説明

バルガンシクロビルの粉末製剤

本発明は、水中で構成化した後の経口投与のためのバルガンシクロビル塩酸塩の新規な固体医薬剤形を提供する。これらの新規な医薬剤形は、単純ヘルペスウイルスおよびサイトメガロウイルスのようなウイルスの処置または制御に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で構成化した後の経口投与のためのバルガンシクロビル塩酸塩の新規な固体医薬剤形を提供する。
【0002】
バルガンシクロビル塩酸塩は、後天性免疫不全症候群(AIDS)患者のサイトメガロウイルス(CMV)網膜炎の処置ならびに腎臓、心臓、および腎膵移植におけるCMV疾患の予防のために認可された強力な抗ウイルス剤である。バルガンシクロビル塩酸塩はガンシクロビルのL−モノバリンエステルであり、吸収の改善された、ガンシクロビルの安定なプロドラッグである。このような特性は特に、経口投与が治療上好ましい選択枝である、免疫不全患者におけるヘルペス感染の抑制にとって価値がある。バルガンシクロビル塩酸塩は米国特許第6083953号に詳説されている。
【0003】
固体状態においてバルガンシクロビル塩酸塩は、周囲条件下に保存した場合、容認できる物理的、化学的、および光安定性を示す。過度の湿気を避けねばならない事以外には、特段の保存要件を必要としない。バルガンシクロビル塩酸塩の小児科用調製物および用量の柔軟性を必要とする患者のための製剤を調合する最初の試みは、経口用液体製品の開発に焦点が絞られた。しかしながら、短期安定性データは、液体剤形はこの製品の期待される保存期間内に不安定となることを示した。
【0004】
小児患者および用量の柔軟性を必要とする患者を処置するためのバルガンシクロビル塩酸塩の適切な剤形を調合するための最初の試みは、経口用液体製品の開発に焦点が絞られた。短期安定性データは、液体剤形はこの製品の期待される保存期間内に不安定となることを示した。故に、バルガンシクロビル塩酸塩の妥当な保存期間およびもたらされる(構成化された)液体剤形を提供するために、後に水で構成化するための粉末剤形に努力の焦点が絞られた。粉末剤形の安定性プロファイルおよび製造可能性ならびに構成化された液体剤形の安定性プロファイルを改善するため、製剤化方法が、乾式混合造粒から湿式混合造粒に変更された。
【0005】
バルガンシクロビル塩酸塩は酸性条件下で易溶性であるため、固体医薬剤形は、もたらされる(構成化された)液体剤形の提唱される保存期間の間、所定量の水の中でバルガンシクロビル塩酸塩を可溶化および安定化させるに充分な量で存在する有機酸を含有せねばならない。吸湿性有機酸は固体バルガンシクロビル塩酸塩の医薬剤形を分解することが見いだされた。
【0006】
故に、本発明の目的は、小児科使用のための、そして用量の柔軟性を必要とする患者のための、バルガンシクロビル塩酸塩製剤を提供することである。
【0007】
水中で構成化した後の経口投与のためのバルガンシクロビル塩酸塩の固体医薬剤形によってこの目的に到達できる。
【0008】
本発明は、(a)治療有効量のバルガンシクロビル塩酸塩;および(b)所定量の水の中でバルガンシクロビル塩酸塩を安定化させるに充分な量で存在する非吸湿性有機酸、を含む、水中で構成化した後の経口投与のための固体医薬剤形を提供する。
【0009】
さらに本発明は、(a)治療有効量のバルガンシクロビル塩酸塩;(b)所定量の水;および(c)その所定量の水の中でバルガンシクロビル塩酸塩を安定化させるに充分な量で存在する非吸湿性有機酸、を含む、経口投与のための液体医薬剤形を提供する。
【0010】
さらに本発明は、単純ヘルペスまたはサイトメガロウイルス媒介疾患の治療に使用するための、固体または液体剤形を提供する。
【0011】
さらに本発明は、(a)治療有効量のバルガンシクロビル塩酸塩;および(b)所定量の水の中でバルガンシクロビル塩酸塩を安定化させるに充分な量で存在する非吸湿性有機酸、を混合することを含む、水中で構成化した後の経口投与のための固体医薬剤形を製造する方法を提供する。
【0012】
この、水中で構成化した後の経口投与のための固体医薬剤形は、患者に適切な用量レベルを提供できるという利点を持つ。例えば、バルガンシクロビル塩酸塩が経口投与用450mg錠剤で入手可能である一方で、液体剤形は広範囲の濃度レベルに調製できる。好ましい液体剤形は、広範囲の用量レベルを提供するために50mg/mLで調製し、小児患者および用量の柔軟性を必要とする患者を処置することができる。この液体剤形の容器は、適切な用量レベルを含有する適切な量の液体を投薬するための目盛り付きディスペンサーで提供されてもよい。
