説明

ヒトケモカイン様レセプターの調節

【課題】ヒトケモカイン様レセプターを調節する試薬および方法の提供。
【解決手段】特定アミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;該特定アミノ酸配列;別に示す特定アミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;該特定アミノ酸配列;さらに別の特定アミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;該特定アミノ酸配列より成る群から選ばれるアミノ酸配列を含むケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レセプター調節の分野に関する。より具体的には、本発明はヒトケモカイン様レセプターの調節に関する。
【背景技術】
【0002】
Gタンパク質共役レセプター
多くの医学的に重要な生体プロセスは、Gタンパク質を含むシグナル伝達経路により仲介されている(Lefkowitz, Nature 351, 353-354, 1991)。Gタンパク質共役レセプター(GPCR)のファミリーは、ホルモン、神経伝達物質、成長因子、およびウイルスに対するレセプターを包含している。GPCRの具体的例には、ドーパミン、カルシトニン、アドレナリン作動性ホルモン、エンドセリン、cAMP、アデノシン、アセチルコリン、セロトニン、ヒスタミン、トロンビン、キニン、卵胞刺激ホルモン、オプシン、内皮分化遺伝子1、ロドプシン、臭気物質、サイトメガロウイルス、Gタンパク質自身、エフェクタータンパク質、例えばホスホリパーゼC、アデニルシクラーゼ、およびホスホジエステラーゼ、ならびにアクチュエータータンパク質、例えばプロテインキナーゼAおよびプロテインキナーゼCといったような多彩な物質のレセプターが包含される。
【0003】
GPCRタンパク質スーパーファミリーには、オルソログ(orthologue)、即ち異なる種に由来する同じレセプターとは反対に、現在250を超えるタイプのパラログ(paralogu)、即ち遺伝子の重複(またはその他のプロセス)によって作成された変異体に代表されるレセプターが含まれている。このスーパーファミリーは、5つのファミリーに分けられる:ファミリーI、ロドプシンおよびβ2−アドレナリン作動性レセプターに代表され現在200を越える独特な成員によって代表される(Dohlman et al., Ann. Rev. Biochem. 60, 653-88, 1991および文献中の引用文献に記載);ファミリーII、最近特徴付けられた甲状腺ホルモン/カルシトニン/セクレチンレセプターファミリー(Juppner et al., Science 254, 1024-26, 1991; Lin et al., Science 254, 1022-24, 1991);ファミリーIII、哺乳類における代謝調節型グルタミン酸レセプターファミリー(Nakanishi, Science 258, 597-603, 1992);ファミリーIV、D. discoideumの走性および発生に重要なcAMPレセプターファミリー(Klein et al., Science 241, 1467-72, 1988);およびファミリーV、STE2等のfingal交尾フェロモンレセプター(Kurjan, Ann. Rev. Biochem. 61, 1097-1129, 1992に記載)。
【0004】
GPCRは、少なくとも8個の異なる親水性ループを連結する、膜を貫通する7個の保存されたドメインを持っている。GPCR(7TMレセプターとしても知られる)は、少なくとも8個の異なる親水性ループを連結する、約20ないし30のアミノ酸より成るこれら7個の保存された疎水性区間を含むものとして特徴付けられている。殆どのGPCRは、最初の二つの細胞外ループの各々に単一の保存されたシステイン残基を持っており、これがジスルフィド結合を形成し、機能的タンパク質構造を安定化させると考えられている。この7個の膜貫通領域はTM1、TM2、TM3、TM4、TM5、TM6、およびTM7と呼ばれる。TM3はシグナル伝達に関わっている。
【0005】
システイン残基の燐酸化および脂質化(パルミチル化またはファルネシル化)は、幾つかのGPCRのシグナル伝達に影響を及ぼし得る。殆どのGPCRは、第三細胞質ループおよび/またはカルボキシ末端内部に燐酸化の可能性ある部位を含んでいる。幾つかのGPCR、例えばβ−アドレナリン作動性レセプターでは、プロテインキナーゼAおよび/または特異的レセプターキナーゼによる燐酸化によってレセプターの脱感作が仲介される。
【0006】
幾つかのレセプターについては、GPCRのリガンド結合部位が、数個のGPCR膜貫通ドメインにより形成された親水性ソケットを含むと考えられる。この親水性ソケットは、GPCRの疎水性残基に取り囲まれている。各GPCR膜貫通ヘリックスの親水性側は、内側を向き、極性リガンド結合部位を形成していると仮定されている。TM3は、リガンド結合部位、例えばTM3アスパラギン酸残基を持っている幾つかのGPCRと関連している。TM5のセリン、TM6のアスパラギン、およびTM6またはTM7のフェニルアラニンまたはチロシンもまたリガンド結合に関連している。
【0007】
GPCRは細胞内部でヘテロ三量体Gタンパク質により、種々の細胞内酵素、イオンチャンネルおよび輸送体と共役している(Johndon et al., Endoc.Rev. 10, 317-331, 1989を参照されたい)。種々のGタンパク質αサブユニットは優先的に特定のエフェクターを刺激し、細胞の様々な生体機能を調整する。GPCRの細胞質残基の燐酸化は、幾つかのGPCRの調節にとって重要な機構である。例えば、或る形のシグナル伝達においては、ホルモン結合の効果は、細胞内部での酵素アデニルシクラーゼの活性化である。ホルモンによる酵素の活性化はヌクレオチドGTPの存在に依存する。GTPはホルモン結合にも影響を及ぼす。Gタンパク質はホルモンレセプターをアデニルシクラーゼに結合させる。Gタンパク質はホルモンレセプターによって活性化されると、GTPを、結合したGDPに交換する。すると、GTPを有する型が、活性化アデニルシクラーゼに結合する。Gタンパク質自身により触媒されるGTPからGDPへの加水分解が、Gタンパク質をその基本的な不活性型へと戻す。したがってGタンパク質は、レセプターからエフェクターへとシグナルを中継する仲介物質としての、そしてシグナルの持続を制御する時計としての、二重の役割を果たしている。
【0008】
過去15年間にわたり、GPCRレセプターを標的とする350近くの治療薬が成功裏に上市されてきた。この事は、これらのレセプターが治療薬として確立された折り紙付きの歴史を持っていることを示すものである。明らかに、細菌、真菌、原虫といった感染症、およびウイルス感染症、とりわけHIVウイルスによる感染症、疼痛、癌、食欲不振、過食症、喘息、パーキンソン病、急性心不全、低血圧症、高血圧症、尿停留、骨粗鬆症、狭心症、心筋梗塞、潰瘍、喘息、アレルギー、良性前立腺肥大、および精神障害および神経学的障害(不安生、統合失調症、躁鬱病、幻覚症状、痴呆、いくつかの精神薄弱、およびジスキネジー、ハンチントン舞踏病およびトゥレット症候群など)を包含する(但しこれらに限定される訳ではない)機能不全または疾病の予防、改善または是正において役割を果たし得る、さらなるGPCRの同定および特徴づけに対する継続した需要がある。
【0009】
ケモカインレセプター
ケモカインは、様々な種類の細胞によって産生される、低分子量で、誘導性の、分泌される、炎症性サイトカインの大ファミリーである。米国特許第5,955,303号。それらは、それらの保存されたシステインの位置に基づいて、いくつかのサブファミリーに分けらる。CXCファミリーには、インターロイキン8(IL−8)、成長調節遺伝子、好中球活性化ペプチド−2、および血小板第4因子(PF−4)が含まれる。IL−8およびPF−4はいずれも多形核の化学誘引物質であり、血管形成はIL−8により刺激され、PF−4により阻害される。CCファミリーには、単球走化性タンパク質1(MCP−1)、RANTES(活性化により調節される、正常T細胞で発現し分泌される)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1.α、MIP−1.β)、およびエオタキシンが含まれる。MCP−1は、内皮細胞、上皮細胞、および造血細胞を含む、多く種類の細胞によって分泌され、単球およびCD45RO+リンパ球に対する化学誘引物質である(Proost, P. (1996) Int J. Clin. Lab. Res. 26: 211-223; Raport, C. J. (1996) J. Biol. Chem. 271: 17161-17166)。
【0010】
細胞は、Gタンパク質共役レセプターを介してケモカインに応答する。これらのレセプターは7回膜貫通型分子であり、この分子がヘテロ3量体のGTP結合タンパク質を介してそれらのシグナルを伝達する。活性化レセプターによるGTP結合タンパク質複合体の刺激は、グアノシン二リン酸とグアノシン三リン酸の交換につながり、エフェクター分子の活性を調節する。活性および特異性において異なるサブユニットそれぞれの別個のクラスが存在し、阻害または刺激応答を惹起し得る。既知のサイトカインレセプターの刺激がアデニリルサイクラーゼおよび細胞内のカルシウムの移動のアゴニスト依存的な阻害を示す場合、そのレセプターはGαiサブユニットに結合している(Myers, S. J. et al (1995) J. Biol. Chem. 270: 5786-5792)。
【0011】
サイトカインレセプターは、免疫系の細胞の移動および活性化において主要な役割を担っている。レセプター刺激の硬化は、細胞の種類に依存し、サイトカインの走化性、増殖、分化および産生を含む。ケモカイン刺激産物は血管内皮における変化、炎症の部位への走化性をもたらし、細胞のエフェクター機能を活性化する(Taub, D. D. (1996) Cytokine Growth Factor Rev. 7: 355-376)。
【0012】
ケモカインレセプターは、ある範囲の配列の多様性およびリガンド交差反応性(ligand promiscuity)を示す。既知のケモカインレセプタータンパク質配列の同一性は、22〜40%の範囲であり、ある特定のレセプターは、複数のリガンドに対して応答し得る。免疫細胞においておもに発現するが、ウイルスホモローグは、ヒトサイトメガロウイルスおよびリスザルヘルペスウイルスによって発現する。ダッフィ血液型抗原として知られるケモカインレセプターは、CCおよびCXCファミリーケモカインの両方に結合し、三日熱マラリア原虫に対する赤血球上のレセプターとして供する。ケモカインレセプターは、宿主細胞において、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が侵入する間重要な役割を担う。最初の事象は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質と2つの細胞内レセプター、即ちCD4およびケモカインコレセプターとの間の特異的な相互作用を必要とする。後者は、主要なコレセプターCCR5, CXCR4および他の重要度の低いCCR3, CCR2b, CCR8, CX3CR1が含まれる、7回膜貫通型Gタンパク質共役レセプターのファミリーに属する。Moore et al., Curr. Opin. Immunol 9, 551-562, 1997。
【0013】
ケモカインは様々な炎症性およ自己免疫疾患に関与していると考えられ、そのことにより、ケモカインおよびそのレセプターは非常に魅力的な治療標的である。実際、7つのケモカインレセプターファミリーの小分子アンタゴニストが既に報告されており、いくつかは低いナノモル濃度の範囲で効力を有する。Schwarz & Wells, Curr. Opin. Chem. Biol. 3, 407-17, 1999。単球およびCD8の移動および活性化に影響を及ぼす新規のケモカインはまだ発見されていないと思われる。
【0014】
ケモカインレセプターは重要であるため、そのレセプターを調節して治療効果をもたらすようなこのレセプターのファミリーのさらなる成員を同定することが当分野で必要とされている。
【発明の開示】
【0015】
発明の要旨
本発明の目的は、ヒトケモカイン様レセプターを調節する試薬および方法を提供することである。本発明のこのおよびその他の目的は、下に記載する1またはそれ以上の態様によって提供する。
【0016】
本発明の一つの態様は、
配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;
配列番号2に示すアミノ酸配列;
配列番号7に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;
配列番号7に示すアミノ酸配列;
配列番号8に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;
配列番号8に示すアミノ酸配列
からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むケモカイン様レセプターポリペプチドである。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、細胞外マトリックスの分解を減少させる物質をスクリーニングする方法である。被験化合物を、
配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;
配列番号2に示すアミノ酸配列;
配列番号7に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;
配列番号7に示すアミノ酸配列;
配列番号8に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;
配列番号8に示すアミノ酸配列
からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むケモカイン様レセプターポリペプチドと接触させる。
【0018】
被験化合物とケモカイン様レセプターポリペプチドとの結合を検出する。それにより、ケモカイン様レセプターポリペプチドに結合する被験化合物を、細胞外マトリックス分解を減少させる可能性のある物質として同定する。この物質はケモカイン様レセプターの活性を減少させることによって作用し得る。
【0019】
本発明の別の態様は、細胞外マトリックス分解を調節する物質をスクリーニングする方法である。被験化合物を、
配列番号1に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%同一なヌクレオチド配列;
配列番号1に示すヌクレオチド配列;
配列番号4に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%同一なヌクレオチド配列;
配列番号4に示すヌクレオチド配列;
配列番号5に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%同一なヌクレオチド配列;
配列番号5に示すヌクレオチド配列;
配列番号9に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%同一なヌクレオチド配列;
配列番号9に示すヌクレオチド配列;
からなる群から選ばれるヌクレオチド配列を含む、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと接触させる。
【0020】
このポリヌクレオチドに対する化合物の結合を検出する。このポリペプチドに結合する試験化合物を、細胞外マトリックス分解を増大させる可能性のある物質として同定する。この物質は、ケモカイン様レセプターmRNAとの相互作用を介してケモカイン様レセプターの量を減少させることによって作用し得る。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、細胞外マトリックス分解を調節する物質をスクリーニングする方法である。被験化合物を、
配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;
配列番号2に示すアミノ酸配列;
配列番号7に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;
配列番号7に示すアミノ酸配列;
配列番号8に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;
配列番号8に示すアミノ酸配列
からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むケモカイン様レセプターポリペプチドと接触させる。
【0022】
ポリペプチドのケモカイン様レセプター活性を検出する。ポリペプチドのケモカイン様レセプター活性を、試験化合物不在下でのケモカイン様レセプター活性と比較して増加させる試験化合物は、それにより、細胞外マトリックス分解を増大させる可能性のある物質として同定する。ポリペプチドのケモカイン様レセプター活性を、その試験化合物の不在下でのケモカイン様レセプター活性と比較して減少させる試験化合物は、それにより、細胞外マトリックス分解を減少させる可能性のある物質として同定する。
【0023】
本発明のさらに別の態様は、細胞外マトリックス分解を減少させる物質をスクリーニングする方法である。被験化合物を、
配列番号1に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%同一なヌクレオチド配列;
配列番号1に示すヌクレオチド配列;
配列番号4に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%同一なヌクレオチド配列;
配列番号4に示すヌクレオチド配列;
配列番号5に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%同一なヌクレオチド配列;
配列番号5に示すヌクレオチド配列;
配列番号9に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%同一なヌクレオチド配列;
配列番号9に示すヌクレオチド配列;
からなる群から選ばれるヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチドのケモカイン様レセプター産物と接触させる。
【0024】
このケモカイン様レセプター産物に対する試験化合物の結合を検出する。このケモカイン様レセプター産物と結合する試験化合物を、それにより、細胞外マトリックス分解を減少させる、可能性のある物質として同定する。
【0025】
本発明のさらに別の態様は、細胞外マトリックス分解を減少させる方法である。細胞を、
配列番号1に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%同一なヌクレオチド配列;
配列番号1に示すヌクレオチド配列;
配列番号4に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%同一なヌクレオチド配列;
配列番号4に示すヌクレオチド配列;
配列番号5に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%同一なヌクレオチド配列;
配列番号5に示すヌクレオチド配列;
配列番号9に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%同一なヌクレオチド配列;
配列番号9に示すヌクレオチド配列;
からなる群から選ばれるヌクレオチド配列を含む、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的に結合する物質または、そのポリヌクレオチドによってコードされる産物と接触させる。
【0026】
細胞中のケモカイン様レセプター活性は、それにより減少する。
【0027】
このように、本発明は、例えば、そのヒトケモカイン様レセプターの活性部位でアクチベーターまたはインヒビターとして作用し得る試験化合物を同定するために用いることができるヒトケモカイン様レセプターを提供する。ヒトケモカイン様レセプターおよびその断片はまた、そのレセプターをブロックおよび効果的にそのレセプターの活性を減少することができる特異的な抗体を惹起するのに有用でもある。
【0028】
(発明の詳細な記載)
本発明は、以下からなる群から選択される、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する:
a)配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;
配列番号2に示すアミノ酸配列;
配列番号7に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;
配列番号7に示すアミノ酸配列;
配列番号8に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列; および
配列番号8に示すアミノ酸配列;
b)配列番号1、4、5または9に示す配列を含むポリヌクレオチド;
c)(a)および(b)に示すポリヌクレオチドとストリンゲントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;
d)その配列が、遺伝コードの縮重のために(a)〜(c)に示したポリヌクレオチド配列とは異なるポリヌクレオチド;および
e)(a)〜(d)に示すポリヌクレオチド配列の断片、誘導体またはアレル変異を示すポリヌクレオチド。
【0029】
さらに、本発明者によって、新規なケモカイン様レセプター、特にヒトケモカイン様レセプターは、HIV感染、心血管疾患、喘息またはCOPDを処置するための治療方法に用いることができることが発見された。
【0030】
新規のヒトケモカイン様レセプター転写物は、356アミノ酸、計算された分子量41.4kDのポリペプチドをコードする。ヒトケモカイン様レセプターの翻訳の解析により、このタンパク質は、GPCRの構造と一致して、推定される7個の膜貫通ドメインを含んでいることが分かっている。この遺伝子は2つのエクソンから成っている。
【0031】
ヒトケモカイン様レセプターのアミノ酸配列は、その全長にわたり、最も近いヒト同族体、C−Cケモカインレセプター3(CCR3)と17.6%同一であることを示している。この数値は、関係する物理化学的特性を有するアミノ酸を含めた場合、配列全体の類似性が34.1%に増加する。ヒトケモカイン様レセプターと他のケモカインレセプターとの相同性は同様に13〜17%の範囲の全体の同一性、29〜32%の類似性を示す。新規のヒトケモカイン様レセプターは、さらに甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンレセプター(TRHR)に対して、同一性が17.9%、類似性が32.8%であり、同等の配列相同性を示すが、構造的には、TRHRは、ヒトケモカイン様レセプターには見られない第5と第6の膜貫通ドメインの間の伸長した第3の細胞質ループを有している(図12)。
【0032】
ヒトケモカイン様レセプターmRNA発現を、いくつかの異なるヒト組織、細胞型、および一般的に用いられる細胞系において試験した(図13)。試験した組織のなかで、胎児脳は最も顕著な発現を示し、膵臓と肺は中程度の発現レベルを示した。新規のケモカイン様レセプターは、大部分の組織では低いレベルで発現すると考えられ、このことは、血液または血管細胞などの様々な異なる組織において見られる細胞型における発現を示している。
【0033】
