説明

パネル

【課題】長期間使用した場合であっても十分に発光面積を維持できるパネルを提供すること。
【解決手段】本発明のパネルは、基板と、基板に対向して配置された封止板と、基板における封止板に対向する面上に設けられた発光素子と、基板と封止板との間にこれらと接するように設けられるとともに、発光素子の周囲に配置された複数のスペーサ22と、発光素子及びスペーサを内部に含むように、基板と封止板との間に充填されたシール剤層とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル、例えば、EL素子等を搭載するパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
EL(ElectroLuminescence)素子等の発光素子は、小型・軽量化が容易であるという特徴を有することから、ディスプレイや照明等への応用が期待されている。これらの発光素子が、上述した用途において実用化されるためには、高寿命であるという点が一つの重要な要因となる。そこで、従来、これらの発光素子は、外部の影響を極力排除して高寿命化を図るために、当該素子を構成する構造体を、基板と封止板との間に密封したパネルの形態で用いられることが多かった。
【0003】
近年では、発光素子の更なる高寿命化を目的として、上述した構造のパネルにおいて、基板と封止板との間を樹脂等のシール剤で充填することが行われている。このようにシール剤を充填することで、発光素子の外気との接触が一層抑制され、これにより発光素子の劣化等が一段と生じ難くなる。また、このように発光素子がシール剤に覆われていることで、発光素子への外力の影響が少なくなるため、外力の付加による発光素子の破壊を抑制することも可能となる。
【0004】
このように基板及び封止板間にシール剤が充填されたパネルとしては、例えば、基板上に発光素子を囲むように配置されたシール剤と、このシール剤の内側であって、画素部(発光素子)を覆うように設けられた他のシール剤とを備える発光装置が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−39542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に記載のパネルにおいては、当該パネルを長期間使用すると、発光素子に発光しない領域(ダークスポット)が生じ、発光面積が徐々に減少してしまうという傾向が見られた。このため、上記パネルは、高寿命化という観点から更なる改良が必要とされていた。
【0006】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、長期間使用した場合で
あっても発光面積の減少を防止できるパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のパネルは、基板と、基板と対向して配置された封止板と、基板における封止板に対向する面側に設けられた発光素子と、基板と封止板との間にこれらと接するように設けられるとともに、発光素子の周囲に配置された複数のスペーサと、基板と封止板との間に配置されてこれらを接着するとともに、発光素子及び前記スペーサを内部に含むシール剤層とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成を有するELパネルによれば、長期使用による発光面積の減少を抑制することが可能となる。本発明者らの検討によると、上記従来技術のパネル(発光装置)においては、発光素子を覆うシール剤とその周囲に形成されたシール剤との接触界面に応力が集中し易くなっており、かかる界面においてクラックや剥離が生じ易くなっていることが判明した。そして、このようなクラック等から侵入した外部の湿気等が、発光素子に接触してこれを劣化させ、その結果、上述したような発光面積の減少を招いていた。
【0009】
これに対し、上記本発明のパネルにおいては、シール剤層がスペーサを内部に含むように形成されていることから、上述したような界面における応力が発生し難くなっていることや、シール剤層の端縁部が外側に開放された形状となっていることから、シール剤層内部に応力が保持され難くなっていること等の要因によって、上述したようなクラック等が発生し難くなっているものと考えられる。こうして、本発明のパネルにおいては、クラック等からの外気の進入が抑制されて、長期間使用した場合であっても発光領域の減少が少なくなるものと考えられる。
【0010】
上記本発明のパネルにおいて、シール剤層は、基板及び封止板のうちのいずれか一方に接している領域の面積が、基板及び封止板のうちのもう一方に接している領域の面積よりも大きくなっていると好ましい。シール剤がこのような形状を有していると、基板と封止板とがより強固に接着されるようになり、これによりパネルの耐久性が向上して更なる高寿命化が図れるようになる。
【0011】
