説明

バルブ装置

【課題】 油圧緩衝器の設置性を良くしながら所定の機能の発揮を可能にする。
【解決手段】 スプール4が一端部にバルブハウジング5との間にスプール4の有効ストロークV2を出現させる他方のストッパ部44を有すると共に他端側にバルブハウジング5との間にスプール4の有効ストロークV1を出現させる一方のストッパ部43を有する一方で、他端部(82)を入力手段8の配在下に油圧緩衝器におけるロッド3体またはロッド体3を連結させる固定側Bに連結させ、入力手段8がスプール4と同軸に配設されて固定側Bに連結される筒体81内にスプール4における他端部(82)を臨在させると共に、この他端部(82)を筒体81内に収装される一対のバランスバネ83,84間に挟持させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブ装置に関し、特に、たとえば、建築物の各階の床と天井との間に配設されて制振ダンパとされる油圧緩衝器への具現化に向くバルブ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、建築物の各階の床と天井との間に配設されて制振ダンパとされる油圧緩衝器としては、従来から種々の提案があるが、その中で、たとえば、特許文献1には、油圧緩衝器を形成するシリンダ体内でのピストン体の摺動位置に依存して発生される減衰力が高低調整可能とされるものが開示されている。
【0003】
すなわち、特許文献1に開示の油圧緩衝器にあっては、油圧緩衝器を形成するシリンダ体内を同じく油圧緩衝器を形成するピストン体が摺動するときにシリンダ体内にピストン体で画成されてピストン体を挟む一対となる両方の油室がピストン体に配設の減衰バルブを介して連通し、減衰バルブによって所定の言わば高い減衰力が発生される。
【0004】
その一方で、この特許文献1に開示の油圧緩衝器にあっては、油圧緩衝器におけるシリンダ体内の両方の油室がシリンダ体外に配設のバルブ装置を介して連通可能とされ、このバルブ装置の作動が油圧緩衝器の作動で具現化される。
【0005】
すなわち、まず、バルブ装置は、油圧緩衝器におけるシリンダ体内の両方の油室をシリンダ体外で連通するバイパス路中に配設されてその作動時にバイパス路を開閉する。
【0006】
そして、このバルブ装置にあって、バイパス路は、シリンダ体に連設されるバルブハウジングとこのバルブハウジング内に摺動可能に収装される制御バルブたるスプールとで形成されている。
【0007】
そしてまた、バルブハウジングは、油圧緩衝器におけるシリンダ体に一体的に連設され、スプールは、シリンダ体内のピストン体に連結されてシリンダ体に対して出没可能とされるロッド体側に連結されている。
【0008】
そしてさらに、バイパス路は、油圧緩衝器において、ピストン体がシリンダ体内の中央部付近にあるときには、バルブハウジング内でいわゆる中央部付近にあるスプールで閉鎖状態となり、ピストン体がシリンダ体内の中央部付近から外れるときには、バルブハウジング内で中央部付近から外れるスプールで開放状態になる。
【0009】
それゆえ、この特許文献1に開示のバルブ装置にあっては、油圧緩衝器においてピストン体がシリンダ体内における中央部付近で摺動する場合には、スプールがバイパス路を閉鎖状態に維持し、シリンダ体内の両方の油室がピストン体に配設の減衰バルブを介して連通され、言わば高い減衰力の発生状態を具現化する。
【0010】
そして、このバルブ装置にあっては、油圧緩衝器においてピストン体がシリンダ体内における中央部付近を外れて摺動する状況になると、バイパス路を開放状態に維持し、シリンダ体内の両方の油室がこの開放されたバイパス路を介して連通され、言わば低い減衰力の発生状態を具現化する。
【特許文献1】特開2006‐161842号公報(図1、図2および図4参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した特許文献1に開示のバルブ装置にあっては、油圧緩衝器の伸縮位置に依存して発生減衰力の高低調整を可能にする点で格別の不具合がある訳ではないが、その具現化にあって些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0012】