【0013】
本明細書で使用する以下の用語は、所定の意義を有する:
【0014】
「非吸湿性増量剤の有効量」という語は、本発明に係る固体医薬剤形の製造を容易にするに充分な非吸湿性増量剤の量を意味する。非吸湿性増量剤の存在は任意であるが、この非吸湿性増量剤の包含は、固体医薬剤形の製造工程をより容易とし、また、最終生成物に所望の嵩および甘味を与えることができる。
【0015】
「疾患」という語は特に、本明細書に定義される患者の任意の不健康な状態を包含する。したがって、本明細書における「疾患」は、バルガンシクロビル塩酸塩またはその薬学的に許容される塩で治療可能な任意のウイルス性または関連疾患を包含する。
【0016】
「水中でバルガンシクロビル塩酸塩を安定化させる量で存在する非吸湿性有機酸」という語は、バルガンシクロビル塩酸塩の液体医薬剤形のpHを低下させ、それにより所定量の水の中でバルガンシクロビル塩酸塩を安定化させるのに必要な量の非吸湿性有機酸を意味する。
【0017】
薬学的に許容される担体、賦形剤などのような「薬学的に許容される」という語は、特定の化合物が投与される量において、対象にとって薬理学的に許容でき且つ実質的に非毒性であることを意味する。
【0018】
「所定量の水」という語は、本発明に係る固体医薬剤形を経口投与のための液体医薬剤形に構成化するための、所望量の水を意味する。この水の量は水溶液中のバルガンシクロビル塩酸塩の所望濃度に応じて大きく異なり得る。水溶液中のバルガンシクロビル塩酸塩の所望濃度は、処置される特定の対象、処置される疾患、処置期間などのような因子に依存し得る。
【0019】
「対象」という語は、ヒト、ヒト以外の哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、およびシカ)および鳥類、魚類などのような非哺乳動物を包含する。好ましくは対象はヒトまたはヒト以外の哺乳動物であり、より好ましくは対象はヒトである。
【0020】
バルガンシクロビル塩酸塩に関する「治療有効量」という語は、それを必要とする対象に投与した時に疾患の症状を治療、予防、緩和または改善する効果がある、当該化合物またはその薬学的に許容される塩の量を意味する。
【0021】
「処置」という語は、対象における疾患の任意の処置を意味し、(1)疾患に罹患し易いがその疾患の症状をまだ経験していない、または発現していない対象において、その疾患が発症することを防止すること、例えば、臨床症状の発現の防止;(2)疾患を阻害する、例えばその進展を停止させること;または(3)疾患を軽減する、例えば、疾患の症状の退縮を惹起すること、を包含する。
【0022】
バルガンシクロビル塩酸塩(バルガンシクロビルHCl、バルサイト(登録商標))は、二つのジアステレオマーの混合物として存在する、ガンシクロビルのL−バリルエステル(プロドラッグ)の塩酸塩である。経口投与後、両ジアステレオマーは腸管および肝臓のエステラーゼにより速やかにガンシクロビルに変換される。ガンシクロビルは2’−デオキシグアノシンの合成類似体であり、インビトロおよびインビボでヒトサイトメガロウイルスの複製を阻害する。ガンシクロビルは、後天性免疫不全症候群(AIDS)患者のサイトメガロウイルス(CMV)網膜炎の処置ならびに腎臓、心臓、および腎膵移植におけるCMV疾患予防のために認可されている。バルガンシクロビル塩酸塩は、経口投与用450mg錠剤として入手できる。各々の錠剤は、バルガンシクロビル塩酸塩496.3mg(バルガンシクロビル450mgに相当)ならびに不活性成分である微結晶性セルロース、ポビドンK−30、クロスポビドンおよびステアリン酸を含有している。この錠剤に施されているフィルムコートはOpadry(登録商標) Pinkを含有する。
【0023】
バルガンシクロビル塩酸塩は、分子式C1422・HClおよび分子量390.83を有する白色ないしオフホワイト色の結晶性粉末である。バルガンシクロビル塩酸塩の化学名は、L−バリン,2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]−3−ヒドロキシプロピルエステル,モノヒドロクロリドである。バルガンシクロビル塩酸塩の化学構造を下に示す:
【0024】
