説明

バンプ接合構造体の製造方法

【課題】バンプを有する第1の部品を、当該バンプを介して第2の部品に接合してなるバンプ接合構造体の製造方法において、沈み込み量のばらつきを抑制して安定した接合が実現できるようにする。
【解決手段】バンプ13への超音波振動の印加を開始し、当該超音波振動の印加を続けながら、第1の荷重F1よりも大きい第2の荷重F2を、第1の部品10および第2の部品20に印加することにより、第1の工程の終了時点よりも更に第2の部品20側へ第1の部品10が沈み込むようにバンプ13を潰して接合させる第2の工程において、第1の部品10の第2の部品20側への沈み込みによる変位量を沈み込み量としたとき、第2の工程では、第2の工程における沈み込み量x2をモニタし、当該沈み込み量x2が所定値になった時点で、超音波振動の印加を停止し、第2の荷重F2の印加のみとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンプを有する第1の部品を、当該バンプを介して第2の部品に接合してなるバンプ接合構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のバンプ接合構造体の製造方法としては、たとえば特許文献1に記載のものが提案されている。従来では、まず、一面側に突出するバンプを有する第1の部品と、一面側に電極を有する第2の部品とを用意する(用意工程)。
【0003】
次に、バンプと電極とが正対して接触するように、第1の部品の一面と第2の部品の一面とを対向させた状態で、第1の部品および第2の部品に第1の荷重のみを印加する。それにより、第2の部品側へ第1の部品が沈み込むようにバンプを潰す(第1の工程)。
【0004】
続いて、バンプへの超音波振動の印加を開始し、当該超音波振動の印加を続けながら、第1の荷重と同一の印加方向であって第1の荷重よりも大きい第2の荷重を、第1の部品および第2の部品に印加する。それにより、第1の工程の終了時点よりも更に第2の部品側へ第1の部品が沈み込むようにバンプを潰して接合させる(第2の工程)。こうして、バンプ接合構造体ができあがる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−67999号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の製造方法では、適切な接合を得るべく、各工程における印加荷重や超音波振動の大きさ等を制御するようにしているものの、第1の部品の第2の部品側への沈み込みによる変位量、すなわち沈み込み量のばらつきは避けられず、安定した接合の実現に障害となっていた。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、バンプを有する第1の部品を、当該バンプを介して第2の部品に接合してなるバンプ接合構造体の製造方法において、沈み込み量のばらつきを抑制して安定した接合が実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者は鋭意検討を行った。その結果、後述の図6等に示されるように、沈み込み量は、荷重のみである第1の工程よりも更に超音波振動が印加される第2の工程の方が大きいことから、この超音波振動による沈み込み量を考慮して、当該超音波振動を制御してやればよいと考えた。
【0009】
請求項1に記載の発明は、このような点に着目してなされたものであり、一面(11)側に突出するバンプ(13)を有する第1の部品(10)と、一面(21)側に電極(23)を有する第2の部品(20)と、を用意する用意工程と、
バンプ(13)と電極(23)とが正対して接触するように、第1の部品(10)の一面(11)と第2の部品(20)の一面(21)とを対向させた状態で、第1の部品(10)および第2の部品(20)に第1の荷重(F1)のみを印加することにより、第2の部品(20)側へ第1の部品(10)が沈み込むようにバンプ(13)を潰す第1の工程(S1〜S3)と、
