パターン基板、及びそれを用いた発光ダイオード
【課題】発光輝度の更なる向上を図ることができるパターン基板及び該パターン基板を用いた発光ダイオードを提供すること。
【解決手段】発光ダイオード5は、パターン基板2と、パターン基板2の上面21に形成されたエピタキシャル層構造体3と、エピタキシャル層構造体3上に形成された電極ユニット4とを備えている。パターン基板2は、上面21から下向きに窪んだ凹部形成面22により画成され、互いに離間して設けられた複数の凹部25と、各凹部形成面22は、上面21より下向きに延伸される周面24と、該周面24と共に凹部25を画成する底面23とを有し、複数の凹部25のそれぞれの底面23より突起26が上向きに突出して形成されている。
【解決手段】発光ダイオード5は、パターン基板2と、パターン基板2の上面21に形成されたエピタキシャル層構造体3と、エピタキシャル層構造体3上に形成された電極ユニット4とを備えている。パターン基板2は、上面21から下向きに窪んだ凹部形成面22により画成され、互いに離間して設けられた複数の凹部25と、各凹部形成面22は、上面21より下向きに延伸される周面24と、該周面24と共に凹部25を画成する底面23とを有し、複数の凹部25のそれぞれの底面23より突起26が上向きに突出して形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン基板と、パターン基板を用いた発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光ダイオード(LED)はディスプレイのバックライトモジュールや交通信号機、照明装置等に広く応用されている。照明装置における光源や光エネルギー供給源としてLEDを用いる場合、充分な輝度が提供できるかは基本的な課題である。そこで輝度向上のための技術として、図1、2に示すような、主にサファイアを用いて作られた基板11と、エピタキシャル成長法により基板11上に形成されたエピタキシャル層構造体12と、Ti/Al/Ti/Au接触電極13及びNi/Au接触電極14とを含んだ発光素子を使う技術を本願発明者達はすでに提案している(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
当該基板11はパターン化されており、成長面とする上面111と、該上面111から下向きに窪んだ凹部形成面により画成され且つ互いに離間して設けられた複数の凹部112と、を備えている。各凹部112の深さは1.5μm、直径は3μmであり、隣接する凹部同士の中心間距離は3μm以上である(例えば5μm)。
【0004】
エピタキシャル層構造体12は主にGaN素材で作られており、凹部112が充満されるように、基板11の上面111に形成されている。エピタキシャル層構造体12は、基板11より順に、基板11の上面111に形成されたn形半導体層121と、一部がn形半導体層121を覆うように形成され、通電後に所定の波長幅で発光する発光層122と、発光層122を覆うように形成されたp形半導体層と、からなっている。
【0005】
Ti/Al/Ti/Au接触電極13はn形半導体層121上に、Ni/Au接触電極14はp形半導体層123上にそれぞれ設けられており、エピタキシャル層構造体12に電力を供給するために用いられる。Ti/Al/Ti/Au接触電極13とNi/Au接触電極14に外部電力が供給されると、電力はn形半導体層121、発光層122及びp形半導体層123に流れ、光エネルギーとして外部に放射される。
【0006】
上記発光素子において、基板11上に複数の凹部112を設け、発光層122から基板11へ放射された光が基板11の上面111と凹部112に到達すると、上面111と凹部112とにより光を一回以上反射することができるので、該発光素子の輝度をパターン化されていない基板の輝度よりも高くすることができ、また、複数の凹部112によりエピタキシャル層構造体12における転移等の結晶欠陥をも改善することができるので、内部量子効率が上がり、発光素子の輝度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】台湾特許第I236773号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パターン基板11の凹部112において光の進行方向を変えることにより発光輝度を向上させることができ、また、パターン基板11によりエピタキシャル層構造体12の品質を向上させることができる。しかしながら、更なる輝度向上を目指した研究は、パターン基板の新たなパターン開発によりなおも続けられている。
【0009】
