説明

パルスレーザ、光周波数安定化レーザ、測定装置および測定方法

【課題】モードロックレーザのキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を測定する。
【解決手段】モードロックレーザのキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を測定する測定装置であって、光パルスを発生するモードロックレーザと、モードロックレーザの発振周波数範囲を広げる帯域拡大部と、モードロックレーザの高調波成分を発生する高調波発生部と、帯域拡大部から出力される前記モードロックレーザの所定の周波数成分および所定の周波数成分の少なくとも2倍の周波数成分の相対的なタイミングを変えずに、高調波発生部に入射させる光伝達部と、モードロックレーザが高調波発生部を透過した透過成分、および高調波成分のビート信号を検出する検出部と、ビート信号に基づいて、キャリア・エンベロープ・オフセット周波数を算出する算出部と、を備えるパルスレーザを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスレーザ、光周波数安定化レーザ、測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光周波数を精密に計測するために、フェムト秒レーザから発生する光周波数コムを利用することが提案されている(特許文献1、非特許文献1−4)。
特許文献1 特開2004−340690号公報
非特許文献1 Brian R. Washburn, et al., "Phase-locked, erbium-fiber-laser-based frequency comb in the near infrared", Optics Letters, USA, February 2004, Vol. 29, No. 3, pp.250-252
非特許文献2 Holger Hundertmark, et al., "Phase-locked carrier-envelope-offset frequency at 1560nm", Optics Express, USA, March 2004, Vol. 12, No. 5, pp.770-775
非特許文献3 T. R. Schibli, et al., "Frequency metrology with a turnkey all-fiber system", Optics Letters, USA, November 2004, Vol. 29, No. 21, pp.2467-2469
非特許文献4 Hajime Inaba, et al., "Long-term measurement of optical frequencies using a simple, robust and low-noise fiber based frequency comb", Optics Express, USA, June 2006, Vol. 14, No. 12, pp.5223-5231
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
パルス幅がフェムト秒オーダーで、かつ、パルス間隔1/frepの超短パルス光は、周波数軸上で等間隔に並ぶ櫛形の出力となることから、光周波数コムと呼ばれている。この光周波数コムを形成するn番目のスペクトルは、周波数軸上で次式のように表される。
【0004】
【数1】

【0005】
ここでfceoは、キャリア・エンベロープ・オフセットと呼ばれる、光周波数コムの周波数軸上でのオフセットを指す。したがって、光パルスの繰り返し周波数frepおよびfceoを明確にすれば、光周波数コムを光周波数軸上の物差しとして光周波数計測に用いることができる。fceoを測定するには、大規模な測定装置系で複雑な操作と調整が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、モードロックレーザのキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を測定する測定装置であって、光パルスを発生するモードロックレーザと、モードロックレーザの発振周波数範囲を広げる帯域拡大部と、モードロックレーザの高調波成分を発生する高調波発生部と、モードロックレーザの所定の周波数成分および所定の周波数成分の少なくとも2倍の周波数成分の相対的なタイミングを変えずに、高調波発生部に入射させる光伝達部と、モードロックレーザが高調波発生部を透過した透過成分、および高調波成分のビート信号を検出する検出部と、ビート信号に基づいて、キャリア・エンベロープ・オフセット周波数を算出する算出部とを備えるパルスレーザを提供する。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係るパルスレーザ100の構成例を示す。
【図2】本実施形態に係るパルスレーザ100の各部における周波数スペクトルの例を示す。
【図3】本実施形態に係るパルスレーザ100の光パルスを集光する光学系の構成例を示す。
【図4】本実施形態に係るパルスレーザ100の動作フローを示す。
【図5】本実施形態に係るパルスレーザ100の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態に係るパルスレーザ100の構成例を示す。パルスレーザ100は、超短パルス光のキャリア・エンベロープ・オフセット周波数および繰り返し周波数を測定する。パルスレーザ100は、モードロックレーザ110と、制御部120と、分岐部125と、帯域拡大部130と、光伝達部140と、高調波発生部150と、光フィルタ部160と、検出部170と、電気フィルタ部180と、算出部190とを備える。
【0011】
モードロックレーザ110は、光パルスを発生する。モードロックレーザ110は、多モードで発振するレーザ内で、モード相互間に一定の位相関係を生じさせることで、パルス幅がピコ秒程度の短パルス光を出力してよい。モードロックレーザ110は、共振器中に光変調器を用いてモード相互間の位相を能動的にロックさせる能動モードロック方式のレーザでよく、これに代えて、共振器内に有する光学部品の非線形性によりモード相互間の位相が受動的にロックされる受動モードロック方式のレーザでもよい。
