説明

パウチの製造方法及びパウチ

【課題】小ロット多品種のパウチに対応可能な無印刷パウチを効率よく製造できると共に、この無印刷パウチへの枚葉印刷を生産性よく行うことが可能なパウチの製造方法を提供することである。
【解決手段】少なくとも外面材及びヒートシール性内面材を有する積層体から成り、外表面に印刷層が形成されているパウチの製造方法において、前記外面材表面にアンチブロッキング性を有するアンカーコート層を形成した後、パウチに製袋し、該パウチの外表面に電子線又は紫外線照射により印刷層を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチの製造方法及びパウチに関するものであり、より詳細には小ロット多品種のパウチを生産性よく製造可能なパウチの製造方法及びパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも外面材及びヒートシール性内面材を有する積層体から成り、外表面に印刷が施されているプラスチックパウチの製造は、外面材を構成する長尺の樹脂フィルムにグラビア印刷を行って印刷層を先に形成した後、接着剤を塗布し、ヒートシール性内面材と積層して積層体とし、キュアリング(接着剤の硬化)を行ってから、パウチ形状に製造していた。
長尺樹脂フィルムへのグラビア印刷は、印刷スピードが速く、刷版の耐刷性に優れていることから、大ロットの製品に適しているが、版替えに長時間を要すると共に版が高価であることから、小ロット多品種のパウチへの適用が困難であった。
【0003】
近年パウチの印刷デザインが重視され、小ロット多品種のパウチの需要が増加していることから、無印刷パウチを大量に製造した後、パウチ外表面に電子写真法により印刷を行うことも提案されているが(特許文献1)、電子写真法は、大掛かりな設備が必要で生産性の点で充分満足するものではないため、版替え時間が短く、版が安価なオフセット印刷等により印刷を行うことが望まれている。
一方、パウチに多色印刷を行う場合、一色ずつの連続多色印刷と仕上げニスを連続的に塗布し、その直後に硬化を行うことが好ましく、インキ及び仕上げニスの硬化方式には、紫外線(UV)硬化、熱硬化、電子線(EB)硬化等の方法があるが、成形後のパウチへの印刷に関しては、パウチに熱のダメージを与えず短時間で硬化可能な、紫外線硬化及び電子線硬化で行うことが好適である。
【0004】
しかしながら、紫外線硬化及び電子線硬化によりインキ及び仕上げニスを塗布・硬化させる場合、インキ及び仕上げニスの架橋による収縮により、印刷層及び仕上げニス層とパウチ表面との密着性が低下するため、パウチ搬送時、内容物の充填時、レトルト殺菌等の際に印刷層や仕上げニス層が剥離し易く、レトルト殺菌の際にブリスターが発生するという問題を生じた。
このような問題を解決するために、フィルム表面にアンカーコート層を形成して、印刷層及び仕上げニス層を形成することが行われている。(特許文献2)
【0005】
【特許文献1】特開平8−194325号公報
【特許文献2】特開2005−225083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アンカーコート層を形成した無印刷パウチや、或いはアンカーコート層を形成した外面材又は積層体を、積層或いは巻取りして保管しておくと、アンカーコート層同士が接触してブロッキングが発生し、パウチを一枚ずつ分離できなかったり、或いは外層材又は積層体を巻戻しできないという問題を生じることがわかった。
【0007】
従って本発明の目的は、小ロット多品種のパウチに対応可能な無印刷パウチを効率よく製造できると共に、この無印刷パウチへの枚葉印刷を生産性よく行うことが可能なパウチの製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、無印刷パウチ同士、或いはアンカーコート層が形成された外面材又は積層体のブロッキングが効果的に防止され、パウチの製造及び印刷を生産性よく行うことが可能なパウチの製造方法を提供することである。
本発明の更に他の目的は、アンカーコート層が形成された無印刷パウチ、及びこの無印刷パウチから成る印刷パウチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、少なくとも外面材及びヒートシール性内面材を有する積層体から成り、外表面に印刷層が形成されているパウチの製造方法において、前記外面材表面にアンチブロッキング性を有するアンカーコート層を形成した後、パウチに製袋し、該パウチの外表面に電子線又は紫外線照射により印刷層を形成することを特徴とするパウチの製造方法が提供される。
本発明のパウチの製造方法においては、
1.アンカーコート層が、アンチブロッキング剤を含有すること、
2.アンチブロッキング剤が、シリカ、酸化チタン、硫酸バリウムの少なくとも一つから成る平均粒径0.1乃至10μmの微粒子であり且つアンカーコート層を形成するアンカーコート剤の樹脂分100重量部当り、シリカの場合0.1乃至10重量部、酸化チタン又は硫酸バリウムの場合0.1乃至150重量部の量で配合されていること、
