説明

パターン形成方法及びパターン基板製造方法

【課題】インプリント法により、エッチング耐性に優れた高精細なパターンを量産性良く形成する。
【解決手段】基板10上に、重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含む重合性化合物21と、光又は電子線により活性化する重合開始剤Iとを含むレジスト組成物20からなる(不可避不純物を含んでもよい)レジスト層20mを形成し、レジスト層20mに、表面に所定の凹凸パターンを有する鋳型30の凹凸表面を圧接し、レジスト層20mに光L1を照射してレジスト層20mを硬化させ、レジスト層20mの温度が40℃以上となる条件で鋳型30をレジスト層20mから剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント法を用いたパターン形成方法及びそれを用いたパターン基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インプリント法とは、パターンが予め凹凸形状で加工された鋳型(モールド)を、加工対象となる基板上に形成したレジスト樹脂層へ押し当てて、モールド上のパターンに対応するパターンを基板上に転写により形成する方法であり、半導体素子やハードディスクにおけるパターンドメディア媒体等、微細化が求められる領域では、微細パターンでのパターン形成性と量産性とコストの観点から注目されている。
【0003】
インプリント法の代表的な方式には、熱可塑性樹脂をレジストとして用いてレジストのTg付近の温度領域で高圧な条件で押し当てた後、温度をTg以下にしてパターン形状を固定化した状態でモールドをレジストより剥離することで転写を行う熱インプリント方式や、またはTgより小さい温度領域にてモールドを高圧で押し付けてパターンを形成する熱エンボス方式等の熱可塑性樹脂をレジストとして用いる熱方式のほか、常温で液体状で流動性のあるレジストにモールドを押し付けた状態で光硬化によりレジストを硬化させてパターンを転写する光インプリント方式がある。
【0004】
このうち、光インプリント方式は、所望のパターンのモールドを用いることで簡便かつ低コストに、精度の良いパターン形成を行うことが可能な次世代の微細加工用製造技術として期待されている。この光インプリント方式では、熱方式に対して常温プロセスで高圧を必要としない、微細化や、パターン凹部と基板間の厚みに相当する残膜厚みを小さくすることの両立が期待できる系として期待されている。
【0005】
パターンの矩形性やラフネスの良好な高品質なパターニングを行うためには、光インプリントには、良好なモールド離型性、パターン凹部と基板との間のレジスト層の厚み(残膜厚み)の薄さ及び面内均一性、及び、後工程のリソグラフィプロセスにおけるレジスト材のエッチング耐性が要求される。
【0006】
特許文献1及び2には、フッ素樹脂を主成分とするインプリントレジストが開示されており、フッ素樹脂を主成分とすることにより良好な離型性を確保している。
【0007】
特許文献3では、レジスト層として表面に含フッ素層が偏在させることによりモールドの離型性を向上させる技術が開示されている。また特許文献4では、界面活性剤を含むレジスト組成物を吐出液として用いて、レジストを離散的な液滴の特定パターン状に配置させ、更に、モールド表面の、液滴配置と対応する箇所に多量の界面活性剤を付着させて、モールドに対するレジスト材の濡れ性と離型性を良好にする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−110997号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0036051号明細書
【特許文献3】特開2006−080447号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/01366549号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2の方法では、レジスト材のフッ素化率が高いため、ナノオーダのパターン形成において、インプリントの後工程におけるエッチング耐性が十分に得られない。
【0010】
また、特許文献3及び4に記載の技術は、モールド表面への界面活性剤の蓄積によりパターン形状精度が低下するため、数十ナノメートルサイズ以下のパターンに適用することが難しい。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、インプリント法によるパターン形成において、ナノオーダのパターン形成においても高精度なパターニングが可能であり、量産性及びエッチング耐性に優れたパターン形成方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
本発明はまた、上記パターン形成方法により形成されたマスクを用いて基板をリソグラフィ法により加工することにより、高精度にパターニングされたパターン基板を製造することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のパターン形成方法は、基板上に、重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含む重合性化合物と、光又は電子線により活性化する重合開始剤とを含むレジスト組成物からなる(不可避不純物を含んでもよい)レジスト層を形成し、該レジスト層に、表面に所定の凹凸パターンを有する鋳型の前記表面を圧接し、前記レジスト層に前記光又は電子線を照射して該レジスト層を硬化させ、前記レジスト層の温度が40℃以上となる条件で前記鋳型を前記レジスト層から剥離することを特徴とするものである。
【0014】
ここで、「多官能単量体」とは、エチレン不飽和二重結合を複数有する単量体を意味する。前記多官能単量体は、少なくとも1つの2価又は3価の芳香族基を有するものであることが好ましい。
【0015】
本発明のパターン形成方法において、前記基板又は前記鋳型の温度を40℃以上として前記鋳型を前記レジスト層から剥離することにより、前記レジスト層の温度を40℃以上とすることができる。すなわち、本発明において、調整した基板の温度又は鋳型の温度と、レジスト層の温度とは実質的に同じ温度になるものとする。前記レジスト層の温度を50℃以上120℃以下として前記鋳型を前記レジスト層から剥離することが好ましい。
【0016】
本発明において、レジスト層の温度は、レジスト層の基板と接触している面における、レジスト層のパターン形成部位に相当するエリアの面内平均温度とする。ここで、レジスト層の基板と接触している面の温度と、該面と接触している基板の温度とは実質的に同じ温度であることとする。
【0017】
本発明のパターン形成方法において、前記レジスト組成物は、フッ素を含む重合性界面活性剤(含フッ素重合性化合物)を更に含むことが好ましい。かかる重合性界面活性剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましい。
【0018】
前記重合性界面活性剤としては、該重合性界面活性剤の単量体中にフロロアルキル基及びフロロアルキルエーテル基から選ばれる少なくとも1種の含フッ素基を複数有し、且つ、該複数の含フッ素基のうち少なくとも2つが炭素数2以上の連結基により隔てられている含フッ素重合性化合物を用いることが好ましい。また、前記含フッ素基の少なくとも2つは、炭素数2以上のフロロアルキル基であることがより好ましい。更に、前記含フッ素基の少なくとも2つはトリフロロメチル基であることが好ましい。
【0019】
本発明のパターン形成方法において、前記レジスト層を前記基板上に配置する前に、前記基板の前記レジスト層を配置する表面に、該表面と前記レジスト層とを架橋させて密着させる界面結合剤を塗布することが好ましい。
【0020】
本発明のパターン基板製造方法は、上記本発明のパターン形成方法により前記基板上にパターン形性されたレジスト層をマスクとして用い、リソグラフィ法により、前記基板面に前記レジスト層のパターンに基づいた凹凸パターンを形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のパターン形成方法では、光インプリント法において、重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含む重合性化合物と、光又は電子線により活性化する重合開始剤とを含むレジスト組成物を用い、レジスト層の温度が40℃以上となる条件で前記鋳型を前記レジスト層から剥離する。かかる方法では、硬化したレジスト層を加熱することにより変形しやすくした状態で剥離するため、パターン形成不良の発生を抑制することができる。また、硬化後のレジスト組成物は三次元構造を有する重合体となるため、加熱時の応力による変形は塑性変形にはならない。従って、剥離後のパターン精度も良好に維持される。
【0022】
更に、界面活性剤として、含フッ素重合性化合物(含フッ素重合性界面活性剤)を含む場合には、加熱によりレジスト表面に偏在する含フッ素重合性化合物からなる含フッ素層か又はモールド表面に存在する離型剤層からなる含フッ素層の流動性が大きくなり潤滑性が向上するため、より容易且つ精度の高いパターン形成を行うことができる。
【0023】
また、本発明のパターン形成方法では、レジスト組成物中のフッ素含率が低くてもよいことから、レジスト組成物の粘度及び硬化後のレジスト材のエッチング耐性を好適に保つことができる上、離型性を良好にする非重合性の界面活性剤を過度に含有させる必要がない。従って、離型後のモールドへの界面活性剤の付着による、モールドの劣化を抑制することが出来る。
【0024】
従って、本発明によれば、インプリント法によるパターン形成において、ナノオーダのパターン形成においても高精度なパターニングが可能であり、量産性及びエッチング耐性に優れたパターン形成を行うことができる。
【0025】
また、本発明のパターン形成方法により作られたレジストパターンをマスクとして用いて、基板をリソグラフィ法により加工することにより、高精度にパターニングされたパターン基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)〜(h)は、本発明にかかる第1実施形態のパターン形成方法及びパターン基板の製造工程を模式的に示す断面図
【図2】(a)〜(h)は、本発明にかかる第2実施形態のパターン形成方法及びパターン基板の製造工程を模式的に示す断面図
【図3】(a)は、含フッ素重合性界面活性剤を用いた場合の第1実施形態のレジスト層成膜直後の層構成を示す図、(b)は、含フッ素重合性界面活性剤を用いた場合の第2実施形態のレジスト組成物の液滴の層構成を模式的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び図2を参照して、本発明にかかる一実施形態のパターン形成方法及びパターン基板製造方法について説明する。図1(a)〜(e)は、第1実施形態のパターン形成方法、図2(a)〜(e)は本発明の第2実施形態のパターン形成方法を模式的に示す断面図である。第1実施形態と第2実施形態とではレジスト層の形成方法が異なっている。第1実施形態では、レジスト層20mを基板上にベタ成膜する方法、第2実施形態はレジスト層20mの成膜を、インクジェット法等によりレジスト組成物を複数の液滴として離散的に配置して行う方法について示したものである。視認しやすくするために,各部の縮尺は適宜変更して示してある。
【0028】
図1及び図2に示されるように、本発明のパターン形成方法は、基板10上に、重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含む重合性化合物21と、光又は電子線L1(光L1)により活性化する重合開始剤Iとを含むレジスト組成物20からなる(不可避不純物を含んでもよい)レジスト層20mを形成し、レジスト層20mに、表面に所定の凹凸パターンを有する鋳型の凹凸表面を圧接し、レジスト層20mに光又は電子線L1を照射してレジスト層20mを硬化させ、レジスト層20mの温度が40℃以上となる条件で鋳型30をレジスト層40から剥離することを特徴とするものである。上記したように、第1実施形態と第2実施形態とでは、レジスト層20mの基板10上への成膜(配置)方法が異なっており、その他の工程については同様である。以下に各工程について説明する。
【0029】
(レジスト塗布工程―第1実施形態)
まず、基板10を用意し(図1(a))、重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含む重合性化合物21と、光又は電子線L1(以後、光L1とする)により活性化する重合開始剤Iとを含むレジスト組成物20からなる(不可避不純物を含んでもよい)レジスト層20mを形成する(図1(b))。
【0030】
基板10としては、表面平滑性が良好なものが良いが特に制限されない。本実施形態のパターン形成方法では、光L1によりレジスト層20mを硬化させることから、基板10又は後工程で使用する鋳型(モールド)30のいずれかが、光L1に対して透光性を有する必要がある。ここで透光性を有するとは、レジスト20を硬化させうる量の光L1を、レジスト層20mに到達させるうる透過率を有することを意味する。光L1の透過率が1%以上あればレジスト20の硬化は可能ではあるが、10%以上あることがより好ましく、50%以上あることが更に好ましい。