【0012】
制御部120は、モードロックレーザ110を制御する。制御部120は、モードロックレーザ110の発振の開始および終了を、モードロックレーザ110へ制御信号を送信することで制御してよい。制御部120は、モードロックレーザ110の繰り返し周波数および発振周波数を制御してよい。
【0013】
例えば、制御部120は、パルスレーザ100が観測するキャリア・エンベロープ・オフセット周波数と基準周波数を比較することで、モードロックレーザ110のキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を制御する。一例として、制御部120は、モードロックレーザ110のキャリア・エンベロープ・オフセット周波数の観測結果に基づき、モードロックレーザ110のポンプ光強度を調節して、モードロックレーザ110のキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を制御してよい。
【0014】
例えば、制御部120は、パルスレーザ100が観測する繰り返し周波数と基準となる周波数とを比較することで、モードロックレーザ110の繰り返し周波数を制御する。一例として、制御部120は、モードロックレーザ110の繰り返し周波数の観測結果に基づき、モードロックレーザ110の共振器長を調節して、モードロックレーザ110の繰り返し周波数を制御してよい。制御部120は、繰り返し周波数および発振周波数を安定化させた光パルスを、分岐部125に供給する。
【0015】
分岐部125は、モードロックレーザ110の光パルス出力を分岐する。分岐部125は、入力光を2分岐する光ファイバカプラでよく、分岐された一方はパルスレーザ100の光出力として、他方は帯域拡大部130へ光パルスを供給する。これに代えて、分岐部125は、入力光を2分岐する光プリズムまたは導波路型の光分岐デバイスでよい。
【0016】
帯域拡大部130は、モードロックレーザ110の発振周波数範囲を広げる。帯域拡大部130は、高非線形ファイバ(HNLF)でよい。一例として、帯域拡大部130は、GeO等を添加した石英系光ファイバでよく、これに代えて帯域拡大部130は、断面内に空孔が周期配列して存在するフォトニッククリスタルファイバでよい。
【0017】
帯域拡大部130は、モードロックレーザ110から出力される光パルスについて、時間領域ではフェムト秒オーダーの超短パルスを発生させてよく、この場合周波数領域では発振周波数帯域を1オクターブ以上拡大させたオクターブ光コムを発生させることに相当する。高非線形型の光ファイバは、短パルスのレーザ光を入射することにより、広帯域なオクターブ光コムを発生させることは、スーパーコンティニューム(SC)光として良く知られているので、ここでは発振周波数範囲が広がる原理の記述は省略する。
【0018】
光伝達部140は、帯域拡大部130から出力されるモードロックレーザ110の予め定められた周波数成分および予め定められた周波数成分の少なくとも2倍の周波数成分の相対的なタイミングを変えずに、高調波発生部150に入射させる。光伝達部140は、帯域拡大部130から出力されるオクターブ光コムを受け取って高調波発生部150に伝達する。光伝達部140は、光パルスの発振帯域内の予め定められた周波数成分と、その2倍の周波数成分とが、ほぼ同じタイミングで高調波発生部150に入射できる周波数分散値を有する。
【0019】
例えば、光伝達部140は、帯域拡大部130から出力された光パルスを、集光レンズにより集光して高調波発生部150に入射させる。また、光伝達部140は、光学レンズおよび/または光ファイバであってよい。これに代えて、光伝達部140は、光導波路または光導波路と光学レンズの組み合わせであってよい。光伝達部140は、広帯域の光パルスを伝達するので、周波数分散値の低い光ファイバ、光導波路、および/または光学部品でよい。
【0020】
高調波発生部150は、モードロックレーザ110の高調波成分を発生する。高調波発生部150は、非線形光学素子であってよく、光伝達部140によって伝達されたオクターブ光コムの2次高調波を発生させてよい。一例として、高調波発生部150は、タンタル酸リチウムまたはLiNbO(ニオブ酸リチウム)等の材料に周期的分極反転処理を施した波長変換素子であってよい。
【0021】
これに代えて、高調波発生部150は、ADP(燐酸二水素アンモニウム)、KDP(燐酸二水素カリウム)、LiNbOまたはBBO(ベータバリウムボライト)、Se(セレン)、またはTe(テルル)等の非線形結晶であってよい。このような非線形光学素子が2次高調波を発生させることは、よく知られているので、発生の原理等についての説明は省略する。高調波発生部150は、発生したオクターブ光コムの2次高調波を、光フィルタ部160を介して検出部170に伝搬させる。
【0022】
光フィルタ部160は、検出部170が検出する光パルスにおける、予め定められた周波数範囲の周波数成分を通過させる。光フィルタ部160は、特定周波数を透過させるバンドパスフィルタでよく、これに代えて、ハイパスフィルタおよび/またはローパスフィルタであってよい。光フィルタ部160は、高調波発生部150によって発生した2次高調波および高調波発生部150を透過したオクターブ光コムの、特定周波数成分を透過させて検出部170に伝搬させる。
【0023】
検出部170は、モードロックレーザ110が高調波発生部150を透過した透過成分、および高調波成分のビート信号を検出する。検出部170は、受光した光を電気信号に変換するフォトディテクタでよい。検出部170は、受光部がSi、GaAs、またはInGaAsといった半導体材料を用いたフォトディテクタでよい。
【0024】
また、検出部170は、受光したオクターブ光コムの繰り返し周波数、即ちモードロックレーザ110の光パルスの繰り返し周波数をビート信号と共に検出してもよい。検出部170は、変換した電気信号を、電気フィルタ部180を介して算出部190に伝達する。
【0025】
電気フィルタ部180は、検出部170が検出したビート信号における、キャリア・エンベロープ・オフセットに対応する周波数範囲の周波数成分を通過させる。電気フィルタ部180は、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、またはバンドパスフィルタでよく、あるいはこれらフィルタの組み合わせでよい。電気フィルタ部180は、観測したい周波数に応じてパルスレーザ100内に複数備わってよい。パルスレーザ100は、繰り返し周波数に対応する周波数範囲の周波数成分を通過させる第2の電気フィルタ部をさらに備えてよい。
