説明

ヒト抗ミュラーホルモンII型レセプタ(AMHR−II)に対するモノクローナル抗体とそのフラグメント

本発明は、ヒト抗ミュラーホルモンII型レセプタ(AMHR−II)に対するモノクローナル抗体およびそのフラグメント、そして卵巣癌といったような癌疾患の治療および診断を目的とするその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト抗ミュラーホルモンII型レセプタ(AMHR−II)に対するモノクローナル抗体およびそのフラグメント、そして卵巣癌といったような癌疾患の治療および診断を目的とするその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
卵巣癌は、婦人科悪性腫瘍の主たる原因であり、女性の癌関連死の5番目に頻度の高い死因である。100,000人あたり約10人という平均罹患率で、全欧州女性のうち合計1〜2%がその人生の或る時点で卵巣癌に罹患している(Black RJら、1997年)。
【0003】
顆粒膜細胞腫(GCT)は、卵巣悪性新生物の約5%そして卵巣性索−支質腫瘍の70%を占めている。その悪性度は、疾病の最初の数年においては比較的低いものであるが、再発は、原発腫瘍の外科的除去後最長30年にわたり出現する可能性がある(Singh−Ranger Gら、2004年)。腫瘍が腹膜上に広がる前の早期に診断が行なわれた場合、再発の予後は、外科的完全摘出によって著しく改善され得る(DutertreM.ら、2001年)。
【0004】
上皮性卵巣癌は、卵巣腫瘍全体の約80%を占めている。これらの癌腫が早期に診断された場合、生存率は約90%である。残念なことに、診断時点でおよそ75%の女性において腹腔内に疾病が大きく広がっている(American Cancer Society Facts and Figures.2001年、www.cancer.org)。これらの看護においては適切な治療にもかかわらず生存率は約20〜25%である(Rapkiewicz AV.ら、2004年)。
【0005】
上皮性卵巣癌のためには、いくつかの分子マーカー、特にこれらの腫瘍の約80%において過剰発現される癌抗原125の循環形態(CA125またはMUC16)が提案された。しかしながら、そのレベルの上昇は、子宮内膜症または肝疾患といったような良性の身体条件および月経と関連性を有している可能性がある。
【0006】
上皮性卵巣癌のために用いられる主要な治療戦略は、外科手術と化学療法である。例えば卵巣癌は一般にシスプラチンベースの化学療法で治療されてきたが、シスプラチン獲得耐性に起因して再発することが多い(Yahata,H.ら、2002年)。大部分の患者は当初、完全応答を含めてプラチニウムおよびパクリタキセル化学療法に対し応答性を有するかもしれないが、再発率はおよそ85%である(Gordon ANら、2004年)。ホルモン、抗血管新生因子およびモノクローナル抗体に基づく新しい標的療法が急速に発達した。モノクローナル抗体としては、オレゴボマブ(OvaRex、AltaRex)、免疫療法的治療として臨床試験で現在用いられているCA125に対する調査用マウスモノクローナル抗体(Berek JSら、2004年)、および上皮性卵巣癌患者の30〜70%で発現される表皮性成長因子レセプタ(EGFR)に対するセツキシマブ(Ozols RFら、2004年)が含まれる。
【0007】
かくして、卵巣癌の治療のための新しい治療剤に対する重大なニーズが存在する。さらに、生体における卵巣癌の診断用の高感度の特異的バイオマーカーとして使用するために新しい卵巣癌関連タンパク質を識別することのニーズが明らかに存在する。
【0008】
抗ミュラーホルモンII型レセプタは、男性生殖器系の発達に付随するミュラー管退行に関与している。このレセプタは往々にして、ヒトの上皮性卵巣腫瘍細胞上で発見される。卵巣癌細胞の成長を阻害するAMHの能力が実証済みであることから、AMHR−IIはかくして抗体ベースの免疫療法のための貴重な標的を構成し得ると考えられる。
【0009】
AMHR−IIの発現は、マウス生殖細胞系の遺伝子操作によって動物モデルにおいて研究されてきた。Dutertreら(2001年)は、AMHプロモータSV40腫瘍遺伝子構成体を用いて標的腫瘍形成によって得られる遺伝子導入マウスに由来する顆粒膜細胞卵巣腫瘍内の機能的AMHR−IIの発現について報告した。最近開発されたマウスモデルの体内で、Conollyら(2003年)は、調節配列の5’下流側でAMHR−IIの制御下で同じ腫瘍遺伝子の構成体を用いて、雌マウスの約50%が上皮性卵巣腫瘍を発生させることを実証した。Masiakosら(1999年)は同様に、ヒト上皮卵巣癌細胞系、患者から単離した腹水細胞の試料および卵巣癌腫患者からの充実性腫瘍内でのAMHR−IIの発現をも実証した。これらの治験責任医師は、乳房(Segev DLら、2000年)または前立腺(Segev DLら、2002年)といったようなその他の組織に由来する癌細胞系におけるAMHR−IIの発現についても報告している。これらのデータは、ヒトの癌、特に卵巣腫瘍におけるAMHR−IIの非常に特異的なプロファイルを示唆している。
【0010】
2004年に、Salhiらは、ヒトAMHR−IIに対するモノクローナル抗体(mAb)を開発し、特徴づけし、免疫組織化学(IHC)により、ヒトの顆粒膜細胞腫瘍(GCT)およびヒトの睾丸上のセルトリ細胞およびライディヒ細胞によるAMHR−IIの強い発現を実証した。彼らはまた、高レベルの天然リガンド(AMH)を発現してAMHR−II発現腫瘍内でのmAb12G4のインビボ使用を可能にする顆粒膜細胞腫瘍内のmAb12G4の非競合的結合をも明確に示した。
【0011】
より最近になって、Yuanら(2006年)は、ヒト非免疫性scFvファージ表示型ライブラリからのAMHR−II特異的ヒトscFv(単一鎖可変フラグメント)分子の選択について記述した。彼らはさらに抗体ベースの構成体が、ヒト卵巣癌腫を診断し治療する目的でヒト卵巣癌腫細胞上でAMHR−IIをターゲッティングするきわめて特異的な手段を提供できるということを示唆した。
【0012】
本発明は、発明人らがmAb12G4と呼ぶ、Salhiら(2004年)が開発した特異的モノクローナル抗体の公に入手可能な供給源を与えている。実際、mAb12G4を産生するハイブリドーマが、ブダペスト条約の条項に従って、国立微生物培養収蔵機関(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes((CNCM)、パスツール研究所(lnstitut Pasteur)、25 rue du Docteur Roux,75724パリ、Cedex15、フランス)に2006年9月26日付けで寄託された。寄託されたハイブリドーマのCNCM寄託番号はI−3673である。発明人らは同様に、前記mAb12G4の軽鎖および重鎖の可変ドメインをクローニングし特徴づけし、かくして、前記抗体の相補性決定領域を決定した。
【0013】
さらに、発明人らは、mAb12G4を用いた免疫組織化学によりさまざまな腫瘍に由来する組織切片内のAMHR−IIの発現を調査した。したがって、発明人らは、上皮性卵巣癌内のみならず、それぞれ悪性上皮性増殖および性索−支質腫瘍に属する漿液性および透明腺癌および成人顆粒膜細胞腫瘍といった特殊な亜型内でも、卵巣癌内のAMHR−IIの特異的発現プロファイルを実証した。発明人らはかくして、AMHR−IIが卵巣AMHR−II陽性癌のための新しい診断マーカーとなることができ、mAb12G4またはその誘導体を用いた免疫療法のための標的として使用され得る、ということを示した。
【0014】
発明人らは、近年、免疫螢光実験により、mAb12G4が、AMHR−II安定的にトランスフェクションされたGCT細胞系(COV434−plRES−EGFP−AMHR−II)(Zhang Hら、2000年)内で効率の良い内在化を示すことを実証した。この細胞系は、細胞1個あたり約10個のレセプタを発現する。発明人らは同様に、AMHR−II発現COV434細胞の成長を阻害するこの抗体のインビトロ能力も示した。mAb12G4が、COV434−plRESEGFP−AMHR−II細胞で異種移植された無胸腺ヌードマウスのモデルにおいて腫瘍の成長を遅延させることができるということを示すインビボ実験も実施された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様は、かくして、CDR−1については配列番号2または配列番号6、CDR−2については配列番号3または配列番号7そしてCDR−3については配列番号4または配列番号8から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを可変ドメインア含んでいる、免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖に関する。
【0016】
本発明の第2の態様は、
− CDR−H1については配列番号2、CDR−H2については配列番号3そしてCDR−H3については配列番号4から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを可変ドメインが含んでいる重鎖;および/または
− CDR−L1については配列番号6、CDR−L2については配列番号7そしてCDR−L3については配列番号8から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを可変ドメインが含んでいる軽鎖、
を含む抗−ミュラーホルモンII型レセプタ(AMHR−II)に対するモノクローナル抗体またはそのフラグメントに関する。
【0017】
本発明の第3の態様は、本発明に従ったモノクローナル抗体またはそのフラグメントをコードする配列を含む核酸に関する。
【0018】
本発明の第4の態様は、本発明に従った核酸を含むベクターに関する。
【0019】
本発明の第5の態様は、上述の通りの核酸および/またはベクターにより形質転換された宿主細胞に関する。
【0020】
本発明の第6の態様は、本発明に従った抗体を生産する方法において、(i)前記抗体の発現を可能にするのに適した条件下で上述の通りの形質転換された宿主細胞を培養するステップ、および(ii)発現された抗体を回収するステップから成るステップを含む方法に関する。
【0021】
本発明の第7の態様は、上述の通りの抗体、および/または核酸、および/またはベクター、および/または宿主細胞を薬学的に受容可能な担体と共に含む薬学組成物に関する。
【0022】
本発明の第8の態様は、抗癌剤または成長阻害剤に抱合された、本発明に従った抗体を含む免疫抱合体に関する。
【0023】
本発明の第9の態様は、検出可能な分子または物質で標識された本発明に従った抗体に関する。
【0024】
本発明の第10の態様は、卵巣癌を治療するように意図された薬剤の製造を目的とする、上述の通りの抗体、または薬学組成物または免疫抱合体の使用に関する。
【0025】
本発明の第11の態様は、卵巣癌の診断および/または監視のための本発明に従った抗体の使用に関する。
【0026】
定義
「コーディング配列」つまり発現産物例えばRNA、ポリペプチド、タンパク質または酵素を「コードする」配列は、発現された場合にそのRNA、ポリペプチド、タンパク質または酵素の産生を結果としてもたらすヌクレオチド配列であり、すなわちこのヌクレオチド配列は、そのポリペプチド、タンパク質または酵素のためのアミノ酸配列をコードする。1つのタンパク質のためのコーディング配列は、開始コドン(通常ATG)と停止コドンを含み得る。
【0027】
本書で使用される通り、特異的タンパク質(例えば抗体またはAMHR−II)に対する参照指示は、その由来または調製様式の如何に関わらず、未変性アミノ酸配列をもつポリペプチドならびに変異体および修飾形態を内含できる。未変性アミノ酸配列を有するタンパク質は、自然の中から獲得されたものと同じアミノ酸配列を有するタンパク質(例えば、天然に発生するAMHR−II)である。かかる未変性配列タンパク質は、自然の中から単離可能であるか、または標準的な組換え方法および/または合成方法を用いて調製可能である。未変性配列タンパク質は、具体的には、天然に発生する切形または可溶性形態、天然に発生する変異体形態(例えば代替的にはスプライスされた形態)、対立遺伝子多型および翻訳後修飾を含む形態を包含する。未変性配列タンパク質には、グリコシル化またはリン酸化といったような翻訳後修飾、または一部のアミノ酸残基のその他の修飾の後のタンパク質が含まれる。
【0028】
「遺伝子」という用語は、1つ以上のタンパク質または酵素の全てまたは一部を含み、例えば遺伝子が発現される条件などを決定するプロモータ配列といったような調節DNA配列を内含していてもいなくてもよいアミノ酸の特定の配列をコードするかまたはそれに対応するDNA配列を意味する。構造遺伝子ではない一部の遺伝子は、DNAからRNAへと転写され得るが、アミノ酸配列へと翻訳されることはない。その他の遺伝子は、構造遺伝子の調節因子としてかまたはDNA転写の調節因子として機能し得る。特に、遺伝子という用語は、1つのタンパク質をコードするゲノム配列、すなわち、調節因子、プロモータ、イントロンおよびエクソン配列を含む配列のために意図されていてもよい。
【0029】
本書で使用する「オリゴヌクレオチド」という用語は、一般的には少なくとも10個、好ましくは少なくとも12個、より好ましくは少なくとも15個そしてさらに好ましくは少なくとも20個のヌクレオチド、好ましくは100個以下のヌクレオチド、さらに好ましくは70個以下のヌクレオチドの核酸を意味する。
【0030】
