説明

パイプガード

【課題】 貫通孔の直径の変化に対応することができて抜けにくく、確実に配線・配管を保護することが可能であり、構造が簡単で安価なパイプガードを提供すること。
【解決手段】 鋼板を巻き込んで円筒体としてあり、ばね性を有すると共に、周方向の端部がスライド可能に重合している。常態において、周方向端部2,3どうしは重合し、その外径は挿入しようとする貫通孔6の直径よりやや大きい。円筒体の外周面において周方向端部2,3寄りを除いた部分に抜け止め補強用突条4あるいは突起を設けると良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線や配管を釘打ちによる損傷から護る保護パイプに関する。
【背景技術】
【0002】
木造家屋では、スタッド材(2×4工法において柱や横架材となる部材)や胴縁、間柱等(軸組み工法)などの構成材に切り欠きや貫通孔を形成し、ここに上下水管、空調機用の配管あるいは、電気機器の導電線等を通すことがある。
ところが、構成材に壁材を止め付けるために打ち込んだ釘の先端が導電線や管類に達してこれらを損傷してしまうことがあり、水漏れや漏電のように重大な事故を引き起こしかねない。
従来、構成材に配管や導電線を通過させた貫通孔や切り欠き部分は、その釘打ち側の面にパイプガードとして帯金物(鋼の平板)を取付けている。
しかし、壁材を釘打ちするとき、パイプガードの部分が帯金物の厚みで盛りあがり、壁材の取付けに支障を来す。また、並べて取付けた帯金物の間隙に運悪く釘が的中して打ち込まれ、内部に侵入した先端が配管や導電線を損傷してしまうことがある。
【0003】
パイプガードには筒形のもの(特許文献1,2)もあって構成材の貫通孔に差し込むようになっている。このタイプではパイプガードが構成材の表面に現れないので、壁材の取付けに支障をきたすことが少ない。しかし、パイプガードがスタッド材の貫通孔でがたついたり、抜け出てしまわないように取付ける必要がある一方、貫通孔への取付けが簡単に行える必要がある。そこで、従来、筒形のパイプガードは、周方向に閉合可能なように切り割られていて、取付けるときに筒状に閉じて貫通孔に挿入される。そして、切り起こしなどでスタッド材に係合させ、抜け止めされる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−205946号公報
【特許文献2】特開2002−247736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の筒形をしたパイプガードは、軸方向に切り割られていることにより、貫通孔の径に合わせてぴったりとはめ込み、また、切り起こしで確実な抜け止めができるが、切り起こしを形成すると切り起こし部の後に孔が残り、この孔を塞ぐ必要がある。また、切り起こしによる取付けは、抜け止めの機能が一方向であり、取付ける個所によっては、方向を考慮する必要がある。
この発明は、筒形をしたパイプガード自身の強いばね性で、構成材の貫通孔へぴったりと、かつ、抜け出すことなく確実に取付けることができる、構造が簡単で安価なパイプガードの提供を課題とする。
なお、前記した従来の筒形パイプガードは、取付けるときの閉じ作業が容易なように、閉じ方向への変形の基点となる個所にスリットが形成されているので、閉じられた筒形がもとの開く方向へ戻ろうとするばね性(周方向でのばね性)は、非常に弱い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鋼板を巻き込んだ簡単な構造の円筒体をパイプガードとする。鋼板は本来ばね性を有するから、これを巻き込んだ構造は円筒体の周方向に強いばね性を発揮する。したがって、これを構成材の貫通孔へ差し込むときに、多少その外径を小さくするようにして押し込むと、円筒体はそのばね性で拡開しようとして、貫通孔へぴったりと適合し、しかも、強いばね性による構成材との摩擦力で確実な抜け止め機能が発揮される。
なお、鋼板を巻き込むときに、巻き込み方向の端部間に間隙があって、ここから釘が打ち込まれるようでは、意味がないので、周方向の端部どうしはスライド可能に重合させた円筒体とする。さらに、抜け止め機能を強化するために、円筒体の周方向に沿って抜け止め用の突条あるいは突起を設けることがある。この突条あるいは突起は、釘が侵入する可能性がある間隙をできるだけ少なくするために、円筒体の外周面において鋼板が重合する部分を除いて形成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
構造が簡単で安価に製造できる。構成材の貫通孔へ押し込むだけで取付けることができ、円周方向の強いばね性により、強い抜け止め機能が発揮される。抜け止め機能には方向性がない。鋼板を巻き込んだ円筒体には釘打ち方向に関して隙間がまったくなく、また、鋼板を釘が貫通することはないので、パイプガードとして完全な保護機能が発揮される。
強いばね性によって、構成材の乾湿による貫通孔の径変化に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1乃至図5は、本発明の実施例1を示す。
