説明

バックライト用発光装置。

【課題】本発明では、放熱性が良好で長期使用時の耐久性に優れた製造コストの安価なバックライト用発光装置を提供する。
【解決手段】光沢度が80〜110%であるSnめっき、Niめっき、Agめっき、Ag−Sn合金めっきからなるグループから選択された一種のめっきが表面に施された熱伝導率が150W/(m・K)以上である凸凹部を有する銅或いは銅合金異形断面板と、当該異形断面板の凹部の底面に直接実装された複数個の発光素子と、当該凹部の底面に形成されたカソードパターニング回路およびアノードパターニング回路と、当該複数個の発光素子間を直列接続する配線と、当該直列接続された複数個の発光素子の先頭の素子をアノードパターニング回路に接続する配線および末端の素子をカソードパターニング回路に接続する配線と、当該複数個の発光素子を覆うように前記凹部内を封止する透明樹脂とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックライト用発光装置に関し、特に詳しくは、耐久性と放熱性に優れたCOB型のバックライト用発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
COB型のバックライト装置として、樹脂基板に複数のLED素子を直接的に搭載するものが知られている。この種のバックライト装置では、基板としてガラスエポキシ樹脂(熱伝導率:0.2〜0.3W/mK)を用い、基板に導電性金属からなる電極パターンを形成する。バックライト装置を利用する表示装置では、基板のLED素子の搭載面と対向して表示部を設けるため、LED素子から基板側へ入射した光を基板にて反射させる必要がある。そこで、基板表面を白色樹脂のソルダーレジスト層により被覆し、基板表面の反射率を高めたものが一般的である。しかしながら、樹脂基板を用いたCOB型のバックライト装置は、基板の熱伝導率が低く、LED素子にて生じた熱が装置内にこもり易く、これにより、長期の使用に際し、白色のソルダーレジスト層が黄変するおそれがあった。
【0003】
また、透明なガラス基板上にITOからなる透明導電膜を形成したLED表示装置が
提案されており、このLED表示装置により、LEDチップ実装部と基板側のメタライズ部以外は透明に保つことができ、かつ表示品位を向上させることができるが、この様なLED表示装置は、基板が透明であるため、LED素子から発せられた光は基板を透過してしまい、基板の搭載面に対向する表示部へ的確に光を照射することができず、バックライト装置としての性能は低下する傾向がある。
【0004】
これらの対策として、基板の熱伝導率を向上させ、長期の使用に際しての劣化を抑制することのできるバックライト装置及びこれを備えた表示装置として次の特許文献がある。
【0005】
特許文献1では、各LED素子が搭載される基板をガラスとし、各LED素子にて生じた熱が基板から効率良く放散されるようにするとともに、ガラスに反射性を持たせることにより各LED素子から発せられた光が基板を透過しないようにし、基板のLED素子の搭載面と対向する表示部へ的確に光を照射するようにしたことを特徴とする基板の熱伝導率を向上させ、長期の使用に際しての劣化を抑制することのできるバックライト装置及びこれを備えた表示装置を開示する。
【0006】
特許文献2では、側面と樹脂および/または導電性金属から形成された底面とを有する凹部に複数のLEDチップが搭載され、該凹部が透光性樹脂で封止されているLEDパッケージにおいて、該LEDチップ各々を隔てる障壁が該底面と同一の樹脂または同一の導電性金属で一体成型されていることを特徴とする3イン1パッケージやマルチチップパッケージにおける出力ロスを低減する低コストのLEDパッケージが開示されている。
【0007】
特許文献3では、LEDチップ収納凹部の銀めっきの表面が酸化・硫化し難く、放熱性が良好なLED発光装置が開示されている。アルミ板にアルマイト処理した基台の上に、上面に所定の導電パターンを形成し、LEDチップをダイボンドする領域を有する開口部を備えたプリント基板を貼付し、プリント基板の開口部に位置する基台の上にLEDチップを透明ペーストでダイボンドし、LEDチップの上面電極とプリント基板上に形成した導電パターンとを金線でワイヤーボンディングし、プリント基板の外周上面に、LEDチップを覆うように外周部に封止樹脂注入孔を有するシリコーン樹脂よりなるレンズ付ケースを貼付し、レンズ付ケースに設けた封止樹脂注入孔よりゴム/ゲル系シリコーン樹脂よりなる封止樹脂を注入してLEDチップを封止することにより製造される。
