説明

パン焼き器

【目的】 この発明は、高価で入手し難い米粉を使用せず、米などの穀粒から直接パンを製造する小型のパン焼き器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
この発明のパン焼き器は、本体部と蓋体部から構成され、本体部に収容された調理釜と、
調理釜の底部に設けられた撹拌羽根と、この撹拌羽根を回転させるモータと、調理釜を加熱する加熱器と、調理温度を検出する温度検出器と、発酵菌保持部と、調理条件を指示する入力部と、調理状態を表示する表示部と、検出温度や調理条件などの入力に基づき加熱器やモータと発酵菌保持部を制御する制御部を有し、米と水とその他の付加材料を加えて加熱し炊飯を行い、炊飯後は冷却時間をおいて発酵菌保持部にセットされた発酵菌を加えて撹拌、発酵、焼成工程を経てパンを焼くことができるパン焼き器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、米を製粉することなくパンを製造することのできるパン焼き器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、日本の米を消費するため、米を原料にしたパンの製造が試みられていた。しかし、米粉は米ほど入手が容易で無く、高価であるので普及を妨げていた。そのため、特許公開2010−246590号公報のように、パン焼き器で米を粉砕することにより、米から直接パンを製造することも試みられてきた。しかし、パン焼き器で米を粉砕するときの騒音が大きく、かつ装置が大型になり高価にもなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開2010−246590号公報
【特許文献2】特許公開2010−246589号公報
【特許文献2】特許公開2010−246588号公報
【特許文献2】特許公開2010−35475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の従来技術の問題点に鑑み、この発明は次の点を課題とする。
高価で入手し難い米粉を使用せず、米などの穀粒から直接パンを製造する小型のパン焼き器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のパン焼き器は、本体部と蓋体部から構成され、本体部に収容された調理釜と、
調理釜の底部に設けられた撹拌羽根と、この撹拌羽根を回転させるモータと、調理釜を加熱する加熱器と、調理温度を検出する温度検出器と、発酵菌保持部と、調理条件を指示する入力部と、調理状態を表示する表示部と、検出温度や調理条件などの入力に基づき加熱器やモータと発酵菌保持部を制御する制御部を有し、米と水とその他の付加材料を加えて加熱しデンプンをアルファ化させ、冷却時間をおいて発酵菌保持部にセットされた発酵菌を加えて撹拌、発酵、焼成工程を経てパンを焼くことができるパン焼き器である。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、この発明は、米をデンプンをアルファ化させて粘度を向上し、次の発酵工程で発酵菌が死滅しない程度に温度を下げて発酵を行って炭酸ガスを生じさせるので、発生した炭酸ガスが粘度の高いアルファ化したデンプンにより保持され、好適な発泡が促進される。したがって、米粉から発酵させるよりも、炭酸ガスが逃げ難くふっくらしたパンを焼くことができる。
【0007】
このように、高価で入手し難い米粉を使うことなく単一のパン焼き器で米粒から直接パンを製造することができる。また、米を粉砕する工程を要しないので、大きな騒音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施例を示すパン焼き器の縦方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明のパン焼き器は、本体部と蓋体部から構成され、本体部に収容された調理釜と、
調理釜の底部に設けられた撹拌羽根と、この撹拌羽根を回転させるモータと、調理釜を加熱する加熱器と、調理温度を検出する温度検出器と、発酵菌保持部と、調理条件を指示する入力部と、調理状態を表示する表示部と、検出温度や調理条件などの入力に基づき加熱器やモータと発酵菌保持部を制御する制御部を有し、第一工程として、米と水と付加材を適宜入れて加熱し炊飯を行い、第二工程として、炊飯後は冷却時間をおいて発酵菌保持部にセットされた発酵菌を加えて撹拌し、発酵させ、第三工程として、焼成を経てパンを製造することができるパン焼き器である。