続いて、バンプ(13)への超音波振動の印加を開始し、当該超音波振動の印加を続けながら、第1の荷重(F1)と同一の印加方向であって第1の荷重(F1)よりも大きい第2の荷重(F2)を、第1の部品(10)および第2の部品(20)に印加することにより、第1の工程の終了時点よりも更に第2の部品(20)側へ第1の部品(10)が沈み込むようにバンプ(13)を潰して接合させる第2の工程(S4〜S6)と、を備えるバンプ接合構造体の製造方法において、さらに次のような点を行うことを特徴とするものである。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明においては、第1の部品(10)の第2の部品(20)側への沈み込みによる変位量を沈み込み量としたとき、第2の工程では、第2の工程における沈み込み量(x2)をモニタし、当該沈み込み量(x2)が所定値になった時点で、超音波振動の印加を停止し、第2の荷重(F2)の印加のみとするようにしたことを特徴とする。
【0011】
それによれば、第2の工程において沈み込み量(x2)が所定値となった時点で超音波振動を停止するから、当該沈み込み量(x2)の過大を未然に防止できる。また、逆に言えば、当該沈み込み量(x2)が所定値となるまで超音波振動の印加を続けることになるから、当該沈み込み量(x2)の過小が防止される。
【0012】
よって、本発明によれば、超音波振動による沈み込み量(x2)が過小または過大となる不具合を効率良く防止することができ、当該沈み込み量(x2)のばらつきを抑制して安定した接合が実現できる。
【0013】
ここで、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のバンプ接合構造体の製造方法において、第1の工程では、第1の工程における沈み込み量(x1)をモニタし、当該沈み込み量(x1)が所定値になった時点で超音波振動の印加を開始し、第2の工程に移るようにしたことを特徴とする。
【0014】
それによれば、第1の工程における沈み込み量(x1)についても、適切な値に制御することができ、第1および第2の工程のトータルで、沈み込み量(x1、x2)を効率良く制御することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のバンプ接合構造体の製造方法において、第2の工程では、第2の工程における沈み込み量(x2)が所定値となるまでの時間をモニタし、当該時間が所定範囲から外れた場合には、接合不良と判定することを特徴とする。
【0016】
第2の工程における沈み込み量が所定値となるまでの時間が短すぎる場合は、バンプ(13)の位置ずれやバンプ(13)のすべりなどにより第1の部品(10)が一気に沈んでしまうこと等の不具合が考えられる。
【0017】
また、当該時間が長すぎる場合には、たとえばバンプ(13)中への異物混入や、荷重印加するヘッド(100)と第1の部品(10)との接触不良により、バンプ(13)が潰れにくくなること等の不具合が考えられる。しかし、本発明によれば、これらの不具合を検出し、後工程へワークを流さないようにすることができる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のバンプ接合構造体の製造方法において、第1の工程では、第1の工程における沈み込み量(x1)が所定値となるまでの時間をモニタし、当該時間が所定範囲から外れた場合には、接合不良と判定することを特徴とする。
【0019】
第1の工程においても、第1の工程における沈み込み量(x1)が所定値となるまでの時間が短すぎる場合や、長すぎる場合には、上記した第2の工程と同様の不具合が発生する可能性がある。本発明によれば、これらの不具合を検出し、後工程へワークを流さないようにすることができる。
【0020】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るバンプ接合構造体を示す概略断面図である。
【図2】第1実施形態に係るバンプ接合構造体の製造方法を示す工程図である。
【図3】図2に続く製造方法を示す工程図である。
【図4】第1実施形態に係る製造方法における接合装置の作動のフローチャートを示す図である。
【図5】第1実施形態に係る製造方法において接合のために印加される荷重および超音波振動のパワーと時間との関係を示す図である。
【図6】比較例としての製造方法において接合のために印加される荷重、超音波振動のパワーおよび沈み込み量と、時間との関係を示す図である。
