説明

バンプ形成方法およびその装置

【解決手段】 レーザ光Lを対象物に照射して、該対象物の一部を溶融させてバンプ4を形成するバンプ形成方法に関し、上記対象物が銅である場合には、上記レーザ光Lを、0.1〜10msecのパルス幅でパルス照射して、1パルスあたりのエネルギー密度を20〜50J/mmとする。
1回目のレーザ光Lの照射によって形成された溶融部分に、さらにレーザ光Lが照射されると、衝撃により溶融部分の中央がへこんで表面波振動が誘起され、その後溶融部分の外縁で反転した表面波が中央で衝突して上方に向けて隆起し、バンプ4として凝固する。
【効果】 バンプ4を高く形成することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバンプ形成方法およびその装置に関し、詳しくはレーザ光を対象物に照射して対象物の一部を溶融させてバンプを形成するバンプ形成方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物の表面にレーザ光を照射し、該対象物の一部を溶融させてバンプ(錐状突起)を形成するバンプ形成方法が知られている(特許文献1)。
一方、電子基板の表面に設けた電極パッドと電子部品などの相手物とを接触させるため、上記電極パッドの表面に20〜50μmの高さのバンプを形成することが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−31110号公報
【特許文献2】特開平5−235001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1によるバンプ形成方法で形成したバンプは、電子放出金属の表面に形成されるマイクロカソードであり、上記特許文献2のような電極パッドのバンプとしては低い(1μm程度)という問題がある。
このような問題に鑑み、本発明は例えば電極パッドに好適な高さのバンプを形成することが可能なバンプ形成方法およびその装置を提供するものである。
【0005】
すなわち、請求項1にかかるバンプ形成方法は、レーザ光を対象物に照射して、該対象物の一部を溶融させてバンプを形成するバンプ形成方法において、
上記対象物を銅とし、
上記レーザ光を、0.1〜10msecのパルス幅でパルス照射して、1パルスあたりのエネルギー密度を20〜50J/mmとすることを特徴としている。
【0006】
請求項3にかかるバンプ形成方法は、レーザ光を対象物に照射して、該対象物の一部を溶融させてバンプを形成するバンプ形成方法において、
上記対象物をシリコンとし、
上記レーザ光を、0.1〜1msecのパルス幅でパルス照射して、1パルスあたりのエネルギー密度を5〜70J/mmとすることを特徴としている。
【0007】
請求項6にかかるバンプ形成方法は、レーザ光を対象物に照射して、該対象物の一部を溶融させてバンプを形成するバンプ形成方法において、
上記対象物を鉄合金とし、
上記レーザ光を、0.1〜1msecのパルス幅でパルス照射して、1パルスあたりのエネルギー密度を40〜350J/mmとすることを特徴としている。
【0008】
請求項9にかかるバンプ形成装置は、対象物を支持する支持手段と、レーザ光を発振するレーザ発振器とを備え、
上記レーザ光を対象物に照射して対象物の一部を溶融させてバンプを形成するバンプ形成装置において、
上記レーザ発振器はファイバレーザ発振器であって、かつ励起光のON/OFFを制御してレーザ光をパルス照射させるパルス制御手段を備え、
形成するバンプのサイズ、もしくは、上記対象物の材質を変更する際には、上記パルス制御手段によって励起光のON時間、OFF時間、または、励起回数の少なくともいずれか1つの設定を変更することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記請求項1、3、6におけるバンプ形成方法によれば、対象物の素材に応じてそれぞれレーザ照射のパルス幅およびエネルギー密度を最適なものとすることで、好適な高さのバンプを形成することが可能となっている。
