説明

パケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法

【課題】
従来のパケット無中断伝送システムは、経路切替時に遅延揺らぎが発生するという問題があった。
【解決手段】
本発明に係るパケット無中断伝送システムは、順序識別子を付加したパケットを複製して複数の経路で送信する送信側と、複数の経路から受信する同一識別子が付加されたパケットの中から早着パケットを選択して下流に転送する受信側とを有するパケット無中断伝送システムにおいて、前記受信側で下流に転送するパケットを第1の経路の受信パケットから第2の経路の受信パケットに切り替える指示を与える切替指示手段と、前記切替指示手段から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信されるまでの遅延時間が予め設定した閾値より長い場合に、前記遅延時間が前記閾値以下になるまで切替元の第1の経路のパケットを徐々に遅延させるパケット遅延手段とを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケットを複製して複数の異なる経路で伝送する技術を用いるパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パケット通信における高信頼化技術として、送信側では順序識別子を挿入したパケットを複製して複数経路に分けて送信し、受信側では各経路から到着するパケットの到着順序を判別して早着パケットを下流に送信するようにしたパケット伝送方法が考えられている(例えば、特許文献1参照)。このようなパケット伝送方法では、一部の経路に障害が発生してその経路のパケットが未達となった場合でも、複数経路の少なくとも1つの経路が正常であれば正常な経路に切り替えることによってパケット損失の発生を回避できるので、高信頼のパケット通信を実現できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4074268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなパケット無中断伝送システムは、経路故障時や運用側の指示による経路切替時に、別系統の経路から到着したパケットを選択して下流に転送するようになっている。ところが、各系統の伝送路の長さが異なるため、複数系統の伝送路を流れる同じ識別子を有するパケットの到着時間には伝送路長差に相当する遅延が生じる。この結果、パケット間隔が大きく変換する揺らぎが経路切替時に発生する原因となる。特に、ストリーミング伝送などリアルタイムでの伝送を必要とするパケット通信においては、このような遅延による揺らぎの発生をできるだけ抑えなければならないという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、経路切替時の揺らぎの発生を最小限に抑えることができるパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る請求項1のパケット無中断伝送システムは、順序識別子を付加したパケットを複製して複数の経路で送信する送信側と、複数の経路から受信する同一識別子が付加されたパケットの中から早着パケットを選択して下流に転送する受信側とを有するパケット無中断伝送システムにおいて、前記受信側で下流に転送するパケットを第1の経路の受信パケットから第2の経路の受信パケットに切り替える指示を与える切替指示手段と、前記切替指示手段から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信されるまでの遅延時間が予め設定した閾値より長い場合に、前記遅延時間が前記閾値以下になるまで切替元の第1の経路のパケットを徐々に遅延させるパケット遅延手段とを設けたことを特徴とする。
【0007】
これにより、伝送路が短く遅延時間が短い短系の経路のパケットトラフィックから伝送路が長く遅延時間が長い長系の経路のパケットトラフィックに切り替える場合に、切替時のパケット間隔が急激に変化することがなくなり、短系と長系の遅延時間差による揺らぎの発生を抑えることができる。
【0008】
本発明に係る請求項2のパケット無中断伝送システムは、請求項1に記載のパケット無中断伝送システムにおいて、前記パケット遅延手段は、前記切替指示手段から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信するまでの遅延時間を判定する遅延判定手段と、受信パケットを受信順に一時的に保持して読み出し指令に応じて受信順に受信パケットを読み出す遅延調整メモリと、前記遅延判定手段が判定した遅延時間が0より大きい場合に、前記遅延時間が0以下になるまで切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を時間に比例して増加させる遅延制御手段とで構成されることを特徴とする。
【0009】
これにより、短系から長系へのパケットトラフィックの切替時において、パケット間隔が時間に比例して徐々に変化するので、短系と長系の遅延時間差が大きい場合でも揺らぎの発生を抑えることができる。
【0010】
本発明に係る請求項3のパケット無中断伝送システムは、請求項1に記載のパケット無中断伝送システムにおいて、前記パケット遅延手段は、前記切替指示手段から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信するまでの遅延時間を判定する遅延判定手段と、受信パケットを受信順に一時的に保持して読み出し指令に応じて受信順に受信パケットを読み出す遅延調整メモリと、前記遅延判定手段が判定した遅延時間が0より大きい場合に、前記遅延時間が0以下になるまで切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を所定時間ずつ段階的に増加させる遅延制御手段とで構成されることを特徴とする。
【0011】
これにより、短系から長系へのパケットトラフィックの切替時において、パケット間隔が所定時間ずつ段階的に変化するので、短系と長系の遅延時間差が大きい場合でも揺らぎの発生を抑えることができる。
【0012】
本発明に係る請求項4のパケット無中断伝送システムは、請求項2または3に記載のパケット無中断伝送システムにおいて、前記切替指示手段により切り替えられた切替先の第2の経路の受信パケットから切替元の第1の経路の受信パケットに戻す指示を与える切替解除指示手段をさらに設け、前記遅延制御手段は、前記切替解除指示手段から解除指示が与えられた時点以降に前記切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を時間に反比例して減少させることを特徴とする。
【0013】
これにより、短系から長系へ切り替えたパケットトラフィックを再び長系から短系へ戻す場合でも、パケット間隔が時間に反比例して徐々に変化するので、短系と長系の遅延時間差が大きい場合でも揺らぎの発生を抑えることができる。
【0014】
本発明に係る請求項5のパケット無中断伝送システムは、請求項2または3に記載のパケット無中断伝送システムにおいて、前記切替指示手段により切り替えられた切替先の第2の経路の受信パケットから切替元の第1の経路の受信パケットに戻す指示を与える切替解除指示手段をさらに設け、前記遅延制御手段は、前記切替解除指示手段から解除指示が与えられた時点以降に前記切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を所定時間ずつ段階的に減少させることを特徴とする。
【0015】
これにより、短系から長系へ切り替えたパケットトラフィックを再び長系から短系へ戻す場合でも、パケット間隔が所定時間ずつ段階的に変化するので、短系と長系の遅延時間差が大きい場合でも揺らぎの発生を抑えることができる。
【0016】
本発明に係る請求項6のパケット無中断切替装置は、順序識別子を付加したパケットを複製して複数の経路で送信する送信機能部と、複数の経路から受信する同一識別子が付加されたパケットの中から早着パケットを選択して下流に転送する受信機能部とを有するパケット無中断切替装置において、前記受信機能部は、下流に転送するパケットを第1の経路の受信パケットから第2の経路の受信パケットに切り替える指示を与える切替指示手段と、前記切替指示手段から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信されるまでの遅延時間が予め設定した閾値より長い場合に、前記遅延時間が前記閾値以下になるまで切替元の第1の経路のパケットを徐々に遅延させるパケット遅延手段とで構成されることを特徴とする。
【0017】
これにより、伝送路が短く遅延時間が短い短系の経路のパケットトラフィックから伝送路が長く遅延時間が長い長系の経路のパケットトラフィックに切り替える場合に、切替時のパケット間隔が急激に変化することがなくなり、短系と長系の遅延時間差による揺らぎの発生を抑えることができる。
【0018】
本発明に係る請求項7のパケット無中断切替装置は、請求項6に記載のパケット無中断切替装置において、前記パケット遅延手段は、前記切替指示手段から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信するまでの遅延時間を判定する遅延判定手段と、受信パケットを受信順に一時的に保持して読み出し指令に応じて受信順に受信パケットを読み出す遅延調整メモリと、前記遅延判定手段が判定した遅延時間が0より大きい場合に、前記遅延時間が0以下になるまで切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を時間に比例して増加させる遅延制御手段とで構成されることを特徴とする。