【図7】第1実施形態の第2の工程における効果について具体的に示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態における接合装置の作動のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るバンプ接合構造体の概略断面構成を示す図である。本実施形態に係るバンプ接合構造体は、一面11側に突出するバンプ13を有する第1の部品10と、一面21側に電極23を有する第2の部品20と、を備えて構成されている。
【0024】
これら第1の部品10および第2の部品20は、特に限定するものではないが、たとえば、第1の部品10は、シリコン半導体等よりなるICチップやフリップチップ等である。そして、第1の部品10は、一面11および他面12を表裏の面とし、一面11にバンプ13を有するものである。
【0025】
具体的には、第1の部品10の一面11には、アルミニウムや金等よりなる電極14が設けられ、バンプ13は、この電極14上に設けられている。このようなバンプ13は、たとえば金、銀、銅、あるいは、はんだ等よりなるもので、めっきやボールボンディング等により形成されるものである。
【0026】
また、第2の部品20は、たとえばプリント基板やセラミック基板等の回路基板、あるいは、半導体よりなる回路チップ等であり、一面21および他面22を表裏の面とし、一面21に電極23を有するものである。
【0027】
ここでは、第2の部品20の一面21には、アルミニウムや金等よりなるランド24が設けられ、さらに、このランド24上にバンプ25が設けられている。このバンプ25は、上記第1の部品10のバンプ13と同様、上記材質や形成方法を用いて形成される。そして、本実施形態では、これらランド24およびバンプ25により第2の部品20の電極23が構成されている。
【0028】
ここで、これら両部品10、20は、互いに一面11、21を対向させた状態で配置され、バンプ13と電極23とが正対して接触して接合されている。本実施形態では、バンプ13、および、電極23のバンプ25は、初期の突出形状よりも潰れた状態で接合している。このバンプ13および電極23の接合部を介して、第1の部品10および第2の部品20は、電気的および機械的に接合されている。
【0029】
次に、図2〜図5を参照して、本実施形態に係るバンプ接合構造体の製造方法について述べる。図2は本製造方法の工程図、図3は図2に続く本製造方法の工程図であり、ともに各工程におけるワークの概略断面図である。また、図4は本製造方法における接合装置の作動のフローチャートを示す図であり、図5は本製造方法において接合のために印加される荷重および超音波振動のパワーと時間との関係を示す図である。
【0030】
まず、図2(a)に示されるように、一面11側に突出するバンプ13を有する第1の部品10と、一面21側に電極23を有する第2の部品20と、を用意する(用意工程)。ここで、各バンプ13、25はもちろん潰れる前の初期状態とされている。
【0031】
次に、図2(a)、(b)、図3(a)、(b)に示される接合工程を行う。この接合工程は接合装置を用いて、バンプ13と電極23とを接合する工程であり、図2(a)、(b)、図3(a)に示される第1の工程と、その後に行われる図3(b)に示される第2の工程とを行うものである。
【0032】
第1の工程は、大きくは、バンプ13と電極23とが正対して接触するように、第1の部品10の一面11と第2の部品20の一面21とを対向させた状態で、第1の部品10および第2の部品20に第1の荷重F1のみを印加することにより、第2の部品20側へ第1の部品10が沈み込むようにバンプ13を潰すものである。
【0033】
具体的に、第1の工程では、まず、図2(a)に示されるように、支持台としてのステージ200の上に、第2の部品20を搭載し、第2の部品20をステージ200に支持させる。このとき、第2の部品20の他面22をステージ200に接触させ、第2の部品20の一面21をステージ200の上方に向ける。
【0034】
そして、第2の部品20の一面21と第1の部品10の一面11とを対向させた状態で、第2の部品20の上方から第1の部品10を下降させ、図2(b)に示されるように、正対する両バンプ13、25の先端部を接触させるようにしている。
【0035】
そして、この図2(b)に示される両バンプ13、25の接触開始状態、つまりバンプ13と電極23との接触開始状態から、接合装置を用いて、両部品10、20への荷重の印加を開始していく。この接合装置は、図2(b)に示されるように、荷重印加を行うヘッド100と、このヘッド100の制御等を行う制御部110とを備えている。
【0036】