また、シール剤層は、基板と封止板との間の全ての領域を満たすように充填されるとともに、基板及び封止板のうちの少なくとも一方の端縁部の少なくとも一部を覆うように形成されていると好ましい。かかる形状を有することで、シール剤層による接着強度が更に向上することから、パネルの更なる高寿命化を図ることが可能となる。
【0012】
さらに、シール剤層は、光遅延硬化性を有する接着剤組成物の硬化物からなるものであると好ましい。光遅延性硬化性を有する接着剤組成物は、いったん光照射されると、光の照射が停止した場合であっても継続して硬化反応を生じ得るものである。
【0013】
例えば、パネルをディスプレイの用途に用いる場合、封止板側にカラーフィルタが設けられることが多く、従来のシール剤を光照射によって硬化させる場合には、かかるカラーフィルタによって光が減衰されてしまうため、十分に硬化された状態のシール剤層を得るのが困難な傾向にあった。
【0014】
これに対し、上述のように、シール剤層が光遅延硬化性を有する接着剤組成物の硬化物から構成される場合、硬化の際にカラーフィルタを通した光が照射されたとしても、熱硬化を併用することによって十分な硬化が生じ得る。その結果、シール剤層は十分良好に硬化された状態のものとなり、その結果、パネルの耐久性、ひいては高寿命化が図れるようになる。
【0015】
さらに、上述したスペーサは、樹脂及びこの樹脂中に分散された核材から構成されるものであるとより好ましい。かかる構成とすれば、シール剤層とスペーサとの間のクラック等が一層生じ難くなるとともに、基板と封止板との密着強度も向上するようになる。
【0016】
また、本発明のパネルは、基板と、前記基板と対向して配置された封止板と、前記基板における前記封止板に対向する面側に設けられた発光素子と、前記基板と前記封止板との間に配置されてこれらを接着するとともに、前記発光素子を内部に含むシール剤層とを備え、前記シール剤層は、前記基板及び前記封止板のうちのいずれか一方に接している領域の面積が、前記基板及び前記封止板のうちのもう一方に接している領域の面積よりも大きい。
【0017】
上記本発明においては、シール剤層が上記のような形状を有していることから、基板と封止板とが強固に接着されるようになり、シール剤層内部に応力が保持されても、上述したようなクラック等が発生し難くなっているものと考えられる。こうして、本発明のパネルにおいては、クラック等からの外気の進入が抑制されて、長期間使用した場合であっても発光領域の減少が少なくなるものと考えられる。また、シール剤層が上記のような形状を有していることにより、基板と封止板とが強固に接着され、これによりパネルの耐久性も向上するものと考えられる。
【0018】
なお、本発明において、基板又は封止板に接している領域の面積とは、基板又は封止板に接している領域の外周縁によって囲まれる領域の面積を言い、例えば超音波探傷装置(日立建機ファインテック製 FineSAT)によって測定される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、長期間使用した場合であっても発光面積を十分に維持できるパネルを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、全図を通じ、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
(第1実施形態)
まず、本発明の好適な実施形態に係るパネルの構造について説明する。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を備えるELパネルを例に挙げて説明する。
【0022】
図1は、本発明の好適な実施形態に係るELパネルの断面構造を模式的に示す図である。図2は、図1に示したELパネルの平面構造を示す図である。図示されるように、ELパネル10は、基板12と封止板14とがシール剤層24を介して貼り付けられた構造を有している。また、基板12と封止板14との間には、スペーサ22が配置されている。基板12における封止板14に対向している面12a上には、EL素子部16が搭載されている。さらに、封止板14における基板12に対向している面14b側には、カラーフィルタ18が設けられている。
【0023】
基板12としては、通常、EL素子用の基板として通常用いられるものが適用でき、例えば、ガラス基板、シリコン基板、フィルム基板、樹脂基板に代表される有機基板等が挙げられる。
【0024】
封止板14は、基板12との間にシール剤層24を保持するものである。この封止板14は、基板12よりも小さい面積を有しており、EL素子部16の上方を覆うように基板12の中央近傍領域に対向して設けられている。このような封止板14としては、EL素子部16からの発光を外部に取り出すため、ガラス等の透明材料からなるものが好ましい。
【0025】
