説明

パケット通信装置及びパケット通信システム

【課題】 必要帯域を抑えながら、パケットロスに対する高い耐性を実現できるパケット通信装置を提供する。
【解決手段】 本発明のパケット通信装置は、シーケンス番号が付与された原データRTPパケットを通信周期毎に生成する手段と、生成されたRTPパケットを冗長データRTPパケットとして待機させる手段と、対向装置からの通信パケットにおける到達確認RTPパケットによって到達が確認できた待機中のRTPパケットを削除する手段と、対向装置からの通信パケットにおける原データサブパケット及び冗長データサブパケットのシーケンス番号に基づき、対向装置への到達確認サブパケットを生成する手段と、通信周期毎に、生成された原データRTPパケット及び到達確認RTPパケットとを収め、待機中の冗長データRTPパケットも必要に応じて収めた通信パケットを作成して、対向装置へ送信する手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパケット通信装置及びパケット通信システムに関し、例えば、ファクシミリ(FAX)端末を収容し、インターネット・プロトコル・ネットワーク(以下、IPネットワークと呼ぶ)を介し、インバンド方式にてFAX通信を行うIP−FAXゲートウェイ装置(以下、FAXゲートウェイ装置と呼ぶ)及びそのFAXゲートウェイ装置を含む通信システムに適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
IPネットワークを介してFAX通信を行う方式として、G.711インバンド方式(以下、インバンド方式と呼ぶ)がある。インバンド方式は、G3ファクシミリのモデム信号を音声信号と同様に伝送するものであり、リアルタイム性を重視するため、伝送プロトコルにはUDPを使用する。
【0003】
UDPでは到達確認や再送処理を実施しないため、モデム信号を音声符号化したデータを収めたIPパケットが紛失された場合、受信側で、そのデータを復元することは不可能であり、モデム信号が正しく復調されず、FAX通信がエラー終了する原因となる。
【0004】
パケットロスへの対策として、本データに冗長データを付加して相手に送ることで、仮に1パケットがロスしても、その前後のパケットから、ロスした本データを復元させる手法がある。冗長データの最も単純な例として、本データを挙げることができる。例えば、前に送った本データをそのまま、その後のパケットに冗長データとして付加(リダンダント化)して送信することにより、本データを収めたパケットが失われて受信側に到達できない場合でも、その後のパケットを受信したときに、時系列上、欠落していた本データの部分を冗長データ(冗長の本データ)で補完する。
【0005】
このリダンダントの面数を増やすことで、連続してパケットロスが発生した場合でも、データの復元が可能となる。ここで、リダンダントの面数とは、1つの本データを、冗長データとして用いてパケットに付加する回数を言う。
【0006】
図8は、リダンダント面数が4の場合における、パケットに収められているデータの構成及び送受信されるパケットの時系列を示す説明図である。図8において、パケットPK(n−4)〜PKnで、本データとして収められたデータ部分をそれぞれ、「1」〜「5」で表わしている。パケットPKnがIPネットワーク上で紛失されることなく、受信側に到達したときには、データ「5」が初めて取り込まれる。送信側は、次のパケットPK(n+1)では、新たなデータ部分「6」を本データとして収めると共に、リダンダント面数だけ前のパケットPK(n−3)以降のパケットPK(n−3)〜PKnにおける本データ「2」〜「5」を冗長データとして追加する。パケットPK(n+2)〜PK(n+4)も、同様な処理により、本データと冗長データとを含むように構築されて送信される。パケットPKn〜PK(n+4)のうち、パケットPK(n+2)及びPK(n+3)がIPネットワーク上で紛失され受信側に到達できなかったが、その後のパケットPK(n+4)が受信側に到達できたとする。このとき、受信側は、パケットPK(n+4)における本データ「9」を取り込むと共に、パケットPK(n+4)における冗長データの中から、到達できなかったパケットPK(n+2)及びPK(n+3)における本データ「7」及び「8」も取り込む。
【0007】
特許文献1には、受信するパケットのシーケンス番号を監視することにより、パケットロスの発生を検知してネットワーク状態の良否を予測し、あるいは、FAX送信を開始する前に通信相手にpingを送出し、そのリプライの有無によりネットワーク状態の良否を予測し、予測したネットワーク状態がパケットロスの可能性が低いと判断される場合にリダンダント面数を少なくするようにリダンダント面数を調整して、帯域を節約することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−86397
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
リダンダント面数を増やすほどパケットロスに対する耐性が強くなる。しかしながら、FAX通信に係るインバンド方式の場合、G.711のコーデック(CODEC)を使用するため、本データについての帯域は64kbpsであり、リダンダント面数がnであれば単純にn倍の帯域がリダンダントのために必要となる。パケットロスがない状況では、冗長データは有効に機能していないので、このような状況では、多くの帯域を浪費しているということもできる。
【0010】
上述したように、特許文献1では、ネットワーク状態に応じた帯域の節約方法を示している。しかしながら、ネットワーク状態を予測してリダンダント面数を切り替えているいため、良好なネットワーク状態から急に状態が悪化した場合には、必要なリダンダント面数を確保できず、リダンダント化が有効に機能しないことも生じてしまう。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑みなされたものであり、必要帯域を抑えながら、パケットロスに対する高い耐性を実現できるパケット通信装置及びパケット通信システムを提供しようとしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の本発明のパケット通信装置は、(1)原データを収めた、シーケンス番号が付与された原データサブパケットを通信パケットの通信周期毎に生成する原データサブパケット生成手段と、(2)生成された上記原データサブパケットを、冗長送信のために冗長データサブパケットとして待機させる待機手段と、(3)対向するパケット通信装置が送信し、当該パケット通信装置が受信した通信パケットにおける原データサブパケット及び冗長データサブパケットのシーケンス番号を含む、対向するパケット通信装置へ送信する到達確認サブパケットを生成する到達確認サブパケット生成手段と、(4)上記通信周期毎に、上記原データサブパケット生成手段が生成した原データサブパケットと、上記到達確認サブパケット生成手段が生成した到達確認サブパケットとを収めた通信パケットであって、上記待機手段によって待機されている冗長データサブパケットが収められることもあり得る通信パケットを作成して、対向するパケット通信装置へ宛てて送信するパケット作成・送信手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第2の本発明のパケット通信システムは、2つの第1の本発明のパケット通信装置が、パケット通信網を介して通信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、必要帯域を抑えながら、パケットロスに対する高い耐性を実現できるパケット通信装置及びパケット通信システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態のFAXゲートウェイ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】対向する第1の実施形態のFAXゲートウェイ装置間で授受するIPパケットの構成を示す説明図である。
【図3】第1の実施形態のFAXゲートウェイ装置の動作説明に用いるIPパケット例を示す説明図である。
【図4】第1の実施形態の通信システムの構成要素である、2つのFAXゲートウェイ装置がそれぞれ、各タイミングで授受するRTPパケットを示す説明図である。
【図5】第2の実施形態のFAXゲートウェイ装置の構成を示すブロック図である。
【図6】第2の実施形態の通信システムの構成要素である、2つのFAXゲートウェイ装置がそれぞれ、各タイミングで授受するRTPパケットを示す説明図(その1)である。
【図7】第2の実施形態の通信システムの構成要素である、2つのFAXゲートウェイ装置がそれぞれ、各タイミングで授受するRTPパケットを示す説明図(その2)である。
【図8】従来のリダンダント化方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(A)第1の実施形態
以下、本発明によるパケット通信装置及びパケット通信システムの第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第1の実施形態のパケット通信装置は、FAXゲートウェイ装置である。第1の実施形態のパケット通信システムは、2つの第1の実施形態のFAXゲートウェイ装置が対向する通信システムである。
【0017】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態のFAXゲートウェイ装置の構成を示すブロック図である。第1の実施形態のFAXゲートウェイ装置は、専用装置として構成されたものであっても良く、また、電話回線の接続端子を有するパソコン等の情報処理装置に、所定のプログラムを搭載することによって構成されたものであっても良いが、機能的には、図1で表わすことができる。
【0018】
図1において、第1の実施形態のFAXゲートウェイ装置10は、G3ファクシミリ機(以下、G3FAX機と呼ぶ)を収容し、そのG3FAX機をIPネットワークに接続させる装置である。
【0019】
FAXゲートウェイ装置10は、図示は省略しているが、IPネットワークを介して、同種のFAXゲートウェイ装置と対向するものである(以下、対向側のFAXゲートウェイ装置に対しては符号「10A」を用いて、符号上、区別するものとする)。
【0020】
インバンド方式では、対向する両装置(例えばFAXゲートウェイ装置10、10A)の双方で、同一の一定間隔で、定期的に定量のデータを送信する動作モードがある。第1の実施形態のFAXゲートウェイ装置10は、このような動作モードの動作を実行できるものである。
【0021】
FAXゲートウェイ装置10は、IPパケット受信処理部11、リダンダント分解部12、受信バッファ部13、CODEC部14、FAXインタフェース部15、到達確認データ処理部16、RTPデータ生成部17、一時待機部18、送信待機部19、受信パケット情報付加部20及びIPパケット送信処理部21を有する。
【0022】
図2は、対向するFAXゲートウェイ装置10及び10A間で授受するIPパケット(FAX−IPパケットと呼ぶこともある)の構成を示す説明図である。
【0023】
FAX−IPパケットは、IPヘッダと、IPパケットとしてのデータ部に収められているUDPパケットとでなる。このUDPパケットは、UDPヘッダと、UDPパケットとしてのデータ部に収められている複数種類のRTPパケットとでなる。複数種類のRTPパケットは、本データ用RTPパケットRTP1、冗長データ用RTPパケットRTP2、到達確認データ用RTPパケットRTP3である。冗長データ用RTPパケットRTP2は、後述する一時待機部18に待機されている分(リダンダント面数の最大値以下)だけUDPパケットに収められるものである。図2は、2つの冗長データ用RTPパケットRTP2−1、RTP2−2がUDPパケットに収められている場合を示している。
【0024】
以下では、本データ用RTPパケット及び冗長データ用RTPパケットを音声用RTPパケットと呼ぶこともある。
【0025】
IPパケット受信処理部11は、IPネットワークから当該FAXゲートウェイ装置10に到達したIPパケットを分解するなど受信処理し、抽出したUDPパケットをリダンダント分解部12へ与えるものである。
【0026】
リダンダント分解部12は、UDPパケットを各音声用RTPパケットと、到達確認データ用RTPパケットに分解するものである。得られた音声用RTPパケットは、リダンダント分解部12から受信バッファ部13に与えられ、得られた到達確認データ用RTPパケットは、リダンダント分解部12から到達確認データ処理部16に与えられる。また、リダンダント分解部12は、受信した本データ用RTPパケット及び冗長データ用RTPパケットのシーケンス番号を抽出して受信パケット情報付加部20へ与えるものである。
【0027】
受信バッファ部13は、音声用RTPパケットにおけるRTPヘッダのシーケンス番号に従い、音声用RTPパケットに収められている音声データ(符号化音声データ)の時系列上の位置を確認しつつ、その音声データの部分が内蔵するバッファに格納されていなければそのバッファの所定位置に格納する。ここで、音声データのバッファへの格納では、時系列上の位置を表す情報としてシーケンス番号も格納される。音声用RTPパケットには、本データ用RTPパケットと冗長データ用RTPパケットとが含まれているが、冗長データ用RTPパケットに収められている冗長データ(前の音声データ)は、既に受信できている可能性が高い。受信バッファ部13は、冗長データのシーケンス番号が既にバッファに格納されている場合には、その冗長データを追加して格納することなく廃棄する。
【0028】
