説明

ヒトおよび動物の寄生虫感染の治療

【課題】 動物やヒトにおける寄生虫などの感染の治療または予防方法を提供する。
【解決手段】 ヒトやヒト以外の動物中の原虫を含む、線虫類やその他の寄生性生物の寄生感染の治療または予防に金属イオンキレート組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトと、馬、羊、牛、猫、犬を含むヒト以外の動物中の、原虫種とその他の種類を含む寄生線虫類および(その他の)寄生性の生物の感染治療用の金属イオンキレート組成物の製造と用途に関する。
【背景技術】
【0002】
線虫類には非常に多くの種類があり、既知種が15000種ほどある一方、少量の土壌でも何千種類も発生し、その大多数には名前すら付いていない。それらは多産系の繁殖生物であり、中には何百万もの卵を含み、1日に200000個もの卵を産むものもある。動物に侵入する種々の寄生線虫類の中には、肺虫、鞭虫、鉤虫、蟯虫、回虫、および種々の寄生糸状虫が含まれる。動物に寄生するその他の生物としては、条虫、特にサナダムシ、およびウマバエが挙げられる。
【0003】
通常、線虫の胴体は細長く、糸に似ている場合があり、表皮は細胞膜で仕切られていない細胞物質と核の集まりである。この表皮は、とても丈夫で柔らかいキューティクルと呼ばれる厚い外層をなしている。表皮の下層には縦方向に配置された長い筋肉があり、これにより、線虫は体を左右に曲げることができる。これらの筋肉は、背中側と腹側に沿う2本の神経により動かされている。
【0004】
線虫はまた、頭部や体に沿う様々な開口部から食料を摂取することができ、その頭部や開口部では、食料を取り込み、細かく砕き、そして消化することができる。老廃物は、胴体の両側にある排泄管を通して排出される。
【0005】
線虫属の中には、何種類かの吸血種がある上、栄養をバクテリアに依存したり、宿主動物が食べた食物を栄養とする種類もある。吸血種は、一動物に数千匹が寄生し、1日に0.1 mLもの血液を消費し、吸血された動物は嗜眠状態になる。
【0006】
寄生線虫(主に回虫であるが、扁形虫も同じように存在する場合がある。)の多くは、動物の消化管および腸管に生息し、もし治療しなければ、病状や健康状態が悪化する結果となることがある。
【0007】
多くの線虫類は、好ましくない状況になったとき、生命過程を一時的に止めることができる。例えば、極度の乾燥、熱、寒さを乗り切り、その後、生活を再び開始する。この状態は、クリプトビオシス(生物の永久的休眠状態)として知られている。
【0008】
長年にわたり発展してきた家畜飼育実務において、線虫類は、比較的限定された範囲で感染した動物から糞とともに排出され、結果としてその土地が線虫類やその卵に感染された状態になることが分かっている。またこれにより、その土地に放牧されている家畜が、線虫やその卵を拾って食べ、たちまち再感染が起こり悪循環に陥ることもわかっている。
【0009】
動物は、寄生した線虫類によりやせ細り、もし治療をしなければ、極端な場合、その線虫により、動物が食べ消化しようとする栄養を奪われ、栄養失調により亡くなる場合がある。
【0010】
動物中にみられる寄生線虫類の多くは、ヒトにも寄生する。その感染源はおそらく動物である。ヒトに寄生した線虫類も、動物と同じ影響をヒトに及ぼす。
【0011】
寄生虫類や寄生線虫類に寄生されたことのある動物は、主に馬、牛及び羊である。ペットもある程度は感染することがある。
【0012】
例えば、羊の中に存在する主な種類として、回虫類(Teladorsagia circumcincta)、トリコストロンギルス・コルブリフォルミス(Trichostrongylus colubriformis)、ヘモンクス・コントルタス(Haemonchus contortus;捻転胃虫あるいは蠕虫吸血虫)、オステルタギア種(Ostertagia Sp.)から種々の肺線虫(Dictyocaulus filana)、サナダムシ(Moniezia expansa) また同時に、主に肝蛭(扁形動物)の肝吸虫がある。
【0013】
牛の場合、捻転胃虫(Haemonchus contortus;吸血種)だけでなくその他の消化管線虫(Haemonchus placei)のようなものも、オステルターグ胃虫(Ostertagia ostertagi)やクーペリア・オンコフォラ(Cooperia oncophora)とともに寄生される。また、肺虫、牛肺虫(Dictyocaulus viviparus、Dictyocaulus viviparous)などもおそらく存在する。
【0014】
馬の場合、馬蟯虫(Oxyuris equi)、回虫類(Tarascaris equorum)、馬円虫(Strongylus equines)、無歯円虫(大)(Strongylus edentatus)、普通円虫(小)(Strongylus vulgaris)、緬羊胃虫(Haemonchus Contortus;吸血種)、またその他の馬の胃中において孵化するウマバエの卵がある。
【0015】
犬や猫では、寄生性の線虫類である鉤虫、例えば犬では、ズビニ鉤虫(Ancylostoma duodenale)や犬回虫(Toxocara canis)、猫では、猫鉤虫(Ancylostoma tubeforme)や猫回虫(Toxocara cati)がある。
【0016】
これらの寄生線虫類は、動物の体内で様々な生涯過程を経る。そして、卵、幼虫あるいは成虫として存在している。動物の消化管や腸内に存在するときは、腸壁や腸壁組織に宿り、不定期間そこで生存することができ、懸念される悪影響を及ぼす。寄生線虫類は、成長する幼若動物に栄養を与えないことによって幼若動物の成長を抑制する。