ヘッド100は金属などよりなるものである。制御部110は、コンピュータやアクチュエータなどより構成され、ヘッド100の上下動、その上下動によるヘッド100の変位量検出、ヘッド100による印加荷重のモニタ、ヘッド100の超音波振動の制御、荷重および超音波の印加時間の管理などを行うものであり、これらにより、典型的なバンプ接合が可能とされている。
【0037】
まず、上記図2(b)に示される接触開始状態において、接合装置をスタートさせる(図4参照)。これにより制御部110からの指令を受けてヘッド100が下降し、ヘッド110を第1の部品10の他面12に接触する。
【0038】
ここで、図4のステップS1にて、ヘッド100が第1の部品10に接触したかどうかについて、判定する。この判定については、一般の場合と同様、ヘッド100が第1の部品10に接触した時点での初期荷重F0を制御部110で検出することでなされる。
【0039】
この初期荷重F0の大きさは、バンプ13を変形させるレベルよりも小さいものであるが、この初期荷重F0により、当該接触が十分かどうか、判定される。初期荷重F0が小さすぎる場合は接触が不十分であり、「NO」と判定され、上記したヘッド100の下降を続ける。初期荷重F0が狙い値以上の場合には接触が十分であり、「YES」と判定され、図4のステップS2へ移行する。
【0040】
ここで、図2(b)には、ステップS2の開始時点における部品高さが、初期高さT0として示されている。この部品高さとは、第1の部品10の他面12と第2の部品20の他面22との距離であり、言い換えれば、当該接触開始時点におけるステージ200とヘッド100との距離である。
【0041】
つまり、この両部品10、20の他面12、22間の距離が変化した場合、その変位量は、ヘッド100の移動距離により求めることができる。そして、上記初期高さT0は、両バンプ13、25の接触開始時点にて十分な初期荷重F0が確保された状態における部品高さである。
【0042】
そして、図4のステップS2では、ヘッド100によって、両部品10、20に対し、バンプ13が潰れる大きさである第1の荷重F1を印加する。これにより、図3(a)に示されるように、バンプ13、25が潰れて第2の部品20側へ第1の部品10が沈み込み、部品高さT1が初期高さT0よりも低くなる。
【0043】
ここで、第1の部品10の第2の部品20側への沈み込みによる変位量を、沈み込み量としたとき、この第1の工程における沈み込み量x1は、(T0−T1)で求められる。また、第1の荷重F1は、図5に示されるように、時間と共に一次的に増加するという典型的なパターンで印加され、当該沈み込み量x1は、時間と共に、すなわち第1の荷重F1の増加と共に大きくなっていく。
【0044】
そして、図4のステップS3では、この第1の荷重F1が、超音波振動を行うに適した大きさの荷重(つまり超音波発振荷重)となったかどうかを判定する。ここで、「YES」の場合は、ステップS4に移行し、「NO」の場合は、ステップS2によって、超音波発振荷重に到達するまで、第1の荷重F1の増加を続ける。
【0045】
このステップS2の開始から第1の荷重F1が超音波発振荷重となるまでの時期が、第1の区間である。図5には、この第1の区間における荷重の増加パターンが示されている。つまり、上記第1の工程における沈み込み量x1は、この第1の区間における沈み込み量に相当するものである。
【0046】
次に、図4のステップS4に移行することにより、図3(b)に示される本接合工程の第2の工程が開始される。この第2の工程では、大きくは、バンプ13への超音波振動の印加を開始し、当該超音波振動の印加を続けながら、第1の荷重F1と同一の印加方向であって第1の荷重F1よりも大きい第2の荷重F2を、両部品10、20に印加する。そうすることにより、第1の工程の終了時点よりも更に第2の部品20側へ第1の部品10が沈み込むようにバンプ13を潰して接合させる。
【0047】
まず、ステップS4では、制御部110からの指令によってヘッド100を超音波振動させ、両部品10、20に対して超音波振動を印加する。それとともに、ヘッド100から両部品10、20に印加される荷重を上記超音波発振荷重から更に増加させて第2の荷重F2とする。こうして、ステップS4では、第2の荷重F2および超音波振動を両部品10、20に印加して接合を行う。
【0048】