試験した特定の細胞型または細胞系では、ヒトケモカイン様レセプターは、フィトヘマグルチニン刺激したCD8細胞において高いレベルで発現することがわかったが、試験した他の免疫細胞はいずれも顕著ではなかった。ヒト胎児肺線維芽細胞系IMR−90においても高い発現が観察され、正常気管支/気管上皮細胞において中程度の発現が見られた。
【0034】
活性化CD8細胞におけるその高い発現およびケモカインレセプターに対する相同性はともに、新規なヒトケモカイン様レセプターが活性化されたリンパ細胞上の化学誘引分子の受容体としてはたらくことができ、それにより、他のケモカインレセプターと同じようにして、細胞の移動(cell trafficking)、および感染、炎症または組織損傷の部位への誘導に関与する。したがって、新規のヒトケモカイン様レセプターの活性の調節は、喘息およびCOPDが含まれるがこれに限定されない、心臓血管の、免疫学的および炎症性の疾患を処置するために用いることができる。脳およびCD8リンパ細胞における発現を合わせると、このレセプターは神経系に存在するウイルスの有益な標的であることを示唆している。したがって、リガンド、例えば化学誘引分子またはウイルス粒子、のこのレセプターとの結合を調節すること、このレセプターが免疫応答を調節するための、または、HIV感染を含むがこれに限定されない、ウイルス感染を阻害するためのメカニズムとして用いることができる。
【0035】
ヒトケモカイン様レセプターは、配列番号2、7または8に示されるアミノ酸配列を含む。ヒトケモカイン様レセプターのコード配列は、配列番号1、4および5に示される。コード配列を含むより長い配列は、配列番号5に示される。この配列は第16染色体に位置する。別の開始コドンおよび終止コドンは図12において太字で示される。
【0036】
ヒトケモカイン様レセプターは、SwissProt 受託番号No.56492(配列番号3)として同定され、「C−C ケモカインレセプター3型」(図10)と称するタンパク質と331アミノ酸にわたって24.7%同一である。ヒトケモカイン様レセプターは、図10において太字で示されるように、第2の細胞質ループに存在する、保存された酸性−Arg−芳香族トリプレットを有する。
【0037】
本発明のヒトケモカイン様レセプターは、以前に同定されたケモカインレセプターと同じ目的に関して有用であると期待される。ヒトケモカイン様レセプターは、HIV感染、心臓血管疾患、喘息およびCOPDなどの疾患を処置するための治療方法において有用であると考えられる。ヒトケモカイン様レセプターはまた、ヒトケモカイン様レセプターアクチベーターおよびインヒビターをスクリーニングするために使用することもできる。
【0038】
本発明に係るヒトケモカイン様レセプターポリペプチドには、配列番号2に示すアミノ酸配列で示されるアミノ酸配列から選択される、少なくとも6、10、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350または353個の連続アミノ酸、配列番号7に示すアミノ酸配列で示されるアミノ酸配列から選択される、少なくとも6、10、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350または357個の連続アミノ酸、配列番号8に示すアミノ酸配列で示されるアミノ酸配列から選択される、少なくとも6、10、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325または344個の連続アミノ酸、または以下に定義されるその生物学的に活性体変異体が含まれる。したがって、本発明のヒトケモカイン様レセプターポリペプチドは、ヒトケモカイン様レセプタータンパク質の一部、完全長のヒトケモカイン様レセプタータンパク質、又はヒトケモカイン様レセプタータンパク質の全部または一部を含む融合タンパク質であり得る。本発明に係るヒトケモカイン様レセプターポリペプチドには、配列番号11に示すアミノ酸配列、または以下定義による生物学的に活性なその変異体より選択される、少なくとも6、10、15、25、50、75、100、125、150、175、200、225、275、300、320、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550または562個の連続アミノ酸が含まれる。したがって、本発明のヒトケモカイン様レセプターポリペプチドは、ヒトケモカイン様レセプターポリペプチドの一部、完全長のヒトケモカイン様レセプターポリペプチド、又はヒトスフィンゴシンepitope-binding fragments thereof), and small organic or inorganic molecules.キナーゼ様タンパク質の全部または一部を含む融合タンパク質であり得る。
【0039】
生物学的に活性な変異体
生物学的に活性な、即ちケモカイン活性を保持する、ヒトケモカイン様レセプターポリペプチド変異体もまた、ケモカイン様レセプターポリペプチドである。好ましくは、天然または非天然に存在するケモカイン様レセプターポリペプチド変異体は、配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列またはその断片と少なくとも約26、30、35、40、45、50、55、65または70、好ましくは約75、80、85、90、96、96または98%一致するアミノ酸配列を有する。推定されるケモカイン様レセプターポリペプチド変異体と配列番号2、7または8のアミノ酸配列との一致パーセントは、管用の方法によって決定する。例えば、Altschul et al., Bull. Math. Bio. 48:603 (1986)、およびHenikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1992)を参照。簡潔には、2つのアミノ酸配列を、ギャップオープニングペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ1、およびHenikoff and Henikoff (ibid.)の「BLOSUM62」スコアリングマトリクスを用いてアライメントスコアが最適になるよう整列させる。当業者は、2つのアミノ酸配列を整列させるために用いることができる確立されたアルゴリズムが多く存在することを理解している。Pearson and Lipmanの「FASTA」類似性検索アルゴリズムは、本明細書に開示されたアミノ酸配列と推定の変異体のアミノ酸配列が共有する同一性のレベルを調べるための適当なタンパク質アライメント法である。FASTAアルゴリズムは、Pearson and Lipman, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 85:2444(1988)、およびPearson, Meth. Enzymol. 183:63 (1990)に記載されている。簡潔には、FASTAは、最初に、保存的なアミノ酸置換、挿入または欠失を考慮することなく、照会する配列(即ち、配列番号2、7または8)および最も高い同一性の密度(ktup変数が1である場合)または同一の対(ktup=2の場合)のいずれかを有する試験配列が共有する領域を同定することによって配列の類似性を特徴付ける。次いで、最も高い同一性の密度を有する10の領域を、アミノ酸置換マトリクスを用いてすべての対のアミノ酸の類似性を比較することによって再スコア化し、その領域の末端を、最も高いスコア貢献する残基のみを含むように切り取る。「切り捨て(cutoff)」値(配列の長さとktup値に基づいて所定の式によって計算された)よりも大きいスコアを有する領域がいくつか存在する場合は、切取った最初の領域を調べ、その領域が連結してgapを有する近似アライメントを形成することができるかどうかを決定する。最後に、2つのアミノ酸配列の最も高いスコアの領域を、アミノ酸挿入および欠失を許容する、Needleman-Wunsch- Sellers algorithm (Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol.48:444 (1970); Sellers, SIAM J. Appl. Math. 26:787 (1974))を用いて整列させる。FASTA分析に好ましいパラメーターは、以下のとおりである:ktup=1, ギャップオープニングペナルティ=10, ギャップ伸長ペナルティ=1、および置換マトリクス=BLOSUM62。これらのパラメータは、Appendix 2 of Pearson, Meth. Enzymol. 183:63 (1990)において説明されているように、スコアリングマトリクスファイル(「SMATRIX」)に修飾を施してFASTAプログラムに導入することができる。FASTAは、上記の比率を用いて核酸分子の配列同一性を決定するために用いることもできる。ヌクレオチド配列の比較に関して、ktup値は、1〜6の範囲内であり得、好ましくは3〜6の範囲、最も好ましくは3であり、その他のパラメータは既定値である。
【0040】
同一性の百分率における変化は、例えばアミノ酸置換、挿入または欠失に起因し得る。アミノ酸置換は1対1のアミノ酸の置き換えとして定義される。置換されたアミノ酸が類似の構造的および/または化学的性質を有する場合、置換は保存的である。保存的置換の例は、イソロイシンまたはバリンによるロイシンの置換、グルタミン酸塩によるアスパラギン酸塩の置換、またはセリンによるスレオニンの置換である。
【0041】
アミノ酸挿入または欠失は、アミノ酸配列への、またはその内部での変化である。これらは典型的には約1ないし5アミノ酸の範囲で起こる。ケモカイン様レセプターポリペプチドの生物学的または免疫学的活性を廃絶することなく、どのアミノ酸残基が置換、挿入または欠失できるかを決定する際の指針は、当分野で周知のコンピュータープログラム、例えばDNASTARソフトウェアを用いて見出すことができる。或るアミノ酸変化が生物学的に活性なケモカイン様レセプターポリペプチドを生成するか否かは、例えば米国特許第5,955,303号に記載のように、ケモカイン様レセプターを分析することによって容易に決定できる。
【0042】
融合タンパク質
融合タンパク質は、ケモカイン様レセプターポリペプチドアミノ酸配列に対する抗体の作製に、そして様々な検定系での使用に有用である。例えば、融合タンパク質は、ケモカイン様レセプターポリペプチドの一部と相互作用するタンパク質の同定に使用できる。タンパク質親和クロマトグラフィーまたはタンパク質−タンパク質相互作用のためのライブラリーに基づく検定、例えば酵母2−ハイブリッドまたはファージディスプレイ系をこの目的のために使用できる。このような方法は当分野で周知であり、薬物スクリーニングとしても使用できる。
【0043】
ケモカイン様レセプターポリペプチド融合タンパク質は、ペプチド結合により融合した2のポリペプチドセグメントを含んでいる。第一のポリペプチドセグメントは、配列番号2に示すアミノ酸配列から選択される少なくとも6、10、15、20、25、50、75、100、125、150、200、225、250、275、300、325、350または353の連続アミノ酸、配列番号7に示すアミノ酸配列から選択される少なくとも6、10、15、20、25、50、75、100、125、150、200、225、250、275、300、325、350または357の連続アミノ酸、配列番号8に示すアミノ酸配列から選択される、少なくとも6、10、15、20、25、50、75、100、125、150、200、225、250、275、300、325または344のの連続アミノ酸、または、上記に記載したようなその生物学的に活性な変異体を含む。第一のポリペプチドセグメントはまた、完全長ケモカイン様レセプタータンパク質を含むことができる。
【0044】
第二のポリペプチドセグメントは、完全長タンパク質またはタンパク質断片であってよい。融合タンパク質の組み立てに一般的に使用するタンパク質は、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、自己蛍光タンパク質(青色蛍光タンパク質(BFP)を包含する)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)を包含する。さらに、融合タンパク質の組み立てには、ヒスチジン(His)標識、FLAG標識、インフルエンザへマグルチニン(HA)標識、Myc標識、VSV−G標識、およびチオレドキシン(Trx)標識を包含するエピトープ標識を使用する。その他の融合組み立て物は、マルトース結合タンパク質(MBP)、S−標識、Lex a DNA結合ドメイン(DBD)融合物、GAL4 DNA結合ドメイン融合物、および単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質融合物を包含する。融合タンパク質はさらに、ケモカイン様レセプターポリペプチドコード配列とヘテロローガスタンパク質配列の間に位置する開裂部位を含むよう組み立てることができ、その結果、このケモカイン様レセプターポリペプチドが開裂して、ヘテロローガス部分から精製することができる。
【0045】
融合タンパク質は当分野で周知のように化学合成できる。好ましくは、融合タンパク質は二つのポリペプチドセグメントを共有結合で連結することにより、または分子生物学分野で標準的な方法により調製する。例えば、当分野で知られているように、第二のポリペプチドセグメントをコードしているヌクレオチドを有する適切なリーディングフレームに配列番号1の相補物から選ばれるコード配列を含む、DNA組み立て物を作製し、このDNA組み立て物を宿主細胞で発現させる事による組換えDNA法を用いて、融合タンパク質を調製できる。融合タンパク質を組み立てるための多くのキットが、Promega Corporation(Madison, WI)、Stratagene(La Jolla, CA)、CLONTECH(Mountain View, CA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)、MBL international Corporation(MIC; Watertown, MA)、およびQuantum Biotechnologies(Montreal, Canada; 1-888-DNA-KITS)といった企業から入手できる。
【0046】
種相同体の同定
ケモカイン様レセプターポリペプチドのポリヌクレオチド(下記)を使用して他の種、例えばマウス、サル、または酵母由来のcDNA発現ライブラリーをスクリーニングするために好適なプローブまたはプライマーを作製し、ケモカイン様レセプターポリペプチドの相同体をコードしているcDNAを同定し、そして当分野で周知のようにこのcDNAを発現させて、ヒトケモカイン様レセプターポリペプチドの種相同体を得ることができる。
【0047】
ポリヌクレオチド
ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドは一本鎖または二本鎖であってよく、ケモカイン様レセプターポリペプチドのコード配列またはこのコード配列の相補体を含んでいる。ケモカイン様レセプターのコード配列は配列番号1、4および5に示す。
【0048】
ヒトケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている縮重ヌクレオチド配列、および、配列番号1、4または5に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50、55、60、65、70%、好ましくは約75、90、96、もしくは98%一致するホモローガスなヌクレオチド配列またはこれらの相補物もまた、ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドである。二つのポリヌクレオチド配列間の配列一致パーセントは、ALIGNのようなコンピュータープログラムを用いて決定するが、これは、ギャップオープンペナルティー−12およびギャップエクステンションペナルティー−2によるアフィンギャップ検索を用いるFASTAアルゴリズムを使用するものである。相補的DNA(cDNA)分子、種相同体および生物学的に活性なケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしているケモカイン様レセプターポリヌクレオチドの変異体もやはりケモカイン様レセプターポリヌクレオチドである。
【0049】
ポリヌクレオチド変異体および相同体の同定
上記のケモカイン様レセプターポリヌクレオチドの変異体および相同体もまたケモカイン様レセプターポリヌクレオチドである。典型的には、ケモカイン様レセプターポリヌクレオチド配列は、当分野で周知のように、ストリンジェントな条件下で候補ポリヌクレオチドを既知のケモカイン様レセプターポリヌクレオチドにハイブリダイズすることにより同定できる。例えば、以下の洗浄条件 -- 2X SSC(0.3M NaCl、0.03Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.1%SDS、室温 2回、各々30分間;次いで2X SSC、0.1%SDS、50℃ 1回、30分間;次いで2X SSC、室温 2回、各々10分間 -- を使用して、最大約25−30%の塩基対ミスマッチを含むホモローガス配列を同定できる。より好ましくは、ホモローガス核酸鎖は15−25%の塩基対ミスマッチを、さらに好ましくは5−15%の塩基対ミスマッチを含む。
【0050】
本明細書に開示するケモカイン様レセプターポリヌクレオチドの種相同体はさらに、適当なプローブまたはプライマーを作製し、他の種、例えばマウス、サル、または酵母由来のcDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることによって同定できる。ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドのヒト変異体は、例えばヒトcDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることにより同定できる。二本鎖DNAのTは相同性が1%低下する毎に1−1.5℃低下することがよく知られている(Bonner et al., J.Mol.Biol. 81,123(1973))。故にヒトケモカイン様レセプターポリヌクレオチドの変異体または他の種のケモカイン様レセプターポリヌクレオチドは、推定のホモローガスケモカイン様レセプターポリヌクレオチドを、配列番号1のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドまたはその相補物とハイブリダイズさせて被験ハイブリッドを作製することによって同定できる。被験ハイブリッドの融解温度を、完全に相補的なヌクレオチド配列を有するトランスホルミラーゼポリヌクレオチドを含むハイブリッドの融解温度と比較し、被験ハイブリッドの中の塩基対ミスマッチのパーセント数を算出する。
【0051】
ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件に従いケモカイン様レセプターポリヌクレオチドまたはその相補物とハイブリダイズするヌクレオチド配列もまたケモカイン様レセプターポリヌクレオチドである。ストリンジェントな洗浄条件は当分野で周知且つ理解されており、例えばSambrook et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2d ed., 1989, 9.50-9.51頁に開示されている。
【0052】
典型的には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のためには、温度と塩濃度の組み合わせを、検討中のハイブリッドの理論的Tよりおよそ12−20℃低くなるよう選択すべきである。配列番号1、4または5に示すヌクレオチド配列を有するケモカイン様レセプターポリヌクレオチドまたはその相同体と、それらのヌクレオチド配列のいずれか1つと少なくとも約50、好ましくは約75、90、96、または98%一致するポリヌクレオチド配列とのハイブリッドのTは、例えばBolton and McCarthy, Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A. 48,1390(1962)の式:
=81.5℃−16.6(log10[Na])+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−600/l)、
[式中、l=塩基対で表したハイブリッドの長さ]
を用いて算出できる。
【0053】
ストリンジェントな洗浄条件としては例えば、4X SSC(65℃)、または50%ホルムアミド、4X SSC(42℃)、または0.5X SSC、0.1%SDS(65℃)が挙げられる。高度ストリンジェントな洗浄条件は、例えば0.2X SSC(65℃)などである。
【0054】
ポリヌクレオチドの調製
ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドは、膜構成成分、タンパク質および脂質といった他の細胞成分を含まないよう単離できる。ポリヌクレオチドは細胞から調製でき、標準的核酸精製技術を用いて単離、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような増幅技術を用いて合成、もしくは自動合成機を用いることによって調製できる。ポリヌクレオチドを単離する方法は常套的であり、当分野で知られている。ポリヌクレオチドを取得するためこのような任意の技術を用いて、単離されたケモカイン様レセプターポリヌクレオチドを得ることができる。例えば、制限レセプターおよびプローブを用いてケモカイン様レセプターヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド断片を単離できる。単離したポリヌクレオチドは、他の分子を少なくとも70、80、または90%含まない調製物である。
【0055】
ヒトケモカイン様レセプター cDNA分子は、ケモカイン様レセプター mRNAを鋳型に用いて標準的分子生物学技術にて調製できる。その後ケモカイン様レセプター cDNA分子は、当分野で周知でありSambrook et al.(1989)のようなマニュアルに開示される分子生物学技術を用いて複製できる。ヒトゲノムDNAまたはcDNAを鋳型に使用して本発明に係るポリヌクレオチドのさらなるコピーを得るため、PCRのような増幅技術を用いることができる。
【0056】
別法として、合成化学技術を用いてケモカイン様レセプターポリヌクレオチドを合成することもできる。遺伝コードの縮重は、例えば配列番号1に示すアミノ酸配列を有するケモカイン様レセプターポリペプチドまたはその生物学的に活性な変異体をコードする、別のヌクレオチド配列の合成を可能にする。
【0057】
ポリヌクレオチドの伸長
PCRに基づく様々な方法を用いて本明細書に開示の核酸配列を伸長させ、プロモーターおよび調節エレメントといった上流配列を検出することができる。例えば制限部位PCRは、既知の座に隣接する未知配列を回収するため、普遍的プライマーを使用する(Sarkar, PCR Methods Applic. 2,318-322,1993)。まず、ゲノムDNAを、リンカー配列に対するプライマーおよび既知領域に対し特異的なプライマーの存在下で増幅する。次に、増幅させた配列を、同じリンカープライマーおよび最初のものの内部にある別の特異的プライマーを用いる第二回目のPCRに付す。各回のPCRの産物を適当なRNAポリメラーゼで転写し、逆転写酵素を用いて配列決定する。
【0058】
既知領域に基づく異なるプライマーを用いて配列を増幅または伸長するために、逆PCRを使用することもできる(Triglia et al., Nucleic Acids Res. 16,8186,1988)。OLIGO 4.06 Primer Analysisソフトウェア(National Biosciences Inc., Plymouth, Minn.)のような市販ソフトウェアを用いて、長さ22−30ヌクレオチド長、50%またはそれ以上のGC含有量を持ち、約68−72℃の温度で標的配列とアニーリングするプライマーを設計できる。この方法は、遺伝子の既知領域に適当な断片を作り出す幾つかの制限酵素を使用する。次いでこの断片を分子内ライゲーションにより環化し、PCR鋳型として使用する。
