説明

パターン計測装置、ステージ高さ調整方法およびパターン計測方法

【課題】ステージの正しい高さと実際の高さとのズレを割り出し、該ズレを補正することができるパターン計測装置、ステージ高さ調整方法およびパターン計測方法を提供する。
【解決手段】パターン計測方法は、計測対象である周期構造のパターンが形成された基体を支持するステージと、前記ステージの位置と高さを制御するステージ制御手段と、電磁波を生成し、任意の仰角で前記基体へ照射する電磁波照射手段と、前記基体で散乱された電磁波の強度を検出する検出手段と、データ処理手段と、ステージ高さ補正手段と、を持つ。前記データ処理手段は、周期が既知である周期構造の領域に、照射位置を変えながら前記電磁波を照射して得られた検出信号から散乱プロファイルを作成し、該散乱プロファイルから前記周期が既知である周期構造の周期を算出し、算出された周期と前記既知の周期とのズレ量を算出して前記ステージの高さの位置のズレ量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パターン計測装置、ステージ高さ調整方法およびパターン計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細パターンが形成された構造体の形状を精密に観察する手法の一つとして、X線小角散乱を利用して表面形状を計測するCD−SAXS(Critical Dimension Small Angle X−ray Scattering)が知られている。CD−SAXSは、非破壊及び非接触の検査であり、かつ、微細形状に対する良好な感度が得られるという観点から、例えば半導体集積回路等の微細な回路パターンの計測に適しているといえる。
【0003】
CD−SAXSには、その光学系から分類して透過型SAXSと反射型SAXSの2種類がある。
透過型SAXSは、ウェーハに対して垂直にX線を照射し、パターンを透過したX線で作られる散乱プロファイルからパターンの断面形状を算出するものである。これに対して反射型SAXSは、X線をパターンに照射し、全反射させて得られる散乱プロファイルからパターン形状を算出するものである。
【0004】
反射型のCD−SAXSの場合、周期構造を持つパターンに対し、1°以下の小さな仰角でX線を入射させるため、ステージ高さがずれているとX線の照射位置が目標位置から大きくずれてしまい、その散乱プロファイルが、正しい照射位置にあるときと比較して縮小されて検出され、断面形状の寸法値として実際とは異なった値が算出されるというレンズ効果が発生する。
【0005】
通常、インラインで用いられる計測装置では、光学顕微鏡を用いてステージの高さが調整される。装置のたわみなどに起因して光学顕微鏡とステージとの距離が変動するので、これを定期的に調整するためには、ステージにウェーハを載せたときのウェーハの位置とX線の入射位置とを正確に調整する必要がある。
【0006】
しかしながら、現状では、ウェーハ位置とX線入射位置とを正確に調整する方法が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−255932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ステージの正しい高さと実際の高さとのズレを割り出し、該ズレを補正することができるパターン計測装置、ステージ高さ調整方法およびパターン計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態のパターン計測方法は、ステージと、ステージ制御手段と、電磁波照射手段と、検出手段と、データ処理手段と、ステージ高さ補正手段と、を持つ。前記ステージは、計測対象である周期構造のパターンが形成された基体を支持する。前記ステージ制御手段は、前記ステージの位置と高さを制御する。前記電磁波照射手段は、電磁波を生成し、任意の仰角で前記基体へ照射する。前記検出手段は、前記基体で散乱された電磁波の強度を検出する。前記データ処理手段は、前記検出手段からの信号を処理して第1の散乱プロファイルを作成し、前記周期構造のパターンについてシミュレーションにより予め得られた第2の散乱プロファイルと前記第1の散乱プロファイルとを照合することにより、前記周期構造の単位構造の断面形状を算出する。前記ステージ高さ補正手段は、前記ステージの高さの補正量を算出し、算出された補正量に基づいて前記ステージの高さを補正する。