説明

バンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造

【課題】バンパリインフォースメントから衝撃吸収部材に荷重が入力されたときに、その衝撃吸収部材が車両前後方向へ安定して圧壊されるようにする。
【解決手段】サイドメンバ16とバンパリインフォースメント14との間に介在され、荷重によって車両前後方向へ圧壊されるように、車両前方側に行くに従って先細りとなる形状を形成する稜線17を少なくとも4本備えた角筒状に形成されるとともに、先端部18Bの車幅方向外側の稜線17に掛かる部位に先端切欠部19が形成された衝撃吸収部材18と、上面部24及び下面部26が先端部18Bに溶接されることで固着され、先端部18Bとバンパリインフォースメント14とを連結する連結部材20とを備え、連結部材20に衝撃吸収部材18よりも先に変形するように形成され、衝撃吸収部材18の車両前後方向への圧壊を促進させる複数の脆弱部(ビード部38他)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フロントサイドメンバの前端部とフロントバンパリインフォースメントとの間に、衝撃吸収部材としてのクラッシュボックスを設けることが行われている。このクラッシュボックスは、車両の前面衝突時に、フロントバンパリインフォースメントから入力された荷重を受けて座屈(圧壊)することにより、所定のエネルギー吸収を行うようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−24084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このクラッシュボックスは、前面衝突時のエネルギー吸収が効果的に行われるように、その軸方向(車両前後方向)へ圧壊(変形)されることが望ましい。しかしながら、このクラッシュボックスは、その圧壊方向が軸方向からずれてしまうことがあり、所望とする変形モードを安定して得ることが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、バンパリインフォースメントから衝撃吸収部材に荷重が入力されたときに、その衝撃吸収部材が車両前後方向へ安定して圧壊されるようにしたバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造は、車両前後方向の端部側に設けられるとともに車幅方向に沿って延在し、少なくとも車両前後方向から加えられた荷重を受けるバンパリインフォースメントと、前記バンパリインフォースメントの長手方向の両端部付近から車両前後方向に沿って略平行に延在された左右一対のサイドメンバと、前記サイドメンバの前記バンパリインフォースメント側の端部と前記バンパリインフォースメントとの間に介在され、前記バンパリインフォースメントから入力された荷重によって車両前後方向へ圧壊されるように、前記バンパリインフォースメント側に行くに従って先細りとなる形状を形成する稜線を少なくとも4本備えた角筒状に形成されるとともに、該先端部の車幅方向外側の前記稜線に掛かる部位に先端切欠部が形成された衝撃吸収部材と、車両前後方向端部が前記衝撃吸収部材の前記先端部内に入り込む上面部及び下面部を有し、前記上面部及び前記下面部の外面が前記先端部の辺縁部と溶接されることで該先端部に固着され、前記先端部と前記バンパリインフォースメントとを連結する連結部材と、前記連結部材が前記衝撃吸収部材よりも先に変形するように該連結部材に形成され、前記衝撃吸収部材の車両前後方向への圧壊を促進させる複数の脆弱部と、を有することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、例えば前面衝突時にバンパリインフォースメントに圧縮荷重が入力されると、その圧縮荷重は連結部材を介して衝撃吸収部材に伝達される。この衝撃吸収部材は、前端部側(バンパリインフォースメント側)に行くに従って先細りとなる形状を形成する稜線を少なくとも4本備えた角筒状に形成され、その先端部の車幅方向外側の稜線に掛かる部位に先端切欠部が形成されている。そのため、この衝撃吸収部材は、その軸方向(車両前後方向)に荷重を受けて前端部側から圧壊され、その過程で前面衝突時のエネルギーを吸収する。
【0008】
ここで、請求項1に記載の発明では、連結部材に、衝撃吸収部材よりも先に変形することで、衝撃吸収部材の軸方向(車両前後方向)への圧壊を促進させる複数の脆弱部が形成されている。したがって、衝撃吸収部材は、その軸方向(車両前後方向)に安定して圧壊され、衝突時のエネルギー吸収が充分になされる(衝突時のエネルギー吸収性能を高めることができる)。
【0009】
