説明

パーフルオロアミド化および加水分解された無水マレイン酸コポリマー

基材に耐汚染性および耐汚れ性を付与する組成物であって、式(1)
【化1】


(式中、Dは、アリールオレフィン、ビニルエーテル、アリルエーテル、α−オレフィンおよびジエンよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーであり、各Mは独立に、H、NH、Ca、Mg、Al、または第I族金属であり、Rは、H、C〜C16のアルキル基、またはアリールアルキル基であり、Rは、全てフッ素化された直鎖または分岐のC〜C20の脂肪族基またはその混合物であって、任意選択的に少なくとも1個の酸素原子によって中断されており、xは1〜約10、またはそれらの組合せであり、kおよびhはそれぞれ独立して正の整数であり、iおよびjは両方が同時にゼロではないという条件で、iおよびjはそれぞれ独立してゼロまたは正の整数である)であり、k対(h+i+j)のモル比が約3:1から約1:3であり、h対(i+j)のモル比が約1:99から約22:78である)のコポリマーを含む組成物が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリアミド、絹、および羊毛の繊維は、汚れやすく汚染されやすい。現在使用されているナイロンカーペット用の多くの防汚剤(soil resist agents)は、パーフルオロアルキルエチルアルコールから得られるポリマーをベースとしている。そうしたフルオロケミカル防汚剤は、汚れから繊維を保護するのに効果的であるが、酸性色素による汚染からの保護に関してはほとんど役立たない。スルホン化芳香族縮合体は、酸性色素に対する耐汚染性(stain resistance)およびポリアミドおよび羊毛繊維の洗浄またはシャンプーに対する耐久性を提供するが、徐々に黄色に変化し、汚れやすくする傾向がある。こうした汚染防止剤(stain resists)は普通、水媒体を用いて塗布される。低いpHで汚染防止剤(stain resist agents)を分散または溶解させるのに役立つものとして、多くの場合、界面活性剤が使用される。別個の汚染防止剤および防汚剤を一緒に塗布すると、不適合性および性能不足などの問題が生じうる。低いpH値の溶液では防汚剤および汚染防止剤のこの不適合性があるため、これらを一緒に塗布することは普通は実行できない。
【0002】
耐汚染性組成物の性能は改善されてきているが、市販の汚染防止剤のいずれも、受け入れられるほどの汚れからの保護を与えない。そのため汚れに関して改善するには、いまだに別個の工程でフルオロケミカルをベースにした化合物で処理する必要がある。
【0003】
単一の組成物でも耐汚染性および耐汚れ性(soil resistance)の両方があるとされているが、それらは一般に、所望のレベルの耐汚染性および耐汚れ性を提供してこなかった。優れた耐汚れ性および耐汚染性の性能を提供するようなものはない。メイ(May)は、米国特許公報(特許文献1)において、末端不飽和アルケニルアミンまたはアルケニルアルコール(例えば、アリルアミンまたはアリルアルコール)と無水マレイン酸コポリマーとの反応、および得られたポリマーアミドまたはポリマーエステルを1−ヨードパーフルオロアルカンと反応させることを開示している。得られた生成物を脱ヨウ化水素化(dehydroiodination)すると、パーフルオロアルキル基が不飽和アルケニル基を介してアミドに結合しているポリマーが得られた。メイ(May)は耐汚染性特性について教示していない。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,408,010号明細書
【特許文献2】米国特許第4,883,839号明細書
【特許文献3】米国特許第5,346,726号明細書
【特許文献4】米国特許第5,707,708号明細書
【特許文献5】米国特許第4,883,839号明細書
【特許文献6】米国特許第5,346,726号明細書
【特許文献7】米国特許第5,708,087号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
単一工程の塗布工程で優れた耐汚染性および耐汚れ性を提供する単一組成物を提供することが望ましい。本発明は、そのような組成物およびその塗布方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の式1
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、
Dは、アリールオレフィン、ビニルエーテル、アリルエーテル、α−オレフィンおよびジエンよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーであり、
各Mは独立に、H、NH、Ca、Mg、Al、または第I族金属であり、
Rは、H、C〜C16のアルキル基、またはアリールアルキル基であり、
は、全てフッ素化された直鎖または分岐のC〜C20の脂肪族基またはその混合物であって、任意選択的に少なくとも1個の酸素原子によって中断されており、
xは、1〜約10、またはそれらの組合せであり、
kおよびhはそれぞれ独立して正の整数であり、
iおよびjは両方が同時にゼロではないという条件で、iおよびjはそれぞれ独立してゼロまたは正の整数であり、
k対(h+i+j)のモル比が約3:1から約1:3であり、h対(i+j)のモル比が約1:99から約22:78である)
のモノマーのコポリマーを含んでいる組成物を含む。
【0009】
本発明は、耐汚染性および耐汚れ性を基材に付与する方法であって、iおよびjがそれぞれ正の整数であるか、またはiがゼロでありjが正の整数の整数である、上記の式1の組成物を前記基材に単一の工程で塗布することを含む方法をさらに含む。
【0010】
本発明は、iおよびjがそれぞれ正の整数であるか、またはiがゼロでありjが正の整数の整数である、上記の式1の組成物が塗布されている基材をさらに含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願明細書では商標を大文字で示す。
【0012】
本願明細書で使用される「百万分率」または「ppm」という用語は、1グラム当たりのマイクログラムを意味する。
【0013】
