説明

バリ除去方法およびレーザ加工方法

【課題】被加工物にレーザビームによるダメージを与えることなく精度良くバリを除去するバリ除去方法を提供する。
【解決手段】レーザ照射装置のレーザ照射範囲にバリ2および表面部1aが含まれるように被加工物1を載置するとともに、レーザ照射装置から照射するレーザビームLの焦点位置Pをバリ2よりも遠い位置に設定し、バリ2および表面部1aに対してレーザ照射装置からレーザビームLを照射する。レーザビームLを確実にバリ2に照射して当該バリ2を精度良く除去することができ、また、表面部1aではレーザビームLが乱反射しレーザビームLの強度が適度に弱められるので、被加工物1にレーザビームLによるダメージが与えられない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に形成されたバリをレーザ照射装置から照射するレーザビームによって除去するバリ除去方法、および、当該バリ除去方法によって被加工物からバリを除去するバリ除去工程を含むレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば樹脂成型品や金属成型品などの被加工物に形成されたバリを、レーザ照射装置から照射するレーザビームによって除去することが行われている。例えば、特許文献1には、レーザ照射装置から出力されたレーザビームを、被加工物に孔を形成するピンの形状、つまり、孔の形状と同形状をなすマスクを通過させることで、その孔部分に残った薄バリを除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−276508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に開示されている技術では、被加工物の孔部分に当該孔と同形状、つまり、同じ大きさのレーザビームを照射することでバリを除去するものであることから、被加工物の寸法公差や位置ずれによってレーザビームの照射範囲がずれると、バリ以外の部分にもレーザビームが照射されるようになり、従って、被加工物にレーザビームによる焼損や劣化などのダメージが与えられてしまう。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被加工物にレーザビームによるダメージを与えることなく精度良くバリを除去することができるバリ除去方法、および、当該バリ除去方法によって被加工物からバリを除去するバリ除去工程を含むレーザ加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明によれば、レーザ照射装置(11)から出力されたレーザビーム(L)は、レーザ照射範囲(A)内に含まれる被加工物(1)のバリ(2)および表面部(1a,1b)に照射される。即ち、レーザ照射装置(11)から出力されるレーザビーム(L)を、バリ(2)のみに照射するのではなく当該バリ(2)の周囲の部分にも照射するようにしたので、レーザ照射装置(11)から出力されたレーザビーム(L)を確実にバリ(2)に照射することができ、被加工物(1)からバリ(2)を除去することを精度良く行うことができる。
【0007】
ここで、被加工物(1)におけるバリ(2)の周囲の部分、即ち、被加工物(1)の表面部(1a,1b)にもレーザビーム(L)が照射されることから、当該照射部分がレーザビーム(L)によるダメージを受けることが懸念される。しかしながら、バリ(2)の周囲の部分に照射されたレーザビーム(L)は、当該照射部分、つまり、表面部(1a,1b)が曲面部や傾斜面部であれば、その表面部分において乱反射されるようになる。しかも、レーザ照射装置(11)から照射されるレーザビーム(L)の焦点位置(P)、つまり、当該レーザビーム(L)の強度が最も強くなる位置がバリ(2)よりも遠い位置に設定されることから、バリ(2)の周囲の部分に照射されるレーザビーム(L)の強度は適度に弱いものとなる。従って、レーザ照射に伴う被加工物(1)へのダメージは殆どあるいは全くない。
【0008】
このように、被加工物(1)の表面部(1a,1b)の形状を利用してバリ(2)以外の部分ではレーザビーム(L)を乱反射させるとともに、レーザビーム(L)の焦点位置(P)を調整することによってバリ(2)以外の部分に照射されるレーザビーム(L)の強度を適度に弱めるようにした。これにより、被加工物(1)にレーザビーム(L)によるダメージを殆どあるいは全く与えることなく精度良くバリ(2)を除去することができる。
【0009】
