説明

バラスト水処理装置

【課題】バラストタンクにバラスト水を注入するポンプの揚水能力と同等の微生物殺滅能力を有する高性能のバラスト水処理装置を提供する。
【解決手段】バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置である。バラスト水取水口15からバラストタンク2に至る注水管15の途中に、前記バラスト水cを噴流と成す水噴射ノズル17及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生する衝撃板18を有する噴流発生手段8と、該噴流発生手段を経たバラスト水にオゾンbを注入するオゾン注入手段9と、前記オゾンとバラスト水を混合する静的混合手段10と、該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段11,36,40とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラストタンクにバラスト水を注入する際に、バラスト水の中に含まれているプランクトンやバクテリアなどの微生物を殺滅するバラスト水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶のバラストタンクに収容されているバラスト水を船外に排出することにより、バラスト水に含まれていたプランクトンやバクテリアなどの微生物が船外に流出して、この微生物による水質汚染などの影響が拡大するのを抑制するため、従来、微生物が比較的多い沿岸海域などで船舶のバラストタンクに注入したバラスト水を、一度、微生物が比較的少ない大洋上で交換すると言った対策が行われている。
【0003】
これは、沿岸などでバラスト水を船外に排出するとき、大洋上で注入した微生物が比較的少ないバラスト水を排出することにより、微生物の影響が拡大するのを抑制しようとするものである。
【0004】
ところが、このように、大洋上でバラスト水の入れ替えを行ったとしても、バラストタンク内の微生物を完全に排出することができず、バラストタンク内に微生物が残留してしまう。
【0005】
このため、微生物が比較的少ない大洋水をバラストタンクに注入したとしても、バラストタンク内に微生物が残留した状態では、微生物の影響が拡大を抑制することは難しい。そこで、バラストタンク内に残留する微生物の殺滅を行うことが考えられている。
【0006】
バラストタンク内に残留する微生物の殺滅を行う方法として、バラストタンク内のバラスト水を排出した後、バラスト水として汲み上げた海水をエンジンの冷却水を利用して加熱し、この加熱された海水をバラストタンク内に注入してバラストタンクの底部に張ったり、バラストタンクの側壁に向けて噴射することで、バラストタンク内の底部に沈殿した微生物や、壁面に付着した微生物などを熱により殺滅することが提案されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−91288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の方法は、廃熱源の廃熱を利用して微生物を殺滅することができるため、微生物を殺滅するために消費するエネルギーを抑制することができるという優れた効果がある。
【0008】
しかしながら、バラストタンク内に残留する微生物の殺滅後に大洋水をバラスト水として導入したとき、微生物が比較的少ない大洋水であっても微生物が含まれていれば、バラスト水の排出により、バラスト水を排出した海域に微生物を放出してしまうことになり、微生物の影響の拡大を抑制できない場合がある。
【0009】
従って、特許文献1のような方法では、バラスト水の排出後にバラストタンク内に残留する微生物の殺滅を行うことはできるが、バラスト水自体に含まれている微生物の殺滅を行うことができないため、微生物の影響の拡大を抑制できない場合が生ずる。
【0010】
このように、特許文献1のような方法を用いても、水質汚染が拡大してしまう場合があるため、バラストタンク内に収容されたバラスト水の中に含まれる微生物を殺滅できるバラスト水処理装置が必要とされる。
【0011】
特に、IMO(国際海事機関)で締結された合意文書によれば、2009年迄に、バラスト水に含まれている動物プランクトンや植物プランクトンなどの微生物の個数を10ヶ未満/m3 に抑制し、バクテリアなどの細菌の個数を10ヶ未満/ccに抑制する必要がある。
【0012】
他方、例えば、30万トンの船舶の場合、約10万トンのバラスト水が必要とされるが、10万トンの海水を24時間以内にバラストタンクに注入しようとすると、約3000トン/分の能力を持つ大型ポンプが2台必要となる。
【0013】
従って、バラスト水処理装置としても、約3000トン/分の割合で汲み上げられる海水中に含まれるプランクトンやバクテリアなどの微生物を殺滅することができる高性能のバラスト水処理装置が2台必要となる。