【0008】
特許文献4では、半導体のパッケージの放熱性および製造コストを改善する構造および製造方法として、金属基板の一部分に半導体がダイボンディングされ、他の部分に半導体の電極がボンディングされ、両部分は分割されているが封止樹脂により相互に連結された構造を有し、かつ金属基板の両部分は電極端子ともなっている構造が開示されている。集合金属基板上の所定位置に多数の半導体をダイボンディングし、半導体の各々の電極と金属板上の他の所定位置とをそれぞれワイヤーボンディングし、半導体を封止する樹脂を基板全面に充填しかつ硬化させた後、集合金属基板の各所定領域と各他の所定領域とを封止樹脂を残して分割する加工と集合金属基板および封止樹脂をデバイス毎に切断分離する加工を行い製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2009−170847号公報
【特許文献2】特開平2008−41699号公報
【特許文献3】特開平2007−129053号公報
【特許文献4】特開平2000−77725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の特許文献に開示されるバックライト装置は、放熱性及び耐久性が充分とは言えず、製造コストも安価ではなかった。
本発明では、放熱性が良好で長期使用時の耐久性に優れた製造コストの安価なバックライト用発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討の結果、放熱性が良好で長期使用時の耐久性に優れた製造コストの安価なバックライト用発光装置を提供するには、次の事項が重要であることを見出した。
(1)熱伝導率を向上させるには、LEDチップが直接搭載される基板として、熱伝導率が150W/(m・K)以上である銅或いは銅合金板を使用する。
(2)耐久性、特に樹脂封止される反射層の耐久性を向上させるには、反射層として、銅或いは銅合金板の表面に高耐久及び耐熱性で光沢度が80〜110%であるSnめっき、Niめっき、Agめっき、Ag−Sn合金めっきからなるグループから選択された一種のめっきを施す。
(3)構造を簡略化し製造コストを下げ表示部へ的確に光を照射するには、基板上に後から樹脂などにより反射部を形成するのではなく、銅或いは銅合金板の片側に凸凹を有する異形断面形状として反射部を一体成形し、その表面に光沢度が80〜110%であるSnめっき、Niめっき、Agめっき、Ag−Sn合金めっきからなるグループから選択された一種のめっきを施し、凹部の底面に複数個の発光素子を直接的に搭載し、凹部の側面を反射部として使用して、その凹部内を透明樹脂で封止する必要がある。更に、銅或いは銅合金異形断面板の裏側の平板部を電子機器部内のバックライト装置固定部に直接接着或いはビス留めしてバックライト用発光装置として使用することにより、取り扱いが非常に容易となる。
【0012】
即ち、本発明のバックライト用発光装置は、光沢度が80〜110%であるSnめっき、Niめっき、Agめっき、Ag−Sn合金めっきからなるグループから選択された一種のめっきが表面に施された熱伝導率が150W/(m・K)以上である凸凹部を有する銅或いは銅合金異形断面板と、当該異形断面板の凹部の底面に直接実装された複数個の発光素子と、当該凹部の底面に形成されたカソードパターニング回路およびアノードパターニング回路と、当該複数個の発光素子間を直列接続する配線と、当該直列接続された複数個の発光素子の先頭の素子をアノードパターニング回路に接続する配線および末端の素子をカソードパターニング回路に接続する配線と、当該複数個の発光素子を覆うように前記凹部内を封止する透明樹脂とから構成されたことを特徴とする。
【0013】
本発明において、銅或いは銅合金断面条材の表面に施されるめっきは、耐熱性、樹脂に対する耐硫化性の観点から、Snめっき、Niめっき、Agめっき、Ag−Sn合金めっきからなるグループから選択された一種のめっきであり、反射率の観点から、その光沢度は80〜110%である。光沢度が80%未満では反射効果が不足し、110%を超えると反射効果が飽和して無駄となる。めっきの厚みは0.2〜3.0μmが好ましく、0.2μm未満では耐熱性、耐硫化性が不足し、3.0μmを超えると効果が飽和して高価なAgを使用するためコスト的に無駄となる。
