説明

バンド一体型クリップ

【課題】より確実に再利用することができるバンド一体型クリップを得る。
【解決手段】配索体に巻き付けて当該配索体を結束するバンド部3と、前記バンド部3を挿通させる挿通部13が形成され、前記バンド部3で前記配索体を結束した状態で挿通部13を弾性的に狭めて当該バンド部3を挟持してロックするロック部4と、被取付部材に取り付けるためのアンカ部5と、を備えたバンド一体型クリップ1において、前記挿通部13を弾性的に拡開させることで前記ロック部4による前記バンド部3のロックが解除されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンド一体型クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバンド一体型クリップとして、特許文献1の図7、図8に開示されたものが知られている。このバンド一体型クリップは、バンド部とクリップ部を有し、バンド部をハーネス等の配線や配管等の配索体に巻き付けて結束すると共にクリップ部をボディパネルなどの被取付部材に取り付けることで、当該配索体を車体に固定させるものである。
【0003】
しかし、このような構造をしたバンド一体型クリップでは、配索体を取り外す際に、切断具を用いてバンド部分を切断する必要がある。
【0004】
そこで、切断具を用いずに配索体を取り外すことのできるクリップの構造が開発されており、このような構造として、特許文献1に開示されるものが知られている。
【0005】
この特許文献1は、バンド部とクリップ部の2部品で構成され、バンド部にはスリットが形成され、当該スリットにクリップ部の支持部を嵌め込む構造をしている。そして、このスリットを拡開させることでクリップ部の支持部からバンド部を容易に取り外すことができるようになっている。
【特許文献1】特開平11−205967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかる構造では、スリットが拡開した状態でバンド部が塑性変形し、当該バンド部を配索体に再び巻き付けて結束することができなくなってしまう場合があった。また、ハーネス等の配線や配管等の配索体の結束を解くには、バンド部を切断せざるを得なかった。
【0007】
そこで、本発明は、より確実に再利用することができるバンド一体型クリップを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にあっては、配索体に巻き付けて当該配索体を結束するバンド部と、前記バンド部を挿通させる挿通部が形成され、前記バンド部で前記配索体を結束した状態で挿通部を弾性的に狭めて当該バンド部を挟持してロックするロック部と、被取付部材に取り付けるためのアンカ部と、を備え、前記挿通部を弾性的に拡開させることで前記ロック部による前記バンド部のロックが解除されるようにしたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロック部に形成された挿通部を弾性的に拡開させることで、当該挿通部によるバンド部のロックを解除させるようにしたため、バンド部やアンカ部を塑性変形させたり切断したりすることなく配索体を取り外し、かつ結束を解くことができ、バンド一体型クリップをより確実に再利用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態にかかるバンド部をロックした状態を示すバンド一体型クリップの側面図、図2は、バンド部をロックした状態を示すバンド一体型クリップの正面図、図3は、ロックが解除された状態を示すバンド一体型クリップの側面図、図4は、ロックが解除された状態を示すバンド一体型クリップの正面図、図5は、バンド部をロックした状態におけるロック部の拡大斜視図、図6は、ロックが解除された状態におけるロック部の拡大斜視図、図7は、バンド部をロックした状態を示すバンド一体型クリップの側断面図である。なお、本明細書で前方とは、図1における左側、すなわち、帯状部を挿通部に挿通させてハーネスを締め付けた状態で帯状部の先端が位置する方向をいうものとする。
【0011】
