説明

パネルの目地構造

【課題】不定形シーリング材の打設量や定形材の押し込み加減の管理を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】2枚のパネル1の連接部に凹状に形成された溝2と、該溝2の底面側に打設された不定形シーリング材3と、該溝2の表面側に装填された定形材4と、からなる目地構造であって、溝2は、その側面の中間部に形成された段部7によって、表面側に位置する第1溝部21と内部側に位置し第1溝部21より幅の狭い第2溝部22とに区画され、不定形シーリング材3は、段部7をガイドとして第2溝部22に打設され、定形材4は、段部7をストッパーとして第1溝部21に装填された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルの目地構造に関する。さらに詳述すると、本発明は、建物の外壁等におけるパネルの目地構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁パネル間の目地を水密構造とするため、当該目地部に不定形シーリング材を打設したり、定形シーリング材又はガスケットと呼ばれる定形材を装填したりすることにより防水施工をすることが行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−283509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、不定形シーリング材と定形材とを組み合わせることでパネル間の目地構造が構成されている場合、不定形シーリング材の打設量の管理が難しいことがある。
【0005】
そこで、本発明は、不定形シーリング材の打設量の管理を容易に行うことのできるパネルの目地構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため、本発明にかかるパネルの目地構造は2枚のパネルの連接部に凹状に形成された溝と、該溝の底面側に打設された不定形シーリング材と、該溝の表面側に装填された定形材と、からなる目地構造であって、前記溝は、その側面の中間部に形成された段部によって、表面側に位置する第1溝部と内部側に位置し第1溝部より幅の狭い第2溝部とに区画され、前記不定形シーリング材は、前記段部をガイドとして第2溝部に打設され、前記定形材は、前記段部をストッパーとして第1溝部に装填された、ことを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる目地構造によれば、段部をガイドとして不定形シーリング材を打設することで、打設量を容易に管理することが可能となる。また、段部をストッパーとして定形材を押し込むことで、定形材の押し込み過ぎを抑制することができる。
【0008】
このような目地構造においては、定形材が、不定形シーリング材の表面が未硬化のうちに溝に装填され、当該不定形シーリング材の表面の接着力によって保持されたものであることが好ましい。この場合、不定形シーリング材の接着力を利用して定形材を保持することができることから、定形材に従来のごとく突起部などを設ける必要がない。したがって、定形材を、特に複雑な形状とせずとも溝の所定位置に保持することができる。また、改修の際に当該定形材を容易に除去できるようにもなる。
【0009】
本発明にかかるパネルの目地構造は、建物の外壁に適用されて好適である。
【0010】
また、パネルの目地構造は、定形材が溝に装填された後に当該定形材およびパネルの表面に上塗りされた上塗り塗膜層をさらに備えることも好ましい。上塗り塗料による上塗り塗膜層で、定形材をさらに堅固かつ永続的に保持することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不定形シーリング材の打設量や定形材の押し込み加減の管理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】隣接する外壁パネルの連接部(目地)に形成された目地構造の一例を示す図である。
【図2】外壁パネルの表面から溝の底面に至るまでの範囲に塗膜層が形成された目地構造を示す図である。
【図3】溝の第2溝部に不定形シーリング材が打設された目地構造を示す図である。
【図4】溝の第1溝部に定形材が装填された目地構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態の一例を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図4に、本発明にかかるパネルの目地構造を建物の外壁を構成する外壁パネルに適用した場合の一例を示す。本実施形態における外壁パネル1の目地構造は、外壁パネル1,1の間の連接部に凹状に形成された溝2の底面2a側に不定形シーリング材3を打設し、該不定形シーリング材3の表面が未硬化のうちに溝2に定形材4を装填してなる水密の構造である。
【0015】
外壁パネル1は、例えば一般的に流通しているALC(Autoclaved Light-weight Concrete;軽量気泡コンクリート)からなる板状部材であり、例えば鉄骨造建物の外周部に取り付けられて外壁を構成する。なお、外壁パネル1の他の具体例としては、PCa板、GRC、押出し成形セメント板、窯業系サイディング、金属サイディング、塗装鋼板、金属パネル、ガラス、石材等が挙げられる。
【0016】
