説明

ヒアルロン酸酵素複合体ゲル

【課題】タンパク質分解酵素の架橋体よりもさらに水溶液中で安定なタンパク質分解酵素製剤を提供する。
【解決手段】タンパク質分解酵素を担持した架橋ヒアルロン酸ゲルを、ヒアルロン酸10w/v(重量/体積比)%以上と、タンパク質分解酵素と、架橋剤0.02〜1w/v%と、水とを含む混合物を酸又はアルカリ条件下で攪拌混合することによって製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素を担持したヒアルロン酸ゲル及びこれを含む製剤に関し、具体的には、タンパク質分解酵素を担持したヒアルロン酸ゲルと、これを含む皮膚外用剤又は医薬品組成物とに関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質分解酵素は、皮膚表面の老化した角層細胞を剥離し除去することによって皮膚の美容維持及び向上に役立つ。しかしタンパク質分解酵素は、水溶液中で自己消化によって失活してしまうため、従来は洗顔クレンザー等の油性溶媒を用いる皮膚外用剤には配合されていたが、化粧水や水性クリームには配合できなかった。また、タンパク質分解酵素は、経皮吸収され、皮膚内部の老化していない角層細胞に作用して皮膚の正常な角層細胞のターンオーバーを乱すおそれがある。そのため、洗顔クレンザーのような短い時間だけ皮膚に接触させる化粧料にしかタンパク質分解酵素は配合されなかった。
【0003】
特許文献1に説明されるとおり、タンパク質分解酵素をグルタルアルデヒドのような架橋剤で連結したタンパク質分解酵素の架橋体は、高分子化されるので、経皮吸収されにくく、水溶液中の安定性も単量体の酵素分子よりは高い。しかし、タンパク質分解酵素架橋体を含む化粧料は、有効期限表示を付して冷蔵保存し、消費者に直接配送する販売形態をとる必要があった。
【特許文献1】特開2006−8630号出願公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、タンパク質分解酵素の架橋体よりもさらに水溶液中で安定なタンパク質分解酵素製剤を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、タンパク質分解酵素を担持したことを特徴とする架橋ヒアルロン酸ゲルを提供する。
【0006】
本発明のタンパク質分解酵素を担持した架橋ヒアルロン酸ゲルは、ヒアルロン酸10w/v(重量/体積比)%以上と、タンパク質分解酵素と、架橋剤0.02〜1w/v%と、水とを含む混合物を酸又はアルカリ条件下で攪拌混合することによって製造される場合がある。
【0007】
本発明のタンパク質分解酵素を担持した架橋ヒアルロン酸ゲルは、前記混合物中のヒアルロン酸高分子鎖を物理的に切断することなく攪拌混合することによって製造される場合がある。
【0008】
本発明の架橋ヒアルロン酸ゲルに担持されるタンパク質分解酵素は、セリンプロテアーゼの場合がある。
【0009】
本発明の架橋ヒアルロン酸ゲルに担持されるタンパク質分解酵素は、Bacillus subtilis由来のプロテアーゼと、Streptomyces griseolus由来のプロテアーゼと、Carica papaya L.(Caricaseae)の果汁由来のプロテアーゼとからなるグループから選択される場合がある。
【0010】
本発明のタンパク質分解酵素を担持した架橋ヒアルロン酸ゲルのタンパク質分解酵素活性は、該ゲルの適用後少なくとも4時間にわたって、タンパク質分解酵素を含まない架橋ヒアルロン酸ゲルの対照のタンパク質分解酵素活性と実質的に同じだが、遅くとも前記ゲルの適用後7時間経過後にはタンパク質分解酵素活性を発揮する場合がある。
【0011】
本発明は、本発明の前記架橋ヒアルロン酸ゲルを含むことを特徴とする皮膚外用剤を提供する。
【0012】
本発明は、本発明の前記架橋ヒアルロン酸ゲルを含むことを特徴とする医薬品組成物を提供する。
【0013】
本発明のタンパク質分解酵素を担持する基材となる架橋ヒアルロン酸ゲルは、きわめて高濃度のヒアルロン酸と少量の架橋剤とを反応させれて得られるものであって、架橋率が低いにもかかわらず、優れた粘弾性を示す架橋ヒアルロン酸ゲルである。かかる架橋ヒアルロン酸ゲルは、例えば、WO2006/051950号国際公開公報に説明されている。
