説明

パルス幅変調回路及び多相クロック生成回路

【課題】
周波数の微調整を行うことが可能なパルス幅変調回路及び多相クロック生成回路を提供すること。
【解決手段】
本発明にかかるパルス幅変調回路は、基準クロックに基づいて多相クロック信号を生成する多相クロック生成手段と、入力データと、多相クロック信号とに基づいてパルス幅変調信号を生成するパルス幅変調信号生成手段とを備えたパルス幅変調回路であって、多相クロック生成手段は、位相ロックループ回路を有し、多相クロック信号のうち任意のクロック信号を選択し、帰還クロックとして前記位相ロックループ回路に出力するパルス幅変調回路である。このような構成によれば、多相クロック生成回路の生成する多相クロックのクロック周波数が変更可能となり、クロック周波数及びパルス周波数の微調整を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力データに基づいてパルス幅の変調を行なうパルス幅変調回路に関する。また、本発明は、このパルス幅変調回路に用いることのできる多相クロック生成回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、解像度の高さ、静音性、高速性からレーザが搭載されたレーザビームプリンタ(LBP)やデジタルコピー機が広く普及している。これらの機器における印字階調の制御には、主にパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)方式が用いられている。ここで、パルス幅変調方式とは、印字する1ドットごとにその階調(すなわち濃淡)をパルスのH幅で制御するものである。
【0003】
従来のパルス幅変調回路には、大きく分けてカウンタ方式とディレイ方式の2つの方式がある。カウンタ方式は、例えば、特許文献1に開示されている。このカウンタ方式では、基準クロックをカウンタ回路によりカウントし、そのカウント値とディジタルパルスデータ値、即ち入力データとをコンパレータにより比較し、比較の結果、両者が一致したときにパルス幅変調出力、即ちPWM出力を変化させている。
【0004】
ディレイ方式は、例えば、特許文献2に開示されている。このディレイ方式では、基準クロックをディレイ回路に入力し、当該ディレイ回路より出力された複数の遅延信号からディジタルパルスデータ値に対応したものを選択し、PWM出力を変化させている。
【0005】
しかしながら、従来のパルス幅変調回路に用いられているカウンタ方式やディレイ方式によれば、高速、高精度の動作が困難であり、低コスト化に不向きであるという問題がある。
【0006】
例えば、100MHz、8ビット分解能のPWMパルスを生成しようとした場合を想定する。この場合、分解能は、時間換算すると、1s/100MHz/2=40psとなる。これは、カウンタ方式であれば、クロック周期tCK=40ps以下で動作するカウンタ回路が必要であることを意味する。また、ディレイ方式であれば、ディレイ回路を構成するセル1段当りの遅延時間が40ps以下でなければならないことを意味する。従って、現状のCMOSテクノロジーでこのような性能を実現することは困難である。
【0007】
他方、インターリーブ処理を行なうことで、40psの制約を緩和することは可能だが、この場合にはインターリーブの分割数が多くなり(16〜32段)、回路規模の増大や各段の相対バラツキ等、新たな問題が発生する。
【0008】
そこで、このような問題を解決するために、本件出願人は特願2004−196354において多相クロック信号を利用したパルス幅変調回路を提案した。このパルス幅変調回路について簡単に説明する。
【0009】
図14は、先願にかかるパルス幅変調回路の全体を示すブロック図である。当該パルス幅変調回路は、多相クロック生成回路2、同期位置検出回路3、ディジタルパルスデータ信号処理回路4、多相クロック(CLK)選択回路5、パルス幅変調信号生成回路6を備えている。
【0010】
多相クロック生成回路2には、入力端子1より基準クロックが入力される。当該多相クロック生成回路2は、入力された基準クロックに基づいて多相クロック信号を生成し、同期位置検出回路3や多相クロック選択回路5に出力する。当該多相クロック生成回路2は、位相ロックループ回路によって生成された中間クロック信号をさらに位相補間することにより多相クロック信号を生成している。多相クロック信号は、8ビットの分解能の場合には、256(=2)相のクロックを含んでいる。