【0031】
基板10としては、例えば、アルミニウム、ガラス、シリコン、石英、シリコン表面に熱酸化膜を形成してなるSiO/Si基板等が挙げられる。これらの基板材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
また、基板10のパターン形成面10Sには、レジスト層20mを成膜する前に、基板表面10Sとレジスト層20mとを結合させて密着させる表面処理を施すことが好ましい。かかる表面処理としては、界面結合剤として、基板表面との結合性を有する第1官能基と、およびレジスト層20mと結合性を有する第2官能基とを有するカップリング剤を基板上に成膜する処理が挙げられる。
【0033】
第1官能基としては、基板10の表面と結合可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、アルコキシシラン部位、OH基と架橋性を有するカルボン酸無水物部位、ハロゲン化部位、アルコール部位、チオール部位、アミン部位、リン酸部位、シリケート部位、チタネート部位、アルミナ部位などが挙げられる。
【0034】
第2官能基としては、レジスト層20m(レジスト組成物20)に対して結合可能なものであれば、特に制限はなく、共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合等の結合によりレジスト層20mと結合する公知のものの中からレジスト組成物の組成等に応じて適宜選択することができる。
【0035】
また、界面結合剤としては、基板10とレジスト層20mとの結合を強固とする一方、エッチング等による基板加工後のレジスト層残渣の除去性が悪化しないものであることが好ましい。従って、基板加工後に酸素プラズマ処理、酸素アッシング処理、及びUVオゾン処理のいずれかにより除去可能な界面結合剤とすることが好ましい。
【0036】
かかる界面結合剤としては、シランカップリング剤やカルボン酸無水物等が挙げられる。界面結合剤の成膜方法は、特に制限されないが、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、浸漬法、等の液相法、および蒸着等の気相法を適宜選択することができる。
【0037】
また、基板表面10Sとレジスト層20(または界面結合剤)との間に、更に別の材質の層(メタルなどの難エッチング材料層)をマスク層として設けることができる。これにより、後工程であるエッチングプロセスでの反応性ガスによる系とレジストおよび加工対象となる基板、および設置したマスク層との反応性を適宜選択することで加工マージンを広げることができ、より高品質の加工基板を作製することができる。
【0038】
レジスト層20mの成膜方法は特に制限されず、スピンコート法、スプレー法等の塗布法が好ましい。また、レジスト層20mの平均膜厚は、モールド圧接後のレジスト層20mの厚みが5nm〜200nmとなる範囲内であることが好ましい。
【0039】
レジスト組成物20としては、重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含む重合性化合物21と、光L1により活性化する重合開始剤Iとを含んでいればよく、その他1官能のモノマー成分、基板とのカップリング剤、揮発性溶剤を適宜含むことができる。
【0040】
本実施形態のパターン形成方法では、後工程のモールド剥離時にレジスト層40を加熱して40℃以上とした状態で剥離を行うことにより、剥離をスムーズにして、精度の良いパターニング及びモールドへの付着物を低減させて量産性の高いパターニングを実現する。
【0041】
通常の熱インプリント法では、レジスト材として熱可塑性樹脂を用いており、温度が常温より高いTg付近の温度状態でモールドを押し当てて加圧を行うことにより、樹脂の流動性や、または高圧力下における塑性変形性によってモールド表面に形成されたパターンへと入り込むことで、パターン状にレジストの成形を行ったのち、パターン形状維持が可能な温度までレジスト材の温度を下げてから剥離する。温度が高い状態でモールドをレジスト層から剥離しようとすると、ポリマーが流動性を有していたり、塑性変形しやすい状態となっているため、パターン形状を維持できずにパターニング精度を低下させてしまう問題が発生する。そのため、剥離時の温度をTgより低い領域以下で制御した状態で剥離する必要がある。
【0042】
一方で、光インプリントでは、通常は常温で流動性を有する光硬化性樹脂を用いることにより、熱インプリント方式のような熱サイクルが必要ないことをメリットの一つとする方式であり、インプリント時のモールドへの加圧を高圧条件としなくても微細パターン成形性や残膜薄膜化に優れるほか、パターニング性と離型性とを両立するための精密な温度制御を必要とする温度サイクルが不要となりその分インプリント後のモールド等の剥離の精密制御が不要となり、その分タクトが短くなることもメリットとなる。また熱方式のような加熱時の樹脂や基板間の収縮/膨張率差によるマクロなパターンの位置ずれ等の懸念が無い。
【0043】
近年開発されている光インプリントにおける微細パターン成形性や残膜薄膜化に向けた技術の方向性として、剥離時における剥離抵抗を低減する目的で、モールド側又はレジスト組成物側に含フッ素化合物を離型剤として導入することにより離型性を高めることが通常である。
【0044】
しかしながら、「背景技術」の項において述べたように、通常用いられている含フッ素化合物の離型剤は、離型後にモールド側に付着して蓄積されやすく、パターン形状精度が低下して、数十ナノメートルサイズ以下のパターンに適用することが難しい上、モールドの劣化を促進させることが懸念される。
【0045】
本発明者は、光インプリントにおいて、硬化後のレジスト層を加熱すると、レジスト層は、弾性率が低下し、破断点伸度が大きくなって弾性変形の許容性を大きくなることに着目し、モールド剥離時のレジスト層を加熱制御することにより、モールドの離型性を高めて、上記モールドの劣化を促進させることなく、ナノオーダの高精度なパターニングを可能とする方法、及び、その方法に適用可能なレジスト組成物の新規材料設計及び加熱制御条件(離型適正温度条件)を見出した。
【0046】
かかる方法における加熱制御条件及びレジスト組成物の材料設計では、加熱による基板との熱膨張係数差による位置ずれや塑性変形よって、パターン形状の変化がマクロレベルでもミクロレベルでも実質的に発生せず、パターン精度に影響を及ぼさないことが重要となる。更に、レジスト組成物には、剥離後のエッチング工程において、エッチング耐性に優れる性質も必要とされる。
【0047】
すなわち、本発明のパターン形成方法において、レジスト組成物20の主成分として、重合により架橋して三次元構造(架橋ポリマー)を形成する多官能単量体を含む重合性化合物21を用いることにより、変形性を有する前記離型適性温度範囲まで硬化後のレジスト層40の温度を上昇させた状態でモールド30を剥離しても、レジスト層40のパターン形状を良好に維持可能であることを見出した。
【0048】
モールド30の剥離時には、モールド30とレジスト40との付着力によりレジスト40が受ける応力がレジスト40内の特定のエリアに集中しやすく、本発明におけるレジスト材を使用して光インプリント法を行った後の常温における剥離時や、また熱インプリントで熱可塑性の樹脂を用いている場合の熱可塑性樹脂のTg以下における剥離時は、その集中箇所においてレジスト40の剥離やパターン欠損を生じやすい。
【0049】
本発明では、硬化後のレジスト層40を架橋ポリマーとすることにより、加熱によりヤング率が低下して変形が容易になるが、その変形は塑性変形ではなく弾性変形となるため、変形を引き起こした応力(この場合は剥離による応力)が解除された時点でまた、レジスト層40のパターン形状が元に戻る。また、それに加えて、剥離時のレジスト40の脆性も良好であるため、剥離時(変形時)の破断も抑制することができる。従って、本発明のパターン形成方法によれば、離型性良くモールド30が剥離でき、且つ、高精度なパターニングを実現することができる。
【0050】
レジスト組成物20には、機能として多官能重合性基を有することによる架橋性の発現を狙ったり、または炭素密度を高める、または結合エネルギーの総量を高める、または硬化後の樹脂中に含まれるO、S、N、等の電気陰性度が高い部位の含有率を抑制する等によりエッチング耐性を向上させる目的で重合性官能基を有する1官能以上のモノマー成分を含んでもよく、更に必要に応じて、基板とのカップリング剤、揮発性溶剤、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0051】
基板とのカップリング剤としては、前述の基板の密着処理剤と同様の材料を用いることができる。含有量としては、基板とレジスト層との界面に配置する程度に含有していれば良く、10質量%以下であれば良く、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更により好ましく、0.5質量%以下であることが最も好ましい。
【0052】
レジスト組成物20の粘度は、モールド30に形成されたパターンへのレジスト組成物中の固形分(揮発溶剤成分を除いた成分)の入り込みとモールドへの濡れ広がり性の観点から、固形分の粘度は、1000mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることが更により好ましい。しかしながら、インクジェットを利用する場合は、室温またはヘッドで吐出時に温度制御可能であればその温度範囲内にて15mPa・s以下となることが好ましく、またレジスト組成物の表面張力が20〜35(mN/m)の範囲となることがインクジェットでの吐出安定性を確保する観点で好ましい。
【0053】
レジスト組成物20中には、更に、含フッ素重合性界面活性剤22を備えることが好ましい。かかる構成では、レジスト表面層に偏在する含フッ素化合物層により、モールド30の離型性が良くなって、より小さな力で剥離可能となるため、パターンの変形が抑制され、厳密な剥離プロセス制御を行うことなく、より高精度のパターニングが可能となる。
【0054】
本発明者は、含フッ素重合性化合物は、重合性化合物を主成分とするレジスト組成物中において、上記樹脂層中における含フッ素化合物の界面偏在性により、レジスト組成物の界面活性剤として利用可能であると考えた。後述する含フッ素重合性化合物をレジスト組成物20中の界面活性剤として用いることにより、界面活性剤も重合性化合物21と同様に重合し、パターン形成性及びエッチング耐性の良好なパターンの一部として硬化されるため、界面活性剤22の偏在によるパターン欠損を生じる可能性が極めて低くなる。また、モールド30との接触面に存在する界面活性剤22も重合して硬化するため、非重合性の界面活性剤を用いた場合に問題となる界面活性剤の付着と蓄積によるモールド30のパターン面の劣化をも抑制することができる。
【0055】
重合性化合物21としては特に制限されないが、硬化後のパターンの精度及びエッチング耐性等の品質の良好なものであることが好ましい。本発明者らは、かかる重合性化合物21としては、重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含むことが好ましく、多官能単量体は、少なくとも1つの2価又は3価の芳香族基を有するものであることが好ましいことを見出した。
【0056】
硬化(重合)後に三次元構造を有するレジストの場合は、硬化処理後の形状維持性が良く、モールド剥離時にモールドとレジストとの付着力によって、レジストにかかる応力がレジスト構造体の特定エリアに集中し、パターンが塑性変形することが抑制される。
【0057】
しかしながら、重合後に三次元構造を有する重合体となる多官能モノマーの比率や、重合後に三次元架橋を形成する部位の密度が上昇すると、硬化後のヤング率が大きくなって変形性が低下し、また膜の脆性が悪化するため、モールド剥離時に破断しやすくなってしまうことが懸念される。特にパターンサイズが30nm幅以下でパターンアスペクト比が2以上のパターンを残膜厚みが10nm以下となる態様では、ハードディスクパターンや半導体パターンなどの広エリアでの形成を試みた場合に、パターンの剥がれやもげが発生する確率が大きくなると考えられる。
【0058】
従って、多官能単量体は、重合性化合物21中に10質量%以上含有されることが好ましく、20質量%以上含有されることがより好ましく、30質量%以上含有されることが更に好ましく、40質量%以上であることが最も好ましいことを見出した。
【0059】
また、下記式(C1)で表される架橋密度が0.01個/nm以上10個/nm以下であることが好ましく、0.1個/nm以上6個/nm2以下であることがより好ましく、0.5個/nm以上5.0個/nm以下であることがもっとも好ましいことを見出した。組成物の架橋密度は、各分子の架橋密度を求め、更に重量平均より求めるか、または組成物の硬化後密度を測定し、Mw、および(Nf−1)についてそれぞれの値を重量平均した値と上記式(C1)より求める。
【数1】

