説明

バッテリケース

【課題】トレイ部材の容積を確保しながらバッテリケースの剛性を高める。
【解決手段】電気自動車の駆動用のバッテリ8を収容するバッテリケース7であって、バッテリ8を支持する樹脂製のトレイ部材10と、トレイ部材10の下面に設けられ、トレイ部材10を下方から支持する支持部材30と、トレイ部材10に立設された立壁11a,11b,13F及び13Rと、トレイ部材10上に配置される板金製の板金トレイ部材40と、を備え、板金トレイ部材40は、バッテリ8を収納する複数の板金凹部と、立壁11a,11b,13F及び13Rの上面に配置される板金フランジ部42とを有し、立壁11a,11b,13F及び13Rには、立壁が立設される方向に貫通した貫通孔6が設けられ、支持部材30と板金フランジ部42とは、貫通孔6を貫通する板金用締結部材50によりトレイ部材10に締結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車のバッテリモジュールを収容するためのバッテリケースに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車に使用されるバッテリユニットは、複数のバッテリモジュールと、バッテリモジュールを収容するバッテリケース等とから構成されている。バッテリケースの構造としては、例えば、特許文献1に記載のように、バッテリモジュールを支持するトレイ部材と、トレイ部材の上部を覆うカバー部材とを備え、トレイ部材とカバー部材とが、トレイ部材の周縁部とカバー部材の周縁部との接合部において複数のボルト及びナットにより接合されたものがある。
【0003】
特許文献1に記載のバッテリケースを構成するトレイ部材には、トレイ部材の長手方向を区切る幅方向に延びた隔壁と、トレイ部材上を複数の区画に仕切る前後方向に延びた仕切壁(リブ)とが立設されている。複数のバッテリモジュールは、これら隔壁及び仕切壁とによって区画された部分に収納されて固定されている。
ところで、大容量のバッテリモジュールを収納する大型のバッテリケースは、バッテリモジュールの重量に耐えられるように、高い剛性が要求される。そのため、特許文献1に記載のバッテリケースのように、例えば電気絶縁性を有する繊維強化樹脂(FRP)で形成され、さらに各バッテリモジュールを固定するため及びケースの剛性を高めるために、バッテリモジュールを支持するトレイ部材に仕切壁を設けたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−153130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トレイ部材を繊維強化樹脂製とする場合、トレイ部材に設けた仕切壁によってバッテリケースに必要とされる剛性を確保するためには、仕切壁をある程度厚みがある構成とする必要がある。しかしながら、仕切壁を厚くすると、その分トレイ部材上のバッテリモジュールを収納するための容積が減少してしまう。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、トレイ部材の容積を確保しながらバッテリケースの剛性を高めることができる、バッテリケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のバッテリケースは、電気自動車の駆動用のバッテリを収容するバッテリケースであって、前記バッテリを支持する樹脂製のトレイ部材と、前記トレイ部材の下面に設けられ、前記トレイ部材を下方から支持する支持部材と、前記トレイ部材に立設された立壁と、前記トレイ部材上に配置される板金製の板金トレイ部材と、を備え、前記板金トレイ部材は、前記バッテリを収納する複数の板金凹部と、前記立壁の上面に配置される板金フランジ部と、を有し、前記立壁には、前記立壁が立設される方向に貫通された貫通孔が設けられ、前記支持部材と前記板金フランジ部とは、前記貫通孔を貫通する板金用締結部材により前記トレイ部材に締結されることを特徴としている。
【0007】
前記立壁は、前記トレイ部材の短手方向に延設し長手方向中間部に設けられた隔壁、又は、前記トレイ部材の長手方向両端部の周壁であることが好ましい。