【0026】
算出部190は、ビート信号に基づいて、キャリア・エンベロープ・オフセット周波数を算出する。算出部190は、検出部170がモードロックレーザ110の光パルスの繰り返し周波数も検出している場合、繰り返し周波数を算出してよい。算出部190は、算出した周波数を制御部120に送信する。
【0027】
以上の構成例によるパルスレーザ100は、モードロックレーザ110が発生する光パルスのオクターブ光コムおよびオクターブ光コムの2次高調波を発生させて、キャリア・エンベロープ・オフセット周波数を検出する。パルスレーザ100は、周波数が明確になったオクターブ光コムの光出力と周波数が未知の光源とを合波させてビート信号を測定することで、未知光源の周波数を測定してもよい。
【0028】
図2は、本実施形態に係るパルスレーザ100の各部における周波数スペクトルの例を示す。a点の周波数スペクトルは、モードロックレーザ110の出力する光パルスのスペクトルの概略を示す。モードロックレーザ110は、パルス幅が数ps程度の光パルスを出力する場合、フーリエ変換限界より、光パルスの発振周波数範囲210は1オクターブ未満となる。モードロックレーザ110は、繰り返し周波数frepで光パルスを出力するので、発振周波数範囲210はfrep間隔の光コムとなる。
【0029】
b点の周波数スペクトルは、帯域拡大部130から出力されるオクターブ光コム220の概略を示す。帯域拡大部130は、モードロックレーザ110が出力した発振周波数範囲210を、1オクターブ以上の発振周波数に拡大させるので、オクターブ光コム220の周波数分布は数1の式で表される。ここで、オクターブ光コム220と周波数軸上の0地点とのオフセット週数をキャリア・エンベロ−プ・オフセット(fCEO)と呼ぶ。
【0030】
本実施例において、モードロックレーザ110は、パルス幅が数ps程度の光パルス即ち発振周波数範囲が1オクターブ未満の光パルスを出力する例を説明したが、これに代えてモードロックレーザ110は、1オクターブ以上の発振周波数を有する光パルスを出力してよい。この場合、パルスレーザ100は、帯域拡大部130を用いなくてよい。
【0031】
c点の周波数スペクトルは、高調波発生部150が発生するオクターブ光コムの2次高調波230の概略を示す。帯域拡大部130は、1オクターブ以上の発振周波数の光パルスを発生させるので、オクターブ光コム220の高周波数側の一部と、2次高調波230の低周波数側の一部は重なる。検出部170は、重なった領域におけるビート信号を検出する。高調波発生部150は、オクターブ光コム220の2次高調波230を発生するので、2次高調波230のスペクトルの各成分は、次式で表される。
【0032】
【数2】

【0033】
検出部170は、数1と数2の式の差分をビート信号として検出するので、f(2n)とg(n)との差分であるfCEOを観測することに相当する。帯域拡大部130は、f(m−1)からf(2m+1)までのオクターブ光コム220を発生させて、高調波発生部150は、g(m−1)からg(2m+1)までの2次高調波230を発生させる。検出部170は、オクターブ光コム220と2次高調波230とが重なる範囲のビート信号を観測することができる。即ち、f(2m)とg(m)の差分であるfCEOを観測することができる。
【0034】
帯域拡大部130は、1オクターブ以上の光コムを発生させているので、f(2m−2)とg(m−1)の差分もfCEOとして観測することができ、ビート信号の信号強度に重畳される。即ち、検出部170は、オクターブ光コムの発振範囲が広がれば広がるほどビート信号強度が重畳されて、検出すべき光強度を増すことができる。
【0035】
ここで、検出部170は、オクターブ光コム220と2次高調波230とが重ならない範囲の光スペクトルも受光するが、この範囲のスペクトルはfCEOとして観測できるビート信号を生成しないので、S/Nおよびダイナミックレンジを悪化させる。したがって、検出部170は、光フィルタ部160がオクターブ光コム220と2次高調波230とが重ならない範囲の光スペクトルを除去することで、S/Nおよびダイナミックレンジを向上させることができる。
【0036】
また、検出部170は、fCEOの他にもビート信号を検出する。例えば、検出部170は、光コムの各周波数成分によって、k×frep(k=1,2,3,…)の周波数のビート信号を検出する。また、検出部170は、f(2m−1)とg(m−1)、およびf(2m+1)とg(m)によって、frep−fCEOの周波数のビート信号を検出する。電気フィルタ部180は、検出部170が検出する複数のビート信号から、観測したい周波数に対応するビート信号を算出部190に通過させてよい。
【0037】
以上の構成例において、パルスレーザ100は、オクターブ光コム220とオクタ−ブ光コムの2次高調波230とのビート信号を検出して、オクターブ光コムの繰り返し周波数およびキャリア・エンベロ−プ・オフセットを観測する。しかしながら、検出部170は、例えば、パルス幅がフェムト秒の超短パルス光の成分であるf(2m)およびg(m)を、時間的に同時に検出しなければ、ビート信号を検出できない。
【0038】
ここでf(2m)とg(m)は発振周波数がほぼ同じなので、高調波発生部150から検出部170の間に多少の周波数分散を含む光学素子があっても、検出部170は、高調波発生部150から同じタイミングでf(2m)およびg(m)が出力されれば、ほぼ同時に検出することができる。したがって、高調波発生部150は、同じタイミングでf(2m)およびg(m)を出力することが求められる。
【0039】
高調波発生部150は、g(m)をf(m)の2次高調波として生成するので、高調波発生部150が同じタイミングでf(2m)およびg(m)を出力するためには、f(2m)およびf(m)を同じタイミングで高調波発生部150に入力させることが求められる。即ち、パルスレーザ100は、f(m)およびf(2m)といった、1オクターブ周波数が異なる光を、フェムト秒のオーダーで同時に高調波発生部150に集光させなければ、ビート信号を検出することができない。パルスレーザ100は、図3に示す構成例で、ビート信号を検出する光学系を実現させる。