本発明は、発光輝度の更なる向上を図ることができるパターン基板及び該パターン基板を用いた発光ダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、エピタキシャル成長法を用いて発光ダイオードを製造するためのパターン基板であって、成長面とする上面から下向きに窪んだ凹部形成面により画成された複数の凹部であって、複数の前記凹部が互いに離間して設けられ、各前記凹部形成面は、前記上面より下向きに延伸される周面と、該周面と共に前記凹部を画成する底面とを有する複数の凹部と、各前記凹部の前記底面よりそれぞれ上向きに突出して形成された複数の突起とを備えていることを特徴とするパターン基板を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記パターン基板と、前記パターン基板の上面にエピタキシャル成長法を用いて形成されたエピタキシャル層構造体と、前記エピタキシャル層構造体と電気的に接続された電極ユニットとを備えていることを特徴とする発光ダイオードを提供する。
【発明の効果】
【0012】
以上の構成によれば、複数の凹部のそれぞれにおいて、各凹部形成面の底面上に周面から離間して突起が設けられているので、入射した光をパターン基板の上面、凹部形成面及び突起の表面で反射させることができる。これにより、従来のパターン基板より多くの光が反射されるので、発光輝度をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来例のパターン基板の平面図である。
【図2】従来例のパターン基板を用いた発光ダイオードを概略的に示す側面図である。
【図3】本発明による一実施の形態のパターン基板を示す平面図である。
【図4】図3のパターン基板を概略的に示す縦断面図である。
【図5】本発明によるパターン基板を用いた発光ダイオードの一実施の形態を概略的に示す側面図である。
【図6(a)】図2の従来例の発光ダイオードの放射強度分布曲線である。
【図6(b)】本発明による発光ダイオードの放射強度分布曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0015】
図3及び図4では本発明によるパターン基板2の好ましい態様が示されている。パターン基板2は、エピタキシャル成長法を用いて発光ダイオードを製造するためのパターン基板であり、サファイア基板を用いて、成長面とする上面21と、互いに離間して設けられた複数の凹部25と、複数の突起26などを備えるように構成される。なお、この形態において、サファイア基板の成長面とする上面21はサファイア基板のC(0001)面である。
【0016】
各凹部25は、上面21から下向きに窪んだ凹部形成面22により画成され、凹部形成面22は、上面21に続いて下向きに延伸される周面24と、該周面24の下周縁231により画成される底面23とからなり、底面23にはそれぞれ突起26が上向きに突出して形成されている。
【0017】
当該実施形態では、複数の凹部25のそれぞれの底面23は上面視で円形を呈し且つ上面21と平行であり、故に底面23はサファイア基板のC(0001)面である。各凹部25の周面24はそれぞれ上面21側に対して底面23側に窄んでおり、各凹部25の形状は略円錐台状を呈す。底面23はそれぞれ直径が2μm〜7μmであり、上面21からの深さが0.5μm〜5μmである。隣接する凹部25同士の中心間距離は各底面23の直径よりも大きい。
【0018】
突起26はそれぞれ、横断面が略円形であり、底面23側に対して上面21側に窄む略円錐台状となる。突起26の最大横断面は直径が7μm以下であり、且つ対応する凹部25において凹部形成面22の周面24と離間して設けられている。さらに、突起26の高さは底面23の深さ以下であり、且つ底面23の深さの半分以上なので、突起26は上面21より外面に突き出ることはない。
【0019】
以下に凹部25と突起26の形成方法を具体的に説明する。この実施形態では、サファイア基板のC(0001)面である上面21に同心円パターンを有するエッチングマスクを配置してから、ドライエッチング法を用いてサファイア基板に凹部25と突起26とを形成する。同心円パターンを有するエッチングマスクを使用することにより、突起26をそれぞれ対応する底面23の幾何学的中心に形成することができる。このように作成されたパターン基板2を上面視すると、各凹部25において周面24、底面23及び突起26の上面は同心円を呈すようになる(図3参照)。
【0020】
なお、本実施例では、底面23、周面24及び突起26は横断面が略円形を呈しているが、これらは略円形に限定されるものではなく、四角形や五角形などの多角形に形成されてもよい。
【0021】
図5に示すように、エピタキシャル成長法を用いてパターン基板2の上面に形成されたエピタキシャル層構造物3に、電極ユニット4を設けると、本発明による発光ダイオード5が形成される。パターン基板2に関しては上述した通りであり詳細な説明は省く。
【0022】
エピタキシャル層構造物3は三族元素及び五族元素を含む半導体化合物、例えばGaN系半導体材料で作られ、基板2側から順に、基板2の上面21に形成され凹部25を充満するように設けられたn形半導体層31と、発光層32と、p形半導体層33からなっている。この例では、n形半導体層31としてはn−GaN、p形半導体層33としてはp−GaNにより構成されることが好ましい。
【0023】
電極ユニット4は、n形半導体層31と電気的に接続されるようにn形半導体層31上に形成された第1電極41と、p形半導体層33と電気的に接続されるようにp形半導体層33上に形成された第2電極42とから構成され、外部電力(図示せず)と電気的に接続できるようになっている。
