説明

バックドア開口部のボデー構造

【課題】サイメンアウタの外縁部とトルーフとの接合部位の口開きを抑制又は防止する。
【解決手段】バックドア開口部100の上側コーナー部102に沿って湾曲するサイメンアウタ130の外縁部130Aが、荷重の入力源であるダンパーステーブラケット200の外周縁200Aから等距離又は略等距離となる形状とされている(サイメンアウタ130の外縁部130Aとダンパーステーブラケット200の外周縁200Aとの形状が相似形又は略相似形とされている)。これにより、サイメンアウタ130の外縁部130Aとトルーフ150との接合部位に発生する力が均等化される。よって、シーラSのシーラ割れが抑制又は防止され、その結果、トルーフ150とサイメンアウタ130との接合部位の口開きを抑制又は防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
バックドア開口部のボデー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バックドアによって開閉される車両後端部のバックドア開口部を通して、リヤシートの車両後方側のラゲージルームへの荷物の出し入れが可能とされた車両が知られている。
【0003】
このような車両のバックドアは、バックドア開口部の上端部に取り付けられたヒンジによって支持され、このヒンジを中心にして上下方向に回転させることでバックドア開口部を開閉する構造とされていることが多い。
【0004】
また、バックドアの開放操作力を低減させ、且つ開放状態を維持させるため、バックドアとボデーとの間にダンパーステーを掛け渡した構成が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】2003−226263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、バックドア開口部の上側コーナー部の周りを構成すると共に外縁部がサイメンアウタと接合されたトルーフに、ダンパーステーの端部を支持するダンパーステーブラケットが固定されたボデー構造とされている場合がある。
【0006】
このようなボデー構造の場合、バックドア開閉時にダンパーステーブラケットから入力される荷重(反力)によって、サイメンアウタの外縁部とトルーフとの接合部位が開く、所謂「口開き」が発生することが考えられる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべく成されたもので、サイメンアウタの外縁部とトルーフとの接合部位の口開きを抑制又は防止することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のバックドア開口部のボデー構造は、車両後端部のバックドア開口部の周りを構成し、前記バックドア開口部の上側コーナー部から車両下方側に延在するトルーフと、前記トルーフに固定され、前記バックドア開口部を開閉するバックドアに取り付けられたダンパーステーの端部を支持するダンパーステーブラケットと、前記トルーフの外縁部分と接合されたサイメンアウタと、を有し、前記サイメンアウタにおける前記上側コーナー部に沿って湾曲し且つ前記ダンパーステーブラケットの外周縁に対向する外縁部が、前記ダンパーステーブラケットの外周縁から等距離又は略等距離となる形状とされたことを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載のバックドア開口部のボデー構造では、バックドア開閉時にダンパーステーブラケットから入力される荷重(反力)によって、サイメンアウタの外縁部とトルーフとの接合部位に力が発生する(接合部位に力が加わる)。
【0010】
このとき、サイメンアウタの外縁部とトルーフとの接合部位に発生する力は、荷重の入力源であるダンパーステーブラケットの外周縁からの距離によって影響される。例えば、ダンパーステーブラケットの外周端からの距離が半分の箇所には、モーメントの釣り合いから約2倍の力が発生する。
【0011】
ここで、サイメンアウタにおける上側コーナー部に沿って湾曲し且つダンパーステーブラケットの外周縁に対向する外縁部は、荷重の入力源とされるダンパーステーブラケットの外周縁から等距離又は略等距離となる形状とされている(サイメンアウタの外縁部とダンパーステーブラケットの外周縁との形状が相似形又は略相似形とされている)。
【0012】
