説明

バルブメタル粉末の脱酸素

バルブメタル粉末をカルシウム、バリウム、ランタン、イットリウムまたはセリウムで処理することによる、バルブメタル粉末、殊にニオブ粉末、タンタル粉末またはこれらの合金の脱酸素、ならびに3ppm/10000μFV/g未満のナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの含量の総和と比静電容量との比を示すバルブメタル粉末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブメタル粉末、殊にニオブ粉末、タンタル粉末またはその合金を、カルシウム、バリウム、ランタン、イットリウムまたはセリウムの群からの脱酸素剤でのバルブメタル粉末の処理によって脱酸素する方法、ならびにナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの低い含量を示すバルブメタル粉末に関する。
【0002】
バルブメタル、その中で殊にニオブおよびその合金、タンタルおよびその合金、ならびに元素の周期律表の第IVb族(Ti、Zr、Hf)、第Vb族(V、Nb、Ta)および第VIb族(Cr、Mo、W)の他の金属ならびにその合金は、構造部材の製造の際に多種多様に使用される。
【0003】
特に、コンデンサ、殊に固体電解質コンデンサを製造するためのニオブまたはタンタルの使用は、強調することができる。ニオブコンデンサまたはタンタルコンデンサを製造する場合には、通常、相応する金属粉末から出発し、この金属粉末は、最初に圧縮され、引続き焼結され、多孔質体を得ることができる。この多孔質体は、適当な電解質中で陽極酸化され、この場合には、誘電性酸化物被膜が焼結体上に形成される。使用される金属粉末の物理的性質および化学的性質は、コンデンサの性質に重要な影響を及ぼす。重要な特性は、例えば比表面積、不純物の含量および最も重要な電気的特性値として所定の化成電圧Ufの際の比静電容量である。比静電容量は、一般に1グラム当たりのマイクロファラド*ボルト(μFV/g)の単位で記載される。
【0004】
電子工業の回路設計における一般的な動向は、常によりいっそう低い作業電圧でできるだけ僅かな電気的損失の際に常によりいっそう高いクロック周波数に進むことである。これは、このような用途で使用される固体電解質コンデンサに関連して、常によりいっそう低い化成電圧が使用され、同時に常によりいっそう低い漏れ電流が要求されることを意味する。
【0005】
従って、コンデンサの製造に使用されるバルブメタル粉末は、つねによりいっそう高度な要件を満たさねばならず、この場合不純物の含量は、著しく重要である。このことは、例えば高すぎてはならないバルブメタル粉末中の酸素含量について言えることであり、また、コンデンサの漏れ電流の性質に決定的な影響を及ぼす金属不純物についても言えることである。これは、殊にNa、K、Mgであるが、しかし、C、Fe、Cr、Niでもある。
【0006】
しかし、不純物のNa、KおよびMgは、処理に応じてバルブメタル粉末の製造の場合には搬入される。即ち、例えばタンタル粉末は、一般に現在もなお、米国特許第2950185号明細書の記載から公知のK2TaF7の還元に関連してナトリウムまたはカリウムを用いて製造され、このことは、生成物中にナトリウムおよびカリウムの高い含量を必然的に伴なう。
【0007】
米国特許第4141720号明細書の記載によれば、高い酸素含量およびナトリウム含量を有するタンタル粉末は、K2TaF7およびアルカリ金属ハロゲン化物の添加および反応混合物の加熱によって後処理することができる。酸素、ナトリウムおよびカリウムの含量は、こうして減少させることができる。しかも、こうして処理された粉末は、10〜87ppmのナトリウム含量および112〜289ppmのカリウム含量を有する。
【0008】
米国特許第5442978号明細書には、高い比表面積およびナトリウムおよびカリウムのできるだけ低い含量を有するタンタル粉末を製造するために、高度に希釈されたK2TaF7をナトリウムの段階的な添加によって還元することが提案されており、この場合この添加は、高速で行なわれる。実施例1の記載によれば、こうして3ppm以下のナトリウム含量および10ppm未満のカリウム含量を有するタンタル粉末を得ることができる。しかし、酸素含量の調節のために、脱酸素工程が必要とされる。そのために、このタンタル粉末は、マグネシウムと混合され、引続き加熱され、このことは、タンタル粉末中へのマグネシウムの搬入を生じる。