【0059】
使用できるもう一つの方法は、ヒトおよび酵母人工染色体DNA中の既知配列に隣接するDNA断片のPCR増幅を含む、捕捉PCRである(Lagerstrom et al., PCR Methods Applic. 1,111-119,1991)。この方法では、複数の制限レセプター消化物とライゲーションを行って、作製したある二本鎖の配列を、PCRを行う前にそのDNA分子の未知断片中に入れることができる。
【0060】
未知配列を回収するために使用できるもう一つの方法はParker et al., Nucleic Acids Res. 19,3055-3060,1991の方法である。加えて、PCR、入れ子式(nested)プライマー、およびPROMOTERFINDERライブラリー(CLONTECH, Palo Alto, Calif.)を用いてゲノムDNAを移動させることができる(CLONTECH, Palo Alto, Calif.)。このプロセスはライブラリーをスクリーニングする必要性を排除し、イントロン/エクソン接合点の発見に有用である。
【0061】
完全長cDNAに対してスクリーニングする場合、より大きなcDNAを含むようサイズ選択したライブラリーを使用するのが望ましい。遺伝子の5'領域を含む配列をより多く含んでいるという点で、無作為プライミングしたライブラリーが好ましい。無作為プライミングしたライブラリーの使用は、オリゴd(T)ライブラリーが完全長cDNAを産生しない状況で特に好ましいであろう。ゲノムライブラリーは、配列を5'非転写調節領域へと伸長させるのに有用であり得る。
【0062】
市販品が入手可能な毛細管電気泳動系を用いて、PCRまたは配列決定産物のサイズを分析、またはヌクレオチド配列を確認することができる。例えば、毛細管配列決定は、電気泳動分離用の流動性ポリマー、レーザー励起する4種の異なる蛍光色素(各ヌクレオチドにつき1種ずつ)、および電荷結合素子カメラによる放射された波長の検出を利用することができる。出力/光強度は適当なソフトウェア(例えばGENOTYPERおよびSequence NAVIGATOR、Perkin Elmer)を用いて電気信号に変換でき、試料のロードからコンピューター分析および電子的データ表示に至る全プロセスをコンピューター管理することができる。毛細管電気泳動は、特定の試料中に限られた量で存在するかも知れないDNAの小片を配列決定するのに特に好ましい。
【0063】
ポリペプチドの取得
ヒトケモカイン様レセプターポリペプチドは、例えばヒト細胞からの精製によって、ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドの発現によって、または直接的化学合成によって取得できる。
【0064】
タンパク質精製
ヒトケモカイン様レセプターポリペプチドは、ケモカイン様レセプター発現構築物でトランスフェクトした宿主細胞を包含する、該レセプターを発現する任意のヒト細胞から精製できる。精製されたケモカイン様レセプターポリペプチドは、細胞内のケモカイン様レセプターポリペプチドに通常付随するその他の化合物、例えば或る種のタンパク質、炭水化物、または脂質から、当分野で周知の方法を用いて分離する。このような方法は、サイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム分画、イオン交換クロマトグラフィー、親和クロマトグラフィー、および調製用ゲル電気泳動を包含するが、これらに限定されない。精製ケモカイン様レセプターポリペプチドの調製物は少なくとも80%純粋であり、好ましくは該調製物は90%、95%、または99%純粋である。調製物の純度はSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動のような当分野で既知の任意の手段によって評価できる。
【0065】
ポリヌクレオチドの発現
ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドを発現させるため、挿入されたコード配列の転写と発現に必要な要素を含む発現ベクター中にそのポリヌクレオチドを挿入することができる。ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列および適当な転写および翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを組み立てるため、当業者に周知の方法が利用できる。これらの方法には、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組換えがある。このような技術は、例えばSambrook et al.(1989)およびAusubel et al., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York., 1989に記載されている。
【0066】
様々な発現ベクター/宿主系が、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列を含みそして発現させるために利用できる。これらには、微生物、例えば組換えバクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターにより形質転換された細菌;酵母発現ベクターにより形質転換された酵母、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)により感染させた昆虫細胞系、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)、もしくは細菌発現ベクター(例えばTiまたはpBR322プラスミド)により形質転換された植物細胞系、または動物細胞系が包含されるがこれらに限定される訳ではない。
【0067】
調節エレメントまたは調節配列は、宿主細胞タンパク質と相互作用して転写と翻訳を実行する、ベクターの非翻訳領域 エンハンサー、プロモーター、5'および3'非翻訳領域 である。このようなエレメントはその強さと特異性において異なっている。利用するベクター系および宿主に応じて、構成的および誘導的プロモーターを包含する、多数の好適な転写および翻訳エレメントを使用できる。例えば、細菌系でクローニングを行う場合、BLUESCRIPTファージミド(Stratagene, LaJolla,Calif.)またはpSPORT1プラスミド(Life Technologies)等のハイブリッドlacZプロモーターのような誘導的プロモーターを使用できる。バキュロウイルスのポリヘドリンプロモーターは昆虫細胞に使用できる。植物細胞のゲノムから(例えば熱ショック、RUBISCO、および貯蔵タンパク質遺伝子)、または植物ウイルスから(例えば、ウイルスプロモーターまたはリーダー配列)誘導したプロモーターまたはエンハンサーを該ベクター中にクローニングすることができる。哺乳動物細胞系では、哺乳動物遺伝子由来の、または哺乳動物ウイルス由来のプロモーターが好ましい。ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を複数コピー含むセルラインを作製する必要がある場合は、SV40またはEBVに基づくベクターを適当な選択マーカーと共に使用することができる。
【0068】
細菌および酵母発現系
細菌系では、ケモカイン様レセプターポリペプチドに対して意図する用途に応じて数多くの発現ベクターを選択できる。例えば、抗体の誘導のため大量のケモカイン様レセプターポリペプチドが必要である場合は、容易に精製できる融合タンパク質の高レベル発現を指令するベクターが使用できる。このようなベクターは、BLUESCRIPT(Stratagene)のような多機能E.coliクローニングおよび発現ベクターを包含するが、これに限定される訳ではない。BLUESCRIPTベクターにおいては、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列を、β−ガラクトシダーゼのアミノ末端Metとこれに続く7残基の配列と共にフレーム内で該ベクター中にライゲーションすることができ、その結果ハイブリッドタンパク質が産生される。pINベクター(Van Heeke & Schuster, J.Biol.Chem. 264,5503-5509,1989)またはpGEXベクター(Promega, Madison, Wis.)もまた、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)を伴う融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるのに使用できる。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズに吸着させ、その後遊離グルタチオンの存在下で溶離することにより、溶菌させた細胞から容易に精製できる。このような系で調製したタンパク質は、ヘパリン、トロンビン、または第Xa因子プロテアーゼ開裂部位を含むよう設計でき、その結果、目的とするクローンポリペプチドをGST部分から随意に解放することができる。
【0069】
酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいては、α因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGHのような構成的または誘導的プロモーターを含む幾つかのベクターが使用できる。総説としてAusubel et al.(1989)およびGrant et al., Methods Enzymol. 153,516-544,1987を参照されたい。
【0070】
植物および昆虫発現系
植物発現ベクターを使用する場合、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列の発現は、幾つかのプロモーターのうち任意のものにより駆動できる。例えば、CaMVの35Sおよび19Sプロモーターのようなウイルスプロモーターを、単独で、またはTMV由来のオメガリーダー配列と組み合わせて使用できる(Takamatsu, EMBO J. 6,307-311,1987)。別法として、RUBISCOの小サブユニットのような植物プロモーターまたは熱ショックプロモーターを使用することもできる(Coruzzi et al., EMBO J. 3,1671-1680,1984;Broglie et al., Science 224,838-843,1984;Winter et al., Results Probl.Cell Differ. 17,85-105,1991)。これらの組み立て物は、直接DNA形質転換または病原体仲介トランスフェクションにより植物細胞中に導入できる。このような技術は幾つかの一般に入手可能な総説に記載されている(例えば、HobbsまたはMurray、MCGRAW HILL YEARBOOK OF SCIENCE AND TECHNOLOGY, McGraw Hill, New York, N.Y., pp191-196,1992)。
【0071】
昆虫系もまたケモカイン様レセプターポリペプチドの発現に使用できる。例えば、係る系の1つAutographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)は、Spodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusiaの幼虫で外来遺伝子を発現させるベクターとして使用する。ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列を、ポリヘドリン遺伝子のような該ウイルスの非必須領域中にクローニングし、ポリヘドリンプロモーターの調節下に置くことができる。ケモカイン様レセプターポリペプチドをうまく挿入すると、ポリヘドリン遺伝子は不活性化し、コートタンパク質を欠く組換えウイルスが生成する。次いでこの組換えウイルスをS.frugiperda細胞またはTrichoplusiaの幼虫への感染に使用し、そこでケモカイン様レセプターポリペプチドを発現させることができる(Engelhard et al., Proc.Nat.Acad.Sci. 91,3224-3227,1994)。
【0072】
哺乳動物発現系
ウイルスに基づく多くの発現系を用いて哺乳動物宿主細胞でケモカイン様レセプターポリペプチドを発現させることができる。例えば、発現ベクターとしてアデノウイルスを使用する場合、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列は、後期プロモーターおよび3部に分かれたリーダー配列を含むアデノウイルス転写/翻訳複合体中にライゲーションできる。該ウイルスゲノムの非必須E1またはE3領域における挿入を用いて、感染宿主細胞においてケモカイン様レセプターポリペプチドを発現できる生存ウイルスを取得できる(Logan & Shenk, Proc.Natl.Acad.Sci. 81,3655-3659,1984)。所望により、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーのような転写エンハンサーを用いて哺乳動物宿主細胞での発現を増大させることができる。
【0073】
ヒト人工染色体(HAC)もまた、プラスミドが内包し発現するDNA断片よりも大きなDNA断片の運搬に使用できる。6Mないし10MのHACを組み立て、常套的デリバリー法により細胞に到達させる(例えば、リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、または小胞)。
【0074】
さらに、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列の、より効率的な翻訳を達成するために、特異的開始シグナルを使用できる。係るシグナルはATG開始コドンおよび連続配列を包含する(Kozak配列)。ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列、その開始コドン、および上流配列を適当な発現ベクター中に挿入した場合、さらなる転写または翻訳調節シグナルは必要ないであろう。しかしながら、コード配列またはその断片のみを挿入した場合は、外因性の翻訳調節シグナル(ATG開始コドンを包含する)を供給すべきである。開始コドンは挿入物全体を確実に翻訳させるために、正しいリーディングフレームになければならない。外因性翻訳エレメントおよび開始コドンは天然および合成両者の様々な起源であってよい。発現の効率は、使用する特定の細胞系に対し適切なエンハンサーを存在させることにより増強できる(Scharf et al., Results Probl.Cell Differ. 20,125-162,1994)。
【0075】
宿主細胞
宿主細胞菌株は、挿入した配列の発現を調節する能力または発現されたケモカイン様レセプターポリペプチドを所望の方法で処理できる能力を目的として選択できる。該ポリペプチドのこのような修飾には、アセチル化、カルボキシ化、グリコシル化、燐酸化、脂質化、およびアシル化が包含されるがこれらに限定されない。該ポリペプチドの「プレプロ」型を開裂する翻訳後プロセシングもまた、正しい挿入、折り畳み、および/または機能を促進するために使用できる。翻訳後活性のための特異的な細胞機構および特徴的メカニズムを持つ異なる宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、HEK293、1321N1およびWI38)が、American Type Culture Collection(ATCC;10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209)から入手でき、外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確実とするために選択できる。
【0076】
組換えタンパク質の、長期高収量産生のために、安定な発現が好ましい。例えば、セルラインは、クローニングされたケモカイン様レセプター cDNAまたはゲノムDNA、ウイルス複製起点および/または内因性発現エレメント、および同じまたは別のベクター上にある選択マーカー遺伝子を含む発現ベクターを使用して、常套的トランスフェクション法、例えばリポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、小胞、電気穿孔、燐酸カルシウム等によって安定にトランスフェクトされ得る。該ベクターの導入に続いて、細胞を強化培地で1−2日間生育させた後、培地を選択培地に交換することができる。選択マーカーの目的は選択に対する抵抗性を付与することであり、その存在が、導入されたケモカイン様レセプター配列をうまく発現する細胞の生育と回収を可能にする。安定に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型にとって適当な組織培養技術を用いて増殖させることができる。例えば、ANIMAL CELL CULTURE, R.I.Freshney,ed.,1986を参照されたい。
【0077】
幾つかの選択系を用いて、形質転換されたセルラインを回収できる。
【0078】
これらには、それぞれtkまたはaprt細胞で使用できる単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al., Cell 11,223-32,1977)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell 22,817-23,1980)遺伝子が包含されるがこれらに限定される訳ではない。さらに、代謝拮抗物質、抗生物質、または除草剤耐性を選択の基準に用いることができる。例えば、dhfrはメソトレキサートに対する耐性を付与し(Wigler et al., Proc.Natl.Acad.Sci. 77,3567-70,1980)nptはアミノグリコシド、ネオマイシンおよびG−418に対する耐性を付与し(Colbere-Garapin et al., J.Mol. Biol. 150,1014,1981)、そしてalsおよびpatはそれぞれクロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を付与する(Murray, 1992,上記)。さらなる選択遺伝子が記載されている。例えば、trpBは細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用するようにさせ、hisDは細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用するようにさせる(Hartman & Mulligan, Proc.Natl.Acad.Sci. 85,8047-51,1988)。アントシアニンのような可視マーカー、β−グルクロニダーゼとその基質GUS、およびルシフェラーゼとその基質ルシフェリンは、形質転換体を同定し、特異的ベクター系に帰すことのできる一過性または安定なタンパク質発現の量を定量するために使用できる(Rhodes et al., Methods Mol.Biol. 55,121-131,1995)。
【0079】
発現の検出
マーカー遺伝子発現の存在はケモカイン様レセプターポリヌクレオチドもまた存在することを示唆しているが、その存在と発現は確認する必要がある。例えば、もしケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列がマーカー遺伝子配列内部に挿入されるならば、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列を含む形質転換された細胞は、マーカー遺伝子機能の不在によって同定できる。これに代わり、マーカー遺伝子は、単一のプロモーターの調節下にケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列とタンデムに並べて位置させることもできる。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は、通常、ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドの発現を示す。
【0080】
これとは別に、ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドを含みケモカイン様レセプターポリペプチドを発現する宿主細胞は、当業者に知られる様々な方法によって同定できる。これらの方法には、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションおよびタンパク質生検またはイムノアッセイ技術(核酸またはタンパク質の検出および/または定量のための膜、溶液、またはチップに基づく技術を包含する)が包含されるがこれらに限定されない。例えば、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列の存在は、プローブまたは断片またはケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドの断片を使用するDNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションまたは増幅によって検出できる。核酸増幅に基づく検定は、ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドを含む形質転換体を検出するための、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列から選択されるオリゴヌクレオチドの使用を含む。
【0081】
ケモカイン様レセプターポリペプチドに対し特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体のいずれかを使用して該ポリペプチドの発現を検出および測定するための様々なプロトコルが当分野で知られている。例として、レセプター結合イムノソルベント検定(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化セルソーティング(FACS)がある。ケモカイン様レセプターポリペプチド上の2個の非干渉性エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いる、2部位のモノクローナルに基づくイムノアッセイが使用でき、または、競合的結合検定を使用することができる。これらのそしてその他の検定はHamptom et al., SEROLOGICAL METHODS: A LABORATORY MANUAL, APS Press, St.Paul, Minn., 1990およびMaddox et al., J.Exp.Med. 158,1211-1216,1983)に記載されている。
【0082】
