説明

パパイア果実発酵物含有石鹸

【課題】高いヒドロキシルラジカル消去活性を有し、且つ、一重項酸素消去活性をも有するパパイア果実発酵物を含有するパパイア果実発酵物含有石鹸を提供することを目的とする。
【解決手段】紫外線の強い土地で自生している野生の未成熟パパイア果実にブドウ糖、乳酸菌、アミラーゼ及び味噌用酵素を添加混合し、静置、発酵せしめ、その後ブドウ糖を添加し混和し乾燥せしめ、このものを少なくとも6ヶ月の長期静熟成させることにより、ヒドロキシルラジカル消去活性が、IC50値として表記した時、50μg/ml〜4000μg/ml、且つ、一重項酸素消去活性がIC50値として表記した時、40μg/ml〜3000μg/mlであるパパイア果実発酵物を製造し、該パパイア果実発酵物を1.0乃至10.0重量%含有させてパパイア果実発酵物含有石鹸を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性酸素生成の影響による皮膚老化、アトピー性皮膚炎を含む皮膚の保健機能性に関するトラブルの予防及び/又は改善、並びに、皮膚に対する高い洗浄力獲得のために、高いヒドロキシルラジカル消去活性、且つ、一重項酸素消去活性を有するパパイア果実発酵物を含有するパパイア果実発酵物含有石鹸に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、活性酸素種(ROS)と疾病との関係は広く認知されており、ガン、白内障、神経疾患、肝疾患、腎疾患の他、アレルギー、糖尿病などの生活習慣病にも関わっている。ROSが関係するこれらの疾病に対しては抗酸化物質の有効性が認められている。
【0003】
人体で最大の臓器である皮膚は、生体の最外層にあるため、紫外線や酸素、放射線等に直接さらされ、常に酸化ストレスを受けており、皮膚はこれら外的有害因子から生態を守るバリアーとしても機能している。しかし、そのバリアーとしての皮膚自体にも、酸化傷害は起きる。こうした場合、一重項酸素を中心とする活性酸素が発生し、炎症、アトピー性皮膚炎やガンなどの皮膚障害を起こすと同時に、シミやシワなどの皮膚の老化が進行される。近年、オゾン層の破壊などから、強い紫外線が地球上に降り注ぎ、皮膚ガンや白内障など紫外線による被害が増え続け、紫外線に対する対策が叫ばれるようになった。
【0004】
皮膚が受ける酸化ストレスは、喫煙、排気ガスなど大気中に含まれる活性酸素と共に、紫外線による酸素の活性化が知られている。特に、紫外線による炎症や発ガンとの関連性が叫ばれる中、近年では、日焼け、光毒性、光アレルギー等の皮膚障害やアトピー性皮膚炎、乾癬等の皮膚疾患、あるいは、光老化などへの関与も示唆されるようになった。また、皮膚外部からの酸化ストレスに加えて、虚血再灌流由来の、内部からのストレスにより、皮膚中に活性酸素・フリーラジカルが発生し、皮膚表皮の脂質過酸化、真皮のコラーゲンの架橋、エラスチンの変性、グリコサミノグリカンの断片化など、様々な酸化傷害をもたらし、皮膚の老化を発現させている。
【0005】
大気中に存在する酸素は、エネルギー的に比較的安定な三重項酸素であるが、紫外線のエネルギーを吸収して励起し活性酸素である一重項酸素に変えられる。エネルギー吸収の際、光増感が必要であるが、皮膚にはメラニンがその役目をしているものと考えられていた。また、ヒト皮膚の脂腺に生息する嫌気性菌であるpropionibacterioumacnesは、ニキビの発生に深く関係しているが、この菌はコプロプルフィリン、プロトポルフィリンなどのポルフィリン類を代謝する皮脂の分泌とともに、皮膚表面に移行することが近年明らかにされている。ポルフィリンは強い光増感物質であることが知られており、一重項酸素の発生源であることが示された。したがって、一重項酸素は、多くの活性酸素に比べて皮膚酸化傷害に深く関与していることが示唆されている。
【0006】
また、紫外線や電離放射線は、最も反応性および障害性の強いといわれるヒドロキシルラジカルも、フェントン反応により目や皮膚などに生成されることも示唆されている。
【0007】
ROSが関係する疾病に対しては、抗酸化物質の有効性が認められている。
そこで、紫外線や代謝により皮膚内に生じる活性酸素を消去して、活性酸素に起因する皮膚の老化を防止する皮膚外用剤が、近年、幾つも開発されてきた。
【0008】
しかしながら、皮膚老化防止に役立つと期待されていた、ビタミンCやビタミンE群は、一重項酸素消去にはほとんど効果が無く、一方、一重項酸素消去能が強いとされる、カロティンやアスタチサンチンは安定性の面で問題があり、また、ヒドロキシルラジカル消去には効果が無いことが指摘されていた。
【0009】
このように、今まで提案されている活性酸素除去組成物では、一重項酸素を含む全ての活性酸素を除去することが難しく、効果や安定性の面でも満足できないものであった。
【0010】
一方、パパイア(学名:Carica Papaya Linn)はトロピカルフルーツとして食用に供されるだけでなく、パパインとして知られるタンパク質加水分解酵素を含むことから、食品、及び、医薬品への配合成分として様々な分野で広く利用されてきた。また、肌に対しても、化粧品や、やけど治療・慢性皮膚潰瘍など皮膚外用剤として局所使用としても用いられてきた。
【0011】
その保健機能性は該製品の抗酸化能に基づくROS消去活性、特に、ヒドロキシルラジカル消去活性(非特許文献1)、肌への影響については、一重項酸素消去活性に基づく可能性が示唆される。
【0012】
パパイア果実発酵物製品は、上記抗酸化作用により、各種疾病に有効であることが知られている。例えば、てんかん、健忘症、アルツハイマー病、うつ病などの疾病への有効性、皮膚、大腸粘膜の免疫性を高め、アレルギー性炎症を抑制する可能性が示唆される。