【0009】
バルブメタルのフルオリド塩をアルカリ金属で還元すると共に、最近ではますます、バルブメタルの酸化物から出発し、この酸化物は、米国特許第6558447号明細書B1の記載と同様にガス状マグネシウムで還元され、相応するバルブメタルに変えられている。こうして、アルカリ金属の含量は、僅かになるように維持することができる。しかし、マグネシウムの増加された搬入量を生じる。その上、この方法の場合も、一般に還元後に酸素含量を減少させるための脱酸素工程が必要とされ、この場合バルブメタル粉末中のマグネシウム含量は、さらに上昇する。
【0010】
不純物のナトリウム、カリウムおよびマグネシウムは、高いイオン伝導性および結晶相の形成のために、コンデンサ製造の際に形成される、無定形バルブメタル酸化物からなる誘電性層と一緒に電界内で高められた漏れ電流を誘発するかまたはコンデンサ製造業者の加工処理中の熱負荷の際に高められた漏れ電流を誘発する。これは、特に100nm未満の常に薄手のバルブメタル層の場合に顕著であり、この場合このバルブメタル層は、現在、コンデンサを示す。(1Vの化成電圧は、例えば約2nmの酸化タンタル被膜の厚さに相当する)。
【0011】
従って、本発明の課題は、コンデンサの残留電流に対して不安定な元素のナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの低い含量を示すバルブメタル粉末を得ることができる、バルブメタル粉末を製造するための経済的な方法を提供することである。このようなバルブメタル粉末は、コンデンサの製造の際に高い比電荷(35000CV/gを上廻る)で極めて均一な形の無定形酸化物層を形成する。
【0012】
この課題は、バルブメタル粉末が脱酸素工程に掛けられることによって解決され、この場合には、僅かなイオン移動度を有する脱酸素剤が使用される。
【0013】
従って、本発明の対象は、バルブメタル粉末を脱酸素する方法であり、この場合には、脱酸素剤としてカルシウム、バリウム、ランタン、イットリウムまたはセリウムが使用される。
【0014】
本発明による方法は、高いイオン移動度を有する極めて僅かな含量の不純物を有するバルブメタル粉末の製造を可能にする。それによって、コンデンサへのこのようなバルブメタル粉末の後加工の際に生成されるバルブメタル酸化物を有する結晶相は、全く形成されず、したがって酸化物格子中での欠陥および高い残留電流は、回避される。
【0015】
本発明による方法は、多種多様なバルブメタル粉末の脱酸素に適している。しかし、有利には、ニオブ粉末、タンタル粉末またはニオブ−タンタル合金粉末、殊に有利にタンタル粉末が脱酸素される。
【0016】
即ち、好ましくは、バルブメタルは、タンタルである。
【0017】
本発明によれば、脱酸素剤としては、カルシウム、バリウム、ランタン、イットリウムまたはセリウムが使用される。特に、カルシウムまたはランタン、殊に有利にカルシウムが使用される。脱酸素すべきバルブメタル粉末は、脱酸素剤と混合される。
【0018】
バルブメタル粉末と脱酸素剤との前記混合物は、脱酸素剤の融点を上廻る温度に加熱される。有利には、使用される脱酸素剤の融点を少なくとも20℃上廻る温度に加熱される。
【0019】
脱酸素剤としてカルシウムを使用する場合には、脱酸素は、特に880〜1050℃の温度、殊に有利に920〜1000℃の温度で実施される。ランタンを使用する場合、好ましい脱酸素温度は、940〜1150℃、殊に有利に980〜1100℃である。
【0020】
脱酸素は、特に常圧で実施される。しかし、よりいっそう低い圧力で作業することも可能である。水素の存在は、本発明による方法の場合には、不要である。例えば、真空中または不活性ガス下、例えばネオン、アルゴンまたはキセノンの下で実施されてよい。本方法には、溶剤または固体を液相中で懸濁するための薬剤、例えば通常、バルブメタルへのバルブメタル化合物の還元の際に使用されるような塩溶融液は、不必要である。
【0021】
添加される脱酸素の量および処理時間は、広い範囲内で変動することができ、殊に脱酸素すべきバルブメタル粉末の酸素含量および脱酸素温度に依存する。
【0022】