水溶液中でのバルガンシクロビル塩酸塩(活性な薬用成分、API)の溶解度はpH依存性である。バルガンシクロビル塩酸塩は、25℃、pH7.0における水への溶解度70mg/mLおよびpH7.0におけるn−オクタノール/水の分配係数0.0095を有する極性親水性化合物である。バルガンシクロビル塩酸塩のpKaは7.6である。バルガンシクロビル塩酸塩は酸性条件で溶けやすく、その最大溶解度はpH4〜6の範囲において200mg/mLより大である。バルガンシクロビル塩酸塩の安定性はpH<3.8で最大である。
【0025】
バルガンシクロビル塩酸塩は二つの結晶型(XおよびYと称する)およびアモルファス型のうちの一つで存在し得る。バルガンシクロビル塩酸塩の商業的製造工程はY型のみを生成する。Y型は経口溶液用粉末の製造に関与する様々な薬学的工程に対して安定である。製剤開発、臨床用、安定性および登録バッチの製造に使用されるバルガンシクロビル塩酸塩のロットは全てY型であった。最終的な製剤は液体であるため、本発明の目的のために、バルガンシクロビル塩酸塩の任意の多形またはアモルファス型を利用できる。任意のジアステレオマーまたはジアステレオマー混合物もまた使用できる。
【0026】
バルガンシクロビル塩酸塩は中等度に吸湿性であり、バルガンシクロビル塩酸塩が中等度の相対湿度に暴露された場合、観察される水分の変化は僅かである。バルガンシクロビル塩酸塩が80%の相対湿度(総水分が最大およそ8%)に暴露された場合には、およそ3%の重量増加が起こる。これは可逆的に吸湿性であり、バルガンシクロビル塩酸塩の含水量および相対湿度に応じて、周囲の湿度条件の下で水分を吸収したり放出したりする。
【0027】
本発明に係るバルガンシクロビルの治療有効量または用量レベルは広範囲に変化し得る。バルガンシクロビル塩酸塩は経口投与用450mg錠剤として入手可能であるが、小児患者および用量の柔軟性を必要とする患者に提供するために、液体医薬剤形に構成化可能な固体医薬剤形を様々な濃度レベルで製造することができる。固体/液体剤形用の容器は、適切な用量レベルを含有する適切な量の液体を投薬するための目盛り付きディスペンサーで提供できる。このような用量レベルは、処置される患者および状態に関してそれぞれ特定の症例における個々の要件に合わせて調節できる。
【0028】
一般に、固体医薬剤形中に存在するバルガンシクロビル塩酸塩の量は、総組成物重量の約10%〜約90%、好ましくは約25%〜約75%、より好ましくは約35%〜約60%の範囲であってよく、最も好ましくは約46%であってよい。
【0029】
一般に、所定量の水を用いて固体医薬剤形から構成化され得る液体医薬剤形は、約10mg/mL〜約90mg/mL、好ましくは約25mg/mL〜約75mg/mL、より好ましくは約35mg/mL〜約65mg/mL、最も好ましくは約50mg/mLのバルガンシクロビル(遊離塩基)濃度レベルで製造できる。
【0030】
本発明における非吸湿性有機酸は、多岐にわたる非吸湿性有機酸から選択できる。上に開示したように、吸湿性有機酸は固体バルガンシクロビル塩酸塩の医薬剤形を分解する。非吸湿性有機酸は約60〜75%相対湿度の周囲温度で1%(重量)未満の水分を吸収する。
【0031】
或る態様では、非吸湿性有機酸はアミノ酸、好ましくはさらなるカルボン酸官能基を有するアミノ酸、例えばグルタミン酸またはアジピン酸である。
【0032】
別の態様では、非吸湿性有機酸は、フマル酸、コハク酸、アジピン酸より成る群から選ばれる。好ましくはこの非吸湿性有機酸はフマル酸またはコハク酸である。より好ましくは、非吸湿性有機酸はフマル酸である。
【0033】
非吸湿性有機酸は、固体医薬剤形中のバルガンシクロビル塩酸塩を安定化するに充分な量で存在する。バルガンシクロビル塩酸塩は25℃pH7.0において70mg/mLの水溶性を持ち、酸性条件下で溶けやすく、pH4〜6の範囲では最大溶解度が200mg/mLより大である。一般に、この非吸湿性有機酸の量は、構成化されたバルガンシクロビル塩酸塩溶液のpHをpH<3.8に低下させ、最も好ましくはpH3.0に低下させる。
【0034】
固体医薬剤形は、場合により有効量の非吸湿性増量剤を含有してもよい。上に開示したように、吸湿性増量剤は固体医薬剤形中のバルガンシクロビル塩酸塩を分解する。非吸湿性増量剤の存在は、固体医薬剤形の製造工程をより容易とし、また、最終生成物に所望の嵩および甘味を与えることができる。本発明における非吸湿性増量剤は多岐にわたる非吸湿性増量剤から選択できる。非吸湿性増量剤は約60〜75%相対湿度の周囲温度で1%(重量)未満の水分を吸収する。一般に非吸湿性増量剤は、マンニトールおよび乳糖より成る群から選ばれる。好ましくは非吸湿性増量剤はマンニトールである。
【0035】
