説明

パターン形成装置およびパターン形成方法

【課題】撥液剤により構成された膜にアライメントマークを形成することができるパターン形成装置およびパターン形成方法を提供する。
【解決手段】基板上に所定のパターンを形成するパターン形成装置である。基板上に形成された、撥液剤により構成された膜に、アライメントマークとなるマークパターンを露光するマーク露光部と、マークパターンの露光領域に可視化インクを印刷し、アライメントマークを形成するマーク印刷部と、さらに、アライメントマークを検出し、アライメントマークの位置情報を得るマーク検出部と、アライメントマークの位置情報に基づいて膜に形成するパターンの位置を変えるか、または基板の位置を変えてパターンを形成する位置を調整する調整部と、膜にパターンを形成する画像形成部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に所定のパターンを形成するパターン形成装置およびパターン形成方法に関し、特に、基板上に形成された、撥液剤により構成された膜に、良好なアライメントマークを形成することができるパターン形成装置およびパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子回路の配線、および基板上に電気配線パターンなどの微細パターンを形成する技術が注目されている。この微細パターンの形成には、例えば、インクジェット方式の液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)が用いられる。この場合、金属粒子または樹脂粒子を拡散させた液体をインクジェットヘッドから打滴してパターンを描画し、加熱等により硬化させて、電気配線パターンが形成される。
【0003】
また、PETまたはPEN等のフレキシブルな基板(支持体)上に撥液性の膜を形成し、その上に、上述の電子回路の配線および基板上に電気配線パターンなどの微細パターンを形成することもなされている。
上述のような電子回路の配線等を形成するためには、位置合わせが必要であり、位置合わせのためのアライメントマークを形成する必要がある。PETまたはPEN等のフレキシブルな基板(支持体)は透明度が高く、このように透明度が高いものにアライメントマークを形成する方法として、例えば、特許文献1に、ガラス上に永続的なプロセスマーク(アライメントマークに相当)を形成する方法が提案されている。特許文献1では、ガラス上にレーザを用いて形成している。
【0004】
PETまたはPEN等の透明度が高い基板にアライメントマークを形成する方法として、上記特許文献1以外にも、熱転写プリンタを用いてアライメントマークを形成する方法、焼き出し剤を用いてアライメントマークを形成する方法、基板に貫通孔(パンチ孔)を開けてアライメントマークを形成する方法等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−1260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PETまたはPEN等の透明度が高い基板は、樹脂であるため、耐熱性等の観点からレーザを用いてアライメントマークを形成することが難しい。また、熱転写プリンタでは、アライメントマークの形成精度が低く、高い精度でパターン形成ができない。さらに、焼き出し剤を用いる方法では、特別な層を基板に設ける必要があり、コストが嵩むという問題がある。基板に貫通孔(パンチ孔)を開ける方法は、透明なものに穴をあけるため、アライメントマークの認識精度が低く、更には穴をあける際に粉塵等が発生するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、撥液剤により構成された膜に、良好なアライメントマークを形成することができるパターン形成装置およびパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、基板上に所定のパターンを形成するパターン形成装置であって、前記基板上に形成された、撥液剤により構成された膜に、アライメントマークとなるマークパターンを露光するマーク露光部と、前記マークパターンの露光領域に可視化インクを印刷し、前記アライメントマークを形成するマーク印刷部とを有することを特徴とするパターン形成装置を提供するものである。
【0009】
さらに、前記可視化インクが印刷されてなる前記アライメントマークを検出し、前記アライメントマークの位置情報を得るマーク検出部と、前記アライメントマークの位置情報に基づいて、前記膜に形成するパターンの位置を変えるか、または前記基板の位置を変えて、前記パターンを形成する位置を調整する調整部と、前記基板の前記膜にパターンを形成する画像形成部とを有することが好ましい。
この場合、記画像形成部は、前記膜のうち、パターン形成領域を親水性にする露光部と、親水性にされた前記パターン形成領域に印刷する印刷部とを有することが好ましい。
【0010】
例えば、前記膜は、所定の波長の光により親疎水性が変化する親疎水性変換機能を有するものであり、前記可視化インクは、前記膜の親疎水性が変化しない波長の光を吸収または反射するインクである。この場合、前記可視化インクは、例えば、水溶性インクまたは金属インクが用いられる。
【0011】
本発明の第2の態様は、基板上に所定のパターンを形成するパターン形成方法であって、前記基板上に形成された、撥液剤により構成された膜に、アライメントマークとなるマークパターンを露光する工程と、前記マークパターンの露光領域に可視化インクを印刷し、前記アライメントマークを形成する工程とを有することを特徴とするパターン形成方法を提供するものである。
【0012】
さらに、前記可視化インクが印刷されてなる前記アライメントマークを検出し、前記アライメントマークの位置情報を得る工程と、前記アライメントマークの位置情報に基づいて、前記膜に形成するパターンの位置を変えるか、または前記基板の位置を変えて、前記パターンを形成する位置を調整する工程と、前記基板の前記膜にパターンを形成する工程とを有することが好ましい。
この場合、前記膜にパターンを形成する工程は、前記膜のうち、パターン形成領域を親水性にする工程と、親水性にされた前記パターン形成領域に印刷する工程とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、撥液剤により構成された膜に、良好なアライメントマークを形成することができる。これにより、アライメントマークを用いて、基板上に、高い精度で所定のパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るパターン形成装置を示す模式図である。
