説明

パパイヤピューレとその使用

本発明は、カリカ・パパイヤ果実からのピューレ調製物の製造方法に関する。該方法は次の工程からなる:果実または粉砕された果実、特に裏漉し状態の果実を、標準圧力で少なくとも30分間、必要な場合は少なくとも果実の2倍の体積の水溶液を用いて煮沸する工程;煮沸された果実または粉砕果実を、酸素含有雰囲気下に少なくとも30分の時間にわたって冷却する工程;および必要な場合は、冷却された果実または粉砕果実を、均質なピューレが得られるまで、粉砕、混合および裏漉しする工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリカ・パパイヤ(Carica papaya)果実からなるピューレ調製物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カリカ・パパイヤ(蕃瓜樹)はヴィオラレス(Violales)目のカリカ(Caricaceae)科に属し、大きく、果汁の多い、かつ美味な果実(パパイヤ)を産生する。
【0003】
パパイヤは、該パパイヤが栽培もされていた熱帯地域から由来する。大規模なプランテーションはセイロン、パキスタン、インド、オーストラリア、東アフリカおよびブラジルに見られる。メキシコと中米にもほぼ同じくらい多くのプランテーションがあるが、それらはだいたい小規模である。樹は高さ6mにまでなり、果実は重さ7kgに達する場合もある。
【0004】
伝統的な医学文化において、パパイヤ(皮殻、果肉、種子、まれに葉およびラテックスも含む)は、喘息、寄生虫症、創傷治癒障害ならびに下痢または便秘のような胃腸障害の治療に主に使用される。それらの成分は消化活動を刺激および調節し、胃酸過多症を緩和し、過度の膨満を低減し、かつ蛋白質の分解を促進する。
【0005】
治癒効果の可能性については、スパニエル・オビエド(Spanier Oviedo)が初めて文書に明記して報告した(1526年)。メキシコ伝統医学研究所所長のマリオ・ロハス・アルバ博士(Dr. Mario Rojas Alba)は、1996年以来、精力的に前記果実の治癒効果の調査に取り組んでいる。
【0006】
これまでに次の6つの異なった酵素が単離されている:
− パパイン
− キモパパインAおよびB
− リゾチーム
− リパーゼ
− グルタミン−シクロフェラーゼ
− カロース
【0007】
さらに、パパイヤは次のものに非常に富んでいる:
− ペクチン
− ビタミンA、B、C
− 必須脂肪酸
− ビオフラボノイド
− カリウム
− カルシウム
− マグネシウム
− ホスホチド
− ペプチド
− アミノ酸(たとえばアルギニン)
【0008】
グリコシド・カルパインは、強心作用を示すと言われている。
【0009】
カリカ・パパイヤの果実は、食物としての用途のほかに、蛋白質分解酵素パパインの製造に使用される。
【0010】
パパインは、火傷感染症の阻止、創傷の脱繊維素、昆虫刺傷の治療、水腫、炎症性過程の治療、および創傷治癒の促進のため、ならびに−少量の用量で−胃の不調時に使用されていた。さらに、パパイヤは緩下作用および清涼作用を示すと言われている。
【0011】
しかもパパイン(パパイヤ・ペプチダーゼI、EC 3.4.22.2)は、未熟のパパイヤの乳液(ラテックス)−この乳液は乾燥され、かつ粉末化される−から得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、消化障害の治療剤および消化調節剤をそれぞれ提供することにある。
【0013】
したがって、本発明は、次の工程からなることを特徴とするカリカ・パパイヤ果実からのピューレ調製物の製造方法に関する:
【0014】
− 果実または粉砕された果実、特に裏漉し状態の果実を、標準圧力で少なくとも30分間、必要な場合は少なくとも2倍の体積の水溶液を用いて煮沸する工程、
【0015】
− 煮沸された果実または粉砕された果実を、酸素含有雰囲気下に少なくとも30分の時間にわたって冷却する工程、
【0016】