【0060】
[Da:1分子の架橋密度,Dc:硬化後密度,Nf:モノマー1分子中に含まれるアクリレート官能基数,Na:アボガドロ定数,Mw:分子量]
【0061】
重合性化合物21の重合性官能基としては、特に制限されないが、反応性及び安定性が良好であることから、メタクリレート基、アクリレート基が好ましい。
【0062】
ドライエッチング耐性は、レジスト組成物の大西パラメータ及びリングパラメータにより評価することができる。大西パラメータが小さく、また、リングパラメータが大きいものほどドライエッチング耐性に優れる。本発明において、レジスト組成物20は、大西パラメータが4.0以下、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下となるように、また、リングパラメータが0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上となるものを好適としている。
【0063】
上記各パラメータは、レジスト組成物20を構成する揮発溶剤成分以外の構成物質について、構造式を元に後述の計算式を用いて算出された材料パラメータ値を、組成重量比を元に組成物全体で平均化した値として求める。従って、レジスト組成物20の主成分である重合性化合物21についても、レジスト組成物20中のその他の成分、及び上記パラメータを考慮して選択することが好ましい。
大西パラメータ=(化合物中の総原子数)/(化合物中の炭素原子数)−(化合物中の酸素原子数)
リングパラメータ=(環構造を形成する炭素質量)/(化合物の全質量)
【0064】
重合性化合物21としては、例えば、1,4−ジアクリロイルオキシメチルベンゼンと2’―ナフチルメチルアクリレートとの混合単量体、1,4−ジアクリロイルオキシメチルベンゼンとベンジルアクリレートとの混合単量体等が好ましい。また、多官能単量体として、脂肪族多官能単量体である市販のアロニックスM220等も用いることができる。
【0065】
重合性化合物21としては、以下に示す重合性単量体、及びかかる重合性単量体が数単位重合したオリゴマー等が好ましい。パターン形成性とエッチング耐性の観点から、重合性単量体(Ax)および特開2009−218550[0032]〜[0053]に記載の化合物のうちの少なくとも1種類以上を含むことが好ましい。
【0066】
−重合性単量体(Ax)−
重合性単量体(Ax)は、下記一般式(I)で表される。
【化1】

【0067】
[式中、Arは置換基を有していてもよい2価または3価の芳香族基を表し、Xは単結合または有機連結基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、nは2または3を表す。]
【0068】
一般式(I)中、Arとしては、n=2のときは2価の芳香族基(すなわちアリーレン基)を表し、n=3のときは3価の芳香族基を表す。アリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基などの炭化水素系アリーレン基;インドール、カルバゾールなどが連結基となったヘテロアリーレン基などが挙げられ、好ましくは炭化水素系アリーレン基であり、さらに好ましくは粘度、エッチング耐性の観点からフェニレン基である。アリーレン基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アミド基、スルホンアミド基が挙げられる。
【0069】
Xの有機連結基としては、鎖中にヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基が挙げられる。その中でも、アルキレン基、オキシアルキレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。Xとしては、単結合またはアルキレン基であることが特に好ましい。
【0070】
1は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。R1が置換基を有する場合、好ましい置換基としては、特に制限はないが、例えば水酸基、ハロゲン原子(フッ素を除く)、アルコキシ基、アシルオキシ基を挙げることができる。nは2または3であり、好ましくは2である。
【0071】
重合性単量体(Ax)は、下記一般式(I−a)または(I−b)で表される重合性単量体であることが、組成物粘度を低下させる観点から好ましい。
【化2】

【0072】
[式中、X1、X2は、それぞれ独立に単結合または炭素数1〜3の置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。]
【0073】
一般式(I−a)中、前記X1は、単結合またはメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることが粘度低減の観点からより好ましい。X2の好ましい範囲は、前記X1の好ましい範囲と同様である。
【0074】
1は一般式(I)におけるとR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0075】
重合性単量体(Ax)は25℃において液体であると、添加量を増やした際にも異物の発生が抑制でき好ましい。
【0076】
重合性単量体(Ax)は25℃における粘度が70mPa・s未満であることがパターン形成性の観点から好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましく、30mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0077】
好ましい重合性単量体(Ax)の具体例を示す。R1は一般式(I)におけるR1と同義である。R1としては硬化性の観点から、水素原子が好ましい。なお、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【化3】

