説明

バベシアワクチン

本発明は、28kDaタンパク質ファミリーのバベシアタンパク質及びそのようなタンパク質の免疫フラグメント、そのようなタンパク質又はフラグメントをコードする核酸、cDNAフラグメント、組み換えDNA分子、そのような核酸を含有する、生きている組み換え担体もしくは宿主細胞、ワクチン、そのようなワクチン調製のための方法、バベシア科の生物によって引き起こされる感染又はその臨床的徴候の予防又は治療処置のための、そのようなタンパク質又はフラグメントの使用、及びバベシア科の生物の核酸、抗体又は抗原の検出のための診断テストに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、28kDaタンパク質ファミリーのバベシアタンパク質及びその免疫フラグメント、そのようなタンパク質をコードする核酸、cDNAフラグメント、組み換えDNA分子、生きている組み換え担体及び宿主細胞、ワクチン、そのようなワクチン調製のための方法、そのようなタンパク質又はフラグメントの使用、及び診断テストに関する。
【0002】
バベシア症は、マラリアのように、地理的に局限して起こる疾患である。この理由は、病原体が、脊椎動物群に存在する寄生虫のある特定の病原体保有生物から餌を摂取するダニにより伝染されることによる。ダニが存在する場合のみ、バベシア症が発生しうる。すべてを考慮して、特に、土地固有の動物において、寄生虫は顕著な疾患を起こさずに宿主と共存する。多くの場合、遺伝形質の近親交配及び/又はバベシア症が風土病である不慣れな環境へと動物を輸送することを介した人間の活動があるために、バベシア症は問題となる(“Immunology of Parasitic Infections(寄生虫感染の免疫学)”,Cohen,S.及びWarren,K.S.編、p.475−526、Blackwell Scientificにおける、Callow,L.L.及びDalgliesh,R.J.,1982)。
【背景技術】
【0003】
バベシア症はまた、免疫不全のヒトに対してのみならず、人畜共通感染症としての脅威を内包している(Grayら、2002、Int.J.Med.Microbiol.,vol.291,p.108−111)。
【0004】
自然獲得されたバベシア症における疾患の徴候は、通常、感染から7−21日後に始まる。これらの症候には、発熱、食欲不振、抑うつ、貧血、ヘモグロビン尿症及び急激な衰弱が含まれる。涙液分泌、唾液分泌の増加及び筋肉振戦が起こることが多い。神経的徴候は、末期感染において進行し得、この疾患を治療せず放置した場合、致死となり得る。凝血障害により、赤血球粘性が高まる。血栓症はそれ程見られないが、巨核球と結合した小さな硝子質トロンビンの所見が報告されている。その結果、微小血管系の血液の流れが妨害され、それにより、内臓の鬱血が起こり、血中血球容積(PCV)が低下する。これにより、ある一定の組織への酸素供給が低下し得、続いて、酸素欠乏症の結果として組織損傷が起こり得る。
【0005】
バベシア科の種は、現在、獣医学的に重要な哺乳動物種のほとんどに感染することが分かっている(M.Ristic編:“Babesiosis of domestic animals and man(家畜及びヒトのバベシア症)”.CRC Press,Inc.,Boca Raton,FL,1988における、Kuttler,K.L.,):ウシ(B.divergens(B.ディバージェンス)、B.bovis(B.ボビス)、B.bigemina(B.ビゲミナ))、ブタ(B.trautmanni(B.トラウトマンニ)、B.perroncitoi(B.ペロンキトイ))、ヒツジ(B.ovis(B.オビス)、B.motasi(B.モタシ))、ウマ(B.equi(B.エクイ)、B.cabalai(B.キャバリ)、イヌ(B.canis(B.キャニス)(B.キャニス)、B.rossi(B.ロッシ)、B.vogeli(B.ボゲリ))及びネコ(B.felis(B.フェリス)、B.cati(B.キャティ))。これら全ての種において、死亡又は程度の差はあるが甚大な経済的損失(肉、乳、羊毛又は子孫の質又は量的低下)又は健康状態の著しい低下が、直接、バベシア感染の結果として、又は二次感染の進行を介して起こる。
【0006】
投薬治療は、既に起こっているバベシア感染を治療することを目的として存在し、例えば、ジプロピオン酸イミドカルブを用いてイヌを治療することができる(Carbesia(R)として市販されている。)(Brandaoら、2003,Vet.Paras.vol.114,p.253−265)。しかし、そのような注射は、組織炎症のため痛みを伴う。さらに、このような駆虫薬でよく見られる欠点を有する:すなわち、免疫記憶蓄積の妨害、潜在毒性及び耐性獲得である。
【0007】
生ワクチンを用いたワクチン接種によりバベシア症がコントロールできることが明らかになっている(Pipano,1995、Vet.Paras.,vol.57,p.213−231)。このようなワクチンは、感染動物由来の赤血球を回収することにより生成される。全てではないが一部のバベシア種に対して、寄生虫数を増やすために、インビトロの赤血球培養が開発されてきた。次に、感染動物由来の感染赤血球又はその培養物を、動物へのワクチン接種に使用する。
【0008】
このような生の寄生虫ワクチンの一般的な欠点は、接種物質が概して制御不能で、その組成が非常に多様であり、生物学的に安全でなくそのプロセス全体において、多数の実験動物を使用するので非倫理的であるという点である。さらに、バベシア寄生虫は、絶対嫌気性であり、酸素を避けないとすぐに死滅してしまうため、非常に不安定である。
【0009】
あるいは、寄生虫感染性赤血球そのものではなく、周囲の血清又は培養上清をワクチン接種に使用する。赤血球の周囲にあるこのような液体は、可溶性寄生虫抗原(SPA)と呼ばれるものを含有する。これらの調製物の組成についてはほとんど知られていない。保護活性が血清又は培地中のメロゾイト表面層(赤血球への侵入プロセス中に残される構造)の抗原の免疫能力よるものであることが示唆されてきた(“Babesiosis of Domestic Animals and Man(家畜及びヒトのバベシア症)”,Ristic,M.編、p.163−190,CRC Press中の、Ristic,M.及びMontenegro−James,S.,1988)。さらに、インビトロ培養中、多数の寄生虫が死に、それにより(内部の)寄生虫抗原が培養液中に放出される。
【0010】
このようなSPA調製物は、寄生虫に感染する必要がないにもかかわらず、感染の臨床症状を十分に緩和させる、免疫反応を誘発することができる(Schetters及びMontenegro−James,S.,1995,Parasitology today,vol.11,p.456−462)。例えば、Babesia canis(バベシア キャニス)寄生虫感染赤血球のインビトロ培養の培養上清由来のSPAは、同族の攻撃感染に対する保護的免疫を誘導する。
【0011】
Babesia canis(バベシア キャニス)に対するSPAワクチンは、Pirodog(R)として市販されており、Babesia canis(バベシア キャニス)株の培養物の上清から調製されている(米国特許第4,777,036号に記載)。しかし、そのようなワクチンは、(野生型)B.canis(B.キャニス)による感染に対して一般にほとんど保護効果がない(Lepetit,C.,1988,“Piroplasmose canine et vaccination Pirodog”,Doctoral Thesis,Univ.of Nantes,France)。
【0012】
一般に、SPAを基にしたワクチンは、生の寄生虫ワクチンと同様の欠点を有しており、特徴がほとんど不明であり、非常に多様で、生物学的に安全に用いるために多くの注意を要する。さらに、そのようなワクチンの製造は、寄生虫、赤血球及び/又は血清を得るために実験動物の感染、飼育及び回収が必要であり、規模拡大が非常に困難である。
【0013】
本発明の目的は、バベシア科による感染に対する、明確で、安全、安定で、製造規模拡大が容易な、効果的なサブユニットワクチンとして作用し得るタンパク質又はそのフラグメントを提供することである。
【0014】
驚くべきことに、新規バベシアタンパク質ファミリー(28kDaタンパク質ファミリー)のメンバーならびにその免疫フラグメントを含有するサブユニットワクチンがこれらの有利な特徴全てを有していることを今回発見した。
【0015】
今回、発現系において産生されるタンパク質サブユニットワクチンにおいて、この新規タンパク質ファミリーのメンバー又はその免疫フラグメントを使用することにより、生の寄生虫及びSPAワクチンの多くの欠点を克服することができた。すなわち、それらのタンパク質は明確に定義されており、生物学的に安全で、その生成物は生きている丸ごとの寄生虫よりも大幅に安定性に優れ、その製造規模を容易に拡大できる。
【0016】
新規28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質は、その全てが、このファミリーの様々なメンバー間で非常に良く保存されている特異的アミノ酸配列を共通して有していることを特徴とする。
【0017】
このよく保存されたアミノ酸配列が存在するにもかかわらず、28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質の全長は、バベシア科の各メンバーにより様々であり得る。28kDaタンパク質ファミリーのメンバーの例は、下は26kDaから40kDa超までの範囲の長さを有することが分かっている。
【0018】
しかし、28kDaタンパク質ファミリーのメンバーは全て、配列番号2のアミノ酸位置17から位置180までのアミノ酸配列と少なくとも70%の相同性レベルを有する一続きのアミノ酸を含有する。
【0019】
例に過ぎないが、フランスにおいて、Babesia canis(バベシア キャニス)分離株A、本発明による28kDaファミリーのメンバー及び、さらにBc28.1又はBc28.2と呼ばれるものが、それぞれ配列番号2又は4で示すとおりのアミノ酸配列を有することが分かった。
【0020】
28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質は、バベシア科由来の28kDa多重遺伝子族のメンバーであり、核酸レベルでの配列同一性が高い、それらの個別のコード配列から発現される。
【0021】
特異的抗血清により、感染した赤血球において28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質を検出することができる。これらの血清は、ウェスタンブロッティング及び免疫沈降実験においても寄生虫のこれらの特異的タンパク質を認識する。両タンパク質とも、発現系で発現させることができる。サブユニットワクチンを処方するために、このようにして発現させたタンパク質又はそれらのフラグメントを使用することができ、このワクチンは、バベシア科の種による感染における疾患(の徴候)から哺乳動物を守る。
【0022】
Bc28.1タンパク質は、2種類の形態、すなわち、遊離26kDa SPA型(バベシア感染赤血球及びその周囲の液体中に存在する。)ならびに、GPIアンカーを有し、バベシアメロゾイトの膜と、及び感染赤血球の外膜と会合している28kDa結合タンパク質型で存在する。
【0023】
バベシア寄生虫はその一生のほとんどを赤血球内部に隠れて過ごすので、従って、免疫系により「見られる」ことができる抗原に収束した場合に、免疫反応が最も効果的である。Bc28.1の28kDa型は、外部に提示されるような抗原であり、感染した赤血球に特異的に向けられる免疫攻撃を可能にする。Bc28.1タンパク質の28kDa型は、赤血球に結合する。これは、赤血球の凝集における役割を示す。このプロセスが病変の主要な原因であり、寄生虫が新しい赤血球に感染する方法であるので、このレベルでの妨害によってもまた、疾患進行における効果的な免疫介入がもたらされる。
【発明の開示】
【0024】
従って、本発明のある局面は、配列番号2のアミノ酸位置17から位置180のアミノ酸配列と少なくとも70%の相同性を持つアミノ酸配列を含有することを特徴とするバベシアタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメントに関連する。
【0025】
好ましい実施形態において、本発明によるバベシアタンパク質は、配列番号2で示される通りのアミノ酸配列と少なくとも70%の相同性を持つアミノ酸配列を含有することを特徴とするか、又は該タンパク質の免疫フラグメントである。
【0026】
別の好ましい実施形態において、本発明によるバベシアタンパク質は、配列番号4で示される通りのアミノ酸配列と少なくとも70%の相同性を持つアミノ酸配列を含有することを特徴とするか、又は該タンパク質の免疫フラグメントである。
【0027】
より好ましい実施形態において、本発明によるバベシアタンパク質は、好ましくは26kDa型又は28kDa型である、Bc28.1タンパク質であることを特徴とする。
【0028】
別のより好ましい実施形態において、本発明によるバベシアタンパク質は、Bc28.2タンパク質であることを特徴とする。
【0029】
「タンパク質」という用語は、アミノ酸の分子鎖を組み込むものとする。タンパク質は、ある特定長の産物を指すものではなく、また、必要であれば、インビトロ又はインビボで、例えば、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化又はリン酸化によって、修飾することのできるものである。従って、特に、ペプチド類、オリゴペプチド類及びポリペプチド類がその定義に含まれる。タンパク質又はペプチドは、生体及び/又は合成起源のものであり得る。
【0030】
本発明による「バベシアタンパク質」は、バベシア科の生物において対応物を有するタンパク質である。
【0031】
好ましくは、バベシア科の生物は、Babesia divergens(バベシア ディバージェンス)、B.bovis(B.ボビス)、B.motasi(B.モタシ)、B.caballi(B.キャバリ)、B.equi(B.エクイ)、B.canis(B.キャニス)、B.rossi(B.ロッシ)、B.vogeli(B.ボゲリ)、B.felis(B.フェリス)、B.cati(B.キャティ)、B.ovis(B.オビス)、B.trautmanni(B.トラウトマンニ)、B.bigemina(B.ビゲミナ)、B.microti(B.ミクロティ)及びB.gibsoni(B.ギブソニ)の種からなる群から選択される生物である。
【0032】
より好ましくは、バベシア科の生物は、Babesia canis(バベシア キャニス)、B.rossi(B.ロッシ)、B.caballi(B.キャバリ)、B.equi(B.エクイ)、B.bovis(B.ボビス)及びB.bigemina(B.ビゲミナ)の種からなる群から選択される。
【0033】
「免疫フラグメント」は、そのような28kDaバベシアタンパク質に対して向けられる抗体を誘導する能力を保持している28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質のフラグメントであると理解される。
【0034】
好ましくは、本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質の免疫フラグメントは、配列番号2又は4のアミノ酸配列から抜粋される少なくとも8アミノ酸を含有する。より好ましくは、そのようなフラグメントは、配列番号2又は4のアミノ酸配列から抜粋される、11、15、20、30、40、50、100、150又は200アミノ酸(望ましい順)を含有する。
【0035】
好ましくは、本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質の免疫フラグメントは、そのようなタンパク質のエピトープを含有する。例えば、本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質の免疫フラグメントは、N−末端シグナル配列及び/又はC−末端のGPIアンカー配列を欠失しているタンパク質の一部により形成される。他のフラグメントは、例えば、28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質由来の特異的なエピトープを含有するものである。そのようなエピトープは、下記に概説した方法により決定され得る。これらの免疫フラグメントは全て本発明に包含される。
【0036】
エピトープは、T細胞受容体が反応する、又はB細胞が抗体を産生する抗原性分子の一部であると理解される。従って、本発明によるエピトープは、T細胞、B細胞などの細胞又は抗体が感染又は疾患の経過を阻害する免疫反応を生じるように、特異的T細胞を誘導する、又は特異的抗体を産生するようB細胞を活性化する。このように、このようなエピトープを介して、免疫反応が生じ得る。
【0037】
抗原性であるために、アミノ酸フラグメントは、ある一定の長さのものである必要がある。従って、エピトープは、MHCI受容体結合のための少なくとも8個から11個のアミノ酸、又はMHCII受容体結合のための、11個から15個のアミノ酸からなる(“The biochemistry and cell biology of antigen processing and presentation(抗原プロセシング及び提示の生化学及び細胞生物学)”中の、R.N.Germain及びD.H.Margulies,1993,Annu.Rev.Immunol.,vol.11,p.403−450により概説されている。)。これより短いアミノ酸フラグメントは抗原性となり得ず、本分野で公知の技術を用いてKLH、BSA等の担体とカップリングさせる必要がある。カップリングさせた場合、このような短いフラグメントが、本発明の目的の範囲内である免疫反応を誘導できるようになる。
【0038】
本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質の免疫フラグメント又はエピトープの同定は、例えば、PEPSCAN法と呼ばれるもの、又は既知のエピトープと比較を行うコンピューターアルゴリズムを介した方法など、様々な簡単な技術により容易に行い得る。
【0039】
PEPSCAN法(WO84/03564及びWO86/06487、及びH.Geysenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1984,vol.81,p.3998−4002、及びJ.of Immunol.meth.,1987,vol.102,p.259−274)は、タンパク質の免疫性決定因子を検出するための、行いやすく、迅速でよく確立された方法である。これは、調べるタンパク質を漸次重複する一連のペプチドフラグメントを合成すること、及びそれに続く、そのタンパク質に対する特異的抗体を用いたこれらのポリペプチドの試験を含む。本発明によるタンパク質に対するこのような抗体は、本分野で周知の技術を用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体を作製することにより得ることができる。