【0014】
本発明者は、このような問題を解消すべく、鋭意検討して、本発明に到達したものであり、その第1の目的とするところは、IMOで締結された基準値をクリアできるバラスト水処理装置を提供することにある。
【0015】
また、本発明の第2の目的とするところは、バラストタンクにバラスト水を注入するポンプの揚水能力と同等の微生物殺滅能力を有する高性能のバラスト水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明は、次のように構成されている。
【0017】
請求項1に記載の発明に係るバラスト水処理装置は、バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置であって、バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に、前記バラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生する衝撃板を有する噴流発生手段と、該噴流発生手段を経たバラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と、前記オゾンとバラスト水を混合する静的混合手段と、該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とを設けたことを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載の発明に係るバラスト水処理装置は、前記残存オゾンを分離する手段が、バラスト水に旋回流を発生させるサイクロン式のオゾン分離槽である。
【0019】
請求項3に記載の発明に係るバラスト水処理装置は、前記残存オゾンを吸着分離する手段が、活性炭素を内蔵したオゾン吸着分離槽である。
【0020】
請求項4に記載の発明に係るバラスト水処理装置は、前記残存オゾンを分離する手段が、管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させるオゾン分解ゾーンである。
【0021】
請求項5に記載の発明に係るバラスト水処理装置は、バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置であって、バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に、前記バラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と、前記オゾンを注入後のバラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生させる衝撃板を有する噴流発生手段と、該噴流発生手段を通過後のオゾンとバラスト水を混合させる静的混合手段と、該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とを設けたことを特徴としている。
【0022】
請求項6に記載の発明に係るバラスト水処理装置は、前記残存オゾンを分離する手段が、バラスト水に旋回流を発生させるサイクロン式のオゾン分離槽である。
【0023】
請求項7に記載の発明に係るバラスト水処理装置は、前記残存オゾンを吸着分離する手段が、活性炭素を内蔵したオゾン吸着分離槽である。
【0024】
請求項8に記載の発明に係るバラスト水処理装置は、前記残存オゾンを分離する手段が、管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させるオゾン分解ゾーンである。
【発明の効果】
【0025】
上記のように、請求項1に記載の発明は、バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置であって、バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に、前記バラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生する衝撃板を有する噴流発生手段と、該噴流発生手段を経たバラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と、前記オゾンとバラスト水を混合する静的混合手段と、該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とを設けたことに特徴がある。
【0026】
前記水噴射ノズルによって激流を形成して急激な圧力変化を与えると、キャビテーションが発生してバラスト水の中のプランクトンなどの微生物を破壊して殺滅する。また、ポンプの駆動によってバラスト水が注水管内から水噴射ノズルに移送されると、衝撃板に衝突し、噴流による高い圧力と、負圧といった急激な圧力変化と、衝撃板への衝突による急激な衝撃板と摩擦力により、バラスト水に含まれるプランクトン等の微生物の気泡や細胞壁を破壊して殺滅する。
