータに基づいて運行管理を行っているためバスの遅延・早発を防ぐことができる。しかしながら、交通状況は、交通渋滞や路面工事等により変化するものであるため、スタフデータに従った運行を行うことが困難な場合もある。従って、交通渋滞等によりバスが予定よりも遅れてバス停に到着する場合、バス停の乗客は予定時刻を過ぎた後にどの程度バスが遅れて到着するかを知らないままバスを待ち続ける必要がある。
【0004】
近年では、このような乗客の不安を低減させるべく、バス停の表示パネル等にバスの遅れ時間等のバス運行情報を提示するバス運行管理システムが考案されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
バス運行管理システムでは、バスにGPSアンテナ等が設置されており、GPSアンテナにより検出されたバスの走行位置とその検出時間とが無線通信手段等を通じてバス管理センターに送信されている。バス管理センターでは、受信したバスの位置情報と検出時間とに基づいて、バスの運行経路上の通過時間を求め、スタフデータに記録される予定通過時間との比較を行うことによってバスの遅延状況を判断する。
【0006】
バスが遅延していると判断された場合、バス管理センターは、無線通信手段等を用いて各バス停に遅延時間情報を送信し、各バス停では受信した遅延時間情報をバス停の表示パネル等に表示させる。
【特許文献1】特開2005−38317号公報(第3頁)
【特許文献2】特開2003−44986号公報(第5―8頁、第2図、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したようなバス運行管理システムでは、バス管理センターに全てのバスの位置情報および検出時間情報が集中して送信されてしまう。このため、バス管理センターでは全てのバスの遅延時間判断を行わなくてはならず、バス管理センターの処理負担が増大してしまう傾向にあった。バス管理センターの処理負担が増大した場合には、遅延時間の判断処理に時間がかかってしまい、バス停でバスの遅れ時間の表示を迅速に行うことができないという問題があった。
【0008】
また、この傾向は、路線バスの運行台数、運行規模が大きくなればなるほど増大するものであるため、バス会社はシステムの処理速度の向上および安定化を図るために、さらなる設備負担をしなければならないという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、バス管理センターにおける処理負担の軽減を図りつつ、バス停でバスを待つ乗客に対して迅速にバスの運行状況を示すことが可能なバス運行管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るバス運行管理システムは、バス管理センターで各バスに設置される車載装置より運行状況情報を受信し、受信した運行状況情報をバス管理センターより各バス停に送信することによって、各バス停の表示パネルにバスの運行状況を表示させるバス運行管理システムであって、前記車載装置が、前記バスの走行位置を検出する位置検出手段と、前記走行位置の検出時における時間を求める時間検出手段と、前記バスの運行予定データを記録する記録手段と、前記位置検出手段より検出された前記走行位置より前記バスの運行経路における現在位置を判断し、前記記録手段に記録される運行予定データより求めた前記現在位置の通過予定時間と、前記時間検出手段により検出された時間とを比較することによって前記バスの運行状況を判断する運行状況判断手段と、該運行状況判断手段により判断された運行状況情報を前記バス管理センターに送信する送信手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るバス運行管理システムは、バス管理センターで各バスに設置される車載装置より運行状況情報を受信し、受信した運行状況情報をバス管理センターより各バス停に送信することによって、各バス停の表示パネルにバスの運行状況を表示させるバス運行管理システムであって、前記車載装置が、前記バスがバス停に到着・通過したことを検出するバス停検出手段と、前記バス停に到着・通過した時間を求める時間検出手段と、前記バスの運行予定データを記録する記録手段と、前記バス停検出手段によりバス停に到着・通過したことが検出された場合に、前記記録手段に記録される運行予定データより求めた前記バス停の通過予定時間と、前記時間検出手段により検出された時間とを比較することによって前記バスの運行状況を判断する運行状況判断手段と、該運行状況判断手段により判断された運行状況情報を前記バス管理センターに送信する送信手段とを備えることを特徴とするものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るバス運行管理システムでは、バス管理センターではなく、各バスに設置される車載装置でバスの運行状況判断を行うため、バス管理センターにおける処理負担の軽減を図ることができる。