「機能保存的変異体」というのは、1つのタンパク質または酵素内の所与のアミノ酸残基が、類似の特性(例えば極性、水素結合ポテンシャル、酸性、塩基性、疎水性、芳香族性など)を有するものによるアミノ酸の交換を含めた(ただしこれに限定されるわけではない)ポリペプチドの全体的立体構造および機能を改変することなく変更されている変異体のことである。保存されたものとして標示されたもの以外のアミノ酸は、1つのタンパク質内で異なっていてよく、かくして、類似の機能をもつ任意の2つのタンパク質の間のタンパク質またはアミノ酸配列類似性百分率は、変動してよく、例えばクラスタ方法(Cluster Method)などによるアラインメントスキームに従って決定された場合70%〜99%であり得、ここで類似性はMEGALIGNアルゴリズムに基づいている。「機能保存的変異体」は、同様に、BLASTまたはFASTAアルゴリズムによって決定された場合に少なくとも60%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、そしてさらに一層好ましくは少なくとも95%のアミノ酸同一性を有し、かつ比較対象の未変性または親タンパク質と同じかまたは実質的に類似の特性または機能を有するポリペプチドを内含する。
【0031】
2つのアミノ酸配列は、このアミノ酸の80%超、好ましくは85%超、好ましくは90%超が同一であるかまたは約90%超、好ましくは95%超がより短かい配列の全長にわたって類似している(機能的に同一である)場合に、「実質的に相同である」かまたは「実質的に類似である」。好ましくは、類似のまたは相同の配列は、例えばGCG(Genetics Computer Group,GCGパッケージ用プログラムマニュアル(Program Manual for the GCG Package),バージョン7、ウィスコンシン州マジソン))のpileupプログラム、またはBLAST、FASTAなどといった配列比較アルゴリズムのいずれかを用いたアラインメントにより同定される。
【0032】
本発明に従うと、「抗体」または「免疫グロブリン」は同じ意味をもち、本発明において同等に使用される。抗体というのは、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち免疫特異的に抗原を結合させる抗原結合部位を含有する分子を意味する。かくして、抗体という用語は、抗体分子体だけではなく、抗体フラグメントならびに抗体および抗体フラグメントの変異体(誘導体を含む)をも包含している。天然の抗体においては、2つの重鎖がジスルフィド結合によって互いにリンクされており、各々の重鎖はジスルフィド結合により軽鎖にリンクされる。軽鎖には、ラムダ(l)とカッパ(k)の2つのタイプがある。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(またはイソタイプ)すなわち、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEが存在する。各鎖は、全く異なる配列ドメインを含む。軽鎖は2つのドメイン、つまり可変ドメイン(VL)および定常ドメイン(CL)を内含する。重鎖は4つのドメイン、つまり1つの可変ドメイン(VH)と3つの定常ドメイン(集合的CHと呼ばれるCH1、CH2およびCH3)を含む。軽鎖(VL)および重鎖(VH)の両方の可変領域は、結合認識および抗原に対する特異性を決定する。軽鎖(CL)および重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖会合、分泌、経胎盤可動度、補体結合、およびFcレセプタ(FcR)に対する結合といった重要な生物学的特性を付与する。Fvフラグメントは、免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部分であり、1つの軽鎖と1つの重鎖の可変部分から成る。抗体の特異性は、抗体組合せ部位と抗原決定基の間の構造的相補性にある。抗体組合せ部位は、主として超可変または相補性決定領域(CDR)に由来する残基で構成されている。時として、非超可変またはフレームワーク領域(FR)由来の残基が、全体的ドメイン構造ひいては組合せ部位に影響を及ぼす。相補性決定領域またはCDRというのは、未変性免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和力および特異性を共に定義づけるアミノ酸配列を意味する。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は、それぞれL−CDR1、L−CDR2、L−CDR3およびH−CDR1、H−CDR2、H−CDR3と呼称される3つのCDRを各々有している。したがって、1つの抗原結合部位は、重鎖および軽鎖V領域の各々に由来するCDRセットを含む6つのCDRを内含する。
【0033】
フレームワーク領域(FRs)というのは、CDRの間に介在させられたアミノ酸配列、すなわち、Kabat、ら(免疫学的価値をもつタンパク質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)(国立衛生研究所(National Institutes of Health)、メリーランド州ベテスダ、1991年)によって定義されているように、単一の種の中の異なる免疫グロブリンの間で比較的保存されている免疫グロブリン軽鎖および重鎖可変領域の一部分を意味している。本書で使用される「ヒトフレームワーク領域」というのは、天然に発生するヒト抗体のフレームワーク領域と実質的(約85%以上、特に90%、95%または100%)に同一であるフレームワーク領域である。
【0034】
本書で使用されている「モノクローナル抗体」または「mAb」は、特異的抗原に対し向けられかつB細胞の単一クローンまたはハイブリドーマによって産生される単一アミノ酸組成物の抗体分子を意味する。
【0035】
「キメラ抗体」という用語は、非ヒト動物に由来する抗体のVHドメインおよびVLドメイン、もう1つの抗体特にヒト抗体のCHドメインおよびCLドメインを含む工学処理された抗体を意味する。非ヒト動物としては、マウス、ラット、ハムスタ、ウサギなどといったあらゆる動物を使用することができる。
【0036】
「ヒト化抗体」という用語は、親免疫グロブリンのものと比べて異なる特異性をもつドナー免疫グロブリンからのCDRを含むようにフレームワークまたは「相補性決定領域」(CDR)が修飾された抗体を意味する。好ましい実施形態においては、「ヒト化抗体」を調製するべくヒト抗体のフレームワーク領域内に、マウスCDRが移植される。
【0037】
「抗体フラグメント」には、無欠抗体の一部分、好ましくは無欠抗体の抗原結合または可変領域が含まれる。抗体フラグメントの例としては、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、二重特異性抗体および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が含まれる。「Fab」という用語は、プロテアーゼ、パパインでIgGを処理することにより得られたフラグメントのうち、H鎖のN末端側の約半分とL鎖全体がジスルフィド結合を通して共に結合されている、約50,000の分子量と抗原結合活性をもつ抗体フラグメントを意味する。
【0038】
「F(ab’)2」という用語は、プロテアーゼ、ペプシンでIgGを処理することによって得られるフラグメントのうち、ヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたFabよりもわずかに大きい、約100,000の分子量と抗原結合活性を有する抗体フラグメントを意味する。
【0039】
「Fab’」という用語は、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる、約50,000の分子量と抗原結合活性を有する抗体フラグメントを意味する。
【0040】
1本鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、通常ペプチドコーディングリンカーによってリンクされたVHおよびVLコーディング遺伝子を内含する遺伝子融合から発現される、共有結合によりリンクされたVH::VLヘテロ二量体である。本発明のヒトscFvフラグメントには、好ましくは遺伝子組換え技術を用いることによって適切な立体構造に保持されるCDRが含まれる。
【0041】
「dsFv」は、ジスルフィド結合により安定化されたVH::VLヘテロ二量体である。2価および多価の抗体フラグメントは、一価のscFvsの会合によって自然発生的に形成でき、そうでなければ、2価のsc(Fv)といったようなペプチドリンカーによって一価のscFvsをカップリングすることによって生成させることもできる。
【0042】
「二重特異性抗体」という用語は、同じポリペプチド鎖(VH−VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む、2つの抗原結合部位を伴う小さい抗体フラグメントを意味する。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短かすぎるリンカーを用いることにより、ドメインはもう1つの鎖の相補性ドメインと強制的に対合させられ2つの抗原結合部位を作り出す。
【0043】
「ハイブリドーマ」という用語は、抗原特異性を有する所望のモノクローナル抗体を生産するマウスなどに由来する骨髄腫細胞との細胞融合に、抗原で非ヒト哺乳動物を免疫にすることによって調製したB細胞を付すことで得られる細胞を意味する。
【0044】
「AMHR−II」という用語は、抗ミュラーホルモンII型レセプタを意味する。AMHR−II遺伝子は、ラット(Baarends WMら、1994年)、ウサギ(di Clemente N.ら、1994年)、ヒト(hAMHR−II)(Imbeaud Sら、1995年)およびマウス(mAMHR−II)(Behringer RRら、1990年)の中で単離された。それは11のエクソンを含む。すなわち、エクソン1〜3は、ヒトレセプタ内の127個のアミノ酸で構成された細胞外ドメインをコードし、エクソン4は、26個のアミノ酸から成る膜内外ドメインについてコードする。AMHR−IIの予測された配列は、TGF−βファミリのその他のII型レセプタとおよそ30%の全体的類似性を共有する。AMHR−IIは、天然の組織標的、生殖器および生殖腺内で特異的に発現される。AMH(抗ミュラーホルモン)がパラクリン機序による退行を誘発するミュラー管の中では、AMHR−IIが間充組織内で発現される(Tsuji Mら、1992年)。AMHR−IIまたはAMH内の突然変異は、例えば雄の遺伝子導入マウスにおける仮性半陰陽(Behringer RRら、1990年)((ヒトにおいては持続性ミュラー管症候群(PMDS)として知られている(Belville Cら、1999年))といった雄の性的異常をひき起こす。雌においては、AMHR−II発現がミュラー管の長さに沿って維持され、正常なおよび妊娠子宮内で検出される(Teixeira Jら、1996年)。雌のAMHR−IIまたはAMH欠損マウスは正常であり、若年成体と同じ位の繁殖力を有する。AMHおよびAMHR−IIは、睾丸のセルトリおよび卵巣顆粒膜細胞内、および誘導された細胞、例えばそれぞれSmat−1(Dutertre Mら、1997年)およびAT29C(Racine Cら、1998年)の中で同時発現される。AMHR−II単独の発現は、げっ歯類のライディヒ細胞内(Racine Cら、1998年;Lee MMら、1999年)およびヒトの細胞内(Masiakos PTら、1999年)で検出されたが、マウスの卵巣表面上皮内では検出されなかった(di Clementeら、1994年;Baarends WMら、1995年)。ヒトAMHR−IIのポリペプチド配列は、U29700という登録番号の下でGenebankデータベース内に寄託されている。
【0045】
「精製された」および「単離された」というのは、ポリペプチド(すなわち本発明の抗体フラグメント)またはヌクレオチド配列に言及している場合、指示された分子が同じタイプのその他の生物学的巨大分子の実質的な不在下で存在することを意味する。本書で使用される「精製された」という用語は、好ましくは、同じタイプの生物学的巨大分子の少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくはさらに少なくとも95重量%そして最も好ましくは少なくとも98重量%が存在することを意味している。特定のポリペプチドをコードする「単離された」核酸分子は、対象のポリペプチドをコードしないその他の核酸分子を実施的に含まない核酸分子を意味している。しかしながら、分子は組成物の基本的特徴に有害な影響を及ぼさないいくつかの付加的な塩基または部分を内含していてよい。
【0046】
本書で使用されている「対象」という用語は、げっ歯類、ネコ科動物、イヌ科動物、および霊長類といったような哺乳動物を意味する。好ましくは、本発明に従った対象は、ヒトである。
【0047】
本発明の抗体、免疫グロブリン鎖およびポリペプチド:
本発明は、ヒトAMHR−IIに対する単離されたモノクローナル抗体またはそのフラグメントを提供している。特に、発明人らは、ブダペスト条約の条項に従って、国立微生物培養収蔵機関(CNCM,lnstitut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724パリ、Cedex15、フランス)に2006年9月26日付けでmAb12G4産生ハイブリドーマを寄託した。寄託されたハイブリドーマは、CNCM寄託番号1−3673を有する。発明人らは、前記mAb12G4の軽鎖および重鎖の可変ドメインをクローニングし、特徴づけし、かくして、表1および図2および3で記述されているように前記抗体の相補性決定領域(CDR)ドメインを決定した。
【0048】
【表1】

【0049】
