説明

パウチの製造方法

【課題】 注出口の開口をよくするための熱プレス成形部を従来と比べて深く熱プレス成形可能であり、熱プレス成形部の周辺に皺が発生せず、熱成形後、雄型及び雌型から熱プレス成形部が型離れしやすく、加工速度を低下せずに熱プレス加工可能であるため、生産性に優れた熱プレス成形部位を付設するパウチの製造方法を提供する。
【解決手段】 積層フィルム20の熱プレス成形を付与する部位を加熱する工程と、積層フィルム20を搬送する工程と、雄型13と雌型14の金型を配置し、積層フィルム20を雄型13と雌型14の間に挿入し、雄型13及び雌型14に付設される弾性体21によって熱プレス成形部の周辺を保持すると共に、熱プレス成形部Sを雄型13と雌型14を嵌合して停止する位置に保持した状態で熱プレス成形する工程と、雄型13と雌型14を離反して熱成形した部位Sを取り出す工程とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチの製造方法に関する。
更に詳しくは、注出路を形成するための熱プレス成形部のあるパウチの製造方法であって、被加工材として、厚み、50μm〜220μmのフィルムを対象とし、熱プレス成形部の周辺に皺が発生せず、パウチに予め印刷した印刷絵柄を損傷することなく、外観上優れると共に、生産性に優れるパウチの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液状などの流動性を有する内容物を密封包装するパウチの1つとしては、例えば、開封時に内容物を外にこぼすことなく取り出せるように、プラスチック成形物などによる別体の注出口をパウチ上部の一部に熱接着して取り付けた構成からなるパウチが用いられている。
【0003】
しかし、上記のプラスチック成形物による別体の注出口をパウチ上部の一部に取り付けた構成からなるパウチは、製造工程が増え、注出口自体にも費用がかかり、また、注出口を取り付けたパウチは、厚さが増すため、保管や運搬の費用も割高となり、また、内容物の充填の際にも、例えば充填機のフィーダー部への空パウチの積み込み数が大幅に減少するため、オペレーターが頻繁に空パウチの供給を行う必要が生じるなど、全体としてコストアップし工程及び作業の煩雑さが増す等の問題がある。
【0004】
また、このような問題を解決するために、パウチ上部のコーナー部に一部幅を狭くした注出口部を設け、前記注出口部近傍の少なくとも一方の壁面フィルムに熱プレス成形部のあるパウチが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−349012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この成形は、図4(a)又は図4(b)に示すように、雄型と雌型から構成される金型を用い、更に、弾性体としてウレタン樹脂製のゴムを固定して用いた方法であるため、深さ3mm〜8mmの熱プレス成形部のあるパウチを成形する際、熱プレス成形速度に追随できず、熱プレス成形部の周辺部に図5に示すような皺を発生してしまい、外観上問題があった。
そこで、本発明の課題は、熱プレス成形部の周辺部に皺を発生せずに、熱プレス成形部を従来と比べて深く熱プレス成形し、皺を発生せず、パウチの注出口部から内容物をスムーズに取り出すことを可能とし、外観上優れるパウチの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るパウチの製造方法は、上記課題を解決するものであり、下記の(1)〜(5)の工程からなることを特徴とするものである。
(1)少なくとも基材層からなる外層と熱融着層からなるシーラント層とを積層する積層フィルムの熱プレス成形を付与する部位を加熱する工程、
(2)前記の加熱された積層フィルムを搬送する工程、
(3)雄型と雌型の金型を配置し、前記の積層フィルムの熱プレス成形を付与する部位を前記の雄型と前記の雌型の間に挿入し、前記の雄型及び前記の雌型の少なくとも一方に付設される弾性体によって熱プレス成形を付与する部位の周辺を保持すると共に、前記の熱プレス成形を付与する部位を前記の雄型と前記の雌型を嵌合して停止する位置に保持した状態で熱プレス成形する工程、
(4)前記の雄型と前記の雌型を離反して熱プレス成形した部位を取り出す工程、
(5)前記の熱プレス成形部を設けた積層フィルムを用いて、前記のシーラント層同士を対向させて重ね合わせ、前記の積層フィルムの周辺部をヒートシールしてパウチを形成する工程。
【0007】
また、本発明に係るパウチの製造方法において、前記の弾性体が、少なくともバネから構成されていることを特徴とするパウチの製造方法に関する。
【0008】
また、本発明に係るパウチの製造方法において、前記の積層フィルムの総厚みが、50μm〜220μmであり、かつ、熱プレス成形部の深さが、1mm〜8mmに形成されていることを特徴とするパウチの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
上述した本発明に係るパウチの製造方法を採用することによって、熱プレス成形部の周辺に皺を発生せず、パウチに予め印刷した印刷絵柄を損傷することなく、熱プレス成形可能であり、外観上優れるパウチを提供することができる。
また、上記において、前記の弾性体は、少なくともバネから構成されると、弾性体がゴムである場合よりも、耐久性に優れ、機械を停止させて弾性体を交換する作業時間が不要であり、作業負荷を軽減すると共に、生産性に優れた製造方法を提供できる。
更に、前記の弾性体を構成するバネのバネ定数を替えれば、型の離反方向に付勢する速度、反発力をコントロールすることが可能である。更に、前記の雄型及び前記の雌型のいずれにも弾性体を付設することによって、いずれか一方に弾性体を付設するよりも、熱プレス成形後、雄型及び雌型から熱プレス成形部がより型離れしやすくなり、生産性に優れた製造方法をも提供できる。
また、この製造方法により得たれたパウチによれば、従来と比べて、深く成形可能であるため、注出口部から内容物をスムーズに取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明について、実施の形態を詳述する。
図1は、本発明に係るパウチの第1実施例の構成を示す正面図であり、図2は、図1に示したパウチの壁面フィルムに設けた熱プレス成形部の幅方向の断面形状の一例を示す拡大断面図であり、(イ)一方(前面)の壁面フィルムのみに熱プレス成形部を設けた場合のA−A線における拡大断面図、(ロ)一方(前面)の壁面フィルムのみに熱プレス成形部を設けた場合のB−B線における拡大断面図、(ハ)前後両面の壁面フィルムに、対称形に熱プレス成形部を設けた場合のA−A線における拡大断面図、(ニ)前後両面の壁面フィルムに、対称形に熱プレス成形部を設けた場合のB−B線における拡大断面図であり、(ホ)前後両面の壁面フィルムに、対称形に多段形状の熱プレス成形部を設けた場合のA−A線における拡大断面図である。
また、図3は、製袋前の積層フィルムに熱プレス成形部を成形する方法を説明する概念図である。
【0011】
図1に示すように、本発明に係るパウチ100は、少なくとも片面がシーラント層から構成される積層フィルムを用いて、2枚の壁面フィルム5と1枚の底材とから構成され、前記のシーラント層を内側にして対向する前後の壁面フィルム5の下側に、シーラント層が外側になるように折り返して、壁面フィルム5の内側に逆V字型の折り返し部を有する底材を挿入してガセット部を形成し、この底材の両側下端近傍に、半円形状などの切り欠き部を設け、船底形の底部ヒートシール部でヒートシールすると共に、前後2面の壁面フィルム5の両側端縁部を胴部ヒートシール部でヒートシールして、上端部を残して内容物の充填口とするパウチに製袋された包装袋である。
前記構成において、パウチ本体の形状は、特に限定されず、例えば、三方シール形式、四方シール形式等の平パウチ、あるいはガゼット型パウチでもよい。
スタンディングパウチ形式のパウチの場合、自立性を備え、取り扱い易く、外観にも優れている点で好ましい。
上記において、パウチ100の上部のコーナー部に、狭い幅の注出口部6が、両側のヒートシール部により形成されると共に、その両側が切り欠き部7a、7bで切り欠かれ、首状に突出した形状に形成された構成を採ることにより、パウチに充填された内容物を取り出す際、注出口部6の先端部を切り取って開封し、注出口部6を例えばボトルの口部に差し込み、または、注出口部6の側部の切り欠き部7aをボトルの口部にあてがいながら内容物を注出することができるので、注出中、注出口部6がボトルの口部に安定して固定され、安全に内容物を取り出すことができる。
【0012】
本発明のパウチ100においては、注出口部の少なくとも一方側の積層フィルムに、上記開封用切れ目線11で切断した際に形成される注出口部から内容物を取り出しやすくさせるための熱プレス成形部が形成されているものである。
このように注出口部6の少なくとも一方の積層フィルムに熱プレス成形部を設けることにより、切断部の開封用切れ目線11を切断し、内容物を他の容器に取り出す場合に、注出口部が閉塞せず、内容物をスムーズに取り出すことができるので好ましい。
【0013】
また、この熱プレス成形部Sは、注出口部6のみに形成することができるが、注出口部から内容物が密封包装されて収納される収納部に伸びていることが好ましい。
このように、熱プレス成形部Sが注出口部6から収納部に伸びていることにより、開封後、内容物がこの熱プレス成形部Sに沿ってスムーズに注出口部に流動させることができ、最後まで安全かつ容易に内容物を取り出すことができる。
また、この熱プレス成形部Sの断面形状は、特に限定されるものではないが、圧縮に対する抵抗力が強く、保形性に優れている点等から台形であることが好ましい。
また、前記の熱プレス成形部Sは、高さの異なる段を有する形状としてもよい。この構成を採ることにより、熱プレス成形部Sの圧縮に対する抵抗力、復元力が増加し、その保形性が一層向上する。
【0014】
また、図1に示すように、本発明に係るパウチ100において、上記の熱プレス成形部Sは、当該パウチの少なくとも一方の壁面フィルム5に、注出口部6からパウチの幅方向の中心線を超えるまでの上部では、斜め下方に向かい、そこから先の中間部で曲線状に下方に曲がり、下部では垂直に下がる形状の熱プレス成形部Sが、注出口部ではその幅と高さが大きく、斜め下方に向かって徐々に幅と高さが小さくなり、曲線状の中間部から下では幅と高さが一定となるように設けることができる。
上記のような構成を採ることにより、パウチの壁面フィルムに設けた熱プレス成形部Sは、その上部、即ち、注出口部6の近辺では、主に注出路の確保とその保形性を向上させることが可能であり、中間部から下部にかけては、内容物を注出口部にスムーズに流動させる誘導部の作用効果を有するものである。
また、このような熱プレス成形部Sは、パウチの一方の壁面フィルム5のみに設けてもよいが、両面の壁面フィルム5に対称形に設けることにより、注出口部6の先端部を切り取って開封するだけで、両面の熱プレス成形部Sにより、注出路が保形性のよい状態で形成できる。
【0015】
図3は、製袋前の積層フィルム20に熱プレス成形部Sを設ける方法を説明する概念図である。
本発明に係るパウチの熱プレス成形部Sは、図3に示すように、パウチを形成する積層フィルムに対し、熱プレス成形法により設けることができる。
熱プレス成形法は、細かいパターンの再現性およびその生産性に優れる点で好ましい。
パウチ等を形成する積層フィルム20に対し、熱プレス成形部Sを設ける方法としては、まず、積層フィルム20の熱プレス成形する部位をヒーター19で加熱後または加熱と同時に、積層フィルム20を雄型13と雌型14の間に挿入し、雄型13及び雌型14に付設される弾性体21によって熱プレス成形部を設ける部位の周辺を保持すると共に、前記の熱プレス成形する部位を雄型13と雌型14で嵌合後、両型を離反して、熱プレス成形部Sを取り出すことによって、熱プレス成形部Sを設けた積層フィルムを製造することができる。
【0016】