多岐にわたる標識およびコンジュゲーション技術が当業者に知られており、様々な核酸およびアミノ酸検定に使用できる。ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための標識化ハイブリダイゼーションまたはPCRプローブを調製する手段は、標識したヌクレオチドを使用する、オリゴ標識化、ニック翻訳、末端標識化、またはPCR増幅を包含する。これとは別に、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列を、mRNAプローブの産生のためのベクター中にクローニングすることもできる。このようなベクターは当分野で既知であり、市販品が入手でき、標識化ヌクレオチドおよび適当なRNAポリメラーゼ、例えばT7、T3、またはSP6を添加することによりインビトロでのRNAプローブの合成に使用することができる。これらの方法は、市販の様々なキットを用いて実施できる(Amersham Pharmacia Biotech、 Promega、およびUS Biochemical)。検出を容易にするために使用できる適当なリポーター分子または標識には、放射性核種、レセプター、および蛍光、化学ルミネセント、または色素生成物質、ならびに基質、補助因子、インヒビター、磁性粒子などが包含される。
【0083】
ポリペプチドの発現および精製
ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列で形質転換させた宿主細胞は、発現と、細胞培養からのタンパク質の回収に適した条件下で培養できる。形質転換細胞により産生されたポリペプチドは、その配列および/または使用したベクターに応じて分泌されまたは細胞内に貯留され得る。当業者には理解できるであろうが、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核または真核細胞膜を通った可溶性ケモカイン様レセプターポリペプチドの分泌を指令する、または膜結合ケモカイン様レセプターポリペプチドの、膜挿入を指令する、シグナル配列を含むよう設計できる。
【0084】
上に論じたように、他の組み立て物を用いて、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列を、可溶性タンパク質の精製を促進するポリペプチドドメインをコードしているヌクレオチド配列と結合させることができる。このような精製促進ドメインは、金属キレート化ペプチド、例えば固定化金属上での精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュール、固定化免疫グロブリン上での精製を可能にするタンパク質Aドメイン、およびFLAGS伸長/親和精製系で利用するドメインが包含されるが、これらに限定されない(Immunex Corp., Seattle, Wash.)。精製ドメインとケモカイン様レセプターポリペプチドとの間に開裂可能リンカー配列、例えば第Xa因子またはエンテロキナーゼに特異的なリンカー配列を入れること(Invitrogen, San Diego, CA)もまた、精製を促進するために利用できる。このような発現ベクターの1つは、ケモカイン様レセプターポリペプチドと、チオレドキシンまたはエンテロキナーゼ開裂部位に先立つ6個のヒスチジン残基とを含む融合タンパク質の発現を提供する。このヒスチジン残基はIMAC(Porath et al., Prot.Exp.Purif. 3,263-281,1992に記載の固定化金属イオン親和クロマトグラフィー)による精製を促進し、一方エンテロキナーゼ開裂部位は融合タンパク質からのケモカイン様レセプターポリペプチドの精製手段を提供する。融合タンパク質を含むベクターはKroll et al., DNA Cell Biol. 12,441-453,1993に開示されている。
【0085】
化学合成
ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている配列は、その全体または一部を、当分野で周知の化学的方法を用いて合成できる(Caruthers et al., Nucl.Acids Res.Symp.Ser. 215-223,1980;Horn et al., Nucl.Acids Res.Symp.Ser. 225-232,1980)。これとは別に、ケモカイン様レセプターポリペプチド自身を、そのアミノ酸配列を合成するための化学的方法、例えば固相技術を用いる直接ペプチド合成を用いて調製できる(Merrifield, J.Am.Chem.Soc. 85,2149-2154,1963;Roberge et al., Science 269,202-204,1995)。タンパク質合成は手動技術またはオートメーションを用いて実施できる。自動化合成は、例えばApplied Biosystems 431Aペプチド合成機(Perkin Elmer)を用いて達成できる。所望により、ケモカイン様レセプターポリペプチドの断片を別々に合成し、化学的方法を用いて合して完全長の分子を調製することもできる。
【0086】
新たに合成したペプチドは、調製用高速液体クロマトグラフイー(例えばCreighton, PROTEINS: STRUCTURES AND MOLECULAR PRINCIPLES, WH Freeman and Co., New York, N.Y., 1983)により実質的に精製できる。合成ケモカイン様レセプターポリペプチドの組成はアミノ酸分析または配列決定により確認できる(例えばエドマン分解法;Creighton、上記を参照されたい)。さらに、直接合成中にケモカイン様レセプターポリペプチドのアミノ酸配列の任意の部分を改変させ、そして/または化学的方法を用いて他のタンパク質由来の配列と合して、変異体ポリペプチドまたは融合タンパク質を調製することができる。
【0087】
改変ポリペプチドの調製
当業者には理解できるであろうが、天然に存在しないコドンを有するケモカイン様レセプターポリペプチドコード化ヌクレオチドを調製することは有利であり得る。例えば、特定の原核または真核宿主が好むコドンを選択して、タンパク質発現の速度を増大させ、または所望の性質、例えば天然に存在する配列から産み出される転写物の半減期より長い半減期を持つRNA転写物を調製することができる。
【0088】
本明細書に開示するヌクレオチド配列は、当分野で一般的に知られる方法を用いて、該ポリペプチドまたはmRNA産物のクローニング、プロセシング、および/または発現を修飾する改変を包含する(但しこれらに限定される訳ではない)様々な理由で、ケモカイン様レセプターポリペプチドコード配列を改変させるように設計できる。無作為断片化によるDNAシャフリングと遺伝子断片および合成オリゴヌクレオチドのPCR再集合を用いてヌクレオチド配列を設計できる。例えば、位置指定突然変異誘発を用いて、新たな制限部位を挿入し、グリコシル化パターンを変え、コドンの優先性を変え、スプライス変異体を調製し、突然変異を導入する等を実施できる。
【0089】
抗体
当分野で知られているいかなる型の抗体も、ケモカイン様レセプターポリペプチドのエピトープに特異的に結合するよう作製できる。本明細書で使用する「抗体」とは、無傷の免疫グロブリン分子、およびその断片、例えばFab、F(ab')、およびFvを包含し、これらはケモカイン様レセプターポリペプチドのエピトープに結合できる。典型的には、エピトープを形成するためには少なくとも6、8、10、または12の連続するアミノ酸が必要である。しかしながら、非連続アミノ酸を含むエピトープはより多くの、例えば少なくとも15、25、または50のアミノ酸を必要とするかも知れない。
【0090】
ケモカイン様レセプターポリペプチドのエピトープに特異的に結合する抗体は治療に使用でき、そして免疫化学検定、例えばウェスタンブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学検定、免疫沈降、またはその他の当分野で既知の免疫化学的検定に使用できる。所望の特異性を有する抗体の同定のため、様々なイムノアッセイが使用できる。競合的結合または免疫放射検定のための多数のプロトコルが当分野でよく知られている。このようなイムノアッセイは典型的には、免疫原と、その免疫原に特異結合する抗体との間の複合体形成の測定を含んでいる。
【0091】
典型的には、ケモカイン様レセプターポリペプチドに特異的に結合する抗体は、免疫化学検定に使用する時、他のタンパク質が提供する検出シグナルより少なくとも5、10、または20倍高い検出シグナルを提供する。好ましくは、ケモカイン様レセプターポリペプチドに特異結合する抗体は、免疫化学検定で他のタンパク質を検出せず、ケモカイン様レセプターポリペプチドを溶液から免疫沈降させることができる。
【0092】
ヒトケモカイン様レセプターポリペプチドは、哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、またはヒトを免疫してポリクローナル抗体を産生させるのに使用できる。所望により、ケモカイン様レセプターポリペプチドは、担体タンパク質、例えば牛血清アルブミン、チログロブリン、およびスカシガイヘモシアニンとコンジュゲートさせることができる。宿主の種に応じて、免疫学的反応を増大させるために種々のアジュバントを使用できる。このようなアジュバントは、フロイントアジュバント、鉱物性ゲル(例えば水酸化アルミニウム)、および界面活性物質(例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルジョン、スカシガイヘモシアニン、およびジニトロフェノール)を包含するがこれらに限定されない。ヒトに使用するアジュバントの中ではBCG(bacilli Calmette-Guerin)およびCorynebacterium parvumが特に有用である。
【0093】
ケモカイン様レセプターポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体は、培養中の連続的セルラインにより抗体分子の産生を提供する任意の技術を用いて調製できる。これらの技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBV−ハイブリドーマ技術があるがこれらに限定されない(Kohler et al., Nature 256,495-497,1985; Kozbor et al., J.Immunol.Methods 81,31-42,1985; Cote et al., Proc.Natl.Acad.Sci. 80,2026-2030,1983; Cole et al., Mol.Cell Biol. 62,109-120,1984)。
【0094】
さらに、マウス抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子にスプライシングして適当な抗原特異性と生物活性を持つ分子を得る、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術が利用できる(Morrison et al., Proc.Natl.Acad.Sci. 81,6851-6855,1984; Neuberger et al., Nature 312,604-608,1984; Takeda et al., Nature 314,452-454,1985)。モノクローナルおよびその他の抗体はまた、これを治療に使用した場合に患者が該抗体に対する免疫反応を起こすのを防ぐため、「ヒト化」することができる。このような抗体は、治療に直接使用できるほど配列が充分ヒトに類似しているかも知れず、または幾つかの重要残基の変更を必要とするかも知れない。齧歯類の抗体とヒト配列の間の配列相違は、個々の残基の位置指定突然変異誘発により、または相補性決定領域全体のgratingにより、ヒト配列内の残基と相違する残基を置き換えることによって最小化することができる。別法として、ヒト化抗体はGB2188638Bに記載のように組換え法を用いて調製できる。ケモカイン様レセプターポリペプチドに特異的に結合する抗体は、U.S.5565332に開示のように、部分的または完全にヒト化した抗原結合部位を含むことができる。
【0095】
これに代わり、当分野で既知の方法を用いて、一本鎖抗体の調製のために記載した技術を適合させ、ケモカイン様レセプターポリペプチドに特異結合する一本鎖抗体を調製することができる。関連する特異性を持つが別個のイディオタイプ組成を有する抗体を、無作為組み合わせ免疫グロブリンライブラリーから鎖シャフリングによって調製することができる(Burton, Proc.Natl.Acad.Sci. 88,11120-23,1991)。
【0096】
一本鎖抗体はまた、ハイブリドーマcDNAを鋳型に用いて、PCRのようなDNA増幅法を用いて組み立てることができる(Thirion et al., 1996, Eur.J.Cancer Prev. 5,507-11)。一本鎖抗体は単一または二重特異性であり得、また、二価または四価であり得る。四価二重特異性一本鎖抗体の組み立ては例えばColoma & Morrison, 1997, Nat.Biotechnol. 15,159-63に教示されている。二価二重特異性一本鎖抗体の組み立てはMallender & Voss, 1994, J.Biol.Chem. 269,199-206に教示されている。
【0097】
下記のように、一本鎖抗体をコードしているヌクレオチド配列を手動または自動ヌクレオチド合成を用いて組み立て、標準的組換えDNA法を用いて発現組み立て物中にクローニングし、そして細胞中に導入してコード配列を発現させることができる。別法として、一本鎖抗体を、例えば糸状ファージ技術を用いて直接調製することもできる(Verhaar et al., 1995, Int.J.Cancer 61,497-501; Nicholla et al., 1993, J.Immunol.Meth. 165,81-91)。
【0098】
ケモカイン様レセプターポリペプチドに特異結合する抗体はまた、リンパ球集団においてインビボ産生を誘導することによって、または、文献に開示されている極めて特異的な結合試薬のパネルまたは免疫グロブリンライブラリーをスクリーニングすることによって調製することもできる(Orlandi et al., Proc.Natl.Acad.Sci. 86,3833-3837,1989; Winter et al., Nature 349,293-299,1991)。
【0099】
その他の型の抗体を、本発明方法において組み立て、治療に使用することができる。例えば、WO93/03151に開示のように、キメラ抗体を組み立てることができる。免疫グロブリンから誘導され多価且つ多重特異的である結合タンパク質、例えばWO94/13804に記載の「diabodies」もまた調製できる。
【0100】
本発明に係る抗体は当分野で周知の方法により精製できる。例えば、抗体は、ケモカイン様レセプターポリペプチドが結合しているカラムを通過させることにより親和精製できる。次いで、結合した抗体を、高い塩濃度の緩衝液を用いてカラムから溶出することができる。
【0101】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定のDNAまたはRNA配列に対し相補的なヌクレオチド配列である。いったん細胞中に導入されるとこの相補的ヌクレオチドは、該細胞が産生した天然配列と結合して複合体を形成し、転写または翻訳のいずれかを遮断する。好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドは少なくとも11ヌクレオチド長であるが、少なくとも12、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50またはそれ以上のヌクレオチド長であってもよい。より長い配列もまた使用できる。アンチセンスオリゴヌクレオチド分子をDNA組み立て物に提供し、上記のように細胞中に導入して、その細胞におけるケモカイン様レセプター遺伝子産物のレベルを低下させることができる。
【0102】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはこの両者の組み合わせであってよい。オリゴヌクレオチドは、1つのヌクレオチドの5'末端を、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、アルキルホスホネート、ホスホロアミデート、燐酸エステル、カルバメート、アセトアミデート、カルボキシメチルエステル、カルボネート、および燐酸トリエステルといった非ホスホジエステルヌクレオチド間結合を有する別のヌクレオチドの3'末端と共有結合させることにより、手動で、または自動合成機によって合成できる。Brown, Meth.Mol. Biol. 20,1-8,1994; Sonveaux, Meth.Mol.Biol. 26,1-72,1994; Uhlmann et al., Chem.Rev. 90,543-583,1990を参照されたい。
【0103】
ケモカイン様レセプター遺伝子の制御、5'、または調節領域と二本鎖を形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計することにより、ケモカイン様レセプター遺伝子発現の修飾が得られる。転写開始部位、例えば開始部位から−10および+10位の間から誘導されるオリゴヌクレオチドが好ましい。同様に、「三重らせん」塩基対合法を用いて阻害を達成できる。三重らせん対合は、二重らせんがポリメラーゼ、転写因子またはシャペロンの結合に足るほど開く能力の阻害を惹起するため、有用である。三本鎖DNAを用いる治療上の進歩が文献に記載されている(例えばGee et al., Huber & Carr, MOLECULAR AND IMMUNOLOGIC APPROACHES, Futura Publishing Co., Mt.Kisco, N.Y., 1994)。転写物がリボソームに結合するのを防ぐことによりmRNAの翻訳を遮断するアンチセンスオリゴヌクレオチドもまた設計できる。
【0104】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとケモカイン様レセプターポリヌクレオチドの相補配列との間に好結果の複合体を形成させるためには、正確な相補性は必要ない。例えばケモカイン様レセプターポリヌクレオチドに対し正確に相補的である2、3、4、もしくは5またはそれ以上の長さの連続するヌクレオチドであって、その各々が、隣接するケモカイン様レセプタータンパク質ヌクレオチドとは相補的ではない連続するある長さのヌクレオチドによって隔てられているものを含有するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ケモカイン様レセプタータンパク質mRNAに対する充分な標的化特異性を提供できる。好ましくは、相補的な連続ヌクレオチドの長さはそれぞれ少なくとも4、5、6、7もしくは8またはそれ以上のヌクレオチド長である。非相補的な介在配列は、好ましくは1、2、3、または4ヌクレオチド長である。当業者は、アンチセンス−センスの対の算出融点を容易に使用して、特定のアンチセンスオリゴヌクレオチドと特定のケモカイン様レセプターポリヌクレオチド配列間で寛容されるミスマッチの程度を決定できるであろう。
【0105】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドとハイブリダイズする能力に影響を及ぼすことなく修飾できる。これらの修飾は該アンチセンス分子の内部、または一端もしくは両端である。例えば、ヌクレオシド間の燐酸結合は、アミノ基と末端リボースの間にいろいろな数の炭素残基を有するコレステリルまたはジアミン部分を加えることによって修飾できる。修飾された塩基および/または糖、例えばリボースの代わりのアラビノース、または3'ヒドロキシ基または5'燐酸基が置換されている3',5'−置換オリゴヌクレオチドもまた修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドに使用できる。これらの修飾オリゴヌクレオチドは当分野で周知の方法により調製できる。例えば、Agrawal et al., Trends Biotechnol. 10,152-158,1992; Uhlmann et al., Chem.Rev. 90,543-584,1990; Uhlmann et al., Tetrahedron.Lett. 215,3539-3542,1987を参照されたい。
【0106】
リボザイム
リボザイムは触媒活性を有するRNA分子である。例えば、Cech, Science 236,1532-1539; 1987; Cech, Ann.Rev.Biochem. 59,543-568; 1990, Cech, Curr.Opin.Struct.Biol. 2,605-609; 1992, Couture & Stinchcomb, Trends Genet. 12,510-515, 1996を参照されたい。当分野で知られるように、リボザイムは、RNA配列を開裂することにより遺伝子機能を阻害するのに使用できる(例えば、Haseloff et al., 米国特許5641673)。リボザイムの作用機構は、相補的標的RNAに対するリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションと、その後のendonucleolyticな開裂を含む。例には、特異的ヌクレオチド配列のendonucleolyticな開裂を特異的且つ効果的に触媒できる、設計されたハンマーヘッドモチーフリボザイム分子がある。
【0107】
ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドのコード配列、例えば配列番号1に示したものの相補物を用いて、ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドから転写されたmRNAに特異結合するリボザイムを作製できる。他のトランスのRNA分子を極めて配列特異的に開裂できるリボザイムを設計し組み立てる方法が開発され、当分野で記載されている(Haseloff et al. Nature 334,585-591,1988)。例えば、リボザイムの開裂活性は、別個の「ハイブリダイゼーション」領域を該リボザイム中に組み入れることによって、特定のRNAを標的とさせることができる。このハイブリダイゼーション領域は標的RNAに対し相補的な配列を含んでおり、したがってその標的と特異的にハイブリダイズする(例えばGerlach et al., EP321201を参照されたい)。
【0108】
ケモカイン様レセプターRNA標的内部の特異的リボザイム開裂部位は、この標的分子を、以下の配列:GUA、GUU、およびGUCを包含するリボザイム開裂部位についてスキャンすることにより同定できる。同定できたならば、該開裂部位を含む標的RNAの領域に対応する、15および20の間のリボヌクレオチドを有する短いRNA配列を、標的を非機能的にし得る二次構造の特徴について評価できる。さらに、候補のケモカイン様レセプタータンパク質RNA標的の適合性を、リボヌクレアーゼ防護検定を用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに対する利用可能性を試験することによって評価できる。配列番号1、3に示すヌクレオチド配列およびこれらの相補物は、適当なハイブリダイゼーション領域配列の供給源を提供する。より長い相補配列を用いて、標的に対するハイブリダイゼーション配列の親和性を増大させることができる。リボザイムのハイブリダイズおよび開裂する領域は、相補領域を介して標的RNAにハイブリダイズする時、リボザイムの触媒領域が標的を開裂し得るといったように、完全に相関している。
【0109】
リボザイムはDNA組み立て物の一部として細胞内に導入できる。マイクロ注入、リポソーム仲介トランスフェクション、電気穿孔、または燐酸カルシウム沈殿といった機械的方法を用いて、ケモカイン様レセプター発現の低下が望まれる細胞中にリボザイム含有DNA組み立て物を導入することができる。これとは別に、細胞がDNA組み立て物を安定的に保持することが望まれる場合は、該組み立て物をプラスミド上で供給し、当分野で知られるように、別個のエレメントとして維持するか、または細胞のゲノム中に組み込むことができる。リボザイムコード化DNA組み立て物は、細胞中のリボザイムの転写を調節するために、プロモーターエレメント、エンハンサーまたはUASエレメント、および転写ターミネーターシグナルといった転写調節エレメントを含み得る。