カラーフィルタ18は、EL素子部16からの発光を透過する際、発光色を調整してパネルのカラー表示を可能とするものである。このようなカラーフィルタ18としては、液晶パネル等において通常用いられているようなRGBセルを備えるものを好適に適用できる。なお、ELパネル10を照明等として用いる場合には、このカラーフィルタ18を設ける必要はない。
【0026】
シール剤層24は、基板12と封止板14とに挟まれた空間における、EL素子部16、カラーフィルタ18及びスペーサ22を除く領域を満たしている。かかるシール剤層24によってEL素子部16が密封され、これにより、EL素子部16と外気(空気や湿気)との接触が防止されている。こうして、EL素子部16が湿気等によって劣化することが抑制される。
【0027】
このシール剤層24は、基板12と封止板14との間において、EL素子部16及びスペーサ22を内部に含むように形成されている。また、シール剤層24の基板12に接している領域A1は、封止板14に接している領域A2よりも広がっており、この広がった領域A1が封止板14よりも外側にはみでた状態となっている。言い換えると、領域A1の面積は、領域A2の面積よりも大きくなっている。かかる構造によって、シール剤層24は基板12に対して強く接着されている。そして、このシール剤層24を介して接着している封止板14も、基板12に対して強く接着されている。
【0028】
さらに、このシール剤層24は、封止板24の縁端部14aにまで回り込んだ形状を有している。すなわち、この縁端部14aの一部(下部)は、シール剤層24に覆われている。このような構造によって、封止板14が基板12に対してより強く接着されるようになるほか、基板12と封止板14との間への外気の侵入が一層抑制され得る。
【0029】
このシール剤層24は、接着剤組成物の硬化物から構成されている。接着剤組成物は、基板12と封止板14との接着が可能な接着性を有しており、しかも硬化後にEL素子部16からの発光を透過し得る透明性を有するものである。このような樹脂材料としては、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂のどちらを採用してもよいが、加熱によって樹脂材料がEL素子部16に浸透し易くなるほか、EL素子部16が劣化する場合もあることから、光硬化性樹脂であるとより好ましい。
【0030】
なかでも、シール剤層24を形成するための接着剤組成物としては、光遅延硬化性を有する接着剤組成物が好ましい。この光遅延硬化性を有する接着剤組成物によれば、出力の低い光を照射した場合であっても、後述する熱硬化を併用することにより、十分に硬化が生じるため、例えば、硬化の際に光がカラーフィルタ18によって減衰されたとしても、十分な硬化反応が生じることとなる。
【0031】
この光遅延硬化性接着剤としては、光(特に紫外光)カチオン硬化型の接着剤組成物が好ましく、なかでも、紫外光(UV)カチオン硬化型のエポキシ樹脂が好ましい。このようなUVカチオン硬化型のエポキシ樹脂としては、液状エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物が挙げられる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を主剤として、SbF6−、AsF6−、PF6−、BF4−といったアニオンを含有する重合開始剤を混合したものが例示できる。重合開始剤としては、上記4つのアニオンのうちのいずれかと、例えば、下記化学式(1a)又は(1b)で表される対イオン等とが塩を形成したものが例示できる。なかでも、トリスアリールスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートが好ましい。
【化1】

【0032】
スペーサ22は、EL素子部16の周囲に、EL素子部16を囲むように複数(ここでは4つ)配置されている。すなわち、スペーサ22は、EL素子部16の周囲に点在している。そして、基板12及び封止板14の両方に接触してこれらを支持することにより、この両者を一定の間隔に保っている。このスペーサ22としては、ガラス粒子、シリカ粒子、樹脂からなる粒子や金属粒子等が挙げられる。なお、スペーサ22の形状は、粒子状に限定されるものではなく、円柱状、帯状、楕円形状等であってもよい。
【0033】
このスペーサ22は、基板12と封止板14との間に配置されており、しかもシール剤層24の内部に含まれた状態となっている。換言すれば、シール剤層24は、スペーサ22よりも外側にはみ出た形状を有している。このように、シール剤層24は、その周縁部が外部に開放された状態となっていることから、従来のような外周部が更に他のシール剤によって囲まれているものに比して、その内部に応力を保持し難い構造となっている。
【0034】
スペーサ22は、基板12と封止板14との間隔を一定に保つために、多少の加圧によっても変形しない程度の剛性を有するものが好ましい。ただし、スペーサ22とシール剤層24との間に生じるずれ等を低減するために、スペーサ22は、シール剤層24と良好な親和性を有していることが好ましい。これらの観点から、スペーサ22としては、柔軟性を有する材料(例えば、樹脂)中に、剛性を有する核材(例えば、金属粒子)が分散された構造を有するものが好ましい。
