説明

ヒト免疫不全ウイルスの増殖阻害剤

【課題】新たなHIV増殖阻害剤を提供する。
【解決手段】2-[2-(フェニルメチルスルフォニル)エチルスルファニル]-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-カルボニトリルまたはその塩を含む、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の増殖阻害剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の増殖阻害剤、またはヒト免疫不全ウイルス感染症治療用医薬組成物などに関する。
【背景技術】
【0002】
後天性免疫不全症候群(AIDS)は、レトロウイルスであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって引き起こされる疾患である。HIVの感染初期はふつう無症状であるが、感染後、徐々に身体の免疫機能が低下し、日和見感染、がん、全身衰弱、および中枢神経変性を伴う進行性の疾患などが引き起こされる。HIVの感染からAIDSの発症までの期間は、一般に数年から数十年と長いが、一旦AIDSが発症すると、その致死率は非常に高い。そこで、AIDSの発症を防ぐために、HIVの増殖を阻害する化合物の探索が行われている。
【0003】
HIVにはHIV-1とHIV-2の2つの型がある。これらのHIVは次のような生活環を持つ。先ず、HIVが細胞に感染すると、HIVの遺伝子RNAがウイルス粒子中に含まれる逆転写酵素によりDNAに逆転写されHIVインテグラーゼにより感染細胞のDNAに組み込まれる。次に、組み込まれたHIV遺伝子の5'端にあるLTR中のプロモーターからHIVのRNAが転写され遺伝子RNAになると同時に、そのRNAを鋳型としてウイルスタンパク質が合成される。合成されたウイルスタンパク質のいくつかはHIVプロテアーゼにより切断されて成熟タンパク質となり次世代のウイルス粒子を形成する。
【0004】
以上のHIVの生活環を考慮すると、逆転写酵素を阻害すること、HIVインテグラーゼを阻害すること、LTRからのRNA転写を阻害すること、あるいはHIVプロテアーゼを阻害することなどにより、HIVの増殖を阻害することができると考えられる。
【0005】
これまでに、逆転写酵素を阻害する、あるいはプロテアーゼを阻害するHIV増殖阻害剤等が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第3806090号公報
【特許文献2】特表2001-516350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、これら従来のHIV増殖阻害剤に対する耐性を容易に獲得できる。したがって、HIVが従来の阻害剤に対する耐性を獲得した後にも使用できる、あるいはHIVが従来の阻害剤に対する耐性を獲得するまでの期間を延ばすことができる、新しいHIV増殖阻害剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、所定の化合物にHIV増殖阻害活性があることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は次のものである。
【0009】
(1)2-[2-(フェニルメチルスルフォニル)エチルスルファニル]-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-カルボニトリル、
5,7-ジメチル-2-[2-(3-メチルピペリジン-1-イル)-2-オキソエチル]スルファニルキノリン-3-カルボニトリル、
N-シクロヘキシル-2-(3-メチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド、
N-シクロヘキシル-2-(3-エチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド、
N-シクロペンチル-2-(3-メチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド、
1-ピペリジン-1-イル-2-(3,5,7-トリメチルキノリン-2-イル)スルファニルエタノン、
2-(4-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-(オキソラン-2-イルメチル)アセトアミド、
2-(2-オキソ-2-ピペリジン-1-イルエチル)スルファニル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタピリジン-3-カルボニトリル、
4,6-ジメチル-2-(2-オキソ-2-ピペリジン-1-イルエチル)スルファニルピリジン-3-カルボニトリル、
2-(3-シアノ-8-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アセトアミド、
2-(3-シアノ-7-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エチル]アセトアミド、
2-(3-シアノ-6-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アセトアミド、
N-シクロペンチル-2-(4-メチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド、
2-(4-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-1-ピペリジン-1-イルエタノン、
2-[2-(アゼパン-1-イル)-2-オキソエチル]スルファニル-5,7-ジメチルキノリン-3-カルボニトリル、および
2-[(3-シアノ-4-ピリジン-4-イル-5,6,7,8-テトラヒドロ-キノリン-2-イル)スルファニル]アセトアミド
からなる群から選択される少なくとも1つの化合物またはその塩を含む、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の増殖阻害剤。
(2)上記(1)に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症治療用医薬組成物。
(3)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症治療用医薬組成物を製造するための、上記(1)に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、新たなHIV増殖阻害剤が提供される。本発明の好ましい態様に係る阻害剤は、従来の阻害剤に対する耐性を獲得したHIVの増殖を効果的に阻害できる。本発明の別の好ましい態様に係る阻害剤は、HIVが従来の阻害剤に対する耐性を獲得するまでの期間を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
【0012】
1.化合物
本発明は、HIV増殖阻害活性のある以下の化合物またはその塩を提供する。
(1)2-[2-(フェニルメチルスルフォニル)エチルスルファニル]-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-カルボニトリル<2-[2-(phenylmethylsulfonyl)ethylsulfanyl]-5,6,7,8-tetrahydroquinoline-3-carbonitrile>:GFI99-043
【0013】
【化1】