【実施例1】
【0010】
図1は、この発明の第1の実施例の縦断面図である。10はこの実施例のパン焼き器であり、本体部20、蓋体部30、制御部40を有する。本体部20は、ケース21と内ケース22を有し、内ケース22の内部には調理釜23が収容されている。調理釜23の中央底部には、スピンドル44に支持された撹拌羽根43が設けられている。スピンドル44の下部にはカップリング45が設けられ、モータ47のシャフト46に着脱可能に連結されている。
【0011】
調理釜23を持ち上げると、カップリング45は外れて、調理釜23は内ケース22から外に出すことができ、撹拌羽根43もスピンドル44から外すことができる。調理釜23を内ケース22に挿入すると、カップリング45は連結され、モータ47の回転は撹拌羽根43に伝達される。
調理釜23の下側には加熱器48が設けられており、調理釜23の加熱や保温を行う。加熱器48は、全体を均等に加熱するため調理釜23の側部に渡って設けてもよい。
【0012】
蓋体部30は、蓋ケース31、蓋内ケース32、発酵菌保持部35、付加材保持部33を有している。発酵菌保持部の開閉部36は、保持した発酵菌を制御部40からの信号により開いて発酵菌を調理釜23に落とすことができる。付加材保持部の開閉部34は、保持した具材を制御部40から信号により開いて具材を調理釜23に落とすことができる。発酵菌保持部35は、炊飯時の熱が伝わって発酵菌を加熱し過ぎないよう断熱性を持たせてある。
内ケース22には、温度検出器41が設けられ調理温度を検出することができる。入力部と表示部42には、調理条件が入力され、調理状況が表示される。制御部40では、入力条件、検出温度などの情報に基づき、モータ47や加熱器48、発酵菌保持部35、付加材保持部33などを制御する。
【0013】
入力部と表示部42には、パン焼きと炊飯と餅つきを選択できる入力部を備えている。また、パン焼きの場合も米パンと米粉パンと小麦パンを選択できる入力部も備えている。さらに、米パンの場合も小麦粉やグルテンの投入時期を選択できる入力部も備えている。
【0014】
このような構成のパン焼き器でパンを焼く方法としては、次の工程を経て行われる。
もちもちのパンが欲しい場合。
第一の工程としては、発酵菌を発酵菌保持部35に入れ、粒状の米と水を調理釜23に入れて炊飯を行う。
第二の工程としては、第一の工程後、調理材を約60度C以下に冷却し、発酵菌を投下し、撹拌し、発酵成形させる。
第三の工程としては、発酵後の調理材を焼成する。
発酵菌としては、酵母菌であるイースト菌が多く用いられる。
【実施例2】
【0015】
ふっくらパンが欲しい場合。
第一の工程としては、発酵菌を発酵菌保持部35に入れ、粒状の米と小麦粉と水を調理釜23に入れて炊飯を行う。
第二の工程としては、第一の工程後、調理材を約60度C以下に冷却し、発酵菌を投下し、撹拌し、発酵成形させる。
第三の工程としては、発酵後の調理材を焼成する。
【実施例3】
【0016】
小麦粉が無いがふっくらパンが欲しい場合。
第一の工程としては、発酵菌を発酵菌保持部35に入れ、粒状の米とグルテンと水を調理釜23に入れて炊飯を行う。
第二の工程としては、第一の工程後、調理材を約60度C以下に冷却し、発酵菌を投下し、撹拌し、発酵成形させる。
第三の工程としては、発酵後の調理材を焼成する。
【実施例4】
【0017】
小麦粉が無くてグルテンを使用しないで、ふっくらパンが欲しい場合。
第一の工程としては、発酵菌を発酵菌保持部35に入れ、粒状の米と増粘材と水を調理釜23に入れて炊飯を行う。
第二の工程としては、第一の工程後、調理材を約60度C以下に冷却し、発酵菌を投下し、撹拌し、発酵成形させる。
第三の工程としては、発酵後の調理材を焼成する。
増粘材としては、植物系の多糖類からなるものと、海藻系の多糖類からなるものとが存在する。植物系の多糖類からなる増粘剤としては、グァガム、アラビアガム、ガティガム、カラヤガム、プルラン、ペクチンの他、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン類、カードラン、デキストラン等のブドウ糖多糖類、セルロース、メチルセルロース等のセルロース類等が挙げられる。海藻系の多糖類からなる増粘剤としては、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等の昆布類粘質物、カラギナン等の紅藻抽出物、海藻セルロース等のセルロース類等が挙げられる。
【実施例5】
【0018】
小麦粉が無いがふっくらパンが欲しい場合。