また、紫外線の影響による皮膚のシミやシワなどの皮膚の老化に対する有効性は、パパイア果実発酵物製品のもつヒドロキシルラジカル消去作用だけのものではなく、特に、一重項酸素消去能により改善されていることが示唆される。その際、皮膚内に発生した活性酸素を消去することで、過酸化脂質生成が抑制され、皮膚最上層部の角層の保湿機能を維持されることから、アトピー性皮膚炎や肌乾燥、それに伴う痒みなどに対しても予防及び/又は改善することが示唆される。
これらの効果の延長として、肌の美白や潤い肌などの美容効果も期待されている。
【0013】
パパイアの発酵処理加工物の食品(特許文献1〜4)及び洗剤・クリーニング分野(特許文献5〜8)、石鹸(特許文献9、10)、外用美容剤(特許文献11)での利用が考えられており、一部実用化されている。
【0014】
更に、石鹸に各種の機能性素地、例えば、鳩麦エキス(特許文献12)、朝鮮人参、どくだみ、アロエ、びわの葉、桃の葉、クコ、芍薬等のエキス(特許文献13)、リン酸カルシューム系化合物(特許文献14)、茶エキス(特許文献15)、古代塩水(特許文献16)、岩白菜抽出物(特許文献17)、乳、酒粕、焼酎蒸留残渣(特許文献18)、ビンロウ子抽出物、甘草抽出物(特許文献19)、各種生薬抽出物(特許文献20)、コラーゲン合成促進剤(特許文献21)を混合するなど多数の技術が公知となっている。
【0015】
しかしながら、肌老化、アトピー性皮膚炎を含む皮膚に関するトラブルの予防及び/又は改善のために、パパイア果実発酵物がヒドロキシルラジカル消去活性があることは知られているが、一重項酸素消去活性があることは知られておらず、また、必要とされる、それら活性酸素種消去活性のレベルも知られていない。また、該発酵物を含むパパイア果実発酵物含有石鹸は知られていない現状である。
【0016】
かかる背景の下、高いヒドロキシルラジカル消去活性を有し、且つ、一重項酸素消去活性をも有するパパイア果実発酵物含有石鹸及びその製造技術の確立が期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Neuroscience143 2006 P63−72
【0018】
【特許文献1】特開2001−120224号公報
【0019】
【特許文献2】特開2003−24009号公報
【0020】
【特許文献3】特開2004−267026号公報
【0021】
【特許文献4】特開2006−75086号公報
【0022】
【特許文献5】特開平7−82597号公報
【0023】
【特許文献6】特開2001−152188号公報
【0024】
【特許文献7】特開2001−181687号公報
【0025】
【特許文献8】特開2001−247896号公報
【0026】
【特許文献9】特開昭53−54207号公報
【0027】
【特許文献10】特開2004−123585号公報
【0028】
【特許文献11】特開2007−302664号公報
【0029】
【特許文献12】特開平7−274914号公報
【0030】
【特許文献13】特開平7−274977号公報
【0031】
【特許文献14】特開平11−29486号公報
【0032】
【特許文献15】特開平11−139959号公報
【0033】
【特許文献16】特開2002−145737号公報
【0034】
【特許文献17】特開2004−196765号公報
【0035】
【特許文献18】特開2005−232078号公報
【0036】
【特許文献19】特開2004−570575号公報
【0037】
【特許文献20】特開2006−290865号公報
【0038】
【特許文献21】特開2007−508369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
本発明は、上記背景の下にてなされたものであり、高いヒドロキシルラジカル消去活性を有し、且つ、一重項酸素消去活性を有することで、皮膚に対する高い保健機能性並びに高い洗浄力を有するパパイア果実発酵物含有石鹸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0040】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ね、〔1〕高いヒドロキシルラジカル消去活性、且つ、一重項酸素消去活性を有するパパイア果実発酵物及びその製造技術の確立、〔2〕パパイア果実発酵物を含むパパイア果実発酵物含有石鹸の開発、〔3〕パパイア果実発酵物のヒドロキシルラジカル消去活性、且つ、一重項酸素消去活性と皮膚に対する高い保健機能性並びに皮膚に対する高い洗浄力の関連解明に基づき本発明に至った。
【0041】
すなわち、本発明に係るパパイア果実発酵物含有石鹸は、白色の種子を有する野生の未成熟パパイアであって、へたの部分と底部の花落ちを除去し、皮つきのまま種ごとスライスした後、マッシュしたものにブドウ糖を添加してなる第1の混合物を静置熟成し、
次いでこの第1の混合物を濾過することにより第1の濾液と第1の残渣に分画し、この第1の残渣にブドウ糖を混合し、第2の混合物とした後静置し、この第2の混合物を濾過することにより第2の濾液を取得するとともに、第1の濾液と第2の濾液の混合物にブドウ糖を添加してブドウ糖濃度を40乃至60%に調整された中間原料を取得し、
この中間原料を第1の中間原料、第2の中間原料及び第3の中間原料の3つに分け、
上記第1の中間原料に1.0〜5.0重量%の味噌用酵素を添加し混和した後発酵せしめ、その後、更にブドウ糖を添加し混和し乾燥せしめた後、破砕することにより第1の組成物を取得し、
上記第2の中間原料に5.0〜30.0重量%の乳酸菌及び0.2〜1.0重量%の味噌用酵素を添加し混和し発酵せしめ、その後、更にブドウ糖を添加し混和し乾燥せしめた後破砕することにより第2の組成物を取得し、
上記第3の中間原料に0.5〜4.0重量%のアミラーゼを添加し混和し発酵せしめ、その後、更にブドウ糖を添加し混和し乾燥せしめた後破砕することにより第3の組成物を取得し、