【0040】
既知であるエピトープとの配列及び/又は構造的一致に基づいた免疫学的に重要なエピトープとしての特異的タンパク質フラグメントの指定におけるコンピューターアルゴリズムの使用もまた周知の技術である。これらの領域の決定は、Hopp及びWoods(1981、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.78,p.3824−3828)に従う親水性の基準及びChou及びFasman(1987、Advances in Enzymology,vol.47,p.45−148、及び米国特許第4,554,101号)による二次構造の局面に基づいたものであり得る。免疫原性エピトープは、同様に、Berzofskyの両親媒性基準(1987、Science,vol.235,p.1059−1062及び米国特許出願NTIS US 07/005,885)を活用してコンピューターによりタンパク質のアミノ酸配列から予想され得る。これらの方法の使用についての要約概説は、Shan Lu(一般的原則;1991、Tibtech,vol.9,p.238−242)、Goodら(Malaria epitopes;1987,Science.vol.235,p.1059−1062)、Lu(概説;1992、Vaccine,vol.10,p.3−7)及びBerzofsky(HIV−epitopes;1991、The FASEB Journal,vol.5,p.2412−2418)で見ることができる。
【0041】
これらの方法を使用することの効果については、このような方法を使用したT細胞エピトープの予想において成功率が75%であったことを述べている、H.Margalitら(1987、J.of Immunol.,vol.138,p.2213−2229)で公表されている。
【0042】
本発明によるタンパク質間の相同性のパーセンテージは、サブプログラム:「BlastP」を選択することにより、コンピュータープログラム「BLAST 2 SEQUENCES」で決定する(T.Tatusova&T.Madden,1999,FEMS Microbiol.Letters,vol.174,p.247−250)(www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bl2.htmlで見出すことができる。)。使用する比較マトリクスは、「blosum62」であり、デフォルトパラメーターは、open gap penalty(開始ギャップペナルティ):11;extension gap penalty(伸長ギャップペナルティ):1及びgap x dropoff:50とする。
【0043】
このプログラムは、「同一性(Identities)」として全く相等しいアミノ酸のパーセンテージ及び「ポジティブ(Positives)」として相同であるアミノ酸のパーセンテージを挙げている。
【0044】
例えば、Bc28.1及びBc28.2のアミノ酸配列を図1でアライメントしている。この2つのタンパク質の間、特に、N−末端 3/4rsに、高いパーセンテージの相同性が存在する。パーセンテージ相同性(BlastPプログラムからの「ポジティブ(Positives)」のパーセンテージ)を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
28kDaタンパク質ファミリーの特定のタンパク質に対して、バベシア科の個々の株又は種に関連するタンパク質の間で自然変動が存在することは理解されるであろう。これらの変動は、全体配列におけるアミノ酸の違い、又は前記配列におけるアミノ酸の欠失、置換、挿入、逆位又は付加により示され得る。基本的に生物学的及び免疫学的活性を変化させないアミノ酸置換は、例えば、Nuerathら、1979(“The Proteins(タンパク質)”,Academic Press New York)により述べられている。関連アミノ酸間のアミノ酸置換又は進化において頻繁に起こってきた置換は、とりわけ、Ser/Ala、Ser/Gly、Asp/Gly、Asp/Asn、Ile/Val(Dayhof,M.D.,1978,”Atlas of protein sequence and structure(タンパク質配列及び構造アトラス)“,Nat.Biomed.Res.Found.,Washington D.C.vol.5,suppl.3を参照のこと。)である。他の一般的なアミノ酸置換には、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Thr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Leu/Ile、Leu/Val及びAla/Gluが含まれる。この情報に基づき、Lipman及びPearsonは、迅速かつ感度の高いタンパク質比較(1985、Science,vol.227.p.1435−1441)及び相同のタンパク質間の機能的類似性決定方法を開発した。本発明の例としての実施形態のこのようなアミノ酸置換、ならびに欠失及び/又は挿入を有する変動は、得られるタンパク質が免疫反応性を維持している限り、本発明の範囲内である。バベシア科の生物に対する免疫反応を誘導することができるタンパク質を依然として提供する、本発明によるある一定のタンパク質のアミノ酸配列におけるこれらの変動は、「基本的に免疫活性に影響を与えず」、本発明の実施形態であると考えられる。
【0047】
これにより、本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質が、様々な種から単離された場合に、配列番号2又は4のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有し得、同時に、同様の免疫学的性質、つまり、バベシア属の生物に対する免疫反応を誘導する能力を有する、同様のタンパク質を依然として表す理由が説明される。
【0048】
本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質は、バベシア科ファミリーのメンバーである種から得ることができる。
【0049】
しかし、さらにより好ましい実施形態において、本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又はそれらの免疫フラグメントは、B.divergens(B.ディバージェンス)、B.bovis(B.ボビス)、B.motasi(B.モタシ)、B.caballi(B.キャバリ)、B.equi(B.エクイ)、B.canis(B.キャニス)、B.rossi(B.ロッシ)、B.vogeli(B.ボゲリ)、B.felis(B.フェリス)、B.cati(B.キャティ)、B.ovis(B.オビス)、B.trautmanni(B.トラウトマンニ)、B.bigemina(B.ビゲミナ)、B.microti(B.ミクロティ)又はB.gibsoni(B.ギブソニ)から得られることを特徴とする。
【0050】
さらにより好ましくは、本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又はそれらの免疫フラグメントは、Babesia canis(バベシア キャニス)、B.rossi(B.ロッシ)、B.caballi(B.キャバリ)、B.equi(B.エクイ)、B.bovis(B.ボビス)又はB.bigemina(B.ビゲミナ)から得られることを特徴とする。
【0051】
現行の分類学的な分類に関して、当業者は、新しい知見により新しい群への再分類、又は既存の群への追加が行われ得るにつれて、これが時とともに変化し得ることを認識するであろう。しかし、これは、その分類だけで、関連する生物のタンパク質のレパートリーを変化させないので、そのように再分類された生物は、本発明により包含されると考えられる。例えば、B.canis(B.キャニス)及びB.rossi(B.ロッシ)は、以前はB.canis canis(B.キャニス キャニス)及びB.canis rossi(B.キャニス ロッシ)の亜種として分類されていた。
【0052】
Sibinovic K.ら(1967、J.of Paras.,vol.53,p.919−923)は、Babesia equi(バベシア エクイ)及びB.caballi(B.キャバリ)に感染したウマの血清由来及びB.canis(B.キャニス)に感染したイヌ由来の単離バベシア抗原を研究した。これらの種由来の抗原の生化学的特性において、特筆すべき顕著な類似性があった。従って、B.canis(B.キャニス)から得られたものとしての本発明による28kDaタンパク質ファミリーのバベシアタンパク質はまた、B.equi(B.エクイ)、B.caballi(B.キャバリ)及びバベシア科ファミリーの他の種において存在するであろう。
【0053】
実施例2、セクション2.2.5及び図11において、B.rossi(B.ロッシ)に対する抗血清により、B.canis(B.キャニス)由来のBc28.1タンパク質の26及び28kDa型が特異的に認識されることが開示されている。ここでは、B.rossi(B.ロッシ)に存在する28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質が免疫学的にB.canis(B.キャニス)のそれと関連することが述べられている。
【0054】
Bc28.1コード配列は、地理的かつ遺伝的に離れているB.canis(B.キャニス)野生分離株から得られた。これらの分離株のいくつかの例の推定アミノ酸を図2でアライメントする。BlastPプログラムを用いてペアワイズアライメントにより決定したパーセンテージ相同性(「ポジティブ(Positives」)を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
従って、最も好ましい実施形態において、本発明は、A8、B、34.01、A、Robin及びCastresからなる群から選択されるB.canis(B.キャニス)分離株から得られることを特徴とする、Bc28.1もしくはBc28.2タンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメントに関する。
【0057】
Babesia divergens(バベシア ディバージェンス)由来のBd37と呼ばれるタンパク質が既に(EP 1050541 A1)記載されている。最初、Bd37は、タンパク質Bc28.1及びBc28.2と類似していると思われる。しかし、Bd37及びこの2つのBc28タンパク質は、全く関連がない:
Bd37タンパク質又はそのコード配列と、この2つのBc28タンパク質又はそれらのコード配列のいずれかとの間に有意な配列の類似性はない。
【0058】
Bd37に対する抗血清は、ウェスタンブロッティングにおいても、免疫沈降実験においても、Bc28.1及び28.2それぞれに対する抗体により認識されるB.canis(B.キャニス)の26/28及び45kDaタンパク質を認識しない;例えば、Bd37Hisタンパク質に対する抗血清は、GST−Bc28.2タンパク質を認識しない(図10B、レーン6)。
【0059】
Bd37及びBc28.1の両方が赤血球の外膜に結合するが、Bd37は、0.5M NaClで溶出することができ、一方、Bc28.1は、2M NaClで溶出しても会合し続ける(実施例2、セクション2.1.5.1.及び2.2.6.1.)。本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質を生成する好ましい方法は、遺伝子工学技術及び組み換え発現系を使用することによるものである。これらは、核酸、cDNAフラグメント、組み換えDNA分子、生きている組み換え単体及び/又は宿主細胞を使用することを含み得る。
【0060】
従って、本発明の別の局面は、本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメントをコードすることを特徴とする、核酸に関する。
【0061】
好ましい実施形態において、本発明による核酸は、配列番号1の核酸を含有する。
【0062】
別の好ましい実施形態において、本発明による核酸は、配列番号3の核酸を含有する。
【0063】
「核酸」という用語は、デオキシ−又はリボ核酸の分子鎖を組み入れることを意図する。核酸は、特定の長さではなく、従って、その定義中に、ポリヌクレオチド、遺伝子、オープンリーディングフレーム(ORF’s)、プローブ、プライマー、リンカー、スペーサー及びアダプターが含まれる。核酸は、生物及び/又は合成起源であり得る。この核酸は、1本鎖又は2本鎖の形態であり得る。この1本鎖は、センス又はアンチセンス方向であり得る。修飾RNA又はDNAもまた定義内に含まれる。核酸の塩基における修飾を行い得、イノシンなどの塩基が組み込まれ得る。他の修飾には、例えば、バックボーンの修飾が含まれ得る。
【0064】
「コードする」という用語は、とりわけ、正しい状況に組み込まれた場合に転写及び/又は翻訳を介して、タンパク質発現の可能性を提供することを包含することを意図する。
【0065】
本発明による核酸は、本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質をコードするか、又は該タンパク質の免疫フラグメントをコードする。
【0066】
本発明による核酸は、配列番号1又は3の核酸配列から抜粋された、最短でも24核酸の長さを有するが、好ましくは、本発明による核酸は、配列番号1又は3の核酸配列から抜粋された、50、100、250又は500ヌクレオチド(好ましい順)を含有する。
【0067】
例えば、本発明による核酸は、シグナル配列及び/又はGPIアンカーのない、本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質をコードする核酸である。他の核酸は、28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質の特異的エピトープをコードする配列を含有し得る。このような核酸は、全て、本発明中に包含される。
【0068】
本発明による核酸間の同一性のパーセンテージは、サブプログラム:「BlastN」を選択することにより、コンピュータープログラム「BLAST 2 SEQUENCES」を用いて決定する(T.Tatusova&T.Madden,1999,FEMS Microbiol.Letters,vol.174,p.247−250)(www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bl2.htmlで見出すことができる。)。使用パラメーターは、デフォルトパラメーター:reward for a match:+1;penalty for a mismatch:−2;open gap penalty(開始ギャップペナルティ):5;extension gap penalty(伸長ギャップペナルティ):2;及びgap x dropoff:50である。
【0069】
上述のBlastPプログラムの出力とは異なり、BlastNプログラムは、相同性(homologies)を挙げないが、同一性(identities);同一であるヌクレオチドのパーセンテージを、「同一性(identities)」として示す。
【0070】
多くの様々な核酸が1つの同じタンパク質をコードすることができることは本分野で周知である。これは、分子生物学において「ウォッブル(ゆらぎ)」、又は「遺伝暗号の縮重」として知られているものの結果であり、いくつかのコドン、又はmRNAのトリプレットが、翻訳中にリボソームで成長するアミノ酸鎖に結合するための同じアミノ酸を生じる場合である。これは、アミノ酸をコードする各トリプレットの第二及び特に第三の塩基において最もよく見られる。この現象の結果、2種類の異なる核酸に対して約30%の異種構造があるが、同じタンパク質をコードしているということが起こり得る。従って、約70%が同一であるヌクレオチド配列を有する2つの核酸は、1つの同じタンパク質をコードし得る。
【0071】
例えば、本発明によるBc28.1及びBc28.2タンパク質をコードする核酸を、図3でアライメントしている。2つのコード配列間、特に、コード配列の5’3/4rsにおいて、高いパーセンテージの同一性が存在する。BlastNプログラムからのパーセンテージ同一性を表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質をコードする核酸は、バベシア科ファミリーのメンバーの種から得ることができる。
【0074】
しかし、より好ましい実施形態において、本発明による、28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又はそれらの免疫フラグメントをコードする核酸は、B.divergens(B.ディバージェンス)、B.bovis(B.ボビス)、B.motasi(B.モタシ)、B.caballi(B.キャバリ)、B.equi(B.エクイ)、B.canis(B.キャニス)、B.rossi(B.ロッシ)、B.vogeli(B.ボゲリ)、B.felis(B.フェリス)、B.cati(B.キャティ)、B.ovis(B.オビス)、B.trautmanni(B.トラウトマンニ)、B.bigemina(B.ビゲミナ)、B.microti(B.ミクロティ)又はB.gibsoni(B.ギブソニ)から得られることを特徴とする。
【0075】
さらにより好ましい実施形態において、28kDaタンパク質ファミリーによるタンパク質又はそれらの免疫フラグメントをコードする核酸は、Babesia canis(バベシア キャニス)、B.rossi(B.ロッシ)、B.caballi(B.キャバリ)、B.equi(B.エクイ)、B.bovis(B ボビス)又はB.bigemina(B.ビゲミナ)から得られることを特徴とする。
【0076】
分類学的に再分類される種の可能性については前記で考察している。これは生物のゲノムを変更しないので、このような再分類生物もまた、本発明に包含される。
【0077】
非哺乳動物バベシア科由来の28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質及びそれらをコードする核酸もまた本発明に包含される;このようなタンパク質又は遺伝子は、28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質、それらのコード配列、それらの遺伝子及び遺伝子ファミリーの保存性が高いために存在する。
【0078】
Bc28.1タンパク質をコードする核酸は、地理的かつ遺伝的に離れているB.canis(B.キャニス)野生分離株から得られた。このような分離株のいくつかの例のヌクレオチド配列を図4でアライメントしている。ペアワイズBlastNアライメントのパーセンテージ同一性を表4に示す。
【0079】
【表4】

【0080】