具体的には、対象物の表面に1回目のレーザ光の照射が行われると対象物の表面が溶融し、この溶融部分にさらにレーザ光を照射すると、上記溶融部分の表面にプラズマが発生して溶融部分の表面に表面波振動が誘起される。
この表面波は溶融部分の中心から外側に向けて同心円状に広がった後に該溶融部分の外縁で反転し、中央で衝突して上方に隆起した状態で凝固してバンプとなる。
そして、上記各素材に対して上記条件でレーザ光をパルス照射することで、十分な高さのバンプを得ることが可能となっている。
【0010】
また請求項9におけるバンプ形成装置によれば、パルス制御手段が形成するバンプのサイズや対象物の材質に応じて、照射されるレーザ光のパルス幅および1パルスあたりのエネルギー密度を設定することで、好適な高さのバンプを形成することが可能となっている。
具体的には、対象物の表面に1回目のレーザ光の照射が行われると、対象物の表面が溶融し、この溶融部分にさらにレーザ光を照射すると、上記溶融部分の表面にプラズマが発生して溶融部分の表面に表面波振動が誘起される。
この表面波は溶融部分の中心から外側に向けて同心円状に広がった後に該溶融部分の外縁で反転し、中央で衝突して上方に隆起した状態で凝固してバンプとなる。
そして、上記レーザ発振器をファイバレーザ発振器とし、パルス制御手段が励起光のON/OFFを制御してレーザ光をパルス照射させることで、上記溶融部分を衝撃により弾き飛ばすことなく溶融させることができ、上記バンプを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施例にかかるバンプ形成装置の側面図。
【図2】パルス照射されるレーザ光の出力を示した図。
【図3】バンプの形成される過程を説明する図。
【図4】第2実施例におけるバンプ形成方法を説明する図。
【図5】第3実施例におけるバンプ形成方法を説明する図。
【図6】第4実施例におけるバンプ形成方法を説明する図。
【図7】第5実施例におけるバンプ形成方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図示実施例について説明すると、図1は第1実施例にかかるバンプ(突起)形成装置1を示し、基板2に設けた電極パッドからなる対象物3にバンプ(突起)4を形成する装置となっている。
上記バンプ形成装置1は、上記基板2の載置される支持手段としてのX−Yテーブル5と、レーザ光Lを発振するレーザ発振器6と、上記レーザ光Lを基板2に照射する加工ヘッド7とから構成されている。
上記基板2の表面には銅で製造された対象物3が所定のパターンで配置され、上記基板2がバンプ形成装置1に供給される際にはその表面が平坦となっている。
上記X−Yテーブル5は従来公知であり、基板2を水平にX−Y方向に移動させて、上記加工ヘッド7の下方に所要の対象物3を移動させるものとなっている。
上記加工ヘッド7は、レーザ光Lの光路上に設けたベンドミラー8と、該ベンドミラー8によって下方に反射したレーザ光Lを集光する集光レンズ9とを備えている。
上記集光レンズ9はレーザ発振器6より照射されたレーザ光Lを上記対象物3の表面に所定のスポット径で集光させる凸レンズとなっており、集光されたレーザ光Lの出力分布はその中心が最大となるようになっている。
【0013】
レーザ発振器6はいわゆるファイバレーザ発振器となっており、近赤外線域のレーザ光Lを照射するとともに、レーザ光Lをパルス照射するためのパルス制御手段6aを備えている。
上記ファイバレーザ発振器は、励起光に大きな出力を必要とせず、半導体レーザによる励起が可能であり、また短時間での励起光のON/OFFの繰り返しに対応可能であるという特徴を有している。
上記パルス制御手段6aはファイバレーザ発振器における励起光のON/OFFを制御して、照射されるレーザ光Lのパルス幅やパルスインターバルを設定することが可能となっている。