【0027】
その後、噴流発生手段後方のオゾン注入手段からバラスト水にオゾンを注入する。オゾンが注入されたバラスト水は、オゾン注入手段の後流側にある静的ミキサーによって攪拌され、バラスト水とオゾンとが均一に攪拌混合される。静的ミキサーによってオゾンが均一に攪拌混合されたバラスト水は、オゾン分離槽内に導入され、旋回流となる。その間に、バラスト水に含まれているプランクトンやバクテリアなどの微生物の細胞膜がオゾンによって破壊され、死滅する。
【0028】
残存オゾン分離手段であるオゾン分離槽に流入したバラスト水は、分離槽本体の内壁面に沿って旋回流を形成するため、分離槽本体内を通過するバラスト水の通過時間が長くなり、微生物を殺滅するオゾンの反応時間を稼ぐことができる。また、バラスト水中の未反応又は残存オゾンが分離し易くなる。また、オゾン分離槽内でバラスト水から分離した未反応又は残存オゾンは、排気管から系外に排出されるので、バラストタンク内にオゾンが流入することがない。
【0029】
従って、IMOで合意された基準値以下、すなわち、バラスト水に含まれているプランクトンなどの微生物の個数を10ヶ未満/m3 に抑制し、バクテリアなどの細菌の個数を10ヶ未満/ccに抑制することが可能となる。
【0030】
他方、残存オゾン分離手段がオゾン吸着分離槽の場合は、バラスト水中に残存している残存オゾンがオゾン吸着分離槽内の活性炭素によって吸着分離することができる。
【0031】
また、残存オゾン分離手段が管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させるオゾン分解ゾーンの場合は、管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させることにより、残存オゾンの分離を促進させることができる。
【0032】
請求項5に記載の発明に係るバラスト水処理装置は、バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置であって、バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に、前記バラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と、前記オゾンを注入後のバラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生させる衝撃板を有する噴流発生手段と、該噴流発生手段を通過後のオゾンとバラスト水を混合させる静的混合手段と、該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とを設けたので、請求項1に記載の発明と同様に、IMOで合意された基準値以下、すなわち、バラスト水に含まれているプランクトンなどの微生物の個数を10ヶ未満/m3 に抑制し、バクテリアなどの細菌の個数を10ヶ未満/ccに抑制することが可能となるが、オゾン注入手段の下流側に設けた噴流発生手段においてキャビテーションが発生する際に、オゾン注入手段から注入したオゾンの拡散及び混合が促進することから、プランクトンやバクテリアなどの微生物の殺滅が、より効果的に行われるという効果がある。
【0033】
更に、残存オゾン分離手段がオゾン分離槽の場合は、バラスト水が分離槽本体の内壁面に沿って旋回流を形成するため、分離槽本体内を通過するバラスト水の通過時間が長くなり、微生物を殺滅するオゾンの反応時間を稼ぐことができる一方、バラスト水中の未反応又は残存オゾンが分離し易くなる。また、オゾン分離槽内でバラスト水から分離した未反応又は残存オゾンは、排気管から系外に排出されるので、バラストタンク内にオゾンが流入することがない。
【0034】
他方、残存オゾン分離手段がオゾン吸着分離槽の場合は、バラスト水中に残存している残存オゾンがオゾン吸着分離槽内の活性炭素によって吸着分離することができる。
【0035】
また、残存オゾン分離手段が管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させるオゾン分解ゾーンの場合は、管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させることにより、残存オゾンの分離を促進させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0037】
図1(a)及び(b)に示すように、バラ積船1は、船側に沿って複数のバラストタンク2を有すると共に、船体中央に、船首尾方向に並んだ複数の船艙3を有している。このバラ積船1は、機関室4の上方に船楼5を備えている。
【0038】
このバラ積船1に搭載したバラスト水処理装置は、オゾン注入ノズル9が噴流発生装置8の前方にある場合と、噴流発生装置8の後方にある場合の二つのケースがあるが、オゾン注入ノズル9が噴流発生装置8の後方にあるケースから順に説明する。
