説明

ヒトの皮膚の処置用の本質的に医薬有効成分を含まない発泡性組成物の使用

本発明は、ヒトの皮膚の処置用の、特に、酒さ、ざ瘡、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、口囲皮膚炎、乾癬または神経皮膚炎の処置における、本質的に医薬有効成分を含まない医薬組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景および技術水準
本願は、欧州特許出願EP0802233.2(出願日:2008年12月23日)のパリ条約による優先権、並びに、先願の米国特許出願番号61/140,152(出願日:2008年12月23日)からの全ての利益を主張し、これらを両方とも出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
皮膚または体腔の様々な医学的状態の処置のために、医薬有効成分を含有する数々の発泡性組成物が当分野で知られている。先行技術には、WO2005/018530、WO2008/038140、US2008/044444、US2006/275218、US2007/020213、US2002/001599、WO2004/037225、WO2005/011567、US2005/0232869、US2005/0069566などが含まれ、これらを全て出典明示により本明細書の一部とする。これらの発泡性組成物および泡状担体は、皮膚または体腔の様々な疾患の処置用の数々の医薬的成分を含有できるように開発されてきた。これらの泡状物は、皮膚への適用が容易であり、以前の泡状組成物から報告された特性である刺痛および乾燥を回避する。しかしながら、これらの組成物のすべては、1種またはそれ以上の抗炎症剤などの医薬活性物質(例えば、COX−1阻害剤、COX−2阻害剤、サリチル酸誘導体、ジカルボン酸またはジカルボン酸誘導体、THF−α剤、免疫抑制剤、免疫調節剤、糖質コルチコイド、ステロイドなど)の存在を必要とする。そのような物質は少なくとも患者の何人かに望まれない副作用を有し得るので、医薬活性物質を必要とすることが不利であることは言うまでもない。
【発明の概要】
【0003】
本発明の概説
驚くべきことに、この度、噴霧剤と共に、
(a)少なくとも1種の軟化薬、
(b)少なくとも1種の安定化剤、
(c)少なくとも1種の防腐剤、
(d)少なくとも1種の乳化剤、
(e)少なくとも1種の泡安定化剤、
(f)少なくとも1種の保湿剤
からなる本質的に医薬有効成分を含まない発泡性組成物を、ヒトの皮膚の処置、特に酒さ、ざ瘡、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、口囲皮膚炎、乾癬または神経皮膚炎の処置に使用できることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0004】
(該当する記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の好ましい実施態様は、
(a)少なくとも1種の軟化薬がカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドであり、
(b)少なくとも1種の安定化剤が、セトステアリルアルコールまたはステアリン酸グリセリルまたはそれらの混合物であり、
(c)少なくとも1種の防腐剤が安息香酸であり、
(d)少なくとも1種の乳化剤が、ステアリン酸PEG−40、ポリソルベート80またはそれらの混合物であり、
(e)少なくとも1種の泡安定化剤がメチルセルロース、キサンタンゴムまたはそれらの混合物であり、
(f)少なくとも1種の保湿剤が、ジメチルイソソルビド、プロピレングリコールまたはそれらの混合物であり、
噴霧剤を共に含む、ヒトの皮膚の処置、特に、酒さ、ざ瘡、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、口囲皮膚炎、乾癬または神経皮膚炎の処置のための、先に記載したような医薬有効成分を本質的に含まない発泡性組成物の使用である。
【0006】
本発明の特に好ましい実施態様は、
(a)約10,87重量パーセントの量のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、
(b)約1,09重量パーセントのセトステアリルアルコールと約0,54重量パーセントのステアリン酸グリセリルの混合物、