【0011】
同期位置検出回路3には、多相クロック生成回路2から出力された多相クロック信号と、基準信号である水平同期信号がそれぞれ入力される。当該同期位置検出回路3は、水平同期信号が多相クロック信号中のどのクロックに同期しているかを検出する。同期位置の検出結果を示す同期位置検出信号は、ディジタルパルスデータ信号処理回路4及び多相クロック選択回路5に出力される。
【0012】
ディジタルパルスデータ信号処理回路4には、入力データであるディジタルパルスデータと、同期位置検出回路3から出力された同期位置検出信号が入力される。ディジタルパルスデータ信号処理回路4は、水平同期信号と、PWMパルスの同期を取るため、入力されたディジタルパルスデータを同期位置検出結果に応じてPWMパルスの立ち上がり情報、立ち下がり情報に変換する。立ち上がり情報及び立ち下がり情報を含む信号は、多相クロック選択回路5に出力される。
【0013】
多相クロック選択回路5には、多相クロック生成回路2から出力された多相クロック信号と、同期位置検出回路3から出力された同期位置検出信号と、ディジタルパルスデータ信号処理回路4から出力された立ち上がり情報及び立ち下がり情報を含む信号が入力される。多相クロック選択回路5は、立ち上がり情報及び立ち下がり情報に応じて、多相クロック信号に含まれる信号の中から、任意のクロックを選択する。選択されたクロック、即ち選択クロック信号は、パルス幅変調信号生成回路6に出力される。
【0014】
パルス幅変調信号生成回路6は、多相クロック選択回路5より選択クロック信号が入力される。パルス幅変調信号生成回路6は、当該選択クロック信号に基づいてパルス幅変調信号(PWMパルス)を生成する。このパルス幅変調信号は、例えば、レーザ出力を変調するための信号である。
【0015】
図15は、多相クロック生成回路2の具体的な回路構成例を示す。多相クロック生成回路2では、多相クロック信号を生成する手段として、位相ロックループ(PLL)回路と、位相補間回路の組み合わせを用いている。先願ではPLL回路の発振器のみで256相のクロックを生成すると高速化が困難になり、また位相補間回路のみで256相のクロックを生成すると面積増大及び製造ばらつきによる精度劣化につながることから、双方を組み合わせる構成を採用した。
【0016】
当該多相クロック生成回路2は、図15に示されるように、位相比較器201、チャージポンプ回路202、フィルタ203、VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)回路204、位相補間回路205、出力バッファ206及び遅延回路207を備えている。
【0017】
位相比較器201は、基準クロックが入力され、その基準クロックの立ち上がり波形と遅延回路207を介して入力された帰還クロックの立ち上がり波形との位相比較処理を行ない、位相差のパルス情報を生成する。チャージポンプ回路202は、当該位相比較器201により生成された位相差のパルス情報を電流情報に変換する。
【0018】
チャージポンプ回路202から出力された信号はフィルタ203によってフィルタリングされ、VCO回路204に出力される。VCO回路204は、入力信号に応じて、発振周波数が変化し、中間クロック信号を生成する。この例では、32相の中間クロック信号を生成する。VCO回路204は、差動増幅器が32段直列に接続され、最終段の出力が反転されて初段に入力されるリングオシレータからなる。この32段に直列接続された差動増幅器の各段の出力が32相の中間クロック信号となる。なお、VCO回路204として特許文献3記載のリングオシレータを用いることもできる。
【0019】
VCO回路204において生成された中間クロック信号は、位相補間回路205に入力される。位相補間回路205は、当該中間クロック信号をさらに多相化し、多相クロック信号を生成する。この例では、32相の中間クロック信号を64相のクロック信号へ、当該64相のクロック信号から128相のクロック信号へ、さらに当該128相のクロック信号から256相のクロック信号CLKIP〔0〕〜CLKIP〔255〕へと順に多相化する。なお、位相補間回路205として、特許文献4記載のタイミング差分割回路を用いることもできる。