一般に、2〜6時間の脱酸素時間で十分である。有利には、2〜4時間脱酸素される。
【0023】
有利には、酸素含量を0に減少させるために理論的に必要とされる量に対して1.1〜3倍の化学量論的過剰量の脱酸素剤が使用される。一般に、脱酸素すべきバルブメタル粉末の量に対して脱酸素剤Caを3〜6質量%の量で使用し、脱酸素剤Laを6〜14質量%の量で使用することで十分であることが判明し、酸素含量の望ましい減少および元素のナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの望ましい減少が達成される。有利には、脱酸素すべきバルブメタル粉末の量に対して脱酸素剤Ca3.5〜5.9質量%またはLa9〜11.5質量%、殊に有利にCa4〜4.7質量%またはLa10〜11.5質量%が使用される。
【0024】
有利には、脱酸素の際に生成される、使用された脱酸素剤の酸化物は、酸での脱酸素後に浸出される。酸としては、特に硝酸または塩酸が使用される。カルシウムを脱酸素剤として使用する場合には、硫酸の使用を回避させうることに注目することができる。
【0025】
特に、本発明による脱酸素は、2段階で実施される。この場合、バルブメタル粉末には、上記の脱酸素および酸のアルカリ液での処理の後に再度脱酸素剤が添加され、記載された温度処理に掛けられる。脱酸素剤の量は、第2の脱酸素工程で第1の脱酸素工程の場合よりも低くなるように選択され、特にバルブメタル粉末の酸素含量に対して1.3〜2.0倍の化学量論的過剰量に相当する。Caを使用する場合、脱酸素剤は、第2の脱酸素工程で特に脱酸素すべきバルブメタル粉末の量に対して1〜3質量%の量で使用され、Laを使用する場合には、1.5〜7質量%の量で使用される。有利には、脱酸素すべきバルブメタル粉末の量に対して脱酸素剤としてのCa1〜1.3質量%またはLa3〜6.1質量%使用される。
【0026】
本発明による方法は、任意に製造されたバルブメタル粉末の脱酸素に適している。例えば、バルブメタル粉末のフルオリド塩をナトリウムを用いて希釈塩の存在下に還元することによって製造されるニオブ粉末およびタンタル粉末が脱酸素されうる。このような方法は、例えば米国特許第5442978号明細書の記載から公知である。
【0027】
タンタル粉末を脱酸素する場合には、タンタル粉末から出発し、このタンタル粉末を塩化カリウムおよびフッ化カリウムの存在下に次の反応条件下でのK2TaF7とナトリウムとの反応によって得ることができるという特に好ましい結果が達成される。K2TaF7と塩化カリウムとフッ化カリウムとからなる塩混合物は、試験用レトルト中に装入され、有利に6時間400℃に加熱され、残留湿分は、塩から除去される。引続き、この試験用レトルトは、850℃〜950℃、有利に850℃〜920℃の温度、特に有利に900℃の温度に加熱され、この場合塩混合物は、液化される。液状溶融液は、アルゴン雰囲気下(1050hPa)で均質化のために攪拌される。還元温度の達成時に、液状のナトリウムは、少量ずつ添加される。ナトリウムの全体量は、使用されるカリウムヘプタフルオロタンタレートの量に対して3〜6質量%の過剰量に相当する。添加時には、試験用レトルト中の温度が常に還元温度の範囲内に留まるように注意すべきである。(T +/−20℃)。沈殿されたタンタル粉末の表面を調整するために、前記混合物には、第1のナトリウム添加前に塩溶融液の表面張力に影響を及ぼす添加剤、例えば無水の硫酸ナトリウムが添加される。還元の終結後に、なお0.5〜3時間、800℃ないし還元温度の範囲内でさらに攪拌が行なわれる。好ましくは、約3時間、還元温度から800℃へ同時に冷却しながらさらに攪拌が行なわれる。反応物は、室温へ冷却され、過剰のナトリウムを不動態化するために、水蒸気が試験用レトルトに導通される。引続き、このレトルトは、開かれ、反応物が取り出され、ジョークラッシャにより前微粉砕される(5cm未満、有利に2cm未満)。引続き、不活性の塩は、洗浄除去され、得られたタンタル粉末は、乾燥される。この場合、選択的に燐計量供給工程が挿入され、その際には、タンタル金属粉末が(NH4)H2PO4溶液で処理され、完成したタンタル金属粉末中のP含量は、調節される。引続き、前記粉末は、真空中で高温処理に晒される。例えば、30分間、1250℃〜1500℃、有利に1280℃〜1450℃、特に有利に1280℃〜1360℃に加熱される。次に、こうして製造されたタンタル粉末は、本発明による脱酸素に掛けられる。
