説明

ヒト用医薬および/または医療技術のための生分解性および/または吸収性のシリカゲル材料の製造のための少なくとも1種類の治療活性成分を含むシリカゾル材料

本発明は、少なくとも1種類の治療活性材料を有する新規なシリカゾル材料、ならびに改善された特性を有する生体吸収性および生分解性シリカゲル材料の製造のためのその使用に関する。繊維、不織マット、粉末、モノリスおよび/またはコーティングなどの該材料が、例えば、医療技術および/またはヒト用医薬において、特に、創傷処置のために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト用医薬および/または医療技術のための生分解性および/または吸収性のシリカゲル材料の製造のための少なくとも1種類の治療活性成分を含む新規なシリカゾル材料、ならびにその製造方法および使用に関する。また、本発明は、少なくとも1種類の治療活性成分を含む生分解性および/または生体吸収性シリカゲル繊維材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト用医薬および医療技術における種々の適用ための生分解性および/または生体吸収性材料を開発するための取り組みがたびたび行われている。この分野では、特に、材料の生体適合性、生体活性および毒物学的特性に対する需要が継続的に高まっている。
【0003】
吸収性のシリカゲルは先行技術において知られている。DE 196 09 551 C1には、生分解性で生体吸収性の繊維構造物が記載されている。この繊維は、紡織用組成物から単繊維を引き出し、場合により乾燥させることにより、ゾル-ゲルプロセスによって得ることができる。この紡織用組成物は、一部または完全に加水分解的に縮合された1種類以上のケイ素化合物を含み、該化合物は一般式SiX4のモノマーの加水分解性縮合によって得られる。この繊維は、依然として、紡織プロセス直後の分解の際の細胞傷害性試験において最適な結果が示されないという不都合点を有し、場合によっては細胞傷害性と評価されるはずである。かかる毒性は、一般的に、特に、ヒト用医薬または医療技術における使用の場合(例えば、創傷治癒の分野)では望ましくない。また、DE 196 09 551 C1による繊維の製造方法は、加水分解/縮合の溶媒除去後に得られる混合物は既に多相混合物であり、得られた固形物を取り出すために必要な濾過に供しなければならないという欠点を有する。また、固相の形成の結果、および義務的な濾過行程の結果、大量の紡織可能なゾルが失われる。DE 196 09 551 C1の方法によれば、量はたいしたことはないが固相の形成、特にゲルの形成を、熟成中も完全に抑制することができない。これにより、また紡織可能なゾル組成物の量が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許第19609551号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
これとは独立して、本発明の繊維およびフリースが改善された創傷治癒特性を有することを示すことが可能であった。また、本発明の繊維およびフリースは、細胞支持構造体としての使用に特に好適である。
【0006】
本発明の目的は、生分解性および/または生体吸収性シリカゲル材料の製造のための、少なくとも1種類の治療活性成分を含む新規なシリカゾル材料を利用可能にすることである。また、本発明の目的は、細胞傷害性および/または創傷治癒特性が改善された、少なくとも1種類の治療活性成分を含む生分解性および/または生体吸収性シリカゲル材料を利用可能にすることである。さらなる目的は、例えば、皮膚移植片、軟骨および骨のインビトロ製造のための細胞支持構造体を利用可能にすることであることが理解され得よう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1a】図1aは、KG211における組織学的試験の結果を示す。
【図1b】図1bは、Promogran(登録商標)における組織学的試験の結果を示す。
【図2】図2は、種々の細胞支持構造物における真皮繊維芽の活性結果を示す
【図3】図3は、ヒト真皮線維芽細胞における、培養前および培養4週間後の、種々の細胞支持構造物の組織形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の目的は、請求項1に記載のシリカゾル材料によって達成される。これによれば、少なくとも1種類の治療活性成分を含むシリカゾル材料は、
a)式I
SiX4(I)