【図2】(a)は、本発明の第1の実施形態に係るパターン形成装置に用いられる基板を示す模式的断面図であり、(b)は、本発明の第1の実施形態に係るパターン形成装置に用いられる基板を示す模式図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係るパターン形成装置によるアライメントマークの形成工程を工程順に示す模式図であり、(d)〜(i)は、アライメントマークの他の例を示す模式図である。
【図4】(a)は、本発明の第1の実施形態に係るパターン形成装置で形成される薄膜トランジスタを示す模式図であり、(b)は、図4(a)のH−H線に相当する断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るパターン形成装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のパターン形成装置およびパターン形成方法を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るパターン形成装置を示す模式図である。
図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係るパターン形成装置に用いられる基板を示す模式的断面図であり、(b)は、本発明の第1の実施形態に係るパターン形成装置に用いられる基板を示す模式図である。
【0016】
図1に示すパターン形成装置10(以下、単に、形成装置10という)は、例えば、基板Zを長手方向に搬送しつつ、種々の処理を行う、ロール・ツー・ロール方式の装置である。この形成装置10は、マーク形成部12と、検出部14と、露光部16と、画像形成部18と、画像処理部20とを有する。
【0017】
形成装置10では、基板Zは、回転軸42に巻き回されてロール状に取り付けられる。この回転軸42は、基板Zを連続的に送り出すものであり、回転軸42には、例えば、モータ(図示せず)が接続されている。このモータによって基板Zが搬送方向Dに連続的に送り出される。
また、マーク形成部12、検出部14、露光部16、画像形成部18を経た基板Zを巻き取る巻取り軸46が設けられている。この巻取り軸46は、例えば、モータ(図示せず)が接続されている。このモータにより巻取り軸46が回転されて基板Zが巻取り軸46にロール状に巻き取られる。これにより、基板Zが搬送方向Dに搬送される。
【0018】
本実施形態において、基板Zは、図2(a)に示すように、基板Z上に膜80が形成されたものが用いられる。膜80は、撥液剤により構成されている。撥液剤は、所定の波長の光、例えば、紫外光により親疎水性が変化する親疎水性変換機能を有するものである。すなわち、膜80は、親疎水性変換機能を有する。以下、基板Zに利用されるもの、および膜80を構成する撥液剤について、具体的に説明する。
【0019】
本実施形態の形成装置10は、ロール・ツー・ロール方式であるため、基板Zとしては、生産性、フレキシビリティなどの観点から、樹脂フィルムが用いられる。この樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0020】
形成装置10により、薄膜トランジスタ(TFT)を作製し、これをディスプレイ等の用途に用いる場合には、基板Zとしては、透明樹脂フィルムが好ましく、可視域の波長における光線透過率が80%以上である樹脂フィルムであればよい。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0021】
なお、形成装置10は、後述するように枚葉式でもよいが、この場合、基板Zとして、Siウエハ、石英ガラス、ガラス、プラスチック、金属板など各種のものを用いることができ、基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが積層成形できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0022】
次に、膜80を構成する撥液剤の具体例について説明する。膜80は、上述のように親疎水性変換機能材料として機能し、撥液性剤で構成されるものである。この膜80の厚さ(膜厚)は、0.001μm〜1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmである。
膜80を構成する撥液性剤においては、エネルギー照射していない部分、すなわち、撥液性領域においては、塗布液との接触角が、50°以上、中でも90°以上であることが好ましい。
また、上述の撥液性剤においては、エネルギー照射された部分、すなわち、親液性領域においては、塗布液との接触角が、40°以下、中でも20°以下、特に好ましくは、10°以下である。
なお、撥液性領域と親液性領域の濡れ性の差は、表面張力で10mN/m以上であることが好ましい。
【0023】
撥液性剤において、無機材料としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)など酸化物を上げることが出来る。これら酸化物を1種または2種以上選択して用いることができ、例えば、二酸化チタンであれば、アナターゼ型とルチル型がありいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。
【0024】
撥液性剤において、バインダーとしては、主骨格が酸化物の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものを使用することがよく、酸化物の作用により濡れ性を変化させる機能をバインダーに持たせる場合には、バインダーの主骨格が前記の酸化物の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであって、酸化物の作用により分解されるような有機置換基を有するものが好ましく、例えば、ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
また、前記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダーに混合してもよい。
また、エネルギー照射に酸化物の作用により分解され、これにより酸化物含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を酸化物含有層中に含有させることもできる。このような分解物質としては、酸化物の作用により分解し、かつ分解されることにより光触媒含有層表面の濡れ性を変化させる機能を有する界面活性剤を挙げることができる。
【0025】