【0024】
電極ユニット4が前記外部電源に接続されると、電力はn形半導体層31とp形半導体層33を経由して発光層32に転送され、発光層32により光エネルギーに転換されて発光する。発光層32からp形半導体層33への光は電極42を通過して外部に放射される。一方、発光層32からn形半導体層31への光は基板2の上面21、周面24、底面23及び突起26にて反射や回折されて上方へ向かって放射される。
【0025】
以上のように本発明における発光ダイオード5は、パターン基板2に複数の凹部25のそれぞれに突起26が設けられていることにより、エピタキシャル層構造体3における転移等の結晶欠陥を改善することができ、また、エピタキシャル層構造体3からの発光を、パターン基板2の凹部25及び突起26によって反射、回折して従来よりも効率よく上方へ射出させることができるので、本発明による発光ダイオード5の主な照明方向における輝度を向上させることができる。
【0026】
図6(a)は図1に示したパターン基板11を用いた従来例の発光ダイオードの放射強度分布曲線であり、従来の発光ダイオードの放射強度が1.8mW/srであることを示している。図6(b)は本発明による発光ダイオードの放射強度分布曲線であり、本発明による発光ダイオードの放射強度が2.0mW/srであることを示している。図6(a)及び図6(b)により、本発明による発光ダイオード5は、従来の発光ダイオードよりも約10%高い輝度(放射強度)を得ることが分かる。
【0027】
以上により、パターン基板2に突起26を備えた凹部25を複数有することによって、エピタキシャル層構造体3からの発光が、従来よりも主な照明方向(上方)へ効率よく反射され、回折されることができる。これにより、本発明による発光ダイオード5の輝度をより一層向上させることができる。また、パターン基板2に突起26を備えた凹部25を複数形成していることによりエピタキシャル層構造体3における転移等の結晶欠陥をも改善することができるので、発光ダイオード5の品質の向上を図ることができる効果を有する。
【0028】
本発明を、最も実際的であり、また、好ましい実施態様に関して説明してきたが、本発明は上記実施態様には限定されず、最も広い解釈の精神および範囲の中に含まれる種々の変更、並びに均等な変更を網羅していることが意図されていると理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によるパターン基板及び発光ダイオードは、輝度の向上を図る発光素子の製造に有用であるので、照明に関する様々な分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
2 パターン基板
3 エピタキシャル層構造体
4 電極ユニット
5 発光ダイオード
21 上面
22 凹部形成面
23 底面
24 周面
25 凹部
26 突起
31 n形半導体層
32 発光層
33 p形半導体層
41 第1電極
42 第2電極
231 下周縁
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン基板と、パターン基板を用いた発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光ダイオード(LED)はディスプレイのバックライトモジュールや交通信号機、照明装置等に広く応用されている。照明装置における光源や光エネルギー供給源としてLEDを用いる場合、充分な輝度が提供できるかは基本的な課題である。そこで輝度向上のための技術として、図1、2に示すような、主にサファイアを用いて作られた基板11と、エピタキシャル成長法により基板11上に形成されたエピタキシャル層構造体12と、Ti/Al/Ti/Au接触電極13及びNi/Au接触電極14とを含んだ発光素子を使う技術を本願発明者達はすでに提案している(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
当該基板11はパターン化されており、成長面とする上面111と、該上面111から下向きに窪んだ凹部形成面により画成され且つ互いに離間して設けられた複数の凹部112と、を備えている。各凹部112の深さは1.5μm、直径は3μmであり、隣接する凹部同士の中心間距離は3μm以上である(例えば5μm)。
【0004】
エピタキシャル層構造体12は主にGaN素材で作られており、凹部112が充満されるように、基板11の上面111に形成されている。エピタキシャル層構造体12は、基板11より順に、基板11の上面111に形成されたn形半導体層121と、一部がn形半導体層121を覆うように形成され、通電後に所定の波長幅で発光する発光層122と、発光層122を覆うように形成されたp形半導体層と、からなっている。
【0005】
Ti/Al/Ti/Au接触電極13はn形半導体層121上に、Ni/Au接触電極14はp形半導体層123上にそれぞれ設けられており、エピタキシャル層構造体12に電力を供給するために用いられる。Ti/Al/Ti/Au接触電極13とNi/Au接触電極14に外部電力が供給されると、電力はn形半導体層121、発光層122及びp形半導体層123に流れ、光エネルギーとして外部に放射される。