【0035】
EL素子部16は、上述の如く、基板12上に設けられており、基板12と封止板14との間に充填されたシール剤層14によって密封された状態となっている。ここで、図3を参照して、ELパネル10に搭載されたEL素子部16の構造について説明する。図3は、EL素子部の要部の断面構造を模式的に示す図である。なお、ここでは、EL素子部16として、有機EL素子を形成した場合の例を説明する。
【0036】
EL素子部16は、基板12上に、陽極30、ホール注入層32、ホール輸送層34、発光層36、電子輸送層38、電子注入層40及び陰極42が順に形成されたものである。このEL素子部16は、発光層36からの発光を、基板12と反対側の端面から取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL素子である。
【0037】
EL素子部16において、陽極30は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極や、金属等の反射型電極とすることができ、光を効率よく取り出す観点から、後者の反射型電極とすることが好ましい。一方、陰極42は、発光層36からの光を取り出すためにITO等の透明電極とすることが好ましい。
【0038】
ホール注入層32、ホール輸送層34、電子輸送層38及び電子注入層40としては、有機ELにおいてこれらの用途に適用される公知の材料からなるものが適用できる。また、発光層36は、低分子系、高分子系のいずれの発光材料であってもよい。なお、発光層36には、所望の有機材料等がドーピングされていてもよい。
【0039】
なお、有機ELパネル10は、上述の如く封止板14側から光を取り出す形態に限定されず、例えば、基板12を透明材料により構成し、当該基板12側から光を取り出すようにしてもよい。このようなEL素子部16は、いわゆるボトムエミッション型の有機EL素子を構成する。この場合、封止板14側には、カラーフィルタ18を設ける必要はなく、基板側の任意の位置にカラーフィルタ18を配置することが好ましい。
【0040】
次に、上述した構造を有するELパネル10を製造する方法について説明する。
【0041】
ELパネル10の製造方法においては、まず、基板12を用意し、この上に上述したEL素子部16を構成する各層を積層する。各層の形成方法は任意であり、例えば、無機材料や低分子の有機材料からなる層を形成する場合には蒸着法が、また、高分子の有機材料からなる層を形成する場合には公知の塗布法や印刷法がそれぞれ適用できる。
【0042】
次に、EL素子部16の周囲に、粒子状のスペーサ22を複数点在させる。このとき、スペーサ22は、例えば、核材と樹脂とを含む樹脂組成物をEL素子部16の周囲に塗布し、この樹脂組成物を硬化させることによって形成すればよい。樹脂組成物の塗布は、例えばスクリーン印刷法やディスペンサを用いて行うことができる。
【0043】
続いて、このスペーサ22の内側に、硬化後にシール剤層24を構成するシール剤を滴下する。シール剤としては、シール剤層24を構成し得る樹脂材料、好ましくは光遅延硬化性を有する接着剤組成物を用いることができる。ここで、シール剤には、例えばフィラー等の樹脂材料以外の添加物が含まれていてもよい。
【0044】
なお、スペーサ22が、核材と樹脂とを含む樹脂組成物を用いて形成される場合、樹脂組成物中の樹脂は、シール剤よりも高い粘度を有することが好ましい。この場合、樹脂組成物をEL素子部16の周囲に塗布する場合に、シール剤に比べて樹脂が流動しにくくなり、核材を樹脂で基板12の表面12aにしっかりと固着させることができる。このため、スペーサ22について予定された位置からのずれが十分に防止される。その結果、封止板14と基板12とのギャップを均一にすることが可能となり、応力による歪みの発生、微視的なクラックや剥離の発生を十分に防止でき、発光領域の減少をより十分に防止することができる。このとき、樹脂は、核材を基板12又は封止板14に固着させることができ且つシール剤よりも高い粘度を有するものであれば特に限定されないが、このような樹脂としては、例えばポリアミド、アクリレートなどを用いることができる。
【0045】
このシール剤の添加量は、後述のように封止板14を張り合わせた後に、少なくともEL素子部16及びスペーサ22が内部に含まれるようにする。また好適な場合には、基板12と封止板14との間がシール剤層24によって満たされ、しかも、周縁部が基板12又は封止板14よりも外側にはみ出すようにする。
【0046】
ELパネル10の製造においては、上述した基板12、EL素子部16、スペーサ22及びシール剤を含む構造体を形成するとともに、カラーフィルタ18が設けられた封止板14を準備する。封止板14にカラーフィルタ18を形成する方法としては、封止板14の上に、フォトリソグラフ法等によりR、G及びBの各色のフィルタを順に形成する手法が挙げられる。