CODEC部14(の復号部)は、定期的に受信バッファ部13から、格納されている音声データを取り出して復号処理し、音声信号(アナログ信号;正しくはモデム信号)を復元するものである。また、CODEC部14(の符号化部)は、FAXインタフェース部15を介して、G3FAX機から与えられた音声信号(モデム信号)を音声符号化して音声データ(符号化音声データ)に変換し、RTPデータ生成部17に与えるものである。
【0029】
FAXインタフェース部15は、CODEC部14から出力された音声信号(モデム信号)をG3FAX機に与えるものである。また、FAXインタフェース部15は、G3FAX機から与えられた音声信号(モデム信号)をCODEC部14に与えるものである。
【0030】
到達確認データ処理部16には、上述したように、リダンダント分解部12から出力された到達確認データ用RTPパケットが与えられる。到達確認データ用RTPパケットにおけるデータ部分に挿入されている到達確認データには、対向するFAXゲートウェイ装置10Aが受信したRTPパケットのシーケンス番号が含まれており、到達確認データ処理部16は、到達確認データ用RTPパケットのデータ部分に挿入されているシーケンス番号の情報を抽出して送信待機部19に与えるものである。
【0031】
RTPデータ生成部17は、CODEC部14から与えられた符号化音声データを、パケットのデータ部分に挿入した音声用RTPパケットを生成し、一時待機部18及びIPパケット送信処理部21に与えるものである。後述するように、一時待機部18に与えられた音声用RTPパケットは冗長データ用RTPパケットになり、IPパケット送信処理部21に与えられたRTPパケットは本データ用RTPパケットになるものである。
【0032】
一時待機部18は、RTPデータ生成部17によって生成された音声用RTPパケットを、冗長データ用RTPパケットとしてバッファリングするものである。一時待機部18は、例えば、少なくともリダンダント面数に応じた期間(リダンダント面数+1のIPパケットの送出に要する期間)だけ、与えられた音声用RTPパケット(冗長データ用RTPパケット)をバッファリングすることができる容量を有しているものである。
【0033】
送信待機部19は、IPパケット送信処理部21からIPパケットが送信される毎に、一時待機部18から冗長データ用RTPパケットを取り出し、IPパケット(UDPパケット)における冗長部の構成(1又は複数の冗長データ用RTPパケットでなる)を作成し、送信に向けて作成した冗長部データを待機させるものである。また、送信待機部19は、冗長部データの待機中に、到達確認データ処理部16から到達確認されたシーケンス番号の情報(到達確認データ用RTPパケットのデータ部に盛り込まれていたシーケンス番号情報)を受け取った場合において、該当するシーケンス番号の冗長データ用RTPパケットが一時待機部18にあると、そのRTPデータを一時待機部18から即座に削除するものである。ここで、この第1の実施形態とは異なるが、一時待機部18からの削除に並行して、冗長部データからも、その冗長データ用RTPパケットを除外するようにしても良い。
【0034】
受信パケット情報付加部20は、リダンダント分解部12から与えられた、当該FAXゲートウェイ装置10が受信した本データ用RTPパケット及び冗長データ用RTPパケットのシーケンス番号情報を、データ部分に含む到達確認データ用RTPパケットを作成して、IPパケット送信処理部21へ与えるものである。
【0035】
IPパケット送信処理部21は、所定周期の送信タイミングに合わせて、送信待機部19から待機中の冗長部データ(1又は複数の冗長データ用RTPパケット)を取り出し、RTPデータ生成部17から与えられた本データ用RTPパケットと、送信待機部19から取り出した冗長データ用RTPパケットと、受信パケット情報付加部20から与えられた到達確認データ用RTPパケットとを一緒にカプセル化したUDPパケットを形成した後、さらに、図2に示す構成のIPパケットを形成してIPネットワークへ送信するものである。
【0036】
ここで、リダンダント面数の最大値mを設定しておいた場合には、IPパケット送信処理部21は、送信待機部19から待機中の冗長部データ(RTPパケット)を取り出す際に、送信待機部19に待機しているRTPパケットの数がmよりも大きいときには、mを超えた数のRTPパケットであって、シーケンス番号の若い側(待機の開始時刻が古い側)のRTPパケットを送信待機部19から削除し、残りの待機RTPパケットを取り出すようにすれば良い。
【0037】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態のFAXゲートウェイ装置10における動作を説明する。以下では、図3(A)に示す冗長データ用RTPパケットが1つだけ収められているIPパケットを受信した時点からの一連の動作(パケット受信及びパケット送信)を説明する。
【0038】
図3(A)に示すIPパケットは、本データ用RTPパケットはシーケンス番号が「10」のRTPパケットであり、冗長データ用RTPパケットはシーケンス番号が「9」のRTPパケットであり、到達確認データ用RTPパケットRTP3には、対向するFAXゲートウェイ装置10Aが、当該FAXゲートウェイ装置10が送信したシーケンス番号「101」及び「100」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す情報が盛り込まれている。
【0039】
FAXゲートウェイ装置10に到来した図3(A)に示すIPパケットは、IPパケット受信処理部11によって受信処理され、抽出されたUDPパケット(IPパケットからIPヘッダを除去した部分)はリダンダント分解部12に与えられる。
【0040】
リダンダント分解部12において、UDPパケットは、本データ用RTPパケットRTP1、冗長データ用RTPパケットRTP2、到達確認データ用RTPパケットRTP3に分解される。本データ用RTPパケットRTP1及び冗長データ用RTPパケットRTP2に記述されているシーケンス番号の情報が、リダンダント分解部12から受信パケット情報付加部20へ伝えられる。図3のIPパケットの場合であれば、“シーケンス番号10,9の音声データ用RTPパケットの受信”の情報が受信パケット情報付加部20に伝えられる。
【0041】
リダンダント分解部12による分解処理で抽出された本データ用RTPパケットRTP1及び冗長データ用RTPパケットRTP2は、受信バッファ部13でバッファリングされた後、シーケンス番号順にCODEC部14に送られ、CODEC部14によって復号され、音声信号(アナログ信号;正しくはモデム信号)が復元され、FAXインタフェース部15を介して、G3FAX機に伝送される。なお、既に受信バッファ部13に、同じシーケンス番号のRTPパケットデータが格納されていた場合には、受信バッファ部13には格納されずに廃棄される。このように廃棄される可能性があるRTPパケットは、冗長データ用RTPパケットRTP2である。