請求項2に記載した発明は、被加工物(1)の表面部が、曲面部(1a)または傾斜面部(1b)であることを具体的に特定したものである。
請求項3に記載した発明によれば、レーザ照射装置(11)は、被加工物(1)のバリ(2)および表面部(1a,1b)が含まれるレーザ照射範囲(A)内にてレーザビーム(L)を走査させるので、当該レーザ照射範囲(A)の全体にわたってレーザビーム(L)をきめ細かく照射することができ、一層精度良くバリ(2)を除去することができる。
【0010】
請求項4に記載したレーザ加工方法の発明によれば、請求項1から3の何れか1項に記載のバリ除去方法によって被加工物(1)からバリ(2)を除去するバリ除去工程を含んでいることから、被加工物(1)にレーザビーム(L)によるダメージを殆どあるいは全く与えることなく精度良くバリ(2)を除去することができる。また、レーザ照射装置(11)から照射するレーザビーム(L)によって被加工物(1)の刻印部(3)に当該被加工物(1)に関する被加工物情報を刻印するマーキング工程と、レーザ照射装置(11)から照射するレーザビーム(L)によって被加工物(1)の洗浄部(4)を洗浄する洗浄工程と、請求項1から3の何れか1項に記載のバリ除去方法によって被加工物(1)からバリ(2)を除去するバリ除去工程とを含む一連のレーザ加工動作を、1つのレーザ照射装置(11)を用いて実行することができる。
【0011】
さらに、このレーザ加工方法の発明においては、各工程においてレーザ照射装置(11)から照射するレーザビーム(L)の焦点位置(P)を変更しながら、および/または、各工程において被加工物(1)の載置位置を変更しながら一連のレーザ加工動作を実行することができる。
即ち、請求項5に記載した発明によれば、マーキング工程では、レーザ照射装置(11)から照射するレーザビーム(L)の焦点位置(P)が被加工物(1)の刻印部(3)に設定、つまり、刻印部(3)にジャストフォーカスされ、洗浄工程では、レーザ照射装置(11)から照射するレーザビーム(L)の焦点位置(P)が洗浄部(4)よりも近い位置に設定、つまり、洗浄部(4)よりも近い位置にデフォーカスされ、バリ除去工程では、レーザ照射装置(11)から照射するレーザビーム(L)の焦点位置(P)がバリ(2)よりも遠い位置に設定、つまり、バリ(2)よりも遠い位置にデフォーカスされる。これにより、各工程に適した強度のレーザビーム(L)によって被加工物(1)のレーザ加工を行うことができる。
【0012】
また、請求項6に記載した発明によれば、マーキング工程では、レーザ照射装置(11)のレーザ照射範囲(A)内に刻印部(3)が含まれるように被加工物(1)の載置位置が調整され、洗浄工程では、レーザ照射装置(11)のレーザ照射範囲(A)内に洗浄部(4)が含まれるように被加工物(1)の載置位置が調整され、バリ除去工程では、レーザ照射装置(11)のレーザ照射範囲(A)内にバリ(2)および表面部(1a,1b)が含まれるように被加工物(1)の載置位置が調整される。これにより、各工程におけるレーザ加工を精度良く効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、樹脂成型品の一例を示す斜視図
【図2】レーザ加工装置の構成を概略的に示す図
【図3】レーザビームを照射した状態におけるレーザ照射装置の一部を示す図
【図4】マーキング工程におけるレーザビームの照射態様を示す図
【図5】ターミナル洗浄工程におけるレーザビームの照射態様を示す図
【図6】バリ除去工程におけるレーザビームの照射態様を示す図
【図7】バリ除去工程におけるレーザビームの照射態様の比較例を示す図
【図8】変形例に係る図6相当図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、例えば車両用の部品として成形された樹脂成型品1の外観を概略的に示している。この樹脂成型品1は、本発明でいう被加工物に相当する。この樹脂成型品1は、例えば図示しない複数の型枠を嵌め合わせることで内部に形成される空洞内に樹脂を射出することで形成されるものであり、従って、型枠を嵌め合わせた部分、つまり、型枠の合わせ目にバリ2が形成され易くなっている。この場合、樹脂成型品1は、全体としてほぼ円柱状に形成されており、その表面部のうち周側面が、滑らかな曲面を有する曲面部1aとなっている。バリ2は、この曲面部1aから突出して形成される。そのため、上記した曲面部1aは、樹脂成型品1の表面部のうちバリ2につながる面部、あるいは、樹脂成型品1の表面部のうちバリ2を起点として当該バリ2から延出する面部と定義付けることができる。