上記第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物を混合均質化し、少なくとも6ヶ月の長期間静置熟成させることにより得られ、かつ、ヒドロキシルラジカル消去活性が、IC50値として表記した時、50μg/ml〜4000μg/ml、又はTrolox換算で0.1μmol〜8.2μmol equivalent/mgであり、且つ、一重項酸素消去活性がIC50値として表記した時、40μg/ml〜3000μg/mlであるパパイア果実発酵物を1.0乃至10.0重量%含有し、
パーム油を少なくとも5.0重量%とパーム核油を少なくとも5.0重量%含む植物油脂からなる石鹸素地を用いることを特徴とする。
【0042】
ここで、「野生の未成熟パパイア」とは、原種に近い野生種のパパイアであって、かつ未だ熟していない外皮が青色のパパイアを意味し、店舗、スーパーなどで目にする品種改良されたパパイアと異なり、大きさは人の拳ほどあり、種がぎっしりと詰まっているものである。野生のパパイアは、品種改良されたパパイアに比べて生命力が強く、この野生のパパイアを皮や種子などを含め、まるごと使用することにより、本発明のパパイア果実発酵物含有石鹸は、従来のパパイアを利用した石鹸、特に、本出願人が以前出願した特許文献10に係る発酵パパイア石鹸(以下「従来のパパイア石鹸」と言う)に比べ、艶のある泡立ちのボリューム感、泡ののび、しっとり感など石鹸としての品質が向上した。また、石鹸素地への溶解度が格段に向上し、従来のパパイア石鹸においては使用時にザラザラした感触が認められたのに対し、本発明のパパイア果実発酵物含有石鹸は、パパイア果実発酵物が石鹸素地に完全に溶解し、使用時のザラザラ感は全く認められない。さらに、特に紫外線が強い地域に自生するものを用いることで、従来のパパイア石鹸より強い抗酸化作用が得られるようになった。すなわち、従来の石鹸では、一重項酸素消去活性が僅かだったため、そのことをデータとして公表することができなかったが、本発明のパパイア果実発酵物含有石鹸では、十分な一重項酸素消去活性が認められた。また、有効成分の皮膚への浸透性も向上したため、それらの相乗効果として、皮膚に対する保険機能性が大幅に向上した。これらのことから分かるように、本発明においては特許文献10に示されている栽培種の未熟果のパパイアでなく、野生の未成熟パパイアを用いること自体が重要な特徴を形成している。
【0043】
本発明において用いる乳酸菌には特に制限はないが、ストレプトコッカス属、ペディオコッカス属、ラクトバチルス属などが好ましく、ストレプトコッカス属の乳酸菌が特に好ましい。このものは、例えば、食品グレードの市販品として入手可能な原料である。
【0044】
本発明において用いるアミラーゼはでんぷんの加水分解酵素の総称であり、食品製造に利用可能な品質を有している限り、特には制限がない。このものは、例えば、食品グレードの市販品として入手して利用可能な原料であり、該酵素の特性、活性単位等の品質と、目的とする製品の品質条件、製造条件に応じて、使用方法を適宜調整できる。
【0045】
本発明において、味噌用酵素とは、酒、味噌、醤油などの製造に用いられるコウジカビ属コウジカビ、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillusoryzae)の菌体、分泌物などを意味し、アミラーゼ活性のほか、セルラーゼ活性、プロテアーゼ活性等多種類の消化酵素を含有しており、原料の野生の未成熟パパイアを完全に分解し、最終製品にサラサラ感、しっとり感を与え、ヒドロキシルラジカル消去活性、一重項酸素消去活性、多様な皮膚に対する保健機能性を付与するなどの求める品質確保のために必須の役割を果たす。このものは、例えば、食品グレードの市販品として入手可能な原料であり、該酵素の特性、活性単位等の品質と、目的とする製品の品質条件、製造条件に応じて、使用方法を適宜調整できる。このようにして製造されたパパイア果実発酵物は従来品と比較したとき、石鹸素地への分散性、溶解性が格段に向上しており、製造時間の短縮化に伴う製造コストの低減化、外観、使用感などの品質向上が認められる。
【0046】
また、本発明において、ヒドロキシルラジカル消去活性は以下の様に定義される。
【0047】
パパイア果実発酵物のヒドロキシルラジカル消去能の評価は電子スピン共鳴分光法(ESR法)にて実施する。ESR装置はX−Band(日本電子株式会社製RX型)にデジタル高速掃引ユニット(ラジカルリサーチ社)を組み込み改良したラジカル検出装置にESR装置用WIN−RADシステムRDA−03W ESRデータアナライザー(ラジカルリサーチ社)を接続したシステムから構成される。
【0048】
ESR測定条件は、掃引磁場領域;336.5±5mT、磁場変調Field Mod;0.079,Time Constant;0.10秒、掃引時間;1分、出力;8.0mWで行い、結果はCYPMPO(2−(5,5−Dimethyl−2−oxo−2−λ5−[1,3,2]dioxaphosphinan−2−yl)−2−methyl−3,4−dihydro−2H−pyrrole−1−oxide,ラジカルリサーチ社)によりトラップされたラジカルアダクトの相対強度として示される。
【0049】
本発明において、ヒドロキシルラジカル消去活性は試料(パパイア果実発酵物)を含まない対照ESR測定時の信号相対強度を50%減弱させるパパイア果実発酵物製品の濃度をIC50値(μg/ml,最終濃度)として定義してある。
【0050】
または、上記ヒドロキシルラジカル消去活性に相当する、即ち、同一のラジカル消去活性を発揮するTrolox((±)Hydroxy−2,5,7,8−tetramethylchromane−2−carboxylic acid,アルドリッチ社)の濃度を求め、パパイア果実発酵物製品のIC50値(μg/ml、最終濃度)に相当する単位(μmol Trolox equivalent/mg)として示してある。換言すると、Troloxをヒドロキシルラジカル消去活性評価のための標品として用い、試料(パパイア果実発酵物)のヒドロキシルラジカル消去活性に相当するTroloxの化学当量を求めることにより評価を行う。