これにより、サイメンアウタの外縁部とトルーフとの接合部位に発生する力が均等化される。よって、接合部位におけるトルーフとサイメンアウタとが略同じように変形し、トルーフとサイメンアウタとの相対変位量が小さくなる。したがって、トルーフとサイメンアウタとの接合部位の口開きが抑制又は防止される。
【0013】
請求項2に記載のバックドア開口部のボデー構造は、請求項1に記載の構成において、前記ダンパーステーブラケットの外周縁に対向する前記サイメンアウタの外縁部は、前記トルーフと溶接されていない非溶接部位とされていると共に、シーラが塗布されていることを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載のバックドア開口部のボデー構造では、ダンパーステーブラケットの外周縁に対向するサイメンアウタの外縁部は、トルーフと溶接されていない非溶接部位とされていると共に、この部位にはシーラが塗布されている。
【0015】
ここで、ダンパーステーブラケットから入力される荷重によって、シーラの一部に応力が集中するとシーラ割れが発生する。
【0016】
しかし、サイメンアウタの外縁部(シーラと塗布されている部位)が、ダンパーステーブラケットの外周縁から等距離又は略等距離となる形状とされることで、サイメンアウタの外縁部とトルーフとの接合部位に発生する力が均等化される。
【0017】
したがって、ダンパーステーブラケットから入力される荷重によって、シーラの一部に応力が集中することが抑制又は防止される。よって、シーラ割れが抑制又は防止され、その結果、トルーフとサイメンアウタとの接合部位の口開きが抑制又は防止される。
【0018】
請求項3に記載のバックドアのボデー構造では、車両後部のバックドア開口部の周りを構成し、上側コーナー部から車両下方側に延在するトルーフと、前記トルーフに固定され、前記バックドア開口部を開閉するバックドアに取り付けられたダンパーステーの端部を支持するダンパーステーブラケットと、前記トルーフの外縁部分と接合されたサイメンアウタと、を有し、前記サイメンアウタにおける前記上側コーナー部に沿って湾曲し且つ前記ダンパーステーブラケットの外周縁に対向する外縁部には、前記ダンパーステーブラケット側に突出する凸部が形成され、前記トルーフには、前記ダンパーステーブラケットの外周縁の法線方向に沿って、前記ダンパーステーブラケットの外周縁の近傍から前記凸部の屈曲部位又はその近傍に向けて、ビードが形成されていることを特徴としている。
【0019】
請求項3に記載のバックドア開口部のボデー構造では、バックドア開閉時にダンパーステーブラケットから入力される荷重(反力)によって、サイメンアウタの外縁部とトルーフとの接合部位に力が発生する(接合部位に力が加わる)。
【0020】
このとき、トルーフとサイメンアウタの外縁部との接合部位に発生する力は、荷重の入力源であるダンパーステーブラケットの外周端との距離によって変わってくる。例えば、ダンパーステーブラケットの外周端からの距離が半分の箇所には、モーメントの釣り合いから2倍の力が発生する。
【0021】
ここで、サイメンアウタにおける上側コーナー部に沿って湾曲し且つダンパーステーブラケットの外周縁に対向する外縁部には、ダンパーステーブラケット側に突出する凸部が形成されている。凸部はダンパーステーブラケットの外周端からの距離が近いので、凸部には大きな力が発生する。特に、凸部の屈曲部位に応力が集中する。
【0022】
しかし、トルーフには、ダンパーステーブラケットの外周縁の法線方向に沿って、すなわち、荷重の入力方向に沿って、ダンパーステーブラケットの外周縁の近傍から荷重が集中する凸部の屈曲部位又はその近傍に向けて、ビードが形成されている。
【0023】
このようにビードが形成されることでトルーフの剛性が効果的に向上され、その結果、トルーフの変形が効果的に抑制される。したがって、トルーフとサイメンアウタとの接合部位の口開きが抑制又は防止される。
【0024】
請求項4に記載のバックドア開口部のボデー構造は、請求項3に記載の構成において、前記ダンパーステーブラケットの外周縁に対向する前記サイメンアウタの外縁部は、前記トルーフと溶接されていない非溶接部位とされていると共に、シーラが塗布されていることを特徴としている。
【0025】
請求項4に記載のバックドア開口部のボデー構造では、ダンパーステーブラケットの外周縁に対向するサイメンアウタの外縁部は、トルーフと溶接されていない非溶接部位とされていると共に、この部位にはシーラが塗布されている。
【0026】
ここで、ダンパーステーブラケットから入力される荷重によって、サイメンアウタの外縁部における凸部の屈曲部位のシーラに応力が集中するとシーラ割れが発生する。
