パルスレーダ装置
【課題】送信系統とサンプリング系統とを1系統に統合し、安定した温度特性を確保しながら回路部品の低減によるコスト低減を図る。
【解決手段】掃引波発生器11及びVCO12を用いた周波数変調により、フレーム内で時間経過と共にパルス間隔が変化するタイミングパルスを発生させる。そして、タイミングパルスからインパルスを発生させて、送信アンテナ2からパルスを繰り返し送信すると共に、1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、現在の送信パルス(現在のインパルスによるサンプリングパルス)のタイミングでサンプリングすることで、等価的に時間軸を伸張して受信パルスをサンプリングする。これにより、送信系統とサンプリング系統とを1系統に統合して、安定した温度特性を確保しながら回路部品の低減によるコスト低減を図ることができる。
【解決手段】掃引波発生器11及びVCO12を用いた周波数変調により、フレーム内で時間経過と共にパルス間隔が変化するタイミングパルスを発生させる。そして、タイミングパルスからインパルスを発生させて、送信アンテナ2からパルスを繰り返し送信すると共に、1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、現在の送信パルス(現在のインパルスによるサンプリングパルス)のタイミングでサンプリングすることで、等価的に時間軸を伸張して受信パルスをサンプリングする。これにより、送信系統とサンプリング系統とを1系統に統合して、安定した温度特性を確保しながら回路部品の低減によるコスト低減を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等価時間サンプリング方式によりターゲットまでの距離を測定するパルスレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルスレーダによる距離測定では、例えば特許文献1に開示されているように、等価時間サンプリング方式で受信波をサンプリングする技術が一般的に用いられている。等価時間サンプリング方式は、高周波の送信パルスに対して受信パルスを少しずつ遅延させながらサンプリングすることで時間軸を伸張し、等価的に高速のサンプリングを可能とするものである。
【0003】
この等価時間サンプリング方式を用いたレーダ装置では、従来、送信系統とサンプリング系統とで異なる回路構成にせざるを得ず、温度変化の影響を受けて特性が不安定になる虞がある。このため、特許文献2には、送信系統とサンプリング系統との2系統それぞれについて、同一特性の部品を用いた回路構成とする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5805110号明細書
【特許文献2】特開2009−210384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2のように、送信系統とサンプリング系統との2系統それぞれについて同一特性の回路部品を用いることは、部品点数が増大するばかりでなく、煩雑な調整を要することになり、コスト上昇を招いてしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、送信系統とサンプリング系統とを1系統に統合し、安定した温度特性を確保しながら回路部品の低減によるコスト低減を図ることのできるパルスレーダ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によるパルスレーダ装置は、外部に送信した送信パルスがターゲットで反射されたパルスを受信パルスとして受信し、該受信パルスをフレーム毎に等価時間サンプリングするパルスレーダ装置であって、1フレーム内で時間経過と共にパルス間隔が変化するタイミングパルスを生成し、このタイミングパルスにより、上記送信パルスの送信タイミングと上記受信パルスをサンプリングするサンプリングタイミングとの双方を設定するパルス回路部と、現在の送信パルスより1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、現在の送信パルスに対応する上記タイミングパルスでサンプリングする受信回路部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、送信パルス系とサンプリングパルス系とを1系統に統合し、安定した温度特性を確保しながら回路部品の低減によるコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の第1形態に係り、周波数変調によるパルスレーダ装置の構成を示すブロック図
【図2】同上、1個前の送信パルスに基づくサンプリングを示す各部の信号波形図
【図3】同上、サンプル/ホールド回路の構成例を示すブロック図
【図4】同上、サンプル/ホールド回路の他の構成例を示すブロック図
【図5】同上、2個前の送信パルスに基づくサンプリングを示す各部の信号波形図
【図6】同上、リニアな周波数掃引に基づくサンプリングを示す各部の信号波形図
【図7】同上、パルスレーダ装置の他の構成例を示すブロック図
【図8】本発明の実施の第2形態に係り、パルス幅変調によるパルスレーダ装置の構成を示すブロック図
【図9】同上、各部の信号波形図
【図10】同上、パルス分離器の構成例を示す説明図
【図11】同上、サンプル/ホールド回路の構成例を示す説明図
【図12】同上、パルスレーダ装置の他の構成例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
先ず、図1を用いて本発明の実施の第1形態について説明する。図1において、符号1はパルスレーダ装置であり、送信パルス系とサンプリングパルス系とを1系統として等価時間サンプリング方式によりターゲット40までの距離を測定する。第1形態におけるパルスレーダ装置1は、所定のクロック信号を原信号とする周波数変調(FM;Frequency Modulation)によりタイミングパルスを生成し、このタイミングパルスを用いて送信パルスの送信タイミングと受信パルスをサンプリングするサンプリングタイミングとの双方を設定する。
【0011】
