説明

パワーステアリング装置

【課題】簡単な構造でシミーを効率的に抑制することができるパワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】パワーアシストバルブ8とパワーシリンダ2Pとを連通した2本のシリンダ配管2C1、2C2の途中に2連式開閉バルブ10を設ける。2連式開閉バルブ10は、第1シリンダ配管2C1と第2シリンダ配管2C2とに跨がって取り付け、両シリンダ配管2C1、2C2を同時に開閉する簡単な構造となる。ハンドル3が中立状態で制御油圧が発生されない状態での高速走行時に、第1、第2シリンダ配管2C1、2C2を二連式開閉バルブ10で遮断し、パワーシリンダ2Pの第1、第2油室2P2、2P3内の作動油を封じ込めてラック21をロック状態とする。これにより、操舵輪6に入力された路面振動がハンドル3に伝わってシミーとなるのを抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧によりアシスト力を発生させるパワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワーステアリング装置のシミー対策として、パワーアシストバルブ(制御弁)のバルブシャフトとバルブボディとの間に、作動油を絞り制御する第1および第2の制御部を設けた構造が公知である(例えば、特許文献1参照)。第1制御部は、センタオープンバルブとなる4箇所の可変絞りで構成してあり、第2制御部は、センタクローズバルブとなる2箇所の可変絞りと、セミセンタオープンバルブとなる2箇所の可変絞りと、で構成してある。また、第2制御部には、パワーシリンダの両油室を連通および遮断するバイパス用電磁弁を設けてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−10027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来のパワーステアリング装置では、パワーアシストバルブに、センタオープンバルブ、センタクローズバルブおよびセミセンタオープンバルブの3種類の可変絞りを設けてある。また、これ以外にバイパス用電磁弁を設けてパワーシリンダの両油室に供給する油路および油圧をコントロールするため、構造が複雑になるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、従来の問題点に鑑みて、簡単な構造でシミーを効率的に抑制することができるパワーステアリング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパワーステアリング装置にあっては、ハンドル操作に応じてオイルポンプから送られる作動油の油圧を制御するパワーアシストバルブと、前記パワーアシストバルブとパワーシリンダにピストンを介して分割された2つの油室とにそれぞれ連通し、前記パワーアシストバルブの制御油圧をハンドルの転舵方向に応じて前記両油室のうち一方の油室に供給してアシスト力を発生させるとともに、他方の油室の作動油をリザーバタンク側に戻す2経路のシリンダ配管と、を備えている。前記2経路のシリンダ配管の途中に、所定の制御油圧以下のときに油路を遮断する遮断機構を設けたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2経路のシリンダ配管の途中に設けた遮断機構で、所定の車速以上かつ所定の制御油圧以下のときに油路を遮断することにより、パワーシリンダの両油室に作動油を封じ込めてステアリングギアをロック状態にできる。これにより、簡単な構造でシミーを効率的に抑制することができる
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明にかかるパワーステアリング装置の一実施形態を概略的に示す正面図である。
【図2】図2は、本発明に用いられる遮断機構の作動状態を示し、(a)は2経路のシリンダ配管を全開した状態の断面図、(b)は2経路のシリンダ配管を全閉した状態の断面図である。
【図3】図3は、図2に示す遮断機構を開閉する信号を示し、(a)はシリンダ配管に送られる作動油の圧力を示すグラフ、(b)は車速センサでの速度を示すグラフである。
【図4】図4は、図2に示す遮断機構で2経路のシリンダ配管を全閉した状態での作動油の流れを示す説明図である。
【図5】図5は、図2に示す遮断機構で2経路のシリンダ配管を全開した状態での作動油の流れを示し、(a)は一方のシリンダ配管に圧力が発生した場合の説明図、(b)は他方のシリンダ配管に圧力が発生した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明にかかるパワーステアリング装置1を示し、本実施形態ではラックアンドピニオン式のパワーステアリング装置1に例をとって説明するものとする。