本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質をコードする核酸は、当業者にとって公知であり、Sambrook&Russell:“Molecular cloning:a laboratory manual(分子クローニング:実験室マニュアル)”(2001、Cold Spring Harbour Laboratory Press;ISBN:0879695773)のような標準的な教科書で詳述されている標準的分子生物学的技術により、生成、操作及び発現が可能である。このような種類のうちある操作は、RNAから、好ましくは、本分野で公知の技術により寄生虫又は寄生虫感染細胞もしくは生物から単離することができるmRNAからの、cDNAフラグメントの合成である。
【0081】
従って、別の好ましい実施形態において、本発明は、本発明によるcDNAフラグメントに関する。
【0082】
逆転写によりcDNAフラグメントを得るための好ましい方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術による。PCR実施のための標準的技術及びプロトコールは、例えば、C.Dieffenbach&G.Dveksler:“PCR primers:a laboratory manual(PCRプライマー:実験室マニュアル)”(1995、CSHL Press,ISBN 879694473)で詳述されている。
【0083】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、機能的に連結されたプロモーター制御下で本発明による核酸又は本発明によるcDNAフラグメントを含有する組み換えDNA分子に関する。
【0084】
本発明による組み換えDNA分子を構築するために、好ましくはDNAプラスミドを使用する。このようなプラスミドは、例えば、DNAインサートの量を増やすために、プローブとして、及びさらなる操作のツールとして有用である。クローニングのためのこのようなプラスミドの例は、pBR、pUC及びpGEMシリーズのプラスミドであるが、これらは全て、いくつかの市販業者から入手可能である。
【0085】
本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメントをコードする核酸は、別個のプラスミドにクローニングし、当業者にとって周知の技術を用いて所望するコンフォメーションを得るために改変することができる。しかし、これらはまた、クローニングの改善又は発現目的のために、あるコンストラクトに結合させ得る。
【0086】
本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質をコードするコード配列に対する改変は、例えば、制限酵素消化を用いることにより、部位特異的突然変異により、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術により、行い得る。
【0087】
タンパク質精製もしくは検出、又は発現レベルを上げる目的のために、さらなる核酸を付加し得る。これにより、cDNAフラグメント又は組み換えDNA分子に含有される最終的な核酸が、28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質をコードするために必要な配列よりも大きいことになり得る。このような追加的要素がインフレームで挿入される場合、これらは、発現される28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質の一体部分となる。このような融合タンパク質もまた、本発明に包含される。
【0088】
核酸、cDNAフラグメント又は組み換えDNA分子にとって必須の条件は、核酸、cDNAフラグメント又は組み換えDNA分子の転写を転写制御配列が制御可能なように、転写制御配列にこれらが作動可能に連結されていることである。転写制御配列は、本分野で周知であり、とりわけ、プロモーター及びエンハンサーが含まれる。プロモーターの選択が、使用する発現系においてそのプロモーターが機能的であるならば、遺伝子転写を支配可能なあらゆる真核、原核又はウイルスプロモーターにまで及ぶことは、当業者にとって明らかである。
【0089】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、本発明による核酸、本発明によるcDNAフラグメント又は本発明による組み換えDNA分子を含有する生きている組み換え担体に関する。
【0090】
このような生きている組み換え担体(LRC’s)は、例えば、さらなる遺伝情報、この場合は本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又はそれらの免疫フラグメントをコードする核酸、cDNA又は組み換えDNA分子、がクローニングされている、細菌、寄生虫及びウイルスなどの微生物である。このようなLRCsを接種した標的哺乳動物は、その担体の免疫原に対してだけでなく、LRCに遺伝暗号がさらにクローニングされている(例えば、28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又はその免疫フラグメントをコードする配列など)、異種のタンパク質又は免疫フラグメントに対しても免疫反応を起こすであろう。
【0091】
細菌性LRCsの例として、本分野で公知の弱毒化したサルモネラ株の使用は魅力的であり得る。
【0092】
あるいは、生きている組み換え担体寄生虫は、とりわけ、Vermeulen,A.N.(1988、Int.Journ.Parasitol.,vol.28,P.1121−1130)により述べられている。
【0093】
LRCウイルスは、核酸を標的細胞に運ぶ方法として使用し得る。生きている組み換え担体ウイルスはまた、ベクターウイルスとも呼ばれる。ベクターとしてよく使用されるウイルスは、ワクシニアウイルス(Vaccinia viruses)(Panicaliら、1982、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.79,p.4927)、ヘルペスウイルス(Herpesviruses)(EP 0473210−A2)及びレトロウイルス(Retroviruses)(Baum,S.J.,Dicke,K.A.,Lotzova,E.及びPluznik,D.H.(編)、“Experimental Haematology today(今日の実験血液学)”,Springer Verlag,New York:pp.92−99中の、Valerio,D.ら、1989)である。
【0094】
宿主細胞において、挿入した本発明による核酸、cDNA又は組み換えDNAの発現を誘導することが可能である、選択したLRC細菌、寄生虫又はウイルスのゲノムに本発明による組み換え核酸を導入するために、本分野で周知のインビボ相同組み換えの技術を使用することができる。
【0095】
発現目的のために、細菌、酵母、真菌、昆虫及び脊椎動物細胞発現系が宿主細胞として使用されることが多い。このような発現系は、本分野において周知であり、通常、例えば、Invitrogen(the Netherlands)を通じて購入できる。
【0096】
従って、さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、本発明による核酸、本発明によるcDNAフラグメント、本発明による組み換えDNA分子又は本発明による生きている組み換え担体を含有する宿主細胞に関する。
【0097】
本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質の発現のために使用する宿主細胞は、Bc28タンパク質をコードする配列を発現させるための細菌由来プラスミド又はバクテリオファージと組み合わせた、細菌起源の細胞、例えば、Escherichia coli(エシェリヒア コリ、大腸菌)、Bacillus subtilis(バチルス サブチリス、枯草菌)、Lactobacillus sp.(ラクトバチルス菌)又はCaulobacter crescentus(カウロバクター クレセンタス)など、であり得る。宿主細胞はまた、真核生物起源、例えば、酵母特異的ベクター分子と組み合わせた酵母細胞、又は、ベクター又は組み換えバキュロウイルスと組み合わせた、昆虫細胞(Luckowら、1988、Bio−technology,vol.6,p.47−55)のような高等真核細胞;例えばTi−プラスミドを基にしたベクター又は植物ウイルスベクターと組み合わせた植物細胞(Barton,K.A.ら、1983、Cell,vol.32,p.1033);又は、適切なベクター又は組み換えウイルスとともに使用する、Hela細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞又はCrandell−Ress feline kidney−cells(クランデル−レス ネコ腎臓細胞)のような哺乳動物細胞であり得る。
【0098】
これらの発現系の次に、植物細胞又は寄生虫を基にした発現系が好ましい発現系である。寄生虫発現系は、例えば、フランス特許出願、公開番号第2714074号及びUS NTIS 公開番号US 08/043109(Hoffman,S.&Rogers,W.,1993)に記載されている。生物学的応用のためのポリペプチドに対する植物細胞発現系は、例えば、R.Fischerら(1999、Eur.J.of Biochem.,vol.262,p.810−816)及びJ.Larrickら(2001、Biomol.Engin.,vol.18,p.87−94)で考察されている。
【0099】
無細胞発現系と呼ばれるものにおいても発現を行い得る。このような系は、特定の系において機能するプロモーターに操作可能に連結された適切な組み換え核酸の発現に必要不可欠な因子全てを含有している。例としては、E.coli(E.コリ)細胞溶解液系(Roche,Basel,Switzerland)又はウサギ網状赤血球細胞溶解液系(Promega corp.,Madison,USA)がある。
【0100】
本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメントは、タンパク質サブユニットワクチンの生成に非常に適している。このようなタンパク質又はフラグメントは、寄生虫又はバベシア科寄生虫が感染した動物もしくは細胞から得ることができる。しかし、発現系において、本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメントをコードする核酸の使用は、さらに好都合ある。この後、産生されたタンパク質又はフラグメントを回収し、例えば、本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメントと医薬適合性の担体とを混合することにより、これらをタンパク質サブユニットワクチン中へと処方する。
【0101】
従って、本発明のさらに別の局面は、本発明によるタンパク質もしくは該タンパク質の免疫フラグメント、本発明による、核酸、cDNAフラグメント、組み換えDNA分子、生きている組み換え担体又は宿主細胞、又はこれらの組み合わせ、及び医薬適合性の担体を含有するワクチンに関する。
【0102】
上述のように、28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメントを、ワクチン接種に有利に使用することができる。このようなタンパク質又はフラグメントがそれら自身において免疫反応を生じない場合、それらをKLH、BSAなどの担体と連結させることができる。
【0103】
タンパク質又はそのフラグメントの連結はまた、誘導する免疫反応を増強又は改変するためにも行い得る。例えば、T細胞の反応を促進するためにタンパク質(−フラグメント)をTetanusトキソイドと連結させるのは一般的な方法である。標的細胞を破壊するために、毒素など、特異的なエフェクター分子を添加することもできる。このような連結は、次のように行うことができる。
【0104】
化学的に、直接又は中間体構造を介してのいずれかで、アミノ酸配列の脱水、エステル化などを介して、連結、複合化又は架橋させることによる。
物理的に、巨大分子構造中又は巨大分子構造上での捕捉を介して、連結させることによる。又は、好ましくは、
1つの連続した発現産物が最終的に産生されるような、2つのものをそれぞれコードすることができる核酸のフラグメントを含有する組み換え核酸分子の連結を介した、生物学的融合による。分子工学的技術が好ましい。
【0105】
ワクチン接種の代替的かつ効率的な方法は、関連のある抗原又はエピトープをコードするDNAの直接的なワクチン接種によるものである。タンパク質をコードするDNAの直接的なワクチン接種は、例えば、Donnellyら(1993、The Immunologist,vol.2,p.20−26)で概説されているように、多くの様々なタンパク質で成功している。例えば、抗寄生虫ワクチンの分野において、例えばPlasmodium yoelii(プラスモジウム ヨエリ、ネズミマラリア原虫)に対する防御が、P.yoeliiスポロゾイト周囲遺伝子を用いたDNAワクチン接種により成功しており(Hoffman,S.ら、1994、Vaccine,vol.12,p.1529−1533)、及び、Leishmania major(リーシュマニア メジャー)に対する防御が、L.major 表面糖タンパク質 gp63遺伝子を用いたDNAワクチン接種により成功している(Xu&Liew,1994,Vaccine,vol.12.p.1534−1536)。
【0106】
このようなDNAワクチン接種は、本発明による、核酸、cDNAフラグメント又は好ましくは組み換えDNA分子を用いて行うことができる。
【0107】
従って、ある好ましい実施形態は、本発明による、核酸、cDNAフラグメント又は組み換えDNA分子を含有することを特徴とする、本発明によるワクチンに関する。
【0108】
あるいは、本発明によるワクチンは、上述のように、本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメントを発現することができる、生きている組み換え担体を含有し得る。
【0109】
例えば、細菌、寄生虫又はウイルス担体又はベクターを基にした、このようなワクチンは、それらがバベシア科による感染の自然な形をよりうまく模倣するというサブユニットワクチンより優れた長所を有する。この担体で感染させた細胞による抗原提示もまた、自然感染において28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又はその免疫フラグメントが免疫系に対して提示される経路と類似している。さらに、免疫付与に必要であるのは組み換え担体のうち少量のみであることから、それらの自己増殖は有利である。
【0110】
このように、別の好ましい実施形態は、生きている組み換え担体及び医薬適合性の担体を含有する本発明によるワクチンに関する。
【0111】
上述の宿主細胞は、本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメントを発現させるために発現系として使用することができる。発現後、タンパク性産物を回収し得、あるいは、培地又は完全な宿主細胞そのものをワクチン中で使用し得る。これは、精製段階を省略できるという点で利点を有するが、勿論、培地成分及び/又は宿主細胞の成分に対する標的哺乳動物によるある程度の耐性が必要である。
【0112】
本発明による、タンパク質又はその免疫フラグメント、核酸、cDNA、組み換え分子、生きている組み換え担体及び宿主細胞のうち2種類以上の分子の組み合わせから編み出された本発明によるワクチンもまた本発明に包含される。単回投与において、又は別個の投与で、これらを組み合わせることができ、同時又は連続的に投与し得る。例えば、28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質のコード配列を担う組み換えDNAプラスミドを用いて初回刺激を行い、ある程度の時間経過後に28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質で免疫促進ワクチン接種を行うという、組み合わせワクチン接種を有利に使用し得る。
【0113】
哺乳動物標的1個体に対し本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメント 0.1μgから1000μgを含有する量で本発明によるワクチンを投与することができる。それより低い又は高い用量を基本的に使用することができる。好ましくは、28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又はその免疫フラグメント 50μgから200μgの間の用量を使用する。
【0114】
生きているウイルスベクターワクチンに対して、動物1個体あたりの用量率は、1pfuから1010pfuの範囲であり得るが、好ましくは、10−10pfuを使用する。
【0115】
医薬適合性の担体は、ワクチン接種を受ける動物の健康に副作用をもたらさない、少なくとも、その副作用が動物がワクチン接種されない場合に見られる影響よりも悪いということがない化合物であると理解される。医薬適合性の担体は、例えば、滅菌水又は滅菌した生理食塩水であり得る。さらに複雑な形態において、担体は、例えば緩衝液であり得る。
【0116】
例えば、崩壊しやすい成分を崩壊から保護するために、ワクチンの有効期限を延長するために、又は凍結乾燥効率を向上させるために、ワクチンを安定剤と混合することが多い。有用な安定剤は、とりわけ、SPGA(Bovarnikら、1950、J.Bacteriology,vol.59,p.509)、スキムミルク、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、炭水化物、例えば、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、デンプン、スクロース、デキストラン又はグルコース、タンパク質、例えばアルブミン又はカゼインなど、又はそれらの崩壊産物及びリン酸化アルカリ金属などの緩衝液である。
【0117】
本発明によるワクチンは、さらに、「ビヒクル」と呼ばれるものを含有し得る。ビヒクルは、本発明による、タンパク質、タンパク質フラグメント、核酸又はその一部、cDNA、組み換え分子、生きている組み換え担体及び/又は宿主細胞が、共有結合されることなく、接着する化合物である。このようなビヒクルは、とりわけ、本分野で公知の、バイオマイクロカプセル、マイクロアルギン酸塩、リポソーム、マクロソル、水酸化アルミニウム、リン酸、硫酸又は酸化アルミニウム、シリカ、Kaolin(R)(カオリン)及びBentonite(R)(ベントナイト)である。
【0118】
例としては、ISCOM(R)と呼ばれる、抗原が部分的に免疫刺激複合体に埋め込まれているビヒクルがある(EP 109.942、EP 180.564、EP 242.380)。
【0119】
さらに、本発明によるワクチンは、1又は複数の適切な界面活性化合物又は乳化剤、例えばSpan(R)又はTween(R)を含有し得る。