(c)少なくとも1種の防腐剤が約0,1重量パーセントである量の安息香酸、
(d)約2,83重量パーセントのステアリン酸PEG−40と約0,98重量パーセントのポリソルベート80の混合物、
(e)約0,11重量パーセントのメチルセルロースと約0,27重量パーセントのキサンタンゴムの混合物、
(f)約5,44重量パーセントのジメチルイソソルビドと約10,87重量パーセントのプロピレングリコールの混合物
を含有し、噴霧剤を共に含む、先に記載したような医薬有効成分を本質的に含まない発泡性組成物の、ヒトの皮膚の処置のための、特に、酒さ、ざ瘡、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、口囲皮膚炎、乾癬または神経皮膚炎の処置のための使用である。
【0007】
噴霧剤として、室温、常圧下で気体であり、高圧、室温で液体化(liquidified)し得る化合物を使用し得る。有用な噴霧剤は、ブタン、プロパン、イソブテン、ジメチルエーテル、フッ化炭素ガスまたはそれらの混合物である。
【0008】
用語「医薬活性化合物」または「医薬有効成分」は、臨床試験で明らかにされた立証済みの医薬活性を有し、欧州医薬品庁(EMEA)または米国食品医薬品局(FDA)により薬物として承認された化合物を表す。用語「本質的に医薬活性化合物を含まない」または「本質的に医薬有効成分を含まない」は、「医薬活性化合物」または「医薬有効成分」が組成物に意図して添加されないことを意味する。意図しない混入の結果としての医薬有効成分の総量は、従って、0.05%より少なく、好ましくは0.01%より少ない。最も好ましいのは、医薬技術の標準的な分析方法ではいかなる医薬成分も全く検出できない組成物である。
【0009】
本発明による発泡性組成物は、医薬の専門家に知られている、当分野で記載された方法に従って製造する。それらは、通常、出口弁(outlet valve)のある容器に詰める。弁のある可能な容器は、同様に当分野で記載されており、本明細書で説明する必要はない。
【0010】
発泡性組成物は、実質的にアルコールを含まない。即ち、短鎖アルコール(1−4個の炭素原子鎖長のもの)を含まない。
【0011】
先行技術の組成物のある既知の欠点は、医薬活性化合物の低い溶解性である。従って、いかなる医薬活性化合物も溶解する必要がないことは、本発明による組成物の利点である。
【0012】
臨床試験において、本明細書で提供される説明に従う発泡性組成物は、特に酒さの処置において、有利な特性を有することが示された。この治療効果がいかなる医薬有効成分も適用せずに達成されたことは、非常に驚異的であった。ざ瘡、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、口囲皮膚炎、乾癬および神経皮膚炎などの数々のさらなる医学的状態を、本発明による組成物で処置できる。
【0013】
さらに、本明細書に記載の組成物は、ヒトの皮膚の予防的処置に使用し得る(例えば、そのような疾患を発症する既知の傾向を有する患者において)。
本明細書で提供される説明に従う発泡性組成物は、ヒトの皮膚の美容的処置にも使用し得る。
【0014】
従って、ざ瘡、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、口囲皮膚炎、乾癬および神経皮膚炎などのヒトの皮膚障害の、それを必要としている患者に本明細書に記載の泡状物を局所適用することによる処置方法を提供することは、本発明のもう1つの態様である。
【0015】
特に、ざ瘡、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、口囲皮膚炎、乾癬および神経皮膚炎などの皮膚障害を発症する既知の傾向を有するヒトのために、そのようなヒトに本明細書に記載の泡状物を局所適用することによるヒトの皮膚の予防的処置方法を提供することは、本発明のさらなる態様である。
【0016】
ヒトに本明細書に記載の泡状物を局所適用することによるヒトの皮膚の美容的処置方法を提供することは、本発明のなおさらなる態様である。
【0017】
本明細書に記載のこれらの適用のすべてについて(治療的、予防的または美容的)、本質的に活性医薬化合物を含まない、出口弁を有する容器に詰められた以下の組成物が、最も有用であると見出された。
【表1】

