説明

パンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置

【課題】アーム側面の曲げ工程の前に、アーム側面にフランジやリブ等を形成することができる、パンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置を提供すること。
【解決手段】凹部211が形成された下型210と、少なくとも2分割された型状部300a,300bとを有し、下型210の凹部211の上方にアーム形状板Wが搬送されるとほぼ拡大状態の上型300の型状部300a,300bによりアーム形状板Wを押して凹部211内に移動させ、アーム形状板Wの両側面を曲げ加工し、アーム形状板Wの両側面を曲げ加工後、型状部300a,300bを拡大状態から縮小状態に戻して上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に使用されるパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンタグラフ式ジャッキは、車両受台と、台座と、左右の連結軸により、2組のロアアームとアッパアームとを菱形状に組み、ハンドル部が設けられたネジ部材を左右の連結軸に通して構成されており、ネジ部材を回転させることにより、車両受台を昇降させている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−26682号公報
【特許文献2】特開2001−316084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記背景技術のものには、ロアアームやアッパアームの製造工程については開示されてなく、アッパアームまたはロアアーム等のアーム側面に、フランジやリブ等を形成する場合、曲げ加工後の上型の取り外しを考慮すると、アッパアームまたはロアアームの形状にカットされたアーム形状板に対し上型を押し付けてアーム側面を形成する曲げ工程の後、曲げ加工されたアーム側面に別工程によりフランジやリブ等を加工する必要があり、フランジやリブの加工が複雑になる、という課題があった。
【0005】
特に、昨今は、車両自体の軽量化だけでなく、パンタグラフ式ジャッキ等の車載付属品についても軽量化が求められているため、アッパアームやロアアームの強度を保ちながら薄肉化することが必須になっており、アッパアームやロアアーム側面に、内側に出っ張ったフランジやリブ等を形成する傾向にある。
【0006】
そこで、本発明は、アーム側面の曲げ工程の前に、アーム側面にフランジやリブ等を形成することができる、パンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明のパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置は、一対のアッパアームと一対のロアアームとがそれぞれ車両受台と台座とを介し回動自在に連結されたパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置であって、前記アッパアームまたはロアアームの形状にカットされたアーム形状板の両側面を曲げ加工するための凹部が形成された下型と、少なくとも2分割されており、拡大状態ではパンタグラフ式ジャッキを構成する一対のアッパアームまたは一対のロアアームの内側形状に拡がる一方、縮小状態では前記一対のアッパアームまたは一対のロアアームの開口部の最小幅より狭くなるよう縮小する上型と、前記下型の凹部の上方に、前記アーム形状板が搬送された際に、ほぼ前記拡大状態の上型により前記アーム形状板を押して変形し、変形された前記アーム形状板を前記下型の凹部内に移動させ、前記アッパアームまたはロアアームの形状にカットされたアーム形状板の両側面を曲げ加工し、前記アッパアームまたはロアアームの形状にカットされたアーム形状板の両側面を曲げ加工後、前記上型を前記拡大状態から前記縮小状態に戻して上昇させ、前記一対のアッパアームまたは一対のロアアームの上部開口から前記上型を取り出す上型作動機と、を有するパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置である。
ここで、前記パンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置において、前記上型は、前記一対のアッパアームと一対のロアアームの短手方向に2分割された一対の上型であり、その一対の上型の互いに対向する上部には、上方から押された場合、前記一対の上型がそれぞれ離れる方向に移動し前記拡大状態になるための傾斜辺が形成されている一方、その一対の上型の下部には、それぞれ前記一対のアッパアームまたは一対のロアアームの内側面の形状に応じて型取られた型状部が設けられており、前記上型作動機は、前記一対の上型が前記縮小状態になるように付勢する付勢部と、前記一対のアッパアームと一対のロアアームの傾斜辺を上方から押し、前記付勢部の付勢力に対抗して前記一対の上型が前記拡大状態になるように押し広げる列状突出部と、前記拡大状態になった前記一対の上型上面を押圧し、前記アッパアームまたはロアアームの形状にカットされたアーム形状板を前記型状部が前記凹部に押し込み、曲げ加工する押圧部と、を有し、前記アッパアームまたはロアアームの形状にカットされたアーム形状板の両側面を曲げ加工後は、前記列状突出部を上昇させて前記一対のアッパアームと一対のロアアームの傾斜辺から離して、前記付勢部の付勢力により前記一対の上型を前記拡大状態から前記縮小状態に戻して上昇させ、前記一対のアッパアームまたは一対のロアアームの上部開口から前記上型を取り出す、ことを特徴とするパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置にしても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アッパアームまたはロアアームの形状にカットされたアーム形状板の両側面を曲げ加工するための凹部が形成された下型と、少なくとも2分割されており、拡大状態ではパンタグラフ式ジャッキを構成する一対のアッパアームまたは一対のロアアームの内側形状に拡がる一方、縮小状態では前記一対のアッパアームまたは一対のロアアームの開口部の最小幅より狭くなるよう縮小する上型と、前記下型の凹部の上方に、前記アーム形状板が搬送された際に、ほぼ前記拡大状態の上型により前記アーム形状板を押して変形し、変形された前記アーム形状板を前記下型の凹部内に移動させ、前記アッパアームまたはロアアームの形状にカットされたアーム形状板の両側面を曲げ加工し、前記アッパアームまたはロアアームの形状にカットされたアーム形状板の両側面を曲げ加工後、前記上型を前記拡大状態から前記縮小状態に戻して上昇させ、前記一対のアッパアームまたは一対のロアアームの上部開口から前記上型を取り出す上型作動機と、を有するので、フランジやリブ等が形成され、カットされたほぼ平板状態のアーム形状板を上型を押し当て曲げ加工することによりアーム側面を起こして形成する場合でも、上型をロアアームやアッパアームから簡単に取り外すことができる。その結果、アッパアームまたはロアアームのアーム側面の曲げ工程の前に、アーム側面にフランジやリブ等を形成することができ、アーム側面へのフランジやリブ等の加工が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本装置により製造されるパンタグラフ式ジャッキが最も収縮した状態の正面図である。
【図2】本装置により製造されるパンタグラフ式ジャッキが最も伸長した状態の正面図である。
【図3】本装置により製造されるパンタグラフ式ジャッキが最も収縮した状態の上面図である。
【図4】(a),(b)、それぞれ、アッパアームの製造工程の一部を示す図である。
【図5】本実施形態のパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置全体の概略構成の一例を示す端面図である。
【図6】図5におけるA部分の拡大分解斜視図である。
【図7】上型が下型の上方にある場合の図5におけるA部分の拡大分解斜視図である、
【図8】上型が下型まで下降した状態の図5におけるA部分の拡大分解斜視図である。
【図9】(a),(b)、それぞれ、上型下降工程1におけるパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置の動作状態を示す端面図である。
【図10】上型拡張工程2におけるパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置の動作状態を示す端面図である。
【図11】上型押し当て工程3におけるパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置の動作状態を示す端面図である。
【図12】上型縮小工程4におけるパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置の動作状態を示す端面図である。
【図13】図12におけるB部分を拡大して示す拡大図である。
【図14】上型上昇工程5におけるパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置の動作状態を示す端面図である。
【図15】パンタグラフ式ジャッキのロアアームのアーム形状板W’を曲げ加工して両側面を起こす場合の特徴部分を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置の一実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
まずは、本装置により製造されるパンタグラフ式ジャッキの一例について説明する。
【0012】
図1は、本装置により製造されるパンタグラフ式ジャッキが最も収縮した状態の正面図、図2は、パンタグラフ式ジャッキが最も伸長した状態の正面図、図3は、パンタグラフ式ジャッキが最も収縮した状態の上面図である。
【0013】