3.印刷層上に、電子線又は紫外線照射により仕上げニス層を形成すること、
4.印刷層形成前の無印刷パウチを積層して経時保管、或いはアンカーコート層を形成した積層体を巻取りして経時保管すること、
5.アンカーコート層が、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂等のアンカーコート剤から成ること、
6.パウチが内容物の充填後に加熱殺菌に賦されるものであること、
が好適である。
【0009】
本発明によればまた、少なくとも外面材及びヒートシール性内面材を有する積層体から成り、アンチブロッキング性を有するアンカーコート層が形成されていることを特徴とするパウチが提供される。
本発明のパウチにおいては、アンカーコート層が、アンチブロッキング剤を含有すること、が好適である。
本発明によれば更に、上記パウチのアンカーコート層上に印刷層が形成されていることを特徴とする印刷パウチが提供される。
本発明の印刷パウチにおいては、印刷層上に仕上げニス層が形成されていること、が好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパウチの製造方法によれば、無印刷のパウチを積層して経時保管してもブロッキングすることがなく、生産性よく枚葉印刷することが可能となる。
また本発明のパウチの製造方法によれば、版替え時間が短く、版が安価で、小ロット多品種のパウチを生産性よく製造することが可能となる。
更にレトルト殺菌等の加熱殺菌用途に用いられた場合にも、印刷層の密着性に優れ、外観特性にも優れた印刷パウチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のパウチの製造方法は概略的に言って、少なくとも外面材及びヒートシール性内面材から成り、外面材表面にアンカーコート層を形成したアンカーコート層形成積層体を形成する工程、前記アンカーコート層形成積層体から無印刷パウチを成形する工程、前記無印刷パウチの外表面に電子線又は紫外線照射により印刷層及び必要により仕上げニス層を形成する工程からなっているが、これらの各工程は必ずしも連続的に行われなくてもよく、各工程の間或いは工程中に、印刷パウチ成形のための中間体の状態で経時保管することができ、何れの工程で経時保管を行った場合でも、中間体同士がブロッキングすることがなく、生産性よく印刷パウチを製造することが可能となる。
【0012】
本発明の製造方法においては、第一に、予め外面材表面にアンカーコート層が形成された、少なくとも外面材及びヒートシール性内面材から成る積層体を形成する。
このようなアンカーコート層が形成された積層体は、外面材とヒートシール性内面材を予め積層した積層体の外面材表面にアンカーコート層を形成する場合と、外面材に先にアンカーコート層を形成した後、外面材のアンカーコート層を形成した面の反対側にヒートシール性内面材を積層する場合があるが、何れの順序で製造してもよい。
本発明においては、ブロッキングの原因となるアンカーコート層がアンチブロッキング性を有するため、無印刷パウチの成形に供される前に、アンカーコート層形成積層体及びアンカーコート層形成外面材を、長尺の状態で巻き取りして経時保管してもブロッキングせず、次工程にスムーズに供給することが可能である。
【0013】
次いで、アンカーコート層が形成された積層体を、ヒートシール性内面材が内側となるように、積層体を重ね合わせてヒートシールすることにより、パウチの形状に成形して無印刷パウチを成形する。
本発明においては、上述したようにアンカーコート層のブロッキングが防止されているため、次いで行う印刷工程に付する前に、無印刷パウチの状態で積層して、経時保管することができる。
本発明においてはこのように成形された無印刷パウチの外表面に紫外線又は電子線硬化型のインキ及び必要により仕上げニスを塗布し、紫外線又は電子線を照射することにより、外表面に印刷層及び必要により仕上げニス層を有する印刷パウチを成形する。紫外線又は電子線硬化は、パウチに熱ダメージを与えることがなく、短時間で硬化させることが可能であるため、生産性に優れている。その一方、硬化に際してインキ及びニスは収縮し、外面材は収縮しないために印刷層及び必要により形成される仕上げニス層が外面材から剥離するおそれがあるが、本発明においては、外面材表面にアンカーコート層が形成されているため、硬化によりインキ及びニスに生ずる応力を緩和することができるため、印刷層及び仕上げニス層の剥離が有効に防止されている。
【0014】
(積層体)
本発明の製造方法に用いられる、少なくとも外面材及びヒートシール性内面材から成る積層体は、従来よりパウチに用いられていた積層体をすべて用いることができる。
外面材としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、セロファン等を挙げることができる。