具体的には、パルスレーダ装置1は、送信アンテナ2から送信する送信パルスと、受信アンテナ3で受信した受信波のサンプリングパルスとを同一回路構成で生成するパルス回路部10と、受信アンテナ3で受信したターゲット40からの反射波を信号処理する受信回路部20とを主として構成されている。受信回路部20で処理された信号は、図示しない演算処理部へ送られ、ターゲット40との距離が演算される。
【0012】
パルス回路部10は、所定の基準クロック信号から生成されるフレームタイミング信号をトリガとして、時間軸上で電圧レベルが変化する掃引波を発生する掃引波発生器11、掃引波発生器11からの掃引波の電圧レベルを制御電圧として、この制御電圧に応じた周波数の信号をタイミングパルスとして発生する電圧制御発振器(VCO;Voltage Controlled Oscillator)12、VCO12からのタイミングパルスのエッジ等をトリガとしてインパルス状のパルスを発生するインパルス発生器13を備えて構成されている。このインパルスは、送信アンテナ2から空間に電波を放射するための送信パルスとして用いられると共に、受信アンテナ3で受信した受信波をサンプリングするためのサンプリングパルスとして用いられる。
【0013】
受信回路部20は、受信アンテナ3で受信した受信波を所定の周波数帯域に制限するバンドパスフィルタ(BPF)21、パルス回路部10からサンプリングパルスをトリガとして受信波を一時的にホールドしてサンプリングを行うサンプル/ホールド(S/H)回路22、受信波に重畳した高周波ノイズをカットするローパスフィルタ(LPF)23、LPF23を通過した信号を所定の出力レベルに増幅して出力するアンプ24を備えて構成されている。
【0014】
以上のパルスレーダ装置1は、送信パルス系とサンプリングパルス系とを1つの系統で形成した簡素な構成としながら、等価時間サンプリング方式により受信パルスを時間軸上で伸張してサンプリングすることができる。
【0015】
このため、本パルスレーダ装置1は、掃引波発生器11及びVCO12を用いた周波数変調により、原信号の周波数の逆数が時間経過と共に変化する(フレーム内で時間経過と共にパルス間隔が変化する)タイミングパルスを発生させる。そして、このタイミングパルスによるインパルスを用いて、送信アンテナ2からパルスを繰り返し送信すると共に、1個以上前の送信パルスによる反射波(受信パルス)を、現在の送信パルス(現在のインパルスによるサンプリングパルス)のタイミングでサンプリングすることにより、後方掃引でタイミングを少しずつずらしながら受信波をサンプリングする。
【0016】
尚、サンプリング対象となる受信波を発生させる送信パルスは、1フレーム内の送信パルスの総数Nmax以内で遡って設定することが可能であるが、1個前のパルスからNmax/2個前程度までのパルスの範囲に止めることが望ましい。
【0017】
VCO12で発生するタイミングパルスは、レーダの検出範囲内で最近距離に対応する最小時間Tminから最遠距離に対応する最大時間Tmax(Tmin<Tmax)の間に存在するターゲットを検出するために、以下の条件を満たす最大周波数Fmaxから最小周波数Fminの範囲とする。
Tmin>1/Fmax
Tmax<2/Fmax
Tmax<1/Fmin
【0018】
このとき、図1中に破線で示すように、インパルス発生器13と送信アンテナ2との間、受信アンテナ3とBPF21(或いはサンプル/ホールド回路22)との間の一方或いは双方に遅延器15を設けるようにしても良い。この遅延器15の時定数を適切に設定することで、タイミングパルスの最大周波数Fmaxを増大させることなく最小時間Tminを0に近づけることができ、より近距離の測距を可能とすることができる。
【0019】
また、サンプルホールドした波形を周波数分離し、周波数毎に分離した受信パルスについてパルス位置を求めることで、検出距離レンジを拡大し、より遠距離までの測距を可能とすることができる。すなわち、1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、現在の送信パルスによってサンプルホールドし、サンプルホールドした波形を周波数分離して何個以上前の送信パルスにより生成された受信パルスであるかを判定する。そして、周波数毎に分離した受信パルスについてパルス位置を求めることにより、検出距離レンジを最大時間Tmaxより伸ばすことができる。
【0020】
次に、本パルスレーダ装置1の動作について、図1のa〜gの各点における信号波形を参照しながら説明する。以下では、1個前の送信パルスによる受信パルスを現在の送信パルスでサンプリングする例と、2個前の送信パルスによる受信パルスを現在の送信パルスでサンプリングする例を説明する。
【0021】
先ず、図2を用いて、1個前の送信パルスによる受信パルスを現在の送信パルスでサンプリングする例について説明する。所定のクロック信号に同期してワンショットパルスからなるフレームタイミング信号(図2に示すa点の波形)が出力されると、このフレームタイミング信号が掃引波発生器11に入力される。掃引波発生器11は、フレームタイミング信号の入力により、1フレーム毎に時間経過に従って電圧レベルが変化する掃引波を発生する。この掃引波は、図2においては、b点の波形で示すように時間経過と共に電圧レベルが非線形的に上昇する非線形ランプ波として生成される。
【0022】
ランプ波が発生すると、このランプ波による制御電圧でVCO12から図2のc点の波形で示すようなタイミングパルスが発生する。このタイミングパルスは、時間経過と共にパルス間隔が大きくなるパルスであり、インパルス発生器13により、図2のd点に示すようなインパルス状のパルスに波形整形される。
【0023】
そして、このインパルスにより、図2のe点の波形で示す送信パルスが出力されると共に、図2のf点の波形で示す受信パルスがサンプル/ホールド回路22でサンプルホールドされる。図2の例では、このとき、サンプル/ホールド回路22でサンプル/ホールドされる受信パルスは、1パルス前の送信パルスがターゲットで反射され、この反射波が受信されたパルスである。
【0024】
サンプル/ホールド回路22は、例えば、図3や図4に示すような構成の回路を用いることができる。図3においては、アナログスイッチ等のスイッチ素子25と、このスイッチ素子25に接続されるコンデンサ26とを基本回路として、この基本回路を、電圧フォロワを構成する2つのアンプ27,28の間に接続してサンプル/ホールド回路22を構成している。この回路構成では、スイッチ素子25がサンプリングパルスによってオンされたとき、受信信号をコンデンサ26に充電し、スイッチ素子25がオフされた後もコンデンサ26に充電された電圧を保持することでサンプルホールドを行い、アンプ28を介してサンプリング信号を出力する。