本発明において、図3に示すように、熱プレス成形機には、昇降手段により対向して近接、離反する雄型13と雌型14とを備えていることが必要である。
雌型14が、被加工材である積層フィルム20を雄型13と相対向する受け面となり、雄型13と雌型14とを嵌合可能に構成されている。雄型13と雌型14とを嵌合した状態で、熱プレス成形することにより、被加工材である積層フィルムに熱プレス成形部を設けることができる。
上記の昇降手段としては、例えば、加圧用シリンダを使用することが可能であり、具体的には、空気圧または油圧により昇降させることができる。
【0017】
本発明において、雄型13と雌型14には、少なくとも一方に弾性体21を設けることが必要であり、弾性体21としては、熱プレス成形する際、少なくとも雄型13と雌型14とが嵌合する位置まで縮む弾性を有する弾性体であることが必要であり、具体的に、例えば、各種のバネを使用することができる。
中でも弾性体として金属製のバネを使用することが、ゴムの場合と比較して、深く成形することが可能であるので好ましく、また、金属製のバネは、耐久性に優れるため、長時間使用しても劣化しにくく、機械を停止させて弾性体の部分を交換する作業時間が不要となるため、作業負荷を軽減することができる点で好ましい。さらには、積層フィルムを熱プレス成形後、熱プレス成形部が雄型13または雌型14に引っ掛かることなく、型離れしやすくなるため、成形速度を向上させることが可能であり、生産性が向上するという利点を奏する。
更に、上記において、雄型13と雌型14のいずれにも弾性体21を設けることにより、積層フィルムが、より型離れしやすくなるため望ましい。
また、弾性体としてコイルスプリングを使用することが、バネ定数を替えて、型の離反方向に付勢する速度、反発力をコントロールすることが可能であるという点で好ましい。
上記において、更に、雄型13側のバネ定数が、前記の雌型14側のバネ定数より大きいことが好ましい。このことによって、雄型13の弾性体の押圧によって撓んだ雌型14の弾性体が、熱プレス成形後に雄型13が離反する動作に伴いフィルムを押し上げるため、熱プレス成形部Sが雄型13および雌型14に引っ掛からず脱着しやすいため、生産性に優れる。
これに対して、ゴム22は、圧縮された状態で、始めは比較的容易に撓むものの、一定の限度を過ぎると撓みにくくなる性質があり、また、ゴムに圧をかける際、ゴム自体が撓んでしまい、フィルムに一定の圧力を伝えることができず、フィルムの押さえが効き難くなるため、本発明において、雄型13および雌型14に設ける弾性体としてゴム22を使用すると、深く成形することができず、好ましくない。
また、本発明において、雄型13および雌型14に設ける弾性体としてゴム22を使用して深く成形するために、例えば、高圧をかける等の加工条件に変更しても、ゴム22が、短期間でへたってしまい、ゴムの交換頻度が高くなり、作業性、コストの点で好ましくない。
本発明において、図3(a)に示すように、バネ16に金属製の押圧用部材15を付設することにより、熱プレス成形する部位の周辺の積層フィルム20を押圧用部材15で軽く押えた状態で、雄型13と雌型14とを嵌合させることが可能となり、熱プレス成形部Sの周辺に皺の発生を抑えることができる点で好ましい。
これに対し、図4(b)に示すように、ゴム22の場合は、熱プレス成形する部位の周辺の積層フィルム20を押えることなく、雄型13の進入により、積層フィルム20を雌型14に押し込みながら雄型13と雌型14とを嵌合させるため、熱プレス成形部Sの周辺に皺を発生してしまうので好ましくない。
前記の押圧用部材15の形状は、雄型13の雌型14への進入を妨げなければ、特に限定されず、例えば、板状、筒状であってもよい。
特に、雄型13側のバネに設けた押圧用部材15が、板状であることが、熱プレス成形部の周辺を均一に軽く保持しながら、雄型13と雌型14間で、加熱、嵌合することが可能となるので、好ましく、このことによって、熱プレス成形部の周辺に皺が発生することを防止可能であるという利点を奏する。
上記において、図3に示すように、雄型13側の弾性体21に付設する押圧用部材15が、雄型13の凸部より突出していることによって、押圧用部材15が、熱プレス成形を付与する部位の周辺を保持することができるので、熱プレス成形部Sの周辺に皺を発生することを防ぐことが可能であるため、より好ましい。
また、押圧用部材15は、例えば、SUS等の金属板から構成されることが好ましく、このことによって、ゴムからなる弾性体の場合と比較して、耐磨耗性に優れ、劣化しにくく、長時間使用可能であるという利点を奏する。これに加えて、金属板からフィルムが離れ易いように金属板のフィルム側表面にテフロン(商標名)テープを貼付したり、フィルム表面を金属板で傷つけないために薄いゴムシートを貼付する工夫をすることがより好ましい。
その結果として、得られた熱プレス成形部Sのある積層フィルム20を用いて、ヒートシールして製袋されたパウチは、外観上優れ、注出口部から内容物をスムーズに注出することができるという利点を奏する。
【0018】
前記壁面フィルムに設けられる熱プレス成形部Sの高さは、特に限定するものではないが、その注出口部においては、最高部で1〜8mm程度まで形成することができる。このため、壁面フィルムの両面に熱プレス成形部Sを設けた場合、注出口部の高さは、最高部で、上記の2倍の2〜16mm程度まで形成することができる。
最高部の高さが1mm未満の場合は、内容物が取り出しにくくなり、また、8mmを超える高さは、その必要性がなく、熱プレス成形自体が難しくなると同時に、注出口部が嵩張るようになり、空袋の取り扱い性、充填シール機におけるスタッキング適性などが低下するため好ましくない。
熱プレス成形部Sの注出口部以外の部分の高さは、例えば注出口部6から斜め下方に向かって幅が徐々に先細りとなる中間部で傾斜を付けて、1.8〜0.5mm程度まで低くすることができる。
さらに、熱プレス成形部Sの注出口部における幅は、内容物を取り出すことができる幅であれば特に限定されるものではないが、通常3mm〜20mm程度である。
【0019】