【0017】
これらの寄生虫感染に対する現在の治療では、大環状ラクトン(Moxidection;神経系の塩素チャネルに作用する)、イベルメクチン(Ivermectin;大環状ラクトン;寄生線虫の神経系でグルタミン酸開口型塩化物チャネルと結合する)、ベンズイミダゾール類(Oxibendazole;チューブリン・サブユニットと結合し、微小管形成を妨げる)、フェンベンダゾール(Fenbendzole;ベンズイミダゾール系;神経系を阻害する)およびパモ酸ピランテル(Pyrantel pamoate;イミダゾチアゾール;遮断薬として筋活動に作用する)と呼ばれる化学薬品が用いられる。
【0018】
寄生線虫類と寄生虫類は、長年の間にこれらの化学薬品の作用に耐性を示すようになってきた。その結果、寄生された動物を治療するのに、規定の投与量ではもはや効果的でなくなった。耐性の問題を解決するために投与量を増やせば、多量の化学薬品の毒性が、動物の治療に対して定められた安全限界を超えてしまうだろう。従って、これは明らかに現実味のない選択肢である。
【0019】
このような耐性の構築によって、動物の成長や健康に影響を及ぼす寄生虫の侵入がますます増大する。このことは、例えば、食肉用動物の発展を停止させたり、その動物が治療されない場合は栄養失調により死に至ることもあることを意味する。馬の場合では、寄生虫侵入の進行は、レースのような専門的な活動能力だけでなく、一般的な任務に利用できる能力にさえ深刻な影響を及ぼす。
【0020】
もし動物が線虫感染に対して治療されなければ、最終的には動物は自己が食べた食物から十分な栄養を摂取できないという事実により、彼らは自己の体の脂肪分、その後は筋肉組織を消費する、ということが示されてきた。これは、悪液質(Cachexia)と呼ばれる筋肉を消耗してしまう病気である。動物の体は、すべての筋肉組織を食べ尽くされることによりショック症候群に陥り、立つことも動くこともできなくなる。そのような動物は最終的には栄養失調症により死に至るかもしれない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、上記の各問題を回避するか、最小限に抑えることである。
【0022】
動物やヒト内に存在する可能性のあるその他の寄生性の生物として、寄生原虫類とブルセラ菌がある。
【0023】
存在する可能性のある原虫は、アメーバ(amoeba)、鞭毛虫類(flagellates)、膣トリコモナス(Trichonomas vaginalis)、アカントアメーバ属(Acanthamoeba)、ジアルジア属(Giardia)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)、エントアメーバ属(Entamoeba)、イソスポラ属(Isospora)、バランチジウム属(Balantidium)、馬原虫性脊髄脳炎原虫(Equine Protozoal Myeloencephalitis)、コクシジウム(Coccidia)、リーシュマニア属(Leishmania)、トリパノソーマ属(Trypanosoma)、ネグレリア属(Naegleria)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、そして特にヒト内のマラリア原虫(Plasmodium)がある。
【0024】
ブルセラ菌は、動物内ではバング菌 (Brucella abortus)として、アザラシ類内ではBrucella marisとして、およびヒト内ではBrucellosisとして存在する。
【0025】
寄生性の原虫およびブルセラ菌は、全ての場合で、第二鉄イオンおよび/または第一鉄イオンに依存し、また全ての場合において、赤血球に近づくために血流に入り、生き延びる。
【0026】
トリコモナス原虫は、ある程度、性感染症として馬に存在し、雌馬は、体重減少とともに生殖管から白い分泌物を排出する。その馬が繁殖用である場合、この症状が見られて妊娠しなくなるだろう。ヒトの膣トリコモナスは、性感染症として治療される。治療されなければ、膣分泌物の排出やかゆみなど、膣内でさまざまな症状が引き起こされる。
ヒトの膣トリコモナスは、男性の尿道にも存在することができ、性交渉により感染する。トリコモナス原虫は、汚れたタオル、便座、スポーツクラブの施設やサウナによっても感染可能である。
【0027】
コクシジウム類およびジアルジア属は、猫および犬の小腸の内膜に侵入し宿る二種類の原虫であり、水のような分泌物や出血性下痢のような重い症状を引き起こす。
【0028】
馬原虫性脊髄脳炎は、馬の神経系を侵す症状であり、脳組織の炎症および脊髄損傷を引き起こす。この症状を引き起こす寄生虫の原因は、サルコシスティス ニューローナ(Sarcocystis neurona)であり、通常オポッサムの糞に由来し、感染形は、「スポロシスト」である。スポロシストは、馬が食べる牧草から摂取され、その後スポロシストは血流に入り、そして脳に入り、脳組織や脊髄に損傷を形成する。馬が感染すると、協調運動が異常となり、協調制御によって脚を動かす能力がほとんどなくなる。
【0029】