本発明は、下記の式1のモノマーを含んでなるパーフルオロアルキルアルキルアミド化コポリマーを含む。
【0014】
【化2】

【0015】
式中、
Dは、アリールオレフィン、ビニルエーテル、アリルエーテル、α−オレフィン、およびジエンよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーであり、
各Mは独立に、H、NH、Ca、Mg、Al、または第I族金属であり、
Rは、H、C〜C10のアルキル基、またはアリールアルキル基(ベンジルなど)であり、
xは、1〜約10、またはそれらの組合せ、好ましくは約2から約3であり、
は、全てフッ素化された直鎖または分岐のC〜C20の脂肪族基またはその混合物であって、任意選択的に少なくとも1個の酸素原子によって中断されており、
kおよびhはそれぞれ独立して正の整数であり、
iおよびjは両方が同時にゼロではないという条件で、iおよびjはそれぞれ独立してゼロまたは正の整数であり、
k対(h+i+j)のモル比が約3:1から約1:3であり、
h対(i+j)のモル比が約1:99から約22:78である。
【0016】
式1はコポリマーの図であり、モノマーを示しているが、鎖中のモノマーの順序を示してはいない。
【0017】
hの(i+j)に対する比は、約1:99から約22:78、好ましくは約5:95から約20:80、より好ましくは約10:90から約20:80である。存在するN−(パーフルオロアルキルエチル)アミンのモル量は、マレイン酸(maleic)基1モル当たり約1%から約22%、好ましくは約5%から約20%、より好ましくは約10%から約20%である。「マレイン酸基」は、アミンとのどんな反応が行われるよりも前の初期ポリマー中の元のすべての無水マレイン酸を含む。すなわち、(h+i+j)である。
【0018】
(h+k+i+j)の合計は、コポリマー分子量が少なくとも800、好ましくは少なくとも1000、およびより好ましくは少なくとも4000となるのに十分である。式1は、無水マレイン酸コポリマー耐汚染性前駆体と少なくとも1種のN−(パーフルオロアルキルアルキル)アミンとの反応生成物である。典型的には、アミド化反応は完全には行われないので、(i+j)は0より大きい。
【0019】
式1において、M基は独立にH、第I族金属、アンモニウム、Ca2+、Mg2+、Al3+、または他のカチオンである。好ましくは、MはHまたは第I族金属であり、NaまたはKであることが好ましい。加水分解された式1において、j回現れるモノマーの場合、1つのMはHであり、残りはNaまたはKであることがより好ましい。MのHに対する比は、加水分解媒体およびpHに応じて異なってくる。本発明での使用および基材への塗布において好ましいのは、少なくとも75%、好ましくは少なくとも95%だけ加水分解された式1のコポリマーである。
【0020】
式1のD基の場合、アリールオレフィンの好ましい例はスチレンである。アリルエーテルまたはビニルエーテルの好ましい例は、C〜C12のアルキルビニルエーテルまたはアリールビニルエーテルである。より好ましいビニルエーテルはブチルビニルエーテルである。より好ましいアリルエーテルはフェニルアリルエーテルである。α−オレフィンの好ましい例は1−オクテンであり、ジエンの好ましい例は1,3−ブタジエンである。
【0021】
式1のコポリマーは、次の無水マレイン酸コポリマー出発物質
【0022】
【化3】

【0023】
を、少なくとも1種のN−(パーフルオロアルキルアルキル)アミンと連続反応させた後に加水分解させることにより製造できる。アミンとの初期反応により以下の中間体が生成する。
【0024】
【化4】

【0025】
この中間体が加水分解すると、式1になる。
【0026】
式1のコポリマーの製造に有用な無水マレイン酸コポリマー出発物質は、少なくとも1種のビニルモノマーと無水マレイン酸とのコポリマーであり、当業者にはよく知られている。このような無水マレイン酸コポリマーは、hおよびjがゼロである式1の一般構造を有する。そのようなコポリマーの例は、その製造方法と一緒に、例えば、フィッツジェラルド(Fitzgerald)らによって米国特許公報(特許文献2)で、またペヒホールド(Pechhold)によって米国特許公報(特許文献3)および米国特許公報(特許文献4)で記載されている。その他の製造方法としては、無溶媒マイクロ波加熱反応(solvent−free microwave−heated reaction)、高圧条件下でのオートクレーブ、および溶融押出などが挙げられる。
【0027】
式1のコポリマーの製造に有用なN−(パーフルオロアルキルアルキル)アミンは、式2の構造を有する。
−(CHNRH 式2
(式中、
、x、およびRは、式1に関して上に記載したとおりである)
【0028】
本発明を実施するのに有用なN−(パーフルオロアルキルエチル)アミンは、当業者によく知られている従来の方法で製造される。例えば、N−(パーフルオロアルキルエチル)アミンは、テトラブチルアンモニウムブロミドの存在下で、パーフルオロアルキルエチルヨージドをアジ化ナトリウムと反応させてパーフルオロアルキルエチルアジドを形成させ、その後、不活性溶媒中で接触水素化を行ってN−(パーフルオロアルキルエチル)アミンを得ることにより製造される。例えば、N−(パーフルオロヘキシルエチル)アミンは、パーフルオロヘキシルエチルヨージドから製造される。
【0029】
あるいはまた、N−(パーフルオロアルキルプロピル)アミンは、ヨウ化水素をパーフルオロアルキルエチルヨージドから除去してパーフルオロアルキルエチレンを得、その後HCNを添加してパーフルオロアルキルプロピオニトリルを形成させることにより製造される。このニトリルの接触水素化を行うと、N−(パーフルオロアルキルプロピル)アミンが得られる。N−(パーフルオロアルキルプロピル)アミンの製造に適したさまざまなパーフルオロアルキルプロピルヨージドは、ペンシルバニア州ピッツバーグのフルオラス・テクノロジーズ社(Fluorous Technologies Inc.,Pittsburgh,PA)から入手することもできる。N−(パーフルオロヘキシルメチル)アミンは、英国オールド・グロソップのフルオロケム社(Fluorochem Ltd,Old Glossop,UK)から入手できる。N−(パーフルオロアルキルアルキル)アミンは、式2の同族体の混合物から製造するのが好ましい。