【0027】
しかし、トルーフにダンパーステーブラケットの外周縁の法線方向に沿って、ダンパーステーブラケットの外周縁の近傍から荷重が集中する凸部の屈曲部位又はその近傍に向けて、ビードが形成されることで剛性が効果的に向上され、その結果、トルーフの変形が効果的に抑制される。
【0028】
したがって、ダンパーステーブラケットから入力される荷重によって、凸部の屈曲部位のシーラに応力が集中することが抑制又は防止される。よって、シーラ割れが抑制又は防止され、その結果、トルーフとサイメンアウタとの接合部位の口開きが抑制又は防止される。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように請求項1に記載のバックドア開口部のボデー構造によれば、サイメンアウタの外縁部とトルーフとの接合部位の口開きを抑制又は防止することができる、という優れた効果を有する。
【0030】
請求項2に記載のバックドア開口部のボデー構造によれば、シーラの一部に応力が集中することによるシーラ割れを抑制又は防止することができる、という優れた効果を有する。
【0031】
請求項3に記載のバックドア開口部のボデー構造によれば、サイメンアウタの外縁部に凸部が形成されていても、サイメンアウタの外縁部とトルーフとの接合部位の口開きを抑制又は防止することができる、という優れた効果を有する。
【0032】
請求項4に記載のバックドア開口部のボデー構造によれば、サイメンアウタの外縁部における凸部の屈曲部位にシーラに応力が集中することによるシーラ割れを抑制又は防止することができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図1から図3を用いて、本発明におけるバックドア開口部のボデー構造の第一実施形態について説明する。図1は、バックドアが開放された状態における車両後部を斜め後方側から見た斜視図である。図2は、車両後端部のバックドア開口部を示す後面図である。図3は、車両後方側から見てバックドア開口部の右側の要部を示す図である。なお、図3は、右側のみ図示しているが、左側も左右対称である以外は同様の構成とされている。また、図中の矢印UPは車両上方向を示し、矢印FRは車両前方向を示し、矢印OUTは車両幅方向外側方向を示す。「×印」はスポット溶接打点を表している。
【0034】
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係るバックドア開口部のボデー構造を備える車両10は、車両後端部に略矩形状のバックドア開口部100が設けられている。バックドア開口部100の周りは、車両幅方向両外側に配設されたDピラー16や車両上方側に配設されたリヤルーフヘッダ18等で構成されている。
【0035】
バックドア開口部100は、バックドア12により開閉される。バックドア12はバックドア開口部100の上端周りを構成するリヤルーフヘッダ18に取り付けられたヒンジ(図示略)によって支持されている。ヒンジは車両幅方向に回転軸を持ち、バックドア12がヒンジを中心にして上下方向(矢印K方向)に回転されることで、バックドア開口部100が開閉される。
【0036】
リヤシート(図示略)の車両後方側には、車両用荷室としてのラゲージルーム14が設けられている。そして、バックドア12を上方に回転させて開けることにより、バックドア開口部100を通して、ラゲージルーム14への荷物の出し入れが可能となっている。
【0037】
バックドア12の車両幅方向両側部と車両後端部のボデー(バックドア開口部100の周りを構成する後述するトルーフ150)との間には、棒状のダンパーステー20が掛け渡されている。ダンパーステー20は、円筒形状のシリンダ22と、このシリンダ22内に挿入された棒状のピストンロッド24と、を備えている。ダンパーステー20のピストンロッド24のバックドア側支持部24A(ダンパーステーの一端部)は、バックドア12の車両幅方向両側部にボールジョイントによって、回転自在に取り付けられている。また、ダンパーステー20のシリンダ22の開口側端部と反対側のボデー側支持部22A(ダンパーステーの他端部)は、Dピラー16を構成する後述するトルーフ150に固定されたダンパーステーブラケット200(図3参照)に回転自在に取り付けられている。
【0038】
したがって、ダンパーステー20は、バックドア12の開度に応じてボデー側支持部22Aを中心として伸縮しながら回転可能とされている。そして、ダンパーステー20によって、バックドア12の開放操作力が低減され、且つ開放状態が維持される。