また、請求項2に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造は、請求項1に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造において、前記脆弱部が、前記上面部及び前記下面部の前記車両前後方向端部を互いに接近させるように、前記上面部及び前記下面部に形成された折曲部を含むことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、連結部材の上面部及び下面部における車両前後方向端部が、互いに接近するように折曲部によって折り曲げられているので、連結部材は衝撃吸収部材よりも先に変形することができるとともに、衝撃吸収部材の軸方向(車両前後方向)への圧壊を阻害することがない。したがって、衝撃吸収部材は、その軸方向(車両前後方向)に安定して圧壊される。
【0011】
また、請求項3に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造は、請求項2に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造において、前記脆弱部が、前記折曲部が折れ曲がり易くなるように、前記上面部及び前記下面部に形成された縁端切欠部を含むことを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、縁端切欠部によって折曲部が折れ曲がり易くなっている。したがって、連結部材は衝撃吸収部材よりも先に変形し易い。
【0013】
また、請求項4に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造において、前記脆弱部が、前記衝撃吸収部材との溶接部位よりも前記バンパリインフォースメント側における前記上面部及び前記下面部の少なくとも一方に形成されたビード部を含むことを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、衝撃吸収部材との溶接部位よりもバンパリインフォースメント側における上面部及び下面部の少なくとも一方にビード部が形成されているので、連結部材は衝撃吸収部材内に入り込むように先に変形する。これにより、衝撃吸収部材の先端部が、溶接部を回転中心として衝撃吸収部材内に入り込むように回転しつつ変形するので、衝撃吸収部材は、その軸方向(車両前後方向)に安定して圧壊される。
【0015】
また、請求項5に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造において、前記連結部材が、前記バンパリインフォースメントに対向し、前記上面部と前記下面部とを一体に連結する正面部と、該正面部の車幅方向内側端部から車両前後方向へ延在する側面部と、を備え、前記脆弱部が、前記側面部の車両上側端部と前記上面部とを接合するスポット溶接部と、前記側面部の車両下側端部と前記下面部とを接合するスポット溶接部を含むことを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、側面部の車両上側端部と上面部とがスポット溶接され、側面部の車両下側端部と下面部とがスポット溶接されている。各スポット溶接部の接合強度は弱いため、連結部材は衝撃吸収部材よりも先に変形することができる。したがって、衝撃吸収部材は、その軸方向(車両前後方向)に安定して圧壊される。
【0017】
また、請求項6に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造は、請求項5に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造において、前記脆弱部が、前記正面部と前記側面部と前記上面部とで構成されるコーナー部と、前記正面部と前記側面部と前記下面部とで構成されるコーナー部に、それぞれ形成された孔部を含むことを特徴としている。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、正面部と側面部と上面部とで構成されるコーナー部と、正面部と側面部と下面部とで構成されるコーナー部に、それぞれ孔部が形成されているので、各コーナー部を容易に潰すことができる。つまり、これにより、連結部材は衝撃吸収部材よりも先に変形し易い。したがって、衝撃吸収部材は、その軸方向(車両前後方向)に安定して圧壊される。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、バンパリインフォースメントから衝撃吸収部材に荷重が入力されたときに、その衝撃吸収部材が車両前後方向へ安定して圧壊されるようにしたバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】バンパリインフォースメントとクラッシュボックスとのブラケットを介した本実施形態に係る連結構造を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る連結構造を構成するブラケットを示す斜視図である。
【図3】クラッシュボックスに固着されたブラケットを示す斜視図である。
【図4】クラッシュボックスに固着されたブラケットを示す側面図である。
【図5】クラッシュボックスに固着されたブラケットを示す平面図である。
【図6】本実施形態に係る連結構造の衝突前の状態を示す側断面図である。
【図7】本実施形態に係る連結構造の衝突後の状態を示す側断面図である。