【0030】
本発明の式1のパーフルオロアルキルアルキルアミド化コポリマーは、無水マレイン酸コポリマー(例えば、1−オクテン/無水マレイン酸コポリマーの溶液)を式2の構造の少なくとも1種のN−(パーフルオロアルキルアルキル)アミンと反応させることにより製造される。好ましいN−(パーフルオロアルキルアルキル)アミンは、RCHCHNH(式中、RはF(CFCF−であり、nは1〜10、好ましくは2〜8である)の構造を有するN−(パーフルオロアルキルエチル)アミンである。N−(パーフルオロアルキルエチル)アミンの混合物が好ましい。特に好ましいのは、表1に示す組成を有するパーフルオロアルキルエチルヨージドの混合物から製造される混合物である。
【0031】
【表1】

【0032】
好適な溶媒は、反応条件に対して不活性な、ケトンなどの有機溶媒である。メチルイソブチルケトン(MIBK)は、沸点および後で除去しやすいという点から好ましい溶媒である。使用するN−(パーフルオロアルキルエチル)アミンのモル量は、無水物基1モル当たり約1%から約99%、好ましくは約1%から約80%、より好ましくは約5%から約30%、より好ましくは約10%から約20%である。N−(パーフルオロアルキルエチル)アミン分がガスクロマトグラフィーで検出できなくなるまで、約25℃から約120℃の温度で反応させる。典型的な例では、MIBKを溶媒として使用するが、90℃で4時間行うなら、反応を完了させるのに十分である。その後、少し過剰の塩基水溶液(10%水酸化ナトリウム水溶液など)で反応塊を処理する。MIBKを、蒸留により、約400mmHg(約50kPa)および80℃でMIBK/水共沸混合物として除去する。最終的な水溶液を調整して、約20%から約35%の固形分を含み、フッ素含量が約0.1%から約2.0%である溶液を得る。
【0033】
パーフルオロアルキルアルキルアミド化コポリマー中間体を完全に加水分解すると、式1(式中、iはゼロである)の加水分解された耐汚れ性および耐汚染性コポリマーが得られる。iがゼロでありjが正の整数である式1は、本願明細書では「加水分解された式1」と呼ぶ。
【0034】
パーフルオロアルキルアルキルアミド化コポリマー中間体を部分加水分解すると、式1(式中、iおよびjはそれぞれ独立して正の整数である)を有する部分加水分解された耐汚れ性および耐汚染性コポリマーが得られる。iおよびjがそれぞれ独立して正の整数である式1は、本願明細書では「部分加水分解された式1」と呼ぶ。
【0035】
jがゼロである式1は、本願明細書では「加水分解されていない式1」と呼ぶ。加水分解された式1および部分加水分解された式1の場合、jはゼロとはなり得ない。
【0036】
加水分解された式1または部分加水分解された式1は、本発明の組成物であり、これを基材に塗布すると、優れた耐汚染性および耐汚れ性が得られる。
【0037】
本発明の式1の組成物は、水中の分散液または水溶液として製造されるが、これは水への溶解度がフッ素含量とpHの両方に依存するためである。水への溶解度は、フッ素含量が増大するにつれて減少する。4未満のpHなどの低いpHでも、水への溶解度が減少する。塗布の方法は、分散液でも溶液でも同じである。
【0038】
汚染防止剤、防汚剤、撥水剤、撥油剤、静電防止剤、抗微生物剤、アニオンおよび非イオン界面活性剤、軟化剤、酸化防止剤、耐光剤(light fastness agents)、耐変色剤(color fastness agents)、および水のうちの少なくとも1種などの従来の添加剤を、本発明の式1の組成物の分散液または溶液に添加できる。
【0039】
本発明は、上述の加水分解された式1または部分加水分解された式1の組成物を基材に塗布する方法を含む、耐汚れ性および耐汚染性を基材に付与する方法さらに含む。加水分解された式1は、iがゼロでありjが正の整数である式1と等しく、部分加水分解された式1は、iおよびjがそれぞれ独立して正の整数である式1と等しい。本発明の分散液または溶液は通常、基材に塗布される。好適な基材としては、繊維基材および表面の硬い基材が挙げられる。
【0040】
繊維基材への塗布方法としては、吹付、泡、フレックスニップ(flex−nip)、パッド、キスロール、ベック(beck)、かせ、およびウインチなどが挙げられる。これらの塗布方法はすべて、必要に応じて加熱して、また乾燥状態から飽和蒸気(相対湿度100%)の範囲の湿度で用いられる。本発明の別の実施態様では、ニップ(ディップして、しぼる)、液体注入、オーバーフローフラッド(overflow flood)、および当業者によく知られているその他の塗布方法を使用できる。カーペット基材への塗布の場合、「含浸量」は、プレウェッティングしたカーペットへ塗布される本発明の分散液または溶液の量であり、カーペットの乾燥重量を基準にした量である。含浸量の少ない浴方式は含浸量の少ない吹付または泡方式と交換可能であり、含浸量の多い浴方式はその他の含浸量の多い方式(例えば、フレックスニップ方式、泡、パッド、またはフラッド)と交換可能である。使用する方法によって、適切な含浸量、ならびに塗布をカーペットの片側から行うか(吹付および泡塗布)または両側から行うか(フレックスニップおよびパッド)かが決まる。以下の表2に、カーペット基材へ塗布する場合の典型的な方法の明細を示す。
【0041】
【表2】

【0042】
吹付、泡、フレックスニップ、フラッド、およびパッドによる塗布のさまざまな多くの条件は当業者によく知られており、前述の条件は例として示したものであり、他を排除することを意図したものではない。
【0043】
典型的な用途では、固形分が約8.6%で、フッ素含量が約0.34%である本発明の分散液または溶液を使用する。本発明の分散液または溶液は、含浸量が約20%から約60%のプレウェッティングしたカーペットに塗布し、約150°Fから約180°F(66℃から82℃)で乾燥させ、好ましくは約250°Fから約300°F(121℃から149℃)で硬化させる。あるいはまた、処理したカーペットを風乾させることができるが、これは好ましくない。カーペットをプレウェッティングするには、カーペットを水に浸し、過剰の水を吸引除去する。「含浸量」は、プレウェッティングしたカーペットに本発明の分散液または溶液を塗布した量であり、カーペットの乾燥重量を基準にしたものである。乾燥後に、処理したカーペットは、乾燥カーペットの重量を基準にして、好ましくは約100ppm〜約1000ppmのフッ素(約100〜約1000μg/gのフッ素)を含む。