− 必要な場合は、均質なピューレが得られるまで、冷却された果実または粉砕された果実を粉砕、混合および裏漉しする工程。
【0017】
驚くべきことに、このように適切な煮沸時間および冷却時間を考慮して製造されたピューレは、消化障害の治療に特に好適であることがわかった;この性質は前記煮沸および冷却時間を順守しないときは発生しないか、または発生したとしても非常にわずかなものである。
【0018】
最短時間である30分間は、標準圧力における煮沸時間に適用されるが、該最短煮沸時間は、原材料が加圧下に煮沸される場合は、それに応じて短縮される。
【0019】
本発明における果実の煮沸は−使用される果実の含水量に応じて−好ましくは少なくとも2倍の体積の水溶液、好ましくは約4倍の体積の水溶液を用いて行われる。この実施形態は、果実全部が煮沸される場合、または含水量の少ない粉砕果実を用いる場合において特に好適である。この場合も、密閉容器内(加圧下)で煮沸を行なうときには、必要な水の量はほんのわずかにまで低減され得る。そうでないと2倍以上の水量では最終生成物が希薄になりすぎるからである。煮沸は、通常、添加物なしに普通の水道水を加えることにより実施される。好適には、煮沸は少なくとも2時間、好ましくは少なくとも3時間、特に少なくとも5時間実施される。冷却過程は、たとえばさらなる熱エネルギーの流入を遮断すること、または果実を煮沸した容器を煮沸場所から常温の場所へ移動することによって行なわれる。すでに前に指摘したように、前記冷却過程も同様に、本発明にかかわるピューレの消化調節特性を生み出すために非常に重要であり、少なくとも30分間、好ましくは少なくとも5時間、さらにより好ましくは少なくとも6時間(または、5ないし7時間)実施されるべきである。しかしながら10時間およびそれ以上の冷却時間とすることも可能である。冷却過程においては酸素供給が重要であり、どの操作も空気供給下に行なうことが好ましい。
【0020】
好ましくは、ピューレの製造時、特に粉砕、混合および裏漉し工程において、品質保持性の向上のためにクエン酸を添加してよい。得られたピューレを通常の食品技術的条件下に続けて低温滅菌することも同様に好適である。
【0021】
コンシステンシー(Konsistenz)および形状の点においてさらに食欲を促進するように見え、かつ、より容易に摂取可能な最終生成物を得るために、果実は煮沸前に皮むきおよび種取りされていてもよい。この場合、果実を煮沸工程の直前に、粉砕(たとえば裏漉しによって)してもよい。
【0022】
最良の結果は、半熟ないし成熟したカリカ・パパイヤ果実を用いることによって得られる。パパイヤ果実の成熟状態は、その色によって定義される:未熟の果実は100%緑色の皮殻を有し、半熟の果実は50〜75%黄色であり、成熟果実は80〜100%黄色である。
【0023】
主要な見地によると、本発明は、本発明にかかわる方法によって製造できるカリカ・パパイヤ果実からなるピューレ調製物の消化障害の治療剤の製造のための使用に関する。前述のように、本発明にしたがって製造された生成物は、驚くべきことに消化障害の治療、特に慢性便秘、膨満および過敏性腸症候群の治療のために特に良好に適している。なお、該適性が主にカリカ・パパイヤ果実の性質にあるのではなく、本発明にかかわるピューレの特別な調製形態にあることは、さらに驚くべきことである。
【0024】
その他の優れた見地によると、本発明は、非治療範囲において、たとえば実際に健康であり、消化障害を患っていない人間における消化プロセスの改善のために、たとえば栄養添加物または補栄養剤の形態で、本発明にしたがって製造されたピューレの使用に関する。
【0025】
本発明の特別の見地は、本発明にかかわる方法にしたがって得られるカリカ・パパイヤ果実からなるピューレ調製物自体に関する。前述したように、前記調製物はその製造の特別形態、特に適用される煮沸および冷却時間が理由で特に効果的であり、結果として、本発明にしたがって報告された症状に対して特に好適である。
【0026】