このようなファイバレーザ発振器を用いるとともに、パルス制御手段6aが励起光のON/OFFによりレーザ光Lのパルス照射を行うことで、Qスイッチによるようなパルス幅が短く尖頭値の高いレーザ光Lではなく、必要なパルス幅に渡り平均的なエネルギー密度でワンパルス毎のレーザ光Lを照射することができる。
つまり、レーザ発振器6からは図2に示すように、縦軸をレーザ光Lのエネルギー密度、横軸を時間とした場合、レーザ発振器6より照射されるレーザ光Lの出力は矩形状に現れるようになっている。
【0014】
そして、対象物3の素材が銅である場合、上記レーザ発振器6からは100Wのレーザ光Lを照射するとともに、上記パルス制御手段6aはレーザ光Lのパルス幅を0.1〜10msecの範囲とし、かつパルスインターバルを1〜100msecの範囲で設定する。
このような設定とすることで、対象物3には1パルスあたり20〜50J/mmのエネルギー密度でレーザ光Lが照射されるようになっている。
このような条件で銅製の対象物3に2回レーザ光Lをパルス照射すると、対象物3の表面には高さ約30μm、直径約60μmのバンプ4が形成されることが確認できた。
このバンプ4の高さは対象物3と相手物との接触に好適な高さであり、またバンプ4の直径は、該バンプ4を複数形成した場合に、隣接するバンプ4同士が干渉しないような径となっている。
【0015】
図3は、上記条件に基づいてレーザ光Lを対象物3に照射した場合における、バンプ4の形成過程を説明する図となっている。
まず、対象物3の表面に1回目のレーザ光Lの照射が行われると、対象物3の表面がレーザ光Lによって加熱されて溶融する(図3(a))。
レーザ光Lによって直接加熱された溶融部分3aは、その熱によって周囲の対象物3を加熱し、レーザ光Lが照射された直後は溶融部分3aが拡大してゆく(図3(b))。
しかしながら、その後は時間の経過に伴って溶融部分3aが冷えて縮小するが、上記パルスインターバルに従って2回目のレーザ光Lを照射する(図3(c))
すると、レーザ光Lの照射された溶融部分3aは、一度溶融された部分であることからより高温となり、その結果上記溶融部分3aの表面にプラズマが発生して、その衝撃により溶融部分3aの中央がへこみ、溶融部分3aの表面には表面波振動が誘起される(図3(d))。
この表面波は溶融部分3aの中心から外側に向けて同心円状に広がってゆくが、その後溶融部分3aの外縁に到達すると反転して中心に向けて狭まってゆく(図3(e))。
そして、反転した表面波が溶融部分3aの中央に達すると、該表面波が衝突して上方に隆起し、その後溶融部分が凝固することにより、中央に若干の凹部が形成されたバンプ4が形成されることとなる(図3(f))。
このように、レーザ光Lを連続照射ではなくパルス照射することで、パルスインターバルの間に溶融部分3aが冷却や酸化作用により粘度を増し、さらにパルスインターバルを1msec以上とすることで、隆起した部分が凝固しやすく隆起状態のまま維持させることができる。
なお、レーザ光Lのパルス照射を2回行った場合、上述したように約30μmのバンプ4を形成することができたが、パルス照射を3回行ったところ、約40μmのバンプ4が形成され、パルス照射の回数を多くすることでより高いバンプ4を形成できることが判明した。
【0016】
上記条件に対し、対象物3の素材が銅の場合、1パルスあたり20J/mm未満のエネルギー密度でレーザ光Lを照射すると、十分な溶融部分が得られず、十分な高さのバンプ4を形成することができない。
また銅はレーザ光Lを反射しやすいため、パルス幅を0.1〜10msecと長くするとともに、最大エネルギー密度を抑えぎみにするようになっており、これに対して50J/mmを超えるエネルギー密度でレーザ光Lを照射すると、溶融部分の径が大きくなって隣接するバンプ4同士が干渉してしまうという問題が発生する。
さらに、パルスインターバルは1msec以上で長くするものの、100msecを超えてしまうと、溶融部分の凝固が進行するため次のパルスでのレーザ照射によるプラズマの発生が抑制されてしまう。