また、前記バッテリは、前記立壁の前記上面に配置されるバッテリフランジ部を有し、前記支持部材と前記バッテリフランジ部とは、前記貫通孔を貫通するバッテリ用締結部材により前記トレイ部材に締結され、前記板金用締結部材と前記バッテリ用締結部材とは、隣り合わせに配置されていることが好ましい。
【0008】
このとき、前記板金用締結部材及び前記バッテリ用締結部材は、何れも前記貫通孔に挿入された貫通ナットとボルトとから構成され、前記支持部材と前記板金フランジ部及び前記支持部材と前記バッテリフランジ部は、何れも前記貫通ナットに前記立壁の前記上面及び前記トレイ部材の前記下面からそれぞれボルトを螺合することにより前記トレイ部材に締結されることがより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のバッテリケースによれば、バッテリを支持する樹脂製のトレイ部材の上に板金トレイ部材が配置され、トレイ部材の立壁には、その上面に板金フランジ部が配置され、その下面に支持部材が設けられる。すなわち、トレイ部材の立壁が、板金フランジ部と支持部材とで挟まれて、これら板金フランジ部と支持部材とが、板金用締結部材によりトレイ部材の立壁に締結されるため、立壁の剛性が高められ、バッテリケース全体の剛性を高めることができる。これにより、トレイ部材上に立設される立壁の厚みを小さくすることができ、その分バッテリを収納するための容積を広く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態にかかるバッテリケースの構造を説明する模式的な平面図である。
【図2】図2(a)は図1のA−A矢視断面図、図2(b)は図2(a)のB部拡大断面図、図2(c)は図2(a)のC部拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるバッテリケースの構造を説明する模式的な分解斜視図である。
【図4】図1のB−B矢視断面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるバッテリケースが適用されたバッテリユニットの搭載構造を説明する模式的な分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
本実施形態にかかるバッテリケースの構造について、図1〜図5を用いて説明する。本バッテリケースは、ハイブリッド電気自動車を含む電気自動車の駆動用のバッテリモジュールを収容するものである。以下、電気自動車の進行方向を前方とし、前方を基準に左右を定め、重力の方向を下方とし、その逆を上方として説明する。また、バッテリケースの中心に向かう側を内側、その逆を外側として説明する。
【0012】
図5に示すように、電気自動車1は、車体2の後方に配置される走行用のモータ及び充電装置(いずれも図示略)と、車体2の床下に配置されるバッテリユニット9等とを備えている。また、バッテリユニット9の上方には、フロアパネル3が設けられ、フロアパネル3の上方、すなわち車室内には、フロントシート4F及びリヤシート4Rが配置されている。
【0013】
フロアパネル3は、例えば板金により形成され、車体2の前後方向及び左右方向に延び、車体2の床部を構成する。フロアパネル3は、車体2を構成する図示しないサイドメンバを含むフレーム構体の所定位置に溶接等によって固定されている。バッテリユニット9は、このフロアパネル3の下方、すなわち、車体の外部である床下に、フロアパネル3から離隔して配置される。また、バッテリユニット9の下方には、アンダーカバー5が配置され、フレーム構体等に固定される。バッテリユニット9は、バッテリケース7の内部に、複数のバッテリモジュール(バッテリ)8(図1に二点鎖線で収納状態を例示する)や電子部品(図示略)等を収容して構成されている。
【0014】
まず、バッテリケース7の基本的な構造について説明する。
図3に示すように、バッテリケース7は、複数のバッテリモジュール8を支持する樹脂製のトレイ部材10と、トレイ部材10の上に重ねられてトレイ部材10に結合、固定される樹脂製のカバー部材20と、トレイ部材10の下面に設けられ、トレイ部材10を下方から支持する支持部材30と、トレイ部材10上に配置される板金製の板金トレイ部材40とを有して構成されている。
【0015】