また、銅或いは銅合金断面条材の熱伝導率は、150W/(m・K)未満では、効果が充分ではない。ただし、350W/(m・K)にまで高めることは製造コストの観点から無駄であり、実用上は160〜300W/(m・K)とすることが好ましい。
【0014】
更に、本発明のバックライト用発光装置は、当該銅合金異形断面板がFe;1.5〜2.6質量%、P;0.008〜0.15質量%及びZn;0.01〜0.5質量%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり組成を有し、表面の算術平均粗さRaが0.02〜0.05μmであり、最大高さRzが0.20〜0.40μmであり、二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比Rq/Rzが0.10〜0.25であることを特徴とする。
【0015】
本組成及び表面粗さを有する銅合金異形断面板は、耐熱性、耐久性、放熱性のバランスが優れており、これを使用することにより、高温下での機械的強度が増しバックライト装置の放熱性が向上する。
また、銅合金異形断面板の強度を向上させるために、本組成に加えNi;0.003〜0.5質量%及び又はSn;0.003〜0.5質量%を含有していても良い。
また、表面の算術平均粗さRaが0.02〜0.05μmであり、最大高さRzが0.20〜0.40μmであり、二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比Rq/Rzが0.10〜0.25であると、その表面に直接搭載されるLEDとの接触熱抵抗が小さくなり、放熱性が更に増す。Raが0.02μm未満、或いは、Rzが0.20μm未満、或いは、Rq/Rzが0.10未満では効果が飽和し、製造上特殊な表面処理が必要となりコストが増加して無駄である。Raが0.05μmを超えると、或いは、Rzが0.40μmを超えると、或いは、Rq/Rzが0.25を超えると効果が不足する。
【0016】
更に、本発明の液晶を使用する電子或いは電気機器は、本発明のバックライト用発光装置が機器内のバックライト発光装置固定部に接着或いはビス止めにより直接固定されたことを特徴とする。
【0017】
本発明のバックライト用発光装置は、銅或いは銅合金異形断面板の裏側が平板部であり、液晶を使用する電子或いは電気機器部内のバックライト装置固定部に、この平板部を直接的に接着或いはビス留めすることにより、複雑な取り付け機構なしに簡単に取り付けることが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、放熱性が良好で長期使用時の耐久性に優れた製造コストの安価なバックライト用発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のバックライト用発光装置の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1を参照に本発明のバックライト用発光装置の一実施形態を説明する。
本発明のバックライト用発光装置1は、光沢度が80〜110%であるSnめっき、Niめっき、Agめっき、Ag−Sn合金めっきからなるグループから選択された一種のめっきが表面に施された熱伝導率が150W/(m・K)以上である凸凹部を有する銅或いは銅合金異形断面板2と、銅或いは銅合金異形断面板2の凹部3の底面に直接実装(COB)された複数個の発光素子4,4a,4bと、凹部3の内底面に形成されたカソードパターニング回路5bおよびアノードパターニング回路5aと、複数個の発光素子4,4a、4b間を直列接続する配線6と、直列接続された複数個の発光素子の先頭の素子4aをアノードパターニング回路5aに接続する配線7aおよび末端の素子4bをカソードパターニング5b回路に接続する配線7bと、複数個の発光素子4,4a,4bを覆うように凹部3内を封止する透明樹脂8とから構成される。カソードパターニング回路5bおよびアノードパターニング回路5aは、図示されていない電源と接続されている。
【0021】