【0042】
到達確認データ処理部16には、リダンダント分解部12から到達確認データ用RTPパケットRTP3が与えられる。図3(A)に示す到達確認データ用RTPパケットRTP3は、対向するFAXゲートウェイ装置10Aで、当該FAXゲートウェイ装置10が送信したシーケンス番号「101」、「100」の音声データ用RTPパケットを受信したという情報を含んでおり、この“シーケンス番号101,100の音声データ用RTPパケットの受信”の情報は、到達確認データ処理部16から送信待機部19に与えられる。
【0043】
一方、G3FAX機から送信されたアナログ信号は、FAXインタフェース部15で受信されてCODEC部14に引き渡され、CODEC部14において音声符号化処理が施され、符号化音声データがRTPデータ生成部17に与えられる。そして、RTPデータ生成部17によって、符号化音声データを収めたRTPパケットが生成され、生成されたRTPパケットは、IPパケット送信処理部21と一時待機部18に与えられる。ここで、生成されるRTPパケットは、シーケンス番号が「103」のものである(なお、シーケンス番号が「102」のRTPパケットは1タイミング前に生成されて一時待機部18に格納されている)。
【0044】
送信待機部19では、前のIPパケットを送信したタイミングでシーケンス番号が「102」のRTPパケットを一時待機部18から取り込み、さらに、その前のIPパケットを送信したタイミングでシーケンス番号が「101」のRTPパケットを一時待機部18から取り込んでおり、それぞれ待機させている。
【0045】
この状態において、到達確認データ処理部16から、“シーケンス番号101,100の音声データ用RTPパケットの受信”の情報が送信待機部19に与えられると、送信待機部19によって、シーケンス番号101の音声データ用RTPパケット及びシーケンス番号100の音声データ用RTPパケットが一時待機部18から削除される。なお、前の到達確認データ用RTPパケットRTP3の受信時において、シーケンス番号100の音声データ用RTPパケットが一時待機部18から既に削除されているので、シーケンス番号100の音声データ用RTPパケットだけが、今回、一時待機部18から削除される。
【0046】
受信パケット情報付加部20においては、リダンダント分解部12より伝えられた“シーケンス番号10,9の音声データ用RTPパケットの受信”の情報に基づき、これらRTPパケットの到達確認データ用RTPパケットRTP3が生成され、IPパケット送信処理部11へ与えられる。
【0047】
IPパケット送信処理部11においては、送信タイミングになる前に既にRTPデータ生成部17から与えられている本データ用RTPパケットRTP1(シーケンス番号は103)と、送信タイミングになる前に既に受信パケット情報付加部20から与えられている到達確認データ用RTPパケットRTP3と、送信タイミングになった時点で一時待機部18に待機されている冗長データ用RTPパケットRTP1(シーケンス番号は102)とから、UDPパケットが組み立てられ、さらに、IPヘッダが付与されて、図3(B)に示すIPパケットが作成されて、対向するFAXゲートウェイ装置10Aに宛てて送信される。
【0048】
次に、第1の実施形態の通信システムにおける動作を、図4を参照しながら説明する。
【0049】
図4は、第1の実施形態の通信システムの構成要素である、2つのFAXゲートウェイ装置10及び10Aがそれぞれ、各タイミングで授受するRTPパケットを示す説明図である。図4の右側はFAXゲートウェイ装置10が授受するRTPパケットを示し、図4の左側はFAXゲートウェイ装置10Aが授受するRTPパケットを示している。2つのFAXゲートウェイ装置10及び10Aは、一定間隔で定期的に送信を実行している(図4は同期送信の場合を示している)。図4は、リダンダント面数の最大値mが3に設定されている場合である。図4において、「−」はその冗長データ用RTPパケットが送信されないことを表している。なお、送信省略に代えて、オール「0」若しくはオール「1」などのダミーデータ(無意味なRTPパケット)を送信するようにしても良い。
【0050】
タイミングTM10において、FAXゲートウェイ装置10は、シーケンス番号が「100」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号が「99」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1と、シーケンス番号「8」及び「9」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とを、対向するFAXゲートウェイ装置10Aに送信し、対向するFAXゲートウェイ装置10Aは、シーケンス番号が「10」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号が「9」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1と、シーケンス番号「98」及び「99」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とを、当該FAXゲートウェイ装置10に送信し、いずれも相手方のFAXゲートウェイ装置10A、10に到達したとする。
【0051】
FAXゲートウェイ装置10は、シーケンス番号「98」及び「99」の到達確認を受け取ったので、次のタイミングTM11での送信前に、これらシーケンス番号「98」及び「99」のRTPパケットを一時待機部18から削除し、これにより、前のタイミングTM9(図4では記載が省略されている)の送信以降に一時待機部18に格納されたシーケンス番号「100」のRTPパケットだけが一時待機部18に残る。そのため、タイミングTM11においては、FAXゲートウェイ装置10は、シーケンス番号が「101」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号が「100」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1と、シーケンス番号「9」及び「10」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とを、対向するFAXゲートウェイ装置10Aに送信する。対向するFAXゲートウェイ装置10Aも、同様な処理を行い、タイミングTM11での送信を行う。
【0052】
このタイミングTM11のいずれの方向の送信パケットも、相手方のFAXゲートウェイ装置10A、10に到達したとする。そのため、FAXゲートウェイ装置10、10A共に、正常受信時の動作を行い、次のタイミングTM12でのパケット送信を行うことになる。
【0053】