【図8】比較例に係る連結構造の衝突後の状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、各図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示し、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車幅方向内側を示している。また、本実施形態では、車両の前部側(フロントバンパ12側)における連結構造10を例に採って説明する。
【0022】
図1で示すように、車両の前端部には、フロントバンパ12の一部を構成する高強度及び高剛性の車体骨格部材としてのフロントバンパリインフォースメント14が車幅方向に沿って延在されている。なお、図示のフロントバンパリインフォースメント14の断面形状は、コ字状(開断面形状)とされているが、これに限定されるものではなく、例えば矩形枠状や「日」の字状、「目」の字状等にされる場合もある。
【0023】
また、フロントバンパ12は、少なくとも車両前後方向から加えられた荷重を受ける鋼板等からなるフロントバンパリインフォースメント14と、その前面側にフロントバンパリインフォースメント14に沿って配置されたウレタンフォーム等からなる図示しないフロントバンパアブソーバと、その前面側にフロントバンパアブソーバに沿って延在されて意匠面を構成する図示しないフロントバンパカバー等を含んで構成されている。
【0024】
フロントバンパリインフォースメント14の長手方向における両端部14A近傍の車両後方側、即ち車両前部側の両サイドには、閉断面構造に構成された長尺状のフロントサイドメンバ16が左右一対で(車両前後方向に沿って)略平行に配置されている。そして、各フロントサイドメンバ16の前端部16Aとフロントバンパリインフォースメント14の長手方向の両端部14Aとの間には、衝撃吸収部材としてのクラッシュボックス18がそれぞれ介在されている。
【0025】
クラッシュボックス18は、金属製とされており、図4で詳細に示すように、車両前方側(フロントバンパリインフォースメント14側)に行くに従って先細り形状となる閉断面形状に形成されている。より詳細には、このクラッシュボックス18は、車両前方側に行くに従って先細りとなる形状を形成する稜線17を4本備えた四角筒状に形成されており、その車幅方向外側には、車両上下方向へ突出するフランジ部18Aを有している。
【0026】
なお、クラッシュボックス18の形状は、図示の四角筒状に限定されるものではなく、稜線17を少なくとも4本備えた角筒状に形成されていればよい。また、クラッシュボックス18の後端部18Dは、図6で詳細に示すように、フロントサイドメンバ16の前端部16Aの内方へ挿入された状態で、図示しないボルト及びナットといった締結具によって固定されるようになっている。
【0027】
また、図5で詳細に示すように、クラッシュボックス18の前端部(先端部)18Bにおける車幅方向外側は、稜線17に掛かる平面視略「L」字状に、フランジ部18Aを含めて切り欠かれており(以下、この部位を「先端切欠部19」という)、後述するブラケット20との間に車両前後方向の間隙Sが形成されるようになっている。この間隙S(先端切欠部19)が形成されることで、クラッシュボックス18の前端部18Bにおける車幅方向外側部分が弱体化されるようになっている。
【0028】
このように、クラッシュボックス18が、先細りとなる形状を形成する4本の稜線17を有し、その前端部18Bに稜線17に掛かる先端切欠部19(間隙S)が形成されていると(前端部18Bが弱体化されていると)、クラッシュボックス18を、その軸方向(車両前後方向)に沿って圧壊(軸圧縮塑性変形)させ易くなる。なお、この前端部18Bに形成された先端切欠部19の車両前後方向の長さD1及び車幅方向の長さD2は、共に5mm程度とされている。
【0029】
また、このクラッシュボックス18の前端部18Bと、フロントバンパリインフォースメント14の長手方向の端部14Aとは、連結部材としてのブラケット20によって連結されるようになっている。
【0030】
図2で示すように、このブラケット20は、フロントバンパリインフォースメント14に対向する正面部22と、その正面部22の車両上下方向両端部から車両後方側へ延在する上面部24及び下面部26と、正面部22の車幅方向内側端部から車両後方側へ延在する側面部28と、を有している。そして、正面部22の車幅方向外側は、車両後方側に向けて鋭角に折り曲げられており、上面部24及び下面部26は、車幅方向外側に行くに従って先細り形状となっている(図5参照)。
【0031】
また、図3〜図6で示すように、このブラケット20は、上面部24及び下面部26の正面部22とは反対側の車両前後方向端部、即ち後端部25、27が、クラッシュボックス18の前端部18Bの内方へ挿入された(内部に入り込んだ)状態で、上面部24及び下面部26の外面24A、26Aが、クラッシュボックス18の前端部18Bにおける車両前方側の上下辺縁部18Cと、車幅方向にアーク溶接(以下、この部位を「溶接部30」という)されている。
【0032】