【0025】
また、図4に示す回路構成のサンプル/ホールド回路22Aは、図3の入力側のアンプ27及びスイッチ素子25を、受信パルスとサンプリングパルスとを加算する加算器30及びショットキーバリアダイオード31に変更するものである。図4のサンプル/ホールド回路22Aは、乗算器として表現されるものであり、受信パルスに重畳されるインパルス状のサンプリングパルスによってショットキーバリアダイオード31が導通したとき、ショットキーバリアダイオード31を通過した信号をコンデンサ26に保持し、保持した信号をアンプ28を介して出力する。
【0026】
このように、1フレーム内でパルス間隔が順次大きくなる送信パルスを生成し、現在の送信パルスのタイミングで1個前の送信パルスによる受信パルスをサンプルホールドする動作を繰り返す。これにより、等価的に、送信パルスに対して受信パルスのサンプリングタイミングを順次遅延することになり、図2のf点の波形の受信パルスを時間軸上で伸張したg点の波形で示すフレーム信号を取得することができる。
【0027】
また、2個前の送信パルスによる受信パルスを現在の送信パルスのタイミングでサンプリングする場合には、図5に示すように、e点の送信パルスとf点の受信パルスとの関係において、現在の送信パルスのタイミングで2個前の受信パルスをサンプルホールドする。図5の例は、図4の例に比較して、より遠距離のターゲットに対応しており、g点の波形で示すように、図4の例に比較して周波数の高いフレーム信号を得ることができ、より遠距離までの測距が可能となる。
【0028】
更に、図2,図5の例では、掃引波発生器11で発生する非線形ランプ波を用いてVCO12でタイミングパルス(サンプリングパルス)を発生させているが、図6に示すように、リニア掃引によってサンプリングパルスを発生させるようにしても良い。すなわち、図6のb点の波形で示すように、線形的に電圧レベルが上昇するランプ波を掃引波発生器11で発生させ、このランプ波に基づいて、c点の波形で示すタイミングパルスをVCO12で発生させる。
【0029】
このリニア掃引によるサンプリングでは、1フレーム内で比較的早期に受信パルスをサンプリングすることが可能となる。すなわち、1個前の送信パルスによる受信パルスを現在の送信パルスでサンプルホールドしながら、2個前の送信パルスによる受信パルスを現在の送信パルスでサンプルホールドする場合と同様、より周波数の高いフレーム信号を得ることができ、より遠距離までの測距が可能となる。
【0030】
また、以上のパルスレーダ装置1は、送信アンテナ2と受信アンテナ3とが分離したアンテナ分離型のレーダ装置として説明したが、図7に示すように、送信アンテナと受信アンテナとが一体のレーダ装置に適用することもできる。
【0031】
図7に示すパルスレーダ装置1Aは、図1のパルスレーダ装置1に対して、送信アンテナ2及び受信アンテナ3に代えて送受信アンテナ35を用い、サンプル/ホールド回路22前段のBPF21を、送受信アンテナ35とインパルス発生器13(或いは遅延器15)との間に設けている。このパルスレーダ装置1Aにおいても、パルスレーダ装置1と同様、1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、現在の送信パルスでサンプルホールドすることにより、等価的に受信パルスを時間軸上で伸張してサンプリングすることができる。
【0032】
このように、本実施の形態におけるパルスレーダ装置は、従来、2系統必要であった送信系統とサンプリング系統とを1系統に統合することができ、回路部品を低減することができる。また、従来、温度特性を安定化させるために、送信系統とサンプリング系統との両系統に同一特性の部品を用いる必要があったが、その必要もなく、安定した温度特性を確保しながらコスト低減を図ることができる。
【0033】
次に、本発明の実施の第2形態について説明する。先に説明した第1形態においては、レーダ波の送信及び受信波のサンプリングを行うためのタイミングパルスを周波数変調で生成する例について説明した。これに対して、第2形態は、タイミングパルスを、パルス幅変調(PWM;Pulse Width Modulation)によって生成するものである。
【0034】
このため、第2形態のパルスレーダ装置50は、図8に示すように、第1形態のパルスレーダ装置1のパルス回路部10を、パルス幅変調されたパルス(PWMパルス)を生成し、PWMパルスの立ち上がりエッジに基づく第1のパルス列と立ち下がりエッジに基づく第2のパルス列とを対で有するタイミングパルスを生成するパルス回路部10Aに変更する。第1のパルス列の信号は、送信パルスとして送信アンテナ2に送られ、第2のパルス列の信号は、サンプリングパルスとして受信回路部20へ送られる。受信回路部20は、第1形態と同様である。
【0035】
詳細には、パルス回路部10Aは、発振器51からのクロックに基づいて台形波(三角波)を発生する台形波発生器52、フレームタイミング信号を受けてランプ波を発生する掃引ランプ波発生器53、台形波発生器52からの台形波と掃引ランプ波発生器53からのランプ波とを比較し、パルス幅変調されたPWMパルスを出力するコンパレータ54を、PWMパルス生成部として備えている。
【0036】
更に、パルス回路部10Aは、PWMパルスの立ち上がりエッジで第1のパルス列の信号を発生すると共に、PWMパルスの立ち下がりエッジで第2のパルス列の信号を発生する立上がり/立下り時パルス発生器55と、第1,第2のパルス列を分離するパルス分離器56とを備えている。
【0037】
以下、図8のa’〜g’点の各点の波形を示す図9を用いて説明する。先ず、パルス回路部10Aにて、a’点の波形で示すように、パルス幅変調されたPWMパルスが生成される。このPWMパルスは、発振器51、台形波発生器52、掃引ランプ波発生器53、及びコンパレータ54からなるPWMパルス生成部において、例えば、立ち上がりエッジ同士の周期と立ち下がりエッジ同士の周波数の差が一定になるようデューティ比を線形的に増加又は減少させて生成される。
【0038】