対向するFAXゲートウェイ装置10Aが、タイミングTM12で送信したシーケンス番号が「12」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号が「11」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1と、シーケンス番号「100」及び「101」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とが、FAXゲートウェイ装置10に到達しなかったとする(パケットロスがあったとする)。FAXゲートウェイ装置10は、シーケンス番号「100」及び「101」の到達確認を受け取れないので、次のタイミングTM13での送信前に、到達確認に伴う一時待機部18からのRTPパケットの削除を実行せず、一時待機部18にはシーケンス番号「102」及び「101」のRTPパケットが残る。そのため、タイミングTM13においては、FAXゲートウェイ装置10は、シーケンス番号が「103」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号が「102」及び「101」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1及びRTP2−2とを、対向するFAXゲートウェイ装置10Aに送信する。この際、到達確認データ用RTPパケットRTP3は送信しない。若しくは、いずれのRTPパケットを受信していないことを表す空の到達確認データ用RTPパケットRTP3を送信する。一方、対向するFAXゲートウェイ装置10Aは、正常受信時の動作を行い、タイミングTM13でのパケット送信を行うことになる。
【0054】
対向するFAXゲートウェイ装置10Aが、タイミングTM13で送信したシーケンス番号が「13」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号が「12」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1と、シーケンス番号「101」及び「102」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とが、FAXゲートウェイ装置10に到達しなかったとする(パケットロスがあったとする)。FAXゲートウェイ装置10は、シーケンス番号「101」及び「102」の到達確認を受け取れないので、次のタイミングTM14での送信前に、到達確認に伴う一時待機部18からのRTPパケットの削除を実行せず、一時待機部18にはシーケンス番号「103」〜「101」のRTPパケットが残る。そのため、タイミングTM14においては、FAXゲートウェイ装置10は、シーケンス番号が「104」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号が「103」〜「101」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1〜RTP2−3と、いずれのRTPパケットを受信していないことを表す空の到達確認データ用RTPパケットRTP3とを、対向するFAXゲートウェイ装置10Aに送信する。
【0055】
一方、対向するFAXゲートウェイ装置10Aは、パケットを受信できたので、受信時の動作を行う。但し、FAXゲートウェイ装置10がタイミングTM13で送信した到達確認データ用RTPパケットRTP3は空値であるため、一時待機部18からの削除を実行しない。そのため、タイミングTM14においては、対向するFAXゲートウェイ装置10Aは、シーケンス番号が「14」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号が「13」及び「12」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1及びRTP2−2と、いずれのRTPパケットを受信していないことを表す空の到達確認データ用RTPパケットRTP3とを、FAXゲートウェイ装置10に送信する。
【0056】
対向するFAXゲートウェイ装置10Aが、タイミングTM14で送信したパケットを受信できたので、FAXゲートウェイ装置10は、次のタイミングTM15での送信前に、到達確認できたシーケンス番号「101」〜「103」のRTPパケットを一時待機部18から削除しようとし、これにより、前のタイミングTM13の送信以降に一時待機部18に格納されたシーケンス番号「104」のRTPパケットだけが一時待機部18に残る。そのため、タイミングTM15においては、FAXゲートウェイ装置10は、シーケンス番号が「105」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号が「104」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1と、シーケンス番号「14」〜「12」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とを、対向するFAXゲートウェイ装置10Aに送信する。
【0057】
一方、対向するFAXゲートウェイ装置10Aは、パケットを受信できたので、受信時の動作を行う。但し、FAXゲートウェイ装置10がタイミングTM14で送信した到達確認データ用RTPパケットRTP3は空値であるため、一時待機部18からの削除を実行しない。そのため、タイミングTM15においては、対向するFAXゲートウェイ装置10Aは、シーケンス番号が「15」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号が「14」〜「12」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1〜RTP2−3と、シーケンス番号「101〜「104」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とを、FAXゲートウェイ装置10に送信する。
【0058】
タイミングTM16以降は、FAXゲートウェイ装置10及び10Aに、正常にパケットが到達し、しかも、一時待機部18の格納状態も正常時での格納状態となるので、FAXゲートウェイ装置10及び10Aは共に、正常時の送信動作を行う。
【0059】
(A−3)第1の実施形態の効果
インバンド方式の装置の中には、対向する双方の装置で、同一の一定間隔で定期的に定量のデータを送信する動作モードがある。
【0060】