【0078】
これらの中でも、下記に示す化合物が25℃において液体であり、かつ、低粘度で、さらに良好な硬化性を示し、特に好ましい。
【化4】

【0079】
レジスト組成物20においては、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良の観点から、必要に応じて重合性単量体(Ax)と、以下に説明する重合性単量体(Ax)とは異なる他の重合性単量体と、を併用することが好ましい。
【0080】
−他の重合性単量体−
他の重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体;オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物);ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;フッ素原子を有する化合物;プロペニルエーテルまたはブテニルエーテル等を挙げることができ、硬化性の観点から、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体が好ましい。
【0081】
これらの他の重合性単量体のうち、インプリント適性とドライエッチング耐性、硬化性、粘度等の観点から、特開2009−218550[0032]〜[0053]に記載の化合物をより好ましく含むことが出来る。
【0082】
更に他に含むことが出来る前記エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体(1〜6官能の重合性不飽和単量体)について説明する。
【0083】
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては具体的に、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、が例示される。
【0084】
これらの中で特に、芳香族構造および/または脂環炭化水素構造を有する単官能(メタ)アクリレートがドライエッチング耐性を改善する観点から好ましい。具体例ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート、が特に好ましい。
【0085】
他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
【0086】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0087】
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0088】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0089】
オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0090】
本発明に好ましく使用することのできる前記オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などを例示することができる。
【0091】
これらの中で特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0092】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0093】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報、特許第2906245号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。
【0094】
本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0095】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0096】
また、他の重合性単量体としては、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0097】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
【0098】
他の重合性単量体としては、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを用いることもできる。前記プロペニルエーテルまたはブテニルエーテルとしては、例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0099】
(含フッ素重合性界面活性剤)
含フッ素重合性界面活性剤22としては、フッ素原子を有する官能基を少なくとも1つと、重合性官能基を少なくとも1つ有する単量体又はオリゴマー等の重合性化合物であれば特に制限されないが、良好なパターン形成を可能にする上で、重合性化合物21と重合しやすい立体配置を有するものであることが好ましい。
【0100】
本実施形態では、含フッ素重合性界面活性剤22は、レジストパターンの一部となるため、良好なパターン形成性、硬化後のモールド離型性及びエッチング耐性の良好なレジスト特性を有するものであることが好ましい。
【0101】
含フッ素重合性界面活性剤22の含有量は、レジスト組成物20中、例えば、0.001〜5質量%であり、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001〜5質量%の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化や、インプリント後のエッチング工程におけるエッチング適性の劣化を招きにくい。
【0102】
含フッ素重合性界面活性剤22は、その側鎖、特に末端に重合性基を有していることが好ましい。重合性官能基としては、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基などのラジカル重合性官能基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などのカチオン重合性官能基などが挙げられ、ラジカル重合性官能基が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリレート基等のエチレン不飽和結合基である。
【0103】
含フッ素重合性界面活性剤22のフッ素原子を有する基としては、フロロアルキル基およびフロロアルキルエーテル基から選ばれる含フッ素基が好ましい。
【0104】
フロロアルキル基としては、炭素数が2以上のフロロアルキル基であることが好ましく、4以上のフロロアルキル基であることがより好ましく、上限値としては特に定めるものではないが、20以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。最も好ましくは炭素数4〜6のフロロアルキル基である。前記好ましいフロロアルキル基としては、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、ヘプタフロロプロピル基、ヘキサフロロイソプロピル基、ノナフロロブチル基、トリデカフロロヘキシル基、ヘプタデカフロロオクチル基が挙げられる。
【0105】
本発明のパターン形成方法において、含フッ素重合性界面活性剤22は、トリフロロメチル基構造を有するフッ素原子を有する重合性化合物であることが好ましい。すなわち、フロロアルキル基の少なくとも1つは、トリフロロメチル基構造を含有することが好ましい。トリフロロメチル基構造を有することで、少ない添加量(例えば、10質量%以下)でも本願発明の効果が発現し、表面エネルギーが低下して離型性が向上する
フロロアルキルエーテル基としては、フロロアルキル基の場合と同様に、トリフロロメチル基を有しているものが好ましく、パーフロロエチレンオキシ基、パーフロロプロピレンオキシ基を含有するものが好ましい。−(CF(CF)CFO)−などのトリフロロメチル基を有するフロロアルキルエーテルユニットおよび/またはフロロアルキルエーテル基の末端にトリフロロメチル基を有するものが好ましい。
【0106】
本発明のパターン形成方法において、含フッ素重合性界面活性剤22の特に好ましい態様は、フロロアルキル基およびフロロアルキルエーテル基から選ばれる含フッ素基を少なくとも2つ含有し、かつ、該含フッ素基の少なくとも2つは、炭素数2以上の連結基により隔てられている重合性単量体である。すなわち、該重合性単量体が含フッ素基を2つ有する場合は、その2つの含フッ素基は炭素数2以上の連結基で隔てられており、重合性単量体が含フッ素基を3つ以上有する場合は、このうち少なくとも2つが炭素数2以上の連結基で隔てられており、残りの含フッ素基はどのような結合形態を有していてもよい。炭素数2以上の連結基はフッ素原子で置換されていない炭素原子を少なくとも2つ有する連結基である。
【0107】
同様の観点から、トリフロロメチル基構造を3つ以上含有する重合性単量体も好ましく、トリフロロメチル基構造を3〜9個、さらに好ましくは4〜6個含有する重合性単量体が好ましい。トリフロロメチル基構造を3つ以上含有する化合物としては1つの含フッ素基に2つ以上のトリフロロメチル基を有する分岐のフロロアルキル基、例えば−CH(CF基、−C(CF、−CCH(CF2CH基などのフロロアルキル基を有する化合物が好ましい。
【0108】
フロロアルキルエーテル基としては、トリフロロメチル基を有しているものが好ましく、パーフロロエチレンオキシ基、パーフロロプロピレンオキシ基を含有するものが好ましい。−(CF(CF)CFO)−などのトリフロロメチル基を有するフロロアルキルエーテルユニットおよび/またはフロロアルキルエーテル基の末端にトリフロロメチル基を有するものが好ましい。
【0109】
炭素数2以上の連結基中に含まれる官能基としては、アルキレン基、エステル基、スルフィド基およびアリーレン基が例示され、少なくとも、エステル基および/またはスルフィド基を有することがより好ましい。
【0110】
炭素数2以上の連結基は、アルキレン基、エステル基、スルフィド基、アリーレン基およびこれらの組み合わせが好ましい。
【0111】
これらの基は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基を有していても良い。
【0112】
含フッ素重合性界面活性剤22が有する全フッ素原子の数は、1分子当たり、6〜60個が好ましく、より好ましくは9〜40個、さらに好ましくは12〜40個である。
【0113】
含フッ素重合性界面活性剤22は、下記に定義するフッ素含有率が20〜60%のフッ素原子を有する重合性化合物であることが好ましく、含フッ素重合性界面活性剤22が重合性単量体の場合、より好ましくは30〜60%であり、さらに好ましくは35〜60%である。含フッ素重合性界面活性剤22が重合性基を有するオリゴマーの場合、フッ素含有率がより好ましくは20〜50%であり、さらに好ましくは20〜40%である。フッ素含有率を適性範囲とすることで他成分との相溶性に優れ、モールド汚れを低減でき且つ、離型性との両立が可能となり、本発明の効果である繰り返しパターン形成性が向上する。本明細書中において、前記フッ素含有率は下記式(C2)で表される。
【0114】
式(C2)
【数2】

【0115】
含フッ素重合性界面活性剤22の好ましい形態の一つとしては、フッ素原子を有する基の好ましい一例として、下記一般式(II−a)で表される部分構造を有する化合物(単量体)が挙げられる。このような部分構造を有する化合物を採用することにより、繰り返しパターン転写を行ってもパターン形成性に優れ、かつ、組成物の経時安定性が良好となる。
【化5】

【0116】
[式(II−a)中、nは1〜8の整数を表し、好ましくは4〜6の整数である。]
【0117】
含フッ素重合性界面活性剤22の好ましい他の一例として、下記一般式(IV)で表される部分構造を有する化合物が挙げられる。もちろん、一般式(II)で表される部分構造と、一般式(II−b)で表される部分構造の両方を有していてもよい。
【化6】

【0118】
[一般式(II−b)中、Lは単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を表し、Lは炭素数1〜8のアルキレン基を表し、m1およびm2はそれぞれ、0または1を表し、m1およびm2の少なくとも一方は1である。m3は1〜3の整数を表し、pは1〜8の整数を表し、m3が2以上のとき、それぞれの、−C2p+1は同一であってもよいし異なっていてもよい。]
およびLは、それぞれ、炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。また、アルキレン基は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していてもよい。m3は、好ましくは1または2である。pは4〜6の整数が好ましい。
【0119】
好ましくは下記一般式(II−c)で表される重合性単量体である。
【化7】