【0019】
これにより、短系から長系へのパケットトラフィックの切替時において、パケット間隔が時間に比例して徐々に変化するので、短系と長系の遅延時間差が大きい場合でも揺らぎの発生を抑えることができる。
【0020】
本発明に係る請求項8のパケット無中断切替装置は、請求項6に記載のパケット無中断切替装置において、前記パケット遅延手段は、前記切替指示手段から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信するまでの遅延時間を判定する遅延判定手段と、受信パケットを受信順に一時的に保持して読み出し指令に応じて受信順に受信パケットを読み出す遅延調整メモリと、前記遅延判定手段が判定した遅延時間が0より大きい場合に、前記遅延時間が0以下になるまで切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を所定時間ずつ段階的に増加させる遅延制御手段とで構成されることを特徴とする。
【0021】
これにより、短系から長系へのパケットトラフィックの切替時において、パケット間隔が所定時間ずつ段階的に変化するので、短系と長系の遅延時間差が大きい場合でも揺らぎの発生を抑えることができる。
【0022】
本発明に係る請求項9のパケット無中断切替装置は、請求項7または8に記載のパケット無中断切替装置において、前記切替指示手段により切り替えられた切替先の第2の経路の受信パケットから切替元の第1の経路の受信パケットに戻す指示を与える切替解除指示手段をさらに設け、前記遅延制御手段は、前記切替解除指示手段から解除指示が与えられた時点以降に前記切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を時間に反比例して減少させることを特徴とする。
【0023】
これにより、短系から長系へ切り替えたパケットトラフィックを再び長系から短系へ戻す場合でも、パケット間隔が時間に反比例して徐々に変化するので、短系と長系の遅延時間差が大きい場合でも揺らぎの発生を抑えることができる。
【0024】
本発明に係る請求項10のパケット無中断切替装置は、請求項7または8に記載のパケット無中断切替装置において、前記切替指示手段により切り替えられた切替先の第2の経路の受信パケットから切替元の第1の経路の受信パケットに戻す指示を与える切替解除指示手段をさらに設け、前記遅延制御手段は、前記切替解除指示手段から解除指示が与えられた時点以降に前記切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す毎に与えられる遅延量を所定時間ずつ段階的に減少させることを特徴とする。
【0025】
これにより、短系から長系へ切り替えたパケットトラフィックを再び長系から短系へ戻す場合でも、パケット間隔が所定時間ずつ段階的に変化するので、短系と長系の遅延時間差が大きい場合でも揺らぎの発生を抑えることができる。
【0026】
本発明に係る請求項11のパケット無中断切替方法は、順序識別子を付加したパケットを複製して複数の経路で送信する送信側と、複数の経路から受信する同一識別子が付加されたパケットの中から早着パケットを選択して下流に転送する受信側とを有するパケット無中断伝送システムで用いられるパケット無中断切替方法において、前記受信側で下流に転送するパケットを第1の経路の受信パケットから第2の経路の受信パケットに切り替える指示を与える切替指示手順と、前記切替指示手順から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信されるまでの遅延時間が予め設定した閾値より長い場合に、前記遅延時間が前記閾値以下になるまで切替元の第1の経路のパケットを徐々に遅延させるパケット遅延手順とを設けたことを特徴とする。
【0027】
これにより、伝送路が短く遅延時間が短い短系の経路のパケットトラフィックから伝送路が長く遅延時間が長い長系の経路のパケットトラフィックに切り替える場合に、切替時のパケット間隔が急激に変化することがなくなり、短系と長系の遅延時間差による揺らぎの発生を抑えることができる。
【0028】
本発明に係る請求項12のパケット無中断切替装置は、請求項11に記載のパケット無中断切替方法において、前記パケット遅延手順は、前記切替指示手順から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信するまでの遅延時間を判定する遅延判定手順と、受信パケットを受信順に一時的に保持して読み出し指令に応じて受信順に受信パケットを読み出す遅延調整メモリと、前記遅延判定手順が判定した遅延時間が0より大きい場合に、前記遅延時間が0以下になるまで切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を時間に比例して増加させる遅延制御手順とで構成されることを特徴とする。
【0029】
これにより、短系から長系へのパケットトラフィックの切替時において、パケット間隔が時間に比例して徐々に変化するので、短系と長系の遅延時間差が大きい場合でも揺らぎの発生を抑えることができる。
【0030】
本発明に係る請求項13のパケット無中断切替方法は、請求項11に記載のパケット無中断切替方法において、前記パケット遅延手順は、前記切替指示手順から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信するまでの遅延時間を判定する遅延判定手順と、受信パケットを受信順に一時的に保持して読み出し指令に応じて受信順に受信パケットを読み出す遅延調整メモリと、前記遅延判定手順が判定した遅延時間が0より大きい場合に、前記遅延時間が0以下になるまで切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を所定時間ずつ段階的に増加させる遅延制御手順とで構成されることを特徴とする。
【0031】
これにより、短系から長系へのパケットトラフィックの切替時において、パケット間隔が所定時間ずつ段階的に変化するので、短系と長系の遅延時間差が大きい場合でも揺らぎの発生を抑えることができる。
【0032】
本発明に係る請求項14のパケット無中断切替装置は、請求項12または13に記載のパケット無中断切替方法において、前記切替指示手順により切り替えられた切替先の第2の経路の受信パケットから切替元の第1の経路の受信パケットに戻す指示を与える切替解除指示手順をさらに設け、前記遅延制御手順は、前記切替解除指示手順から解除指示が与えられた時点以降に前記切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を時間に反比例して減少させることを特徴とする。
【0033】
これにより、短系から長系へ切り替えたパケットトラフィックを再び長系から短系へ戻す場合でも、パケット間隔が時間に反比例して徐々に変化するので、短系と長系の遅延時間差が大きい場合でも揺らぎの発生を抑えることができる。
【0034】
本発明に係る請求項15のパケット無中断切替方法は、請求項12または13に記載のパケット無中断切替方法において、前記切替指示手順により切り替えられた切替先の第2の経路の受信パケットから切替元の第1の経路の受信パケットに戻す指示を与える切替解除指示手順をさらに設け、前記遅延制御手順は、前記切替解除指示手順から解除指示が与えられた時点以降に前記切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す毎に与えられる遅延量を所定時間ずつ段階的に減少させることを特徴とする。
【0035】
これにより、短系から長系へ切り替えたパケットトラフィックを再び長系から短系へ戻す場合でも、パケット間隔が所定時間ずつ段階的に変化するので、短系と長系の遅延時間差が大きい場合でも揺らぎの発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、パケット伝送経路の切替時に、切替元のパケットトラフィックに遅延を挿入することによって切替元のパケットと切替先のパケットとの時間差を小さくするので、遅経路切替時の揺らぎの発生を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】パケット無中断伝送システム1の構成図である。
【図2】パケット無中断伝送の処理を示すフローチャートである。
【図3】パケット無中断切替時の遅延揺らぎを説明する説明図である。
【図4】第1の実施形態に係るパケット無中断切替装置100のブロック図である。
【図5】SONET/SDHに対応するパケット無中断切替装置200のブロック図である。
【図6】SONET/SDHに対応するパケット無中断切替装置250のブロック図である。
【図7】OTNに対応するパケット無中断切替装置260のブロック図である。
【図8】OTNに対応するパケット無中断切替装置270のブロック図である。
【図9】計画切替モード/計画切替解除モードでの遅延処理を示すフローチャートである。
【図10】時間に比例して遅延量を増加させる場合の様子を示す説明図である。
【図11】段階的に遅延量を増加させる場合の様子を示す説明図である。
【図12】時間に比例して遅延量を減少させる場合の様子を示す説明図である。
【図13】段階的に遅延量を減少させる場合の様子を示す説明図である。
