説明

パルス信号データ解析装置

【課題】高精度の環境放射線のリアルタイム・モニタリングを実現するパルス信号データ解析装置を提供する。
【解決手段】演算処理部52は、β線由来パルス信号出力端子32にパルス信号が出力された時刻を基準時刻とし、この基準時刻とこの基準時刻から所定のパルス信号抽出時間幅が経過した時刻との間にα線由来パルス信号出力端子31に出力された全てのパルス信号について、このパルス信号がα線由来パルス信号出力端子31に出力された時刻と基準時刻との時間間隔を算出する処理を、β線由来パルス信号出力端子32に出力された全てのパルス信号について行い、時間間隔の度数分布を求め、この度数分布を表すグラフを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線に関する特性を解析する解析装置に関し、詳しくは、α線やβ線の計数や時間間隔の測定を行い、その統計データを求める解析装置に関し、より詳しくは、α線やβ線に由来するパルス信号を用いてα線やβ線の計数や時間間隔の測定を行い、その統計データから原子力関連施設やその近辺における環境放射線のリアルタイム・モニタリング(実時間での監視)を行うパルス信号データ解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、放射線に関する特性を解析する種々の方法が提案されている。最も単純なものとしては、単にα線、β線、γ線を計数する方法がある。これは、所定のカウント時間の間に検出されたα線、β線、γ線をカウントするものであり、カウントされた値は、それぞれ、α計数率、β計数率、γ計数率と呼ばれる。
【0003】
また、α線由来パルス間の時間間隔の度数分布を求めて特性を解析する方法や、β線を検出した時刻からα線を検出した時刻までの時間間隔の度数分布を求めて特性を解析する方法も提案されている。
【0004】
非特許文献1には、上述した度数分布を求めて特性を解析する方法が開示されており、広く知られている。これによれば、アクチニウム系列におけるRn‐219のα壊変とこれに続くPo‐215のα壊変との相関関係(Po‐215の半減期は1.78msec.)や、ウラン系列におけるBi‐214のβ壊変とこれに続くPo‐214のα壊変との相関関係(Po‐214の半減期は164μsec.)などを解析することができる。
【0005】
具体的な方法として、非特許文献1には、β壊変とα壊変との間の時間間隔の度数分布を表すグラフが開示されている。この度数分布は、ランダムに起こる壊変によるランダム事象成分と、β壊変に続くα壊変による相関事象成分とから成る。従って、この度数分布のグラフは、フラットな成分(ランダム事象成分)に、指数関数的に減少する成分(β壊変に続くα壊変による相関事象成分)が付加された形状になる。なお、この度数分布のグラフの形状を表す式(即ち、フラットな成分を表す定数項と指数関数的に減少する成分を表す指数関数との和)は、非特許文献1に開示されており、広く知られている。
【0006】
また、α壊変とこれに続くα壊変について解析する場合も同様である。即ち、α壊変間の時間間隔の度数分布を表すグラフは、フラットな成分(ランダム事象成分)に、指数関数的に減少する成分(α壊変に続くα壊変による相関事象成分)が付加された形状になる。
【0007】
ここで、非特許文献1に記載の技術では、α壊変とこれに続くα壊変について解析する場合は、LSC(Liquid Scintillation Counter:液体シンチレーションカウンター)のPSD(Pulse‐Shape Discrimination:パルス形状弁別)回路でα線由来のパルス信号を弁別し、計測用チャンネルに入力する。また、β壊変とこれに続くα壊変について解析する場合は、α線由来のパルス信号とβ線由来のパルス信号とが混合された信号を、1つの計測用チャンネルに入力する。
【0008】
【非特許文献1】八幡崇、外3名,「複数入力に対応した高速パルス時間間隔データ処理およびリアルタイム表示システムの構築とその性能評価」,日本原子力学会和文論文誌,2006年,Vol.5,No.3,p.221‐228
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
α線計数率やβ線計数率は、集塵器で吸引される空気の流量たる空気流量や気象条件(温度、湿度、気圧、など)の影響を大きく受け、常に変動している。従って、これらの数値の変動が、空気流量や気象条件によるものなのか、それとも、それ以外の外的要因によるものなのかを識別することは困難である。このため、環境放射線のリアルタイム・モニタリングには使用することができないという問題があった。
【0010】
非特許文献1に記載の技術では、LSCを使用するので、試料作成が煩雑であり、作成に時間を要する(例えば、1時間程度)。このため、後段のデータ処理を行う部分がμsec.オーダーで動作したとしても、試料が1時間程度前のものであるため、環境放射線のリアルタイム・モニタリングには使用することができないという問題があった。
【0011】
更に、非特許文献1に記載の技術では、LSCのPSD回路を使用するので、α線由来のパルス信号とβ線由来のパルス信号とを完全には弁別できない。このため、β壊変とこれに続くα壊変について解析する場合は、α線由来のパルス信号とβ線由来のパルス信号とは完全には弁別できず、これらのパルス信号が混合された信号が1つの計測用チャンネルに入力されるので、バックグラウンドが高い状態で計測することになり、データの精度が低下するという問題があった。また、α壊変とこれに続くα壊変について解析する場合は、β線由来のパルス信号を完全には除去できず、バックグラウンドが高い状態で計測することになり、データの精度が低下するという問題があった。