具体的には、フッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を挙げることができる。
そのほか、親液性化する化合物としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードオニウム塩等のオニウム塩、O−ニトロベンジルスルホネ―ト化合物、増感剤と併用したP−ニトロベンジルスルホンネ―ト化合物、1,2,3−トリスベンゼン、N―イミドスルホネ―ト化合物、オキシムスルホネ―ト化合物、α―ケトスルホネ―ト化合物、ナフトキノンジアジド−4−スルホネ―ト化合物、ジアゾジスルホン化合物、ジスルホン化合物、ケトスルホン化合物、O−ニトロベンジルエステル化合物、m―アルコキシベンジルエステル化合物、O−ニトロベンジルアミド化合物、ベンゾイソエステル化合物、フェナシルエステル化合物、2,4−ジニトロベンゼンスルフォニルエステル、2−ジアゾー1,3ジケトン化合物、フェノールエステル化合物、O−ニトロベンジルフェノール化合物、2,5−シクロヘキサジエノン化合物、スルホン化ポリオレフィン、アリールジアゾスルホネート塩などがある。
【0026】
本実施形態においては、親疎水性変換機能材料(撥液性剤として機能し、エネルギーの付与によって臨界表面張力が大きく変化する材料)としては、側鎖に疎水性基を含む高分子材料も挙げられる。
ポリイミドや(メタ)アクリレート等の骨格を有する主鎖に直接あるいは結合基を介して疎水性基を有する側鎖が結合しているものを挙げることができる。疎水性基としては、末端構造が−CFCH、−CFCF、−CF(CF、−C(CF、−CFH、−CFH等である基が挙げられる。分子鎖同士を配向し易くするためには炭素鎖長の長い基が好ましく、炭素数4以上のものがより好ましい。さらには、アルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換されたポリフルオロアルキル基が好ましく、特に炭素数4〜20のRf基が好ましく、とりわけ、炭素数6〜12のポリフルオロアルキル基が好ましい。ポリフルオロアルキル基には直鎖構造あるいは分岐構造があるが、直鎖構造の方が好ましい。さらに、疎水性基は、アルキル基の水素原子の実質的に全てがフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基が好ましい。パーフルオロアルキル基はC2n+1−(ただし、nは4〜16の整数)で表わされる基が好ましく、特に、nが6〜12の整数である場合の該基が好ましい。パーフルオロアルキル基は直鎖構造であっても分岐構造であってもよく、直鎖構造が好ましい。さらに、疎水性基としては、フッ素原子を含まない−CHCH、−CH(CH、−C(CH等の末端構造を有する基を挙げることができる。この場合にも、分子鎖同士を配向し易くするためには炭素鎖長の長い基が好ましく、炭素数4以上のものがより好ましい。疎水性基は直鎖構造であっても分岐構造であってもよいが、直鎖構造の方が好ましい。上記アルキル基はハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基又は炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基やアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有していてもよい。側鎖に疎水性基を有する高分子材料としては、ポリイミドを含む高分子材料が挙げられる。
本実施形態に用いる溶媒としては、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶媒、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセロソルブ系溶媒等が挙げられる。
【0027】
マーク形成部12は、上記親疎水性変換機能を有する膜80に、例えば、図2(b)に示すように、基板Zの膜80上に、矩形状のパターン形成領域Sの外縁の四隅にアライメントマークM(マークパターン)を形成するものである。
マーク形成部12は、マーク露光部22と、マーク印刷部28とを有し、マーク露光部22が搬送方向Dの上流側に設けられている。マーク露光部22は、光源24と、所定のマークパターン状の開口部が形成されたマスク26とを有する。
【0028】
光源24は、膜80に対して、撥液性から親水性に変化させることができる波長の光を照射することができるものである。撥液性から親水性に変化させることができる波長の光は膜80の組成によって異なるが、この光源24としては、例えば、波長が300(nm)、365(nm)、405(nm)などの紫外線領域の光を照射可能なものが用いられる。
【0029】
マスク26は、例えば、リング状の開口部が形成されている。これにより、膜80がリング状に露光される。マスク26の開口部の形状が、アライメントマークMの形状(マークパターン)である。マーク露光部22には、露光時にマスク26を基板Zの膜80の表面80a(図2(a)参照)に密着させるため、基板Zに対して接離可能な昇降手段(図示せず)が設けられている。
【0030】
マーク印刷部28は、アライメントマークMとなるマークパターンが露光された露光領域、本実施形態では、リング状に露光された露光領域に、可視化インクを印刷し、アライメントマークMを形成するものである。
なお、マーク印刷部28は、マークパターンが露光された露光領域に可視化インクを供給することができれば、特に、印刷方式は限定されない。例えば、インクジェット、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷を用いることができる。また、マークパターンの露光領域の全域を覆うようにベタに印刷する場合には、位置合わせ精度も±2mm程度の粗いものを用いることができる。
【0031】
マーク印刷部28で用いられる、アライメントマークMを形成するための可視化インクは、アライメントマークMを検出する際に、膜80に不要な親疎水変換を生じさせないように、膜80の親疎水性が変化しない波長の光を吸収または反射するインクが用いられる。このため、膜80の親疎水変換が生じる波長に応じて、可視化インクは適宜選択されるが、例えば、波長が500nm以上の光を反射または吸収するインクが用いられる。なお、可視化インクとして、例えば、水溶性インクまたは金属インクが用いられる。以下、アライメントマークMを形成するための可視化インクについて具体的に説明する。
【0032】