【0039】
サイメンアウタ130は、Dピラー16やルーフサイド部を構成するルーフサイドレール19等のボデー外側を構成するパネルとされている。
【0040】
図1と図2とに示すように、トルーフ150は、Dピラー16の一部を構成する長尺状のパネルとされており、バックドア開口部100における上側コーナー部102から車両下方側に向けて延在している。なお、トルーフ150の上部側は、バックドア開口部100の上側コーナー部102に沿って車両幅方向内側に湾曲されている。なお、図2では、バックドア12は省略されている。
【0041】
図2に示すように、トルーフ150における上側コーナー部102を構成する部位には、前述したダンパーステー20が支持されるダンパーステーブラケット200が固定されている。ダンパーステーブラケット200は、トルーフ150の裏側に配置されたリテーナー(図示略)とでトルーフ150を挟み、ボルト202(図3参照)及びナット(図示略)によって締結固定されている。なお、本実施形態においては、リテーナ(図示略)は、トルーフ150と略同じ大きさ(面積)とされている。
【0042】
図3に示すように、ダンパーステーブラケット200は、車両後方側から見た形状が、上端部が半円形状とされた車両上下方向を長手方向とする略長方形状とされている。なお、図3ではダンパーステー20は省略されている。
【0043】
ここで、サイメンアウタ30におけるダンパーステーブラケット200の外周縁200Aに対向する外縁部130A(サイドエッジ)の形状は、バックドア開口部100の上側コーナー部102に沿って車両幅方向内側に湾曲された湾曲形状とされている(外縁部203Aの形状は、上側コーナー部102に沿った円弧状とされている)。
【0044】
更に、ダンパーステーブラケット200の外周縁端200Aから等距離又は略等距離になる形状とされている(図では距離aとされている)。換言すると、サイメンアウタ130の外縁部130Aの形状は、ダンパーステーブラケット200の外周縁200Aの形状と相似形又は略相似形とされている。なお、図3の二点鎖線で図示する201Aは、ダンパーステーブラケット200の外周縁200Aの相似形を表している。
【0045】
トルーフ150におけるバックドア開口部100と反対側の外縁部分は、サイメンアウタ130のバックドア開口部側の外縁部とスポット溶接されている。しかし、上側コーナー部102を構成する部位は、スポット溶接されていない(図3のスポット溶接打点×よりも上側部分はスポット溶接されていない)。
【0046】
よって、サイメンアウタ130におけるダンパーステーブラケット200の外周縁200Aに対向する外縁部130Aの部位(相似形状とされた部位)とトルーフ150とは、スポット溶接されていない非溶接部位とされている。しかし、この非溶接部位にはシーラSが塗布されてシールされている。このシーラSは、塗布時は高粘度の液体状であるが、塗布後に高温で焼付け処理されることで硬化する。
【0047】
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0048】
バックドア12の開閉時(図1参照)にダンパーステー20を介してダンパーステーブラケット200から入力される荷重(反力)によって、サイメンアウタ130の外縁部130Aとトルーフ150との接合部位に力が発生する(接合部位に力が加わる)。
【0049】
このとき、サイメンアウタ130の外縁部130Aとトルーフ150との接合部位に発生する力は、荷重の入力源であるダンパーステーブラケット200の外周縁200Aからの距離に影響される。
【0050】
例えば、図4に示すように、サイメンアウタ830の外縁部830Aにおけるダンパーステーブラケット200の外周縁端200Aからの距離が半分(a/2)の箇所830AGには、モーメントの釣り合いから約2倍の力が発生する。
【0051】
これに対して、本実施形態では、図3に示すように、バックドア開口部100の上側コーナー部102に沿って湾曲するサイメンアウタ130の外縁部130Aが、荷重の入力源であるダンパーステーブラケット200の外周縁200Aから等距離又は略等距離となる形状とされている(サイメンアウタ130の外縁部130Aとダンパーステーブラケット200の外周縁200Aとの形状が相似形又は略相似形とされている)。
【0052】
これにより、サイメンアウタ130の外縁部130Aとトルーフ150との接合部位に発生する力が均等化される。