【0012】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、高精度の環境放射線のリアルタイム・モニタリングを実現するパルス信号データ解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載のパルス信号データ解析装置は、空気を吸引して塵埃をフィルターに捕集する集塵器と、α線及びβ線を別個に検出でき、α線が検出された際にパルス信号が出力されるα線由来パルス信号出力端子及びβ線が検出された際にパルス信号が出力されるβ線由来パルス信号出力端子を備えたフォスウィッチ検出器と、クロック信号を出力するクロック回路、該クロック回路から出力されたクロック信号をカウントして時刻を計時するカウント回路、前記α線由来パルス信号出力端子及び前記β線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号を前記クロック信号のタイミングでラッチするラッチ回路、並びにデータを書き込んだ順に読み出すことができるFIFO(First In, First Out)メモリ回路を備え、少なくとも前記α線由来パルス信号出力端子及び前記β線由来パルス信号出力端子の何れか1つの出力端子にパルス信号が出力された際に、該パルス信号が出力された出力端子を表すデータ及びこの時点で前記カウント回路が計時している時刻を表すデータから成るパルス信号データを前記FIFOメモリ回路に書き込むデータ一時記憶手段と、前記FIFOメモリ回路に書き込まれたパルス信号データを逐次読み出して記憶するメインメモリ及び該メインメモリに記憶されたパルス信号データを読み出し、該パルス信号データによって表されるパルス信号の統計データを作成する演算処理部を備えたデータ処理手段と、前記演算処理部によって作成された統計データを表示する表示手段とを具備したパルス信号データ解析装置であって、前記フォスウィッチ検出器は、前記集塵器のフィルターに捕集された塵埃から放出されるα線及びβ線を検出できるように前記集塵器に固定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項1に記載のパルス信号データ解析装置によれば、大気中に浮遊している塵埃を捕集して、α線とβ線とを別個に検出し、α線に由来するパルス信号とβ線に由来するパルス信号とを別個に出力する。
【0015】
請求項2に記載のパルス信号データ解析装置は、請求項1において、前記演算処理部は、前記β線由来パルス信号出力端子にパルス信号が出力された時刻を基準時刻とし、該基準時刻と該基準時刻から所定のパルス信号抽出時間幅が経過した時刻との間に前記α線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号について、該パルス信号が前記α線由来パルス信号出力端子に出力された時刻と前記基準時刻との時間間隔を算出する処理を、前記β線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号について行い、前記時間間隔の度数分布を求め、該度数分布を表すグラフを作成し、前記表示手段は、前記演算処理部によって作成されたグラフを表示することを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載のパルス信号データ解析装置によれば、β線由来パルス信号出力端子に出力されるパルス信号の出力時刻からα線由来パルス信号出力端子に出力されるパルス信号の出力時刻までの時間間隔のうちで、所定のパルス信号抽出時間幅よりも短いものの度数分布がグラフで表示される。このグラフは、フラットな成分に、指数関数的に減少する成分が付加された形状となる。ここで、このグラフのフラットな部分は、ランダム事象成分であって、β壊変とこれとは無関係な(ランダム事象の)α壊変との間の時間間隔の度数分布に対応する。また、指数関数的に減少する部分は、β壊変に続くα壊変による相関事象成分であって、β壊変とこれに続くα壊変との間の時間間隔の度数分布に対応する。
【0017】
請求項3に記載のパルス信号データ解析装置は、請求項1において、前記演算処理部は、所定のパルス信号カウント時間毎に、該パルス信号カウント時間の間に前記α線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号の数たるα線計数率と前記パルス信号カウント時間の間に前記α線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号のうちで前記β線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号と相関のあるものの数たる相関事象計数率とを求めた後、前記α線計数率と前記相関事象計数率との比率を求め、該比率を表すグラフを作成し、前記表示手段は、前記演算処理部によって作成されたグラフを表示することを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載のパルス信号データ解析装置によれば、α線計数率と相関事象計数率との比率がグラフで表示される。
【0019】
請求項4に記載のパルス信号データ解析装置は、請求項1において、前記演算処理部は、所定のパルス信号カウント時間毎に、該パルス信号カウント時間の間に前記β線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号の数たるβ線計数率と前記パルス信号カウント時間の間に前記α線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号のうちで前記β線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号と相関のあるものの数たる相関事象計数率とを求めた後、前記β線計数率と前記相関事象計数率との比率を求め、該比率を表すグラフを作成し、前記表示手段は、前記演算処理部によって作成されたグラフを表示することを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載のパルス信号データ解析装置によれば、β線計数率と相関事象計数率との比率がグラフで表示される。
【0021】
請求項5に記載のパルス信号データ解析装置は、請求項3又は4において、前記演算処理部は、前記β線由来パルス信号出力端子にパルス信号が出力された時刻を基準時刻とし、該基準時刻と該基準時刻から所定のパルス信号抽出時間幅が経過した時刻との間に前記α線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号について、該パルス信号が前記α線由来パルス信号出力端子に出力された時刻と前記基準時刻との時間間隔を算出する処理を、前記β線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号について行い、前記時間間隔の度数分布を求め、該度数分布からランダム事象成分を減じて前記相関事象計数率を求めることを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載のパルス信号データ解析装置によれば、時間間隔の度数分布からランダム事象成分を減じて相関事象計数率を求める。ここで、ランダム事象成分は、ランダムに起こる壊変によるものであり、具体的には、β壊変とこれとは無関係な(ランダム事象の)α壊変との間の時間間隔の度数分布に対応する。時間間隔の度数分布は、ランダム事象成分と相関事象成分とから成るので、時間間隔の度数分布からランダム事象成分を減じることで、相関事象計数率を求めることができる。