図1〜図3に示す一例において、本装置により製造されるパンタグラフ式ジャッキ1は、車両等を下方から受ける車両受台10と、車両受台10に上端部11a,12aが回動自在に支持された一対のアッパアーム11,12と、一対のアッパアーム11,12の下端部11b,12bにそれぞれ上端部13b,14bが2つの連結軸16,17を介し回動自在に連結された一対のロアアーム13,14と、一対のロアアーム13,14の下端部13a,14aのそれぞれを回動自在に支持する台座15と、一対のアッパアーム11,12と一対のロアアーム13,14とを回動自在に連結する2つの連結軸16,17間に挿通されるネジ部材18と、を有する。なお、2つの連結軸16,17のうち、ネジ部材18のハンドル部18aに近い側を、操作側連結軸16と呼び、ネジ部材18のハンドル部18aに遠い側、すなわちネジ部材18のネジ部18b先端に近い側を、作動側連結軸17と呼ぶ。
【0014】
このパンタグラフ式ジャッキ1では、ネジ部材18を回転させて、一対のアッパアーム11,12とロアアーム13,14とを起立、すなわち伸長させて車両荷台10を上昇させていくと、図2に示すパンタグラフ式ジャッキ1が最も伸長した状態になる。その一方、ネジ部材18をその反対方向に回転させれば、一対のアッパアーム11,12とロアアーム13,14とは水平状態になるように倒れて、車両受台10は下降していき、最終的には、図1または図3に示す状態になる。
【0015】
次に、本装置が製造されるパンタグラフ式ジャッキ1のアッパアーム11,12またはロアアーム13,14の一例について説明する。ここでは、アッパアーム11を一例に説明する。
【0016】
図4(a),(b)は、それぞれ、アッパアーム11の製造工程の一部を示す図である。
【0017】
まず、図4(a)は、一枚の金属板をアッパアーム11の所定形状にカットしたアーム形状板Wの状態である。このアーム形状板Wの状態では、すでに図上上側に折れ曲がる歯部11c,112cや、リブ111d、112d、フランジ111e,112e等が形成されている。
【0018】
次に、図4(b)は、図4(a)に示す状態の一枚の金属板を所定形状にカット後のアッパアーム11のアーム形状板Wを、後述する本実施形態のパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置により曲げ加工することにより、底面113と、両側面111,112とを形成した状態を示している。
【0019】
つまり、本実施形態のパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置では、図4(a)に示すような状態に所定形状にカットされた一枚のアーム形状板Wを曲げ加工して、図4(b)に示すような底面113と、両側面111,112とを形成する。
【0020】
次に、本実施形態のパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置について説明する。なお、以下では、左側のアッパアーム11を曲げ加工する場合について説明する。
【0021】
図5は、本実施形態のパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置100全体の概略構成の一例を示す端面図である。
【0022】
本実施形態のパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置100は、装置本体200内に、下型210が固定された下型台220と、油圧やクランク、ベルト等の機構により上型300を垂直方向に上下動および水平方向に伸縮させる上型作動機400とを有する。
【0023】
図6は、図5におけるA部分の拡大分解斜視図、図7は、上型300が下型210上方にある場合の図5におけるA部分の拡大分解斜視図、図8は、上型300が下型210まで下降した状態の図5におけるA部分の拡大分解斜視図である。
【0024】
図6〜図8に示すように、このパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置100は、アッパアーム11,12またはロアアーム13,14の形状にカットされた図4(a)に示す状態のアーム形状板Wの両側面を曲げ加工するための凹部211が形成された下型210と、少なくとも2分割されており、拡大状態ではパンタグラフ式ジャッキ1を構成する一対のアッパアーム11,12または一対のロアアーム13,14の内側形状に拡がる一方、縮小状態では一対のアッパアーム11,12または一対のロアアーム13,14の開口部の最小幅より狭くなるよう縮小する型状部300a,300bが形成された上型300とを有する。
【0025】
上型300の型状部300a,300bは、図6〜図8に示すように、一対のアッパアーム11,12と一対のロアアーム13,14の短手方向に2分割されて構成されており、一対の型状部300a,300bの側面は、一対のアッパアーム11,12または一対のロアアーム13,14の両側面の形状に型取られている。なお、図6〜図8では、ロアアーム13,14の両側面の形状に型取られた型状部300a,300bを一例に示しているが、アッパアーム11,12の両側面の形状に型取られた型状部300a,300bでも良いことは勿論である。
【0026】
そして、その一対の型状部300a,300bの互いに対向する上部には、上型作動機400の列状突出部420が挿入される溝部320が形成されている一方、その溝部320下部には、上方から上型作動機400の列状突出部420先端が押された場合、型状部300a,300bがそれぞれ拡大状態の方向へ移動するようにの型状部300a,300bのそれぞれに傾斜辺310a,310bが形成されている.