【0014】
本明細書において、ヒアルロン酸は、例えば、鶏冠その他の動物組織からの単離抽出法か、ストレプトコッカス属等の微生物を用いた発酵法かによって得ることができる。本発明のヒアルロン酸は、ヒアルロン酸ナトリウム円、ヒアルロン酸カリウム塩等のヒアルロン酸金属塩や、ヒアルロン酸のヒドロキシル基、カルボキシル基等をエーテル化、エステル化、アミド化、アセタール化、ケタール化させて得られるヒアルロン酸誘導体等の場合がある。本発明のヒアルロン酸は、バイオヒアロ12(株式会社 資生堂)、ヒアルロン酸(株式会社紀文食品)等のように商業的に入手可能な場合がある。
【0015】
本発明のヒアルロン酸ゲルのヒアルロン酸濃度は、10w/v%以上含むことが必要とされる。かかる高濃度のヒアルロン酸を含む混合物中では、ヒアルロン酸分子鎖が非常に複雑に絡み合った状態で存在するため、ヒアルロン酸鎖同士が部分的に架橋されるので、分子鎖同士が立体的に束縛しあうことになり、ネットワーク構造を強固に安定化することができる。このため、ヒアルロン酸を10w/v%以上含む混合物を架橋反応に用いることにより、架橋率が低いにもかかわらず優れた粘弾性を示す架橋ヒアルロン酸ゲルを製造することができると考えられる。本発明におけるヒアルロン酸の濃度は、10〜20w/v%であることが好ましい。
【0016】
本発明に用いるヒアルロン酸の分子量は、特に限定されないが、分子量10万以上が好ましく、分子量50万〜300万程度であることがより好ましい。通常、一般的に用いられるヒアルロン酸はそのほとんどが分子量10万以上である。かかる分子量10万以上のヒアルロン酸を10w/v%以上含む高濃度ヒアルロン酸水溶液は、非常に高粘度のゲル状を呈していて、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率G’は15000Pa以上となる。ヒアルロン酸濃度が10w/v%以上であったとしても、ヒアルロン酸が水中に分散したいわゆる溶液状態で架橋反応を行っても所望の粘弾性を有する架橋ヒアルロン酸ゲルは得られない場合がある。このため、本発明においては、架橋反応に供する前の混合物の貯蔵弾性率G’(周波数1Hz)は15000Pa以上であることが好ましい。また、分子量1万程度の低分子化ヒアルロン酸の場合には、ヒアルロン酸濃度が10w/v%以上としても、ヒアルロン酸が水中に均一に分散した溶液状となってしまうことがあり、架橋率(ヒアルロン酸構成単位当たりに結合する架橋剤の分子数)を低くした場合に柔らかくなってしまい、所望の粘弾性を得ることができないので好ましくない。
【0017】
本発明のヒアルロン酸を架橋化するための架橋剤は、ヒアルロン酸の高分子鎖間を化学結合によって架橋し得るものであればいかなる化合物でもかまわない。ヒアルロン酸の架橋剤としては、ヒアルロン酸分子内のカルボキシル基、水酸基、アセトアミド基といった反応性官能基と反応して共有結合を形成し得る官能基を複数有する多官能性化合物を用いることができる。本発明の用いる架橋剤としては、1,3−ブタジエンジエポキシド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,5−ヘキサジエンジエポキシド等のアルキルジエポキシ体、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル体、ジビニルスルホン、エピクロルヒドリン等がある。これらのうち、特に、ジビニルスルホン、1,4−ブタンジオール・ジグリシジルエーテル及びエチレングリコール・ジグリシジルエーテルが好ましい架橋剤である。本発明の架橋剤として、以上に列挙した化合物を適宜組合せて使用する場合もある。
【0018】
本発明における架橋剤の配合量は、特に限定されないが、架橋ヒアルロン酸ゲルの生体適合性の観点からは可能な限り少量の架橋剤で架橋反応を行うことが望ましい。具体的には、架橋反応に供する混合物中の架橋剤の濃度は、0.02〜1w/v%が好ましく、0.05〜0.5w/v%がより好ましい。あるいは、混合物中の架橋剤の濃度はヒアルロン酸構成単位に対して0.02〜2w/w%(重量%)であることが好ましい。