【0023】
請求項6に記載のパルス信号データ解析装置は、請求項3又は4において、前記演算処理部は、前記β線由来パルス信号出力端子にパルス信号が出力された時刻を基準時刻とし、該基準時刻と該基準時刻から所定のパルス信号抽出時間幅が経過した時刻との間に前記α線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号について、該パルス信号が前記α線由来パルス信号出力端子に出力された時刻と前記基準時刻との時間間隔を算出する処理を、前記β線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号について行い、前記時間間隔の度数分布を求め、該度数分布に最小二乗法を適用して前記相関事象計数率を求めることを特徴とする。
【0024】
請求項6に記載のパルス信号データ解析装置によれば、時間間隔の度数分布に最小二乗法を適用して相関事象計数率を求める。即ち、広く知られている時間間隔の度数分布の式(フラットな成分を表す定数項と指数関数的に減少する成分を表す指数関数との和)に、フィッティングの方法として広く知られている最小二乗法を適用してフィッティングを行い、指数関数的に減少する成分に対応する相関事象計数率を求める。
【0025】
請求項7に記載のパルス信号データ解析装置は、空気を吸引して塵埃をフィルターに捕集する集塵器と、α線のみを検出でき、α線が検出された際にパルス信号が出力されるα線由来パルス信号出力端子を備えたフォスウィッチ検出器と、クロック信号を出力するクロック回路、該クロック回路から出力されたクロック信号をカウントして時刻を計時するカウント回路、前記α線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号を前記クロック信号のタイミングでラッチするラッチ回路、及びデータを書き込んだ順に読み出すことができるFIFOメモリ回路を備え、前記α線由来パルス信号出力端子にパルス信号が出力された際に、この時点で前記カウント回路が計時している時刻を表すデータを含むパルス信号データを前記FIFOメモリ回路に書き込むデータ一時記憶手段と、前記FIFOメモリ回路に書き込まれたパルス信号データを逐次読み出して記憶するメインメモリ及び該メインメモリに記憶されたパルス信号データを読み出し、該パルス信号データによって表されるパルス信号の統計データを作成する演算処理部を備えたデータ処理手段と、前記演算処理部によって作成された統計データを表示する表示手段とを具備したパルス信号データ解析装置であって、前記フォスウィッチ検出器は、前記集塵器のフィルターに捕集された塵埃から放出されるα線を検出できるように前記集塵器に固定されていることを特徴とする。
【0026】
請求項7に記載のパルス信号データ解析装置によれば、大気中に浮遊している塵埃を捕集して、α線に由来するパルス信号のみを出力する。
【0027】
請求項8に記載のパルス信号データ解析装置は、請求項7において、前記演算処理部は、前記α線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号間の時間間隔の中から、その値がゼロより大きく且つ所定のパルス信号抽出時間幅より小さいものを抽出して度数分布を求め、該度数分布を表すグラフを作成し、前記表示手段は、前記演算処理部によって作成されたグラフを表示することを特徴とする。
【0028】
請求項8に記載のパルス信号データ解析装置によれば、α線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号間の時間間隔の中から、その値がゼロより大きく且つ所定のパルス信号抽出時間幅より小さいものの度数分布がグラフで表示される。このグラフは、フラットな成分に指数関数的に減少する成分が付加された形状となる。ここで、このグラフのフラットな部分は、ランダム事象成分であって、α壊変とこれとは無関係な(ランダム事象の)α壊変との間の時間間隔の度数分布に対応する。また、指数関数的に減少する部分は、α壊変に続くα壊変による相関事象成分であって、α壊変とこれに続くα壊変との間の時間間隔の度数分布に対応する。
【0029】
請求項9に記載のパルス信号データ解析装置は、請求項1乃至8の何れか1項において、前記データ処理手段は、パーソナルコンピューターであり、前記表示手段は、ディスプレイ装置であることを特徴とする。
【0030】
請求項9に記載のパルス信号データ解析装置によれば、パーソナルコンピューター及びディスプレイ装置で、データ処理手段及び表示手段をそれぞれ実現する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、大気中に浮遊している塵埃を捕集してα線及びβ線を検出するので、煩雑で時間を要する試料作成を行う必要がなくなり、環境放射線のリアルタイム・モニタリングが可能となる。また、α線に由来するパルス信号とβ線に由来するパルス信号とを別個に出力するため、後段のデータ処理手段においてバックグラウンドを低減でき、データの精度を向上させることができる。
【0032】
更に、本発明によれば、β壊変とこれに続くα壊変との間の時間間隔の度数分布が、グラフに指数関数的に減少する形状で表示される。従って、このグラフを用いて、β壊変とこれに続くα壊変との相関関係(例えば、ウラン系列におけるBi‐214のβ壊変とこれに続くPo‐214のα壊変との相関関係)を、解析することができる。
【0033】