【0020】
256相に多相化された多相クロック信号は、出力バッファ206を介して出力される。また、この多相クロック信号のうち、CLKIP〔0〕の信号がフィードバックされ、遅延回路207により所定量遅延された後位相比較器201に入力される。
【特許文献1】特開昭56−69929号公報
【特許文献2】特開平6−177723号公報
【特許文献3】特許第3512676号公報
【特許文献4】特開2001−339280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述した先願のパルス幅変調回路によれば、パルス幅の変調を高速、高精度で行うことが可能となり、レーザビームブリンタに応用した場合にも印字階調等を好適に制御できる。ただし、複数のドラムを用いるレーザビームプリンタに用いる場合等には、ドラム間のばらつきを補正するため、パルス周波数の微調整が必要になる場合がある。
【0022】
このような場合、先願の基準クロックと位相比較器201との間及び遅延回路207と位相比較器201との間に可変分周器を設けることにより、分周比を制御することにより出力バッファ206から出力される多相クロックの周波数を調整することも考えられる。
【0023】
しかし、分周回路で周波数の微調整を行おうとすると、切替単位が1周期となるため、位相比較時のジッタ発生が懸念される。例え、多相出力と組み合わせて切替単位を小さく抑えたとしても、周波数の微調整を行うには、非常に高い分周比が必要となり、位相比較周波数低下によるジッタのカットオフ特性の低下とループ帯域の低下によるPLLの応答性の悪化を招く。従って、高精度のPWM出力の基準周波数としては、適さない特性を示すことになる。
【0024】
このようなことから、高精度が要求されるパルス幅変調回路や多相クロック生成回路において、周波数を微調整する機能の実現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明にかかるパルス幅変調回路は、基準クロックに基づいて多相クロック信号を生成する多相クロック生成手段と、入力データと、前記多相クロック生成手段により生成された多相クロック信号とに基づいてパルス幅変調信号を生成するパルス幅変調信号生成手段とを備えたパルス幅変調回路であって、前記多相クロック生成手段は、位相ロックループ回路を有し、前記多相クロック信号のうち任意のクロック信号を選択し、帰還クロックとして前記位相ロックループ回路に出力するパルス幅変調回路である。このような構成によれば、多相クロック生成回路の生成する多相クロックのクロック周波数が変更可能となり、周波数の微調整を行うことが可能となる。
【0026】
前記クロック選択回路は、前記多相クロック生成手段により生成された多相クロック信号から任意のクロック信号を選択する第1のセレクタと、前記第1のセレクタの選択したクロック信号と位相の異なるクロック信号を選択する第2のセレクタと、前記第1のセレクタの選択したクロック信号と前記第2のセレクタの選択したクロック信号に基づいて最終的な選択クロックを出力するゲート回路を設けてもよい。このようにすることにより、ハザードの発生を抑えることが可能となる。
【0027】
さらに、本発明に係る多相クロック生成回路は、基準クロックと帰還クロックとを比較し比較結果に応じた位相差信号を出力する位相比較器と、前記位相差信号に基いて発振周波数を制御し多相クロック信号を生成する多相クロック生成部と、前記基準クロックの一定周期毎に前記多相クロック信号の中から前記帰還クロックを選択する演算を行い、前記演算結果に基づいて帰還クロックを切り替えるクロック選択回路を備えている。このような構成によれば、基準クロックの周波数を元に容易に多相クロックの周波数を微調整することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、周波数の微調整を行うことが可能なパルス幅変調回路及び多相クロック生成回路を提供することができる。また、本発明によれば、多相クロックの周期とほぼ同じ周期で基準クロックと位相比較を行うことができるので、出力クロック、出力パルスの精度を保ったまま、周波数の微調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
発明の実施の形態1.