【0019】
本発明では、架橋反応時のヒアルロン酸の反応性を高める目的で、塩酸、硫酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基、あるいは、リン酸塩、4級アンモニウム塩等の適当なバッファーにより混合物のpHを適宜調整し、酸又はアルカリ条件下で攪拌混合をおこなう。具体的には、例えば、酸条件下においてはpH1〜5、アルカリ条件下においてはpH10〜14となるように混合物のpHを調整することが好ましい。
【0020】
本発明の架橋ヒアルロン酸ゲルに担持されるタンパク質分解酵素は、とくに限定はなく、コラゲナーゼ、トリプシン、キモトリプシン、プロテイナーゼKのような全てのエンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼを含むいかなるタンパク質分解酵素を用いてもかまわない。前記タンパク質分解酵素はセリンプロテアーゼであることが好ましい。本発明のタンパク質分解酵素を担持した架橋ヒアルロン酸ゲルがヒトの体内に留置される場合には、本発明のタンパク質分解酵素はヒト由来のものであることが好ましい。本発明のタンパク質分解酵素は、Bacillus subtilis由来のプロテアーゼと、Streptomyces griseolus由来のプロテアーゼと、Carica papaya L.(Caricaseae)の果汁由来のプロテアーゼとからなるグループから選択される場合がある。これらはわが国の医薬部外品の成分表示に認められたタンパク質分解酵素である。以下、本明細書において、Bacillus subtilis由来のプロテアーゼと、Carica papaya L.(Caricaseae)の果汁由来のプロテアーゼとをそれぞれ、スブチリシン(subtilisin)と、パパイン(papain)という。ここでスブチリシンは、バシラス属の細菌、特にBacillus subtilisによって産生されるセリンプロテアーゼであり、例えば、Bacillus amyloliquefaciensからのスブチリシンBPN’、Bacillus licheniformisからのスブチリシン カールスバーグ(Carlsberg)、バシラスDYからのスブチリシンDY、Bacillus amylosachariticusからのスブチリシン アミロサッカリチクスなどを含む。本発明の架橋ヒアルロン酸ゲルには、以上に説明したタンパク質分解酵素のうち1種類または2種類以上が担持される。本発明の架橋ヒアルロン酸ゲル中のタンパク質分解酵素の含量は、タンパク質分解酵素の粉末と、ヒアルロン酸粉末との混合物中のタンパク質分解酵素の粉末重量比の百分率で表される。すなわち、タンパク質分解酵素の粉末0.1、0.15及び0.2gと、ヒアルロン酸粉末0.9、0.85及び0.8gとの混合物から作成されたタンパク質担持架橋ヒアルロン酸ゲルのタンパク質分解酵素含量は、それぞれ10、15及び20(粉末重量比)%である。
【0021】
本発明のタンパク質分解酵素を担持した架橋ヒアルロン酸ゲルには、通常、医薬品、化粧料等に用いられることがある成分を本発明の目的及び効果に影響が出ない範囲で配合してもかまわない。配合可能は成分には、アスコルビン酸及びその誘導体、グリセリン等の保湿剤、レチノール及びその誘導体、サリチル酸等の抗炎症剤等がある。
【0022】
本発明の架橋ヒアルロン酸ゲルを製造する方法は、特に限定されないが、混合物中のヒアルロン酸高分子鎖を物理的に切断することなく攪拌混合することが好ましい。ヒアルロン酸は極めて高い水膨潤性を有しており、例えば、約10w/v%程度のヒアルロン酸水溶液では極めて高粘度のゲル状を呈する。このため、例えば、一般的に広く用いられるプロペラミキサーやディスパー等の回転型攪拌混合装置では、攪拌羽根や装置壁とUに付着してしまい、系全体を均一に攪拌混合することが難しい。さらに、このような攪拌混合装置を用いて無理に攪拌羽根を回転させて攪拌混合した場合には、鋭利な攪拌羽根によってヒアルロン酸高分子の分子鎖を物理的に切断してしまうこととなり、目的とする、立体的なネットクワーク状構造を有する架橋ヒアルロン酸ゲルは得られない。
【0023】