更に、本発明によれば、α線計数率と相関事象計数率との比率がグラフで表示されるので、核燃料製造工程でのウランやプルトニウム、核燃料再処理工程での人工的α線放出核種であるネプツニウム、プルトニウムやアメリシウムの施設外への漏洩を検知するリアルタイム・モニタリングが可能となる。これは、従来の技術、即ち、α線計数率の値のみの測定では、空気流量や気象条件の影響を大きく受けるため、環境放射線のリアルタイム・モニタリングは不可能であったが、本発明では、相関事象計数率との比を取ることで、空気流量や気象条件の影響を排除することができるため、α線計数率と相関事象計数率との比率の変動を観測することで、上述のリアルタイム・モニタリングが行えるというものである。
【0034】
更に、本発明によれば、β線計数率と相関事象計数率との比率がグラフで表示されるので、炉心を構成する燃料棒の破損、核分裂核種漏洩を検知するリアルタイム・モニタリングが可能となる。これは、従来の技術、即ち、β線計数率の値のみの測定では、空気流量や気象条件の影響を大きく受けるため、環境放射線のリアルタイム・モニタリングは不可能であったが、本発明では、相関事象計数率との比を取ることで、空気流量や気象条件の影響を排除することができるため、β線計数率と相関事象計数率との比率の変動を観測することで、上述のリアルタイム・モニタリングが行えるというものである。
【0035】
更に、本発明によれば、時間間隔の度数分布からランダム事象成分を減じて相関事象計数率を求めるので、演算処理部の処理量(演算量)が少なくて済み、消費電力を低減することができる。
【0036】
更に、本発明によれば、時間間隔の度数分布に最小二乗法を適用して相関事象計数率を求めるので、高精度なフィッティングが実現でき、演算処理部が求める統計データの精度を向上させることができる。
【0037】
更に、本発明によれば、大気中に浮遊している塵埃を捕集してα線を検出するので、煩雑で時間を要する試料作成を行う必要がなくなり、環境放射線のリアルタイム・モニタリングが可能となる。また、α線に由来するパルス信号のみを出力するため、後段のデータ処理手段においてバックグラウンドを低減でき、データの精度を向上させることができる。
【0038】
更に、本発明によれば、α壊変とこれに続くα壊変との間の時間間隔の度数分布が、グラフに指数関数的に減少する形状で表示される。従って、このグラフを用いて、α壊変とこれに続くα壊変との相関関係(例えば、アクチニウム系列におけるRn‐219のα壊変とこれに続くPo‐215のα壊変との相関関係)を、解析することができる。
【0039】
更に、本発明によれば、市販のパーソナルコンピューターでデータ処理手段を実現するので、新たにデータ処理手段を実現するハードウェアを作成する必要がなく、パルス信号データ解析装置の製作期間の短縮やコストの削減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例は本発明の具体例に過ぎず、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
図1は、本実施例のパルス信号データ解析装置の構成を示すブロック図である。パルス信号データ解析装置1は、集塵器2、フォスウィッチ検出器3、データ一時記憶手段4、パーソナルコンピューター(データ処理手段)5、及びディスプレイ装置(表示手段)6を具備する。
【0042】
集塵器2は、空気を吸引するファン22、及び空気中の塵埃23を捕集するフィルター21を備える。ファン22の動作によって空気は矢印24のように流れ、フィルター21に空気中の塵埃23が捕集される。
【0043】
フォスウィッチ検出器3は、α線及びβ線を別個に検出でき、α線が検出された際にパルス信号が出力されるα線由来パルス信号出力端子31、及びβ線が検出された際にパルス信号が出力されるβ線由来パルス信号出力端子32を備える。フォスウィッチ検出器3は、集塵器2のフィルター21に捕集された塵埃23から放出されるα線及びβ線を検出できるように、集塵器2に固定される。
【0044】
データ一時記憶手段4は、クロック信号を出力するクロック回路41、クロック回路41から出力されたクロック信号をカウントして時刻を計時するカウント回路42、α線由来パルス信号出力端子31及びβ線由来パルス信号出力端子32に出力されたパルス信号をクロック信号のタイミングでラッチするラッチ回路43、並びにデータを書き込んだ順に読み出すことができるFIFO(First In, First Out)メモリ回路44を備える。
【0045】
少なくともα線由来パルス信号出力端子31及びβ線由来パルス信号出力端子32の何れか1つの出力端子にパルス信号が出力された際に、このパルス信号が出力された出力端子を表すデータ及びこの時点でカウント回路42が計時している時刻を表すデータから成るパルス信号データが、FIFOメモリ回路44に書き込まれる。
【0046】
図2は、FIFOメモリ回路44に書き込まれるパルス信号データのデータフォーマットの例を示す図である。符号71及び72は、それぞれ、α線由来パルス信号出力端子31及びβ線由来パルス信号出力端子32にパルス信号が出力されたか否かを表すデータである(パルス信号が出力された場合は1となり、出力されなかった場合は0となる。)。符号73は、カウント回路42が計時している時刻を表すデータである。
【0047】
即ち、同図(a)は、[001・・・01]で表される時刻において、α線由来パルス信号出力端子31にのみ、パルス信号が出力されたことを表している。また、同図(b)は、[010・・・10]で表される時刻において、β線由来パルス信号出力端子32にのみ、パルス信号が出力されたことを表している。また、同図(c)は、[110・・・11]で表される時刻において、α線由来パルス信号出力端子31とβ線由来パルス信号出力端子32の両方に、同時にパルス信号が出力されたことを表している。
【0048】
パーソナルコンピューター5は、メインメモリ51及び演算処理部52を備える。メインメモリ51は、FIFOメモリ44に書き込まれたパルス信号データを逐次読み出して記憶していく。演算処理部52は、メインメモリ51に記憶されたパルス信号データを読み出し、このパルス信号データによって表されるパルス信号の統計データを作成する。
【0049】
演算処理部52の具体的な処理を説明する。演算処理部52は、β線由来パルス信号出力端子32にパルス信号が出力された時刻を基準時刻とし、この基準時刻とこの基準時刻から所定のパルス信号抽出時間幅が経過した時刻との間にα線由来パルス信号出力端子31に出力された全てのパルス信号について、このパルス信号がα線由来パルス信号出力端子31に出力された時刻と基準時刻との時間間隔を算出する処理を、β線由来パルス信号出力端子32に出力された全てのパルス信号について行い、時間間隔の度数分布を求め、この度数分布を表すグラフを作成する。ディスプレイ装置6は、このグラフを表示する。
