説明

パイプ組立式収納棚

【課題】パイプ表面の摩擦係数が低下してもジョイントの固定が強固に行えるとともに、棚の組立ての自由度を損なわないパイプ組立式収納棚を提供する。
【解決手段】支柱パイプ1aと横行パイプ1bとをジョイント2、3で結合して組立てるパイプ組立式収納棚であって、支柱パイプ1aは、軸方向の一直線上に所定の間隔で設けられた複数の穴1cを有し、ジョイント2は、支柱パイプ1aと当接する凹面に突起(凹部2cの裏側)を有しており、突起を穴1cに嵌合して支柱パイプ1aとの位置ずれを防止し、収納棚の組立ての際は、棚の取付け予定高さ位置に最も近い穴1cに突起を嵌合させてジョイント2、3及び横行パイプ1bを組立てることで、実際上問題のない組み立て自由度が得られるとともに、パイプ表面の摩擦係数が低下しても支柱パイプ1aとジョイント2、3とが十分な固定強度を有するパイプ組立式収納棚とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場の備品等を保管する組立式の収納棚に関し、特に、パイプを専用のジョイントで結合して組立てるパイプ組立式収納棚に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプ組立式収納棚は、骨組み部材であるパイプとこのパイプを組み立てるためのジョイントからなっており、これらを組み合わせることにより、溶接を用いずに種々の形状のラック等を容易に製作することができる(特許文献1)。このラック等は、例えば自動車を始めとする製造組立工場等における部品等の収納用として、あるいは生産組付台及び搬送用台車として使用される。以下、パイプ組立式収納棚といえば、上記ラック等を総称するものとする。
【0003】
図7、8に従来のパイプとジョイントの例を示す。ジョイントは、支柱パイプ1a及び横行パイプ1bの端部または中間部が嵌合される凹部を有する部材2〜4(以下これらを「ジョイント」と記す。)と、これらを固定する締結用部材5、6とからなり、パイプの中間部あるいは端部に他のパイプを容易にかつ強固に接続することができ、製造現場のニーズに合わせて様々の形状寸法のラック等を短時間で製作することができる。上記ラックには下部に車輪を取り付けて移動可能とすることも容易であり、製造現場における作業能率向上に役立てられている。
【0004】
従来、パイプ組立式収納棚は、ジョイントの締め付けによる摩擦力のみで支柱パイプとジョイントとを上下方向に、横行パイプとジョイントとを水平方向に各々ずれないよう固定する方式であり、機構の単純さと組み立て自由度の高さを特徴としていた。
【0005】
【特許文献1】特開2001−286350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のパイプ組立式収納棚では、図7、8に示すように、ジョイント2〜4が支柱パイプ1aに対し、穴2a〜4aにおいてボルト5及びナット6による締め付けのみで固定されているため、支柱パイプ1a表面の摩擦係数が油分の付着等により減少すると固定強度が落ち十分な固定ができなくなるという問題があった。
【0007】
この問題は、従来パイプ組立式収納棚のパイプとして主流であった樹脂コーティングパイプが、環境上の問題から金属表面処理パイプに置き換わりつつあるという状況とも関連している。これは、樹脂コーティングパイプ表面にコーティングされた樹脂の処理が容易でなく、パイプの端材処理、廃棄処理が困難となってきたために、これらの処理を容易化するべく、表面処理を行うことで樹脂コーティングパイプと同様の防錆効果をもたせた金属パイプへの代替が進行中であるが、上記摩擦係数の低下の問題は、金属パイプの場合により深刻であるという関係による。
【0008】
一方、板材を用いる組み立て棚においては、支柱とビームとを接続する構造として支柱に多くのビーム固定用の穴を設けるのが通常である。これに対し、パイプ組み立て式収納棚では、従来このような固定用の穴は設けずに、ジョイントでの締め付けにより支柱パイプに横行パイプを取り付けており、任意の高さ位置に取付けられるという組立て自由度の高さを一つの特徴としていた。
【0009】
パイプ組立式収納棚の固定不良対策として、上記の板材の組み立て棚のように支柱パイプに一定間隔で横行パイプ固定用の穴を設けることが考えられるが、上述のようにジョイントの締め付けボルトが支柱パイプと横行パイプの締付けに用いられており、これとは別にジョイントに支柱パイプに対する水平位置固定用の機能を持たせるとなると構造が複雑となって組立作業が現在ほど簡易なものではなくなってしまうだけでなく、上記組立て自由度も損なわれるおそれがあった。
【0010】
本発明は上記の問題点を解決し、簡易な構成で、パイプの表面状態によらずジョイントとパイプの固定が強固に行えるとともに、棚の取付け高さや間隔等の組立ての自由度を損なわないパイプ組立式収納棚を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、支柱パイプと横行パイプとをジョイントで結合して組立てるパイプ組立式収納棚であって、前記支柱パイプは、軸方向の一直線上に所定の間隔で設けられた複数の穴を有し、前記ジョイントは、前記穴に嵌合して前記支柱パイプとの位置ずれを防止する突起を有することを特徴とする。これにより、パイプの表面状態によらず簡易な方法で強固に組立てることができ、棚の取付け高さや間隔等も実際上自由に選択することができる。