【0047】
それから、上述した構造体と、カラーフィルタ18が設けられた封止板14とを張り合わせて、パネル前駆体を得る。かかる張り合わせにおいては、まず、上記構造体に対して、封止板14を、EL素子部16とカラーフィルタ18とが向き合うように配置する。続いて、基板12及び封止板14をこれらの外側から加圧する。この際、加圧とともに加熱を行ってもよい。
【0048】
上述のように、スペーサ22が核材及び樹脂から構成されるものである場合、加圧によって樹脂が押しつぶされるが、基板12と封止板14との間隔は、より剛性の高い核材によって好適に保たれる。その結果、スペーサ22は、樹脂によってシール剤や基板12、封止板14等に密着し、これによりELパネル10においてずれ等を生じ難いものとなる。
【0049】
その後、基板12と封止板14との間に挟まれたシール剤を硬化してシール剤層24を形成し、これにより基板12と封止板14とを接着させて、図1に示す構造のELパネル10を得る。かかるシール剤の硬化は、シール剤を構成する樹脂材料に応じて、光硬化、熱硬化等の手段を適宜選択することにより行う。なお、シール剤として上述したような光遅延硬化性を有する接着剤組成物(以下、「光遅延硬化性組成物」という)を用いる場合には、光の照射により一度に硬化を生じさせるのではなく、以下に示すような2段階の硬化を行うことが好ましい。
【0050】
すなわち、まず、シール剤である光遅延硬化性組成物に対して光を照射し、当該組成物の重合反応を開始させて一部硬化する。ここで、一部硬化とは、硬化性組成物が完全に硬化せず、ある程度の流動性を保ったままの状態をいう。硬化性組成物の硬化の程度は、例えば、示差熱走査熱量計(DSC)により測定することができる。なお、第1の硬化工程では、シール剤が、ゴム状の状態を保つ程度に硬化することが好ましい。
【0051】
硬化に用いる光としては、光遅延硬化性組成物の硬化を生じさせることができる光であれば特に制限はなく、例えば、かかる組成物が紫外光の照射により硬化を生じるものである場合には、紫外光を用いる。紫外光としては、例えば高圧水銀灯から出射された光を用いることができる。
【0052】
光遅延硬化性組成物の一部硬化は、シール剤に対する光の照射量や照射時間等の条件を、硬化性接着剤組成物の完全硬化が生じない程度の条件とすることによって生じさせることができる。具体的には、例えば、光硬化性樹脂の硬化に通常用いられる光源から出射された光を、フィルタ等を通して減衰した後、シール剤に照射する方法や、このような光源からの光を、従来よりも短い時間照射する方法が挙げられる。なお、光源として、光の出力の調整が可能なものを用いる場合には、あらかじめ一部硬化に適した出力に調整した光を照射すればよい。
【0053】
特に、本実施形態のように、パネル前駆体がカラーフィルタ18を備える透明な封止板14を有している場合には、この封止板14側に上記従来の光源を配置することで、かかる光源から出射された光がカラーフィルタ18によって減衰されることから、シール剤には、上述したような一部硬化に好適な光が照射されることとなる。
【0054】
光遅延硬化性組成物の硬化においては、次に、光照射後のシール剤を加熱する。これにより、一部硬化された光遅延硬化性組成物の重合反応が更に進行し、当該組成物がほぼ完全硬化される。こうして、シール剤層24が形成される。なお、加熱の工程においては、光の照射を継続してもよく、停止してもよい。
【0055】
かかる工程においては、上述した光の照射により硬化性接着剤組成物に生じた重合反応が、加熱によって更に進行する。例えば、硬化性接着剤組成物としてUVカチオン硬化型エポキシ樹脂を用いた場合には、光の照射によって開始されたカチオン重合が、加熱によって連鎖的に進行し、これによりUVカチオン硬化型エポキシ樹脂がほぼ完全硬化する。
【0056】
上述した構成を有するELパネル10においては、シール剤層24がEL素子部16のみならずスペーサ22をも内部に含む構造を有している。従来、パネルの内部に充填されるシール剤は、その外側が他のシール剤によって囲まれており、内部と外部のシール剤の間に応力が集中し易くなっていたほか、製造時に内部のシール剤に発生した応力が保持されたままとなり易かった。このため、従来のパネルは、上記応力に起因してクラックや剥離が発生してしまい、このクラック等から侵入した外気(湿気等)によって発光素子が徐々に劣化してしまう傾向にあった。
【0057】
これに対し、本実施形態においては、シール剤層24とスペーサ22との接触面積が小さいことから、上述したような応力の集中が生じ難く、これらの間にクラックや剥離等が発生することが大幅に少なくなる。その結果、かかるシール剤層24内によって密封されたEL素子部16は、クラック等による外気との接触が極めて少なくなり、長期使用によっても非発光領域(ダークスポット)が形成され難いものとなる。