【0015】
この樹脂成型品1には、この場合、例えば品番やロット番号など当該樹脂成型品1に関する情報である被加工物情報が刻印されるマーキング部3、および、図示しない他の部品に電気的に接続される端子としてターミナル4aを有するターミナル部4が設けられている。マーキング部3は、本発明でいう刻印部に相当し、ターミナル部4は、本発明でいう洗浄部に相当する。
【0016】
次に、このように形成された樹脂成型品1をレーザ照射装置から照射するレーザビームによって加工するレーザ加工装置について説明する。図2は、レーザ加工装置10の構成を概略的に示している。
レーザ加工装置10は、レーザ照射装置11と被加工物載置台12とを備える。レーザ照射装置11は、この場合、ファイバレーザ装置で構成されており、詳しい図示は省略するが、例えばLEDなどのレーザ光源から出力される光を光ファイバを介して導出することで、レーザ光線、即ち図に示すレーザビームLを照射する構成である。このレーザ照射装置11は、レーザビームLの照射範囲であるレーザ照射範囲Aを規制するマスクを備えており、図3に矢印A1,B1で示すように、そのレーザ照射範囲A内にてレーザビームLを走査可能に構成されている。また、このレーザ照射装置11は、集光レンズの位置、換言すれば、レーザ光源から集光レンズまでの距離をレーザビームLの照射方向に沿って調整することで、図3に矢印C1,D1で示すように、レーザビームLの焦点位置Pを照射方向に沿って調整可能に構成されている。また、このレーザ照射装置11は、図示しないレーザ照射装置用位置調整機構によって、その位置を前後方向、左右方向、上下方向に3次元的に調整可能に構成されている。
【0017】
被加工物載置台12は、図では下方向となるレーザ照射装置11のレーザ照射方向に設置されており、この被加工物載置台12上に樹脂成型品1が被加工物として載置される。この被加工物載置台12は、図示しない被加工物載置台用位置調整機構によって、その位置を前後方向、左右方向、上下方向に3次元的に調整可能に構成されている。このように、レーザ加工装置10は、レーザ照射装置11および被加工物載置台12の位置をそれぞれ調整可能に構成されており、これにより、レーザ照射装置11から照射されるレーザビームLと被加工物載置台12上に載置された樹脂成型品1との位置関係を調整することができるようになっている。
【0018】
次に、上記した構成のレーザ加工装置10によって実施されるレーザ加工動作、即ち、レーザ加工方法について説明する。このレーザ加工動作は、マーキング工程と、ターミナル洗浄工程と、バリ除去工程とを含む。
マーキング工程では、レーザ照射装置11のレーザ照射範囲A内に、被加工物載置台12上に載置された樹脂成型品1のマーキング部3が含まれるように、当該樹脂成型品1の載置位置、つまり、被加工物載置台12の位置が調整される。また、レーザ照射装置11から照射されるレーザビームLの焦点位置P、つまり、レーザビームLの強度が最も強くなる位置が樹脂成型品1のマーキング部3に合致するように設定、つまり、マーキング部3にジャストフォーカスされる。これにより、図4に示すように、レーザ照射装置11から出力されるレーザビームLは、その焦点位置Pがマーキング部3に合致した状態で照射されるようになり、従って、マーキング部3に被加工物情報を精度良く刻印することができる。
【0019】
ターミナル洗浄工程では、レーザ照射装置11のレーザ照射範囲A内に、樹脂成型品1のターミナル部4が含まれるように当該樹脂成型品1の載置位置、つまり、被加工物載置台12の位置が調整される。また、レーザ照射装置11から照射するレーザビームLの焦点位置Pがターミナル部4よりも近い位置に設定、つまり、レーザ照射装置11側にデフォーカスされる。これにより、図5に示すように、レーザ照射装置11から出力されるレーザビームLは、その焦点位置P、つまり、レーザビームLの強度が最も強くなる位置が、加工対象、即ち、洗浄対象であるターミナル部4からずれた状態で照射されるようになる。これにより、ターミナル部4に照射されるレーザビームLの強度を適度に弱めることができ、ターミナル部4にレーザビームLによるダメージが与えられてしまうことを抑えることができる。また、図5に二点鎖線で示すように、樹脂成型品1、ひいてはターミナル部4がレーザビームLの照射方向に傾いたとしても、ターミナル部4が焦点位置Pから離れるようになり、レーザビームLの焦点位置Pがターミナル部4に接触することがなく、従って、ターミナル部4にレーザビームLによるダメージが与えられることが回避される。