アカントアメーバ属とネグレリア属の種類は、世界中に生息し、主に湖、川、温泉のような淡水源や風呂に存在する。また暖房装置、通気孔や空調設備内にも存在する場合がある。アカントアメーバ属の眼感染症は、汚れたソフトコンタクトレンズやコンタクトレンズ溶液の使用により感染する。この症状では、アカントアメーバは、角膜の切り傷や痛む所から目に入って感染し、角膜潰瘍を引き起こす。アカントアメーバは、切り傷や外傷部を通してまた鼻孔を通して皮膚に侵入することができる。いったん内部に入ると、血流を通って肺やその他の部分、特に神経系に移動することができる。神経系感染症の場合には、命にかかわることもある。ヒトの鼻孔から侵入したネグレリア属は、致命的な症状を引き起こすこともある。
【0030】
エントアメーバ属、クリプトスポリジウム属、イソスポラ属、バランチジウム属、ジアルジア属はすべて、ヒトの下痢の症状を引き起こすことに関係している。
【0031】
バランチジウム属の発生源は、豚に関係している。イソスポラ属の発生源は、通常ハイチやアフリカのエイズ患者に関係している。
【0032】
アフリカ睡眠病といわれる症状の原因となるトリパノソーマは、ツェツェバエ(Glossina)により媒介される。この感染は血流で発現し、昔から見られる睡眠病症候群である、熱発作やけん怠感を引き起こす。
【0033】
トキソプラズマ原虫は、主に猫科の動物の腸内系に見られる。しかし、ヒトに感染すると、トキソプラズマ脳炎(cogenital toxoplamosis)を引き起こす結果となる。
【0034】
リーシュマニア属は、広範囲に蔓延し、犬やげっ歯類に動物寄生虫感染症を引き起こす。
【0035】
マラリア原虫は、ヒトにマラリアを引き起こす寄生原虫である。この原虫としては、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫および熱帯熱マラリア原虫の4種類が知られ、熱帯熱マラリア原虫が最も一般的で、命の危険性のある種類である。マラリア原虫は世界中に存在し、ハマダラカによって媒介される。
ヒトが蚊に咬まれ感染すると、マラリア原虫は血中に侵入し、安全に発育できる肝臓へ直行し、二週間のうちに何千回も自身の分裂を繰り返す。マラリア原虫は、増殖するために第一鉄イオンおよび/または第二鉄イオンを必要とし、第一鉄/第二鉄イオンを肝臓、脾臓および骨髄へ血流を通して輸送するトランスフェリンと呼ばれる血漿タンパクを攻撃する。
【0036】
ブルセラ菌は寄生虫細菌であり、発症した動物に接触した羊、山羊、牛、鹿、ヘラジカ、豚、犬そしてヒトに、様々なブルセラ症を引き起こす。ヒトにおけるブルセラ症は、発熱、発汗、背中の痛み、頭痛、また身体の虚弱など、様々な症状を引き起こす。ヒトによる感染はまれであるが、授乳中の女性がその子供に感染させることもある。また性交渉による感染も記録されている、という報告もある。
【0037】
本発明の目的は、上記の各問題を回避するか、最小限に抑えることである。
【0038】
本発明者らは、従前の出願WO03/032944において、耐性菌の感染、皮膚や開いた傷口の汚染に対して有効な種々の局所的なキレート組成物を提案してきた。しかし、今まで、他の症状に対して前記組成物が実用可能であることは、示唆されていない。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明者らは、この度、WO03/032944(その内容は、参照することにより本明細書に含まれる。)に開示したキレート化合物を使用した組成物が、一つまたは複数の異なる方法で、動物とヒトへの種々の寄生虫感染症の治療に効果的であることを発見したので、以下にさらに論じる。
【0040】
特に本発明者らは、これらの組成物が長期間にわたる線虫類の殺虫作用を持ち、動物の消化器系のコントロール機能を回復させ、健康な状態にする作用があることを見出した。またこれらの組成物はウマバエ幼虫感染症の治療にも効果的であることも見出した。
【0041】
さらに本発明者らは、これらの組成物が血流に入り、第一鉄イオンと第二鉄イオンをキレートすることにより、血中に存在する種々の寄生原虫やブルセラ菌を撃退する能力があることを見出した。形成されたキレートは、寄生原虫およびブルセラ菌に第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを与えない。マラリア原虫の場合では、キレートは感染した細胞に実際に進入し、生物学的に著しい影響を及ぼし、その細胞は死に至る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の第一の態様では、寄生虫感染の治療薬あるいは予防薬を製造するための金属イオンキレート剤の使用を提供し、この態様において寄生虫は、前記金属イオンキレート剤による被覆の影響を受けやすく、また形成されたキレートによって攻撃されやすい。
【0043】
本発明の第二の態様では、寄生虫感染の治療薬あるいは予防薬を製造するための金属イオンキレート剤の使用を提供し、この態様において寄生虫は、栄養的に宿主の細菌群を必要とし、前記金属イオンキレート剤は、前記宿主の細菌群の生存に必要とされる金属イオンをキレート化することができる。
【0044】
例えば、その治療や予防は線虫類とそれらの食物源である細菌に関連しており、前記金属イオンキレート剤は、前記線虫類とそれらの食物源である細菌が生存のために必要とする少なくとも一つの金属イオンをキレート化することができる。
【0045】
本発明の第三の態様では、寄生虫感染の治療薬あるいは予防薬を製造するための金属イオンキレート剤の使用を提供し、この態様において寄生虫は、前記金属イオンキレート剤により麻痺状態になりやすい。
【0046】
本発明の第四の態様では、寄生虫感染の治療薬あるいは予防薬を製造するための金属イオンキレート剤の使用を提供し、この態様において寄生虫は、吸血あるいは血液に依存する寄生虫であり、前記金属イオンキレート剤は第一鉄イオンおよび/または第二鉄イオンをキレート化することができる。