一方、レーザ光Lのパルス照射をQスイッチを用いた場合のように高尖頭値かつ短パルスで行うと、パルス照射ごとのピークエネルギーが高くなりすぎるため、溶融部分のプラズマによる衝撃で溶融部分が弾かれてしまい、バンプ4を形成することができない。
またメカニカルチョッパによるパルス照射を行う場合、シャープかつ自由なパルス照射が難しいという問題があり、ファイバレーザではないレーザロッドを用いた固体レーザ発振器とした場合、短時間で励起光のON/OFFを繰り返すと、励起光の出力が高いことから励起光源の耐久性が低下するという問題がある。
【0017】
そして上記構成を有するバンプ形成装置1によれば、銅以外の素材からなる対象物3に対しても、十分な高さのバンプ4を形成することができる。
単結晶シリコンからなるシリコンウエハとしての対象物3にダミーバンプを形成する場合、レーザ発振器6は出力100Wのレーザ光Lを照射し、上記パルス制御手段6aはレーザ光Lのパルス幅を0.1〜1msecの範囲とし、かつパルスインターバルを1〜25msecの範囲で設定する。
このような設定とすることで、対象物3には1パルスあたり5〜70J/mmのエネルギー密度でレーザ光Lが照射されるようになっている。
また、各バンプ4を形成する毎にそれぞれ2回レーザ光Lを照射するようになっており、また上記集光レンズ9はレーザ光Lのスポット径を10〜20μmの範囲とし、またレーザ光Lの中心部分でレーザ光Lの最高出力が得られるようになっている。
このような条件でレーザ光Lを照射することにより、シリコンウエハからなる対象物3の表面に十分な高さのバンプ4を形成することが可能である。
そして、1パルスあたりのエネルギー密度が5J/mm未満では十分な大きさのバンプ4を形成できず、70J/mmを超えてしまうと、バンプ4形成後に溶融部分が冷却された際に、バンプ4の周囲に亀裂が発生してしまう。しかしながらシリコンの融点は銅より高いため、エネルギー密度も最大値は大きく設定するようになっている。
また、シリコンは入熱量が小さいため、パルスインターバルが長くなると冷えて固まりやすいことから、該パルスインターバルを25msec以下の範囲で設定するようにしている。
【0018】
次に、上記対象物3が鉄合金である場合について説明する。この鉄合金は、例えば、鉄にクロムやニッケルを含んでいる。
対象物3が上記鉄合金である場合、レーザ発振器6は出力100Wのレーザ光Lを照射し、上記パルス制御手段6aはレーザ光Lのパルス幅を0.1〜1msecの範囲とし、かつパルスインターバルを1〜100msecの範囲で設定する。
このような設定とすることで、対象物3には1パルスあたり40〜350J/mmのエネルギー密度でレーザ光Lが照射されるようになっている。
また、各バンプ4を形成する毎にそれぞれ2回レーザ光Lを照射するようになっており、また上記集光レンズ9はレーザ光Lのスポット径を10〜20μmの範囲とし、またレーザ光Lの中心部分でレーザ光Lの最高出力が得られるようになっている。
このような条件でレーザ光Lを照射することにより、鉄合金からなる対象物3の表面に十分な高さのバンプ4を形成することができ、例えば細かな多数の突起を設けるような表面処理が可能となる。
鉄合金の場合は、シリコンよりもさらに融点が高く亀裂の発生もないため、エネルギー密度をさらに大きく設定するようにしているが、冷えて固まりやすく多数のバンプ4を形成するためタクトタイムが長くならないよう、パルスインターバルを最大100msecとしている。
【0019】
図4は第2実施例にかかるバンプ形成装置1の加工ヘッド7部分の拡大図を示し、このバンプ形成装置1は対象物3が上記鉄合金やその他ニッケルなどの磁性体である場合に利用可能となっている。ここでは対象物3が鉄合金である場合について説明する。
バンプ形成装置1の加工ヘッド7には、磁界Bを発生させる磁界発生手段11が設けられており、具体的には加工ヘッド7を構成する上記集光レンズ9の下方に設けられるとともに、該磁界発生手段11の中央にはX−Yテーブル5に向けて徐々に縮径する貫通孔11aが形成されている。