バッテリモジュール8は、例えば、リチウムイオン電池で構成されるバッテリセルを複数個直列に接続し一体化したものである。トレイ部材10及びカバー部材20は、例えばガラス繊維等の繊維を補強材として混合されて強度,剛性を向上させ、電気絶縁性を有する繊維強化樹脂(FRP)で形成されている。また、支持部材30は、バッテリケース7全体の荷重を支えるに足る強度を有する金属材料(例えば鋼板)によって構成されている。また、板金トレイ部材40は、板金を曲げ加工や溶接等することにより形成されている。
【0016】
トレイ部材10は、前壁11aと、後壁11bと、左右一対の側壁11c,11dと、底壁11eとを有し、上面側が開放した箱型に成形されている。なお、トレイ部材10の立設された壁である前壁11aと後壁11bと側壁11c,11dを立壁ともいう。前壁11aは車体2の前方に、後壁11bは車体2の後方にそれぞれ位置し、トレイ部材10の長手方向両端部においてトレイ部材10の短手方向(すなわち、幅方向)に延びる。また、両側壁11c,11dは前後方向に延びており、これら前壁11aと後壁11bと両側壁11c,11dとによって、トレイ部材10の周壁11が構成されている。なお、ここでは、前後方向がトレイ部材10の長手方向であり、左右方向がトレイ部材10の短手方向(幅方向)である。
【0017】
トレイ部材10の周壁11の上端の周縁部には、トレイ側フランジ部12が周壁11の上端から水平方向に沿って外側に向けて突設されている。このトレイ側フランジ部12はトレイ部材10の全周にわたって連続して設けられており、後述するカバー側フランジ部22と接合されることにより、トレイ部材10とカバー部材20とが密閉される。
トレイ部材10には、トレイ部材10の長手方向中間部に、トレイ部材10上を区画する隔壁13が立設されている。この隔壁13は、トレイ部材10の幅方向に延設されており、トレイ部材10上を仕切るとともに、トレイ部材10の剛性を高める。隔壁13は、車体の前方に位置する前隔壁13Fと、車体の後方に位置する後隔壁13Rと、これら前隔壁13F及び後隔壁13Rの間に位置する中隔壁13Cとによって、トレイ部材10の長手方向を4つの区画に仕切っている。なお、これら前隔壁13F,中隔壁13C及び後隔壁13Rを特に区別しないときは、隔壁13という。また、トレイ部材10に立設された壁である隔壁13を立壁ともいう。
【0018】
トレイ部材10の前壁11aと前隔壁13Fとで仕切られた区画(以下、前側バッテリ収納部という)15F及びトレイ部材10の後壁11bと後隔壁13Rとで仕切られた区画(以下、後側バッテリ収納部という)15Rには、それぞれ後述する板金トレイ部材40とバッテリモジュール8とが収納される。また、中隔壁13Cと後隔壁13Rとで仕切られた区画(以下、中央バッテリ収納部という)15Cにはバッテリモジュール8が収納される。また、前隔壁13Fと中隔壁13Cとで仕切られた区画(以下、電気回路収納部という)15Eには、バッテリモジュール8の状態の検出や制御等を行う図示しない電子部品等が収納される。
【0019】
前隔壁13Fには、図2(a)に示すように、前隔壁13Fが立設される方向、すなわち鉛直方向(上下方向)に前隔壁13Fを貫通したトレイ貫通孔(貫通孔)16が、トレイ部材10の幅方向に複数(ここでは、11箇所)設けられている。後隔壁13Rにも同様に、後隔壁13Rが立設される方向に後隔壁13Rを貫通するトレイ貫通孔16が、トレイ部材10の幅方向に複数(ここでは、13箇所)設けられている。
【0020】
また、図1及び図3に示すように、トレイ部材10の前壁11aは、前壁11aよりも内側に突出して肉盛りされ、トレイ部材10から立設された複数(ここでは、10箇所)の肉盛り部17を有する。これらの肉盛り部17には、前隔壁13F及び後隔壁13Rに設けられたトレイ貫通孔16と同様のトレイ貫通孔16が、肉盛り部17が立設される方向に貫通されている。後壁11bも同様に、トレイ部材10から立設された複数(ここでは、前壁11aと同様、10箇所)の肉盛り部17を有しており、これらの肉盛り部17にもトレイ貫通孔16が形成されている。
【0021】
このような形状をしたトレイ部材10は、インジェクション成形(射出成形)により各部が一体に成形されている。なお、インジェクション成形とは、最も一般的な樹脂成形方法であり、キャビティ(凹型)とコア(凸型)とからなる金型内に製品形状を彫りこんで、成形機内で加熱されて溶融した樹脂原料を金型内に高圧で注入して成形する方法である。本トレイ部材10は樹脂原料に強化繊維が加えられて成形される。