アライメントマークMを形成するための可視化インク(マーキング材料)としては、染料や顔料を含むインクを用いることができる。顔料としては難溶性色素からなる有機顔料、有機色素と多価金属イオンとが結合したレーキ顔料などがあり、有機色素部分としては、アゾ色素、アントラキノン色素、フタロシアニン色素などがあげられる。例えば、銅フタロシアニンにスルホン酸が3個置換したもののナトリウム塩(フタロシアニン染料:LionolBlueGS)の吸収極大波長(モル吸光係数)は639nm&660nm(35000)である。
染料としては、水溶性染料、油溶性染料があり、水溶性染料は色素分子中にスルホン酸基やカルボン酸基などの親水性基を有するものが多く用いられる。染料の分子構造の基本骨格としては、アゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、シアニン染料、オキソノール染料、スチリル染料、トリアリールメタン染料などがある。シアニン染料、オキソノール染料は、吸光係数が大きいので、低濃度でも視認性が高い。このため、可視化インクとしては、水溶性インク(水溶性染料)を用いることが好ましい。
【0033】
このような染料としては、例えば、下記化学式1〜4で表される染料1〜4がある。これらは水に可溶で、各染料の吸収極大波長(モル吸光係数)は以下のとおりである。各染料1〜4(化学式1〜4)は、吸収極大波長の前後25nmでも吸収ピークの約50%位の吸収強度がある。
染料1(化学式1):552nm(65000)
染料2(化学式2):644nm(104000)
染料3(化学式3):550nm(63000)
染料4(化学式4):747nm(260000)
【0034】
【化1】

【0035】
【化2】

【0036】
【化3】

【0037】
【化4】

【0038】
本実施形態のマーク形成部12は、例えば、図3(a)〜(c)に示すようにして、アライメントマークMを膜80の表面80aに形成する。
まず、マーク露光部22のマスク26を基板Zの膜80の表面80aに接触させる。その後、光源22から撥液性から親水性に変化させることができる波長の光を照射し、図3(a)に示すように、膜80の表面80aのアライメントマーク形成領域100について、リング状に露光し、親水性のパターン露光領域102が得られる。なお、パターン露光領域102以外の非露光領域104は撥液性のままである。
【0039】
次に、基板Zを搬送方向Dに搬送し、マーク印刷部28により、例えば、図3(b)に示すように、パターン露光領域102の全域を覆うようにベタに、水溶性の可視化インク110を、膜80の表面80aのアライメントマーク形成領域100に印刷する。これにより、親水性のパターン露光領域102で、可視化インクが引き寄せ合い一体化して、図3(c)に示すように、膜80の表面80aのアライメントマーク形成領域100にアライメントマークMが形成される。このとき、膜80のアライメントマーク形成領域100では、非露光領域104は撥液性であるため、可視化インクは一体化せずマーク等は形成されない。なお、図3(c)に示すアライメントマークMは、例えば、外径が1mmで、リング部の幅が100μmである。
【0040】
本実施形態においては、アライメントマークMとなる領域(パターン露光領域102)を親水性にしたが、これに限定されるものではない。例えば、図3(a)の露光パターンを反転させて親水性とする領域と撥液性とする領域とを逆にして、アライメントマークMを形成してもよい。この場合。図3(d)に示すように、アライメントマークMが撥液性として可視化インクで印刷されることなく、それ以外領域が可視化インクで印刷されてアライメントマークMが形成される。
【0041】
本実施形態において、アライメントマークMの形状は、リング状のものに限定されるものではない。例えば、図3(e)に示すように、円形状でも、図3(f)に示すように四角形状でも、図3(g)に示すように矩形の環状でも、図3(h)に示すように直角三角形状でも、図3(i)に示すように直角三角形の環状でもよい。なお、親液性にした露光領域で可視化インクが引き寄せ合って一体化してアライメントマークが形成されるため、面積は狭い方が好ましく、細い環状の形態を有するものの方が好ましい。
上述の図3(e)〜図3(i)に示す形態のアライメントマークにおいても、露光パターンを反転させて、図3(d)と同様に、アライメントマークとなる領域を撥液性として、アライメントマークを形成することもできる。
【0042】
検出部14は、アライメントマークMを検出し、このアライメントマークMの位置情報を得るものであり、この検出部14は、画像処理部20に接続されている。検出部14は、歪みセンサ(図示せず)とアライメント検出部(図示せず)を有する。
歪みセンサは、膜80が親疎水性の変化を起こさない波長の光を用いて、アライメントマークMを検出するものであり、例えば、LED等の光源と、CMOS、CCDなどの撮像素子とを備える光学式のものが用いられる。なお、可視化インクが、波長500nm以上の光を反射または吸収するものである場合、光源には、波長が500nm以上の光を照射するものが用いられる。具体的には、光源の波長としては、例えば、633nm、660nm、590nm、赤外(IR)が用いられる。
歪みセンサにおいては、アライメントマークMに、波長が500nm以上の光を照射し、図2(b)に示すパターン形成領域Sの外縁部の4隅に予め設けられているアライメントマークMを撮像し、例えば、4つのアライメントマークMの画像データを得る。4つのアライメントマークMの画像データを組として、アライメント検出部に出力する。
【0043】
アライメント検出部は、歪みセンサで得られた各アライメントマークMの画像データに基づいて、例えば、各アライメントマークMの位置、アライメントマークMの大きさ、向き、およびアライメントマークM間の距離等を算出し、アライメントマークMの大きさ、配置位置等の設計値と比較することにより、基板Zの歪み情報(アライメントマークMの位置情報)を作成するものである。基板Zの歪み情報は、例えば、基板Zの伸縮の方向、基板Zの伸縮量である。この基板Zの歪み情報は、具体的には、4つのアライメントマークMで囲まれるパターン形成領域Sの伸縮方向、伸縮量、パターン形成領域Sの回転方向、回転量、さらにはパターン形成領域Sの既定の大きさからの拡大量または縮小量、および台形状等の歪み量のことである。この基板Zの歪み情報が、画像処理部20に出力される。なお、後述するように、画像処理部20においては、基板Zの歪み情報に基づいて、露光用の補正データおよび打滴用の補正データを作成する。
【0044】
なお、歪みセンサによるアライメントマークMの撮像方式は、特に限定されるものではなく、例えば、歪みセンサを二次元的に移動させながら、固定された基板ZのアライメントマークMを撮像する形態、基板Zを移動させながら、基板ZのアライメントマークMを撮像する方式等がある。
【0045】