【0047】
本発明のさらなる態様では、線虫、条虫、ウマバエの幼虫の侵襲、寄生原虫あるいはブルセラ菌の感染の予防薬あるいは治療薬を製造するための金属イオンキレート剤の使用を提供する。
【0048】
また本発明は、ヒトあるいはヒト以外の動物への寄生虫感染、特に線虫、条虫、およびウマバエの幼虫から選択される寄生虫の侵襲、寄生原虫およびブルセラ菌の感染の治療法あるいは予防法を提供する。
【0049】
存在可能な原虫は、アメーバ、鞭毛虫類、膣トリコモナス、アカントアメーバ属、ジアルジア属、クリプトスポリジウム属、エントアメーバ属、イソスポラ属、バランチジウム属、馬原虫性脊髄脳炎原虫、コクシジウム、リーシュマニア属、トリパノソーマ属、ネグレリア属、トキソプラズマ、そして特にヒト内のマラリア原虫がある。
【0050】
ブルセラ菌は、動物内ではバング菌 (Brucella abortus)として、アザラシ類内ではBrucella marisとして、およびヒト内ではBrucellosisとして存在する。
【0051】
さらに詳しく言えば、本発明者らは、線虫類が動物の胃や腸の中で台頭してくると、各内部のpHレベルが大幅に変化することを見出した。胃の中は、通常、食物の消化を助けるためpHレベル1〜2であるが、線虫感染によりpHレベルは7程度になることが知られている。腸管のpHレベルも、これらの線虫類の存在により変化する。線虫類は、食物を消化する細菌の数を、細菌自体を食物源として吸収することにより減らすと考えられる。pHの変化と消化を助ける細菌の減少は、動物の食物が十分に消化されず、動物が生存するための栄養分が得られないことを意味している。
【0052】
線虫類に対する最近の動物治療では、ある割合の線虫類を取り除き、その治療後、摂取した食物が消化されるように胃と腸の内部のバランスを保つために、活性細菌の投与が必要となる。
【0053】
線虫類およびその他の寄生生物は、おそらくさらに抵抗性の高い被膜で自身を覆うことで体内に入る治療薬の効果を阻止し、最近の治療に対する耐性を強化しているようにみられる。
【0054】
金属イオンキレート組成物は、線虫類を被膜で覆い、同時に完全に麻痺させ、彼らが動いたり食べたりできないようにすると考えられる。そうすることにより、線虫類が、存在している消化力のある細菌を全て食べるのを防ぐ。一定期間後、線虫類は食べることができないため死に至る。線虫類は胃と消化器系内で様々な成長段階のものが存在するが、それらは全てその影響を受ける。
【0055】
その他の駆除の方法としては、そこに存在する細菌を金属イオンキレート組成物で被膜し、細菌が生存するために必要とする、そこに存在する金属イオンをキレート化することである。これにより被覆され、窒息した細菌はやがて餓死し、線虫類の食物源が排除され、線虫類は死に至るだろう。
【0056】
吸血線虫類に関しては、金属イオンキレート組成物が一旦これらの線虫類の外皮に接触して覆うと、彼らが食物として必要とする血液に付随する鉄イオンを求めるキレート作用により、外皮が縮まると考えられる。このタイプの線虫類は、血液を摂取することにより大量の第一鉄あるいは第二鉄イオンを取り込んでいると考えられる。
【0057】
このように好ましいキレート剤は、種々の異なる金属イオンをキレート化することができ、多様な、直接的あるいは間接的な手段により線虫類を駆除する。特に、金属イオンキレート剤としては、Mg2+、Fe2+、Cu2+、Zn2+、Mn2+、Ni2+、およびSe2+から選択される複数の金属イオンとキレートを形成することが好ましい。8−ヒドロキシキノリンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム以外のほとんどの金属をキレート化する、特に広範囲にわたる作用があることが分かっている。
【0058】
この金属イオンキレート剤を計画された投与量で馬の治療をしたところ、最初の3日間は糞の中に線虫類の死骸は見られない。その後、最初に線虫類とその他の寄生虫(ウマバエなど)の死骸が見られ始め、その後糞の中に死骸が見られなくなるまで、大体6日間かかる。大多数の卵もこの間に排出される。
【0059】
他の死因により亡くなった馬の検視をしたところ、この治療をした後、胃と消化器系にほとんど線虫類は見られなかった。
【0060】
この治療が完了した後、体に良い働きをする細菌(pro-biotic)を投与すると、消化器系で自然発生する細菌の発育を助け、消化器系が回復するので有益である。
【0061】
通常、金属イオンと金属イオンキレート剤は一緒になって安定した錯体を形成することにより、細菌が生存能力を失い感染が収まるように、および/または線虫類への被膜を維持するために、キレートが解離するまで、金属イオンが十分な期間効果的に除去される。一般的に、金属イオンと金属イオンキレート剤は生理的状態、特に吸血線虫類が生育しやすい腸管内での状態で、安定したキレートを形成することが好ましい。
【0062】
通常、金属イオンと金属イオンキレート剤は一緒になって安定した錯体を形成することにより、寄生原虫とブルセラ菌の生存能力を失うように、金属イオンが効果的に除去されるかあるいはキレート化される。
【0063】