図1乃至図3に示すように、パイプガード1は、基本的に、厚さ1.2〜1.6mmの鋼板を巻き込み、周方向端部2,3どうしを重合した円筒体である。周方向端部2,3は固定せずに重ね合わせてあり、自由にスライドできる。重なり幅は、4〜5mm程度である。また、円筒体の外径は、この実施例では、31mm(31mmと24mmがある)であり、鋼板が本来備えているばね性によって円周方向に強いばね性を有する。これにより、円筒体の外形を弾力的に変化させることができる。
【0009】
巻き込む前の鋼板には、予め、周方向端部2,3寄りの部分を除いて、周方向端部2,3と直交する方向に延びる複数の突条4をプレス成形してある。従って、プレス後の鋼板を巻き込むと、パイプガード1の外周面において、周方向端部2,3寄りを除いた部分に、周方向に沿って抜け止め補強用突条4が複数形成される。
突条4は、この実施例において、周方向全長に亘って連続しており、周方向端部2,3どうしをスライドさせて重なり幅を広げることを考慮して、特に内側の周方向端部3寄りには、比較的広い範囲(常態における重なり幅の3倍程度)に亘って突条4の無い領域を形成する。
なお、パイプガード1の長さは、この実施例では(a)45mm、(b)90mm、(c)130mmの3種類を用意してある(図1)。抜け止め補強用突条4の数もパイプガード1の長さによって増減し、(a)のパイプガード1には2本、(b)のパイプガード1には3本、(c)のパイプガード1には4本形成してある。
【0010】
図4及び図5は、壁フレームの縦枠5(構成材)にパイプガード1を装着した使用例を示す。
縦枠5の配線個所に貫通孔6を形成する。貫通孔6の直径は、常態におけるパイプガード1の外径である前記31mm(又は24mm)よりもやや小さくする。
パイプガード1を径方向に押し縮めて周方向端部2,3の重なり幅を大きくし、貫通孔6の直径よりも細くした状態で貫通孔6へ通す。次いで、パイプガード1を解放すると、円周方向のばね性によって、周方向端部2,3の重なり幅を小さくして、径方向に広がろうとする復元力が働く。この結果、パイプガード1は貫通孔6の内周面に圧接し、突条4の抜け止め機能と相俟って、貫通孔6へ確実に保持される。
パイプガード1の内部に導電線7を通して配線する。
【0011】
図6及び図7は、実施例2を示す。
内側の周方向端部3に、他部分より肉厚分だけ径が小さい段部8を形成する。段部8の幅は周方向端部2,3どうしの常態における重なり幅より広くし、段部8の外面に周方向端部2を重ねて円筒体を形成する。
抜け止め補強用突条4は、3本の短いものを周方向に並べてあり、これを軸方向の複数個所に形成する。突条4はさらに短く、いぼ状の突起とすることもある。
その他の構成及び使用方法は、実施例1と同様である。
この構成では、円筒体の外周に、重合による段差がないので、円筒体外周面と貫通孔の内面との接触面積が大きく、ばね性による圧着が効率良く発揮される。
【0012】
なお、本発明のパイプガードは上記実施例に限定されるものではない。
例えば、段無し重ね部2と3の個所にも抜止め補強用突条4を形成しておくこともある。
パイプガードの寸法及び突条あるいは突起の数は適宜変更可能である。
また、パイプガードは、壁フレームの上下枠、間柱、胴縁等に装着することもあり、パイプガード内に、空調機のダクト、水道管、給湯管、排水管、電線管等を収納する構成とすることがある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1を示すパイプガードの斜視図。
【図2】実施例1を示すパイプガードの側面図。
【図3】実施例1を示すパイプガードの端面図。
【図4】パイプガードの使用例を示す縦断面図。
【図5】パイプガードの使用例を示す横断面図。
【図6】実施例2を示すパイプガードの側面図。
【図7】実施例2を示すパイプガードの端面図。
【符号の説明】
【0014】
1 パイプガード
2,3 周方向端部
4 抜け止め補強用突条
5 縦枠
6 貫通孔
7 導電線
8 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成材の貫通孔へ挿通し、内部に導電線や管類を収納して保護するパイプガードであって、鋼板を巻き込んで周方向端部どうしをスライド可能に重合させた円筒体であって、周方向にばね性を有すると共にその外径を前記貫通孔の直径よりやや大きくしてあることを特徴とするパイプガード。
【請求項2】
円筒体の周方向に沿って抜け止めを補強する突条あるいは突起を設けてあることを特徴とした請求項1に記載のパイプガード。
【請求項3】
前記の突条あるいは突起は、円筒体の外周面において鋼板の重合部分を除いた部分に形成してあることを特徴とした請求項1又は2に記載のパイプガード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−153067(P2006−153067A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341695(P2004−341695)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(398041764)株式会社カナイ (27)
【Fターム(参考)】