【0120】
例えば安定性又は経済性の理由のために、本発明による、タンパク質、その免疫フラグメント、核酸、cDNA、組み換え分子、生きている組み換え担体、宿主細胞及びワクチンを凍結乾燥し得る。一般に、これにより、0℃を超える、例えば4℃の温度における保存期間を延長させることができる。
【0121】
凍結乾燥の方法は、当業者にとって公知であり、様々な規模の凍結乾燥用装置が市販されている。
【0122】
従って、より好ましい実施形態において、本発明によるワクチンは、凍結乾燥形態であることを特徴とする。
【0123】
凍結乾燥ワクチンを再構成するために、生理学的に許容可能な希釈剤でそれを懸濁し得る。このような希釈剤は、例えば、滅菌水又は生理食塩水のように単純なものであり得る。より複雑な形態において、PCT/EP99/10178で概説されているような乳剤中でそれを懸濁し得る。
【0124】
本発明によるワクチンに対する標的対象は、好ましくは、ヒト又は獣医学的に重要な哺乳動物などの哺乳動物である。このような標的は、健康体又は疾患に罹患しているものであり得、バベシア科寄生虫又はバベシア科寄生虫に対する抗体に対して血清反応陽性又は陰性であり得る。この標的対象は、ワクチン接種及び/又はワクチン接種がそれから保護するために行われる感染もしくは臨床疾患を受け入れ得るあらゆる年齢のものであり得る。
【0125】
本発明によるワクチンに対するより好ましい標的哺乳動物は、ウシ、ウマ、イヌ及びネコである。
【0126】
本発明によるワクチンは、予防的処置及び治療上の処置として同様に使用することができ、感染又はその疾患の臨床的疾患症候の確立及び/又は進行を妨げることができる。
【0127】
本発明によるワクチンは、所望する、標的への適用方法に依存して、いくつかの形態、例えば、液体、ゲル、軟膏、粉末、錠剤又はカプセル、であり得る。
【0128】
好ましくは、本ワクチンは、注射可能な液体の形態である。
【0129】
本発明によるワクチンは、本分野で公知の方法に従い、哺乳動物標的に投与することができる。例えば、皮膚への、又は皮膚を介した注射の全ての経路を介するなど、例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内、粘膜下又は皮下など、非経口適用による。実行可能である適用の代替的経路は、眼、鼻、口腔、肛門又は膣の粘膜上皮もしくは、身体のいずれかの部位の外皮の表皮に対するドロップ、スプレー、ゲル又は、軟膏によるもの;エアロゾル又は粉末としてのスプレーのような、局所適用によるものである。あるいは、消化管経路を介して、例えば、粉末、液体又は錠剤として、食物、餌又は飲用水と組み合わせることにより、又は、液体、ゲル、錠剤もしくはカプセルとして口腔に直接投与することにより、又は、坐薬として肛門に直接投与することにより、適用を行い得る。
【0130】
好ましい適用経路は、筋肉内注射によるもの、又は皮下注射によるものである。
【0131】
適用の最適経路が、予防又は改善されるべき寄生虫感染又は臨床疾患の詳細及び使用するワクチン処方物の性質に依存するものであることは言うまでもない。
【0132】
標的哺乳動物への本発明によるワクチンの適用スキームは、単回投与又は複数回投与であり得、それは、用量及び処方と適合する方式で、及び免疫学的に効果的であるような量で、同時又は連続して行い得る。
【0133】
好ましくは、本ワクチンは、少なくとも1年間、十分な免疫学的保護効果をもたらす1回の単回投与で適用する。
【0134】
さらにより好ましい実施形態において、本発明によるワクチンは、アジュバントを含有することを特徴とする。
【0135】
一般に、アジュバントは、非特異的に標的の免疫反応を増強する物質である。多くの様々なアジュバントが本分野で周知である。アジュバントの例は、Freund(フロイント)の完全又は不完全アジュバント、ビタミンE、非イオン性ブロック重合体及びポリアミン、例えば、硫酸デキストラン、カルボポール及びピランなど、である。サポニンもまた非常に適切であり、好ましいアジュバントである。サポニンは、好ましくは、10μg/mlから10.000μg/mlの間の範囲でワクチンに添加する。サポニン類の中で、サポニン Quil A(R)はより好ましいアジュバントである。サポニンとワクチン成分とを、ISCOMSO(R)(EP 109.942、EP 180.564、EP 242.380)中で組み合わせ得る。
【0136】
さらに、ムラミルジペプチド、ジメチルグリシン又はタフトシンなどのペプチドをアジュバントとして使用することが多く、例えばBayol(R)又はMarkol(R)などのミネラルオイル;植物油又はそれらの乳化液及びDiluvacForte(R)を有利に使用することができる。
【0137】
アジュバント付加、ビヒクル化合物又は希釈剤の添加、ワクチンの乳化又は安定化の他の方法もまた本発明に包含されることは言うまでもない。このような添加は、例えば、“Remington:the science and practice of pharmacy(レミントン:製薬学の科学と実際)”(2000,Lippincot,USA,ISBN:683306472)及び“Veterinary vaccinology(獣医科ワクチン学)”,P.Pastoretら編、1997、Elsevier,Amsterdam,ISBN 0444819681など、周知のハンドブックに記載されている。
【0138】
本発明によるワクチンは、別の抗原又は免疫活性成分と有利に組み合わせることができる。これもまた、そのコード核酸の形態で添加し得る。
【0139】
従って、さらにより好ましい実施形態において、本発明によるワクチンは、さらなる免疫活性成分又は該さらなる免疫活性成分をコードする核酸を含有することを特徴とする。
【0140】
さらなる免疫活性成分は、抗原、免疫促進物質及び/又はワクチンであり得、これらのいずれもアジュバントを含有し得る。
【0141】
抗原の形態である場合、さらなる免疫活性成分は、ヒト又は獣医学的に重要な動物の何らかの抗原性成分から構成され得る。例えば、それは、タンパク質、炭水化物、リポ多糖類、タンパク性抗原をコードする核酸、又は、転写制御配列と操作可能に連結されたそのような核酸を含有する組み換え核酸分子など、生体分子又は合成分子を含有し得る。そのような核酸、組み換え核酸分子を含有する宿主細胞、又はそのような核酸を含有するLRCもまた、核酸又はさらなる免疫活性成分を送達する手段であり得る。あるいは、それは、断片化した、又は死滅させた微生物、例えば寄生虫、細菌又はウイルスなどを含有し得る。
【0142】
さらなる免疫活性成分は、免疫増強物質、例えば、ケモカイン又は免疫刺激核酸(例えばCpGモチーフ)の形態であり得る。あるいは、本発明によるワクチンそのものをワクチンに添加し得る。
【0143】
例えば、バベシア科の感染又は関連疾患の臨床徴候に対する組み合わせサブユニットワクチンを形成するために、本発明によるワクチンを、28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質ではない、バベシアサブユニットワクチンタンパク質の調製物と組み合わせることができる。
【0144】
さらにより好ましい実施形態において、本発明によるワクチンは、前記さらなる免疫活性成分又は該さらなる免疫活性成分をコードする核酸を、Ehrlichia canis(エーリキア キャニス)、Babesia gibsoni(バベシア ギブソニ)、B.vogeli(B.ボゲリ)、B.rossi(B.ロッシ)、Leishmania donovani(リーシュマニア ドノバン)−複合体、Canine parvovirus(イヌパルボウイルス)、Canine distempervirus(イヌジステンバーウイルス)、Leptospira interrogans(レプトスピラ インテロガンス) 血清型canicola(カニコラ)、icterohaemorrhagiae(イクテロヘモラジ)、pomona(ポモナ)、grippotyphosa(グリポティフォーサ)、bratislava(ブラチスラバ)、Canine hepatitisvirus(イヌ肝炎ウイルス)、Canine parainfluenzavirus(イヌパラインフルエンザウイルス)、rabies virus(狂犬病ウイルス)、Hepatozoon canis(ヘパトゾーン キャニス)及びBorrelia burgdorferi(ボレリア ブルグドルフェリ)からなる群から選択される生物から得ることを特徴とする。
【0145】
初回に対する、本発明による28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメント、本発明による、核酸、cDNA、組み換え分子、生きている組み換え担体及び/又は宿主細胞により、28kDaタンパク質ファミリーのタンパク質又はその免疫フラグメントに対する特異的抗体の生成が可能となる。本分野で公知の方法を介して、これにより、寄生虫を感染させた哺乳動物標的とワクチン接種した哺乳動物標的との間の鑑別が可能になるような、マーカーワクチンとして適している本発明によるワクチンが作られる。
【0146】
あるいは、いわゆる「受動ワクチン接種」のために、ワクチンそのものとしてこれらの特異的抗体を使用し得る。
【0147】
従って、さらに別の好ましい実施形態は、本発明によるタンパク質に対する抗体又は該タンパク質の免疫フラグメントに対する抗体、又はそれらの組み合わせ及び医薬適合性の担体を含有することを特徴とするワクチンに関する。
【0148】
その抗原に対する抗体を「負荷した」抗原のワクチンにおける組み合わせは、「複合」ワクチンとして本分野で公知である。
【0149】
本発明のさらに別の局面は、本発明によるタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメント、本発明による、核酸、cDNA、組み換えDNA分子、生きている組み換え担体もしくは宿主細胞、又はそれらの組み合わせ、及び医薬適合性の担体を混合することを含む、本発明によるワクチンを調製するための方法に関する。
【0150】
本発明のさらに別の局面は、本発明によるタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメントに対する抗体、及び医薬適合性の担体を混合することを含む、本発明によるワクチンの調製のための方法に関する。
【0151】
上記のように、本発明による方法により得られるワクチンは、予防的処置及び治療上の処置として同様に使用することができ、感染又はその疾患の臨床症候の確立及び/又は進行の両方を妨げることができる。
【0152】
従って、本発明のさらなる局面は、バベシア科の生物により引き起こされる感染又はその臨床的徴候に対する予防又は治療上の処置用のワクチンの製造のための、本発明によるタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメントの使用に関する。
【0153】
さらにまた、本発明のさらなる局面は、配列番号1又は3で示される核酸配列と少なくとも70%の相同性を有する核酸、又は該核酸と相補的な核酸を含有し、前記両核酸とも少なくとも12、好ましくは15、より好ましくは18ヌクレオチドの長さを有することを特徴とする、バベシア科の生物に関連する核酸検出のための診断テストに関する。
【0154】
本発明のまたさらなる局面は、本発明によるタンパク質もしくは該タンパク質の免疫フラグメント、又はそれらの組み合わせを含有することを特徴とする、バベシア科の生物に対する抗体検出のための診断テストに関する。
【0155】
例えば、Bc28.1及び/又はBc28.2タンパク質もしくはそのいずれかの免疫フラグメンを固相担体に連結させ、これを試験する試料とインキュベーションし、洗浄し、結合した抗体の存在を検出する。
【0156】
本発明のまたさらなる局面は、本発明によるタンパク質もしくは該タンパク質の免疫フラグメントに対する抗体、又はその組み合わせを含有することを特徴とする、バベシア科の生物由来の抗原物質検出のための診断テストに関する。
【0157】
例えば、Bc28.1及び/又はBc28.2タンパク質もしくはそのいずれかの免疫フラグメントに対する抗体を固相担体に連結させ、これを試験する試料とインキュベーションし、洗浄し、結合した抗体の存在を検出する。
【0158】
ここで、次の非限定的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。
【0159】
実施例
【実施例1】
【0160】
Bc28多重遺伝子族の同定と、Bc28.1及びBc28.2コード配列の分子特性決定
1.1 使用技術
1.1.1. 全体的技術
1.1.1.1. Babesia canis(バベシア キャニス)の培養
Babesia canis(バベシア キャニス)の分離株(A、B、Castres、Gignac、34.01及びRobinと称する。)を、フランスの様々な部門からの自然感染したイヌから得た。Schettersら(1997、Parasitology,vol.115,p.485−493)の方法に従い、これらをインビトロ培養で維持した。
【0161】
A8生物学的クローンは、B.canis(B.キャニス)由来の分離株Aの生物学的クローンに対応しており、マラリア寄生虫に対して記載されているクローニング−希釈手段(Walliker&Beale,1993,Meth.in Molec.Biol.,vol.21,p.57−66)を適応させた手段に従い得た。
【0162】
1.1.1.2. DNA配列決定
T3及びT7ユニバーサルプライマー及び既に確立された各鎖の配列由来の様々なオリゴヌクレオチドを用いて、選択したプラスミドの両鎖において、Genome Express S.A.(Zone Astec,Grenoble,France)により、Sangerら(1977、Proc.Natl/Acad.Sci.USA,vol.74,p.5463−5467)の方法に従い、アルカリ変性させた2本鎖鋳型からのジデオキシチェーンターミネーション法を用いてヌクレオチド配列決定を行った。
【0163】
1.1.1.3. DNAプライマー
ゲノムフラグメントの単離、プローブの生成及びPCR反応に使用したDNAプライマーを、個別の配列番号とともに表5に開示する。プライマーは全て、Sigma−Genosys(Cambridge,UK)により合成された。
【0164】
【表5】

【0165】
1.1.1.4. ゲノムDNA抽出、サザンブロット及び染色体分析
製造者(Macherey−Nagel)に従い、Nucleospin(R)カラムを用いて血液200μlに対して、B.canis(B.キャニス)インビトロ培養物又は感染したイヌ血液の野外試料からのゲノムDNA抽出を行った。サザンブロット実験は、Sambrook&Russell(前出)の標準的手順を用いて行った。
【0166】
インタクトな(完全な)、又はNotI消化したB.canis(B.キャニス)の染色体を含有するアガロースプラグの調製及びパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)によるそれらの分離は、Depoixら(2002,Parasitology,vol.125,p.313−321)で記載されているようにして行った。
【0167】
DNAハイブリダイゼーション実験に使用したBc28プローブは、DNAテンプレートとしてBc28.1cDNAを担うプラスミドを使用し、プライマー、Fspe3及びRspe4を組み合わせてPCRを行うことにより得た。Bc28プローブは、製造者の使用説明書(Boehringer Mannheim)に従い、かつ、Depoixら(前出)で述べられているようにして、Nick Translationキットを用いて標識した。
【0168】
1.1.1.5. RNA抽出及びノーザンブロット分析
トータルRNA抽出、mRNA精製及びRNAハイブリダイゼーションは、Drakulovskiら(2003、Infect.Immun.,vol.71,p.1056−1067)で述べられているようにして行った。ディゴキシジェニン(DIG)−11−UTP−標識Bc28アンチセンスリボプローブ(プライマー、Fspe3及びRspe4を使用して得た相補的mRNA配列)は、DIG High Prime(R)DNA標識キット(Boehringer Mannheim)に従い、合成した。
【0169】
1.1.1.6. PCR増幅
Depoixら(前出)で述べられているようにして、Accu Taq(R)DNAポリメラーゼ(Sigma)を用いて、PTC−100(R)Programable Thermal Controller(MJ Research,Inc)で増幅を行った。
【0170】
1.1.2. B.divergens(B.ディバージェンス)のBd37 cDNA由来のプライマーを用いたPCRによるB.canis(B.キャニス)からのBc28.2ゲノムフラグメントの同定、
B.canis(B.キャニス)の分離株AからのゲノムDNAにおけるPCR設定に、2種類のプライマー、pr3及びE4を使用した。アニーリング条件は、以下の通り:アニーリング温度を45℃から55℃まで、1サイクルごとに2℃ずつ上昇させ、次に、55℃にて増幅を25サイクル行った。これらの条件により、500bpのゲノムフラグメントが増幅され、これをBc28.2とした。次に、製造者の使用説明書(Invitrogen)に従い、このPCRフラグメントをpCRII−TOPO(R)クローニングベクターにクローニングし、配列決定を行った。
【0171】
1.1.3. B.canis(B.キャニス)の完全なBc28.1 cDNA配列のクローニング
最初の逆転写段階に対して、Bc28.2 ゲノムフラグメントの配列由来のプライマーを用いて、cDNA Bc28.1からの完全配列をRT−PCRにより調べた。RT−PCR実験に対して、製造者の使用説明書(Invitrogen)に従い、B.canis(B.キャニス)からのインタクトな(完全な)mRNAに対して、GeneRace(R)プロトコールを適用した。最初の逆転写段階に対して、リバースプライマー RT1を使用して、cDNAの5’末端配列(クローン5’−Bc28.1、5’−RACE PCR産物)を調べた。プロトコールの最初の逆転写段階において、クローン5’−Bc28.1の配列由来の、フォワードプライマー、Inv5を使用して、cDNA Bc28.1の3’末端(クローン3’−Bc28.1、3’−RACE PCR産物)を得た。次に、各逆転写段階で最初に使用したものに対応するプライマーカップルを使用して、及び、GeneRacerTMキット(Invitrogen)中で与えられているフォワードGeneRacer(R)5’プライマー(5’−CGACTGGAGCACGAGGACACTGA−3’)又はリバースGeneRacer(R)3’プライマー(5’−GCTGTCAACGATACGCTACGTAACG−3’)(表5)を用いて、cDNA Bc28.1の5’及び3’末端をPCRにより増幅した。両ケースにおいて、Accu Taq(R)DNAポリメラーゼ(Sigma)を用いて、1種類のPCR産物が得られた。これらのフラグメントをpCRII−TOPOにクローニングし、配列決定を行った。クローン、5’−Bc28.1及び3’−Bc28.1からの配列を集めて、B.canis(B.キャニス)由来のBc28.1 cDNAの完全配列を形成した。