【0039】
(1)第1の実施形態
先ず、本発明に係る第1のバラスト水処理装置について説明する。
【0040】
図2に示すように、バラ積船1は、バラストタンク2の内部2aと機関室4を隔壁6によって隔離している。更に、バラストタンク2は、その内部2aにパッケージケース7を設けている。そして、パッケージケース7の内部7aに、噴流発生手段としての噴流発生装置8と、オゾン注入手段としてのオゾン注入ノズル9と、静的混合手段としての静的ミキサー10と、オゾン分離槽11とを収容している。
【0041】
また、隔壁6とパッケージケース7との間には、マンホール12を設け、機関室4とパッケージケース7の内部7aとを自由に往来できるようにしている。
【0042】
図2に示すように、船底13には、バラストポンプ14及び注水管15を設置している。注水管15は、一方の端が船底13に設けたバラスト水取水口16に接続し、他方の端がバラストタンク2内に達している。
【0043】
そして、この注水管15の途中には、バラストポンプ14からバラストタンク2に向って、順に、噴流発生装置8と、オゾン注入ノズル9と、静的ミキサー10と、オゾン分離槽11を配置している。
【0044】
次に、噴流発生装置8、オゾン注入ノズル9、ミキサー10及びオゾン分離槽11について、説明する。
【0045】
(a)噴流発生装置
噴流発生装置8は、図9に示すように、水噴射ノズル17と衝撃板18によって構成されている。
【0046】
水噴射ノズル17の形状は、特に限定されないが、図示の例のように、絞り部19と、拡開部20を有する形態が好ましい。この絞り部19によって注水管15を流れる水は、一旦、絞られ、次いで、拡開部20によって水流は、噴射するように流れる。すなわち、噴流が形成される。この形態では、絞り部19が噴流の始点となる。
【0047】
衝撃板20は、支持基板29に接設され、該支持基板29に設けた支持部材30にように挟持されている。該衝撃板20は、例えば、方形状(例えば、正方形)に形成され、かつ、着脱可能に固定することが好ましい。なお、支持部材30は、水の流れ方向の噴流の圧力があるので、必ずしも設ける必要がない。
【0048】
衝撃板20の大きさは、注水管15の内径より小さく形成され、外周あるいは上下(又は左右)から水を通過可能となるように形成することが好ましい。支持基板29には、衝撃板20の外周又は上下(又は左右)から通過した水を、図面上、右側の注水管15に流れるようにするための間隙35が形成されている。39はレジューサーである。
【0049】
水噴射ノズル17で形成される噴流の始点である絞り部と衝撃板18の距離は、キャビテーションと衝撃による殺滅が効果的に発生するように適宜設定される。
【0050】
上記の形態において、水噴射ノズルにより噴流を形成することにより、急激な圧力変化を与えると、キャビテーションを発生させることができるので、バラスト水中のプランクトンなどの微生物を破壊し、殺滅する。
【0051】
また、バラスト水がポンプ14の駆動によって注水管15内から水噴射ノズル17に、例えば、20〜30m/secで移送されると、衝撃板18にぶつかり、噴流による高い圧力と、負圧といった急激な圧力変化と、衝撃板18への衝突による急激な衝撃板と摩擦力により、バラスト水に含まれるプランクトン等の微生物の気泡や細胞壁を破壊して殺滅する。
【0052】
噴流発生装置8は、上記の態様に限定されず、ノズルを複数個対向させたり、角度を持たせたりして、キャビテーションの効果を増大させてもよい。また、衝撃板の表面形状を凹状又は凹凸状にすることにより、同様にキャビテーションの効果を増大させることが可能となり、キャビテーション効果の増大に伴って殺滅効果を高めることができる。
【0053】
(b)オゾン注入ノズル
オゾン注入ノズル9は、注水管15内のバラスト水にオゾンbを注入するためのものである。このオゾン注入ノズル9は、図2に示すように、注水管15の側壁から注水管15内に挿入したL型のノズルであり、その端面に設けた多数の微細な穴(図示せず)からオゾンを微細な気泡状に噴出するようになっている。
【0054】
ここで、注水管15内のバラスト水中のオゾン溶解濃度は、1〜200ppmの高濃度の範囲が好ましい。
【0055】
図中、21は、オゾン発生装置であり、このオゾン発生装置21で生成したオゾンbを配管22を経てオゾン注入ノズル9に供給するようになっている。
【0056】
なお、オゾン発生原理は、次のようになっている。
3O2 →2O3 +0.82kWh/kg−O3
ここで、0.82kWh/kgは、理論値である。
2 →2O、O+O2 →O3
【0057】
(c)静的ミキサー
静的ミキサーとして捻りを有する交差板又は交差体の構造を有するスタテックミキサーを採用する。ここでは、OHRラインミキサーを採用した場合の機能を示す。