【0120】
[一般式(II−c)中、Rは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し、Aは(a1+a2)価の連結基を表し、a1は1〜6の整数を表す。a2は2〜6の整数を表し、RおよびRはそれぞれ炭素数1〜8のアルキレン基を表す。m1およびm2はそれぞれ、0または1を表し、m1およびm2の少なくとも一方は1である。m3は1〜3の整数を表す。m4およびm5は、それぞれ、0または1を表し、m4およびm5の少なくとも一方は1であり、m1およびm2の両方が1のとき、m4は1である。nは1〜8の整数を表す。]
【0121】
は、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0122】
Aは好ましくはアルキレン基および/またはアリーレン基を有する連結基であり、さらにヘテロ原子を含む連結基を含有していても良い。ヘテロ原子を有する連結基としては−O−、−C(=O)O−、−S−、−C(=O)−が挙げられる。これらの基は本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していても良いが、有していない方が好ましい。Aは、炭素数2〜50であることが好ましく、炭素数4〜15であることがより好ましい。
【0123】
a1は、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1または2である。a2は、好ましくは2または3、さらに好ましくは2である。
【0124】
a1が2以上のとき、それぞれのAは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0125】
a2が2以上のとき、それぞれのR、R、m1、m2、m3、m4、m5およびnは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0126】
本発明のパターン形成方法で用いる含フッ素重合性界面活性剤22として用いる重合性単量体の分子量は、好ましくは500〜2000である。また、該重合性単量体の粘度は、好ましくは600〜1500であり、より好ましくは600〜1200である。
【0127】
以下に、含フッ素重合性界面活性剤22として用いる重合性単量体の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記式中におけるRはそれぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子およびシアノ基のいずれかである。
【化8】

【0128】
また、その他の含フッ素重合性界面活性剤22として用いる重合性単量体としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する単官能重合性化合物が挙げられる。また、前記フッ素原子を有する重合性化合物としては、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロペンタンジ(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフロロヘキサンジ(メタ)アクリレートなどのフロロアルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートを有する2以上の重合性官能基を有する多官能重合性化合物も好ましい例として挙げられる。
【0129】
また、含フッ素基例えばフロロアルキル基、フロロアルキルエーテル基を1分子中に2つ以上有する化合物も好ましく用いることができる。
【0130】
フッ素原子を有する重合性化合物がオリゴマー等である場合、上記重合性単量体を繰り返し単位として含有するものが好ましい。
【0131】
そのほか、特開2006−114882[0018]〜[0048]に記載の化合物、特開2008−95037[0027]〜[0035]に記載の含フッ素重合性化合物等を界面活性剤として使用することができる。
【0132】
本発明に使用する含フッ素重合性化合物22の合成例を具体例の一つとして示す。
【0133】
[合成例1]
(含フッ素重合性単量体Ax−1の合成)
チオエリスリトール2gにエタノール45ml、水5mlを加え溶解させ、これに水酸化ナトリウム1.1gを加え室温で30分攪拌した。これに0.2g、パーフロロヘキシルエチルヨージド15.4gを加え、90℃で7時間反応させた。反応液に酢酸エチルを加え有機相を、順に、水および飽和食塩水で洗浄し、乾燥濃縮して(Ax−1a)を得た。
【0134】
(Ax−1a)6.7gをアセトン80mlに溶解させ、これにトリエチルアミン3.2gを加えた。さらに、これに氷冷下アクリル酸クロリド2.5gを滴下した。滴下後室温で20時間反応した後、反応液に水50mlを加えこれを酢酸エチルで抽出した。有機相を1N−塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、乾燥濃縮すると粗生成物が得られた。これをカラムクロマトグラフフィーにて精製すると重合性単量体Ax−1が2.8g得られた。
【0135】
H−NMR(CDCl):δ2.2−2.5(m,4H)、δ2.7−3.0(m,8H)、δ5.4(m,2H)、δ5.95(d,2H)、δ6.1(dd,2H)、δ6.45(d,2H)
【化9】

【0136】
[合成例2]
(重合性単量体Ax−2の合成)
ジチオエリスリトール2gを酢酸エチル20mlに溶解させ、これにトリエチルアミン0.2g、パーフロロヘキシルエチルアクリレート11.4gを加え、室温で4時間反応させた。反応液にトリエチルアミン4.0g、酢酸エチル20mlを加え、これに氷冷下アクリル酸クロリド2.9gを滴下した。滴下後室温で20時間反応した後、反応液に水50mlを加え攪拌した。有機相を1N−塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、乾燥濃縮すると粗生成物が得られた。これをカラムクロマトグラフフィーにて精製すると重合性単量体Ax−2が3g得られた。
【0137】
H−NMR(CDCl):δ2.4−3.0(m,16H)、δ4.4(t,4H)、δ5.4(m,2H)、δ5.9(d,2H)、δ6.1(dd,2H)、δ6.45(d,2H)
【0138】
[合成例3]
上記合成例1、2と同様の手法を用いて、重合性単量体(Ax−3)〜(Ax−7)を合成した。
【0139】
H−NMR(CDCl
(Ax−3)
δ2.3−2.6(m,4H)、δ2.8−3.0(m,6H)、δ3.1(m,1H)、δ4.4(m,2H)、δ5.9(d,2H)、δ6.1(dd,2H)、δ6.45(d,2H)
(Ax−4)
δ2.2−2.6(m,4H)、δ2.7−3.0(m,8H)、δ5.4(m,2H)、δ5.95(d,2H)、δ6.1(dd,2H)、δ6.45(d,2H)
(Ax−5)
δ2.8−3.0(m,12H)、δ5.4(m,2H)、δ5.8(m,2H)、δ5.9(d,2H)、δ6.1(dd,2H)、δ6.45(d,2H)
(Ax−6)
δ2.8−3.0(m,12H)、δ3.1(m,1H)、δ4.4(m,2H)、δ5.8(m,2H)、δ5.9(d,1H)、δ6.1(dd,1H)、δ6.45(d,1H)
(Ax−7)
δ2.3−2.6(m,4H)、δ2.8−3.0(m,6H)、δ3.1(m,1H)、δ4.4(m,2H)、δ5.9(d,2H)、δ6.1(dd,2H)、δ6.45(d,2H)
【化10】