【0044】
硬い表面に本発明の分散液または溶液を塗布する場合、本発明の分散液または溶液は、必要に応じて、エマルジョンの浸透、乾燥および安定性を向上させるために、10重量%まで(好ましくは3重量%以下)の1種または複数種の水混和性有機溶媒(アルコール、ケトンおよびエステルなど)をさらに含んでよい。例としては、エタノール、メチルイソブチルケトンおよび乳酸イソプロピルなどが挙げられる。混合物中の有機溶媒は、健康上、安全上、汚染上、および生態学上の理由から、最小限にとどめることが好ましい。
【0045】
分散液または溶液の重量を基準にして分散液または溶液中の合計フッ素パーセントが、約0.25%から約7.5%、好ましくは約1%から約6.8重量%、もっとも好ましくは約2.5%から約6.5重量%になるまで、分散液または溶液は希釈される。
【0046】
上述の合計フッ素を含んでいる塗布濃度の本発明の組成物は、従来の方法で基材表面に塗布され、その方法には、はけ、吹付、ローラー、ドクターブレード、塗りつけ、浸漬、およびディップ手法があるが、これらに限定されない。最初の塗膜の後に少なくとももう1つの塗膜をウェット・オン・ウェット手法で設けることが好ましい。より多孔質の基材の場合、その後に追加の塗膜を設けなければならないことがある。ウェット・オン・ウェット手順は、第1塗膜を施してそれを基材にしみ込ませるが乾燥はさせず(例えば、約10〜30分間)、その後第2塗膜を施すことを含む。その後の塗膜はどれも、第2塗膜に関して記載したのと同じ手法を用いて施す。その後、基材表面を周囲条件下で乾燥させる。あるいは所望される場合には、乾燥を温風によって促進することもできる。ウェット・オン・ウェット塗布手順は、基材表面に保護塗膜をさらに施すかまたは付着させる手段を提供する。前の塗膜を乾燥させた場合、次の塗膜がはじかれる傾向があるので、ウェット・オン・ウェット塗布が好ましい。多孔質基材の場合、塗膜は基材表面にたっぷりしみ込んでいるべきである。
【0047】
本発明は、上に記載した加水分解された式1または部分加水分解された式1の組成物を塗布してある基材をさらに含む。加水分解された式1は、iがゼロでありjが正の整数である式1と等しく、部分加水分解された式1は、iおよびjがそれぞれ独立して正の整数である式1である。ここで用いるのに好適な基材としては、繊維基材および硬い表面の基材などが挙げられる。好適な繊維基材としては、繊維、生地、織物、カーペット、および革などが挙げられる。これらの基材は天然または合成あるいはそれらのブレンドである。天然繊維としては、羊毛、綿、ジュート、サイザル麻、海草、コイアおよびそれらのブレンドなどが挙げられる。合成繊維としては、ポリアミド、ポリアラミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレートおよびそれらのブレンドなどが挙げられる。
【0048】
別の実施態様では,本発明の分散液または溶液は、多孔質鉱物表面(石、石造りのもの、コンクリート、無釉タイル、れんが、多孔質粘土およびその他のさまざまな表面多孔性基材など)を含む硬い表面の基材の処理に有用である。そのような基材の具体例としては、粗面コンクリート(unglazed concrete)、レンガ、タイル、石(花こう岩および石灰岩を含む)、グラウト、モルタル、大理石、石灰岩、彫像、記念碑、複合木材材料(テラゾなど)、および壁および天井のパネル(せっこうボードで二次加工されたものを含む)などが挙げられる。これらは、建造物、道路、エプロン、車道、フローリング、暖炉、暖炉の炉床、調理台、ならびに屋内および屋外用途におけるその他の装飾用途に用いられる。
【0049】
本発明の処理済み基材は、耐汚染性および耐汚れ性が優れている。これらの特性は、加水分解された式1または部分加水分解された式1の本発明の組成物を単一の工程で塗布することによって実現されている。本発明は、本願明細書に記載されている組成物を効率的な1回の工程で塗布することにより、優れた耐汚染性および耐汚れ性を基材に付与する。
【0050】
(物質および試験法)
本願明細書の実施例では以下の物質を用いている。
【0051】
テトラブチルアンモニウムブロミド、アジ化ナトリウム、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、およびアリルフェニルエーテルを含む実験用薬品(laboratory chemicals)は、実験用薬品供給者(例えば、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ(Aldrich,Milwaukee WI))から入手できる。
【0052】
ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)およびポリ(1−オクテン−co−無水マレイン酸)の製造については、米国特許公報(特許文献5)、米国特許公報(特許文献6)および米国特許公報(特許文献7)に記載されている。
【0053】
表1に示すパーフルオロアルキルエチルヨージドの混合物は、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington DE)の本願特許出願人から入手できる。
【0054】
カーペット材料。使用したカーペット材料は、市販のレベルループ(LL)、1245デニール値、1/10ゲージ(0.1インチまたは2.5mmのタフト間隔(tuft separation))、26oz/yd(0.88kg/m)、淡黄色に染色されたもので、デラウェア州ウィルミントンのインビスタ社(Invista Inc.,Wilmington DE)から入手可能なものであった。
【0055】
(試験法1)