【0022】
カバー部材20は、図3に示すように、前隆起部21a,後隆起部21b及び中隆起部21cからなるカバー本体21と、カバー本体21の周縁部に設けられたカバー側フランジ部22とから構成されており、トレイ部材10と同様、インジェクション成形により一体成形されている。
これらトレイ部材10とカバー部材20とは、トレイ側フランジ部12とカバー側フランジ部22との間に図示しないガスケットを介装して、このガスケットを圧縮変形させながら、図示しない複数のボルト及びナットを有する接合部材により、トレイ側フランジ部12及びカバー側フランジ部22を接合させてバッテリケース7が密閉される。
【0023】
支持部材30は、トレイ部材10の下面(すなわち、底壁11eの裏面)に設けられ、トレイ部材10を下方から支持している。支持部材30は、トレイ部材10の幅方向に延びる複数(ここでは、4本)の幅方向支持部31と、幅方向支持部31に直交する方向(すなわち、トレイ部材10の長手方向)に延設され、これら幅方向支持部31を接続する複数(ここでは、2本)の長手方向支持部32とを有し、幅方向支持部31と長手方向支持部32とによりいわゆる井桁の形状に構成されている。
【0024】
幅方向支持部31には、トレイ部材10と支持部材30とを結合したときに、トレイ部材10の前隔壁13Fと後隔壁13Rと肉盛り部17とにそれぞれ形成された複数のトレイ貫通孔16に重なる位置に、幅方向支持部31を貫通する複数の支持部材貫通孔36が形成されている。また、長手方向支持部32は、車体の最も前方に位置する幅方向支持部(第一幅方向支持部ともいう)31aから前方に突出した前側支持部32aを有する。
【0025】
複数の幅方向支持部31の両端部及び長手方向支持部32の前側支持部32aは、図1に示すように、トレイ部材10の周壁11よりも外側へ突出している。この突出した両端部及び前側支持部32aには、それぞれ締結部33が固定されており、この締結部33は車体2を構成するフレーム構体と締結されることにより、バッテリケース7をフレーム構体に固定する。
【0026】
板金トレイ部材40は、図3に示すように、トレイ部材10上に配置され、トレイ部材10の前側バッテリ収納部15F及び後側バッテリ収納部15R内に収納される。なお、前側バッテリ収納部15Fと後側バッテリ収納部15Rとにそれぞれ収納される板金トレイ部材40,40は、ここでは同一であるため、以下、前側バッテリ収納部15Fに収納される板金トレイ部材40について説明する。
【0027】
板金トレイ部材40は、前板41aと、後板41bと、底板41cと、複数のリブ(板金リブ)41dとを有し、上面側が開放した箱型に形成されている。前板41aは、トレイ部材10に収納されたときに車体2の前方に位置し、後板41bは車体2の後方に位置する。これら前板41a及び後板41bは、ともに底板41cに溶接されることにより立設されて、トレイ部材10に収納されたときにトレイ部材10の幅方向に延在するように形成されている。
【0028】
複数のリブ41dは、前板41a及び後板41bと直交する方向に延設され、底板41c上に溶接により固定されて立設されている。この複数のリブ41dにより、板金トレイ部材40上は複数の区画に仕切られるともに、板金トレイ部材40の剛性が高められている。なお、前板41aと後板41bと底板41cと複数のリブ41dとで囲まれた部分には、板金凹部41が形成される。すなわち、板金トレイ部材40は、複数のリブ41dにより区画された部分に複数の板金凹部41を有している。この板金凹部41にはバッテリモジュール8が収納される。ここでは、リブ41dがトレイ部材10の幅方向に6つ設けられており、板金凹部41は5つ形成されている。なお、リブ41dの数に応じて板金凹部41の数は適宜変更され、リブ41d及び板金凹部41の数はこれらに限られない。
【0029】
また、板金トレイ部材40の前板41a及び後板41bの上端部には、前板41a及び後板41bを曲げ加工して形成された板金フランジ部42がこの上端部から水平方向に沿って外側に向けて部分的に複数突設されている。この板金フランジ部42は、図1に示すように、板金トレイ部材40が前側バッテリ収納部15Fに収納されたときに、トレイ部材10の肉盛り部17及び前隔壁13Fにそれぞれ設けられたトレイ貫通孔16を覆うように形成されている。また、板金フランジ部42には、板金トレイ部材40が前側バッテリ収納部15Fに収納されたときに、トレイ貫通孔16と重なる位置に、板金フランジ部42を貫通した複数の板金トレイ貫通孔46が形成されている。