ここで本発明にかかわる調製物の含水量は、好ましくは9〜90%の範囲であり、各症状は含水量の調整に特に関連している。この点において、含水量は60〜85%、特に70〜80%が特に好ましいことがわかっている。というのは、このような含水量は高い効き目を生み出すだけでなく、投与においても実質的に有利であるからである。
【0027】
たとえば樹上成熟して摘み取られた果実は、約88%の含水量および8〜12%の含糖量を有する。果実が1:1生成物を製造するために使用される場合は、便秘について改善するために、たとえば以下に記載された服用指示で2倍の用量−すなわち、2匙を2回または20mlを2回の代わりに、実際にはそれぞれ4匙を2回または40mlを2回−投与されなければならない。樹上成熟して摘み取られた果実に基づけば、およそ2:1の濃度(これは特に好適な濃度である)で、含水量約77%および含糖量16〜24%の最終生成物が生じる。
【0028】
正確には、本発明にかかわるピューレの実質的な生成物パラメータも構成するするのは含糖量である。該含糖量は、好ましくは5〜40%、特に好ましくは10〜30%、特に12〜26%の範囲である。たとえば老人医学において、糖尿病患者または糖尿病の危険のある患者の治療の際に、含糖量の調整においては特別の配慮がなされなければならない。
【0029】
特に驚くべきことは、本発明にしたがって得られる調製物の有効性は、特に製造方法が長時間にわたる煮沸過程も含むという事実に基づいているということである。これは、主に消化工程および特に慢性便秘の改善における作用の観点で注目すべきである。というのは、パパイヤ調製物の明確な消化促進作用に関する公知のあらゆる出版物は、パパイン酵素の一般的な消化促進作用を拠り所とする、すなわちパパインの作用に基づいているためである。しかしながら、パパインは処理温度が約85℃まで上がると分解し、かつ効果がなくなるため、本発明にかかわる製造方法は従来技術に完全に逆行し、かつ矛盾することがわかった。結果として、実施例に示されている結果−とりわけ慢性便秘と慢性下痢において効果を実証している臨床研究のものであるが−は、明白なパパイン分解形態の製造方法であることを考慮しても、なおさら驚くべきことであった。
【0030】
本発明にしたがって得られる調製物は、優れた予防的および治療的性質を有し、特に
特別な免疫強化および創傷治癒促進の、特に下腿潰瘍(Ulcus cruris)についての効果、ならびに糖尿病患者におけるインスリン必要量の低減、活力増強およびパーキンソン病患者の状態の改善のための効果が、本発明にしたがって得られる調製物を用いて行なわれる臨床研究の枠組の中で観察されている。そのため、これらの症状は、消化障害の治療に加えて、確かに本発明の際立った見地を構成する。
【0031】
用量は、治療される疾病の各臨床特性に応じて強く変化し得る。したがって、たとえば慢性下痢の治療には、充分な作用が生じさせるために便秘の治療よりも実質的に少ない用量が必要とされ、そのために含水量も、たとえば慢性便秘の治療のために、さらに低い範囲(たとえば70〜85%の間)に調節され、他方、下痢の治療に使用される薬剤については、より多い含水量、かつ、より少ない用量が適用される。
【0032】
含水量の調整は煮沸過程の流れの中で簡単な方法で行なうことができる。使用される果実の含水量に応じて、本発明にかかわる製造方法において水を添加してもよいし、または添加しなくてもよい;たとえばパパイヤがすでに粉砕(すりつぶし、裏漉しなど)された形態で煮沸過程に供された場合、水の添加は好ましくは省略することができる。この製造形態は、本発明にかかわるパパイヤピューレの現地での製造において特に有利であることがわかった。というのは、前記果実は通常、収穫時において高い含水量を有するからである。
【0033】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、もちろんこれらの実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0034】