金属イオンキレート剤は、少なくとも一つの不飽和複素環六員環からなる異極化合物であり、その不飽和複素環六員環の少なくとも一つのヘテロ原子部分は水素受容体として働き、また前記化合物は、少なくとも一つの水素供与体部分(水酸基が都合が良い)を含むことが好ましい。さらに前記異極化合物は、それ自身によりあるいは他の置換基と一緒になって、立体障害を生じさせる置換基および/またはその分子を強い塩基性あるいは強い酸性にする置換基を持たず、前記異極化合物の一分子内の水素供与体と受容体部分と、前記異極化合物の他の分子内の水素供与体と受容体部分との相互作用を回避するように分子の立体構造を変えることが好ましい。
【0064】
一般的に好ましい金属イオンキレート剤は、環構造に少なくとも一つの窒素を持ち、また少なくとも一つのヒドロキシ置換基が配置されたヘテロアリール化合物である。これにより、両者にキレート能が与えられる。好ましい金属イオンキレート剤は、任意で置換された2,3−ジヒドロキシピリジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−プテリジノール、2,4−キノリンジオール、2,3−ジヒドロキシキノキサリン、2,4−プテリジンジオール、6−プリノール、3−フェナントリジノール、2−フェナントロリノール、2−フェナジニロールから選択され、最も好ましくは、8−ヒドロキシキノリンである。8−ヒドロキシキノリンは、特に幅広い種類の金属イオンと、金属イオンキレートを形成するという利点がある。
【0065】
本発明のさらなる態様では、線虫、条虫、ウマバエの幼虫、寄生原虫、ブルセラ菌などの寄生虫感染の治療や予防での使用に適した経口投与可能な薬剤組成物を提供する。前記組成物は、生理学的に許容できる金属イオンキレート剤と医薬的に受け入れ可能な担体からなるので、この組成物において前記金属イオンキレート剤は、以下のうち少なくとも一つの能力を備える。
(1)寄生虫に栄養を与える宿主の細菌群が生命維持のために必要とする金属イオンをキレート化できる、
(2)寄生虫を被覆できる、
(3)寄生虫を麻痺させることができる、
(4)第一鉄イオンと第二鉄イオンをキレート化できる。
【0066】
本発明の内服用の組成物は、一般的に0.000001〜0.2%(w/w)、好ましくは 0.00001〜0.1%(w/w)、都合が良い場合は0.0005〜0.05%(w/w)のキレート剤を含む。これらは、乾燥飼料や飲料水に混ぜたり、液体やペースト状での投与など選択された個別の投与方法によって決まる。キレート剤濃度が約0.05%(w/w)において、飼料に混ぜるのに適する液剤の便宜的な投与量は、通常10mL程度である。この組成物を直接動物に投与したほうがよい場合は、0.005%(w/w)程度のキレート剤濃度を用い、ペースト状で100mL程度投与するのが便利である。
【0067】
例えば、猫や犬などの小動物の場合では、液状の化合物の一回の投与量は、その動物の実測体重によって決められるが、大体一日5〜20mLである。
【0068】
ヒトを治療する場合には、投与量は、一日二回、一回につき10〜20mLで、寄生原虫あるいはブルセラ菌によって異なる。投与期間は、大体5〜6日から45〜50日がよい。
【0069】
例えば、ヒトにブルセラ菌の治療を施す場合には、投与期間は、通常大体42日間、一日大体20mLの割合で投与する。
【0070】
例えば、マラリア原虫の治療の場合には、投与期間は通常大体5日間、一日大体20mLの割合で投与する。
【0071】
例えば、馬に膣トリコモナスの治療を施す場合には、投与期間は通常大体5日間、膣を組成物で洗浄後、ペーストを塗布する。
【0072】
例えば、ヒトに膣トリコモナスの治療を施す場合には、投与期間は通常大体5日間、膣に(男性の場合は陰茎に)ペーストを挿入する。
【0073】
一般的に目に感染するアカントアメーバ属の治療は、通常片目ごとに大体10mLの液体化合物をコップに入れ、目を洗浄し、その後約5mLのペーストをまぶたの周囲に塗布することを5日間続ける。
【0074】
馬原虫性脊髄脳炎の治療としては、通常一日約50mLを馬のえさに加えることを大体42〜50日間続ける。
【0075】
投与量や投与形態は、熟練した実務者によって容易に決定される。
【0076】
経口摂取する組成物は、本発明に従って種々の形態で利用される。好ましくは、水性液体組成物で使用されるものである。これは、簡単に乾燥飼料に混ぜたり、飲料水に加えたりすることができる。また、ペースト状製剤、あるいは使いやすい適当な原料、例えば澱粉、ガムやアルギン酸塩を基材としたカプセル状の形態などで使用することも可能である。
【0077】
その組成物の他の成分は、金属イオンキレート剤の種類により選択されることが好ましい。例えば、好ましい金属イオンキレート剤である8−ヒドロキシキノリンは、一般的に水溶液に不溶であるかほとんど溶解しないので、好ましい8−ヒドロキシキノリンの水性組成物は、ポリオールなどの中間溶媒および湿潤剤を使用することにより調製できる。ポリオールとしては、グリコール類が挙げられ、プロピレングリコール、グリセリンあるいはソルビトールが好ましい。当業者にとって、グリコール中の金属イオンキレート剤に溶解性を与えるさまざまな種類の湿潤剤が利用できることは好ましい。湿潤剤としては、とりわけ、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)T20、T40、T60、T80や、C9〜C11アルコールエトキシレート(シンペロニック 91/6、91/8)が好ましい。
【0078】
水性組成物は、使用される金属イオンキレート剤の溶解性や必要とされる最終的な濃度に応じて各成分の様々な組成が使用されることが好ましい。湿潤剤の量は比較的微妙であることが分かっている。グリコールなどの中間溶媒の場合は、特別その方法に有利な点があるわけではないが、通常、一旦金属イオンキレート剤が水に溶解するのに必要な最少量だけ仕込み、さらに簡単に中間溶媒の量を増やすことができる。