〔式中、基Xは、同一であるか、または異なっており、ヒドロキシル、水素、ハロゲン、アミノ、アルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニルおよび/またはアルコキシカルボニルを表し、1〜20個の炭素原子を有する、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖、分枝または環状の基であるアルキル基に由来し、酸素もしくはイオウ原子またはアミノ基により中断されていてもよい〕
の1種類以上のSi化合物の加水分解/縮合反応を、酸性触媒作用により、0〜≦7の初期のpHで、場合により水溶性溶媒の存在下で、少なくとも16時間、0℃〜80℃の温度で行い、
b)続いてエバポレーションによって、4℃で10s-1の剪断速度で0.5〜2Pa・sの範囲の粘度を有する単相溶液を生成させ、
c)続いて、この溶液を冷却し、
d)速度論的に制御された熟成に供し、均一な単相のゾルを形成させ、これに、工程a)〜d)の1つ以上において、好ましくは工程a)〜c)の1つ以上において、少なくとも1種類の治療活性成分を添加すること
により得られ得る。
【0009】
工程a)において、式(I):
SiX4(I)
〔式中、基Xは、同一であるか、または異なっており、ヒドロキシル、水素、ハロゲン、アミノ、アルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニルおよび/またはアルコキシカルボニルを表し、1〜20個の炭素原子を有する、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖、分枝または環状の基であるアルキル基に由来し、酸素もしくはイオウ原子またはアミノ基により中断されていてもよい〕
のSi化合物の1種類または2種類以上に由来する基Xが使用される。
【0010】
本発明による好ましい実施形態において、式(I)におけるXは、1〜20個の炭素原子を有する、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する場合により置換された直鎖、分枝および/または環状のアルコキシ基を表す。特に好ましくは、式(I)におけるXは、場合により置換された直鎖および/または分枝C1〜C5アルコキシ基を表す。さらに特に好ましい基は、置換された、だが好ましくは非置換の直鎖および/または分枝C2〜C3アルコキシ基(例えば、エトキシ、N-プロポキシおよび/またはイソプロポキシなど)である。
【0011】
本発明によれば、テトラエトキシシラン(TEOS)が、本発明による加水分解/縮合反応におけるSi化合物として非常に特に好ましい。使用される水溶性の溶媒は、好ましくは、エタノールまたは水/エタノール混合物であり得る。Si化合物は、エタノールに対して≧1の比率で使用され得る。
【0012】
0〜≦7、好ましくは2〜5の初期pHは、本発明の好ましい実施形態では、硝酸含有水により調整される。しかしながら、NOまたはNO2を局所的に生成させ得る他の酸性混合物および/または溶液もまた、本発明を行うのに適している。このようなものは、例えば、酸素分子が、生理学的環境によって一酸化窒素(NO)を酵素的に生成させる(ニトロキシドシンターゼNOSによって)(続いて、これは、体内で速やかにNO2に変換される)酸性混合物および/または溶液であり得、あるいはまた、有機硝酸塩または硝酸エステル(NO供与体)、例えば、硝酸エチル(これは、有機硝酸塩還元酵素の補助によってNOを形成する)であり得る。このNOの酵素的放出のためには、チオール基(システイン)が必要である。
【0013】
したがって、希硝酸に加え、本発明によれば、生理学的に許容され得る酸(例えば、クエン酸、コハク酸、酒石酸、酢酸またはアスコルビン酸)および少なくとも1種類の必須アミノ酸(例えば、L-アルギニン、特に好ましくは;L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-フェニルアラニン、L-チロキシン、L-メチオニン、L-リシンまたはL-トリプトファン)または非必須アミノ酸(例えば、L-グルタミン、L-グルタミン酸、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-グリシン、L-アラニン. L-プロリン、L-ヒスチジン、L-チロシン)の水性またはアルコール性(特に好ましくは: 水性希エタノール)溶液もまた、pHを、弱酸性から中強度の酸性の範囲の所望の値に調整するためのNOSの基質として適している。
【0014】
好ましい実施形態において、加水分解/縮合反応は、Si化合物と硝酸含有水を1:1.7〜1:1.9のモル比で、特に好ましくは1:1.7〜1:1.8の比で用いて行われる。