【0011】
即ち、本実施形態のパワーステアリング装置1は、ステアリングギア2がラック21とピニオン22を有するラックアンドピニオン式となっており、ハンドル3の転舵(回転)を、ステアリングシャフト31とピニオン22を介してラック21の車幅方向移動に変換するようになっている。ラック21の車幅方向移動は、タイロッド4およびナックルアーム5を介して操舵輪6に伝達して、この操舵輪6を操舵するようになっている。このとき、ステアリングシャフト31には、オイルポンプ7から送られる作動油を制御するパワーアシストバルブ8が備わっている。
【0012】
一方、ステアリングギア2には、ラックハウジング23内にパワーシリンダ2Pを有している。このパワーシリンダ2Pは、ラック21に固定されたピストン2P1の車両左側に配置した第1油室2P2と、車両右側に配置した第2油室2P3とを備える。そして、パワーアシストバルブ8とパワーシリンダ2Pの両油室2P2、2P3とを、2経路となる第1および第2の2本のシリンダ配管2C1、2C2で連通してある。即ち、第1シリンダ配管2C1は、パワーアシストバルブ8と第1油室2P2とを連通し、第2シリンダ配管2C2は、パワーアシストバルブ8と第2油室2P3とを連通している。
【0013】
パワーアシストバルブ8は、ハンドル3の転舵方向、転舵速度および転舵負荷等に応じて、オイルポンプ7から送られる作動油を制御するようになっている。
【0014】
即ち、ハンドル3を左旋回する左転舵時(図1中矢印L)には、オイルポンプ7から送られる作動油を制御したのち第1シリンダ配管2C1を介して第1油室2P2に供給する。これにより、ピストン2P1は第2油室2P3側に押圧され、ラック21を車両右側(図中左方)に移動させるアシスト力を付与する。このとき、第2油室2P3内の作動油は、第2シリンダ配管2C2からパワーアシストバルブ8を経由してリザーバタンク9に戻される。
【0015】
これとは逆に、右旋回時(図1中矢印R)には、パワーアシストバルブ8の制御油圧を第2シリンダ配管2C2を介して第2油室2P3に供給し、ラック21を車両左側(図中右方)に移動させるアシスト力を付与する。このとき、第1油室2P2内の作動油は、第1シリンダ配管2C1からパワーアシストバルブ8を経由してリザーバタンク9に戻される。
【0016】
また、パワーアシストバルブ8の制御油圧は、転舵速度および転舵負荷が大きい程高くなるように制御して、大きなアシスト力が得られるようになっている。
【0017】
これに対して、詳細に後述するように、例えば80Km/h以上での高速走行時でハンドル3が中立状態、つまりハンドル3を切っていないときは、制御油圧は0.5Pa以下になっていずれの方向にもアシスト力を発生しないようになっている。これにより、ステアリングギア34をマニュアルギア状態としてハンドル3を重くし、高速直進走行でのふらつきを抑えることができるようになっている。
【0018】
ところが、このマニュアルギア状態では、操舵輪6から入力される路面振動が、ナックルアーム5およびタイロッド4からラック21に伝わり、更に、このラック21からピニオン22およびステアリングシャフト31を介してハンドル3に伝わって、これがシミーの原因となる。
【0019】
ここで、本実施形態では、パワーアシストバルブ8とパワーシリンダ2Pとを連通した2本のシリンダ配管2C1、2C2の途中に、所定の車速および所定の制御油圧で油路を遮断する遮断機構としての2連式開閉バルブ10を設けてある。本実施形態では、この2連式開閉バルブ10がシミー対策用のユニットとなる。
【0020】
2連式開閉バルブ10は、図2に示すように、第1シリンダ配管2C1と第2シリンダ配管2C2とに跨がって取り付けられ、両シリンダ配管2C1、2C2を同時に開閉するようになっている。この2連式開閉バルブ10は、第1スプール11と第2スプール12とを備えており、これら2つのスプール11、12を同軸上に配置して、中空円筒状のバルブハウジング13内に形成したスリーブに摺動自在に収納した構造となっている。
【0021】
バルブハウジング13は、第1スプール11を配置した一端側(図中上部)に、第1シリンダ配管2C1を接続する第1連通孔13aをバルブハウジング13の径方向に貫通して設けてある。また、第2スプール12を配置した他端側(図中下部)に、同様に、第2シリンダ配管2C2を接続する第2連通孔13bをバルブハウジング13の径方向に貫通して設けてある。そして、第1連通孔13aを第1スプール11の摺動により開閉し、第2連通孔13bを第2スプール12の摺動により開閉するようになっている。