【0051】
このことにより、ESR機種の違い、手法の違い、試薬類純度の違いなどによるデータのバラツキを最小限に留め、データに客観性を与えることが可能となる。
【0052】
一方、一重項酸素消去作用については、TMPD(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドンヒドロクロリド)をスピントラップ剤としたESRスピントラップ法により測定した。まず、20μMリボフラビンとTMPD(40mM2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリドンヒドロクロリド)を100mMのリン酸緩衝液(pH7.8)に溶解し、試料であるパパイア果実発酵物製品を添加した後、ESR用偏平水溶液セルに移し、これに長波長紫外線(UVA)を5分間照射して一重項酸素を発生させ、ESRスペクトルを測定した。ESRスペクトル強度より一重項酸素消去率を求め、これを濃度に対してプロットし、IC50を求めた。
【0053】
以上述べてきたように、従来のパパイア石鹸と比較した時、本発明になるパパイア果実発酵物含有石鹸は、主に紫外線のより強い地域で採取した野生の未成熟パパイア果実の選択的な使用、発酵過程の相違、石鹸素地の相違、などに基づき、高いヒドロキシルラジカル消去活性を有するとともに、従来、僅かだった一重項酸素消去活性も格段に向上し、有効成分の皮膚への浸透性も良くなったことで、皮膚に対する保健機能性が向上し並びに高い洗浄力を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、高いヒドロキシルラジカル消去活性、且つ、一重項酸素消去活性を有するので、紫外線や代謝による皮膚の酸化、すなわちシミ、シワなどの肌の老化やアトピー性皮膚炎など様々な皮膚のトラブルの予防及び/又は改善し、皮膚の弱い人や乳幼児などの敏感肌にも使用でき、皮膚を健康な状態に戻すなど高い保健機能性を有し、安定性に優れ、高い洗浄力を有する素材を供給することを可能とし、関連する産業の発展を促し、最終的に国民の健康維持、改善に寄与するものである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0056】
本発明におけるパパイア果実発酵物の中間原料製造の詳細は下記の通りである。
【0057】
野生の未成熟パパイアを採取し、へたの部分と底部の花落ちをカットし、皮付きのまま種ごと輪切りにした後、容器内にてつぶして練り上げる(マッシュする)。このものにブドウ糖を添加し、7乃至10日熟成させ、該熟成を濾過し、濾液1と残渣1を得る。
【0058】
因みに、このとき得られる濾液の色は鮮やかな黄色であり、味もフルーティである。本発明者において発明した従来のパパイア石鹸においては、野生種ではない未熟果のパパイアを使用していたため、同様にして得られる濾液は茶色であった。また、完熟したパパイアを用いて同様に濾液を製造した場合には、オレンジ色の液体と水とに分離してしまい、実用に堪えるものは製造できなかった。
【0059】
このように、本発明に用いるパパイア果実発酵物の中間原料を製造するに当たっては、野生のパパイアを用いることが特徴である。例えば、野生種は、ブルーベリー、ラズベリー、スイカ、ハーブ、ブドウなど、生薬や果物でも薬効が高いことが知られている。本発明においても、野生のパパイアを使用していることから、製造過程において、野生種でないパパイアを使用した場合とは明らかに異なる反応が見られたとともに、その品質においても、後述するように高品質のものが得られる。
【0060】
原料として用いる野生の未成熟パパイア果実は、瑞々しい白色の種子を多量に有する特徴を有しており、黒色の種子を有する成熟パパイア果実とは異なるものである。
【0061】
また、一般に、栽培された未成熟パパイア果実よりも野生の未成熟パパイア果実のほうがヒドロキシルラジカル消去活性及び一重項酸素消去活性が高い。さらに、より紫外線が強い地域に自生している野生の未成熟パパイアほど、これらの活性酸素種消去活性が強くなる傾向にあり、その保健機能性の高さから、本発明においては紫外線の強い地域で採取された野生の未成熟パパイア果実を用いることを特徴としている。
【0062】
残渣1とブドウ糖の混合物を静置後、濾過により濾液2を取得し、濾液1と濾液2の混合物にブドウ糖を添加し、該混合液中の最終的なブドウ糖濃度を40乃至60重量%に調整し、この物をパパイア果実発酵物の中間原料とする。
【0063】
パパイア果実発酵物製造の詳細は下記の通りである。
【0064】
上記中間原料を第1の中間原料、第2の中間原料及び第3の中間原料の3つに分け、上記第1の中間原料に1.0〜5.0重量%の味噌用酵素を添加し混和した後発酵せしめ、その後、更にブドウ糖を添加し混和し乾燥せしめた後破砕することにより第1の組成物を取得する。次いで、上記第2の中間原料に5.0〜30.0重量%の乳酸菌及び0.2〜1.0重量%の味噌用酵素を添加し混和し発酵せしめ、その後、更にブドウ糖を添加し混和し乾燥せしめた後破砕することにより第2の組成物を取得する。更に、上記第3の中間原料に0.5〜4.0重量%のアミラーゼを添加し混和し発酵せしめ、その後、更にブドウ糖を添加し混和し乾燥せしめた後破砕することにより第3の組成物を取得する。
【0065】
そして、上記第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物を混合均質化し、少なくとも6ヶ月の長期間静置熟成させることによりパパイア果実発酵物は製造される。この製造されたパパイア果実発酵物は、ヒドロキシルラジカル消去活性が、IC50値として表記した時、50μg/ml〜4000μg/mlであり、又はTrolox換算で0.1μmol〜8.2μmol equivalent/mgに相当する。また、一重項酸素消去活性については、IC50値として表記した時、40μg/ml〜3000μg/mlである。本製品は官能評価的に優れた品質を有し、保健機能性素材として有用な生理活性を保持している。