【0020】
バリ除去工程では、レーザ照射装置11のレーザ照射範囲A内に、樹脂成型品1のバリ2および当該バリ2の近傍部分である曲面部1aが含まれるように当該樹脂成型品1の載置位置、つまり、被加工物載置台12の位置が調整される。また、レーザ照射装置11から照射するレーザビームLの焦点位置Pがバリ2よりも遠い位置に設定、つまり、レーザ照射装置11側とは反対側にデフォーカスされる。これにより、図6に示すように、レーザ照射装置11から出力されるレーザビームLは、レーザ照射範囲A内に含まれる樹脂成型品1のバリ2および当該バリ2の近傍部分である曲面部1aに照射され、これにより、バリ2がレーザビームLによって除去されるようになる。
【0021】
このとき、バリ2の周囲の部分に照射されたレーザビームLは、当該照射部分の表面が曲面部1aの表面、つまり、曲面であることから、図6に矢印LXで示すように、その表面部分において乱反射されるようになる。しかも、レーザ照射装置11から照射されるレーザビームLの焦点位置P、つまり、当該レーザビームLの強度が最も強くなる焦点位置Pがバリ2よりも遠い位置に設定されることから、バリ2の周囲の部分に照射されるレーザビームLの強度は適度に弱いものとなる。従って、レーザ照射に伴う樹脂成型品1へのダメージは殆どあるいは全くない。
【0022】
なお、バリ除去工程におけるレーザビームLの焦点位置Pをデフォーカス、つまり、バリ2よりも遠い位置に設定する理由は次に示す通りである。即ち、図7に示すように、バリ2および当該バリ2の周囲の部分である曲面部1aにレーザビームLを照射するバリ除去工程において、そのレーザビームLの焦点位置Pをバリ2よりも近い位置に設定、つまり、レーザ照射装置11側にデフォーカスすると、曲面部1aの表面において、レーザビームLの焦点位置PがジャストフォーカスされてしまうポイントPXが生じてしまい、当該ポイントPXにて樹脂成型品1がレーザビームLによるダメージを受けてしまうようになる。そのため、加工対象であるバリ2以外の部分、この場合、曲面部1aにもレーザビームLを照射するバリ除去工程においては、上記のようなポイントPXの発生を回避すべく、レーザビームLの焦点位置Pを加工対象であるバリ2よりも遠い位置に設定するのである。
【0023】
以上に説明したように本実施形態によれば、レーザ照射装置11から出力されたレーザビームLを、樹脂成型品1のバリ2のみに照射するのではなく当該バリ2の周囲の部分、つまり、バリ2の近傍部分にも照射するようにしたので、レーザ照射装置11から出力されたレーザビームLを確実にバリ2に照射することができ、樹脂成型品1からバリ2を除去することを精度良く行うことができる。
【0024】
ここで、樹脂成型品1におけるバリ2の周囲の部分、つまり、曲面部1aのうちバリ2の近傍部分にもレーザビームLが照射されることから、当該照射部分がレーザビームLによるダメージを受けることが懸念されるが、上述したように、バリ2の周囲の部分に照射されたレーザビームLは、当該照射部分の表面が曲面部1aの表面、つまり、曲面であることから、その表面部分において乱反射されるようになる。しかも、レーザ照射装置11から照射されるレーザビームLの焦点位置P、つまり、当該レーザビームLの強度が最も強くなる焦点位置Pがバリ2よりも遠い位置、つまり、バリ2からずれた位置に設定されることから、バリ2の周囲の部分に照射されるレーザビームLの強度を適度に弱くすることができる。これにより、レーザ照射に伴う樹脂成型品1へのダメージを殆どあるいは全くなくすことができる。
【0025】
このように、レーザ加工を施す樹脂成型品1の曲面形状を利用してバリ2以外の部分ではレーザビームLを乱反射させるとともに、レーザビームLの焦点位置Pを調整することによってバリ2以外の部分におけるレーザビームLの強度を適度に弱めるようにした。これにより、当該樹脂成型品1にレーザビームLによるダメージを殆どあるいは全く与えることなく精度良くバリを除去することができる。
また、レーザ照射装置11は、樹脂成型品1のバリ2と当該バリ2の近傍部分である曲面部1aが含まれるレーザ照射範囲A内にてレーザビームLを走査させるので、当該レーザ照射範囲Aの全体にわたってレーザビームLをきめ細かく照射することができ、一層精度良くバリを除去することができる。
【0026】