本実施形態にかかるバンド一体型クリップ1(以下、単にクリップ1という。)は、ハーネス2等の配線や配管等の配索体に巻き付けて当該配索体を結束するバンド部3と、当該バンド部3を挿通させる挿通部13が形成され、バンド部3を配索体に巻き付けて結束した状態で挿通部13を弾性的に狭めてバンド部3を挟持してロックするロック部4と、車体パネル6等の被取付部材にクリップ1を取り付けるためのアンカ部5とを備え、樹脂等により一体に成形されている。なお、以下では、バンド部3によってハーネス2を結束する場合を例示する。
【0012】
バンド部3は、可撓性を有し、ハーネス2に巻回される帯状部9と、当該帯状部9をハーネス2に巻回する際の基点となる略直方体状の基端部7と、を備えている。
【0013】
帯状部9の内面10側(ハーネス2に巻き付けた際にハーネス2と接する側)の幅方向の略中央部には、図5および図6にも示すように、凸条部10aが当該帯状部9の長手方向に延設されている。
【0014】
また、帯状部9の外面11側(内面10側と反対の側)には、図7にも示すように、複数の鋸歯状突起11aが設けられている。この鋸歯状突起11aは、帯状部9の長手方向基端部7側に面する縦面部11bと帯状部9の長手方向先端側に面する斜面部11cとを有する略直角三角形状をしており、相互に隣り合う2つの鋸歯状突起11a,11aの境界には、縦面部11bと斜面部11cとによって係合溝12が形成されている。
【0015】
また、本実施形態では、図5および図6に示すように、外面11側の幅方向両端部には縦壁部11d,11dが長手方向に延設されており、これらの縦壁部11dの間に鋸歯状突起11aが形成されている。
【0016】
一方、基端部7の下面7aには、図2や図5等に示すように、所定の間隙(溝部8a)をもって、挿通部13側(アンカ部5側)に突設される一対の突壁部8,8が設けられ、それら突壁部8間に形成される溝部8aに帯状部9の凸条部10aを挿入することで帯状部9と基端部7との横ずれ(基端部7に対する帯状部9の幅方向への相対移動)を抑制するようにしてある。すなわち、本実施形態では、凸条部10aが凸部に、溝部8aが凹部に相当する。
【0017】
アンカ部5は、図5および図6に示すように、略四角錐台状の基台部15と、差込穴6aに差し込まれる略角棒状の差込部17と、差込部17の両側に設けられた弾性的に拡縮可能な一対のフック部18,18と、を備えている。
【0018】
そして、この差込部17を差込穴6aに挿通することで、クリップ1を車体パネル6に取り付けている。すなわち、差込部17を差込穴6aに押し込むと、一対のフック部18,18は弾性的に狭まって差込穴6aを通過し、通過後に元通りに拡がり、このフック部18の先端18aと車体パネル6の裏面との係止により、クリップ1が車体パネル6に引っかかり、抜けなくなるようにしている。なお、本実施形態では、基台部15の下面15aとフック部18の先端18aとの距離D(図2参照)が車体パネル6の厚さとほぼ同一となるようにしており、車体パネル6に取り付けたクリップ1のがたつきの抑制を図っている。
【0019】
また、本実施形態では、図5〜図7に示すように、基台部15の上面15bに板状のロック爪16が挿通方向前方かつ上方に向けて斜めに立設されており、当該ロック爪16の先端部16aを係合溝12にくいこませ、帯状部9によるハーネス2の結束が解除されないようにしている。
【0020】
ロック部4には、基端部7とアンカ部5との間にハーネス2に巻き付けた帯状部9を挿通させる挿通部13が形成されている。
【0021】
本実施形態では、図2に示すように、ロック部4は、基端部7と、アンカ部5の基台部15と、略くの字状の一対のアーム部14,14と、ロック爪16と、を備えており、基端部7、基台部15およびアーム部14,14によって囲まれた領域が挿通部13となっている。
【0022】
一対のアーム部14,14は、基端部7と基台部15のそれぞれの幅方向両端部(図2の正面視で左右両側)で、基端部7の下面7aと基台部15の上面15bとを繋げるようにして設けられており、各アーム部14は、いずれも、自由状態で上腕部14aと下腕部14bとが屈曲点14cで所定角度に接続された形状に形成されている。
【0023】
ここで、本実施形態では、ハーネス2に巻き付けたバンド部3を挿通部13に挿通してロックした状態(図1、図2、図5、図7)で、屈曲点14cにおける上腕部14aと下腕部14bとの角度が、上記自由状態での角度よりわずかに広がるように構成されている。
【0024】