【実施例】
【0018】
実施例
実施例1
以下の組成物を、当分野で知られている方法により製造する。
【表2】

実施例1Bによる組成物は、最も有利な特性を示す。
【0019】
実施例2
酒さに罹患している患者を、実施例1に記載の組成物で処置する。特定の組成物を1日に数回、好ましくは少なくとも1日に3回適用する。2週間の適用の後、患者は有意に少ない酒さの症状を示す。症状は、上記の適用を継続すると、経時的にさらに減少する。特に軽度の酒さの患者は、この適用により利益を受ける。
【0020】
実施例3
乾癬に罹患している患者を、本発明による組成物で処置する。組成物を1日に数回、好ましくは少なくとも1日に3回適用する。2週間の適用の後、患者は有意に少ない乾癬の症状を示す。症状は、上記の適用を継続すると、経時的にさらに減少する。
【0021】
実施例4
実施例1による組成物の使用を先行技術の開示と比較し、以下のデータを収集した。文書US2008/044444が最も近い先行技術であると考えられる。US2008/044444の実施例9は、請求項1の組成物と同等であるが、15%アゼライン酸を含有するジカルボン酸組成物を開示している。アゼライン酸は、酒さの処置に有効であると知られている。それは、例えば、商標 Finacea(登録商標)および Skinoren Gel(登録商標)で販売され、FDAを含む様々な規制当局により承認されたゲル製剤の一部である。従って、Finaceaなどのアゼライン酸の組成物は、酒さの処置における標準的な治療と考えられる。US2008/044444は、US2008/044444の組成物で処置できるかなり多数の障害を記載している(段落[0186]参照)。しかしながら、言及された障害のいずれの処置においても、そのような組成物の有効性を証明した特定のデータはない。
【0022】
出願人は、本明細書に記載の組成物をUS2008/044444の実施例9に記載の先行技術の組成物と比較する臨床的調査を実施した。US2008/044444の実施例9に従うアゼライン酸を含有する泡状組成物(以後、「Aza泡状物」と称する)を、医薬有効成分を含まない本願の実施例1bに従う組成物と比較して、12週間の探索的、多施設、二重盲検試験で試験した。80人を超える患者を処置した:約50%をアゼライン酸を含有する泡状物(Aza泡状物)で、残りの50%を実施例1bに従う泡状組成物で処置した。上述の患者は、12週間にわたり、1日2回、局所的に処置された。結果を添付の図面に示す:
【0023】
図1および2は、処置前および処置後の2種の組成物について、疾患の重篤度の評価を示す調査者包括評価(Investigators Global Assessment)(IGA)のスコアを示す。臨床の調査者は、処置前および処置後に、丘疹膿疱性酒さの重篤度をスコア付けしなければならなかった。図1は、本発明による組成物のIGAスコアを示し、図2は、US2008/044444の実施例9の組成物のIGAスコアを示す。全てのデータを、処置した患者の百分率で提供する。図1および2は、両方の組成物の同等の効力を示す:処置前の中程度ないし重度の丘疹膿疱性酒さに罹患している多数の患者は、無症状(clear)ないし軽度に移行したことが見出された。これらの処置の間に、統計的に有意な差異は見出されなかった。アゼライン酸は酒さの処置において十分に認められた薬物であり、標準的な治療であるので、この知見は専門家には驚異的である。従って、アゼライン酸を含まない本願の実施例1に従う発泡性組成物が同等の結果を示すことは、全く驚異的であった。
【0024】
さらに、試験中に毛細血管拡張症のスコアを測定した。調査者は、同じ無作為化二重盲検試験において、毛細血管拡張症の強度の重篤度を比較するよう依頼された。12週間の期間の終了時に、調査者は、患者の毛細血管拡張症の強度が改善されたか、変化しなかったか、悪化したかを評価するよう依頼された。結果を図3に示す。毛細血管拡張症のスコアが改善された患者の数が、アゼライン酸を含有する泡状物による処置と比較して遙かに高いことは、非常に驚異的である。
【0025】
さらに、有害事象(そう痒、刺痛および熱傷など)の数を計測した。この臨床試験中には、軽度または中程度の有害事象しか報告されず、重度の有害事象は報告されなかった。図4に示す通り、有害事象の総数は、本発明による組成物と比較して、先行技術の組成物で有意に高い。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酒さ、ざ瘡、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、口囲皮膚炎、乾癬または神経皮膚炎の処置用、または、その予防用の、出口弁のある容器に詰められた医薬の製造のための、または、出口弁のある容器に詰められた美容用製品の製造のための、
【表1】

からなる本質的に医薬有効成分を含まない発泡性組成物の使用。
【請求項2】
酒さ、ざ瘡、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、口囲皮膚炎、乾癬または神経皮膚炎の処置用、または、その予防用の、出口弁のある容器に詰められた医薬の製造のための、または、出口弁のある容器に詰められた美容用製品の製造のための、
【表2】

からなるか、
【表3】

からなるか、
【表4】

からなるか、
【表5】

からなるか、
【表6】

からなる、請求項1に記載の本質的に医薬有効成分を含まない発泡性組成物の使用。
【請求項3】
酒さ、ざ瘡、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、口囲皮膚炎、乾癬または神経皮膚炎の処置用、または、その予防用の、出口弁のある容器に詰められた医薬の製造のための、または、出口弁のある容器に詰められた美容用製品の製造のための、
【表7】

からなる、請求項1に記載の本質的に医薬有効成分を含まない発泡性組成物の使用。
【請求項4】
噴霧剤が、ブタン、プロパン、イソブテン、ジメチルエーテル、フッ化炭素ガスまたはそれらの混合物である、請求項1ないし請求項3の少なくとも1項に記載の本質的に医薬有効成分を含まない発泡性組成物の使用。
【請求項5】
酒さ、ざ瘡、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、口囲皮膚炎、乾癬または神経皮膚炎の処置用、または、その予防用、または、ヒトの皮膚の美容的処置用の泡状物を製造するための、
【表8】

からなる本質的に医薬有効成分を含まない発泡性組成物で満たされた、出口弁のある容器。
【請求項6】
酒さ、ざ瘡、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、口囲皮膚炎、乾癬または神経皮膚炎の処置用、または、その予防用、または、ヒトの皮膚の美容的処置用の泡状物を製造するための、
【表9】

からなるか、
【表10】

からなるか、
【表11】

からなるか、
【表12】

からなるか、
【表13】

からなる本質的に医薬有効成分を含まない発泡性組成物で満たされた、出口弁のある容器。
【請求項7】
噴霧剤が、ブタン、プロパン、イソブテン、ジメチルエーテル、フッ化炭素ガスまたはそれらの混合物である、請求項5および請求項6のいずれかに記載の本質的に医薬有効成分を含まない発泡性組成物で満たされた出口弁のある容器。

【公表番号】特表2012−513430(P2012−513430A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542728(P2011−542728)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009350
【国際公開番号】WO2010/072422
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(506302181)インテンディス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (5)
【Fターム(参考)】