したがって、本発明は、ヒトAMHR−IIに対する特異性をもつモノクローナル抗体において、可変ドメインが、CDR−H1については配列番号2、CDR−H2については配列番号3そしてCDR−H3については配列番号4から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを含んでいる重鎖を含むモノクローナル抗体に関する。
【0050】
本発明は同様に、ヒトAMHR−IIに対する特異性をもつモノクローナル抗体において、可変ドメインが、CDR−L1については配列番号6、CDR−L2については配列番号7そしてCDR−L3については配列番号8から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを含んでいる軽鎖を含むモノクローナル抗体に関する。
【0051】
本発明は同様に、ヒトAMHR−IIに対する特異性をもつモノクローナル抗体において、可変ドメインが、CDR−H1については配列番号2または配列番号6、CDR−H2については配列番号3または配列番号7そしてCDR−H3については配列番号4または配列番号8から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを含んでいる重鎖、および/または可変ドメインが、CDR−H1については配列番号2または配列番号6、CDR−H2については配列番号3または配列番号7そしてCDR−H3については配列番号4または配列番号8から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを含んでいる軽鎖を含むモノクローナル抗体にも関する。
【0052】
本発明のモノクローナル抗体は、可変ドメインが、CDR−H1については配列番号2、CDR−H2については配列番号3そしてCDR−H3については配列番号4から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを含んでいる重鎖、および/または可変ドメインが、CDR−L1については配列番号6、CDR−L2については配列番号7そしてCDR−L3については配列番号8から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを含んでいる軽鎖を含んでいてよい。
【0053】
本発明のモノクローナル抗体は、可変ドメインが、CDR−H1については配列番号2、CDR−H2については配列番号3そしてCDR−H3については配列番号4から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを含んでいる軽鎖、および/または可変ドメインが、CDR−L1については配列番号6、CDR−L2については配列番号7そしてCDR−L3については配列番号8から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを含んでいる重鎖を含んでいてよい。特に、本発明は、抗ミュラーホルモンII型レセプタ(AMHR−II)に対するモノクローナル抗体において、
− 可変ドメインが、
a)CDR−H1領域内の配列番号2、CDR−H2領域内の配列番号3およびCDR−H3領域内の配列番号4;または、
b)CDR−H1領域内の配列番号6、CDR−H2領域内の配列番号7およびCDR−H3領域内の配列番号8;
を含んでいる重鎖;
および/または
− 可変ドメインが、
c)CDR−L1領域内の配列番号6、CDR−L2領域内の配列番号7およびCDR−L3領域内の配列番号8;または、
d)CDR−L1領域内の配列番号2、CDR−L2領域内の配列番号3およびCDR−L3領域内の配列番号4、
を含んでいる軽鎖、
を含むモノクローナル抗体を提供する。
【0054】
特定の1実施形態においては、前記抗体の重鎖可変ドメインが、配列番号1または配列番号5として示されているアミノ酸配列を有し、かつ/または、軽鎖可変ドメインが配列番号5または配列番号1として示されているアミノ酸配列を有する。
【0055】
前記抗体は、当該技術分野において周知のあらゆる技術によって生産することができる。特に、前記抗体は、以下で記述するような技術により生産される。
【0056】
1つの実施形態に従うと、本発明のモノクローナル抗体はマウス抗体である。特に、前記マウス抗体は、CNCM寄託番号I−3673の下で入手可能なハイブリドーマから得ることのできるものであってよい。
【0057】
もう1つの実施形態においては、本発明のモノクローナル抗体は、キメラ抗体、好ましくはキメラマウス/ヒト抗体である。特に、前記マウス/ヒトキメラ抗体は、CNCM−I−3673として寄託されたハイブリドーマから得ることのできる抗体の可変ドメインを含み得る。
【0058】
もう1つの実施形態においては、本発明のモノクローナル抗体はヒト化抗体である。特に、前記ヒト化抗体において、可変ドメインは、ヒトアクセプタフレームワーク領域そして任意には、存在する場合ヒト定常ドメイン、そして非ヒトドナーCDR、例えば以上で定義したようなマウスCDR、を含んでいる。
【0059】
本発明はさらに、限定的な意味なくFv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2および二重特異性抗体を含む前記モノクローナル抗体のフラグメント、および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体を提供する。
【0060】
もう1つの態様において、本発明は、可変ドメインが、CDR−1については配列番号2または配列番号6、CDR−2については配列番号3または配列番号7そしてCDR−3については配列番号4または配列番号8から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを含んでいる、免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖に関する。
【0061】
特に本発明は、可変ドメインが、
− CDR−1については配列番号2、CDR−2については配列番号3そしてCDR−3については配列番号4から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDR、または、
− CDR−1については配列番号6、CDR−2については配列番号7そしてCDR−3については配列番号8から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDR、
を含んでいる免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖を提供する。
【0062】
好ましい実施形態においては、本発明は、可変ドメインが、
− CDR−1については配列番号2、CDR−2については配列番号3そしてCDR−3については配列番号4;または
− CDR−1については配列番号6、CDR−2については配列番号7そしてCDR−3については配列番号8、
を含んでいる免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖に関する。
【0063】
1実施形態に従うと、本発明に従った免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖は、配列番号1または配列番号5として示されたアミノ酸配列を有する可変ドメインを含む。
【0064】
1実施形態においては、本発明に従った免疫グロブリン鎖は重鎖または軽鎖である。
【0065】
本発明は、さらに、本発明に従った免疫グロブリン重鎖または軽鎖を含む免疫グロブリンに関する。特に、免疫グロブリンは、以上で定義づけされたような重鎖または軽鎖を含んでいてよい。
【0066】
もう1つの態様においては、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8から成る群の中から選択された配列を有するポリペプチドに関する。
【0067】
本発明の抗体およびポリペプチドは、単離された(例えば精製された)形態で使用され得るか、または膜または脂質小胞(例えばリポソーム)といったような、ベクター内に収納され得る。
【0068】
核酸、ベクターおよび組換え型宿主細胞
本発明のさらなる目的は、本発明のモノクローナル抗体またはそのフラグメントをコードする核酸配列に関する。
【0069】
特定の実施形態においては、本発明は、mAb12G4のVHドメインまたはmAb12G4のVLドメインをコードする核酸配列に関する。
【0070】
標準的には、前記核酸は、プラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージまたはウイルスベクターといったような適切な任意のベクターの中に内含され得るDNAまたはRNA分子である。
【0071】
「ベクター」、「クローニングベクター」および「発現ベクター」という用語は、宿主を形質転換し、導入された配列の発現(例えば転写および翻訳)を促進するべく、DNAまたはRNA配列(例えば外来遺伝子)を宿主細胞内に導入することのできるビヒクルを意味する。
【0072】
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明の核酸を含むベクターに関する。
【0073】
かかるベクターには、対象に投与した時点で前記ポリペプチドの発現をひき起こすかまたは導くためのプロモータ、エンハンサ、ターミネータなどといった調節要素が含まれてよい。動物の細胞のための発現ベクターの中で使用されるプロモータおよびエンハンサの例としては、SV40の早期プロモータおよびエンハンサ(Mizukami T.ら、1987年)、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモータおよびエンハンサ(Kuwana Yら、1987年)、免疫グロブリンH鎖のプロモータ(Mason JOら、1985年)およびエンハンサ(Gillies SDら、1983年)などが含まれる。
【0074】
ヒト抗体C領域をコードする遺伝子を挿入し発現することができるかぎりにおいて、動物細胞用の任意の発現ベクターを使用することができる。適切なベクターの例としては、pAGE107(Miyaji Hら、1990年)、pAGE103(Mizukami Tら、1987年)、pHSG274(Brady Gら、1984年)、pKCR(O’Ηare Kら、1981年)、pSG1ベータd2−4−(Miyaji Hら、1990年)などが含まれる。
【0075】
プラスミドのその他の例としては、複製起点を含む複製プラスミドまたは例えばpUC、pcDNA、pBRなどといったような組込みプラスミドが含まれる。
【0076】
ウイルスベクターのその他の例としては、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびAAVベクターが含まれる。かかる組換え型ウイルスは、パッケージング細胞をトランスフェクションすること、またはヘルパープラスミドまたはウイルスでの過渡的トランスフェクションといったような当該技術分野において公知の技術により生産してよい。ウイルスパッケージング細胞の標準的な例としては、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv細胞、293細胞などが含まれる。かかる複製欠損組換え型ウイルスを生産するための詳細なプロトコルは、例えば国際公開第95/14785号(WO95/14785)、国際公開第96/22378号(WO96/22378)、米国特許第5,882,877号(US5,882,877)、米国特許第6,013,516号(US6,013,516)、米国特許第4,861,719号(US4,861,719)、米国特許第5,278,056号(US5,278,056)および国際公開第94/19478号(WO94/19478)の中に見出すことができる。
【0077】
本発明のさらなる目的は、本発明に従った核酸および/またはベクターによるトランスフェクション、感染または形質転換を受けた細胞に関する。
【0078】
「形質転換」という用語は、所望の物質、標準的には導入された遺伝子または配列によりコードされたタンパク質または酵素を生産するため、導入された遺伝子または配列を宿主細胞で発現することになるような形での、宿主細胞への「外来性」(すなわち外因性または細胞外)遺伝子、DNAまたはRNA配列の導入を意味する。導入されたDNAまたはRNAを受容するまたは発現する宿主細胞は、「形質転換」されたものである。
【0079】
本発明の核酸は、適切な発現系において本発明の組換え型ポリペプチドを生産するために、使用可能である。「発現系」という用語は、ベクターが担持し宿主細胞に導入される外来性DNAによりコードされたタンパク質の発現などのための、適切な条件下にある宿主細胞および相容性あるベクターを意味する。
【0080】
一般的な発現系としては、E.coli宿主細胞およびプラスミドベクター、昆虫宿主細胞およびバキュロウイルスベクター、そして哺乳動物宿主細胞およびベクターが含まれる。宿主細胞のその他の例としては、限定的な意味なく、原核細胞(例えば細菌)および真核細胞(例えば酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)が含まれる。特定の例としては、E.coli、KluyveromycesまたはSaccharomyces酵母、哺乳動物細胞系(例えば例えばベロ細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞など)ならびに初代または樹立哺乳動物細胞培養(例えば例えばリンパ芽球、線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、含脂肪細胞などから産生されたもの)が含まれる。例としては同様に、マウスSP2/0−Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63−Ag8,653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下「DHFR遺伝子」と呼ぶ)が欠如しているCHO細胞(Urlaub Gら、1980年)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、以下「YB2/0細胞」と呼ぶ)なども含まれる。YB2/0細胞内で発現された場合キメラまたはヒト化抗体のADCC活性が増強されることから、この細胞が好まれる。