【図14】計画切替モードでの遅延処理を示すフローチャートである。
【図15】第2の実施形態に係るパケット無中断切替装置300のブロック図である。
【図16】第2の実施形態に係るパケット無中断切替装置300の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明に係るパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
[パケット無中断伝送システムの概要]
図1は第1の実施形態に係るパケット無中断伝送システム1のシステム構成例を示す説明図である。図1の例では、両端に描かれたユーザネットワーク2および3(ユーザNW2および3)の間で送受信されるパケットを中央に描かれた広域ネットワーク4(広域NW4)を介して接続するシステム構成になっており、ユーザネットワーク2および3と広域ネットワーク4の境界には2つのネットワーク間の中継を行う伝送装置(本実施形態に係るパケット無中断切替装置5および6)がそれぞれ設置されている。
【0039】
図1において、例えばパケット無中断切替装置5はユーザNW2から送信されるパケットを複製して経路A、B,CおよびDの複数の経路に分けて広域NW4側に転送し、逆に広域NW4の複数経路から受信する複数のパケットの1つを選択してユーザNW2側に転送するようになっている。
【0040】
ここで、パケット無中断切替装置5および6の基本動作について図2のフローチャートを用いて説明する。図2のフローチャートは、例えばパケット無中断切替装置5の場合、ユーザNW2から受信したパケットを広域NW4に送信する送信側処理と、広域NW4から受信したパケットをユーザNW2に送信する受信側処理とで構成される。
【0041】
送信側処理では、例えば図1のユーザNW2からパケットを受信すると(ステップS1)、受信したパケットを経路の数だけ複製し(ステップS2)、複製したパケットに順序などを示す識別子をそれぞれ付与し(ステップS3)、複数のパケットをそれぞれ異なる経路に分けて広域NW4に送信する(ステップS4)。尚、パケットを複製してから識別子を付加しても構わないし、パケットに識別子を付加してから複製しても構わない。
【0042】
一方、受信側処理では、例えばパケット無中断切替装置6から広域NW4を介して複数の異なる経路で送られてくるパケットを受信すると(ステップS5)、受信したパケットの識別子を確認して複数経路の中で一番早く受信した正常のパケット(早着パケット)を選択し(ステップS6)、選択したパケットから識別子を消去してユーザNW2側に転送する(ステップS7)。
【0043】
このようにパケット無中断切替装置5および6は、複製した複数のパケットを複数の経路で伝送するので一部の経路に障害が発生した場合でもパケット損失を発生せず、且つ経路切替を行う場合でも遅延揺らぎの少ない信頼性の高いネットワークを実現することができる。尚、本実施形態では、パケット無中断切替装置5および6の名称を、その機能が分かり易いように「パケット無中断切替装置」と称したが、一般的なパケット伝送装置,パケット転送装置,パケット中継装置などと称しても構わない。また、本実施形態で特に明記せずに「パケット」と称しているものは、ユーザ情報に宛先などのヘッダ情報を付加した一塊の伝送情報単位を示すもので、OSIレイヤのレイヤ3などで使われるパケットや、レイヤ2などで使われるフレームなどを含むものとする。従って、本実施形態に係るパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法は、デジタルデータを所定の伝送情報単位に区切って伝送するシステムや装置であれば同様に適用することができる。
【0044】
ところが、上記のように複製したパケットを複数系統の伝送路に分けて送信する場合、各系統の伝送路の長さが異なるため、複数系統の伝送路を流れる同じ識別子を有するパケットの到着時間には伝送路長差に相当する遅延が生じる。ここで、例えば図1の経路A,B,CおよびDの中で伝送路長の長い経路を長系と称し、逆に伝送路長の短い経路を短系と称する場合、短系の経路を流れるパケットの到着時間は長系の経路を流れる同じ複製されたパケットの到着時間より早いので、短系から長系に切り替える時に遅延時間が生じる。この従来方式のパケットトラフィックの様子を図3(a)に示す。図3(a)は、短系の経路から受信するパケット列と、長系の経路から受信する複製された同じパケット列と、短系または長系から選択されたパケットが下流のネットワークや装置に出力される選択系のパケット列との時間的な位置関係がわかるように描いた説明図である。尚、図3(a)の例では、切替を行う前後の12個のパケット列を示し、四角で囲まれた1から12までの数字はそれぞれ1つのパケットを示しており、同じ番号のパケットは同じ複製されたパケットを示している。以降、これらの12個のパケットをパケット(1),パケット(2),・・・,パケット(12)のように表記する。
【0045】
図3(a)において、短系のパケット(1)の到着時間と長系のパケット(1)の到着時間とはL秒の伝送路遅延がある。例えば短系のパケット(5)を選択後に短系から長系への計画切替(運用者による切替操作)が実行された場合、長系のパケット(6)が到着するまで選択系ではパケット(5)を転送してからパケット(6)を転送するまで待たされることになり、伝送路遅延分の揺らぎが生じる。
【0046】
これに対して、本実施形態に係るパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法は、後で説明するように、図3(a)のような伝送路遅延による揺らぎの発生を少なくすることができるようになっている。
[パケット無中断切替装置5および6の構成]
次に、パケット無中断切替装置5および6の構成例について図4を用いて詳しく説明する。図4は、パケット無中断切替装置5および6に対応する1つの構成例を示すパケット無中断切替装置100のブロック図である。図4において、パケット無中断切替装置100は送信機能部101と受信機能部102とを有している。
【0047】
図4に示す送信機能部101は、ユーザNWから受信したデータを広域NWへ送信するためのブロックで、受信部111と、コピー部112と、識別子付与部113aおよび113bと、送信部114aおよび114bとで構成される。尚、図4では分かり易いように2つの経路を有する場合の構成例を描いてあるので、コピー部112以降のブロックはそれぞれ2系統(広域NW4の経路Aに対応するa系統と、広域NW4の経路Bに対応するb系統)の同じブロックを有するが、2系統より多い数の経路に分けて送信する場合は経路数だけコピー部112以降のブロックを設ければよい。また、以降の説明において、特定のブロックを指す場合を除いて、例えば識別子付与部113aおよび識別子付与部113bは識別子付与部113のように系統名(a,b)を省略して表記するものとし、例えば送信部114aおよび送信部114bは送信部114と表記する。また、以降の図面に出現する同様のブロックについても特に明記しない限り同様に系統名(a,b)を省略して表記する。
【0048】
受信部111は、ユーザNWからのパケットを受信する。尚、先に説明したように、パケットの種類は何でもよく、例えばイーサネット(登録商標)のIPパケットであっても構わないし、MACフレームなどのフレームであっても構わない。或いは、MPLS(Multi−Protocol Label Switching)に対応したパケットであっても構わない。
【0049】
コピー部112は、受信部で受信したユーザNWからのパケットと同一の情報を持つ複数のパケットを複製する。
【0050】
識別子付与部113は、複製された複数のパケットにそれぞれ順序識別子(および経路識別子)を書き込む。ここで、順序識別子は送信順序を示す識別子で、0,1,2,3・・・の整数値が送信する度に順番に1ずつ増加され、その数値が書き込まれる(尚、1,2,3・・・の自然数でも構わない)。また、経路識別子は送信する伝送経路を示す識別子で伝送経路の1系,2系・・・などに対応する1〜nの値が書き込まれるが、経路識別子はなくても構わない。
【0051】
送信部114は、識別子付与部113で順序識別子などが付与された複数のパケットを広域NW側にそれぞれ異なる経路に送信する。例えば、同じ順序識別子が付与された同じ情報を含む2つの複製パケットの中の1つのパケットが送信部114aから経路Aに送信され、もう1つのパケットが送信部114bから経路Bに送信される。
【0052】
次に、受信機能部102について説明する。図4において、受信機能部102は、広域NWから受信した信号をユーザNWへ送信するためのブロックで、受信部121(受信部121aおよび121b)と、遅延判定部122(遅延判定部122aおよび122b)と、遅延調整用メモリ123(遅延調整用メモリ123aおよび123b)と、メモリ124(メモリ124aおよび124b)と、選択部125(選択部125aおよび125b)と、カウンタ部126と、送信部127と、遅延制御部128とで構成される。ここで、点線枠で囲んだ遅延調整ブロック151および遅延制御部128で構成されるブロックが本発明に係るパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法の特徴となる部分である。特に、図4の場合は、遅延調整ブロック151は、遅延判定部122aおよび122bの遅延判定ブロック152と、遅延調整用メモリ123aおよび123bの遅延調整用メモリブロック153とで構成される。
【0053】