【0058】
この静的ミキサー10は、図10(a)に示すように、ガイドベーン室23と、その後方のカレントカッター室24により構成されている。そして、このガイドベーン室23には、2枚のガイドベーン25がX字状(側面視)に設置されている。各ガイドベーン25,25は、それぞれ、ほぼ楕円形をその長軸に沿って2分したような形状を有し、その円周部25aが円筒状のガイドベーン室23の内壁面23aに固着されている。
【0059】
また、カレントカッター室24には、多数のカレントカッター群26が前後方向に所定の間隔を持って配置されている。そして、各カレントカッター群26には、それぞれ、管壁27から管の中心に向けてきのこ形に形成した多数のカレントカッター(衝突体ともいう。)28が放射状に設けられている。
【0060】
図10(b)は、静的ミキサーの作用説明図であり、この静的ミキサー10にプランクトンやバクテリアなどの微生物とオゾンを含んだバラスト水cとを矢印のように供給すると、バラスト水cがガイドベーン室23内の2枚のガイドベーン25によってらせん状のらせん流dに変換される。
【0061】
このらせん流dがガイドベーン室23からカレントカッター室24に流入すると、バラスト水cとバラスト水cの中に混入しているオゾン及び微生物(図示せず)とが、きのこ型をした多数のカレントカッター28と衝突して、より均一に混合する。このため、オゾンと微生物との接触する度合が飛躍的に向上し、オゾンによる微生物の殺滅の度合が増加する。
【0062】
(d)オゾン分離槽
オゾン分離槽11は、図2に示すように、タンク状の本体31と、その軸芯上に設けた内筒32により構成されている。この本体31の側部には、サイクロンのように、上流側の注水管15が接線方向に接続し、本体31内に流入した海水が本体31の内壁面に沿って旋回流eを形成するようになっている。
【0063】
このため、分離槽本体31内を通過するバラスト水の通過時間が長くなり、微生物を殺滅するオゾンの反応時間を稼ぐことができる。また、バラスト水中の未反応のオゾンが分離し易くなる。
【0064】
他方、この本体31には、後流側の注水管15が接続している。更に、この本体31には、本体31内でバラスト水から分離したオゾンを排出する排気管33を設けている。更に、上記内筒32には、紫外線ランプ34を挿入して、バラスト水中の微生物を最終的に殺滅するようになっている。紫外線ランプ34は、オゾンの分解を促進するとともに、その際生成する酸素ラジカルなどの効果で殺菌力を高めることができる。そして、紫外線ランプ34によって最終的に処理されたバラスト水cは、後流側の注水管15を経てバラストタンク2内に供給される。
【0065】
次に、図2により第1のバラスト水処理装置の作用について説明する。
【0066】
バラストポンプ14を稼働してバラスト水cを汲み上げると、バラスト水cは、注水管15を通ってバラストタンク2に注入される。このバラスト水cの中には、既に説明したように、プランクトンやバクテリアなどの微生物が含まれているので、これらの微生物を殺滅して、その数をIMOで合意された基準値以下、すなわち、バラスト水に含まれているプランクトンなどの微生物の個数を10ヶ未満/m3 に抑制し、バクテリアなどの細菌の個数を10ヶ未満/ccに抑制する必要がある。
【0067】
この第1番目のバラスト水処理装置は、既に説明したように、噴流発生装置8と、オゾン注入ノズル9と、静的ミキサー10と、オゾン分離槽11により構成されており、噴流発生装置8では、上記(a)項で説明したように、水噴射ノズル17によって激流を形成して急激な圧力変化を与えると、キャビテーションが発生してバラスト水cの中のプランクトンなどの微生物が破壊し、殺滅される。
【0068】
また、ポンプ14の駆動によってバラスト水cが注水管15内から水噴射ノズル17に移送されると、衝撃板18に衝突し、噴流による高い圧力と、負圧といった急激な圧力変化と、衝撃板18への衝突による急激な衝撃板と摩擦力により、バラスト水cに含まれるプランクトン等の微生物の気泡や細胞壁が破壊され、殺滅される。
【0069】
次に、噴流発生装置8の後方に位置しているオゾン注入ノズル9よりバラスト水にオゾンbを注入する。オゾンbが注入されたバラスト水cは、オゾン注入ノズル9の後流側に位置している静的ミキサー10によって攪拌され、バラスト水cとオゾンbとが均一に攪拌混合される。
【0070】
静的ミキサー10によって均一に攪拌混合されたバラスト水とオゾンの混合物は、オゾン分離槽11内に導入され、旋回流eを形成する。その間に、バラスト水に含まれているプランクトンやバクテリアなどの微生物の細胞膜がオゾンによって破壊され、死滅する。また、未反応又は残存オゾンbは、バラスト水cから分離して排気管33から系外に排出される。
【0071】