非吸湿性増量剤は、固体医薬剤形中に、総組成物重量の約10%〜約90%、好ましくは約30%〜約70%、より好ましくは約40%〜約60%の量で存在し得る。
【0036】
本発明の好ましい態様を表1に開示する。この経口投与用固体医薬剤形は粉末であり、これを所定量の精製水で構成化し、液体医薬剤形を得る。瓶には、経口投与のための溶液に構成化するための計12gの粉末中バルガンシクロビル塩酸塩約5.515gが入っている。構成化された時、溶液の体積は100mLである。構成化された溶液1mL量はバルガンシクロビル遊離塩基50mgに相当するバルガンシクロビル塩酸塩55.15mgを含有する。構成化された溶液中の、遊離塩基としてのバルガンシクロビル濃度は5.0%である。バルガンシクロビル塩酸塩および賦形剤は、この水性媒質に溶解する。粉末混合物は、湿式造粒を包含する常套的薬学工程により製造されうる。この生成物は、好ましくは小児用安全プラスチックねじ蓋付きのアンバーガラス瓶に入れて市販される。
【0037】
【表1】

【0038】
本発明に係る医薬剤形は、下に開示する実施例に従って製造できる。実施例は本発明に係る化合物および組成物の製造を実証する目的のために供するものであって、これを限定する目的ではない。
【実施例】
【0039】
本発明に従い、固体および液体医薬剤形を例示するために以下の実施例を供する。
【0040】
実施例1
I型およびII型のバルガンシクロビル塩酸塩製剤の比較を下の表2に開示する。
【0041】
【表2】

【0042】
I型製剤:
以下の賦形剤を使用してI型の製剤を製造した。無水クエン酸をクエン酸ナトリウムと合して酸性pHを確保するための緩衝系を形成させた。バルガンシクロビルは約3.8以下のpH値で水溶液中最大の安定性を示すため、この酸性pHはバルガンシクロビルの安定化を助ける。安息香酸ナトリウムを保存剤として、そしてサッカリンナトリウムを人工甘味料として使用した。増量剤(希釈剤)として、そして望ましい口内感覚および甘味を提供するため、結晶性二糖炭水化物であるマルトースを使用した。イチゴ香料をこの経口溶液の香料として使用した。
【0043】
I型製剤J05の製造に以下の方法を用いた。工程1では、クエン酸ナトリウムおよびサッカリンナトリウムを別々に篩過し、ミキサー中で結晶性マルトースの一部とブレンドした。工程2では、工程1由来の混合物を、粉砕した無水クエン酸および結晶性マルトースの別の一部、およびイチゴ香料とブレンドした。工程3では、ブレンドした材料を篩過し、篩過した安息香酸ナトリウムおよび一部の結晶性マルトースとブレンドした。工程4では、結晶性マルトースの残りとバルガンシクロビル塩酸塩を工程2由来のブレンド材料とブレンドし、次いでこのブレンド材料を篩過した。工程3由来のブレンド材料を工程4由来の篩過した材料2層で挟み、混合して最終混合物とした。最終混合物15g量を各瓶に充填し、指定の密閉手段で蓋をした。
【0044】
実施例2
II型製剤:
I型からII型へ、およびII型の中で製剤を変更する理由は、固体医薬剤形および構成化された経口投与用液体医薬剤形の安定性プロファイルを改善するためであった。I型およびII型製剤の違いを下に開示する。
【0045】
I型製剤では分解が観察され、これは、固体医薬剤形におけるバルガンシクロビル塩酸塩/クエン酸相互作用が原因であった。クエン酸は吸湿性有機酸であり、固体剤形中のバルガンシクロビル塩酸塩を分解すると思われる。よってII型製剤では、より吸湿性の低い有機酸であるフマル酸をクエン酸/クエン酸ナトリウムに代えて選択した。
【0046】
I型製剤においてさらに分解が観察され、それは、構成化された経口投与用液体医薬剤形におけるバルガンシクロビル塩酸塩/マルトース相互作用が原因であった。マルトースは液体剤形中のバルガンシクロビル塩酸塩を分解すると思われる。マルトースを多価アルコールであるマンニトールに置き換え、その結果バルガンシクロビル塩酸塩の分解は起こらなかった。製造工程を乾式混合から湿式造粒工程に変更するため、ポピドンK30(ポリビニルピロリドン)を結合剤として、そして水を造粒液として添加した。湿式造粒工程の導入は、II型製剤の充填混合物の流動性をかなり増大させた。提案された市販製剤において、イチゴ香料をトゥッティフルッティ香料に代えた。ひと瓶あたりの総粉末重量を、製剤J05(I型)の15.00gから製剤F01−03(II型)の14.40gに変更した。したがって製剤F01−02(II型)の提案された市販製剤の重量は12.00gに減少し、振盪して構成化を達成するための瓶内部ヘッドスペースがより大きくなった。