受信部121aおよび121bは、それぞれ対応する広域NWの経路Aおよび経路Bから送られてくるパケットを受信する。
【0054】
遅延判定部122は、各経路から受信した同一の順序識別子を持つパケットの遅延差(到着時間の差)を判定し、遅延制御部128に遅延差情報を出力する。その後、当該受信パケットは受信した経路に応じて遅延調整用メモリ123に保持された後、遅延制御部128からの命令に応じて所定の遅延が挿入されてメモリ124に蓄積される。つまり、所定時間(0(遅延無し)を含む)だけ遅れてメモリ123から読み出されてメモリ124に蓄積される。
【0055】
遅延調整用メモリ123は、先に書き込まれたパケットから先に読み出すFIFOメモリで構成される。尚、遅延判定部122が出力するパケットを順番に蓄積し、遅延制御部128の読み出し指令に応じて先に書き込まれたパケットから順番に読み出す。
【0056】
メモリ124もFIFOメモリで構成され、遅延調整用メモリ123から読み出されるパケットを順番に蓄積し、選択部125によって先に書き込まれたパケットから順番に読み出される。
【0057】
選択部125は、メモリ124から読み出したパケットの順序識別子を参照し、複数経路から受信した同一情報を持つパケットの中の先着パケットを選択して送信部127に出力する。尚、選択されなかった同一情報を持つパケットは廃棄される。つまり、早着のパケットがあった場合には、後着のパケットは廃棄される。
【0058】
送信部127は、選択部125から出力されるパケットから順序識別子を消去した後、下流のネットワークや装置に転送する。
【0059】
遅延制御部128は、運用者による経路切替要求(計画切替要求)が与えられた場合に、遅延判定部122と、遅延調整用メモリ123とを制御して、パケットトラフィックの経路の切替を行う。例えば図4の場合では、経路Aから経路Bへの切り替え要求を行ったり、逆に経路Bから経路Aへの切り替え要求を行う。或いは、一旦切り替えられたパケットトラフィックを元に戻す計画切替解除要求が与えられた場合には、逆の動作を行う。
【0060】
尚、図4では一般的なパケット転送装置としてパケット無中断切替装置100を構成する場合のブロック図を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
[SONET/SDHまたはOTNへの適用例]
例えば、Packet over SONET/SDH(SONET(Synchronous Optical NETwork:同期光伝送網)/SDH(Synchronous Digital Hierarchy:同期デジタル・ハイアラーキ))に対応する伝送装置やOTN(Optical Transport Network:光伝送網)に対応する伝送装置などにも適用することができる。例えば、図5は、図4で説明したパケット無中断切替装置100をPacket over SONET/SDHに対応させた場合のパケット無中断切替装置200の構成を示すブロック図である。
【0061】
ここで、図5と図4の違いについて説明する。図5はSDHに対応するために、送信機能部201には、GFP(Generic Framing Procedure)マッピング部211と、VC(Virtual Container)マッピング部212aおよび212bと、VCマッピングしたフレームを多重化する多重部213とが配置されている。また、受信機能部202には、受信部121で広域NWから受信したVCフレームを分離する分離部221と、VCデマッピング部222aおよび222bと、GFPデマッピング部223とが配置されている。上記以外のブロックは図4と同様に構成される。尚、分かり易いように、図4と同符号のものは図4で説明した機能と同じ機能を有するが、その扱うデータが異なり、GFPフレームであったりVCフレームであったりする。例えば、送信機能部201の受信部111でユーザNWから受信したパケットはGFPマッピング部211でGFPフレームにマッピングされる。そして、コピー部112はGFPフレームを複製して識別子付与部113に出力する。さらに、順序識別子や経路識別子が付与されたGFPフレームはVCマッピング部212でVCフレームにマッピングされ、多重部213で多重化された後、送信部114からそれぞれの経路を介して広域NWに送信される。
【0062】
一方、受信機能部202の受信部121は広域NWの各経路から多重化されたフレームを受信し、分離部221で多重化されたフレームを分離する。そして、VCデマッピング部222は、GFPフレームにデマッピングし、デマッピングされたGFPフレームは遅延調整ブロック151の遅延判定部122で同じフレームの遅延時間の判定を行って遅延制御部128に出力すると共に、当該フレームを遅延調整用メモリ123に一時的に記憶する。遅延制御部128は図4で説明したように、計画切替要求/解除要求に応じて、遅延判定部122から入力する遅延時間の判定結果を用いて遅延調整用メモリ123に一時的に記憶されているGFPフレームを適宜読み出しでメモリ124に蓄積する。そして、選択部125は、カウンタ部126のカウント値とメモリ124に蓄積されているGFPフレームの順序識別子を参照して早着のフレームを選択してGFPデマッピング部223に出力する。GFPデマッピング部223は、選択部125から出力されるGFPフレームをデマッピングしたパケットを送信部127に出力し、送信部127からユーザNWに転送される。
【0063】
このように、Packet over SONET/SDHに対応するパケット無中断切替装置200の場合でも図4で詳しく説明したパケット無中断切替装置100と同様に処理することができる。
【0064】
次に、Packet over SONET/SDHに対応するその他のパケット無中断切替装置250の構成例を図6に示す。尚、図6において、図4および図5と同符号のものは同じ機能のブロックを示す。図5と図6の違いは、送信機能部251において、VCマッピング部212の位置が異なる。図5では、VCマッピング部212aおよび212bは、識別子付与部113で識別子が付与された後に配置されていたが、図6ではVCマッピング部212はGFPマッピング部211の直後に配置されている。これにより、図5の場合に比べてVCマッピング部212のブロック数を減らすことができるので回路規模が小さくなり、コスト削減を図ることができる。
【0065】
同様に、受信機能部252において、VCデマッピング部222の位置が異なる。図4では、VCデマッピング部222aおよび222bは、分離部221の直後に配置されていたが、図6ではVCデマッピング部222はGFPデマッピング部223の直前に配置されている。これにより、図5の場合に比べてVCデマッピング部222のブロック数を減らすことができるので回路規模が小さくなり、コスト削減を図ることができる。
【0066】
次に、OTNに対応するパケット無中断切替装置260の構成例を図7に示す。尚、図7において、図4および図5と同符号のものは同じ機能のブロックを示す。図5と図7の違いは、OTNに対応するために、送信機能部261において、VCマッピング部212および多重部213の代わりにOTNマッピング部214が配置されていることである。図7において、識別子付与部113で順序識別子や経路識別子が付与されたGFPフレームはOTNマッピング部214でOTNフレームにマッピングされ、送信部114からそれぞれの経路を介して広域NWに送信される。
【0067】
一方、受信機能部262においては、受信部121で広域NWの各経路から受信されたOTNフレームは、OTNデマッピング部224でGFPフレームにデマッピングし、デマッピングされたGFPフレームは遅延調整ブロック151の遅延判定部122で同じフレームの遅延時間の判定を行って遅延制御部128に出力すると共に、当該フレームを遅延調整用メモリ123に一時的に記憶する。遅延制御部128は図4で説明したように、計画切替要求/解除要求に応じて、遅延判定部122から入力する遅延時間の判定結果を用いて遅延調整用メモリ123に一時的に記憶されているGFPフレームを適宜読み出しでメモリ124に蓄積する。そして、選択部125は、カウンタ部126のカウント値とメモリ124に蓄積されているGFPフレームの順序識別子を参照して早着のフレームを選択してGFPデマッピング部223に出力する。GFPデマッピング部223は、選択部125から出力されるGFPフレームをデマッピングしたパケットを送信部127に出力し、送信部127からユーザNWに転送される。
【0068】
このように、OTNに対応するパケット無中断切替装置260の場合でも図4で詳しく説明したパケット無中断切替装置100と同様に処理することができる。
【0069】
次に、OTNに対応するその他のパケット無中断切替装置270の構成例を図8に示す。尚、図8において、図4および図7と同符号のものは同じ機能のブロックを示す。図7と図8の違いは、送信機能部271において、OTNマッピング部214の位置が異なる。図7では、OTNマッピング部214は、識別子付与部113で識別子が付与された後に配置されていたが、図8ではOTNマッピング部214は図7のGFPマッピング部211の代わりに同じ位置に配置されている。これにより、図7の場合に比べてOTNマッピング部214のブロック数を減らすことができるので回路規模が小さくなり、コスト削減を図ることができる。
【0070】