したがって、図1、図2、図5および図7の状態では、アーム部14は、弾性的に自由状態(すなわち屈曲点14cにおける上腕部14aと下腕部14bとの角度がより狭い状態)に復元しようとして、基端部7と基台部15とを相互に近接させ、挿通部13を上下方向に狭めようとする付勢力を発生させることになる。
【0025】
この付勢力により、図7に示すように、ロック爪16の先端部16aが係合溝12にくいこみ、ロック爪16と帯状部9とがロックされる。
【0026】
一方、上記ロック状態からクリップ1のバンド部3若しくはハーネス2を把持して基端部7をアンカ部5から離間させるように引っ張ると、図3、図4および図6に示すように、屈曲点14cを基点に上腕部14aと下腕部14bとの角度が増大し、アーム部14が弾性的に伸びることになる。このアーム部14の伸びに対応して基端部7とロック爪16とが離間し、挿通部13が弾性的に拡開してロック部4によるバンド部3のロックが解除される。その結果、バンド部3の帯状部9を挿通部13から外すことができるようになり、ハーネス2をクリップ1から取り外すことができる。また、アーム部14は、引っ張り荷重が解除されると弾性的に元の状態に復帰する。
【0027】
また、本実施形態では、略くの字状をした一対のアーム部14,14を、それぞれ挿通部13に対して外に凸となるように形成することで、ロック部4の構造を、パンタグラフ状の構造にしている。すなわち、上腕部14aと下腕部14bとが屈曲点14cで所定の角度で接続されたアーム部14を図2の正面視で左右対称に設け、各アーム部14を、特に屈曲点14cを基点として屈曲させることで、基端部7が基台部15に対して略平行のまま上下動しやすい構造にしてある。これにより、基端部7と基台部15とは上下に接離しやすく、横ずれ等が生じにくくなるため、帯状部9をより確実に挟持してロックさせることができる上、より容易にロックを解除することができるようになる。
【0028】
さらに、本実施形態では、屈曲点14cにノッチ14dを形成しており、このノッチ14dの最奥部を基点にしてアーム部14を拡縮させることで、より一層確実に基端部7と基台部15とを上下に拡げることができるようにしている。
【0029】
以上の本実施形態によれば、ロック部4に形成された挿通部13を弾性的に拡開させることで、挿通部13によるバンド部3のロックを解除できるようにしたため、バンド部3やアンカ部5を塑性変形させたり切断したりすることなく配索体としてのハーネス2を取り外すことができ、クリップ1をより確実に再利用することが可能となる。
【0030】
特に、本実施形態では、ハーネス2を基端部7の直上部(すなわち基端部7から見てアンカ部5と反対側)に配置し、ハーネス2を把持して基端部7をアンカ部5から離間させるように引っ張ると、ロックが解除され、さらに、ロックが解除された帯状部9がハーネス2によって引っ張られて挿通部13から抜けることで、バンド部3によるハーネス2の結束も解除される構成としたため、ハーネス2をクリップ1から極めて容易に取り外すことができ、ハーネス2の取り付け時や解体時の作業が容易になり、作業効率を向上させてコストを削減することができるという利点もある。
【0031】
また、本実施形態によれば、バンド部3、ロック部4およびアンカ部5を一体成形しているため、部品点数の増加を抑えてコスト的に有利に得ることができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、バンド部3に凸条部10aを設け、挿通部13に溝部8aを設けて、当該凸条部10aを溝部8aに挿入することで挿通部13とバンド部3との相対移動を抑制するようにしているため、バンド部3の挿通部13に対する横ずれによってロックが解除されてしまうことを抑制することができる。
【0033】
特に、本実施形態によれば、帯状部9の内面10側の幅方向略中央部に設けた凸条部10aを長手方向に延設しているため、ハーネス2の太さに関わらず凸条部10aを溝部8aに挿入させることができ、より確実に挿通部13とバンド部3との相対移動を抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、係合溝12の幅方向両端部には縦壁部11d,11dが形成されているため、当該係合溝12にくいこませているロック爪16の横ずれを抑制することができ、より一層確実に挿通部13とバンド部3との相対移動を抑制することができる。
【0035】