露光部16は、基板Zに形成された膜80において、画像形成部18により、パターンが形成される画像形成領域を親水性に変える改質処理を施すものである。この露光部16には、露光ユニット(図示せず)と、ガス供給ユニット(図示せず)とが設けられている。露光部16は、画像処理部20に接続されている。
なお、「親水性に変える」とは、膜80に対する液滴の接触角が相対的に小さい状態にすることである。
【0046】
露光ユニットは、基板Zの膜80の表面80aにおいて、例えば、パターンになる画像形成領域に、膜80を親水性に変換できる光を照射する(露光する)ものである。露光ユニットにおいて光源としては、マーク露光部22の光源24と同じ波長のものが用いられ、例えば、波長が300(nm)、365(nm)、405(nm)などの紫外線領域の光を照射可能な光源が用いられる。
露光ユニットにおいて、光源にレーザを用いる場合、レーザ光の出力としては、例えば、10〜数百(mJ/cm)であり、レーザ光の径(ビームスポット径)は、例えば、1〜2μmである。露光ユニットにおいては、光源にレーザを用いる場合、半導体レーザ、固体レーザ、液体レーザ、気体レーザなど様々のものを用いることができる。
【0047】
露光ユニットとしては、レーザ光を用いたデジタル露光方式のもの、およびマスク露光方式のものを用いることができる。
デジタル露光方式では、画像処理部20から出力される、形成するパターンのパターンデータに基づいて、レーザ光がパターンとなる画像形成領域に照射されて、画像形成領域が親液性にされる。
【0048】
露光ユニットに、デジタル露光方式のものを用いる場合、例えば、基板Zの搬送方向Dと直交する方向に露光ユニットを走査させて、例えば、画像形成領域のうち、同方向における一回の走査で改質処理が可能な領域について改質処理を実行する。この走査方向における一回の改質処理が終了すると、基板Zを搬送方向Dに所定量移動させて、同じ画像形成領域の次の領域について改質処理を実行し、この動作を繰り返すことで、画像形成領域の全てに改質処理を施すシリアル方式を用いることができる。
また、露光ユニットにおいて、レーザ光を走査する走査光学部(図示せず)を設け、改質処理に際して、露光ユニットを走査させることなく、レーザ光を走査させてもよい。
さらには、露光ユニットにおいて、基板Zの搬送方向Dと直交する幅方向について、多数のレーザ光を照射可能としたアレイタイプのものでもよい。
【0049】
ガス供給ユニットは、必要に応じて基板Zの画像形成領域を親水性にするための反応ガスを、光を照射する際に供給するものである。ガス供給ユニットにより、基板Zにおける反応ガスの濃度(充填量)、供給タイミング等が調整される。反応ガスとしては、例えば、酸素を含むもの、または窒素を含むものが用いられる。
なお、ガス供給ユニットは、光の照射だけで、膜80の組成等により親水性に変換することができれば、必ずしも設ける必要はない。
【0050】
画像形成部18は、親水性化された画像形成領域、すなわち、改質処理後の画像形成領域に、形成するパターンに応じてインクを印刷し、パターン形成を形成するものである。
形成するパターンとしては、電子回路の配線、薄膜トランジスタ(以下、TFTという)等の電子素子の構成部である。
インクとしては、例えば、電子回路の配線、TFT等の電子素子の構成部を構成するものが用いられる。なお、画像形成部18において、例えば、TFTの各構成部(ゲート電極、半導体層、ソース電極・ドレイン電極)の形成に用いる液体(インク)については、後に詳細に説明する。
【0051】
画像形成部18においては、親水性化された画像形成領域にインクを印刷し、パターン形成を形成することができれば、印刷する方式は、特に限定されるものではない。印刷する方式としは、例えば、スクリーン印刷方式、インクジェットヘッドを用いたインクジェット方式を用いることができる。
スクリーン印刷方式を用いた場合、親水性化された画像形成領域に対応した画像形成領域状の開口部を有するスクリーンを用意し、このスクリーンを用いて、親水性化された画像形成領域にインクを供給してパターンを形成する。
【0052】
インクジェットヘッドを用いたインクジェット方式を用いた場合、親水性化された画像形成領域の位置を示す打滴パターンデータにより、親水性化された画像形成領域に、インク滴を打滴してパターンを形成する。インクジェットヘッドから打滴されるインク滴の大きさは、例えば、10〜100μmである。
インクジェットヘッドの構成としては、ピエゾ式、サーマル方式などが適宜利用可能である。また、インクジェットヘッドには、シリアルタイプまたはフルラインタイプを用いることができる。
なお、インクジェット方式を用いた場合、打滴パターンデータによりインク滴が打滴されるため、この打滴パターンデータを変更することによりインク滴の打滴位置を容易に変えることができる。
【0053】
画像処理部20は、検出部14から出力された基板Zの歪み情報に基づいて、膜80に形成するパターンの形成位置を変えるためのものであり、パターン形成のための調整部として機能するものである。
画像処理部20は、露光部16がデジタル露光機である場合、基板Zの歪み情報に基づいて、パターンの形成位置を表すパターンデータを補正する補正露光パターンデータを作成する。この補正露光パターンデータを露光部16に出力し、露光部16で、補正露光パターンデータにより、画像形成領域を親水性化させる。これにより、適正な位置を親水性にできる。
また、画像処理部20は、画像形成部18がインクジェット方式である場合、露光位置の変更に合わせてインク滴の打滴位置を変更するため、基板Zの歪み情報に基づいて、打滴パターンデータを補正する補正打滴パターンデータを作成する。この補正打滴パターンデータを画像形成部18に出力し、画像形成部18で、補正打滴パターンデータにより、親水性化された画像形成領域にパターンを形成させる。これにより、適正な位置にパターンを形成することができる。
【0054】
また、画像処理部20は、露光部16が、スクリーン露光方式の場合、基板Zの歪み情報に基づいて、スクリーンの設置位置を、基板Zの歪み分、変更させる。これにより、適正な位置を親水性にできる。
また、画像処理部20は、画像形成部18が、スクリーン印刷方式の場合、基板Zの歪み情報に基づいて、スクリーンの設置位置を、基板Zの歪み分、変更させる。これにより、適正な位置にパターンを形成することができる。
【0055】
なお、本実施形態の形成装置10は、ロール・ツー・ロール方式であるが、これに限定されるものではない。形成装置10は、例えば、基板Zを1枚ずつ処理する枚葉式でもよい。このように枚葉式の場合には、スクリーン露光方式、スクリーン印刷方式のいずれの場合も、基板Zの歪み情報に基づいて、基板Zの設置位置を、基板Zの歪み分、変更させてもよい。