硝酸含有水は、0.01N HNO3として使用してもよい。
【0015】
加水分解/縮合は、少なくとも16時間、好ましくは少なくとも18時間の期間にわたって、0℃〜80℃、好ましくは0℃〜78℃、特に好ましくは20〜60℃、さらにより好ましくは約20℃〜約50℃、例えば、創傷処置のための本発明による材料の使用の場合は、室温(約20〜約25℃)または約37℃の温度で行われる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、加水分解は、少なくとも16時間、好ましくは少なくとも18時間〜4週間の期間にわたって行われ得る。好ましくは、加水分解時間は、24時間〜18日間、特に好ましくは3〜8日間行われる。驚くべきことに、工程b)の溶媒を除去した後、室温で数時間というこれまでの慣用的な時間と比べて加水分解/縮合時間が長い場合、均一な単相溶液を得ることができ、これは、工程d)の熟成の前に濾過の必要がないことが見い出された。
【0017】
第1の加水分解/縮合反応は、好ましくは、バッチ式で、攪拌器槽または攪拌棒を入れたストッパー付丸底フラスコ内で行われる。式(I)のSi化合物(例えば、TEOS)および溶媒(例えば、エタノール)は、好ましくは初期に導入する。続いて、好ましくは、0.01N HNO3(例えば、TEOS 1molあたり0.01molのHNO3)の形態の酸の添加を速やかに行う。反応混合物における酸の強度のため、第1の加水分解/縮合反応は急速に進行し、容器内の内容物は約40℃まで昇温され、その後、温度は、なお反応時間(工程(a)の時間)中であるが、(周囲温度または加熱剤の温度までの自然な冷却の結果)低下し始める。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、工程(b)の水溶性溶媒(例えば、エタノール、水)の除去は、混合が可能である密閉装置(好ましくは、回転式エバポレータおよび/または攪拌槽)内で、1〜1013mbarの圧力で、好ましくは<600mbarの圧力で、場合により、エバポレーション成分の分圧を1〜8m3/時(好ましくは、2.5〜4.5m3/時)に下げるための化学的に不活性なエントレーナーガスを連続的に供給しながら、30℃〜90℃、好ましくは60〜75℃、さらにより好ましくは60〜70℃の反応温度で、好ましくは、反応系を80回転/分(好ましくは、20回転/分〜60回転/分)で、混合物の粘度が4℃で10s-1の剪断速度で0.5〜30Pa・sになるまで、好ましくは、4℃で10s-1の剪断速度で0.5〜2Pa・s、特に好ましくは約1Pa・s(4℃、剪断速度10s-1で測定)になるまで穏やかに混合しながら、エバポレーションすることによって溶媒(水、エタノール)を同時に除去しながら行われる。
【0019】
「エントレーナーガス」は、本発明によれば、反応系の液相からのガス容積に供給されるガス流を表す。反応槽における等圧比の維持のため、気相容積流は、それにより排出されなければならず、これは、「エントレーナーガス」とエバポレーションすべき成分の両方からなる。もたらされる分圧は低下し(これは、ガス空間内のエバポレーション成分またはエバポレーション成分混合物の量の減少である)、液体表面での溶媒のエバポレーションに対する駆動力が増大する。
【0020】
特に好ましい実施形態において、「エントレーナーガス流」は、該装置のガス空間内に、液体表面のわずかに上部での充分なエントレーナーガス交換は保証されるが、該液体表面に対して対流的に直接流動されることはないように好適に構成されたガス分散器によって分散される。後者では、極端な場合、局所ゲル化がもたらされることがあり得、これは望ましくない。この実施形態によって実現され得るガス分散器は、当業者にわかる。
【0021】
進行性の反応/重合(粘度の増加によって識別)の結果、相平衡がシフトし、そのため、気相中の対応する溶媒の平衡圧が次第に下がる。平衡圧が気相内の全圧まで下がると、エバポレーションは止まる。
【0022】