【0006】
上記発光素子において、基板11上に複数の凹部112を設け、発光層122から基板11へ放射された光が基板11の上面111と凹部112に到達すると、上面111と凹部112とにより光を一回以上反射することができるので、該発光素子の輝度をパターン化されていない基板の輝度よりも高くすることができ、また、複数の凹部112によりエピタキシャル層構造体12における転移等の結晶欠陥をも改善することができるので、内部量子効率が上がり、発光素子の輝度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】台湾特許第I236773号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パターン基板11の凹部112において光の進行方向を変えることにより発光輝度を向上させることができ、また、パターン基板11によりエピタキシャル層構造体12の品質を向上させることができる。しかしながら、更なる輝度向上を目指した研究は、パターン基板の新たなパターン開発によりなおも続けられている。
【0009】
本発明は、発光輝度の更なる向上を図ることができるパターン基板及び該パターン基板を用いた発光ダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、エピタキシャル成長法を用いて発光ダイオードを製造するためのパターン基板であって、成長面とする上面から下向きに窪んだ凹部形成面により画成された複数の凹部であって、複数の前記凹部が互いに離間して設けられ、各前記凹部形成面は、前記上面より下向きに延伸される周面と、該周面と共に前記凹部を画成する底面とを有する複数の凹部と、各前記凹部の前記底面よりそれぞれ上向きに突出して形成された複数の突起とを備えていることを特徴とするパターン基板を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記パターン基板と、前記パターン基板の上面にエピタキシャル成長法を用いて形成されたエピタキシャル層構造体と、前記エピタキシャル層構造体と電気的に接続された電極ユニットとを備えていることを特徴とする発光ダイオードを提供する。
【発明の効果】
【0012】
以上の構成によれば、複数の凹部のそれぞれにおいて、各凹部形成面の底面上に周面から離間して突起が設けられているので、入射した光をパターン基板の上面、凹部形成面及び突起の表面で反射させることができる。これにより、従来のパターン基板より多くの光が反射されるので、発光輝度をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来例のパターン基板の平面図である。
【図2】従来例のパターン基板を用いた発光ダイオードを概略的に示す側面図である。
【図3】本発明による一実施の形態のパターン基板を示す平面図である。
【図4】図3のパターン基板を概略的に示す縦断面図である。
【図5】本発明によるパターン基板を用いた発光ダイオードの一実施の形態を概略的に示す側面図である。
【図6(a)】図2の従来例の発光ダイオードの放射強度分布曲線である。
【図6(b)】本発明による発光ダイオードの放射強度分布曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0015】
図3及び図4では本発明によるパターン基板2の好ましい態様が示されている。パターン基板2は、エピタキシャル成長法を用いて発光ダイオードを製造するためのパターン基板であり、サファイア基板を用いて、成長面とする上面21と、互いに離間して設けられた複数の凹部25と、複数の突起26などを備えるように構成される。なお、この形態において、サファイア基板の成長面とする上面21はサファイア基板のC(0001)面である。
【0016】
各凹部25は、上面21から下向きに窪んだ凹部形成面22により画成され、凹部形成面22は、上面21に続いて下向きに延伸される周面24と、該周面24の下周縁231により画成される底面23とからなり、底面23にはそれぞれ突起26が上向きに突出して形成されている。
【0017】
当該実施形態では、複数の凹部25のそれぞれの底面23は上面視で円形を呈し且つ上面21と平行であり、故に底面23はサファイア基板のC(0001)面である。各凹部25の周面24はそれぞれ上面21側に対して底面23側に窄んでおり、各凹部25の形状は略円錐台状を呈す。底面23はそれぞれ直径が2μm〜7μmであり、上面21からの深さが0.5μm〜5μmである。隣接する凹部25同士の中心間距離は各底面23の直径よりも大きい。
【0018】
突起26はそれぞれ、横断面が略円形であり、底面23側に対して上面21側に窄む略円錐台状となる。突起26の最大横断面は直径が7μm以下であり、且つ対応する凹部25において凹部形成面22の周面24と離間して設けられている。さらに、突起26の高さは底面23の深さ以下であり、且つ底面23の深さの半分以上なので、突起26は上面21より外面に突き出ることはない。
【0019】