【0140】
(重合開始剤I)
重合開始剤Iとしては、レジスト組成物20を硬化させる際に用いる光L1により活性化してレジスト組成物20に含まれる重合性化合物の重合を開始する活性種を発生するものであれば特に制限されない。重合開始剤Iとしては、ラジカル重合開始剤が好ましい。また、本発明において、重合開始剤Iは複数種を併用してもよい。
【0141】
重合開始剤Iとしては、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましく、例えば、特開平2008−105414号公報の段落番号0091に記載のものを好ましく採用することができる。
【0142】
重合開始剤Iの含有量は、溶剤を除く全組成物中、例えば、0.01〜15質量%であり、好ましくは0.1〜12質量%であり、さらに好ましくは0.2〜7質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
【0143】
光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量%以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
【0144】
これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤の添加量が種々検討されてきたが、インプリント用等の光インプリント用硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、開始剤がラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、レジスト組成物20では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
【0145】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤としては、アシルホスフィン系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008−105414号公報の段落番号0091に記載のものを好ましく採用することができる。
【0146】
なお、光L1には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
【0147】
光重合開始剤Iは、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスが発生すると、モールドが汚染されるため、頻繁にモールドを洗浄しなければならなくなったり、レジスト組成物20がモールド内で変形し、転写パターン精度を劣化させてしまったりするなどの問題を生じる。
【0148】
レジスト組成物20では、含まれる重合性単量体がラジカル重合性単量体であり、光重合開始剤Iが光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0149】
また、レジスト組成物20中には、含フッ素重合性界面活性剤22を含んでいることが好ましい。含フッ素化合物は一般的に樹脂層中では界面層(表面)に偏在する性質を有し、化合物中のフッ素置換率が高いほどより偏在性が大きいことが知られている。本実施形態において、レジスト組成物20中に含フッ素重合性界面活性剤22を含む場合は、図3(a)に示されるように、レジスト層20mの表層には含フッ素重合性界面活性剤22の層が形成される。含フッ素化合物は、モールド30に対して低付着性であり、潤滑性を有する上、硬化時に重合性化合物21と共に重合されて三次元構造を有する重合体となっている。従って、かかる構成により、レジスト層20mの硬化後における本発明の剥離プロセスでのモールド30の離型性が良くなって、より小さな力で剥離可能となるため、パターンの変形が抑制され、厳密な剥離プロセス制御を行うことなく、より高精度のパターニングが可能となる。
【0150】
レジスト組成物20中に含フッ素重合性界面活性剤22を含む場合は、レジスト組成物20中のフッ素含有量が多すぎると、エッチング耐性が低くなることから、重合性化合物21は、フッ素を含まないものであることが好ましい。レジスト組成物20中の含フッ素重合性界面活性剤22の含有量は、モールド剥離性と後工程であるドライエッチングプロセスでのパターン品質維持を考慮すると、パターン形成後のレジスト層表面における厚みが1.0nm以下となる量であることが好ましく、0.7nm以下であることがより好ましく、0.5nm以下となる量であることが更に好ましい。かかる含有量とするには、レジスト組成物20中において5質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1質量%以下とすることが好ましい。含フッ素重合性界面活性剤22の詳細は後記する。
【0151】
(その他成分)
既に述べたように、本発明のパターン形成方法において用いるレジスト組成物20は、上述の重合性化合物21、含フッ素重合性界面活性剤22、及び光重合開始剤Iの他に種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分等その他の成分を含んでいてもよい。以下にその他の成分について概要を説明する。
【0152】
−酸化防止剤−
レジスト組成物20では、公知の酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤の含有量は、重合性単量体に対し、例えば、0.01〜10質量%であり、好ましくは0.2〜5質量%である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が上記範囲となる。
【0153】
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0154】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名 Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0155】
−重合禁止剤−
レジスト組成物20は、重合禁止剤を少量含有することが好ましい。重合禁止剤の含有量としては、全重合性単量体に対し、0.001〜1質量%であり、より好ましくは0.005〜0.5質量%、さらに好ましくは0.008〜0.05質量%である、重合禁止剤を適切な量配合することで高い硬化感度を維持しつつ経時による粘度変化が抑制できる。
【0156】
−溶剤−
レジスト組成物20は、必要に応じて、種々の溶剤を含むことができる。特に膜厚500nm以下のパターンを形成する際には溶剤を含有していることが好ましい。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80〜200℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
【0157】
レジスト組成物20中の溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、塗布性、目的とする膜厚によって最適に調整されるが、塗布性改善の観点から、全組成物中0〜99質量%が好ましく、0〜97質量%がさらに好ましい。特に膜厚500nm以下のパターンを形成する際には20〜99質量%が好ましく、40〜99質量%がさらに好ましく、70〜98質量%が特に好ましい。
【0158】
−ポリマー成分−
レジスト組成物20では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。
【0159】
レジスト組成物20はドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を観点から、ポリマー成分を含有していてもよい。かかるポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性単量体との相溶性の観点から、2000〜100000が好ましく、5000〜50000がさらに好ましい。
【0160】
ポリマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは2質量%以下である。パターン形成性の観点から、レジスト組成物20において、溶剤を除く成分中、分子量2000以上のポリマー成分の含有量が30質量%以下である方が好ましい。樹脂成分はできる限り少ない方が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0161】
レジスト組成物20には、上記した成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0162】
レジスト組成物20は、上述の各成分を混合して調整することができる。また、各成分を混合した後、例えば、孔径0.003μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することもできる。光インプリント用硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
【0163】
レジスト組成物20において、溶剤を除く成分の25℃における粘度は1〜100mPa・sであることが好ましい。より好ましくは3〜50mPa・s、さらに好ましくは5〜30mPa・sである。粘度を適切な範囲とすることで、パターンの矩形性が向上し、さらに残膜を低く抑えることができる。
【0164】
なお、光L1には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
【0165】
(レジスト塗布工程―第2実施形態)
既に述べたように、第2実施形態では、レジスト組成物20の基板10上への配置方法が第1実施形態と異なる。第2実施形態では、レジスト組成物20を複数の液滴として離散的に配置して、レジスト層20mを形成する。(図2(b))。
【0166】
基板10及びその表面処理については第1実施形態と同様である。
【0167】
本実施形態において、液滴20の配置は、形成するパターン形状及び凹凸密度、凹部体積、濡れ拡がり特性に応じて適宜調整することが好ましい。かかる調整を行うことで、次工程のモールドの圧接時におけるパターン欠損やエアの混入、パターン形成後のレジスト層凹部と基板間の厚み(残膜厚み)のむらを抑制することができる。
【0168】
平均残膜厚みは、後行程であるドライエッチング等のリソグラフィプロセス後に基板上に形成されるパターンの品質を良好とするためには、15nm以下であることが好ましく、10nm以下とすることがより好ましく、5nm以下とすることがさらに好ましい。また残膜厚みの標準偏差値(σ値)が5nm以下であることが好ましく、3nm以下であることがより好ましく、1nm以下であることがさらに好ましい。
【0169】
残膜厚みが厚いと、ドライエッチングプロセスで加工対象となる基板面を露出させる工程でのレジストパターンの形状の劣化が大きくなり、エッチング後に所望の形状のパターンを得ることがより困難となる。
【0170】
上記液滴配置の調整が可能であれば、液滴の配置方法は特に制限されず、印刷法及びインクジェット法が挙げられ、調整が容易に実施できることから、インクジェット法が好ましい。
【0171】
配置パターンは、実験的に配置テストパターンを用いたテストインプリントを行い、得られたモールド上のパターンに対応した濡れ広がりと残膜厚みの分布と配置テストパターンとの関係から設計していく方法でも良いし、またはモールド上のパターンと、予測されるレジストの濡れ広がりの異方性とそれらの分布から最適な配置パターンを計算により求めてもよい。例えば、ライン状のパターンの場合、モールド表面上においてラインに沿う方向へのキャピラリーフォースを利用したレジスト液滴の濡れ速度が速く、ラインと垂直な方向への濡れ速度は遅くなることから、レジスト液滴の濡れ広がり異方性をある程度予測することができる。
【0172】
液滴20の塗布量の好適な量としては、モールド圧接後のレジスト層20mの厚みが5nm〜200nmとなる範囲内であることが好ましい。
【0173】
図3(b)は、液滴20の構成を示す概略断面図である。レジスト組成物20からなる液滴20は、フッ素を含まない重合性化合物21と、第1実施形態において記載したフッ素を含む重合性界面活性剤22とを含み、それぞれに、光L1により活性化する重合開始剤I(図示略)を含んでいる。
【0174】
第1実施形態において述べたように、含フッ素化合物は一般的に樹脂層中では界面層(表面)に偏在する性質を有し、化合物中のフッ素置換率が高いほどより偏在性が大きく、本実施形態においても、図3(b)に示されるように、含フッ素重合性界面活性剤22は、液滴20において、重合性化合物21の表面を覆う形で存在する。かかる構成によれば、液滴20を基板上に塗布する際の表面エネルギーが好適に制御されるため、安定性の高い吐出を行うことができる。
【0175】