【0014】
(2)5,7-ジメチル-2-[2-(3-メチルピペリジン-1-イル)-2-オキソエチル]スルファニルキノリン-3-カルボニトリル<5,7-dimethyl-2-[2-(3-methylpiperidin-1-yl)-2-oxoethyl]sulfanylquinoline-3-carbonitrile>:GMI08-003
【0015】
【化2】

【0016】
(3)N-シクロヘキシル-2-(3-メチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド<N-cyclohexyl-2-(3-methylquinolin-2-yl)sulfanylacetamide>:GMI08-024
【0017】
【化3】

【0018】
(4)N-シクロヘキシル-2-(3-エチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド<N-cyclohexyl-2-(3-ethylquinolin-2-yl)sulfanylacetamide>:GMI08-052
【0019】
【化4】

【0020】
(5)N-シクロペンチル-2-(3-メチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド<N-cyclopentyl-2-(3-methylquinolin-2-yl)sulfanylacetamide>:GMI08-073
【0021】
【化5】

【0022】
(6)1-ピペリジン-1-イル-2-(3,5,7-トリメチルキノリン-2-イル)スルファニルエタノン<1-piperidin-1-yl-2-(3,5,7-trimethylquinolin-2-yl)sulfanylethanone>:GMI08-087
【0023】
【化6】

【0024】
(7)2-(4-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-(オキソラン-2-イルメチル)アセトアミド<2-(4-metylquinolin-2-yl)sulfanyl-N-(oxolan-2-ylmethyl)acetamide>:GMI08-096
【0025】
【化7】

【0026】
(8)2-(2-オキソ-2-ピペリジン-1-イルエチル)スルファニル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタピリジン-3-カルボニトリル<2-(2-oxo-2-piperidin-1-ylethyl)sulfanyl-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[b]pyridine-3-carbonitrile>:GMI08-003-002
【0027】
【化8】

【0028】
(9)4,6-ジメチル-2-(2-オキソ-2-ピペリジン-1-イルエチル)スルファニルピリジン-3-カルボニトリル<4,6-dimethyl-2-(2-oxo-2-piperidine-1-ylethyl)sulfanylpyridine-3-carbonitrile>:GMI08-003-042
【0029】
【化9】

【0030】
(10)2-(3-シアノ-8-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アセトアミド<2-(3-cyano-8-methylquinolin-2-yl)sulfanyl-N-[2-(1H-indol-3-yl)ethyl]acetamide>:GMI08-003-066
【0031】
【化10】

【0032】
(11)2-(3-シアノ-7-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エチル]アセトアミド<2-(3-cyano-7-methylquinolin-2-yl)sulfanyl-N-[2-(3,4-dimethoxyphenyl)ethyl]acetamide>:GMI08-003-123
【0033】
【化11】

【0034】
(12)2-(3-シアノ-6-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アセトアミド<2-(3-cyano-6-methylquinolin-2-yl)sulfanyl-N-[2-(1H-indol-3-yl)ethyl]acetamide>:GMI08-003-170
【0035】
【化12】

【0036】
(13)N-シクロペンチル-2-(4-メチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド<N-cyclopentyl-2-(4-methylquinolin-2-yl)sulfanylacetamide>:GMI08-003-180
【0037】
【化13】

【0038】
(14)2-(4-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-1-ピペリジン-1-イルエタノン<2-(4-methylquinolin-2-yl)sulfanyl-1-piperidin-1-ylethanone>:GMI08-003-239
【0039】
【化14】