これにより、図3(b)に示されるように、さらにバンプ13、25が潰れて第2の部品20側へ第1の部品10が沈み込み、部品高さT2は、第1の工程の終了時点における部品高さT1よりも低くなる。ここで、この第2の工程における沈み込み量x2は、(T1−T2)で求められる。
【0049】
ここで、第2の荷重F2は、図5に示されるように、時間と共に一次的に増加するという典型的なパターンで印加され、第2の工程における沈み込み量x2は、時間と共に大きくなっていく。本実施形態では、この第2の工程における沈み込み量x2を制御部110によりモニタする。
【0050】
そして、図4における次のステップS5では、第2の工程における沈み込み量x2をモニタし、当該沈み込み量x2が所定値になったかどうかについて、制御部110にて判定する。
【0051】
このとき、「YES」の場合は、次のステップS6に移行し、ステップS6にて、制御部110によって超音波発振を停止して超音波振動を停止し、第2の荷重F2の印加のみとして接合を続ける。一方、「NO」の場合は、ステップS4にて、当該沈み込み量x2が所定値になるまで、第2の荷重F2とともに超音波振動の印加を続ける。
【0052】
こうして、第2の工程における沈み込み量x2が所定値になった時点で、超音波振動を停止し、第2の荷重F2の印加のみとするが、その後は、この第2の荷重F2の印加を続け、第2の荷重F2が所定値に到達した時点で荷重印加を停止し、接合を終了する。このステップS4から接合終了までの時期が第2の区間であり、この第2の区間は第2の工程の実施時期と一致する。
【0053】
ここで、第2の工程における沈み込み量x2が所定値になるまでの時間すなわち所定値到達時間については、製品ごとにばらつきがあるため、超音波振動の印加を停止するタイミングも製品ごとに変わってくる。
【0054】
図5には、この第2の区間すなわち第2の工程における荷重および超音波振動パワーのパターンが第2の区間A、第2の区間Bとして2種類示されている。第2の区間Aは、所定値到達時間が比較的短い場合、第2の区間Bは、所定値到達時間が比較的長い場合であり、第2の区間Bのパワーの後半部分は、破線で示してある。
【0055】
つまり、本実施形態では、第2の区間の所要時間は、製品ごとに長くなったり、短くなったりする。バンプ13と電極23との接合に要する時間は、実質的に第1の区間と第2の区間との合計時間であるが、たとえば2、3秒程度であり、第2の区間の所要時間に変化があっても、その範囲で収まるため、さほど影響は無い。
【0056】
こうして、第2の区間の終了すなわち第2の工程の終了に伴い、バンプ13と電極23との接合が完了し、上記図1に示したような本実施形態のバンプ接合構造体ができあがる。次に、この本実施形態の製造方法の効果等について、比較例としての製造方法と比較しながら述べる。
【0057】
図6は、比較例としての製造方法において接合のために印加される荷重、超音波振動のパワーおよび沈み込み量と、時間との関係を示す図である。ここで、比較例は、従来一般の製造方法に基づいて、本発明者が試作検討した製造方法である。
【0058】
図6においては、第1の工程では、本実施形態と同様のステップS1〜S3を行うものであり、第1の区間は図5と同様のパターンとなる。そして、第2の工程では、本実施形態のように製品ごとに超音波振動の印加時間を変えるのではなく、一般の場合と同様、製品が変わっても超音波振動の印加時間を一定として、一定の印加時間に達したら、超音波振動の印加を終了するようにしている。
【0059】
この図6に示されるように、沈み込み量は、荷重のみである第1の工程よりも、超音波振動が更に印加される第2の工程の方が大きい。仮に、第2の工程で超音波振動の印加を無くし、荷重のみの印加とした場合、沈み込み量がなかなか狙い値まで到達しない。
【0060】
また、狙い値に到達したとしても、単にバンプが潰れているだけで、超音波振動による接合に比べて接合が不完全なものとなる。つまり、第2の工程における沈み込み量x2の支配要因、さらにいえば接合全体における沈み込み量の支配要因は、実質的に超音波振動の印加にあると言える。
【0061】
実際、本実施形態の第2の工程において、超音波振動の印加を停止した後に、第2の荷重F2のみの印加を続けても、沈み込み量x2の変化は超音波振動の印加時に比べ、大幅に小さい。そこで、本実施形態では、第2の工程において沈み込み量x2による超音波振動の印加制御を行い、当該沈み込み量x2の過大または過小を防止するようにした。