外壁パネル1の表面側の端縁部は切り欠かれており、2枚の外壁パネル1を連接することによって、その連接部に凹状の溝2が形成されている。また、この溝2には、後述するように、段部7が形成されている(図1等参照)。段部7は、溝2の両側面に、当該溝2を途中から幅狭にするように形成されている(図1等参照)。このような段部7により、溝2は、表面側の第1溝部21と、底面側の第2溝部22とに区画されている。この場合、図からも明らかなように、第2溝部22は第1溝部21よりも幅狭に形成されている(図1等参照)。そして、第2溝部22には不定形シーリング材3が打設され、第1溝部21には定形材4が装填される(図4等参照)。
【0017】
不定形シーリング材3は、溝2に打設されて外壁パネル1間の連接部(目地)を水密構造とするものである(図3等参照)。不定形シーリング材3としては、外壁パネルの材質等に応じて一般的に流通している湿式シーリング材を適宜選択して用いることができ、特にALCからなる外壁パネルに対しては、柔軟性に富み、地震等の外力により変形した際に母材の破壊を生じさせにくい変成シリコーン系、アクリルウレタン系、ポリウレタン系等のシーリング材が好ましい。また、具体例として、JIS A 5758:1997に規定されるシリコーン系、変性シリコーン系、ポリサルファイド系、アクリルウレタン系、ポリウレタン系、変性ポリサルファイド系、アクリル系、SBR系、ブチルゴム系、ポリイソブチレン系のものなどが挙げられる。ペースト状の不定形シーリング材3は例えばシーリングガンを用いて溝2に打設され、その後、へらを用いてその表面3aを加圧することで溝2に密実に充填されると同時に表面3aが平滑に仕上げられる。
【0018】
定形材4は、不定形シーリング材3が耐用年数に達した際に、溝2に新たな不定形シーリング材を打設する為の打設しろを予め確保しておく為のものであり、溝2の幅寸法に対応した幅寸法を有し、上述の不定形シーリング材3に重ね合わされるように溝2に装填される。
【0019】
定形材4は、上述した不定形シーリング材3の表面3aが硬化するまでの間に溝2に装填され、当該不定形シーリング材3の表面3aの接着力によって保持される(図4参照)。より具体的には、不定形シーリング材3が未硬化で表面3aに粘着性がある状態で、当該不定形シーリング材3の表面3aと定形材4とが密着するように定形材4を溝2へ装填され、不定形シーリング材3が未硬化の状態では該不定形シーリング材3の粘着性による接着力によって保持され、また不定形シーリング材3が硬化するにつれて化学的な接着力によって保持される。このように不定形シーリング材3が有する接着力を利用して定形材4を保持することとすれば、接着材などを別途使用する必要がない。なお、定形材4は、一般的に建築用ガスケット材として流通しているプラスチック系や合成ゴム系の材料で形成することができるが、このように不定形シーリング材3の接着力によって保持されることからすれば、当該不定形シーリング材3との接着性能が良好な塩化ビニルやTPU(熱可塑性ポリウレタン)や天然ゴムなどであることが好ましい。
【0020】
このような不定形シーリング材3と定形材4の組み合わせによる目地構造において、建物の新築当初から所定年数(不定形シーリング材3の耐用年数)が経過して改修が必要となった際に、一般的には、不定形シーリング材3を除去したうえで新たな不定形シーリング材を打設するものであるところを、不定形シーリング材3を除去することなく定形材4のみを除去し、このとき溝2に形成される空隙に新規な不定形シーリング材を打設することを可能としている。この点を考慮すると、定形材4の厚さは改修後に求められる性能(耐用年数)に応じたものとしておくことが好ましい。例えば、新築当初に溝2に打設された不定形シーリング材3と同等の性能を有する新規な不定形シーリング材を改修時に当該空隙に打設し、次回の改修までの期間を新築から最初の改修までの期間と同等とすることを意図する場合には、定形材4の厚さを、不定形シーリング材3の厚さとほぼ等しい厚さに確保しておくことが好ましい。また、改修時、当初打設された不定形シーリング材3よりも高性能な不定形シーリング材を用いることが想定される場合は、その性能の度合いに応じて定形材4の厚さを小さくすることもできる。
【0021】
塗膜層5は、外壁パネル1の表面から溝2の底面2aにかけて塗布された塗料によって形成されている。塗料は、例えば合成樹脂エマルジョンあるいは溶液形合成樹脂などであり、塗装範囲は、少なくとも当該外壁パネル1の表面から溝2の底面2a(を構成する切り欠き面)に至るまでの範囲である。本実施形態では、建物の躯体に取り付けられる前の段階、例えば外壁パネル1の製造工場等において、外壁パネル1の表面に塗料を予め塗布して塗膜層5を形成しているが、外壁パネル1を建物の躯体に取り付けた後に塗料を塗布して塗膜層5を形成することもできる(図2等参照)。
【0022】
続いて、外壁パネル1の目地構造の施工手順について以下に説明する(図1等参照)。
【0023】
まず、予め工場において表面及び溝2の底面2aに塗装を施して塗膜層5が形成された外壁パネル1を、建物の外周部に連接するように取り付ける。このとき、隣接する外壁パネル1の間の連接部(目地)に溝2が形成される(図1参照)。
【0024】
続いて、溝2に適宜プライマーを塗布したのち、溝2の第2溝部22に、両段部7を目安として(両段部7のより画定される面よりも若干盛り上がるように)シーリングガンを用いて不定形シーリング材3を打設する(図3参照)。その後、へら8を用いて加圧することで、当該不定形シーリング材3を溝2の第2溝部22に密実に充填しながらその表面3aを平滑に仕上げる。
【0025】