【0040】
図3は、本実施形態に係るパルスレーザ100の光パルスを集光する光学系の構成例を示す。図3は、図1における光伝達部140から検出部170までの光学系についての構成の一例を示す。光伝達部140は、帯域拡大部130から出力されるオクターブ光コム220の光パルスが入射される。この時点では、f(m)とf(2m)は同時刻に光伝達部140に入射されてよい。
【0041】
光伝達部140は、高調波発生部150の波長変換効率を有効に利用する目的で、レンズによって光パルスを高調波発生部150内部に集光してよい。高調波発生部150は、一例として、非線形光学結晶を用いた場合、変換パワーPshが次式で与えられることが知られている。
【0042】
【数3】

【0043】
ここで、deffは非線形光学定数、lは結晶長、Pinは入射光強度、h(B,ξ)は焦点パラメータ、nは入射屈折率、nshは第2高調波屈折率、εは真空誘電率、λは入射光波長である。これより、高調波発生部150は、入射する光の焦点パラメータによって、変換パワーが大きく影響することがわかる。
【0044】
図中の例では、光伝達部140は、高調波発生部150内のビームウェスト310の地点でビーム径を最小にする。また、光伝達部140は、集光端320aおよび集光端320bにおいて、ビームウェスト310でのビーム面積に対して、例えば、2倍のビーム面積に集光する。この集光端320aから集光端320bの範囲である集光距離330において、光伝達部140は光強度密度を高めて、高調波発生部150は第2高調波を効率良く発生させる。
【0045】
ここで一例として、集光距離330をbとすると、ξ=L/b=2.84の場合に、h(B,ξ)は最適値1.068になることが知られている。例えば、集束共焦点光学系の場合(B=0)、結晶長lが30mmの場合にξ=L/b=2.84となり、b=10.6mmを得る。この場合の最適ビーム半径は51μmと見積もられる。
【0046】
モードロックレーザ110は、例えば、可視域から近赤外域程度の、波長のオーダーは数μm以下程度の光を出力する。理想的なレンズの理論分解能は波長程度であることから、光伝達部140は、ビーム半径を51μmに絞ることができる。また、光伝達部140は、1枚のレンズを帯域拡大部130の出力部分に近接して配置させることによって、帯域拡大部130の出力端から高調波発生部150の出力端までの光学系を数cm程度で構成できる。
【0047】
また、光伝達部140は、帯域拡大部130から出力された光パルスを、高調波発生部150を介して検出部170に集光してよい。高調波発生部150は、光伝達部140によって集光された光パルスを、理論的には数3の式に基づく効率で波長変換させ、残りの強度の光パルスはそのまま通過させる。光伝達部140は、オクターブ光コム220をビームウェスト310でビーム系を最小にするので、通過する光パルスを、ビームウェスト310を境に入射とほぼ対称形でビーム径を広げながら高調波発生部150から出力させる。
【0048】
ここで検出部170は、受光部を高調波発生部150の出力端の近傍に配置することで、高調波発生部150を通過したオクターブ光コム220を受光することができる。ここで検出部170は、受光部の面積を小さくすることで、検出できる帯域を高周波側に広げる。したがって、検出部170は、モードロックレーザ110の繰り返し周波数に応じた受光部を持つことが望ましく、この場合、直径1mm程度の受光部でよい。
【0049】
帯域拡大部130は、高非線形ファイバまたはフォトニッククリスタルファイバであってよいので、出力端の直径は数十μm以下である。したがって、光伝達部140を帯域拡大部130の出力部に近接して配置すれば、光伝達部140に入力する光パルスの直径を1mm以上に広げずに入力させることができる。したがって、検出部170は、光伝達部140と高調波発生部150との間の距離程度に近接させて、高調波発生部150の出力部に配置することで、高調波発生部150を通過したオクターブ光コム220を、直径1mm程度の受光部の範囲に集光させることができる。
【0050】
即ち、帯域拡大部130の出力部から光伝達部140までの距離、光伝達部140から高調波発生部150までの距離、および高調波発生部150の出力端から検出部170までの距離は、いずれも近接させることで検出部170の限られた受光部に光パルスを集光させる。したがって、パルスレーザ100は、帯域拡大部130から検出部170までの距離を数cm程度にすることができる。
【0051】
また、光伝達部140はさらに、帯域拡大部130から出力された光パルスを高調波発生部150に集光させ、検出部170は、高調波発生部150から出力される光パルスを、光ファイバを介さず直接受光させてよい。高調波発生部150は、集光距離330の範囲に集光された光パルスの波長を変換して出力する。この場合、高調波発生部150は、集光距離330の範囲から2次高調波を発生させるので、高調波発生部150から出力される2次高調波の光パルスは、高調波発生部150を透過する光パルスに比べて空間的に広がって放出される場合がある。
【0052】
このような場合に応じて、検出部170は、より高調波発生部150の出射端の近傍に配置することで、高調波発生部150から出力される2次高調波の光パルスも、直径1mm程度の受光部の範囲に集光させることができる。したがって、検出部170は、集光レンズおよび/または光ファイバといった光を伝達する部材を介さなくてもよい。
【0053】
また、光伝達部140は、高調波発生部150の内部で波長変換効率が一定基準以上の領域において、オクターブ光コム220を集光する集光距離330の位置を、高調波発生部150を透過する光パルスおよび高調波発生部150が出力する2次高調波の光パルスが検出部170の受光部で受光できるように調節してよい。例えば、光伝達部140は、集光距離330を高調波発生部150内でより検出部170に近い側に集光させれば、検出部170が受光するのに必要な面積を小さくすることができる。
【0054】
また、検出部170は、高調波発生部150を透過する光パルスおよび高調波発生部150が出力する2次高調波のそれぞれの光パルスを受光する感度が十分ある場合は、受光面内にそれぞれのビーム径が収めなくてもよい。この場合、検出部170は、ハンドリングしやすい位置に配置されてよい。また、光フィルタ部160は、厚さが数mm程度の部品を用いてよいので、高調波発生部150と検出部170の間の空間に配置してよい。