【0040】
(15)2-[2-(アゼパン-1-イル)-2-オキソエチル]スルファニル-5,7-ジメチルキノリン-3-カルボニトリル<2-[2-(azepan-1-yl)-2-oxoethyl]sulfanyl-5,7-dimethylquinoline-3-carbonitrile>:GMI08-102
【0041】
【化15】

【0042】
(16)2-[(3-シアノ-4-ピリジン-4-イル-5,6,7,8-テトラヒドロ-キノリン-2-イル)スルファニル]アセトアミド<2-[(3-cyano-4-pyridin-4-yl-5,6,7,8-tetrahydroquinolin-2-yl)sulfanyl]acetamide>:GFI99-043-075
【0043】
【化16】

【0044】
上記化合物の塩としては、塩酸塩、硫酸塩、もしくはリン酸塩などの無機酸付加塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、もしくは蓚酸塩などの有機酸塩、またはナトリウム塩、カリウム塩、もしくはカルシウム塩などの塩が挙げられる。
【0045】
上記化合物またはその塩の合成方法は、特に限定されず、公知の方法を用いて合成することができる。上記化合物またはその塩のうち、例えば、GFI99-043-075は次のようにして合成することができる。N-(1-cyclohexenyl)-morpholineおよび4-pyridinyl-methylenecyanothio(seleno)acetamideを20℃の無水エタノール中で4時間攪拌する。その後、10%水酸化カリウム水溶液を反応溶液に加え、5分経った後で2-Chloro-acetamideを加えて、5時間攪拌する。その後、反応溶液を濾過後、水、エタノール、ヘキサンで洗浄後、適宜精製を行うことにより、目的物質であるGFI99-043-075を例えば75%の収率で得ることができる。(Dyachenko, V. D.; Litvinov, V. P. T. G. Shevchenko, Single stage synthesis of 2-alkylthio(seleno)-4-heteroaryl-3-cyano-5,6,7,8-tetrahydroquinolines., Chemistry of Heterocyclic Compounds (New York)(Translation of Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenii), 33(10), 1203-1208; 1998)。
【0046】
また、上記化合物またはその塩は、市販のものを入手しても良い。
例えば、GFI99-043は、ASINEX社から商品名BAS03395143として市販されている。
GMI08-003は、ASINEX社から商品名ASN05588029として市販されている。
GMI08-024は、ASINEX社から商品名ASN03799878として市販されている。
GMI08-052は、ASINEX社から商品名ASN05546408として市販されている。
GMI08-073は、ASINEX社から商品名ASN03799909として市販されている。
GMI08-087は、ASINEX社から商品名ASN03221372として市販されている。
GMI08-096は、ASINEX社から商品名BAS03434505として市販されている。
GMI08-003-002は、ASINEX社から商品名BAS01862082として市販されている。
GMI08-003-042は、ASINEX社から商品名BAS01862079として市販されている。
GMI08-003-066は、ASINEX社から商品名ASN05546041として市販されている。
GMI08-003-123は、ASINEX社から商品名ASN05545884として市販されている。
GMI08-003-170は、ASINEX社から商品名ASN05545551として市販されている。
GMI08-003-180は、ASINEX社から商品名BAS03434499として市販されている。
GMI08-003-239は、ASINEX社から商品名BAS02617839として市販されている。
GMI08-102は、ASINEX社から商品名ASN05588113として市販されている。
GFI99-043-075は、ASINEX社から商品名BAS02589988として市販されている。
【0047】
2.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の増殖阻害剤
本発明は、上記化合物またはその塩(本明細書中で、本発明の化合物と呼ぶ場合がある。)を含む、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の増殖阻害剤(本明細書中で、本発明の阻害剤と呼ぶ場合がある)を提供する。すなわち、本発明の阻害剤に含まれる化合物またはその塩は、GFI99-043、GMI08-003、GMI08-024、GMI08-052、GMI08-073、GMI08-087、GMI08-096、GMI08-003-002、GMI08-003-042、GMI08-003-066、GMI08-003-123、GMI08-003-170、GMI08-003-180、GMI08-003-239、GMI08-102、およびGFI99-043-075からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物またはその塩である。本発明の1つの態様の阻害剤に含まれる化合物またはその塩は、GFI99-043、GMI08-003、GMI08-024、GMI08-052、GMI08-073、GMI08-087、GMI08-096、GMI08-003-002、GMI08-003-042、GMI08-003-066、GMI08-003-123、GMI08-003-170、GMI08-003-180、GMI08-003-239、GMI08-102、もしくはGFI99-043-075、またはその塩である。本発明の1つの態様の阻害剤においては、本発明の化合物における塩は、医薬的に許容される塩である。医薬的に許容される塩としては、塩酸塩、硫酸塩、もしくはリン酸塩などの無機酸付加塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、もしくは蓚酸塩などの有機酸塩、またはナトリウム塩、カリウム塩、もしくはカルシウム塩などの塩が挙げられる。本発明の阻害剤は、HIV-1の増殖、好ましくは、HIV-1とHIV-2の両方の増殖を阻害することができる。