第1の実施形態では、この特徴を利用し、FAXモデム信号を音声符号化したデータが送信されているパケットに、対向する装置が送信し当該装置が受信したデータの情報(シーケンス番号)をカプセル化して一緒に送信することにより、定期的に受信できたデータの情報を、定期的に相手に伝達することができる。すなわち、相手側のFAXゲートウェイ装置で受信できた音声データ用RTPパケットを送信側で確認することができ、確認したRTPパケットが、次に送信しようとして待機させているRTPパケットに含まれている場合には、その時点で削除することにより、余分なRTPパケット(冗長データ)の送信をなくすことができる。第1の実施形態によれば、通常、パケットロスがない状態では、冗長データは1面のみ付加され、パケットロスが発生した場合のみ、動的に冗長データの面数を増やし、ロスしたデータの復元を可能にすることができる。
【0061】
以上のように、第1の実施形態によれば、必要帯域を抑えながら、パケットロスに対する高い耐性を実現できるFAXゲートウェイ装置及びパケット通信システムを提供できる。
【0062】
(B)第2の実施形態
次に、本発明によるパケット通信装置及びパケット通信システムの第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第2の実施形態のパケット通信装置はFAXゲートウェイ装置であり、第2の実施形態のパケット通信システムは、2つの第2の実施形態のFAXゲートウェイ装置が対向する通信システムである。
【0063】
図5は、第2の実施形態のFAXゲートウェイ装置の構成を示すブロック図であり、第1の実施形態に係る図1との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
【0064】
図5及び図1の比較から明らかなように、第2の実施形態のFAXゲートウェイ装置30は、一時待機部が、第1の一次待機部18−1と第2の一次待機部18−2が縦続的に接続されている2段構成となっている点が、第1の実施形態と異なっており、その他は、第1の実施形態と同様である。
【0065】
第1の一次待機部18−1は、RTPデータ生成部17によって生成されたRTPパケットが与えられて、冗長データ用として待機するものである。
【0066】
第2の一次待機部18−2は、送信待機部19によって、自己が待機していたRTPパケットが取出されたときに、第1の一次待機部18−1に待機されたRTPパケットを取出して、自己が待機するものである。
【0067】
第2の実施形態の場合、G3FAX機から当該FAXゲートウェイ装置30に送信されたアナログ信号(の情報)は、以下のようにして、対向するFAXゲートウェイ装置(以下、符号として30Aを用いる)送信される。
【0068】
G3FAX機から送信されたアナログ信号は、FAXインタフェース部15で受信されてCODEC部14に引き渡され、CODEC部14において音声符号化処理が施され、符号化音声データがRTPデータ生成部17に与えられる。そして、RTPデータ生成部17によって、符号化音声データを収めたRTPパケットが生成され、生成されたRTPパケットは、IPパケット送信処理部21と第1の一時待機部18−1に与えられる。送信待機部19では、IPパケット送信処理部21からIPパケットが送信される毎に、第2の一時待機部18−2から冗長データ用RTPパケットを取り出し、第2の一時待機部18−2は、冗長データ用RTPパケットが取り出された直後に、第1の一時待機部18−1から、冗長データ用RTPパケットを取り出す。このような2段の構成により、第1の実施形態の場合より、冗長データ用RTPパケットが送信待機部19に渡るまでに、1パケット送信分だけタイミングが遅くなる。その他の動作は、第1の実施形態と同様である。
【0069】
次に、第2の実施形態の通信システムにおける動作を、図6、図7を参照しながら説明する。図6は、パケットロスが生じない場合を示しており、図7は、パケットロスが生じた場合を示している。
【0070】
図6及び図7は、第2の実施形態の通信システムの構成要素である、2つのFAXゲートウェイ装置30及び30Aがそれぞれ、各タイミングで授受するRTPパケットを示す説明図である。図6及び図7の右側はFAXゲートウェイ装置30が授受するRTPパケットを示し、図6及び図7の左側はFAXゲートウェイ装置30Aが授受するRTPパケットを示している。
【0071】
図6のタイミングTM20において、FAXゲートウェイ装置30は、シーケンス番号が「100」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号「9」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とを、対向するFAXゲートウェイ装置30Aに送信し、対向するFAXゲートウェイ装置30Aは、シーケンス番号が「10」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号「99」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とを、当該FAXゲートウェイ装置10に送信し、いずれも相手方のFAXゲートウェイ装置30A、30に到達したとする。
【0072】
タイミングTM20の送信直後には、FAXゲートウェイ装置30の送信待機部19は、第2の一時待機部18−2からRTPパケットを取り込み、第2の一時待機部18−2は第1の一時待機部18−1からRTPパケットの取込みを行う。これにより、第2の一時待機部18−2にはシーケンス番号が「100」のRTPパケットが待機される。対向するFAXゲートウェイ装置30AがタイミングTM20で送信した到達確認データ用RTPパケットRTP3は、シーケンス番号「99」の音声データ用RTPパケットの到達を示しているので、送信待機部19は自己が待機しているシーケンス番号「99」の音声データ用RTPパケットを削除する。この時点では、送信待機部19及び第1の一時待機部18−1には冗長データ用RTPパケットがなんら待機されておらず、第2の一時待機部18−2だけにシーケンス番号「100」の音声データ用RTPパケットが待機されていることになる。
【0073】
そのため、FAXゲートウェイ装置30は、タイミングTM21の送信では、シーケンス番号が「101」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号「10」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とを、対向するFAXゲートウェイ装置30Aに送信し、何らの冗長データ用RTPパケットも送信しない。
【0074】
FAXゲートウェイ装置30は、パケットロスがなければ、以上のような動作を繰り返す。また、対向するFAXゲートウェイ装置30Aも、上述と同様な動作を実行する。
【0075】