ポリオレフィン系樹脂としては、低−、中−或いは高−密度のポリエチレン(LDPE,MDPE,HDPE)、ポリプロピレン(PP)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体或いはこれらのブレンド物等が挙げることができる。
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステルやそのブレンド物等を挙げることができる。
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミドや、ナイロン6/6,6等のこれらの共重合ポリアミド、或いはこれらの2種以上のブレンド物等を挙げることができる。
ポリカーボネート樹脂(PC)としては、ビスフェノールA或いはF等のビスフェノール類からのポリカーボネート、ポリカーボネートZ等を挙げることができる。
【0015】
ヒートシール性内面材としては、上述したポリオレフィン系樹脂を好適に使用することができ、特に未延伸のものを好適に用いることができる。
また本発明に用いる積層体は、上記外面材及びヒートシール性内面材の2層構造のものに限定されず、3層或いは4層以上の多層構造であってよい。例えば、形成されるパウチに、酸素等に対する耐気体透過性を付与するために、エチレンビニルアルコール共重合体等のガスバリア性樹脂、アルミ箔、鋼箔等の金属箔、或いは樹脂フィルムに無機或いは金属を蒸着した蒸着フィルム等や、耐衝撃性を向上させるために、上述したポリアミド樹脂から成る層、或いは酸素吸収性樹脂組成物やリグラインド(スクラップ樹脂)等から成る層を中間層として一層、或いは組合せで形成することもでき、また必要により隣接樹脂層間に接着剤樹脂層を設けることも勿論できる。
更に必要により、外面材に酸化チタン等の白色顔料を配合することや、或いは外面材のアンカーコート層と反対側の位置にベタ印刷等を行うこともできる。
本発明においては、これに限定されないが、外面側から順に、ポリエステル/ナイロン/ガスバリア性層/ポリオレフィンから成る積層体を好適に用いることができる。
【0016】
(アンカーコート層)
本発明に用いるアンカーコート層は、ポリウレタン系アンカーコート剤、ポリエステル系アンカーコート剤、アルキルチタネート系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤等従来公知のアンカーコート剤を用いることができるが、インキ及び仕上げニスの収縮の際に発生する応力を効果的に緩和し得るものである点で、特にポリウレタン系或いはポリエステル系のアンカーコート剤を好適に用いることができる。
ポリウレタン系アンカーコート剤は、一般にイソシアネート化合物と活性水素化合物とから調製されるが、本発明においては特に、活性水素化合物としてポリエステルポリオールや、ポリアクリルポリオール、ポリカーボネートジオール等が用いられたポリウレタン系アンカーコート剤を好適に用いることができる。またレトルト殺菌等の加熱殺菌を行うパウチにおいては、ポリエステルポリオール含有ポリウレタン樹脂からなるものが好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びポリエステルポリオールから成るポリウレタン系アンカーコート剤を用いることが特に望ましい。
【0017】
本発明においては、アンカーコート剤としてポリエステルポリオール含有ポリウレタン系アンカーコート剤を用いる場合には、アンカーコート層のブロッキングを防止するために、アンチブロッキング剤を含有することが望ましい。
アンチブロッキング剤としては、シリカ系、炭酸カルシウム系、アルミナ系、シリカアルミナ系、チタン系、クレイ系、ゼオライト系等、従来公知の無機系アンチブロッキング剤、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリアクリレート粒子などの架橋樹脂粒子等の有機系アンチブロッキング剤を使用することができるが、特にシリカ、酸化チタン、硫酸バリウムを好適に用いることができる。アンチブロッキング剤は、アンカーコート剤の樹脂分100重量部当りの含有量である「phr(per hundred resin)」が、シリカの場合0.1乃至10重量部の量、特に2乃至5重量部、酸化チタン又は硫酸バリウムの場合0.1乃至150重量部の量、特に50乃至100重量部の量で配合されていることが、アンカーコート層のブロッキングを防止する上で好ましい。含有量がこの範囲を下回ると印刷前パウチでのブロッキングが発生するおそれがあり、一方含有量がこの範囲を上回るとインキとの密着性不良が発生するおそれがある。
またアンチブロッキング剤は0.1乃至10μm、特に0.5乃至8μmの範囲の平均粒径を有するものであることが、印刷特性を損なうことなく、効果的にアンカーコート層のブロッキングを防止する上で重要である。平均粒径がこの範囲を下回ると印刷前パウチでのブロッキングが発生するおそれがあり、平均粒径がこの範囲を上回るとアンチブロッキング剤上部のインキ厚みが他部分よりも薄くなるため色調ムラが発生するおそれがある。