1.カリカ・パパイヤ果実からの本発明にかかわるピューレの製造
【0035】
皮殻に少なくとも20%の黄色部分を有するパパイヤ果実100kgを皮むきおよび種取りし、500リットル煮沸容器の中に充填し、水道水300リットルを添加した。容器を開けたまま、果実を引き続き水で3時間煮沸し、次に開放して6時間室温で冷却させた。
【0036】
冷却後、この煮沸物に対して、pH値が約3.8%にまで下がるまでクエン酸を添加した(約600g)。
【0037】
その後、冷却した煮沸物を混合または裏漉しして微細なピューレとし、1リットルガラス容器の中に入れ、密閉し、低温滅菌した。
【0038】
2.本発明にかかわるピューレの大規模製造
【0039】
多量に製造するため、特に現地(パパイヤ原産国)で製造を行なうためには、次の前加工が有利であることがわかっている:
【0040】
果実が洗浄され、それに続き皮殻と種子が機械的に取り除かれる(果実は、この段階ではすでに種子を取り除くために裏漉しにかけられいる。したがって、煮沸後の裏漉しを省いてもよい。)。その後、クエン酸を添加してpHを3.5〜5.0、特に3.8〜4.4に調整され、それによりピューレが低温滅菌され、無菌状態で容器に充填される。これにより、ピューレは空輸または海上輸送することができる。
【0041】
半熟ないし成熟パパイヤからなる半生成物は、欧州市場で入手できる果実が有するよりも高い含水量、たとえば88%の含水量を有する場合、特に粉砕がすでに煮沸前に行われている場合は、煮沸のために水を添加する必要はまったくない。製造技術の理由から望ましいコンシステンシー(Konsistenz)および濃度にするため、半生成物は、含水量が約77%まで下がり、含糖量が約16%まで上がる(後者は未熟で摘み取られた果実で約5%、半熟ないし成熟の状態で摘み取られた果実で約8〜12%である)程度にまで、煮沸工程により濃縮しさえしてもよい。実際には、通常「生ピューレ」1リットルを「既製ピューレ」約1/2リットルに濃縮されることによって実現される。
【0042】
煮沸および冷却過程−これらは、効果を得るために不可欠であり、変更されることはない−の後に2つの好ましい包装方法がある:
【0043】
A)ガラス包装
この場合においては、ピューレ濃縮物(食料品条令によると、2:1の濃度以上のものが濃縮物と呼ばれる)をガラス瓶の中に充填し、それに続き低温滅菌した。
【0044】
B)チューブ袋包装またはスティックパック包装
ピューレ濃縮物はスティックパック(各20ml)に分けて充填され、溶接され、それに続き低温滅菌もされた。または、高温状態で無菌で直ちに充填された。
【0045】
3.慢性便秘を患う老人患者における本発明にかかわるパパイヤ調製物の作用の研究
【0046】
3.1 研究調製物の説明
樹上成熟して摘み取られたパパイヤ果実を皮むきおよび種取りし、それに続き30分〜5時間少なくとも2倍の体積の水溶液で煮沸した。その後、乾燥された果実を少なくとも30分かけて酸素含有雰囲気下で冷却し、裏漉しし、クエン酸を添加した。この研究のために、調製物はガラス容器に充填し、低温滅菌した。開放後はガラス容器を冷蔵庫に保管した。
【0047】
3.2 研究計画
この研究においては、主に動くことのできない老人センターの患者または居住者40人が採用された。全員が医師による慢性便秘の診断を受けてた。全員が一日一回ないし少なくとも週3回緩下薬を摂取していた。95%以上がマクロゴール(Movicol(登録商標))を摂取していた。
【0048】
以下の判定基準の少なくとも1つを満たす患者または居住者は除外された:
− 既知の悪性腫瘍
− ストーマ(Stoma)
− 血便
− 重症度の高い心不全
− 現在のモルヒネ治療
【0049】
研究経過は、19日間の予備期間、本発明にかかわる調整物を1日2回投与(朝食前に少量の水で2匙、昼食前に少量の水で2匙)する35日間の検査期間1と、本発明にかかわる調整物が午前中の投与のみに低減(朝食前に少量の水で2匙)される19日間の検査期間2に区分された。