すなわち、上記した特許文献1に開示の油圧緩衝器も含めてだが、凡そこの種の位置依存型となる油圧緩衝器が建築物における制振ダンパとされる場合には、その油圧緩衝器自体にあって伸縮ストロークにいわゆる余裕を持つことが肝要とされる。
【0013】
このことからすると、上記した特許文献1に開示の油圧緩衝器にあっては、バルブ装置の作動についても、すなわち、制御バルブたるスプールの摺動ストロークについても、油圧緩衝器と同じストローク量が保障されることを要す。
【0014】
その結果、上記した特許文献1に開示のバルブ装置にあっては、たとえば、バルブ装置を構成するスプールが長尺化されることで、スプールの加工性が悪化したり精度の維持が困難となり易くなったりする不具合があると共に、バルブ装置自体が長尺化され易くなってコンパクト化され難くなり、油圧緩衝器が、たとえば、建築物における制震ダンパとされる場合に、その設置性が低下され易くなる不具合もある。
【0015】
この発明は、上記した現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、設置性を良くしながら所定の機能の発揮を可能にして、これを利用する油圧緩衝器における汎用性の向上を期待するのに最適となるバルブ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した目的を達成するために、この発明によるバルブ装置の構成を、基本的には、油圧緩衝器におけるシリンダ体内にピストン体で画成される一方および他方となる両方の油室のシリンダ体外での連通を可能にするバイパス路と、このバイパス路を形成するバルブハウジングに摺動可能に配設されて外部からの推力の入力時にバイパス路における一方向および他方向となるいずれか選択された方向の開放を可能にするスプールと、このスプールに推力を入力する入力手段とを有し、入力手段が油圧緩衝器におけるシリンダ体内でのピストン体の摺動に追随してスプールに推力を入力すると共にバイパス路を開放したスプールに対するさらなる推力の入力を停止してなるバルブ装置において、スプールが一端部にバルブハウジングとの間にスプールの有効ストロークを出現させる他方のストッパ部を有すると共に他端側にバルブハウジングとの間にスプールの有効ストロークを出現させる一方のストッパ部を有する一方で、他端部を入力手段の配在下に油圧緩衝器におけるロッド体またはロッド体を連結させる固定側に連結させ、入力手段がスプールと同軸に配設されて固定側に連結される筒体内にスプールにおける他端部を臨在させると共に、この他端部を筒体内に収装される一対のバランスバネ間に挟持させてなるとする。
【発明の効果】
【0017】
それゆえ、この発明にあっては、油圧緩衝器における両方の油室のシリンダ体外での連通を可能にするバイパス路中に配設のスプールを作動させる、すなわち、摺動させる推力を入力する入力手段がシリンダ体内でのピストン体の摺動時にスプールを摺動させてバイパス路を開放させる一方で、その作動でバイパス路を開放したスプールに対するさらなる作動の停止を可能にするから、油圧緩衝器におけるいわゆる伸縮ストロークがスプールにおける作動ストロークを、すなわち、有効ストロークを上回ることになっても、入力手段がスプールにこれをさらに摺動させる推力を入力しない。
【0018】
その結果、スプールにおける作動ストロークたる有効ストロークを油圧緩衝器における伸縮ストロークとは独立に設定でき、しかも、スプールにおける作動ストロークをいわゆる安全率を考慮して僅かに大きくするだけで足り、このスプールをシリンダ体に連設されるバルブハウジングに設けるとき、バルブハウジングをコンパクト化できる。
【0019】
ちなみに、油圧緩衝器において、シリンダ体内に摺動可能に収装されてシリンダ体内に二つとなる両方の油室を画成するピストン体が両方の油室の連通を許容する減衰バルブを有する場合には、シリンダ体外のバイパス路が閉鎖されているときに、シリンダ体に対してロッド体が出没する伸縮作動時には各減衰バルブによって高い減衰力が発生される。