【0027】
上型作動機400には、一対の型状部300a,300bが縮小状態になるように付勢するスプリングやバネ等の付勢部410a,410b(図9〜図12等も参照)と、一対のアッパアーム11,12と一対のロアアーム13,14の傾斜辺310a,310bを上方から押し、付勢部410a,410bの付勢力に対抗して一対の型状部300a,300bが拡大状態になるように押し広げる列状突出部420と、記列状突出部420によりほぼ拡大状態になった一対の型状部300a,300bをアッパアーム11,12またはロアアーム13,14に押し当て、アッパアーム11,12またはロアアーム13,14の形状にカットされたアーム形状板Wを押して曲げ加工する押圧部430と、を有する。
【0028】
次に、前記のように構成されたパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置の動作について、製造工程毎に説明する。
【0029】
なお、本実施例では、製造工程は、概略、次の5つの工程を有する。
(1)上型下降工程1
(2)上型拡張工程2
(3)上型押し当て工程3
(4)上型縮小工程4
(5)上型上昇工程5
【0030】
以下、各工程を図面を参照しながら説明する。
【0031】
(1)上型下降工程1
図9(a),(b)は、上型下降工程1におけるパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置の動作状態を示す端面図である。
【0032】
上型下降工程1では、所定形状にカットされたアーム形状板Wが下型210の凹部211に搬送されると、図9(a)に示すように、上型作動機400は、押圧部430および列状突出部420と、上型300とを、共に、下型210に向けて下降させる。
【0033】
そして、図9(b)に示すように、上型作動機400は、上型300の型状部300a,300b先端を、下型210の凹部211に搬送されたアーム形状板Wに当接させる。
【0034】
なお、図9(a),(b)に示す上型下降工程1において、列状突出部420先端が型状部300a,300bの傾斜辺310a,310bに当接していても、当接してなくてもどちらでも良いし、さらには、列状突出部420先端が型状部300a,300bの傾斜辺310a,310bに当接して、上型300の型状部300a,300bが拡大状態になっていても勿論よい。
【0035】
(2)上型拡張工程2
図10は、上型拡張工程2におけるパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置の動作状態を示す端面図である。
【0036】
図9(b)に示すように、上型300の型状部300a,300b先端が下型210の凹部211に搬送されたアーム形状板Wに当接すると、型状部300a,300bが下降を停止する一方、押圧部430および列状突出部420は下降を続けて、列状突出部420の先端が傾斜辺310a,310bを上方からそれぞれ左右に押し拡げ、図8に示すように付勢部410a,410bの付勢力に対抗して、一対の型状部300a,300bを拡大状態になるように押し広げる。
【0037】
そして、押圧部430下面が上型300上面に当接すると、列状突出部420の先端と、型状部300a,300bの先端とがほぼ同一面になり、下型210の凹部211に搬送されたアーム形状板Wを押圧することになる。
【0038】
なお、本実施形態では、図9(b),図10に示すように、型状部300a,300b先端が下型210の凹部211に搬送されたアーム形状板Wに当接した後、型状部300a,300bが拡大状態に移行するように説明したが、本発明では、これに限らず、型状部300a,300b先端が下型210の凹部211に搬送されたアーム形状板Wに当接する前に、型状部300a,300bが拡大状態に移行するようにしても良い。
【0039】
(3)上型押し当て工程3
図11は、上型押し当て工程3におけるパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置の動作状態を示す端面図である。
【0040】
図10に示すように、上型300の型状部300a,300bが拡大状態に移行し、押圧部430下面が上型300上面に当接すると、続いて上型300が押圧部430に下方に押圧され、図11に示すように、上型300が下型210の凹部211に搬送されたアーム形状板Wを上方から押して、アーム形状板Wを下型210の凹部211に押し込む。
【0041】
すると、図11に示すように、アーム形状板Wは、上型300の型状部300a,300bの形状に従って曲げ加工され、両側面と、底面とが形成される。