尚、アンチブロッキング剤の平均粒径は、光学顕微鏡によりアンカーコート層を観察して、n=200個の粒子をランダムに選出してそれぞれの粒径を求めた後、それらの平均をもとめて平均粒径とする。
【0018】
アンカーコート剤の塗工量は、0.5乃至8g/m、特に1乃至4g/mの範囲にあることが好適である。塗工量がこの範囲を下回るとインキとの密着不良が発生しやすくなり、塗工量がこの範囲を上回るとパウチ同士のブロッキングが発生しやすくなる。
前述した通り、アンカーコート層は、積層体製造後或いは積層体製造途中での長尺の状態の積層体或いはフィルムにアンカーコート剤を塗布することにより形成することができ、これに限定されないが、グラビアコート、ロールコート等により塗布し、70乃至150℃の温度で0.5乃至10秒間熱処理して乾燥させたのちフィルムを巻き取り、30乃至80℃で1乃至7日間エージングすることにより形成することができる。
【0019】
(インキ及び仕上げニス)
本発明においては、紫外線硬化型又は電子線硬化型のインキ及び仕上げニスを用いることが、パウチへダメージを与えることなく、生産性よく印刷を行うことができる点で望ましい。
本発明においては、印刷層及び仕上げニス層の形成には、従来公知の紫外線硬化型又は電子線硬化型のインキ及び仕上げニスを用いることができるが、食品用途のパウチの製造には、電子線硬化型のインキ及び仕上げニスを用いることが好適である。すなわち電子線硬化型のインキ及び仕上げニスは、エネルギー透過性の高い電子線を用いて硬化させるものであるため、紫外線硬化型インキと異なって増感剤や反応開始剤の配合を必要としないことから、衛生性の点で優れている。
紫外線硬化型のインキ及び仕上げニスは、増感剤や反応開始剤が必要であることから、衛生性の点から洗剤等の食品用途以外のパウチの製造に用いることが望ましい。
尚、仕上げニスの塗布量は、1乃至8g/m、好適には2乃至6g/mであることが好ましい。塗布量の上限を上回ると樹脂の硬化不足によりレトルト後にブリスターが発生することがあり、下限を下回ると光沢不足・滑性不足が発生することがある。
【0020】
紫外線硬化型のインキとしては、従来公知の紫外線硬化型樹脂組成物及び着色顔料からなるものを使用することができ、好適には、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリウレタンメタクリレート、ポリエン−ポリチオール化合物、不飽和ポリエステル、液状ポリブタジエン化合物、アミノアルキッド樹脂、及び重合開始剤或いは反応開始剤の組み合わせから成る紫外線硬化型樹脂組成物を挙げることができる。
また紫外線硬化型の仕上げニスは、着色顔料の配合がなく、透明性に優れているという点を除けば、印刷インキと同様のものを使用することができる。
【0021】
電子線硬化型のインキとしては、従来公知の電子線硬化型樹脂組成物及び着色顔料からなるものを使用することができ、電子線硬化型樹脂組成物としては、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリウレタンメタクリレート、ポリエン−ポリチオール化合物、不飽和ポリエステル、液状ポリブタジエン化合物、アミノアルキッド樹脂を挙げることができ、仕上げニスは、着色顔料の配合がなく、透明性に優れているという点を除けば、印刷インキと同様のものを使用することができる。
【0022】
本発明においては、パウチ一枚ずつに印刷を行う枚葉印刷によって無印刷パウチのアンカーコート層上に印刷を行う。すなわち上述した紫外線又は電子線硬化型インキを用いて多色印刷し、仕上げニスを塗布してから、これらを硬化させることにより、印刷層及び仕上げニス層をパウチ一枚ずつ印刷する。
印刷方式としては、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式、インクジェット印刷方式、スクリーン印刷方式等を採用することができるが、特に版替えが容易で版の価格が安く、かつ印刷スピードの速いオフセット印刷で行うことが好ましい。
紫外線による硬化は、従来公知の方法に従って行うことができ、一般に波長200乃至440nmの光線が使用され、紫外光源としては、低圧乃至高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプまたはカーボン・アーク灯等を使用することができる。
電子線による硬化は、従来公知の方法に従って行うことができ、電子線照射装置としては、カーテンビーム型、エリアビーム型、ブロードビーム型、スキャニングビーム型、真空管型等の装置が挙げられる。電子線は、加速電圧が30乃至150KV、望ましくは70乃至130KVの低エネルギー線タイプであることが望ましい。加速電圧がこの範囲を下回るとインキや仕上げニスの硬化が不十分となり、加速電圧がこの範囲を上回るとパウチのヒートシール層まで電子線が到達しヒートシール層が劣化するため、シール強度の低下や耐落下性が低下しやすくなる為である。