【0020】
そして、油圧緩衝器において、シリンダ体に対するロッド体の出没するストロークが大きく、したがって、スプールに入力手段からの入力があるときには、バイパス路が開放され、シリンダ体内の両方の油室がこのバイパス路を介して連通する。
【0021】
その結果、スプールの摺動でバイパス路が開放される迄はピストン体が有する減衰バルブで高い減衰力の発生状態に維持されていたものが、スプールの摺動によるバイパス路の開放でそれまでの発生減衰力が低くなる。
【0022】
そして、シリンダ体内でピストン体が反転して逆の行程に移行し、したがって、スプールがその作動を解除すると、バイパス路が閉鎖されてピストン体が有する減衰バルブによる高い減衰力の発生状態が保障される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるバルブ装置は、図示するところでは、筒型でしかも両ロッド型に形成された油圧緩衝器に具現化され、この油圧緩衝器は、たとえば、建築物の各階の床と天井との間に配設される制振ダンパとされる。
【0024】
そして、この油圧緩衝器は、図1に示すところでは、シリンダ体1と、このシリンダ体1内に摺動可能に収装されながらシリンダ体1内に断面積を同一にする一対となる両方の油室、すなわち、図中で上方となる一方の油室R1と図中で下方となる他方の油室R2とを画成するピストン体2と、このピストン体2に一方端が連結されながら各油室R1,R2の軸芯部を挿通してそれぞれシリンダ体1の閉塞端から先端を外部に突出させるロッド体3、すなわち、断面積を同一にして図中で上方となる一方のロッド体31と図中で下方となる他方のロッド体32とを有してなる。
【0025】
そして、この油圧緩衝器にあって、ピストン体2は、上記の両方の油室R1,R2の連通を許容する減衰バルブ21,22を有し、シリンダ体1は、後述するバルブ装置におけるスプール4の配設を可能にするバルブハウジング5を一体的に連設させており、このバルブハウジング5は、併せてチェックバルブ6,7を有している。
【0026】
ところで、シリンダ体1は、この油圧緩衝器が両ロッド型とされるからいわゆる筒体からなり、図示するところでは、図中の下端側部にはシリンダ体1と同径となるサブシリンダ体11を同軸に連設させ、このサブシリンダ体11内に他方のロッド体32の図中で下端側となる先端側を導通させてこの他方のロッド体32の下端側がいわゆる他部に干渉することを回避させ、また、このサブシリンダ体11は、この油圧緩衝器のいわゆる取り付けを可能にするブラケット12を有している。
【0027】
ピストン体2は、自身がシリンダ体1内に画成する両方の油室R1,R2の連通を許容する減衰バルブ、すなわち、言わば伸側用とされる減衰バルブ21と言わば圧側用とされる減衰バルブ22とを並列配置させている。
【0028】
このとき、減衰バルブ21,22は、図示するところでは、上流側の圧力がクラッキング圧を超えると開放作動するように設定され、このクラッキング圧については任意に設定される。
【0029】
ロッド体3は、図中で上方となる一方のロッド体31の先端にブラケット33を有し、このブラケット33を利用してのこの油圧緩衝器の固定側Bへの連結を可能にしている。
【0030】
それゆえ、この油圧緩衝器にあっては、上記したブラケット12,33を利用しての所望の場所への取り付けが、すなわち、設置が可能とされ、その設置場所での作動、すなわち、いわゆる伸縮作動が可能とされる。
【0031】
そして、この油圧緩衝器にあっては、後述するバイパス路を無視すると、ピストン体2がシリンダ体1内を図中で上昇する場合を、たとえば、伸側作動時と仮定すると、一方の油室R1が減衰バルブ21を介して他方の油室R2に連通し、このとき、減衰バルブ21で所定の大きさの減衰力が発生される。
【0032】
また、同じくこの油圧緩衝器にあって、ピストン体2がシリンダ体1内を図中で下降する場合を、たとえば、圧側作動時と仮定すると、他方の油室R2が減衰バルブ22を介して一方の油室R1に連通し、このとき、減衰バルブ22で所定の大きさの減衰力が発生される。
【0033】