【0030】
次に、本バッテリケース7の特徴的な構造について説明する。
図1に示すように、トレイ部材10には、その下面に支持部材30が設けられ、前側バッテリ収納部15F及び後側バッテリ収納部15Rにそれぞれ板金トレイ部材40,40が配置されている。板金トレイ部材40上には、トレイ部材10の長手方向に延びたリブ41dにより仕切られた区画にバッテリモジュール8が収納されている。
【0031】
前側バッテリ収納部15Fに配置される板金トレイ部材40は、前板41aがトレイ部材10の前壁11aと平行となり、後板41bが前隔壁13Fと平行となるように配置され、底板41cがトレイ部材10の底壁11eに重ねられる。また、前板41a側の板金フランジ部42は、前壁11aの肉盛り部17の上面に配置され、後板41b側の板金フランジ部42は、前隔壁13Fの上面に配置される。
【0032】
同様に、後側バッテリ収納部15Rに配置される板金トレイ部材40は、前板41aが後隔壁13Rと平行となり、後板41bがトレイ部材10の後壁11bと平行となるように配置され、底板41cがトレイ部材10の底壁11eに重ねられる。また、前板41a側の板金フランジ部42は、後隔壁13Rの上面に配置され、後板41b側の板金フランジ部42は、後壁11bの肉盛り部17の上面に配置される。なお、板金トレイ部材40の前板41a及び後板41bは、トレイ部材10に立設された立壁である前壁11a,後壁11b,前隔壁13F及び後隔壁13Rと略同じ高さに立設されている。
【0033】
トレイ部材10の下面に設けられる支持部材30は、図3に示すように、4本の幅方向支持部31がトレイ部材10の前壁11a,前隔壁13F,後隔壁13R及び後壁11bの厚みよりも前後方向に十分な長さを有し、車体2前方から順にトレイ部材10の前壁11a,前隔壁13F,後隔壁13R及び後壁11bの真下に位置するように配置される。すなわち、幅方向支持部31は、図1に示すように、上面視において、幅方向支持部31の一部が前壁11a,前隔壁13F,後隔壁13R及び後壁11bと重なるように設けられている。
【0034】
支持部材30の幅方向支持部31と、トレイ部材10の立壁である前壁11a,前隔壁13F,後隔壁13R及び後壁11bと、板金トレイ部材40の板金フランジ部42との関係を図2(a)及び図2(b)を用いて説明する。なお、図2(a)はトレイ部材10の前隔壁13Fの延設方向に沿った断面図であるが、トレイ部材10の他の立壁も同様の構成となっている。また、図2(b)は図2(a)のB部拡大断面図,図2(c)は図2(a)のC部拡大断面図である。
【0035】
図2(a)〜(c)に示すように、前隔壁13Fに形成されたトレイ貫通孔16と、板金フランジ部42に形成された板金トレイ貫通孔46と、支持部材30の幅方向支持部31に形成された支持部材貫通孔36とは、鉛直方向に一直線に連通して1つの貫通孔6を形成している。同様に、トレイ貫通孔16と、後述するバッテリ貫通孔86と、支持部材貫通孔36とは、鉛直方向に一直線に連通して1つの貫通孔6を形成している。
【0036】
この貫通孔6には、支持部材30の幅方向支持部31と板金トレイ部材40の板金フランジ部42とを前隔壁13Fに締結するための板金用締結部材50と、幅方向支持部31とバッテリモジュール8とを前隔壁13Fに締結するためのバッテリ用締結部材60とが設けられる。なお、バッテリモジュール8にはバッテリ取付ブラケット80が締結されており、このバッテリ取付ブラケット80には、バッテリモジュール8を前隔壁13Fに締結するためのフランジ部(以下、バッテリフランジ部という)81が設けられている。このバッテリフランジ部81は、図1に二点鎖線で示すように、前隔壁13Fの上面に配置される。また、バッテリフランジ部81には、バッテリ貫通孔86が形成されている。
【0037】
板金用締結部材50は、貫通孔6に挿入される貫通ナット51と、貫通ナット51に螺合される2つのボルト52,52とから構成されている。また、前隔壁13Fの上端と板金フランジ部42との間には、シール材53が介装されている。また、バッテリ用締結部材60も、同様に貫通孔6に挿入される貫通ナット61と、貫通ナット61に螺合される2つのボルト62,62とから構成され、前隔壁13Fの上端とバッテリフランジ部81との間にはシール材63が介装されている。なお、ここでは、板金用締結部材50及びバッテリ用締結部材60は同一部材で構成されている。すなわち、貫通ナット51と貫通ナット61,ボルト52とボルト62,及びシール材53とシール材63はそれぞれ同一である。