図7のタイミングTM22において、FAXゲートウェイ装置30は、シーケンス番号が「102」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号「11」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とを、対向するFAXゲートウェイ装置30Aに送信し、対向するFAXゲートウェイ装置30Aは、シーケンス番号が「12」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号「101」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とを、当該FAXゲートウェイ装置10に送信する。FAXゲートウェイ装置30が送信したパケットは対向するFAXゲートウェイ装置30Aに到達したが、対向するFAXゲートウェイ装置30Aが送信したパケットはFAXゲートウェイ装置30に到達しなかったとする(パケットロスが生じたとする)。
【0076】
FAXゲートウェイ装置30において、タイミングTM22での送信の直後に、送信待機部19は、第2の一時待機部18−2からRTPパケット(シーケンス番号が「101」のパケット)を取り込み、第2の一時待機部18−2は、第1の一時待機部18−1からRTPパケット(シーケンス番号が「102」のパケット)の取込みを行う。対向するFAXゲートウェイ装置30AがタイミングTM22で送信した到達確認データ用RTPパケットRTP3が到達しないので、FAXゲートウェイ装置30は、タイミングTM23では、シーケンス番号「103」の本データ用RTPパケットRTP1と、到達確認できない送信待機部19が待機しているシーケンス番号「101」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1とを送信する。対向するFAXゲートウェイ装置30AがタイミングTM22で送信したパケットは到達しなかったので、タイミングTM23では、到達確認データ用RTPパケットRTP3は送信されない。
【0077】
一方、対向するFAXゲートウェイ装置30Aにおいて、タイミングTM23でも、通常の送信動作が実行される。すなわち、対向するFAXゲートウェイ装置30Aは、シーケンス番号が「13」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号「102」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とを、当該FAXゲートウェイ装置10に送信する。この対向するFAXゲートウェイ装置30Aが送信したパケットも、FAXゲートウェイ装置30に到達しなかったとする(パケットロスが連続して生じたとする)。
【0078】
FAXゲートウェイ装置30において、タイミングTM23での送信の直後に、送信待機部19は、第2の一時待機部18−2からRTPパケット(シーケンス番号が「102」のパケット)を取り込み、第2の一時待機部18−2は、第1の一時待機部18−1からRTPパケット(シーケンス番号が「103」のパケット)の取込みを行う。今回の取込みにより、送信待機部19には、シーケンス番号が「101」及び「102」のパケットが待機されている。FAXゲートウェイ装置30には、対向するFAXゲートウェイ装置30AがタイミングTM23で送信した到達確認データ用RTPパケットRTP3が到達しないので、FAXゲートウェイ装置30は、タイミングTM24では、シーケンス番号「104」の本データ用RTPパケットRTP1と、到達確認できない送信待機部19が待機しているシーケンス番号「102」及び「101」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1及びRTP2−2とを送信する。対向するFAXゲートウェイ装置30AがタイミングTM23で送信したパケットは到達しなかったので、タイミングTM24では、到達確認データ用RTPパケットRTP3は送信されない。
【0079】
一方、対向するFAXゲートウェイ装置30Aは、タイミングTM24では、FAXゲートウェイ装置30がタイミングTM23で送信したパケットに到達確認データ用RTPパケットRTP3が含まれていないため、シーケンス番号が「14」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号が「12」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1と、シーケンス番号「103」及び「101」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とを、当該FAXゲートウェイ装置10に送信する。この対向するFAXゲートウェイ装置30Aが送信したパケットは、FAXゲートウェイ装置30に到達したとする。
【0080】
FAXゲートウェイ装置30において、タイミングTM24での送信の直後に、送信待機部19は、第2の一時待機部18−2からRTPパケット(シーケンス番号が「103」のパケット)を取り込み、第2の一時待機部18−2は、第1の一時待機部18−1からRTPパケット(シーケンス番号が「104」のパケット)の取込みを行う。今回の取込みにより、送信待機部19には、シーケンス番号が「101」〜「103」のパケットが待機されている。FAXゲートウェイ装置30に、対向するFAXゲートウェイ装置30AがタイミングTM24で送信した到達確認データ用RTPパケットRTP3が到達すると、到達確認できたシーケンス番号が「101」及び「103」のパケットが送信待機部19から削除される。その結果、FAXゲートウェイ装置30は、タイミングTM25では、シーケンス番号「105」の本データ用RTPパケットRTP1と、到達確認できない送信待機部19が待機しているシーケンス番号「102」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1と、シーケンス番号「12」及び「14」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とを送信する。
【0081】
詳細は省略するが、対向するFAXゲートウェイ装置30Aは、タイミングTM25では、シーケンス番号が「15」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号が「13」及び「12」の冗長データ用RTPパケットRTP2−1及びRTP2−2と、シーケンス番号「104」、「102」及び「101」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とをFAXゲートウェイ装置10に送信する。この対向するFAXゲートウェイ装置30Aが送信したパケットは、FAXゲートウェイ装置30に到達したとする。
【0082】