【0172】
1.1.4. B.canis(B.キャニス)由来のBc28.1及びBc28.2コード配列からのコード領域のクローニング
Bc28.1及びBc28.2ヌクレオチド配列の対応するゲノムコピーの配列を決定するために、Bc28.1及びBc28.2ヌクレオチド配列からの特異的なリバースプライマーを設計した。Bc28.1 cDNA配列の5’末端由来のフォワード5’UTRプライマー及びBc28.2のゲノム配列の3’末端に特異的にハイブリダイズするリバースRspe3Gプライマーを用いて、コード配列 Bc28.2からの完全なオープンリーディングフレーム(ORF)をPCRにより増幅した。5’UTRプライマー及びBc28.1 cDNA配列の3’末端に特異的にハイブリダイズするリバースRspe3Cプライマーを用いて、Bc28.1コード配列からの完全なORFの配列をPCRにより増幅した。DNAテンプレートとして、B.canis(B.キャニス)由来の生物学的クローン A8からのゲノムDNAを用いて、PCR増幅を行った。次の条件:94℃にて3分間の変性ステップ、94℃にて1分間の変性、55℃にて1分間のアニーリング及び72℃にて1分間の伸長から構成される3段階のサイクルプログラム、次に、72℃にて5分間のステップで増幅を行った。次に、そのPCRフラグメントをpCRII−TOPOにクローニングし、配列決定を行った。
【0173】
1.1.5. Bc28.1及び潜在的なBc28.2コード配列の多型性の分析
フランスの研究所 Babesia canis(バベシア キャニス)分離株B、Robin、Castres、Gignac及び34.01からのBc28.1及びBc28.2コード配列を、プライマーカップル、Fspe3/Rspe3C又はFspe3/Rspe3Gを用いてPCRにより増幅し、5種類の制限酵素(AluI、EcoRI、HinfI、MboI及びMspI)に基づいた制限マップを両遺伝子に対して予測した。Bc28.1コード配列からの推定制限マップに基づき、プライマーカップル、5’UTR/Rspe3Cを用いて、フランスの研究所 Babesia canis(バベシア キャニス)分離株B、Robin、Castres及び34.01からのBc28.1のコード領域全体をPCRにより増幅し、上述のようにクローニングして配列決定を行った(セクション1.1.2)。
【0174】
1.2.結果:
1.2.1. PCRによるB.canis(B.キャニス)由来ゲノムフラグメントの同定
B.canis(B.キャニス)由来ゲノムDNAにおいて、45℃から55℃までアニーリング温度を上昇させるPCR設定に対して、2種類のプライマー、pr3及びE4を用いた(図5)。
【0175】
それにより、約500bpのフラグメントが増幅された(図5、レーン2;点で示す。)。対照増幅において別個にしたプライマーの各試験がネガティブであったので、この増幅は特異的であった(図5、レーン5及び6)。
【0176】
GST融合タンパク質を発現できるようにするために、このクローン、Bc28.2(以後、Bc28.2と呼ぶ)(下記参照)をpGEX(R)ベクターにクローニングした。
【0177】
1.2.2. Bc28多重遺伝子族の同定及びBc28.1及びBc28.2コード配列のクローニング
1.2.2.1. 完全なBc28.1 cDNAのクローニング
Bc28.2のゲノムフラグメントに対応する完全なcDNA配列を見つけるために、GeneRacerプロトコールを用いて、B.canis(B.キャニス)由来のインタクトなmRNAに対するRT−PCR実験を行った。最初に、ゲノムクローン Bc28.2の配列由来のリバースプライマー RT1を用いて最初の逆転写段階を行い、続いて、同じRT1プライマー及びGene Racerキットで提供されるフォワードGeneRacer5’プライマーを用いてPCRを行うことにより、1個の5’−RACE PCR産物を得た。次に、プロトコールの最初の逆転写段階において、5’−RACE PCR産物の推定配列由来のフォワードプライマー、Inv5を用いて、続いて、同じプライマー及びキットで提供されるGeneRacer3’プライマーを用いてPCRを行い、1個の3’−RACE PCR産物を得た。5’−RACE及び3’−RACE PCR産物からの配列を集め、Bc28.1 cDNAの完全配列を構成した。このcDNAには、ポリ(A)20テール及び753ヌクレオチドORFとともに1039bp配列が含有されていた。cDNAのセグメント 5’UTR/Rspe3C内で、このORFは、ヌクレオチド(nt)位置50(又はcDNA全体からのnt位置71)でATG開始コドンにより開始し、ヌクレオチド位置820(又はcDNA全体からのnt位置841)TAA終止コドンで終わる。
【0178】
推定cDNAの完全配列を用いたBc28.2 ゲノムフラグメント配列のアライメントにより、プライマーRT1及びInv5の領域において(つまり、Bc28.2配列の5’末端において)2つの配列間に顕著な同一性があることが明らかになった。しかし、それらの3’末端は、非常にかけ離れていることが分かり、このことから、この遺伝子に対するB.canis(B.キャニス)のゲノムにおいて少なくとも2個の関連するゲノムコピーが存在することが示唆された。cDNA配列は28kDa前後のポリペプチドをコードし、かつ、その3’末端が関連するゲノムクローンからかけ離れているので、それをBc28.1とし、一方、その関連ゲノムクローンをBc28.2とした。
【0179】
1.2.2.2. Bc28.1及びBc28.2コード配列の特異的PCR増幅のためのプライマー設計
cDNA Bc28.1及びゲノムクローン Bc28.2からのヌクレオチド配列の比較から、本寄生虫のゲノムにおける2つの関連するゲノムコピーが示唆されたので、それら各コピーを増幅できる特異的プライマーを設計した。従って、Bc28.2及びBc28.1コード配列を増幅するためにそれぞれ設計した、その3’末端において最もかけ離れた2つの配列、プライマー、Rspe3G及びRspe3Cを、この領域から選択した(図3)。各コード配列に対するそれらの特異性を明らかにするために、Bc28.2配列の5’末端に位置し、2つの配列の保存領域でハイブリダイズするプライマー、Cons3.1(図3)と組み合わせて、PCRによりそれらを試験した。さらに、関連コード配列の2つのコピーが、分離株AにおけるB.canis(B.キャニス)の2つの亜種由来のものでないことを確認するために、B.canis(B.キャニス)の生物学的クローン、クローンA8からのゲノムDNAを用いてPCRを行った。
【0180】
プライマー、Cons3.1/Rspe3G及びCons3.1/Rspe3Cの組み合わせにより、プライマーの両組み合わせに対して300bp前後のゲノムフラグメントが増幅された(図6、A、I及びII、レーン PCR)。プライマー、Rspe3G及びRspe3CがそれぞれBc28.2及びBc28.1コード配列特異的にハイブリダイズすることを確認するために、増幅したフラグメントを制限酵素 HinfI又はMstIにより消化した(図6、A、I及びII、レーンH及びM)。2つの配列の制限マップの比較により、Bc28.2配列の3’末端において、2個のHinfI制限部位(Bc28.1配列の位置713及び777に位置する。)及び1個のMspI部位(Bc28.1配列の位置790に位置する。)がないことが明らかになった(図6、C、;Bc28.1コード配列からの制限マップとBc28.2 ゲノムフラグメントとを比較)。予想されるように、アンプリマー Cons3.1/Rspe3CのHinfI及びMspI消化から、3及び2個のフラグメントへの増幅フラグメントの消化が示された(図6、A、I、それぞれレーンH及びM)。一方、これらの2種類の酵素により、Cons3.1/Rspe3G PCRフラグメントは消化されず(図6、A、II、レーンH及びM)、このことから、プライマー Rspe3G及びRspe3Cが、B.canis(B.キャニス)由来の生物学的クローンA8からのBc28.2及びBc28.1コード配列に特異的にハイブリダイズすることが分かった。
【0181】
Bc28.2 コード配列の5’末端を分析するために、プライマー、Fspe3/Rspe3G及びFspe3/Rspe3Cの組み合わせを使用することにより、同様のPCR−RFLPを行った(図6、B、I及びII)。両ケースにおいて、そのアンプリマーは、前記2種類の酵素により消化され、その消化の結果得られるフラグメントのサイズから、Bc28.2及びBc28.1コード配列の5’末端が保存されていることが示された(図6、C;Bc28.1及びBc28.2 コード配列からの制限マップの比較)。実際に、Bc28.2コード配列の5’末端は、保存位置において、Bc28.1コード配列からの、1個のHinfI部位(Bc28.1コード配列の位置308に位置する。)及び2個のMspI部位(Bc28.1コード配列の位置367及び412に位置する。)を含有していた。
【0182】
結論として:B.canis(B.キャニス)のゲノムに2個の関連するBc28コード配列が存在する。2つのコピーそれぞれを分析できる特異的なプライマーを開示する。制限マップ比較により、両コピーが、5’末端はよく保存されているが、一方で3’末端は非常にかけ離れているがことが分かった。
【0183】
1.2.2.3. Bc28.1プローブを用いたハイブリダイゼーション実験
ハイブリダイゼーション実験(サザンブロット、ノーザンブロット及びPFGE分析)に用いたプローブ(図7)は、プライマー Fspe3及びRspe4の間に位置するBc28.1 cDNAのコード領域に対応していた(図3)。
【0184】
1.2.2.3.1. Bc28.1コード配列は、多重遺伝子族に属する。
【0185】
最初に、サザンブロット実験の結果において、B.canis(B.キャニス)のゲノムDNAをRsaI酵素で消化したところ、1220及び1400bp前後の2つのハイブリダイズしたフラグメントが検出された(図7、A、II、レーン3、矢印で示す。)。Bc28.1 cDNAの制限マップにはRsaI部位が存在しないので、そのことから、Bc28.1及びBc28.2の関連配列の同定と一致して、少なくとも2つの関連するゲノムコピーが存在することが分かった。
【0186】
次に、PFGEにより分離された、Babesia canis(バベシア キャニス)分離株A(図7、C及びD、II−A)及びB(図7、C及びD、II−B)からの全体(図7、C、II)又はNotI−消化した(図7、D、II)染色体において、Bc28.1プローブを用いてハイブリダイゼーション実験を行った。この実験から、関連するBc28コード配列の少なくとも10ゲノムコピーがB.canis(B.キャニス)のゲノムに存在すること(図7、D、II)、及び、両分離株において、これらのコピーが本寄生虫からの5個の染色体に位置することが分かった(図7、C、II)。分離株A及びB両方に対するハイブリダイゼーションシグナルの感受性の違いから、そのファミリーのある分離株に対する様々な関連Bc28配列間の配列多型性が示される。
【0187】
1.2.2.3.2. ノーザンブロット分析
既に述べたデータからBc28.1 cDNAに関連する少なくとも10個のメンバーがあることが示されている一方で、B.canis(B.キャニス)由来のトータルRNAにおけるプローブのハイブリダイゼーションから、1.1kb前後のmRNAの1個のバンドが明らかになったが、これは、Bc28.1 cDNA配列の大きさと一致する(図7、B、II)。さらに、2つの関連するコード配列、Bc28.1及びBc28.2が異なる産物をコードする(28及び45kDa、実施例2、セクション2.2.1参照)ことが発明者らのデータから示されている一方、45kDaをコードする、より大きいmRNAは検出されなかった。
【0188】
結論として:Bc28.1及びBc28.2コード配列は、B.canis(B.キャニス)の5個の染色体に位置する少なくとも10個のメンバーからなる多重遺伝子族に属する。1個のmRNAが、Bc28.1コピーに対応する28kDaタンパク質をコードすることが検出された。α−GST−Bc28.2抗血清により認識されるバンドに対応する45kDaタンパク質をコードするより大きいmRNAは検出することができなかった;免疫沈降実験において検出された少量のタンパク質から、このmRNAの転写レベルが非常に低いことが示され、さらに、Bc28ファミリーのメンバーの転写が制御されていることが示された。
【0189】
1.2.2.4. B.canis(B.キャニス)由来生物学的クローン A8内のBc28.2コード配列のクローニング及びBc28.1コード配列とのその配列の比較
DNAテンプレートとしてB.canis(B.キャニス)由来生物学的クローン A8からのゲノムDNAを用い、プライマーの組み合わせ、5’UTR/Rspe3Gを用いて、PCRにより、Bc28.2 コード配列からの特異的ゲノムフラグメントを増幅した。そのゲノムフラグメントをクローニングし、配列決定を行った。ゲノム配列 Bc28.2をアライメントし、プライマーの組み合わせ、5’UTR/Rspe3Cを用いて増幅した、相当するBc28.1コード配列と、ヌクレオチド(図3)及びアミノ酸(図1)の両レベルで比較した。
【0190】
1.2.2.4.1. ヌクレオチドレベルでの比較
このようなPCRにより、それぞれBc28.2及びBc28.1ゲノム配列に対する845及び852ヌクレオチド長の配列が増幅された(図3)。Bc28.1 cDNA及びゲノムの相当する配列の比較から、Bc28.1コード配列においてイントロン配列が見出されないことが示された。上述のようにBlastNプログラムを用いて決定した、ヌクレオチドレベルにおけるBc28.1とBc28.2配列との間の同一性のパーセンテージは、この2つの配列からの全845ヌクレオチドで比較を行った場合、94%であった(表3)。しかし、PCR−RFLP実験を用いた、既に述べた比較のための制限マップ分析により示唆されたように(図6、C)、この2つのヌクレオチド配列の比較から、5’末端において強い保存性があり、一方でそれらの3’末端が多型であることが明らかになった(図3)。実際に、ヌクレオチドレベルにおける同一性のパーセンテージは、この2つの配列からの最初の652ヌクレオチドを用いて比較を行った場合、97%である一方、それらの3’末端からの残り193ヌクレオチドの比較から、同一性は81%しかないことが明らかになった(表3)。
【0191】
1.2.2.4.2. Bc28.1及びBc28.2コード配列の制限マップの比較
DNAテンプレートとしてB.canis(B.キャニス)由来の生物学的クローン A8からのゲノムDNAを使用して、プライマー、Fspe3及びRspe3C又はRspe3G間のBc28.1及びBc28.2コード配列のコード領域に対応する特異的ゲノムフラグメントをPCRにより増幅した。A8生物学的クローン内で、Bc28.1コード配列及びBc28.2コード配列の制限マップを比較するために(図8、A)、生物学的クローン A8からの2つのコピーに対応するこれらのゲノムフラグメントを様々な制限酵素により消化した。
【0192】
既に示したように、このようなPCR−RFLP分析により、特にそれらの5’末端において、両コピーが共通するいくつかの制限部位を有することが明らかになった。この2つのコピーの主な違いは、Bc28.2 コード配列の3’末端において2個のHinfI及び1個のMspI制限部位が欠失していることである。この2つのコピーの5’末端においては、28.2コード配列の5’末端でEcoRI制限部位が欠失していることのみが異なる(図8、A)。
【0193】
1.2.2.4.3. アミノ酸レベルでの比較
Bc28.1及びBc28.2のコード配列によりコードされる産物の比較分析を行った(図1)。Bc28.2及びBc28.1 ゲノム配列に対して、244及び256アミノ酸のORFがそれぞれ予想された(図1)。それらのヌクレオチド配列で、両方が同じヌクレオチド位置(位置50)で始まっている一方で、Bc28.2 ORFは位置784のTGA終止コドンで終わっており、Bc28.1 ORFは位置820のTAA終止コドンで終わっているため、2つのORFはサイズが異なっていた(図3)。既に述べたように、BalstPプログラムを用いて、完全配列又はそのタンパク質のN末端もしくはC末端を用いて、この2つの予想されるタンパク質間のパーセンテージ相同性を決定した(表1)。この2つの完全タンパク質(244残基における。)の比較から、91%の全体的相同性が明らかになった。既に述べたように、この2つのタンパク質のN−末端部分が非常に良く保存されている(この2つのタンパク質の最初の180アミノ酸の間で97%相同性)ことが分かったが、一方、それらのC−末端部分は、より多型であり、最後の64アミノ酸において相同性は73%であることが分かった。
【0194】
1.2.2.4.4. Bc28.1及びBc28.2にコードされる産物の予測解析
Bc28cDNA.1によりコードされるタンパク質の予想分子量が28.3kDa(及び6.24のpI)である一方、Bc28.2コード配列にコードされるタンパク質の予想分子量は27.5kDa(及び9.30のpI)である。
【0195】
疎水性プロファイルの分析(図9)から、両タンパク質に対して内部疎水性配列は明らかとならなかった。しかし、両タンパク質とも、シグナルペプチドに対応するN−末端疎水性セグメントを有していた。切断部位は、A16とV17残基との間に存在する。Bc28.2タンパク質とは異なり、Bc28.1タンパク質は、そのタンパク質のC−末端側終端に位置する別の疎水性セグメントを含有していた(図9)。このG236−V256疎水性セグメントは、GPIアンカーである。
【0196】
結論として:この多重遺伝子族からのこの2つのゲノムコピー、Bc28.1及びBc28.2は、28kDa前後の産物をコードすると予想される。両タンパク質とも、そのN−末端部分に切断可能なシグナルペプチドを含有する。Bc28.1タンパク質のC−末端部分にGPIアンカーが存在するが、Bc28.2タンパク質のC−末端部分にはない。それらの推定アミノ酸配列のように、この2つの関連するBc28.1及びBc28.2ヌクレオチド配列は、それらの5’部分でよく保存されているが、3’部分ではより多型である。
【0197】
1.2.3. 地理的かつ遺伝的に離れたB.canis(B.キャニス)野生分離株間のBc28.1及びBc28.2 コード配列の多型性
1.2.3.1. PCR−RFLPによるBc28.1及びBc28.2 コード配列の制限マップの比較
DNAテンプレートとして、フランスのB.canis(B.キャニス)分離株 A8、B、Castres、Gignac、34.01及びRobinからのゲノムDNAを用いて、プライマー、Fspe3及びRspe3C又はRspe3Gの間の、Bc28.1及びBc28.2コード配列のコード領域に対応する特異的ゲノムフラグメントをPCRにより増幅した。分離株間で、Bc28.1及びBc28.2コード配列の制限マップと比較するために、分離株A8、B、Castres、Gignac及び34.01からの2つのコピーに対応するこれらのゲノムフラグメントを様々な制限酵素により消化した(それぞれ図8、B、C)。