【0047】
実施例3
II型製剤の製造工程
臨床用I型製剤のために製造されたバッチは当初乾式粉末混合に基づいていた。異なる賦形剤を用いて再調合すると、最終粉末混合物の流動性が、適切な挙動には不充分であることが判明した。湿式造粒を用いることにより、この最終粉末の流動性はかなり改善した。市販のバルガンシクロビル450mg錠剤は結合剤としてポビドンK30を用いた水性湿式造粒工程を利用するため、この工程が、所定量の水による構成化のための固体医薬剤形製造の基礎となった。
【0048】
この工程では、活性物質を、前もってポビドンK30、フマル酸、およびマンニトールとブレンドする。安息香酸ナトリウムおよびサッカリンナトリウムは、造粒液の役割を果たす精製水に溶解した。高剪断ミキサー中で造粒を実施する。最終ブレンドの間に乾燥且つ粉砕した顆粒に香料を添加して、充填混合物を形成させる。開発工程の変数には、結合剤の有無およびその添加順序ならびに安息香酸ナトリウムおよびサッカリンナトリウムの添加順序が包含された。
【0049】
この造粒は結合剤なしでは非常に脆弱で、粉砕により過剰量の微粉が生成した。結合剤(ポピドンK30)を造粒溶液として添加するのと乾燥状態で添加するのとでは相違はなかった。加工を容易にするため、ポピドンK30は乾燥状態で加えた。
【0050】
安息香酸ナトリウムおよびサッカリンナトリウムを、乾燥粉末として最終粉砕顆粒に加え、また、造粒工程前に精製水に溶解した。安息香酸ナトリウムおよびその含量均一性についての化学分析は、溶液中への保存剤の配合および高剪断ミキサーによる粉末の造粒が、この保存剤の%RSD(相対標準偏差)<2%をもたらすことを示した。最終粉末混合物に乾燥安息香酸ナトリウムを添加したところ、容認できないばらつきを産んだ。安息香酸ナトリウムを全て定量的に移動させることを確実にするため、精製水の一部で造粒溶液の容器を完全にすすぐことが重要である。
【0051】
実施例4
安定性バッチ
I型およびII型製剤の代表ロットの安定性データを表3(構成化用粉末)および表4(構成化された溶液)に示す。II型の粉末およびII型の構成化された溶液は、バルガンシクロビルの回収および総不純物量の点で、より良い安定性プロファイルを示す。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
工程の最適化
構成化用バルガンシクロビル粉末のデモンストレーションバッチを2個準備した。第一のデモンストレーションバッチ(シリーズ1)は5kgスケールで製造工程を評価するために製造した。このバッチは瓶に手動充填した。本バッチ製造中、大きな問題は見られなかった。第二のデモンストレーションバッチ(シリーズ2)は、17.25kgスケールで製造工程を評価するために製造した。第二バッチの焦点は、機械的瓶充填工程を評価することであった。このデモンストレーションバッチの造粒、乾燥およびブレンド工程は成功裏に遂行された。オーガー充填機を利用する粉末充填の試行は成功であった。瓶充填重量は、全実験を通じて常に問題なく維持された。
【0055】
バルガンシクロビル粉末製造工程の最適化(バッチサイズ30kg)は、乾式混合、造粒溶液添加、湿式造粒、湿式粉砕、流動床乾燥、乾式粉砕、ブレンドおよび瓶充填で構成されていた。構成化用バルガンシクロビル粉末の各製造工程のパラメータを最適化するため、合計9個の開発バッチを生産規模で製造した。
【0056】
製造工程
バルガンシクロビル塩酸塩、マンニトール(Parteck M200)、ポビドンK300、およびフマル酸を高剪断ミキサー/造粒機に入れ、乾式混合した。乾式混合の後、造粒溶液をこの高剪断造粒機に添加した。造粒溶液は、安息香酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、および精製水で構成され、乾式混合工程の開始前に準備した。最終生成物への安息香酸ナトリウムの100%回収を確保するため、造粒溶液を全て移すことが重要である。材料の流れを改善するため、造粒機からフィッツミルを通過させて湿潤造粒物を粉砕し、流動床乾燥機に移した。湿潤造粒物を粉砕した場合としなかった場合の比較を行った。乾燥機からフィッツミルを通過させて乾燥造粒物を粉砕した。次いでこの造粒物を、予混合した香料とブレンドした。香料を予混合した場合と香料を混合物に直接添加した場合の比較を行った。次に粉末混合物を瓶に充填し包装した。製造工程中の材料の添加および移動は真空供給システムによって遂行した。
【0057】
開発事業中に以下の工程パラメータを監視および評価した。