【0050】
全検査期間中において、患者の排便挙動は、非常に正確に特別な記録用紙に記録された。
【0051】
“回避(escape)”治療として、つまり研究調製物の投与にもかかわらず排便が行われなかったときは、排便のない3日目にミクロクリスト(Mikroklist(登録商標))が2つ投与され、排便のない4日目にレラキシル(Relaxyl(登録商標))が1つ投与された。
【0052】
3.3 研究経過
前記判定基準を満たした患者もしくは居住者40人が本研究に採用された。
【0053】
予備段階においては、8人の患者がこの研究から除外された。理由は順応性がなかったこと、本発明にかかわる調製物の風味を嫌ったこと、または移動制限されていたにもかかわらず時々自力でトイレを利用した患者がいたため排便の管理が充分になされなかったことである。
【0054】
検査段階1においては、患者13人(残り合計32人中)に便秘率(排便なしの日数を排便のある日数で割った商)に改善が見られた。たとえば、0は毎日排便があること意味し、1は排便なしの日が50%であることを意味する。
【0055】
患者5人は、予備段階と比較して排便なしの日がわずかに増加したが、検査段階2においては、予備段階と比較して明らかに改善が見られた。患者11人には、便秘率の悪化が見られた。患者4人は予備段階と同じ便秘率を示した−つまり悪化もまったく見られなかった。
【0056】
検査段階2においては、合計で患者18人が引き続き観察された。その中の患者13人には、用量を低減したにもかかわらず、さらなる連続的な便秘率の低下が見られた。患者3人に、予備段階に比べて便秘率に漸進的な上昇が生じた(もしかすると、ここでは薬物の介入を考慮する必要がある。というのは、前記患者は複数の向精神薬を摂取したためである。)。この場合、研究調整物の用量を多くした別個の検査を行なうことが推奨される。患者1人は、全研究期間中に毎日排便があった。患者1人は、検査段階1と比較して、検査段階2(用量低減)では悪化が見られたが、予備段階よりは明らかに良好であった。
【0057】
3.4 まとめ
いわゆる補栄養剤、すなわち本発明にしたがって調製されたパパイヤパルプ形態(=CARICOL(登録商標))を用いて、老人部門の患者または居住者(不動状態、多発罹病状態)40人について実施したこの予測研究により、緩下薬の介入なしの排便習慣の改善に及ぼす重大な効果が証明できた。特に指摘しておくべきことは、いわゆるアレキサンダー注射(この場合、用量は非常に正確に守ることができる)によって調整物が投与されたPEGプローブを有する女性患者における便秘率の経過についてである:予備段階 1.38、第1検査段階 0.4、第2検査段階 0。
【0058】
4.慢性便秘の治療のための本発明にかかわるパパイヤピューレの使用
本発明にかかわるパパイヤピューレは、消化工程の−特に下痢、便秘(慢性便秘も含む)、膨満または過敏性腸症候群症における−調節または改善をする。
【0059】
そのために、2匙のパパイヤピューレが朝食時および昼食時にそれぞれ摂取される。多くの場合、消化調節作用は、翌日または翌々日にすでに開始している。
【0060】
5.慢性下痢を患う老人患者における本発明にかかわるパパイヤ調製物の作用の研究
【0061】
研究計画:
年金生活者用アパートの養護ステーションにおける患者または居住者10人−その大部分が下痢を患っている−が適応観察により採用された。
【0062】
次の判定基準の少なくとも1つを満たす患者または居住者は除外された:
− 既知の悪性腫瘍
− ストーマ(Stoma)
− 血便
【0063】
患者4人について2週間および患者6人について3.5週間の予備期間の後、患者にカリコール(CARICOL(登録商標))(本発明にかかわるパパイヤ調製物)が2治療段階で投与された。段階1において、カリコール(登録商標)がそれぞれ3.5週間(患者6人について)および5週間(患者4人について)1倍の濃度で1日2回投与された。排便挙動は非常に正確に記録された。
【0064】