【0079】
さらに組成物には、確実にアルカリ性にするために、pH調整剤を加えるとよい。pHは、9.2〜9.4の範囲が最も好ましい。pH調整剤は、水酸化カリウムあるいは水酸化ナトリウムだけでよい。しかし金属キレート剤としてEDTAが使用されるときは、二ナトリウム塩か四ナトリウム塩の形が好ましい。
【0080】
8−ヒドロキシキノリンの場合には、線虫(およびその他の寄生生物、特にウマバエ)、寄生原虫そしてブルセラ菌の感染治療用に適した本発明の液体組成物や水性組成物中で使用される組成としては、一般的に下記のような組成が好ましいことが分かっている。
【0081】
成分 重量
金属イオンキレート剤 1部
湿潤剤 4(+/-5%)部
希釈剤 少なくとも20部、好ましくは40部
脱イオン水 必要とされる最終濃度を得るのに必要な量
pH調整剤 pHを9.2〜9.4にするのに必要な量
【0082】
本発明の好ましい特徴や有利な点は、後述する好ましい態様が示された詳細な実施例において説明される。
【実施例】
【0083】
実施例1:濃縮物の調製方法
10gの8−ヒドロキシキノリンを、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)T20、T40、T60、T80、およびC9〜C11アルコールエトキシレート(シンペロニック 91/6、91/8)から選択される一種の湿潤剤50グラム中で、プロピレングリコール、グリセリンおよびソルビトールから選択される一種の水溶性の非水性希釈剤200グラムとともに、摂氏65度で溶解した。溶液ができたら、そのグリコール、グリセリン、ソルビトールのいずれかの希釈剤をさらに追加し、溶液を500グラムにし、冷却し、2%(w/w)の8−ヒドロキシキノリン濃縮物500gを調製した。
【0084】
実施例2:線虫類とその他の寄生虫に対する家畜用感染治療組成物の調製
実施例1で調製した2%(w/w)の8−ヒドロキシキノリン濃縮物の1部を取り出し、脱イオン水159部で希釈した。エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩を加えて、この組成物のpHを9.2から9.4に調整した。
【0085】
この製剤の力価は、8−ヒドロキシキノリン125ppm、すなわち1ミリリットルにつき125マイクログラムのキレート剤を含む。
【0086】
以下の各動物に対する、この組成物のおよその投与量をそれぞれ以下に示す。
a)馬:体重1kgにつき3.5〜4.0マイクログラム
9日間、毎日摂取する大麦や干し草にこの液体を入れて投与することができる。
b)牛:体重1kgにつき3.5〜4.0マイクログラム
10日間、毎日摂取する食物にこの液体を入れたり、飲料用の水おけに入れて投与することができる。
c)羊:体重1kgにつき3.5〜4.0マイクログラム
6日間、毎日摂取する食物にこの液体を入れて投与することができる。
d)犬:推定体重に合わせて1日3.0〜4.0マイクログラム
5日間、毎日摂取する食物にこの液体を入れて投与することができる。
e)猫:体重1kgにつき3.0〜4.0マイクログラムを3日間、毎日摂取する食物にこの液体を入れて投与することができる。
【0087】
実施例3:寄生原虫とブルセラ菌の感染治療組成物の調製
実施例1で調製した2%(w/w)の8−ヒドロキシキノリン濃縮物の1部を取り出し、脱イオン水39部で希釈した。エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩を加えて、この組成物のpHを9.2から9.4に調整した。
【0088】
この液体製剤の力価は、8−ヒドロキシキノリン500ppm、すなわち1ミリリットルにつき500マイクログラムのキレート剤を含む。
【0089】
ペーストを製造するために、98.8グラムの上記の液体を取り出し、増粘剤として1.2グラムのヒドロキシプロピルセルロースかデヒドロキサンタンガムのどちらかを加え、所望の粘度のペースト100グラムを製造する。
【0090】
以下の各症状に対する、この組成物の投与量をそれぞれ以下に示す。
a)馬の馬原虫性脊髄脳炎
一日に50mLの液体化合物を飼料とともに投与する。
【0091】
感染し後脚の運動神経細胞のコントロールを失った馬に、一日20mLの組成物を飼料とともに与え治療した。7週間以内にその馬は感染の症状がほとんどみられなくなった。しかし、この感染に関連した脳や脊髄の損傷は依然残ることは明白であった。検死によれば馬原虫性脊髄脳炎はみられないが、脳の主要部や脊髄に損傷が残っていた。
【0092】
b)ヒトのマラリア原虫
一日20mLの液体組成物を5日間、食前に飲む。
数名の被検者を選び、血液中にマラリア原虫が観測されなくなるまで、この治療を施す。
【0093】
c)馬の膣トリコモナス
100mLの液体組成物で膣を洗浄し、その後20mLのペーストを塗布する。
トリコモナスに感染した2頭の雌馬を選び、一日に20mLのペースト状組成物を5日間、膣内に塗布して治療した。この実験により、この治療をすればこの感染症は完治することがわかった。
【0094】
d)ヒトの膣トリコモナス
女性の場合、一日に大体10mL、5日間、ペーストを膣内に挿入する。
男性の場合、5日間、ペーストを陰茎内に挿入する。
【0095】
e)タオルなどのトリコモナス
洗濯機中の洗浄水1ガロンにつき50mLの液体化合物を入れ、汚れたタオルに付いたトリコモナスを駆除する。
【0096】
f)便座や付属設備のトリコモナス