【0013】
また、バス管理センターでは、各車載装置より受信したバスの運行状況情報をそのまま各バス停に送信すればよいため、各バス停に迅速にバスの早発・遅延時間等の運行状況を伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るバス運行管理システムを、図面を用いて詳細に説明する。図1は、バス運行管理システムの概略構成を示すブロック図である。バス運行管理システム1は、各バスに設置される車載装置2と、複数台のバスの運行管理を行うバス管理センター3とを有している。
【0015】
車載装置2は、GPS検出器10、通信機11、記録装置12、バス制御部13を備えている。
【0016】
GPS検出器10は、GPSアンテナ10aと検出本体装置10bとにより構成されている。GPSアンテナは、GPS衛星よりGPS信号を受信し、GPSアンテナにより受信されたGPS信号に基づいて、検出本体装置10bがバスの走行位置とその検出時間とを求める。
【0017】
記録装置12は、ハードディスクや大容量メモリ等の記憶手段を備えており、バスの運行予定を示したスタフデータ(運行予定データ)12a等が記録されている。スタフデータ12aは、各バスの運行予定が規定されたデータであり、運転手はこのスタフデータ12aを確認することによって、バスの運行経路、到着・発着時間等の管理を行っている。
【0018】
通信機11は、バス管理センター3との通信を行うために使用される。通信機11は、携帯電話、PHS、無線LAN等の無線通信技術を用いてバス管理センター3との情報の交信を行う。
【0019】
バス制御部13は、図示を省略したCPUやメモリ等により構成される処理ユニットである。バス制御部13は、GPS検出器10により求められたバスの走行位置と検出時間とを、記録装置12に記録されるスタフデータ12aの情報と比較することによって、バスの運行状況を判断する。
【0020】
図2は、バス制御部13におけるバス運行状況判断処理を示したフローチャートである。
【0021】
まず、バス制御部13は、バス停の到着・通過情報を取得する(ステップS.1)。バス停の到着は、運転手により操作されるドアの開閉操作ボタン14aの操作従って判断される。この開閉操作ボタン14aが操作されてバス停でドアが開いたことを基準として、バス制御部13はバス停の到着を判断する。また、バスがバス停に止まらずに通過する場合には、バス停通過後直後に運転手により操作されるバス停案内ボタン14bの操作に基づいてバス停の通過を判断する。バス停案内ボタン14bが操作されると、次のバス停の音声案内や音声広告が開始されると共に、車内の案内表示板に次のバス停名称が表示される。
【0022】
バス停の到着・通過情報を取得した場合、バス制御部13は、GPS検出器10よりバスの走行位置と検出時間とを取得する(ステップS.2)。バス制御部13は、バス停の到着・通過情報を取得した直後に検出時間を取得することによって、バス停の到着・通過時間を求めることができる。
【0023】
そして、バス制御部13は、記録装置12に記録されるスタフデータを参考にして、バス停の到着予定時刻を求め(ステップS.3)、到着予定時間と検出時間とを比較することによってバスの運行状況、具体的には、バスがどれくらい早くバス停を出発したか、どれくらい遅くバス停に到着したかを求める(ステップS.4)。
【0024】
このようにバスの車載装置2においてバスの早発・遅延判断を行うことによって、従来バス管理センター3で行っていた処理を各車載装置2に分担することができ、バス管理センター3における処理負担を軽減させることが可能となる。
【0025】
バス制御部13は、求められたバスの早発・遅延時間(運行状況情報)を、通信機11を用いてバス管理センターへと送信する(ステップS.5)。
【0026】
バス管理センター3では、各バスの早発・遅延に関する運行状況情報を受信し、受信した運行状況情報を、各バス停4に無線通信手段を用いて配信する。各バス停4では、バス管理センター3より受信した運行状況情報をバス停4の表示パネルに表示させ、バス停でバスを待つ乗客にバスの遅れ時間等を知らせる。
【0027】
以上説明したように、本発明に係るバス運行管理システム1では、バス管理センター3ではなく、各バスに設置される車載装置2でバスの運行状況判断(早発・遅延時間判断)を行うため、バス管理センター3における処理負担の軽減を図ることができる。