以下に凹部25と突起26の形成方法を具体的に説明する。この実施形態では、サファイア基板のC(0001)面である上面21に同心円パターンを有するエッチングマスクを配置してから、ドライエッチング法を用いてサファイア基板に凹部25と突起26とを形成する。同心円パターンを有するエッチングマスクを使用することにより、突起26をそれぞれ対応する底面23の幾何学的中心に形成することができる。このように作成されたパターン基板2を上面視すると、各凹部25において周面24、底面23及び突起26の上面は同心円を呈すようになる(図3参照)。
【0020】
なお、本実施例では、底面23、周面24及び突起26は横断面が略円形を呈しているが、これらは略円形に限定されるものではなく、四角形や五角形などの多角形に形成されてもよい。
【0021】
図5に示すように、エピタキシャル成長法を用いてパターン基板2の上面に形成されたエピタキシャル層構造物3に、電極ユニット4を設けると、本発明による発光ダイオード5が形成される。パターン基板2に関しては上述した通りであり詳細な説明は省く。
【0022】
エピタキシャル層構造物3は三族元素及び五族元素を含む半導体化合物、例えばGaN系半導体材料で作られ、基板2側から順に、基板2の上面21に形成され凹部25を充満するように設けられたn形半導体層31と、発光層32と、p形半導体層33からなっている。この例では、n形半導体層31としてはn−GaN、p形半導体層33としてはp−GaNにより構成されることが好ましい。
【0023】
電極ユニット4は、n形半導体層31と電気的に接続されるようにn形半導体層31上に形成された第1電極41と、p形半導体層33と電気的に接続されるようにp形半導体層33上に形成された第2電極42とから構成され、外部電力(図示せず)と電気的に接続できるようになっている。
【0024】
電極ユニット4が前記外部電源に接続されると、電力はn形半導体層31とp形半導体層33を経由して発光層32に転送され、発光層32により光エネルギーに転換されて発光する。発光層32からp形半導体層33への光は電極42を通過して外部に放射される。一方、発光層32からn形半導体層31への光は基板2の上面21、周面24、底面23及び突起26にて反射や回折されて上方へ向かって放射される。
【0025】
以上のように本発明における発光ダイオード5は、パターン基板2に複数の凹部25のそれぞれに突起26が設けられていることにより、エピタキシャル層構造体3における転移等の結晶欠陥を改善することができ、また、エピタキシャル層構造体3からの発光を、パターン基板2の凹部25及び突起26によって反射、回折して従来よりも効率よく上方へ射出させることができるので、本発明による発光ダイオード5の主な照明方向における輝度を向上させることができる。
【0026】
図6(a)は図1に示したパターン基板11を用いた従来例の発光ダイオードの放射強度分布曲線であり、従来の発光ダイオードの放射強度が1.8mW/srであることを示している。図6(b)は本発明による発光ダイオードの放射強度分布曲線であり、本発明による発光ダイオードの放射強度が2.0mW/srであることを示している。図6(a)及び図6(b)により、本発明による発光ダイオード5は、従来の発光ダイオードよりも約10%高い輝度(放射強度)を得ることが分かる。
【0027】
以上により、パターン基板2に突起26を備えた凹部25を複数有することによって、エピタキシャル層構造体3からの発光が、従来よりも主な照明方向(上方)へ効率よく反射され、回折されることができる。これにより、本発明による発光ダイオード5の輝度をより一層向上させることができる。また、パターン基板2に突起26を備えた凹部25を複数形成していることによりエピタキシャル層構造体3における転移等の結晶欠陥をも改善することができるので、発光ダイオード5の品質の向上を図ることができる効果を有する。
【0028】
本発明を、最も実際的であり、また、好ましい実施態様に関して説明してきたが、本発明は上記実施態様には限定されず、最も広い解釈の精神および範囲の中に含まれる種々の変更、並びに均等な変更を網羅していることが意図されていると理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によるパターン基板及び発光ダイオードは、輝度の向上を図る発光素子の製造に有用であるので、照明に関する様々な分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
2 パターン基板
3 エピタキシャル層構造体
4 電極ユニット
5 発光ダイオード
21 上面
22 凹部形成面
23 底面
24 周面
25 凹部
26 突起
31 n形半導体層
32 発光層
33 p形半導体層
41 第1電極
42 第2電極
231 下周縁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャル成長法を用いて発光ダイオードを製造するためのパターン基板であって、該パターン基板が、
成長面とする上面から下向きに窪んだ凹部の形成面により画成され、また、それぞれが互いに離間して設けられ、さらに、該上面より下向きに延伸された周面と該周面と共に該凹部を画成する底面とを有する、複数の凹部と、
各該凹部の該底面よりそれぞれ上向きに突出して形成された複数の突起と、