【0066】
本製品は乳白色粉末状であるが、石鹸製造を容易とするため、例えば、造粒による顆粒化、粉砕による微粉末化、打錠による錠剤化など剤形の変更、また、着色料、フレーバー添加など別途に任意の混合物を添加することは妨げられない。
【0067】
本発明においては原料として野生の未成熟パパイア果実を用いることが重要である。仮に、成熟したパパイア果実を原料として用いた時は、製造工程中に品質劣化を生じやすく、また、最終的に得られた発酵物の品質は官能評価的に未成熟パパイア果実を用いた時よりも劣り、更に、保健機能性素地として期待される生理活性を充分には保持していない。
【0068】
本発明に係るパパイア果実発酵物含有石鹸の製造において用いられる石鹸素地に関しては、その原料、製法に関して特段の制限はなく、公知の技術を利用できる。
【0069】
例えば、油脂及び/又は脂肪酸をアルカリ金属水酸化物により鹸化又は中和することにより製造される脂肪酸のアルカリ金属塩(アルカリ石鹸)、アニオン性界面活性剤からなる中性石鹸、酸性石鹸があげられる。
【0070】
油脂としては、植物由来の天然油脂又は脂肪酸を用いるのが好ましい。植物由来の天然油脂及び/又は脂肪酸としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、オリーブ油、椿油、カポック油、糠油、トウモロコシ油、ごま油、サフラワー油、大豆油、菜種油、綿実油、落花生油、ヒマワリ油などが挙げられるが、酸化安定性が高く、香りが良好で、高い洗浄力が発揮され、かつ、皮膚に対する機能性が安定しているパーム油及びパーム核油が特に好ましい。パーム油及びパーム核油は共に飽和脂肪酸が多く、特に、後者はラウリン酸含有量が多いことが本発明における機能発現に必要な性状を与えている。パーム油及びパーム核油は共に石鹸素地として用いる全植物油脂中少なくとも5.0重量%含有することによって目的とする機能を発揮できる。
【0071】
アルカリ金属塩としては、主にナトリウム塩、カリウム塩が挙げられるが、本発明においてはナトリウム塩が好ましい。
【0072】
アニオン性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウムやN−ラウロリル−L−グルタミン酸ナトリウムが挙げられる。
【0073】
本発明に係るパパイア果実発酵物含有石鹸は、例えば、上記の石鹸素地にパパイア果実発酵物を最終製品中濃度1.0乃至10.0重量%添加し、更に、必要に応じて抗酸化剤、香料、色素などを添加し、保持温度30〜45℃の条件下、20〜60分間混合・攪拌し、公知の加工方法に従って各種の形態に整形することができる。
【0074】
上記の石鹸素地へのパパイア果実発酵物添加量に関しては、最終製品中濃度0.1重量%より少ない時は、皮膚に対する生理機能性、例えば、肌老化、アトピー性皮膚炎を予防及び/又は改善するなどの高い保健機能性は発揮され難く、皮膚に対する高い洗浄力も発揮されにくい。また、本発明に用いるパパイア果実発酵物は、従来のパパイア石鹸に用いていたパパイア果実発酵物に比して溶けやすくなっているので、上記の石鹸素地へのパパイア果実発酵物添加量としては、最終製品中濃度40.0重量%くらいまでは添加可能であるが、石鹸素地への混合、整形性、実質的に石鹸としての機能性及びコスト面を考慮すると、その濃度は10重量%以下とするのが好ましい。従って、本発明に係るパパイア果実発酵物含有石鹸においては、上記石鹸素地にパパイア果実発酵物を最終製品中濃度1.0乃至10.0重量%添加するのが好ましい。
【0075】
本発明に係るパパイア果実発酵物含有石鹸の形態としては、例えば、化粧石鹸、透明石鹸、ペースト状もしくはジェル状の洗顔用石鹸、ボディ洗浄料、シャンプー、シェービングクリーム等が例示されるが、本発明は形態そのものによっては制限されない。
【0076】
パパイア果実発酵物を製品中に1.0乃至10.0重量%含むパパイア果実発酵物含有石鹸を、例えば、1回/日使用すると仮定した時、該パパイア果実発酵物のヒドロキシルラジカル消去活性がIC50値として、4000μg/ml以下、且つ、一重項酸素消去活性がIC50値として、3000μg/ml以下、望ましくはヒドロキシルラジカル消去活性が2000μg/ml以下、且つ、一重項酸素消去活性が1500μg/ml以下、更に望ましくはヒドロキシルラジカル消去活性が500μg/ml以下、且つ、一重項酸素消去活性が500μg/ml以下の時、皮膚に対する生理機能性、例えば、肌老化、アトピー性皮膚炎を予防及び/又は改善するなどの高い保健機能性が有効に発揮され、又は、皮膚に対する高い洗浄力も有効に発揮される。この範囲は、ヒドロキシルラジカル消去活性においては、Trolox換算で0.1μmol〜8.2μmol equivalent/mgに相当する。
【0077】
本発明に係るパパイア果実発酵物含有石鹸の使用方法に関しては、本発明においては使用量、使用回数、使用期間には特段の上限及び下限、又はその他の条件などは設定していない。従って、大量に短期間利用する場合、少量で長期間利用する場合、他の保健機能性素材と共に利用する場合など各種のケースが想定されるが、このこと自体によっては本発明は制限されない。
【0078】
本発明に係るパパイア果実発酵物含有石鹸は、紫外線による皮膚細胞の酸化、シミ、シワ、乾燥、非薄化等によって引き起こされる皮膚老化の予防及び/又は改善に有効である。
【0079】
本発明に係るパパイア果実発酵物含有石鹸は、アレルギー症状の一つであるアトピー性皮膚炎の予防及び/又は改善に有効である。
【0080】
本発明になるパパイア果実発酵物含有石鹸は、皮膚の老化、アトピー性皮膚炎の予防及び改善だけでなく、ニキビの改善、乾燥に伴う痒み低減、汗疹の低減、かぶれ症状の改善など皮膚の健康維持、回復に有効で、皮膚に対する高い保健機能性を発揮することができる。