そして、プランクトンやバクテリアなどの微生物が殺滅され、オゾンbが除去されたバラスト水cは、オゾン分離槽11の本体31に設けた内筒32の下端部から上方に向って流れるが、オゾン分離槽11の内筒32を通過する間に紫外線ランプ34によって更に滅菌される。紫外線ランプ34によって滅菌されたバラスト水cは、後流側の注水管15からバラストタンク2内に注入される。
(2)第2の実施形態
図3は、本発明に係る第2のバラスト水処理装置の構成図である。
【0072】
この第2のバラスト水処理装置は、オゾン分離槽11の後流側にある注入管15にオゾン吸着分解槽36を設けたものであり、その他の機器については、既に説明した第1のバラスト水処理装置と同じであるから、第1の実施形態の機器と同じ機器に同じ符号を付けて詳しい説明については省略する。
【0073】
このオゾン吸着分解槽36は、筒状の本体37内に粒状活性炭やフェルト状活性炭などの活性炭38を充填したものであり、本体37内に充填した活性炭38によってバラスト水の中に残存しているオゾンを積極的に分解して、オゾンの残留濃度を零にするようになっている。
【0074】
(3)第3の実施形態
図4は、本発明に係る第3のバラスト水処理装置の構成図である。
【0075】
この第3のバラスト水処理装置は、既に説明した噴流発生手段8と、オゾン注入ノズル9と、静的ミキサー10とを、この順に配置し、更に、静的ミキサー10の後方にオゾン吸着分離槽36を設けたものである。
【0076】
このオゾン吸着分離槽36は、筒状の本体37内に粒状活性炭やフェルト状活性炭などの活性炭38を充填したものであり、本体37内に充填した活性炭38によってバラスト水の中に残存しているオゾンを積極的に分解してオゾンの残留濃度を零にするようになっている。
【0077】
その他の機器については、既に説明した第1のバラスト水処理装置と同じであるから、第1の実施形態の機器と同じ機器に同じ符号を付けて詳しい説明については省略する。
【0078】
(4)第4の実施形態
図5は、本発明に係る第4のバラスト水処理装置の構成図である。
【0079】
この第4のバラスト水処理装置は、既に説明した噴流発生手段8と、オゾン注入ノズル9と、静的ミキサー10とを、この順に配置し、更に、静的ミキサー10の後方にオゾン分解ゾーン40を設けたものである。
【0080】
このオゾン分解ゾーン40は、管体41内にリング状や馬蹄形などの乱流発生体42を充填したものであり、管体41内に充填した乱流発生体42によってバラスト水に乱流を発生させることにより、バラスト水の中に残存しているオゾンを積極的に分解してオゾンの残留濃度を零にするようになっている。
【0081】
その他の機器については、既に説明した第1のバラスト水処理装置と同じであるから、第1の実施形態の機器と同じ機器に同じ符号を付けて詳しい説明については省略する。
【0082】
次に、オゾン注入ノズル9が噴流発生装置8の前方にあるケースの場合について説明する。
(5)第5の実施形態
図6は、本発明に係る第5のバラスト水処理装置の構成図である。
【0083】
この第5のバラスト水処理装置は、オゾン注入ノズル9を噴流発生装置8の上流側に設けたのものであり、その他の機器については、既に説明した第1のバラスト水処理装置と同じであるから、第1の実施形態の機器と同じ機器に同じ符号を付けて詳しい説明については省略する。
【0084】
この実施形態の場合、オゾン注入ノズル9の下流側に設けた噴流発生手段8においてキャビテーションが発生する際に、オゾン注入ノズル9から注入したオゾンbの拡散及び混合が促進することから、プランクトンやバクテリアなどの微生物の殺滅が、より効果的に行われるという効果がある。
【0085】
なお、第2のバラスト水処理装置と同様に、オゾン分離槽11の後流側にある注入管15にオゾン吸着分解槽36を設けることにより、オゾン吸着分解槽36内に充填した活性炭38によってバラスト水の中に残存しているオゾンを積極的に分解し、オゾンの残留濃度を零にすることができる。
(6)第6の実施形態
【0086】
図7は、本発明に係る第6のバラスト水処理装置の構成図である。
【0087】
この第6のバラスト水処理装置は、既に説明したオゾン注入ノズル9と、噴流発生手段8と、静的ミキサー10とを、この順に配置し、更に、静的ミキサー10の後方にオゾン吸着分離槽36を設けたものである。
【0088】
このオゾン吸着分離槽36は、筒状の本体37内に粒状活性炭やフェルト状活性炭などの活性炭38を充填したものであり、本体37内に充填した活性炭38によってバラスト水の中に残存しているオゾンを積極的に分解してオゾンの残留濃度を零にするようになっている。
【0089】
その他の機器については、既に説明した第1のバラスト水処理装置と同じであるから、第1の実施態様の機器と同じ機器に同じ符号を付けて詳しい説明については省略する。
【0090】
(7)第7の実施形態
図8は、本発明に係る第7のバラスト水処理装置の構成図である。
【0091】
この第7のバラスト水処理装置は、既に説明したオゾン注入ノズル9と、噴流発生手段8と、静的ミキサー10とを、この順に配置し、更に、静的ミキサー10の後方にオゾン分解ゾーン40を設けたものである。