【0081】
本発明は同様に、本発明に従って本発明の抗体またはポリペプチドを発現する組換え型宿主細胞を生産する方法において、(i)上述のとおりの組換え型核酸またはベクターをインビトロかまたはエクスビボでコンピーテント宿主細胞内に導入するステップ;(ii)得られた組換え型宿主細胞をインビトロまたはエクスビボで培養するステップおよび(iii)任意には前記抗体またはポリペプチドを発現かつ/または分泌する細胞を選択するステップから成るステップを含む方法にも関する。かかる組換え型宿主細胞は、本発明の抗体およびポリペプチドの生産のために使用可能である。
【0082】
本発明の抗体の生産方法:
本発明の抗体およびポリペプチドは、限定的な意味なく任意の化学的、生物学的、遺伝子的または酵素的技術といった当該技術分野において公知のあらゆる技術を単独でまたは組合わせて用いることで生産可能である。
【0083】
当業者であれば、所望の配列のアミノ酸配列がわかっていることから、ポリペプチドの生産のための標準的技術によって前記抗体またはポリペプチドを容易に生産できる。例えば、周知の固相方法を用いて、好ましくは市販のペプチド合成器具(例えばカリフォルニア州フォスター市のApplied Biosystemsによって製造されているものなど)を用いて、かつメーカーの指示事項に従って、これらを合成することができる。代替的には、本発明の抗体およびポリペプチドは、当該技術分野において周知の通り、組換え型DNA技術によって合成可能である。例えば、これらのフラグメントは、所望の(ポリ)ペプチドをコードするDNA配列を発現ベクター内に取込み、周知の技術を用いて後日そこからベクターを単離できる所望のポリペプチドを発現する適当な真核または原核宿主の中にかかるベクターを導入した後に、DNA発現産物として得ることができる。
【0084】
特に、本発明はさらに、本発明の抗体またはポリペプチドを生産する方法において、(i)前記抗体またはポリペプチドの発現を可能にするのに適した条件下で本発明に従った形質転換された宿主細胞を培養するステップ;および(ii)発現された抗体またはポリペプチドを回収するステップから成るステップを含む方法に関する。
【0085】
本発明の抗体およびポリペプチドは、例えばタンパク質A−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析法または親和性クロマトグラフィといったような従来の免疫グロブリン精製手順によって培地から適切に分離される。
【0086】
特定の実施形態においては、本発明のヒトキメラ抗体は、前述の通りVLおよびVHドメインをコードする核配列を得ること、ヒト抗体CHおよびヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する動物細胞のための発現ベクターの中に挿入することでヒトキメラ抗体発現ベクターを構築すること、そして動物の細胞内に発現ベクターを導入することでコーディング配列を発現すること、によって生産可能である。
【0087】
ヒトキメラ抗体のCHドメインとしては、それはヒト免疫グロブリンに属するあらゆる領域であってよいが、IgGクラスのものが適切であり、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4といったようなIgGクラスに属するサブクラスのうちのいずれかを使用することもできる。同様に、ヒトキメラ抗体のCLとしては、それは、Igに属するあらゆる領域であってよく、カッパクラスまたはラムダクラスのものを使用することができる。
【0088】
キメラ抗体を生産するための方法には、従来の組換え型DNAが関与しており、遺伝子トランスフェクション技術が当該技術分野において周知である(Morrison SL.ら、(1984年)および米国特許第5,202,238(US5,202,238);および米国特許第5,204,244号(US5,204,244)といった特許文献を参照のこと)。
【0089】
本発明のヒト化抗体は、前述の通りCDRドメインをコードする核酸配列を獲得すること、(i)ヒト抗体のものと同一の重鎖定常領域および(ii)ヒト抗体のものと同一の軽鎖定常領域をコードする遺伝子を有する動物細胞のための発現ベクター内に挿入することでヒト化抗体発現ベクターを構築すること、そして動物細胞内発現ベクターを導入することにより遺伝子を発現することによって生産され得る。
【0090】
ヒト化抗体発現ベクターは、抗体重鎖をコードする遺伝子と抗体軽鎖をコードする遺伝子が別々のベクター上で存在しているタイプのものであってもよいし、または両方の遺伝子が同じベクター上に存在するタイプ(タンデム型)のものであってもよい。ヒト化抗体発現ベクターの構築の容易さ、動物細胞内への導入の容易さ、および動物細胞内の抗体HおよびL鎖の発現レベル間の平衡に関しては、タンデム型のヒト化抗体発現ベクターが好適である(Shitara Kら、1994年)。タンデム型のヒト化抗体発現ベクターの例としては、pKANTEX93(国際公開第97/10354(WO97/10354))、pEE18などが含まれる。
【0091】
従来の組換え型DNAおよび遺伝子トランスフェクション技術に基づくヒト化抗体を生産するための方法は、当該技術分野において周知である(たとえばRiechmann L.ら、1988年;Neuberger MS.ら、1985年を参照)。抗体は、例えばCDR移植(欧州特許第239,400号(EP239,400);PCT出願国際公開第91/09967(WO91/09967);米国特許第5,225,539号(U.S.Pat.Nos.5,225,539);第5,530,101号(5,530,101);および第5,585,089号(5,585,089))、ベニアリングまたはリサーフェーシング(veneering or resurfacing)(欧州特許第592,106号(EP592,106);欧州特許第519,596号(EP519,596);Padlan EA(1991年);Studnicka GMら(1994年);Roguska MA.ら(1994年))、およびチェインシャフリング(chain shuffling)(米国特許第5,565,332号(U.S. Pat. No.5,565,332)を含む当該技術分野において公知のさまざまな技術を用いてヒト化可能である。かかる抗体の調製のための一般的な組換え型DNA技術も、同様に公知である(欧州特許出願第125023号(EP125023)および国際特許出願第96/02576号(WO96/02576)を参照)。
【0092】
本発明のFabは、プロテアーゼ、パパインを用いてヒトAMHR−IIと特異的に反応する抗体を処理することによって得ることができる。同様に、Fabは、原核生物発現系または真核生物発現系のためのベクターの中に抗体のFabをコードするDNAを挿入し、ベクターを(適宜)原核生物または真核生物内に導入してFabを発現することによって生産可能である。
【0093】
本発明のF(ab)’2は、プロテアーゼ、ペプシンを用いてAMHR−IIと特異的に反応する抗体を処理することによって得ることができる。同様に、チオエーテル結合またはジスルフィド結合を介して以下で記述するFab’を結合することによって、F(ab’)2を生産することもできる。
【0094】
本発明のFab’は、還元剤ジチオトレイトールを用いてhAMHR−IIと特異的に反応するF(ab’)2を処理することによって得ることができる。同様に、Fab’は、原核生物のための発現ベクターまたは原核細胞のための発現ベクターの中に抗体のFab’フラグメントをコードするDNAを挿入すること、そして(適宜)原核生物または真核生物内にベクターを導入してその発現を実施することによって得ることができる。
【0095】
本発明のscFvは、前述した通りVHおよびVLドメインをコードするcDNAを獲得すること、scFvをコードするDNAを構築すること、DNAを原核生物用の発現ベクターまたは真核生物用の発現ベクターの中に挿入すること、そして次に発現ベクターを(適宜)原核生物または真核生物内に導入してscFvを発現することによって生産可能である。ヒト化scFvフラグメントを生成するためには、ドナーscFvフラグメントから相補性決定領域(CDR)を選択し、既知の3次元構造のヒトscFvフラグメントフレームワーク上にそれらを移植することが関与する、CDR移植と呼ばれる周知の技術を使用してもよい(たとえば国際公開第98/45322号(W098/45322);第87/02671号(WO87/02671);米国特許第5,859,205号(US5,859,205);米国特許第5,585,089号(US5,585,089);米国特許第4,816,567号(US4.816,567,);欧州特許第0173494号(EP0173494))。
【0096】
本発明の抗体の修飾
本書で記述されている抗体のアミノ酸配列修飾(単複)が企図されている。例えば、抗体の結合親和性および/またはその他の生物学的特性を改善することが望ましいかもしれない。ヒト抗体のVHおよびVLのFR内に非ヒト動物由来の抗体のVHおよびVL内のCDRのみを単に移植するだけでヒト化抗体を生産する場合に、非ヒト動物に由来する原初の抗体のものと比べて抗原結合抗体は削減される、ということは公知である。CDR内のみならずFR内の非ヒト抗体のVHおよびVLの複数のアミノ酸残基が、抗原結合活性と直接的または間接的に結びつくと考えられている。かくして、ヒト抗体のVHおよびVLのFRに由来する異なるアミノ酸残基でこれらのアミノ酸残基を置換することによって、結合活性は削減されるものと思われる。この問題を解決するためには、ヒトCDRが移植された抗体において、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、抗体に対する結合と直接結びつくか、またはCDRのアミノ酸残基と相互作用するか、または抗体の3次元構造を維持し、かつ抗原に対する結合と直接結びつくアミノ酸残基を同定する試みをなさなければならない。削減された抗原結合活性は、非ヒト動物に由来する当初の抗体のアミノ酸残基で同定されたアミノ酸を交換することによって増大させることができると考えられる。
【0097】
本発明の抗体の構造およびそれらをコードするDNA配列内で、修飾および変更を行ない、なおも、望ましい特性をもつ抗体およびポリペプチドをコードする機能的分子を得ることができる。
【0098】
アミノ酸の変更は、表2に従ってDNA配列内のコドンを変更することによって達成可能である。
【0099】
【表2】

【0100】
ポリペプチドのアミノ酸配列の変更を行なう際には、アミノ酸のヒドロパシー指数を考慮してよい。タンパク質に相互作用的生物学的機能を付与する上でのヒドロパシー指数の重要性は、当該技術分野において一般的に理解されている。アミノ酸の相対的ヒドロパシ特性が、結果として得られタンパク質の二次構造に寄与し、この二次構造自体が例えば酵素、基質、レセプタ、DNA、抗体、抗原などといったその他の分子とタンパク質の相互作用を定義づけする、ということが受入れられている。各々のアミノ酸には、その疎水性および電荷特性に基づいて1つのヒドロパシー指数が割当てられており、これらは以下の通りである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリンン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸塩(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸塩(<RTI3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン。
【0101】
本発明のさらなる目的は同様に、本発明の抗体の機能−保存的変異体をも包含する。
【0102】
例えば、一部のアミノ酸は、大きな活性損失なくタンパク質構造内のその他のアミノ酸によって置換され得る。1つのタンパク質の相互作用的能力および性質はそのタンパク質の生物学的機能活性を定義づけることから、1つのタンパク質配列内そして当然のことながらそのDNAコーディング配列内でいくつかのアミノ酸置換を行ない、それでもなお同様の物性をもつタンパク質を得ることが可能である。かくして、本発明の抗体配列内または前記ポリペプチドをコードする対応するDNA配列内で、それらの生物活性を著しく喪失することなく、さまざまな変更を行なうことができる、ということが企図されている。
【0103】
当該技術分野においては、一部のアミノ酸が類似のヒドロパシー指数またはスコアをもつその他のアミノ酸により置換され、なおも類似の生物活性をもつタンパク質を結果としてもたらす、すなわちなおも生物学的機能が等価であるタンパク質を得ることができる、ということは公知である。
【0104】
したがって、以上で概略的に記された通り、アミノ酸置換は一般に、例えばその疎水性、親水性、電荷、サイズなどといったアミノ酸側鎖置換基の相対的類似性に基づいている。上述の特性のうちのさまざまなものを考慮する例示的置換は、当業者にとっては周知であり、アルギニンとリジン;グルタミン酸塩とアスパラギン酸塩;セリンとトレオニン;グルタミンとアスパラギン;およびバリン、ロイシンとイソロイシンが含まれる。
【0105】