前記データ処理手段はまた、周期が既知である周期構造の領域に、照射位置を変えながら前記電磁波を照射して得られた検出信号から第3の散乱プロファイルを作成し、前記第3の散乱プロファイルから前記周期が既知である周期構造の周期を算出し、算出された周期と前記既知の周期とのズレ量を算出し、得られたズレ量から前記ステージの高さの位置のズレ量を算出する。前記ステージ高さ補正手段は、得られた前記ステージの高さの位置のズレ量に基づいて前記ステージの高さの補正値を算出し、該補正値に従って前記ステージの高さを調整する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の一形態による計測装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】X線の経路とパターンの方向との関係を示す平面図。
【図3】二次元検出器の受光部の外観を示す斜視図。
【図4】X線の照射位置のズレとステージ高さのズレとの関係を示す図。
【図5】ステージ移動により照射位置を変えながらパターンにX線を照射する説明図。
【図6】パターンにX線を照射して得られる散乱プロファイルの一例を示す図。
【図7】パターン中のX線照射位置とピッチのズレ量との相関関係の一例を表すグラフ。
【図8】実施の一形態によるステージ高さ調整方法の概略手順を示すフローチャート。
【図9】実施の一形態による計測方法の概略手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態のいくつかについて図面を参照しながら説明する。図面において、同一の部分には同一の参照番号を付してその重複説明は適宜省略する。
【0012】
(A)パターン計測装置
(1)装置構成
図1は、実施の一形態によるパターン計測装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態のパターン計測装置は、反射型のX線散乱測定装置で構成され、ステージ2と、X線管球4と、X線管球4を制御する光源制御部11と、二次元検出器3と、データ処理部12と、形状算出部14と、ステージ高さ補正部15と、ステージ2を制御するステージ制御部13とを備える。
【0013】
X線管球4は、光源制御部11を介して形状算出部14に接続される。二次元検出器3は、データ処理部12を介して形状算出部14に接続される。形状算出部14はまた、ステージ制御部13とステージ高さ補正部15に接続される。ステージ高さ補正部15はまた、ステージ制御部13を介してステージ2に接続される。
【0014】
ステージ2は、その上面にウェーハWが載置されてこれを支持する。ステージ2はまた、ステージ制御部13から制御信号を与えられ、図示しないアクチュエータにより、X,Y(水平方向),Z(高さ方向)の三次元空間内でウェーハWを移動させる他、ウェーハWを任意の回転角だけ回転させる。
図2は、X線の経路とパターンの方向との関係を示す平面図である。図2に示すように、ウェーハW1の表面には、検査対象である周期構造のパターンPsが形成されている。周期構造としては、図2に示すライン・アンド・スペース構造の他、例えば一方向もしくは互いに直交する2方向に所定ピッチで配置された穴パターン構造、または穴パターンとラインパターンとが混在する構造などが含まれる。ウェーハW1は、本実施形態において例えば第1の基体に対応する。基体としては、ウェーハW1に限ることなく、例えばガラス基板、化合物半導体基板、セラミック基板なども含まれる。本実施形態において、パターンPsは例えば第1の周期構造に対応する。
【0015】
X線管球4は、例えばCuのKα線を発する管球および凹面鏡(図示せず)を含み、光源制御部11から制御信号を与えられて、例えば1nm以下の波長のX線Liを生成する。生成したX線は、X線管球4内の凹面鏡によって光路が調整され、所望の仰角αでパターンへX線Liを照射する。仰角αとしては、X線LiがウェーハWを透過することなく全反射が生じる全反射角近傍の1°以下の角度が選択される。
【0016】
仰角αは、図示しないアームの制御と凹面鏡とによって調整されるが、ステージ2にゴニオメータを設けてアームに代えて、またはこれと併用して調整することとしてもよい。本実施形態において、X線管球4および光源制御部11は、例えば電磁波照射手段に対応する。しかしながら、電磁波としてはX線に限ることなく、検査対象の周期構造のピッチが例えば1μm以上と広い場合には、300nm〜700nmの可視光を用いてもよい。
【0017】
