説明

バッテリーパック

【課題】使用温度範囲内における容量低下を抑え、かつ高温環境に放置された場合の劣化の緩和を図ることができるバッテリーパックを提供することを目的とする。
【解決手段】強制放電回路9を備えたバッテリーパック1において、バッテリーセル2の電極間に接続される放電抵抗3を、強制放電時に放電抵抗3から発せられる熱がバッテリーパック1の温度上昇に寄与しない位置、或いは、抵抗値としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強制放電回路を備えたバッテリーパックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯して使用することができる携帯用電子機器、例えばポータブルナビゲーション機器等、のバッテリーパックは、バッテリーパックの使用温度範囲内であれば、充電/放電を行い、使用温度範囲外であれば、充電/放電を停止するように構成されていた。
このような携帯用電子機器は、車両内部で使用される場合には、車両の内部電源に連結させた状態で使用される。そのため、携帯用電子機器に装着されたバッテリーパックには継続的に電力が充電されることとなり、バッテリーパックのバッテリーセルは満充電状態を維持することとなる。
バッテリーセルが満充電状態で、炎天下の車内等の高温環境に放置された場合には、バッテリーセルの保持特性が悪くなり、バッテリーセルの劣化や膨張が発生する可能性がある。そのため、バッテリーパックの温度が予め設定された基準温度以上になった場合には、使用温度範囲内でバッテリーセルに蓄積された電力を放電抵抗に流して強制放電させることによってバッテリーセルの内圧を下げ、バッテリーセルの膨張を抑制させることができる保護回路を備えたバッテリーパックが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−183830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリーセルに充電された電力の強制放電時には、放電抵抗が熱を発生し、その熱によりバッテリーパックの温度が上昇する。そのため、強制放電を行う基準温度は使用温度範囲の上限よりも低い温度に設定されている。しかしながら、炎天下の車内では、車内温度が急激に上昇するため、バッテリーパックの温度は、すぐにこの基準温度に達してしまい、バッテリーセルに充電された電力が使用温度範囲にもかかわらず強制放電されてしまう。これによって、いざ携帯用電子機器を車両から取り外して、バッテリーパックに充電されている電力で携帯用電子機器を駆動させて使用した時には、バッテリーパックに充電されている電力が不足しており、携帯用電子機器の動作時間が短くなってしまうという問題がある。
本発明は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、使用温度範囲内における容量低下を抑え、かつ高温環境に放置された場合の劣化の緩和を図ることができるバッテリーパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、強制放電回路を備えたバッテリーパックにおいて、バッテリーセルの電極間に接続される放電抵抗を、強制放電時に前記放電抵抗から発せられる熱がバッテリーパックの温度上昇に寄与しない位置、或いは、抵抗値としたことを特徴とする。
【0006】
この構成において、前記バッテリーセルの温度が70℃よりも高い時に、前記放電抵抗から強制放電する構成としても良い。また、前記放電抵抗から放電される電力を0.5W以下とした構成としても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、強制放電回路を備えたバッテリーパックにおいて、バッテリーセルの電極間に接続される放電抵抗を、強制放電時に前記放電抵抗から発せられる熱がバッテリーパックの温度上昇に寄与しない位置、或いは、抵抗値としたため、強制放電を開始するバッテリーパックの温度を高く設定することができ、バッテリーパックの使用温度範囲内での容量低下を抑え、かつ高温環境に放置された場合のバッテリーパックの劣化の緩和を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態のバッテリーパックの機能的構成を示すブロック図である。
【図2】バッテリーパックの内部構造を示す図である。
【図3】バッテリーパックの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係るバッテリーパック1の機能的構成を示すブロック図である。バッテリーパック1は、携帯して使用することができる、例えばポータブルナビゲーション機器等の携帯用電子機器のバッテリーパックとして用いられ、充放電可能に構成されている。バッテリーパック1の使用温度範囲は0℃から70℃と予め規定されており、この使用温度範囲外ではバッテリーパック1へ充電をすることも、バッテリーパック1から電力を供給して携帯用電子機器を駆動するもできないように構成されている。