上記磁界発生手段11は永久磁石となっており、この永久磁石が発生させる磁界Bは、図に示すように磁界発生手段11の断面の外周を周回するように形成され、換言すると磁界発生手段11は上記貫通孔11aを通過するリング状の磁界Bを形成するようになっている。
また上記貫通孔11aの内部では、磁界Bはレーザ光Lの光軸に沿って上下方向に形成されるようになっており、また磁界Bの中心は対象物3におけるバンプ4の形成位置を通過するようになっている。
そして磁界発生手段11は、発生させた磁界Bの範囲内に上記対象物3が位置するよう、基板2に近接した位置に設けられている。
【0020】
上記第2実施例におけるバンプ形成装置1においても、上記第1実施例と同様、鉄合金製の対象物3にレーザ光Lを照射する際の条件で上記レーザ発振器6がレーザ光Lをパルス照射する。
すると、レーザ光Lにより上記対象物3の表面の一部が溶融するとともにプラズマによって表面波が発生し、溶融部分の中央が隆起する。
一方、上記加工ヘッド7に設けた磁界発生手段11が発生させた磁界Bは上記対象物3を通過するように形成されていることから、磁界発生手段11は磁性体からなる対象物3を磁力によって引き寄せている。
このため、対象物3の表面がレーザ光Lの照射によって部分的に溶融すると、磁力によって対象物3の溶融部分が上記磁界発生手段11に引き寄せられ、その状態で凝固してバンプ4となる。
つまり、第2実施例の構成によれば、磁界によって溶融部分を引き寄せることができるため、磁界発生手段11を設けない第1実施例に比べてさらに高いバンプ4を形成することが可能となっている。
ここで、上記磁界発生手段11における貫通孔11aの内部には上記磁界Bが上記レーザ光Lの光軸方向に沿って形成され、またこの磁界Bは上記対象物3の溶融部分を通過するように形成されることから、溶融部分は貫通孔11aの中心に向けてまっすぐ上方に引き寄せられるようになっている。
【0021】
次に、図5は上記第3実施例にかかるバンプ形成装置1を示し、該第3実施例は上記第2実施例のバンプ形成装置1と同じ、磁界発生手段11を備えたバンプ形成装置1となっている。
この第3実施例では、上記基板2に設けた対象物3は非磁性体からなる非磁性体部分3bと、該非磁性体部分3bの表面にめっき加工された磁性体からなる磁性体部分3cとから構成されている。
本実施例では、上記非磁性体部分3bは銅、金、アルミであり、また磁性体部分3cは上記第2実施例と同じ鉄合金となっている。
この第3実施例においても、上記鉄合金製の対象物3にレーザ光Lを照射する際の条件で上記レーザ発振器6がレーザ光Lをパルス照射する。
すると、レーザ光Lにより上記対象物3の表面の一部が溶融するとともにプラズマによって表面波が発生し、溶融部分の中央が隆起する。
このとき、対象物3の表面の磁性体部分3cとその下方の非磁性体部分3bとが同時に溶融し、このうち上記磁性体部分3cは上記磁界発生手段11の磁力によって上方に引き寄せられる。
一方、非磁性体部分3bには磁力が作用しないが、上記磁性体部分3cと密着しているため、上記磁性体部分3cが磁界発生手段11に引き寄せられるのに伴って非磁性体部分3bも上方に引き寄せられることとなる。
その結果、対象物3の表面がレーザ光Lの照射によって部分的に溶融すると、磁力によって対象物3の溶融部分が上記磁界発生手段11に引き寄せられ、その状態で凝固するようになっている。
つまり、磁性体部分3cと非磁性体部分3bとからなる対象物3であっても、第2実施例と同様、磁界によって溶融部分を引き寄せることができるため、磁界発生手段11を設けない第1実施例に比べてさらに高いバンプ4を形成することが可能となっている。
【0022】
図6は第4実施例にかかるバンプ形成装置1の加工ヘッド7部分の拡大図を示し、このバンプ形成装置1は対象物3が上記銅やシリコンなどの非磁性体である場合に好適なものとなっている。ここでは対象物3が銅である場合について説明する。