銅或いは銅合金異形断面板2の素材となる銅或いは銅合金は、放熱性の観点から、熱伝導率が160〜300W/(m・K)であることがより好ましく、耐熱性、耐久性、放熱性のバランスの観点より、特にFe;1.5〜2.6質量%、P;0.008〜0.15質量%及びZn;0.01〜0.5質量%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、表面の算術平均粗さRaが0.02〜0.05μmであり、最大高さRzが0.20〜0.40μmであり、二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比Rq/Rzが0.10〜0.25であることが好ましい。また、強度を向上させるために、本組成に加えNi;0.003〜0.5質量%及び又はSn;0.003〜0.5質量%を含有しても良い。
【0022】
表面の算術平均粗さRaが0.02〜0.05μmであり、最大高さRzが0.20〜0.40μmであり、二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比Rq/Rzが0.10〜0.25であると、その表面に直接搭載されるLEDとの接触熱抵抗が小さくなり、放熱性が更に増す。Raが0.02μm未満、或いは、Rzが0.20μm未満、或いは、Rq/Rzが0.10未満では効果が飽和し、製造上特殊な表面処理が必要となり製造コストが増加して無駄である。Raが0.05μmを超えると、或いは、Rzが0.40μmを超えると、或いは、Rq/Rzが0.25を超えると効果が不足する。
【0023】
銅或いは銅合金異形断面板2の表面に施されているSnめっき、Niめっき、Agめっき、Ag−Sn合金めっきからなるグループから選択された一種のめっきは、耐熱性、樹脂に対する耐硫化性の観点から、厚みが0.2〜3.0μmあり、反射率の観点から、その光沢度は80〜110%である。光沢度が80%未満では反射効果が不足し、110%を超えると反射効果が飽和して無駄となる。めっきの厚みが0.2μm未満では耐熱性、耐硫化性が不足し、3.0μmを超えると効果が飽和しコスト的に無駄となる。
また、めっきは、耐硫化性を重視すると、Ag−Sn合金めっきであることが特に好ましく、コスト、耐久性、耐熱性を考慮すると、下地層を有する2層或いは3層のめっきとすることが好ましい。
【0024】
次に、下地層を有するAg−Sn合金めっきを使用したバックライト用発光装置1につき説明する。
銅或いは銅合金平板を圧延により厚肉部と薄肉部とが幅方向に並んだ異形断面板を作製して焼鈍し、仕上げ圧延して所定形状に成形した異形断面板2の表面に、3層めっきの場合は、Niめっき、Cuめっき、Snめっきを順に施し、これらをリフロー処理した後に、電気化学還元法にて表面の酸化膜を除去し、その表面にシアン系化合物を使用したAgストライクめっき法にてAg−Sn合金めっきを施す。下地層を2層めっきとする場合は、Niめっきは不要である。
この場合、電気化学還元法にて弱アルカリ電解液中でSnめっき層の酸化膜を還元して完全に除去することにより、Snめっき層のSn金属面を露出させ、次のAgめっきを密着させることができる。また、Agめっきを施した後に合金化処理を施すことにより、AgとSnとの相互拡散を確実にすることができる。
Agストライクめっきの条件は、表1に示す通りである。
【0025】
【表1】

【0026】
ここで、シアン化銀カリウムの濃度は1g/L未満であると、Snめっき層に対して所望の面積被覆率が得られず、また8g/Lを超えると、Agめっき表面が粗くなるので、1〜8g/Lが好ましい。
Agストライクめっき後の合金化処理条件は、表2に示す通りである。
【0027】
【表2】

【0028】
この合金化処理により、表面のAgとその下のSnとが相互拡散して合金化し、表面にAgSn合金層が形成される。
また、封止に使用する樹脂の硫化に対する耐久性を増す為に、AgSn合金層の表面に5〜20nmの透明な酸化錫皮膜を形成することが好ましい。
以上のようなめっき方法により、Niめっき層とCu−Sn合金層とAg−Sn合金めっき層を有する銅或いは銅合金異形断面板2が完成され、最表面のAg−Sn合金めっき層は、表面の光沢度が80〜110%とされる。これにより銅或いは銅合金異形断面板2の凹部3の内部側面11は、耐久性及び耐熱性を有する良好な反射板として作用し、優れたバックライト装置を形成する。