【0058】
また特に、上述したように、シール剤層24が、光遅延硬化性を有する接着剤組成物の硬化物からなる場合には、特に当該シール剤層24の応力が小さくなる。よって、かかる構成とすれば、ELパネル10のクラック等が一層生じ難くなって、ELパネル10の更なる高寿命化を図れるようになる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るパネルの第2実施形態について図4を用いて説明する。
【0060】
図4は、本発明の第2実施形態に係るELパネルの断面構造を模式的に示す図である。図4に示すように、本実施形態のパネル110は、スペーサ22を有しない点で第1実施形態のパネル10と相違する。
【0061】
このパネル20によれば、シール剤層24の基板12に接している領域A1は、封止板14に接している領域A2よりも広がっており、この広がった領域A1が封止板14よりも外側にはみでた状態となっている。言い換えると、領域A1の面積は、領域A2の面積よりも大きくなっている。
【0062】
このようにシール剤層24が上記のような形状を有していることから、基板12と封止板14とが強固に接着されるようになり、シール剤層24の内部に応力が保持されても、シール剤層24の内部にクラック等が発生し難くなっているものと考えられる。このため、ELパネル110においては、クラック等からの外気の進入が抑制されて、長期間使用した場合であっても発光領域の減少が少なくなる。また、シール剤層24が上記のような形状を有していることにより、基板12と封止板14とが強固に接着され、これによりパネル110の耐久性も向上する。
【0063】
なお、本実施形態のELパネル110においては、下記式:
R=100×(A1−A2)/A2
(上記式中、A1は、基板12とシール剤層24との接触領域の面積を、A2は、封止板14とシール剤層24との接触領域の面積を表す)
で表される比Rが0.020001%(=200ppm)以上であることが好ましい。この値未満では、シール剤層24において応力が保持されるとクラックが発生しやすくなる傾向がある。また上記比Rは400%以下であることが、寿命の向上という理由から好ましい。
さらに下記式:
P=a/h×100
(上記式中、hはシール剤層24の厚さを、aはシール剤層24の裾の広がりを表す)
で表される比Pが10%以上であることが更に好ましい。ここで、シール剤層24の裾の広がりaは、封止板14とシール剤層24との接触領域を基板12の表面12aに投影した場合に、その投影領域の外周縁と、基板12及びシール剤層24の接触領域の外周縁との差を言う。Pが10%未満では、シール剤層24において応力が保持されるとクラックが発生しやすくなる傾向がある。また上記比Pは50000%以下であることが、寿命の向上という理由から好ましい。
【0064】
なお、本発明は、上述した構造のパネルに限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本発明は、EL素子部は、上述したトップエミッション型のものに限られず、基板側から発光を取り出すボトムエミッション型のEL素子であってもよい。この場合、基板とEL素子部との間に、カラーフィルタやパッシベーション膜が形成されていてもよい。また、パネルとしては、上述した有機EL素子を搭載するELパネルに限られず、無機EL素子を搭載するELパネル等、類似の封止構造を有する発光素子を含むパネルであれば特に制限無く本発明を適用可能である。
【0065】
また、上記第1及び第2実施形態では、シール剤層24は、封止板14の縁端部14aにまで回り込んだ形状を有しているが、シール剤層24は封止板14の縁端部14aにまで回り込んでいなくてもよく、封止板14の面14bとシール剤層24の外周面24aとが交差する形状を有していてもよい。即ち、領域A2の面積は、封止板14の面14bの面積以下であればよい。
【0066】
更に、上記第1実施形態では、シール剤層24の基板12に接している領域A1が、封止板14に接している領域A2よりも広がっており、この広がった領域A1が封止板14よりも外側にはみでた状態となっているが、領域A1の面積は、領域A2の面積と等しくてもよいし、領域A2より小さくてもよい。
【0067】
更にまた、上記第2実施形態では、シール剤層24の基板12に接している領域A1が、封止板14に接している領域A2よりも広がっており、この広がった領域A1が封止板14よりも外側にはみでた状態となっているが、領域A1の面積は、領域A2より小さくてもよい。要するに、領域A1の面積は、領域A2の面積と等しくなければよい。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
[ELパネルの製造]
(実施例1)