その場合、レーダの検出距離内で最近距離に対応する最小時間Tminから最遠距離に対応する最大時間Tmax(Tmin<Tmax)の間に存在するターゲットを検出するため、PWMパルス生成部では、一定の周期TTxに対して、以下の条件を満たす最大パルス幅TPWmax、最小パルス幅TPWminとなるようにデューティ比を掃引する。
Tmin>TTx+TPWmin
Tmax<TTx+TPWmax
【0039】
尚、図8中に破線で示すように、パルス分離器56と送信アンテナ2との間、受信アンテナ3とBPF21(或いはサンプル/ホールド回路22)との間の一方或いは双方に遅延器15を設けることで、PWMパルスの周波数を増大させることなく、或いはデューティ比を極端に小さく又は大きくさせることなく、最小時間Tminを0に近づけることができる。これにより、より近距離の測距が可能となる。
【0040】
以上のPWMパルスは、立上がり/立下り時パルス発生器55に入力され、PWMパルスの立ち上がりエッジの間隔と立ち下がりエッジの間隔とから、周波数が微小に異なる2つの周期を有するタイミングパルスが生成される。すなわち、図9のb’点の波形で示すように、PWMパルスの立ち上がりエッジに同期したインパルス状の第1のパルス列と、PWMパルスの立下りエッジに同期した逆極性のインパルス状の第2のパルス列とを有するタイミングパルスが生成される。
【0041】
第1,第2のパルス列を互いに逆の極性とするのは、各パルス列の信号を容易に分離可能とするためである。この信号の分離は、パルス分離器56により行われ、c’点の波形で示すような正側の第1のパルス列信号と、d’点の波形で示すような負側の第2のパルス列信号とに分離される。
【0042】
パルス分離器56は、互いに逆極性の信号を分離するのみで良いため、簡素な回路で構成することができる。例えば、図10に示すように、パルス分離器56を、ショットキーバリアダイオード60,61による検波回路で構成することができる。すなわち、パルス分離器56の出力側にショットキーバリアダイオード60のアノード端子とショットキーバリアダイオード61のカソード端子とを接続し、ショットキーバリアダイオード60のカソード側からc’点の波形で示す正極性の第1のパルス列信号を出力すると共に、ショットキーバリアダイオード61のアノード側からd’点の波形で示す負極性の第2のパルス列信号を出力する。
【0043】
パルス分離器56からの第1のパルス列信号により、図9のe’点の波形で示す送信パルスが出力され、図9のf’点の波形で示す受信パルスが戻される。このとき、現在の送信パルスより1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、第2のパルス列信号の中の現在の送信タイミングに対応するパルスでサンプルホールドすることができる。この受信パルスのサンプルホールドを、サンプル/ホールド回路22に入力される第2のパルス列信号によって繰り返すことにより、等価的にタイミングを少しずつずらしながら受信パルスをサンプリングし、図9のg’点の波形で示すフレーム信号を得ることができる。
【0044】
図11は、パルス分離器56と一部構成を共用したサンプル/ホールド回路22Bの構成例を示すものである。このサンプル/ホールド回路22Bでは、パルス分離器56のショットキーバリアダイオード61を共用しており、抵抗70を介してコンデンサ71にホールドされる入力信号をアンプ72で増幅して出力する。
【0045】
この場合、第1,第2のパルス列は、送・受信パルスと同周期のパルスであるため、タイミングパルスとして第1のパルス列と第2のパルス列を分離せずに使用しても、等価時間サンプリング時に消去される。このため、パルス分離器56は必ずしも必須ではなく、パルス分離器56を省略することにより、部品点数を削減してコスト低減を図ることができる。
【0046】
特に、図12に示すように、送信アンテナと受信アンテナとが一体のパルスレーダ装置に適用する場合、パルス分離器56を省略することで構成をより簡素化することができる。図12のパルスレーダ装置50Aは、立上がり/立下がり時パルス発生器55からのタイミングパルスを、BPF21(或いは遅延器15及びBPF21)を介して送受信アンテナ35に送ると共に、サンプル/ホールド回路22に送る構成としている。
【0047】
このパルスレーダ装置50Aは、パルスレーダ装置50と比較し、サンプル/ホールド回路22へ行くべきパルスが送受信アンテナ35側へ漏れ、若干不要放射が生じる虞があるが、構成をより簡素化しつつ、等価的に受信パルスを時間軸上で伸張してサンプリングすることができる。
【0048】
このように、第2形態においても、第1形態と同様、送信系統とサンプリング系統とを1系統に統合し、安定した温度特性を確保しつつ、回路部品を低減して低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1(1A,50,50A) パルスレーダ装置
10(10A) パルス回路部
12 電圧制御発振器
20 受信回路部
22(22A,22B) サンプル/ホールド回路
40 ターゲット
55 立上がり/立下がり時パルス発生器
【技術分野】
【0001】
本発明は、等価時間サンプリング方式によりターゲットまでの距離を測定するパルスレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルスレーダによる距離測定では、例えば特許文献1に開示されているように、等価時間サンプリング方式で受信波をサンプリングする技術が一般的に用いられている。等価時間サンプリング方式は、高周波の送信パルスに対して受信パルスを少しずつ遅延させながらサンプリングすることで時間軸を伸張し、等価的に高速のサンプリングを可能とするものである。
【0003】
この等価時間サンプリング方式を用いたレーダ装置では、従来、送信系統とサンプリング系統とで異なる回路構成にせざるを得ず、温度変化の影響を受けて特性が不安定になる虞がある。このため、特許文献2には、送信系統とサンプリング系統との2系統それぞれについて、同一特性の部品を用いた回路構成とする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5805110号明細書