【0062】
図7は、この本実施形態の第2の工程における効果について具体的に示す図であり、(a)は上記比較例の場合、(b)は本実施形態の場合を示す。図7(a)、(b)では、5個のサンプルa、b、c、d、eについて、第2の工程における沈み込み量x2と時間との関係を示している。なお、図7中のプロットで「○」は、超音波振動による沈み込み量が設定範囲内に収まった良品を表し、「×」は当該沈み込み量が当該範囲外となった不良品を表している。また、図7(b)では、図7(a)の結果についても、併記してある。
【0063】
図7(a)に示されるように、比較例では、超音波振動の印加を常に一定としているため、当該一定の時間経過後、つまり超音波振動の印加を停止後において、沈み込み量x2が大きすぎたり、小さすぎたりする場合が発生する。
【0064】
具体的には、5個のサンプルa〜eのうち3個のサンプルb〜dは狙いの沈み込み量x2に収まり良品となるが、サンプルaは沈み込み量x2が大きすぎ、サンプルeは沈み込み量x2が小さすぎ、それぞれ不良品となっている。
【0065】
ここで、サンプルaのように、沈み込み量x2が大きすぎる場合は、たとえばバンプ13の位置ずれやバンプ13のすべりなどにより第1の部品10が一気に沈んでしまうこと等の不具合が考えられる。また、サンプルeのように沈み込み量x2が小さすぎる場合は、たとえばバンプ13中への異物混入や、ヘッド100と第1の部品10との接触不良により、バンプ13が潰れにくくなること等の不具合が考えられる。
【0066】
これに対して、図7(b)に示される本実施形態の場合は、第2の工程における沈み込み量x2が所定値となった時点で、超音波振動の印加を停止するので、当該沈み込み量x2の過大を未然に防止できる。たとえば、サンプルa、bについては、上記図7(a)よりも早めに超音波振動の印加を停止することで、超音波振動の印加による沈み込み量x2を狙いの範囲として、良品を実現している。
【0067】
また、本実施形態の場合は、当該沈み込み量x2が所定値となるまで超音波振動の印加を続けることになるから、当該沈み込み量x2の過小が防止される。たとえば、サンプルd、eについては、上記図7(a)よりも遅く超音波振動の印加を停止することで、超音波振動の印加による沈み込み量x2を狙いの範囲として、良品を実現している。
【0068】
このように、本実施形態によれば、超音波振動による沈み込み量x2が過小または過大となる不具合を効率良く防止することができ、当該沈み込み量x2のばらつきを抑制して、安定した接合を実現することができる。
【0069】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態は、上記図1に示されるものと同様のバンプ接合構造体を製造するものであるが、その製造方法を一部変形したところが相違するものであり、この相違点を中心に述べることとする。図8は、本第2実施形態における接合装置の作動のフローチャートを示す図である。
【0070】
上記第1実施形態では、第1の工程において、第1の荷重F1を増加させていき、超音波発振荷重となった時点で、超音波振動および第2の荷重F2を印加して第2の工程を開始していた。
【0071】
それに対して、本実施形態では、第1の工程において、制御部110によって沈み込み量x1をモニタし、当該沈み込み量x1が所定値になった時点で超音波振動の印加を開始し、第2の工程に移るようにしている。具体的には、図8に示されるように、第1の区間において、ステップS2とステップS3との間にステップS21を介在させたところが、上記第1実施形態と相違する。
【0072】
このステップS21では、第1の荷重F1が超音波発振荷重となる前に、第1の工程における沈み込み量x1が所定値になった時点で「YES」と判定し、ステップS4に移行し、第2の工程を開始する。
【0073】
一方「NO」の場合には、ステップ3にて超音波発振荷重に到達するまで、第1の荷重F1の増加を続ける。ただし、第1の工程における沈み込み量x1が所定値に達する前に超音波発振荷重に達した場合には、ステップS4に移行し、第2の工程を開始する。その後、第2の工程については、上記第1実施形態と同様である。
【0074】
たとえば第1の工程における沈み込み量x1が過大であると、バンプ13、25がより潰れた状態から超音波振動を印加するので、両部品10、20に対するダメージが懸念される。また、当該沈み込み量x1が過小であると、バンプ13と電極23との接触面積が小さすぎてしまう可能性があり、接合性の確保が困難になる。