請求項2に記載の発明は、さらに、前記穴は前記支柱パイプの軸方向に複数列設けられていることを特徴する。これにより、同一の支柱パイプにタイプの異なるジョイントを上記と同様に強固に、かつ自由度を損なわずに組立てることができる。
請求項3に記載の発明は、さらに、前記穴は前記支柱パイプの表面に設けられた凹部であることを特徴する。これにより、支柱パイプの製作をより容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
上記解決するための手段により、本発明のパイプ組み立て式収納棚は、パイプの表面状態によらず、簡易な方法で強固に組立てることができ、棚の取付け高さや間隔等も実際上自由に選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態について説明する。まず、本パイプ組立式収納棚の特徴である、ジョイント及び横行パイプの高さ位置固定機構について説明する。
【0014】
図1は、本発明のパイプ組立式収納棚の一実施例を示す、支柱パイプとジョイントの結合部分の斜視図である。符号1aは支柱パイプ、符号2はジョイント、符号5はボルトをそれぞれ示す。なお、図7、8に示す従来のパイプ組立式収納棚と対応する部分は同一の符号で示す。
【0015】
図1、3に示すように、支柱パイプ1aには軸方向の一直線上に所定の間隔で複数の穴が設けられている。
また、図2に示すように、ジョイント2には支柱パイプ1aとの嵌合用の凹部のほぼ中央に突起2bが設けられている。この突起2bは図1に示す結合時に支柱パイプ1aの穴1cと嵌合してジョイント2の上下方向への位置ズレを防止する。
【0016】
支柱パイプ1aの穴1cは、本実施形態では軸方向に等間隔に設けられているが、必要に応じて穴1cの間隔に差をつけてもよい。例えば、パイプの両端部付近の間隔を広くし、中央部の間隔を狭くする等の穴の配置としてもよい。また、後述するように、多くの種類のジョイントに対応するために穴1cを複数列設けてもよい。
【0017】
さらに、図4に示すように、穴1cの替わりに突起2bが嵌合できる凹部1dを設ける構成としてもよい。これにより、支柱パイプ1aの加工時間を短縮することができる。
【0018】
ジョイント2の突起2b部分の外面側は凹部2c(図1)となっている。すなわち、本実施形態ではジョイント2をプレス加工して突起2bを形成させているが、突起2bの形成方法はこれに限らず、例えば溶接や接着材による方法であってもよい。
【0019】
次に、上記構成のパイプ組立式棚の機能について説明する。
パイプ組立式棚を組立てる場合、図1の支柱パイプ1aの棚の取付け高さ付近にある穴1cにジョイント2の突起2bを嵌合させ、次に2本の横行パイプ1bの端部をジョイント3とともにジョイント2の対応位置(図7参照)にあてがい、ジョイント2及び3の穴2a及び3aにボルト5を挿入してナット6にて締め付ける。横行パイプ1bのもう一方の端部についても、別の支柱パイプ1aの同じ高さ位置の穴1cに別のジョイント2及び3により同様に固定する。
【0020】
このようにして支柱パイプ1aに取り付けられたジョイント2及び3は、横行パイプ1b上に取り付けられた棚板(不図示)に載置されたり、横行パイプ1bに直接載置される機械部品等の荷重を受ける。従来はこの荷重をボルト5、ナット6の締め付けによる支柱パイプ1aとジョイント2、3との接触面の摩擦力のみで支えていた。このため、上述のように支柱パイプ1aの表面の摩擦係数が油分付着等により低下していた場合は、荷重に耐えることができず、ジョイントが位置ズレを起こすおそれがあった。
【0021】
上記構成の棚の場合、上記荷重は上記摩擦力に加えて、支柱パイプ1aの穴1cの縁部とジョイント2の突起2bとのせん断応力によって支えられるため、極めて大きな荷重であっても支えることができ、支柱パイプ1aの表面の摩擦係数が油分付着等により低下していた場合であってもジョイントが位置ズレを起こすことはない。
【0022】
従来のパイプ組立式収納棚では上述のように樹脂コーティングパイプが主流だったこともあり、パイプ表面の摩擦係数低下は大きな問題にならなかった。それが環境面の問題から金属パイプへの代替が進行すると、今度は摩擦係数低下への対策が必要となってきたのである。本発明は、機構の単純さと組み立て自由度の高さというパイプ組立式収納棚の利点を損なうことなく、特に金属パイプにおける摩擦係数低下の問題を解決したものである。以下、この点についてさらに詳しく説明する。
【0023】
元々、ジョイントによる締め付け方式においては、当たり面が一定の表面形状をなしていることが必要である。パイプの場合、表面形状が円筒形であるため、外径を指定するだけでこの一定の表面形状が得られる。つまり、パイプは容易に規格化できるため大量生産が可能であり、常に一定の表面形状が得られるという利点がある。
【0024】
また、パイプは一定の曲率の外形を有するため、ジョイントで締め付ける場合、どの方向から取り付けても接触面の片当たりの心配が少なく、摩擦力を最大限に有効利用でき、さらにパイプの長手方向の任意の箇所で容易に同等の固定強度が得られるという利点もあり、ジョイントによる締め付け方式とは非常に相性がよいのである。