【0050】
図3を用いて、演算処理部52が時間間隔を算出する処理を説明する。符号B1、B2、及びB3は、β線由来パルス信号出力端子32に出力されたパルス信号であり、符号A1、A2、A3、及びA4は、α線由来パルス信号出力端子31に出力されたパルス信号である。また、Tは、予め定めたパルス信号抽出時間幅である。
【0051】
先ず、パルス信号B1に注目する。パルス信号B1がβ線由来パルス信号出力端子32に出力された時刻t1を基準時刻とする。この基準時刻t1から、所定のパルス信号抽出時間幅Tが経過した時刻t1+Tまでの間で、α線由来パルス信号出力端子31に出力されたパルス信号は、A1のみである。従って、パルス信号B1からパルス信号A1までの時間間隔Δ1を算出する。
【0052】
次に、パルス信号B2に注目する。パルス信号B2がβ線由来パルス信号出力端子32に出力された時刻t2を基準時刻とする。この基準時刻t2から、所定のパルス信号抽出時間幅Tが経過した時刻t2+Tまでの間で、α線由来パルス信号出力端子31に出力されたパルス信号は、無い。従って、パルス信号B2については、時間間隔の算出は行われない。
【0053】
次に、パルス信号B3に注目する。パルス信号B3がβ線由来パルス信号出力端子32に出力された時刻t3を基準時刻とする。この基準時刻t3から、所定のパルス信号抽出時間幅Tが経過した時刻t3+Tまでの間で、α線由来パルス信号出力端子31に出力されたパルス信号は、A3とA4である。従って、パルス信号B3からパルス信号A3までの時間間隔Δ2と、パルス信号B3からパルス信号A4までの時間間隔Δ3とを算出する。なお、A2は、β線由来パルス信号出力端子32に出力されたパルス信号B1、B2、及びB3の何れについても、所定のパルス信号抽出時間幅Tの間に入っていないため、時間間隔の算出には寄与しない。
【0054】
このようにして、β線由来パルス信号出力端子32に出力された全てのパルス信号に対して時間間隔の算出を行い、時間間隔の度数分布を求める。
【0055】
図4は、本実施例のパルス信号データ解析装置1で表示される度数分布のグラフの例を示す図である。このグラフは、横軸が時間間隔、縦軸が度数の柱状グラフであり、パルス信号抽出時間幅Tは10msec.、度数分布の階級幅(階級間隔)は10μsec.である。
【0056】
このように、本実施例のパルス信号データ解析装置1を用いることで、β壊変とこれに続くα壊変との間の時間間隔の度数分布を含むグラフを表示することができる。また、大気中に浮遊している塵埃を捕集してα線及びβ線を検出するので、煩雑で時間を要する試料作成を行う必要がなくなり、環境放射線のリニアタイム・モニタリングが可能となる。更に、フォスウィッチ検出器3からは、α線に由来するパルス信号とβ線に由来するパルス信号とが別個に出力されるため、従来のLSCに比較して、バックグラウンドを低減でき、データの精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0057】
本実施例のパルス信号データ解析装置の装置構成は、実施例1の場合(図1)と同一であるため、その説明は省略する。また、集塵器2、フォスウィッチ検出器3、データ一時記憶手段4、パーソナルコンピューター(データ処理手段)5、及びディスプレイ装置(表示手段)6の構成も、実施例1の場合と同一であるため、その説明は省略する。但し、演算処理部52の処理は、実施例1の場合とは異なるので、この点を以下に説明する。
【0058】
演算処理部52は、所定のパルス信号カウント時間毎に、このパルス信号カウント時間の間にα線由来パルス信号出力端子31に出力されたパルス信号の数たるα線計数率とパルス信号カウント時間の間にα線由来パルス信号出力端子31に出力されたパルス信号のうちでβ線由来パルス信号出力端子32に出力されたパルス信号と相関のあるものの数たる相関事象計数率とを求めた後、α線計数率と相関事象計数率との比率を求め、この比率を表すグラフを作成する。
【0059】
ここで、相関事象計数率は、実施例1のように時間間隔の度数分布のグラフを作成し、このグラフからランダム事象に起因するフラットな部分を除いた部分(即ち、指数関数的に減少する部分)の度数の総和を求めることで、容易に求めることができる。図5は、この方法を示す図である。同図において、ランダム事象に起因するフラットな部分82を除いた部分、即ち、指数関数的に減少する部分81の度数の総和が、相関事象計数率になる。これは、時間間隔の度数分布が、ランダム事象成分と相関事象成分とから成るからである。
【0060】
図6及び7は、本実施例のパルス信号データ解析装置1で表示される、α線計数率と相関事象計数率との比率のグラフの例を示す図である。図6のグラフの横軸は、塵埃の捕集を開始してからの経過時間であり、縦軸は、α線計数率の相関事象計数率に対する比率である。また、パルス信号カウント時間は5min.である。なお、相関事象計数率を求めるための度数分布は、パルス信号抽出時間幅を10msec.とし、階級幅(階級間隔)を10μsec.として求めた。平常時は、集塵器に捕集された塵埃からの放射線の放出(即ち、ラドン娘核種からの放射線の放出)だけが検出されるので、α線計数率の相関事象計数率に対する比率は一定になる。しかし、外的要因によってα線が増加すると、α線計数率の相関事象計数率に対する比率は増加し、符号86で示される部分のように盛り上がる。
【0061】
図7のグラフの横軸は、塵埃の捕集を開始してからの経過時間であり、縦軸は、α線計数率に対する相関事象計数率の比率である(即ち、図7の縦軸は、図6の縦軸の逆数に対応する。)。また、パルス信号カウント時間は5min.である。なお、相関事象計数率を求めるための度数分布は、パルス信号抽出時間幅を10msec.とし、階級幅(階級間隔)を10μsec.として求めた。平常時は、集塵器に捕集された塵埃からの放射線の放出(即ち、ラドン娘核種からの放射線の放出)だけが検出されるので、α線計数率に対する相関事象計数率の比率は一定になる。しかし、外的要因によってα線が増加すると、α線計数率に対する相関事象計数率の比率は減少し、符号87で示される部分のように凹む。