【0110】
Haseloff et al.,米国特許5641673に教示のように、リボザイムは、標的遺伝子の発現を誘導する因子に応答してリボザイムの発現が起こるように設計することができる。リボザイムはまた、追加レベルの調節を提供するよう設計でき、その結果、mRNAの破壊はリボザイムと標的遺伝子の両者が細胞に誘導された時にのみ起こる。
【0111】
区別的に発現される遺伝子
遺伝子産物がヒトケモカイン様レセプターポリペプチドと相互作用する遺伝子の同定方法をここに記載する。このような遺伝子は、HIV感染、心臓血管障害、喘息およびCOPDを包含する(但しこれらに限定されない)疾患において区別して(区別的に)発現される遺伝子を表し得る。さらに、係る遺伝子は、このような疾患の進行または治療に関連する操作に応答して区別的に調節される遺伝子を表し得る。加えて、このような遺伝子は、組織または生物の発生の異なる段階で増大または低下する、一時的に調節される発現を示すことができる。区別的に発現される遺伝子はまた、その発現を、対照対実験条件の下で調節させることができる。さらに、ヒトケモカイン様レセプターポリペプチド遺伝子または遺伝子産物は、これ自体区別的発現について試験できる。
【0112】
発現が正常対疾病状態で相違する程度は、標準的特性決定技術、例えば区別的ディスプレイ技術によって視覚化されるに充分大きいというだけでよい。発現の相違を視覚化することのできる、その他のこのような標準的特性決定技術は、定量的RT(逆転写酵素)、PCR、およびノーザン分析を包含するが、これらに限定されない。
【0113】
区別的に発現される遺伝子の同定
区別的に発現される遺伝子を同定するためには、目的とする組織から全RNA、または好ましくはmRNAを単離する。例えば、RNA試料は、実験対象の組織から、そして対照となる対象の対応組織から取得する。mRNAの単離に対して不利に選択しない任意のRNA単離技術を、係るRNA試料の精製に利用できる。例えば、Ausubel et al., ed., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, Inc. New York, 1987-1993を参照されたい。当業者に周知の技術、例えばChomczynski、米国特許4843155の一段階RNA単離プロセスを用いて多数の組織試料を容易に処理することができる。
【0114】
区別的に発現される遺伝子が産生したRNAを表す、集められたRNA試料内部の転写物は、当業者に周知の方法により同定する。これらには、例えば、ディファレンシャルスクリーニング(Tedder et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 85,208-12,1988)、差引きハイブリダイゼーション(Hedrick et al., Nature 308,149-53; Lee et al., Proc Natl.Acad.Sci.U.S.A. 88,2825,1984)、および好ましくはディファレンシャルディスプレイ(Liang & Pardee, Science 257,967-71,1992; 米国特許5262311)が包含される。
【0115】
区別的発現の情報はこれ自体、ヒトケモカイン様レセプターポリペプチドの関与する疾病の治療のための関連法を示唆している。例えば、治療は、区別的に発現される遺伝子および/またはヒトケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている遺伝子の発現の調節を包含し得る。区別的発現の情報は、区別的に発現される遺伝子もしくは遺伝子産物またはヒトケモカイン様レセプターポリペプチド遺伝子もしくは遺伝子産物の活性または発現が、アップレギュレーションであるかダウンレギュレーションであるかを示すことができる。
【0116】
スクリーニング方法
本発明は、ケモカイン様レセプターポリペプチドまたはケモカイン様レセプターポリヌクレオチドに結合する、またはその活性を調節する、被験化合物をスクリーニングするための検定を提供する。被験化合物は好ましくはケモカイン様レセプターポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合する。より好ましくは、被験化合物は、ヒトケモカイン様を、被験化合物の不在時と比較して少なくとも約10、好ましくは約50、より好ましくは約75、90、または100%低下または増大させる。
【0117】
被験化合物
被験化合物は当分野で既知の薬理学的物質であってよく、または薬理活性を持っていることが前もって分かっていない化合物であってよい。この化合物は天然に存在する、または実験室で設計されたものであってよい。これらは、微生物、動物、または植物から単離されたものであってよく、そして組換え的に調製され、または当分野で既知の化学的方法により合成されたものであってよい。所望により被験化合物は、生物学的ライブラリー、空間的アドレス特定可能な並行固相または液相ライブラリー、デコンボルーションを要する合成ライブラリー法、「一ビーズ一化合物」ライブラリー法、および親和クロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法を包含する(但しこれらに限定される訳ではない)当分野で既知の数多くの組み合わせライブラリー法のいずれかを用いて取得できる。生物学的ライブラリーアプローチはポリペプチドライブラリーに限定されているが、他の4種のアプローチはポリペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の小分子ライブラリーに適用できる。Lam, Anticancer Drug Des. 12,145,1997を参照されたい。
【0118】
分子ライブラリーの合成法は当分野でよく知られている(例えば、DeWitt et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 90,6909,1993; Erb et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 91,11422,1994; Zuckermann et al., J.Med.Chem. 37,2678,1994; Cho et al., Science 261,1303,1993; Carell et al., Angew.Chem.Int.Ed.Engl. 33,2059,1994; Carell et al., Angew.Chem.Int.Ed.Engl. 33,2061; Gallop et al., J.Med.Chem. 37,1233,1994を参照されたい)。化合物のライブラリーは溶液で(例えば、Houghten, Biotechniques 13,412-421,1992)、またはビーズ(Lam, Nature 354,82-84,1991)、チップ(Fodor, Nature 364,555-556,1993)、細菌または胞子(Ladner、米国特許5223409)プラスミド(Cull et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 89,1865-1869,1992)、またはファージ(Scott & Smith, Science 249,386-390, 1990; Devlin, Science 249,404-406,1990);Cwirla et al., Proc.Natl.Acad.Sci.97,6378-6382,1990; Felici, J.Mol.Biol. 222,301-310,1991; およびLadner、米国特許5223409)上に提供できる。
【0119】
ハイスループットスクリーニング
被験化合物は、高(ハイ)スループットスクリーニングを用いて、ケモカイン様レセプターポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合する能力、またはケモカイン様レセプタータンパク質活性もしくはケモカイン様レセプター遺伝子発現に影響を及ぼす能力についてスクリーニングできる。ハイスループットスクリーニングを使用して、多くの個別的化合物を並行して試験でき、その結果多数の被験化合物を迅速にスクリーニングできる。最も広範に確立されている技術は96ウェル微量定量プレートを利用するものである。この微量定量プレートのウェルは、典型的には50ないし500μlの範囲の検定容量を必要とする。このプレートに加えて、96ウェルフォーマットに適合させた多くの機器、材料、ピペット、ロボット、プレート洗浄機、およびプレート読み取り機が市販されている。
【0120】
別法として、「自由フォーマット検定」、または試料間に物理的障壁を持たない検定が使用できる。例えば、組み合わせペプチドライブラリーのための、単純な均質検定で色素細胞(メラノサイト)を用いる検定が、Jayawickreme et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 19,1614-18(1994)に記載されている。ペトリ皿中のアガロースの下にこの細胞を入れ、次いで組み合わせ化合物を伴っているビーズをアガロースの表面に載せる。組み合わせ化合物はこのビーズから化合物を部分的に放出する。化合物がゲルマトリックス中へと局所的に拡散するにつれて活性化合物が細胞の色の変化を惹起するため、活性化合物を暗色色素領域として視覚化することができる。
【0121】
自由フォーマット検定のもう一つの例は、生体分子スクリーニング学会第1回年次総会(Philadelphia,Pa.、1995年11月7-10日)で報告されたChelsky、「組み合わせライブラリーのスクリーニングのための戦略:新規な、そして伝統的なアプローチ」により記載されている。Chelskyは、カルボニックアンヒドラーゼのための単純な均質レセプター検定をアガロースゲルの内部に入れ、その結果ゲル中のレセプターがゲル全体に色の変化を惹起するようにさせた。その後、光リンカーを介して組み合わせ化合物を持つビーズをゲル内部に入れ、すると該化合物はUV光により部分的に放出された。レセプターを阻害する化合物は、色の変化がより少ない局所阻害領域として観察された。
【0122】
さらに別の例がSalmon et al., Molecular Diversity 2,57-63(1996)に記載されている。この例では、組み合わせライブラリーを、寒天中で生育する癌細胞への細胞毒性効果を有する化合物についてスクリーニングした。
【0123】
もう一つのハイスループットスクリーニング法がBeutel et al.、米国特許5976813に記載されている。この方法では、被験試料を多孔性マトリックスに入れる。次に1またはそれ以上の検定成分を、マトリックス、例えばゲル、プラスチックシート、フィルター、またはその他の形の容易に操作できる固体担体の内部、上、または底に入れる。試料がこの多孔性マトリックスに導入されるとこれらは充分ゆっくりと拡散し、その結果、被験試料が混ざらずに検定が遂行できる。
【0124】
結合検定
結合検定については、被験化合物は好ましくは、例えばケモカイン様レセプターポリペプチドの活性部位に結合してこれを占有し、それにより基質がリガンド結合部位に接近できなくさせ、その結果正常な生物活性が妨げられるような小分子またはペプチド様分子である。このような小分子の例は小ペプチドまたはペプチド様分子を包含するが、これらに限定される訳ではない。
【0125】
結合検定では、被験化合物またはケモカイン様レセプターポリペプチドのいずれかが検出可能な標識、例えば蛍光、放射性同位元素、化学ルミネセント、または酵素標識(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼ)を含むことができる。そこで、ケモカイン様レセプターポリペプチドに結合している被験化合物の検出は、例えば放射能の放出を直接計数することにより、またはシンチレーション計数により、または検出可能産物への適当な基質の変換を測定することにより、達成できる。
【0126】
別法として、ケモカイン様レセプターポリペプチドへの被験化合物の結合を、反応体のいずれをも標識せずに測定することができる。例えば、マイクロフィジオメーターを用いて、被験化合物とケモカイン様レセプターポリペプチドとの結合を検出できる。マイクロフィジオメーター(例えばサイトセンサー)とは、細胞がその環境を酸性化する速度を光アドレッサブル電位差センサー(LAPS)を用いて測定する分析機器である。この酸性化速度の変化は、被験化合物とケモカイン様レセプターポリペプチドの相互作用の指標として使用できる(McConnell et al., Science 257,1906-1912,1992)。
【0127】
被験化合物がケモカイン様レセプターポリペプチドに結合する能力の測定はまた、実時間Bimolecular Interaction Analysis(BIA)のような技術を用いて達成できる(Sjolander & Urbaniczky, Anal.Chem. 63,2338-2345,1991、およびSzabo et al., Curr.Opin.Struct.Biol. 5,699-705,1995)。BIAは、いかなる反応体をも標識せずに、生体特異的相互作用を実時間で研究するための技術である(例えばBIAcore(登録商標))。光学的現象表面プラズモン共鳴(SPR)の変化を、生体分子間の実時間反応の指標に使用できる。
【0128】
本発明のさらに別の態様では、ケモカイン様レセプターポリペプチドを二ハイブリッド検定または三ハイブリッド検定(例えば、米国特許5283317; Zervos et al., Cell 72,223-232,1993; Madura et al., J.Biol.Chem. 268,12046-12054,1993; Bartel et al., Biotechniques 14,920-924,1993; Iwabuchi et al., Oncogene 8,1693-1696,1993; およびBrent WO94/10300)における「おとりタンパク質」として使用し、ケモカイン様レセプターポリペプチドに結合またはこれと相互作用してその活性を調節する他のタンパク質を同定することができる。
【0129】
二ハイブリッド系は殆どの転写因子のモジュール的性格に基づくものであり、それは、分離可能なDNA結合および活性化ドメインから成っている。簡潔に述べると、この検定は二種の異なるDNA組み立て物を利用する。例えば、一方の組み立て物においては、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドが、既知の転写因子のDNA結合ドメインをコードしているポリヌクレオチドに融合できる(例えばGAL−4)。別の組み立て物においては、未同定タンパク質(「餌」または「試料」)をコードしているDNA配列が、既知の転写因子の活性化ドメインをコードしているポリヌクレオチドに融合できる。もし「おとり」および「餌」タンパク質がインビボで相互作用してタンパク質依存複合体を形成できたならば、該転写因子のDNA結合および活性化ドメインは極めて近位に招来される。この近位性が、転写因子に応答する転写調節部位と機能的に結合しているリポーター遺伝子(例えばLacZ)の転写を可能にする。リポーター遺伝子の発現が検出でき、機能的転写因子を含む細胞コロニーを単離し、ケモカイン様レセプターポリペプチドと相互作用するタンパク質をコードしているDNA配列取得に使用することができる。
【0130】
反応体の一方または両方の非結合型からの結合型の分離を促進するため、そして検定の自動化の便宜を図るため、ケモカイン様レセプターポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または被験化合物のいずれかを固定化することが望ましいかも知れない。したがって、このレセプターポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または被験化合物のいずれかを固体支持体に結合させることができる。好適な固体支持体は、ガラスまたはプラスチックスライド、組織培養プレート、微量定量ウェル、管、シリコンチップ、またはビーズ(ラテックス、ポリスチレン、またはガラスビーズを包含するがこれらに限定されない)のような粒子を包含するがこれらに限定されない。共有および非共有結合、受動吸収、またはそれぞれポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または被験化合物に付着させた結合部分と固体支持体の対、の使用を包含する、当分野で既知の任意の方法を用いてケモカイン様レセプターポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または被験化合物を固体支持体に付着させることができる。被験化合物は好ましくは整列して固体支持体に結合させ、その結果個々の被験化合物の位置を追跡することができる。ケモカイン様レセプターポリペプチド(またはポリヌクレオチド)への被験化合物の結合は、反応体を入れるのに適した任意の容器で達成できる。係る容器の例には微量定量プレート、試験管、および微量遠沈管がある。
【0131】
一つの態様において、ケモカイン様レセプターポリペプチドは、ケモカイン様レセプターポリペプチドを固体支持体に結合させるドメインを含む融合タンパク質である。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質をグルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St.Louis, Mo.)上またはグルタチオン誘導体化微量定量プレート上に吸着させ、次いでこれを被験化合物または被験化合物および非吸着ケモカイン様レセプターポリペプチドに合し;次にこの混合物を複合体形成が行われる条件下でインキュベートする(例えば、塩およびpHに関して生理的条件)。インキュベーションの後、ビーズまたは微量定量プレートのウェルを洗浄して未結合成分を除去する。反応体の結合は上記のように直接的または間接的に測定できる。別法として、複合体を固体支持体から解離させた後に結合を測定することもできる。
【0132】
本発明に係るスクリーニング検定には、タンパク質またはポリヌクレオチドを固体支持体上に固定化するためのその他の技術を使用することもできる。例えば、ケモカイン様レセプターポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または被験化合物のいずれかを、ビオチンとストレプトアビジンのコンジュゲーションを利用して固定化できる。当分野で周知の技術(例えばビオチニル化キット、Pierce Chemicals, Rockford,Ill.)を用いて、ビオチニル化したケモカイン様レセプターポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または被験化合物をビオチン−NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)から調製し、ストレプトアビジン被覆した96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固定化できる。別法として、ケモカイン様レセプターポリペプチド、ポリヌクレオチド、または被験化合物に特異的に結合するが、所望の結合部位、例えばケモカイン様レセプターポリペプチドの活性部位に干渉しない抗体をプレートのウェルに誘導体化することができる。未結合の標的またはタンパク質が抗体コンジュゲーションによりウェル中に捕捉できる。
【0133】
GST−固定化複合体について上に記載した方法に加え、このような複合体を検出する方法には、ケモカイン様レセプターポリペプチドまたは被験化合物に特異結合する抗体を用いる、複合体の免疫検出、ケモカイン様レセプターポリペプチドの活性検出へと引き継がれる酵素結合検定、および非還元条件下でのSDSゲル電気泳動がある。
【0134】
ケモカイン様レセプターポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合する被験化合物を求めるスクリーニングは、無傷の細胞で実施することもできる。ケモカイン様レセプターポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む任意の細胞が、細胞に基づく検定系で使用できる。ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドは細胞中に天然に存在し、または上記のような技術を用いて導入できる。ケモカイン様レセプターポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対する被験化合物の結合は、上記のように測定する。
【0135】
機能検定
ケモカインポリペプチドの生物学的効果を増大または低下させる能力について被験化合物を試験できる。そのような生物学的効果は、下記の具体的実施例に記載の機能検定を用いて測定できる。機能検定は、精製したケモカイン様レセプターポリペプチド、細胞膜調製物、または無傷の細胞を被験化合物と接触させた後に実施できる。ケモカインの機能的活性を少なくとも約10、好ましくは約50、より好ましくは約75、90、または100%低下させる被験化合物を、ケモカインを減少させる可能性ある物質として同定する。ケモカイン活性を少なくとも約10、好ましくは約50、より好ましくは約75、90、または100%増大させる被験化合物を、ケモカインを増大させる可能性ある物質として同定する。
【0136】
遺伝子発現
別の態様では、ケモカイン様レセプタータンパク質遺伝子の発現を増大または減少させる被験化合物を同定する。ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドを被験化合物と接触させ、RNAまたはケモカイン様レセプターポリヌクレオチドのポリペプチド産物の発現を測定する。被験化合物存在下での適当なmRNAまたはポリペプチドの発現レベルを、該被験化合物不在下でのmRNAまたはポリペプチドの発現レベルと比較する。すると被験化合物が、この比較に基づく発現のモジュレーターとして同定できる。例えば、mRNAまたはポリペプチドの発現が、被験化合物の不在時よりも存在時により大きい場合は、この被験化合物を、該mRNAまたはポリペプチド発現の刺激物質または増強物質と同定する。そうではなく、mRNAまたはポリペプチドの発現が、被験化合物の不在時よりも存在時により小さい場合は、この被験化合物を、該mRNAまたはポリペプチド発現のインヒビターと同定する。
【0137】
細胞におけるケモカイン様レセプタータンパク質mRNAまたはポリペプチド発現のレベルは、mRNAまたはポリペプチドを検出するための当分野で周知の方法により決定できる。定性または定量的方法のいずれかが使用できる。ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドのポリペプチド産物の存在は、例えばラジオイムノアッセイのような免疫化学的方法、ウエスタンブロッティング、および免疫組織化学を包含する、当分野で周知の様々な技術を用いて決定できる。別法として、ポリペプチド合成は、ケモカイン様レセプターポリペプチド内への標識アミノ酸の取り込みを検出することにより、インビボで、細胞培養で、またはインビトロ翻訳系で決定できる。
【0138】
このようなスクリーニングは、無細胞検定系または無傷の細胞のいずれかで実施できる。ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドを発現するいかなる細胞も細胞に基づく検定系で使用できる。ケモカイン様レセプターポリヌクレオチドは細胞内に天然に存在するか、または上記のような技術を用いて導入することができる。一次培養または確立されたセルライン、例えばCHOまたはヒト胚性腎293細胞のいずれかを使用できる。