【0081】
本発明に係るパパイア果実発酵物含有石鹸は、毛穴の黒ずみ除去、体臭低減、日焼け肌の刺激感低減などに有効で、皮膚に対する高い洗浄力を発揮できる。
【0082】
以下、実施例によって本発明を更に説明する。但し、下記の実施例は発明を例示するためのものであり、本発明をいかなる意味においても限定するものではない。
【0083】
<実施例1>パパイア果実発酵物含有石鹸の製造例
【0084】
1)中間原料の製造
野生の未成熟パパイア果実100Kgを採取し、異物除去のため水洗後、ヘタ部分及び果実の底部を除き、スライス品85Kgを得た。
【0085】
スライス品にブドウ糖20Kgを添加し、良く混和し、7乃至10日間静置熟成させ、該混合物を濾過し、果汁液である濾液1と残渣1を得た。
【0086】
残渣60Kgに対し、ブドウ糖10Kgを添加し、混和し、4日間静置熟成させ、該混合物を濾過し、果汁液である濾液2を得た。
【0087】
濾液1と濾液2を混合し、ブドウ糖2Kgを添加し、良く混和し、目的とする中間原料を40Kg得た。
【0088】
2)パパイア果実発酵物の製造
上記1)で製造された中間原料20Kgに味噌用酵素0.5Kgを添加し、良く混和し、40℃にて48時間発酵せしめた後、ブドウ糖60Kgを添加し、良く混和した後、18℃、1ヶ月間乾燥させ、粉砕し、組成物1を得た。
【0089】
上記1)で製造された中間原料15Kgに乳酸菌5Kg及び味噌用酵素0.1Kgを添加し、良く混和し、40℃にて48時間発酵せしめた後、ブドウ糖30Kgを添加し、良く混和した後、18℃、1ヶ月間乾燥させ、粉砕し、組成物2を得た。
【0090】
上記1)で製造された中間原料5Kgにアミラーゼ0.1Kgを添加し、良く混和し、40℃にて48時間発酵せしめた後、ブドウ糖10Kgを添加し、良く混和した後、18℃、1ヶ月間乾燥させ、粉砕し、組成物3を得た。
【0091】
組成物1、2、3を合わせて混合均質化し、ガスバリヤー製の高いアルミ包材内で6ヶ月以上熟成し、最終製品100Kgを得た。
【0092】
本品は水分含量5重量%以下の流動性の高い乳白色粉末で、官能的に優れた味質を有していた。
【0093】
3)パパイア果実発酵物製品及のヒドロキシルラジカル消去活性及び一重項酸素消去活性測定
上記のようにして製造されたパパイア果実発酵物のフリーラジカルおよび活性酸素種消去能の評価は、電子スピン共鳴分光(ESR)法にて行った。ESR装置はX−Band(日本電子株式会社RX型)にデジタル高速掃引ユニット(ラジカルリサーチ社)を組み込み改良したフリーラジカル検出装置にESR装置用WIN−RADシステムRDA−03W ESRデータアナライザ(ラジカルリサーチ社)を接続したシステムにて構成されている。
【0094】
ESR設定条件は、掃引磁場領域:336.5±5mT、磁場変調Field Mod:0.079、Time Constant:0.10秒、掃引時間:1分、出力:8.0mWで行い、結果はDMPO又はCYPMPOによりトラップされたラジカルのシグナルの相対強度として示される。以下に、更に具体的に示す。
【0095】
充分に窒素置換された200mMリン酸緩衝液(pH7.8)中に100μM硫酸第一鉄、100μMDETAPAC、5mM CYPMPO,各濃度の試料(パパイア果実発酵物製品)又は、Trolox,100μM過酸化水素の混合液を測定試料としてESR分析を行った。過酸化水素添加1分後に掃引を開始することで一定量発生させたCYPMO−ヒドロキシルラジカルアダクトによる全8本のピークの内、4番目のピーク(ESR信号)と、Mnによる6本のESR信号の内、低磁場側から2番目のMnのピーク(ESR信号)を比較し、各ESR信号の比、即ち、CYPMO−ヒドロキシルラジカル/Mnの相対強度によりヒドロキシルラジカルを定量化した。被験素材又はTroloxを添加せず実施した対照ESR測定で観察されたCYPMO−ヒドロキシルラジカル/MnのESR信号の相対強度を100%とした。試料(パパイア果実発酵物製品)をESR測定溶液に添加し、CYPMPO−ヒドロキシルラジカル/MnのESR信号の相対強度の変化で、試料(パパイア果実発酵物製品)のヒドロキシルラジカルに対する消去活性を検討した。その結果、対照ESR測定時の相対信号強度を50%減弱させるパパイア果実発酵物製品の濃度をIC50値(μg/ml)として求めたところ、50〜4000μg/ml(final)であった。
【0096】
同様にして、上記のヒドロキシルラジカル消去活性に相当するTroloxの相当当量を測定したところ、0.6μmol Trolox equivalent/mgであった。すなわち、保健機能性を発揮するに足る充分な活性が確認された。
【0097】
一重項酸素消去作用については、TMPD(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドンヒドロクロリド)をスピントラップ剤としたESRスピントラップ法により測定した。まず、20μMリボフラビンとTMPD(40mM2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリドンヒドロクロリド)を100mMのリン酸緩衝液(pH7.8)に溶解し、試料であるパパイア果実発酵物製品を添加した後、ESR用偏平水溶液セルに移し、これに長波長紫外線(UVA)を5分間照射して一重項酸素を発生させ、ESRスペクトルを測定した。ESRスペクトル強度より一重項酸素消去率を求め、これを濃度に対してプロットし、IC50(μg/ml)を求めた。その結果、584μg/ml(final)であった。
【0098】
4)パパイア果実発酵物含有石鹸の製造
石鹸釜に市販のパーム油868Kgとパーム核油217Kgに対して水150Kgを加えて攪拌しながら70℃に調整した(ステップ1)。攪拌しながら、水537Kgに水酸化ナトリウム166Kgを溶解した水溶液を追加した(ステップ2)。