さらに溶媒をエバポレーションさせるためには、圧力を最適に低下させなければならず、そのため、エントレーナーガス流を可変的に調整する、および/または温度を上げる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、プロセスパラメータである圧力、エントレーナーガス流および/または温度の少なくとも1つを、時間に対して可変的に調整する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、工程b)のエバポレーションを、一定温度で経時的に可変圧で行う。本発明の好ましい実施形態では、窒素および/または空気を、分圧低減のための化学的に不活性なエントレーナーガス流として使用する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、水溶性溶媒を、真空とエントレーナーガス流の組合せによって除去する。本発明のこの実施形態における全圧およびエントレーナーガス流は、互いに独立して、時間に対して一定または可変的に調整され得る。本発明のこの実施形態では、理想的には、プロセスパラメータである圧力、エントレーナーガス流および/または温度の少なくとも1つを、経時的に可変的に調整する。それにより、例えば、所望の程度のエバポレーションを伴う特定の反応時間を得ること、および/またはエバポレーション速度を反応速度論に対して調整することが完全に可能になる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、工程b)のエバポレーションは、一定温度で経時的に可変的な圧力で行われ、この場合、第2のHCR(常圧またはわずかに減圧から開始)の終了時の圧力は、<600mbar、好ましくは<500mbar、特に好ましくは<100mbarまで低下させる。
【0027】
併用操作モード(真空とエントレーナーガス流)では、一定または<600mbarの可変的減圧が好ましい。
【0028】
HNO3からNOへの還元的変換を有利にするためには、60℃より高い温度が特に好ましい(そうでない場合は、残留溶媒中ではHNO3の濃度は顕著に上昇する)。この非常に揮発し易いガス(常態で沸点は、約-150℃)は、液相から逸散した後、空気と接触すると酸化され、容易に沸騰NO2(SPは約21℃)となり、これは、排出空気またはガス流とともに系から除去される。このようにして、本発明による材料中の酸濃度は制限または低減される。しかしながら、あるいはまた、後続の工程の1つにおいて、例えば、固形物(例えば、繊維フリースとして)を曝気することにより酸の強度を低下させてもよい。
【0029】
しかしながら、硝酸の代わりに系に有機酸/アルギニンが使用される場合、所望により、適用する直前にトリス水溶液ですすぐことにより、例えば、トリス溶液によって(酸(例えば、酢酸)が放出されなくなる程度まで)、pHの上昇または酸強度の低減を行う。
【0030】
驚くべきことに、DE 196 09 551 C1と比較すると、反応系を20回転/分〜80回転/分で穏やかに混合することにより、反応槽のバッチの高さによる反応性エバポレーション(工程b)中の濃度勾配の形成が抑制され得ることが見い出された。これは、少なくとも16時間の長い加水分解/縮合反応時間とともに、本発明の方法において、全反応バッチの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に非常に好ましくは少なくとも90%で紡織が行われ得ることに寄与する。
【0031】
工程(b)は、好ましくは、4℃で10s-1の剪断速度で0.5〜2Pa・sの範囲の粘度、好ましくは約1Pa・s(4℃、剪断速度10s-1で測定)を有する単相溶液が得られるまで行われる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、工程b)の反応の進行のモニタリングを、粘度によって行う。
【0033】
工程b)の加水分解/縮合反応により得られた均一な単相溶液を、続いて冷却され、好都合には、定量的に、場合によって、濾過せずに、速度論的に制御された熟成に供され得る。
【0034】
熟成(工程c))は、-20℃〜10℃、好ましくは2℃〜4℃の温度(例えば、冷蔵庫内)で行われ得る。特に好ましくは、熟成は4℃で行う。低温の結果、式(I)において上記のSi化合物から始めた熟成時間の速度論的制御中に、さらなる縮合が進行し得る。この混合物において、オリゴマーおよび/またはポリマー シロキサンおよび/またはシラノールが形成され得る。また、このオリゴマーおよび/またはポリマーは、水素結合によって凝集され得る。熟成後、本発明によれば、固有に粘性の均一な単相ゾル組成物が形成され得る。したがって、好都合には、本発明によれば、3次元ポリマーゲル網目の競合性の形成が最大限まで抑制され得る。したがって、第2の固相を有しない、特に、最大限にはゲル相のない均一なゾル組成物が得られ得る。
【0035】