まず、基板上にEL素子部が設けられた有機EL素子を形成した。次に、この基板におけるEL素子部の周囲に、基板と封止板との間にギャップを形成するための、ガラスビーズからなる核材を含む樹脂からなるスペーサを基板表面における4箇所に形成した。このとき、スペーサは、UVカチオン硬化型エポキシ樹脂(XNR5570、ナガセケムテックス社製)中に核材を混ぜて樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物を、ディスペンサーを用いて基板の表面におけるEL素子部の周囲4箇所に塗布し、紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させることによって得た。
【0070】
そして、このスペーサに囲まれた領域内にシール剤として、上記樹脂と同一のUVカチオン硬化型エポキシ樹脂(XNR5570、ナガセケムテックス社製)を滴下した。次いで、透明な封止板を、EL素子部に対向するように配置し、これらを加圧して張り合わせ、パネル前駆体を得た。このパネル前駆体においては、全てのスペーサがシール剤内部に含まれていた。
【0071】
それから、得られたパネル前駆体に対し、封止板側から、高圧水銀灯から出射された紫外光(出力13000mJ/cm)を照射し、シール剤であるUVカチオン硬化型エポキシ樹脂を硬化させてシール剤層を形成し、カラーフィルタを有しないこと以外は図1に示すものと同様の構造を有するELパネルを得た。得られたELパネルについて観察したところ、パネル内部にはクラックや剥離等は発生していないことが確認された。
【0072】
(比較例1)
シール剤層がスペーサの内側にのみ形成されるようにシール剤であるUVカチオン硬化型エポキシ樹脂を滴下したこと以外は、実施例1と同様にしてELパネルの製造を行い、図5に示す断面構造を有するELパネルを得た。得られたELパネルを観察したところ、パネル内部に若干のクラックが見られた。
【0073】
(実施例2)
スペーサを以下のようにして形成したこと以外は、実施例1と同様にしてELパネルの製造を行い、ELパネルを得た。即ちスペーサは、UVカチオン硬化型エポキシ樹脂(XNR5570、ナガセケムテックス社製)より粘度の高いUV硬化型アクリレート接着剤中に核材を混ぜて樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物を、ディスペンサーを用いて基板の表面におけるEL素子部の周囲4箇所に塗布し、紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させることによって形成した。
【0074】
また、得られたELパネルを観察したところ、パネル内部にはクラックや剥離等は発生していないことが確認された。
【0075】
(実施例3)
EL素子部の周囲にスペーサを形成しなかったこと以外は実施例1と同様にしてELパネルを得た。
【0076】
具体的には、まず、基板上にEL素子部が設けられた有機EL素子を形成した。次に、基板上に、シール剤としてUVカチオン硬化型エポキシ樹脂(XNR5570、ナガセケムテックス社製)を滴下した。次いで、透明な封止板を、EL素子部に対向するように配置し、これらを加圧して張り合わせ、パネル前駆体を得た。
【0077】
それから、得られたパネル前駆体に対し、封止板側から、高圧水銀灯から出射された紫外光(出力13000mJ/cm)を照射し、シール剤であるUVカチオン硬化型エポキシ樹脂を硬化させてシール剤層を形成し、カラーフィルタを有しないこと以外は図1に示すものと同様の構造を有するELパネルを得た。
【0078】
こうして得られたELパネルについて、超音波探傷装置(日立建機ファインテック製 FineSAT)を用いて、基板とシール剤層との界面、及びシール剤層と封止板との界面の観察を行い、その界面の映像を用いて、基板とシール剤層との接触領域の面積、及びシール剤層と封止板との接触領域の面積を算出した。その結果、R=(A1−A2)/A2=約1000ppmであり、基板とシール剤層との接触領域の面積がシール剤層と封止板との接触領域の面積よりも大きくなっていることが分かった。
【0079】
また、得られたELパネルについて観察したところ、パネル内部にはクラックや剥離等は発生していないことが確認された。
【0080】
(比較例2)
シール剤層が封止板と基板との間からはみ出さないようにシール剤であるUVカチオン硬化型エポキシ樹脂を滴下したこと以外は、実施例3と同様にしてELパネルの製造を行い、ELパネルを得た。
【0081】
こうして得られたELパネルについて、実施例3と同様にして、基板とシール剤層との接触領域の面積、及びシール剤層と封止板との接触領域の面積を算出した。その結果、R=(A1−A2)/A2=約30ppmであり、基板とシール剤層との接触領域の面積がシール剤層と封止板との接触領域の面積とほぼ等しいことが分かった。
【0082】
また、得られたELパネルを観察したところ、パネル内部に若干のクラックが見られた。
【0083】
[発光試験]