バンプ形成装置1の加工ヘッド7には、電界Eを発生させる電界発生手段としての電磁石12が設けられており、具体的には加工ヘッド7を構成する上記集光レンズ9の下方に設けられるとともに、該電磁石12の中央にはX−Yテーブル5に向けて徐々に縮径する貫通孔12aが形成されている。
上記電磁石12は、上記電流調節手段12bが電流を変動させることで電界Eを変動させることが可能となっており、また上記対象物3は上記第1実施例と同様、発生された電界Eの内部に位置するようになっている。
【0023】
以下、第4実施例にかかるバンプ形成方法を説明すると、上記実施例と同様、上記レーザ発振器6は対象物3が銅である場合に好適な条件でレーザ光Lをパルス照射する。
すると、レーザ光Lにより上記対象物3の表面の一部が溶融するとともにプラズマによって表面波が発生し、溶融部分の中央が隆起する。
一方、上記電磁石12は、上記電流調節手段12bによって電界Eの強さを常時変動させており、これにより導電体である対象物3の内部には電磁誘導により渦電流が発生することとなる。
上記渦電流は上記レーザ光Lによって溶融した対象物3の溶融部分にも発生し、この渦電流によって溶融部分の内部には非磁性体であるにもかかわらず磁界が発生し、溶融部分はこの磁力により電磁石12に引き寄せられることとなる。
つまり、第4実施例の構成によれば、電界Eによって溶融部分を引き寄せることができるため、電磁石12を設けない第1実施例に比べてさらに高いバンプ4を形成することが可能となっている。
【0024】
図7は第5実施例にかかるバンプ形成装置1の加工ヘッド7近傍の拡大図を示している。このバンプ形成装置1は以下の点を除いて第2実施例と同様の構成を有しており、また基板2には磁性体である鉄合金製の対象物3が設けられている。
本実施例のバンプ形成装置1におけるX−Yテーブル5には、上記対象物3の設けられる位置にあわせてニッケルなどの磁性体からなるプレート13が設けられており、上記基板2はこのプレート13の表面に載置されるようになっている。
このような構成とすることで、上記加工ヘッド7に設けた磁界発生手段11が発生させた磁界Bは上記プレート13を通過するようになり、その結果上記プレート13と磁界発生手段11との間に位置する対象物3を磁界Bが上下に貫通することとなる。
これにより、上記レーザ光Lを照射して対象物3を溶融させると、上記第2実施例と同様、溶融部分は磁界発生手段11の磁力によって上方に引き寄せられ、バンプ4が形成される。
ここで、上記プレート13により磁界Bが対象物3を上下に貫通しているため、溶融部分が上方に向けてまっすぐ伸びやすくなっており、安定して上記バンプ4を形成することができる。
【0025】
なお、上記第5実施例にかかるバンプ形成方法、つまりX−Yテーブル5にプレート13を設ける構成については、第4実施例にかかる電磁石を備えたバンプ形成装置1にも適用することができる。
また、上記第2実施例のように対象物3が磁性体である場合や、第3実施例のように対象物3の表面に磁性体部分3cが形成されている場合であっても、これらの対象物3を第4実施例のような電界Eを発生させる電磁石を備えたバンプ形成装置1で処理してもよい。
この場合、電磁石は磁界発生手段としても利用することが可能であるため、溶融部分を磁力により引き上げることも、電界による過電流によって発生した磁力により引き上げることも、また、静電界により発生した静電力の作用により引き上げることも可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 バンプ形成装置 2 基板
3 対象物 4 バンプ
5 X−Yテーブル 6 レーザ発振器
6a パルス制御手段 11 磁界発生手段
12 電磁石 13 プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を対象物に照射して、該対象物の一部を溶融させてバンプを形成するバンプ形成方法において、
上記対象物を銅とし、