【0042】
(4)上型縮小工程4
図12は、上型縮小工程4におけるパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置の動作状態を示す端面図である。
【0043】
図11に示すように、アーム形状板Wが下型210の凹部211に押し込まれ、型状部300a,300bの形状に従って曲げ加工され、アーム形状板Wに両側面と底面とが形成されると、上型動作機400は、上型300はそのままで上昇させない一方、押圧部430および列状突出部420のみ上昇させる。
【0044】
すると、図12に示すように、左右の型状部300a,300b間から列状突出部420が抜かれ、左右の型状部300a,300bが相互に当接し、拡大状態から縮小状態に移行することになる。
【0045】
図13は、図12におけるB部分を拡大して示す拡大図である。
【0046】
図13に示すように、左右の型状部300a,300bが相互に当接する縮小状態になると、左右の型状部300a,300bの幅H1は、曲げ加工により側面が形成されたアーム形状板Wの開口部の最小幅より狭くなり、曲げ加工されたアーム形状板Wの両側面上端のフランジ間距離H2や、曲げ加工されたアーム形状板Wの両側面中央に形成されたリブ間距離H3より小さくなる。
【0047】
そのため、次に説明する図14のように、曲げ加工されたアーム形状板Wの両側面上端に内側に折れ曲がるフランジや、内側に突出するリブが形成されていても、左右の型状部300a,300bを上昇させることにより、上型300を簡単に取り出すことができる。
【0048】
(5)上型上昇工程5
図14は、上型上昇工程5におけるパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置の動作状態を示す端面図である。
【0049】
図14に示すように、曲げ加工されたアーム形状板Wの両側面上端に内側に折れ曲がるフランジや、内側に突出するリブが形成されていても、縮小状態の型状部300a,300bの幅H1は、曲げ加工されたアーム形状板Wの両側面上端のフランジ間距離H2や、曲げ加工されたアーム形状板Wの両側面中央に形成されたリブ間距離H3より小さいので、左右の型状部300a,300bを上昇させて、上型300を簡単に取り出すことができることになる。
【0050】
従って、本実施形態のパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置では、アッパアーム11,12またはロアアーム13,14の形状にカットされたアーム形状板の両側面を曲げ加工するための凹部211が形成された下型210と、少なくとも2分割されており、拡大状態ではパンタグラフ式ジャッキを構成する一対のアッパアーム11,12または一対のロアアーム13,14の内側形状に拡がる一方、縮小状態では一対のアッパアーム11,12または一対のロアアーム13,14の開口部の最小幅より狭くなるよう縮小する型状部300a,300bと、下型210の凹部211の上方に、アーム形状板Wが搬送された際に、ほぼ拡大状態の上型300の型状部300a,300bによりアーム形状板Wを押して変形し、変形されたアーム形状板Wを下型210の凹部211内に移動させ、アッパアーム11,12またはロアアーム13,14の形状にカットされたアーム形状板の両側面を曲げ加工し、アッパアーム11,12またはロアアーム13,14の形状にカットされたアーム形状板の両側面を曲げ加工後、型状部300a,300bを拡大状態から縮小状態に戻して上昇させ、一対のアッパアーム11,12または一対のロアアーム13,14の上部開口から型状部300a,300bを取り出す上型作動機400と、を有するので、フランジやリブ等を形成したアーム形状板Wを型状部300a,300bを押し当て曲げ加工することによりアーム側面を形成する場合でも、上型300をロアアーム13,14やアッパアーム11,12から簡単に取り外すことができる。
【0051】
その結果、本実施形態のパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置によれば、アッパアーム11,12またはロアアーム13,14のアーム側面の曲げ工程の前に、アーム側面にフランジやリブ等を形成することができ、アーム側面へのフランジやリブ等の加工が簡単になる。
【0052】