また、上述したバリ除去工程を含むレーザ加工方法によれば、樹脂成型品1にレーザビームLによるダメージを殆どあるいは全く与えることなく精度良くバリを除去することができる。しかも、レーザ照射装置11から照射するレーザビームLによって樹脂成型品1のマーキング部3に被加工物情報を刻印するマーキング工程と、レーザ照射装置11から照射するレーザビームLによって樹脂成型品1のターミナル部4を洗浄する洗浄工程と、上述したバリ除去工程とを含む一連のレーザ加工動作を、1つのレーザ照射装置11を用いて実行することができる。
【0027】
さらに、本実施形態においては、各工程においてレーザ照射装置11から照射するレーザビームLの焦点位置PをレーザビームLの照射方向に沿って変更しながら、および/または、各工程において樹脂成型品1の載置位置を変更しながら一連のレーザ加工動作を実行することができる。
即ち、マーキング工程では、レーザ照射装置11から照射するレーザビームLの焦点位置Pが樹脂成型品1のマーキング部3に設定される。つまり、マーキング工程では、レーザビームLの焦点位置Pが樹脂成型品1のマーキング部3にジャストフォーカスされ、これにより、極力強い強度のレーザビームLによって被加工物情報を刻印することができる。また、洗浄工程では、レーザ照射装置11から照射するレーザビームLの焦点位置Pがターミナル部4よりも近い位置に設定され、バリ除去工程では、レーザ照射装置11から照射するレーザビームLの焦点位置Pがバリ2よりも遠い位置に設定される。つまり、洗浄工程ではレーザビームLの焦点位置Pがターミナル部4からデフォーカスされ、バリ除去工程ではレーザビームLの焦点位置Pがバリ2からデフォーカスされ、これにより、各工程に適した強度のレーザビームLによってターミナル部4の洗浄およびバリ2の除去を行うことができ、レーザビームLによる樹脂成型品1へのダメージを抑えることができる。
【0028】
なお、この場合、洗浄工程におけるレーザビームLの焦点位置Pとバリ除去工程におけるレーザビームLの焦点位置Pとは、レーザビームLの照射方向において加工対象を挟んで相互に逆側に設定される。即ち、洗浄工程では、レーザビームLの焦点位置Pは、洗浄対象であるターミナル部4を加工対象として当該ターミナル部4よりも近い側に設定される。これに対して、バリ除去工程では、除去対象であるバリ2を加工対象として当該バリ2よりも遠い側に設定される。これにより、各工程に適した強度のレーザビームLによって樹脂成型品1のレーザ加工、この場合、刻印、洗浄、バリ除去からなるレーザ加工を行うことができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、マーキング工程では、レーザ照射装置11のレーザ照射範囲A内にマーキング部3が含まれるように樹脂成型品1の載置位置を調整され、これにより、レーザビームLによってマーキング部3に精度良く被加工物情報を刻印することができる。洗浄工程では、レーザ照射装置11のレーザ照射範囲A内にターミナル部4が含まれるように樹脂成型品1の載置位置が調整され、これにより、レーザビームLによってターミナル部4を効率良く洗浄することができる。また、バリ除去工程では、レーザ照射装置11のレーザ照射範囲A内にバリ2および曲面部1aが含まれるように樹脂成型品1の載置位置が調整され、これにより、樹脂成型品1にレーザビームLによるダメージを殆ど与えることなく精度良くバリを除去することができる。このように、各工程におけるレーザ加工を精度良く効率良く行うことができる。
【0030】
なお、本発明は、上述した一実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能であり、例えば、以下のように変形または拡張することができる。
レーザ照射装置11は、ファイバレーザ装置に限られるものではなく、例えば、エキシマレーザ装置などで構成してもよい。
被加工物は、樹脂成型品1に限られるものではなく、例えば金属成型品などであってもよい。要は、成形に伴いバリが形成される物品であれば種々の物品を採用することができる。
【0031】
例えば図8に示すように、バリ2が樹脂成型品1の表面部である傾斜面部1bに形成されている場合には、当該傾斜面部1bがレーザ照射装置11から出力されるレーザビームLの照射方向に対して傾斜するように樹脂成型品1を載置することで、当該傾斜面部1bに照射されたレーザビームLがその傾斜面部1bの表面部分において乱反射されるようになる。このように、バリ2が樹脂成型品1の傾斜面部1bに形成されている場合においても、当該樹脂成型品1にレーザビームLによるダメージを殆どあるいは全く与えることなく精度良くバリを除去することができる。なお、この場合も、バリ2は、樹脂成型品1の傾斜面部1bから突出して形成される。そのため、上記した傾斜面部1bは、樹脂成型品1の表面部のうちバリ2につながる面部、あるいは、樹脂成型品1の表面部のうちバリ2を起点として当該バリ2から延出する面部と定義付けることができる。