本発明にかかるパルス幅変調回路は、例えば、レーザ出力変調用に用いられる。図1に本発明の一実施形態にかかるパルス幅変調回路の全体回路構成を示す。このパルス幅変調回路の構成は、多相クロック生成回路12以外は、図14の先願発明のパルス幅変調回路とほぼ同じである。先願発明と同一の部分は、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0030】
多相クロック生成回路12は、後述する周波数微調整機能が備わってる点で、先願発明の多相クロック生成回路2とは異なっている。しかし、多相クロック生成回路12は、入力端子1より基準クロックが入力され、入力された基準クロックに基づいて多相クロック信号を生成し、同期位置検出回路3や多相クロック選択回路5に出力する点では、先願発明の多相クロック生成回路2と同様である。また、位相ロックループ回路によって生成された中間クロック信号をさらに位相補間することにより多相クロック信号を生成している点も先願発明の多相クロック生成回路2と同様である。
【0031】
以下、多相クロック生成回路12の回路構成及び動作について、さらに詳細に説明する。
【0032】
図2は一実施形態の多相クロック生成回路のブロック図である。この多相クロック生成回路の構成は、遅延回路207が、クロック選択回路1207に置き換わっていることを除いて、図15の先願に開示された多相クロック生成回路とほぼ同一である。先願と同一の部分は、同一の符号を付し、説明は省略する。先願の多相クロック生成回路では、出力バツフア206から出力される多相クロック信号のうち、CLKIP[0]信号のみが常にフィードバックされ、遅延回路207を介して位相比較器201に入力されていたのに対して、この実施形態では出力バツフア206から出力される256相の多相クロックがクロック選択回路1207に入力される。さらに、クロック選択回路1207に入力された256相のクロックのうち、選択された1つのクロックが位相比較回路201に入力される点で 先願とは異なっている。
【0033】
クロック選択回路1207の構成について図3に示すブロック図を用いてより詳細に説明する。クロック選択回路1207は、出力バッファ206から入力した多相クロックから指定した相のクロックを選択し、選択したクロックに基づいて最終的なクロック信号を生成し、位相比較器1201に対して出力する。クロック選択回路1207は、デコーダ1208、1210、セレクタ1209、1211、ゲート回路1212、コントロール回路1213、加算器1214を備える。このうち、コントロール回路1213は、256相の多相クロックのうち、どの位相のクロックを選択クロックとして選択し、位相比較器201に帰還させるかを決定する。それ以外のデコーダ1208、1210、セレクタ1209、1211、ゲート回路1212、加算器1214は、選択クロックの切換時にハザードが生じないようにコントロール回路1213が決定した位相のクロックに選択クロックを切り替える。
【0034】
コントロール回路1213は、基準クロック入力端子1から入力された基準クロックの一定周期毎に、外部から与えられた変調設定に従って次の選択クロックを決定するための演算を行い選択信号を生成する。選択信号は選択クロック1の立ち下がりに同期してデコーダ1210及び加算器1214に対して出力される。
【0035】
デコーダ1210は、コントロール回路1213から入力した8ビットの信号を256ビットの信号へデコードする。セレクタ1211は、位相補間回路1205から入力した256相の多相クロックの信号のうちデコーダ1210から入力した値に該当する相のクロックの信号を選択し、選択クロック1としてゲート回路1212及びコントロール回路1213に対して出力する。
【0036】
加算器1214は、コントロール回路1213から入力した選択信号を一定の値加算し、加算した結果をデコーダ1208に対して出力する。例えば、位相を90度シフトする場合は、256×90/360=64の値を加算する。
【0037】
デコーダ1208は、加算器1214から入力した8ビットの信号を256ビットの信号へデコードする。セレクタ1209は、位相補間回路1205から入力した多相クロックの信号のうちデコーダ1208から入力した値に該当する相のクロックの信号を選択し、選択クロック2としてゲート回路1212に対して出力する。