例えば、抗原の抗原−依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)および/または補体依存性細胞毒性(CDC)を増強するために、エフェクタ機能に関して本発明の抗体を修飾することも望ましいかもしれない。これは、抗体のFc領域内に1つ以上のアミノ酸置換を導入することによって達成可能である。代替的にまたは付加的に、システイン残基(単複)をFc領域内に導入し、かくしてこの領域内での鎖間ジスルフィド結合形成を可能にしてもよい。このようにして生成されたホモ二量体抗体は、改善された内在化能力および/または増大した補体媒介型細胞殺滅および/または抗体依存性細胞型細胞障害(ADCC)を有し得る(Caron PC.ら、1992年;およびShopes B.1992年)。
【0106】
本発明の抗体のアミノ酸修飾のもう1つのタイプは、抗体の原初のグリコシル化パターンを改変するために有用であり得る。
【0107】
「改変する」という用語は、抗体の中に見出される1つ以上の炭水化物部分を削除することおよび/または抗体内に存在しない1つ以上のグリコシル化部位を添加することを意味する。
【0108】
抗体のグリコシル化は、標準的にN−リンクである。「N−リンク」というのは、アスパラギン残基の側鎖に対する炭水化物部分の付着を意味する。Xがプロリンを除く任意のアミノ酸であるトリペプチド配列アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニンは、アスパラギン側鎖に対する炭水化物部分の酵素付着のための認識配列である。かくして、ポリペプチド内のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を作り出す。抗体に対するグリコシル化部位の添加は、それが(N−リンクグリコシル化部位のために)上述のトリペプチド配列のうちの1つ以上のものを含んでいるような形でアミノ酸配列を改変させることによってうまく達成される。
【0109】
もう1つのタイプの共有結合修飾には、抗体に対して化学的にまたは酵素によりグリコシドをカップリングすることが関与する。これらの手順は、NまたはOリンクのグリコシル化についてのグリコシル化能力をもつ宿主細胞内での抗体の産生を必要としないという点において有利である。使用されるカップリング様式に応じて、糖(単複)を(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインのものといったような遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、トレオニン、オルヒドロキシプロリンのものといったような遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンのものといったような芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基に対し付着させてよい。例えば、かかる方法は国際公開第87/05330号(WO87/05330)の中で記述されている。
【0110】
抗体上に存在するあらゆる炭水化物部分の除去は、化学的かまたは酵素的に達成可能である。化学的脱グリコシル化には、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または等価の化合物に対する抗体の曝露が必要である。この処理の結果、抗体を無傷のままに残しながら、リンクする糖以外の大部分または全ての糖が分割されることになる(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)。化学的脱グリコシル化については、Sojahr H.ら(1987年)およびEdge,AS.ら(1981年)により記述されている。抗体上の炭水化物部分の酵素分割は、Thotakura,NR.ら(1987年)により記述されているように、さまざまなエンドおよびエキソグリコシダーゼを使用することによって達成可能である。
【0111】
抗体のもう1つのタイプの共有結合修飾には、米国特許第4,640,835号(US Patent Nos.4,640,835);第4,496,689号(4,496,689);第4,301,144号(4,301,144);第4,670,417号(4,670,417);第4,791,192号(4,791,192)または第4,179,337号(4,179,337)で示されている要領での例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンといったようなさまざまな非タンパク性重合体の1つに抗体を連結させることが含まれる。
【0112】
免疫抱合体
本発明は、細胞毒性剤または成長阻害剤といったような抗癌剤に抱合された本発明の抗体を含む免疫抱合体に関する。
【0113】
本書で使用する「成長阻害剤」というのは、細胞、特に卵巣癌細胞の成長をインビトロまたはインビボで阻害する化合物または組成物を意味する。成長阻害剤の例としては、G1停止およびM期停止を誘発する作用物質といったような、細胞周期の進行を遮断する作用物質が含まれる。従来のM期ブロッカーにはビンカ(ビングリスチンおよびビンブラスチン)、タキサンおよびトポイソメラーゼII阻害剤例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシドおよびブレオマイシンが含まれる。G1を停止させるこれらの作用物質は同様に、S期停止、例えばDNAアルキル化剤例えばタモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセートおよび5−フルオロウラシルといったDNAアルキル化剤にも波及する。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、両方ともイチイから誘導された抗癌薬である。ヨーロッパイチイから誘導されたドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone−Poulenc Rorer)は、パクリタキセルの半剛性類似体である(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb)。パクリタキセルおよびドセタキセルは、脱重合を防止して細胞内の有糸分裂を結果として阻害することにより、チュブリン二量体からの微小管の集合を促進し微小管を安定化させる。
【0114】
本書で使用されている「細胞毒性剤」という用語は、細胞の機能を阻害または防止しかつ/または細胞の破壊をひき起こす物質を意味する。この用語は、放射性同位体(例えばAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、およびLuの放射性同位元素)、化学療法剤、たとえばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたはその他の挿入剤、酵素およびそのフラグメント例えば核酸分解酵素、抗生物質および毒素例えば小分子毒素または、そのフラグメントおよび/または変異体を含めた細菌、真菌、植物または動物由来の酵素的に活性な毒素、例えばゼロニン、リシン、サポリンおよび以下で開示されているさまざまな抗腫瘍または抗癌剤を内含するように意図されている。その他の細胞毒性剤が以下で記述されている。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊をひき起こす。
【0115】
細胞毒性剤または成長阻害剤と本発明の抗体の抱合は、限定的な意味なくN−スクシンイミジル(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、bis−アジド化合物(例えばbis(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、bis−ジアゾニウム誘導体(例えばbis−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトリエン2,6ジイソシアネート)およびbis−活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンを含むさまざまな2機能性タンパク質カップリング剤を用いて行なうことができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら(1987年)で記述されている通りに調製され得る。炭素標識された1−イソチオシアナトベンジルメチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、抗体に対する放射性ヌクレオチドの抱合のための例示的キレート剤である(国際公開第94/11026号(WO94/11026))。
【0116】
リンカーは、細胞内の細胞毒性剤または成長阻害剤の放出を容易にする「分割可能なリンカー」であってよい。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ感応性リンカー、光解離性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(例えば米国特許第5,208,020号(U.S.Patent No.5,208,020)参照)を使用してよい。
【0117】
代替的には、組換え型技術またはペプチド合成により、抗体および細胞毒性剤または成長阻害剤を含む融合タンパク質を作ることができる。DNAの長さは、抱合体の所望の物性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により分離されているかまたは互いに隣接している抱合体の2つの部分をコードするそれぞれの領域を含んでいてよい。
【0118】
本発明の抗体は同様に、プロドラッグ(例えば、ペプチジル系化学療法剤、国際公開第81/01145号(WO81/01145)参照)を活性抗癌薬(例えば国際公開第88/07378号(WO88/07378)および米国特許第4,975,278号(U.S.Patent No.4,975,278)参照)へと転換させるプロドラッグ活性化酵素に抗体を抱合させることによって、依存性酵素媒介型プロドラッグ療法において使用してもよい。ADEPTに有用な免疫抱合体の酵素構成要素には、より活性な細胞毒性形態へと転換させるような形でプロドラッグに対し作用する能力をもつあらゆる酵素が含まれる。本発明の方法において有用である酵素には、リン酸塩含有プロドラッグを遊離薬物へと転換するために有用であるアルカリホスファターゼ;リン酸塩含有プロドラッグを遊離薬物へと転換するために有用なアリールスルファターゼ;非毒性フルオロシトシンを抗癌薬、5−フルオロウラシルへと転換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物へと転換させるために有用であるプロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、テルモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(例えばカテプシンBおよびL);D−アミノ酸置換体を含有するプロドラッグを転換するのに有用なD−アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化プロドラッグを遊離薬物へと転換するために有用なO−ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼといったような炭水化物分割酵素;P−ラクタムで誘導体化された薬物を遊離薬物に転換するのに有用なP−ラクタマーゼそして、それぞれフェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基でそのアミン窒素において誘導体化された薬物を遊離薬物へと転換するのに有用なペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼといったようなペニシリンアミダーゼが含まれるが、これらに限定されるわけではない。酵素は、以上で論述されたヘテロ二官能性架橋試薬の使用といったような当該技術分野において周知の技術により抗体に共有結合され得る。
【0119】
診断方法および使用:
本発明のさらなる目的は、AMHR−II発現と結びつけられる癌疾患を診断しかつ/または監視するための本発明の抗体の使用に関する。AMHR−II発現と結びつけられる癌疾患には、標準的に卵巣癌が含まれる。好ましい実施形態においては、本発明の抗体は、顆粒膜細胞腫瘍および上皮性卵巣癌を含めた卵巣癌を診断するために有用である。
【0120】
好ましい実施形態においては、本発明の抗体は、検出可能な分子または物質、例えば螢光性分子、放射性分子または当該技術分野において既知のその他のあらゆる標識を用いて標識されてよい。一般にシグナルを(直接的または間接的に)提供する標識が、当該技術分野において公知である。
【0121】
本書で使用されている、抗体に関する「標識された」という用語は、抗体に対して放射性作用物質または蛍光プローブ(例えばフルオロセインイソチオシアネート(FITC)またはフィコエリスリン(PE)またはインドシアニン(Cy5))といったような検出可能な物質をカップリング(すなわち物理的連結)することによる抗体の直接的標識、ならびに検出可能な物質との反応性による抗体の間接的標識を包含するように意図されている。
【0122】
本発明の抗体を、当該技術分野にとって公知のあらゆる方法により放射性分子で標識してよい。例えば、放射性分子には、I123、1124、In111、Re186、Re188といったようなシンチグラフ検査用の放射性原子が含まれるが、これらに限定されるわけではない。本発明の抗体は同様に、イオジン−123、イオジン−131、インジウム−III、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄といったような核磁気共鳴(NMR)映像法(磁気共鳴映像法mriとしても知られている)のためのスピン標識で標識してもよい。