二次元検出器3は、パターンから十分に離れた位置に配置され、X線Liが照射したパターンにより散乱されたX線Lsを受光素子で検出し、その強度を測定する。二次元検出器3の受光部の外観を図3の斜視図に示す。二次元検出器3の受光部では受光素子が二次元に配置され、各受光素子は、パターンにより回折されたX線Lsの強度を測定して第1の信号として検出し、該第1の信号を自身の位置に対応付けることにより、受光部全体としてX線散乱強度の二次元画像を作成する。測定中は、ステージ2を0°〜10°回転させながらX線Liを照射するので(図2参照)、散乱されたX線Lsの露光が継続しており、受光部は、継続して検出されるX線Lsの散乱強度を積算する。
【0018】
データ処理部12は、二次元検出器3からX線散乱強度の二次元画像を取り込み、二次元のX線散乱プロファイルを作成する。
【0019】
取り込まれる散乱強度画像には、方位角方向、仰角方向にブラッグの回折条件で決まる角度に干渉縞が現れている。データ処理部12は、二次元の散乱強度画像を方位角方向、仰角方向に分割し、それぞれの方向での散乱プロファイルを算出する。ここで、方位角方向のプロファイルとは入射X線Liの仰角と散乱X線Lsの仰角が等しいときの散乱プロファイルをいい、仰角方向のプロファイルとは回折ピークの仰角方向の強度変化をいう。
【0020】
ラインパターンの長手方向に対して平行に近い方位角で、かつ、0.2°以下の仰角を持ったX線Liをラインパターンに照射させると、X線Liはパターンによって散乱される。散乱されたX線Lsが干渉することにより、方位角方向の散乱プロファイルには回折ピークが現われ、仰角方向にはその回折ピークごとに干渉縞が現われる。
【0021】
形状算出部14は、データ処理部12から散乱強度プロファイルを与えられ、後に詳述するように、パターンが計測対象パターンPs(図2参照)である場合にはシミュレーションプロファイルとの比較・フィッティングによりパターンPsの形状を算出し、計測値として出力する。形状算出部14はまた、パターンがピッチの値が予め与えられたパターンPr(図5参照)である場合には、ピッチの実測値と既知の値とのズレ量からステージ高さの位置のずれ量を求め、ステージ高さ補正部15に送る。
【0022】
ステージ高さ補正部15は、与えられたステージ高さの位置のずれ量からステージ高さの補正値を算出し、ステージ制御部13に送る。ステージ制御部13は、与えられた補正量に従ってステージ2をZ方向に駆動するための制御信号を生成してステージ2に与え、これによりステージの高さを補正する。本実施形態において、データ処理部12および形状算出部14は、例えばデータ処理手段に対応する。また、本実施形態において、形状算出部14、ステージ高さ補正部15およびステージ制御部13は、例えばステージ高さ補正手段に対応する。
【0023】
(2)ステージ高さ調整
図1に示す計測装置を用いてステージの高さを調整する方法について図4乃至図7を参照しながら説明する。
図4は、X線Liの照射位置のズレとステージ高さのズレとの関係を示す図である。本実施形態では、X線Liを微小角α(≦1°)でウェーハWへ入射するため、ステージ高さに本来の高さからのずれが生じると、X線Liの照射位置が変わり、照射位置と検出器までの距離が変わる。図4に示す例では、照射位置から検出器3までの距離が短くなっている。所望の照射位置と実際の照射位置との距離をΔLとすると、ステージの高さがΔZだけずれた場合、所望の位置にX線Liが照射されないため、X線照射位置と検出器までの距離が、カメラ長の設計値LとΔLだけ異なってしまう。
【0024】
X線Lsの回折角は、パターンの周期と波長によって決まるので、検出器までの距離が変わると、散乱パターンが拡大、縮小され、それによって、回折ピークの間隔も変化する。そのため、レンズ効果により、計測値は本来の値と異なった値が算出されてしまう。レンズ効果に敏感な寸法値はパターンの周期(ピッチ)であり、例えば、X線Liを0.2°の仰角で入射する場合、ステージの高さが下に3.5μmずれると、照射位置と検出器の距離は1mmだけ小さくなり、ピッチでは0.1nmだけ大きく出てしまう。
【0025】
ステージ高さのずれΔZは、パターンの周期波長と回折角度が求まれば正確にその値が求まる。したがって、ステージ高さのずれを補正するにはパターンの周期をモニタすることが有効である。
【0026】