カーペットサンプル(6.76×6.76インチ(17.2×17.2cm)の正方形の染色したカーペット)を切り取り、パイル側を上に向けて非吸収性表面に置いた。電機掃除機をかけて非付着性の物質をすべてパイルから取り除いた。オリジナル・マックスウェル・ハウス(ORIGINAL MAXWELL HOUSE)の挽いたコーヒー(33.8g)(ニューヨーク州タリータウンのマックスウェル・ハウス・コーヒー社(Maxwell House Coffee Co.,Tarrytown NY)から入手可能)を、標準10杯用コーヒーフィルターに入れた。脱イオン水(1266.2g)を加え、製造業者の指示に従ってコーヒーを入れた。30%硫酸水素ナトリウム水溶液または10%水酸化ナトリウムのいずれかを含んでいる水溶液を必要に応じて用いて、コーヒーのpHを5.0に調整した。コーヒーを、50mLずつ分配できる適切な計量ディスペンサー(volumetric dispenser)に注ぎ入れ、ディスペンサーを62℃の湯浴に入れた。コーヒーの温度が140°F+/−5°F(60°+/−2.8℃)になるようにし、汚染の実施に先立ってその温度に30+/−5分間保った。開放端シリンダー(open−ended cylinder)または逆切頭体の形状をしたリングで、小さいほうの開口部の直径が2.75インチ(7cm)であるものを使用した。そのようなリングは、AATCC試験法175−1993で別の目的のために記載されている。このリングを、小さいほうの直径の開口部がパイルに向くようにしてカーペットサンプルの中央に置いた。コーヒーディスペンサーは50mLを量り分けるように設定し、汚染の実施に先立って1回洗浄した。リングをパイルに押し付けた状態で、コーヒー50mLを容器中に移し、すぐにリングに注ぎ入れてカーペット上に注いだ。コーヒーは、カップの底部を使ってカーペット中に均等かつ徹底的にすり込んだ。4時間+/−20分間にわたって、コーヒーによりカーペットが汚染されるようにした。
【0056】
(試験法2)
カーペットサンプルの温水抽出洗浄(hot water extraction cleaning)を、洗剤を使用しなかったことを除いては、米国繊維化学者および色彩技術者協会(AATCC)の試験法♯171「カーペットの洗浄:温水(蒸気)抽出法」(American Association of Textile Chemists and Colorists“Cleaning of Carpets:Hot Water(Steam)Extraction Method”)に従って実施した。
【0057】
(試験法3)
ミノルタ・クロマ・メーター(Minolta Chroma Meter)CR−210色彩計(ニュージャージー州ラムジーのミノルタ・コーポレーション(Minolta Corporation,Ramsey NJ))を用い、対照標準(汚染されていない)カーペットと比較して色差(「デルタE」値)を測定して、汚染されたカーペットサンプルの等級を付けた。非付着性の物質はすべて、等級付けの前にパイルから取り除いた。デルタEの測定の詳細は、AATCCの試験法♯153「繊維の色測定:機器」("Color Measurements for Textiles:Instrumental")に示されている。試験は、いろいろなカーペットの色、構造および様式に関して必要に応じて繰り返した。デルタE値は、2つのサンプル間の色の違いを測定するもので、人間の目よりも感度がよい。平均的な人は、デルタE測定値が1.0またはそれ以上ある場合に、2つの物体の色を区別できる。汚染されていないまたは汚れていないカーペットの領域でのカーペットの初期の色(L*,a*,b*)を測定した。デルタEでは、このスポットと、その後の汚染領域または汚れた領域との間の色の違いを測定した。デルタE値がゼロである場合、2つのサンプル間に色の違いがないことを表す。デルタE値が大きくなると、2つのサンプル間の色の違いが大きくなっていることを示す。試験法3(デルタE)を用いて、コーヒー汚染および汚れの両方を測定した。
【0058】
(試験法4。加速汚れドラム試験(Accelerated Soiling Drum Test))
カーペット試験体を、両面粘着テープ(2−sided adhesive tape)および/または機械式クランプを用いて、パイルがドラムの中心を向くように金属ドラムの内側に取り付けて、内面がカーペットで完全に覆われるようにした。カーペットの加速機械的摩耗を評価するためにいろいろな金属ドラムを使用した。これらの金属ドラムの多くがカーペットの加速汚れ評価用に改造されてきた。広く改造されてきた2種類の装置は、ヘキサポッド(Hexapod)ドラムとベターマン(Vetterman)ドラムである。カーペットの量、汚れ、および汚す時間を調整すれば、同等の汚れの加速結果が、多数のいろいろな金属ドラム装置で得ることができる。
【0059】
【表3】

【0060】
その後、ドラムの中に、ある量の「汚れたサーリン(SURLYN)アイオノマー樹脂ペレット」および容量が250mLの5/16インチ(0.79cm)の玉軸受を入れた。「汚れたサーリン(SURLYN)アイオノマー樹脂ペレット」は、1Lのサーリン(SURLYN)8528アイオノマー樹脂ペレットを合成土20gとブレンドして作る(AATCC方法123−1988)。サーリン(SURLYN)8528アイオノマーは、エチレン/メタクリル酸コポリマー(部分的にナトリウム塩または亜鉛塩)であり、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)の本願特許出願人から入手できる。その後ドラムを閉じて、数分間、ローラー型ドラムミルで回転させた。その後カーペットサンプルをドラムから取り出して、キャニスター型真空掃除機できれいにした。汚れの度合いを、ミノルタ・クロマ・メーター(Minolta Chroma Meter)CR 200を用いて、汚れていない対照標準と汚されたカーペットサンプルとの間の暗さの違いを「デルタE」として決定することにより測定した。「E」の値は製造業者の指示に従って測定した。「デルタE」単位の1は、目視評価と比べて意味がある。「デルタE」値が小さいほど、汚れは少ない。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
パーフルオロアルキルエチルヨージド(ここで、パーフルオロアルキルはCF(CFであり、nは3〜15である)(1L)を、10段の棚段塔(10−plate column)および蒸留ヘッドを備えた2Lの丸底フラスコに入れた。50トル(6.7kPa)の真空にして、溶液を100℃〜125℃のポット温度まで加熱した。52℃〜71℃のヘッド温度の初留分(forecut)を除去したが、これは主にパーフルオロブチルエチルヨージド留分を含んでおり、これは廃棄した。120トル(16kPa)において、92℃のヘッド温度および125℃の浴温で第2留分(260g)を集めた。ガスクロマトグラフィーによる分析では、第2留分は、90%がパーフルオロヘキシルエチルヨージドであり、10%がパーフルオロオクチルエチルヨージドであることが示された。