【0038】
板金フランジ部42は、貫通孔6を貫通する板金用締結部材50により、幅方向支持部31との間にトレイ部材10の前隔壁13Fを挟んで締結される。すなわち、板金用締結部材50は、一方のボルト52が前隔壁13Fの上面に配置された板金フランジ部42の上方から貫通ナット51に螺合され、他方のボルト52がトレイ部材10の下面に配置された支持部材30の幅方向支持部31の下方から貫通ナット51に螺合されることにより、支持部材30と板金フランジ部42とを前隔壁13F、すなわちトレイ部材10に締結する。
【0039】
また、バッテリモジュール8は、貫通孔6を貫通するバッテリ用締結部材60により、幅方向支持部31との間に前隔壁13Fを挟んで締結される。すなわち、バッテリ用締結部材60は、一方のボルト62が前隔壁13Fの上面に配置されたバッテリフランジ部81の上方から貫通ナット61に螺合され、他方のボルト62がトレイ部材10の下面に配置された支持部材30の幅方向支持部31の下方から貫通ナット61に螺合されることにより、支持部材30とバッテリフランジ部81とを前隔壁13F、すなわちトレイ部材10に締結する。
【0040】
これら板金用締結部材50及びバッテリ用締結部材60は、トレイ部材10の各立壁上に、隣り合わせに配置されている。すなわち、図1に示すように、板金フランジ部42とバッテリフランジ部81とが重ならないように隣接して設けられており、板金トレイ部材40の板金フランジ部42とバッテリモジュール8のバッテリフランジ部81とはいずれの締結部材によっても締結されていない。なお、ここでいう隣り合わせとは、板金フランジ部42に設けられた板金トレイ貫通孔46とバッテリフランジ部81に設けられたバッテリ貫通孔86とが重ならずに隣接して設けられることをいう。
【0041】
本実施形態にかかるバッテリケース7は上述のように構成されているので、トレイ部材10には、支持部材30,板金トレイ部材40,バッテリモジュール8及びカバー部材20が以下のように接合,固定される。
トレイ部材10の立壁である前壁11a,後壁11b,前隔壁13F及び後隔壁13Rに設けられたトレイ貫通孔16内には、貫通ナット51,61が挿入される。また、トレイ部材10の前側バッテリ収納部15F及び後側バッテリ収納部15Rには、それぞれ板金トレイ部材40が配置される。このとき、板金トレイ部材40の板金フランジ部42は、トレイ部材10の各立壁の上面に、板金フランジ部42に形成された板金トレイ貫通孔46と各立壁に設けられたトレイ貫通孔16とが重なるように配置される。なお、板金フランジ部42と各立壁の上端との間には、シール材53が介装される。
【0042】
トレイ部材10の下面には、支持部材30が設けられ、幅方向支持部31がトレイ部材10の幅方向に延在し、トレイ部材10の前壁11a,後壁11b,前隔壁13F及び後隔壁13Rの真下に位置するように配置される。このとき、幅方向支持部31に形成された支持部材貫通孔36がトレイ部材10の各立壁に設けられたトレイ貫通孔16と重なるように配置される。
【0043】
そして、貫通ナット51の上方及び下方からボルト52を螺合することによって、支持部材30の幅方向支持部31と板金トレイ部材40の板金フランジ部42とが、トレイ部材10の各立壁を挟んで締結される。
板金トレイ部材40の板金凹部41内には、バッテリモジュール8が収納される。このとき、バッテリフランジ部81は、トレイ部材10の各立壁上に、バッテリ貫通孔86とトレイ貫通孔16とが重なるように配置される。なお、バッテリフランジ部81と各立壁の上端との間には、シール材63が介装される。そして、貫通ナット61の上方及び下方からボルト62を螺合することによって、支持部材30の幅方向支持部31とバッテリフランジ部81とがトレイ部材10の各立壁を挟んで締結される。
【0044】
このように構成されたトレイ部材10の上方から、カバー部材20を重ね合わせて、トレイ側フランジ部12とカバー側フランジ部22とを複数のボルト及びナットを有する接合部材により接合することにより、バッテリケース7が密閉される。