【0028】
また、バス管理センター3では、各車載装置2より受信したバスの運行状況情報をそのまま各バス停4に配信すればよいため、各バス停4に迅速にバスの早発・遅延時間を伝えることができる。
【0029】
以上、本発明に係るバス運行管理システムを、図面を用いて説明したが、本発明に係るバス運行管理システムは上述した実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0030】
例えば、上述した実施形態においては、バスの到着・通過情報を取得した場合にGPS検出器10により検出時間を取得して、バス停の到着・通過時間を判断することとしたが、このように、バス停の到着・通過したタイミングに関係なく、GPS検出器10で定期的(一定間隔、例えば1分毎等)にバスの走行位置と検出時間とを検出するようにしてもよい。
【0031】
定期的にバスの走行位置と検出時間とを検出する場合には、その走行位置と検出時間とに基づいて、バス制御部13が次のバス停4の到着時間を予測し、その予測時間とスタフデータ12aに記録される予定到着時間との時間差を求めることにより、車載装置2でバスの運行状況判断を行うことができる。このような場合も、バス管理センター3でバスの運行状況判断(早発・遅延時間判断)を行う必要がなくなるので、上述した実施形態と同様に、バス管理センター3における処理負担の軽減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係るバス運行管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る車載装置のバス運行状況判断処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1 …バス運行管理システム
2 …車載装置
3 …バス管理センター
4 …バス停
10 …GPS検出器(位置検出手段、時間検出手段)
10b …検出本体装置
11 …通信機(送信手段)
12 …記録装置(記録手段)
12a …スタフデータ(運行予定データ)
13 …バス制御部(運行状況判断手段)
14a …開閉操作ボタン(バス停検出手段)
14b …バス停案内ボタン(バス停検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バス管理センターで各バスに設置される車載装置より運行状況情報を受信し、受信した運行状況情報をバス管理センターより各バス停に送信することによって、各バス停の表示パネルにバスの運行状況を表示させるバス運行管理システムであって、
前記車載装置は、
前記バスの走行位置を検出する位置検出手段と、
前記走行位置の検出時における時間を求める時間検出手段と、
前記バスの運行予定データを記録する記録手段と、
前記位置検出手段より検出された前記走行位置より前記バスの運行経路における現在位置を判断し、前記記録手段に記録される運行予定データより求めた前記現在位置の通過予定時間と、前記時間検出手段により検出された時間とを比較することによって前記バスの運行状況を判断する運行状況判断手段と、
該運行状況判断手段により判断された運行状況情報を前記バス管理センターに送信する送信手段と
を備えることを特徴とするバス運行管理システム。
【請求項2】
バス管理センターが各バスに設置される車載装置より運行状況情報を受信し、受信した運行状況情報をバス管理センターより各バス停に送信することによって、各バス停の表示パネルにバスの運行状況を表示させるバス運行管理システムであって、
前記車載装置は、
前記バスがバス停に到着・通過したことを検出するバス停検出手段と、
前記バス停に到着・通過した時間を求める時間検出手段と、
前記バスの運行予定データを記録する記録手段と、
前記バス停検出手段によってバス停に到着・通過したことが検出された場合に、前記記録手段に記録される運行予定データより求めた前記バス停の通過予定時間と、前記時間検出手段により検出された時間とを比較することによって前記バスの運行状況を判断する運行状況判断手段と、
該運行状況判断手段により判断された運行状況情報を前記バス管理センターに送信する送信手段と
を備えることを特徴とするバス運行管理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−264875(P2007−264875A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87019(P2006−87019)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】