一方、この発明において、バルブ装置は、油圧緩衝器における両方の油室R1,R2のシリンダ体1外で連通を可能にするバイパス路と、このバイパス路中に配設されて外部からの推力の入力で摺動してバイパス路を開放するスプール4と、バイパス路における作動油の流れを整流するチェックバルブ6,7と、スプール4に推力を入力する入力手段8とを有してなる。
【0034】
まず、バイパス路は、シリンダ体1に一体的に連設されるバルブハウジング5に形成され、いわゆる両端がシリンダ体1内の各油室R1,R2に対して、各油室R1,R2におけるいわゆるストロークエンド領域となる部位で連通している。
【0035】
すなわち、ピストン体2がシリンダ体1内をいわゆる中立領域を超える大きいストロークで摺動するとしてシリンダ体1の端部に接近するようになるストロークエンド近傍に至るときにも、シリンダ体1に開穿された開口が閉塞されずして各油室R1,R2のバイパス路への連通が妨げられない。
【0036】
このとき、バイパス路の本来的な機能を鑑みると、バイパス路がバルブハウジング5に形成されるのはともかく、このバルブハウジング5がシリンダ体1に一体的に連設されることは、この発明のバルブ装置にあって、言わば好ましい。
【0037】
すなわち、後述することであるが、この発明のバルブ装置にあって、バイパス路に配設されるスプール4は、入力手段8を介してであるが、油圧緩衝器の伸縮位置に依存して開放作動することを要件とするから、少なくとも、このスプール4を有するバルブハウジング5にあっては、これがシリンダ体1の一部に擬制されて良く、したがって、この観点からして、バルブハウジング5は、シリンダ体1に一体的に連設されてシリンダ体1に保持されるのが好ましい。
【0038】
ところで、バルブハウジング5に形成されるバイパス路は、一方の油室R1に連通する一方の連通路51と、他方の油室R2に連通する他方の連通路52と、一方の連通路51に連通する一方の容室53と、他方の連通路52に連通する他方の容室54と、この二つとなる容室53,54を画成する一対となるランド部55,56の間に形成される環状溝57と、上記の両方の連通路51,52に連通しながら環状溝57に連通する連通路58とからなり、この連通路58にチェックバルブ6,7を配設させている。
【0039】
このとき、スプール4の切欠部42端からランド部56端まで(スプール4の切欠部42端から容室54端まで)が後述する不感帯ストロークL1と同じとされ、また、スプール4の切欠部42端からランド部55端まで(スプール4の切欠部42端から容室53端まで)が後述する不感帯ストロークL2と同じとされ、したがって、上記の環状溝57は、図示しないが、この各ランド部55,56を切欠部42がいわゆる跨ぐようになるときにバイパス路を開放する。
【0040】
そして、このチェックバルブ6,7についてだが、図示するところでは、バイパス路が閉鎖状態にあるときの油圧緩衝器の伸長作動時に一方の油室R1からの作動油がバイパス路たる連通路58を介して他方の油室R2に流入することをチェックバルブ6が阻止する。
【0041】
また、上記と逆に、バイパス路が閉鎖状態にあるときの油圧緩衝器の収縮作動時に他方の油室R2からの作動油がバイパス路たる連通路58を介して一方の油室R1に流入することをチェックバルブ7が阻止する。
【0042】
そしてまた、バイパス路が開放状態にあるときには、油圧緩衝器の伸長作動時に油室R1からの作動油が容室53、環状溝57および連通路58を介して油室R2に流入することをチェックバルブ7が許容し、油圧緩衝器の収縮作動時に油室R2からの作動油が容室54、環状溝57および連通路58を介して油室R1に流入することをチェックバルブ6が許容する。
【0043】
そしてさらに、たとえば、伸長作動していた油圧緩衝器が収縮作動に反転して、スプール4がいわゆる戻るようになるとき、油室R2からの作動油が言わば未だ閉鎖されていないバイパス路を介して油室R1に流入することをチェックバルブ7が阻止し、油圧緩衝器におけるピストン体2が有する減衰バルブ22のみが作動して、所定の大きさの減衰力が発生される。
【0044】