したがって、本バッテリケース7によれば、バッテリモジュール8を支持する樹脂製のトレイ部材10の上に板金トレイ部材40が配置され、トレイ部材10の立設された前壁11a,後壁11b,前隔壁13F及び後隔壁13Rには、その上面に板金フランジ部42が配置され、その下面に支持部材30が設けられる。すなわち、トレイ部材10の立壁が、板金フランジ部42と支持部材30とで挟まれて、これら板金フランジ部42と支持部材30とが、板金用締結部材50によりトレイ部材10に締結されるため、各立壁の剛性を高めることができ、それによりバッテリケース7全体の剛性を高めることができる。
【0045】
言い換えると、樹脂製のトレイ部材10の立壁の下面だけでなく上面にも板金トレイ部材40の板金フランジ部42を配置して、立壁を上方の板金フランジ部42と下方の支持部材30とで挟み込んで締結することにより、立壁の弾性変形が防止され、立壁の剛性が高められる。その結果、バッテリケース7全体の剛性も高めることができる。
また、立壁の剛性が高められることにより、トレイ部材10上に立設される立壁の厚みを小さくすることができる。すなわち、従来よりも立壁の厚みを小さくしても、その分の剛性を板金フランジ部42と支持部材30とによって確保することができる。そのため、立壁の厚みを小さくした分、バッテリモジュール8を収納するための容積を広く確保することができる。つまり、バッテリケース7の大きさを変えずに、従来よりもサイズの大きなバッテリモジュール8を収容することができる。
【0046】
また、トレイ部材10の幅方向に延在する前隔壁13F及び後隔壁13Rの剛性を高めることにより、トレイ部材10の長手方向の中間部に剛性の高い部分を形成することができ、効率よくバッテリケース7全体の剛性を高くすることができる。
また、トレイ部材10の周壁11であって幅方向に延在する前壁11a及び後壁11bの剛性を高めることによっても、同様に効率よくバッテリケース7全体の剛性を高くすることができる。
【0047】
また、板金トレイ部材40を樹脂製のトレイ部材10上に配置したため、板金フランジ部42のみでなく、板金トレイ部材40のリブ41dによってもトレイ部材10の剛性をより高めることができる。また、図4(a)及び図4(b)に示すように、板金製のリブ41dは樹脂製のリブ11fよりも厚みが小さい。そのため、図4(b)中に二点鎖線で示すように、樹脂製のリブ11fの場合には、樹脂リブ11fがスペースをとってしまい、サイズの小さなバッテリモジュール8′しか収納することができなかった。しかし、板金製のリブ41dにすることにより、図4(b)中に実線で示すように、サイズの大きなバッテリモジュール8を収納することができる。すなわち、トレイ部材10の剛性を高めながら、スペース効率を向上させることができる。
【0048】
また、板金用締結部材50及びバッテリ用締結部材60が、何れも貫通ナット51,61とボルト52,62とから構成され、貫通ナット51,61の上方及び下方からボルト52,62が螺合されてトレイ部材10に締結するため、板金トレイ部材40の締結及びバッテリモジュール8の締結に、同一の部材を使用することができ、構成を簡素にできるとともに、コスト増を抑制することができる。また、トレイ部材10の立壁の上面に配置される板金フランジ部42及びバッテリフランジ部81と支持部材30の幅方向支持部31とを容易かつ確実にトレイ部材10に締結することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
上記実施形態では、支持部材30は、井桁形状に形成されていたが、支持部材30の形状はこれに限られず、例えば、長手方向支持部32が部分的に設けられていてもよい。また、桁形状でなくてもよく、バッテリケース7全体の荷重を支えられるように構成されていればよい。
【0050】
また、トレイ部材10及びカバー部材20の形状は上記実施形態のものに限られず、例えば、トレイ部材10及びカバー部材20の形状が、正方形のように長手方向が規定できないような形状であってもよい。また、トレイ部材10の隔壁13の位置は種々変更可能であり、これに伴って、バッテリ収納部15F,15C,15Rや電気回路収納部15Eの位置も変更可能である。
【0051】