そこで、まず、予め周期が既知のパターンPrが形成されたウェーハを用意する。本実施形態において、パターンPrは例えば第2の周期構造に対応し、パターンPrが形成されたウェーハは例えば第2の基体に対応する。パターン領域の幅は、照射するX線Liのビームスポット(図5の符号Bs参照)の長径よりも小さい必要がある。図5に示すとおり、ステージ2を矢印ARに移動させることにより、パターンPrをX線Liの照射方向に一定の間隔で移動させ、X線管球4から複数点でX線Liを照射し、散乱した電磁波の強度を二次元検出器3により検出して得られた第2の信号からX線散乱プロファイルを取得する。各照射点では、図6に例示するような散乱プロファイルが取得される。本実施形態において、周期が既知のパターンPrから取得されたX線散乱プロファイルは、例えば第3の散乱プロファイルに対応する。X線散乱プロファイルにおける回折ピークの間隔からパターンの周期を算定することができる。算出された周期(実測値)とパターンPrの既知の周期との差分を求め、ピッチのずれとして出力する。このようなピッチのズレを各照射点で求める。図7に示すようにパターン位置をX軸、ピッチズレをY軸とし、パターンPrの各X線照射位置に対応付けて測定で得られたピッチズレをプロットする。そして、プロットされた点をサンプルとする近似直線ALのグラフを作成する。
【0027】
ここで、図7のグラフにおいてX=0の位置は、図5の中央に示すように、ビームスポットBsの中心がパターンPrの中心に一致する位置に対応する。図7のグラフにおいて、近似直線ALのy切片は、ステージ高さのずれで生じるピッチのオフセット量Δdに対応する。
【0028】
したがって、パターンPrのピッチをdとすると、X線Liの照射位置と検出器3との距離のずれ量ΔLは、レンズ効果に関する次式
Δd/d=ΔL/L・・・(式1)
から求めることができる。
【0029】
また、照射位置のずれとステージ高さZの位置のずれΔZは、入射角α(図4参照)を用いて
ΔZ/ΔL=tanα・・・(式2)
で表される。
【0030】
よって、上述の式(1)および式(2)から、ステージ高さの位置のずれ量ΔZを求めることができる。
【0031】
図1に戻り、形状算出部14は、上述の手順でステージ高さの位置のずれ量ΔZを求め、ステージ高さ補正部15に送る。ステージ高さ補正部15は、与えられたズレ量ΔZからステージ高さの補正量を算出し、ステージ制御部13に送る。ステージ制御部13は、与えられた補正量に従ってステージ2をZ方向に駆動することにより、ステージ高さのずれを調整する。
【0032】
このように、本実施形態によれば、周期が既知である周期構造の領域にX線Liを照射し、散乱プロファイルの回折ピークをモニタするので、光学系の構成に変更を加えることなく、ステージの高さを正しい位置に修正できる計測装置が提供される。
【0033】
(3)形状測定
上述の手順でその高さが正しい位置に調整されたステージに計測対象である周期構造のパターンが形成された基体を載置すれば、既知の計測方法で周期構造の単位をなす単位構造の断面形状を計算により求めることができる。そのためには、周期構造のパターンについて予め散乱プロファイルをシミュレーションにより求め、実測により得られた散乱プロファイルとの間で比較・フィッティングを行えばよい。本実施形態において、計測対象のパターンについて実測により得られた散乱プロファイルは、例えば第1の散乱プロファイルに対応する。
【0034】
干渉縞を含む散乱プロファイルは、光学条件とパターン情報から予め計算することが可能である。光学条件は、例えば入射X線Liの波長や入射角(方位角方向、仰角方向)を含み、パターン情報は、パターンの断面形状と材料を含む。
【0035】
断面形状はパターン断面の輪郭部分を意味しており、ピッチ、CD、高さ、側壁角、トップラウンディング、ボトムラウンディングの形状パラメータよって表わされる関数である。断面形状を体積積分することによりX線Lsの散乱プロファイルをシミュレーションにより求めることができる。本実施形態において、計測対象のパターンについてシミュレーションにより予め得られた散乱プロファイルは、例えば第2の散乱プロファイルに対応する。
【0036】
図1に戻り、形状算出部14は、シミュレーションで予め得られたプロファイルと測定で得られた散乱プロファイルとを照合し、両者の差が最小になるようにフィッティングを行う。
そして、形状算出部14は、フィッティング誤差が最小となるときの形状パラメータの値を計測値として出力する。
【0037】
本実施形態によれば、正しい位置に調整されたステージに、計測対象パターンが形成された基体を載置するので、パターンの形状を高い精度で計測できる計測装置が提供される。
【0038】
(B)ステージ高さ調整方法
実施の一形態によるステージ高さ調整方法について図8のフローチャートを参照して説明する。
