説明

バルサルタン含有液体組成物

好ましくは小児および高齢者集団への経口投与に適するバルサルタンの水性溶液を含む組成物が提供される。かかる組成物の製造法およびその安定化法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与に適する、バルサルタンまたはその薬学的に許容される塩を含むアンギオテンシンII介在障害および状態処置用医薬組成物、およびかかるバルサルタンの医薬組成物の経口投与によりアンギオテンシンII介在障害および状態を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で引用する全ての特許、特許出願および他の刊行物は、出典明示によりその全体を本明細書に包含させる。本明細書と引用文献に包含されるものの間に矛盾が存在する場合、本明細書が優先する。
【0003】
本発明はアンギオテンシンII介在障害および状態の処置のための組成物に関し、本組成物は、バルサルタンの溶液を含む。本発明において使用するのに適するバルサルタンまたは((S)−N−バレリル−N−{[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イル]−メチル}−バリン)は、商業的供給源から購入しても、既知方法に従って製造してもよい。例えば、バルサルタンの製造は、米国特許5,399,578に記載されており、その全開示を引用により本明細書に包含させる。バルサルタンは、本発明の目的で、その遊離形ならびに全ての適切な塩形で使用できる。
【0004】
また本発明の範囲内に包含されるのは、バルサルタンの塩類、エステル類、アミド類、プロドラッグ、活性代謝物、類似体など、特にバルサルタンのカルシウム塩である。カルシウム塩およびその製造の詳細は、公開された米国特許出願2003/0207930に開示されており、その内容をその全体を引用することにより完全に本明細書に包含させる。
【0005】
本発明はまた、有効量の本発明の組成物、すなわち、バルサルタンを含む液体経口投与製剤を投与することを含む、アンギオテンシンII介在障害または状態の処置方法にも関する。
【0006】
米国特許5,399,578に記載の通り、バルサルタンを含む化合物群は、高血圧、鬱血性心不全、狭心症、心筋梗塞、動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管疾患、卒中、左心室肥大、認知機能不全、頭痛、または慢性心不全の処置に用い得る。
【0007】
ある個体、特に小児および高齢者は、固体経口投与製剤を嚥下することが困難である。さらに、mg/kg投与量の柔軟性が小児および高齢者集団で必要である。故に、固体経口投与製剤の嚥下が困難である個体における、上記状態の処置のためのバルサルタンを含む安定な長時間作用型液体経口投与製剤が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明により、貯蔵で安定なバルサルタンを含む液体経口投与製剤を製造できることが驚くべきことに判明した。バルサルタン原体は相対的に水不溶性であり、また水に分解し、故に、貯蔵で安定な製剤を製造できることは予期されなかった。バルサルタンを含む液体経口投与製剤は、好ましくはバルサルタンの溶液である。バルサルタン濃度は、約1mg/ml〜約5mg/ml、好ましくは約3mg/mlである。本発明の製剤はまた湿潤剤、例えば、ポリソルベート80、ポロキサマー188を含むポロキサマー類、ポリエトキシル化ヒマシ油およびポリエトキシル化水素化ヒマシ油、およびポリオキシル40ステアレートを含む。ポロキサマー188は、構造HO(CH2CH2O)a(CH(CH3)CH2OH)b(CH2CH2O)cH(式中、aは75であり、bは30であり、そしてcは75である)を有するし、約8350の平均分子量を有する。湿潤剤は、典型的に約0.1%〜約5%、または約0.2%〜約1%、または約0.5%の量で存在する。
【0009】
本製剤のpHは約4.5〜7.0、好ましくは約5.5〜約6.5、さらに好ましくは約5.5〜約6.0または約5.7〜約6.2の範囲、最も好ましくは約5.9であり得る。適当な緩衝液は、例えば、アルカリ金属クエン酸緩衝液、例えばクエン酸アルカリ金属塩とクエン酸、アルカリ金属酢酸緩衝液、例えば酢酸ナトリウム塩と酢酸、およびアルカリ金属コハク酸緩衝液、例えばコハク酸ナトリウム塩とコハク酸、およびこれらの混合物を含む。好ましい緩衝液はクエン酸とクエン酸ナトリウムを含む。
【0010】
本製剤は、典型的に消泡剤、例えば、シメチコンを含み、典型的にエマルジョン、例えば、30%エマルジョンとして添加される。かかる30%エマルジョンは、最終製剤中約0.1%〜約0.25%の濃度で添加される。甘味剤、例えばマンニトール、スクラロース、サッカリン、ナトリウムサッカリン、アスパルテーム、スクラロース、アセサルフェームカリウム、グルコース、フルクトース、ラクチトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、スクロース、およびキシリトールを使用できる。風味剤もコンプライアンス改善のために添加してよい。
【0011】
経口溶液のための適当な防腐剤は当分野で既知であり、例えば、安息香酸、ソルビン酸(およびその塩類)、パラベン類(ブチル、エチル、メチル、プロピル)、安息香酸ナトリウム、およびプロピオン酸ナトリウムを含む。防腐剤、例えば上記のもの、またはこれらの混合物は、約0.01%〜約0.5%;
または約0.02%〜0.25%;
または約0.1%〜約0.2%の量で存在できる。一つの態様において、本製剤は、約0.02%プロピルパラベンおよび約0.18%メチルパラベンを含む。他の態様は、0.03%プロピルパラベンおよび0.12%メチルパラベン、0.148%メチルパラベンおよび0.016%プロピルパラベンを含む製剤および0.16%メチルパラベンおよび0.2%ソルビン酸カリウムを含む製剤を含む。
【0012】
本発明の溶液は、慣用の液体製剤装置で製造できる。一つの態様において、本発明の溶液を、水および原体を混合し、続いて緩衝液成分、甘味剤、および風味剤を添加して混合する方法により製造する。あるいは、防腐剤、甘味剤、風味剤、および緩衝液成分を水に溶解する。別々に、メチルパラベンおよびバルサルタン原体をプロピレングリコールに加熱しながら溶解して、溶液を製造し得る。次いで、このプロピレングリコール溶液を水性部分と混合し、最終溶液を製造する。緩衝液成分を、所望の溶液pHとなるように調節し得る。約4.5〜7.0のpHが、最も安定な原体の溶液を提供する。
【0013】
次の実施例は、ここに記載の本発明を説明するが、その範囲を限定するために提供するものではない。実施例は、本発明を実施する方法を示唆する意味しかない。
【実施例】
【0014】
実施例1:製剤
表1
【表1】