同様に、受信機能部272において、OTNデマッピング部224の位置が異なる。図7では、OTNデマッピング部224aおよび224bは、受信部121の直後に配置されていたが、図8ではOTNデマッピング部224はGFPデマッピング部223の代わりに同じ位置に配置されている。これにより、図7の場合に比べてOTNデマッピング部224のブロック数を減らすことができるので回路規模が小さくなり、コスト削減を図ることができる。
【0071】
以上、図5,図6,図7および図8を用いて説明したように、本発明に係るパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法は、SONET/SDHまたはOTNに対しても適用することができる。
[遅延制御部128および遅延調整ブロック151の動作について]
次に、図4において、遅延調整ブロック151を構成する遅延判定ブロック152と、遅延調整用メモリ123と、遅延制御部128の動作について詳しく説明する。
【0072】
遅延調整用メモリ123aと123bは、遅延制御部128と連動しており、運用者がOpS(オペレーションシステム)や対向装置から出力する計画切替要求/解除要求に応じて遅延調整用メモリ123aと123bを用いて一時的に保持されているパケットの遅延量を調整する。
【0073】
遅延制御部128は、OpSからの計画切替要求/解除要求を受けて、遅延判定部122が出力する各経路から受信した同一の順序識別子を持つパケットの遅延差情報を参照して、メモリ124へパケットを出力する遅延量の制御を行なう。
【0074】
図9は、図4のa系統の遅延調整用メモリ123aを用いた処理例を示すフローチャートである。尚、b系統の遅延調整用メモリ123bについても同様のフローチャートとなる。
【0075】
(ステップS11)受信パケットが遅延調整用メモリ123aに書き込まれる。
【0076】
(ステップS12)伝送路aから伝送路bへの計画切替モードであるか否かを判別する。そして、計画切替モードである場合にはS13に進み、それ以外の場合にはS16に進む。
【0077】
(ステップS13)遅延調整用メモリ123a側のパケットと遅延調整用メモリ123b側のパケットとの遅延差τ(a−b)を判別する。そして、遅延差τ(a−b)>0を満たす場合はS14に進み、満たさない場合はS15に進む。尚、遅延差τ(a−b)<0の場合は、切替要求先のパケットが元々早着であるので、そのままメモリ124aにパケットを転送する。
【0078】
(ステップS14)遅延調整用メモリ123a側へのパケットの方が遅延調整用メモリ123bへ受信される同一情報を持つパケットよりも早く受信されるので、遅延調整用メモリ123aが受信したパケットに所定の遅延量τ1を挿入する。尚、遅延量τ1は、時間に比例してリニアに増加させるか、パケット受信毎にΔτ1ずつ段階的に増加させるよう制御される。この遅延量τ1の挿入方法については、図10、図11を用いて後で詳しく説明する。
尚、遅延量τ1の挿入例は図10、図11を用いて後で詳しく説明する。
【0079】
(ステップS15)遅延量τ1の遅延が挿入されたパケット(τ1の時間だけ遅れて読み出したパケット)をメモリ124aに転送する。
【0080】
(ステップS16)伝送路aから伝送路bへの計画切替解除モードであるか否かを判別する。そして、計画切替解除モードである場合にはS17に進み、それ以外の場合にはS15に進む。ここで、計画切替モードでなく、計画切替解除モードでもない場合には、S15に進んで、そのままパケットをメモリ124aに転送する。
【0081】
(ステップS17)遅延調整用メモリ123a側へのパケットの方が遅延調整用メモリ123bへ受信される同一情報を持つパケットよりも早く受信されるので、遅延調整用メモリ123aが受信したパケットに所定の遅延量τ2を挿入する。尚、遅延量τ2は、時間に比例してリニアに減少させるか、パケット受信毎にΔτ2ずつ段階的に減少させるよう制御される。この遅延量τ2の挿入方法については、図12、図13を用いて後で詳しく説明する。
[遅延量τ1の挿入方法]
次に、遅延量τ1の挿入方法について説明する。先ず、遅延量τ1の挿入方法の一例を図10のグラフを用いて説明する。尚、図10において、横軸は時間軸(t)、縦軸は遅延時間の差(遅延差:τ)を示す。図10に示した方法は、時間tの経過に比例して所定の遅延量τ1を増やしていく方法である。図10において、OpSからの切替要求発生時点を0としてtz1秒後にa系とb系との遅延差τ(a−b)よりも大きい遅延量τ1が挿入されるように、時間に比例して遅延量を徐々に増やしていく。尚、a系とb系の遅延差τ(a−b)は遅延判定部122によって測定される。
【0082】
ここで、遅延量τ1が遅延量τ(a−b)に近い場合、僅かな処理遅延や遅延揺らぎなどによってパケットの到達順序が入れ変わるので、切り替え処理が正常に行なえない場合がある。このため、目標となる遅延量τ1はτ(a−b)よりも余裕を持って大きくなるまでの時間(tz2)まで徐々に遅延を増加する処理を継続した後、切替元のパケットの遅延量τ1を一定に保つように遅延制御部128は処理する。
【0083】
次に、遅延量τ1の挿入方法のその他の例を図11のグラフを用いて説明する。尚、図11のグラフは図10と同様に、横軸は時間軸(t)、縦軸は遅延時間の差(遅延差:τ)を示す。図10に示した方法は、時間tに比例してリニアに遅延量τ1になるまで増やしていく方法であったが、図11は遅延量τ(a−b)以上に到達するまで、切替元のパケット到達毎に遅延量Δτ1を段階的に増やしていく方法である。そして、図10の場合と同様に、τ1>τ(a−b)となるまで、遅延量Δτ1を段階的に増やして行き、遅延量τ(a−b)より十分に余裕を持つ遅延量τ1になった以後の切替元のパケットについてはその遅延量τ1に保つ。尚、パケットの到達頻度が少ない場合は、τ1に達していない場合にタイムアウトするように制御して、タイムアウトした場合に遅延量をτ1に強制的に設定するようにしても構わない。
【0084】
ここで、計画切替要求が与えられて、遅延量を段階的に増やしていく場合の具体的なパケットトラフィックの様子について図3(b)を用いて説明する。尚、図3(b)は、先に説明した従来方式のパケットトラフィックの様子を示す図3(a)と同様に、短系の経路から受信するパケット列と、長系の経路から受信する複製された同じパケット列と、短系または長系から選択されたパケットが下流のネットワークや装置に出力される選択系のパケット列との時間的な位置関係がわかるように描いた説明図である。また、図3(a)と同様に、切替を行う前後の12個のパケット列を示し、四角で囲まれた1から12までの数字で示してあり、以降の説明では、これらの12個のパケットをパケット(1),パケット(2),・・・,パケット(12)のように表記する。
【0085】
図3(b)において、短系のパケット(1)の到着時間と長系のパケット(1)の到着時間とはL秒の伝送路遅延がある。例えば短系のパケット(5)を選択後に短系から長系への計画切替要求が与えられた場合、図3(a)では長系のパケット(6)が到着するまで選択系ではパケットが出力されない状態になったが、本実施形態では長系のパケットが到着するタイミングよりも遅くなるまで短系のパケットが到着する毎に少しずつ段階的に遅らせるように制御する。例えば、計画切替要求が与えられた最初の短系のパケット(6)は所定の遅延量Δτだけ遅らせて選択系に出力する。ここで、遅延量Δτは、揺らぎの影響が問題とならない程度の遅延量とする。次の2つ目の短系のパケット(7)は、遅延量(Δτ×2)だけ遅らせて選択系に出力する。この時点でも、遅延されたパケット(7)は切替先の長系のパケット(7)の到着タイミングよりも早いので、さらに次の3つ目の短系のパケット(8)を遅延量(Δτ×3)だけ遅らせて選択系に出力する。同様に、短系のパケット(9)は遅延量(Δτ×4)だけ遅らせて選択系に出力する。そして、次の5つ目の短系のパケット(10)を遅延量(Δτ×5)だけ遅らせると、長系のパケット(10)の到着タイミングよりも遅くなるので、ここで初めて長系のパケット(10)に切り替えて選択系に出力する。ここで、Δτは図11のΔτ1に対応する。
【0086】
このように、本実施形態に係るパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法では、短系から長系への計画切替要求が与えられた時点以降の短系のパケットを所定の遅延量だけ待たせて選択系に出力し、待たせた短系のパケットが選択系に出力されるタイミングが長系の同じパケットの到着タイミングよりも遅くなった時点で長系のパケットに切替を行うよう制御し、短系のパケットと長系のパケットの遅延差を段階的に徐々に縮めるように制御するので遅延揺らぎの発生を少なくすることができる。
[遅延量τ2の挿入方法]
次に、遅延量τ2の挿入方法の一例を図12のグラフを用いて説明する。尚、図12において、横軸は時間軸(t)、縦軸は遅延時間の差(遅延差:τ)を示す。図12に示した方法は、時間tの経過に比例して所定の遅延量τ2が0になるまで減らしていく方法である。図12において、OpSからの切替解除要求発生時点を0としてtz3秒後にa系とb系との遅延差τ(a−b)が0になるように、遅延量τ2を時間に比例して徐々に減らしていく。
【0087】
次に、遅延量τ2の挿入方法のその他の例を図13のグラフを用いて説明する。尚、図13のグラフは図12と同様に、横軸は時間軸(t)、縦軸は遅延時間の差(遅延差:τ)を示す。図12に示した方法は、時間tに比例してリニアに遅延量τ2を減らしていく方法であったが、図13は遅延量τ(a−b)が0になるまで、パケット到達毎に遅延量Δτ2ずつ段階的に減らしていく方法である。尚、パケットの到達頻度が少なく遅延量が0に達していない場合は、タイムアウトするように制御して、タイムアウトした場合に遅延量を強制的に0に設定するようにしても構わない。