【0062】
主にパーフルオロヘキシルエチルヨージドの留分(上述のように製造されたもの、109g、0.23モル)を、マントルヒーター、オーバーヘッド撹拌機(overhead stirrer)、還流冷却器、温度計、および滴下漏斗を備えた1Lの丸底フラスコに仕込んだ。テトラブチルアンモニウムブロミド(3.9g、0.012モル)をその溶液に添加した。撹拌を開始し、フラスコの内容物を100℃まで加熱した。アジ化ナトリウム(22.1g、0.34モル)を別個のフラスコ中の水68gに添加し、75℃〜80℃まで過熱して溶解させた。そのアジ化ナトリウム水溶液を、5分間かけて滴下漏斗を通してフラスコに添加した。その反応混合物を8時間にわたり撹拌しながら100℃で加熱してから、有機層のサンプルを採取し、出発物質が消失していることをガスクロマトグラフィーで確認した。出発物質が使い果たされている場合は、有機層と水層は分離していた。そうでない場合は、反応混合物をさらに長い時間反応させた。下側の有機層をフラスコに戻し、100mlずつの熱水(60℃)で3回抽出した。その後、最終生成物であるパーフルオロヘキシルエチルアジドの純度を、ガスクロマトグラフィー、FTIR、およびプロトンNMRで検査した。
【0063】
パーフルオロヘキシルエチルエチルアジド(100g、上述のようにして製造)を塩化メチレン(250g)に溶かし、5%パラジウム担持炭素(palladium−on−carbon)(2g、エンゲルハード(Engelhard)ESCAT162(サウスカロライナ州セネカのエンゲルハード・コーポレーション(Engelhard Corporation,Seneca SC)から入手可能))を添加した。この溶液を管状圧力反応器中において水素で400psig(2860kPa)まで加圧し、溶液を室温で5時間撹拌した。パラジウム担持炭素を濾過して取り除き、淡黄色の溶液を得た。塩化メチレンを回転蒸発器で除去して、N−(パーフルオロヘキシルエチル)アミン94%およびN−(パーフルオロオクチルエチル)アミン6%(プロトンNMR、FTIR、およびガスクロマトグラフィーによって特性が決定される)を含んでいる油を得た。
【0064】
1−オクテン−無水マレイン酸ポリマーの溶液(32g、メチルイソブチルケトン(MIBK)中に61.5%、0.094ミリモル)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington DE)の本願特許出願人からのもの)を、オーバーヘッド撹拌機、熱電対、滴下漏斗、およびマントルヒーターを備えた500mLの丸底フラスコ中のMIBK20.0g中に溶かした。その溶液を90℃まで加熱し、N−(パーフルオロヘキシルエチル)アミン(5.5g、0.015モル、上述のようにして製造)を、滴下漏斗を通して5分間かけて添加した。誘導体の形成が進行した後、N−(パーフルオロヘキシルエチル)アミンが消失した(ガスクロマトグラフィーによる)。4時間後に、このアミンは消失していた。水酸化ナトリウム溶液(10%、33g)および水250gを添加した。MIBKと水の共沸混合物を、400mmHgの減圧(約50kPa)で減圧蒸留により80℃で除去した。最終的な水溶液は、固形分が8.6%、Fが0.34%であったが、これはRCHCHNHが12モル%含有されていることに相当する。
【0065】
耐汚れ性および耐汚染性の性能試験は、淡黄色に染色され、ラテックスで裏打ちされたカーペットである1245LL市販カーペットに、pH6〜8で吹付塗布して実施した。乾燥カーペット(パイル)重量を基準にして600ppm(600mg/kg)の濃度のフッ素を、耐汚れ性試験のために塗布した。4"×4"(10×10cm)のカーペットサンプルを、3gの水でプレウェッティングし、6.0gの溶液を吹き付けた(約50%含浸量)。溶液をローラーでしみ込ませ、約170°F(76.7℃)でオーブン乾燥させてから、300°F(149℃)で硬化させた。
【0066】
耐コーヒー汚染性の比色デルタE(the colorimetric delta E of the coffee stain resist)試験では、入れておいたコーヒー(試験法1におけるように準備したもの)による汚染の47%が防止されたことが示された。この比色デルタEは、加水分解された1−オクテン/無水マレイン酸ポリマーで得られた−11%の防止値を有する対照標準および加水分解されたスチレン/無水マレイン酸ポリマーの場合の20%防止値を有する対照標準と比較される。汚染の防止パーセントは、次のようにして計算する。
100(デルタE未処理−デルタE処理済)/デルタE未処理
汚れは、試験法4(加速ドラム試験)で生じさせた。得られたデータを表3に示す。
【0067】
(実施例2)
実施例1の手順を繰り返し、N−(パーフルオロヘキシルエチル)アミンをガスクロマトグラフィーで監視した。N−(パーフルオロヘキシルエチル)アミンが上記の溶液から消失した後、MIBK溶液をトルエン:ヘキサンが50:50の撹拌混合物に注ぎ込んで、ポリマーを沈殿させた。沈殿したアミン官能基化1−オクテン/無水マレイン酸ポリマーを濾過し、60℃において減圧下で乾燥させた。元素分析によると、この固体は5.5%のフッ素を有していた。IR分析では、アミド基およびC−F結合をそれぞれ示す新しい吸収が1720cm−1および1200cm−1に見られた。実施例1におけるようにポリマーを水酸化ナトリウム水溶液中で加水分解させ、実施例1におけるようにカーペットに塗布してから、耐汚れ性および耐汚染性を試験した。結果を表3に示す。
【0068】
(実施例3〜4)
1−オクテン−無水マレイン酸ポリマーを、実施例1におけるようにしてさまざまな量のテトラヒドロフラン溶媒中のN−(パーフルオロヘキシルエチル)アミンと反応させて、実施例2におけるように特徴づけられた、表3に示すようにさまざまな量のフッ素(モル%)をポリマーに含有させた。これらのポリマーを実施例1におけるように加水分解し、実施例1におけるように市販のカーペットで耐汚れ性および耐汚染性を試験した。以下の表3に結果を示す。使用した対照標準は、官能基化されていない1−オクテン−無水マレイン酸ポリマー(OCT−MA)ポリマーであって、後で加水分解されたものであった(表3の比較例Cとして示す)。対照標準は実施例2におけるようにして試験した。