これにより、ブラケット20が、クラッシュボックス18のフロントバンパリインフォースメント14側である前端部18Bに固着される構成である。なお、図5で示すように、溶接部30から後端部25、27の辺縁部までの長さD3は、平面視で15mm以上とすることが望ましい。そして、このブラケット20の正面部22側が、フロントバンパリインフォースメント14の端部14Aに連結(接続)されるようになっている。
【0033】
すなわち、ブラケット20の正面部22の中央には貫通孔22Aが形成されており、ブラケット20内に設けられた円筒状の接続部40が、その貫通孔22Aから車両前方に向けて突出されている。そして、この正面部22から突出された接続部40が、フロントバンパリインフォースメント14の断面内方へ挿入され、そのフロントバンパリインフォースメント14内に設けられた図示しない被接続部と接続されるようになっている。
【0034】
また、図2〜図4で示すように、このブラケット20の上面部24及び下面部26における後端部25、27は、互いに接近するように屈曲形成されている。すなわち、上面部24及び下面部26の所定位置に車幅方向に沿って形成された脆弱部としての折曲部32によって、その後端部25、27が、ブラケット20の内方側へ向けて折り曲げられている。
【0035】
ここで、本実施形態で言う「脆弱部」とは、ブラケット20により、クラッシュボックス18の軸方向への圧壊(軸圧縮塑性変形)を促進させるためのものであり、フロントバンパリインフォースメント14から車両後方側への荷重が入力されたときに、ブラケット20がクラッシュボックス18よりも先に変形するように構成されたものである。本実施形態に係るブラケット20には、このような脆弱部が複数形成されている。
【0036】
すなわち、フロントバンパリインフォースメント14から荷重が入力されたときに、上記した折曲部32によって後端部25、27が折れ曲がり易くなるように、折曲部32の車幅方向内側への延長線上における上面部24及び下面部26の辺縁部には、脆弱部としての縁端切欠部34が形成されている。そして、折曲部32の車幅方向外側への延長線上における上面部24及び下面部26の辺縁部にも、脆弱部としての縁端切欠部36が形成されている。
【0037】
また、溶接部30よりも車両前方側における上面部24及び下面部26には、車幅方向を長手方向とする脆弱部としてのビード部38が形成されている。このビード部38の断面形状は略半円形状とされており、上面部24及び下面部26の外面24A、26Aからブラケット20の内方側へ凹む凹溝状に形成されている。
【0038】
また、側面部28の車両上側端部は、上面部24の内面側へ入り込むように折り曲げられており、その上面部24とスポット溶接されて接合されている。同様に、側面部28の車両下側端部は、下面部26の内面側へ入り込むように折り曲げられており、その下面部26とスポット溶接されて接合されている。これら2つのスポット溶接部46も、接合強度が弱いことから、ブラケット20における脆弱部の1つを構成している。
【0039】
また、正面部22と側面部28と上面部24とで構成されるコーナー部42と、正面部22と側面部28と下面部26とで構成されるコーナー部44には、脆弱部としての貫通された孔部42A、44Aが形成されている。なお、図示の孔部42A、44Aは、円形状に形成されているが、孔部42A、44Aの形状は、特に限定されるものではない。更に、このブラケット20の正面部22及び側面部28等には、ブラケット20を軽量化するための貫通孔48が複数形成されている。
【0040】
以上のような連結構造10において、次にその作用について、主に図7、図8を基に説明する。車両の前面衝突時にフロントバンパリインフォースメント14に衝突荷重(圧縮荷重)が入力されると、その衝突荷重は、フロントバンパリインフォースメント14からブラケット20を介してクラッシュボックス18に伝達される。
【0041】
ここで、まず、図8で示す比較例について説明する。この比較例に係るブラケット120には、クラッシュボックス18の軸方向への圧壊を促進させる脆弱部が形成されていない。すなわち、ブラケット120の後端部125、127は、互いに接近するように折り曲げられてなく、また、上記したビード部等も上面部124及び下面部126に形成されていない。
【0042】
そのため、フロントバンパリインフォースメント114から衝突荷重Fが入力されると、例えば図8で示すように、このブラケット120は、クラッシュボックス118を、その軸方向ではなく、フロントサイドメンバ116の車両上方側へ変形させつつ、その衝突荷重Fをクラッシュボックス118に伝達することがある(変形モードが不安定になっている)。
【0043】
つまり、この比較例に係るブラケット120では、クラッシュボックス18の軸方向への圧壊を阻害してしまい、前面衝突時のエネルギー吸収がクラッシュボックス118によって効果的に行われない現象を生じさせることがある。前面衝突時のエネルギー吸収がクラッシュボックス118によって効果的に行われないと、フロントサイドメンバ16へ伝達される荷重が増加する。
【0044】