液体化合物を軟らかい湿らせた布に取り、便座や付属設備やその周辺を拭く。その液体化合物は薄い膜として残り、しばらくの間効果を保つ。
【0097】
g)アカントアメーバ属寄生原虫の眼感染症
10mLの液体化合物をガラスの洗眼器に入れ、眼球を洗う。その後5mLのペーストをまぶたの周囲に塗布する。
【0098】
h)アカントアメーバ属とネグレリア属のヒトへの感染
一日に20mLの液体化合物を食前に飲む。
【0099】
i)空調設備内のアカントアメーバ属とネグレリア属
空調設備用フィルターパットが液体化合物の入った容器に浸されるようなシステムを作る。この液体がフィルター媒体中を上昇し、大気中のアメーバを捕まえ駆除する。
【0100】
j)風呂に存在するアカントアメーバ属とネグレリア属
バスタブ1ガロンにつき20mLの液体化合物で、タブで発育する原虫を駆除する。
【0101】
k)サウナに存在するアカントアメーバ属とネグレリア属
サウナ内の壁と床を液体化合物で洗い流し、原虫を駆除し乾燥させる。洗い流した壁面や床面が再び湿ったとき、化合物の残渣が再び効能を発揮し、そこにいる原虫を駆除する。
【0102】
l)小ペットのコクシジウムとジアルジア感染
小動物に一日10mLの液体化合物を6日間、飼料とともに投与する。
【0103】
m)ヒト内のエントアメーバ属、クリプトスポリジウム属および下痢を発症するその他の原虫
5日間、1日20mLの液体化合物を飲む。
【0104】
n)トリパノソーマ原虫
一日二回、5日間、20mLの液体化合物を飲む。
【0105】
o)ヒト内のブルセラ菌
一日二回、45日間、20mLの液体化合物を飲む。
ジャックラッセルテリアの子犬のトイレ砂の処理をした後にブルセラ症にかかった被検者を選んだ。その被検者は5年間、症状があり、テトラサイクリンでの治療をしていた。本発明の液体組成物は、6週間にわたり、午前10mL、午後10mLを飲む治療が行われた。
【0106】
o)小さな動物内のブルセラ菌
一日10mLの液体化合物を餌とともに投与する。
【0107】
o)大きな動物内のブルセラ菌
一日50mLの液体化合物を餌とともに投与する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄生虫感染症の治療または予防用薬剤を製造するための金属イオンキレート剤の使用。
【請求項2】
寄生虫が宿主細菌群を栄養的に必要とし、その宿主細菌群が生命維持のために必要とする金属イオンを、前記金属イオンキレート剤がキレート化する機能を有する請求項1に記載の使用。
【請求項3】
寄生虫が吸血性か血液に依存する寄生虫であり、前記金属イオンキレート剤が第一鉄および第二鉄イオンをキレート化する機能を持つ請求項1に記載の使用。
【請求項4】
寄生虫が、線虫、条虫またはウマバエの幼虫である先行するいずれかの請求項に記載の使用。
【請求項5】
寄生虫が、寄生原虫またはブルセラ菌である請求項1〜3のいずれか一つに記載の使用。
【請求項6】
寄生原虫が、アメーバ(amoeba)、鞭毛虫類(flagellates)、膣トリコモナス(Trichonomas vaginalis)、アカントアメーバ属(Acanthamoeba)、ジアルジア属(Giardia)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)、エントアメーバ属(Entamoeba)、イソスポラ属(Isospora)、バランチジウム属(Balantidium)、馬原虫性脊髄脳炎原虫(Equine Protozoal Myeloencephalitis)、コクシジウム(Coccidia)、リーシュマニア属(Leishmania)、トリパノソーマ属(Trypanosoma)、ネグレリア属(Naegleria)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、またはマラリア原虫(Plasmodium)である請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記金属イオンキレート剤が、カルシウムイオンをキレート化できるカルシウムイオンキレート剤とともに使用される先行するいずれかの請求項に記載の使用。
【請求項8】
カルシウムイオンキレート剤が、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(EDTA)を含む請求項7に記載の使用。
【請求項9】
金属イオンキレート剤が、Mg2+、Fe2+、Cu2+、Zn2+、Mn2+、Ni2+、およびSe2+から選択される複数の金属イオンとキレートを形成することができる先行するいずれかの請求項に記載の使用。
【請求項10】
金属イオンキレート剤が、少なくとも一つの不飽和複素環六員環からなる異極化合物であり、その不飽和複素環六員環の少なくとも一つのヘテロ原子部分は水素受容体として働き、また前記化合物は、少なくとも一つの水素供与体部分を含み、さらに前記異極化合物は、それ自身によりあるいは他の置換基と一緒になって、立体障害を生じさせる置換基および/またはその分子を強い塩基性あるいは強い酸性にする置換基を持たず、前記異極化合物の一分子内の水素供与体と受容体部分と、前記異極化合物の他の分子内の水素供与体と受容体部分との相互作用を回避するように分子の立体構造を変える、先行するいずれかの請求項に記載の使用。
【請求項11】