また、銅或いは銅合金異形断面板2の裏面9、側面10、凸部上面12には、この様なめっきが施されていなくても良い。
【0029】
このAg−Sn合金めっきが表面に施された銅合金異形断面板2の凹部3の底面には、複数個の発光素子4,4a,4bが直接実装される。この場合、発光素子4,4a,4bの凹部3の底面と接する面にAu−Snはんだを蒸着し、押圧しながら240〜310℃の温度で加熱することにより、Ag−Sn合金めっき層との間で3元系のAu−Ag−Sn合金層が形成され、発光素子4が強固に実装される。
ボイド等の欠陥がなく高い接合強度となるAu−Ag−Sn合金層を得るために、240℃以上の加熱温度とするのが好ましい。加熱温度が310℃を超えても、接合強度のそれ以上の向上は期待できないとともに、熱応力が大きくなるので好ましくない。
【0030】
アノードパターニング回路5a及びカソードパターニング回路5bは、絶縁性接着テープまたは接着樹脂にて、Ag−Sn合金めっきが表面に施された銅或いは銅合金異形断面板2の凹部3の底面に接着される。また。耐久性、耐熱性の観点から、アノードパターニング回路5a及びカソードパターニング回路5bは、Ag或いはAg−Sn合金めっきが表面に施された銅ストリップ上に形成されることが好ましい。
複数個の発光素子4,4a,4bの間は配線(金ワイヤー)6で直列接続され、末端部の発光素子4a,4bは各パターニング回路5a、5bに配線7a,7b(金ワイヤー)で接続される。パターニング回路5a、5bは、図示しない配線により電源に接続される。
【0031】
更に、凹部3内は複数個の発光素子4,4a,4bを覆うように透明樹脂8で封止される。透明樹脂8の材質は特に限定されないが、透明性、耐久性、耐熱性などを考慮するとシリコーン樹脂であることが好ましい。
【0032】
この様な本発明のバックライト用発光装置1は、裏面9の平面部を電子機器部内のバックライト装置固定部(図示しない)に、接着剤により直接接合、或いは、両端に形成したビス止め穴13を介して直接接合して使用される。
【実施例】
【0033】
三菱伸銅(株)の商品名、MAX251C(Cu;95質量%以上、Ni;1.3〜2.7質量%、Si;0.2〜0.8質量%、Sn;0.2〜0.8質量%、Zn;0.5〜1.5質量%、残部が不可避不純物)、TAMAC194(Cu;97質量%以上、Fe;2.1〜2.6質量%、P;0.015〜0.15質量%、Zn;0.05〜0.20質量%、残部が不可避不純物)の銅合金平板を使用し、圧延により厚肉部と薄肉部とが幅方向に並んだ異形断面板を作製して焼鈍後、更に仕上げ圧延して、図1に示す諸寸法が、長さL;100mm、全体幅W;20mm、凹部底面の幅W1;15mm、全体高さH;10mm、凹部底面までの高さH1;5mm、凹部の底面と内部側面との角度θ;75°で表3及び表4に示す表面粗さの各異形断面板を作製した。MAX251を用いたものを表3に、TAMAC194を用いたものを表4に示す。
【0034】
次に、この異形断面板の表面を洗浄後、Cuめっき、Snめっきを順に施し、加熱してリフロー処理することにより、Cu−Sn合金層、その上層にSnめっき層が形成された2層めっき異形断面板を作製し、更に、そのSnめっき表面を、電気化学還元法にて、電解液中でSnめっき層の酸化膜を除去し、表1に示す条件にて、膜厚を変化させてAgストライクめっきを施し、表2に示す条件にて、ベンゾチアゾール化合物を含む水溶液中にて合金化及び変色防止処理を施し、表3及び表4に示すめっき厚と光沢度を有するAg−Sn合金層を表面に有する各異形断面板を作製した。
次に、このAg−Sn合金めっきが施された異形断面板の凹部の底面上に、CREE社製のLEDチップ(縦0.9mm×横0.9mm×高さ200μmで底面に接合の為のAu−Snはんだが蒸着されている)3個を6mm間隔で直列配置し、押圧しながら240〜310℃の温度で加熱し、凹部の底面と直接接合した。
【0035】
次に、Ag−Sn合金めっきが施された異形断面板の凹部のLEDチップが接合されていない底面上に、カソード及びアノードパターニング回路(表面がメッキ処理された銅ストリップ)を絶縁性接着テープにて貼り付け、直列配置された両端のLEDチップの電極とカソードおよびアノードパターニング回路を金ワイヤーにてボンディングした。各LEDチップ間も金ワイヤーにてボンディングした。