【0023】
(パウチ成形)
本発明においては、アンカーコート層が形成された長尺の積層体のヒートシール性内面材が内側になるように重ね合わせ、必要部分をヒートシールし、その後裁断することにより、個別の無印刷パウチを製造するが、裁断前の複数個の無印刷パウチが連結した状態で、経時保管、或いは印刷工程に付することもできる。
この無印刷パウチは、アンカーコート層が形成されていてもアンチブロッキング性に優れているので、これらを積み重ねて保管した後に印刷工程に賦しても、一枚ずつ無印刷パウチを供給することができ、効率よく印刷パウチを製造することができる。
【実施例】
【0024】
<実施例1>
(パウチ用多層フィルムの作製)
厚さ12μmの長尺二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片側にアンカーコートをグラビアコートで塗膜量2.5g/mで塗布し乾燥させたのち、長尺フィルムを巻き取り、55℃で5日保管することによりアンカーコート層をエージングした。
その後、アンカーコート層非塗工面にウレタン樹脂系2液硬化型接着剤を4g/mで塗布し溶剤を乾燥させたのち、厚さ7μmのアルミニウム箔をラミネートした。その後、アルミニウム箔面にウレタン樹脂系2液硬化型の接着剤を4g/mに塗布乾燥し、ヒートシール層として厚さ70μmの無延伸ポリプロピレン樹脂をラミネートした。フィルムを巻き取った後、55℃3日間のエージングすることによって接着剤を硬化させて長尺パウチ用多層フィルムを得た。アンカーコートは、ポリウレタン樹脂(ポリエステルポリオール含有)にHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)硬化剤を添加した2液硬化型の樹脂を用い、アンチブロッキング剤としてシリカを配合した。シリカの平均粒径は2μmであり、配合量は2.5phrであった。
【0025】
(パウチの作製)
得られた長尺パウチ用多層フィルムのヒートシール層同士を重ねて、パウチの枠となるべき部分を10mmのシール幅にて210℃、1秒でヒートシールし、パウチサイズ(130mm×170mm)に切断して、個別パウチを得、積み重ねて保管した。
【0026】
(印刷パウチの作製)
積重ねて保管したパウチを取り出し、RIテスターにてパウチの片面に電子線硬化用インキ(藍色)を塗布量1.5g/mにベタ印刷し、Wetの状態で電子線硬化用仕上げニスを4g/mに塗布した後、50kGyの線量が得られるように電子線を照射してインキと仕上げニスを硬化させて、印刷パウチを作製した。仕上げニスは印刷面全面に塗布した。
【0027】
<パウチの評価>
(レトルト後インキ密着性評価)
得られたパウチに水を200g入れた後、ヒートシールして密封してサンプルを作製した。130℃30分間の蒸気レトルト処理をしたのち、冷却・乾燥した。このパウチの印刷面に仕上げニス上からカッターで×字の傷を付け、セロテープの粘着面を貼り付けた。貼り付けたテープを親指の腹で強くこすりつけたのち、片手でテープの端を持ち、もう一方の手で試料が持ち上がらないように押さえ、引き剥がした。
評価は次の基準で行った。製品としての許容範囲は○と△である。
○:剥離が全くない
△:剥離面積が全体の30%未満
×:剥離面積が全体の30%以上
【0028】
(レトルト後外観評価)
上記と同様のレトルト処理を行ったパウチの外観を視覚で評価した。
評価は次の基準で行った。
○:「インキ剥離によるシワ」の発生がない。
×:「インキ剥離によるシワ」の発生がある。
【0029】
(印刷前パウチのアンチブロッキング性評価)
作製した印刷前のパウチを20枚積み重ねて恒温器に入れて35℃にし、その上に8Kg(底面積が10cm×10cmの重りを使用)の荷重を加えた。24時間後そのまま取りだし、荷重をかけたまま室温まで放冷後、荷重のかかった密着面間を慎重にゆっくり剥離し、ブロッキングの状態を比較観察した。評価は次の基準で行った。製品としての許容範囲は○と△である。
○:パウチ同士の接着がない。
△:パウチ同士で部分的で微少な接着はあるが、製造上問題ない。
×:パウチ同士で接着しており、剥離できない。
【0030】
<実施例2〜5>
アンカーコート層のアンチブロッキング剤を表1のように配合したこと以外は実施例1と同様にして印刷パウチを作製し、評価した。
【0031】
<実施例6>
印刷インキとして紫外線硬化用インキを用い、仕上げニスとして紫外線硬化用仕上げニスを用い、140mJ/cm(FUSION・UVシステムズ・ジャパン株式会社の「FUSION UVIMAP」にて測定)の照射エネルギーが得られるように水銀灯にて紫外線を照射した以外は実施例1と同様にして印刷パウチを作製し、評価した。
【0032】
<比較例1>