本実施形態のステージ高さ調整方法は、図1に示す前述したパターン計測装置を使用して実施することができるが、これに限ることなく、周期構造のパターンに電磁波を照射し、全反射して得られる散乱プロファイルからパターン形状を算出するものであれば、例えば可視光を電磁波として照射する装置を使用することもできる。
【0039】
まず、X線Liの照射回数kを設定する(ステップS11)。回数kは2以上の自然数であればよいが、ピッチのズレのオフセット量Δdをより正確に算出するためには3以上が望ましい。
【0040】
次いで、n=1として、周期が予め既知であるパターンが形成されたウェーハを、パターン計測装置のステージに載置し、X線Liを照射する(ステップS12)。
【0041】
続いて、X線Liが照射したパターンPrにより散乱されたX線Lsを二次元検出器で検出し、その強度を測定し(ステップS13)、二次元のX線散乱プロファイルを作成する(ステップS14)。このようにして作成されたX線散乱プロファイルは、本実施形態において、例えば第3の散乱プロファイルに対応する。
【0042】
そして、設定された照射回数kに至るまで、ステージ制御によりX線Liの照射方向に沿ってウェーハを移動してX線を照射し(n=n+1)、上述のステップS13およびステップS14の手順を繰り返す(ステップS15、S16)。
【0043】
次に、作成された散乱プロファイルから各照射位置でのピッチを算出し(ステップS17)、算出された実測によるピッチと既知のピッチとの差異をピッチのズレ量として算出し、X線Liのビームスポットの中心がパターンの中心に一致する位置に対応するピッチのズレ量をオフセット量Δdとして算出する(ステップS18)。
【0044】
オフセット量Δdを求めると、前述した式(1)および式(2)からステージ高さの位置のずれ量ΔZを求めてステージ高さの補正量を算出し、その補正量だけステージ高さを変更する(ステップS19)。
【0045】
本実施形態によれば、周期が既知である周期構造を使用して散乱プロファイルの回折ピークをモニタするだけで、簡易な手順により、ステージの高さを正しい位置に修正することができる
(C)パターン計測方法
実施の一形態によるパターン計測方法について図9のフローチャートを参照して説明する。
まず、計測対象である周期構造のパターンPsについて、断面形状と材料を含むパターン情報と光学条件から断面モデルを設定する(ステップS1)。
【0046】
次いで、断面形状を体積積分することにより断面モデルからX線散乱プロファイルをシミュレーションにより求める(ステップS2)。このようにして作成されたX線散乱プロファイルは、本実施形態において、例えば第2の散乱プロファイルに対応する。
【0047】
続いて、前述したステージ高さ調整方法によりステージの高さを調整する(ステップS10)。
次に、検査対象の周期構造パターンPsが形成されたウェーハをステージに載置して全反射となる低い仰角でX線Liを照射する(ステップS100)。
続いて、ウェーハからの散乱光を二次元検出器で検出し、その強度を測定する(ステップS101)。
【0048】
次いで、測定された強度を検出位置毎に積算し、実測値による散乱プロファイルを作成する(ステップS102)。ステップS100乃至ステップS102の手順により作成されたX線散乱プロファイルは、本実施形態において、例えば第1の散乱プロファイルに対応する。
【0049】
最後に、実測値による散乱プロファイルとシミュレーションプロファイルとを比較してフィッティングを行い、フィッティング誤差が最小となる時の形状パラメータの値を計測対象パターンの計測値として出力する(ステップS200)。
【0050】
本実施形態によれば、正しい位置に調整されたステージに計測対象パターンが形成された基体を載置するので、パターンの形状を高い精度で計測することができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
2…ステージ、3…二次元検出器、4…X線管球11…光源制御部、12…データ処理部、13…ステージ制御部、14…形状算出部、15…ステージ高さ補正部、Bs…ビームスポット、Li…X線(入射光)、Ls…X線(散乱光)、Ps,Pr…パターン、W1…ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象である第1の周期構造のパターンが形成された第1の基体を支持するステージと、
前記ステージの水平方向の位置と高さを制御するステージ制御手段と、
電磁波を生成し、任意の仰角で前記第1の基体へ照射する電磁波照射手段と、