FAXゲートウェイ装置30において、タイミングTM25での送信の直後に、送信待機部19は、第2の一時待機部18−2からRTPパケット(シーケンス番号が「104」のパケット)を取り込み、第2の一時待機部18−2は、第1の一時待機部18−1からRTPパケット(シーケンス番号が「105」のパケット)の取込みを行う。今回の取込みにより、送信待機部19には、シーケンス番号が「102」及び「104」のパケットが待機されている。FAXゲートウェイ装置30に、対向するFAXゲートウェイ装置30AがタイミングTM25で送信した到達確認データ用RTPパケットRTP3が到達すると、到達確認できたシーケンス番号が「101」、「102」及び「104」のパケットが送信待機部19から削除される(但し、「101」は既に存在しないので削除できない)。その結果、FAXゲートウェイ装置30は、タイミングTM26では、シーケンス番号「106」の本データ用RTPパケットRTP1と、シーケンス番号「12」、「13」及び「15」の音声データ用RTPパケットを受信したことを表す到達確認データ用RTPパケットRTP3とを送信する。
【0083】
以下、同様な処理が、FAXゲートウェイ装置30及び30Aで繰り返され、FAXゲートウェイ装置30及び30Aは共に、正常時の送信動作を行う状態に戻る。
【0084】
以上のような動作により、パケットロスがない状態では、冗長データ用RTPパケットは本データ用RTPパケットに付加されない。パケットロスが発生した場合には、動的に冗長データ(冗長データ用RTPパケット)の面数を増減させながら、ロスしたデータの復元を可能にしている。
【0085】
(B−3)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によれば、冗長データ用RTPパケットが送信待機部19に渡るまでのタイミングを遅らせることにより、本データ用RTPパケットに付加される冗長データ用RTPパケットを極力抑えることができる。
【0086】
因みに、第1の実施形態では、パケットロスが発生しない場合でも、到達確認が与えられるまでのタイムラグにより、本データ用RTPパケットに1個の冗長データ用RTPパケット(一面の冗長データ)が付加されていた。
【0087】
以上のように、第2の実施形態によっても、必要帯域を抑えながら、パケットロスに対する高い耐性を実現できるFAXゲートウェイ装置及びパケット通信システムを提供できる。
【0088】
(C)他の実施形態
上記各実施形態では、UDPパケット内に、本データ用RTPパケット、冗長データ用RTPパケット、到達確認データ用RTPパケットがこの順に挿入されているものを示したが、これら3種類のRTPパケットの順序はこれに限定されるものではない。
【0089】
また、上記各実施形態では、FAXゲートウェイ装置がG3FAX機を収容したものを示したが、スーパーG3FAX機など他のFAX機を収容するものであっても良い。また、FAXゲートウェイ装置が複数のG3FAX機を収容し、選択されたいずれか1つのG3FAX機の通信に介在するものであっても良い。
【0090】
さらに、上記各実施形態では、FAXゲートウェイ装置が個別装置のものを示したが、FAXゲートウェイ装置とG3FAX機とが1装置として融合されたものであっても良い。
【0091】
上記各実施形態の説明では、2つのFAXゲートウェイ装置が符号化音声データを送信し合うように説明したが、一方向だけ符号化音声データを送信する場合にも、本発明を適用しても良い。例えば、送信元のFAXゲートウェイ装置は、本データ用RTPパケット及び冗長データ用RTPパケットが収められたUDPパケットを送信し、宛先のFAXゲートウェイ装置は、到達確認データ用RTPパケットだけが収められたUDPパケットを送信するようにすれば良い。
【0092】
また、上記各実施形態では、通信に供している信号がファクシミリ信号(G3ファクシミリのモデム信号)の場合を示したが、ファクシミリ信号以外の信号であっても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
10、10A、30、30A…FAXゲートウェイ装置、11…IPパケット受信処理部、12…リダンダント分解部、13…受信バッファ部、14…CODEC部、15…FAXインタフェース部、16…到達確認データ処理部、17…RTPデータ生成部、18、18−1、18−2…一時待機部、19…送信待機部、20…受信パケット情報付加部、21…IPパケット送信処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原データを収めた、シーケンス番号が付与された原データサブパケットを通信パケットの通信周期毎に生成する原データサブパケット生成手段と、
生成された上記原データサブパケットを、冗長送信のために冗長データサブパケットとして待機させる待機手段と、
対向するパケット通信装置が送信し、当該パケット通信装置が受信した通信パケットにおける原データサブパケット及び冗長データサブパケットのシーケンス番号を含む、対向するパケット通信装置へ送信する到達確認サブパケットを生成する到達確認サブパケット生成手段と、
上記通信周期毎に、上記原データサブパケット生成手段が生成した原データサブパケットと、上記到達確認サブパケット生成手段が生成した到達確認サブパケットとを収めた通信パケットであって、上記待機手段によって待機されている冗長データサブパケットが収められることもあり得る通信パケットを作成して、対向するパケット通信装置へ宛てて送信するパケット作成・送信手段と
を備えることを特徴とするパケット通信装置。
【請求項2】
対向するパケット通信装置が送信し、当該パケット通信装置が受信した通信パケットにおける到達確認サブパケットに含まれるシーケンス番号に基づき、上記待機手段から、そのシーケンス番号が付与された冗長データサブパケットを削除する到達確認済サブパケット整理手段をさらに有し、
上記パケット作成・送信手段は、上記待機手段によって待機されている冗長データサブパケットを、作成する通信パケットに収める
ことを特徴とする請求項1に記載のパケット通信装置。
【請求項3】
原データサブパケットを収めた通信パケットの作成周期と、その原データサブパケットに係る冗長データサブパケットを最初に収めた通信パケットの作成周期とが、少なくとも2周期離れていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパケット通信装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の2つのパケット通信装置が、パケット通信網を介して通信することを特徴とするパケット通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−44584(P2012−44584A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185978(P2010−185978)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(308033722)株式会社OKIネットワークス (165)
【Fターム(参考)】