液滴20において含フッ素重合性界面活性剤22の含有量は、モールド剥離性と後工程であるドライエッチングプロセスでのパターン品質維持を考慮すると、パターン形成後のレジスト層表面における厚みが1.0nm以下となる量であることが好ましく、0.7nm以下であることがより好ましく、0.5nm以下となる量であることが更に好ましい。かかる含有量とするには、液滴中において5質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1質量%以下とすることが好ましい。
【0176】
重合開始剤I、光L1、レジスト組成物20のその他の成分、及び粘度については、第1実施形態において記載したとおりである。
【0177】
(パターン形成工程)
次に、図1、2(c)〜(d)に示されるように、鋳型(モールド)30をレジスト層20mに、基板上面から圧接させてレジスト組成物20をモールド30のパターン凹部に充填させた後、光L1を照射してレジスト層20mを硬化させる。図1、2(d)では、基板10として光L1に対して良好な透光性を有するものを用いて、光L1を基板側から照射した態様を例に示してある。
【0178】
モールド30としては、本実施形態のように基板10が光L1に対して良好な透光性を有する場合は特に制限されないが、既に述べたように、基板10に光L1に対する透光性がない場合は、光L1をモールド30側から照射する必要があるため、光L1に対して透光性を有するものである必要がある。
【0179】
本発明のパターン形成方法は、パターンサイズが細い領域でより顕著な効果が得られ、特にパターン幅が30nm以下、パターンアスペクト比が2以上となる領域で特に顕著な効果を得ることができる。
【0180】
モールド30の形成方法としては、モールドとなる基板の表面に、既存の電子線描画法、露光機による転写法、インプリントによる転写法、これらを組合せた方法等により形成することができる。形成したパターンを元にエッチングプロセスにより基板表面にパターン加工を行い、所望のマスターパターンが加工された基板をモールドとして作製することができる。
【0181】
モールド30の圧接は、ヘリウム雰囲気下、または減圧下にて実施されることが好ましい。かかる構成とすることで、モールド30とレジスト樹脂層20m間のエアの混入を抑制し、気体成分によるパターン未形成領域の形成を回避することができる。
【0182】
より離型性を良好にするために、モールド30のパターン面は、離型処理されていることが好ましい。離型処理としては、離型剤をパターン面に塗布する方法が簡易である。離型剤としては、含フッ素樹脂、またはシリコーン系樹脂が好ましく、特にパーフルオロポリエーテル(PFPE)又はパーフルオロアルキル鎖を有する含フッ素樹脂が好ましい。
【0183】
離型剤の成膜方法は特に制限されず、ディップ法、スピン法、スプレー法、浸漬法、等の液相法のほか、蒸着等の気相法を用いることができる。
【0184】
また、別の離型処理方法として、レジストと相互作用の小さい無機層を表面に設置して離型層とすることもできる。無機層としては、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)層、またフッ素化したDLC層等が挙げられる。またその他のフッ素含有の無機層でもよい。
【0185】
最後に、レジスト層20mが硬化してポリマーレジスト層40が形成された後、レジスト層40を40℃以上の温度としてモールド30を剥離することにより、基板10上にレジスト層40からなるレジストパターン1が形成される(図1(e))。
【0186】
レジスト層40の温度を制御する方法としては、特に制限されないが、モールドおよび基板のチャック部で加温制御する機構、温度制御チャンバー内でモールドおよび基板をチャックしてモールド剥離する機構、輻射熱による温度制御機構等を有する剥離装置を用いてもよい。
【0187】
「課題を解決するための手段」の項目において述べたように、レジスト層40はナノオーダの膜厚を有する薄膜であることから、レジスト層40の温度は、基板温度やモールドの温度とほぼ同様であると考えられる。
【0188】
本発明者が検討した結果、40℃付近から、剥離性への本発明の効果は確認されるが、レジスト層40の組成及び物性に応じて剥離がスムーズに実施可能であり、パターン精度及びモールド30への付着物が少なくなる温度とすることが好ましい。
【0189】
加熱タクト、基板とモールドの熱収縮差による貼合せ状態でのパターンずれ、レジストの熱による変形等の懸念から、基板温度は40〜100℃が好ましく、40〜80℃がより好ましく、40〜70℃が更に好ましい。温度が120℃を超えると、基板間の熱膨張に起因するズレが顕著となり、例えば同心円状のハードディスクパターンの外周部で特にずれが大きくなりパターンがずれて欠損となる可能性がある。また、剥離時の温度を高くしすぎると、剥離時におけるモールドの離型処理層の劣化が顕著となりモールド寿命が低下して同一モールドを使用した繰返し生産性が低下するほか、温度制御への負荷が増加することでも生産性が低下してしまう。
【0190】
既に述べたように、本発明者は、レジスト層40を、三次元構造を有する架橋ポリマーとすることにより、剥離時のレジスト層40の温度を、レジスト層40が充分な弾性変形可能範囲を有する変形性を有するように調整して、高いパターン精度を維持しつつ、モールド30にレジスト層40の付着を抑制して、スムーズにモールド30を剥離することを可能にした。従って、本発明では、レジスト層の温度以外の剥離条件についての厳密な制御は必要とされず、また剥離時の温度も剥離適性温度範囲内であれば厳密な制御を必要としない。
【0191】
モールド30の剥離は、周辺エリアより序々に剥離してもよいし、一方の側より徐々に剥離してもよい。また、モールド側から加圧しながら剥離することで、モールドがレジスト層から剥離する境界線上でのレジスト層へかかる力を低減させて剥離する方法(加圧剥離法)等を組み合わせて用いてもよい。
【0192】
モールドを剥離する方向としては、公知に提案された方向を適宜選択することができるが、剥離時にパターンにかかる外力を分散させパターン欠損を抑制する目的で、パターンの外周部側から徐々に剥離することが好ましい。
【0193】
「パターン基板の製造方法」
上記の方法により、基板10上にパターン形成されたレジスト層40は、リソグラフィ法による基板10のパターニングのマスクとして用いることができる。本実施形態では、図1及び2(f)に示されるように、基板10上にレジストパターン1をマスクとして、基板10の表面10Sを凹凸パターン加工する。
【0194】
基板10の加工方法は特に制限されないが、基板面10Sに対して略垂直方向に、パターン精度良く加工できる方法であることが好ましい。好ましい加工方法としては、ドライエッチング法、イオンミリング法等が挙げられる。
【0195】
所望の深さの凹部が基板10Sに形成されたら(図1、図2(g))、基板10S上に残るレジスト層40を除去して、パターン基板2を得ることができる(図1、図2(h))。レジスト層40の除去方法としては特に制限されないが、酸素プラズマによる異方性エッチング等を用いることができる。
【0196】
本発明のパターン形成方法では光インプリント法において、重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含む重合性化合物21と、光(L1)により活性化する重合開始剤Iとを含むレジスト組成物20を用い、レジスト層20mの温度が40℃以上となる条件で鋳型30をレジスト層20mから剥離する。かかる方法では、硬化したレジスト層40を加熱することにより弾性変形しやすく、且つ脆性を良好した状態で剥離するため、パターン形成不良の発生を抑制することができる。また、硬化後のレジスト組成物は三次元構造を有する重合体となるため、加熱による変形は塑性変形ではない。従って、剥離後のパターン精度も良好に維持される。
【0197】
また、本発明のパターン形成方法では、レジスト組成物20中のフッ素化率が低くてもよいことから、レジスト組成物20の粘度及び硬化後のレジスト材のエッチング耐性を好適に保つことができる上、レジスト層20mの鋳型との界面に偏在して、パターン形成不良や鋳型の汚れによる劣化を促進させる界面活性剤を添加する必要もない。
【0198】
従って、本発明によれば、インプリント法によるパターン形成において、ナノオーダのパターン形成においても高精度なパターニングが可能であり、量産性及びエッチング耐性に優れたパターン形成を行うことができる。
【0199】
また、本発明のパターン形成方法により作られたレジストパターン1をマスクとして用いて、基板10をリソグラフィ法により加工することにより、高精度にパターニングされたパターン基板2を製造することができる。
【実施例】
【0200】
本発明に係る実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
<レジスト塗布工程>
Si基板を用意し、加工表面をUVクリーナー(処理時間1分)でクリーニングした後、シランカップリング剤3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103)(信越化学工業株式会社製)0.1gと有機溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)10gとを混合した表面処理液を用いて、スピンコート法により界面結合剤層を厚み0.1nmとなる条件で成膜し、更に120℃5分の条件でアニール処理を行った。
【0201】
次に、以下の組成にてレジスト組成物R1を調製し、Si基板の上記表面処理した表面上に、ベーク後の厚みが40nmとなるようにスピンコート法にてレジスト組成物を塗布し、更にベーキング(60℃、1分)を行い、基板上にレジスト層を形成した。
【0202】
<<レジスト組成物R1>>―芳香族多官能単量体―
・重合性化合物(ナフチルメチルアクリレート、1,4−ジアクロイルオキシメチルベンゼン 各20g)
・含フッ素重合性界面活性剤(Ax−4) 1.0g
・光重合開始剤(エチルー2,4,6−トリエチルベンゾインフェニルホスフィネート)(Irgacure 379、BASF社製) 0.8g
・有機溶剤(PGMEA:固形分濃度4%) 959.0g
<インプリント工程>
表面に同心円上に同心円状ストライプが75nmピッチ(凸部45nm幅、深さ60nm、テーパー角83°、半径方向13mm〜32mm)で並んだ凹凸パターンが2.5インチのディスク状に形成された石英製モールド構造体を用意し、凹凸パターン面にフッ素系防汚コーティング剤オプツールDSX(ダイキン工業製)を用いて離型処理を施した。
【0203】
レジスト層が形成されたSi基板に対して、チャンバー内でヘリウム雰囲気下にて上記モールド構造体の凹凸面を押し当てた後、室温・10気圧の条件の下、モールド構造体全面にて均一に60秒間加圧することにより、モールド構造体上に形成された凹凸パターンをレジスト層に転写した。この状態でモールド構造体側からUV照射(波長365nm)により300mJ/cmを照射してレジストを硬化させてパターニングした形状を固定化した。
【0204】
次いで、基板裏面をヒーター機構の付いた吸引チャックに固定化させ、基板を50℃に加熱した。基板温度を50℃に保った状態で、モールド構造体を貼り合せた面の外周エッジ部からレジスト層から1秒間かけて剥離し、凹凸パターンが転写されたレジスト層が形成されたパターン形成体を作製した。
【0205】
<基板加工工程>
凹凸パターンが転写されたレジスト層が形成されたパターン形成体に対し、凹凸パターンが転写されたインプリントレジスト層をマスクにして、裏面より10℃に冷却した基板に対してアルゴンイオンミリング法(ULVAC社製、ICPエッチング装置NE−550)によりドライエッチングを行い、レジスト層に形成された凹凸パターン形状に基づく凹凸形状を基板に形成した。
【0206】
<レジスト層除去工程>
その後、凹凸形状が形成されたパターン形成体の表面に酸素アッシング処理を行い、さらにUV処理を行うことで基板加工後に残ったレジスト層を除去した。
【0207】
(実施例2、3)
モールド構造体の剥離時の基板温度を80℃,110℃とした以外は実施例1と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0208】
(実施例4)
レジスト組成物R1中の、含フッ素重合性界面活性剤(Ax−4)の量を10分の1とした以外は実施例1と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0209】
(比較例1)
モールド構造体の剥離時の基板温度を150℃とした以外は実施例1と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0210】
(比較例2)
モールド構造体の剥離時に基板を加熱しなかった(基板温度25℃)以外は実施例1と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0211】
(比較例3)