【0062】
従って、α線計数率と相関事象計数率との比率が、図6のように、α線計数率の相関事象計数率に対する比率であっても、図7のように、α線計数率に対する相関事象計数率の比率であっても、α線の増加を検知できるので、少なくとも何れか一方の比率のグラフを表示することで、外的要因によるα線の増加を検知するリアルタイム・モニタリングが可能となる。
【0063】
このように、本実施例のパルス信号データ解析装置1を用いることで、α線計数率と相関事象計数率との比率のグラフを表示することができる。また、大気中に浮遊している塵埃を捕集してα線及びβ線を検出するので、煩雑で時間を要する試料作成を行う必要がなくなり、環境放射線のリニアタイム・モニタリングが可能となる。更に、フォスウィッチ検出器3からは、α線に由来するパルス信号とβ線に由来するパルス信号とが別個に出力されるため、従来のLSCに比較して、バックグラウンドを低減でき、データの精度を向上させることができる。
【実施例3】
【0064】
本実施例のパルス信号データ解析装置の装置構成は、実施例1の場合(図1)と同一であるため、その説明は省略する。また、集塵器2、フォスウィッチ検出器3、データ一時記憶手段4、パーソナルコンピューター(データ処理手段)5、及びディスプレイ装置(表示手段)6の構成も、実施例1の場合と同一であるため、その説明は省略する。但し、演算処理部52の処理は、実施例1の場合とは異なるので、この点を以下に説明する。
【0065】
演算処理部52は、所定のパルス信号カウント時間毎に、このパルス信号カウント時間の間にβ線由来パルス信号出力端子32に出力されたパルス信号の数たるβ線計数率とパルス信号カウント時間の間にα線由来パルス信号出力端子31に出力されたパルス信号のうちでβ線由来パルス信号出力端子32に出力されたパルス信号と相関のあるものの数たる相関事象計数率とを求めた後、β線計数率と相関事象計数率との比率を求め、この比率を表すグラフを作成する。ここで、相関事象計数率は、実施例2の場合と同様にして求めるので、その説明は省略する。
【0066】
本実施例のパルス信号データ解析装置1で出力される、β線計数率と相関事象計数率との比率のグラフは、実施例2の場合(図6及び7)と同様な形状を有するため、その詳細な説明は省略する。即ち、外部要因によってβ線が増加すると、β線計数率の相関事象計数率に対する比率は増加し、図6の符号86で示される部分のように盛り上がり、β線計数率に対する相関事象計数率の比率は減少し、図7の符号87で示される部分のように凹む。
【0067】
従って、実施例2の場合と同様に、β線計数率と相関事象計数率との比率が、β線計数率の相関事象計数率に対する比率であっても、β線計数率に対する相関事象計数率の比率であっても、β線の増加を検知できるので、少なくとも何れか一方の比率のグラフを表示することで、外的要因によるβ線の増加を検知するリアルタイム・モニタリングが可能となる。
【0068】
このように、本実施例のパルス信号データ解析装置1を用いることで、β線計数率と相関事象計数率との比率のグラフを表示することができる。また、大気中に浮遊している塵埃を捕集してα線及びβ線を検出するので、煩雑で時間を要する試料作成を行う必要がなくなり、環境放射線のリニアタイム・モニタリングが可能となる。更に、フォスウィッチ検出器3からは、α線に由来するパルス信号とβ線に由来するパルス信号とが別個に出力されるため、従来のLSCに比較して、バックグラウンドを低減でき、データの精度を向上させることができる。
【実施例4】
【0069】
図8は、本実施例のパルス信号データ解析装置の構成を示すブロック図である。パルス信号データ解析装置1は、集塵器2、フォスウィッチ検出器3、データ一時記憶手段4、パーソナルコンピューター(データ処理手段)5、及びディスプレイ装置(表示手段)6を具備する。集塵器2の構成は、実施例1の場合と同一であるため、その説明は省略する。
【0070】
フォスウィッチ検出器3は、α線のみを検出でき、α線が検出された際にパルス信号が出力されるα線由来パルス信号出力端子31を備える。フォスウィッチ検出器3は、集塵器2のフィルター21に捕集された塵埃23から放出されるα線を検出できるように、集塵器2に固定される。
【0071】
データ一時記憶手段4は、クロック信号を出力するクロック回路41、クロック回路41から出力されたクロック信号をカウントして時刻を計時するカウント回路42、α線由来パルス信号出力端子31に出力されたパルス信号をクロック信号のタイミングでラッチするラッチ回路43、並びにデータを書き込んだ順に読み出すことができるFIFOメモリ回路44を備える。
【0072】
α線由来パルス信号出力端子31にパルス信号が出力された際に、この時点でカウント回路42が計時している時刻を表すデータを含むパルス信号データが、FIFOメモリ回路44に書き込まれる。
【0073】
図9は、FIFOメモリ回路44に書き込まれるパルス信号データのデータフォーマットの例を示す図である。符号73は、カウント回路42が計時している時刻を表すデータである。従って、同図は、[001・・・01]で表される時刻において、α線由来パルス信号出力端子31に、パルス信号が出力されたことを表している。
【0074】
パーソナルコンピューター5は、メインメモリ51及び演算処理部52を備える。メインメモリ51は、FIFOメモリ44に書き込まれたパルス信号データを逐次読み出して記憶していく。演算処理部52は、メインメモリ51に記憶されたパルス信号データを読み出し、このパルス信号データによって表されるパルス信号の統計データを作成する。
【0075】
演算処理部52の具体的な処理を説明する。演算処理部52は、α線由来パルス信号出力端子31に出力された全てのパルス信号間の時間間隔の中から、その値がゼロより大きく且つ所定のパルス信号抽出時間幅より小さいものを抽出して度数分布を求め、この度数分布を表すグラフを作成する。ディスプレイ装置6は、このグラフを表示する。本実施例のパルス信号データ解析装置1で出力される度数分布のグラフは、実施例1の場合(図4)と同様な形状を有するため、その説明は省略する。
【0076】