乾式混合造粒(混合物の粒子径分布);
造粒終点(時間、Kw、視認)までの湿式造粒[造粒溶液中の水の体積、溶液の添加速度(182〜558g/分)];
(c)流動床乾燥、[乾燥終点(LOD)]
速度1000〜4500rpmでの乾式粉砕;
最終ブレンド[最終ブレンド時間(香料の添加)、5〜15分間、用量単位の均一性、活性薬用成分および保存剤のアッセイ、篩過分析、嵩密度およびタップ密度];
瓶充填(オーガー速度、400〜800rpm);
(g)流動性測定;嵩密度測定による充填特性の評価によって粉末の流れを評価した。乾式粉砕、最終ブレンドおよび瓶充填試料の流動性を評価するためにカール指数(CI)を使用し、それは以下の式を用いて算出した:
【0058】
CI=(タップ密度−嵩密度x100)/タップ密度
乾式粉砕試料のCI値は12.66〜39.19の範囲であった。
【0059】
乾式粉砕では異なった粒子サイズ分布プロファイルが全てのバッチで観察された。これらの結果は、造粒工程が各バッチで異なっていたことが原因である(即ち、造粒溶液の体積、添加時間、デリバリー速度、供給速度、排出速度、等)。
【0060】
所見:
バッチ#303および#493の最終ブレンドの粒子サイズ分布プロファイルは、第二デモンストレーションバッチの篩過分析データと良く一致した。第二デモンストレーションバッチと比較してバッチ#303および#493には、細かい粒子(<75μ)がやや多かった。造粒溶液に利用した水は、両バッチについて2.7〜3.45kgの範囲であった。造粒溶液の添加時間は4〜5.5分間の範囲であった。湿塊時間は1.5〜2分間であった。サンプルポート試料の乾燥終点(LOD)は1.8〜2.13%の範囲であった。
【0061】
最終ブレンド試料のCI値は17.44〜33.80の範囲であり、この流動挙動がまずまずないし極めて劣悪であることを示していた。より大量の250μサイズの粒子を含むバッチ#283、#293、および#473は、より大量の微粒子を含むバッチより良好な流動性を示した。
【0062】
バッチ内では、バッチ#283または#293の瓶充填試料について、開始時、中程または最後の流れに有意差はなかった。両バッチ間の流動性に僅かな相違が観察された。CI値は19.10〜24.18の範囲であり、これはまずまずの流動性を示すものである。
【0063】
分析アッセイ結果
全てのバッチは、許容基準である5.0%より低い%RSD(相対標準偏差)値の、許容できる含量均一性を有していた。
【0064】
バッチ#293の安息香酸ナトリウムについての平均分析アッセイ値は85.5%であり、これは許容基準内であった。安息香酸ナトリウム容器の水洗いはこのバッチでは行わなかったが、これは安息香酸ナトリウムの損失を招くかもしれない。故に、安息香酸ナトリウムの完全な移動を確実とするためにはすすぎ工程が必要である。
【0065】
バッチ#303および#323は、造粒溶液製造のために水1.7kgを使用した。生産された両バッチは低レベルの安息香酸ナトリウムを有していた。これは、安息香酸ナトリウムを溶解するための水の量が不充分であった事に起因したかも知れない。したがって、全ての安息香酸ナトリウムが溶液中にあることを確実にするためには、より大量の水が必要であろう。
【0066】
バッチ#333に対するブレンド時間研究は、安息香酸ナトリウムおよびバルガンシクロビルが、調査された全ての時点(5、7.5および10分)で良好な含量均一性を示すことを示した。しかしながらバッチ#493のブレンド時間データは、バルガンシクロビルは5および10分においてより良好な含量均一性を、一方安息香酸ナトリウムは7.5および10分においてより良い含量均一性を有することを示した。これらのデータに基づき、バルガンシクロビルおよび安息香酸ナトリウムの両者について良好な含量均一性の達成を確保するため、ブレンド時間10分間を選択した。バッチ#283中の香料予混合は、製品の香料含量均一性に有意な改善をもたらさなかった。故に、香料予混合工程は最終工程に含まれないであろう。瓶充填はAll-Fill Servometer充填機を用いて達成した。
【0067】
全体として、物理的および分析データは全バッチについて許容できるものであった。600rpmのオーガー速度で瓶に充填した場合、バッチ#323において最終粉末混合物に、より大きな重量の変動が観察された。故に、この充填工程にはオーガー速度450rpmを選択した。
【0068】
登録バッチのための製造工程推奨