【0055】
図4は、本実施形態に係るパルスレーザ100の動作フローを示す。モードロックレーザ110は、所定の繰り返し周波数で光パルスを出力する(S400)。モードロックレーザ110は、制御部120から制御信号を受信することで光パルスを出力してよい。
【0056】
モードロックレーザ110は、単独でフィードバック制御機構を有して、安定な繰り返し周波数および/または安定な発振周波数帯域の光パルスを出力してよい。これに代えて、モードロックレーザ110は、パルスレーザ100が測定する繰り返し周波数および/またはキャリア・エンベロープ・オフセット周波数に基づき、制御部120のフィードバック制御によって安定化した光パルスを出力してよい。
【0057】
帯域拡大部130は、モードロックレーザ110が出力する光パルスの発振周波数帯域を拡大する(S410)。モードロックレーザ110は、光ファイバで光パルスを出力してもよく、これに代えて空間に光パルスを放出してもよい。帯域拡大部130は、モードロックレーザ110のファイバ出力をコネクタもしくは融着して光パルスを入力させてよく、これに代えてモードロックレーザ110の出力をレンズ等の光学素子で光パルスを入力させてよい。
【0058】
光伝達部140は、帯域拡大部130から出力されるオクタ−ブ光コムを、高調波発生部150に集光させて2次高調波を発生させる(S420)。光伝達部140は、レンズであってよく、これに代えて光ファイバとレンズの組み合わせであってよい。光伝達部140は、光ファイバを分散値が無視できない長さで用いる場合は、分散値を補償する光学デバイスも含んでよい。
【0059】
検出部170は、高調波発生部150を透過する光パルスと、高調波発生部150によって発生した2次高調波の光パルスを時間的に同時に受光する(S430)。検出部170は、2つの光パルスによって発生するビート信号を検出する。検出部170は、繰り返し周波数およびキャリア・エンベロープ・オフセット周波数に応じたビート信号をそれぞれ検出する。電気フィルタ部180は、検出したい周波数に通過帯域を設定したフィルタでよく、検出部170が検出した複数のビート信号から所定のビート信号を通過させる。
【0060】
算出部190は、通過したビート信号を受信して、所定の周波数を算出する(S440)。例えば、算出部190は、繰り返し周波数および/またはキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を算出する。以上の動作フローによって、パルスレーザ100は、繰り返し周波数および/またはキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を測定してよい。これにより、パルスレーザ100は、既知の繰り返し周波数および/またはキャリア・エンベロープ・オフセット周波数の光パルスを、分岐部125より光出力として出力することができる。
【0061】
以上の実施例によれば、パルスレーザ100は、帯域拡大部130が出力する光パルスを高調波発生部150に集光させて効率良く2次高調波を発生させる。また、パルスレーザ100は、高調波発生部150を透過する光パルスおよび高調波発生部150が出力する2次高調波のそれぞれの光パルスを検出部170に同時に受光させることができる。ここで、パルスレーザ100は、一例として1枚のレンズで光伝達部140を構成させてよく、帯域拡大部130から検出部170までの光学距離を数cm程度にすることができる。
【0062】
光伝達部140は、高調波発生部150が最大変換効率を得る最適なビーム径に集光しても、検出部170の1mm程度の受光面の範囲内に、オクターブ光コムとその2次高調波を集光させることができる。即ちパルスレーザ100は、高調波発生部150の最大効率を得るための焦点パラメータを得る集光レンズと、検出部170へ集光するレンズを共有させたことにより、大幅に光路長を短くすることができ、かつ、光学系の部品の削減と小型化を実現させる。
【0063】
これによって、パルスレーザ100は、帯域拡大部130から出力されたオクタ−ブ光コムの発振帯域の周波数成分の相対的なタイミングをほとんど変えずに、高調波発生部150に光パルスを入射させることができる。例えば、光伝送に用いられるシングルモードファイバは、分散値が16ps/nm/kmなので、1オクターブ周波数が異なる波長1μmおよび2μmの2つの光を同時刻に光ファイバに入射させても、1m伝送させた場合で16psの伝送時間の差が生じる。
【0064】
パルスレーザ100は、フェムト秒単位の光パルスにとってこのような大きな分散値を持つデバイスを光学系に挿入しないので、オクターブ光コムおよびその2次高調波の光パルスを、検出部170の受光面で受光タイミングがほとんどずれることなく集光させることができる。したがって、パルスレーザ100は、受光タイミングを調整する光学素子を光路上に配置しなくてよい。即ち、パルスレーザ100は、オクターブ光コムとその2次高調波をそれぞれ別の光路に分離してから、受光タイミングを調整するといった複雑で大がかりな光学系を不要とする。
【0065】
また、パルスレーザ100は、光伝達部140と、高調波発生部150と、光フィルタ部160と、検出部170を、同一光軸上に設けてよい。このような構成で、光伝達部140と、高調波発生部150と、光フィルタ部160と、検出部170を、1つの基板上に搭載して集積化することによって、パルスレーザ100は、小型で堅牢なキャリア・エンベロープ・オフセット周波数検出モジュールを作製することができる。これによって、パルスレーザ100は、振動または温度変動といった環境変動に対応でき、小型で長時間動作することができる。
【0066】
また、パルスレーザ100は、1つの検出部170で光パルスを受光して、電気信号に変換してからキャリア・エンベロープ・オフセット周波数および繰り返し周波数を検出する回路に分岐している。これによって、パルスレーザ100は、2つの周波数をそれぞれ観測するための光分岐、光検出器等を1つで共有させることができ、光路長を短くさせ、かつ、光学素子を削減することができる。
【0067】