【0139】
医薬組成物
本発明はさらに、治療効果を達成するために患者に投与できる医薬組成物を提供する。本発明に係る医薬組成物は、例えばケモカイン様レセプターポリペプチド、ケモカイン様レセプターポリヌクレオチド、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ケモカイン様レセプターポリペプチドに特異的に結合する抗体、または類似体、アゴニスト、アンタゴニスト、またはケモカイン様レセプターポリペプチド活性のインヒビターを含み得る。この組成物は単独で、または少なくとも1種類の他の物質、例えば安定化化合物と組み合わせて投与でき、これは、食塩水、緩衝化食塩水、デキストロース、および水を包含する(但しこれらに限定されない)任意の無菌で生物学的適合性のある製薬的担体中で投与できる。この組成物は単独で、または他の物質、薬物またはホルモンと組み合わせて患者に投与できる。
【0140】
活性成分に加えてこれらの医薬組成物は、賦形剤および補助物質を含む適当な製薬的に許容し得る担体を含有でき、これらは、製薬的に使用できる調製物への活性化合物の処理を促進する。本発明に係る医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経口、局所、舌下、または直腸手段を包含する(但しこれらに限定されない)多くの経路により投与できる。経口投与用医薬組成物は、当分野で既知の製薬的に許容し得る担体を用いて経口投与に適した用量に調合できる。このような担体により、該医薬組成物を、患者が内服するための錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などに調合できる。
【0141】
経口使用のための医薬製剤は、活性化合物を、固体賦形剤と合し、得られた混合物を所望により粉砕し、そしてこの顆粒混合物を、所望ならば適当な補助物質を加えた後に処理して錠剤または糖衣剤核を得る。好適な賦形剤は炭水化物またはタンパク質増量剤、例えば乳糖、シュクロース、マンニトール、またはソルビトールを包含する糖;トウモロコシ、小麦、米、馬鈴薯、またはその他の植物由来の澱粉;セルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウム;アラビアゴムおよびトラガカントゴムを包含するゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンのようなタンパク質である。所望により崩壊剤または可溶化剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを添加できる。
【0142】
糖衣剤核は、濃縮糖溶液のような適当な被覆剤と共に使用でき、これはさらに、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、carbopolゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適当な有機溶媒または溶媒混合物を含むことができる。製品の同定のためまたは活性化合物の量、即ち用量をあらわすために染料または色素を錠剤または糖衣被覆剤に添加できる。
【0143】
経口的に使用できる医薬調合物は、ゼラチン製の押してはめ込むカプセル剤、ならびに、ゼラチンおよび被覆剤、例えばグリセロールまたはソルビトールでできた軟封入カプセル剤を包含する。押してはめ込むカプセル剤は、活性成分を、乳糖または澱粉のような増量剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、および所望により安定剤と混合して含有できる。軟カプセル剤では、活性化合物を、安定剤を加えたまたは加えない適当な液体、例えば脂肪油、液体、または液体ポリエチレングリコールに溶解または懸濁できる。
【0144】
非経口投与に好適な医薬製剤は、水溶液、好ましくは生理学的適合性の緩衝液、例えばハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的に緩衝化した食塩水中で調合できる。水性注射用懸濁剤は、該懸濁液の粘度を増加させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含有できる。さらに、活性化合物の懸濁剤は適当な油性注射用懸濁剤として調製できる。好適な親油性溶媒または媒質は、胡麻油のような脂肪油、またはオレイン酸エチルまたはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、またはリポソームを包含する。非脂質ポリカチオンアミノポリマーもまたデリバリーに使用できる。所望により懸濁剤は、化合物の溶解性を増し高濃縮溶液の調製を可能にするような適当な安定剤または物質を含むことができる。局所または鼻腔投与のためには、透過すべき特定の障壁に対し適当な浸透剤を製剤に使用する。このような浸透剤は当分野で一般に知られている。
【0145】
本発明に係る医薬組成物は当分野で既知の方法で、例えば常套的混合、溶解、顆粒化、糖衣剤製造、すりつぶし、乳化、カプセル化、捕捉、または凍結乾燥プロセスによって製造できる。この医薬組成物は塩として提供でき、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、琥珀酸などを包含する(但しこれらに限定されない)多くの酸を用いて調製できる。塩は、水性または他のプロトン性溶媒において、対応する遊離塩基型よりもより可溶性の傾向がある。別の場合には、好ましい調製物は、pH範囲4.5ないし5.5において以下のもの:1−50mMヒスチジン、0.1%−2%シュクロース、および2−7%マンニトール、の全てまたは任意のものを含有できる凍結乾燥粉末であってよく、これを使用前に緩衝液と合する。
【0146】
調合と投与のための技術のさらなる詳細は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Maack Publishing Co., Easton, Pa)の最新版に見出すことができる。医薬組成物を製造した後、これらを適当な容器に入れ、適応状態の治療のためにラベルを貼る。このようなラベル表示は、投与の量、頻度、および投与方法を包含する。
【0147】
治療上の適応および方法
ヒトケモカイン様レセプターを調節して、HIV感染、心臓血管疾患、喘息およびCOPDを処置することができる。
【0148】
心臓血管疾患には、次の心臓および血管系の障害が含まれる:うっ血性心不全、心筋梗塞、虚血性心疾患、すべての種類の心房性および心室性不整脈、高血圧血管疾患および末梢血管疾患。
【0149】
心不全とは、心機能の異常性のせいで、心臓が、代謝中の組織の必要に見合う割合で血液をポンプすることができない病態生理学的状態として定義される。これには、ハイアウトプットおよびローアウトプット、急性および慢性、右側または左側、収縮性または弛緩性のようなすべての型のポンプ不全が、原因に関係なく含まれる。
【0150】
心筋梗塞(MI)は一般に、冠血流の突然の減少、その後の、動脈硬化症によってあらかじめ狭小化した冠動脈の血栓性閉塞によって生じる。MI予防(初期および二次的予防)は、MIの急性処置および合併症の予防と同様に包含される。
【0151】
虚血性疾患は、冠流が制限され、酸素に関して心筋の必要量に見合わない灌流を生じる症状である。この群の疾患には、安定狭心症、不安定狭心症および無症候性虚血が含まれる。
【0152】
不整脈には、すべての型の心房性および心室性頻脈性不整脈(心房性頻脈、心房粗動、心房細動、房室リエントラント頻脈、興奮前症候群、心室頻脈、心室粗動、心室細動)、ならびに徐脈性型不整脈が含まれる。
【0153】
血管疾患には、初期ならびにすべての種類の二次的動脈高血圧(腎、内分泌、神経原性、その他)が含まれる。開示した遺伝子およびその産物は、高血圧の処置、ならびにすべての合併症の予防に関する薬物標的として用いることができる。末梢血管疾患とは、動脈および/または静脈流が減少し、血液供給と組織酸素要求の間の不均衡が生じる血管疾患として定義される。これには、慢性末梢動脈閉塞疾患(PAOD)、急性動脈血栓症および塞栓症、炎症性血管障害、レイノー現象および静脈障害が含まれる。
【0154】
アレルギーは、環境抗原により臨床的な副作用が引き起こされる複合過程である。アレルゲンと称される誘導性抗原は、一般に特異的なIgE応答を引き起こし、大抵の場合、アレルゲン自体には毒性がほとんどないか、あるいは全くないが、IgE応答により次々とIgE依存性又はT細胞依存性の過敏反応が誘導され、病理が発症する。過剰反応は、局所的又は全身性の場合があり、以前にあるアレルゲンに対して敏感となった個体にそのアレルゲンを曝すと、典型的には数分以内に過剰反応を発症する。このアレルギーの過剰反応は、エフェクター細胞(例えば、肥満細胞、好塩基球または好酸球)表面の特異的な受容体と結合しているIgE抗体がアレルゲンを認識して、エフェクター細胞を活性化し、そして急性サイン及び応答の症状を起こす媒介物質を放出することにより発症する。アレルギー疾患には、喘息、アレルギー性鼻炎(枯草熱)、アトピー性皮膚炎及びアナフィキラシーが含まれる。
【0155】
喘息は、多くの遺伝子と環境因子との相互作用による結果として考えられており、以下の3つの主要な特性:1)気管支収縮、粘液生産増大、気道の狭小化を引き起こす気道壁の肥厚化により引き起こされる断続的かつ可逆的な気道閉塞、2)気道口径制御の低下により引き起こされる気道反応亢進、及び3)気道炎症、により特徴付けられる。特定の細胞は、喘息の炎症反応に重要であり、それらにはT細胞、及び抗原提示細胞、IgEを産生するB細胞、並びにIgEと結合する肥満細胞、好塩基球、好酸球及び他の細胞が含まれる。これらのエフェクター細胞は、気道のアレルギー反応部位に蓄積しており、そして急性病状に及び最終的に該疾患に関連する組織破壊に関与する毒性産物を放出する。平滑筋細胞、肺上皮細胞、粘液生産細胞及び神経細胞などの他の常在(resident)細胞もまた喘息を患っている個体においては異常なものとなり得、病状に寄与し得る。臨床的に断続喘鳴及び呼吸不足などを示す喘息の気道閉塞は、一般に緊急処置が必要とされる疾患の多くの圧迫症状を引き起こすと同時に、該疾患と関連した炎症及び組織破壊は、最終的に喘息を長期管理が必要な身体障害とする不可逆変化を引き起こし得る。
【0156】
近年の喘息に対する病理理解の大きな進展にも拘わらず、この疾患の羅患率及び重傷度は増大しているようである(Gergen及びWeiss, Am. Rev. Respir. Dis. 146, 823-24,1992)。人口の30〜40%がアトピー性アレルギーに苦しんでおり、人口のうち子供15%及び成人5%が喘息に苦しんでいる(Gergen及びWeiss, 1992)。従って、我々の医療財源に莫大な負担がかかっている。しかしながら、喘息の診断及び処置は困難である。肺組織炎症の重症度を測定するのは容易でなく、この疾患の症状はしばしば呼吸器感染症、慢性呼吸器炎症疾患、アレルギー性鼻炎又は他の呼吸性疾患から区別できない。原因となる環境因子を取り出すことが困難であるため、刺激性アレルゲンを決定できないことがしばしばである。現在の薬理学的処置はそれ自体の不利益さによる問題がある。一般に用いられる治療物質、例えばβアクチベーターは、一時的に肺機能を改善する症状緩和物として作用し得るが、根本的な炎症には作用しない。根本的な炎症を低減させ得る物質、例えば抗炎症性ステロイドは、免疫抑制から骨喪失の範囲にまで及ぶという大きな欠点があり得る(Goodman及びGilman's THE PHARMACOLOGIC BASIS OF THERAPEUTICS, Seventh Edition, MacMillan Publishing Company, NY, USA, 1985)。さらに、コルチコステロイドを吸入するなどの現在の治療の多くは持続性が短く、使用に不便であり、そして症例によってはしばしば一生定期的に用いなければならない、重要な問題は患者が処置に応じるのを止めることで処置の有効性が低減することである。
【0157】
この従来の治療に関する問題のため、代わりとなる処置ストラテジーが評価されている。グリコホリンA(Chu及びSharom, Cell. Immunol. 145, 223-39,1992)、シクロスポリン(Alexanderら、Lancet 339, 324-28,1992)及びIL−2のノナペプチド断片(Zav'yalovら、Immunol. Lett. 31, 285-88,1992)の全てはインターロイキン−2依存性Tリンパ球増殖を阻害するが、これらは多くの別の効果を示すことが知られている。例えば、シクロスポリンは臓器移植後の免疫抑制物質として使用される。これらの物質は、喘息の処置におけるステロイドの代替物に相当し得ると同時に、インターロイキン−2依存性Tリンパ球増殖及びホメオスタシスと関連する潜在的に重要な免疫機能を阻害する。気管支圧縮(bronchochonstriction)の媒介物質、例えばクロモン(cromones)又は抗ロイコトリエンの放出又は活性化をブロックする別の処置が穏和な喘息の処置に最近導入されたが、これらは非常に高価な上に、全ての患者に有効という訳でもなく、これらが喘息性炎症と関連する慢性変化に何らかの影響を及ぼすか否かについても明らかではない。喘息の発症に重要な経路において作用でき、該疾患の偶発的攻撃をブロックし、患者を免疫無防備状態にすることなく過剰反応アレルギー免疫応答を優先的に弱らせることのできる処置の同定が、当分野で必要とされている。
【0158】
慢性閉塞性肺(又は気道)疾患(COPD)は、慢性気管支炎による肺気腫及び末梢気道閉塞の併発が一般的な原因である、気流閉塞として生理的に定義される状態である(Senior&Shapiro, Pulmonary Diseases and Disorders, 3d ed., New York, McGraw-Hill, 1998, pp. 659-681,1998; Barnes, Chest 117, 10S-14S, 2000)。肺気腫は、肺空気間隙の異常な拡張を引き起こす肺胞壁の破壊によって特徴付けられる。慢性気管支炎は、連続2年間それぞれに3ヶ月間の慢性多産咳(chronic productive cough)が見られるというように臨床的に定義される。COPDにおいては、気流閉塞は通常進行性であり、希に好転することがある。COPDの発症において、タバコの喫煙はかなり重要な危険因子であるが、この疾患は非喫煙者にも発症する。
【0159】
気道の慢性炎症は、COPDの鍵となる病態的特徴である(Senior&Shapiro, 1998)。炎症細胞群には、増加した数の貪食細胞、好中球およびCD8リンパ球が含まれる。吸引した刺激物、例えばタバコの煙が、気道に常在する貪食細胞を活性化し、同様にケモカイン(例えば、インターロイキン−8)及び他の走化因子を放出することになる上皮細胞を活性化する。これらの走化因子が作用して、血液から肺組織及び気道へ輸送する好中球/単球を増加させる。気道に補充された好中球及び単球が、ダメージを与える可能性のある種々の媒介物、例えばタンパク質分解酵素や活性酸素種を放出し得る。マトリックス分解、並びに気道壁の肥大化、界面活性剤機能障害及び粘液過分泌を伴う肺気腫、これら全てが障害性気流及びガス交換を引き起こす炎症性応答となる可能性がある後遺症である。
【0160】
いくつかのGPCRはCOPDの病理と関連付けられている。例えば、ケモカインIL−8はCXCR1及びCXCR2を通じて作用し、これらの受容体のアンタゴニストはCOPDの治療として研究されている。代謝調節型受容体のP2Yファミリーメンバーは、正常な肺機能において非常に重要な役割を果たし得る。特に、P2Y2受容体は肺の粘膜毛様体排除機構の調節に関与すると考えられており、この受容体のアゴニストが慢性気管支炎を患っている患者の気道の粘液排除を刺激し得る(Yerxa Johnson, Drugs of the Future 24,759-769,1999)。従って、GPCRはCOPDについての治療標的であり、既存のGPCRファミリー又は新規GPCRの更なるメンバーを同定することで、より魅力的な標的を産出できる。
【0161】
本発明は、上記のスクリーニング検定によって同定される新規物質の使用にさらに関する。従って、本明細書に記載するように同定される被験化合物を適当な動物モデルに使用することは、本発明の範囲内にある。例えば、本明細書に記載するように同定される物質(例えば、調節物質、アンチセンス核酸分子、特異的抗体、リボザイム又はケモカイン様レセプターポリペプチド結合分子)を、そのような物質を用いた処置の効果、毒性又は副作用を決定するために、動物モデルに用いることがある。あるいは、本明細書に記載するように同定された物質を、該物質の作用機構を決定するために、動物モデルに使用する場合がある。さらに、本発明は、本明細書に記載の処置に対する上記スクリーニング検定によって同定される新規物質の使用に関する。
【0162】
ケモカイン様レセプター活性に影響を及ぼす試薬を、ケモカイン様レセプター活性を低下させるために、インビトロ又はインビボのいずれかにおいてヒト細胞に投与することができる。試薬は、ヒトケモカイン様レセプター遺伝子の発現産物と結合することが好ましい。その発現産物がタンパク質である場合、試薬は抗体であることが好ましい。生体外でのヒト細胞の処置については、抗体を、人体から取り出しておいた幹細胞の調製物に添加することができる。その後、その細胞を、当分野で周知のように、クローン増殖させるか、又はさせずに同じ又は別の人体に移すことができる。
【0163】
1つの態様においては、試薬を、リポソームを用いて送達する。リポソームは、投与した動物中にて、少なくとも約30分間、より好ましくは少なくとも約1時間、さらにより好ましくは少なくとも約24時間安定であることが好ましい。リポソームは、試薬、特にポリヌクレオチドを、動物(例えばヒト)の特定の部位に標的化することができる脂質組成物を含む。リポソームの脂質組成物は、動物の特有の器官、例えば肺、肝臓、脾臓、心臓、脳、リンパ節及び皮膚を標的化できることが好ましい。
【0164】
本発明に有用なリポソームは、標的化した細胞の原形質膜と融合でき、その内容物を細胞に送達できる脂質組成物を含む。好ましくは、リポソームのトランスフェクション効率は約10細胞に送達されるリポソーム16nmol当たりDNA約0.5μgであり、より好ましくは約106細胞に送達されるリポソーム16nmol当たりDNA約1.0μgであり、さらにより好ましくは約106細胞に送達されるリポソーム16nmol当たりDNA約2.0μgである。好ましくは、リポソームは直径が、約100〜500nmであり、より好ましくは約150〜450nmであり、さらにより好ましくは約200〜400nmである。
【0165】
本発明に用いるに適したリポソームは、例えば当業者に知られる遺伝子送達法に標準的に用いられるリポソームを含む。より好ましいリポソームは、ポリカチオン脂質組成物を有するリポソームおよび/またはポリエチレングリコールと連結されたコレステロールバックボーン(骨格鎖)を有するリポソームを含む。場合により、リポソームは特定の細胞タイプを標的化できる化合物、例えばリポソームの外側表面に曝される細胞特異的リガンドを包含する。
【0166】
リポソームを、試薬、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムと複合体化することは、当分野で標準的な方法 (例えば、米国特許5,705,151を参照のこと) を用いて達成することができる。好ましくは、ポリヌクレオチド約0.1μg〜約10μgをリポソーム約8nmolと組み合わせる、より好ましくはポリヌクレオチド約0.5μg〜約5μgをリポソーム約8nmolと組み合わせる、さらにより好ましくはポリヌクレオチド約10μgをリポソーム約8nmolと組み合わせる。
【0167】
別の態様においては、抗体を、受容体媒介性標的化送達を用いて、インビボにて特定の組織に送達することができる。受容体媒介性DNA送達技術は、例えばFindeisら、Trends in Biotechnol. 11, 202-05 (1993); Chiouら、GENE THERAPEUTICS: METHODS AND APPLICATIONS OF DIRECT GENE TRANSFER (J. A. Wolffら、) (1994); Wu & Wu, J. Biol. Chem. 263, 621-24 (1988); Wuら、J. Biol. Chem. 269, 542-46 (1994); Zenkeら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87, 3655-59 (1990); Wuら、J. Biol. Chem. 266, 338-42 (1991) にて教示されている。
【0168】
治療的有効量の決定
治療的有効量の決定は、充分当業者の能力の範囲内にある。治療的有効量とは、治療的有効量の不在下で起こるケモカイン様レセプター活性に比較してケモカイン様レセプター活性を増大させ、または低下させる活性成分の量を指す。
【0169】
いかなる化合物に関しても、治療的有効量は最初に細胞培養検定で、または動物モデル、通常マウス、ウサギ、イヌ、またはブタで見積もることができる。動物モデルは適当な濃度範囲および投与経路の決定にも使用できる。次にこのような情報を用いて人間での有用な用量と投与経路を決定できる。
【0170】
治療的有効性および毒性、例えばED50(集団の50%で治療的に有効な用量)およびLD50(集団の50%で致死的な用量)は、細胞培養または実験動物における標準的薬学的方法により決定できる。治療効果に対する毒性効果の用量比が治療指数であり、比LD50/ED50で表すことができる。
【0171】
大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養検定および動物研究から得られるデータを、人間への使用のための用量範囲を処方する際に使用する。かかる組成物に含まれる用量は、好ましくは殆どまたは全く毒性を持たないED50を包含する循環濃度の範囲内である。この用量は、使用する用量型、患者の感受性、および投与経路に応じてこの範囲内で変わる。
【0172】
正確な用量は、治療を必要とする対象に関連する因子に照らして医師が決定する。用量および投与は、充分なレベルの活性成分を提供するよう、または所望の効果を保持するよう、調節する。考慮できる因子は、疾病状態の重篤度、対象の全身健康状態、年齢、体重、および対象の性別、食餌、投与の時間および頻度、薬物の組み合わせ、反応の感受性、および療法に対する寛容/応答を包含する。長時間作用性医薬組成物は、その製剤の半減期およびクリアランス率に応じて3から4日毎、毎週、または2週間に1回投与することができる。
【0173】
標準的な用量は投与経路に応じて0.1から100,000マイクログラムまで変えることができ、約1gまでの総用量とすることができる。特定の用量および送達方法についての指針は文献に提供されており、一般に当分野の医師が入手できる。当業者は、ヌクレオチド用にはタンパク質またはそれらのインヒビター用のものとは異なる製剤を使用するであろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は特定の細胞、状態、場所などに特異的である。
【0174】
この試薬が一本鎖抗体である場合、この抗体をコードしているポリヌクレオチドを構築し、トランスフェリン−ポリカチオン−媒介DNA転移、裸のまたはカプセル内核酸を用いるトランスフェクション、リポソームの媒介する細胞融合、DNA被覆ラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、電気穿孔、「遺伝子銃」、およびDEAE−または燐酸カルシウム−媒介トランスフェクションを包含する(但しこれらに限定される訳ではない)充分確立した技術を用いて、ex vivoまたはインビボで細胞内に導入できる。
【0175】