乾式混合法のためには、マンニトール(Parteck M200)、ポビドンK30、フマル酸粉末、およびバルガンシクロビル塩酸塩をPMA65造粒機に仕込み、インペラー速度200±50rpmおよびチョッパー速度1000±50rpmで7分間乾式混合した。溶液添加および湿式造粒のため、この造粒工程には合計3.45kgの水(造粒溶液およびすすぎ)が必要である。造粒溶液は、インペラー速度200±50rpmおよびチョッパー速度1000±50rpmで4±0.5分間PMA65に添加することになる。この湿塊は、同じインペラーおよびチョッパー設定でさらに1±0.5分間混合せねばならない。湿式粉砕は必要ない。
【0069】
次に乾燥のため、PMA65由来の造粒物を流動床乾燥機に仕込み、LOD1.3〜3.0%まで(目標2.25%)乾燥した。目的生成物の温度は50℃(許容範囲48℃〜52℃)である。粉砕のため、乾燥した顆粒を、ナイフが前方にある#0プレートを用いて速度2400±50rpmのフィッツミルで粉砕した。ブレンドには香料の予混合を必要としない。粉砕した顆粒を3立方フィートのトートビンブレンダー中、10rpmの設定で10分間トゥッティフルッティ香料とブレンドすることになる。オーガー速度450rpm
、ドリブル速度100rpmのAll-Fill Powder Filling Machineを使用して生成物を瓶に充填した。
【0070】
合計3個の登録バッチ(バッチ#024、#034および#044)を生産規模(30kg)で製造し、構成化用バルガンシクロビル粉末の各製造工程のために確立されたパラメータを評価した。バッチ#024、034の最終混合物の嵩密度およびタップ密度、バッチ#024、034および044の最終混合物の密度は似かよっていた。全てのバッチが最終混合物についてまずまずないし劣悪な流動性を示した(カール指数値21.79〜31.46)。
【0071】
バッチ#024、#034および#044のバルガンシクロビルおよび安息香酸ナトリウムの分析アッセイ結果は許容基準内であった。ブレンドの均一性は、バルガンシクロビルで96.4%〜102.9%、そして安息香酸ナトリウムで96.4%〜100.0%の範囲であった。%RSDはバルガンシクロビルおよび安息香酸ナトリウムについて0.3〜1.2%の範囲であった。全ての分析結果は、バリデーション許容基準5.0%より低い%RSD値で許容し得る含量均一性を示した。
【0072】
構成化用バルガンシクロビル粉末の3個の登録バッチが、開発バッチから確立された工程パラメータを用いて成功裏に製造された。3個のバッチは全て許容基準に適合した。収集された製造過程および分析データは、製造工程が良好に制御され、現行のGMP標準に従う一定の製品品質が提供可能であることを示した。
【0073】
保存剤の有効性:
構成化された溶液は濃度0.1%の安息香酸ナトリウムを含有する。この溶液はガラス瓶中で満足できる殺菌および殺真菌保存有効性を有し、このことは、この製品の使用期間を通じて許容可能な抗微生物効果が存在することを保証する。
【0074】
市販製剤に対する臨床製剤のバイオアベイラビリティー比較
この研究の主たる目的は、非絶食状態で900mg用量を投与した場合の、バルガンシクロビルトゥッティフルッティ経口溶液(F01−02)由来の、およびバルガンシクロビル塩酸塩の450mg市販錠剤であるバルサイト由来のガンシクロビルの生物学的同等性を決定することであった。第二の目的は、900mg用量においてイチゴ風味バルガンシクロビル経口溶液(J05)とトゥッティフルッティ風味バルガンシクロビル経口溶液(F01−02)由来のガンシクロビルの全身暴露を比較することであった。
【0075】
AUC 0−24(0〜24時間の曲線下面積)およびCmax(最大ピーク濃度)の両者について、トゥッティフルッティ風味経口溶液と比較した錠剤の平均比率の90%信頼区間(CI)は、完全に80%〜125%という許容領域内にある(AUC 0−24およびCmaxについてそれぞれ[96,104]および[89,101])。故に、ガンシクロビル血漿中レベルについての錠剤およびトゥッティフルッティ風味経口溶液の生物学的同等性が断定できる。ガンシクロビルの平均AUC値に基づくと、トゥッティフルッティ風味経口溶液は、安全且つ有効であることが知られている同等の暴露を提供する。イチゴ風味製剤に対するトゥッティフルッティ風味製剤を比較したガンシクロビルのPKはCmaxおよびAUCの点で非常に似ており、それぞれ平均比率96%〜109%および94%〜101%について90%のCIとなる。
【0076】