その後、治療は3週間中断された。
【0065】
それに続く段階2において、カリコール(登録商標)の投与は2倍の濃度で6週間にわたり1日2回継続された。
【0066】
用量:
段階1:カリコール(登録商標)の1倍の濃度で一日の用量40ml(これは2×2匙の量に相当する)。摂取はそれぞれ朝と昼の食事直前に行われた。
【0067】
段階2:カリコール(登録商標)の2倍の濃度で一日の用量40ml(これは2×2匙の量に相当する)。摂取はそれぞれ朝と昼の食事直前に行われた。
【0068】
記録:
参加する各居住者の氏名、年齢、性別、手術、診断および進行中の薬物療法といったような既往データが特別なデータシートにリストアップされた。
【0069】
日々のカリコール(登録商標)の投与および排便形態は、いわゆる排便シートに記録された。
【0070】
記録において、次の排便形態の間で区別がなされた:
0=排便なし
I=通常の排便
+=少量の排便
〜=液状
§=軟便状
H=硬い
【0071】
結果:
予備段階の初期において、軟便/液便の平均割合は4日/週であり、普通便の平均割合は2.5日/週であった。
【0072】
治療段階の開始直後、すでに軟便/液便および普通便の間の均衡が達成できた。
【0073】
段階1の最後の週において、普通便の平均割合は約5日/週に達し、軟便/液便の平均割合は週あたり約1日に低減できた。
【0074】
この段階1の観察期間中において、全被検者10人の軟便/液便の日の大半は、普通便の日の大半へと逆転できた。
【0075】
3週間の中断後、治療初期の段階2における普通便の平均割合はたった約3.8日/週であり(段階1の終了時には5日/週)、軟便/液便の平均割合は2.7日/週であった。
【0076】
段階2の最後の週において、普通便の平均割合は約3.1日/週に達し、軟便/液便の平均割合は、週あたり約1.8日に低減できた。
【0077】
段階1と段階2を比較すると次のことがわかる:
老人患者の場合、治療の中断後、排便が再び元の形態に戻る傾向がある。
【0078】
慢性下痢の場合、1倍のカリコール(登録商標)濃度による段階1の治療は、段階2の2倍の濃度による治療よりも優れた結果をもたらす。段階1において、治療開始から何らかの反応があるまでの時間は、段階2よりも実質的に短く、段階1における普通便は、段階2よりも実質的に高い値に達した(段階1における普通便および軟便/液便の間の差は、段階2よりも実質的に大きい。グラフ参照)。
【0079】
また、2倍の濃度のカリコール(登録商標)を用いた段階2の観察期間中、被験者10人中8人においてのみ、軟便/液便の日の大半が普通便の日の大部分に転換できた。
【0080】
まとめ:
いわゆる補栄養剤、すなわち本発明にしたがって調製されたパパイヤパルプ形態(カリコール(登録商標))を用いて老人部門の患者または居住者10人(多発罹病状態、部分的に不動状態)について実施されたこの適用観察により、慢性下痢の排便習慣の改善に対する顕著な効果を示すことができた。
【0081】
指摘しておくべきことは、摂取中に被観察患者の一人において長年存在していた下腿腫瘍(Ulcus cruris)について、驚くべき、かつ特筆に値するほど広範囲にわたる改善が見られたことである。
【0082】
6.慢性便秘を患う老人患者における本発明にかかわるパパイヤ調製物の作用に関するさらなる研究
【0083】
研究計画
大部分は動くことができない老人部門の患者18人がこの研究に採用された。全員が医師による便秘の診断を受けており、毎日ないし週に数回緩下薬を摂取していた。
【0084】
次の判定基準の少なくとも1つを満たす患者または居住者は除外された:
− 既知の悪性腫瘍
− ストーマ(Stoma)
− 血便
− 重症度の高い心不全
− 現在のモルヒネ治療
【0085】
研究経過は、25日間の予備期間、本発明にかかわる調製物が1日2回投与(朝食前に少量の水で3匙、昼食前に少量の水で3匙)される35日間の検査期間1、調製物が午前中の投与のみに低減(朝食前に少量の水で2匙)された21〜28日間の検査期間2に区分された。