【0038】
ゲート回路1212は、セレクタ1211から入力した選択クロック1とセレクタ1209から入力した選択クロック2に基づいて最終的な選択クロックを出力する。ゲート回路1212は図4のような構成例が考えられる。
【0039】
ゲート回路1212を図4に示す構成にした場合、選択クロック1、選択クロック2、最終的な選択クロックの関係は図5のタイミングチャートに示すようになる。この構成をにより周波数の微調整を行うことが可能である。また、同様の結果が得られる構成であればゲート回路1212の構成は図4の構成に限定されない。
【0040】
このようにデコーダ及びセレクタを2つ有し、2つの選択クロックからゲート回路により最終的な選択クロックを出力する理由について説明する。図6は、クロック選択回路1207内で出力される各クロックを表すタイミングチャートである。
【0041】
図6で、セレクタ1211より出力される選択クロックを「選択クロック1」から「切替先の選択クロック1」に切り替えるとする。コントロール回路1213により「選択クロック1」の立下りに同期してクロックの切替が行われるが、実際には回路の遅延時間があるので、セレクタ1211からは、「切替時の選択クロック1」の様な波形が出力される。また、切替時の瞬間、デコーダ1210の出力は不定になる。位相比較器201は、基準クロックの立ち上がり波形とクロック選択回路1207によって選択された帰還クロック(選択クロック)の立ち上がり波形を比較するので、この選択クロック切替時にハザードがあると誤動作の原因となる。したがって、このときに発生するハザードをマスクする必要が生じる。
【0042】
そのため、コントロール回路1213から出力された選択信号に加算器1214により位相をシフトするための値を加算する。ここでは90度シフトさせたが、ハザードをマスクすることのできる範囲であれば位相は90度でなくてもよい。
【0043】
位相を90度シフトさせた選択クロックは、「選択クロック2」としてセレクタ1209より出力される。このときのクロックは図6の90度シフトした選択クロック1に示される。
【0044】
ゲート回路1212は、選択クロック1と選択クロック2を組み合わせ、選択クロック1から、クロック切替時にもハザードが生じることなく、かつ、位相比較に必要なクロックの立ち上がり部分を抽出する。そして、その立ち上がり部分が抽出された選択クロック1を位相比較器201に帰還される最終選択クロック(帰還クロック)として出力する。なお、選択クロック1が切り替わるとき、選択クロック2も加算器1214の演算遅延時間だけ遅れて切り替わる。選択クロック2が切り替わる瞬間のデコーダ1208の出力は不定となるが、選択クロック1の切り替わりから加算器1214の演算遅延時間だけ遅れて切り替わるので選択クロック1と選択クロック2が同時に不定となることはないので、ゲート回路121からハザードが出力されることはない。このようにして、切り替え時に発生するハザードをマスクすることが可能となる。
【0045】
続いて、図7に示すブロック図を用いて、コントロール回路1213の構成について説明する。コントロール回路1213は、2分周回路1215、1216、ハイ/ロー検出回路1217、選択信号切替回路1218を備える。
【0046】
2分周回路1215,1216は、基準クロック入力端子1から入力された基準クロックを4分周したクロックq1を生成する。ハイ/ロー検出回路1217は、クロックq1と選択クロック1から基準クロックの2周期毎に選択クロック1に同期したクロックflagを選択信号切替回路1218に出力する。選択回路切替回路1218は、外部から入力される周波数可変極性データ及び周波数可変幅データに基き、flag信号が入力するたびに周波数可変極性データのプラス、マイナスに従って現在の選択信号を示す基数に周波数可変幅データを加算または減算し、次の選択クロツクを決定する。なお、ここでは、周波数可変幅データは4ビットのデータである。なお、周波数可変幅データ、周波数可変極性データは、マイクロコンピュータ等により設定してもよい。
【0047】