また、板金トレイ部材40の大きさは、前側バッテリ収納部15F及び後側バッテリ収納部15Rの大きさによって規定されるため、上記実施形態のように同じ大きさでなくてもよい。
また、板金フランジ部42とバッテリフランジ部81の形状や数は上記実施形態のものに限られず、板金トレイ貫通孔46とバッテリ貫通孔86とが重ならなければ、板金フランジ部42とバッテリフランジ部81とが一部重なって設けられていてもよい。
【0052】
また、立壁等に設けられる貫通孔6の数は、上記実施形態のものに限られない。すなわち、板金トレイ部材40の板金フランジ部42を締結するための貫通孔6は、少なくとも板金フランジ部42の両端部と中央の3箇所は必要であるが、3箇所以上であれば板金フランジ部42の長さによって適宜設定可能であり、また、バッテリモジュール8を固定するための貫通孔6は、トレイ部材10に収納されるバッテリモジュール8の数によって規定される。
【0053】
また、板金用締結部材50及びバッテリ用締結部材60は、貫通ナット51,61とボルト52,62とから構成されていなくてもよく、例えば、貫通孔6よりも長いボルトとウェルドナットとから構成されていてもよく、また、貫通ボルトとナットとから構成されていてもよい。また、板金用締結部材50とバッテリ用締結部材60とが異なる構成であってもよく、隣り合わせに配置されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0054】
6 貫通孔
7 バッテリケース
8 バッテリモジュール(バッテリ)
10 トレイ部材
11 周壁(立壁)
11a 前壁(立壁)
11b 後壁(立壁)
13 隔壁(立壁)
13F 前隔壁(立壁)
13R 後隔壁(立壁)
16 トレイ貫通孔(貫通孔)
20 カバー部材
30 支持部材
31 幅方向支持部
40 板金トレイ部材
41 板金凹部
42 板金フランジ部
50 板金用締結部材
51 貫通ナット
52 ボルト
60 バッテリ用締結部材
61 貫通ナット
62 ボルト
81 バッテリフランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車の駆動用のバッテリを収容するバッテリケースであって、
前記バッテリを支持する樹脂製のトレイ部材と、
前記トレイ部材の下面に設けられ、前記トレイ部材を下方から支持する支持部材と、
前記トレイ部材に立設された立壁と、
前記トレイ部材上に配置される板金製の板金トレイ部材と、を備え、
前記板金トレイ部材は、前記バッテリを収納する複数の板金凹部と、前記立壁の上面に配置される板金フランジ部と、を有し、
前記立壁には、前記立壁が立設される方向に貫通された貫通孔が設けられ、
前記支持部材と前記板金フランジ部とは、前記貫通孔を貫通する板金用締結部材により前記トレイ部材に締結される
ことを特徴とする、バッテリケース。
【請求項2】
前記立壁は、前記トレイ部材の短手方向に延設し長手方向中間部に設けられた隔壁、又は、前記トレイ部材の長手方向両端部の周壁である
ことを特徴とする、請求項1記載のバッテリケース。
【請求項3】
前記バッテリは、前記立壁の前記上面に配置されるバッテリフランジ部を有し、
前記支持部材と前記バッテリフランジ部とは、前記貫通孔を貫通するバッテリ用締結部材により前記トレイ部材に締結され、
前記板金用締結部材と前記バッテリ用締結部材とは、隣り合わせに配置されている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のバッテリケース。
【請求項4】
前記板金用締結部材及び前記バッテリ用締結部材は、何れも前記貫通孔に挿入された貫通ナットとボルトとから構成され、
前記支持部材と前記板金フランジ部及び前記支持部材と前記バッテリフランジ部は、何れも前記貫通ナットに前記立壁の前記上面及び前記トレイ部材の前記下面からそれぞれボルトを螺合することにより前記トレイ部材に締結される
ことを特徴とする、請求項3記載のバッテリケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−129074(P2012−129074A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279703(P2010−279703)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】