このように、本実施例のパルス信号データ解析装置1を用いることで、α壊変とこれに続くα壊変との間の時間間隔の度数分布を含むグラフを表示することができる。また、大気中に浮遊している塵埃を捕集してα線を検出するので、煩雑で時間を要する試料作成を行う必要がなくなり、環境放射線のリアルタイム・モニタリングが可能となる。更に、フォスウィッチ検出器3からは、α線に由来するパルス信号のみが出力されるため、従来のLSCに比較して、バックグラウンドを低減でき、データの精度を向上させることができる。
【0077】
以上述べたように、本発明によれば、高精度の環境放射線のリアルタイム・モニタリングを実現するパルス信号データ解析装置を提供することができる。
【0078】
なお、上述の実施例2及び3は、度数分布からランダム事象成分(即ち、グラフのフラットな部分)を減じて相関事象計数率を求めるものであるが、最小二乗法を適用して、指数関数的に減少する部分のフィッティングを行って相関事象計数率を求めてもよい。ここで、最小二乗法はフィッティングの方法として広く知られており、また、度数分布のグラフの形状を表す式も広く知られているので、これらの詳細な説明は省略する。
【0079】
また、上述の実施例1及び4において、度数分布の階級幅(階級間隔)は、10μsec.であったが、本発明は、これに限定されず、他の値(例えば、100μsec.や1msec.、など)であってもよい。更に、本発明のパルス信号データ解析装置は、度数分布の階級幅(階級間隔)を適宜選択可能な構成としてもよい。例えば、1μsec.、10μsec.、100μsec.、1msec.、5msec.、10msec.の中から、適宜選択されるようにしてもよい。
【0080】
また、上述の実施例1乃至4において表示されるグラフの形式は、柱状グラフであったが、本発明は、これに限定されず、他のグラフの形式(例えば、折れ線グラフ)であってもよい。
【0081】
また、本発明において、データ処理手段と表示手段とは、別体構成でも一体構成でもよい。一体構成の場合は、ノート型パーソナルコンピューターのような汎用品を使用してもよいし、本発明に特化した専用機器を新規に製作してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施例1、2、及び3のパルス信号データ解析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1、2、及び3に係るFIFOメモリ回路に書き込まれるパルス信号データのデータフォーマットの例を示す図である。
【図3】本発明の実施例1、2、及び3に係る時間間隔を算出する処理を説明する図である。
【図4】本発明の実施例1のパルス信号データ解析装置で表示される度数分布のグラフの例を示す図である。
【図5】本発明の実施例2及び3に係る相関事象計数率を求める方法を説明する図である。
【図6】本発明の実施例2のパルス信号データ解析装置で表示されるα線計数率と相関事象計数率との比率のグラフの例を示す図である。
【図7】本発明の実施例2のパルス信号データ解析装置で表示されるα線計数率と相関事象計数率との比率のグラフの例を示す図である。
【図8】本発明の実施例4のパルス信号データ解析装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施例4に係るFIFOメモリ回路に書き込まれるパルス信号データのデータフォーマットの例を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1 パルス信号データ解析装置
2 集塵器
21 フィルター
23 塵埃
3 フォスウィッチ検出器
31 α線由来パルス信号出力端子
32 β線由来パルス信号出力端子
4 データ一時記憶手段
41 クロック回路
42 カウント回路
43 ラッチ回路
44 FIFOメモリ回路
5 パーソナルコンピューター(データ処理手段)
51 メインメモリ
52 演算処理部
6 ディスプレイ装置(表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吸引して塵埃をフィルターに捕集する集塵器と、
α線及びβ線を別個に検出でき、α線が検出された際にパルス信号が出力されるα線由来パルス信号出力端子及びβ線が検出された際にパルス信号が出力されるβ線由来パルス信号出力端子を備えたフォスウィッチ検出器と、
クロック信号を出力するクロック回路、該クロック回路から出力されたクロック信号をカウントして時刻を計時するカウント回路、前記α線由来パルス信号出力端子及び前記β線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号を前記クロック信号のタイミングでラッチするラッチ回路、並びにデータを書き込んだ順に読み出すことができるFIFO(First In, First Out)メモリ回路を備え、少なくとも前記α線由来パルス信号出力端子及び前記β線由来パルス信号出力端子の何れか1つの出力端子にパルス信号が出力された際に、該パルス信号が出力された出力端子を表すデータ及びこの時点で前記カウント回路が計時している時刻を表すデータから成るパルス信号データを前記FIFOメモリ回路に書き込むデータ一時記憶手段と、
前記FIFOメモリ回路に書き込まれたパルス信号データを逐次読み出して記憶するメインメモリ及び該メインメモリに記憶されたパルス信号データを読み出し、該パルス信号データによって表されるパルス信号の統計データを作成する演算処理部を備えたデータ処理手段と、
前記演算処理部によって作成された統計データを表示する表示手段と
を具備したパルス信号データ解析装置であって、
前記フォスウィッチ検出器は、前記集塵器のフィルターに捕集された塵埃から放出されるα線及びβ線を検出できるように前記集塵器に固定されていること
を特徴とするパルス信号データ解析装置。
【請求項2】
前記演算処理部は、前記β線由来パルス信号出力端子にパルス信号が出力された時刻を基準時刻とし、該基準時刻と該基準時刻から所定のパルス信号抽出時間幅が経過した時刻との間に前記α線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号について、該パルス信号が前記α線由来パルス信号出力端子に出力された時刻と前記基準時刻との時間間隔を算出する処理を、前記β線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号について行い、前記時間間隔の度数分布を求め、該度数分布を表すグラフを作成し、
前記表示手段は、前記演算処理部によって作成されたグラフを表示すること