これに対し、自転−公転式混合装置、パン生地練り装置、もちつき装置を用いたり、人間の手で揉んで攪拌することによって、混合物中のヒアルロン酸高分子を物理的に切断することなく攪拌混合することができ、10w/v%以上という極めて高いヒアルロン酸濃度条件においても、容易に均一な架橋構造を形成させることが可能となる。
【0024】
本発明の皮膚外用剤は、剤型及び/又は使用形態を問わず、皮膚表面に適用するなんらかの製剤であって、化粧料、医薬品及び医薬部外品等を含む。本発明の皮膚外用剤はタンパク質分解酵素が固定化されているので、皮膚表面の老化した角層細胞を剥離し除去することによって皮膚の美容維持及び向上に役立つが、経皮吸収されることがないので、皮膚内部の老化していない角層細胞に作用して皮膚の正常な角層細胞のターンオーバーを乱すおそれはない。
【0025】
本発明の医薬品組成物は、皮膚表面に適用するものに限定されず、呼吸器系、消化器系、泌尿器系及び/又は循環器系のいずれかの内腔表面に適用されたり、皮膚内部その他の間充織組織や充実組織に包埋される場合がある。
【0026】
本発明のタンパク質分解酵素を担持した架橋ヒアルロン酸ゲルのタンパク質分解酵素活性は、該ゲルの適用後少なくとも4時間にわたって、タンパク質分解酵素を含まない架橋ヒアルロン酸ゲルの対照のタンパク質分解酵素活性と実質的に同じだが、遅くとも前記ゲルの適用後7時間経過後にはタンパク質分解酵素活性を発揮する場合がある。そこで、本発明のタンパク質分解酵素を担持した架橋ヒアルロン酸ゲルを適用する際に施した別の処理に対する生体組織の反応が終わった後でタンパク質分解酵素を作用させることができる。例えば皮膚のバリヤー機能は約3時間で修復することが知られている。そこで、皮膚のバリヤー機能に影響を与える処置を施した後、本発明の皮膚外用剤を適用することにより、皮膚のバリヤー機能の修復が完了した後でタンパク質分解酵素を作用させて、皮膚表面の老化した角層細胞の剥離除去を行うことができる。あるいは、本発明の医薬品組成物を生体内に配置する際の生体への侵襲に対する生体の急性又は短時間の修復反応が完了した後で本発明の医薬品組成物のタンパク質分解酵素活性を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に実施例を示すが、これらは実施態様の例示を意図しており本発明の範囲を限定することは意図しない。
【実施例1】
【0028】
1.タンパク質分解酵素を担持した架橋ヒアルロン酸ゲルの製造と、タンパク質分解酵素活性の測定
1−1.方法
タンパク質分解酵素を担持した架橋ヒアルロン酸ゲルの調製
直径70mmの乳鉢に局方注射用蒸留水及び2N NaOHを用いて調製した0.1N NaOH水溶液4.95mLを入れ、DMSOで10倍に希釈した架橋剤ジビニルスルホン(DVS)50μL(0.03mmol)を加えて混合液を十分に撹拌した。医薬品用ヒアルロン酸(分子量約100万)粉末と、タンパク質分解酵素の粉末との合計1gを混合したうえで前記乳鉢に加えて、直ちに乳棒で撹拌・混合しヒアルロン酸を半透明ゲル状の塊にした。該ゲル状の塊を滅菌プラスチック袋(70x100mm)に入れ、棒状に成形し、10分間手で揉んだ。その後前記プラスチック袋を室温で4時間静置して架橋反応を進行させた。架橋反応終了後、前記ゲルを1Lの生理食塩水中で1日間、さらに1Lの等張リン酸緩衝液(リン酸として10mmol/L、以下「PBS」という。)中で9日間、洗浄及び膨潤させた。
【0029】
(タンパク質分解酵素活性の測定)
タンパク質分解酵素反応は、前記タンパク質分解酵素を担持した架橋ヒアルロン酸ゲルを破砕したものか、対照としての遊離タンパク質分解酵素かと、合成基質であるベンゾイル−L−アルギニンエチルエステル塩酸塩とを37°Cでインキュベーションすることにより実行された。タンパク質分解酵素活性は、常法に従い、サンプル1mLあたり1分間に分解される基質BAEEのモル数(μmol/min/mL)を測定した。
【0030】
1−2.結果
10、15及び20%(粉末重量比)パパイン担持架橋ヒアルロン酸ゲルの9日間の洗浄及び膨潤の後の膨潤率は、それぞれ1765、1467及び1295%であった。前記ゲルを破砕して得られたスラリーの酵素活性を測定した結果、図1に示すとおり、前記ゲルスラリーの酵素活性は、それぞれのヒアルロン酸ゲルに担持されたパパインの含量に比例していた。