【0048】
本発明の1つの態様では、本発明の阻害剤と併用して本発明の阻害剤のHIVの増殖阻害効果を高めることができる化合物をスクリーニングするために本発明の阻害剤を使用する。具体的には、候補化合物の存在下または非存在下、HIV感染細胞に、本発明の阻害剤を接触させて、細胞生存率を測定する。「接触」とは、HIV感染細胞と本発明の阻害剤とを同一の反応系または培養系に存在させることを意味し、例えば、HIV感染細胞を本発明の阻害剤の存在下で培養することなどが含まれる。尚、このとき、様々な濃度の候補化合物の存在下で、細胞生存率を測定するのが好ましい。そして、候補化合物の存在下での細胞生存率が、非存在下での細胞生存率と比較して高い時に(例えば、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、150%以上、または200%以上高い時に)、候補化合物を、本発明の阻害剤と併用して本発明の阻害剤のHIVの増殖阻害効果を高めることができる化合物として選択する。細胞生存率は、公知の方法、例えば、MTTアッセイなどを用いて測定することができる。
【0049】
本発明の別の態様では、哺乳動物(例えば、ヒト、サルなど)のHIV感染症を治療するために、経口または非経口で本発明の阻害剤を哺乳動物に適用する。本発明のある態様では、哺乳動物はヒトを除く哺乳動物である。
【0050】
また、本発明の阻害剤は、使用目的に応じ、本発明の化合物に加えて、担体や添加物を含むものであってもよい。このような担体及び添加物として、水、酢酸、有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、界面活性剤等が挙げられる。
【0051】
本発明の阻害剤における本発明の化合物の使用量は、使用目的によって異なる。当業者であれば、使用目的に応じて、本発明の化合物の使用量を適宜選択することができる。
【0052】
例えば、本発明の阻害剤と併用して本発明の阻害剤のHIVの増殖阻害効果を高めることができる化合物をスクリーニングするために本発明の阻害剤を用いる場合には、本発明の化合物の使用量を変動させて細胞生存率を測定するのが好ましい。この場合、本発明の化合物の使用量は、例えば、2μg/mL〜200μg/mL、好ましくは、10μg/mL〜100μg/mLである。
【0053】
哺乳動物のHIV感染症を治療するために本発明の阻害剤を用いる場合には、本発明の化合物の使用量は、20 kgの動物の場合、1日あたり、例えば、1mg〜600mg、好ましくは、20mg〜300mgである。
【0054】
また、本発明は、HIV増殖阻害用の前記化合物またはその塩(本発明の化合物)を提供する。本発明の化合物の用法および用量は、前記阻害剤で説明したのと同様である。
【0055】
また、本発明は、前記化合物またはその塩(本発明の化合物)を用いるHIV増殖阻害方法を提供する。ここで、「本発明の化合物を用いる」ことには、例えば、本発明の化合物と併用して本発明の化合物のHIVの増殖阻害効果を高めることができる化合物をスクリーニングするために本発明の化合物を使用すること、および哺乳動物のHIV感染症を治療するために、経口または非経口で本発明の化合物を動物に適用するために本発明の化合物を使用すること、などが含まれるが、これらに限定されない。本発明のHIV増殖阻害方法における本発明の化合物の用法および用量は、前記阻害剤で説明したのと同様である。
【0056】
さらに、本発明は、HIV増殖阻害剤製造のための前記化合物またはその塩(本発明の化合物)の使用を提供する。本発明の使用における本発明の化合物の用法および用量は、前記HIV増殖阻害剤で説明したのと同様である。
【0057】
3.医薬組成物
本発明は、前記化合物またはその塩(本発明の化合物)を含有する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物に含まれる化合物またはその塩は、GFI99-043、GMI08-003、GMI08-024、GMI08-052、GMI08-073、GMI08-087、GMI08-096、GMI08-003-002、GMI08-003-042、GMI08-003-066、GMI08-003-123、GMI08-003-170、GMI08-003-180、GMI08-003-239、GMI08-102、およびGFI99-043-075からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物またはその塩である。本発明の1つの態様の医薬組成物に含まれる化合物またはその塩は、GFI99-043、GMI08-003、GMI08-024、GMI08-052、GMI08-073、GMI08-087、GMI08-096、GMI08-003-002、GMI08-003-042、GMI08-003-066、GMI08-003-123、GMI08-003-170、GMI08-003-180、GMI08-003-239、GMI08-102、もしくはGFI99-043-075またはその塩である。本発明の化合物における塩は、医薬的に許容される塩である。医薬的に許容される塩としては、塩酸塩、硫酸塩、もしくはリン酸塩などの無機酸付加塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、もしくは蓚酸塩などの有機酸塩、またはナトリウム塩、カリウム塩、もしくはカルシウム塩などの塩が挙げられる。本発明の医薬組成物に含まれる本発明の化合物は、HIV増殖阻害作用があるため、本発明の医薬組成物を投与することにより、HIV感染症を治療することができる。
【0058】