【0069】
(実施例5)
無水マレイン酸(15.0g、0.15モル、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals,Milwaukee WI)から入手可能)、アリルフェニルエーテル(21.0g、0.16モル、アルドリッチ(Aldrich)のもの)、およびクメン(100g、アルドリッチ(Aldrich)のもの)を、熱電対、オーバーヘッド撹拌、マントルヒーター、凝縮器、および窒素パージを備えた250mLの丸底フラスコに秤量して入れた。完全に溶解するまで、この混合物を室温で撹拌した。この溶液を70℃まで加熱してから、1時間窒素でパージし、その後過酸化ベンゾイル(0.4g)を添加した。4時間後に追加の過酸化ベンゾイル(0.5g)を添加した。その後反応混合物を20時間70℃に保持し、室温まで冷却した。それからクメン溶液から沈殿した不溶性ポリマーを濾過し、ヘキサン(200mL)で洗浄した。濾過した固体を真空オーブン中において70℃で乾燥させた。白色粉末(27.3g、75%の収量)を回収した。H NMRでは、このポリマーは、アリルフェニルエーテルおよび無水マレイン酸が1:1のモル比であることが示された。
【0070】
上記のようにして製造したアリルフェニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー(3.0g)およびN−(パーフルオロヘキシルエチル)アミン(1.1g)を混合し、2種類の化合物が完全に混ざり合うまで乳鉢内で乳棒を使って粉砕した。この混合物を、1000ワットの通常の電子レンジ(ゼネラルエレクトリックJVM1660WB型(General Electric Model JVM1660WB)、コネチカット州フェアフィールドのゼネラルエレクトリック社(General Electric Co.,Fairfield CT))のターンテーブル上の、約800mLの周囲温度の水が入ったビーカーが一緒に置かれている、50mLのパイレックス(登録商標)ビーカーに入れた。この混合物を高(HIGH)出力で5分間加熱した後、温められた水を約800mLの周囲温度の水と置き換えた。5分間のマイクロ波による加熱サイクルを、マイクロ波による加熱時間が合計60分間になるまで繰り返した。シリカおよびエタノール/トリエチルアミン溶媒の混合物を用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)では、N−(パーフルオロヘキシルエチル)アミンが完全に消失していることが示された。実施例1におけるようにポリマーを水酸化ナトリウム水溶液中で加水分解し、実施例1におけるようにカーペットに塗布してから、耐汚れ性および耐汚染性を試験した。結果を表3に示す。
【0071】
(比較例A1およびA2)
比較例A1およびA2は、実質的に同じ2つのカーペットでの汚れの小さな差を考慮に入れた反復試験対照標準(カーペットは、耐汚れ性および耐汚染性を付与するための処理は行われなかった)である。試験は、実施例1におけるように試験法1〜4を用いて実施した。比較例A1およびA2は、実施例1で使用したナイロンカーペットであり、どんな局所的処理も施されていないものである。試験結果を表3に示す。
【0072】
(比較例B1/B2)
比較例B1およびB2は、市販の防汚剤を使用したものである。比較例B1およびB2では、実施例1におけると同じカーペットを、実施例1におけると同じ塗布方法を用いて、ソイル・レジスト1(Soil Resist 1)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)の本願特許出願人から入手可能な市販の防汚剤)で処理し、乾燥カーペット重量を基準にして約600μg/gのフッ素濃度となるようにした。これらの比較例は、実施例1におけるように試験法1〜4を用いて試験した。結果は表3にあるが、それは防汚剤だけではコーヒー汚染に対する耐汚染性はもたらされないことを示している。
【0073】
(比較例C)
比較例Cでは、カーペットは、実施例3〜4の手順を用いて、N−(パーフルオロアルキルエチル)アミンと反応させていないオクテン−無水マレイン酸コポリマーで処理した。このオクテン−無水マレイン酸コポリマーは加水分解されていた(hおよびiがゼロである式1)。これは、実施例1におけるような試験法を用いて、実施例3〜4と並行して試験した。結果を表3に示す。
【0074】
(比較例D、E、F)
比較例Dでは、実施例3〜4におけるのと同じカーペットを、実施例3〜4の手順を用いて、N−(パーフルオロアルキルエチル)アミンと反応させていないスチレン−無水マレイン酸コポリマーで処理した。このスチレン−無水マレイン酸コポリマーは加水分解されていた(hおよびiがゼロである式1)。比較例EおよびFでは、実施例3〜4におけるのと同じカーペットを、実施例3〜4の手順を用いて、スチレン−無水マレイン酸ポリマー(テトラヒドロフラン溶媒中の各量のN−(パーフルオロヘキシルエチル)アミンと反応させて、表3に示すように特定量のフッ素(モル%)をポリマーに含有させてある)で処理した。これらの比較例は、実施例1におけるような試験法を用いて試験した。結果を表3に示す。比較例EおよびFは、比較例Dと比較してコーヒーに対する抵抗性が劣っており、このことは、RCHCHNHの含有量を多くしても本発明と同じような効果がないないことを示している。
【0075】
【表4】

【0076】
(a)Oct/MAはポリ(1−オクテン−co−無水マレイン酸)であり、St/MAはポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)である。APE/MAはポリ(アリルフェニルエーテル−co−無水マレイン酸)である。
(b)NTは未試験の意味である。別々の試験セットは太線で区切ってある。
(c)コーヒー汚れの防止の場合、パーセントが大きいほど性能が優れていることを示す。
(d)汚れデルタEの場合、数字が小さいほど性能が優れていることを示す。
【0077】