2分周回路1215は、基準クロック入力端子1から入力された基準クロックを入力し、入力した基準クロックを2分周したクロックを生成する。2分周回路1216は、基準クロックを2分周したクロックを入力しさらに2分周する。その結果、2分周回路1216は基準クロックを4分周したクロックが生成される。2分周回路1216は生成した4分周クロックをハイ/ロー検出回路1217に対して出力する。2分周回路1215、1216の回路構成は図8に示すようになる。また、このとき生成される2分周、4分周のクロックは図9に示すようになる。
【0048】
ハイ/ロー検出回路1217は、選択クロック1及び2分周回路1215、1216により生成された4分周回路を入力し、フラグ信号を生成する。ハイ/ロー検出回路1217の回路構成は図10に示すようになる。選択信号切替回路1218は入力した選択クロック1、フラグ信号、周波数可変極性及び周波数可変幅に基づいて選択信号を生成する。選択信号切替回路1217は、生成した選択信号はデコーダ1210及び加算器1214に対して出力する。
【0049】
図11は、ハイ/ロー検出回路1217に入出力される信号を示すタイミングチャートである。図11に示すq1は、入力される4分周クロックを、CLKIPは、入力される選択クロック1を、flagは、出力されるフラグ信号を示す。ハイ/ロー検出回路1217は、フラグ信号を選択信号切替回路1218に対して出力する。
【0050】
選択信号切替回路1218は選択クロック1、フラグ信号、周波数可変極性及び周波数可変幅を入力する。入力したフラグ信号がHiの間に選択クロック1が立下るタイミングで相の切替を行う。このときの切り替える幅は入力した周波数可変幅により決定される。ここでは周波数可変幅を4ビットにしているので、最大16相まで切替を行うことが可能となる。また、周波数可変極性により切替の正負を設定することも可能である。
【0051】
図12は、ハイ/ロー検出回路1217に入出力される信号と選択信号切替回路1218から出力される選択信号の関係を示すタイミングチャートである。図12の最下段に記された数字が選択信号を示す。周波数可変幅が11の場合、選択信号は、フラグ信号がHiの間に選択クロック1が立下るタイミングで0から11へ、11から22へと相が切り替わる。
【0052】
次に、コントロール回路1213のさらに詳細な回路の構成を説明する。図16は、コントロール回路1213の具体的な回路図である。ここで、フリップフロップFF1、FF2は、それぞれ図7の2分周回路1215,1216に、フリップフロップFF3、FF4とエクスクルーシブオアゲートEXはハイ/ロー検出回路1217に、フリップフロップFF5、加減算器ALU、セレクタSEL、フリップフロップFF6は選択信号切替回路1218に相当する。ここで、FF6には、現在の選択クロックの番号が格納されており、Flag信号が入力されるたびにこのFF6に格納された値に周波数可変幅設定データSを「周波数可変極性」のプラスマイナスに従って、ALUで加算または減算を行い、その演算結果を再びFF6に格納する。セレクタSELは、flag信号がハイレベルのとき、D1入力を、flag信号がローレベルのときD0入力をFF6へ出力する。
【0053】
次に、図16の回路動作をタイミングチャート図17を用いて説明する。最初FF6には、現在のクロック選択番号値C(8ビットデータ)が格納されているとする。最初の基準クロック2分周信号FF1出力の立ち上がりで、外部から設定された周波数可変幅設定データS(4ビット)は、FF5にラッチされる。するとALUでは、周波数可変極性データの正負(0または1)に従って、クロック選択番号値Cに周波数可変幅設定データSが加算、減算される。ここでは、周波数可変極性データ正の値0を示しているものとするとALUからはC+Sの値が出力される。次に、flag信号がハイレベルになるとセレクタSELは、そのC+Sの値をFF6に出力する。FF6は、選択クロック1の立下りでその値をラッチし、クロック選択番号は、CからC+Sに更新される。以下、同様に、flagがハイレベルのとき、選択クロック1がたち下がるとそのたびに選択クロック番号はSづつ加算されていく。なお、ALUはオーバーフロー、アンダーフローを無視して加算減算を行うので、FF6には、加算減算結果を256で除した余の数が選択クロック番号として格納されることになる。
【0054】
このような構成により、本発明にかかるパルス幅変調回路は、多相クロック生成回路が周波数を変更することが可能となり、その結果周波数の微調整を行うことが可能となる。
【0055】
発明の実施の形態2.