【0092】
このオゾン分解ゾーン40は、管体41内にリング状や馬蹄形などの乱流発生体42を充填したものであり、管体41内に充填した乱流発生体42によってバラスト水の中に残存しているオゾンを積極的に分解してオゾンの残留濃度を零にするようになっている。
【0093】
その他の機器については、既に説明した第1のバラスト水処理装置と同じであるから、第1の実施態様の機器と同じ機器に同じ符号を付けて詳しい説明については省略する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】(a)バラストタンクを有するバラ積み船の概略構成図、(b)バラ積み船の横断面図である。
【図2】本発明に係る第1のバラスト水処理装置の構成図である。
【図3】本発明に係る第2のバラスト水処理装置の構成図である。
【図4】本発明に係る第3のバラスト水処理装置の構成図である。
【図5】本発明に係る第4のバラスト水処理装置の構成図である。
【図6】本発明に係る第5のバラスト水処理装置の構成図である。
【図7】本発明に係る第6のバラスト水処理装置の構成図である。
【図8】本発明に係る第7のバラスト水処理装置の構成図である。
【図9】噴流発生手段の断面図である。
【図10】(a)ミキサーの断面図、(b)ミキサーの作用説明図である。
【符号の説明】
【0095】
c バラスト水
2 バラストタンク
8 噴流発生手段
9 オゾン注入手段
10 静的混合手段
11,40 オゾン分離手段
15 注水管
16 バラスト水取水口
17 水噴射ノズル
18 衝撃板
36 オゾン吸着分離手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置であって、バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に、前記バラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生する衝撃板を有する噴流発生手段と、該噴流発生手段を経たバラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と、前記オゾンとバラスト水を混合する静的混合手段と、該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とを設けたことを特徴とするバラスト水処理装置。
【請求項2】
前記残存オゾンを分離する手段が、バラスト水に旋回流を発生させるサイクロン式のオゾン分離槽である請求項1記載のバラスト水処理装置。
【請求項3】
前記残存オゾンを吸着分離する手段が、活性炭素を内蔵したオゾン吸着分離槽である請求項1記載のバラスト水処理装置。
【請求項4】
前記残存オゾンを分離する手段が、管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させるオゾン分解ゾーンである請求項1記載のバラスト水処理装置。
【請求項5】
バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置であって、バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に、前記バラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と、前記オゾンを注入後のバラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生させる衝撃板を有する噴流発生手段と、該噴流発生手段を通過後のオゾンとバラスト水を混合させる静的混合手段と、該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とを設けたことを特徴とするバラスト水処理装置。
【請求項6】
前記残存オゾンを分離する手段が、バラスト水に旋回流を発生させるサイクロン式のオゾン分離槽である請求項1記載のバラスト水処理装置。
【請求項7】
前記残存オゾンを吸着分離する手段が、活性炭素を内蔵したオゾン吸着分離槽である請求項1記載のバラスト水処理装置。
【請求項8】
前記残存オゾンを分離する手段が、管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させるオゾン分解ゾーンである請求項1記載のバラスト水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−272147(P2006−272147A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94609(P2005−94609)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】