【0022】
即ち、第1、第2スプール11、12は、それぞれの軸方向中間部に、第1、第2連通孔13a、13bの開口径に略相当する幅をもって周溝部11a、12aを形成してある。そして、図2(a)に示すように、周溝部11a、12aが第1、第2連通孔13a、13bと合致することにより、第1、第2連通孔13a、13bがそれぞれ連通(開弁)状態となる。
【0023】
一方、図2(b)に示すように、周溝部11a、12aに隣接したランド部11b、12bが第1、第2連通孔13a、13bに位置することにより、これら第1、第2連通孔13a、13bがそれぞれ遮断(閉弁)状態となる。
【0024】
第1スプール11および第2スプール12は、それらの間に配置したカムリンク14の回転により、第1連通孔12aおよび第2連通孔13aを同期して同時に開閉するようになっている。即ち、カムリンク14は、それの中心部を、アクチュエータとしてのモータ15で回転する回転軸15aに固定してある。この場合、モータ15の回転は、適宜な減速比を有する図示省略した減速機構を介して回転軸15aに伝達される。尚、アクチュエータは、モータ15に限ることなくカムリンク14を回転させることが可能な手段、例えば、シリンダ装置等であってもよい。
【0025】
また、カムリンク14の両端部は、第1スプール11と第2スプール12の端部にピン14aによって回転自在に連結してある。このとき、カムリンク14は、バルブハウジング13の中心軸Cに対して傾斜した状態で取り付けてある。
【0026】
更に、中空筒体として形成したバルブハウジング13の両端は、エンドプレート13E1、13E2によって液密に閉止してある。そして、一方のエンドプレート13E1と第1スプール11との間、および他方のエンドプレート13E2と第2スプール12との間には、第1スプール11および第2スプール12を互いに近づける方向に付勢するスプリング16、16aを配設してある。
【0027】
また、二連式開閉バルブ10を第1および第2シリンダ配管2C1、2C2に取り付けるには、両シリンダ配管2C1、2C2を互いに対応した位置で分断し、それぞれの端部をコネクタ13cを介して第1、第2連通孔13a、13bに接続してある。
【0028】
従って、二連式開閉バルブ10は、図2(a)に示すように、カムリンク14が、図示状態で時計回り方向に回転した時は、第1、第2スプール11、12がスプリング16、16aの付勢力に抗して互いに離れる方向に移動する。これにより、周溝部11a、12aが第1、第2連通孔13a、13bとそれぞれ合致して、これら第1、第2連通孔13a、13bが同時に連通状態となる。
【0029】
一方、図2(b)に示すように、カムリンク14が、図示状態で反時計回り方向に回転した時は、第1、第2スプール11、12が互いに近接する方向に移動する。これにより、ランド部11b、12bが第1、第2連通孔13a、13bに位置して、これら第1、第2連通孔13a、13bが同時に遮断状態となる。
【0030】
このとき、カムリンク14を回転するモータ15は、図3に示すように、制御油圧(図3(a)参照)と車速(図3(b)参照)の各信号によって回転方向を制御するようになっている。制御油圧は、パワーアシストバルブ8で発生する制御油圧を図示省略した圧力センサで電圧値として検出し、車速は、図示省略した車速センサで電流値として検出するようになっている。
【0031】
本実施形態では、高速直進走行時に第1、第2シリンダ配管2C1、2C2を二連式開閉バルブ10によって遮断するようになっている。具体的には、図3(a)に示すように制御油圧は所定値(0.5MPa)以下で、かつ、図3(b)に示すように車速が所定値(80Km/h)以上の高速走行時に、第1、第2シリンダ配管2C1、2C2を二連式開閉バルブ10によって遮断するようになっている。
【0032】
このように、制御油圧が0.5Pa以下、かつ、車速が80Km/h以上では、モータは、カムリンク14が図2(b)に示すように回転して、二連式開閉バブル10の第1、第2連通孔13a、13bを共に閉弁する。これにより、図4に示すように、第1および第2シリンダ配管2C1、2C2は、二連式開閉バルブ10によって遮断され、パワーシリンダ2Pの第1、第2油室2P2、2P3内の作動油を封じ込めてラック21をロック状態とする。なお、車速が80Km/h未満は中速や低速であるとしてある。
【0033】