そして、パウチ100の壁面フィルム5には、熱プレス成形部Sが、図に示すように注出口部6からパウチの幅方向の中心線を超えるまでの上部では斜め下方に向かい、そこから先の中間部で曲線状に下方に曲がり、下部では垂直に下がる形状で、注出口部6(S1)ではその幅と高さが大きく、斜め下方に向かって徐々に幅と高さが小さくなり、曲線状の中間部(S2)から下の下部(S3)では幅と高さが一定となるように設けて構成されている。
このような熱プレス成形部Sは、前後両面の壁面フィルム5のうち、一方の壁面フィルム5のみに設けてもよいが、両面の壁面フィルム5に、対称形に設けることができる。
【0020】
また、このような熱プレス成形部Sは、圧縮に対する抵抗性、或いは復元性に優れることが好ましく、そのためには、熱プレス成形部Sの幅方向の断面形状を、例えば図2に示すように設けることができる。
即ち、図2の(イ)は、先に説明したように図1に示したパウチ100の壁面フィルム5の一方、例えば前面の壁面フィルム5のみに熱プレス成形部Sを設けた場合のA−A線における拡大断面図であり、熱プレス成形部Sは、上部に幅が2mm程度の水平面を有し、その両側に肩下がりの傾斜面を有し、更にその下に略垂直な立ち上がり部を有する形状である。
【0021】
このような形状を採った場合、熱プレス成形部Sは、リブ効果を奏するため、圧縮に対する抵抗性、復元性が向上するものである。
また、図2の(ロ)は、同様にB−B線における拡大断面図であり、前記(イ)の場合よりも、その幅wと高さhが小さくなっているが、上面の幅は、前記(イ)の場合と同様、2mm程度が好ましく、全体の幅(立ち上がり部の幅)wは3〜4mm程度が好ましい。
【0022】
このような熱プレス成形部Sの高さhは、先に説明した通りであり、例えば、図2の(イ)(A−A線部)では2〜5mm、(ロ)(B−B線部)では1.8〜1.0mmが適当である。尚、このような熱プレス成形部Sを、前後両面の壁面フィルム5に対称形に設けた場合は、そのA−A線の断面が図2の(ハ)に示すような形状となり、B−B線の断面が図2の(ニ)に示すような形状となる。
開封されたパウチ100は、その壁面フィルム5に、注出口部6からパウチ100の略中心部を通り、注出口部6と反対側のパウチ下部にかけて、前述のような熱プレス成形部S(S1、S2、S3)が設けられているので、パウチ100を平面上に置くだけで、注出口部6が熱プレス成形部S1 により、保形性のよい状態で内容物を取り出しやすくし、また、熱プレス成形部S1 から中間部の熱プレス成形部S2 、更には、下部の熱プレス成形部S3 が、内容物の容積と重量で外折れし、パウチ100が外側に広げられた状態となっているため、内容物の注出口部への流動、および注出口部からの注出がスムーズに行われるようになる。そして、下部の熱プレス成形部S3は、垂直に設けられており、リブ効果を有するため、パウチ100の自立性、形態安定性が向上する。
従って、パウチ100の胴部を手で支えて、開封された注出口部6から内容物を取り出すことができるため、粘度の高い内容物でも注出口部が途中で閉じるようなこともなく、最後まで安全且つ容易に取り出すことができる。
【0023】
本発明に係るパウチ100において、注出口部6の先端部近傍には、切り欠き部7bのトリミングの際、摘み部8と、V字形のノッチ9とが同時に設けられている。
なお、前記の摘み部8とノッチ9は、切り欠き部7a側に設けてもよく、また、注出口部6の両側に設けることもできる。また、前記のノッチの形状は、特に限定されず、具体的に一字形やV字形の形状のノッチを使用することができる。
このことによって、注出口部を開封する際、摘み部を指で摘んで注出口部の先端部を開封用切れ目線により切り取り、開封することができるので、開封の操作を一層容易に行えるようになる。
【0024】
本発明に係るパウチ100において、ノッチ9につながる切り取り線の位置には、切り取りを容易にし、かつ、その方向性を安定化させるための開封用切れ目線11を設けることができる。
本発明において、この開封用切れ目線11は、積層体を貫通することなく設けられていればよいのであるが、好ましくは通常外層に配置される強度に優れた樹脂フィルムに形成されることが好ましい。これは、開封に際して切断する場合、この強度に優れた樹脂フィルムの切断が一番困難であるためであり、このフィルムに開封用切れ目線11を形成することにより、容易に切断開封することが可能となるからである。
また、外層に配置された強度に優れた樹脂フィルムのみに開封用切れ目線11を設けることにより、内側のヒートシール性を有する樹脂フィルム等の他のフィルムにより内容物の密封性を維持できるからである。
【0025】
このような開封用切れ目線11を形成する方法としては、ニードルパンチ法やエンボスロール法等、用いられている種々の方法を用いることができる。
本発明においては、レーザー加工により形成されることが好ましい。
レーザー照射により切れ目を形成することによって、容易に所望の形状で切れ目を形成可能であり、切れ目形成時に削り屑を発生しないため、衛生性にも優れる。
このようなレーザー加工に用いられるレーザーの種類としては、エキシマレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、He−Neレーザー、炭酸ガスレーザー等を挙げることができる。
【0026】
このようなレーザー加工による方法が好ましいのは、レーザー加工によれば、容易にかつ正確に開封用切れ目線を形成することができるからである。
また、レーザー光を選択することにより、容易に一方の層にのみ開封用切れ目線を形成することができる点からもレーザー加工により開封用切れ目線を形成することが好ましい。
【0027】
すなわち、例えば炭酸ガスレーザーを用い、炭酸ガスレーザー光の波長を10.6ミクロンとした場合、このレーザー光はナイロンフィルムに選択的に吸収され、線状低密度ポリエチレンまたはエチレン‐酢酸ビニル共重合体を主体とするフィルムではほとんど透過されてしまう。したがって、例えばヒートシール性を有する樹脂フィルムとして線状低密度ポリエチレンまたはエチレン‐酢酸ビニル共重合体を主体とするフィルムを用い、外層として強度に優れた樹脂フィルムである二軸延伸ナイロンフィルムを用いて積層体とし、これに上記10.6ミクロンの波長の炭酸ガスレーザーを用いてレーザー加工を行えば、上記二軸延伸ナイロンフィルムのみに開封用切れ目線を形成することが可能である。