工程d)の熟成時間は、本発明によれば、3日間〜4週間、好ましくは少なくとも10日間、好ましくは14〜40日間(例えば、14〜28日間)、さらにより好ましくは少なくとも25日間、特に、創傷処置のための本発明による材料に使用される場合は、25〜40日間であり得る。本発明によれば、工程d)で得られるゾルは、好ましくは、30〜100Pa・s(剪断速度10s-1、4℃)の粘度を有し、損失係数(4℃、10s-1、1%変形)は2〜5、好ましくは2.5〜3.5である(損失係数は、粘性ないし弾性の成分の動的粘度の指数である)。このような熟成条件は、工程d)によるシリカゾルを紡織して繊維を得る場合、特に好ましい。
【0036】
少なくとも1種類の治療活性成分を含むシリカゾル材料の製造のため、工程a)〜d)の1つ以上で、好ましくは工程a)〜c)の1つ以上で、少なくとも1種類の治療活性成分を添加する。
【0037】
シリカゾル材料の製造に好ましく使用される本発明による治療活性成分は、特に、鎮痛薬、麻酔薬、防腐薬、止血薬、抗凝固化合物、抗ヒスタミン薬、消炎化合物、創傷治癒促進性の植物性物質または物質混合物、ワクチン(例えば、毒性の創傷感染に対するもの)、増殖因子、再生補助タンパク質(例えば、コラーゲン、酵素、酵素阻害薬、特に、プロテアーゼ阻害薬(例えば、α-1-アンチキモトリプシンおよびプロラスチンなど)など)、ビタミンまたはプロビタミン、カロテノイド、スキンケア用化合物、避妊薬ならびにその組合せからなる群より選択される。
【0038】
本発明による鎮痛薬は、モルヒネ、フェンタニールおよびメタドン(例えば、ブルプレノルフィンなど)、ならびに非オピオイド系鎮痛薬(ニコチン作動性鎮痛薬(例えば、エピバチジンなど)など;酸性消炎薬および解熱性鎮痛薬(NSAID-非ステロイド系抗炎症薬)、例えば、サリチル酸誘導体(例えば、アセチルサリチル酸(ASA)、サリチル酸メチルまたはジフルニサルなど)、フェニル酢酸誘導体(例えば、ジクロフェナクなど)、2-フェニルプロピオン酸誘導体(例えば、イブプロフェンまたはナプロキセンなど);非酸性鎮痛薬、例えば、4-アミノフェノール誘導体(例えば、パラセタモールなど)、ピラゾロン(例えば、メタニゾールまたはフェナゾンなど)、オキシカム(例えば、メロキシカムまたはピロキシカムなど);他の非オピオイド系鎮痛薬(例えば、フルピルチンなど)などの基本物質を主成分とするオピオイド鎮痛薬を意味すると理解される。
【0039】
本発明による好ましい麻酔薬は、アミド型またはエステル系の局所麻酔薬、特に、リドカイン、テトラカイン、ブピバカイン、プリロカイン、メピバカイン、エチドカイン、また、プロカインおよびベンゾカインである。
【0040】
本発明による好ましい防腐薬は、第4級アンモニウム化合物(例えば、ベンザルコニウムセトリミド、塩化セチルピリジニウムおよびオクテニジンなど);ヨウ素含有化合物(例えば、ヨウ素、ヨウ素-ポビドンなど);ハロゲン化化合物(例えば、トリクロサンおよびクロルヘキシジンなど);キノリン誘導体(例えば、オキシキノリンなど);フェノール誘導体(例えば、レゾルシノール、トリクロサン、ヘキサクロロフェンなど);水銀含有化合物(メルブロミンおよびチオメルサールなど);抗菌性金属(例えば、銀、銅または亜鉛およびその塩、酸化物または錯体の組合せまたは単独など);安息香酸、過酸化ベンゾイルおよび/またはビグアニド(特に、PHMB)からなる群より選択される。
【0041】
防腐薬としては、本発明によれば、殺菌作用、殺バクテリア作用を有する(例えば、抗生物質)、静菌(例えば、抗生物質)、溶菌(例えば、抗生物質)、殺真菌、殺ウイルス、静ウイルス、抗寄生虫および/または一般的な殺微生物作用を有する化合物が使用され得る。
【0042】
本発明による好ましい止血薬は、トロンビン、フィブリン、フィブリノゲン、第VIII因子濃縮物、ビタミンK、PPSB、プロタミン、抗線維素溶解剤(例えば、トラネキサム酸およびアミノカプロン酸など)からなる群より選択される。
【0043】
本発明による好ましい抗凝固化合物は、ヘパリン、クマリン、血小板凝集阻害薬、(例えば、アセチルサリチル酸など)、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬、クロピドグレル、チロフィブラン;フィブリン溶解薬(例えば、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼおよびアルテプラーゼなど)からなる群より選択される。
【0044】