【特許文献2】特開2009−210384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2のように、送信系統とサンプリング系統との2系統それぞれについて同一特性の回路部品を用いることは、部品点数が増大するばかりでなく、煩雑な調整を要することになり、コスト上昇を招いてしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、送信系統とサンプリング系統とを1系統に統合し、安定した温度特性を確保しながら回路部品の低減によるコスト低減を図ることのできるパルスレーダ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によるパルスレーダ装置は、外部に送信した送信パルスがターゲットで反射されたパルスを受信パルスとして受信し、該受信パルスをフレーム毎に等価時間サンプリングするパルスレーダ装置であって、1フレーム内で時間経過と共にパルス間隔が変化するタイミングパルスを生成し、このタイミングパルスにより、上記送信パルスの送信タイミングと上記受信パルスをサンプリングするサンプリングタイミングとの双方を設定するパルス回路部と、現在の送信パルスより1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、現在の送信パルスに対応する上記タイミングパルスでサンプリングする受信回路部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、送信パルス系とサンプリングパルス系とを1系統に統合し、安定した温度特性を確保しながら回路部品の低減によるコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の第1形態に係り、周波数変調によるパルスレーダ装置の構成を示すブロック図
【図2】同上、1個前の送信パルスに基づくサンプリングを示す各部の信号波形図
【図3】同上、サンプル/ホールド回路の構成例を示すブロック図
【図4】同上、サンプル/ホールド回路の他の構成例を示すブロック図
【図5】同上、2個前の送信パルスに基づくサンプリングを示す各部の信号波形図
【図6】同上、リニアな周波数掃引に基づくサンプリングを示す各部の信号波形図
【図7】同上、パルスレーダ装置の他の構成例を示すブロック図
【図8】本発明の実施の第2形態に係り、パルス幅変調によるパルスレーダ装置の構成を示すブロック図
【図9】同上、各部の信号波形図
【図10】同上、パルス分離器の構成例を示す説明図
【図11】同上、サンプル/ホールド回路の構成例を示す説明図
【図12】同上、パルスレーダ装置の他の構成例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
先ず、図1を用いて本発明の実施の第1形態について説明する。図1において、符号1はパルスレーダ装置であり、送信パルス系とサンプリングパルス系とを1系統として等価時間サンプリング方式によりターゲット40までの距離を測定する。第1形態におけるパルスレーダ装置1は、所定のクロック信号を原信号とする周波数変調(FM;Frequency Modulation)によりタイミングパルスを生成し、このタイミングパルスを用いて送信パルスの送信タイミングと受信パルスをサンプリングするサンプリングタイミングとの双方を設定する。
【0011】
具体的には、パルスレーダ装置1は、送信アンテナ2から送信する送信パルスと、受信アンテナ3で受信した受信波のサンプリングパルスとを同一回路構成で生成するパルス回路部10と、受信アンテナ3で受信したターゲット40からの反射波を信号処理する受信回路部20とを主として構成されている。受信回路部20で処理された信号は、図示しない演算処理部へ送られ、ターゲット40との距離が演算される。
【0012】
パルス回路部10は、所定の基準クロック信号から生成されるフレームタイミング信号をトリガとして、時間軸上で電圧レベルが変化する掃引波を発生する掃引波発生器11、掃引波発生器11からの掃引波の電圧レベルを制御電圧として、この制御電圧に応じた周波数の信号をタイミングパルスとして発生する電圧制御発振器(VCO;Voltage Controlled Oscillator)12、VCO12からのタイミングパルスのエッジ等をトリガとしてインパルス状のパルスを発生するインパルス発生器13を備えて構成されている。このインパルスは、送信アンテナ2から空間に電波を放射するための送信パルスとして用いられると共に、受信アンテナ3で受信した受信波をサンプリングするためのサンプリングパルスとして用いられる。
【0013】
受信回路部20は、受信アンテナ3で受信した受信波を所定の周波数帯域に制限するバンドパスフィルタ(BPF)21、パルス回路部10からサンプリングパルスをトリガとして受信波を一時的にホールドしてサンプリングを行うサンプル/ホールド(S/H)回路22、受信波に重畳した高周波ノイズをカットするローパスフィルタ(LPF)23、LPF23を通過した信号を所定の出力レベルに増幅して出力するアンプ24を備えて構成されている。
【0014】
以上のパルスレーダ装置1は、送信パルス系とサンプリングパルス系とを1つの系統で形成した簡素な構成としながら、等価時間サンプリング方式により受信パルスを時間軸上で伸張してサンプリングすることができる。
【0015】
このため、本パルスレーダ装置1は、掃引波発生器11及びVCO12を用いた周波数変調により、原信号の周波数の逆数が時間経過と共に変化する(フレーム内で時間経過と共にパルス間隔が変化する)タイミングパルスを発生させる。そして、このタイミングパルスによるインパルスを用いて、送信アンテナ2からパルスを繰り返し送信すると共に、1個以上前の送信パルスによる反射波(受信パルス)を、現在の送信パルス(現在のインパルスによるサンプリングパルス)のタイミングでサンプリングすることにより、後方掃引でタイミングを少しずつずらしながら受信波をサンプリングする。
【0016】
尚、サンプリング対象となる受信波を発生させる送信パルスは、1フレーム内の送信パルスの総数Nmax以内で遡って設定することが可能であるが、1個前のパルスからNmax/2個前程度までのパルスの範囲に止めることが望ましい。
【0017】
VCO12で発生するタイミングパルスは、レーダの検出範囲内で最近距離に対応する最小時間Tminから最遠距離に対応する最大時間Tmax(Tmin<Tmax)の間に存在するターゲットを検出するために、以下の条件を満たす最大周波数Fmaxから最小周波数Fminの範囲とする。