以上の実施例において、帯域拡大部130は、入力された光パルスの発振周波数帯域を1オクターブ程度拡大させ、高調波発生部150は入力された光パルスの2次高調波を発生させる例を説明した。これに代えて、帯域拡大部130は、入力された光パルスの発振周波数帯域を1オクターブ以上拡大させ、高調波発生部150は入力された光パルスの3次以上の高調波を発生させてもよい。パルスレーザ100は、この場合も、帯域が拡大された周波数範囲と、高調波成分の周波数範囲の重なり部分から生成されるビート信号を検出してキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を測定してよい。
【0068】
また、以上の実施例において、光伝達部140が光パルスを検出部170まで集光する例を説明した。これに代えて、パルスレーザ100は、高調波発生部150と検出部170の間に第2の光伝達部を備え、オクターブ光コムおよびその2次高調波の光パルスを、検出部170の受光面で受光タイミングがほとんどずれることなく集光させてよい。これによって、パルスレーザ100は、集光に関する設計自由度を増すことができる。
【0069】
図5は、本実施形態に係るパルスレーザ100の変形例を示す。本変形例に係るパルスレーザ100は、図1に示された本実施形態に係るパルスレーザ100の動作と略同一の動作には同一の符号を付け、以下相違点を除き説明を省略する。パルスレーザ100は、モードロックレーザ110と、分岐部125と、光バンドパスフィルタ510と、光検出器520と、タイミング制御部530を備える。パルスレーザ100は、モードロックレーザ110の予め定められた周波数範囲の周波数成分を検出することで、モードロックレーザ110の光パルス出力のタイミングを判別および調節する。
【0070】
光バンドパスフィルタ510は、モードロックレーザ110の予め定められた周波数範囲の周波数成分を通過させる。光バンドパスフィルタは、通過させる光周波数帯域を数MHz以下といった半値幅にしてよく、好ましくは数百kHz以下の狭帯域にしてよい。一例として、光バンドパスフィルタ510は、2面の高反射フィルターを向きあわせに配したエタロンフィルタでよく、これに代えて光ファイバのコア中に回折格子を形成させた、光フィルタとしての機能を持つファイバブラッググレーティングフィルタでよい。
【0071】
光検出器520は、光バンドパスフィルタ510が通過させた光出力を受光する。タイミング制御部530は、光検出器520が受光した光強度に応じて、モードロックレーザ110の光パルス出力のタイミングを制御する。タイミング制御部530は、モードロックレーザ110の繰り返し周波数を調節して、モードロックレーザ110の光パルス出力のタイミングを制御してよい。
【0072】
モードロックレーザ110は、繰り返し周波数を変えると、出力するパルス光のタイミングを繰り返し周波数の変化に伴って変化させる。したがってタイミング制御部530は、モードロックレーザ110の繰り返し周波数を制御することで、モードロックレーザ110の光パルス出力のタイミングを制御することができる。
【0073】
これに代えて、タイミング制御部530は、モードロックレーザ110の励起光強度を調節することでキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を調節して、モードロックレーザ110の光パルス出力のタイミングを制御してよい。モードロックレーザ110は、キャリア・エンベロープ・オフセット周波数を変えると、出力するパルス光のタイミングをキャリア・エンベロープ・オフセット周波数の変化に伴って変化させる。
【0074】
また、モードロックレーザ110は、モードロックレーザ110の内部にある励起光の強度を調節することでキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を制御することができる。したがってタイミング制御部530は、モードロックレーザ110の励起光強度を調節することでキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を調節して、モードロックレーザ110の光パルス出力のタイミングを制御することができる。
【0075】
以上の本変形例のパルスレーザ100は、光バンドパスフィルタ510を用いることで、光周波数コムを構成する1〜数本の光周波数成分の光強度を観測することができる。ここで、例えば、モードロックレーザ110のキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を変化させた場合、光周波数コムの周波数位置が平行移動するので、光検出器520は、光バンドパスフィルタ510を通過する光周波数成分の発振周波数の移動に伴う光強度の変化を検出する。即ち光検出器520は、モードロックレーザ110のキャリア・エンベロープ・オフセット周波数の変化を検出することができる。
【0076】
また、モードロックレーザ110の繰り返し周波数を変化させた場合も、光周波数コムの周波数位置は繰り返し周波数に応じて変化するので、同様に光検出器520は、繰り返し周波数の変化を検出することができる。ここで、光検出器520は、観測している光周波数成分が光周波数コムのn番目の成分の場合、繰り返し周波数をΔf変化させると、n×Δfの周波数の変化を観測することになる。キャリア・エンベロープ・オフセット周波数または繰り返し周波数の変化を検出するにあたり、光検出器520は、光バンドパスフィルタ510の通過帯域幅を狭くすることで、ダイナミックレンジの大きい光強度変化を検出することができる。
【0077】
パルスレーザ100は、キャリア・エンベロープ・オフセット周波数または繰り返し周波数の変化に応じて変化する光検出器520の観測結果を、予め観測して記録してよい。また、パルスレーザ100は、キャリア・エンベロープ・オフセット周波数または繰り返し周波数の変化に応じて変化する光パルス出力のタイミングも測定して記録してよい。記録した光検出器520の観測結果と比較することで、パルスレーザ100は、光パルス出力のタイミングを光検出器520の検出強度から同定することができる。
【0078】
また、パルスレーザ100は、キャリア・エンベロープ・オフセット周波数または繰り返し周波数に与える変化を、予め定められた変調信号で変化させてよい。パルスレーザ100は、位相変調光を出力することになり、変調信号に応じて変化する光検出器520の出力を予め定められた周波数で検波することにより、光パルス出力のタイミングを精度よく同定することができる。