【0028】
このように、本発明においては、開封用切れ目線11を形成するに際しては、レーザー加工を用いて形成することが好ましく、中でも炭酸ガスレーザーを用いて加工することが特に好ましく、さらに好ましくは波長が10.6ミクロンである炭酸ガスレーザー光を用いて加工を行うことである。
【0029】
レーザー光を用いて開封用切れ目線11を形成する場合、注出口部においてのみ加工する必要があり、この注出口部が斜め上方に向く形状で、さらに複数本のレーザー加工が必要な場合があることから、レーザー光を走査させて加工することが好ましい。このレーザー光の走査については、複数のミラーにレーザー光を照射してその光路を調整するものであり、ミラーは外部制御により駆動し、レーザー光はXY軸方向に任意に走査されるガルバノスキャニングモジュールを用いることにより行うことが好ましい。
【0030】
レーザー光の走査に際しては、レーザーの出力、および加工速度(走査速度)は任意に設定することができる。また、走査時にレーザー光の焦点はパウチの表面上に保持されるように調整される。
なお、後述するように積層体に熱プレス成形部が設けられた場合は、この熱プレス成形部に対しては焦点調整がなされない。したがって、熱プレス成形部を設ける場合は、焦点距離の長い集光レンズを用いることが好ましい。
注出口部の先端部近傍に形成される開封用切れ目線は、注出口部の開封位置に後述する熱プレス成形部が設けられている場合、引き裂きの方向性が不安定になり易いため、上記のように開封用切れ目線を組み合わせて用いることが好ましい。
【0031】
本発明において、当該開封用切れ目線(ハーフカット線)11としては、引き裂き方向がずれた場合を想定して、単数でなく、複数本の切れ目を平行に設けることが好ましい。
このことによって、手指で開封する際に、引き裂き方向と、切れ目(ハーフカット線)方向とのずれが多少生じても、大きくずれることなく、切れ目(ハーフカット線)方向に沿って、スムーズで確実に手指による引き裂きを誘導することが可能である。
本発明に係るハーフカット線11において、上記の平行な複数の直線状または破線状の切れ目10aは、具体的に、0.7mm〜3.0mm程度の間隔で設けることが好ましい。
上記の間隔が、3.0mmを超えると、スムーズで確実に手指による引き裂きを誘導する効果が得られないため、好ましくなく、0.7mm未満であると、レーザー加工により交差してしまう恐れがあるため、好ましくない。
【0032】
以下に本発明のパウチの製造に用いるフィルム、およびパウチの製造方法など実施の形態について説明する。本発明のパウチの製造に用いるフィルムは、主にプラスチックを主体とする積層フィルムであれば、特に限定はされず、いずれも使用できる。これらの中から、包装する内容物の種類や充填後の加熱処理の有無など使用条件に応じて適するものを自由に選択して使用することができる。
【0033】
上記の本発明において、本発明のパウチの製造に用いる積層フィルムは、外側から、外層、中間層(必要に応じて)、最内層とを順次積層する積層フィルムを使用することができる。
上記の最内層として使用するヒートシール性を有する樹脂としては、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、たとえば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体、エチレンープロピレン共重合体等の樹脂の一種ないしそれ以上からなる樹脂ないしはこれらをフィルム化したシートを使用することができ、その厚さとしては13〜180μm、好ましくは15〜130μmが適当である。
【0034】
また、本発明のパウチの製造に用いる積層フィルムを構成する外層として使用する合成樹脂製のフィルムとしては、パウチを構成する基本素材となることから、機械的、物理的、化学的等において優れた性質を有する合成樹脂を用いることができ、たとえば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリプロピレン系、ポリカーボネート系、ポリアセタール系等の樹脂を用いることができる。また、前記外層として使用する合成樹脂製のフィルムは、前記合成樹脂製フィルムの内層側に一般的には印刷が施されることが多いために、前記外層として使用する合成樹脂製フィルムは印刷適性が求められ、2軸方向に延伸した延伸フィルムが好適である。このフィルムの厚さとしては基本素材としての強度、剛性などについて必要最低限に保持され得る厚さであればよく、9〜25μm程度が適当である。また、前記の合成樹脂フィルムは、必要に応じてポリ塩化ビニリデンが塗工されたフィルムやアルミニウムや酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機物の蒸着層が形成されたフィルムとしてバリアー性を有する構成としてもよい。また、必要に応じて合成紙、不織布、紙、セロハン等も適宜使用できる。
【0035】
印刷絵柄層は、文字、図形、記号、模様、その他等からなる所望の印刷模様を任意の色数のカラーインキによって外層のいずれかの面に多色印刷されて形成される。
印刷絵柄層を形成する面は、包装袋の最外面に形成されることもあるが、裏刷りと称して最外面に使用される外層の裏面に印刷される方が、好ましい。これは、裏刷りの方が、印刷絵柄層を保護し、かつ表面から見た絵柄の印刷を美しく、光沢のあるものとする効果を有しているためである。
印刷絵柄層は、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式を使用し、上記の外層のいずれかの面に印刷して形成することができる。
【0036】