抗体の有効なインビボ用量は、約5μgから約50μg/kg、約50μgから約5mg/kg、約100μgから約500μg/kg(患者の体重)、および約200から約250μg/kg(患者の体重)の範囲である。一本鎖抗体をコードしているポリヌクレオチドの投与のためには、有効なインビボ用量は、約100ngから約200ng、500ngから約50mg、約1μgから約2mg、約5μgから約500μg、および約20μgから約100μgのDNAの範囲である。
【0176】
発現産物がmRNAである場合、試薬は好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムである。アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムを発現するポリヌクレオチドは、上記のように多岐にわたる方法によって細胞中に導入できる。
【0177】
好ましくは、試薬は、ケモカイン様レセプター遺伝子の発現またはケモカイン様レセプターポリペプチドの活性を、該試薬の不在時と比較して少なくとも約10、好ましくは約50、より好ましくは約75、90、または100%低下させる。ケモカイン様レセプター遺伝子の発現レベルまたはケモカイン様レセプターポリペプチドの活性を低下させるよう選択した機構の有効性は、当分野で周知の方法、例えばケモカイン様レセプター特異的mRNAへのヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション、定量的RT−PCR、ケモカイン様レセプターポリペプチドの免疫学的検出、またはケモカイン様レセプター活性の測定を用いて評価できる。
【0178】
上記のいずれの態様においても、本発明に係る任意の医薬組成物は他の適当な治療薬と組み合わせて投与できる。併用療法に使用するための適当な物質の選択は、常套的製薬原理に従い、当業者により実施することができる。治療薬の組み合わせは、相乗的に働いて、上記の様々な疾患の治療または予防を奏効させる。このアプローチを用いて、より低い各物質の用量で治療効果を達成することができ、したがって有害な副作用の可能性を低減することができる。
【0179】
上記の治療方法のいずれも、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、および最も好ましくはヒトといった哺乳動物を包含する、このような治療を必要とする任意の対象に適用することができる。
【0180】
診断方法
ヒトケモカイン様レセプターはさらに、このレセプターをコードしている核酸配列における突然変異の存在に関連する疾病および異常、または疾病および異常に対する感受性を検出する診断検定に使用できる。例えば、疾病に罹患している個体と正常な個体とにおけるケモカイン様レセプターをコードしているcDNAまたはゲノム配列の間の相違を決定できる。もし罹患している個体の幾つかまたは全てに突然変異が観察され、正常な個体には観察されないならば、この突然変異がその疾病の原因であると思われる。
【0181】
レファレンス遺伝子および突然変異を有する遺伝子の間の配列相違は、直接DNA配列決定法によって明らかにできる。加えて、クローニングしたDNAセグメントを、特定のDNAセグメントを検出するためのプローブとして使用できる。この方法の感受性はPCRと組み合わせる時極めて増強される。例えば、二本鎖PCR産物または修飾PCRにより調製された一本鎖鋳型分子と共に、配列決定プライマーを使用することができる。配列決定は、放射標識したヌクレオチドを用いる常套的方法によって、または蛍光標識を使用する自動配列決定法によって実施する。
【0182】
DNA配列相違に基づく遺伝子試験は、変性させる物質を含むまたは含まないゲル中のDNA断片の電気泳動移動度の変化を検出することにより実施できる。小配列の欠失および挿入は、例えば高分解能ゲル電気泳動によって視覚化できる。異なる配列のDNA断片は変性させるホルムアミド勾配ゲル上で識別でき、ここでは、異なるDNA断片の移動度が、それらの特異的融解温度または部分的融解温度に従って、ゲル中の異なる位置で遅延する(例えば、Myersら、Science 230,1242,1985を参照されたい)。特定の位置での配列改変もまたヌクレアーゼ保護検定、例えばRNアーゼおよびS1保護または化学的開裂法によって明らかにすることができる(例えば、Cottonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,4397-4401,1985)。即ち特異的DNA配列の検出は、ハイブリダイゼーション、RNアーゼ保護、化学的開裂、直接DNA配列決定といった方法によって、または制限酵素とゲノムDNAのサザンブロッティングを使用することによって実施できる。ゲル電気泳動およびDNA配列決定のような直接法に加えて、突然変異はin situ分析により検出することもできる。
【0183】
ケモカイン様レセプターのレベルの変化もまた種々の組織で検出できる。血液または組織生検のように、宿主から誘導した身体試料中の受容体ポリペプチドのレベルを検出するために用いる検定は、当業者に周知であり、ラジオイムノアッセイ、競合的結合検定、ウェスタンブロット分析、およびELISA検定を包含する。
【0184】
本明細書に引用する全ての特許および特許出願は、引用により特に本明細書の一部とする。上記の内容は本発明を一般的に記載するものである。より完全な理解は以下の具体的実施例を参照することによって得られ、それらの実施例は例示のみの目的で提供するものであり、本発明の範囲を限定する意図は無い。
【実施例】
【0185】
実施例1
ケモカイン様レセプター活性の検出
配列番号1に記載のポリヌクレオチドを発現ベクターpCEV4に挿入し、得られた発現ベクターpCEV4−ケモカイン様レセプターポリペプチドをヒト胚の腎臓293細胞にトランスフェクトする。これらの細胞から溶解物を得、1000rpm、5分間の遠心を4℃にて行う。その上清を30,000×g、4℃で20分間遠心分離する。そのペレットを、50mM トリスHCl、5mM MgSO4、1mM EDTA、100mM NaClを含み、0.1% BSA、2μg/mlアプロチニン、0.5mg/mLロイペプチンおよび10μg/mLホスホラミドンを添加した結合バッファー(pH7.5)中に懸濁する。添加する放射性リガンド、即ちケモカインの10%未満と結合するのに必要とされるタンパク質濃度で規定される最適な膜懸濁希釈液を、リガンド、非標識化ペプチド、および結合バッファーを含む96ウェルポリプロピレンマイクロタイタープレートに添加し、最終量を250μLとする。
【0186】
平衡飽和結合検定において、膜調製物を125I標識リガンドの増大濃度(0.1nM〜4nM)の存在下でインキュベートする。
【0187】
結合反応混合物を30℃で1時間インキュベートする。この反応を、0.5%ポリエチレンイミンを用いて処理したGF/Bフィルターに通じてろ過し、反応を停止させ、細胞を回収する。放射活性をシンチレーション計数して計測し、データをコンピューターによる非線形回帰プログラムによって分析する。
【0188】
非特異的結合は、非標識化ペプチド100nMの存在下にて、膜タンパク質をインキュベートした後に残存する放射活性の量として規定される。タンパク質濃度を、標準的としてウシ血清アルブミンと共にBio-Rad Reagentを用いるBradford法により測定する。配列番号2のポリペプチドがケモカイン様レセプター活性を有することが示される。
【0189】
実施例2
組換えヒトケモカイン様レセプターの発現
ピキア パストリス(Pichia pastoris)発現ベクターpPICZB(Invitrogen, San Diego, CA) を用いて、大量の組換えヒトケモカイン様ポリペプチドを酵母中に生産させる。ヒトP2Y1様GPCRコード化DNA配列は配列番号1、4または5に示されるヌクレオチド配列から誘導する。ベクターpPICZB中に挿入する前に、DNA配列を、その5'端に開始コドン、及び3'端にエンテロキナーゼ開列部位、His6レポータータグや終止コドンを含ませるといった周知の方法によって修飾する。さらに、その両末端に制限エンドヌクレアーゼの認識配列を加え、対応する制限酵素を用いてpPICZBのマルチクローニングサイトを消化した後に、修飾ポリペプチドをコードするDNA配列をpPICZB中にライゲートする。この発現ベクターを、ピキア パストリスにて発現が酵母プロモーターにより誘導される誘導性発現用に設計する。得られたpPICZ/md−His6ベクターを用いて、酵母を形質転換する。
【0190】
この酵母を、5リッター攪拌フラスコ中で通常の条件下にて培養し、組換え産物タンパク質を、8Mウレアの存在下で親和性クロマトグラフィー(Ni−NTA−樹脂)により培養物から単離する。結合したポリペプチドを、pH3.5の緩衝液を用いて溶出し、中性化する。His6レポータータグからのポリペプチドの分離は、製造元の指示に従い、エンテロキナーゼ(Invitrogen, San Diego, CA)を用いる部位特異的タンパク質分解により行なう。精製ヒトケモカイン様レセプターポリペプチドを得る。
【0191】
実施例3
ケモカイン様レセプターポリペプチドと結合する被験化合物の同定
グルタチオン−S−トランスフェラーゼタンパク質を含み96ウェル マイクロタイタープレートのグルタチオン誘導化ウェルに吸着した精製ケモカイン様レセプターポリペプチドを、生理緩衝溶液pH7.0の小分子ライブラリー由来の被験化合物と接触させる。ケモカイン様レセプターポリペプチドは、配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列を含む。被験化合物は蛍光標識を含む。この試料を5分間〜1時間インキュベートする。コントロール試料は、被験化合物の非存在下にてインキュベートする。
【0192】
被験化合物を含む緩衝液を、ウェルから洗い出す。ケモカイン様レセプターポリペプチドに対する被験化合物の結合を、ウェルの内容物の蛍光測定により検出する。被験化合物をインキュベートしていないウェルの蛍光と比較して少なくとも15%ウェル中の蛍光を増大させる被験化合物を、ケモカイン様レセプターポリペプチドと結合する化合物と同定する。
【0193】
実施例4
ケモカイン様レセプター遺伝子発現を低下させる被験化合物の同定
被験化合物を、ケモカイン様レセプター発現構築物でトランスフェクトしたヒト培養細胞に投与し、37℃で10〜45分間インキュベートする。トランスフェクトしなかった同じタイプの細胞培養を、被験化合物なして同じ時間インキュベートし、ネガティブコントロールとする。
【0194】
RNAを、Chirgwinら、Biochem. 18, 5294-99,1979に記載のように2つの培養物から単離する。ノーザンブロットを全RNA20〜30μgを用いて調製し、エクスプレスハイブ(Expresshyb)(CLONTECH)にて65℃で、32P−標識化ケモカイン様レセプター特異的プローブを用いてハイブリダイズさせる。このプローブは配列番号1より選ばれる少なくとも11個の連続ヌクレオチドを包含する。被験化合物の非存在下にて得られるシグナルと比較してケモカイン様レセプター特異的シグナルを低下させる被験化合物を、ケモカイン様レセプター遺伝子発現の阻害物質として同定する。
【0195】
実施例5
ケモカイン様レセプター活性を低下させる被験化合物の同定
被験化合物を、ケモカイン様レセプター発現構築物でトランスフェクトしたヒト培養細胞に投与し、37℃で10〜45分間インキュベートする。トランスフェクトしなかった同じタイプの細胞培養を、被験化合物なして同じ時間インキュベートし、ネガティブコントロールとする。ケモカインレセプター活性は、米国特許第5,955,303号の方法を用いて測定する。ケモカイン様レセプターのケモカイン活性を試験化合物非存在下でのケモカイン活性と比べて減少させる試験化合物を、ケモカイン様レセプター活性のインヒビターとして同定する。
【0196】
実施例6
ケモカインレセプター様タンパク質の組織特異的発現
ケモカインレセプター様タンパク質がCOPDの疾患過程に関与することを実証するために、初期発現パネルはCOPDに関連する呼吸器組織及び炎症細胞由来のRNA試料からなる:肺(成人及び胎児)、気管、新たに単離された肺胞型II細胞、培養されたヒト気管支上皮細胞、培養された小気道上皮細胞、培養された気管支平滑筋細胞、培養されたH441細胞(Clara様)、新たに単離された好中球及び単球、並びに培養された単球(マクロファージ様)。また、Clontechから購入した全RNAパネルを用いてボディマッププロファイリングも行う。組織は、副腎腺、骨髄、脳、大腸、心臓、腎臓、肝臓、肺、乳腺、膵臓、唾液腺、骨格筋、小腸、脾臓、胃、精巣、胸腺、気管、甲状腺及び子宮である。
【0197】
定量的発現プロファイル。定量的発現プロファイルは、Higuchiら、BioTechnology 10, 413-17,1992、及びHiguchiら、BioTechnology 11, 1026-30,1993に初めて記載された、「速度論的解析」と呼ばれる定量的PCR解析の方式により実施した。原理は、PCRの対数相内の任意に与えられたサイクルにおいて、産物の量が最初の鋳型のコピー数に比例するというものである。
【0198】
PCR増幅は、標的配列に相補的な、クエンチングを内部に有する(internally quenched)蛍光オリゴヌクレオチド(TaqManプローブ)の存在下で行なう。プローブはTaq DNAポリメラーゼの5'−3'エンドヌクレアーゼ活性により開裂され、媒体中に蛍光色素が放出される(Hollandら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88, 7276-80, 1991)。蛍光発光は、特異的な増幅産物の量に直接比例して増大するため、PCR産物の対数増幅相を検出し、最初の鋳型濃度を決定するのに用いることができる(Heidら、Genome Res. 6, 986-94, 1996、及びGibsonら、Genome Res. 6, 995-1001, 1996)。
【0199】
内部対照の増幅を行って、反応物に添加したサンプルRNAの量を標準化することができる。この種類の実験では、選択した対照は18SリボソームRNAである。異なる染料で標識下プローブを用いれば、異なる放射スペクトルを有するレセプター染料が得られるため、標的と内部標準とを同じ試験管内で独立して定量することができる。
【0200】
蛍光のリアルタイムPCR測定はすべて、ABI Prism7700で行う。
RNA抽出およびcDNA調製。上記の組織から得た全RNAを発現の定量化に使用する。「剖検から得た」標識RNAを、TRIzol試薬(Life Technologies, MD)を用い、製造元のプロトコルにしたがって、剖検組織から抽出した。
【0201】
各RNA50μgを、以下の反応混合物中、DNaseIで37℃にて1時間処理する:0.2 U/μL RNase不含DNase I (Roche Diagnostics, Germany); 0.4 U/μL RNase インヒビター(PE Applied Biosystems, CA); 10 mM Tris-HCl pH 7.9; 10 mM MgCl2; 50 mM NaCl; および1 mM DTT。
【0202】
インキュベーション後、RNAを1体積のフェノール:クロロホルム−イソアミールアルコール(24:24:1)で1回、クロロホルムで1回抽出し、1/10体積の3M 酢酸ナトリウム( pH5.2)および2体積のエタノールで沈殿させた。
【0203】
剖検組織から得た各RNA50μgを、Ambion(Ambion, TX)から購入したDNA不含キットを用いてDNase処理する。再懸濁および分光学的定量の後、各サンプルをTaqMan逆転写試薬(PE Applied Biosystems, CA)を用い、製造元のプロトコルにしたがって逆転写する。反応混合物中のRNAの最終濃度は200mg/μLである。逆転写は2.5μMのランダムヘキサマープライマーを用いて行う。
【0204】
TaqMan定量分析。特異的プライマー及びプローブは、PE Applied Biosystemsの推奨に基づいて設計する。プローブは、FAM(6−カルボキシフルオレセイン)またはTAMRA(6−カルボキシ−テトラメチル−ローダミン)のいずれかを用いて標識する。定量実験は、それぞれの試料由来の逆転写RNA10ngに対して行う。それぞれの測定は3回行なう。
【0205】
全cDNA含有量を、Pre-Developed TaqMan Assay Reagents (PDAR)コントロールキット (PE Applied Biosystems, CA)を用いて、18SリボソームRNAの同時定量(多重PCR)により標準化する。
【0206】
検定反応混合物は以下のとおりである:1×最終TaqManユニバーサルPCRマスターミックス(2×ストック溶液から)(PE Applied Biosystems, CA);1×PDARコントロール−18S RNA(2×ストック溶液から);300nM フォワードプライマー;900nM リバースプライマー;200nM プローブ;10ng cDNA;及び水を加えて25μlにする。
【0207】
以下の工程のそれぞれを一回行う:50℃で2分間、そして95℃で10分間のプレ(前)PCR。以下の工程は40回行なう:95℃で15秒の変性、60℃で1分のアニーリング/伸長。
【0208】
実験は、ABI Prism7700シークエンス検出器(PE Applied Biosystems, CA)を用いて実施する。より良いバックグラウンド控除、並びに出発標的量に対する直線性を達成するために、この実施の最後に、PCRの間に得られた蛍光データを、ABI Prism7700使用者マニュアルに記載のように処理する。
【0209】
実施例7
新規ヒトケモカインレセプター様mRNAの定量的発現プロファイル
発現プロファイリングは定量ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析、または動的(キネティクス)分析とも称される分析(最初にHiguchiら,1992、およびHiguchiら,1993によって記載された)に基づく。重要なことは、PCR対数期の任意のサイクルにおいて、産生物量が最初の鋳型のコピー数に比例していることである。この技術を用いることで、染色体からメッセンジャーRNA(mRNA)として転写される特定の遺伝子の発現レベルを、最初にDNAコピー(cDNA)をmRNAから作製した後に、そのcDNAについて定量PCRを行なう、定量逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(定量RT−PCR)と称される方法で測定する。
【0210】
種々のヒト組織由来のRNAの定量RT−PCR分析を行い、新規のC−Cケモカインレセプター様mRNAの組織分布を調査した。種々の組織由来の全RNA(ヒト全RNAパネルI〜V、Clontech Laboratories, Palo Alto, CA, USA)25μgを鋳型として用いて、第一ストランドcDNAをRT−PCR用のSUPERSCRIPTTM 第一ストランドA合成系(Life Technologies, Rockville, MD, USA)を用いて合成した。第一ストランドcDNA合成は工業手順に従い、mRNAの3'ポリAテイルとハイブリダイズするオリゴ(dT)を用い、合成反応を開始させて行なった。その後、第一ストランドcDNA約10ngをポリメラーゼ連鎖反応における鋳型として用いた。その他の場合では、10ngの商業的に入手可能なcDNA(Human Immune System MTC Panel and Human Blood Fractions MTC Panel, Clontech Laboratories, Palo Alto, CA, USA)をポリメラーゼ連鎖反応の鋳型として用いた。ポリメラーゼ連鎖反応は、ポリメラーゼ連鎖反応で2本鎖DNAの合成が上手くいった場合にのみ形成されるDNA2重螺旋の副溝(minor groove)に結合するDNA結合蛍光染色SYBR Green Iの存在下で、LightCycler (Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN, USA)にて行なった(Morrisonら、1998)。2本鎖DNAと結合すると、SYBR Green Iは、LightCycler機によって定量的に測定することができる光を発する。このポリメラーゼ連鎖反応はオリゴヌクレオチドプライマーLBRI_263_DNA-L1 (配列番号10)およびLBRI_263_DNA-R2(配列番号11)を用いて行い、反応が温度81℃に達する反応サイクルごとに、発せられる光の強度を測定した。発せられた光の強度を、同時に反応させた既知濃度の標準と比較することによって、鋳型cDNA1ng当たりの遺伝子転写物のコピー数に変換した。
【0211】
種々の組織の種類における細胞当たりのmRNA転写物レベルの差異を較正するために、標準化法は、種々の組織の5種のハウスキーピング遺伝子:グリセルアルデヒド−3−ホスファターゼ(G3PDH)、ヒポキサチン グアニン フォフォリボシル(phophoribosyl) トランスフェラーゼ(HPRT)、β−アクチン、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ(PBGD)、およびβ−2−ミクログロブリンにおいて同様に計算した発現レベルを用いて行なった。このハウスキーピング遺伝子発現のレベルは、全ての組織で比較的一定していると考えられており(Adamsら、1993, Adamsら、1995, Liewら、1994)、それ故cDNAの合成工程に用いられる全RNAmu.g当たりの、細胞の適当な相対数に対する目盛として用いることができる。わずかに異なる組みのハウスキーピング遺伝子を用いること、および発現レベルを測定するのにライトサイクラー系を用いることを除けば、標準化法はRNA Master Blot User Mamual, Apendix C(1997, Clontech Laboratories, Palo Alto, CA, USA)に記載のものと実質的に同様であった。簡潔に述べると、全ての組織試料における5つのハウスキーピング遺伝子の発現レベルを、LightCyclerと一定量の出発RNA(25μg)を用いて遺伝子当たり、独立した3回の反応で測定した。同時に反応させた既知濃度標準と比較して得られた各々の遺伝子について計算されたコピー数を記録し、全組織サンプルにおける各遺伝子コピー数の平均値を求めた。次いで、各組織サンプルについて、平均に対する各ハウスキーピング遺伝子の発現を計算し、5つのハウスキーピング遺伝子についてこれら数値の平均を求めた。次いで、各数値についての標準化因子を、標準として任意に選択した組織の1つについての最終値を、組織のそれぞれについての対応する数値で割ることにより計算した。組織サンプルにおいて特定の遺伝子の発現について実験的に得られた数値を標準化するために、得られた数値に、試験した組織の標準化因子を乗じた。組織が活性化されているか否かよっていくつかのハウスキーピング遺伝子において劇的な変動を示すヒト血液画分MTCパネルから得られるものを除き、この標準化法をすべての組織に用いた。これらの組織では、1つのハウスキーピング遺伝子、即ちβ−2−ミクログロブリンを用いて標準化を行った。
【0212】
結果を図13および14に示し、その左には実験的に得られた第一ストランドcDNA10ng当たりのmRNAのコピー数を示し、右にはその標準値を示す。cDNA合成に用いたRNAを、その供給元およびカタログナンバーとともに、図1および2に示す。
【0213】
引用文献
Higuchi, R., Dollinger, G., Walsh, P.S. and Griffith, R. (1992) Simultaneous amplification and detection of specific DNA sequences. BioTechnology 10:413-417.