本発明による抗ヒスタミン薬は、エチレンジアミン(例えば、メピラミン(ピリラミン)、トリペレンアミン(ピリベンズアミン)、アンタゾリン、ジメチンデン(バミピン)など);エタノールアミン(例えば、ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、ドキシラミン、クレマスチンなど);アルキルアミン(例えば、フェニラミン、クロルフェナミン(クロルフェニラミン)、デキシコルフェニラミン、ブロムフェニラミン、トリプロルジンなど);ピペラジン(例えば、ヒドロキシジン、メクロジンなど);三環系抗ヒスタミン薬(例えば、プロメタジン、アリメナジン(トリメプラジン)、ジプロヘプタジンおよびアザタジンなど);アクリバスチン、アステミゾール、セチリジン、エバスチン、フェキソフェナジン、ロラタジン、ミゾラスチン、テルフェナジン;アゼラスチン、レボカバスチン、オロパタジン、エピナスチン、レボセチリジン、デスロラタジン、フェキソフェナジン チオペルアミドおよびJNJ7777120からなる群より選択される。
【0045】
本発明による好ましい消炎化合物は、非ステロイド系消炎薬/抗リウマチ薬(例えば、アセチルサリチル酸、ジクロフェナク、ジフルニサル、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メフェナム酸、メタミゾール、ナプロキセン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、フェナゾン、ピロキシカム、プロピフェナゾン、サリチルアミド、チアプロフェン酸、テノキシカム、トルフェナム酸など);グルココルチコイド(例えば、プロピオン酸クロベスタゾル、トリアムシノロンアセトニド、吉草酸ベタメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、フルチカゾン、ブデソニド;他の消炎薬、例えば、モンテルカストまたはカモミール、マリーゴールド、アルニカ由来の植物エキスの消炎薬など)からなる群より選択される。
【0046】
本発明との関連において使用される創傷治癒促進性の植物性物質もしくは物質混合物または植物エキスは、特に、ハマメリスエキス(例えば、Hamamelis virgina)、キンセンカエキス、アロエエキス(例えば、Aloe vera、Aloeバールbadensis、Aloe feroxoderまたはAloe vulgaris)、緑茶エキス、海藻エキス(例えば、紅藻または緑藻エキス)、アボカドエキス、ミルラエキス(例えば、Commophora molmol)、竹エキスならびにその組合せである。ここで、本発明によれば、植物の葉、花、茎もしくは根またはその組合せのエキスが特に好ましいことを理解されたい。
【0047】
特に挙げられ得る本発明による増殖因子は、aFGF(酸性線維芽細胞増殖因子)、EGF(上皮)増殖因子)、PDGF(血小板由来増殖因子)、rhPDGF-BB(Becaplermin)、PDECGF(血小板由来内皮細胞増殖因子)、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)、TGFα(トランスフォーミング増殖因子α)、TGF-β(トランスフォーミング増殖因子β)、KGF(ケラチノサイト増殖因子)、IGF1/IGF2(インスリン様増殖因子)VEGF(血管内皮増殖因子)およびTNF(腫瘍壊死因子)である。
【0048】
本発明による好適なビタミンまたはプロビタミンは、特に、脂溶性または水溶性ビタミン、レチノイドからなるビタミンA群、カロテノイド、特に、β-カロテンからなるプロビタミンA群、トコフェロール、特に、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールおよびα-トコトリエノール、β-トコトリエノール、y-トコトリエノールおよびδ-トコトリエノールからなるビタミンE群、ビタミンK、フィロキノン、特に、フィトメナジオンまたは植物性のビタミンK、ビタミンC、L-アスコルビン酸、ビタミンB1、チアミン、ビタミンB2、リボフラビン、ビタミンG、ビタミンB3、ナイアシン、ニコチン酸およびニコチン酸アミド、ビタミンB5、パントテン酸、プロビタミンB5、パンテノールまたはデクスパンテノール、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンH、ビオチン、ビタミンB9、葉酸ならびにその組合せである。
【0049】
本発明による好ましいスキンケア用化合物は、特に、酸化防止剤、光線スクリーン、虫よけ剤、エーテル系オイル、モイスチャライザー、香料および/またはコエンザイムQlOである。
【0050】
単独または異なる治療活性成分との混合物で使用され得る本発明による治療活性成分は、組成物中のシリカゾル材料の重量に対して、特に0.01〜40wt%、好ましくは0.01〜20wt%、特に非常に好ましくは0.1〜10wt%で存在させる。
【0051】