【0056】
本実施形態においては、膜80が、例えば、紫外光により親疎水性が変化する親疎水性変換機能を有する撥液剤により構成されている。形成装置10は、このような撥液剤からなる膜80に、アライメントマークMを形成することができる。例えば、アライメントマークMをリング状にすることにより、撥液剤からなる膜80の表面80aでも形成しやすく、しかも、検出しやすい。
このアライメントマークMを用いて、本実施形態の形成装置10は、例えば、図4(a)に示すように複数のTFT60を、1つのパターン形成領域S(図2(b)参照)に形成することができる。
【0057】
図4(a)および(b)に示すTFT60は、ゲート電極62と、半導体層64と、ソース電極66a・ドレイン電極66bとを有する。
基板Z上に膜80が形成されており、この膜80上にTFT60が形成されている。膜80は、例えば、ゲート電極62を形成するために所定の平坦度を得ることと、電気絶縁性を向上させるために設けられている。
膜80には、形成装置10により、上述の図3(a)〜(c)に示す工程でアライメントマークM(図4(a)、(b)では図示せず)が、図2(b)に示すように、パターン形成領域Sの外縁部の4隅に形成されている。
【0058】
TFT60においては、膜80の表面80aにゲート電極62が形成されており、このゲート電極62および膜80を覆うように、ゲート絶縁層82が形成されている。このゲート絶縁層82の表面82aに、活性層として機能する半導体層64が形成されている。この半導体層64上にチャネル領域68として所定の隙間をあけて、ソース電極66aとドレイン電極66bとが形成されている。さらに、ソース電極66aとドレイン電極66bを覆うようにして保護層84が形成されている。
なお、ゲート絶縁層82および保護層84は、膜80と同じ撥液剤で構成される場合を含め、その厚さは、例えば、膜80の厚さ(膜厚)と同じく、0.001μm〜1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmである。
【0059】
TFT60は、形成装置10の露光部16で、膜80の表面80aにゲート電極62が形成される形成領域を親水性化し、その親水性化された形成領域に画像形成部18によりゲート電極62が形成される。
形成装置10は、絶縁層を形成する機能がないため、他の装置を用いてゲート絶縁層82を形成する。このゲート絶縁層82も、膜80と同様に、例えば、紫外光により親疎水性が変化する親疎水性変換機能を有する撥液剤により構成される。
その後、ゲート絶縁層82の表面82aに、形成装置10の露光部16で、半導体層64が形成される形成領域を親水性化し、その親水性化された領域に画像形成部18により半導体層64が形成される。
【0060】
次に、形成装置10の露光部16で、ソース電極66aとドレイン電極66bが形成される形成領域を親水性化し、その親水性化された領域に画像形成部18によりソース電極66aとドレイン電極66bが形成される。
そして、他の装置を用いて、例えば、樹脂製の保護層84を形成する。保護層84は、その上に何も形成されないため、膜80のような、例えば、紫外光により親疎水性が変化する親疎水性変換機能を有する撥液剤により構成される必要はない。
【0061】
形成装置10では、TFT60を形成する場合、膜80の表面80aに形成されたアライメントマークMを用いて、ゲート電極62、半導体層64ならびにソース電極66aおよびドレイン電極66bを形成している。
しかしながら、膜80の表面80aのアライメントマークMが、ゲート絶縁層82により、検出部14で検出できない場合には、膜80と同じもので形成されているゲート絶縁層82の表面82aに、マーク形成部12により、アライメントマークを、膜80と同じ位置または別の位置に形成する。これにより、アライメントマークM上に、ゲート絶縁層82等の別の層が形成されて、アライメントマークMが検出できなくなっても、アライメントマークによる位置合わせが可能になる。
【0062】
本実施形態の形成装置10においては、アライメントマークMを形成するために、マーク形成部12を設けているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、図5に示す第2の実施形態の形成装置10aのように、マーク形成部12に代えて、露光部16と画像形成部20との間に印字部30を設け、さらに、この印字部30と画像形成部20との間に検出部14を配置してもよい。形成装置10aにおいては、露光部16と印字部30により、マーク形成部12の機能を果たすようにしている。
なお、形成装置10aにおいて、第1の実施形態の形成装置10と同じ構成物には、同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0063】
形成装置10aの印字部30は、第1の実施形態の形成装置10のマーク印刷部28を備えたものである。このため、マーク印刷部28について、その詳細な説明は省略する。
本実施形態の形成装置10aにおいては、露光部16で、膜80の表面80aにマークパターンを露光する。そして、印字部30のマーク印刷部28により、マークパターンの露光領域に可視化インクを印刷し、アライメントマークMを形成する。このアライメントマークMは、第1の実施形態の形成装置10と同様に、検出部14により検出され、その位置が特定され、基板Zの歪み情報が得られる。この基板Zの歪み情報は画像形成部18によりパターン形成に利用される。本実施形態の形成装置10aにおいても、第1の実施形態の形成装置10と同様に、図4(a)、(b)に示すTFT60を形成することができる。なお、本実施形態の形成装置10aにおいても、第1の実施形態の形成装置10と同様に、アライメントマークMは撥液剤からなる膜80の表面80aでも形成しやすく、検出しやすいものであり、第1の実施形態の形成装置10と同様の効果を得ることができる。
【0064】
なお、本実施形態の形成装置10aにおいて、露光部16は、アライメントマークMのマーク露光部22(図1参照)を兼用しているため、露光部16で、パターンとして形成される画像形成領域を膜80の表面80aに露光する場合、このときに膜80の表面80aにアライメントマークMとなるマークパターンを露光することができる。この場合、画像形成領域は、基板Zの歪み情報がない状態で露光される。
【0065】
以下、TFT60の各構成、ゲート電極62、半導体層64、およびソース電極66a・ドレイン電極66b、および各絶縁層の製造に用いられる材料(インク)について具体的に説明する。