さらに、本発明において、パウチの前記のシーラント層と前記の外層の間に中間層を設けてもよく、前記の中間層は通常前記のシーラント層と前記の外層だけではパウチとしての機能を十分に果たすことができない場合等に設けられる。前記の中間層の機能としては、気体遮断性、機械的強靱性、耐屈曲性、耐突き刺し性、耐衝撃性、耐磨耗性、耐寒性、耐熱性、耐薬品性等であり、パウチとして要求されるこれらの最終的な機能を中間層を設けることで達成するものである。該中間層として用いられる基材としては、たとえば、アルミニウム、鉄、銅、錫等の金属箔、あるいは、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、エチレンープロピレン共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体ケン化物等のフィルムあるいはこれらにポリ塩化ビニリデンを塗工したフィルムないしはアルミニウムや酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機物の蒸着を施したフィルムあるいはポリ塩化ビニリデン等のフィルム、あるいは、紙、セロハン、合成紙などを用いることができる。また、これら基材の一種ないしそれ以上を組み合わせて使用することができる。尚、上記基材の厚さとしては、パウチとして要求される機能を満たすことができればよいのであって、必要に応じて適宜に選ぶことができる。
【0037】
本発明において、上記の各種の樹脂のフィルムないしシートとしては、例えば、上記の各種の樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他等の製膜化法を用いることができる。
【0038】
なお、上記の各種の樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、その他等を使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0039】
上記の基材フィルム層、中間層、およびシーラント層の各層を積層させる方法として、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤ラミネーション法、押し出しラミネーション法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、その他の方法等で行うことができる。
具体的には、本発明においては、ラミネート用接着剤層等を介して積層するドライラミネート積層方式、あるいは、アンカ−コート剤層、溶融押出樹脂層等を介して積層する溶融押出積層方式等を用いて積層材を製造することができる。
【0040】
上記のドライラミネート積層方式において、ラミネート用接着剤層を構成する接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2ーエチルヘキシルエステル等のホモポリマー、あるいは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレンーブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤、その他等の接着剤を使用することができる。上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。
そして、上記の接着剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法、あるいは、印刷法等によって施すことができ、そのコーティング量としては、0.1〜10g/m2(乾燥状態)位が望ましい。なお、本発明において、ドライラミネート積層方式による積層を行う場合には、その積層表面に、予め、コロナ放電処理、オゾン処理、あるいは、プラズマ放電処理等の表面改質前処理を任意に施すことができる。
【0041】
また、上記の溶融押出積層方式における溶融押出樹脂層としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、酸変性ポリエチレン系樹脂、酸変性ポリプロピレン系樹脂、エチレンーアクリル酸またはメタクリル酸共重合体、サーリン系樹脂、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン‐アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他等の熱可塑性樹脂の1種ないし2種以上を使用することができる。なお、上記の溶融押出積層方式において、より強固な接着強度を得るために、例えば、アンカーコート剤等のアンカーコート剤層を介して、積層することができる。上記のアンカーコート剤としては、例えば、アルキルチタネート等の有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリプタジエン系、その他等の水性ないし油性の各種のアンカーコート剤を使用することができる。上記のアンカーコート剤は、例えば、ロールコート、グラビアロールコート、キスコート、その他等のコーティング法を用いてコーティングすることができ、そのコーティング量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)位が望ましい。而して、本発明においては、上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、その積層する基材の表面に、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理等の前処理を任意に施すことができる。
【0042】
本発明においては、上記のように各層を接着層を介して積層して製造した積層フィルムを使用し、そのシーラント層の面を内面にして配置し、次いでその重なり部分の両側端部、下端部等において、シーラント層を介してヒートシールして、サイドシール部、底部シール部を形成すると共にその上端辺に開口部を形成して、本発明にかかるパウチを製造することができる。