【0088】
ここで、図13は、図3(b)で説明した段階的に遅延量Δτを増やしていく方法の逆の動作を行うことに相当する。例えば、図3(b)において、Δτが図13のΔτ2に対応し、遅延量τ2が例えば遅延量(Δτ×5)に対応する。そして、長系から短系に戻すための計画切替解除要求が与えられた場合に、短系のパケットが到着する毎に遅延量τ2からΔτ2だけ段階的に減少させていき、最終的に遅延量τ2が0になった時点で計画切替解除モードが終了する。
【0089】
このように、本実施形態に係るパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法では、短系から長系への計画切替解除要求が与えられた時点以降の短系のパケットの遅延量を徐々に減少させて選択系に出力するので、計画切替解除モードでの遅延揺らぎの発生を少なくすることができる。
【0090】
以上、本実施形態に係るパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法は、OpS又は対向装置からの計画切替要求/解除要求を受けた場合に、短系と長系のパケット間の遅延差を徐々に縮めることで、転送先のネットワークや装置に対する遅延揺らぎを最小限に抑えることができる。
【0091】
[第1の実施形態の変形例1]
次に、上記で説明した実施形態の変形例1について、図14を用いて説明する。図11および図13では、切替解除時の遅延量調整を時間tに比例して減少させるか段階的減少させるように制御したが、図14に示すように、一気に遅延量を0にするようにしても構わない。尚、図14において、図9と同じ符号のステップは同じ処理を行う。図9と異なるのは、ステップS12において、計画切替モードではない場合は、全てS15に進むので、計画切替解除モードである場合は、一気に遅延量が0に制御される。
【0092】
[第1の実施形態の変形例2]
次に、上記で説明した実施形態の変形例2について説明する。上記で説明した実施形態では、a系とb系の切り替えを遅延量の調整だけで行なうようにしたが、遅延の挿入によってa系とb系の切り替えを行なった後、選択部125において、選択する系を固定する方法で実現しても構わない。例えば、a系からb系に切り替える場合、選択部125は切替後はb系のパケットトラフィックを固定的に選択するように処理する。これにより、選択部125で早着のパケットを判別する処理を常に行う必要がなくなるので、処理負担が少なくなる。
【0093】
このように、本実施形態に係るパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法は、伝送路が短く遅延時間が短い短系の経路のパケットトラフィックから伝送路が長く遅延時間が長い長系の経路のパケットトラフィックに切り替える場合に、切替時のパケット間隔が急激に変化することがなくなり、短系と長系の遅延時間差による揺らぎの発生を抑えることができる。
【0094】
特に、短系から長系へのパケットトラフィックの切替時において、パケット間隔が所定時間ずつ徐々に増加するので、短系と長系の遅延時間差が大きい場合でも揺らぎの発生を抑えることができる。
【0095】
また、短系から長系へ切り替えたパケットトラフィックを再び長系から短系へ戻す場合でも、パケット間隔が所定時間ずつ徐々に減少するので、短系と長系の遅延時間差が大きい場合でも揺らぎの発生を抑えることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明に係るパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法の第2の実施形態について説明する。尚、第2の実施形態に係るパケット無中断伝送システムは、第1の実施形態の図1で説明したパケット無中断伝送システム1と同じである。同様に、図1のユーザネットワーク2および3と広域ネットワーク4の境界に配置された2つのネットワーク間の中継を行う伝送装置(パケット無中断切替装置5および6)が第2の実施形態に係るパケット無中断切替装置300に相当する。図15に、パケット無中断切替装置300のブロック図を示す。
【0096】
尚、本実施形態に係るパケット無中断切替装置300は第1の実施形態とは別の方法で短系と長系のパケットの遅延差を徐々に縮め、短系と長系のパケットの遅延が逆転した時点で切替を完了する計画切替を実現するようになっている。第1の実施形態では、図4で説明したように、遅延調整用メモリ123を用いて受信パケットの遅延量を調整するようにしたが、第2の実施形態では、図15に示すように、遅延調整用メモリ123を用いるのではなく選択部125で処理する方法によって、受信パケットの遅延量を制御するようになっている。これにより、第1の実施形態と同様に、遅延揺らぎの無い計画切替を実現することができる。
【0097】
図15において、パケット無中断切替装置300は、送信機能部301と、受信機能部302とで構成される。送信機能部301はユーザNWから受信したパケットを広域NWへ送信し、受信機能部302は広域NWから受信した信号をユーザNWへ送信する。
【0098】
図15に示す送信機能部301は、受信部111と、コピー部112と、識別子付与部113aおよび113bと、送信部114aおよび114bとで構成される。尚、送信機能部301の構成は、図4で説明した送信機能部101と同じ構成であり、図4と同一符号のブロックと同様の動作を行う。
【0099】
次に、受信機能部302について説明する。図15において、受信機能部302は、広域NWから受信した信号をユーザNWへ送信するためのブロックで、受信部121(受信部121aおよび121b)と、遅延判定部122(遅延判定部122aおよび122b)と、メモリ124(メモリ124aおよび124b)と、選択部325(選択部325aおよび325b)と、カウンタ部126と、送信部127と、遅延制御部328とで構成される。ここで、点線枠で囲んだ遅延判定ブロック152および遅延制御部328に加えて遅延調整選択ブロック354で構成される部分が本発明に係るパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法の特徴となる部分である。特に、図15の場合は、遅延調整選択ブロック354は、選択部325とカウンタ部126とで構成される。図4と異なるのは、遅延調整用メモリ123(遅延調整用メモリ123aおよび123b)が無いことと、遅延制御部328が遅延調整選択ブロック354の選択部325を制御することである。
【0100】
受信機能部302において、受信部121aおよび121bは、それぞれ対応する広域NWの経路Aおよび経路Bから送られてくるパケットを受信する。そして、遅延判定部122は、各経路から受信した同一の順序識別子を持つパケットの遅延差(到着時間の差)を判定し、遅延制御部128に遅延差情報を出力する。その後、当該受信パケットは受信した経路に応じてメモリ124に蓄積される。
【0101】
選択部325は、メモリ124から読み出したパケットの順序識別子を参照し、複数経路から受信した同一情報を持つパケットの中の先着パケットを選択して送信部127に出力する。尚、選択されなかった同一情報を持つパケットは廃棄される。つまり、早着のパケットがあった場合には、後着のパケットは廃棄される。特に、本実施形態では、選択部325は遅延制御部328と連動しており、OpSから与えられる計画切替要求/解除要求に応じてパケットに与える遅延量(本実施形態ではパケットを選択するまでの待機時間に相当)を調整する。このようにして遅延量が調整されて選択されたパケットは、送信部127で順序識別子が消去された後、下流のネットワークや装置に転送される。このように、遅延制御部328は、計画切替要求/解除要求が与えられた場合に、遅延判定部122と、選択部325とを制御して、パケットトラフィックの経路の切替を行う。或いは、一旦切り替えられたパケットトラフィックを元に戻す計画切替解除要求が与えられた場合には、逆の動作を行う。
【0102】
ここで、図15では一般的なパケット転送装置としてパケット無中断切替装置300を構成する場合のブロック図を用いて説明したが、第1の実施形態の図5から図8で説明したようにSONET/SDHやOTNなどへも適用することができ、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0103】
次に、第2の実施形態に係るパケット無中断切替装置300の遅延制御部328に計画切替要求/解除要求が与えられた場合の遅延量の制御方法について図16のフローチャートを用いて説明する。尚、本実施形態では、独立した2つの経路の場合を示しており、それぞれa系およびb系と称している。従って、経路数がn(nは自然数)の場合は、例えば1系〜n系までのn個について同様の処理を行なうものとする。以下、図16のフローチャートに従って説明する。
【0104】
(ステップS31)カウンタ部126のカウント値(CS)を0にリセットする。
【0105】
(ステップS32)a系のメモリ124aの受信パケットの有無を確認する。そして、a系のメモリ124aに受信パケットがある場合はS33に進み、受信パケットがない場合はS40に進む。
【0106】
(ステップS33)メモリ124aの受信パケットを読み出す。
【0107】
(ステップS34)読み出した受信パケットの順序識別子(Ca)とカウンタ部のカウント値(CS)とを比較する。そして、CS=Ca、CS>Ca、CS>Caの3つの条件に分けて処理し、CS=Caの場合はS35に進み、CS>Caの場合はS39に進み、CS>Caの場合はS40に進む。