HIV感染症は、HIVの感染により引き起こされる疾患であり、例えば、身体の免疫機能が低下することにより引き起こされる疾患が挙げられる。身体の免疫機能が低下することにより引き起こされる疾患としては、日和見感染(結核、カンジダ症、またはニューモシスチス肺炎など)、がん(カポジ肉腫、非ホジキンリンパ腫または原発性脳リンパ腫)、全身衰弱、および中枢神経変性を伴う進行性の疾患(痴呆症、または亜急性脳炎など)などが挙げられる。HIV感染症を治療することには、これらの疾患の発症を遅らせることも含まれる。
【0059】
また、本発明の医薬組成物は、他のHIV感染症治療用医薬組成物と併用して、その治療効果を高めるため、あるいは耐性ウイルスの出現を遅らせるために使用しても良い。他のHIV感染症治療用医薬組成物としては、公知の医薬組成物を挙げることができ、例えば、ジドブジン(商品名Retrovir、Glaxo SmithKline)、ネビラピン(商品名Viramune、Boehringer)、ザルシタビン(商品名Hivid、中外)、ラミブジン(商品名Epivir、Glaxo SmithKline)、リトナビル(商品名Norvir、Abbott)、インジナビル(商品名Crixivan、万有)、またはサニルブジン(商品名Zerit、Bristol)からなる群から選択される少なくとも1つの医薬組成物を挙げることができる。好ましくは、ジドブジン(商品名Retrovir、Glaxo SmithKline)、ラミブジン(商品名Epivir、Glaxo SmithKline)、またはインジナビル(商品名Crixivan、万有)である
【0060】
本発明の医薬組成物は、経口投与及び非経口投与のいずれの剤形をも採用することができる。
【0061】
前記剤形は常法にしたがって製剤化することができ、本発明の化合物の他、医薬的に許容される担体や添加物を含むものであってもよい。このような担体及び添加物として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
【0062】
上記添加物は、本発明の医薬組成物の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれる。剤形としては、経口投与の場合は、錠剤、カプセル剤、細粒剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、シロップ剤等として、または適当な剤型により投与が可能である。非経口投与の場合は、注射剤等が挙げられる。注射剤型の場合は、例えば点滴等の静脈内注射等により全身又は局部的に投与することができる。
【0063】
例えば、注射用製剤として使用する場合、本発明の医薬組成物を溶剤(例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等)に溶解し、これに適当な添加剤(ヒト血清アルブミン等)を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよい。凍結乾燥用賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
【0064】
本発明の医薬組成物または本発明の化合物の投与量は、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なる。投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択する。投与量は、例えば成人(60kg)の場合、1日当たり50〜2500mg、好ましくは300〜1800mg、より好ましくは600〜1200mgである。投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択する。投与は、例えば1日当たり、1回または2〜4回に分けてもよい。
また、本発明医薬組成物または本発明の化合物を、他のHIV感染症治療用医薬組成物と併用する場合、本発明の化合物の量は、特に限定されず、他のHIV感染症治療用医薬組成物との個々の組み合わせによって異なるが、例えば、他のHIV感染症治療用医薬組成物の約0.1〜100倍(重量比)である。さらに好ましくは約1〜10倍(重量比)である。
【0065】
また、本発明は、前記化合物またはその塩(本発明の化合物)を患者に投与することを含む、HIV感染症の治療方法を提供する。さらに、本発明は、本発明のHIV感染症治療用医薬組成物を製造するための、前記化合物またはその塩(本発明の化合物)の使用を提供する。HIV感染症の治療方法における、本発明の化合物の投与方法などは、上記医薬組成物で説明したのと同様である。また、本発明の化合物の使用における、医薬組成物の製造方法なども、上記医薬組成物で説明したのと同様である。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
[概略]
ヒトT細胞由来の細胞株MT-4はHIVに感染すると細胞変性を起こして死滅する。一方、HIV増殖阻害活性のある供試化合物の存在下では、HIV感染MT-4細胞は死滅せずに、生き残ることができる。よって、供試化合物の存在下でのHIV感染MT-4細胞の生存率が高ければ、その供試化合物にHIV増殖阻害活性があると判断できる。
以下では、具体的には、96穴マイクロプレートで段階希釈した供試化合物にHIV感染MT-4細胞と非感染MT-4細胞をそれぞれ加え、5日間培養した。供試化合物非添加HIV非感染MT-4細胞の生存率を100%(コントロール)として、供試化合物の各濃度における細胞生存率をMTT法によって算出した(Nakashima et al. Antiviral Chemist Chemother 6; 271-280,1995)。そして、供試化合物のHIV増殖阻害活性(あるいはHIV感染阻止作用)と細胞障害活性を評価した。
【0067】
[実施例1]
2-[2-(フェニルメチルスルフォニル)エチルスルファニル]-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-カルボニトリル<2-[2-(phenylmethylsulfonyl)ethylsulfanyl]-5,6,7,8-tetrahydroquinoline-3-carbonitrile>:GFI99-043
【0068】
【化17】