上述の例では、コントロール回路の切替サイクルが2、周波数可変幅設定が4ビットであったが、これを図13に示すような構成にしてもよい。図13の構成では、切替サイクル2、周波数可変幅が4ビット、8ビットの組み合わせとなる。
【0056】
図13に示すコントロール回路は、2分周回路1219、1220、ハイ/ロー検出回路1221、選択信号切替回路1222、カウンタ1223、比較回路1224を備える。2分周回路1219、1220、ハイ/ロー検出回路1221の処理は発明の実施の形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0057】
カウンタ1223は、2分周回路1219からのクロック信号の入力に応じてカウントを行う。カウンタ1223はカウントした値を比較回路1224に対して出力する。
【0058】
比較回路1224は、カウンタ1223から入力した値と予め定められた微調幅の値を比較し、大小の判定結果により、選択信号切替回路1222に対して粗調幅を+1、または−1する制御を行う。
【0059】
選択信号切替回路1222は、周波数可変極性、粗調幅に応じて選択信号を出力する。図13の粗調幅は、比較回路1224の比較結果により+1、または−1される場合がある点で発明の実施の形態1における周波数可変幅とは異なっている。
【0060】
次に、実施の形態2のコントロール回路の詳細の構成と動作を回路図図18とタイミングチャート図19を用いて説明する。説明が冗長になるのを避けるため、実施の形態1と同一の回路については、説明を省略する。図18は、図16と比べて、8ビットのカウンタCNT(図13の1223)、比較回路CMP(図13の1224)、4ビットの粗調整幅設定値にCMPの比較結果により1または0を加減算する補助加減算器ALU2をさらに備えている。
【0061】
カウンタCNTは、選択信号を切り替える毎に一つずつカウントアップする8ビットのカウンタである。具体的には基準クロックの2分周信号をカウントする。カウンタCNTはオーバーフローした場合、ゼロに戻ってカウンタを続行する。
比較回路CMPは、8ビットの微調幅設定値とカウンタの計数値を比較し、微調幅設定値A>カウンタの計数値Bのとき1を出力し、微調幅設定値A=<カウンタの計数値Bのとき0を出力する。
【0062】
補助加減算器ALU2は、周波数可変極性データにより、FF5が出力する粗調幅設定値に比較回路CMPの出力を加減算する。結果として、カウンタCNTのカウント値が微調幅設定値より小さいときは、Flag信号の入力がある毎に選択信号を粗調幅設定値S+1だけ加算または、S−1だけ減算して更新し、カウンタCNTのカウント値が微調幅設定値に等しいかより大きいときは、Sだけ加減算して選択信号を更新することになる。
【0063】
このようにすることにより、粗調により、広い周波数の調整範囲を確保しつつ、微調により、より微細な周波数の調整を行うことができる。なお、比較回路CMPに外部から与えられる8ビットの微調幅設定値についても、マイクロコンピュータ等により設定することができる。
【0064】
その他の発明の実施の形態.
上述の例では、多相クロック生成回路は位相補間回路により多相クロックを生成したが、補間以外の手段により多相クロックを生成するようにしてもよい。また、上述した実施の形態では、基準クロックの2周期毎に選択クロックを更新する例を示したが、ハイロー検出回路1217、1221、カウンタ1223に入力されるクロックを基準クロックから分周する回路の分周比を変えることにより、基準クロックの任意の周期毎に選択クロックを更新する構成とすることができる。さらに、ここの分周回路自体をプログラマブルな分周回路として、これも周波数可変幅データ、周波数可変極性と同様にマイクロコンピュータ等により設定するようにしてもよい。さらに、本発明による多相クロック生成回路は、外部に出力するクロックの相数は必要な相数のクロックだけ出力すればよく、1相しか必要なければ1相のクロックを出力するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態にかかるパルス幅変調回路の全体を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる多相クロック生成回路を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるクロック選択回路の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるゲート回路の例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるゲート回路の入出力クロックの例を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の一実施形態にかかるクロック選択回路の入出力クロックの例を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明の一実施形態にかかるコントロール回路の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる2分周回路の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる2分周回路の入出力クロックの例を示すタイミングチャートである。
【図10】本発明の一実施形態にかかるハイ/ロー選択回路の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかるコントロール回路の入出力クロックの例を示すタイミングチャートである。