【0099】
鹸化の進化と共に混合液が硬くなり始めた時点で、軟らかくなるまで30%食塩水を約100Kg加え、石鹸釜を100℃まで加温攪拌し鹸化を確認した。続いて、50℃以上にすることにより(ステップ3)塩析処理して鹸化工程を終了させ、3日間静置した(ステップ4)。
【0100】
次に、石鹸釜からグリセリンを含有する廃液を除去し、石鹸成分のみを残した(ステップ5)。
【0101】
上記石鹸成分は再びステップ3に戻して、2回目の鹸化処理を行う。即ち、石鹸釜を80℃以上に加温し、攪拌しながら水200Kg、30%食塩水約100Kgを加え、石鹸釜内温度を約100℃とし、約3時間攪拌を行うことにより塩析を行い、3日間静置した。
【0102】
続いて、石鹸釜からグリセリンを含有する廃液を除去し、石鹸成分のみを残した(ステップ6)。
【0103】
上記ステップ4の後、石鹸釜内の石鹸を枠内に移し、乾燥させ、枠を取り外し、石鹸を棒状に切断して押出し機に投入して麺状とし、更に、石鹸中の水分が約11%になるまで乾燥させ、石鹸素地を得た(ステップ7)。
【0104】
上記石鹸素地8.0Kgに、パパイア果実発酵物1.0Kgと水約200mlとを加え、ホッパーから押出し機に投入して破砕混練した(ステップ8)。
【0105】
続けて、押出し時の温度を40℃に設定し、減圧下(0.08〜0.85mpa)にて本発明になるパパイア果実発酵物と石鹸素地を分散混和し、該石鹸を押出して型打ち成型した(ステップ9)。
【0106】
続けて、乾燥工程を経て石鹸中の水分を10%に調整し、パパイア果実発酵物含有石鹸
が得られた(ステップ10)。
【0107】
<実施例2>パパイア果実発酵物含有石鹸の皮膚老化に対する有効性
コントロールとして、実施例1のパパイア果実発酵物含有石鹸に対して、従来のパパイア石鹸(比較品1)、パパイア果実発酵物を0.2%含むパパイア果実発酵物含有石鹸(比較品2)、パパイア果実発酵物を含まない石鹸(比較品3)を作成し、以下の試験に供した。
【0108】
紫外線による光老化、活性酸素を介する皮膚細胞の酸化、皮膚の乾燥、非薄化等により惹起される皮膚のシワ、たるみ、弾力低下等の皮膚老化の症状を有する被験者に、毎日入浴時、パパイア果実発酵物含有石鹸、比較品1、比較品2、比較品3を各区10名として1週間使用してもらい、その使用感を調査した。使用感は、大変良い、良い、変化無し、悪い、大変悪い、の5段階で評価し表1に示した。
【0109】
表1

※上記表において単位は、[名]であり、以下の表においても同様である。
【0110】
以上の調査結果から、パパイア果実発酵物含有石鹸が皮膚老化の諸症状に有効であることが示された。
【0111】
<実施例3>パパイア果実発酵物含有石鹸のアトピー性皮膚炎に対する有効性
コントロールとして、実施例1のパパイア果実発酵物含有石鹸に対して、従来のパパイア石鹸(比較品1)、パパイア果実発酵物0.2%を含むパパイア果実発酵物含有石鹸(比較品2)、パパイア果実発酵物を含まない石鹸(比較品3)を作成し、以下の試験に供した。
【0112】
アレルギー反応の一つとして惹起される皮膚の炎症、かゆみ、乾燥、等のアトピー性皮膚炎の症状を有する被験者に、毎日入浴時パパイア果実発酵物含有石鹸、比較品1、比較品2、比較品3を各区10名として1週間使用してもらい、その使用感を調査した。使用感は、大変良い、良い、変化無し、悪い、大変悪い、の5段階で評価し表2に示した。
【0113】
表2

【0114】
以上の調査結果から、パパイア果実発酵物含有石鹸がアトピー性皮膚炎の諸症状に有効であることが示された。
【0115】
<実施例4>パパイア果実発酵物含有石鹸の保健機能性評価
コントロールとして、実施例1のパパイア果実発酵物含有石鹸に対して、従来のパパイア石鹸(比較品1)、パパイア果実発酵物を0.2%含むパパイア果実発酵物含有石鹸(比較品2)、パパイア果実発酵物を含まない石鹸(比較品3)を作成し、以下の試験に供した。
【0116】
皮膚老化、アトピー性皮膚炎等以外の原因に起因する皮膚の代表的トラブルである乾燥肌、脂性肌、肌荒れ、敏感肌等のいずれか一つ以上の症状を有する被験者に、毎日入浴時、パパイア果実発酵物含有石鹸、比較品1、比較品2、比較品3を各区15名として1週間使用してもらい、その使用感を調査した。改善された時の条件は皮膚の潤い感、滑らかさ、ハリ、ツヤ、弾力、血色が良い、などの保健機能性に関する使用者の体感をベースとし、使用感は、大変良い、良い、変化無し、悪い、大変悪い、の5段階で評価し表3に示した。
【0117】
表3

【0118】
以上の調査結果から、パパイア果実発酵物含有石鹸が皮膚の保健機能性に関する諸症状に有効であることが示された。
【0119】
<実施例5>パパイア果実発酵物含有石鹸の洗浄力向上に対する有効性
コントロールとして、実施例1のパパイア果実発酵物含有石鹸に対して、従来のパパイア石鹸(比較品1)、パパイア果実発酵物を0.2%含むパパイア果実発酵物含有石鹸(比較品2)、パパイア果実発酵物を含まない石鹸(比較品3)を作成し、以下の試験に供した。
【0120】
パパイア果実発酵物含有石鹸の洗浄力向上に対する有効性評価のため、シミ、ソバカス、毛穴の黒ずみ、体臭等のいずれかの汚れに悩みを有する被験者に、毎日入浴時、パパイア果実発酵物含有石鹸、比較品1、比較品2、比較品3を各区10名として1週間使用してもらい、その泡立ち、汚れ落ちの度合いなどの改善に関する使用感を調査した。使用感は、大変良い、良い、変化無し、悪い、大変悪い、の5段階で評価し表4に示した。
【0121】
表4

【0122】
以上の調査結果から、パパイア果実発酵物含有石鹸が高い洗浄力を有することが示された。
【0123】
以上、本発明に係るパパイア果実発酵物含有石鹸と比較品1及び2とを比較した結果、本発明品を用いることの優位性が示された。
【0124】
<実施例6>パパイア果実発酵物含有石鹸と従来のパパイア石鹸との比較