【0069】
Nakashima et al. Antiviral Chmeist Chemother 6;271-280,1995に準じて、GFI99-043(ASINEX社)のHIV増殖阻害活性および細胞障害活性等を評価した。
【0070】
細胞は、ヒトT細胞由来の細胞株MT-4を使用した。ウイルスは、HIV-1 IIIB株を使用した。培地は10% FCS含有RPMI1640培地 (Invitrogen社) を用いた。96穴マイクロプレート (Falcon社製) の2〜11列を用いて供試化合物を2倍系列で段階希釈した(100μL/well、最終濃度500μM, 250μM, 125μM, 62.5μM, 31.25μM, 15.625μM, 7.8125μM, 3.90625μM, 1.953125μM, または0μM)。MT-4細胞を3×105 cell/mLに調製し、プレートの上半分(B〜D行)にはHIV-1 IIIB株をmoi=0.01で感染させたMT-4細胞を、下半分(E〜G行)には非感染(mock感染)細胞を、それぞれ100μL/wellずつ加えた。5%CO2存在下、37℃で5日間培養した後、MTT試薬(0.75%)を加え、さらに2時間培養した。ウエルの底に沈んだ色素を吸わないように培地120μL/wellを除き、100μL/wellの色素溶解液を加えた。吸光度(波長540nm、対照690nm)を測定し、各薬剤濃度におけるHIV感染および非感染細胞の生存率を算出した。すなわち、供試化合物の濃度が0μMのときの非感染細胞の吸光度の値を細胞生存率100%として、吸光度の比から各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を計算した。その結果を図1に示す。図1中、縦軸が細胞生存率(% viabilility)であり、横軸が供試化合物の濃度である。また、HIV inf. MT-4がウイスル感染細胞であり、Mock inf. MT-4が非感染細胞である。図1に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
【0071】
供試化合物のHIV増殖阻害活性を50%有効濃度値EC50および90%有効濃度値EC90で表わした。また、供試化合物の細胞障害活性を50%細胞障害濃度CC50で表わした。また、供試化合物の有効性を、有効係数(SI=CC50/EC50)で表わした。
EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
[実施例2]
5,7-ジメチル-2-[2-(3-メチルピペリジン-1-イル)-2-オキソエチル]スルファニルキノリン-3-カルボニトリル<5,7-dimethyl-2-[2-(3-methylpiperidin-1-yl)-2-oxoethyl]sulfanylquinoline-3-carbonitrile]>:GMI08-003
【0074】
【化18】