ゲート電極62、およびソース電極66a・ドレイン電極66bを形成するための導電性材料としては、導電性微粒子を含み、この導電性微粒子の粒径が1nm以上、100nm以下であることが好ましい。導電性微粒子の粒径が100nmより大きいと、ノズルの目詰まりが起こりやすく、インクジェット法による吐出が困難になることによる。また、導電性微粒子の粒径が1nm未満であると、導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多になることによる。
分散質濃度は、1質量%以上、80質量%以下であり、所望の導電膜の膜厚に応じて調整することができる。分散質濃度が80質量%を超えると凝集をおこしやすくなり、均一な膜が得にくい。
【0066】
導電性微粒子の分散液の表面張力は、20mN/m以上、70mN/m以下の範囲に入ることが好ましい。インクジェット法にて液体を吐出する際、表面張力が20mN/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じ易くなり、70mN/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量、吐出タイミングの制御が困難になるためである。
分散液の粘度は、1mPa・s以上、50mPa・s以下であることが好ましい。インクジェット法にて吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合には、ノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また、粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となるためである。
【0067】
導電性材料としては、例えば、銀の微粒子が含まれるものである。銀以外の他の金属微粒子としては、例えば、金、白金、銅、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウムのいずれか1つが利用されてもよいし、または、いずれか2つ以上が組合せられた合金が利用されてもよい。ただし、銀ナノ粒子が好ましい。金属微粒子の他、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などを用いてもよい。
導電性微粒子の表面にコーティングするコーティング材としては、例えばキシレン、トルエン等の有機溶剤やクエン酸等が挙げられる。
使用する分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されないが、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、又はエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、更にプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を挙げることができる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また、インクジェット法への適用のし易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、更に好ましい分散媒としては水、炭化水素系化合物を挙げることができる。これらの分散媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用できる。
【0068】
また、バインダーとしては、アルキッド樹脂、変性アルキッド樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン化油、ウレタン樹脂、ロジン樹脂、ロジン化油、マレイン酸樹脂、無水マレイン酸樹脂、ポリブテン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルオリゴマー、鉱物油、植物油、ウレタンオリゴマー、(メタ)アリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体(この共重合体は他のモノマー(例えば、スチレン等)を共重合成分として加えてもよい)等を1種、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。また、本発明の金属ペーストには、添加剤として、分散剤、湿潤剤、増粘剤、レベリング剤、地汚れ防止剤、ゲル化剤、シリコンオイル、シリコン樹脂、消泡剤、可塑剤等を適宜選択して添加してもよい。
また、導電材料としては、導電性有機材料を用いることもでき、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンなどの高分子系の可溶性材料を含んでいてもよい。
金属の微粒子に代えて、有機金属化合物を含んでいてもよい。ここでいう有機金属化合物は、加熱による分解によって金属が析出するような化合物である。このような有機金属化合物には、クロロトリエチルホスフィン金、クロロトリメチルホスフィン金、クロロトリフェニルフォスフィン金、銀2,4−ペンタンヂオナト錯体、トリメチルホスフィン(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)銀錯体、銅ヘキサフルオロペンタンジオナトシクロオクタジエン錯体、などがある。
【0069】
半導体層64を構成するための半導体材料としては、分散液の粘度は、1mPa・s以上、50mPa・s以下であることが好ましい。インクジェット法にて吐出する際、粘度が1mPa・s未満の場合には、ノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また、粘度が50mPa・sを超えると、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となるためである。
【0070】
半導体層64を構成するための導体層として、CdSe、CdTe、GaAs、InP、Si、Ge、カーボンナノチューブ、シリコン、ZnO等の無機半導体、ペンタセン、アントラセン、テトラセン、フタロシアニン等の有機低分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体等のポリフェニレン系導電性高分子、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体等の複素環系導電性高分子、ポリアニリン及びその誘導体等のイオン性導電性高分子等の有機半導体を用いることができる。