【0108】
(ステップS35)a系からb系への計画切替モードであるか否かを判別する。そして、Yesの場合はS36に進み、Noの場合はS37に進む。
【0109】
(ステップS36)待機時間(τ1)が満了したか否かを判別する。尚、待機時間は、遅延制御部328がタイマー機能を有し、予め設定した待機時間(τ1)が満了した場合はS37に進み、待機時間(τ1)が満了していない場合はS40に進む。尚、待機時間(τ1)は第1の実施形態で説明した図10,図11の方法と同様である。
【0110】
ここで、ステップS35とステップS36の処理が本実施形態の特徴となる遅延制御処理を行う部分である。
【0111】
(ステップS37)メモリ124aの受信パケットを送信部127に出力すると共に、当該受信パケットをメモリ124aから消去する。
【0112】
(ステップS38)カウンタのカウント値(CS)を1つカウントアップし(CS=CS+1)、S40に進む。
【0113】
(ステップS39)メモリ124aの受信パケットは別系において既に到着しているパケットであると認識できるので、当該受信パケットをメモリ124aから消去する。
【0114】
(ステップS40)b系のメモリ124bの受信パケットの有無を確認する。そして、b系のメモリ124bに受信パケットがある場合はS41に進み、受信パケットがない場合はS32に戻って次のパケットの受信を待つ。
【0115】
(ステップS41)メモリ124bの受信パケットを読み出す。
【0116】
(ステップS42)読み出した受信パケットの順序識別子(Cb)とカウンタ部のカウント値(CS)とを比較する。そして、CS=Cb、CS>Cb、CS>Cbの3つの条件に分けて処理し、CS=Cbの場合はS43に進み、CS>Cbの場合はS47に進み、CS>Cbの場合はS48に進む。
【0117】
(ステップS43)b系からa系への計画切替モードであるか否かを判別する。そして、Yesの場合はS44に進み、Noの場合はS32に戻って次のパケットの受信を待つ。
【0118】
(ステップS44)ステップS36と同様に、待機時間(τ1)が満了したか否かを判別する。待機時間(τ1)が満了した場合はS45に進み、待機時間(τ1)が満了していない場合はS32に戻って次のパケットの受信を待つ。
【0119】
ここで、ステップS35とステップS36の処理と同様に、ステップS43とステップS44の処理は本実施形態の特徴となる遅延制御処理を行う部分である。
【0120】
(ステップS45)メモリ124bの受信パケットを送信部127に出力すると共に、当該受信パケットをメモリ124bから消去する。
【0121】
(ステップS46)カウンタのカウント値(CS)を1つカウントアップし(CS=CS+1)、S32に戻って次のパケットの受信を待つ。
【0122】
(ステップS47)メモリ124bの受信パケットは別系において既に到着しているパケットであると認識できるので、当該受信パケットをメモリ124bから消去し、S32に戻って次のパケットの受信を待つ。
【0123】
(ステップS48)CS<Caであるか否かを判別する。そして、CS<Caの場合はS49に進み、CS>Caの場合はS32に戻って次のパケットの受信を待つ。
【0124】
(ステップS49)カウンタのカウント値(CS)を1つカウントアップし(CS=CS+1)、S32に戻って次のパケットの受信を待つ。
【0125】
このように、本実施形態に係るパケット無中断切替装置300では、メモリ124aまたはメモリ124bに取り込まれた受信パケットは、計画切替モードの場合は所定の待機時間だけ遅延させて送信部127に出力されるので、揺らぎの発生を抑えることができる。
【0126】
特に、第1の実施形態の図10および図11で説明したように、遅延制御部328が、2つの経路の遅延差を徐々に縮めるように選択部325がメモリ124から受信パケットを読み出すタイミングを制御することで、遅延揺らぎを最小限に抑えることができる。
【0127】
尚、図16のフローチャートでは、計画切替要求時のみの処理を示したが、第1の実施形態と同様に、計画切替解除時の処理も行うことができる。この場合は遅延量を徐々に0にする制御を行えばよい。
【0128】
さらに、第2の実施形態では、選択部325における選択処理においてパケットの遅延調整を行なうので、第1の実施形態で用いた遅延調整用メモリ123が不要となる。この結果、パケット無中断切替装置300の回路規模を小さくでき、コスト削減を図ることができる。
【0129】
尚、図16では、a系の処理後にb系の処理を行なうフローチャートを示したが、全ての経路の処理を並列に行って、下流に流すパケットの判断を行なうようにしても構わない。
【0130】
また、本実施形態に係るパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット伝送方法における転送パケットの処理手順は、本実施形態に限定されるものではない。
【0131】
[第2の実施形態の変形例1]
次に、上記で説明した実施形態の変形例1について説明する。上記で説明した実施形態では、a系とb系の切り替えを遅延量の調整だけで行なうようにしたが、遅延の挿入によってa系とb系の切り替えを行なった後、選択部325において、選択する系を固定する方法で実現しても構わない。例えば、a系からb系に切り替える場合、選択部325は切替後はb系のパケットトラフィックを固定的に選択するように処理する。これにより、選択部325で早着のパケットを判別する処理を常に行う必要がなくなるので、処理負担が少なくなる。
【0132】
以上、本実施形態に係るパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法は、OpS又は対向装置からの計画切替要求を受けた場合に、短系と長系のパケット間の遅延差を徐々に縮めることで、転送先のネットワークや装置に対する遅延揺らぎを最小限に抑えることができる。
【0133】
尚、本発明に係るパケット無中断伝送システムおよびパケット無中断切替装置並びにパケット無中断切替方法について各実施形態で例を挙げて説明してきたが、その精神またはその主要な特徴から逸脱することなく他の多様な形で実施することができる。そのため、上述した実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明は、特許請求の範囲によって示されるものであって、本発明は明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0134】
1・・・パケット無中断伝送システム
2,3・・・ユーザNW
4・・・広域NW
5,6,100,200,250,260,270,300・・・パケット無中断切替装置
101,201,251,261,271,301・・・送信機能部
102,202,252,262,272,302・・・受信機能部
111・・・受信部
112・・・コピー部
113a,113b・・・識別子付与部
114a,114b,・・・送信部
121a,121b・・・受信部
122a,122b・・・遅延判定部
123a,123b・・・遅延調整用メモリ
124a,124b・・・メモリ
125a,125b,325a,325b・・・選択部
126・・・カウンタ部
127・・・送信部
128,328・・・遅延制御部
151・・・遅延調整ブロック
152・・・遅延判定ブロック
153・・・遅延調整用メモリブロック
211・・・GFPマッピング部
212,212a,212b・・・VCマッピング部
213・・・多重部
214,214a,214b・・・OTNマッピング部
221・・・分離部
222,222a,222b・・・VCデマッピング部
223・・・GFPデマッピング部
224,224a,224b・・・OTNデマッピング部
354・・・遅延調整選択ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順序識別子を付加したパケットを複製して複数の経路で送信する送信側と、複数の経路から受信する同一識別子が付加されたパケットの中から早着パケットを選択して下流に転送する受信側とを有するパケット無中断伝送システムにおいて、
前記受信側で下流に転送するパケットを第1の経路の受信パケットから第2の経路の受信パケットに切り替える指示を与える切替指示手段と、
前記切替指示手段から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信されるまでの遅延時間が予め設定した閾値より長い場合に、前記遅延時間が前記閾値以下になるまで切替元の第1の経路のパケットを徐々に遅延させるパケット遅延手段と
を設けたことを特徴とするパケット無中断伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載のパケット無中断伝送システムにおいて、
前記パケット遅延手段は、
前記切替指示手段から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信するまでの遅延時間を判定する遅延判定手段と、
受信パケットを受信順に一時的に保持して読み出し指令に応じて受信順に受信パケットを読み出す遅延調整メモリと、
前記遅延判定手段が判定した遅延時間が0より大きい場合に、前記遅延時間が0以下になるまで切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を時間に比例して増加させる遅延制御手段と