なお、凸条部10aを溝部8aに挿入してガイドさせながら帯状部9をハーネス2に巻き付け結束させれば、結束の際に帯状部9が幅方向にずれにくくなるため、ロック爪16と帯状部9とをより容易かつ確実にロックさせることができるという利点もある。
【0036】
また、本実施形態によれば、アーム部14の太さや、上腕部14aと下腕部14bとの角度、ノッチ14dの大きさなどを適宜変更することで付勢力を調整し、クリップ1を車体の天井などに逆さに取り付けた場合でも、ハーネス2の自重によってはロックが解除されないようにすることができる。
【0037】
以上、本発明にかかるバンド一体型クリップについて、上記実施形態を例にして説明したが、本発明は、上記実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【0038】
例えば、本実施形態におけるバンド一体型クリップでは、バンド部、ロック部およびアンカ部を一体成形しているが、それぞれ別個に形成したものを一体化させてもよい。
【0039】
また、アーム部の形状、構成等も種々に変更することができる。例えば、略U字状となるように曲げたアーム部を形成してもよいし、複数回屈曲させた形状のアーム部を形成してもよい。また、略くの字状をしたアーム部を挿通部に対して内に凸となるように形成させてもよいし、さらに、アーム部を片側だけに設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態にかかるバンド部をロックした状態を示すバンド一体型クリップの側面図。
【図2】本発明の実施形態にかかるバンド部をロックした状態を示すバンド一体型クリップの正面図。
【図3】本発明の実施形態にかかるロックが解除された状態を示すバンド一体型クリップの側面図。
【図4】本発明の実施形態にかかるロックが解除された状態を示すバンド一体型クリップの正面図。
【図5】本発明の実施形態にかかるバンド部をロックした状態におけるロック部の拡大斜視図。
【図6】本発明の実施形態にかかるロックが解除された状態におけるロック部の拡大斜視図。
【図7】本発明の実施形態にかかるバンド部をロックした状態を示すバンド一体型クリップの側断面図。
【符号の説明】
【0041】
1 バンド一体型クリップ
2 ハーネス(配索体)
3 バンド部
4 ロック部
5 アンカ部
6 車体パネル(被取付部材)
7 基端部
8a 溝部(凹部)
9 帯状部
10a 凸条部(凸部)
13 挿通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配索体に巻き付けて当該配索体を結束するバンド部と、
前記バンド部を挿通させる挿通部が形成され、前記バンド部で前記配索体を結束した状態で挿通部を弾性的に狭めて当該バンド部を挟持してロックするロック部と、
被取付部材に取り付けるためのアンカ部と、
を備え、
前記挿通部を弾性的に拡開させることで前記ロック部による前記バンド部のロックが解除されるようにしたことを特徴とするバンド一体型クリップ。
【請求項2】
前記挿通部は、前記配索体に巻き付けた前記バンド部の帯状部を当該バンド部の基端部と前記アンカ部との間に挿通させるものとして形成され、
前記基端部をアンカ部から離間させることで、前記挿通部が弾性的に拡開するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のバンド一体型クリップ。
【請求項3】
前記バンド部、ロック部およびアンカ部を一体成形したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバンド一体型クリップ。
【請求項4】
前記挿通部と前記バンド部のうち一方には凸部を、かつ他方には凹部を設け、当該凸部と凹部との係止により、挿通部とバンド部との相対移動を抑制するようにしたことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1つに記載のバンド一体型クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−170483(P2007−170483A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366418(P2005−366418)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】