【0025】
このように好条件がそろっており、さらに、樹脂コーティングパイプでは摩擦係数の問題も少なかったので、パイプ組み立て式の棚においては、ジョイント部が荷重のかかる部分であるにもかかわらず、高さ位置決めは制約なし、との先入観、大前提があった。また、上述のようにこの高さ位置決めその他の組み立て自由度の大きい点が一つのセールスポイントにもなっていた。
【0026】
そこへ上述の摩擦係数の低下の問題が発生し、大前提であった摩擦力によるジョイントとパイプとの固定強度の維持が困難となったのである。ここで、発明者らは棚の構造設計の原点に立ち返って、支柱パイプとジョイントとの固定強度と組み立て自由度の問題を考察、追究することにより本発明の構成に想到した。すなわち、上述した好条件に恵まれた結果、盲点となって十分に検討されてこなかった位置決め強度の確保については、パイプほど取付け強度が容易には得られない一般的な鋼板製の棚の構成を改めて検討したのである。その結果、位置決め及び固定用の穴をパイプ長手方向に複数個所設け、これに対応する突起をジョイントに設ける上記構成が固定強度上も十分であり、また製作も容易で今回の問題の最良の解決策であると確信するに至った。
【0027】
さらに、組み立ての自由度に関しても上記穴の間隔を適切に選択することにより、従来に較べても実際上問題のない範囲とすることができ、大きく損なわれることのないことが判明した。主に工場で用いられる収納棚に実際に求められている高さ精度は、主に水平の精度であって、絶対高さや棚の間隔の精度ではなく、これは各支柱パイプに適切な間隔で寸法精度よく穴を加工することで十分に確保することができるのである。
本発明のパイプ組み立て式収納棚は、技術的課題に対し、一直線に先を考えるだけでなく、基盤となっている技術に立ち戻って考察することでなされたものといえる。
【0028】
上記構成により図5に示すように、支柱パイプ表面の長手方向に一直線状に設けられた2列の穴列が、横断面の中心角において互いに90°をなす配置とすることで、図6のようなジョイントの配置に対しても対応できる支柱パイプとすることができる。また、図8の従来のジョイント4の中央部に本発明の突起を設けたものと、本実施形態のジョイント2及び3とを1本の支柱パイプに取り付けるために、横断面の中心角において中央の列の左右に45°をなす列を配した3列の穴列配置(不図示)とすることもできる。
【0029】
本実施形態のパイプ組立式収納棚は、各種ジョイントの形状や取付け方向に対応するために、互いに所定の角度をなす複数列の穴を設けた支柱パイプと、例えば棚の4隅に用いられる1列の穴のみを設けた支柱パイプとを備えており、これらを組み合わせることで、多くのパターンの棚形状に対して表面状態によらずに強固に、かつ自由度も損なわずに容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のパイプ組立式収納棚の一実施形態における支柱パイプとジョイントの結合部分を示す斜視図である。
【図2】図1のジョイントを内側から見た図である。
【図3】図1の支柱パイプの斜視図である。
【図4】他の実施形態の支柱パイプを示す斜視図である。
【図5】複数列の穴を有する支柱パイプの横断面図である。
【図6】図7の支柱パイプとジョイントの結合状態を示す斜視図である。
【図7】従来のパイプ組立式収納棚のパイプとジョイントの組み立ての一例を示す図であり、(a)はジョイントの分解斜視図、(b)はパイプとジョイントの組立斜視図である。
【図8】従来のパイプ組立式収納棚のパイプとジョイントの組み立ての他の一例を示す図であり、(a)はジョイントの分解斜視図、(b)はパイプとジョイントの組立斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1a 支柱パイプ
1b 横行パイプ
1c 穴
1d 凹部
2、3、4 ジョイント
2a、3a、4a 穴
2b 突起
2c 凹部
5 ボルト
6 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱パイプと横行パイプとをジョイントで結合して組立てるパイプ組立式収納棚であって、
前記支柱パイプは、軸方向の一直線上に所定の間隔で設けられた複数の穴を有し、
前記ジョイントは、前記穴に嵌合して前記支柱パイプとの位置ずれを防止する突起を有する
ことを特徴とするパイプ組立式収納棚。
【請求項2】
前記穴は前記支柱パイプの軸方向に複数列設けられている、請求項1に記載のパイプ組立式収納棚。
【請求項3】
前記穴は前記支柱パイプの表面に設けられた凹部である、請求項1または2に記載のパイプ組立式収納棚。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−297147(P2009−297147A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153135(P2008−153135)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(507152877)株式会社アール・エス・ケー (3)
【Fターム(参考)】