【0015】
ポロキサマー188、防腐剤、甘味剤、風味剤、および緩衝液成分を水に溶解し、続いてバルサルタン原体を90℃までの温度で加熱しながら添加し、溶液を形成させる。次の製剤を、下記成分を使用して、上記の通り製造できる:
【0016】
【表2】

pH5.9
【0017】
【表3】

【0018】
【表4】

pH6
【0019】
【表5】

pH6
【0020】
【表6】

pH5.5
【0021】
【表7】

pH5.0
【0022】
【表8】

pH5.7
【0023】
【表9】

pH5.7
【0024】
【表10】

pH4.7
【0025】
【表11】

pH5.7
【0026】
【表12】

pH6.5
【0027】
本願発明を、その詳細な記載と関連して記載しているが、前記の記載は本願発明を説明する意図であり、範囲を限定するものではなく、その範囲は添付の特許請求の範囲により定義されることは理解されるべきである。他の態様、利点および修飾は特許請求の範囲の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、およびバルサルタンを含む液体経口投与製剤であって、pHが約4.5〜約7.0である、製剤。
【請求項2】
さらに湿潤剤を含む、請求項1に記載の液体経口投与製剤。
【請求項3】
湿潤剤がポリソルベート80、ポロキサマー類、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリエトキシル化水素化ヒマシ油、ポリオキシル40ステアレート、プロピレングリコール、およびこれらの混合物から成る群から選択される成分である、請求項2に記載の液体経口投与製剤。
【請求項4】
pHが約5.5〜約6.2である、請求項1に記載の液体経口投与製剤。
【請求項5】
pHが約5.9である、請求項4に記載の液体経口製剤。
【請求項6】
緩衝系を含む、請求項1に記載の液体経口製剤。
【請求項7】
緩衝系がクエン酸アルカリ金属塩とクエン酸、酢酸アルカリ金属塩と酢酸、コハク酸アルカリ金属塩とコハク酸、およびこれらの混合物から成る群から選択される成分を含む、請求項6に記載の液体経口製剤。
【請求項8】
さらに消泡剤を含む、請求項7に記載の液体経口製剤。
【請求項9】
さらに防腐剤を含む、請求項7に記載の液体経口製剤。
【請求項10】
防腐剤が安息香酸、ソルビン酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、およびそれらの混合物または塩から成る群から選択される成分である、請求項9に記載の液体経口製剤。
【請求項11】
バルサルタンの液体経口溶液の製造方法であって:
水、湿潤剤、防腐剤、甘味剤、風味剤および緩衝液成分を混合し、
バルサルタンを加熱しながら添加して溶液を形成させる
ことを含む、方法。
【請求項12】
液体経口溶液が約5.5〜7.0のpHを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
緩衝系成分がクエン酸およびクエン酸ナトリウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
液体経口溶液が約5.9のpHを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
バルサルタンの水性溶液の分解を最小化する方法であって、バルサルタンの水性溶液を提供し、該溶液のpHを約4.5〜約7.0に調節することを含む、方法。
【請求項16】
pHを約5.9に調節する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
アンギオテンシンII介在障害または状態の処置方法であって、有効量のバルサルタンを含む液体経口投与製剤を、それを必要とする患者に投与することを含み、ここで、該製剤のpHが約4.5〜7.0である、方法。
【請求項18】
患者が小児または高齢者集団にある、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
製剤のpHが約5.9である、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2011−503105(P2011−503105A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533312(P2010−533312)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/082932
【国際公開番号】WO2009/064681
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】