これに対し、本実施形態に係るブラケット20には、クラッシュボックス18の軸方向への圧壊を促進させる複数の脆弱部が形成されている。すなわち、このブラケット20の後端部25、27は、折曲部32によって互いに接近する方向へ折り曲げられている。そして、後端部25、27を折り曲げ易くするための縁端切欠部34、36が、ブラケット20の上面部24及び下面部26に形成されている。
【0045】
更に、溶接部30よりも車両前方側の上面部24及び下面部26には、凹溝状のビード部38が車幅方向に沿って形成されている。また、ブラケット20の上面部24と側面部28及び下面部26と側面部28は、それぞれ1つのスポット溶接部46によって接合されており、ブラケット20のコーナー部42、44には、貫通された孔部42A、44Aが形成されている。
【0046】
したがって、ブラケット20は、車両前方側から衝突荷重Fが入力されると、クラッシュボックス18よりも先に変形が開始される。つまり、このブラケット20は、その上面部24及び下面部26が溶接部30によってクラッシュボックス18の前端部18Bにおける上下辺縁部18Cに接合され、かつ上記した複数の脆弱部を有しているので、その後端部25、27がクラッシュボックス18の内方側へ向かうように、各コーナー部42、44も含めて容易に塑性変形する。
【0047】
これにより、図7で示すように、クラッシュボックス18の前端部18Bが、溶接部30を回転中心としてクラッシュボックス18内に入り込むように回転しつつ変形するので、ブラケット20によって、クラッシュボックス18の軸方向への圧壊が阻害されることがなく、その前端部18Bの軸方向へ向かう圧壊が効果的に誘発される。
【0048】
つまり、これにより、クラッシュボックス18は、その前端部18B側から軸方向へ(軸方向以外にずれることなく)順次圧壊されて行くので、その軸方向で効率よく衝突荷重Fを受けることができ(軸方向のクラッシュストローク量を稼ぐことができ)、前面衝突時のエネルギーを効果的に吸収することができる。
【0049】
なお、クラッシュボックス18が、その軸方向へ圧壊されることにより、前面衝突時のエネルギーが充分に吸収されるが、クラッシュボックス18で吸収された後の残りのエネルギーは、左右一対のフロントサイドメンバ16に伝達され、そのフロントサイドメンバ16によって吸収される。
【0050】
以上、説明したように、フロントバンパリインフォースメント14からブラケット20を介してクラッシュボックス18の前端部18Bに衝突荷重Fが入力されても、そのブラケット20によって、クラッシュボックス18は、その前端部18B側から軸方向へ安定して圧壊される。したがって、衝突時のエネルギー吸収が充分になされる(衝突時のエネルギー吸収性能を高めることができる)。
【0051】
しかも、このブラケット20に複数の脆弱部を設定することにより、クラッシュボックス18が軸方向へ圧壊される前に、ブラケット20が軸圧縮荷重作用方向に塑性変形するので、クラッシュボックス18の圧壊によるエネルギー吸収前に、ある程度のエネルギーが吸収される構成にもなっている。つまり、クラッシュボックス18が潰れる前に、ブラケット20の軸圧縮塑性変形を利用してエネルギーを吸収させているので、衝突時のエネルギー吸収効率をより一層高めることができる。
【0052】
ところで、衝突の形態には種々あり、フルラップの前面衝突もあれば、オフセット衝突や斜突という衝突形態もある。このようなオフセット衝突や斜突があった場合、片方のクラッシュボックス18の前端部18Bには、ブラケット20を介して軸方向に圧縮荷重が入力されるだけでなく、比較的大きなトルク(曲げモーメント)も作用する。
【0053】
しかしながら、このブラケット20には、クラッシュボックス18の軸方向への圧壊を促進させる脆弱部が複数形成されているので、先にこのブラケット20が変形することで、クラッシュボックス18の前端部18Bに対し、その軸方向へ圧縮荷重を伝達し易い。したがって、オフセット衝突や斜突の場合でも、クラッシュボックス18の軸方向への圧壊によるエネルギー吸収が充分になされる。
【0054】
しかも、これにより、図示しないエンジンコンパートメント部の潰れ量を増加させることができるので、同等のエネルギー吸収性能を有した状態で、特定の部材の板厚を低減させることができるなどの利点もある。
【0055】
また、本実施形態では、フロントバンパリインフォースメント14とクラッシュボックス18とをブラケット20を使って連結したので、即ちフロントバンパリインフォースメント14とは別部品であるブラケット20を用いて、クラッシュボックス18と連結したので、ブラケット20自体の形状、構造、材質を任意に選択することができる。
【0056】
また、ブラケット20とクラッシュボックス18の前端部18Bとの結合強度も任意に設定することができる。つまり、ブラケット20自体の作り方を変えることで、ブラケット20の強度及び剛性や、ブラケット20とクラッシュボックス18の前端部18Bとの結合強度等を、ある程度自由にチューニングすることができるといった利点がある。
【0057】
なお、本実施形態では、ブラケット20の上面部24及び下面部26に脆弱部としてのビード部38を形成したが、ビード部38は上面部24及び下面部26の少なくとも一方に形成されていてもよい。また、ビード部38は、弱化構造であれば、凹溝に限らず、種々の構造(例えば長孔等)を採用してもよい。