【0075】
供試化合物としてGMI08-003(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
【0076】
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図2に示す。図2に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
[実施例3]
N-シクロヘキシル-2-(3-メチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド<N-cyclohexyl-2-(3-methylquinolin-2-yl)sulfanylacetamide>:GMI08-024
【0079】
【化19】

【0080】
供試化合物としてGMI08-024(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
【0081】
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図3に示す。図3に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
[実施例4]
N-シクロヘキシル-2-(3-エチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド<N-cyclohexyl-2-(3-ethylquinolin-2-yl)sulfanylacetamide>:GMI08-052
【0084】
【化20】

【0085】
供試化合物としてGMI08-052(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
【0086】
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図4に示す。図4に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0087】
【表4】

【0088】
[実施例5]
N-シクロペンチル-2-(3-メチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド<N-cyclopentyl-2-(3-methylquinolin-2-yl)sulfanylacetamide>:GMI08-073
【0089】
【化21】

【0090】
供試化合物としてGMI08-073(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
【0091】
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図5に示す。図5に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0092】
【表5】

【0093】
[実施例6]
1-ピペリジン-1-イル-2-(3,5,7-トリメチルキノリン-2-イル)スルファニルエタノン<1-piperidin-1-yl-2-(3,5,7-trimethylquinolin-2-yl)sulfanylethanone>:GMI08-087
【0094】
【化22】

【0095】
供試化合物としてGMI08-087(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
【0096】
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図6に示す。図6に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0097】
【表6】

【0098】
[実施例7]
2-(4-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-(オキソラン-2-イルメチル)アセトアミド<2-(4-metylquinolin-2-yl)sulfanyl-N-(oxolan-2-ylmethyl)acetamide>:GMI08-096
【0099】
【化23】

【0100】
供試化合物としてGMI08-096(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
【0101】
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図7に示す。図7に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0102】
【表7】

【0103】
[実施例8]
【0104】
2-(2-オキソ-2-ピペリジン-1-イルエチル)スルファニル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタピリジン-3-カルボニトリル<2-(2-oxo-2-piperidin-1-ylethyl)sulfanyl-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[b]pyridine-3-carbonitrile>:GMI08-003-002
【0105】
【化24】

【0106】
供試化合物としてGMI08-003-002(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
【0107】
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図8に示す。図8に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0108】
【表8】

【0109】
[実施例9]
【0110】
4,6-ジメチル-2-(2-オキソ-2-ピペリジン-1-イルエチル)スルファニルピリジン-3-カルボニトリル<4,6-dimethyl-2-(2-oxo-2-piperidine-1-ylethyl)sulfanylpyridine-3-carbonitrile>:GMI08-003-042
【0111】
【化25】

【0112】
供試化合物としてGMI08-003-042(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
【0113】
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図9に示す。図9に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0114】
【表9】

【0115】
[実施例10]
2-(3-シアノ-8-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アセトアミド<2-(3-cyano-8-methylquinolin-2-yl)sulfanyl-N-[2-(1H-indol-3-yl)ethyl]acetamide>:GMI08-003-066
【0116】
【化26】

【0117】
供試化合物としてGMI08-003-066(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
【0118】
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図10に示す。図10に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0119】
【表10】

【0120】
[実施例11]
2-(3-シアノ-7-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エチル]アセトアミド<2-(3-cyano-7-methylquinolin-2-yl)sulfanyl-N-[2-(3,4-dimethoxyphenyl)ethyl]acetamide>:GMI08-003-123
【0121】
【化27】

【0122】
供試化合物としてGMI08-003-123(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
【0123】
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図11に示す。図11に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0124】
【表11】

【0125】
[実施例12]
2-(3-シアノ-6-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アセトアミド<2-(3-cyano-6-methylquinolin-2-yl)sulfanyl-N-[2-(1H-indol-3-yl)ethyl]acetamide>:GMI08-003-170
【0126】
【化28】

【0127】
供試化合物としてGMI08-003-170(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
【0128】
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図12に示す。図12に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0129】
【表12】

【0130】
[実施例13]
N-シクロペンチル-2-(4-メチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド<N-cyclopentyl-2-(4-methylquinolin-2-yl)sulfanylacetamide>:GMI08-003-180
【0131】
【化29】

【0132】
供試化合物としてGMI08-003-180(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
【0133】
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図13に示す。図13に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0134】
【表13】