【0079】
また、パルスレーザ100は、光検出器520が検出した光パルス出力のタイミングに基づき、タイミング制御部530を用いてパルス出力のタイミングを調節することができる。これによって、パルスレーザ100は、例えば予め設定されたパルス出力のタイミングで光パルスを出力することができる。これに代えて、パルスレーザ100は、例えば入力されたパルス出力のタイミングで光パルスを出力することができる。
【0080】
以上の本変形例のパルスレーザ100は、図1に示される本実施例のモードロックレーザ110として用いてもよい。これより即ち、パルスレーザ100は、既知の繰り返し周波数および/またはキャリア・エンベロープ・オフセット周波数の光パルスを、既知のタイミングで出力することができる。
【0081】
以上の本変形例のパルスレーザ100において、光バンドパスフィルタ510は、エタロンフィルタまたはファイバブラッググレーティングフィルタを用いることを説明した。これに代えてパルスレーザ100は、光バンドパスフィルタ510としてモードロックレーザ110の繰り返し周波数とほぼ同一のFSR(フリー・スペクトル・レンジ)を持つエタロンフィルタを用いてよい。エタロンフィルタは、ファブリ・ペロー型干渉計であるので、周波数軸(波長軸)において通過帯域が一定の周期で繰り返す通過特性を持ち、この周期をFSRと呼ぶ。
【0082】
エタロンフィルタのFSRと、モードロックレーザ110の繰り返し周波数とを同一にすることは、光周波数コムの発振周波数成分の間隔と通過帯域の周期とを一致させることに相当する。即ち、光周波数コムの一つの発振周波数成分をエタロンフィルタの一つの通過周波数に合わせると、光周波数コムの他の発振周波数成分のそれぞれが、エタロンフィルタの他の通過周波数のそれぞれに合致することになり、光検出器520は、高いS/Nの光信号を検出することができる。
【0083】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0084】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0085】
100 パルスレーザ、110 モードロックレーザ、120 制御部、125 分岐部、130 帯域拡大部、140 光伝達部、150 高調波発生部、160 光フィルタ部、170 検出部、180 電気フィルタ部、190 算出部、210 発振周波数範囲、220 オクターブ光コム、230 2次高調波、310 ビームウェスト、320 集光端、330 集光距離、510 光バンドパスフィルタ、520 光検出器、530 タイミング制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光パルス出力のタイミングを制御するパルスレーザであって、
モードロックレーザと、
前記モードロックレーザの予め定められた周波数範囲の周波数成分を通過させる光バンドパスフィルタと、
前記光バンドパスフィルタが通過させた光出力を受光する光検出器と、
前記モードロックレーザの繰り返し周波数を制御する繰り返し周波数制御部と
を備え、
前記繰り返し周波数制御部が前記繰り返し周波数を制御することにより、前記モードロックレーザの光パルス出力のタイミングを制御するパルスレーザ。
【請求項2】
前記繰り返し周波数制御部は、変調信号で前記繰り返し周波数を制御して位相変調光を出力させる請求項1に記載のパルスレーザ。
【請求項3】
光パルス出力のタイミングを制御するパルスレーザであって、
モードロックレーザと、
前記モードロックレーザの予め定められた周波数範囲の周波数成分を通過させる光バンドパスフィルタと、
前記光バンドパスフィルタが通過させた光出力を受光する光検出器と、
前記モードロックレーザのキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を制御するキャリア・エンベロープ・オフセット周波数制御部と、
を備え、
前記キャリア・エンベロープ・オフセット周波数制御部が前記キャリア・エンベロープ・オフセット周波数を制御することにより、前記モードロックレーザの光パルス出力のタイミングを制御するパルスレーザ。
【請求項4】
前記キャリア・エンベロープ・オフセット周波数制御部は、変調信号で前記キャリア・エンベロープ・オフセット周波数を制御して位相変調光を出力させる請求項3に記載のパルスレーザ。
【請求項5】
前記モードロックレーザの高調波成分を発生させる分極反転周期構造を有する非線形光学結晶を含む高調波発生部と、
前記高調波発生部からの出力を入力とする検出部と
をさらに備え、
光検出部の出力からキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を測定する請求項1から4のいずれかに記載のパルスレーザ。
【請求項6】
光パルス出力のキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を測定するパルスレーザであって、
請求項1から5のいずれかに記載のパルスレーザと、
前記モードロックレーザの発振周波数範囲を広げる帯域拡大部と、
前記モードロックレーザの高調波成分を発生する高調波発生部と、
前記帯域拡大部から出力される前記モードロックレーザの予め定められた周波数成分および前記予め定められた周波数成分の少なくとも2倍の周波数成分の時間遅延差の相対的なタイミングを変えずに、前記高調波発生部に入射させる光伝達部と、
前記モードロックレーザが前記高調波発生部を透過した透過成分、および前記高調波成分のビート信号を検出する検出部と、
前記ビート信号に基づいて、前記キャリア・エンベロープ・オフセット周波数を算出する算出部と、
を備えるパルスレーザ。
【請求項7】
光パルス出力のキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を測定するパルスレーザであって、
光パルスを発生するモードロックレーザと、
前記モードロックレーザの発振周波数範囲を広げる帯域拡大部と、
前記モードロックレーザの高調波成分を発生する高調波発生部と、