前記第1の基体で散乱された電磁波の強度を第1の信号として検出する検出手段と、
前記第1の信号を処理して第1の散乱プロファイルを作成し、前記第1の周期構造のパターンについてシミュレーションにより予め得られた第2の散乱プロファイルと前記第1の散乱プロファイルとを照合することにより、前記第1の周期構造の単位構造の断面形状を算出するデータ処理手段と、
前記ステージの高さの補正量を算出し、算出された補正量に基づいて前記ステージの高さを補正するステージ高さ補正手段と、
を備え、
前記データ処理手段は、前記第1の基体とは異なる第2の基体上に形成された、周期が既知である第2の周期構造の領域に、照射位置を変えながら前記電磁波照射手段から前記電磁波を照射し、散乱した電磁波の強度を検出して得られた第2の信号から第3の散乱プロファイルを作成し、前記第3の散乱プロファイルから前記第2の周期構造の周期を算出し、算出された周期と前記既知の周期とのズレ量を算出し、得られた周期のズレ量から前記ステージの高さの位置のズレ量を算出し、
前記ステージ高さ補正手段は、得られた前記ステージの高さの位置のズレ量に基づいて前記ステージの高さの補正値を算出し、該補正値に従って前記ステージの高さを調整する、
パターン計測装置。
【請求項2】
前記算出された周期と前記既知の周期とのズレ量をΔd、前記既知の周期をdとし、前記電磁波の照射位置と前記検出手段の検出面との設計上の距離をLとし、前記電磁波の照射位置と前記検出手段の検出面との距離のズレをΔL、前記電磁波の仰角をα、前記ステージの高さのズレ量をΔZとすると、
前記データ処理手段は、
Δd/d=ΔL/L ・・・式(1)
ΔZ/ΔL=tanα・・・式(2)
から前記ステージの高さのズレ量を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のパターン計測装置。
【請求項3】
前記電磁波はX線であることを特徴とする請求項1または2に記載のパターン計測装置。
【請求項4】
前記電磁波の仰角は、全反射角近傍であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のパターン計測装置。
【請求項5】
計測対象である第1の周期構造のパターンが形成された第1の基体を支持するステージと、
前記ステージの位置と高さを制御するステージ制御手段と、
電磁波を生成し、任意の仰角で前記第1の基体へ照射する電磁波照射手段と、
前記第1の基体で散乱された電磁波の強度を第1の信号として検出する検出手段と、
前記検第1の信号を処理して第1の散乱プロファイルを作成し、前記第1の周期構造のパターンについてシミュレーションにより予め得られた第2の散乱プロファイルと、前記第1の散乱プロファイルとを照合することにより、前記第1の周期構造の単位構造の断面形状を算出するデータ処理手段と、
を備えるパターン計測装置の前記ステージの高さを調整する方法であって、
周期が既知である第2の周期構造の領域を含む第2の基体を前記ステージに支持させ、前記ステージを電磁波照射方向に移動させることにより照射位置を変えながら、前記第2の周期構造の領域に前記電磁波照射手段から前記電磁波を照射し、散乱した電磁波の強度を検出して得られた第2の信号から第3の散乱プロファイルを作成する工程と、
前記第3の散乱プロファイルから前記第2の周期構造の周期を算出する工程と、
算出された周期と、前記既知の周期とのズレ量を算出する工程と、
得られた周期のズレ量に基づいて前記ステージの高さの補正値を算出する工程と、
算出された補正値に従って前記ステージの高さを調整する工程と、
を備えるステージ高さ調整方法。
【請求項6】
請求項5に記載のステージ高さ調整方法を用いて前記ステージの高さを調整する工程と、
前記第1の基体を前記ステージに支持させ、電磁線を照射する工程と、
前記第1の基体からの散乱光を検出して前記第1の散乱プロファイルを作成する工程と、
作成した前記第1の散乱プロファイルと前記第2の散乱プロファイルとを照合することにより、前記単位構造の断面形状を算出する工程と、
を備えるパターン計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−68419(P2013−68419A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205052(P2011−205052)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】