また、上記と逆に、収縮作動していた油圧緩衝器が伸長作動に反転して、スプール4がいわゆる戻るようになるとき、油室R1からの作動油が言わば未だ閉鎖されていないバイパス路を介して油室R2に流入することをチェックバルブ6が阻止し、油圧緩衝器におけるピストン体2が有する減衰バルブ21のみが作動して、所定の大きさの減衰力が発生される。
【0045】
以上のことからすると、この発明にあっては、スプール4によってバイパス路を開閉することで、油圧緩衝器で発生される減衰力の高低調整が可能とされるのはもちろんだが、チェックバルブ6,7の協働もあって、図2に示すような減衰力の変位特性が得られる。
【0046】
つぎに、スプール4は、図示するところでは、バイパス路を図示する閉鎖状態に維持するいわゆる中立状態時に、バルブハウジング5内に位置決められる本体部41の中央部に切欠部42を有している。
【0047】
このとき、この切欠部42は、バイパス路を形成するバルブハウジング5における環状溝57に全面的に対向するが、ランド部55,56には部分的にも対向せず、しかも、ランド部55,56の図中で上下方向となる幅長さよりもその幅長さを大きくしている。
【0048】
それゆえ、このスプール4にあっては、これが図中で上下方向となるその軸線方向に摺動し、切欠部42がランド部55,56をいわゆる跨ぐ状態になるときには、一方の容室53と環状溝57との連通、あるいは、他方の容室54と環状溝57との連通を許容する。
【0049】
そして、このスプール4は、図中で下端部となる本体部41の一端部にバルブハウジング5との間にスプール4の有効ストロークV2を出現させる他方のストッパ部44を有すると共に、図中で上端側となる本体部41の他端側にバルブハウジング5との間にスプール4の有効ストロークV1を出現させる一方のストッパ部43を有している。
【0050】
一方、この発明のバルブ装置にあっては、スプール4に入力手段8が、すなわち、油圧緩衝器におけるシリンダ体1内でのピストン体2の摺動にこれに追随してスプール4を摺動させる推力を入力する入力手段8が連結されている。
【0051】
そして、この入力手段8は、図示するところでは、筒体81と、この筒体81内に収装されて図中で上下方向となるスプール4の軸芯方向に移動する移動体82と、筒体81内に収装されて図中で上下方向となるスプール4の軸芯方向から移動体82を挟持するイニシャル荷重を加えた一対のバランスバネ83,84とを有してなる。
【0052】
ちなみに、図示するところにあって、入力手段8における移動体82は、上記したスプール4における図中で上端部となる他端部を形成しているが、これに代えて、図示しないが、スプール4とは別体とされ、したがって、いわゆる組立時にスプール4における一方のストッパ部43に連結されても良い。
【0053】
一方、この入力手段8にあっては、筒体81の上端が調整軸85を介して固定側Bにロックナット85aの配在下に連結されている。
【0054】
ここで、この発明におけるバルブ装置の作動を説明すると、まず、図1に示す状態では、油圧緩衝器においてシリンダ体1内のピストン体2が中立位置にあり、バルブハウジング5内においてスプール4が中立状態にある。
【0055】
そして、このとき、入力手段にあって、バランスバネ83,84のバネ力が釣り合うから、スプール4における一方のストッパ部43とバルブハウジング5との間に出現するスプール4の有効ストロークV1と、スプール4における他方のストッパ部44とバルブハウジング5との間に出現するスプール4の有効ストロークV2とが同じになる。
【0056】
ちなみに、不感帯ストロークL1と不感帯ストロークL2との間に差がある場合には、入力手段8における調整軸85の固定側Bに対する螺入量を調整することで、これを同じにできる。
【0057】
この状態から、たとえば、油圧緩衝器において図中でピストン体2がシリンダ体1内を上昇するときを伸長作動時と仮定すると、油圧緩衝器が伸長作動すると、バランスバネ83,84にはイニシャル荷重(スプール4における摩擦力に打ち勝てる荷重)が加わっているため、入力手段8には変化がなく、したがって、スプール4が図中で上昇するようにバルブハウジング5内から突出し、このとき、スプール4の移動ストロークが不感帯ストロークL2以上になるまでは、スプール4が開放作動しないから、バイパス路が閉鎖された状態にあり、したがって、油圧緩衝器にあっては、一方の油室R1が減衰バルブ21を介して他方の油室R2に連通する。