そして、その製袋方法において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の方法で行うことができる。
尚、パウチ100の上部ヒートシール部4は、内容物の充填前は未シールの開口部とし、ここから内容物を充填した後、ヒートシールして密封するものである。
【0043】
本発明において、上記で所定位置をヒートシールして製袋した本発明にかかるパウチについて、その上端部に設けた開口部から内容物を充填し、次いで、その上端部の開口部をヒートシール等により密閉することによって、本発明にかかるパウチを使用した包装製品を製造することができるものである。
そして、本発明にかかるパウチを使用して例えば、飲食品、医薬品、試薬品、化成品、化粧品、雑貨品、その他等の種々の物品を充填包装する製造した包装製品は、保香性、酸素ガス、水蒸気等のバリア性、印刷適性、強度、剛性、耐衝撃性、耐突き刺し性、ヒートシール性、その内容物の充填包装適性、保存適性等に優れ、当該パウチを開封する際、開封用切れ目線方向に沿って、スムーズで確実に手指で開封することが可能であり、更に、粘度の高い内容物でも注出口部への流動および注出口部からの注出を容易に行える保形性に優れた注出口部であり、安全かつ容易に最後まで取り出すことができるという使用適性に優れ、特に、熱プレス成形部の周辺に皺が発生せず、パウチに予め印刷した印刷絵柄を損傷することなく、外観上優れ、注出口部から内容物をスムーズに、かつ清潔に取り出すことが可能であり、生産性に優れるパウチを製造できる。
【実施例】
【0044】
次に、実施例により本発明を更に詳述する。
〔熱プレス機〕
図3に示すように、熱プレス機は、雄型13と、雌型14と、弾性体21として雄型13に付勢されたバネ16を設けた押圧用部材15と、弾性体21として雌型14に付勢されたバネ16を設けた押圧用部材15とを具備する。
雄型13は、楕円形状の凸部が形成されおり、雌型14は、これに相対向する受け面となる凹部が形成されており、両型はいずれもアルミニウム製である。
なお、雄型13の凸部の高さh1は、8.5mmとし、雌型14の凹部の高さh2は、8.5mmとした。
雄型13側の押圧用部材15としては、厚さ2.5mmの金属(SUS)から構成され、雄型13が進入するための貫通孔として、雄型の外枠から8mm程度広い寸法の貫通孔をくり貫いた押圧用部材15を使用した。
また、雌型14側の押圧用部材15は、凹部の両側に、厚さ2.5mm、長さ、60mm、幅、20mmの押圧用部材15を夫々使用した。
また、弾性体を構成するバネは、バネ定数が500N/m、バネの長さが25mmのものを使用した。
また、雄型13から押圧用部材15までの距離h3は、10mmとし、バネに外部からの応力を受けていない状態において、押圧用部材15の位置が、雄型13の下端部より突出する位置となるように設定した。
なお、雄型13と雌型14との近接する際のストロークを設定するために必要なストッパー17として、厚み13.5mm厚のアルミニウム製の駒を使用した。
【0045】
〔被加工部材〕
被加工材として、外側から厚さ25μmの二軸延伸ナイロンフィルムと、厚さ130μmの線状低密度ポリエチレンフィルムとを2液硬化型のウレタン系接着剤を用いて(塗布量:約4g/m2)ドライラミネーション法により貼り合わせ、2層からなる積層フィルムを作製し、これを使用した。
【0046】
〔熱プレス成形部のある積層フィルムの製造〕
上記の熱プレス機30を成形機として用い、被加工部材として上記で得られた積層フィルム20を用いて、熱プレス成形部のある積層フィルムを製造する方法について説明すると、まず、積層フィルム20の熱プレス成形する部位をヒーター19で加熱後、前記の加熱された積層フィルム20を搬送し、次いで、雄型13と雌型14の金型を配置し、積層フィルム20の熱プレス成形する部位を雄型13と雌型14の間に挿入し、雄型13及び雌型14に各々、付設されるバネ16を設けた押圧用部材15によって、熱プレス成形部の周辺を軽く保持した状態で、雄型13を雌型14へ進入して、雄型13と雌型14とが嵌合する位置まで低く縮み、ストッパー17によって停止した位置で、前記の熱プレス成形する部位を雄型13と雌型14を嵌合して熱プレス成形した。なお、前記の熱プレス成形時において、積層フィルム20からの応力は、36kN/m2であった。
その後、雄型13に付勢させるバネ16と、雌型14に付勢させるバネ16によって、雄型13と雌型14を離反して熱プレス成形部Sを取り出した結果、熱プレス成形のショット数、毎分50〜60ショットで熱プレス成形部Sを形成した積層フィルムを製造しても、熱プレス成形部Sの周辺に皺を発生せず、また、熱プレス成形後に熱プレス成形部Sを雄型13と雌型14に引っ掛かることなく取り出すことができ、従来に比べて熱プレス成形の生産性を向上させることができた。
【0047】
次にこの積層フィルムを使用し、胴部に図1に示すような注出口部6を有し、前後2面の壁面フィルム5の両側端縁部を胴部シール型でヒートシールして胴部シール部3が形成されており、底部1に底材フィルムのシーラント層を外側に折り曲げてなるガセット形式で形成され、前後2面の壁面フィルムの内側に折り込まれた底材フィルムの両側下端近傍に、半円形の切り欠き部が設けられ、舟底形の底部シール型でヒートシールされて底部ヒートシール部2が形成され、その本体部分がスタンディングパウチ形態(幅130mm、高さ235mm)に製袋した。
図1に示すような注出口部6は、その上部のコーナー部に形成され、斜め上方に向く注出口部であり、両側の切り欠き部のトリミングにより突出する形状を有し、その外縁部が、注出口部シール型でヒートシールされて注出口部6が形成されている。
更に、この積層フイルムに対し、包装袋になったときに注出口部から斜め下方向の底部までの予定位置に、熱プレス成形により熱プレス成形部を形成した。熱プレス成形部Sは、高さ方向の断面が台形をなすように形成されおり、斜め下方向に向かって徐々に幅と高さが小さくなるように形成した。