【実施例2】
【0031】
2.過酷条件におけるパパイン担持架橋ヒアルロン酸ゲルの安定性の検討
2−1方法
本発明のタンパク質分解酵素担持架橋ヒアルロン酸ゲルの安定性を検討するために、実施例1に記載の方法により調製されたパパイン含量が20%(粉末重量比)のパパイン担持架橋ヒアルロン酸ゲルの破砕物を50°C、4週間という過酷条件で保存し、保存前後の酵素活性を定法に従って測定した。対照実験として等張リン酸緩衝液(PBS)に溶解させた遊離パパインについても同一条件下での保存前後の酵素活性を測定した。
【0032】
2−2結果
対照実験として行なったPBSに溶解させた遊離パパインの酵素活性は前記過酷条件下での保存後に保存前の91.4%を失い8.6%しか残存しなかったが、前記20%パパイン担持架橋ヒアルロン酸ゲルの酵素活性は64.1%しか失われず35.9%が残存した。この結果から、本発明のタンパク質分解酵素担持架橋ヒアルロン酸ゲルは安定性が高いことが明らかになった。
【実施例3】
【0033】
3.スブチリシンを担持した架橋ヒアルロン酸ゲルの調製
パパインのかわりにスブチリシンを用いて実施例1に記載の方法により担持した架橋ヒアルロン酸ゲルを調製し、その酵素活性を定法に従って測定した。
【0034】
その結果、20%(粉末重量比)スブチリシンを担持した架橋ヒアルロン酸ゲルは、0.8014μmol/min/mLの酵素活性を示した。したがって、ヒアルロン酸を用いるこの酵素固定化方法はパパインにかぎらずスブチリシンのような他のセリンプロテアーゼを含むタンパク質分解酵素の固定化にも有用であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】パパイン担持架橋ヒアルロン酸ゲルのパパイン含量(10、15、20%)の破砕物の酵素活性を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質分解酵素を担持したことを特徴とする、架橋ヒアルロン酸ゲル。
【請求項2】
ヒアルロン酸10w/v%以上と、タンパク質分解酵素と、架橋剤0.02〜1w/v%と、水とを含む混合物を酸又はアルカリ条件下で攪拌混合することによって製造されることを特徴とする、請求項1に記載の架橋ヒアルロン酸ゲル。
【請求項3】
前記混合物中のヒアルロン酸高分子鎖を物理的に切断することなく攪拌混合することによって製造されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の架橋ヒアルロン酸ゲル。
【請求項4】
前記タンパク質分解酵素はセリンプロテアーゼであることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の架橋ヒアルロン酸ゲル。
【請求項5】
前記タンパク質分解酵素は、Bacillus subtilis由来のプロテアーゼと、Streptomyces griseolus由来のプロテアーゼと、Carica papaya L.(Caricaseae)の果汁由来のプロテアーゼとからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の架橋ヒアルロン酸ゲル。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の架橋ヒアルロン酸ゲルを含むことを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の架橋ヒアルロン酸ゲルを含むことを特徴とする医薬品組成物。


【図1】
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【公開番号】特開2010−130920(P2010−130920A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308206(P2008−308206)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】