Tmin>1/Fmax
Tmax<2/Fmax
Tmax<1/Fmin
【0018】
このとき、図1中に破線で示すように、インパルス発生器13と送信アンテナ2との間、受信アンテナ3とBPF21(或いはサンプル/ホールド回路22)との間の一方或いは双方に遅延器15を設けるようにしても良い。この遅延器15の時定数を適切に設定することで、タイミングパルスの最大周波数Fmaxを増大させることなく最小時間Tminを0に近づけることができ、より近距離の測距を可能とすることができる。
【0019】
また、サンプルホールドした波形を周波数分離し、周波数毎に分離した受信パルスについてパルス位置を求めることで、検出距離レンジを拡大し、より遠距離までの測距を可能とすることができる。すなわち、1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、現在の送信パルスによってサンプルホールドし、サンプルホールドした波形を周波数分離して何個以上前の送信パルスにより生成された受信パルスであるかを判定する。そして、周波数毎に分離した受信パルスについてパルス位置を求めることにより、検出距離レンジを最大時間Tmaxより伸ばすことができる。
【0020】
次に、本パルスレーダ装置1の動作について、図1のa〜gの各点における信号波形を参照しながら説明する。以下では、1個前の送信パルスによる受信パルスを現在の送信パルスでサンプリングする例と、2個前の送信パルスによる受信パルスを現在の送信パルスでサンプリングする例を説明する。
【0021】
先ず、図2を用いて、1個前の送信パルスによる受信パルスを現在の送信パルスでサンプリングする例について説明する。所定のクロック信号に同期してワンショットパルスからなるフレームタイミング信号(図2に示すa点の波形)が出力されると、このフレームタイミング信号が掃引波発生器11に入力される。掃引波発生器11は、フレームタイミング信号の入力により、1フレーム毎に時間経過に従って電圧レベルが変化する掃引波を発生する。この掃引波は、図2においては、b点の波形で示すように時間経過と共に電圧レベルが非線形的に上昇する非線形ランプ波として生成される。
【0022】
ランプ波が発生すると、このランプ波による制御電圧でVCO12から図2のc点の波形で示すようなタイミングパルスが発生する。このタイミングパルスは、時間経過と共にパルス間隔が大きくなるパルスであり、インパルス発生器13により、図2のd点に示すようなインパルス状のパルスに波形整形される。
【0023】
そして、このインパルスにより、図2のe点の波形で示す送信パルスが出力されると共に、図2のf点の波形で示す受信パルスがサンプル/ホールド回路22でサンプルホールドされる。図2の例では、このとき、サンプル/ホールド回路22でサンプル/ホールドされる受信パルスは、1パルス前の送信パルスがターゲットで反射され、この反射波が受信されたパルスである。
【0024】
サンプル/ホールド回路22は、例えば、図3や図4に示すような構成の回路を用いることができる。図3においては、アナログスイッチ等のスイッチ素子25と、このスイッチ素子25に接続されるコンデンサ26とを基本回路として、この基本回路を、電圧フォロワを構成する2つのアンプ27,28の間に接続してサンプル/ホールド回路22を構成している。この回路構成では、スイッチ素子25がサンプリングパルスによってオンされたとき、受信信号をコンデンサ26に充電し、スイッチ素子25がオフされた後もコンデンサ26に充電された電圧を保持することでサンプルホールドを行い、アンプ28を介してサンプリング信号を出力する。
【0025】
また、図4に示す回路構成のサンプル/ホールド回路22Aは、図3の入力側のアンプ27及びスイッチ素子25を、受信パルスとサンプリングパルスとを加算する加算器30及びショットキーバリアダイオード31に変更するものである。図4のサンプル/ホールド回路22Aは、乗算器として表現されるものであり、受信パルスに重畳されるインパルス状のサンプリングパルスによってショットキーバリアダイオード31が導通したとき、ショットキーバリアダイオード31を通過した信号をコンデンサ26に保持し、保持した信号をアンプ28を介して出力する。
【0026】
このように、1フレーム内でパルス間隔が順次大きくなる送信パルスを生成し、現在の送信パルスのタイミングで1個前の送信パルスによる受信パルスをサンプルホールドする動作を繰り返す。これにより、等価的に、送信パルスに対して受信パルスのサンプリングタイミングを順次遅延することになり、図2のf点の波形の受信パルスを時間軸上で伸張したg点の波形で示すフレーム信号を取得することができる。
【0027】
また、2個前の送信パルスによる受信パルスを現在の送信パルスのタイミングでサンプリングする場合には、図5に示すように、e点の送信パルスとf点の受信パルスとの関係において、現在の送信パルスのタイミングで2個前の受信パルスをサンプルホールドする。図5の例は、図4の例に比較して、より遠距離のターゲットに対応しており、g点の波形で示すように、図4の例に比較して周波数の高いフレーム信号を得ることができ、より遠距離までの測距が可能となる。
【0028】
更に、図2,図5の例では、掃引波発生器11で発生する非線形ランプ波を用いてVCO12でタイミングパルス(サンプリングパルス)を発生させているが、図6に示すように、リニア掃引によってサンプリングパルスを発生させるようにしても良い。すなわち、図6のb点の波形で示すように、線形的に電圧レベルが上昇するランプ波を掃引波発生器11で発生させ、このランプ波に基づいて、c点の波形で示すタイミングパルスをVCO12で発生させる。
【0029】
このリニア掃引によるサンプリングでは、1フレーム内で比較的早期に受信パルスをサンプリングすることが可能となる。すなわち、1個前の送信パルスによる受信パルスを現在の送信パルスでサンプルホールドしながら、2個前の送信パルスによる受信パルスを現在の送信パルスでサンプルホールドする場合と同様、より周波数の高いフレーム信号を得ることができ、より遠距離までの測距が可能となる。
【0030】