そして、ハンドル3を転舵して制御油圧が0.5MPa以上の時は、車速が高速、中速、低速のいずれであっても、モータは、カムリンク14を図2(a)に示すように回転して、二連式開閉バブル10の第1、第2連通孔13a、13bを共に開弁する。また、ハンドル3が中立状態で制御油圧が0.5Pa以下であっても、車速が80Km/h未満(中速、低速)である場合は、同様に二連式開閉バブル10の第1、第2連通孔13a、13bを共に開弁する。
【0034】
これにより、図5(a)、(b)に示すように、二連式開閉バルブ10は、第1および第2シリンダ配管2C1、2C2をそれぞれ連通し、パワーシリンダ2Pとパワーアシストバルブ8との間で作動油の移動を許容する。
【0035】
尚、図4および図5中、左方がパワーアシストバルブ8側、右方がパワーシリンダ2P側となる。また、同図中、制御油圧が0.5Pa以下の状態を、便宜上圧力0として示し、油圧が0.5Pa以上の状態を+で示してある。
【0036】
図5(a)は、左旋回時の作動油の流れを矢印で示したものである。即ち、ハンドル3の左転舵によってパワーアシストバルブ8に発生した制御油圧は、第1シリンダ配管2C1を通って二連式開閉バルブ10を図中矢印aに示すように流れ、第1油室2P2に流入する。このとき、第2油室2P3内の作動油は、第2シリンダ配管2C2を通って二連式開閉バルブ10を図中矢印bに示すように流れ、パワーアシストバルブ8からリザーバタンク9へと戻される。
【0037】
図5(b)は、右旋回時の作動油の流れを矢印で示したものである。即ち、ハンドル3の右転舵によってパワーアシストバルブ8に発生した制御油圧は、第2シリンダ配管2C2を通って二連式開閉バルブ10を図中矢印cに示すように流れ、第2油室2P3に流入する。このとき、第1油室2P2内の作動油は、第1シリンダ配管2C1を通って二連式開閉バルブ10を図中矢印dに示すように流れ、パワーアシストバルブ8からリザーバタンク9へと戻される。
【0038】
つまり、本実施形態では、パワーアシストバルブ8の制御油圧が所定圧(0.5MPa)以下の場合、かつ、車速が所定車速(80Km/h)以上の場合に、二連式開閉バルブ10を閉弁する。これは高速直進走行状態であり、二連式開閉バルブ10が閉弁されることにより、第1および第2シリンダ配管2C1、2C2の作動油の流れを遮断し、第1、第2油室2P2、2P3内にそれぞれ作動油を封じ込める。
【0039】
一方、それ以外の条件、即ち、ハンドル3を転舵してパワーアシストバルブ8の制御油圧が所定圧(0.5MPa)以上の場合、または、所定車速(80Km/h)未満になった時に、二連式開閉バルブ10を開弁する。これにより、第1および第2シリンダ配管2C1、2C2の作動油の流れを許容し、通常のパワーステアリング機能に戻される。
【0040】
従って、シミーが特に問題となる高速直進走行時には、第1、第2油室2P2、2P3内に非圧縮性の作動油が封じ込められるため、パワーシリンダ2Pはロック状態となってラック21をロックする。これにより、操舵輪6に路面振動が入力された場合に、その振動でラック21が軸方向(車幅方向)に移動(振動)するのを阻止し、ひいては、ピニオン22を介してハンドル3に路面振動が伝達されるのを抑制する。
【0041】
以上説明したように本実施形態のパワーステアリング装置1によれば、パワーアシストバルブ8とパワーシリンダ2Pの両油室2P2、2P3とを連通するシリンダ配管2C1、2C2に、これら両配管2C1、2C2を開閉する二連式開閉バルブ10を設けてある。そして、この二連式開閉バルブ10によって、制御油圧が所定値以下のハンドル3が中立状態での高速走行時に、第1および第2の両シリンダ配管2C1、2C2を同時に遮断するようになっている。
【0042】
これにより、パワーシリンダ2Pの両油室2P2、2P3に作動油を封じ込めて、ステアリングギアをロック状態にできる。従って、高速直進走行時に、操舵輪6に入力した路面振動がハンドル3に伝達されるのを阻止して、シミーを抑制することができる。
【0043】
また、二連式開閉バブル10は、2本のシリンダ配管2C1、2C2の油路を単に遮断する構造でよいため、簡単な構造とすることができる。そして、その二連式開閉バルブ10を、既存のパワーステアリング装置に備わる2本のシリンダ配管に単に組み込むことにより、後付けでシミー対策用のユニットを設けることができる。
【0044】
更に、二連式開閉バルブ10は、2本のシリンダ配管2C1,2C2を同時に開閉するのみでよく、これにより、バルブ(スプール11、12)の数も少なくて済むため小型化を達成できる。また、バルブ(スプール11、12)は絞り弁ではなく単なる開閉弁で良いことから、作動油のリーク量を減少することができ、アシスト効率の低下を抑えることができる。
【0045】