【0075】
その点、本実施形態によれば、第1の工程における沈み込み量x1についても、適切な値に制御することができ、第1および第2の工程のトータルで、沈み込み量x1、x2を効率良く制御することができる。
【0076】
(他の実施形態)
なお、上記全ての実施形態において、第2の工程では、ステップS4とステップS5との間に、第2の工程における沈み込み量x2が所定値となるまでの時間を、制御部110によってモニタし、当該時間が所定範囲から外れた場合には、接合不良と判定し、接合を停止するステップ(つまり接合停止ステップ)を設けてもよい。
【0077】
第2の工程における沈み込み量x2が所定値となるまでの時間が短すぎる場合は、バンプ13の位置ずれやバンプ13のすべりなどにより第1の部品10が一気に沈んでしまうこと等の不具合が考えられる。
【0078】
一方、当該時間が長すぎる場合には、たとえばバンプ13中への異物混入や、ヘッド100と第1の部品10との何らかの接触不良により、バンプ13が潰れにくくなること等の不具合が考えられる。しかし、第2の工程において、この接合停止ステップを設ければ、これらの不具合を検出し、後工程へワークを流さないようにすることができる。
【0079】
さらに、この接合停止ステップを設ける場合、第2の工程では、第2の工程における沈み込み量x2が所定値となる前に、所定時間を経過した時点で、第2の荷重F2および超音波振動の印加を停止するようにしてもよい。
【0080】
それによれば、第2の工程における沈み込み量x2がなかなか所定値に到達しないような場合において、第2の工程を強制的に停止することで、接合不良を回避したり、工程時間の無駄を排除したりすることが可能となる。
【0081】
また、上記全ての実施形態において、第1の工程では、ステップS2とステップS3との間に第1の工程における沈み込み量x1が所定値となるまでの時間を、制御部110によってモニタし、当該時間が所定範囲から外れた場合には、接合不良と判定し、接合を停止するステップ(つまり接合停止ステップ)を設けてもよい。
【0082】
この場合、第1の工程における沈み込み量x1の所定値とは、上記第2実施形態に対してはステップ21における所定値と同様のものとすればよい。つまり、上記第2実施形態と組み合わせる場合には、接合停止ステップはステップ2とステップ21との間に設ければよい。
【0083】
それによれば、第1の工程においても、第1の工程における沈み込み量x1が所定値となるまでの時間が短すぎる場合や、長すぎるような場合には、上記した第2の工程と同様の不具合が発生する可能性がある。しかし、第1の工程においても、当該接合停止ステップを設ければ、これらの不具合を検出し、後工程へワークを流さないようにすることができる。
【0084】
さらに、第1の工程にて当該接合停止ステップを設ける場合、第1の工程における沈み込み量x1が所定値となる前に、所定時間を経過した時点で、第1の荷重F1の印加を停止するようにしてもよい。
【0085】
それによれば、第1の工程における沈み込み量x1がなかなか所定値に到達しないような場合において、第1の工程を強制的に停止することで、接合不良を回避したり、工程時間の無駄を排除したりすることが可能となる。
【0086】
また、上記各実施形態では、第2の部品20の電極23は、ランド24とランド24上に設けられたバンプ25とにより構成されたもの、いわゆるバンプ電極であったが、たとえば図1における第2の部品10において、バンプ25を省略して、電極23はランド24のみで構成されていてもよい。この場合、第1の部品10のバンプ13がランド24に直接接触しつつ潰されて接合されたものとなる。
【0087】
また、上記第1実施形態において、さらに第1の工程の第1の区間においても沈み込み量x1を制御部110でモニタして、第1の区間中に、予め決められた沈み込み量x1の範囲に対して過大または過小が発生したとき、これを異常と判定し、接合を停止するようにしてもよい。
【0088】
また、上記各実施形態において、初期荷重F0、超音波振動の印加の開始時における超音波発振荷重、停止時における第2の荷重F2、および超音波振動により発生する電圧等について、管理幅を持たせてもよい。この場合、これら管理幅を設定した値を制御部110にてモニタし、当該管理幅より外れた場合には、異常と判定すれば、工程や出来栄えの管理が容易となる。