本発明による繊維/フリースが創傷治癒のために使用される場合、工程d)で得られるゾルは、好ましくは、35〜75Pa・s(剪断速度10s-1、4℃)、さらにより好ましくは35〜45Pa・s(剪断速度10s-1、4℃)の粘度を有し、好ましくは、損失係数(4℃、10s-1、1%変形)が2.5〜3.5である。
【0052】
損失係数が大きすぎることは材料の弾性が高すぎることを意味し、これは、例えば、紡織中での安定な単繊維の形成に対して逆効果となる(ゲル化、単繊維の破断)。損失係数が小さすぎる場合は、該材料が非常に流動性となるため、安定な単繊維の形成が可能でない(液滴)。
【0053】
熟成期間中の条件は、本発明によるシリカゾルが後で加工処理され、紡織可能な繊維ではなく粉末が得られるのであれば、種々であり得る。好ましくは、工程(d)終了時の動的粘度は、この場合、約60Pa・s(剪断速度10s-1、4℃)である。
【0054】
シリカゾルを加工処理してモノリスを得る場合、(d)の終了時の動的粘度は、好ましくは、70Pa・s以上(剪断速度10s-1、4℃)である。シリカゾルが本体または表面のコーティング用に使用される場合、動的粘度は、所望の層厚に応じて、10Pa・s以下(剪断速度10s-1、4℃)である。
【0055】
好ましくは、得られるゾル組成物は、さらなる製造工程および/または生分解性および/または吸収性シリカゲル材料の加工処理において、少なくともほぼ定量的に使用され得る。好ましくは、工程d)で得られるゾルは紡織可能である。さらなる工程e)では、本発明による紡織プロセスを提供する。
【0056】
かかる紡織プロセスは、例えば、DE 196 09 551 C1およびDE 10 2004 063 599 A1に記載されているものなどの慣用的な条件下で行われ得る。
【0057】
このプロセス工程では、該ゾルを、例えば、個々のノズルを有するノズルプレートから、圧力容器によって噴出させる(容器内の圧力は1〜100バール、好ましくは20〜30バール)。
【0058】
紡織シャフトは、通常、1〜5m、好都合には2mの長さを有する。紡織シャフト内の環境は、温度と湿度に関して制御型様式で調整する。20℃〜30℃の温度および-5〜10℃の露点ならびに20〜40%の相対湿度、好ましくは20-25%の相対湿度、特に好ましくは約20%の相対湿度が好ましい。
【0059】
紡織シャフト内を落下させた後、繊維は寸法的に安定であり、可動式ベンチ上に堆積される。このようにして得られる繊維織物のメッシュ幅は、とりわけ、速度の変更によって調整される。速度は数cm/sである。2軸移動の結果、Si含有出発化合物としてのTEOS(一般的に、さらに、25を超えて33%までのエトキシ基が存在する)を主成分とするメッシュが密な繊維織物(フリース)が、かくして得られる。
【0060】
特に、本発明による材料を創傷処置のために使用する場合、繊維材料の面積重量は、好ましくは少なくとも90g/m2、特に好ましくは少なくとも150g/m2である。創傷包帯(紡織フリースからなる)の厚さは、好ましくは少なくとも0.8mm、特に好ましくは少なくとも1.5mmである。繊維の直径は、好ましくは少なくとも約45μmである。
【0061】
本発明の方法により得られるシリカゲル繊維材料および製品(例えば、単繊維、繊維、フリースおよび/または織布である)は、顕著な生分解性および生体吸収力を有する。
【0062】
本発明によるさらなる利点は、本発明の方法に従って製造されるシリカゲル繊維材料は、DE 196 09 551 C1の方法によって得られた繊維と比べ、L929マウス線維芽細胞の存在下での試験での細胞傷害性試験において著しく改善された価値を有することである(実施例1および比較例参照)。本発明によるシリカゾル材料で製造された製品は、したがって、特に良好な生体適合性によって識別される。そのため、本発明による単繊維、繊維またはフリースは、生分解性および/または生体吸収性材料ならびにヒト用医薬における製品または医療技術として好都合に使用され得る。
【0063】
少なくとも1種類の治療活性成分を含む本発明による繊維およびフリース繊維は、繊維およびフリース単独での創傷治癒特性の改善を補助、さらには改善し得る。したがって、特に、本発明による材料は、創傷処置および創傷治癒の分野において好都合に使用され得る。単繊維は、例えば、外科用縫合材料または強化繊維として使用され得る。本発明による繊維質フリースは、表在性創傷のケアにおいて特に好都合に使用され得る。
【0064】
本発明による生分解性および生体吸収性の繊維およびフリースは、上記のSi化合物および硝酸で酸性化した水の制御された加水分解/縮合反応により、以下の工程により製造され得る:
a)式I
SiX4(I)