【0032】
例えば自動車などの部品には、パッキンを取り付けるなどしてシール性が要求される部品がある。このようなシール性が要求される部品において、バリが残存していたり、あるいは、部品に焼損や劣化などのダメージが与えられていたりすると、適切なシール性を確保することが困難となる。本発明は、部品に殆どあるいは全くダメージを与えることなく精度良くバリを除去できるものであることから、このようにシール性が要求される部品からバリを除去する場合に特に有効である。
【符号の説明】
【0033】
図面中、1は樹脂成型品(被加工物)、1aは曲面部(表面部)、1bは傾斜面部(表面部)、2はバリ、3はマーキング部(刻印部)、4はターミナル部(洗浄部)、11はレーザ照射装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物(1)の表面部(1a,1b)に形成されたバリ(2)をレーザ照射装置(11)から照射するレーザビーム(L)によって除去するバリ除去方法であって、
前記レーザ照射装置(11)のレーザ照射範囲(A)内に前記バリ(2)および前記表面部(1a,1b)が含まれるように前記被加工物(1)を載置するとともに、前記レーザ照射装置(11)から照射するレーザビーム(L)の焦点位置(P)を前記バリ(2)よりも遠い位置に設定し、前記バリ(2)および前記表面部(1a,1b)に対して前記レーザ照射装置(11)からレーザビーム(L)を照射することを特徴とするバリ除去方法。
【請求項2】
前記被加工物(1)の表面部は、曲面部(1a)または傾斜面部(1b)であることを特徴とする請求項1に記載のバリ除去方法。
【請求項3】
前記レーザ照射装置(11)は、前記レーザ照射範囲(A)内にてレーザビーム(L)を走査させることを特徴とする請求項1または2に記載のバリ除去方法。
【請求項4】
刻印部(3)および洗浄部(4)を有し表面部(1a,1b)にバリ(2)が形成される被加工物(1)をレーザ照射装置(11)から照射するレーザビーム(L)によって加工するレーザ加工方法であって、
前記レーザ照射装置(11)から照射するレーザビーム(L)によって前記刻印部(3)に前記被加工物(1)に関する被加工物情報を刻印するマーキング工程と、
前記レーザ照射装置(11)から照射するレーザビーム(L)によって前記洗浄部(4)を洗浄する洗浄工程と、
請求項1から3の何れか1項に記載のバリ除去方法によって前記被加工物(1)から前記バリ(2)を除去するバリ除去工程と、
を行うことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項5】
前記マーキング工程では、前記レーザ照射装置(11)から照射するレーザビーム(L)の焦点位置(P)を前記刻印部(3)に設定し、
前記洗浄工程では、前記レーザ照射装置(11)から照射するレーザビーム(L)の焦点位置(P)を前記洗浄部(4)よりも近い位置に設定し、
前記バリ除去工程では、前記レーザ照射装置(11)から照射するレーザビーム(L)の焦点位置(P)を前記バリ(2)よりも遠い位置に設定することを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記マーキング工程では、前記レーザ照射装置(11)のレーザ照射範囲(A)内に前記刻印部(3)が含まれるように前記被加工物(1)の載置位置を調整し、
前記洗浄工程では、前記レーザ照射装置(11)のレーザ照射範囲(A)内に前記洗浄部(4)が含まれるように前記被加工物(1)の載置位置を調整し、
前記バリ除去工程では、前記レーザ照射装置(11)のレーザ照射範囲(A)内に前記バリ(2)および前記表面部(1a,1b)が含まれるように前記被加工物(1)の載置位置を調整することを特徴とする請求項4または5に記載のレーザ加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−14088(P2013−14088A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149125(P2011−149125)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】