【0198】
1.2.3.1.1. Bc28.1コード配列制限マップの比較
プライマーの組み合わせ、Fspe3/Rspe3Cにより増幅されたPCRフラグメントのこのPCR−RFLP分析から、様々な入手可能な分離株からのBc28.1コード配列間の制限マップの重要な保存が明らかになった(図8、B)。
【0199】
1.2.3.1.2. Bc28.2コード配列の制限マップの比較
Bc28.1コード配列に対するもののように、プライマーの組み合わせ、Fspe3/Rspe3Gを用いて増幅されたPCRフラグメントのPCR−RFLP分析から、様々な分離株からの潜在的Bc28.2コード配列間で制限マップにおいて重要な保存があることが明らかになった(図8、C)。
【0200】
1.2.3.2. B.canis(B.キャニス)の様々な分離株からのBc28.1コード配列の配列決定
地理的かつ遺伝的に離れているB.canis(B.キャニス)野生分離株間のBc28.1コード配列の保存性を確認するために、分離株A8、Robin、Castres、B及び34.01からのBc28.1コード配列のコード領域(つまり、プライマー5’UTR/とRspe3Cとの間)を、PCRにより増幅し、クローニングし、配列決定を行い、アライメントし、ヌクレオチド(図4)及びアミノ酸(図2)の両レベルで比較した。
【0201】
1.2.3.2.1. ヌクレオチドレベルでの比較
プライマーカップル、5’UTR/Rspe3Cを用いたPCRにより、分離株B、Robin及びAに対する852ヌクレオチド長のゲノムBc28.1配列及び分離株34.01及びCastresに対する849ヌクレオチド長のゲノムBc28.1配列が増幅された(図4)。Blastプログラムを用いたペアワイズアライメントにおける、ヌクレオチドレベルでの、これらのBc28.1配列間の同一性のパーセンテージは、100%(A8及びRobinが最も近い。)と97%の間に含まれており(図4)、このことから、B.canis(B.キャニス)の分離株間のコード配列の強い保存性が示される。
【0202】
1.2.3.2.2. アミノ酸レベルでの比較
これらの様々な分離株からのBc28.1コード配列によりコードされるタンパク質の比較解析を行った(図2、表2)。分離株B、A及びRobinに対して256アミノ酸のORFを得たが、一方、分離株34.01及びCastresに対しては、このORFは255アミノ酸であった(図2)。既に述べたように、BlastPプログラムを用いたペアワイズアライメントにおいて決定した様々なBc28.1タンパク質間の相同性は非常に強く、100%(AとRobin)と97%との間であった(表2)。
【0203】
結論として:B.canis(B.キャニス)からのBc28.1及びBc28.2コード配列からの制限マップの解析により、様々な分離株間の各配列の強い保存性が示される。これら分離株は全てフランスで回収されたので、この保存は、これらの分離株が、異なる地域が起源であったとしても、全て同じ国からのものであるという事実によるものであり得る。しかし、これらの分離株が遺伝的に離れたB.canis(B.キャニス)野生分離株であることが証拠により示唆された。実際に、それらの染色体の内容の分析により、これらの分離株全てが特異的な染色体プロファイルを有することが明らかとなった。さらに、フランス全土及び他のヨーロッパ諸国(ドイツ及びハンガリー)において感染したイヌから回収した60検体前後の試料に対して、PCR−RFLP実験によるBc28.1コード配列の多型性の解析を行った。地理的かつ遺伝的に離れているB.canis(B.キャニス)野生分離株間のこのコード配列が良く保存されていることと一致して、野外試料を用いたこのような解析により、この報告で述べたもの以外、他の制限パターンは確認されなかった。
【0204】
配列決定により、Bc28.1コード配列間のこの保存性及び様々な分離株に対する推定タンパク質が確認された。このことから、96%を越える、様々なコード配列間の相同性(同一性)及びコードされたタンパク質間の相同性が明らかになった。
【実施例2】
【0205】
Bc28.1及びBc28.2タンパク質の生化学的特性の決定
2.1. 使用技術
2.1.1. E.コリにおけるGST−Bc28.2及びHis−Bc28.1組み換えタンパク質の発現及び精製
2.1.1.1. Hisタグ付加Bc28.1組み換えタンパク質の産生
Bc28.1のN−末端部分がなく、C−末端部分にGPIアンカーがある、又はない、2つの組み換えヒスチジンタグ付加Bc28.1タンパク質を、それぞれHis−Bc28.1C(V16−V256)及びHis−Bc28.1(V16−K233)と名付けた。His−Bc28.1Cタンパク質の場合は変性条件下で、又は、His−Bc28.1タンパク質の場合は非変性条件下で、製造者の使用説明書(Qiagen)に従い、これらのタンパク質を、Ni−NTAビーズでアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
【0206】
2.1.1.1.1. His−Bc28.1C
DNAテンプレートとしてBabesia canis(バベシア キャニス)(分離株A)からのcDNAライブラリを用いて、N−末端部分がないBc28.1C cDNA配列(cDNA全体からのnt 104−865又は5’UTR/Rspe3cセグメントからのnt83−844)をPCRにより増幅した。Carretら(1999,Eur.J.Biochem.,vol.,265,p.1015−1021)で述べられているようにして、ZAP Express(R)cDNA Gigapack II(R)Gold Cloning kit(Stratagene)を用いて、このcDNAライブラリーを構築した。内部で改変したプライマー、3.1expfor及び3.1exprevCを用いてPCRを行った。これらのプライマーは、それぞれ、BamHI及びHindIII制限部位を含有しており、BamHI/HindIIIで消化したpQE−30ベクター(Qiagen)に、そのプラスミドに存在するHisタグとインフレームになるように、増幅した配列をクローニングすることができる。次に、0.8%アガロースゲル(電気泳動グレード、Eurobio,France)に添加して、0.5xTAE(25xTAE保存溶液、Euromedex、から調製)中、100Vでアガロースゲル電気泳動を行って、PCR産物を精製した。所望する産物に対応するバンドをそのゲルから切り出し、gel−extraction(ゲル抽出)Spin kit(R)(Q−Bio−Gene)を用いて、ゲルのスライスからDNAを単離した。次に、それをBamHIとHindIIIとで消化し、ゲルを再び精製した。室温において、2mM ATP(Sigma)を添加した1xライゲーション緩衝液(MBI Fermentas)中でT4DNAライゲース(MBI Fermentas,France)を用いて3時間、ライゲーションを行うことにより、脱リン酸化したBamHI/HindIII消化pQE−30ベクターに、得られたフラグメントをライゲーションした。ベクター:インサートの比は、通常は1:3であり、使用した消化済みベクターの量は、0.5μgから1μgであった。
【0207】
ライゲーション混合液をJM109 supercompetent(R)E.コリ細胞(Promega)にトランスフォーメーションした。アンピシリン含有寒天プレートにこれらの細胞を播種し、タンパク質の小規模発現によりBc28.1Cタンパク質の発現についてコロニーを調べ、その組み換えタンパク質(His−Bc28.1C; cDNA全体からのnt118−838又は5’UTR/Rspe3Cセグメントからのnt 98−817;V16−V256)を変性条件下でのNi−NTAビーズを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。簡潔に述べると、一晩培養した培養物の10倍希釈物により、LB培地中での小規模(5ml)の細菌培養を開始した。37℃で振盪させながら2時間インキュベーションした後、1mM IPTG(Euromedex)を添加することにより、組み換えタンパク質発現を誘導した。誘導から3時間後、遠心(15分間、4000xg)により細胞を回収し、変性緩衝液(8M尿素、1% v/v Triton X−100、50mM Tris、pH8) 1ml中で細胞溶解した。細胞溶解液を、氷上で、2秒間のパルス休止サイクルで、2分間超音波破砕し、遠心(10分間、15000xg)した。透明化した細胞溶解液を、時折振盪しながら、50μl Ni−NTAアガロースレジン(Qiagen)存在下で、氷上において20分間インキュベーションした。添加したレジンを洗浄緩衝液(8M尿素、1% v/v Triton X−100、50mM Tris、pH6.3)1mlで3回洗浄し、溶出緩衝液(8M尿素、1% v/v Triton X−100、50mM Tris、pH4.5)でタンパク質を溶出した。12% ポリアクリルアミドゲルのSDS−PAGEを行い、Coomassie Brilliant blue(CBB)により染色すること、及び、抗Hisタグモノクローナル抗体(Qiagen)を用いたウェスタンブロットを行うことにより、組み換えタンパク質の存否を調べた。
【0208】
His−Bc28.1Cタンパク質を大規模産生させる前に、Bc28.1C発現について陽性のコロニーを1個選択し、Bc28.1Cコアが6xHisリンカーと正しくインフレーム融合していることを確認した。
【0209】
結論として:振盪させながら37℃においてLB培地 2ml中で一晩インキュベーションすることにより細菌培養物を得て、JetQuick(R)ミニプレップキット(Q−Bio−Gene)を用いてプラスミドpQE−His−Bc28.1Cを単離した。配列決定により、Bc28.1Cコアが6xHisリンカーと正しくインフレーム融合していることを確かめた。確認後、同じプロトコールを用いて、大規模でBc28.1Cタンパク質を産生させた。
【0210】
2.1.1.1.2. His−Bc28.1
N及びC末端部分からの欠失があるBc28.1 cDNA配列(cDNA全体からのnt 104−787又は5’UTR/Rspe3Cセグメントからのnt83−766)を上述のようにして、内部で改変したプライマー、3.1expfor及び3.1exprevを用いてPCRにより増幅した。これらのプライマーは、それぞれ、BamHI及びHindIII制限部位を含有しており、これにより、BamHI/HindIIIで消化したpQE−30ベクターに、Hisタグとインフレームになるように、増幅配列をクローニングすることができる。
【0211】
上述のように、ライゲーション混合液をE.コリ細胞にトランスフォーメーションし、細胞を播種し、タンパク質の小規模発現によりBc28.1タンパク質の発現についてコロニーを調べた。その組み換えタンパク質(His−Bc28.1;cDNA全体からのnt118−769又は5’UTR/Rspe3Cセグメントからのnt 83−766;V16−V233)を非変性条件下でのNi−NTAビーズを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。簡潔に述べると、一晩培養した培養物の10倍希釈物により、LB培地中での小規模(5ml)の細菌培養を開始し、37℃で振盪させながら2時間インキュベーションした後、1mM IPTG(Euromedex)を添加することにより、組み換えタンパク質発現を誘導した。誘導から3時間後、遠心(15分間、4000xg)により細胞を回収し、1%Triton X−100、1mg/ml リゾチーム及び1mM フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)(Sigma)を含有するHistag細胞溶解緩衝液で再懸濁した。使用するまで細胞溶解液を−80℃で保存した。凍結融解後、500U DNAseI酵素(Life Technologies)を添加し、20分間氷上でインキュベーションし、次に、その懸濁液を、氷上で、2秒間のパルス休止サイクルで、2分間超音波破砕した。超音波破砕試料を遠心(20分間、9000xg)し、1.2、0.45及び最後に0.22μmフィルター(Pall Gelman、France)を介して上清を連続的に濾過した。最後に、濾過液をFPLC Ni2+ HiTrap(R)カラム(Pharmacia)で分離した。20mMイミダゾール(Sigma)を添加したHistag細胞溶解緩衝液で添加カラムを洗浄した。200mM イミダゾールを含有するHistag細胞溶解緩衝液で組み換えBc28.1タンパク質を最終的に溶出した。
【0212】
ポリクローナル血清(α−His−Bc28.1C)(セクション2.1.2.)を作製するために、変性条件下でHis−Bc28.1Cタンパク質を精製し、ウサギに注射し、侵入低下アッセイのためにその抗血清を使用した(実施例4)。
【0213】
非変性条件下でHis−Bc28.1タンパク質を精製し、赤血球結合アッセイに使用した(セクション2.1.4.)。
【0214】
2.1.1.2. GST−タグ付加Bc28.2組み換えタンパク質の生成
GSTとインフレームのBc28.2コード配列の3’末端部分をサブクローニングすることにより、GST−Bc28.2組み換タンパク質を作製した。最初に、部分的なBc28.2配列を担った組み換えPCRII−TOPOクローニングベクターを制限酵素、BamHI/EcoRIで消化した(5’BamHI部位は、ベクター由来であり、3’EcoRIは、プライマー、E4由来である。)。既に述べたようにして、このBamHI/EcoRIフラグメントをアガロースゲル電気泳動で精製し、ゲルから切り出し、gel−extraction(ゲル抽出)Spin kit(R)(Q−Bio−Gene)を用いて、ゲルのスライスからDNAを単離した。室温において、2mM ATP(Sigma)を添加した1xライゲーション緩衝液(MBI Fermentas)中でT4DNAライゲース(MBI Fermentas,France)を用いて3時間のライゲーションを行うことにより、脱リン酸化したBamHI/EcoRI消化pGEX−4T3ベクター(Amersham−Pharmacia)に得られたフラグメントをライゲーションした。ライゲーション混合液をE.コリ(大腸菌)BL21細胞(Novagen)にトランスフォーメーションし、アンピシリン含有寒天プレートにこれらの細胞を播種し、一晩置いた。プライマー、pr 3/E4を用いてPCRにより陽性のコロニーを選択し、GST−Bc28.2タンパク質の発現を調べるために、それに対してIPTGにより誘導を行った。このように、陽性細菌培養物を一晩増殖させ、アンピシリン 50μg/mlを添加したLB培地で1:10に希釈した。その培養物を37℃にて1時間インキュベーションし、次に、0.1mM IPTGとともに3時間インキュベーションした。遠心(15分間、4000xg)により細胞を回収し、1% Triton X−100を含有するMTPBS(150mM NaCl、16mM NaHPO、4mM NaHPO、pH7.3)中で超音波破砕により溶解した。この組み換えタンパク質を、グルタチオン−アガロースビーズ(Sigma)を用いてアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、還元グルタチオンとの競合により、つまり、45mM グルタチオンとともに、50mM Tris(pH8)を含有する緩衝液中で、溶出した(Smith&Johnson、1988、Gene,vol.67,p.31−40)。
【0215】
2.1.2. 免疫付与
E.Harlow&D.Lane(“Antibodies:a laboratory manual(抗体:実験室マニュアル)“,ISBN 2907516159)に従い、GST−Bc28.2又はHis−Bc28.1Cタンパク質に対して惹起させたポリクローナル抗血清を、マウス又はウサギにおいてそれぞれ作製した。最初の注射では、ウサギ(New Zealand White)に対して、Freund(フロイント)の完全アジュバント(FCA)(Sigma)で乳化した精製His−Bc28.1C組み換えタンパク質 50μgを皮下に免疫付与し、その後の2回の注射では、Freund(フロイント)不完全アジュバント(FIA)(Sigma)を用いて筋肉内注射を行った。Balb/Cマウスに対して、最初の注射では、FCAで乳化させたGST−Bc28.2 15μgを腹腔内に免疫付与し、その後の2回の注射では、FIAで乳化させたものを用いた。動物の注射は、3週間間隔で行い、各免疫付与から8日後に採血を行った。
【0216】
赤血球へのバベシア寄生虫の侵入を低下させるために、ウサギα−His−Bc28.1C抗血清を使用した(実施例4参照)。
【0217】
2.1.3. 免疫学的方法
2.1.3.1. イムノブロッティング
Drakulovskiら(2003,Infect.Immun.,vol.71,p.1056−1067)で述べられているようにして調製した精製B.canis(B.キャニス)メロゾイトを用いて、イムノブロッティングを行った。次に、電気泳動用にメロゾイトを処理し、15% SDS−PAGEによりそのタンパク質を分離した。ポリクローナル血清 α−His−Bc28.1Cの1:100希釈液を用いて、イムノブロッティングを行った。
【0218】
2.1.3.2. 間接的免疫蛍光アッセイ(IFA)
Drakulovskiら(前出)で述べられているようにして、ポリクローナル血清 α−His−Bc28.1Cの1:100希釈液を用いて、B.canis(B.キャニス)寄生赤血球(5% 寄生虫血症レベル)においてIFAを行った。蛍光の減衰を抑えるために、Citifluor(R)溶液(Citifluor Ltd,London,UK)でスライドを封入し、蛍光顕微鏡(Axioscope,Zeiss)を用いて蛍光を検出した。
【0219】
2.1.3.3. B.canis(B.キャニス)培養物の[35S]−メチオニン又は[H]−エタノールアミン放射性標識及び免疫沈降
Drakulovskiら(前出)で述べられているようにして、B.canis(B.キャニス)のインビトロ培養物の[35S]−メチオニン放射性標識及び免疫沈降実験を行った。簡潔に述べると、50μCi/ml(1200Ci/mmol、Amersham Pharmacia Biotech)及び5%の開始時寄生虫血症レベルで、[35S]−メチオニン放射性標識を行った。B.canis(B.キャニス)からの免疫沈降用の使用画分は:放射性標識抗原(10cpm)のソースとして、トータル、培養上清(SPA)、感染赤血球支質、精製メロゾイト、Triton X−114水性(可溶性及び親水性抗原)及びTriton X−114界面活性(不溶性及び疎水性抗原)画分であった。放射性標識成分 50μCi/ml(25μCi/mmol、Amersham−Pharmacia Biotech)及び5%の開始時寄生虫血症レベルでB.canis(B.キャニス)からのインビトロ培養物の[H]−エタノールアミン放射性標識を行い、B.canis(B.キャニス)からの[H]−エタノールアミン放射性標識抗原(10cpm)のソースとして、トータル及びSPA画分を用いて、免疫沈降実験を行った。