本発明に係るパパイア果実発酵物含有石鹸の品質を示すべく、従来のパパイア石鹸との間において製品の比較を行った。なお、以下においては、従来のパパイア石鹸を「従来品」、本発明に係るパパイア果実発酵物含有石鹸を「本製品」と称する。
【0125】
<1>泡の比較テスト
[泡立ち]従来品と比較して、本製品は、泡そのものが柔らかく、ツヤがある。
[弾力]従来品及び本製品をそれぞれ泡立たせ、それぞれの泡を容器に入れ3時間放置した。その結果、従来品は、弾力がなくしぼんでいるが、本製品は、弾力性が失われず泡の状態が持続している。
[ツヤ]従来品は本製品と比較して最初からツヤが少ないが、本製品は、3時間たってもツヤが持続している。
[感触]従来品の場合は、泡を肌に塗布した際、滑らかではあるが直ぐに泡は消えてなくなる。本製品は、肌に塗布するとクリーム状にネットリとしていつまでも滑らかに伸びる。そのため、肌に対する刺激も少なく、また、マッサージクリームとしても利用できる。
[使用後]従来品の場合は、水洗いした後の肌の感触はサラサラ感があるが、本製品は、しっとり感が強く保湿効果が高い。また、皮膚への有効成分の浸透性が良くなったため、24時間以上経っても、高い保湿効果が保たれるようになった。
【0126】
<2>その他使用感の感想
従来品と比べて本製品は、以下のような効果を奏する。
本製品では、かかと、ひじの角質の部分をこすると、角質がボロボロと取れて、スベスベの肌になる。日焼けでの炎症が、本製品を使用すると治まる。
【0127】
<3>製造過程の比較
従来品では、パパイア果実発酵物を15〜20重量部入れているが(特許文献10の段落0009欄参照)、本製品は、パパイア果実発酵物は、半分以下(1〜10重量部)で従来品より品質が優れたものが製品化できる。
また、従来品は、パパイア果実発酵物の溶解度が不完全のため、多少のざらつきが残っていたが、本製品は、ざらつきは全くなく、完全に石鹸素地に溶け込んでいる。混合するパパイア果実発酵物の量が少なくなったこともその原因と思われる。このように本製品において、パパイア果実発酵物が奇麗に溶けるということは、パパイア果実発酵物そのものの質を向上している。
【0128】
<4>応用例および特有の効果
従来品は、洗浄目的のみであったが、本製品は、以下のように、幅広い用途で利用可能であり、そのうえ、従来品では奏し得なかった以下のような効果を有する。
a)本製品を泡立て、その泡を顔全体にのばしパックして3分ほど放置し、洗い流すと肌がしっとり、スベスベ、モチモチの肌になる。また、洗顔後のツッパリ感がない。使用を継続していると肌質が変わり、脂性肌の人の脂性特有のベトツキ感がなくなる。乾燥肌の人はカサカサ感が無くなりしっとりする。
b)泡を顔や首にのばし、マッサージクリームとして手入れすると、きめ細かい肌になり、シワ・シミの改善になる。また、その泡を5〜6時間容器に入れ放置するとクリーム状になり、より効果的である。
c)本製品で全身を洗うことで、全身の皮膚のトラブル、皮膚割れ、魚の目、皸、サメ肌、日焼け跡及び浮腫み、などが改善する。
d)本製品で全身を洗うと、しっとりと柔らかくなる。
e)本製品の泡で身体の贅肉などをマッサージすると贅肉が減り、ボディーラインがスリムになる。
f)本製品で皮膚のトラブル、傷などの改善が早くなる。
g)髭剃りに本製品を使うと、カミソリ負けがなくなり,肌がしっとりし、髭剃り後の肌荒れ、炎症などに由来する赤みが発生しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色の種子を有する野生の未成熟パパイアであって、へたの部分と底部の花落ちを除去し、皮つきのまま種ごとスライスした後、マッシュしたものにブドウ糖を添加してなる第1の混合物を静置熟成し、
次いでこの第1の混合物を濾過することにより第1の濾液と第1の残渣に分画し、この第1の残渣にブドウ糖を混合し、第2の混合物とした後静置し、この第2の混合物を濾過することにより第2の濾液を取得するとともに、第1の濾液と第2の濾液の混合物にブドウ糖を添加してブドウ糖濃度を40乃至60%に調整された中間原料を取得し、
この中間原料を第1の中間原料、第2の中間原料及び第3の中間原料の3つに分け、
上記第1の中間原料に1.0〜5.0重量%の味噌用酵素を添加し混和した後発酵せしめ、その後、更にブドウ糖を添加し混和し乾燥せしめた後、破砕することにより第1の組成物を取得し、
上記第2の中間原料に5.0〜30.0重量%の乳酸菌及び0.2〜1.0重量%の味噌用酵素を添加し混和し発酵せしめ、その後、更にブドウ糖を添加し混和し乾燥せしめた後破砕することにより第2の組成物を取得し、
上記第3の中間原料に0.5〜4.0重量%のアミラーゼを添加し混和し発酵せしめ、その後、更にブドウ糖を添加し混和し乾燥せしめた後破砕することにより第3の組成物を取得し、
上記第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物を混合均質化し、少なくとも6ヶ月の長期間静置熟成させることにより得られ、かつ、ヒドロキシルラジカル消去活性が、IC50値として表記した時、50μg/ml〜4000μg/ml、又はTrolox換算で0.1μmol〜8.2μmol equivalent/mgであり、且つ、一重項酸素消去活性がIC50値として表記した時、40μg/ml〜3000μg/mlであるパパイア果実発酵物を1.0乃至10.0重量%含有し、
パーム油を少なくとも5.0重量%とパーム核油を少なくとも5.0重量%含む植物油脂からなる石鹸素地を用いることを特徴とするパパイア果実発酵物含有石鹸。

【公開番号】特開2011−52168(P2011−52168A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204423(P2009−204423)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(500099386)株式会社済度 (6)
【Fターム(参考)】