上記レーザ光を、0.1〜10msecのパルス幅でパルス照射して、1パルスあたりのエネルギー密度を20〜50J/mmとすることを特徴とするバンプ形成方法。
【請求項2】
上記レーザ光のパルス照射を、1〜100msecのパルスインターバルで行うことを特徴とする請求項1に記載のバンプ形成方法。
【請求項3】
レーザ光を対象物に照射して、該対象物の一部を溶融させてバンプを形成するバンプ形成方法において、
上記対象物をシリコンとし、
上記レーザ光を、0.1〜1msecのパルス幅でパルス照射して、1パルスあたりのエネルギー密度を5〜70J/mmとすることを特徴とするバンプ形成方法。
【請求項4】
上記レーザ光のパルス照射を、1〜25msecのパルスインターバルで行うことを特徴とする請求項3に記載のバンプ形成方法。
【請求項5】
対象物に近接した位置に電界を発生させる電界発生手段を設け、
上記電界発生手段が発生させた電界の内部に上記対象物を位置させるとともに、該電界の強さを変動させることにより対象物内に渦電流を発生させて、
該対象物に上記レーザ光を照射して溶融させた対象物の溶融部分を電界発生手段に引き寄せることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のバンプ形成方法。
【請求項6】
レーザ光を対象物に照射して、該対象物の一部を溶融させてバンプを形成するバンプ形成方法において、
上記対象物を鉄合金とし、
上記レーザ光を、0.1〜1msecのパルス幅でパルス照射して、1パルスあたりのエネルギー密度を40〜350J/mmとすることを特徴とするバンプ形成方法。
【請求項7】
上記レーザ光のパルス照射を、1〜100msecのパルスインターバルで行うことを特徴とする請求項5に記載のバンプ形成方法。
【請求項8】
対象物に近接した位置に磁界を発生させる磁界発生手段を設け、
上記磁界発生手段が発生させた磁界の内部に上記対象物が位置した状態で、該対象物に上記レーザ光を照射し、レーザ光によって溶融させた対象物の溶融部分を磁界発生手段に引き寄せることを特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載のバンプ形成方法。
【請求項9】
対象物を支持する支持手段と、レーザ光を発振するレーザ発振器とを備え、
上記レーザ光を対象物に照射して対象物の一部を溶融させてバンプを形成するバンプ形成装置において、
上記レーザ発振器はファイバレーザ発振器であって、かつ励起光のON/OFFを制御してレーザ光をパルス照射させるパルス制御手段を備え、
形成するバンプのサイズ、もしくは、上記対象物の材質を変更する際には、上記パルス制御手段によって励起光のON時間、OFF時間、または、励起回数の少なくともいずれか1つの設定を変更することを特徴とするバンプ形成装置。
【請求項10】
上記対象物は非磁性体であって、
上記対象物に近接した位置に電界を発生させる電界発生手段を設け、
上記電界発生手段が発生させた電界の内部に上記対象物を位置させるとともに、該電界の強さを変動させることにより対象物内に渦電流を発生させて、
該対象物に上記レーザ光を照射して溶融させた対象物の溶融部分を電界発生手段に引き寄せることを特徴とする請求項9に記載のバンプ形成装置。
【請求項11】
上記対象物は磁性体であって、
上記対象物に近接した位置に磁界を発生させる磁界発生手段を設け、
上記磁界発生手段が発生させた磁界の内部に上記対象物が位置した状態で、該対象物に上記レーザ光を照射し、レーザ光によって溶融させた対象物の溶融部分を磁界発生手段に引き寄せることを特徴とする請求項9に記載のバンプ形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−206811(P2011−206811A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76851(P2010−76851)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】