【0220】
2.1.3.4. TX−114処理によるタンパク質相分離
35S]−メチオニン放射性標識メロゾイト及び感染赤血球支質画分からのB.canis(B.キャニス)のタンパク質を、Precigoutら(1991、Infect.Immun.,vol.59,p.2799−2805)で述べられているように、Triton X−114(Sigma)中で分相した。
【0221】
2.1.4. 赤血球結合アッセイ
非変性条件下で、製造者の使用説明書に従い(Qiagen)、His−Bc28.1タンパク質又はHis−GST(対照として)100μgを精製した。次に、PBS 1ml中のイヌ 赤血球細胞 50μlとともに、室温にて1時間、これらをインキュベーションした。遠心(2分間、200xg)により赤血球を回収し、PBS 200μl中で再懸濁した。次に、400μl シリコーン油クッション(Aldrich)上にその懸濁液を重層した。遠心(4分間、3000xg)後、その上清及びシリコーン油を捨て、0.5M PONaCl 75μlで赤血球に結合したタンパク質を溶出した。溶出したタンパク質をSDS−PAGEにより分解し、製造者の使用説明書(Pierce)に従い、SuperSignal West Pico Chemoluminescent Substrate kitを用いて、ウェスタンブロットにおいて、1/20.000希釈の抗Hisタグモノクローナル抗体(Qiagen)により検出した。
【0222】
2.1.5. B.canis(B.キャニス)感染赤血球の表面に局在する寄生虫性抗原の分析
最初に、既に述べたように、B.canis(B.キャニス)のインビトロ培養物を[35S]−メチオニンで放射性標識した。次に、赤血球を回収し、EZ link(R)sulfoLC NHSビオチン(Pierce)(PBS、pH7.2中で1M)の溶液中で、室温にて30分間、ビオチン化した。次に、PBSで赤血球を3回洗浄し、ビオチン化した抽出物をシリコーン油クッション(Aldrich)上に移し、細胞溶解した赤血球を除去した。遠心(20分間、700xg)後、ペレットからの無傷の赤血球をPBSで洗浄し、細胞溶解し、Drakulovskiら(前出)で述べられているようにして、免疫沈降実験用に処理した。既に述べたように、α−His−Bc28.1C抗血清を用いて、又はワクチン接種/攻撃感染血清を用いて、免疫沈降を行った。SPAでイヌに3回のワクチン接種を行い、次に同種攻撃感染を行うことにより、これらのワクチン接種/攻撃感染血清を生成させた。B.canis(B.キャニス)分離株A(α−A)、分離株B(α−B)及びB.rossi(B.ロッシ)分離株F(α−F)寄生虫に対して、このような血清を生成させた。対応する免疫前のイヌ血清もまた、ネガティブコントロールとして試験に供した。次に、免疫沈降実験の検出のために処理するのではなく、免疫沈降させたタンパク質をSDS−PAGEで分離し、そのゲルをニトロセルロース膜にブロットした。次に、1/2000希釈のストレプトアビジン−PODコンポーネント(Roche)とともにその膜をインキュベーションし、製造者の使用説明書に従い(Pierce)、SuperSignal(R) West Pico Chemoluminescent Substrate kitを用いることにより、赤血球表面からのビオチン化タンパク質を検出した。赤血球表面からの全体のビオチン化タンパク質を明らかにした後、ビオチン化タンパク質の寄生虫起源を確認するために、ウェスタンブロットに対して、Biomax MRフィルム(Eastman Kodak Co)上でオートラジオグラフィーを行った。
【0223】
2.1.5.1. 赤血球−膜結合の強さの測定
α−His−Bc28.1C抗血清により免疫沈降させたB.canis(B.キャニス)からの潜在的な表面抗原が、真の表面に統合された抗原であるというのではなく、赤血球表面に接着して離れられないだけであるかどうかを分析するための試験において、感染した赤血球表面とのそれらの相互作用の強さを評価した。既に述べたように、B.canis(B.キャニス)のインビトロ培養からの赤血球を放射性標識し、ビオチン化し、シリコーン油クッションを通過させた。無傷の赤血球を回収し、0.5Mから2Mの様々な濃度のNaCl 等量と室温にて2分間インキュベーションした。次に、α−His−Bc28.1C又は対照としての免疫前ウサギ血清を用いて、溶出物をウェスタンブロットにおいて分析した。
【0224】
2.2. 結果
2.2.1. Bc28.2タンパク質の生化学的特性の決定
504bp Bc28.2クローンをpGEXベクターにクローニングし、35kDa前後の精製GST−Bc28.2組み換えタンパク質(図10、A)を得て、マウスにおいてポリクローナル抗体を産生させるために使用した。このα−GST−Bc28.2血清は、免疫沈降において、トータル画分の45kDaタンパク質と弱いが特異的に反応する(図10、B、レーン3、星印で示す。)。この45kDaタンパク質はまた、B.canis(B.キャニス)のメロゾイト画分において血清により検出されるが、支質及びSPA画分においては検出されない(データを示さず。)。対照として、無関係の抗−GSTBicvir15は、その15kDaタンパク質とのみ反応性があったが(図10、B、レーン1)、免疫前血清はネガティブであった(図10、B、レーン2及び5)。α−His−Bc28.1Cにより免疫沈降された28/26kDaの2つのタンパク質は、α−GST−Bc28.2血清では全く免疫沈降されなかった。B.canis(B.キャニス)の分離株Bで同様の結果が得られた。
【0225】
結論として:α−GST−Bc28.2血清は、45kDaタンパク質とは反応するが、α−His−Bc28.1C血清で認識される28/26kDaの2つのタンパク質とは反応しない。
【0226】
2.2.2. Bc28.1タンパク質の生化学的特性の決定
それぞれHis−Bc28.1C(V16−V256)及びHis−Bc28.1(V16−K233)と名付けた、Bc28.1のN−末端部分がなく、C−末端部分のGPIアンカーがある、又はない、2つの組み換えヒスチジンタグ付加Bc28.1タンパク質を精製した(図12)。His−Bc28.1Cタンパク質を変性条件下で精製し、ポリクローナル血清(α−His−Bc28.1C)を産生させるために、ウサギに注射した。His−Bc28.1タンパク質を非変性条件下で精製し、赤血球結合アッセイに使用した(セクション2.1.4.)。
【0227】
2.2.2.1. Bc28.1タンパク質は、GPIアンカータンパク質である。
【0228】
28kDaの1個のH標識タンパク質がα−His−Bc28.1C血清で特異的に免疫沈降されたので、[H]−エタノールアミンを用いたB.canis(B.キャニス)細胞溶解液の代謝標識により、Bc28.1産物の疎水性C−末端ペプチドのGPIの性質が確認された(図13、C、レーン2)。免疫前血清は反応性がなかった(図13、C、レーン1)。
【0229】
2.2.3. 免疫沈降アッセイにおけるα−His−Bc28.1C血清の反応性
2.2.3.1. トータル抗原及び可溶性寄生虫抗原(SPA)における反応性
α−His−Bc28.1C血清により、B.canis(B.キャニス)のトータル画分において、28/26kDaの2つのタンパク質が認識されたが、上清、つまりSPA画分においては26kDaタンパク質のみが検出された(図12、A、レーン2)。さらに、この28/26kDaの2つのタンパク質は、抗−Aワクチン接種/攻撃感染血清により特異的に認識されたタンパク質と対応した(図13、A、レーン3)。ウサギ又はイヌの免疫前血清は反応性がなかった(図13、A、それぞれレーン1及び4)。
【0230】
2.2.3.2. 分画化した抗原の反応性
35S]−メチオニン放射性標識した寄生赤血球細胞をストレプトリジンで細胞溶解した。その試料を遠心し、上清(赤血球支質画分)を回収した。ペレット(ゴーストと混ざったメロゾイト)をPercoll勾配を介して処理し、精製放射性標識メロゾイト濃度が高い画分(メロゾイト画分)を回収した。メロゾイト及び感染赤血球支質画分の1部をTX−114におけるタンパク質の相分離に使用した。B.canis(B.キャニス)の放射性標識抗原のソースとして、赤血球支質及びメロゾイト画分、及び、それらの対応するTX−114水性(可溶性抗原、Aqで示す。)及び界面活性(不溶性抗原、Det.で示す。)画分を用いて、α−His−Bc28.1C血清による免疫沈降実験を行った(図13、B)。
【0231】
これにより、α−His−Bc28.1C血清(図13、B、レーン2)がメロゾイト画分の28kDa抗原を検出すること、及びこのタンパク質が界面活性相に存在することが示され、このことから、それが不溶性抗原であることが示唆される(図13、B、レーンDet.)。一方、26kDa抗原は、感染赤血球の支質で検出され、このタンパク質が水相に存在することから、それが可溶性タンパク質であることが示唆される(図13、B、レーンAq.)。
【0232】
分離株Bを用いて同様の結果が得られた(データを示さず。)。
【0233】
2.2.4. 免疫蛍光アッセイによるBc28.1タンパク質の位置決定
B.canis(B.キャニス)の分離株Aからの、固定した感染赤血球におけるα−His−Bc28.1C血清の蛍光パターン(図13、D)から、メロゾイト表面の標識が示される(写真II、矢印で示す。)。さらに、感染赤血球の支質に存在する小胞の強い標識も得られた(写真I、4個が集まった形において矢印で示す。)。
【0234】
2.2.5. B.rossi(B.ロッシ)抗血清によるBc28.1の認識
最初にTX−114で疎水性(界面活性剤:Det.)相及び親水性(水性:Aq.)相に分離しておいた、[35S]標識B.canis(B.キャニス)分離株Bのトータル抗原の免疫沈降において、B.rossi(B.ロッシ)分離株Fに対するワクチン接種/攻撃感染血清を使用した。この異種抗血清により、疎水性相においてBc28.1の28kDa型が沈降し、親水性相において26及び28kDa型の両方が沈降し(図11、レーン3及び7)、見えるものは全て、30kDaを示すマーカーバンド位置のすぐ下であった。ポジティブ及びネガティブ対照抗血清を含む。
【0235】
2.2.6. Bc28.1タンパク質は赤血球に結合する。
【0236】
赤血球結合アッセイを行うことにより、感染赤血球表面へのBc28.1タンパク質の結合能を調べた(図14、A)。図14(A、レーン2)で示すように、抗−Hisモノクローナル抗体によりウェスタンブロットにおいてHis−Bc28.1タンパク質が検出され、そのことから、このタンパク質がイヌ赤血球に結合可能であることが示された。対照として、無関係のHis−GSTを用いて試験を行った場合、反応性は見られなかった(図14、A、レーン1)。
【0237】
2.2.7. Bc28.1タンパク質は赤血球表面抗原である。
【0238】
B.canis(B.キャニス)(分離株A)のインビトロ培養の[35S]−メチオニン放射線標識から得られたビオチン化した無傷の赤血球を細胞溶解し、B.canis(B.キャニス)の分離株Aに対するワクチン接種/攻撃感染血清(α−A)、又はα−His−Bc28.1C抗血清、及びそれらの対応する免疫前血清を用いた免疫沈降実験用に処理した。免疫沈降させたタンパク質をSDS−PAGEにより分離し、そのゲルをニトロセルロース膜にブロットし、赤血球表面からのビオチン化タンパク質を検出した(図14、B、II)。赤血球細胞表面からの全体のビオチン化タンパク質を検出した後、ビオチン化タンパク質の寄生虫起源を確かめるためにウェスタンブロットをオートラジオグラフィーに供した(図14、B、I)。α−His−Bc28.1C抗血清が28/26kDaの2つのタンパク質を免疫沈降させた(図14、B、I、レーン2)一方で、この実験では、28kDaタンパク質のみがビオチン化されたことが示され(図14、B、II、レーン2)、このことから、2つのタンパク質のうち28kDaタンパク質がB.canis(B.キャニス)の組み込まれた表面赤血球抗原であることが示される。このビオチン化28kDaタンパク質はまた、α−A血清により免疫沈降された(図14、B、II、レーン3)。免疫前血清は陰性であった(図14、B、レーン1及び4)。
【0239】
2.2.7.1. 赤血球−膜結合の強さの測定
α−His−Bc28.1C抗血清により免疫沈降されたB.canis(B.キャニス)からの28.1表面抗原が、それと会合しているというより、赤血球表面に接着しているだけであるかどうかを分析するための試験において、感染した赤血球表面とのそれらの相互作用の強さを評価した。
【0240】
放射性標識及びビオチン化した無傷の赤血球を、0.5Mから2Mの様々な濃度のNaCl溶液で処理した。これにより、2M濃度のNaClの場合でさえも、28kDaタンパク質が赤血球表面から溶出されないことが示された。このことから、それがB.canis(B.キャニス)の真の表面に組み込まれた抗原であることが証明される。
【0241】
結論として:Bc28.1タンパク質の生化学的特性の決定により、α−His−Bc28.1C血清が28/26kDの2つのタンパク質を認識することが明らかとなった。
【0242】
28及び26kDaタンパク質両方が、B.canis(B.キャニス)に感染したイヌの免疫血清により認識され、このことから、それらが、バベシア科感染に対する組み換えワクチンの優れた候補であることが示唆される。
【0243】
このデータは、28kDaがGPIアンカーの付いた不溶性タンパク質であることを示唆する。このタンパク質は、メロゾイト及び感染赤血球の表面に会合する。26kDaタンパク質は、感染赤血球及び上清画分で同定された可溶性寄生虫抗原(SPA)である。分泌タンパク質としての26kDaタンパク質の特性は、Bc28.1タンパク質のN−末端部分に切断ペプチドシグナルが存在すること、及び、IFAで検出されたように、赤血球支質中の小胞において存在することと一致する。
【0244】
第一に、このデータから、Bc28.1タンパク質が赤血球に結合することが示唆され、これにより、赤血球表面からのリガンドとこのタンパク質が相互作用することが示唆される。28kDa産物がメロゾイト表面と会合することが示されたので、その赤血球の感染にこの28kDaタンパク質が関与することが示唆される。
【0245】
第二に、このデータから、28kDa型が表面局在抗原であるということも示される。この分析はまた、感染赤血球の表面に付着した可溶性抗原も検出し得る。しかし、無傷の赤血球をNaClの2M溶液で処理することによりBc28.1タンパク質を溶出することができないこと、及び検出されたビオチン化表面抗原が28kDaタンパク質(つまり、可溶性抗原ではない型)であることから、この28kDaタンパク質が感染赤血球の外膜に強く会合していることが証明される。これは、(感染)赤血球の結合及び凝集におけるこのタンパク質の機能を示す。実際に、感染赤血球の凝集は、既に、B.canis(B.キャニス)について記載されている(Schettersら、1997、Parasitology,vol.115,p.485−493)。このように、生物の免疫系にさらされることなく、寄生虫が新しい赤血球に感染することを可能にする凝集体を形成するために、感染赤血球の表面に存在する28kDaタンパク質は(感染)赤血球成分と結合する。
【0246】
これらのデータから推定されるBc28.1タンパク質の28kDa型の2つの機能(つまり、侵入及び凝集)から、このタンパク質が寄生虫の生存に非常に重要な役割を果たすことが示唆される。実際に、これらの2つのメカニズムは、寄生虫にとって宿主の免疫系から逃れるために不可欠である。
【実施例3】
【0247】
Bc28.1及びBc28.2タンパク質サブユニットワクチンを用いたワクチン接種
3.1. 使用技術
3.1.1. 動物
雄及び雌のイヌ、例えば6ヶ月齢のビーグル、を適切な施設で飼育する。無作為割り当てに基づき、適切な大きさのいくつかの群に分ける。開始前、実験中数回、血液試料を採取する。これらの動物の全般的健康を定期的に調べる。
【0248】
3.1.2. ワクチン
例えば、バキュロウイルス発現ベクター系又はRocheインビトロ発現系において、Bc28.1及び/又はBc28.2タンパク質を産生させる。ウェスタンブロットによりタンパク質の特性を調べ、好ましくはElisaにより定量し、好ましくはQuil Aを用いて処方する。
【0249】
3.1.3. ワクチン接種
約3週間の間隔で、2回、イヌに、ワクチンの単回投与を行う。注射は皮下に行う。
【0250】
1週間間隔で血液試料を採取し、好ましくはElisaにより血液分析を行うために、血清を調製する。
【0251】
2回目のワクチン接種から約2週間後に、生きているB.canis(B.キャニス)寄生虫の適量を用いて攻撃感染を行う。
【0252】
攻撃感染から14日間、感染の臨床徴候について動物を監視する。行動、脾臓の大きさ、リンパ節の大きさ、口腔及び眼瞼の粘膜の色及び毛細血管再充満時間に特に注意を払う。Schettersら、1994(Vet.Parasitol.,vol.52,p.219−233)に記載されているように数値として臨床スコアを表す。
【0253】
攻撃感染の観察期間中、クエン酸処理血液から毎日血液塗抹標本を調製し、これらを染色し、寄生虫感染赤血球数を数える。ヘマトクリット測定も毎日行う。
【0254】
攻撃感染から14日後に、感染を治療するために、イヌに対してCarbesia(R)による化学療法治療を行う。
【実施例4】
【0255】
特異的抗体を用いた、バベシア寄生虫による赤血球への侵入の低下
Bc28.1タンパク質に特異的な抗体がバベシア寄生虫の赤血球への侵入を顕著に低下させる能力を証明するために、ウサギポリクローナル抗血清を使用した。
【0256】
4.1 使用技術
(Schettersら、1994、前出)で述べられているようにして、イヌ赤血球における標準的バベシア培養を行った。α−His−Bc28.1C抗血清は、上述のようにして作製した(セクション2.1.2.)。その同じ実験において、Bc28.1タンパク質と反応しないウサギ免疫前血清を得た(図13参照)。これらの血清を、次のスキームで、純粋なまま、又は1:1に混合して、バベシア寄生虫培養物に添加した:
血清試料nr 1:純粋なα−His−Bc28.1C抗血清
血清試料nr 2:α−His−Bc28.1C抗血清と免疫前血清とを1:1混合
血清試料nr 3:純粋な免疫前血清。
【0257】
懸濁培養物には、その1%がBabesia canis(バベシア キャニス)寄生虫に感染している、1%(v/v)イヌ赤血球細胞が含有されていた。
【0258】
このような懸濁培養物の三重測定検体に対して、血清試料1:10体積を添加し(培養物1.44mlに160μl血清(−mix))、その結果、培養物中の特異的α−His−Bc28.1C抗血清の最終量が10、5又は0% v/vとなった。
【0259】
血清が入った培養物を一晩インキュベーションし、その後、血液塗抹標本を調製し、顕微鏡により寄生虫が感染した赤血球を数えて、寄生虫血症レベルを測定した。