【0123】
「生体試料」というのは、対象から得られたさまざまな試料タイプを包含し、診断または監視検定において使用できる。生体試料には生物由来の血液およびその他の液体試料、固体組織試料、例えば生検標本または組織培養またはそれらに由来する細胞およびその後代が含まれるがそれらに限定されるわけではない。例えば、生体試料には、AMHR−II発現と結びつけられる癌疾患の疑いがある個体から、そして好ましい実施形態においては卵巣から収集された組織試料から得た細胞が含まれる。したがって、生体試料は、臨床試料、培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生体液および組織試料を包含する。
【0124】
本発明の抗体は、AMHR−II発現と結びつけられる癌疾患の病期分類(例えば放射性イメージングにおける)のために有用であり得る。例えば、本発明の抗体は、卵巣癌を病期分類するために有用であり得る。これらは、CAI25、HE4、およびメソテリンを含む(ただしそれらに限定されるわけではない)その他の卵巣癌マーカーと組合せた形でかまたは単独で使用可能である。
【0125】
本書で使用される「検出」という用語は、対照を基準にしたまたはこれを基準としない定性的および/または定量的検出(測定レベル)を含む。
【0126】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明の抗体を用いて対象から細胞上のAMHR−IIを検出することにより対象の体内のAMHR−II発現に結びつけられる癌疾患を診断する方法である。特にこの診断方法は、
(a)AMHR−II発現と結びつけられる癌疾患を患う可能性の高い対象の生体試料と本発明に従った抗体を、この抗体がAMHR−IIを発現する生体試料の細胞と錯体を形成するのに充分な条件で接触させるステップ;
(b)前記錯体を検出しかつ/または定量化し、かくして前記錯体の検出が、AMHR−IIの発現に結びつけられた癌疾患を標示するステップ;
から成るステップを含み得る。
【0127】
癌疾患を監視するためには、本発明に従った診断方法を異なる時間的間隔で反復して、試料に結合する抗体が増加するかまたは減少するかを見極め、かくして癌疾患が進行しているか退行しているかを判定することができる。
【0128】
治療方法および使用
本発明の抗体、フラグメントまたは免疫抱合体は、ヒトAMHR−IIの発現と結びつけられるあらゆる癌疾患を治療するのに有用であるかもしれない。本発明の抗体は、単独で、または任意の適切な作用物質と組合せた形で使用可能である。
【0129】
治療用モノクローナル抗体が、抗体によって特異的に認識される抗原を担持する細胞の枯渇を導き得るということは周知である。この枯渇は、少なくとも3つの機序、すなわち抗体媒介型細胞毒性(ADCC)、補体依存性溶解および抗体によりターゲティングされた抗原を介して与えられたシグナルを通した腫瘍成長の直接的抗腫瘍阻害、を通して媒介され得る。
【0130】
「補体依存性細胞毒性」または「CDC」というのは、補体の存在下での標的細胞の分解を意味する。従来の補体経路の活性化は、その同種抗原に結合した抗体に対する補体系の第1の構成要素の結合によって開始される。補体の活性化を査定するためには、例えばGazzano−Santoroら(1997年)の中で記述されている通りのCDC検定を実施することができる。
【0131】
「抗体依存性細胞媒介型細胞毒性」つまり「ADCC」は、或る種の細胞毒性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するFcレセプタ(FcRs)上に結合した分泌された抗体が、これらの細胞毒性エフェクタ細胞の抗原担持標的細胞に対する特異的結合そしてその後の標的細胞殺滅を可能にする、細胞毒性の1つの形を意味する。問題の分子のADCC活性を査定するためには、米国特許第5,500,362号(U.S.Patent No.5,500,362)または第5,821,337号(5,821,337)の中で記述されているもののようなインビトロADCC検定を実施してよい。
【0132】
もう1つの実施形態においては、本発明の抗体は、前述の通りの成長阻害剤、細胞毒性剤またはプロドラッグ活性化酵素に抱合されてよい。本発明の抗体は実際、前記成長阻害剤、細胞毒性剤またはプロドラッグを、AMHR−IIを発現する腫瘍細胞にターゲティングするために有用であり得る。
【0133】
かくして、本発明の1つの目的は、AMHR−IIの発現と結びつけられる癌疾患を治療するための方法において、治療上有効な量の本発明の抗体、フラグメントまたは免疫抱合体を、それを必要としている対象に対して投与するステップを含む方法に関する。
【0134】
ヒトAMHR−IIの発現に結びつけられる癌疾患は、標準的には卵巣癌を含む。好ましい実施形態においては、本発明の抗体は、顆粒膜細胞腫瘍および上皮性卵巣癌を含む卵巣癌を治療するために有用である。
【0135】
本発明に関しては、本書で使用されている「治療する」または「治療」という用語は、かかる用語が適用される障害または身体条件またはかかる障害または身体条件の1つ以上の症候群を逆行させる、軽減させる、その進行を阻害するまたはそれを予防することを意味する。本書に使用された通りの「卵巣癌を治療する」という用語は、卵巣癌細胞の成長の阻害を意味する。好ましくはかかる治療は、同様に、腫瘍成長の退行すなわち測定可能な腫瘍のサイズの減少も導く。最も好ましくは、かかる治療は、腫瘍の完全な退行を導く。
【0136】
本発明に従うと、「患者」または「それを必要とする患者」という用語は、AMHR−IIの発現を伴う癌疾患に罹患したかまたは罹患する確率の高いヒトまたは非ヒト哺乳動物を意図している。
【0137】
本発明のポリペプチドの「治療上有効な量」というのは、あらゆる医療的処置に適用可能な適正な損益比で前記癌疾患を治療するのに充分な量の抗体を意味する。しかしながら、本発明の抗体および組成物の合計一日使用量は、健全な医療上の判断の範囲内で担当医により決定されるというように理解されるものとする。任意の特定の患者のための特定の治療上有効な用量レベルは、治療対象の障害およびこの障害の重症度;利用される特定の抗体の活性;利用される特定の組成物、患者の年令、体重、全身的健康状態、性別および食生活;利用される特定の抗体の投与時間、投与経路、および排泄速度;治療の持続期間;利用される特定のポリペプチドと組合わせてまたはそれと同時に使用される薬物;そして医療の分野で周知の類似の要因を含めた、さまざまな要因により左右されるものである。例えば、所望の治療的効果を達成するために必要とされるものよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を漸進的に増加させることは、当該技術分野の技能の範囲内において周知である。
【0138】
本発明のもう1つの目的は、AMHR−IIの発現と結びつけられる癌疾患を治療するように意図された薬剤の製造のための本発明の少なくとも1つの抗体、フラグメントまたは免疫抱合体の使用に関する。
【0139】
本発明の抗体は、卵巣癌を治療するためのその他のあらゆる治療的戦略(例えば外部放射線治療、化学療法またはサイトカイン)と組合せた形で使用可能である。
【0140】
薬学組成物
本発明のポリペプチド、核酸または抱合体は、薬学的に受容可能な賦形剤そして任意には持続放出マトリクス例えば生分解性重合体と組合せて治療用組成物を形成することができる。
【0141】
「薬学的に」または「薬学的に受容可能な」という用語は、適宜哺乳動物特にヒトに投与した場合に副作用、アレルギー反応またはその他の有害な反応を生成しない分子的実体および組成物を意味する。薬学的に受容可能な担体または賦形剤というのは、あらゆるタイプの非毒性固体、半固体または液体充填剤、希釈剤、カプセル化材料または処方助剤を意味する。
【0142】
薬学組成物の形態、投与経路、投薬量および投薬計画は、当然のことながら、治療すべき身体条件、疾病の重症度、患者の年令、体重および性別などによって左右される。
【0143】
本発明の薬学組成物は、局所、経口、非経口、鼻腔内、静脈内、筋内、皮下または眼球内投与など向けに処方可能である。
【0144】
好ましくは、薬学組成物は、注射可能な処方物用として薬学的に受容可能であるビヒクルを含有している。これらは、特に等張で無菌の食塩溶液(リン酸一ナトリウムまたは二ナトリウム、塩酸ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウムなどまたはかかる塩の混合物)または、場合に応じて滅菌水または生理食塩水を付加した時点で注射溶液を構成することのできる乾燥、特に凍結乾燥組成物であってよい。
【0145】
投与のために使用される用量はさまざまなパラメータの一関数として、特に、使用される投与様式、関連する病理また代替的には所望の治療持続期間の関数として適合させることができる。
【0146】
薬学組成物を調製するためには、有効量の抗体を薬学的に受容可能な担体または水性媒質中に溶解または分散させることができる。
【0147】
注射用に適した薬学的形態には、無菌水溶液または分散;ゴマ油、ピーナッツ油または水性プロピレングリコールを含む処方物;および無菌注射溶液または分散の即席調製用無菌粉末が含まれる。全てのケースで、この形態は無菌でなくてはならず、容易に注入可能である程度に流動的でなくてはならない。それは、製造および貯蔵条件下で安定していなければならず、細菌および真菌といったような微生物の汚染作用に対し保護されていなければならない。
【0148】
遊離塩基または薬学的に受容可能な塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースといったような界面活性剤と適切に混合された水の中で調製可能である。グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびその混合物の中および油の中で分散を調製することもできる。通常の貯蔵および使用条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を防ぐための防腐剤を含有している。
【0149】
本発明の抗体は、中性または塩形態で組成物の形に処方され得る。薬学的に受容可能な塩としては、(タンパク質の遊離アミノ基で形成された)酸付加塩、および、無機酸例えば塩酸またはリン酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などといった有機酸で形成される塩が含まれる。遊離カルボキシル基で形成された塩を、無機塩基例えば水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは第二鉄、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどといった有機塩基から誘導することもできる。
【0150】
担体は同様に、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物および植物油を含有する溶媒または分散媒質でもあり得る。適切な流動性は、例えばレシチンといったコーティングを使用することによって、分散の場合には所要粒子サイズを維持することによって、そして界面活性剤を使用することによって維持できる。微生物の作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。数多くのケースにおいて、例えば糖または塩化ナトリウムといった等張剤を内含することが好ましい。注射用組成物の長時間吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンといったような吸収を遅延させ作用物質を組成物中に使用することでもたらすことができる。
【0151】
無菌注射溶液は、必要に応じて以上で列挙したその他の成分のうちのさまざまなものと共に適切な溶媒中に所要量で活性化合物を取込み、その後ろ過滅菌を行なうことによって調製される。一般に、分散は、塩基性分散媒質および以上で列挙したものからのその他の所要成分を含有する無菌ビヒクル内にさまざまな滅菌済み活性成分を取込むことによって調製される。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分および予め無菌ろ過されたその溶液からの付加的な所望の成分の粉末を生成する真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0152】
極めて急速な浸透を結果としてもたらし小さな腫瘍部域に活性作用物質を高濃度で送達するように溶媒としてのMSDの使用が想定される場合、直接注射のためのより高濃度または極めて高濃度の溶液の調製も企図される。
【0153】
処方時点で、溶液は、投薬量処方と相容性あるやり方でかつ治療上有効な量で投与される。これらの処方物は、上述の注射溶液のタイプといったようなさまざまな剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども同様に利用できる。
【0154】
例えば水溶液の形での非経口投与のためには、この溶液は、必要とあらば適切に緩衝され、液体希釈剤はまず最初に充分な食塩水またはグルコースで等張にされるべきである。これらの特殊な水溶液は、静脈内、筋内、皮下および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、利用できる無菌水性媒質は、本開示に照らして当業者にとって公知のものである。例えば、1投薬量を1mlの等張NaCl溶液中に溶解させ、1000mlの皮下注入流体に添加するかまたは提案された輸液部位において注射することができると思われる(例えば「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」第15版、1035〜1038頁および1570〜1580頁を参照のこと)。治療中の対象の身体条件に応じて、投薬量の幾分かの変動が必然的に発生する。投与を担当する人物は、いかなる場合でも、個々の対象について適切な用量を決定する。