比較例2において、レジスト組成物の塗布量5倍にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0212】
(実施例5)
含フッ素重合性化合物Bとして、PF3320(OMNOVA社製)を用いた以外は実施例1と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0213】
(実施例6,7)
モールド構造体の剥離時の基板温度を80℃,110℃とした以外は実施例5と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0214】
(比較例4)
モールド構造体の剥離時の基板温度を150℃とした以外は実施例5と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0215】
(実施例8)
含フッ素重合性化合物Cとして、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ1,6−ヘキシルジアクリレート(SynQuest Laboratories, Inc.製)を用いた以外は実施例5と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0216】
(実施例9,10)
モールド構造体の剥離時の基板温度を80℃,110℃とした以外は実施例8と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0217】
(比較例5)
モールド構造体の剥離時の基板温度を150℃とした以外は実施例8と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0218】
(実施例11)
レジスト組成物として、下記R2を用いた以外は実施例1と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0219】
<<レジスト組成物R2>>−脂肪族多官能単量体―
・重合性化合物(アロニックスM220、アロニックスM310 各20g)
・含フッ素重合性界面活性剤(Ax−4) 1.0g
・光重合開始剤(エチルー2,4,6−トリエチルベンゾインフェニルホスフィネート)(Irgacure 379、BASF社製) 0.8g
・有機溶剤(PGMEA:固形分濃度4%) 959.0g
(実施例12,13)
モールド構造体の剥離時の基板温度を80℃,110℃とした以外は実施例11と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0220】
(実施例14)
レジスト組成物R2中の、含フッ素重合性界面活性剤(Ax−4)の量を10分の1とした以外は実施例11と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0221】
(実施例15)
レジスト組成物R2中に、含フッ素重合性界面活性剤(Ax−4)を含まないものとした以外は実施例11と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0222】
(比較例6)
モールド構造体の剥離時の基板温度を150℃とした以外は実施例11と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0223】
(比較例7)
モールド構造体の剥離時に基板を加熱しなかった(基板温度25℃)以外は実施例11と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0224】
(比較例8)
比較例7において、レジスト組成物の塗布量5倍にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0225】
(比較例9〜11)
界面活性剤として、非重合性の含フッ素化合物を用いた以外は実施例11〜13と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0226】
(比較例10,11)
界面活性剤として、非重合性の含フッ素化合物を用いた以外は実施例12,13と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0227】
(比較例12)
レジスト組成物として、下記R3を用いた以外は実施例1と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0228】
<<レジスト組成物R3>>
・重合性化合物(ノニルフェニルエチレンオキサイド変性アクリレート(アロニックス M113、東亞合成(株)社製) 32g、 アロニックスM310 東亞合成(株)社製 8g)
・含フッ素重合性界面活性剤(Ax−4)1.0g
・光重合開始剤(エチルー2,4,6−トリエチルベンゾインフェニルホスフィネート)(Irgacure 379、BASF社製) 0.8g
・有機溶剤(PGMEA:固形分濃度4%) 959.0g
(比較例13,14)
モールド構造体の剥離時の基板温度を80℃,110℃とした以外は比較例12と同様にしてマスクパターンの形成及び基板の加工を行った。
【0229】
<評価>
上記実施例及び比較例について、レジストパターンの形状や位置等の品質、及び、残膜厚み、繰り返しパターン形成(50回)特性劣化、基板加工時の形状と品質について下記のとおり評価した。その結果を表1に示す。
【0230】
<<レジストパターンの形状と残膜厚み>>
・高さ:パターン高さをモールド深さと比較しパターン形成性の指標として用いた。
凸部の高さ(凹部の深さ)のモールドとの違いが±5%未満 ○
凸部の高さ(凹部の深さ)のモールドとの違いが±5〜10% △
凸部の高さ(凹部の深さ)のモールドとの違いが±10%超 ×
・剥れ:剥れの程度を指標として離型性を評価した
剥れ、線切れ等のパターン欠陥が全体の1%以下 ○
剥れ、線切れ等のパターン欠陥が全体の1%より大きい比率で発生 ×
・パターン位置ずれ:光顕で確認可能なパターンの位置ずれの発生有無より評価した。
位置ずれ発生箇所無し ○
位置ずれの発生箇所あり ×
・形状精度: SEMで観察したライン部の断面形状(矩形性)について以下の指標でパターンの歪みを評価した
パターン断面の左右のテーパー角の差が2°以内 ○
パターン断面の左右のテーパー角の差が2°より大きく5°以内 △
パターン断面の左右のテーパー角の差が5°より大きい ×
・パターン線幅:SEMで観察したライン凸部の幅について、モールド凹部の幅を基準として評価した
差が±5%未満 ○
差が±5〜10% △
差が±10%超 ×
<<基板加工時の形状と品質>>
・RIEドライエッチング時の基板加工性:
凸部高さの目標高さとの差が±5%未満、かつラフネスがモールドに対して同じがモールドより小さい ○
凸部高さの目標高さとの差が±5〜10%、またはラフネスがモールドのラフネスより大きくかつプラス1nmよりは小さい △
凸部高さの目標高さとの差が±10%超、またはラフネスがモールドのラフネスより1nm以上大きい ×
・繰り返しパターン形成(50回)特性劣化評価
繰返し50回インプリントを実施した後の51回目のインプリント後のパターンサンプルをインプリントパターン高さの評価と同様の指標で行った。また、該インプリントサンプルを用いて同様にRIEにより加工したRIE加工サンプルについて、パターン形状の評価を、RIEドライエッチング時の基板加工性と同様の指標で行った。
【0231】
表1に示されるように、本発明のパターン形成方法及びパターン基板製造方法を用いた実施例においては、マスクパターンの形状品質(高さ、剥がれ、位置ずれ、形状精度)が良好であり、且つ、エッチングによるパターン形状精度も良好であった。更に繰返しパターン形成による
これに対し、比較例では、マスクパターンの品質そのものが良くないか、あるいは、マスクパターンの品質はよいが、エッチング耐性に問題があり、高精度な基板加工ができないというものであった。これにより、本発明の効果が確認された・
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0232】
本発明は、パターンドメディアや半導体素子の基板のパターニングに好ましく適用することができる。
【符号の説明】
【0233】
1 レジストパターン
2 パターン基板
10 基板
10S 基板面
20 レジスト組成物、液滴
20m レジスト層
21 重合性化合物
22 フッ素を含む重合性界面活性剤
30 鋳型(モールド)
40 硬化レジスト層
L1 光(電子線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、
重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含む重合性化合物と、光又は電子線により活性化する重合開始剤とを含むレジスト組成物からなる(不可避不純物を含んでもよい)レジスト層を形成し、
該レジスト層に、表面に所定の凹凸パターンを有する鋳型の前記表面を圧接し、
前記レジスト層に前記光又は電子線を照射して該レジスト層を硬化させ、
前記レジスト層の温度が40℃以上となる条件で前記鋳型を前記レジスト層から剥離することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記基板又は前記鋳型の温度を40℃以上として前記鋳型を前記レジスト層から剥離することを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記レジスト層の温度が50℃以上となる条件で前記鋳型を剥離することを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記レジスト層の温度が120℃以下となる条件で前記鋳型を剥離することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記レジスト組成物に、フッ素を含む重合性界面活性剤を更に含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記重合性界面活性剤の含有量が5質量%以下であることを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記重合性界面活性剤として、該重合性界面活性剤の単量体中にフロロアルキル基及びフロロアルキルエーテル基から選ばれる少なくとも1種の含フッ素基を複数有し、且つ、該複数の含フッ素基のうち少なくとも2つが炭素数2以上の連結基により隔てられている含フッ素重合性化合物を用いることを特徴とする請求項5又は6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記含フッ素基の少なくとも2つは、炭素数2以上のフロロアルキル基であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記多官能単量体を含む重合性化合物が、少なくとも一種の下記一般式(I)で表される重合性単量体を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のパターン形成方法。
【化1】

[式中、Arは置換基を有していてもよい2価または3価の芳香族基を表し、Xは単結合または有機連結基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、nは2または3を表す。]
【請求項10】
前記多官能単量体を含む重合性化合物が25℃において液状であることを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記多官能単量体を含む重合性化合物が、芳香環構造または脂環式炭化水素構造の少なくとも一方の構造を有する単官能単量体を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記多官能単量体を含む重合性化合物がフッ素を含まないものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記レジスト層を前記基板上に形成する前に、前記基板の前記レジスト層を配置する表面に、該表面と前記レジスト層とを架橋させて密着させる界面結合剤を塗布することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のパターン形成方法により前記基板上にパターン形性されたレジスト層をマスクとして用い、リソグラフィ法により、前記基板面に前記レジスト層のパターンに基づいた凹凸パターンを形成することを特徴とするパターン基板製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−222732(P2011−222732A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90080(P2010−90080)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】