得られた実施例1〜3及び比較例1〜2のELパネルを用い、長時間発光後の発光領域の減少を測定する発光試験を行った。すなわち、まず、製造直後のELパネルを発光させて、その発光領域の面積を測定した。次いで、この発光を継続して生じさせ、800時間経過後に再び発光領域の面積を測定した。そして、製造直後の発光領域の面積を100とした場合における長時間発光後の発光領域の面積を算出した。得られた結果を表1及び図6に示す。図6は、実施例1及び比較例1のELパネルの発光試験により得られた結果を比較するグラフである。図6中、右側が実施例1で得られた結果を示すグラフであり、左側が比較例1で得られた結果を示すグラフである。
【表1】

【0084】
表1及び図6より、スペーサを内部に含むように形成されたシール剤層を有する実施例1のELパネルは、スペーサよりも内側にシール剤層が形成されスペーサがシール剤層に含まれていない比較例1のELパネルに比して、800時間発光後であっても発光領域の減少が極めて小さく、高寿命化を実現できることが確認された。
【0085】
また、表1より、スペーサを内部に含むように形成されたシール剤層を有する実施例2のELパネルについても、シール剤層が形成されスペーサがシール剤層に含まれていない比較例1のELパネルに比して、800時間発光後であっても発光領域の減少が極めて小さく、高寿命化を実現できることが確認された。
【0086】
更に、表1より、実施例3のELパネルは、比較例3のELパネルに比して、800時間発光後であっても発光領域の減少が極めて小さく、高寿命化を実現できることが分かった。このことから、基板及び封止板のうちのいずれか一方に接している領域の面積が、基板及び封止板のうちのもう一方に接している領域の面積よりも大きいELパネルでは、基板と封止板との間にスペーサが介在していなくても、発光面積の減少を十分に防止できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態に係るELパネルの断面構造を模式的に示す図である。
【図2】図1に示したELパネルの平面構造を示す図である。
【図3】EL素子部の要部の断面構造を模式的に示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るELパネルの断面構造を模式的に示す図である。
【図5】比較例1のELパネルの断面構造を示す図である。
【図6】実施例1及び比較例1のELパネルの発光試験により得られた結果を比較するグラフである。
【符号の説明】
【0088】
10…ELパネル、12…基板、14…封止板、14a…端縁部、16…EL素子部(発光素子)、18…カラーフィルタ、22…スペーサ、24…シール剤層、A1,A2…領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板と対向して配置された封止板と、
前記基板における前記封止板に対向する面側に設けられた発光素子と、
前記基板と前記封止板との間にこれらと接するように設けられるとともに、前記発光素子の周囲に配置された複数のスペーサと、
前記基板と前記封止板との間に配置されてこれらを接着するとともに、前記発光素子及び前記スペーサを内部に含むシール剤層と、
を備えるパネル。
【請求項2】
前記シール剤層は、前記基板及び前記封止板のうちのいずれか一方に接している領域の面積が、前記基板及び前記封止板のうちのもう一方に接している領域の面積よりも大きい、請求項1記載のパネル。
【請求項3】
前記シール剤層は、前記基板及び前記封止板のうちの少なくとも一方の端縁部の少なくとも一部を覆うように形成されている、請求項1又は2記載のパネル。
【請求項4】
前記シール剤層は、光遅延硬化性を有する接着剤組成物の硬化物からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項5】
前記スペーサは、樹脂及び該樹脂中に分散された核材から構成されるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項6】
基板と、
前記基板と対向して配置された封止板と、
前記基板における前記封止板に対向する面側に設けられた発光素子と、
前記基板と前記封止板との間に配置されてこれらを接着するとともに、前記発光素子を内部に含むシール剤層と、
を備え、
前記シール剤層は、前記基板及び前記封止板のうちのいずれか一方に接している領域の面積が、前記基板及び前記封止板のうちのもう一方に接している領域の面積よりも大きいパネル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−236996(P2006−236996A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23460(P2006−23460)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】