【0058】
更に、本実施形態では、上面部24及び下面部26に縁端切欠部34及び縁端切欠部36の両方を形成したが、上面部24及び下面部26には、縁端切欠部34又は縁端切欠部36だけが形成される構成としてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、クラッシュボックス18を金属製としたが、これに限らず、例えばCFRP(炭素繊維強化樹脂)製とし、フロントサイドメンバ16の前端部16Aに接着剤によって固定するようにしてもよい。そして、フロントバンパリインフォースメント14の材質も鋼板に限らず、アルミニウム合金製としてもよい。また、本実施形態では、フロントバンパ12側の連結構造10について説明したが、リアバンパ側も同様に適用が可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 連結構造
14 フロントバンパリインフォースメント
16 フロントサイドメンバ
17 稜線
18 クラッシュボックス(衝撃吸収部材)
19 先端切欠部
20 ブラケット(連結部材)
22 正面部
24 上面部
26 下面部
28 側面部
30 溶接部
32 折曲部(脆弱部)
34 縁端切欠部(脆弱部)
36 縁端切欠部(脆弱部)
38 ビード部(脆弱部)
42 コーナー部
42A 孔部(脆弱部)
44 コーナー部
44A 孔部(脆弱部)
46 スポット溶接部(脆弱部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向の端部側に設けられるとともに車幅方向に沿って延在し、少なくとも車両前後方向から加えられた荷重を受けるバンパリインフォースメントと、
前記バンパリインフォースメントの長手方向の両端部付近から車両前後方向に沿って略平行に延在された左右一対のサイドメンバと、
前記サイドメンバの前記バンパリインフォースメント側の端部と前記バンパリインフォースメントとの間に介在され、前記バンパリインフォースメントから入力された荷重によって車両前後方向へ圧壊されるように、前記バンパリインフォースメント側に行くに従って先細りとなる形状を形成する稜線を少なくとも4本備えた角筒状に形成されるとともに、該先端部の車幅方向外側の前記稜線に掛かる部位に先端切欠部が形成された衝撃吸収部材と、
車両前後方向端部が前記衝撃吸収部材の前記先端部内に入り込む上面部及び下面部を有し、前記上面部及び前記下面部の外面が前記先端部の辺縁部と溶接されることで該先端部に固着され、前記先端部と前記バンパリインフォースメントとを連結する連結部材と、
前記連結部材が前記衝撃吸収部材よりも先に変形するように該連結部材に形成され、前記衝撃吸収部材の車両前後方向への圧壊を促進させる複数の脆弱部と、
を有することを特徴とするバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造。
【請求項2】
前記脆弱部は、前記上面部及び前記下面部の前記車両前後方向端部を互いに接近させるように、前記上面部及び前記下面部に形成された折曲部を含むことを特徴とする請求項1に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造。
【請求項3】
前記脆弱部は、前記折曲部が折れ曲がり易くなるように、前記上面部及び前記下面部に形成された縁端切欠部を含むことを特徴とする請求項2に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造。
【請求項4】
前記脆弱部は、前記衝撃吸収部材との溶接部位よりも前記バンパリインフォースメント側における前記上面部及び前記下面部の少なくとも一方に形成されたビード部を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造。
【請求項5】
前記連結部材は、前記バンパリインフォースメントに対向し、前記上面部と前記下面部とを一体に連結する正面部と、該正面部の車幅方向内側端部から車両前後方向へ延在する側面部と、を備え、
前記脆弱部は、前記側面部の車両上側端部と前記上面部とを接合するスポット溶接部と、前記側面部の車両下側端部と前記下面部とを接合するスポット溶接部を含むことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造。
【請求項6】
前記脆弱部は、前記正面部と前記側面部と前記上面部とで構成されるコーナー部と、前記正面部と前記側面部と前記下面部とで構成されるコーナー部に、それぞれ形成された孔部を含むことを特徴とする請求項5に記載のバンパリインフォースメントと衝撃吸収部材との連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−126217(P2012−126217A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278501(P2010−278501)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】