バッテリーパック1は、図1に示すように、バッテリーセル2と、セル温度検出回路8と、充電制御回路6と、放電制御回路7と、強制放電回路9と、を備える。図1には、説明を簡略化するために、1つのバッテリーセルから構成されるバッテリーセル2を図示したが、バッテリーセル2は、複数のバッテリーセルを並列にならべて接続されている構成としても良い。
【0010】
バッテリーパック1はまた、バッテリーセル2の正極に連結された正極端子13と、バッテリーセル2の負極に連結された負極端子14とを備える。
バッテリーセル2は、充放電可能に構成され、例えば車両の内部電源にバッテリーパック1の正極端子13及び負極端子14を連結させた状態で使用した場合には、継続的に電力が充電される。
【0011】
バッテリーセル2の正極と、バッテリーパック1の正極端子13の間には、放電用スイッチング素子10と、充電用スイッチング素子11とが電気的に接続されている。放電用スイッチング素子10、充電用スイッチング素子11は、ともに、MOSFET(Melta Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。放電用スイッチング素子10には、放電用スイッチング素子10のオン/オフの制御を行う放電制御回路7が電気的に接続されている。充電用スイッチング素子11には、充電用スイッチング素子11のオン/オフの制御を行う充電制御回路6が電気的に接続されている。充電制御回路6は、充電電流量を検出し、充電電流量の減少状態からバッテリーセル2の満充電を判定する。
【0012】
バッテリーセル2には、バッテリーセル2の温度の検出を行う温度検出素子5が電気的に接続される。温度検出素子5で検出されたバッテリーセル2の温度は、温度検出素子5に電気的に接続されたセル温度検出回路8に入力される。セル温度検出回路8は、充電制御回路6、放電制御回路7、強制放電回路9に電気的に接続される。セル温度検出回路8は、温度検出素子5から入力されたバッテリーセル2の温度に基づいて充電制御回路6、放電制御回路7、強制放電回路9に検出結果を入力する。充電制御回路6、放電制御回路7、強制放電回路9は、それぞれセル温度検出回路8からの入力結果に基づいて、充電用スイッチング素子11、放電用スイッチング素子10、電子スイッチ4の制御を行う。
【0013】
強制放電回路9は、電子スイッチ4に電気的に接続される。電子スイッチ4は、放電抵抗3に電気的に接続され、放電抵抗3は電子スイッチ4を介してバッテリーセル2の正極と負極の間に電気的に接続されている。強制放電回路9は、セル温度検出回路8の検出結果に基づいて、電子スイッチ4を制御する。
強制放電回路9が電子スイッチ4を切り替えて、放電抵抗3をバッテリーセル2の正極と負極の間に繋げると、バッテリーセル2に充電されている電力が放電抵抗3で強制的に放電される構成となっている。強制放電回路9は、また、電圧制御機能を備え、バッテリーセル2の電池電圧を検出して、バッテリーセル2の電池電圧を安全な電圧まで徐々に下げるように電子スイッチ4を制御する。
【0014】
使用温度範囲内(0℃〜70℃)であれば、セル温度検出回路8は、検出結果を充電制御回路6に入力する。充電制御回路6は、セル温度検出回路8の検出結果に基づいて、充電用スイッチング素子11をオンにし、バッテリーセル2の充電を行う。また、温度検出素子5からセル温度検出回路8に入力されるバッテリーセル2の温度が、使用温度範囲内(0℃〜70℃)であれば、セル温度検出回路8は、検出結果を放電制御回路7に入力する。放電制御回路7は、セル温度検出回路8の検出結果に基づいて、放電用スイッチング素子10をオンにし、バッテリーセル2を放電可能とする。
【0015】
このように、バッテリーパック1は、温度検出素子5で検出されるバッテリーセル2の温度が使用温度範囲内(0℃〜70℃)であるとセル温度検出回路8が判定した場合には、バッテリーパック1の充電及び放電が許容されるように構成されている。温度検出素子5で検出されたバッテリーセル2の温度が、この使用温度範囲外であるとセル温度検出回路8が検出すると、セル温度検出回路8は検出結果を充電制御回路6及び放電制御回路7に入力し、充電制御回路6、放電制御回路7は、それぞれセル温度検出回路8の検出結果に基づいて、放電用スイッチング素子10、充電用スイッチング素子11をオフにして、バッテリーパック1の充電及び放電を停止する。
【0016】