【0028】
勿論、バルブメタル粉末から出発することも可能であり、この場合このバルブメタル粉末は、米国特許第6558447号明細書B1の記載と同様に、ガス状のマグネシウムでのバルブメタル酸化物の還元によって得られる。
【0029】
この場合には、マグネシウムの代わりにカルシウム、バリウム、ランタン、イットリウムまたはセリウムを還元剤として使用することは、特に有利であることが判明した。
【0030】
従って、本発明による方法の特に好ましい実施態様において、脱酸素すべきバルブメタル粉末として、ガス状のカルシウム、バリウム、ランタン、イットリウムまたはセリウムでのバルブメタル酸化物の還元によって得られるバルブメタル粉末が使用される。
【0031】
相応するバルブメタル粉末の製造のために、米国特許第6558447号明細書B1の記載に関連して行なわれるが、しかし、還元剤として、カルシウム、バリウム、ランタン、イットリウムまたはセリウムが使用される。
【0032】
有利に使用されるタンタル粉末を製造するために、例えば酸化タンタル(Ta25)は、タンタル皿中のタンタル網上に置かれる。タンタル網の下方には、酸化タンタル中の酸素含量に対して1.1倍の化学量論的量のカルシウム、バリウム、ランタン、イットリウムまたはセリウムが供給される。還元は、還元剤をガス状の状態で移行させるのに十分に高い温度で実施される。還元剤の蒸気圧を所定の還元温度で上昇させるために、反応器中の減少された全圧力で作業されてよい。従って、一般に1000ミリバール以下の反応器中の全圧力、有利に500ミリバール以下の反応器中の全圧力で作業される。更に、還元温度は、有利に950〜1100℃、特に有利に980〜1050℃である。一般に、還元時間は、8時間までで十分である。反応物は、還元が終結された後に取り出され、還元剤の生成された酸化物は、硝酸または塩酸で浸出される。この場合には、選択的に上記の方法と同様にP計量供給工程が挿入されてよい。最終的に、こうして得られたバルブメタル粉末は、本発明による脱酸素に掛けられる。
【0033】
10000μFV/gの比静電容量に対して3ppm未満のNa、KおよびMgの含量を示すバルブメタル粉末は、本発明による脱酸素方法により初めて得ることができる。
【0034】
従って、さらに本発明の対象は、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの不純物の総和とバルブメタル粉末の比静電容量との比が3ppm/10000μFV/gであるバルブメタル粉末である。
【0035】
特に、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの不純物の総和とバルブメタル粉末の比静電容量との比は、2ppm/10000μFV/g、未満、殊に有利に1ppm/10000μFV/g未満である。
【0036】
この場合、K、Na、Mgの不純物の含量は、HNO3/HFを用いてのバルブメタル試料の酸分解後に測定される。この場合、KおよびNaは、フレーム原子吸着分光分析(FAAS)の方法によりアセチレン−空気混合物中で測定され、マグネシウムは、ICP−OES(誘導結合高周波プラズマ−光放出分光分析)の方法により測定される。酸分解のために、試験すべきバルブメタル粉末1.0gには、65質量%のHNO32mlおよび40質量%のHF10mlが添加され、105℃の温度で10時間常圧下で攪拌される。冷却後、30質量%のHCl5mlが添加され、試料体積は、H2Oで100mlに増量される。
【0037】
引続き、こうして得られた溶液は、FAASまたはICP−OESにより試験される。測定された含量は、ppm(part per million)で記載される。
【0038】