次に、このLEDチップが直接搭載された凹部内を完全に覆うように信越化学(株)社製のシリコーン樹脂にて封止して硬化させ、実施例1〜6及び実施例11〜16、比較例1〜4及び比較例11〜14に示すバックライト用発光装置を作製した。
【0036】
この様に作製されたバックライト用発光装置のカソードパターニング回路およびアノードパターニング回路に通電し、放熱性及び耐久性を測定した。測定結果を表3及び表4に示す。
放熱性は、発光装置をバックライトの筐体を模したアルミ板(縦200mm、横65mm、厚さ0.8mm)に接着樹脂にて貼り付け、1000時間通電した後、素子1個当りに電圧3.3V、電流350mAを負荷し発光させ、素子温度(ジャンクション温度Tj)を赤外線サーモグラフィ(NEC三栄社製TH9100)にて測定した。
耐久性は、加速試験を実施し、85℃/85%RHの雰囲気中で1000時間通電した後の輝度を測定し、初期輝度に対する輝度の低下率を算出した。輝度は輝度計(コニカミノルタセンシング社製CS−100A)にて測定した。
【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
表3及び表4の結果より、本発明のバックライト用発光装置は、放熱性が良好で長期使用時の耐久性、特に、樹脂封止された反射層の耐久性に優れ、輝度が低下し難いことがわかる。
また、本発明のバックライト装置は構造が簡略化されているので製造コストが安価であり、電子機器部内のバックライト装置固定部に直接接着或いはビス留めして簡単に使用することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態の製造方法について説明したが、本発明はこの記載に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 バックライト用発光装置
2 銅或いは銅合金異形断面板
3 銅或いは銅合金異形断面板の凹部
4、4a、4b 発光素子
5a アノードパターニング回路
5b カソードパターニング回路
6、7a、7b 配線
8 透明樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光沢度が80〜110%であるSnめっき、Niめっき、Agめっき、Ag−Sn合金めっきからなるグループから選択された一種のめっきが表面に施された熱伝導率が150W/(m・K)以上である凸凹部を有する銅或いは銅合金異形断面板と、当該異形断面板の凹部の底面に直接実装された複数個の発光素子と、当該凹部の底面に形成されたカソードパターニング回路およびアノードパターニング回路と、当該複数個の発光素子間を直列接続する配線と、当該直列接続された複数個の発光素子の先頭の素子をアノードパターニング回路に接続する配線および末端の素子をカソードパターニング回路に接続する配線と、当該複数個の発光素子を覆うように前記凹部内を封止する透明樹脂とから構成されたことを特徴とするバックライト用発光装置。
【請求項2】
当該銅合金異形断面板がFe;1.5〜2.6質量%、P;0.008〜0.15質量%およびZn;0.01〜0.5質量%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、表面の算術平均粗さRaが0.02〜0.05μmであり、最大高さRzが0.20〜0.40μmであり、二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比Rq/Rzが0.10〜0.25であることを特徴とする請求項1に記載のバックライト用発光装置。
【請求項3】
請求項1〜請求項2の何れか1項に記載のバックライト用発光装置が機器内のバックライト発光装置固定部に接着或いはビス止めにより直接固定されたことを特徴とする液晶を使用する電子或いは電気機器。

【図1】
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【公開番号】特開2012−99555(P2012−99555A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243928(P2010−243928)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000176822)三菱伸銅株式会社 (116)
【Fターム(参考)】