【0089】
また、上記各実施形態では、第1の工程にて印加する第1の荷重F1および第2の工程にて印加する第2の荷重F2は、時間とともに増加していくものであったが、第2の荷重F2が第1の荷重F1よりも大きいものであれば、これら第1の荷重F1および第2の荷重F2の両方、または、いずれか一方が、時間経過しても変化しない一定の荷重であってもよい。
【0090】
また、バンプ13と電極23との接合は、熱を印加しながら行ってもよく、その場合、ヘッド100やステージ200は、通電により発熱するものであってもよい。
【0091】
また、上記した各実施形態同士の組み合わせ以外にも、上記各実施形態は、可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 第1の部品
11 第1の部品の一面
13 第1の部品のバンプ
20 第2の部品
21 第2の部品の一面
23 第2の部品の電極
F1 第1の荷重
F2 第2の荷重
S1〜S3 第1の工程におけるステップ
S4〜S6 第2の工程におけるステップ
x1 第1の工程における沈み込み量
x2 第2の工程における沈み込み量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面(11)側に突出するバンプ(13)を有する第1の部品(10)と、一面(21)側に電極(23)を有する第2の部品(20)と、を用意する用意工程と、
前記バンプ(13)と前記電極(23)とが正対して接触するように、前記第1の部品(10)の一面(11)と前記第2の部品(20)の一面(21)とを対向させた状態で、前記第1の部品(10)および前記第2の部品(20)に第1の荷重(F1)のみを印加することにより、前記第2の部品(20)側へ前記第1の部品(10)が沈み込むように前記バンプ(13)を潰す第1の工程(S1〜S3)と、
続いて、前記バンプ(13)への超音波振動の印加を開始し、当該超音波振動の印加を続けながら、前記第1の荷重(F1)と同一の印加方向であって前記第1の荷重(F1)よりも大きい第2の荷重(F2)を、前記第1の部品(10)および前記第2の部品(20)に印加することにより、前記第1の工程の終了時点よりも更に前記第2の部品(20)側へ前記第1の部品(10)が沈み込むように前記バンプ(13)を潰して接合させる第2の工程(S4〜S6)と、を備えるバンプ接合構造体の製造方法において、
前記第1の部品(10)の前記第2の部品(20)側への沈み込みによる変位量を沈み込み量としたとき、
前記第2の工程では、前記第2の工程における前記沈み込み量(x2)をモニタし、当該沈み込み量(x2)が所定値になった時点で、前記超音波振動の印加を停止し、前記第2の荷重(F2)の印加のみとすることを特徴とするバンプ接合構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程では、前記第1の工程における前記沈み込み量(x1)をモニタし、当該沈み込み量(x1)が所定値になった時点で前記超音波振動の印加を開始し、前記第2の工程に移るようにしたことを特徴とする請求項1に記載のバンプ接合構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程では、前記第2の工程における前記沈み込み量(x2)が所定値となるまでの時間をモニタし、当該時間が所定範囲から外れた場合には、接合不良と判定することを特徴とする請求項1または2に記載のバンプ接合構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程では、前記第1の工程における前記沈み込み量(x1)が所定値となるまでの時間をモニタし、当該時間が所定範囲から外れた場合には、接合不良と判定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のバンプ接合構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−110294(P2013−110294A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254841(P2011−254841)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】