【0155】
本発明の抗体は、治療用混合物内で、1用量あたり約0.0001〜1.0ミリグラムまたは約0.001〜0.1ミリグラムまたは約0.1〜1.0またさらには約10ミリグラム程を含むように処方されてよい。複数回用量を投与することもできる。
【0156】
静脈内または筋内注射といったような非経口投与向けに処方された化合物に加えて、その他の薬学的に受容可能な形態には、例えば、経口投与用の錠剤またはその他の固体;徐放性カプセル;および現在使用されているその他のあらゆる形態が含まれる。
【0157】
或る実施形態においては、宿主細胞内への抗体の導入のために、リポソームおよび/またはナノ粒子の使用が企図されている。リポソームおよび/またはナノ粒子の形成および使用は、当業者にとって公知である。
【0158】
ナノカプセルは一般に、安定した再現可能な形で化合物を封入することができる。細胞内重合体過負荷に起因する副作用を回避するため、かかる超微粒子(0.1μm前後のサイズ)は一般に、インビボで分解され得る重合体を用いて設計されている。これらの必要条件を満たす生分解性ポリアルキル−シアノアクリレートナノ粒子が本発明での使用のために企図されており、かかる粒子は容易に作ることができる。
【0159】
水性媒質中に分散され自然発生的に多重膜同心2層小胞(多重膜小胞(MLV)とも呼ばれる)を形成するリン脂質から、リポソームが形成される。MLVは一般に、25μm〜4μmの直径を有する。MLVの超音波処理は、コア内に水溶液を含有する200〜500Åの範囲内の直径をもつ小さい単膜小胞(SUV)の形成を結果としてもたらす。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度および2価のカチオンの存在により左右される。
【0160】
キット
最後に、本発明は、その少なくとも1つの抗体を含むキットをも提供している。本発明の抗体を収納するキットは、AMHR−II発現を検出するためまたは治療または診断検定において使用される。本発明のキットは、固体支持体例えば組織培養平板またはビーズ(例えばセファロースビーズ)にカップリングされた抗体を収納することができる。例えばELISAまたはウェスタンブロットにおいて、インビトロでAMHR−IIを検出し定量化するための抗体を収納するキットを提供することができる。検出に有用なこのような抗体には、螢光または放射性標識といったような標識が備わっていてよい。
【0161】
以下の図および実施例を考慮して本発明についてさらに例示する。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】所与のVHまたはVκ遺伝子ファミリに対応するシグナルプライマと適切な不変プライマの組合せを用いた、mAb12G4の(A)VHおよび(B)Vκ鎖領域についてのPCR増幅産物を示す。高効率のプライマセットが、VH増幅については450bp産物およびVκ増幅については390bp産物を増幅するはずである。
【図2】mAb12G4のVL領域の核酸およびアミノ酸配列を示す。
【図3】mAb12G4のVH領域の核酸およびアミノ酸配列を示す。
【図4】安定した形でトランスフェクションされたCOV434−plRES−EGFP−AMHR−II1F3細胞系上でのHER2発現(灰色線)およびAMHR−II発現(黒色線)のフローサイトメトリ分析を示す。
【図5】MTS試験により測定されたmAb12G4、非特異的mAb35A7および抗−HER2トラスツズマブおよびFRP5mAbsの、COV434−plRES−EGEP−AMHR−II1F3細胞系統に対するインビトロ抗増殖性効果を示している。2つのうちの1つの代表的実験が示されている。
【図6】無胸腺ヌードマウスの体内のCOV434−AMHRII−1F3異種移植片の成長に対するmAb12G4のインビボ効果の予備調査を示す。腫瘍が1200mmという規定の体積に達するのにかかった時間を用いた適合カプラン−マイヤー曲線。
【図7】COV434−AMHRII−1F3異種移植片の中のAMHR−II発現のウェスタンブロット分析を示す。
【実施例】
【0163】
A.材料と方法:
マウスハイブリドーマからのVHおよびVκ遺伝子のcDNA合成およびPCR増幅:メーカーにより記述されているようにRN easy Miniキット(Qiagen)を用いて5×10個の12G4ハイブリドーマ細胞から全RNAを抽出した。抽出後、全RNA調製物の小さな画分を取り上げて、試料の数量と全RNA収量を決定した。RNAの濃度および純度を確認するために紫外分光法により検査を行なった。全RNAプロファイルを、Agilent 2100生物分析装置(Agilent Technologies,カリフォルニア州パロアルト)を備えたAgilent RNA 6000 Nano Lab Chipaキットを用いて分析して、その数量およびその無欠性を決定した。メーカーにより記述されている通りに、RT−PCR用のSuperscript First−strand合成システム(Invitrogen life Technologies)を用いての280ng(1μl)の全RNAでcDNA合成を実施した。第1−cDNA合成反応は、3’ポリ(A)テールにハイブリッド形成するべくオリゴ(dT)を用いてプライミングした。cDNAは使用するまで−20℃に保った。
【0164】
PCR増幅は、1μlのcDNA合成反応、10μMのdNTP、2μlの10×PCR緩衝液(New England Biolabs、米国マサチューセッツ州ビバリー)を含有する20μlの最終体積でPCR増幅を実施した。それぞれ軽鎖または重鎖定常領域RevCκSallおよびRevCλSallプライマと整合する適切な3’−オリゴヌクレオチドプローブおよびファミリ特異的5’プライマの各グループを用いて、14のVHおよび18のVκPCR反応を設定した。使用されたプライマは、Chardesら(1999年)によって記述されているものである(参考文献の表1および2を参照のこと)。
【0165】
全てVHまたはVκ5’プライマを含有する2つの混合物も同様に設定した。VH13(3609N)遺伝子ファミリに割当てられた唯一の報告済み成員がPC3609の非機能的対立遺伝子であることから、この遺伝子ファミリに特異的なプライマで行なわれたPCR反応はなかった。使用された各プライマの量は、当初10pMであった。反応混合物を5分間94℃まで加熱し、その後、2UのVentDNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を添加し、1時間94℃、1分間55℃、そして2分間72℃の30サイクルで増幅を実施した。72℃で10分間拡張した後、PCR産物を1.5%のアガロースを通して分画し、SYBR Greenで染色した。Vκ増幅用の390bp産物およびVH増幅用の450bp産物を導く5’プライマと3’プライマのセットをこのファミリ特異的PCRスクリーニングから選択した。同じ選択されたプライマを用いた5つの複製を、前述の通りの新たなPCRに付した。PCR増幅されたDNA産物を1.5%の低溶融温度のアガロースゲル(Gibco)上でゲル精製した。
【0166】
増幅されたV遺伝子の直接的ヌクレオチド配列決定;NWG Biotech(ドイツ、ミュンヘン)の標準配列決定反応のためのValue Readサービスを用いて500ngの各PCR産物から、直接的配列決定を実施した。
【0167】
B−結果
任意の免疫グロブリン遺伝子ファミリからのマウス可変領域の効率の良い増幅および直接配列決定方法を用いて、mAb12G4のVHおよびVL領域の配列を決定した(Strohalら、1987年)。簡単に言うと、アミノ酸および/またはヌクレオチド配列の類似性に基づいて、マウスV遺伝子を15VHおよび18Vκ遺伝子ファミリへと分類した。全てのV遺伝子ファミリから免疫グロブリン(Ig)遺伝子を潜在的に増幅しようとして、Strohalらは、各々の重鎖および軽鎖ファミリの比較的保存されたシグナル配列内でハイブリッド形成するリーダープライマの2つの原初のセットを定義した。これらのプライマは、7個の異なるVκおよび5個の異なるVH遺伝子ファミリに属するドメインを含む、9個のマウスモノクローナル抗体(mAbs)からの全長可変領域を増幅し直接配列決定するために彼らの実験所内で日常的に使用されてきたものである。彼らの戦略は、任意のIg遺伝子ファミリからの可変領域の迅速かつ正確な配列決定が可能となり、臨床的に有利なキメラ抗体の設計を容易にするはずである。
【0168】
全RNA分析:全RNAプロファイルを、Agilant 2100生物分析装置を備えたAgilent RNA 6000 Nano Lab Chipaキットを用いて分析して、その数量およびその無欠性を決定した。
【0169】
遺伝子ファミリ特異的シグナルプライマを用いたマウスハイブリドーマ12G4からのV遺伝子のPCR増幅:図1は、所与のVHまたはVκ遺伝子ファミリに対応するシグナルプライマと適切な定常プライマの組合せを用いた、mAb12G4の(A)VHおよび(B)Vκ鎖領域についてのPCR増幅産物を示している。高効率のプライマセットが、VH増幅については450bp産物、そしてVκ増幅については390bp産物を増幅するはずである。抗−AMHR−II−mAb12G4(IgG1/K)を分泌するハイブリドーマ細胞のcDNAから、以下のプライマを用いて、予測されたサイズにおける主要なバンドが得られた(図1):
− 重鎖増幅についてはVH1−J558/RevCλSallプライマセット。プライマVH9(VGam3−8)、VH10、VH11、VH12、VH14およびVH15では全く増幅が得られなかった。
− Vκ増幅についてはVκ4/5/RevCκSaIIまたはVκ21/RevCκSaIIプライマセット。
【0170】
増幅産物の直接配列決定に従ったmAb12G4からの可変領域の遺伝子特徴づけ:増幅産物の直接配列決定による組立てられた遺伝子のさらなる分析によって、VH遺伝子が主要VH遺伝子ファミリー(VH1)に属していることが示された。Vκ4/5遺伝子ファミリは、Vκ12G4遺伝子をコードする遺伝子ファミリであるものと判定された。Vκ21プライマで増幅されたVκPCR産物は、原発性MOPC21腫瘍に由来するNS1のような骨髄腫細胞系内で転写された非機能的に再構成されたカッパ軽鎖に対応する(Chardesら、1999年)。各遺伝子ファミリの内部で、最も近い生殖細胞遺伝子を、IMGTデータベースを用いて配列決定された可変領域について同定した。VLおよびVH領域の配列を、それぞれ図2および3に示す。
【0171】
実施例2:
材料
モノクローナル抗体:
抗−AMHR−IImAb12G4:細菌内で発現されHis−tag融合タンパク質として精製されたヒトAMHR−II(ECD−hAMHR−II)の組換え型細胞外ドメイン(Gouedard L.ら、2000年)を免疫原として使用した。1回目の注射のためには完全フロインドアジュバント(Sigma)中そしてその後の注射については不完全フロインドアジュバント(Sigma)中の20μgのタンパク質を用いて、3週間の間隔で、腹腔内で4回BALB/Cマウスに免疫付与することによって、マウスハイブリドーマを生成した。4回目の免疫付与から3週間後にECD−hAMHR−IIの静脈内ブースタ注射を行なった。3日後に、マウス骨髄腫細胞系P3−X63−Ag.8.653と、免疫付与したマウスからの脾細胞を融合させた。新たに生成されたクローンからの上清を、ECD−hAMHR−IIを用いてELISAによってスクリーニングした。上清のhAMHR−IIに対する特異性を、AMHR−II陽性細胞についての螢光活性化細胞選別(FAC)によって確認した。
【0172】
抗−HER2MAb:マウスmAbFRP5(Harweth I.ら、1992年)およびヒト化トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)を使用した。トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)は、Genentech,Inc.(米国カリフォルニア州サンフランシスコ)から購入した。
【0173】
対照として用いられるMAb:対照実験においては、(CEA Gold2エピトープについて特異的である)抗−CEAモノクローナル抗体35A7(Haskell C.ら、1983年;Hammarstrom S.ら、1989年)およびPX(マウス骨髄腫P3−X63から精製された正常なマウスIgG1(Kohler G.1975年)を、無関連抗体として使用した。全てのマウスIgG1MAbを、硫酸アンモニウム沈降(4℃で45%飽和)とそれに続くPE52セルロース上のイオン交換クロマトグラフィによりマウスハイブリドーマ腹水から精製した(Whatman、Balston、英国)。
【0174】
細胞系および培養条件:ヒト顆粒膜腫瘍細胞系COV434は、van den Berg − Bakkanチーム(van den Berg− Bakker C.ら、1993年)から提供して頂いた。トランスフェクションを受けたAMHR−II−陽性COV434−AMHR−II1F3細胞系統を得るために、我々は、pIRES−EGFPベクター(FuGENE6トランスフェクションキット、Roche Diagnostics)を用いてヒトAMHR−IIについてのコーディングcDNAでGCT腫瘍細胞系COV434を安定した形でトランスフェクションし、その後COV434−AMHR−II1F3細胞系をサブクローニングした。
【0175】