バルブメタル粉末の比静電容量は、次の方法により測定される:脱酸素されたバルブメタル粉末0.296g宛から、4.8g/cm3の圧縮密度を有する直径4.1mmおよび長さ4.26mmの寸法の円筒状圧縮体を製造し、この場合圧縮マトリックス中でバルブメタル粉末の注入前に軸方向に直径0.2mmのタンタル線材を接触線材として嵌め込んだ。圧縮体は、1330℃〜1430℃の焼結温度で10分間に亘り高真空(10-5mバール未満)中で焼結され、陽極に変えられる。この陽極体は、0.1質量%の燐酸中に浸漬され、150mAに制限された電流強さで30Vの化成電圧になるまで化成される。電流強さの低下後、この電圧は、なお100分間維持される。コンデンサの性質を測定するために、18質量%の硫酸からなる陰極が使用される。120Hzの周波数で測定される。引続き、残留電流は、導電率4300μSの燐酸中で測定される。個々の陽極の比静電容量の得られた値および個々の陽極の残留電流の得られた値は、μFV/g、但し、μF=静電容量、V=化成電圧、g=陽極の質量、に規格化されているかまたはμA/g、但し、μA=測定された残留電流およびg=使用された陽極質量、またはμA/μFVに規格化されている。
【0039】
特に、本発明によるバルブメタル粉末は、少なくとも35000μFV/g、特に有利に少なくとも40000μFV/gの比静電容量を有する。
【0040】
本発明によるバルブメタル粉末は、特にニオブ粉末またはタンタル粉末であり、この場合前記の粉末は、場合によっては互いにドープされておりおよび/または金属Ti、Mo、V、W、HfおよびZrの1つ以上でドープされている。他のドーピング元素、例えば燐も可能である。
【0041】
本発明によるバルブメタル粉末は、多種多様な用途に使用されてよく、殊に固体電解質コンデンサの製造の適している。
【0042】
次の実施例は、本発明の詳細な説明に使用され、この場合実施例は、本発明による原理の理解を簡易化し、本発明を制限するものとして理解すべきではない。
【0043】
実施例
別記しない限り、百分率の記載は、質量百分率(質量%)である。
【0044】
例1
タンタル一次粉末をK2TaF7150kg、KCl136kg、KF150kg、高純度のタンタル粉末4kgおよびNa2SO4300gからなる混合物から出発して、ニッケル被覆されたINCONELレトルト中でナトリウムを徐々に増加させながら添加することによって900℃の還元温度で米国特許第5442978号明細書の記載と同様に製造した。タンタル粉末を冷却されかつ微粉砕された反応混合物から弱酸性化された水で洗浄することによって単離し、この場合最終的になお、硫酸および過酸化水素を含有する洗浄溶液で清浄化処理を実施した。前記材料を、溶液1ml当たりP1mgを含有する燐酸二水素ナトリウムで燐20ppmになるようにドープした。乾燥後、温度処理を高真空中で1430℃で実施した。それに続いて、燐酸二水素ナトリウム溶液(1ml当たりP1mg)を用いてタンタル粉末の燐含量を60ppmに調節した。この粉末は、次の不純物(ppmで)を有した:
Mg:1ppm未満、
Na:0.7ppm、
K:7ppm。
【0045】
前記粉末2kg(出発粉末)をカルシウム粉末90g(4.5質量%)と混合し、レトルト中の被覆されたタンタルるつぼ中でアルゴン雰囲気下で3時間980℃にもたらした。冷却および不動態化のための制御された空気供給の後、反応物を取り出し、形成された酸化カルシウムを希釈された硝酸と過酸化水素溶液とからなる洗浄溶液で除去した。洗浄液を傾瀉し、粉末を吸引漏斗上で脱塩水で酸が含まれなくなるまで洗浄した。乾燥された粉末は、2831ppmの酸素含量を有していた。
【0046】
次に、前記粉末1.8kgを第2の脱酸素工程に掛けた。そのために、カルシウム粉末19.2g(酸素含量に対して1.5倍の化学量論的量)を粉末の下で混合し、この混合物を同様に3時間、980℃に加熱した。冷却および不動態化の後に、再度、形成されたCaOを酸洗浄によって除去し、粉末を酸が含まれなくなるまで洗浄した。
【0047】
こうして製造された粉末は、次の不純物を有していた:
Mg:1ppm未満、
Na:1ppm、
K:8ppm。
【0048】
電気的試験は、1400℃の焼結温度で37419μFV/gの比静電容量をもたらした。
【0049】
例2(比較例)
例1からの出発粉末2kgをマグネシウム屑50g(2.5質量%)と混合し、レトルト中の被覆されたタンタルるつぼ中でアルゴン雰囲気下で3時間980℃にもたらした。冷却および不動態化のための制御された空気供給の後、反応物を取り出し、形成された酸化マグネシウムを希釈された硝酸と過酸化水素溶液とからなる洗浄溶液で除去した。洗浄液を傾瀉し、粉末を吸引漏斗上で脱塩水で酸が含まれなくなるまで洗浄した。乾燥された粉末は、2781ppmの酸素含量を有していた。
【0050】