実施例1と同様にして、パウチを作製し、積み重ねて保管した。積み重ねて保管したパウチを取り出し、熱硬化型インキを2.5g/m塗布したのち、熱硬化型仕上げニスを5g/m塗布し、180℃2分の条件でキュアさせて、印刷パウチを作製した。得られたパウチにつき実施例1と同様の評価を計画したが、キュア時の加熱により内面層が融着し水パックできなかったため、パウチ評価は実施しなかった。
尚、アンチブロッキング性は「○」であった。
【0033】
<比較例2>
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム面上にアンカーコート層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様に印刷パウチを作製し、評価した。
【0034】
<比較例3>
アンカーコート層にアンチブロッキング剤を配合しなかったこと以外は実施例1と同様に印刷パウチを作製し、評価した。
尚、本比較例においては、パウチのアンチブロッキング性が「×」であったため、レトルト後インキ密着性、レトルト後外観はいずれも評価しなかった。
【0035】
前記実施例1乃至6、及び比較例1乃至3の評価結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
<実施例7>
アンカーコート樹脂として、アンチブロッキング性を有する架橋タイプのポリエステル樹脂系を用い、アンチブロッキング剤を配合せず、レトルト処理せずにインキ密着性の評価を行った以外は実施例1と同様にして印刷パウチを作製し、評価を行った結果、アンチブロッキング性、インキ密着性の評点はいずれも良好であった。
【0038】
<実施例8>
アンカーコート樹脂として、アンチブロッキング性を有するポリアクリルポリオールを含有したポリウレタン樹脂にHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)硬化剤を添加した2液硬化型の樹脂を用いた以外は実施例7と同様にして印刷パウチを作製し評価を行った結果、アンチブロッキング性、インキ密着性の評点はいずれも良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外面材及びヒートシール性内面材を有する積層体から成り、外表面に印刷層が形成されているパウチの製造方法において、前記外面材表面にアンチブロッキング性を有するアンカーコート層を形成した後、パウチに製袋し、該パウチの外表面に電子線又は紫外線照射により印刷層を形成することを特徴とするパウチの製造方法。
【請求項2】
前記アンカーコート層が、アンチブロッキング剤を含有する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記アンチブロッキング剤が、シリカ、酸化チタン、硫酸バリウムの少なくとも一つから成る平均粒径0.1乃至10μmの微粒子であり且つアンカーコート層を形成するアンカーコート剤の樹脂分100重量部当り、シリカの場合0.1乃至10重量部、酸化チタン又は硫酸バリウムの場合0.1乃至150重量部の量で配合されている請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記印刷層上に、電子線又は紫外線照射により仕上げニス層を形成する請求項1乃至3の何れかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記印刷層形成前の無印刷パウチを積層して経時保管、或いはアンカーコート層を形成した積層体を巻取りして経時保管する請求項1乃至4の何れかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記アンカーコート層が、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂等のアンカーコート剤から成る請求項1乃至5の何れかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記パウチが内容物の充填後に加熱殺菌に賦されるものである請求項1乃至6の何れかに記載の製造方法。
【請求項8】
少なくとも外面材及びヒートシール性内面材を有する積層体から成り、アンチブロッキング性を有するアンカーコート層が形成されていることを特徴とするパウチ。
【請求項9】
前記アンカーコート層が、アンチブロッキング剤を含有する請求項8記載のパウチ。
【請求項10】
請求項8又は9記載のパウチのアンカーコート層上に印刷層が形成されていることを特徴とする印刷パウチ。
【請求項11】
前記印刷層上に仕上げニス層が形成されている請求項10記載の印刷パウチ。

【公開番号】特開2010−143622(P2010−143622A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323922(P2008−323922)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】