【0058】
そして、スプール4の移動ストロークが不感帯ストロークL2以上になると、スプール4の本体部41に形成の切欠部42が図中で上方となるランド部55を跨ぎ、バイパス路を形成する一方の容室53が環状溝57と連通する状況になり、バルブハウジング5内においてバイパス路が開放される。
【0059】
それゆえ、油圧緩衝器にあっては、一方の油室R1がこの開放されたバイパス路を介して、すなわち、一方の連通路51、一方の容室53、環状溝57、チェックバルブ7および他方の連通路52を介して他方の油室R2に連通し、この限りにおいて、それまで発生されていた高い減衰力が低くなる。
【0060】
そして、油圧緩衝器において伸長作動が続行されて、スプール4の上昇が続行されると、スプール4の上昇が他方のストッパ部44のバルブハウジング5への当接で阻止されると、以降は、代わりに入力手段8でその動きが吸収される。
【0061】
すなわち、入力手段8にあっては、筒体81内に収装されている移動体82が図中で下方となるバランスバネ84を収縮させるようにして筒体81内で下降し、油圧緩衝器における伸長作動に伴う外力、すなわち、推力のスプール4への入力を回避する。
【0062】
上記したところに対して、中立状態にある油圧緩衝器において図中でピストン体2がシリンダ体1内を下降するときを収縮作動時と仮定すると、油圧緩衝器が収縮作動すると、スプール4が図中で下降するようにバルブハウジング5内に没入し、このとき、スプール4の移動ストロークが不感帯ストロークL1以上になるまでは、スプール4が開放作動しないから、バイパス路が閉鎖された状態にあり、したがって、油圧緩衝器にあっては、他方の油室R2が減衰バルブ22を介して一方の油室R1に連通する。
【0063】
そして、スプール4の移動ストロークが不感帯ストロークL1以上になると、スプール4の本体部41に形成の切欠部42が図中で下方となるランド部56を跨ぎ、バイパス路を形成する他方の容室54が環状溝57と連通する状況になり、バルブハウジング5内においてバイパス路が開放される。
【0064】
それゆえ、油圧緩衝器にあっては、他方の油室R2がこの開放されたバイパス路を介して、すなわち、他方の連通路52、他方の容室54、環状溝57、チェックバルブ6および一方の連通路52を介して一方の油室R1に連通し、この限りにおいて、それまで発生されていた高い減衰力が低くなる。
【0065】
そして、油圧緩衝器において収縮作動が続行されて、スプール4の下降が続行されると、スプール4の下降が一方のストッパ部43のバルブハウジング5への当接で阻止されると、以降は、代わりに入力手段8でその動きが吸収される。
【0066】
すなわち、入力手段8にあっては、筒体81内に収装されている移動体82が図中で上方となるバランスバネ83を収縮させるようにして筒体81内で上昇し、油圧緩衝器における収縮作動に伴う外力、すなわち、推力のスプール4への入力を回避する。
【0067】
以上のように、この発明のバルブ装置にあっては、シリンダ体1に対してロッド体3が出没する伸縮作動時にその伸縮量が上記した不感帯ストロークL1,L2を超えるとき、バルブハウジング内でスプール4が開放作動して、バイパス路を開放状態に切り換える。
【0068】
それゆえ、このことからすれば、この発明のバルブ装置にあって、上記の不感帯ストロークL1,L2を同一にするときには、油圧緩衝器がいわゆる中立状態にあると推定できる。
【0069】
すなわち、油圧緩衝器を任意の場所に設置するとき、その設置場所におけるいわゆる設置間隔が区々となり、したがって、油圧緩衝器にあって、シリンダ体1内でピストン体2を完全な中央部に位置決めることが、すなわち、中立状態にすることが事実上困難であるとしても、上記の不感帯ストロークL1,L2を同一にすることで、シリンダ体1に対するピストン体2のいわゆる中立状態を現出できる。
【0070】