を備えていることを特徴とする、パターン基板。
【請求項2】
各前記凹部における前記凹部形成面の前記底面の直径が2〜7μmであり、かつ、隣接する前記凹部同士の中心間距離が各前記底面の直径よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のパターン基板。
【請求項3】
前記突起が、対応する前記凹部において前記周面と離間して設けられ、前記突起の最大横断面の直径が7μm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパターン基板。
【請求項4】
前記凹部において、前記上面から前記底面までの深さが0.5μmかた5μmであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のパターン基板。
【請求項5】
前記突起の高さが、前記凹部の深さ以下であり、かつ、前記凹部の深さの半分以上であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のパターン基板。
【請求項6】
サファイア基板を用い、
前記パターン基板の前記上面と前記凹部の前記底面とが、該サファイア基板のC(0001)面であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のパターン基板。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のパターン基板と、
前記パターン基板の前記上面に前記エピタキシャル成長法を用いて形成されたエピタキシャル層構造体と、
該エピタキシャル層構造体と電気的に接続された電極ユニットと、
を備えていることを特徴とする、発光ダイオード。
【請求項8】
前記エピタキシャル層構造体が、三族元素及び五族元素を含む半導体化合物から形成されることを特徴とする、請求項7に記載の発光ダイオード。
【請求項1】
エピタキシャル成長法を用いて発光ダイオードを製造するためのパターン基板であって、該パターン基板が、
成長面とする上面から下向きに窪んだ凹部の形成面により画成され、また、それぞれが互いに離間して設けられ、さらに、該上面より下向きに延伸された周面と該周面と共に該凹部を画成する底面とを有する、複数の凹部と、
各該凹部の該底面よりそれぞれ上向きに突出して形成された複数の突起と、
を備えていることを特徴とする、パターン基板。
【請求項2】
各前記凹部における前記凹部形成面の前記底面の直径が2〜7μmであり、かつ、隣接する前記凹部同士の中心間距離が各前記底面の直径よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のパターン基板。
【請求項3】
前記突起が、対応する前記凹部において前記周面と離間して設けられ、前記突起の最大横断面の直径が7μm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパターン基板。
【請求項4】
前記凹部において、前記上面から前記底面までの深さが0.5μmかた5μmであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のパターン基板。
【請求項5】
前記突起の高さが、前記凹部の深さ以下であり、かつ、前記凹部の深さの半分以上であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のパターン基板。
【請求項6】
サファイア基板を用い、
前記パターン基板の前記上面と前記凹部の前記底面とが、該サファイア基板のC(0001)面であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のパターン基板。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のパターン基板と、
前記パターン基板の前記上面に前記エピタキシャル成長法を用いて形成されたエピタキシャル層構造体と、
該エピタキシャル層構造体と電気的に接続された電極ユニットと、
を備えていることを特徴とする、発光ダイオード。
【請求項8】
前記エピタキシャル層構造体が、三族元素及び五族元素を含む半導体化合物から形成されることを特徴とする、請求項7に記載の発光ダイオード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6(a)】
【図6(b)】
【公開番号】特開2012−74701(P2012−74701A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209147(P2011−209147)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(506187511)國立中興大學 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(506187511)國立中興大學 (12)
【Fターム(参考)】
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