前記金属イオンキレート剤が、キレート能の付与のために、環構造に少なくとも一つの窒素を持ち、さらに少なくとも一つのヒドロキシ置換基が配置された、ヘテロアリール化合物である請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記金属イオンキレート剤が、置換されていなもよい、2,3−ジヒドロキシピリジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−プテリジノール、2,4−キノリンジオール、2,3−ジヒドロキシキノキサリン、2,4−プテリジンジオール、6−プリノール、3−フェナントリジノール、2−フェナントロリノール、2−フェナジニロールおよび8−ヒドロキシキノリンからなる群より選択される請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記金属イオンキレート剤が、8−ヒドロキシキノリンである請求項12に記載の使用。
【請求項14】
薬剤が、湿潤剤を含む先行するいずれかの請求項に記載の使用。
【請求項15】
薬剤が、非水溶性溶剤の形で中間溶媒を含む先行するいずれかの請求項に記載の使用。
【請求項16】
前記中間溶媒が、ポリオールである請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記中間溶媒が、モノエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンおよびソルビトールから選択される請求項16に記載の使用。
【請求項18】
薬剤が、増粘剤を含む先行するいずれかの請求項に記載の使用。
【請求項19】
前記増粘剤が、ヒドロキシプロピレンセルロース増粘剤である請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記増粘剤が、デヒドロキサンタンガム増粘剤である請求項18に記載の使用。
【請求項21】
薬剤が、1重量部の8−ヒドロキシキノリン、4(±5%)重量部の湿潤剤、少なくとも20重量部のグリコール、および水からなる先行するいずれかの請求項に記載の使用。
【請求項22】
薬剤が、液体、スプレー、クリーム、ジェル、あるいはペーストの形態である請求項1〜20のいずれか一つに記載の使用。
【請求項23】
薬剤中に存在する前記金属イオンキレート剤の濃度が、0.0031〜0.20%(w/w)である先行するいずれかの請求項に記載の使用。
【請求項24】
薬剤中に存在する前記金属イオンキレート剤の濃度が、0.02〜0.1%(w/w)である請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記薬剤が、アルカリ性を保つためのpH調整剤を含む先行するいずれかの請求項に記載の使用。
【請求項26】
pHが、7.5〜10である請求項25に記載の使用。
【請求項27】
pHが、9.2〜9.4である請求項26に記載の使用。
【請求項28】
pH調整剤が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムあるいはエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(EDTA)からなる群より選択される請求項25〜27のいずれか一つに記載の使用。
【請求項29】
金属イオンキレート剤の有効量を、それらを必要とするヒトまたは動物へ投与することからなる寄生虫感染の治療または予防方法。
【請求項30】
寄生虫感染が、線虫、条虫、またはウマバエの幼虫の侵襲からなる群から選択される請求項29に記載の治療または予防方法。
【請求項31】
寄生虫感染が、寄生原虫またはブルセラ菌の感染である請求項29に記載の治療または予防方法。
【請求項32】
寄生原虫が、アメーバ(amoeba)、鞭毛虫類(flagellates)、膣トリコモナス(Trichonomas vaginalis)、アカントアメーバ属(Acanthamoeba)、ジアルジア属(Giardia)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)、エントアメーバ属(Entamoeba)、イソスポラ属(Isospora)、バランチジウム属(Balantidium)、馬原虫性脊髄脳炎原虫(Equine Protozoal Myeloencephalitis)、コクシジウム(Coccidia)、リーシュマニア属(Leishmania)、トリパノソーマ属(Trypanosoma)、ネグレリア属(Naegleria)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、またはマラリア原虫(Plasmodium)からなる群から選択される請求項29に記載の治療または予防方法。
【請求項33】
前記治療の後、活性細菌が投与される請求項29〜32のいずれか一つに記載の治療または予防方法。
【請求項34】
前記治療の後、体に良い細菌(pro-biotic)が投与される請求項29〜32のいずれか一つに記載の治療または予防方法。

【公表番号】特表2008−535901(P2008−535901A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505958(P2008−505958)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001350
【国際公開番号】WO2006/109069
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(504142570)エーキュー・プラス・ピーエルシー (3)
【Fターム(参考)】