そして、このとき、シリンダ体1内でピストン体2が完全な中立状態にないとしても、多くの場合に、そのズレは、いわゆる許容差よりは大きくてもいたずらに大きくならないから、不感帯ストロークL1,L2を同一にすることで、油圧緩衝器が中立状態にあると擬制しても問題はない。
【0071】
以上からすれば、この発明にあっては、油圧緩衝器を設置する際に、バルブ装置における中立状態を視認しながら確実に現出し得ることになり、従来凡そこの種の油圧緩衝器を設置するについて、いわゆる中立状態の現出が容易でなく、したがって、油圧緩衝器の設置に手間を要していたことに比較して、迅速な設置作業を実現できる。
【0072】
そして、この発明のバルブ装置にあって、入力手段8の作動でスプール4が開放作動するのはもちろんであるが、入力手段8の作動が重要視されるのがそれによってスプール4の開放作動が要請される場面であって、その要請が無くなった後は、入力手段8の関与が停止される。
【0073】
すなわち、図示するスプール4にあって、たとえば、30m/mを移動することでバイパス路を開放する設定の場合には、以降のスプール4の移動は言わば無意味になる。
【0074】
そこで、スプール4が設定量を移動するまでは、入力手段8が推力を入力するが、以降は入力手段8を介しての推力の入力はなく、スプール4が作動しないとしている。
【0075】
具体的には、図示するところでは、スプール4において、これが一定量を移動したら、さらなる移動は、スプール4が保持するストッパ部43,44のバルブハウジング5に対する当接で機械的に阻止される。
【0076】
それゆえ、この発明のバルブ装置における入力手段8にあっては、機械的に作動が停止されたスプール4に対して必要以上の推力を入力しないから、スプール4にいわゆる無理をかけず、バルブ装置における作動性を恒久的に保障し易くなる。
【0077】
また、この発明のバルブ装置にあって、スプール4における開放作動ストローク、すなわち、言わば有効ストロークが保障されることで足りるから、スプール4のコンパクト化、すなわち、バルブ装置のコンパクト化を可能にし得る。
【0078】
なお、上記したところでは、入力手段8のいわゆる関与回避が、スプール4におけるストロークエンドに基づくとするが、スプール4における有効ストロークを保障する限りには、スプール4がバルブハウジング5内で、たとえば、ランド部55,56に当接することによっても良い。
【0079】
前記したところは、この発明によるバルブ装置を装備する油圧緩衝器が建築物における制振ダンパとされる場合を例にしているが、この発明が意図するところからすれば、この油圧緩衝器が建築物以外の、たとえば、鉄道車両や機器類の制振用として利用されても良い。
【0080】
そして、前記したところでは、この発明が両ロッド型の油圧緩衝器に具現化されるとしたが、この発明が意図するところからすれば、この発明が片ロッド型の油圧緩衝器に具現化されるとしても良く、さらには、凡そ気体以外のいわゆる収縮しないとされる流体を利用する緩衝器であれば、その具現化が可能になる。
【0081】
また、前記したところでは、この発明によるバルブ装置を装備する油圧緩衝器にあって、バルブハウジング5がシリンダ体1に一体に保持されてなる場合を例にして説明したが、この発明にあっては、バルブハウジング5がシリンダ体1と分離されていても、油圧緩衝器における中立状態の実現が可能になる。
【0082】
すなわち、油圧緩衝器を所定の位置に設置するについて、先に、シリンダ体1を大まかに看て中立状態にあると言える状況で設置場所に設置し、爾後に、シリンダ体1から分離されているバルブハウジング5を移動して、不感帯ストロークL1,L2を言わば左右で同一にすれば、この油圧緩衝器における中立状態を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明の一実施形態によるバルブ装置を備える油圧緩衝器を示す原理図である。
【図2】ピストン体が有する減衰バルブによる減衰力の変位特性を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1 シリンダ体
2 ピストン体