を特徴とする請求項1に記載のパルス信号データ解析装置。
【請求項3】
前記演算処理部は、所定のパルス信号カウント時間毎に、該パルス信号カウント時間の間に前記α線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号の数たるα線計数率と前記パルス信号カウント時間の間に前記α線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号のうちで前記β線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号と相関のあるものの数たる相関事象計数率とを求めた後、前記α線計数率と前記相関事象計数率との比率を求め、該比率を表すグラフを作成し、
前記表示手段は、前記演算処理部によって作成されたグラフを表示すること
を特徴とする請求項1に記載のパルス信号データ解析装置。
【請求項4】
前記演算処理部は、所定のパルス信号カウント時間毎に、該パルス信号カウント時間の間に前記β線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号の数たるβ線計数率と前記パルス信号カウント時間の間に前記α線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号のうちで前記β線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号と相関のあるものの数たる相関事象計数率とを求めた後、前記β線計数率と前記相関事象計数率との比率を求め、該比率を表すグラフを作成し、
前記表示手段は、前記演算処理部によって作成されたグラフを表示すること
を特徴とする請求項1に記載のパルス信号データ解析装置。
【請求項5】
前記演算処理部は、前記β線由来パルス信号出力端子にパルス信号が出力された時刻を基準時刻とし、該基準時刻と該基準時刻から所定のパルス信号抽出時間幅が経過した時刻との間に前記α線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号について、該パルス信号が前記α線由来パルス信号出力端子に出力された時刻と前記基準時刻との時間間隔を算出する処理を、前記β線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号について行い、前記時間間隔の度数分布を求め、該度数分布からランダム事象成分を減じて前記相関事象計数率を求めること
を特徴とする請求項3又は4に記載のパルス信号データ解析装置。
【請求項6】
前記演算処理部は、前記β線由来パルス信号出力端子にパルス信号が出力された時刻を基準時刻とし、該基準時刻と該基準時刻から所定のパルス信号抽出時間幅が経過した時刻との間に前記α線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号について、該パルス信号が前記α線由来パルス信号出力端子に出力された時刻と前記基準時刻との時間間隔を算出する処理を、前記β線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号について行い、前記時間間隔の度数分布を求め、該度数分布に最小二乗法を適用して前記相関事象計数率を求めること
を特徴とする請求項3又は4に記載のパルス信号データ解析装置。
【請求項7】
空気を吸引して塵埃をフィルターに捕集する集塵器と、
α線のみを検出でき、α線が検出された際にパルス信号が出力されるα線由来パルス信号出力端子を備えたフォスウィッチ検出器と、
クロック信号を出力するクロック回路、該クロック回路から出力されたクロック信号をカウントして時刻を計時するカウント回路、前記α線由来パルス信号出力端子に出力されたパルス信号を前記クロック信号のタイミングでラッチするラッチ回路、及びデータを書き込んだ順に読み出すことができるFIFOメモリ回路を備え、前記α線由来パルス信号出力端子にパルス信号が出力された際に、この時点で前記カウント回路が計時している時刻を表すデータを含むパルス信号データを前記FIFOメモリ回路に書き込むデータ一時記憶手段と、
前記FIFOメモリ回路に書き込まれたパルス信号データを逐次読み出して記憶するメインメモリ及び該メインメモリに記憶されたパルス信号データを読み出し、該パルス信号データによって表されるパルス信号の統計データを作成する演算処理部を備えたデータ処理手段と、
前記演算処理部によって作成された統計データを表示する表示手段と
を具備したパルス信号データ解析装置であって、
前記フォスウィッチ検出器は、前記集塵器のフィルターに捕集された塵埃から放出されるα線を検出できるように前記集塵器に固定されていること
を特徴とするパルス信号データ解析装置。
【請求項8】
前記演算処理部は、前記α線由来パルス信号出力端子に出力された全てのパルス信号間の時間間隔の中から、その値がゼロより大きく且つ所定のパルス信号抽出時間幅より小さいものを抽出して度数分布を求め、該度数分布を表すグラフを作成し、
前記表示手段は、前記演算処理部によって作成されたグラフを表示すること
を特徴とする請求項7に記載のパルス信号データ解析装置。
【請求項9】
前記データ処理手段は、パーソナルコンピューターであり、
前記表示手段は、ディスプレイ装置であること
を特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のパルス信号データ解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−31151(P2009−31151A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196229(P2007−196229)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 第44回アイソトープ・放射線研究発表会運営委員会 刊行物名 第44回アイソトープ・放射線研究発表会 要旨集 発行年月日 平成19年6月20日〔刊行物等〕発行者名 社団法人 日本アイソトープ協会 刊行物名 RADIOISOTOPES 巻数、号数 第56巻 第7号 発行年月日 平成19年7月15日
【出願人】(591269527)
【出願人】(507254263)
【Fターム(参考)】