この際、段部7をへら8を用いた加圧作業のガイドとして機能させることができる。すなわち、両段部7に当接する幅のへら8(換言すれば、第2溝部22の幅より広く第1溝部21の幅よりも狭いへら8)を両段部7に沿わせながら溝方向(溝2の長手方向)に移動させれば、第2溝部22に打設された不定形シーリング材3の表面3aを加圧しながら均一に成形することができる(図3参照)。したがって、作業者の施工技術の熟練度にかかわらず、不定形シーリング材3の表面3aを均一に仕上げることが可能である。なお、図3ではへら先が平らなへら8を例示しているが、へら先の形状はこれに限定されるものではなく、定形材4の形状等に応じた形状のへらを用いることができる。
【0026】
次に、この不定形シーリング材3の表面3aが硬化する前に、定形材4を溝2の第1溝部21に装填し、該不定形シーリング材3の表面3aの接着力によって保持させる(図4参照)。具体的には、作業者らが定形材4を溝2の第1溝部21に押し込むといった動作により、定形材4を不定形シーリング材3の表面3aに密着させてその粘着力によって接着させることができる。このとき、上述した段部7が、定形材4の押し込み過ぎを抑制するストッパーとして機能する(図4参照)。
【0027】
その後、外壁パネル1と定形材4の表面に同時に上塗り塗料を吹き付けて上塗り塗膜層6を形成する(図4参照)。
【0028】
ここまで説明したように、本実施形態における外壁パネル1の目地構造によれば、不定形シーリング材3の接着力を利用して定形材4を保持させるため該定形材4に突起部等を設ける必要がなく、低コスト化を図ることが可能となっている。
【0029】
しかも、定形材4を取り付ける際、突起部を不定形シーリング材3に押し込むといった手間なく定形材4を保持することができるので、施工を簡素化して労力低減、工期短縮、費用削減を図ることが可能となっている。また、不定形シーリング材3を打設した後、直ちに定形材4を装填することができるうえ、その際に不定形シーリング材3には美観的性能が要求されないため仕上げ工事が簡略化でき、その分、労力低減、工期短縮、費用削減を図ることが可能となっている。
【0030】
さらに、定形材4の形状を複雑にする必要がないので、経年後の目地の改修時、当該定形材4を除去する際に従来ほどの手間を要しないという利点もある。
【0031】
加えて、段部7をガイドとして不定形シーリング材3を打設することで、打設量を容易に管理することができる。また、定形材4の装填時には、当該段部7がこの定形材4の押し込み過ぎを抑制するストッパーとしても機能する。したがって、この目地構造においては、不定形シーリング材3の打設量や定形材4の押し込み加減の管理を容易に行うことができる。
【0032】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるが、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0033】
また、上述した実施形態では、外壁パネル1は予め塗装が施されて塗膜層5が形成された状態で施工現場へと搬入され、建物の外周部に取り付けられた後に上塗り塗料を塗装して上塗り塗膜層6が形成されるものであるが、例えば、外壁パネル1に予め上塗り塗膜層6も形成して建設現場で上塗り塗膜層6を形成する工程を省略し、溝2には予め仕上げを施した定形材4を装填するようにすることもできる(図4参照)。
【0034】
また、上述した実施形態では、不定形シーリング材3の接着力を利用して定形材4を保持するようにしたが、場合によっては、不定形シーリング材3の接着力によって定形材4を一時的に保持し、別手段(例えば上塗り塗膜層6)で当該定形材4をさらに堅固かつ永続的に保持することも可能である(図4参照)。
【0035】
また、上述した実施形態では、両段部7が面一の場合を例示したが(図3等参照)、これも好適例に過ぎない。特に図示しないが、段部7は例えば複数の段差からなる段部、斜面を含む段部などあってもよく、要は、両段部7に当接する幅のへら8を溝方向に案内するガイドおよび定形材4の押し込み過ぎを抑制するストッパーとして機能しうる限り、形状や形態は特に限定されることがない。
【符号の説明】
【0036】
1…外壁パネル(パネル)、2…溝、3…不定形シーリング材、4…定形材、7…段部、8…へら、21…第1溝部、22…第2溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のパネルの連接部に凹状に形成された溝と、該溝の底面側に打設された不定形シーリング材と、該溝の表面側に装填された定形材と、からなる目地構造であって、
前記溝は、その側面の中間部に形成された段部によって、表面側に位置する第1溝部と内部側に位置し第1溝部より幅の狭い第2溝部とに区画され、
前記不定形シーリング材は、前記段部をガイドとして第2溝部に打設され、
前記定形材は、前記段部をストッパーとして第1溝部に装填された、ことを特徴とするパネルの目地構造。
【請求項2】
前記定形材が、前記不定形シーリング材の表面が未硬化のうちに前記溝に装填され、当該不定形シーリング材の表面の接着力によって保持されたことを特徴とする請求項1に記載のパネルの目地構造。
【請求項3】
建物の外壁に適用されることを特徴とする請求項2に記載のパネルの目地構造。
【請求項4】
前記定形材が前記溝に装填された後に当該定形材および前記パネルの表面に上塗りされた上塗り塗膜層をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のパネルの目地構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−46878(P2012−46878A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187116(P2010−187116)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】