全ての細胞系を、10%の熱不活性化されたウシ胎仔血清、ストレプトマイシン(0.1mg/mL)、ペニシリン(0.1IU/mL)およびアンフォテリシンB(0.25μg/mL)を含有するDMEMF12培地内で成長させた。細胞を5%のCO雰囲気内で37℃で成長させ、培地を一週間に2回交換した。トリプシン(0.5mg/mL)EDTA(0.2mg/mL)を用いて細胞の収穫を行なった。すべての培地補足物は、Life Technologies,Inc.(Gibco BRL,メリーランド州ゲイサーズバーグ)から購入した。トランスフェクションした細胞については、培地内にジェネティシン(0.67%)を添加した。
【0176】
B.方法と結果
インビトロおよびインビボ研究のためのCOV434−AMHR−II1F3細胞系のフローサイトメトリ分析:それぞれにマウス抗−AMHR−II(12G4)および抗−HER2(FRP5)抗体を用いてフローサイトメトリ(FAC)によりCOV434−AMHR−II1F3を分析した。洗浄後、一次抗体を検出するべく抗マウスFITC抱合モノクローナル抗体(Sigma Aldrich)を添加した。二次抗体との細胞の直接的インキュベーションを、背景測定のために使用した。最低20000件の事象を観察することによって、FACScanII(Becton Dickinson,米国カリフォルニア州マウンテンビュー)上で試料を分析した。負の対照として、野生型(wt)COV434細胞系を使用した(図4)。QIFIKIT(Dako,デンマーク)を用いたこの技術により、我々は、約10個のAMHR−IIレセプタ/細胞および10個のHER2レセプタ/細胞の発現速度を評価することができた。
【0177】
COV434−AMHR−II−1F3でトランスフェクションされた細胞系内でのmAb12G4の内在化の免疫螢光研究:COV434−AMHR−II−1F3細胞内で内在化する抗体の能力を免疫螢光を用いて視覚化した。各々の検定について、35mmのペトリ皿内に置かれた22mmの正方形のガラスカバースリップ上でRPMIを用いて5・10個の細胞を成長させた。2日後、対数成長期の間、細胞をPBS−BSA(1mg/mL)上で10μg/mLの抗体(無関連mAb(PX)、抗−AMHR−II(12G4)、抗−HER2(FRP5)または抗体無しのいずれか)と共に細胞をインキュベートし、4℃(非内在化条件)に置くかまたは37℃のインキュベータ(内在化条件)に移した。180分経過した時点で、上清を除去し、細胞をPBS−BSAで2回、PBSで一回洗浄した。ホルマリン(PBS中の3.7%のp−ホルムアルデヒド)の中で20分間インキュベートした後、細胞を−20℃のアセトン中で30秒間透過性付与した。PBSの体積を増大させることによって連続的に溶液を希釈した。細胞をPBS−BSAで2回洗浄し、PBS−BSA中のFITC標識されたヤギ抗マウスIgF(ab’)2フラグメント(Silenus、Eurobio、フランス)と共に暗所にて1時間これをインキュベートした。次にこれらをPBS−BSAで3回そしてPBSで1回洗浄し、次に15分間50μlの4,6ジアミニド−2−フェニルインドールジヒドロクロリド(DAPI,Sigma,Chemical Co.)でインキュベートし、Vectashield(登録商標)による螢光顕微鏡視覚化のために前処理した。
【0178】
抗−AMHR−II12G4および抗−HER2FRP5抗体は、37℃で細胞内で内在化できるもののPXはそうではないということが実証された。実際、螢光性小胞が細胞の細胞質内に明確に見える。したがって、MAbsも同様に4℃でインキュベートした。全ての活性輸送経路を阻害するものとして知られているこの低い温度で、膜のはるかに強い標識が、4℃でさえ両方の特異的抗体について観察された。これらの特異的抗体のいずれも、観察された強い膜結合にも関わらず、細胞内部に見出されなかった。
【0179】
mAb12G4のインビトロ抗増殖性効果(MTS試験):細胞の生存能力に対するトラスツズマブ、12G4、FRP5または35A7の効果をテトラゾリウム塩(MTS)および電子カップリング試薬(PMS)検定を用いて評価した。簡単に言うと、100μlの培地中で5000細胞/ウェルの割合で96ウェルのマイクロタイタープレート内でCOV434−AMHR−II−1F3細胞を平板固定した。96時間のインキュベーションの後、細胞をMTS(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム)試薬に曝露し、2時間37℃でインキュベートした。490nmで吸光度を測定し、生存能力の阻害百分率を、未処理の培養と比較した増殖細胞の百分率として計算した。全ての実験をトリプリケートで実施した。
【0180】
結果は、1μg/μlでmAb12G4またはトラスツズマブのいずれかを用いて約20%の生存能力阻害百分率が観察できるものの、一方同じ濃度で、抗−CEA35A7mAbでは全く阻害が観察されないということを示している(図5)。トラスツズマブの抗増殖性効果が大々的に実証されてきていることから、これを正の対照として使用した。
【0181】
予備的インビボ腫瘍成長阻害研究:実験動物研究のためのフランスの指針((契約第B34−172−27号))に合わせて、全てのインビボ実験を実施した。6〜8週令の雌の無胸性ヌードマウスであるヌードマウスをHarlan(フランス、ガナ)から購入した。
【0182】
50%の培地および50%のMatrigel(BD biosciences,フランス、ルポンドクレ)の中にCOV434−AMHRII−1F3(10・10)細胞を懸濁させ、無胸腺ヌードマウスの右脇腹内に皮下(s.c.)注射した。腫瘍をもつマウス、腫瘍がおよそ同じ体積に達した時点で異なるグループに無作為に振り分けた。0.9%のNaClまたはmAb12G4を腹腔内注射(i.p.)することによってマウスを処置した。mAbの各回注射量は、連続して5週間週二回で注射一回につき200μgであった。
【0183】
腫瘍の寸法を週一回キャリパで測定し、D1×D2×D3/2という公式で体積を計算した。
【0184】
腫瘍が1200mmという規定の体積に達するのにかかった時間を用いて、適合カプラン−マイヤー生存率曲線により、結果を表現した(図6)。50%のマウスが規定の体積に達した腫瘍を有する時点として遅延中央値を定義し、この遅延中央値が対照NaClグループに比べ処置を受けたグループについて14日間長いということが示されている。
【0185】
異種移植片におけるAMHR−II発現の免疫ブロット分析:異種移植された腫瘍からの細胞をレスキューしRIPA緩衝液(50mMのトリス−HCl、pH7.4、150mMのNaCl、1%のデオキシコール酸塩、1%のNP40、2mMのEDTA、0.1%のSDSおよび1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド)に溶解させた。還元条件下で10%のSDS−PAGE上での電気泳動の後、5%の脱脂粉乳を含有するPBS中で飽和させたポリニフッ化ビニリデン膜(Millipore Co.,マサチューセッツ州ベッドフォード)にタンパク質を移し、次に抗−AMHR−II12G4抗体でインキュベートした。
【0186】
AMHR−IIは、切除された腫瘍の3つの異なる切片の中で強力に発現させられ、65kDaで移動する(図7)。
参考資料
【0187】
【化1】

【0188】
【化2】

【0189】
【化3】

【0190】
【化4】

【0191】
【化5】

【0192】
【化6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変領域が、CDR−1については配列番号2または配列番号6、CDR−2については配列番号3または配列番号7そしてCDR−3については配列番号4または配列番号8から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを含んでいる、免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖。
【請求項2】
可変ドメインが、
− CDR−1については配列番号2、CDR−2については配列番号3そしてCDR−3については配列番号4から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDR、または、
− CDR−1については配列番号6、CDR−2については配列番号7そしてCDR−3については配列番号8から成る群の中から選択された配列を有する少なくとも1つのCDR、
を含んでいる、請求項1に記載の免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖。
【請求項3】
可変ドメインが、
− CDR−1については配列番号2、CDR−2については配列番号3そしてCDR−3については配列番号4;または
− CDR−1については配列番号6、CDR−2については配列番号7そしてCDR−3については配列番号8、
を含んでいる、請求項1または2に記載の免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖。
【請求項4】
配列番号1または配列番号5として示されたアミノ酸配列を有する可変ドメインを含む、請求項1〜3の1項の記載の免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖。
【請求項5】
重鎖である、請求項1〜4の1項に記載の免疫グロブリン鎖。
【請求項6】
軽鎖である、請求項1〜4の1項に記載の免疫グロブリン鎖。
【請求項7】
(a)請求項5に記載の重鎖;および/または
(b)請求項6に記載の軽鎖;
を含む、ヒト抗−ミュラーホルモンII型レセプタ(AMHR−II)に対する特異性を有するモノクローナル抗体。
【請求項8】
(a)請求項5に記載の重鎖;および
(b)請求項6に記載の軽鎖
を含む、請求項7に記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
マウス抗体である、請求項7または8に記載のモノクローナル抗体。
【請求項10】
CNCM寄託番号I−3673の下で入手できるハイブリドーマから獲得可能である、請求項9に記載のモノクローナル抗体。
【請求項11】
マウス/ヒトキメラ抗体である、請求項7または8に記載のモノクローナル抗体。
【請求項12】
ヒト化抗体である、請求項7または8に記載のモノクローナル抗体。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体のフラグメント。
【請求項14】
Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2および二重特異性抗体フラグメントから成る群の中から選択される、請求項13に記載のフラグメント。
【請求項15】
請求項7〜12のいずれかに記載のモノクローナル抗体または請求項13または14に記載のそのフラグメントをコードする配列を含む核酸。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸を含むベクター。
【請求項17】
請求項15に記載の核酸および/または請求項16に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
【請求項18】
ATCC寄託番号CRL1662の下で入手可能なYB2/0細胞である、請求項17に記載の宿主細胞。
【請求項19】
(i)前記抗体の発現を可能にするのに適した条件下で請求項17または18に記載の形質転換された宿主細胞を培養するステップ、および(ii)発現された抗体を回収するステップから成るステップを含む、請求項7〜12のいずれか1項に記載の抗体または請求項13または14に記載のそのフラグメントを生産する方法。
【請求項20】
請求項7〜12のいずれかに記載の抗体および/または請求項13または14に記載のフラグメント、または請求項15に記載の核酸および/または請求項16に記載のベクター、および/または請求項17または18に記載の宿主細胞を薬学的に受容可能な担体と共に含む薬学組成物。
【請求項21】
抗癌剤に抱合された、請求項7〜12のいずれか1項に記載の抗体または請求項13または14に記載のフラグメントを含む免疫抱合体。
【請求項22】
前記抗癌剤が細胞毒性剤または成長阻害剤である、請求項21に記載の免疫抱合体。
【請求項23】
検出可能な分子または物質で標識されている、請求項7〜12のいずれかに記載の抗体、または請求項13または14に記載のフラグメント。
【請求項24】
卵巣癌の治療用に意図された薬剤の製造を目的とする、請求項7〜12のいずれかに記載の抗体、または請求項13または14に記載のフラグメント、または請求項21または22に記載の免疫抱合体の使用。
【請求項25】
卵巣癌の診断および/または監視のための、請求項7〜12および23のいずれかに記載の抗体、または請求項13、14または23に記載のフラグメントの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−508810(P2010−508810A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535144(P2009−535144)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/IB2007/003301
【国際公開番号】WO2008/053330
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(500248467)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サントゥ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル(イーエヌエスエーエールエム) (19)
【Fターム(参考)】