【0086】
全検査期間中に、患者の排便挙動は非常に正確に特別な記録用紙に記録された。
【0087】
“回避(escape)”治療として、すなわち研究調製物の投与にもかかわらず排便が行われなかったときは、排便のない3日目にレチカルボン(Lecicarbon(登録商標))が2つ投与され、排便のない4日目にミクロクリスト(Mikroklist(登録商標))が2つ投与された。
【0088】
研究経過
前記判定基準を満たした患者18人が本研究に採用された。
【0089】
検査段階1において、患者12人(合計18人中)に予備段階と比較して便秘率(排便なしの日数を排便ありの日数で割った商。たとえば0は毎日排便があることを意味し、1は排便なしの日数が50%であることを意味する。)の改善が見られた。患者2人は、予備段階と比較して排便なしの日はわずかに増加しただけであったが、検査段階2で予備段階と比較して顕著な改善が見られた。患者4人には便秘率の悪化が見られた。
【0090】
検査段階2において、残りの合計14人の患者が引き続き観察された。そのうち5人の患者には、用量を低減したにもかかわらず、さらに便秘率の連続的な低下が見られた。患者3人には、検査段階2において朝食前に1回2匙(3分の1用量)に用量を低減したにもかかわらず、検査段階1と比較して変化が見られなかった。検査段階2(用量低減)においては、患者3人に検査段階1と同様に悪化が現れたが、予備段階に比べて顕著な改善が見られた。患者3人は、予備段階に比べて便秘率が上昇した。これらの場合、研究調製物の用量を高めて別の検査を行なうことが推奨される。
【0091】
便秘率の改善に加えて、介入の経過も注目に値する。予備段階の第1週中において、依然として“回避薬品(escape medication)”を21回投与する必要がある場合であっても、介入は検査段階1の最後の週で9回に、検査段階2(用量低減)の最後の週で5回ないし3回までに低減できた。
【0092】
まとめ
いわゆる補栄養剤、すなわち本発明にしたがって製造されたパパイヤパルプ形態(=カリコール(登録商標))を用いて老人部門患者18人(不動状態、多発罹病状態)について実施されたこの予測研究により、緩下薬による介入なしに排便習慣の改善への重大な効果を証明できた。
【0093】
7.実施された実験に関連する追加の臨床観察
【0094】
前記第3〜6項のいずれか1項で実施された研究の枠組の中で、次の臨床観察が報告された:
【0095】
かなりの長期間起きる意志がなく非常に意識が朦朧としている患者が、本発明にかかわる薬剤を数日間にわたって摂取した後、新たなエネルギーを得て、再び床から離れたいと望み、彼の話す言語が再び明瞭になった。
【0096】
1年以上にわたって足の開口潰瘍(下腿潰瘍(Ulcus cruris))を患っていた女性1人について、皮膚移植を含む様々な治療を行なったがまったく改善がもたらされなかった。この女性は消化障害を抱えていなかったにもかかわらず、彼女は本発明にかかわる薬剤を摂取することを望み、3か月にわたり非常に一貫して摂取を行なったところ、結果として足は治癒した。
【0097】
女性糖尿病患者においては、本発明にかかわる薬剤の投与を数週間行なった後、開口した足の痛みがかなり改善し、インスリンの注射がより少量で済むようになった。
【0098】
パーキンソン病を患っている患者の運動機能は、本発明にしたがって製造されたパパイヤ抽出物による治療後、見るからに改善できた。
【0099】
したがって、「慢性便秘」および「慢性下痢」の症状について実施された研究の枠組における前記の観察から、本発明にかかわる薬剤も物質代謝、体の防衛力、パーキンソン病患者の状態、創傷治癒、および血液循環にさえ、確かに明確な効果を与えることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリカ・パパイヤ果実からのピューレ調製物の製造方法であって、