なお、本実施形態では、内側に出っ張ったリブを有するアッパアームの製造装置について説明したが、本発明では、これに限らず、例えば、外側に出っ張ったリブを有するロアアーム13,14のアーム形状板W’についても、例えば、図15に示すように、型状部300a’,300b’の形状を変更することにより、同様に対応することができる。この場合、縮小状態にある図15に示す型状部300a’,300b’の最大幅H1’が、曲げ加工により側面が形成されたアーム形状板W’上端のリブ間の幅H2’より、小さくなるように、型状部300a’,300b’の幅を設計する必要がある。
【符号の説明】
【0053】
100 パンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置
200 装置本体
210 下型
211 凹部
300 上型(アッパアーム用)
300’ 上型(ロアアーム用)
300a,300b 型状部(アッパアーム用)
300a’,300b’ 型状部(ロアアーム用)
310a,310b 傾斜辺
400 上型作動機
410a,410b 付勢部
420 列状突出部
430 押圧部
W,Wa’ アーム形状板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のアッパアームと一対のロアアームとがそれぞれ車両受台と台座とを介し回動自在に連結されたパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置であって、
前記アッパアームまたはロアアームの形状にカットされたアーム形状板の両側面を曲げ加工するための凹部が形成された下型と、
少なくとも2分割されており、拡大状態ではパンタグラフ式ジャッキを構成する一対のアッパアームまたは一対のロアアームの内側形状に拡がる一方、縮小状態では前記一対のアッパアームまたは一対のロアアームの開口部の最小幅より狭くなるよう縮小する上型と、
前記下型の凹部の上方に、前記アーム形状板が搬送された際に、ほぼ前記拡大状態の上型により前記アーム形状板を押して変形し、変形された前記アーム形状板を前記下型の凹部内に移動させ、前記アッパアームまたはロアアームの形状にカットされたアーム形状板の両側面を曲げ加工し、前記アッパアームまたはロアアームの形状にカットされたアーム形状板の両側面を曲げ加工後、前記上型を前記拡大状態から前記縮小状態に戻して上昇させ、前記一対のアッパアームまたは一対のロアアームの上部開口から前記上型を取り出す上型作動機と、
を有するパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置。
【請求項2】
請求項1記載のパンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置において、
前記上型は、
前記一対のアッパアームと一対のロアアームの短手方向に2分割された一対の上型であり、その一対の上型の互いに対向する上部には、上方から押された場合、前記一対の上型がそれぞれ離れる方向に移動し前記拡大状態になるための傾斜辺が形成されている一方、その一対の上型の下部には、それぞれ前記一対のアッパアームまたは一対のロアアームの内側面の形状に応じて型取られた型状部が設けられており、
前記上型作動機は、
前記一対の上型が前記縮小状態になるように付勢する付勢部と、
前記一対のアッパアームと一対のロアアームの傾斜辺を上方から押し、前記付勢部の付勢力に対抗して前記一対の上型が前記拡大状態になるように押し広げる列状突出部と、
前記拡大状態になった前記一対の上型上面を押圧し、前記アッパアームまたはロアアームの形状にカットされたアーム形状板を前記型状部が前記凹部に押し込み、曲げ加工する押圧部と、を有し、
前記アッパアームまたはロアアームの形状にカットされたアーム形状板の両側面を曲げ加工後は、
前記列状突出部を上昇させて前記一対のアッパアームと一対のロアアームの傾斜辺から離して、前記付勢部の付勢力により前記一対の上型を前記拡大状態から前記縮小状態に戻して上昇させ、前記一対のアッパアームまたは一対のロアアームの上部開口から前記上型を取り出す、パンタグラフ式ジャッキのアッパアーム又はロアアームの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−115838(P2011−115838A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277502(P2009−277502)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(390003447)川▲崎▼工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】