また、以上のパルスレーダ装置1は、送信アンテナ2と受信アンテナ3とが分離したアンテナ分離型のレーダ装置として説明したが、図7に示すように、送信アンテナと受信アンテナとが一体のレーダ装置に適用することもできる。
【0031】
図7に示すパルスレーダ装置1Aは、図1のパルスレーダ装置1に対して、送信アンテナ2及び受信アンテナ3に代えて送受信アンテナ35を用い、サンプル/ホールド回路22前段のBPF21を、送受信アンテナ35とインパルス発生器13(或いは遅延器15)との間に設けている。このパルスレーダ装置1Aにおいても、パルスレーダ装置1と同様、1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、現在の送信パルスでサンプルホールドすることにより、等価的に受信パルスを時間軸上で伸張してサンプリングすることができる。
【0032】
このように、本実施の形態におけるパルスレーダ装置は、従来、2系統必要であった送信系統とサンプリング系統とを1系統に統合することができ、回路部品を低減することができる。また、従来、温度特性を安定化させるために、送信系統とサンプリング系統との両系統に同一特性の部品を用いる必要があったが、その必要もなく、安定した温度特性を確保しながらコスト低減を図ることができる。
【0033】
次に、本発明の実施の第2形態について説明する。先に説明した第1形態においては、レーダ波の送信及び受信波のサンプリングを行うためのタイミングパルスを周波数変調で生成する例について説明した。これに対して、第2形態は、タイミングパルスを、パルス幅変調(PWM;Pulse Width Modulation)によって生成するものである。
【0034】
このため、第2形態のパルスレーダ装置50は、図8に示すように、第1形態のパルスレーダ装置1のパルス回路部10を、パルス幅変調されたパルス(PWMパルス)を生成し、PWMパルスの立ち上がりエッジに基づく第1のパルス列と立ち下がりエッジに基づく第2のパルス列とを対で有するタイミングパルスを生成するパルス回路部10Aに変更する。第1のパルス列の信号は、送信パルスとして送信アンテナ2に送られ、第2のパルス列の信号は、サンプリングパルスとして受信回路部20へ送られる。受信回路部20は、第1形態と同様である。
【0035】
詳細には、パルス回路部10Aは、発振器51からのクロックに基づいて台形波(三角波)を発生する台形波発生器52、フレームタイミング信号を受けてランプ波を発生する掃引ランプ波発生器53、台形波発生器52からの台形波と掃引ランプ波発生器53からのランプ波とを比較し、パルス幅変調されたPWMパルスを出力するコンパレータ54を、PWMパルス生成部として備えている。
【0036】
更に、パルス回路部10Aは、PWMパルスの立ち上がりエッジで第1のパルス列の信号を発生すると共に、PWMパルスの立ち下がりエッジで第2のパルス列の信号を発生する立上がり/立下り時パルス発生器55と、第1,第2のパルス列を分離するパルス分離器56とを備えている。
【0037】
以下、図8のa’〜g’点の各点の波形を示す図9を用いて説明する。先ず、パルス回路部10Aにて、a’点の波形で示すように、パルス幅変調されたPWMパルスが生成される。このPWMパルスは、発振器51、台形波発生器52、掃引ランプ波発生器53、及びコンパレータ54からなるPWMパルス生成部において、例えば、立ち上がりエッジ同士の周期と立ち下がりエッジ同士の周波数の差が一定になるようデューティ比を線形的に増加又は減少させて生成される。
【0038】
その場合、レーダの検出距離内で最近距離に対応する最小時間Tminから最遠距離に対応する最大時間Tmax(Tmin<Tmax)の間に存在するターゲットを検出するため、PWMパルス生成部では、一定の周期TTxに対して、以下の条件を満たす最大パルス幅TPWmax、最小パルス幅TPWminとなるようにデューティ比を掃引する。
Tmin>TTx+TPWmin
Tmax<TTx+TPWmax
【0039】
尚、図8中に破線で示すように、パルス分離器56と送信アンテナ2との間、受信アンテナ3とBPF21(或いはサンプル/ホールド回路22)との間の一方或いは双方に遅延器15を設けることで、PWMパルスの周波数を増大させることなく、或いはデューティ比を極端に小さく又は大きくさせることなく、最小時間Tminを0に近づけることができる。これにより、より近距離の測距が可能となる。
【0040】
以上のPWMパルスは、立上がり/立下り時パルス発生器55に入力され、PWMパルスの立ち上がりエッジの間隔と立ち下がりエッジの間隔とから、周波数が微小に異なる2つの周期を有するタイミングパルスが生成される。すなわち、図9のb’点の波形で示すように、PWMパルスの立ち上がりエッジに同期したインパルス状の第1のパルス列と、PWMパルスの立下りエッジに同期した逆極性のインパルス状の第2のパルス列とを有するタイミングパルスが生成される。
【0041】
第1,第2のパルス列を互いに逆の極性とするのは、各パルス列の信号を容易に分離可能とするためである。この信号の分離は、パルス分離器56により行われ、c’点の波形で示すような正側の第1のパルス列信号と、d’点の波形で示すような負側の第2のパルス列信号とに分離される。
【0042】
パルス分離器56は、互いに逆極性の信号を分離するのみで良いため、簡素な回路で構成することができる。例えば、図10に示すように、パルス分離器56を、ショットキーバリアダイオード60,61による検波回路で構成することができる。すなわち、パルス分離器56の出力側にショットキーバリアダイオード60のアノード端子とショットキーバリアダイオード61のカソード端子とを接続し、ショットキーバリアダイオード60のカソード側からc’点の波形で示す正極性の第1のパルス列信号を出力すると共に、ショットキーバリアダイオード61のアノード側からd’点の波形で示す負極性の第2のパルス列信号を出力する。
【0043】
パルス分離器56からの第1のパルス列信号により、図9のe’点の波形で示す送信パルスが出力され、図9のf’点の波形で示す受信パルスが戻される。このとき、現在の送信パルスより1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、第2のパルス列信号の中の現在の送信タイミングに対応するパルスでサンプルホールドすることができる。この受信パルスのサンプルホールドを、サンプル/ホールド回路22に入力される第2のパルス列信号によって繰り返すことにより、等価的にタイミングを少しずつずらしながら受信パルスをサンプリングし、図9のg’点の波形で示すフレーム信号を得ることができる。