【0053】
ここで、サイメンアウタ130におけるダンパーステーブラケット200の外周縁200Aに対向する外縁部130Aの部位(相似形状とされた部位)と、トルーフ150とは、スポット溶接されていない非溶接部位とされ、且つ、この部位にはシーラSが塗布されてシールされている。そして、ダンパーステーブラケットから入力される荷重によって、シーラの一部に応力が集中するとシーラ割れが発生する。
【0054】
しかし、前述したように、サイメンアウタ130の外縁部130Aとトルーフ150との接合部位、すなわち、シーラSが塗布されている部位に発生する力は均等化される。したがって、ダンパーステーブラケット200から入力される荷重によって、シーラSの一部に応力が集中することを抑制又は防止することができる。よって、シーラSのシーラ割れが抑制又は防止され、その結果、トルーフ150とサイメンアウタ130との接合部位の口開きを抑制又は防止することができる。
【0055】
ここで、前述したように、ダンパーステーブラケット200は、トルーフ150の裏側に配置されたリテーナー(図示略)で、トルーフ150を挟んでボルト202(図3参照)及びナット(図示略)で締結固定されている。そして、このリテーナを大幅に拡大することで、剛性を高めてトルーフ150の変形を抑え、その結果、サイメンアウタ130と動(変形)の差が小さくなることで、口開きを抑制又は防止することも考えられる。しかし、リテーナの大幅拡大は、コスト増や重量増につながる。
【0056】
或いは、トルーフ150の板厚を大幅に厚くして剛性を高めることで、トルーフの変形を抑え、口開きを抑制又は防止することも考えられる。しかし、やはりコスト増や重量増につながる。
【0057】
また、非溶接部位もスポット溶接することで接合強度を上げ、口開きを抑制又は防止することも考えられる。しかし、この上側コーナー部102近傍へのスポット溶接は、溶接用のガンが届きにくい等のため、スポット溶接が困難とされている。仮にスポット溶接が可能であっても、スポット溶接の打点が増えるので、その分、製造工程が複雑化する。
【0058】
これに対して、本実施形態の構成は、コスト増や重量増、或いは製造工程の複雑化等を招くことなく、口開きを防止又は抑制することができる。
【0059】
つぎに、図5を用いて、本発明におけるバックドア開口部のボデー構造の第二実施形態について説明する。なお、第一実施形態と同様に部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0060】
図5は、車両後方側から見てバックドア開口部の右側の要部を示す図である。なお、図5は、右側のみ図示しているが、左側も左右対称である以外は、同様の構成とされている。また、図中の矢印UPは車両上方向を示し、矢印FRは車両前方向を示し、矢印OUTは車両幅方向外側方向を示す。「×印」はスポット溶接打点を表している。
【0061】
図5に示すように、サイメンアウタ230におけるダンパーステーブラケット200の外周縁200Aに対向する外縁部230Aには、プレス要件等のため、ダンパーステーブラケット200側に突出する凸部232と凸部234とが形成されている(外縁部203Aの形状は、上側コーナー部102に沿った円弧状でなく、凸凹状とされている)。
【0062】
トルーフ250におけるバックドア開口部100と反対側の外縁部は、サイメンアウタ230のバックドア開口部側の外縁部にスポット溶接されている。しかし、上側コーナー部102を構成する部位は、スポット溶接されていない(図5中のスポット溶接部×よりも上側部分はスポット溶接されていない)。
【0063】
そして、サイメンアウタ230におけるダンパーステーブラケット200の外周縁200Aに対向する外縁部230Aは、トルーフ150とスポット溶接されていない非溶接部位とされ、且つ、この部位にはシーラSが塗布されてシールされている。このシーラSは、塗布時は高粘度の液体状であるが、塗布後に高温で焼付け処理されることで硬化する。
【0064】
トルーフ250には、複数(本実施形態では4本)のビード261、262、265、266が形成されている。ビード261は、ダンパーステーブラケット200の外周縁200Aの法線方向に沿って、ダンパーステーブラケット200の外周縁200Aの近傍から凸部232の屈曲部位232A(又はその近傍)に向けて形成されている。また、ビード262は、ダンパーステーブラケット200の外周縁200Aの法線方向に沿って、ダンパーステーブラケット200の外周縁200Aの近傍から凸部232の屈曲部位232B(又はその近傍)に向けて形成されている。同様に、ビード265、266は、法線方向に沿って、凸部234の屈曲部位232A,234B(又はその近傍)に向けて形成されている。