なお、熱プレス成形により熱プレス成形部Sの深さは、最高部で6mmであった。このことによって、従来と比較して、深く成形することができるため、開口部より内容物を注出する際、スムーズに内容物を取り出すことができた。
【0048】
この注出口部の先端部近傍の開封位置には、手で簡単に開封できる開封手段として、平行な5本の開封用切れ目線11から構成されている。なお、図示しないが、上記の開封手段としては、平行な複数の開封用切れ目線11とこれに交差するハーフカット線と組み合わせて構成されてもよい。
このパウチの先端部近傍の開封位置に、発振波長10.6μmの炭酸ガスレーザー(米国コヒーレント社製、DIAMOND Gー50、定格出力50W)及びガルバノスキャニングモジュール(米国ジェネラルスキャニング社製)を使用して、図3(a)に示すような5本の開封用切れ目線11を平行に1mm間隔で形成した。
なお、レーザー加工条件は、発振周波数:3000Hz、DUTY:30%、走査速度:3000mm/秒で行った。
しかる後、未シールの上部シール部より内容物として液体洗剤(500ml)を充填後、上部シール部4をシールして密封し、易開封性のパウチ100を作製した。
【0049】
上記で得られたパウチ100は、開封する際、確実に正しい位置で容易に手指で開封することが可能であり、内容物を取り出す際、パウチを傾けると、熱プレス成形部により漏斗状に開いた注出口部は、深く成形されており、保形性もよく、また、注出口部の周辺に皺がないため、外観上優れ、注出の途中で注出口部が閉塞するようなこともなく、最後まで安全かつ容易に内容物を取り出すことができた。
また、上記のパウチ本体がスタンディングパウチ形式に製袋されているため、自立性があり、取り扱いやすく、外観にも優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のパウチの製造方法の用途は、液状などの流動性を有する内容物を充填包装するためのパウチの製造方法であって、例えば、飲食品、医薬品、試薬品、化成品、化粧品、雑貨品、その他等の種々の物品を充填包装するためのパウチの製造方法であり、特に制限は無い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係るパウチの第1実施例の構成を示す正面図である。
【図2】図1に示したパウチの壁面フィルムに設けた熱プレス成形部の幅方向の断面形状の一例を示す拡大断面図であり、(イ)一方(前面)の壁面フィルムのみに熱プレス成形部を設けた場合のA−A線における拡大断面図、(ロ)一方(前面)の壁面フィルムのみに熱プレス成形部を設けた場合のB−B線における拡大断面図、(ハ)前後両面の壁面フィルムに、対称形に熱プレス成形部を設けた場合のA−A線における拡大断面図、(ニ)前後両面の壁面フィルムに、対称形に熱プレス成形部を設けた場合のB−B線における拡大断面図であり、(ホ)前後両面の壁面フィルムに、対称形に多段形状の熱プレス成形部を設けた場合のA−A線における拡大断面図である。
【図3】(a)製袋前の積層フィルムに熱プレス成形部を成形する方法を説明する概念図であり、(b)実施例に係る熱プレス成形型を示す説明図である。
【図4】(a)従来の熱プレス成形型を示す概念図であり、(b)弾性体としてゴムを使用した熱プレス成形型を示す概念図である。
【図5】熱プレス成形部の周辺部に皺が発生したパウチを説明する概念図である。
【符号の説明】
【0052】
1 底部
2 底部ヒートシール部
3 胴部ヒートシール部
4 上部ヒートシール部
5 壁面フィルム
6 注出口部
7a、7b 切り欠き部
8 摘み部
9 ノッチ
11 開封用切れ目線(ハーフカット線)
12 皺
13 雄型(金型)
14 雌型(金型)
15 押圧用部材
16 バネ
17 ストッパー
19 ヒーター
20 積層フィルム
21 弾性体
22 ゴム
23 凹部
30 熱プレス機
33 凸部
S 熱プレス成形部
S1 注出口部の熱プレス成形部
S2 中間部の熱プレス成形部
S3 下部の熱プレス成形部
100 本発明に係るパウチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層からなる外層と熱融着層からなるシーラント層とを積層する積層フィルムを袋状にヒートシールして形成されたパウチの製造方法において、下記の(1)〜(5)の工程からなることを特徴とするパウチの製造方法;
(1)少なくとも基材層からなる外層と熱融着層からなるシーラント層とを積層する積層フィルムの熱プレス成形を付与する部位を加熱する工程、
(2)前記の加熱された積層フィルムを搬送する工程、
(3)雄型と雌型の金型を配置し、前記の積層フィルムの熱プレス成形を付与する部位を前記の雄型と前記の雌型の間に挿入し、前記の雄型及び前記の雌型の少なくとも一方に付設される弾性体によって熱プレス成形を付与する部位の周辺を保持すると共に、前記の熱プレス成形を付与する部位を前記の雄型と前記の雌型を嵌合して停止する位置に保持した状態で熱プレス成形する工程、
(4)前記の雄型と前記の雌型を離反して熱プレス成形した部位を取り出す工程、
(5)前記の熱プレス成形部を設けた積層フィルムを用いて、前記のシーラント層同士を対向させて重ね合わせ、前記の積層フィルムの周辺部をヒートシールしてパウチを形成する工程。
【請求項2】
前記の弾性体が、少なくともバネから構成されていることを特徴とする請求項1記載のパウチの製造方法。
【請求項3】
前記の積層フィルムの総厚みが、50μm〜220μmであり、かつ、熱プレス成形部の深さが、1mm〜8mmに形成されていることを特徴とする請求項1〜2記載のパウチの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−21923(P2007−21923A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208129(P2005−208129)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】