で構成されることを特徴とするパケット無中断伝送システム。
【請求項3】
請求項1に記載のパケット無中断伝送システムにおいて、
前記パケット遅延手段は、
前記切替指示手段から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信するまでの遅延時間を判定する遅延判定手段と、
受信パケットを受信順に一時的に保持して読み出し指令に応じて受信順に受信パケットを読み出す遅延調整メモリと、
前記遅延判定手段が判定した遅延時間が0より大きい場合に、前記遅延時間が0以下になるまで切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を所定時間ずつ段階的に増加させる遅延制御手段と
で構成されることを特徴とするパケット無中断伝送システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載のパケット無中断伝送システムにおいて、
前記切替指示手段により切り替えられた切替先の第2の経路の受信パケットから切替元の第1の経路の受信パケットに戻す指示を与える切替解除指示手段をさらに設け、
前記遅延制御手段は、前記切替解除指示手段から解除指示が与えられた時点以降に前記切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を時間に反比例して減少させる
ことを特徴とするパケット無中断伝送システム。
【請求項5】
請求項2または3に記載のパケット無中断伝送システムにおいて、
前記切替指示手段により切り替えられた切替先の第2の経路の受信パケットから切替元の第1の経路の受信パケットに戻す指示を与える切替解除指示手段をさらに設け、
前記遅延制御手段は、前記切替解除指示手段から解除指示が与えられた時点以降に前記切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を時間に反比例して減少させる
ことを特徴とするパケット無中断伝送システム。
【請求項6】
順序識別子を付加したパケットを複製して複数の経路で送信する送信機能部と、複数の経路から受信する同一識別子が付加されたパケットの中から早着パケットを選択して下流に転送する受信機能部とを有するパケット無中断切替装置において、
前記受信機能部は、
下流に転送するパケットを第1の経路の受信パケットから第2の経路の受信パケットに切り替える指示を与える切替指示手段と、
前記切替指示手段から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信されるまでの遅延時間が予め設定した閾値より長い場合に、前記遅延時間が前記閾値以下になるまで切替元の第1の経路のパケットを徐々に遅延させるパケット遅延手段と
で構成されることを特徴とするパケット無中断切替装置。
【請求項7】
請求項6に記載のパケット無中断切替装置において、
前記パケット遅延手段は、
前記切替指示手段から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信するまでの遅延時間を判定する遅延判定手段と、
受信パケットを受信順に一時的に保持して読み出し指令に応じて受信順に受信パケットを読み出す遅延調整メモリと、
前記遅延判定手段が判定した遅延時間が0より大きい場合に、前記遅延時間が0以下になるまで切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を時間に比例して増加させる遅延制御手段と
で構成されることを特徴とするパケット無中断切替装置。
【請求項8】
請求項6に記載のパケット無中断切替装置において、
前記パケット遅延手段は、
前記切替指示手段から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信するまでの遅延時間を判定する遅延判定手段と、
受信パケットを受信順に一時的に保持して読み出し指令に応じて受信順に受信パケットを読み出す遅延調整メモリと、
前記遅延判定手段が判定した遅延時間が0より大きい場合に、前記遅延時間が0以下になるまで切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を所定時間ずつ段階的に増加させる遅延制御手段と
で構成されることを特徴とするパケット無中断切替装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載のパケット無中断切替装置において、
前記切替指示手段により切り替えられた切替先の第2の経路の受信パケットから切替元の第1の経路の受信パケットに戻す指示を与える切替解除指示手段をさらに設け、
前記遅延制御手段は、前記切替解除指示手段から解除指示が与えられた時点以降に前記切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を時間に反比例して減少させる
ことを特徴とするパケット無中断切替装置。
【請求項10】
請求項7または8に記載のパケット無中断切替装置において、
前記切替指示手段により切り替えられた切替先の第2の経路の受信パケットから切替元の第1の経路の受信パケットに戻す指示を与える切替解除指示手段をさらに設け、
前記遅延制御手段は、前記切替解除指示手段から解除指示が与えられた時点以降に前記切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す毎に与えられる遅延量を所定時間ずつ段階的に減少させる
ことを特徴とするパケット無中断切替装置。
【請求項11】
順序識別子を付加したパケットを複製して複数の経路で送信する送信側と、複数の経路から受信する同一識別子が付加されたパケットの中から早着パケットを選択して下流に転送する受信側とを有するパケット無中断伝送システムで用いられるパケット無中断切替方法において、
前記受信側で下流に転送するパケットを第1の経路の受信パケットから第2の経路の受信パケットに切り替える指示を与える切替指示手順と、
前記切替指示手順から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信されるまでの遅延時間が予め設定した閾値より長い場合に、前記遅延時間が前記閾値以下になるまで切替元の第1の経路のパケットを徐々に遅延させるパケット遅延手順と
を設けたことを特徴とするパケット無中断切替方法。
【請求項12】
請求項11に記載のパケット無中断切替方法において、
前記パケット遅延手順は、
前記切替指示手順から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信するまでの遅延時間を判定する遅延判定手順と、
受信パケットを受信順に一時的に保持して読み出し指令に応じて受信順に受信パケットを読み出す遅延調整メモリと、
前記遅延判定手順が判定した遅延時間が0より大きい場合に、前記遅延時間が0以下になるまで切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を時間に比例して増加させる遅延制御手順と
で構成されることを特徴とするパケット無中断切替方法。
【請求項13】
請求項11に記載のパケット無中断切替方法において、
前記パケット遅延手順は、
前記切替指示手順から指示された時点以降に前記第1の経路から受信するパケットと同一のパケットが前記第2の経路から受信するまでの遅延時間を判定する遅延判定手順と、
受信パケットを受信順に一時的に保持して読み出し指令に応じて受信順に受信パケットを読み出す遅延調整メモリと、
前記遅延判定手順が判定した遅延時間が0より大きい場合に、前記遅延時間が0以下になるまで切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を所定時間ずつ段階的に増加させる遅延制御手順と
で構成されることを特徴とするパケット無中断切替方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載のパケット無中断切替方法において、
前記切替指示手順により切り替えられた切替先の第2の経路の受信パケットから切替元の第1の経路の受信パケットに戻す指示を与える切替解除指示手順をさらに設け、
前記遅延制御手順は、前記切替解除指示手順から解除指示が与えられた時点以降に前記切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す際の遅延量を時間に反比例して減少させる
ことを特徴とするパケット無中断切替方法。
【請求項15】
請求項12または13に記載のパケット無中断切替方法において、
前記切替指示手順により切り替えられた切替先の第2の経路の受信パケットから切替元の第1の経路の受信パケットに戻す指示を与える切替解除指示手順をさらに設け、
前記遅延制御手順は、前記切替解除指示手順から解除指示が与えられた時点以降に前記切替元の第1の経路の受信パケットを前記遅延調整メモリから読み出す毎に与えられる遅延量を所定時間ずつ段階的に減少させる
ことを特徴とするパケット無中断切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−278845(P2010−278845A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130191(P2009−130191)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】