− 果実または粉砕された果実、特に裏漉し状態の果実を、標準圧力で少なくとも30分間、必要な場合は少なくとも2倍の体積の水溶液を用いて煮沸する工程、
− 煮沸された果実または粉砕された果実を、酸素含有雰囲気下に少なくとも30分の時間にわたって冷却する工程、
− 必要な場合は、均質なピューレが得られるまで、冷却された果実または粉砕された果実を粉砕、混合および裏漉しする工程
からなることを特徴とする方法。
【請求項2】
煮沸が少なくとも2時間実施されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
冷却が少なくとも5時間実施されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ピューレの製造時に、ピューレのpH値が好ましくは3.5〜5.0、特に3.8〜4.4になる量でクエン酸が添加されることを特徴とする請求項1、2または3記載の方法。
【請求項5】
カリカ・パパイヤ果実が煮沸前に皮むきおよび種取りされることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の方法。
【請求項6】
得られたピューレが低温滅菌されることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の方法。
【請求項7】
カリカ・パパイヤ果実が半熟ないし成熟であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の方法。
【請求項8】
消化障害の治療剤の製造のための請求項1、2、3、4、5、6または7記載の方法により得られるカリカ・パパイヤ果実からなるピューレ調製物の使用。
【請求項9】
消化障害が慢性便秘、膨満および過敏性腸症候群からなる群より選択されることを特徴とする請求項8記載の使用。
【請求項10】
免疫系強化用薬剤の製造のための請求項1、2、3、4、5、6または7記載の方法により得られるカリカ・パパイヤ果実からなるピューレ調製物の使用。
【請求項11】
創傷治癒促進剤、特に下腿潰瘍(Ulcus cruris)におけるものの製造のための請求項1、2、3、4、5、6または7記載の方法により得られるカリカ・パパイヤ果実からなるピューレ調製物の使用。
【請求項12】
糖尿病患者におけるインスリン必要量を低減するための薬剤の製造のための請求項1、2、3、4、5、6または7記載の方法により得られるカリカ・パパイヤ果実からなるピューレ調製物の使用。
【請求項13】
活力増強剤の製造のための請求項1、2、3、4、5、6または7記載の方法により得られるカリカ・パパイヤ果実からなるピューレ調製物の使用。
【請求項14】
パーキンソン病患者の状態を改善するための薬剤の製造のための請求項1、2、3、4、5、6または7記載の方法により得られるカリカ・パパイヤ果実からなるピューレ調製物の使用。
【請求項15】
請求項1、2、3、4、5、6または7記載の方法により得られるカリカ・パパイヤ果実からなるピューレ調製物。
【請求項16】
含水量9〜90%、好ましくは60〜85%、特に70〜80%であることを特徴とする請求項15記載のピューレ調製物。
【請求項17】
含糖量5〜40%、好ましくは10〜30%、特に12〜26%であることを特徴とする請求項15または16記載のピューレ調製物。

【公表番号】特表2006−510624(P2006−510624A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554848(P2004−554848)
【出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005476
【国際公開番号】WO2004/047850
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(505194332)ジ クワン インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】