次に、前記粉末1.8kgを第2の脱酸素工程に掛けた。そのために、マグネシウム屑11.4g(酸素含量に対して1.5倍の化学量論的量)を粉末の下で混合し、この混合物を同様に3時間、980℃に加熱した。冷却および不動態化の後に、再度、形成されたMgOを酸洗浄によって除去し、粉末を酸が含まれなくなるまで洗浄した。
【0051】
こうして製造された粉末は、次の不純物を有していた:
Mg:8ppm未満、
Na:1ppm、
K:6ppm。
【0052】
電気的試験は、1400℃の焼結温度で38261μFV/gの比静電容量をもたらした。
【0053】
例3
例1からの出発粉末200gをランタン粉末22g(11質量%)と混合し、レトルト中の被覆されたタンタルるつぼ中でアルゴン雰囲気下で3時間980℃にもたらした。冷却および不動態化のための制御された空気供給の後、反応物を取り出し、形成された酸化ランタンを希釈された硝酸と過酸化水素溶液とからなる洗浄溶液で除去した。洗浄液を傾瀉し、粉末を吸引漏斗上で脱塩水で酸が含まれなくなるまで洗浄した。乾燥された粉末は、3045ppmの酸素含量を有していた。
【0054】
次に、前記粉末180gを第2の脱酸素工程に掛けた。そのために、ランタン粉末6.5g(酸素含量に対して1.5倍の化学量論的量)を粉末の下で混合し、この混合物を同様に3時間、980℃に加熱した。冷却および不動態化の後に、再度、形成されたLa23を酸洗浄によって除去し、粉末を酸が含まれなくなるまで洗浄した。
【0055】
こうして製造された粉末は、次の不純物を有していた:
Mg:1ppm未満、
Na:0.7ppm、
K:8ppm。
【0056】
電気的試験は、1400℃の焼結温度で38093μFV/gの比静電容量をもたらした。
【0057】
例4
タンタル一次粉末をK2TaF775kg、KCl125kg、KF225kg、高純度のタンタル粉末5kgおよびNa2SO4500gからなる混合物から出発して、ニッケル被覆されたINCONELレトルト中でナトリウムを徐々に増加させながら添加することによって920℃の還元温度で米国特許第5442978号明細書の記載と同様に製造した。タンタル粉末を冷却されかつ微粉砕された反応混合物から弱酸性化された水で洗浄することによって単離し、この場合最終的になお、硫酸および過酸化水素を含有する洗浄溶液で清浄化処理を実施した。前記材料を、溶液1ml当たりP1mgを含有する燐酸二水素ナトリウムで燐100ppmになるようにドープした。乾燥後、温度処理を高真空中で1280℃で実施した。この粉末は、次の不純物(ppmで)を有した:
Mg:1ppm未満、
Na:1ppm、
K:49ppm。
【0058】
前記粉末2kgをカルシウム粉末90g(4.5質量%)と混合し、レトルト中の被覆されたタンタルるつぼ中でアルゴン雰囲気下で3時間960℃にもたらした。冷却および不動態化のための制御された空気供給の後、反応物を取り出し、形成された酸化カルシウムを希釈された硝酸と過酸化水素溶液とからなる洗浄溶液で除去した。洗浄液を傾瀉し、粉末を吸引漏斗上で脱塩水で酸が含まれなくなるまで洗浄した。乾燥された粉末は、3700ppmの酸素含量を有していた。
【0059】
次に、前記粉末1.8kgを第2の脱酸素工程に掛けた。そのために、カルシウム粉末25g(酸素含量に対して1.5倍の化学量論的量)を粉末の下で混合し、この混合物を同様に3時間、960℃に加熱した。冷却および不動態化の後に、再度、形成されたCaOを酸洗浄によって除去し、粉末を酸が含まれなくなるまで洗浄した。
【0060】
こうして製造された粉末は、次の不純物を有していた:
Mg:1ppm未満、
Na:1ppm、
K:12ppm。
【0061】
電気的試験は、1400℃の焼結温度で59764μFV/gの比静電容量をもたらした。
【0062】
例5:
粒度400μm未満を有する五酸化タンタル500g(Ta25)をタンタルるつぼ中のタンタル網上に置く。タンタル網の下方で、五酸化タンタル中の酸素含量に対して1.1倍の化学量論的量のカルシウムを供給する(249.4g)。タンタル皿を閉鎖可能なレトルト中に導入する。
【0063】
還元を980℃で600ミリバールの反応圧力でアルゴン雰囲気下で8時間実施する。反応物を取り出し、生じた酸化カルシウムを硝酸で浸出する。酸が含まなくなるまで洗浄されたタンタル粉末を吸引漏斗上で、溶液1ml当たりP1mgを含有する燐酸二水素ナトリウム溶液でP100ppmになるまでドープし、引続き乾燥させる。こうして製造されたタンタル粉末は、7143ppmの酸素含量を有する。