前記帯域拡大部から出力される前記モードロックレーザの予め定められた周波数成分および前記予め定められた周波数成分の少なくとも2倍の周波数成分の時間遅延差の相対的なタイミングを変えずに、前記高調波発生部に入射させる光伝達部と、
前記モードロックレーザが前記高調波発生部を透過した透過成分、および前記高調波成分のビート信号を検出する検出部と、
前記ビート信号に基づいて、前記キャリア・エンベロープ・オフセット周波数を算出する算出部と、
を備えるパルスレーザ。
【請求項8】
前記光伝達部は、前記帯域拡大部から出力された光パルスを、集光レンズにより集光して前記高調波発生部に入射させることを特徴とした請求項7に記載のパルスレーザ。
【請求項9】
前記集光レンズは、前記帯域拡大部から出力された光パルスを、前記高調波発生部を介して前記検出部に集光することを特徴とした請求項8に記載のパルスレーザ。
【請求項10】
前記集光レンズはさらに、前記帯域拡大部から出力された光パルスを前記高調波発生部に集光させ、
前記検出部は、前記高調波発生部から出力される光パルスを、光ファイバを介さず直接受光できることを特徴とした請求項8または9に記載のパルスレーザ。
【請求項11】
前記帯域拡大部から出力される光パルスにおける、予め定められた周波数範囲の周波数成分を通過させて前記検出部に対して出力する光フィルタ部をさらに備える請求項7から10のいずれかに記載のパルスレーザ。
【請求項12】
前記検出部は、前記モードロックレーザの光パルスの繰り返し周波数を前記ビート信号と共に検出する請求項7から11のいずれかに記載のパルスレーザ。
【請求項13】
前記検出部が検出した前記ビート信号における、
前記キャリア・エンベロープ・オフセットに対応する第1の周波数範囲の周波数成分を通過させる第1の電気フィルタ部と、
前記光パルスの繰り返し周波数に対応する第2の周波数範囲の周波数成分を通過させる第2の電気フィルタ部とをさらに備え、
前記算出部は、前記第1の電気フィルタ部を通過させた信号に基づいて前記キャリア・エンベロープ・オフセットを算出し、前記第2の電気フィルタ部を通過させた信号に基づいて前記繰り返し周波数を算出する請求項7から12のいずれかに記載のパルスレーザ。
【請求項14】
前記帯域拡大部は、入射した光パルスの周波数範囲を少なくとも1オクターブ以上拡大させる高非線形ファイバを有することを特徴とした、請求項7から13のいずれかに記載のパルスレーザ。
【請求項15】
前記帯域拡大部は、入射した光パルスの周波数範囲を少なくとも1オクターブ以上拡大させるフォトニッククリスタルファイバを有することを特徴とした請求項7から13のいずれかに記載のパルスレーザ。
【請求項16】
前記高調波発生部は、入射した光パルスの予め定められた周波数範囲の少なくとも2倍の周波数を発生させる非線形光学素子を有することを特徴とした請求項7から15のいずれかに記載のパルスレーザ。
【請求項17】
前記高調波発生部は、LiNbO結晶に周期的分極反転処理を施した波長変換素子であることを特徴とした請求項7から請求項15のいずれかに記載のパルスレーザ。
【請求項18】
前記光伝達部と、前記高調波発生部と、前記検出部は、同一光軸上に設けられることを特徴とした請求項7から17のいずれかに記載のパルスレーザ。
【請求項19】
モードロックレーザのキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を測定する測定装置であって、
前記モードロックレーザの発振周波数範囲を広げる帯域拡大部と、
前記モードロックレーザの高調波成分を発生する高調波発生部と、
前記帯域拡大部から出力される前記モードロックレーザの予め定められた周波数成分および前記予め定められた周波数成分の少なくとも2倍の周波数成分の時間遅延差の相対的なタイミングを変えずに、前記高調波発生部に入射させる光伝達部と、
前記モードロックレーザが前記高調波発生部を透過した透過成分、および前記高調波成分のビート信号を検出する検出部と、
前記ビート信号に基づいて、前記キャリア・エンベロープ・オフセット周波数を算出する算出部と、
を備える測定装置。
【請求項20】
モードロックレーザのキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を測定する測定方法であって、
光パルスを発生するモードロックレーザ発生段階と、
前記モードロックレーザの発振周波数範囲を広げる帯域拡大段階と、
前記モードロックレーザの高調波成分を発生する高調波発生段階と、
前記帯域拡大段階から出力される前記モードロックレーザの予め定められた周波数成分および前記予め定められた周波数成分の少なくとも2倍の周波数成分の相対的なタイミングを変えずに、前記高調波発生段階に入射させる光伝達段階と、
前記モードロックレーザが前記高調波発生段階で透過した透過成分、および前記高調波成分のビート信号を検出する検出段階と、
前記ビート信号に基づいて、前記キャリア・エンベロープ・オフセット周波数を算出する算出段階と、
を備える測定方法。
【請求項21】
光周波数安定化レーザであって、
光パルスを発生するモードロックレーザと、
前記モードロックレーザの発振周波数範囲を広げる帯域拡大部と、
前記モードロックレーザの高調波成分を発生する高調波発生部と、
前記帯域拡大部から出力される前記モードロックレーザの予め定められた周波数成分および前記予め定められた周波数成分の少なくとも2倍の周波数成分の相対的なタイミングを変えずに、前記高調波発生部に入射させる光伝達部と、
前記モードロックレーザが前記高調波発生部で透過した透過成分、および前記高調波成分のビート信号を検出する検出部と、
前記ビート信号に基づいて、キャリア・エンベロープ・オフセット周波数および繰り返し周波数を算出する算出部と、
前記繰り返し周波数を第1の基準周波数に一致させる繰り返し周波数位相同期部および/またはキャリア・エンベロープ・オフセット周波数を第2の基準周波数に一致させるキャリア・エンベロープ・オフセット周波数位相同期部と
を備える光周波数安定化レーザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−181691(P2011−181691A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44588(P2010−44588)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】