【0065】
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0066】
バックドア12の開閉時(図1参照)にダンパーステー20を介してダンパーステーブラケット200から入力される荷重(反力)によって、サイメンアウタ230の外縁部230Aとトルーフ250との接合部位に力が発生する。
【0067】
ここで、サイメンアウタ230の外縁部230Aには、ダンパーステーブラケット200側に突出する凸部232、234が形成されている。凸部232、234はダンパーステーブラケット200の外周縁端200Aからの距離が近いので、凸部232、234には大きな力が発生する。特に、凸部232、234の屈曲部位232A、232B、234A,234Bに応力が集中する。これにより、凸部232、234の屈曲部位232A、232B、234A,234Bのシーラに応力が集中し、シーラ割れが発生する。
【0068】
しかし、トルーフ250には、ダンパーステーブラケット200の外周縁200Aの法線方向に沿って、すなわち、ダンパーステーブラケット200から入力される荷重の入力方向に沿って、ダンパーステーブラケット200の外周縁200Aの近傍から凸部232、234の屈曲部位232A,232B,234A,234B(又はその近傍)に向けて、ビード261、262、265、266が形成されている。
【0069】
このようにビード261、262、265、266が形成されることでトルーフ250の剛性が効果的に向上され、その結果、トルーフ250の変形が効果的に抑制される。
【0070】
これにより、凸部232、234の屈曲部位232A、232B、234A,234BのシーラSに応力が集中することが抑制又は防止される(シーラSに加わる荷重が分散される(均等化される))。よって、シーラ割れが抑制又は防止され、その結果、トルーフ250とサイメンアウタ230との接合部位の口開きを抑制又は防止することができる。
【0071】
このように、プレス要件などによって、サイメンアウタ230の外縁部230Aの形状が決定されても(サイメンアウタの外縁部に凸部が形成されていても)、第一実施形態と同様に、コスト増や重量増、或いは工程の複雑化等を招くことなく、口開きを防止又は抑制することができる。
【0072】
つぎに、図6を用いて、本発明におけるバックドア開口部のボデー構造の第二実施形態の変形例について説明する。
【0073】
図6に示すように、サイメンアウタ330におけるダンパーステーブラケット200の外周縁200Aに対向する外縁部330Aには、ダンパーステーブラケット200側に突出し、車両下側外側方向に向けて階段状とされた階段部331が形成されている。なお、この階段部331の一段目(上側)が凸部332とし、二段目(下側)が凸部334とする。
【0074】
サイメンアウタ330の外縁部330Aは、トルーフ350とスポット溶接されていない非溶接部位とされ、且つ、この部位にはシーラSが塗布されてシールされている。
【0075】
トルーフ350には、複数(本変形例では3本)のビード362、364、366が形成されている。ビード362は、ダンパーステーブラケット200の外周縁200Aの法線方向に沿って、ダンパーステーブラケット200の外周縁200Aの近傍から凸部332の屈曲部位332A(又はその近傍)に向けて形成されている。ビード364は凸部332の屈曲部位332B(又はその近傍)に向けて形成されている。同様に、ビード366は、凸部334の屈曲部位334A(又はその近傍)に向けて形成されている。
【0076】
なお、本変形例の作用及び効果については、前述した第二実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0077】
ここで、図4に示す構成の場合であっても、トルーフに二点鎖線で示すビード810を形成することで、効果的にトルーフ150の剛性を向上させ、効果的に口開きを抑制又は防止することができる。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0079】