半導体の塗布には、高沸点有機溶媒がよく用いられる。例えばトルエン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、エトキシベンゼン、1、3、5−トリメチルベンゼン、1、5−ジメチルテトラリン、4−メチルアニソール、1−メチルナフタレン、1、2−ジクロロベンゼンなどがよく使用される。
【0071】
なお、ゲート絶縁層82を膜80と同様の組成としない場合、または保護層84のような層間絶縁膜を構成する電気絶縁性の大きな材料としては、以下のもの用いることができる。具体的には、有機材料としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、シルセスキオキサン、ポリビニルフェノール、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリパラキシリレン、ポリビニルブチラールなどが挙げられ、ポリビニルフェノールやポリビニルアルコールは適当な架橋剤によって、架橋して用いてもよい。ポリフッ化キシレン、フッ素化ポリイミド、フッ素化ポリアリルエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ(α、α、α’、α’―テトラフルオロ―パラキシレン)、ポリ(エチレン/テトラフルオロエチレン)、ポリ(エチレン/クロロトリフルオロエチレン)、フッ素化エチレン/プロピレン共重合体の様なフッ素化高分子、ポリオレフィン系高分子、その他、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(α―ビニルナフタレン)、ポリビニルトルエン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(4―メチル―1―ペンテン)、ポリ(2―メチル―1、3―ブタジエン)、ポリパラキシレン、ポリ[1、1―(2―メチルプロパン)ビス(4―フェニル)カルボネート]、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリクロロスチレン、ポリ(2、6―ジメチル―1、4―フェニレンエーテル)、ポリビニルシクロヘキサン、ポリアリレンエーテル、ポリフェニレン、ポリスチレン―コ―α―メチルスチレン、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、ポリ(スチレン/ブタジエン)、ポリ(スチレン/2、4―ジメチルスチレン)などが挙げられる。
多孔質の絶縁膜としては、二酸化珪素にリンを添加したリンシリケートガラス、二酸化珪素にリン及びボロンを添加したホウ素リンリシケートガラス、ポリイミド、ポリアクリルなどの多孔質の絶縁膜が挙げられる。また、多孔質メチルシルセスキオキサン、多孔質ハイドロシルセスキオキサン、多孔質メチルハイドロシルセスキオキサン等のシロキサン結合を有する多孔質の絶縁膜を形成することができる。
【0072】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明のパターン形成装置およびパターン形成方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0073】
10、10a パターン形成装置(形成装置)
12 マーク形成部
14 検出部
16 露光部
18 画像形成部
20 画像処理部
22 マーク露光部
24 光源
26 マスク
28 マーク印刷部
30 印字部
80 膜
102 パターン露光領域
M アライメントマーク
Z 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に所定のパターンを形成するパターン形成装置であって、
前記基板上に形成された、撥液剤により構成された膜に、アライメントマークとなるマークパターンを露光するマーク露光部と、
前記マークパターンの露光領域に可視化インクを印刷し、前記アライメントマークを形成するマーク印刷部とを有することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項2】
さらに、前記可視化インクが印刷されてなる前記アライメントマークを検出し、前記アライメントマークの位置情報を得るマーク検出部と、
前記アライメントマークの位置情報に基づいて、前記膜に形成するパターンの位置を変えるか、または前記基板の位置を変えて、前記パターンを形成する位置を調整する調整部と、
前記基板の前記膜にパターンを形成する画像形成部とを有する請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項3】
前記画像形成部は、前記膜のうち、パターン形成領域を親水性にする露光部と、親水性にされた前記パターン形成領域に印刷する印刷部とを有する請求項1または2に記載のパターン形成装置。
【請求項4】
前記可視化インクは、前記膜の親疎水性が変化しない波長の光を吸収または反射するインクである請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン形成装置。
【請求項5】
前記可視化インクは、水溶性インクまたは金属インクである請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン形成装置。
【請求項6】
基板上に所定のパターンを形成するパターン形成方法であって、
前記基板上に形成された、撥液剤により構成された膜に、アライメントマークとなるマークパターンを露光する工程と、
前記マークパターンの露光領域に可視化インクを印刷し、前記アライメントマークを形成する工程とを有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
さらに、前記可視化インクが印刷されてなる前記アライメントマークを検出し、前記アライメントマークの位置情報を得る工程と、
前記アライメントマークの位置情報に基づいて、前記膜に形成するパターンの位置を変えるか、または前記基板の位置を変えて、前記パターンを形成する位置を調整する工程と、
前記基板の前記膜にパターンを形成する工程とを有する請求項6に記載の画像形方法。
【請求項8】
前記膜にパターンを形成する工程は、前記膜のうち、パターン形成領域を親水性にする工程と、親水性にされた前記パターン形成領域に印刷する工程とを有する請求項6または7に記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210594(P2012−210594A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77923(P2011−77923)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】