【0044】
図11は、パルス分離器56と一部構成を共用したサンプル/ホールド回路22Bの構成例を示すものである。このサンプル/ホールド回路22Bでは、パルス分離器56のショットキーバリアダイオード61を共用しており、抵抗70を介してコンデンサ71にホールドされる入力信号をアンプ72で増幅して出力する。
【0045】
この場合、第1,第2のパルス列は、送・受信パルスと同周期のパルスであるため、タイミングパルスとして第1のパルス列と第2のパルス列を分離せずに使用しても、等価時間サンプリング時に消去される。このため、パルス分離器56は必ずしも必須ではなく、パルス分離器56を省略することにより、部品点数を削減してコスト低減を図ることができる。
【0046】
特に、図12に示すように、送信アンテナと受信アンテナとが一体のパルスレーダ装置に適用する場合、パルス分離器56を省略することで構成をより簡素化することができる。図12のパルスレーダ装置50Aは、立上がり/立下がり時パルス発生器55からのタイミングパルスを、BPF21(或いは遅延器15及びBPF21)を介して送受信アンテナ35に送ると共に、サンプル/ホールド回路22に送る構成としている。
【0047】
このパルスレーダ装置50Aは、パルスレーダ装置50と比較し、サンプル/ホールド回路22へ行くべきパルスが送受信アンテナ35側へ漏れ、若干不要放射が生じる虞があるが、構成をより簡素化しつつ、等価的に受信パルスを時間軸上で伸張してサンプリングすることができる。
【0048】
このように、第2形態においても、第1形態と同様、送信系統とサンプリング系統とを1系統に統合し、安定した温度特性を確保しつつ、回路部品を低減して低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1(1A,50,50A) パルスレーダ装置
10(10A) パルス回路部
12 電圧制御発振器
20 受信回路部
22(22A,22B) サンプル/ホールド回路
40 ターゲット
55 立上がり/立下がり時パルス発生器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に送信した送信パルスがターゲットで反射されたパルスを受信パルスとして受信し、該受信パルスをフレーム毎に等価時間サンプリングするパルスレーダ装置であって、
1フレーム内で時間経過と共にパルス間隔が変化するタイミングパルスを生成し、このタイミングパルスにより、上記送信パルスの送信タイミングと上記受信パルスをサンプリングするサンプリングタイミングとの双方を設定するパルス回路部と、
現在の送信パルスより1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、現在の送信パルスに対応する上記タイミングパルスでサンプリングする受信回路部と
を備えることを特徴とするパルスレーダ装置。
【請求項2】
周波数変調した信号に基づいて上記タイミングパルスを生成し、現在の送信パルスより1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、現在の送信パルスの送信タイミングでサンプリングすることを特徴とする請求項1記載のパルスレーダ装置。
【請求項3】
パルス幅変調した信号の立ち上がりエッジによる第1のパルス列と立下りエッジによる第2のパルス列とを対とする信号で上記タイミングパルスを生成し、上記第1のパルス列による送信タイミングで送信した現在の送信パルスより1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、現在の送信タイミングに対応する上記第2のパルス列によるタイミングでサンプリングすることを特徴とする請求項1記載のパルスレーダ装置。
【請求項4】
上記第1のパルス列と上記第2のパルス列とを互いに逆極性の信号として分離することを特徴とする請求項3記載のパルスレーダ装置。
【請求項1】
外部に送信した送信パルスがターゲットで反射されたパルスを受信パルスとして受信し、該受信パルスをフレーム毎に等価時間サンプリングするパルスレーダ装置であって、
1フレーム内で時間経過と共にパルス間隔が変化するタイミングパルスを生成し、このタイミングパルスにより、上記送信パルスの送信タイミングと上記受信パルスをサンプリングするサンプリングタイミングとの双方を設定するパルス回路部と、
現在の送信パルスより1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、現在の送信パルスに対応する上記タイミングパルスでサンプリングする受信回路部と
を備えることを特徴とするパルスレーダ装置。
【請求項2】
周波数変調した信号に基づいて上記タイミングパルスを生成し、現在の送信パルスより1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、現在の送信パルスの送信タイミングでサンプリングすることを特徴とする請求項1記載のパルスレーダ装置。
【請求項3】
パルス幅変調した信号の立ち上がりエッジによる第1のパルス列と立下りエッジによる第2のパルス列とを対とする信号で上記タイミングパルスを生成し、上記第1のパルス列による送信タイミングで送信した現在の送信パルスより1個以上前の送信パルスによる受信パルスを、現在の送信タイミングに対応する上記第2のパルス列によるタイミングでサンプリングすることを特徴とする請求項1記載のパルスレーダ装置。
【請求項4】
上記第1のパルス列と上記第2のパルス列とを互いに逆極性の信号として分離することを特徴とする請求項3記載のパルスレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−196841(P2011−196841A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64374(P2010−64374)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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