更にまた、二連式開閉バルブ10は、高速直進走行以外で、ハンドル3の転舵時または80Km/h未満となる中速、低速走行時では、2本のシリンダ配管2C1、2C2を連通状態とする。これにより、パワーアシストバルブ8の制御油圧を通常通りパワーシリンダ2Pに送ることができるため、直ちに通常のパワーステアリング装置1としての機能を取り戻すことができる。従って、ハンドル3の据え切りや急激なハンドル3操作等の通常の運転に支障を来すことは無く、また、ハンドル3を転舵した後の戻り性能にも影響が及ぼされることは無い。
【0046】
また、本実施形態のパワーステアリング装置1によれば、第1および第2シリンダ配管2C1、2C2の油路を遮断する遮断機構として、これら第1および第2シリンダ配管2C1、2C2を同時に開閉する二連式開閉バルブ10を用いてある。従って、遮断機構(シミー対策用のユニット)をコンパクトに構成できるとともに、パワーシリンダ2Pの両油路2P2、2P3の作動油封じ込めおよび開放を同時に行うことができる。これにより、シミーの防止性能およびアシスト力を再付与した時の性能を高めることができる。
【0047】
更に、本実施形態のパワーステアリング装置1によれば、二連式開閉バルブ10を、車速および制御油圧に応じてアクチュエータによって開閉制御するようにしてある。これにより、二連式開閉バルブ10の開閉タイミングを、車両の運転状態に応じて的確に行うことができ、シミーの防止およびアシスト力の再付与を精度良く制御することができる。
【0048】
ところで、本発明のパワーステアリング装置は、上記実施形態に例をとって説明したが、この実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能である。
【0049】
例えば、ステアリングギア2がラックアンドピニオン式である場合を示したが、これに限ることなくパワーシリンダでステアリングギアに直接アシスト力を付与するタイプのパワーステアリング装置であれば本発明を適用することができる。
【0050】
また、本実施形態では、二連式開閉バルブ10の閉弁タイミングを、制御油圧が0.5Pa以下かつ車速80Km/h以上としてあるが、これらの値は車両に応じて任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 パワーステアリング装置
2 ステアリングギア
21 ラック
2P パワーシリンダ
2P2 第1油室
2P3 第2油室
2C1 第1シリンダ配管
2C2 第2シリンダ配管
3 ハンドル
6 操舵輪
7 オイルポンプ
8 パワーアシストバルブ
9 リザーバタンク
10 二連式開閉バルブ(遮断機構)
15 モータ(アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル操作に応じてオイルポンプから送られる作動油の油圧を制御するパワーアシストバルブと、
パワーシリンダを有するステアリングギアと、
前記パワーアシストバルブとステアリングギアとを繋ぐ第1および第2シリンダ配管と、を備え、
前記パワーシリンダでは、油室がピストンを介して第1および第2油室に画成され、この第1油室に前記第1シリンダ配管が接続され、前記第2油室に第2シリンダ配管が接続され、前記パワーアシストバルブの制御油圧をハンドルの転舵方向に応じて前記両油室のうち一方の油室に供給してアシスト力を発生させるとともに、他方の油室の作動油をリザーバタンク側に戻すパワーステアリング装置であって、
前記第1および第2シリンダ配管の途中に、所定の制御油圧以下のときに油路を遮断する遮断機構を設けたことを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項2】
前記遮断機構は、前記第1および第2シリンダ配管を同時に開閉する2連式開閉バルブであることを特徴とする請求項1に記載のパワーステアリング装置。
【請求項3】
前記2連式開閉バルブは、車速および制御油圧によって開閉制御するアクチュエータを備えたことを特徴とする請求項2に記載のパワーステアリング装置。
【請求項4】
前記2連式開閉バルブは、所定の車速未満のときには開弁されることを特徴とする請求項2に記載のパワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−240429(P2012−240429A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109013(P2011−109013)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】