第一の工程としては、小麦粉やグルテンを付加材保持部33に入れ、発酵菌を発酵菌保持部35に入れ、粒状の米と水を調理釜23に入れて炊飯を行う。
第二の工程としては、第一の工程後、調理材を60度C以下に冷却し、小麦粉やグルテンや発酵菌を投下し、撹拌し、発酵成形させる。
第三の工程としては、発酵後の調理材を焼成する。
【0019】
以上のような米パン焼きだけでなく、同一のパン焼き器で通常の米粉パン、小麦パンを焼くこともでき、通常の炊飯、持ちつきもすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明は、米を製粉することなくパンを製造できるパン焼き器であるが、他の穀類も製粉することなくパンやケーキとして焼くことにも利用可能性がある。また、この発明のパン焼き器で炊飯と餅つきもすることができ、それぞれの機械を出したり入れたりする手間が省け、台所のスペースも有効に使うことができる。
【符号の説明】
【0021】
(10)はパン焼き器
(20)は本体部
(21)はケース
(22)は内ケース
(23)は調理釜
(24)は内蓋
(30)は蓋体
(31)は蓋ケース
(32)は蓋内ケース
(33)は付加材保持部
(34)は付加材保持部の開閉部
(35)は発酵菌保持部
(36)は発酵菌保持部の開閉部
(40)は制御部
(41)は温度検知器
(42)は入力部と表示部
(43)は撹拌羽根
(44)はスピンドル
(45)はカップリング
(46)はシャフト
(47)はモータ
(48)は加熱部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
この発明のパン焼き器は、本体部と蓋体部から構成され、本体部に収容された調理釜と、調理釜に設けられた撹拌羽根と、この撹拌羽根を回転させるモータと、調理釜を加熱する加熱器と、調理温度を検出する温度検出器と、発酵菌保持部と、調理条件を入力する入力部と、調理状態を表示する表示部と、検出温度や調理条件などの入力に基づき加熱器やモータと発酵菌保持部を制御する制御部を有し、第一工程として穀粒と水を入れて加熱しデンプンをアルファ化させ、第二工程として冷却時間をおいて発酵菌保持部にセットされた発酵菌を加えて撹拌し、発酵成形させ、第三工程として焼成を経てパンを製造するパン焼き器。
【請求項2】
請求項1のパン焼き器において、第一の工程としては、発酵菌を発酵菌保持部に入れ、粒状の米と水を調理釜に入れて炊飯を行い、第二の工程としては、第一の工程後、調理材を冷却し、発酵菌を投下し、撹拌し、発酵成形させ、第三の工程としては、発酵後の調理材を焼成することを特徴とする。
【請求項3】
請求項1のパン焼き器において、第一の工程としては、発酵菌を発酵菌保持部に入れ、粒状の米と小麦粉と水を調理釜に入れて炊飯を行い、第二の工程としては、第一の工程後、調理材を冷却し、発酵菌を投下し、撹拌し、発酵成形させ、第三の工程としては、発酵後の調理材を焼成することを特徴とする。
【請求項4】
請求項1のパン焼き器において、第一の工程としては、発酵菌を発酵菌保持部に入れ、粒状の米とグルテンと水を調理釜に入れて炊飯を行い、第二の工程としては、第一の工程後、調理材を冷却し、発酵菌を投下し、撹拌し、発酵成形させ、第三の工程としては、発酵後の調理材を焼成することを特徴とする。
【請求項5】
請求項1のパン焼き器において、第一の工程としては、発酵菌を発酵菌保持部に入れ、粒状の米と増粘材と水を調理釜に入れて炊飯を行い、第二の工程としては、第一の工程後、調理材を冷却し、発酵菌を投下し、撹拌し、発酵成形させ、第三の工程としては、発酵後の調理材を焼成することを特徴とする。
【請求項6】
請求項1のパン焼き器において、第一の工程としては、小麦粉やグルテンを付加材保持部に入れ、発酵菌を発酵菌保持部に入れ、粒状の米と水を調理釜に入れて炊飯を行い、第二の工程としては、第一の工程後、調理材を冷却し、小麦粉やグルテンや発酵菌を投下し、撹拌し、発酵成形させ、第三の工程としては、発酵後の調理材を焼成することを特徴とする。

【図1】
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【公開番号】特開2012−165988(P2012−165988A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31603(P2011−31603)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(592114921)
【Fターム(参考)】