セル温度検出回路8は、温度検出素子5で検出されるバッテリーセル2の温度が予め設定された強制放電を開始する温度よりも高温であると検出した場合には、検出結果を強制放電回路9に入力する。強制放電回路9は、セル温度検出回路8の検出結果に基づいて、電子スイッチ4を切り替えて、放電抵抗3をバッテリーセル2の正極と負極の間に接続する。放電抵抗3がバッテリーセル2の正極と負極の間に接続されると、放電抵抗3の抵抗値に応じてバッテリーセル2に充電されている電力が、放電抵抗3で強制放電される。
【0017】
バッテリーパック1内は、図2に示すように、バッテリーセル2が収容される一方の室R1と、セル温度検出回路8、充電制御回路6、放電制御回路7、強制放電回路9等を含む制御回路が実装された制御基板20が収容される他方の室R2とに区分けされる。バッテリーセル2と制御基板20との間には、断熱部材21が設けられ、この断熱部材21によって、バッテリーパック1内が一方の室R1と、他方の室R2とに区分けされる。
バッテリーパック1内は、図2(A)(B)、或いは、図2(C)に示すように、バッテリーパック1の厚さ方向に亘って設けられた断熱部材21によってバッテリーパック1の内部の一部を一方の室R1から区切るようにして他方の室R2が形成される構成であっても良い。また、バッテリーパック1は、図2(D)(E)に示すように、厚さ方向に2層構造に形成される構成であっても良い。
【0018】
放電抵抗3は、強制放電回路9とともに制御基板20に実装されて備えられる。放電抵抗3を用いて、バッテリーセル2を強制放電する際には、放電抵抗3から熱が発せられるが、放電抵抗3を実装した制御基板20は、図2に示すように、バッテリーセル2から断熱部材21によって区分けられた他方の室R2内に収容されるため、放電抵抗3から発せられる熱がバッテリーセル2に伝熱されることがなく、放電抵抗3を用いてバッテリーセル2の強制放電を行っても、放電抵抗3から発せられる熱がバッテリーパック1の温度上昇に寄与することがない。
【0019】
従来は、強制放電時に放電抵抗が高温となって電池の温度が上昇する可能性があるため、強制放電をバッテリーパックの使用温度範囲内でしかも例えば45℃という低い温度で開始しなければいけなかったが、放電抵抗3から発せられる熱がバッテリーパックの温度上昇に寄与しない配置としたため、強制放電をバッテリーパック1の温度が高温であっても強制放電を行うことが可能となる。そのため、バッテリーパック1の温度が使用温度範囲内であるときには、強制放電を行わず、バッテリーパック1の充電容量の低下を抑えることができる。
【0020】
また、放電抵抗3の抵抗値は、放電抵抗3から放電される電力が0.5W以下となるように構成される。これによって、バッテリーセル2の電池電圧を徐々に下げることができ、バッテリーセル2の内圧が強制放電によって上昇するのを防ぐことができる。これによって、強制放電による劣化の促進を防ぐとともに、バッテリーセル2の高温保存時の劣化、及び膨張を緩和して、バッテリーパック1の安全性の向上を図ることができる。
【0021】
次に、バッテリーパック1の動作について説明する。
図3は、バッテリーパック1の充放電動作を示すフローチャートである。図3に示すように、温度検出素子5は、バッテリーセル2の温度を検出し(ステップS1)、検出したバッテリーセル2の温度を、セル温度検出回路8に入力する。セル温度検出回路8は、温度検出素子5から入力されたバッテリーセル2の温度が充電可能温度、つまり使用温度範囲内であるか否かを判定する(ステップS2)。バッテリーセル2の温度は、使用温度範囲内であるとセル温度検出回路8が判定すると(ステップS2:Yes)、セル温度検出回路8は充電制御回路6に判定結果を出力する。充電制御回路6は、セル温度検出回路8からの入力に基づいて、充電用スイッチング素子11をオンにし、充電を行うとともに、放電用スイッチング素子10をオンにし、放電可能とする(ステップS3)。
【0022】
充電制御回路6は、充電用スイッチング素子11をオンにし、バッテリーセル2への充電電流量を検出する。充電電流は、バッテリーセル2が満充電に近づくと減少するため、充電制御回路6は、検出した充電電流量の減少状態からバッテリーセル2が満充電であるか否かを判定する(ステップS4)。充電制御回路6は、バッテリーセル2が満充電であると判定すると(ステップS4:Yes)、充電用スイッチング素子11をオフにして、充電を停止する(ステップS5)。
【0023】
ステップS2において、バッテリーセル2の温度が使用温度範囲外であると判定すると(ステップS2:No)、セル温度検出回路8は、充電制御回路6及び放電制御回路7に検出結果を入力する。充電制御回路6、放電制御回路7は、セル温度検出回路8からの入力に基づいて、それぞれ充電用スイッチング素子11、放電用スイッチング素子10をオフにし、バッテリーパック1の充放電を停止する。続いて、セル温度検出回路8は、バッテリーセル2の温度が70℃以上の高温であるか否かを判定する(ステップS7)。バッテリーセル2の温度が70℃以上の高温であると判定すると(ステップS7:Yes)、セル温度検出回路8は、強制放電回路9に検出結果を入力する。