【0064】
前記粉末400gをカルシウム粉末18g(4.5質量%)と混合し、レトルト中の被覆されたタンタルるつぼ中でアルゴン雰囲気下で3時間960℃にもたらした。冷却および不動態化のための制御された空気供給の後、反応物を取り出し、形成された酸化カルシウムを希釈された硝酸と過酸化水素溶液とからなる洗浄溶液で除去した。洗浄液を傾瀉し、粉末を吸引漏斗上で脱塩水で酸が含まれなくなるまで洗浄した。乾燥された粉末は、4953ppmの酸素含量を有する。
【0065】
次に、前記粉末300gを第2の脱酸素工程に掛けた。そのために、カルシウム粉末5.6g(酸素含量に対して1.5倍の化学量論的量)を粉末の下で混合し、この混合物を同様に3時間、960℃に加熱した。冷却および不動態化の後に、再度、形成されたCaOを酸洗浄によって除去し、粉末を酸が含まれなくなるまで洗浄した。
【0066】
こうして製造された粉末は、次の不純物を有する:
Mg:1ppm未満、
Na:1ppm未満、
K:2ppm。
【0067】
電気的試験は、1400℃の焼結温度で70391CV/gの比静電容量をもたらした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブメタル粉末を脱酸素する方法において、脱酸素剤としてカルシウム、バリウム、ランタン、イットリウムまたはセリウムを使用することを特徴とする、バルブメタル粉末を脱酸素する方法。
【請求項2】
バルブメタル粉末がニオブ粉末、タンタル粉末またはニオブ−タンタル合金粉末である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
脱酸素剤としてカルシウムまたはランタンを使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
脱酸素剤がカルシウムであり、脱酸素を880〜1050℃の温度で実施する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
脱酸素剤がランタンであり、脱酸素を940〜1150℃の温度で実施する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
脱酸素を2工程で実施する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
バルブメタル酸化物をガス状のカルシウム、バリウム、ランタン、イットリウムまたはセリウムで還元することによって得られるバルブメタル粉末を脱酸素する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
バルブメタル粉末において、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの不純物の総和とバルブメタル粉末の比静電容量との比が3ppm/10000μFV/g未満であることを特徴とする、バルブメタル粉末。
【請求項9】
ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの不純物の総和とバルブメタル粉末の比静電容量との比が1ppm/10000μFV/g未満である、請求項8記載のバルブメタル粉末。
【請求項10】
ニオブ粉末またはタンタル粉末が重要である、請求項8または9に記載のバルブメタル粉末。

【公表番号】特表2008−512568(P2008−512568A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530614(P2007−530614)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009230
【国際公開番号】WO2006/027119
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(506350458)ハー ツェー シュタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンデイトゲゼルシヤフト (14)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】