本発明の幾つかの態様を記載してきたが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく本発明を利用する他の態様を提供するために、この基本構造が変更可能であることは明らかである。このような修飾および変更は全て、例示のために提供した特定の実施例ではなく、添付した請求項に定義される本発明の範囲内に包含されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)治療有効量のバルガンシクロビル塩酸塩;および、
(b)所定量の水の中でバルガンシクロビル塩酸塩を安定化させるに充分な量で存在する非吸湿性有機酸、
を含む、水中で構成化した後の経口投与のための固体医薬剤形。
【請求項2】
バルガンシクロビル塩酸塩が、総組成物重量の約10%〜約90%の量で存在する、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項3】
非吸湿性有機酸がアミノ酸である、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項4】
非吸湿性有機酸が、フマル酸、コハク酸、およびアジピン酸より成る群から選ばれる、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項5】
非吸湿性有機酸がフマル酸である、請求項4に記載の固体剤形。
【請求項6】
非吸湿性有機酸が、構成化されたバルガンシクロビル塩酸塩溶液のpHを約3.8以下に低下させる量で存在する、請求項1および3〜5に記載の固体剤形。
【請求項7】
有効量の非吸湿性増量剤をさらに含む、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項8】
非吸湿性増量剤がマンニトールおよび乳糖より成る群から選ばれる、請求項7に記載の固体剤形。
【請求項9】
非吸湿性増量剤がマンニトールである、請求項7または8に記載の固体剤形。
【請求項10】
非吸湿性増量剤が、総組成物重量の最大約90%の量で存在する、請求項7〜9に記載の固体剤形。
【請求項11】
剤形が以下の組成:
【表5】


を有する、請求項1〜10に記載の固体剤形。
【請求項12】
(a)治療有効量のバルガンシクロビル塩酸塩;
(b)所定量の水;および
(c)その所定量の水の中でバルガンシクロビル塩酸塩を安定化させるに充分な量で存在する非吸湿性有機酸、
を含む、経口投与のための液体医薬剤形。
【請求項13】
バルガンシクロビル塩酸塩が約10mg/mL〜約90mg/mLの量で存在する、請求項12に記載の液体剤形。
【請求項14】
非吸湿性有機酸がアミノ酸である、請求項12に記載の液体剤形。
【請求項15】
非吸湿性有機酸が、フマル酸、コハク酸、およびアジピン酸より成る群から選ばれる、請求項12に記載の液体剤形。
【請求項16】
非吸湿性有機酸がフマル酸である、請求項15に記載の液体剤形。
【請求項17】
非吸湿性有機酸が、pHを3.8以下に低下させるに充分な量で液体剤形中に存在する、請求項12および14〜16に記載の液体剤形。
【請求項18】
有効量の非吸湿性増量剤をさらに含む、請求項12に記載の液体剤形。
【請求項19】
非吸湿性増量剤がマンニトールおよび乳糖より成る群から選ばれる、請求項18に記載の液体剤形。
【請求項20】
非吸湿性増量剤がマンニトールである、請求項18または19に記載の液体剤形。
【請求項21】
非吸湿性増量剤が、総組成物重量の最大約90%の量で存在する、請求項18〜20に記載の液体剤形。
【請求項22】
剤形が以下の組成:
【表6】


を有する、請求項12〜21に記載の液体剤形。
【請求項23】
治療に使用するための、請求項1〜22に記載の剤形。
【請求項24】
単純ヘルペスウイルスおよびサイトメガロウイルス仲介疾患の治療に使用するための、請求項23に記載の剤形。
【請求項25】
単純ヘルペスウイルスおよびサイトメガロウイルス媒介疾患の処置のための医薬を製造するための、請求項1〜22に記載の剤形の使用。

【公表番号】特表2010−513237(P2010−513237A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540707(P2009−540707)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063151
【国際公開番号】WO2008/071573
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】