【0024】
強制放電回路9は、セル温度検出回路8の検出結果に基づいて、電子スイッチ4を切り替えて、放電抵抗3をバッテリーセル2の正極と負極の間に繋げ(ステップS8)、バッテリーセル2に充電されている電力を放電抵抗3で徐々に放電させる。強制放電回路9は、バッテリーセル2の強制放電中、バッテリーセル2の電池電圧を検出し、バッテリーセル2の電池電圧が安全な電圧まで低下したか否かを判定する(ステップS9)。バッテリーセル2の電池電圧が安全な電圧まで低下したと判定すると(ステップS9:Yes)、強制放電回路9は、電子スイッチ4を切り替えて、放電抵抗3をバッテリーセル2から切り離し(ステップS10)、強制放電を停止する。
【0025】
この構成によれば、バッテリーパック1が満充電の状態で高温環境に放置された場合等に、バッテリーパックの温度上昇に伴い、バッテリーセル2を強制放電させて電池電圧を安全な電圧まで下げる制御が行われるため、高温放置によるバッテリーセル2の劣化の緩和を図ることができる。また、バッテリーセルの強制放電は、バッテリーセル2の温度がバッテリーパック1の使用温度範囲外の70℃以上で行われるため、バッテリーパック1の温度が使用温度範囲内であるときには、強制放電によるバッテリーパック1の充電容量の低下を抑えることができる。
【0026】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態に係る強制放電回路を備えたバッテリーパック1によれば、バッテリーセル2の電極間に接続される放電抵抗3を、強制放電時に放電抵抗3から発せられる熱がバッテリーパック1の温度上昇に寄与しない位置、或いは、抵抗値としたため、バッテリーセル2の強制放電をバッテリーパック1の温度が低いうちに行う必要がなく、バッテリーパック1の温度が使用温度範囲内であるときには、強制放電によるバッテリーパック1の充電容量の低下を抑えることができる。これにより、炎天下の車内や高温の場所などに放置されていたバッテリーパック1を備えた携帯用電子機器をユーザーがバッテリーパック1からの電力により使用した時にも動作時間が短くなるなどの不満を解消することができる。また、バッテリーパック1の使用温度範囲外では、放電抵抗3によって強制放電が行われるため、バッテリーセル2の高温保存時の劣化、及び膨張を緩和して、バッテリーパック1の安全性の向上を図ることができる。
【0027】
バッテリーパック1は、また、バッテリーセル2の温度が70℃よりも高い時に放電抵抗3から強制放電するため、強制放電をバッテリーパック1の使用温度範囲外の高温で行うことができ、バッテリーパック1の温度が使用温度範囲内であるときには、強制放電によるバッテリーパック1の充電容量の低下を抑えることができる。また、バッテリーパック1の使用温度範囲外では、放電抵抗3から強制放電するため、バッテリーセル2の高温保存時の劣化、及び膨張を緩和して、バッテリーパック1の安全性の向上を図ることができる。
【0028】
放電抵抗3から放電される電力を0.5W以下としたため、徐々にバッテリーセル2の電池電圧を下げることができるため、強制放電による電池内圧の上昇を抑えることができる。これによって、強制放電による劣化の促進を防ぐとともに、バッテリーセル2の高温保存時の劣化、及び膨張を緩和して、バッテリーパック1の安全性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 バッテリーパック
2 バッテリーセル
3 放電抵抗
5 温度検出素子
8 セル温度検出回路
9 強制放電回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強制放電回路を備えたバッテリーパックにおいて、
バッテリーセルの電極間に接続される放電抵抗を、強制放電時に前記放電抵抗から発せられる熱がバッテリーパックの温度上昇に寄与しない位置、或いは、抵抗値としたことを特徴とするバッテリーパック。
【請求項2】
前記バッテリーセルの温度が70℃よりも高い時に、前記放電抵抗から強制放電することを特徴とする請求項1に記載のバッテリーパック。
【請求項3】
前記放電抵抗から放電される電力を0.5W以下としたことを特徴とする請求項1または2に記載のバッテリーパック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−17354(P2013−17354A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149964(P2011−149964)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】