【0260】
4.2. 結果
寄生虫侵入低下アッセイの結果を表6に示し、図15のグラフに表す。この結果から、非特異的(免疫前)ウサギ血清のみが添加された培養物と比較して、α−His−Bc28.1C抗血清を含有する赤血球−培養物における寄生虫血症レベルが顕著に低下したことが明らかである。侵入低下は、25%に達し、寄生虫感染赤血球のレベルは、28%から21%に低下した。
【0261】
α−His−Bc28.1C血清の1:1希釈試料でさえも、同じレベルの侵入低下が効果的に達成された(表6参照)。
【0262】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0263】
【図1】Bc28.1及びBc28.2タンパク質のアミノ酸アライメント。 星印でこの2つの配列間の同一性を、1個の点又は2個の点で相同性を示す。Bc28.2について、N−末端部分に位置するシグナルペプチド、及びBc28.1に対して、C−末端部分に位置するシグナルペプチド及びGPIアンカーを太字で示す。それらの切断部位は、縦の矢印で示す。
【図2】地理的かつ遺伝的に離れているB.canis(B.キャニス)野生分離株からのBc28.1タンパク質のアミノ酸アライメント。 星印で様々な配列間の同一性を、1個の点又は2個の点で相同性を示す。Bc28.1タンパク質のN−末端部分に位置するシグナルペプチド、及びC−末端部分に位置するGPIアンカーを太字で示す。
【図3−1】本発明によるBc28.1及びBc28.2タンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列アライメント。 星印でこの2つの配列間の同一性を示す。Bc28.1及びBc28.2配列に対する開始及び終止コドンの位置を示す;対応するヌクレオチドを太字で示す。Bc28.1及びBc28.2配列由来のプライマーの位置及び5’−3’方向は、矢印及び太字で示す;pr3に対しては、短い部分しか一致していない。
【図3−2】本発明によるBc28.1及びBc28.2タンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列アライメント。 星印でこの2つの配列間の同一性を示す。Bc28.1及びBc28.2配列に対する開始及び終止コドンの位置を示す;対応するヌクレオチドを太字で示す。Bc28.1及びBc28.2配列由来のプライマーの位置及び5’−3’方向は、矢印及び太字で示す;pr3に対しては、短い部分しか一致していない。
【図4−1】地理的かつ遺伝的に離れているB.canis(B.キャニス)野生分離株からのBc28.1タンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列アライメント。 星印でこの2つの配列間の同一性を示す。Bc28.1配列のそれぞれに対する開始及び終止コドンの位置を示し、太字で記す。プライマーの位置及び5’−3’方向は、矢印で示す。
【図4−2】地理的かつ遺伝的に離れているB.canis(B.キャニス)野生分離株からのBc28.1タンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列アライメント。 星印でこの2つの配列間の同一性を示す。Bc28.1配列のそれぞれに対する開始及び終止コドンの位置を示し、太字で記す。プライマーの位置及び5’−3’方向は、矢印で示す。
【図4−3】地理的かつ遺伝的に離れているB.canis(B.キャニス)野生分離株からのBc28.1タンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列アライメント。 星印でこの2つの配列間の同一性を示す。Bc28.1配列のそれぞれに対する開始及び終止コドンの位置を示し、太字で記す。プライマーの位置及び5’−3’方向は、矢印で示す。
【図5】B.canis(B.キャニス)からの部分的Bc28.2ゲノムDNAフラグメントの同定。 B.canis(B.キャニス)の分離株AからのゲノムDNAにおいてプライマーカップル pr3及びE4を用いて、PCRにより、Bc28.2ゲノムDNAフラグメントを単離した(レーン1)。ネガティブ対照として、プライマーpr3及びE4のそれぞれも試験した(それぞれレーン2及び3)。
【図6】Bc28.1及び潜在的な28.2コード配列それぞれに対する、リバースプライマー、Rspe3C及びRspe3Gの特異性の分析。 DNAテンプレートとしてB.canis(B.キャニス)のA8 生物学的クローンを用いて、PCRを行った。フォワードプライマー Cons3.1(A)又はフォワードプライマー Fspe3(B)を用いたPCR反応においてそれらを使用することにより、Bc28.1コード配列に対するリバースプライマーRspe3C(I)の特異性及び潜在的Bc28.2コード配列に対するリバースプライマーRspe3G(II)の特異性を試験した。次に、これらのPCR反応から得られたアンプリマー(レーンPCR)を制限酵素 HinfI(H)又はMstI(M)で消化した。(C)Bc28.1コード配列、部分的ゲノムフラグメント Bc28.2及びBc28.2のコード配列の推定制限マップの概略スキーム。
【図7】ハイブリダイゼーション実験によるBc28多重遺伝子族の分子同定。 Bc28.1 cDNA配列からのPCRフラグメント FSpe3/Rspe4をハイブリダイゼーション実験のプローブとして使用した。(A)制限酵素XbaI(レーン1)、XhoI(レーン2)、RsaI(レーン3)、NotI(レーン4)及びEcoRI(レーン5)で消化した、B.canis(B.キャニス)の分離株AからのゲノムDNAのサザンブロット。(B)B.canis(B.キャニス)の分離株AからのトータルRNAのノーザンブロット。(C及びD)B.canis(B.キャニス)の分離株A及びBの全体(C)又はNotI消化(D)染色体のPFGE分離。(I)ゲルの臭化エチジウム染色。(II)Bc28.1プローブとハイブリダイゼーションさせた対応するゲル。
【図8】Bc28.1及びBc28.2コード配列の比較制限マップの概略スキーム。 (A)B.canis(B.キャニス)からの生物学的クローンA8内のBc28.1及びBc28.2コード配列自身の間の、Bc28.1及びBc28.2コード配列の比較制限マップ。(B)地理的かつ遺伝的に離れているB.canis(B.キャニス)野生分離株間のBc28.1コード配列の比較制限マップ。(C)地理的かつ遺伝的に離れているB.canis(B.キャニス)野生分離株からの潜在的Bc28.2コード配列の比較制限マップ。これらの制限マップは、AluI、EcoRI、HinfI、MboI及びMspIによるDNA消化に基づき作成した。
【図9】Bc28.1タンパク質の予想疎水性プロファイル。 予想N−末端シグナルペプチド及びC−末端GPIアンカーをボックスで囲う。
【図10】B.canis(B.キャニス)のBc28.2コード配列によりコードされるタンパク質の同定。 (A)精製したGST−Bc28.2組み換えタンパク質のSDS−PAGE。(B)B.canis(B.キャニス)(分離株A)のインビトロ培養の[35S]−メチオニン放射性標識のトータル画分からのタンパク質抽出物におけるα−GST−Bc28.2の反応性。免疫α−GST−Bcvir15(レーン1)、免疫前α−GST−Bc28.2(レーン2)、免疫α−GST−Bc28.2(レーン3)、免疫α−His−Bc28.1C(レーン4)、免疫前α−His−Bc28.1C(レーン5)及び免疫α−His−Bd37(レーン6)血清を用いて免疫沈降を行った。
【図11】B.canis(B.キャニス)の親水性及び疎水性タンパク質の免疫沈降。 B.canis(B.キャニス)分離株Bのトータル、標識(Aq.)及び界面活性分離(Det.)抗原を、B.canis(B.キャニス)分離株Aに対するワクチン接種/攻撃感染血清(α−A、レーン1及び5)、B.canis(B.キャニス)分離株Bに対する免疫血清(α−B、レーン2及び6)、B.rossi(B.ロッシ)分離株Fに対するワクチン接種/攻撃感染血清(α−F、レーン3及び7)又は非感染イヌ血清(N、レーン4及び8)を用いて免疫沈降させた。
【図12】組み換えHis−Bc28.1タンパク質の精製。 精製組み換えHis−Bc28.1C及びHis−Bc28.1タンパク質のSDS−PAGE。His−Bc28.1Cタンパク質を変性条件下で精製し、一方、His−Bc28.1タンパク質を非変性条件下で精製した。
【図13−1】Bc28.1タンパク質の生化学的特性決定。 B.canis(B.キャニス)(分離株A)からの、[35S]−メチオニン(A及びB)又は[H]−エタノールアミン(C)放射性標識抗原の免疫沈降実験。免疫前α−His−Bc28.1C血清(レーン1)、免疫α−His−Bc28.1C血清(レーン2)、免疫α−A(B.canis(B.キャニス)の分離株Aを用いてワクチン接種/攻撃感染を行ったイヌ由来。)血清(レーン3)及び免疫前α−A血清(レーン4)を用いて、免疫沈降を行った。免疫α−His−Bc28.1C血清を用いて、メロゾイト及び支質画分からの、Triton−X114不溶性(Det.)及び可溶性(Aq.)抗原を免疫沈降させた。(D)免疫蛍光アッセイによるBc28.1タンパク質の位置。矢印はそれぞれ、感染赤血球の支質内(写真I)及びメロゾイトの表面(写真II)の小胞の標識を示す。
【図13−2】Bc28.1タンパク質の生化学的特性決定。 B.canis(B.キャニス)(分離株A)からの、[35S]−メチオニン(A及びB)又は[H]−エタノールアミン(C)放射性標識抗原の免疫沈降実験。免疫前α−His−Bc28.1C血清(レーン1)、免疫α−His−Bc28.1C血清(レーン2)、免疫α−A(B.canis(B.キャニス)の分離株Aを用いてワクチン接種/攻撃感染を行ったイヌ由来。)血清(レーン3)及び免疫前α−A血清(レーン4)を用いて、免疫沈降を行った。免疫α−His−Bc28.1C血清を用いて、メロゾイト及び支質画分からの、Triton−X114不溶性(Det.)及び可溶性(Aq.)抗原を免疫沈降させた。(D)免疫蛍光アッセイによるBc28.1タンパク質の位置。矢印はそれぞれ、感染赤血球の支質内(写真I)及びメロゾイトの表面(写真II)の小胞の標識を示す。
【図14】Bc28.1タンパク質の赤血球結合特性及びB.canis(B.キャニス)の表面赤血球局在抗原の分析 精製His−Bc28.1タンパク質(レーン2)又はHis−GST(レーン1) 100μgを用いて、これらをイヌ赤血球とインキュベーションし、赤血球結合アッセイを行った。ウェスタンブロットにおいて、1/20.000希釈した抗Hisタグモノクローナル抗体(Qiagen)により、各タンパク質の赤血球成分への結合能を明らかにした。(B)α−His−Bc28.1C血清(レーン1)、免疫α−His−Bc28.1C血清(レーン2)、免疫α−A(B.canis(B.キャニス)の分離株Aを用いてワクチン接種/攻撃感染を行ったイヌ由来。)血清(レーン3)及び免疫前α−A血清(レーン4)を用いて、免疫沈降実験により、B.canis(B.キャニス)感染赤血球の表面上に局在する寄生虫抗原を分析した。簡潔に述べると、ビオチン化及び[35S]−メチオニン放射性標識した無傷の赤血球を細胞溶解し、B.canis(B.キャニス)の分離株Aに対するワクチン接種/攻撃感染血清(α−A)又はα−His−Bc28.1C抗血清及びそれらの対応する免疫前血清を用いた免疫沈降実験を行うために処理した。免疫沈降させたタンパク質をSDS−PAGEで分離し、そのゲルをニトロセルロース膜にブロットし、赤血球表面からのビオチン化タンパク質を明らかにした(II)。赤血球細胞表面からの全体のビオチン化タンパク質を明らかにした後、ビオチン化タンパク質の寄生虫起源を確認するために、ウェスタンブロットをオートラジオグラフィーに供した(I)。
【図15】寄生虫侵入低下アッセイの結果 赤血球におけるBabesia canis(バベシアキャニス)寄生虫の培養物を、タンパク質His−28.1Cに対して特異的なポリクローナルウサギ抗血清の様々な量とともに、インキュベーションを行うか、又は行わなかった。顕微鏡により寄生虫感染赤血球の相対数を数えることにより寄生虫血症に対して得られた効果を調べた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2のアミノ酸位置17から位置180までのアミノ酸配列と少なくとも70%の相同性を持つアミノ酸配列を含有することを特徴とする、バベシアタンパク質、又は該タンパク質の免疫フラグメント。
【請求項2】
配列番号2で示される通りのアミノ酸配列と少なくとも70%の相同性を持つアミノ酸配列を含有することを特徴とする、請求項1に記載のバベシアタンパク質、又は該タンパク質の免疫フラグメント。
【請求項3】
配列番号4で示される通りのアミノ酸配列と少なくとも70%の相同性を持つアミノ酸配列を含有することを特徴とする、請求項1に記載のバベシアタンパク質、又は該タンパク質の免疫フラグメント。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載のタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメントをコードすることを特徴とする、核酸。
【請求項5】
配列番号1の核酸を含有することを特徴とする、請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
配列番号3の核酸を含有することを特徴とする、請求項4に記載の核酸。
【請求項7】
請求項4から請求項6に記載の核酸を含有する、cDNAフラグメント。
【請求項8】
機能的に連結されたプロモーターの制御下で、請求項4から請求項6に記載の核酸又は請求項7に記載のcDNAフラグメントを含有する、組み換えDNA分子。
【請求項9】
請求項4から請求項6に記載の核酸、請求項7に記載のcDNAフラグメント又は請求項8に記載の組み換えDNA分子を含有する、生きている組み換え担体。
【請求項10】
請求項4から請求項6に記載の核酸、請求項7に記載のcDNAフラグメント、請求項8に記載の組み換えDNA分子又は請求項9に記載の生きている組み換え担体を含有する、宿主細胞。
【請求項11】
請求項1から請求項3に記載のタンパク質もしくは該タンパク質の免疫フラグメント、請求項4から請求項6に記載の核酸、請求項7に記載のcDNAフラグメント、請求項8に記載の組み換えDNA分子、請求項9に記載の生きている組み換え担体又は請求項10に記載の宿主細胞、又はそれらの組み合わせ、及び医薬適合性の担体を含有するワクチン。
【請求項12】
アジュバントを含有することを特徴とする、請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
さらなる免疫活性成分又は該さらなる免疫活性成分をコードする核酸を含有することを特徴とする、請求項11から請求項12に記載のワクチン。
【請求項14】
前記さらなる免疫活性成分又は前記さらなる免疫活性成分をコードする核酸が、Ehrlichia canis(エーリキア キャニス)、Babesia gibsoni(バベシア ギブソニ)、B.vogeli(B.ボゲリ)、B.rossi(B.ロッシ)、Leishmania donovani(リーシュマニア ドノバン)−複合体、Canine parvovirus(イヌ パルボウイルス)、Canine distempervirus(イヌ ジステンパーウイルス)、Leptospira interrogans (レプトスピラ インテロガンス) 血清型canicola(カニコーラ)、icterohaemorrhagiae(イクテロヘモラジ)、pomona(ポモナ)、grippotyphosa(グリポティフォーサ)、bratislava(ブラチスラバ)、Canine hepatitisvirus(イヌ肝炎ウイルス)、Canine parainfluenzavirus(イヌパラインフルエンザウイルス)、rabies virus(狂犬病ウイルス)、Hepatozoon canis(ヘパトゾーン キャニス)及びBorrelia burgdorferi(ボレリア ブルグドルフェリ)からなる群から選択される生物から得られることを特徴とする、請求項13に記載のワクチン。
【請求項15】
請求項1から請求項3に記載のタンパク質に対する抗体又は該タンパク質の免疫フラグメントに対する抗体、又はそれらの組み合わせと、医薬適合性の担体と、を含有することを特徴とする、ワクチン。
【請求項16】
請求項1から請求項3に記載のタンパク質もしくは該タンパク質の免疫フラグメント、請求項4から請求項6に記載の核酸、請求項7に記載のcDNAフラグメント、請求項8に記載の組み換えDNA分子、請求項9に記載の生きている組み換え担体又は請求項10に記載の宿主細胞、又はそれらの組み合わせと、医薬適合性の担体と、を混合することを含む、請求項11から請求項14に記載のワクチンの調製のための方法。
【請求項17】
請求項1から請求項3に記載のタンパク質に対する抗体又は該タンパク質の免疫フラグメントに対する抗体と、医薬適合性の担体と、を混合することを含む、請求項15に記載のワクチンの調製のための方法。
【請求項18】
バベシア科の生物により引き起こされる感染又はその臨床的徴候の予防又は治療処置用のワクチンの製造のための、請求項1から請求項3に記載のタンパク質又は該タンパク質の免疫フラグメントの使用。
【請求項19】
配列番号1又は3で示される核酸配列と少なくとも70%の相同性を有する核酸、又は該核酸と相補的な核酸を含有し、該核酸の両者とも少なくとも12、好ましくは15、より好ましくは18ヌクレオチドの長さを有することを特徴とする、バベシア科の生物に関連する核酸検出のための診断テスト。
【請求項20】
請求項1から請求項3に記載のタンパク質もしくは該タンパク質の免疫フラグメント、又はそれらの組み合わせを含有することを特徴とする、バベシア科の生物に対する抗体検出のための診断テスト。
【請求項21】
請求項1から請求項3に記載のタンパク質に対する抗体もしくは該タンパク質の免疫フラグメントに対する抗体、又はその組み合わせを含有することを特徴とする、バベシア科の生物由来の抗原物質検出のための診断テスト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate

【図4−3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13−1】
image rotate

【図13−2】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2008−500802(P2008−500802A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518230(P2006−518230)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051454
【国際公開番号】WO2005/012343
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】