Higuchi, R., Fockler, C., Dollinger, G. and Watson, R. (1993) Kinetic PCR analysis: real-time monitoring of DNA amplification reactions. BioTechnology 11:1026-1030.
T.B. Morrison, J.J. Weis & C.T. Wittwer .(1998) Quantification of low-copy transcripts by continuous SYBR Green I monitoring during amplification. Biotechniques 24:954962.
Adams, M. D., Kerlavage, A. R., Fields, C. & Venter, C. (1993) 3,400 new expressed sequence tags identify diversity of transcripts in human brain. Nature Genet. 4:256265.
Adams, M. D., et al. (1995) Initial assessment of human gene diversity and expression patterns based upon 83 million nucleotides of cDNA sequence. Nature 377 supp:3174.
Liew, C. C., Hwang, D. M., Fung, Y. W., Laurenson, C., Cukerman, E., Tsui, S. & Lee, C. Y. (1994) A catalog of genes in the cardiovascular system as identified by expressed sequence tags. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:1014510649.
【0214】
表1:全身スクリーン組織
【表1】

【0215】
表2:血液/肺スクリーン組織
【表2】

【0216】
実施例8
ヒトケモカインレセプター様mRNAに特異的に結合する試薬による患者の処置
配列番号1の相補物より選択される少なくとも11個の連続ヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドの合成は、ホスホラミダイト手順を用いるPharmacia Gene Assembler series synthesizerにて実施する(Uhlmannら、Chem. Rev. 90, 534-83, 1990を参照のこと)。アセンブリーおよび脱保護に続き、オリゴヌクレオチドを2度エタノール沈殿させ、乾燥させ、そしてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に所望の濃度に懸濁する。これらのオリゴヌクレオチドの純度は、キャピラリーゲル電気泳動及びイオン交換HPLCにより試験する。オリゴヌクレオチド調製のエンドトキシンレベルは、リムルスアメーバ様検定(Limulus Amebocyte Assay)(Bang, Biol. Bull. (Woods Hole, Mass.) 105, 361-362, 1953) を用いて決定する。
【0217】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを0.1〜100μMの濃度で含有する水性組成物を注射により直接患者に投与する。患者の重症度は低減する。
【0218】
実施例9
喘息処置のための化合物/標的確認の in vivo 試験
1.T細胞の活性に関する試験
共刺激分子−サイトカイン、サイトカインレセプター、シグナル伝達分子、T細胞活性化に関与する任意の分子
マウス抗CD3誘導サイトカイン産生モデル
BALB/c マウスに10μgの145-2C11 (精製したハムスター抗マウスCD3εモノクローナル抗体、PHARMINGEN)を1回静脈注射した。抗CD3 mAb注射の60分前に化合物を腹腔内注射した。血液を抗体注射の90分後に採取した。血清を3000 r.p.m、10分の遠心により得た。血清中のIL-2およびIL-4のレベルをELISAにより測定した。
【0219】
2.B細胞の活性に関する試験
B細胞レセプター−シグナル伝達分子、B細胞活性化/Igクラススィッチングに関与する任意の分子
マウス抗IgD誘導IgE産生モデル
BALB/cマウスに0.8mgの精製したヤギ抗マウスIgD抗体またはPBSを静脈注射した(0日目と定義)。化合物を0〜6日目までの間腹腔内投与した。7日目に血液を集め、血清を3000 r.p.m、10分の遠心により得た。IgE血清総レベルをヤマサELISAキットにより測定し、そのIgサブタイプをIgELISAキットにより測定した(Rougier Bio-tech's, Montreal, Canada)。
【0220】
3.単球/マクロファージの活性に関する試験、シグナル伝達分子、転写因子
マウスLPS−誘導TNF−α産生モデル
BALB/cマウスにLPS (200μg/マウス)を腹腔内投与した。化合物をLPS注射の1時間前に投与した。LPS注射から90分後に血液を集め、血漿を得た。サンプル中のTNF−α濃度をELISAキットを用いて測定した。
【0221】
4.好酸球活性化試験
エオタキシン−エオタキシンレセプター(GPCR)
シグナル伝達分子、細胞骨格分子、接着分子
マウスエオタキシン誘導好酸球モデル
BALB/c マウスに2.5mLの空気を−6および−3に日目に皮内注射し、airpouchを作製した。0日目に、エオタキシン注射(3μg/マウス、i.d.)の60分間前に化合物を投与した。IL-5 (300 ng/マウス)をエオタキシン注射の30分間前に静脈内注射した。エオタキシン注射の4時間後、滲出液中の白血球を集め、細胞の総数を計測した。滲出液における識別的細胞計数をMay-Grunwald Gimsa溶液で染色することにより行った。
【0222】
5.Th2細胞の活性化試験
抗原提示に関与する分子、共刺激分子、シグナル伝達分子、転写因子に関与する分子
マウスD10細胞移動モデル
生理食塩水中に2mgの粗アルブミンを含むD10.G4.1細胞 (1×10 細胞/マウス)をAKRマウスに静脈内投与した。6時間後に血液を集め、3000 r.p.m.10分の遠心により血清を得た。血清中のIL-4およびL-5レベルをELISAキットにより測定した。これら細胞の注射の、4時間目および+1時間目に化合物を腹腔内投与した。
【0223】
6. ラットにおける受身皮膚アナフィラキシー(PCA)試験
6週齢の雄性 Wistarラットの剃毛した背中に対し、弱い麻酔下で、0.1μg/mLマウス抗DNP IgEモノクローナル抗体(SPE-7)50μLで皮内(i.d.)感作した。24時間後、このラットに対し、0.6 mgのDNP-BSA (30) (LSL CO., LTD) および0.005gのEvansブルーを含有する生理食塩水1mLを静脈内投与により抗原投与した。抗原注射の0.5時間前に化合物を腹腔内 (i.p.)投与した。ブランク(対照)として、感作、抗原投与および化合物処置を行わないラットを用いて、阻害なしの値を測定する。抗原投与の30分後に、ラットを殺し、背中の皮膚を剥がした。皮膚のEvansブルー染料をホルムアルデヒド中63℃にて一晩抽出する。次いで、620nmでの吸光度を測定し、漏れ出た染料の光学密度を求める。
化合物によるPCAの阻害の百分率を以下のようにして計算する:
%阻害={(平均のビークル値−サンプル値)/(平均ビークル値−平均対照値)}×100
【0224】
7.ラットにおけるアナフィラキシー性気管支収縮
6週齢の雄性 Wistarラットに対し、10μgマウス抗DNP IgE、SPE-7で静脈内(i.v.)感作し、1日後に、ラットに対し、1.5mgDNP−BSA(30)を含有する0.3mLの生理食塩水を、ウレタン(1000mg/kg、i.p.)およびガラミン(50mg/kg、i.v.)による軽い麻酔下で静脈内投与により抗原投与した。
圧力変換器につないだカニューレのサイドアームを介して最大吸気圧(PIP)を記録する。PIPの変化は、肺の抵抗とコンプライアンスの両方の変化を反映する。薬物を評価するために、各薬物を抗原投与の5分前にi.v.投与する。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードするDNA配列(配列番号1)を示す。
【図2】図1のDNA配列から推定されるアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図3】SwissProt受託番号No.P56492によって同定されるタンパク質のアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【図4】ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードするDNA配列(配列番号4)を示す。
【図5】ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードするDNA配列(配列番号5)を示す。
【図6】ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードするDNA配列(配列番号6)を示す。
【図7】図4のDNA配列から推定されるアミノ酸配列(配列番号7)を示す。
【図8】図5のDNA配列から推定されるアミノ酸配列(配列番号8)を示す。
【図9】ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードするDNA配列(配列番号9)を示す。
【図10】SwissProt受託番号No.P56492によって同定されるタンパク質(配列番号3)に対する、ヒトケモカイン様レセプター(配列番号2)のFASTAアライメントを示す
【図11】pfam|hmm|7tm_1に対する配列番号2のHMMPFAMアライメントを示す。
【図12】新規のヒトケモカインレセプター様タンパク質と、その最も近い3つのヒト同族体、TRHR、CCR1、CXCR4およびCCR3とのアライメントを示す。ダッシュは、配列にギャップを付加してアライメントを改善した部分を示す。背景の網掛けは、特定の残基における5つの配列間の保存のレベルを示す。ここで、黒の部分は5つの配列の間での同一性を示し、グレーが薄くなるほど保存のレベルが低いことを示す。
【図13】新規のヒトC−Cケモカインレセプター様mRNA発現プロファイル(全身スクリーン)を示す。
【図14】新規のヒトC−Cケモカインレセプター様mRNA発現プロファイル(血液/肺スクリーン)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしている単離されたポリヌクレオチドであって、
a) 配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;
配列番号2に示すアミノ酸配列;
配列番号7に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;
配列番号7に示すアミノ酸配列;
配列番号8に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%同一なアミノ酸配列;
配列番号8に示すアミノ酸配列
より成る群から選ばれるアミノ酸配列を含むケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド;
b)配列番号1、4、5または9で示される配列を含むポリヌクレオチド;
c)(a)および(b)に明記したポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;
d)遺伝コードの縮重のため、その配列が(a)から(c)に明記するポリヌクレオチド配列から逸脱している配列のポリヌクレオチド;および、
e)(a)から(d)に明記したポリヌクレオチド配列の断片、誘導体またはアレル変異を表すポリヌクレオチド、
より成る群から選ばれるポリヌクレオチド。
【請求項2】
請求項1に記載の任意のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項3】
請求項2に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項4】
請求項1に記載のポリヌクレオチドによりコードされている、実質上精製されたケモカイン様レセプターポリペプチド。
【請求項5】
以下の工程:
a)請求項3に記載の宿主細胞を、ケモカイン様レセプターポリペプチドの発現に好適な条件下で培養し;そして、
b)ケモカイン様レセプターポリペプチドを宿主細胞培養から回収する、
を含む、ケモカイン様レセプターポリペプチドを調製する方法。
【請求項6】
以下の工程:
a)請求項1に記載の任意のポリヌクレオチドを生体試料の核酸材料とハイブリダイズさせ、それによりハイブリダイゼーション複合体を形成し;そして、
b)該ハイブリダイゼーション複合体を検出する、
を含む、生体試料中の、ケモカイン様レセプターポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを検出するための方法。
【請求項7】
ハイブリダイゼーションの前に、生体試料の核酸材料を増幅させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
生体試料を、請求項1に記載のポリヌクレオチドまたは請求項4に記載のケモカイン様レセプターポリペプチドと特異的に相互作用する試薬と接触させる工程、
を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチドまたは請求項4に記載のケモカイン様レセプターポリペプチドを検出するための方法。
【請求項9】
請求項6から8までのいずれかに記載の方法を実施するための診断キット。
【請求項10】
被験化合物を、請求項1に記載の任意のポリヌクレオチドによりコードされる任意のケモカイン様レセプターポリペプチドと接触させ;
ケモカイン様レセプターポリペプチドに対する被験化合物の結合を検出する工程、
を含む、ケモカイン様レセプターの活性を低下させる物質をスクリーニングする方法であって、該ポリペプチドに結合する被験化合物を、ケモカイン様レセプターの活性を低下させる可能性ある治療物質として同定する方法。
【請求項11】
被験化合物を、請求項1に記載の任意のポリヌクレオチドによりコードされるケモカイン様レセプターポリペプチドと接触させ;そして、
該ポリペプチドのケモカイン様レセプター活性を検出する工程、
を含む、ケモカイン様レセプターの活性を調節する物質をスクリーニングする方法であって、ケモカイン様レセプター活性を増大させる被験化合物を、ケモカイン様レセプターの活性を増大させる可能性ある治療物質として同定し、そして該ポリペプチドのケモカイン様レセプター活性を低下させる被験化合物を、ケモカイン様レセプターの活性を低下させる可能性ある治療物質として同定する方法。
【請求項12】
被験化合物を、請求項1に記載の任意のポリヌクレオチドと接触させ;そして、
該ポリヌクレオチドに対する被験化合物の結合を検出する工程、
を含む、ケモカイン様レセプターの活性を低下させる物質をスクリーニングする方法であって、該ポリヌクレオチドに結合する被験化合物を、ケモカイン様レセプターの活性を低下させる可能性ある治療物質として同定する方法。
【請求項13】
細胞を、請求項1に記載の任意のポリヌクレオチドまたは請求項4に記載の任意のケモカイン様レセプターポリペプチドに特異的に結合する試薬と接触させ、それによりケモカイン様レセプターの活性を減少させる工程、
を含む、ケモカイン様レセプターの活性を減少させる方法。
【請求項14】
請求項10から12のいずれかに記載の方法によって同定される、ケモカイン様レセプターポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性を調節する試薬。
【請求項15】
請求項2に記載の発現ベクターまたは請求項14に記載の試薬および製薬的に許容し得る担体、を含む医薬組成物。
【請求項16】
疾患におけるケモカイン様レセプターの活性を調節するための医薬の製造における、請求項2に記載の発現ベクターまたは請求項14に記載の試薬の使用。
【請求項17】
疾患がHIV感染、心臓血管疾患、喘息またはCOPDである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードしているcDNA。
【請求項19】
配列番号1、4、5または9を含む請求項18に記載のcDNA。
【請求項20】
配列番号1、4、5または9より成る請求項18に記載のcDNA。
【請求項21】
配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項22】
該ポリヌクレオチドが配列番号1、4、5または9より成る、請求項21に記載の発現ベクター。
【請求項23】
配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードしている発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項24】
該ポリヌクレオチドが配列番号1、4、5または9より成る、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項25】
配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列を含む精製されたポリペプチド。
【請求項26】
配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列より成る請求項25に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項27】
配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む融合タンパク質。
【請求項28】
配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドを調製する方法であって、該ポリペプチドをコードしている発現ベクターを含む宿主細胞を、該ポリペプチドが発現される条件下で培養し;そして該ポリペプチドを単離する工程を含む方法。
【請求項29】
発現ベクターが配列番号1、4、5または9を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
配列番号1、4、5または9に記載の11個の連続ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを生体試料の核酸材料とハイブリダイズさせ、それによりハイブリダイゼーション複合体を形成し;そして、
該ハイブリダイゼーション複合体を検出する、
工程を含む、配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドのコード配列を検出する方法。
【請求項31】
ハイブリダイズする工程の前に核酸材料を増幅する工程をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
配列番号1、4、5または9に記載の11個の連続ヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;および、請求項30に記載の方法のための使用説明書、
を含む、配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドのコード配列を検出するためのキット。
【請求項33】
配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドを検出する方法であって、生体試料を該ポリペプチドに特異的に結合する試薬と接触させて試薬−ポリペプチド複合体を形成し;そして、この試薬−ポリペプチド複合体を検出する工程を含む方法。
【請求項34】
該試薬が抗体である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドを検出するためのキットであって、該ポリペプチドに特異的に結合する抗体;および、
請求項33に記載の方法のための使用説明書、を含むキット。
【請求項36】
被験化合物を、(1)配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%一致するアミノ酸配列、および(2)配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列、より成る群から選ばれるアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させ;そして、
該ポリペプチドに対する被験化合物の結合を検出する工程、
を含む、ケモカイン様レセプタータンパク質の活性を調節できる物質をスクリーニングする方法であって、該ポリペプチドに結合する被験化合物をケモカイン様レセプタータンパク質の活性を調節する可能性ある物質と同定する方法。
【請求項37】
接触させる工程が細胞内においてである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
細胞がインビトロである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
接触させる工程が無細胞系においてである、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
該ポリペプチドが検出可能な標識を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
被験化合物が検出可能な標識を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
被験化合物が該ポリペプチドに結合している標識リガンドに取って代わる、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
該ポリペプチドが固体支持体に結合している、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
被験化合物が固体支持体に結合している、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
被験化合物を、(1)配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列と少なくとも約26%一致するアミノ酸配列、および(2)配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列、より成る群から選ばれるアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させ;そして、
該ポリペプチドの活性を検出する工程、
を含む、ヒトケモカイン様レセプタータンパク質の活性を調節する物質をスクリーニングする方法であって、該ポリペプチドの活性を増大させる被験化合物を、ヒトケモカイン様レセプタータンパク質の活性を増大させる可能性ある物質として同定し、そして該ポリペプチドの活性を低下させる被験化合物を、ヒトケモカイン様レセプタータンパク質の活性を低下させる可能性ある物質として同定する方法。
【請求項46】
接触させる工程が細胞においてである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
細胞がインビトロである、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
接触させる工程が無細胞系においてである、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
被験化合物を、配列番号1、4、5または9に示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードされている産物と接触させ;そして、
該産物に対する被験化合物の結合を検出する工程、
を含む、ヒトケモカイン様レセプタータンパク質の活性を調節する物質をスクリーニングする方法であって、該産物に結合する被験化合物をヒトケモカイン様レセプタータンパク質の活性を調節する可能性ある物質として同定する方法。
【請求項50】
該産物がポリペプチドである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
該産物がRNAである、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
細胞を、配列番号1、4、5または9に示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードされている産物に特異的に結合する試薬と接触させ、それによりヒトケモカイン様レセプタータンパク質の活性を減少させる工程、
を含む、ヒトケモカイン様レセプタータンパク質の活性を減少させる方法。
【請求項53】
該産物がポリペプチドである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
該試薬が抗体である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
該産物がRNAである、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
該試薬がアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
該試薬がリボザイムである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
細胞がインビトロである、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
細胞がインビボである、請求項52に記載の方法。
【請求項60】
配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する試薬;および、製薬的に許容し得る担体、を含む医薬組成物。
【請求項61】
該試薬が抗体である、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項62】
配列番号1、4、5または9に示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの産物に特異的に結合する試薬;および、製薬的に許容し得る担体、を含む医薬組成物。
【請求項63】
該試薬がリボザイムである、請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項64】
該試薬がアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項65】
該試薬が抗体である、請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項66】
配列番号2、7または8に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードしている発現ベクター;および製薬的に許容し得る担体、を含む医薬組成物。
【請求項67】
発現ベクターが配列番号1、4、5または9を含む、請求項66に記載の医薬組成物。
【請求項68】
ヒトケモカイン様レセプタータンパク質の機能を調節する試薬の治療的有効量をそれを必要とする患者に投与し、それによりケモカイン様レセプター機能不全に関連する疾患の症状を改善する工程を含む、ケモカイン様レセプター機能不全に関連する疾患を処置する方法。
【請求項69】
該試薬が請求項36に記載の方法によって同定される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
該試薬が請求項45に記載の方法によって同定される、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
該試薬が請求項49に記載の方法によって同定される、請求項68に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−188011(P2008−188011A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7144(P2008−7144)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【分割の表示】特願2002−550075(P2002−550075)の分割
【原出願日】平成13年12月12日(2001.12.12)
【出願人】(591063187)バイエル アクチェンゲゼルシャフト (67)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen,Germany
【Fターム(参考)】