3 ロッド体
4 スプール
5 バルブハウジング
6,7 チェックバルブ
8 入力手段
21,22 減衰バルブ
31 一方のロッド体
32 他方のロッド体
41 本体部
42 切欠部
43 一方のストッパ部
44 他方のストッパ部
51 一方の連通路
52 他方の連通路
53 一方の容室
54 他方の容室
55,56 ランド部
57 環状溝
58 連通路
81 筒体
82 他端部たる移動体
83,84 バランスバネ
B 固定側
L1,L2 不感帯ストローク
R1,R2 油室
V1,V2 スプールの有効ストローク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧緩衝器におけるシリンダ体内にピストン体で画成される一方および他方となる両方の油室のシリンダ体外での連通を可能にするバイパス路と、このバイパス路を形成するバルブハウジングに摺動可能に配設されて外部からの推力の入力時に摺動してバイパス路における一方向および他方向となるいずれか選択された方向の開放を可能にするスプールと、このスプールに推力を入力する入力手段とを有し、入力手段が油圧緩衝器におけるシリンダ体内でのピストン体の摺動に追随してスプールに推力を入力すると共にバイパス路を開放したスプールに対するさらなる推力の入力を停止してなるバルブ装置において、スプールが一端部にバルブハウジングとの間にスプールの有効ストロークを出現させる他方のストッパ部を有すると共に他端側にバルブハウジングとの間にスプールの有効ストロークを出現させる一方のストッパ部を有する一方で、他端部を入力手段の配在下に油圧緩衝器におけるロッド体またはロッド体を連結させる固定側に連結させ、入力手段がスプールと同軸に配設されて固定側に連結される筒体内にスプールにおける他端部を臨在させると共に、この他端部を筒体内に収装される一対のバランスバネ間に挟持させてなることを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
油圧緩衝器がシリンダ体内に摺動可能に収装のピストン体に両方の油室の連通を許容する減衰バルブを有すると共に、ピストン体に基端を連結させて断面積を同一にしながら両方の油室の軸芯部を挿通して先端をシリンダ体外に突出させる一方および他方となる両方のロッド体を有してなる請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
バイパス路が一方の油室に連通する一方の連通路と、他方の油室に連通する他方の連通路と、一方の連通路に連通する一方の容室と、他方の連通路に連通する他方の容室と、この二つとなる容室を画成する一対のランド部の間に形成される環状溝と、上記の一方の連通路および他方の連通路に連通しながら環状溝に連通する連通路とからなり、この連通路にチェックバルブを配設させてなる請求項1または請求項2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
スプールがバルブハウジング内に位置決められる本体部の中央部に形成されてその摺動時にバイパス路を開閉する切欠部を有してなる請求項1、請求項2または請求項3に記載のバルブ装置。
【請求項5】
入力手段が固定側に対する軸長の長短調整を可能にしてなる請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載のバルブ装置。
【請求項6】
油圧緩衝器におけるシリンダ体内の中央部付近にピストン体があるときにバイパス路がスプールで閉鎖されてなる請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5に記載のバルブ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−97589(P2009−97589A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268461(P2007−268461)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】