例えば、上記実施形態では、ダンパーステーブラケットの外周縁に対向するサイメンアウタの外縁部は、トルーフと溶接されていない非溶接部位とされていると共に、この非溶接部位にはシーラが塗布されていたが、これに限定されない。他の方法で接合されていても、本発明を適用することで、接合部位の口開きが抑制又は防止される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第一実施形態に係るバックドア開口部のボデー構造を備える車両の車両部を斜め後方側から見た斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るバックドア開口部のボデー構造を備える車両の車両後端部のバックドア開口部を示す後面図である。
【図3】車本発明の第一実施形態に係るバックドア開口部のボデー構造を備える車両のバックドア開口部の要部右側を示す図である。
【図4】参考例としてのバックドア開口部のボデー構造を示す後面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係るバックドア開口部のボデー構造を備える車両のバックドア開口部の要部右側を示す図である。
【図6】本発明の第二実施形態の変形例に係るバックドア開口部のボデー構造を備える車両のバックドア開口部の要部右側を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
10 車両
12 バックドア
20 ダンパーステー
100 バックドア開口部
102 上側コーナー部
130 サイメンアウタ
130A 外縁部
200 ダンパーステーブラケット
200A 外周縁
230 サイメンアウタ
230A 外縁部
232 凸部
232A 屈曲部位
232B 屈曲部位
234 凸部
234A 屈曲部位
234B 屈曲部位
250 トルーフ
261 ビード
262 ビード
265 ビード
266 ビード
330 サイメンアウタ
330A 外縁部
332 凸部
332A 屈曲部位
332B 屈曲部位
334 凸部
334A 屈曲部位
350 トルーフ
362 ビード
364 ビード
366 ビード
S シーラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後端部のバックドア開口部の周りを構成し、前記バックドア開口部の上側コーナー部から車両下方側に延在するトルーフと、
前記トルーフに固定され、前記バックドア開口部を開閉するバックドアに取り付けられたダンパーステーの端部を支持するダンパーステーブラケットと、
前記トルーフの外縁部分と接合されたサイメンアウタと、
を有し、
前記サイメンアウタにおける前記上側コーナー部に沿って湾曲し且つ前記ダンパーステーブラケットの外周縁に対向する外縁部が、前記ダンパーステーブラケットの外周縁から等距離又は略等距離となる形状とされたことを特徴とするバックドア開口部のボデー構造。
【請求項2】
前記ダンパーステーブラケットの外周縁に対向する前記サイメンアウタの外縁部は、前記トルーフと溶接されていない非溶接部位とされていると共に、シーラが塗布されていることを特徴とする請求項1に記載のバックドア開口部のボデー構造。
【請求項3】
車両後部のバックドア開口部の周りを構成し、上側コーナー部から車両下方側に延在するトルーフと、
前記トルーフに固定され、前記バックドア開口部を開閉するバックドアに取り付けられたダンパーステーの端部を支持するダンパーステーブラケットと、
前記トルーフの外縁部分と接合されたサイメンアウタと、
を有し、
前記サイメンアウタにおける前記上側コーナー部に沿って湾曲し且つ前記ダンパーステーブラケットの外周縁に対向する外縁部には、前記ダンパーステーブラケット側に突出する凸部が形成され、
前記トルーフには、前記ダンパーステーブラケットの外周縁の法線方向に沿って、前記ダンパーステーブラケットの外周縁の近傍から前記凸部の屈曲部位又はその近傍に向けて、ビードが形成されていることを特徴とするバックドア開口部のボデー構造。
【請求項4】
前記ダンパーステーブラケットの外周縁に対向する前記サイメンアウタの外縁部は、前記トルーフと溶接されていない非溶接部位とされていると共に、シーラが塗布されていることを特徴とする請求項3に記載のバックドア開口部のボデー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−234417(P2009−234417A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82913(P2008−82913)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】