【0135】
[実施例14]
2-(4-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-1-ピペリジン-1-イルエタノン<2-(4-methylquinolin-2-yl)sulfanyl-1-piperidin-1-ylethanone>:GMI08-003-239
【0136】
【化30】

【0137】
供試化合物としてGMI08-003-239(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図14に示す。図14に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0138】
【表14】

【0139】
[実施例15]
2-[2-(アゼパン-1-イル)-2-オキソエチル]スルファニル-5,7-ジメチルキノリン-3-カルボニトリル<2-[2-(azepan-1-yl)-2-oxoethyl]sulfanyl-5,7-dimethylquinoline-3-carbonitrile>:GMI08-102
【0140】
【化31】

【0141】
供試化合物としてGMI08-102(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
【0142】
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図15に示す。図15に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0143】
【表15】

【0144】
[実施例16]
2-[(3-シアノ-4-ピリジン-4-イル-5,6,7,8-テトラヒドロ-キノリン-2-イル)スルファニル]アセトアミド<2-[(3-cyano-4-pyridin-4-yl-5,6,7,8-tetrahydroquinolin-2-yl)sulfanyl]acetamide>:GFI99-043-075
【0145】
【化32】

【0146】
供試化合物としてGFI99-043-075(ASINEX社)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で評価を行った。
【0147】
各濃度でのウイルス感染細胞および非感染細胞の細胞生存率を図16に示す。図16に示すように、MT-4細胞は、供試化合物の非存在下では、ウイルスの感染によって全て死滅した。しかし、供試化合物を添加すると、細胞生存率が上昇することが確認できた。
また、EC50、EC90、CC50およびSIを下記表に示す。
【0148】
【表16】

【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】供試化合物(GFI99-043)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図2】供試化合物(GMI08-003)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図3】供試化合物(GMI08-024)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図4】供試化合物(GMI08-052)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図5】供試化合物(GMI08-073)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図6】供試化合物(GMI08-087)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図7】供試化合物(GMI08-096)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図8】供試化合物(GMI08-003-002)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図9】供試化合物(GMI08-003-042)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図10】供試化合物(GMI08-003-066)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図11】供試化合物(GMI08-003-123)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図12】供試化合物(GMI08-003-170)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図13】供試化合物(GMI08-003-180)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図14】供試化合物(GMI08-003-239)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図15】供試化合物(GMI08-102)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。
【図16】供試化合物(GFI99-043-075)のHIV増殖阻害活性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-[2-(フェニルメチルスルフォニル)エチルスルファニル]-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-カルボニトリル、
5,7-ジメチル-2-[2-(3-メチルピペリジン-1-イル)-2-オキソエチル]スルファニルキノリン-3-カルボニトリル、
N-シクロヘキシル-2-(3-メチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド、
N-シクロヘキシル-2-(3-エチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド、
N-シクロペンチル-2-(3-メチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド、
1-ピペリジン-1-イル-2-(3,5,7-トリメチルキノリン-2-イル)スルファニルエタノン、
2-(4-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-(オキソラン-2-イルメチル)アセトアミド、
2-(2-オキソ-2-ピペリジン-1-イルエチル)スルファニル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタピリジン-3-カルボニトリル、
4,6-ジメチル-2-(2-オキソ-2-ピペリジン-1-イルエチル)スルファニルピリジン-3-カルボニトリル、
2-(3-シアノ-8-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アセトアミド、
2-(3-シアノ-7-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エチル]アセトアミド、
2-(3-シアノ-6-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-N-[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アセトアミド、
N-シクロペンチル-2-(4-メチルキノリン-2-イル)スルファニルアセトアミド、
2-(4-メチルキノリン-2-イル)スルファニル-1-ピペリジン-1-イルエタノン、
2-[2-(アゼパン-1-イル)-2-オキソエチル]スルファニル-5,7-ジメチルキノリン-3-カルボニトリル、および
2-[(3-シアノ-4-ピリジン-4-イル-5,6,7,8-テトラヒドロ-キノリン-2-イル)スルファニル]アセトアミド
からなる群から選択される少なくとも1つの化合物またはその塩を含む、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の増殖阻害剤。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症治療用医薬組成物。
【請求項3】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症治療用医薬組成物を製造するための、請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−59099(P2010−59099A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226642(P2008−226642)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(596165589)学校法人 聖マリアンナ医科大学 (53)
【Fターム(参考)】