【図12】本発明の一実施形態にかかるコントロール回路の入出力クロックの例を示すタイミングチャートである。
【図13】本発明の実施の形態2にかかるコントロール回路の構成を示すブロック図である。
【図14】先願におけるパルス幅変調回路の全体を示すブロック図である。
【図15】先願における多相クロック生成回路を示すブロック図である。
【図16】本発明の一実施形態のコントロール回路の回路図である。
【図17】本発明の一実施形態のコントロール回路のタイミングチャートである。
【図18】本発明の実施の形態2のコントロール回路の回路図である。
【図19】本発明の実施の形態2のコントロール回路のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1 基準クロック入力端子
2 多相クロック生成回路
3 同期位置検出回路
4 ディジタルパルスデータ信号処理回路
5 多相クロック選択回路
6 パルス幅変調信号生成回路
7 ディジタルパルスデータ入力端子
8 出力端子
12 多相クロック生成回路
201 位相比較器
202 チャージポンプ回路
203 フィルタ
204 VCO回路
205 位相補間回路
206 出力バッファ
207 遅延回路
1207 クロック選択回路
1208 デコーダ
1209 セレクタ
1210 デコーダ
1211 セレクタ
1212 ゲート回路
1213 コントロール回路
1214 加算器
1215 2分周回路
1216 2周回路
1217 選択信号切替回路
1219 2分周回路
1220 2分周回路
1221 ハイ/ロー検出回路
1222 選択信号切替回路
1223 カウンタ
1224 比較回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロックに基づいて多相クロック信号を生成する多相クロック生成手段と、
入力データと、前記多相クロック生成手段により生成された多相クロック信号とに基づいてパルス幅変調信号を生成するパルス幅変調信号生成手段とを備えたパルス幅変調回路であって、
前記多相クロック生成手段は、位相ロックループ回路を有し、前記多相クロック信号のうち任意のクロック信号を選択し、帰還クロックとして前記位相ロックループ回路に出力するクロック選択回路を有するパルス幅変調回路。
【請求項2】
前記多相クロック生成手段では、前記位相ロックループ回路に含まれる電圧制御発振器の後段に位相補間回路が設けられ、当該位相補間回路の出力信号が多相クロック信号として出力されることを特徴とする請求項1記載のパルス幅変調回路。
【請求項3】
前記クロック選択回路は、
前記多相クロック生成手段により生成された多相クロック信号から任意のクロック信号を選択する第1のセレクタと、
前記第1のセレクタの選択したクロック信号と位相の異なるクロック信号を選択する第2のセレクタと、
前記第1のセレクタの選択したクロック信号と前記第2のセレクタの選択したクロック信号に基づいて最終的な選択クロックを出力するゲート回路を有することを特徴とする請求項1または2記載のパルス幅変調回路。
【請求項4】
前記第2のセレクタは、
前記第1のセレクタの選択したクロック信号をシフトさせるシフト手段を有することを特徴とする請求項3記載のパルス幅変調回路。
【請求項5】
前記クロック選択回路は、
前記第1のセレクタ及び第2のセレクタの選択するクロック信号の設定を行うコントロール回路を有することを特徴とする請求項3または4記載のパルス幅変調回路。
【請求項6】
前記パルス幅変調信号は、レーザ出力を変調するための信号であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のパルス幅変調回路。
【請求項7】
前記クロック選択回路は、基準クロックの一定周期毎に帰還クロックを決定するための演算を行う演算回路を含むことを特徴とする請求項1記載のパルス幅変調回路。
【請求項8】
前記クロック選択回路は、前記演算結果を保持するレジスタをさらに備え、前記帰還クロックを決定するための演算は、レジスタに保持された値に所定値を加減算し、選択するクロックを決定する演算であることを特徴とする請求項7記載のパルス幅変調回路。
【請求項9】
基準クロックと帰還クロックとを比較し比較結果に応じた位相差信号を出力する位相比較器と、前記位相差信号に基いて発振周波数を制御し多相クロック信号を生成する多相クロック生成部と、前記基準クロックの一定周期毎に前記多相クロック信号の中から前記帰還クロックを選択する演算を行い、前記演算結果に基づいて帰還クロックを切り替えるクロック選択回路を備えることを特徴とする多相クロック生成回路。
【請求項10】
前記クロック選択回路は、前記演算結果を保持する選択クロック番号保持レジスタと、前記基準クロックの一定周期毎に前記レジスタに保持された値に予め設定された周波数可変幅設定値を加減算する演算回路とを備えたことを特徴とする請求項9記載の多相クロック生成回路。
【請求項11】
前記クロック選択回路は、前記帰還クロックの立ち上がり立下りエッジのうち前記位相比較器で基準クロックと比較しない方のエッジで帰還クロックを切り替えるクロック切換回路を含むことを特徴とする請求項9または10記載の多相クロック生成回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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