表3は、本発明の組成物の場合、単一の組成物を基材に塗布することで、耐汚染性および耐汚れ性の両方が付与されることを示している。従来の汚染防止剤および防汚剤は、優れた耐汚染性かまたは優れた耐汚れ性のいずれかを付与するが、通常は、その両方を同時に付与することはない。表3は、本発明の組成物が、先行技術の防汚剤と比較した場合に、同等または改善された耐汚れ性とともに優れた耐コーヒー汚染性を示したことを示している。このことは、実施例1および2を比較例A1(対照標準)およびB1(従来の防汚剤)と比較し、さらに実施例3および4を比較例A2(対照標準)およびB2(従来の防汚剤)と比較すると分かる。表3は、先行技術の汚染防止剤と比較すると、本発明の組成物が同等の耐汚れ性とともに改善された耐汚染性を示したことも示している。このことは、実施例3および4を比較例C(従来の汚染防止剤)と比較すると分かる。比較例EおよびFを比較例D(従来の汚染防止剤)と対比すると、R−CHCHNHの含有レベルを高くしても同じほど効果的ではないことが分かる。実施例5は、コーヒー汚染防止は、R−CHCHNHを含有したポリ(アリルフェニルエーテル−co−無水マレイン酸)を使用すると、効果的であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式1
【化1】

(式中、
Dはアリールオレフィン、ビニルエーテル、アリルエーテル、α−オレフィンおよびジエンよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーであり、
各Mは独立に、H、NH、Ca、Mg、Al、または第I族金属であり、
RはH、C〜C16のアルキル基、またはアリールアルキル基であり、
は、全てフッ素化された直鎖または分岐のC〜C20の脂肪族基またはその混合物であって、任意選択的に少なくとも1個の酸素原子によって中断されており、
xは1〜約10、またはそれらの組合せであり、
kおよびhはそれぞれ独立して正の整数であり、
iおよびjは両方が同時にゼロではないとう条件で、iおよびjはそれぞれ独立してゼロまたは正の整数であり、
k対(h+i+j)のモル比が約3:1から約1:3であり、h対(i+j)のモル比が約1:99から約22:78である)
のモノマーを含むことを特徴とするコポリマー。
【請求項2】
が式F(CFCF)(式中、nは1〜約10である)を有するパーフルオロアルキル基またはその混合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Dがスチレン、ブチルビニルエーテル、フェニルアリルエーテル、1−オクテン、若しくは1,3−ブタジエンであり、かつMがH、Na若しくはKであるか、または1つのMがHであり残りがNa若しくはKであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
界面活性剤、汚染防止剤、防汚剤、撥水剤、撥油剤、帯電防止剤、抗微生物剤、軟化剤、酸化防止剤、耐光剤、耐変色剤、または水をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
無水マレイン酸コポリマーをN−(パーフルオロアルキルアルキル)アミンと接触させることによって製造される組成物であって、前記N−(パーフルオロアルキルアルキル)アミンが下記の式2
−(CHNRH 式2
(式中、
は、式F(CFCF)(式中、nは1〜約10である)を有するパーフルオロアルキル基またはその混合物であり、
xは1〜約10である)
のものであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
h対(i+j)のモル比が約5:95から約20:80であり、分子量が少なくとも800であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
耐汚染性および耐汚れ性を基材に付与する方法であって、下記の式1
【化2】

(式中、
Dはアリールオレフィン、ビニルエーテル、アリルエーテル、α−オレフィンおよびジエンよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーであり、
各Mは独立にH、NH、Ca、Mg、Al、または第I族金属であり、
RはH、C〜C16のアルキル基、またはアリールアルキル基であり、
は、全てフッ素化された直鎖または分岐のC〜C20の脂肪族基またはその混合物であって、任意選択的に少なくとも1個の酸素原子によって中断されており、
xは1〜約10またはそれらの組合せであり、
kおよびhはそれぞれ独立して正の整数であり、
iおよびjはそれぞれ独立して正の整数であるか、またはiがゼロでありjが正の整数であり、
k対(h+i+j)のモル比が約3:1から約1:3であり、かつh対(i+j)のモル比が約1:99から約22:78となるようになっている)
の組成物を単一の工程で前記基材に塗布することを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記組成物を繊維基材に、基材の約100重量ppmから約1000重量ppmで塗布することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物を塗布した後に前記基材を加熱することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物を、界面活性剤、汚染防止剤、防汚剤、撥水剤、撥油剤、帯電防止剤、抗微生物剤、軟化剤、酸化防止剤、耐光剤、耐変色剤、または水が存在する状態で塗布することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
請求項1または6に記載の組成物が塗布されていることを特徴とする基材。

【公表番号】特表2008−539309(P2008−539309A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508989(P2008−508989)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/015426
【国際公開番号】WO2006/116279
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】