〔式中、基Xは、同一であるか、または異なっており、ヒドロキシル、水素、ハロゲン、アミノ、アルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニルおよび/またはアルコキシカルボニルを表し、1〜20個の炭素原子を有する、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する場合により置換された直鎖、分枝または環状の基であるアルキル基に由来し、酸素もしくはイオウ原子またはアミノ基により中断されていてもよい〕
の1種類以上のSi化合物の加水分解/縮合反応を、酸性触媒作用により、0〜≦7の初期のpHで、場合により水溶性溶媒の存在下で、少なくとも16時間、好ましくは少なくとも18時間、0℃〜80℃、好ましくは20〜60℃、特に好ましくは20〜50℃の温度、例えば、室温(約20℃〜約25℃)または約37℃で行い、
b)続いてエバポレーションによって、4℃で10s-1の剪断速度で0.5〜2Pa・sの範囲の粘度を有する単相溶液を生成させ、
c)続いて、この溶液を冷却し、
d)速度論的に制御された熟成に供し、均一なゾルを形成させ、これに、工程a)〜d)の1つ以上において、好ましくは工程a)〜c)の1つ以上において、少なくとも1種類の治療活性成分を添加し、
e)d)で得られたゾルを紡織プロセスにおいて紡織すること
によって製造され得る。
【0065】
工程a)の加水分解/縮合反応において、例えば、TEOSがSi化合物として使用される場合、工程b)のエバポレーション後、加水分解時間が充分である場合、均一な溶液が得られ得る。低温での熟成期間中、速度論的に制御された反応が工程c)において進行し得る。次いで、この混合物を工程d)において存在させ、均一な単相組成物として溶解させ、かくして紡織可能なゾル組成物として得ることができる。
【0066】
そのため、本発明に従って製造される繊維またはフリースは、ヒト用医薬および/または医療技術において生体吸収性および/または生体活性の材料として好都合に使用され得る。特に、本発明に従って製造される材料は、創傷処置および創傷治癒の分野において好都合に使用され得る。繊維は、例えば、外科用縫合材料または強化繊維として使用され得る。フリースは、表在性創傷のケアにおいて、体液(例えば、血液)の濾過において、またはバイオリアクターの分野において増殖助剤として特に好都合に使用され得る。
【0067】
本発明のさらなる実施形態は、薬物送達系および/または医薬製剤、ミクロ粉末および/またはナノ粉末であり得る。もちろん、それぞれの使用および/または賦形剤に適合させたさらなる物質を、最終製剤(粉末)に存在させることが可能である。本発明によるミクロ粉末の粒子は、好ましくは、0.01μm〜100μm、特に0.1μm〜20μmのサイズ(平均直径)を有するものである。ナノ粉末の粒子は、一般的に、≦100nmのサイズ(平均直径)を有するものである。
【0068】
さらなる実施形態において、本発明によるシリカゾルは、モールドに注入される。乾燥後、このようにして、モノリスが得られ得る。かかるモノリスは、固形の埋入物の形態で活性成分供給系(薬物送達系)として、例えば皮下に使用され得る。これは、例えば、避妊薬のデポーとして使用され得、活性成分を比較的長期間にわたって放出し得る。本発明によるかかる埋入物は良好な生体適合性を有する。モノリスは、好ましくは、≧0.5mmの直径を有するものであり得る。あるいはまた、モノリスを粉砕および摩砕して粉末を得てもよい。
【0069】
本発明のさらなる実施形態によれば、高度に粘性のゾル(特に、ヒドロゲル)が、本発明によるシリカゲルに補給または代用され得る。一般的に、ヒドロゲルは、広範囲の創傷のケア(創傷処置および創傷治癒)に広く使用されている。好都合には、このシリカゾルの添加によって、生体適合性、したがって創傷治癒が改善され得る。そのため、本発明によるヒドロゲルは、医薬(特に、ヒト用医薬)または医療技術における生体吸収性および/または生体活性の製品として好都合に使用され得る。
【0070】
本発明は、さらに、細胞によって形成された細胞外マトリックスのための細胞支持物質および/またはガイド構造としての機能を果たす、あるいは細胞に対し、該細胞が増殖および/または遺伝的に決定された分化を達成することを可能にする空間的構成を見い出す可能性を付与する本発明による繊維の繊維マトリックスである細胞のインビトロ増殖方法に関する。本発明による方法の利点は、実施例3での例示によりわかるであろう。
【0071】
使用される細胞は、例えば、未分化の多能性幹細胞または遺伝子操作によって改変された細胞、または天然状態の種々の分化型もしくは分化度の分化細胞であり得る。
【0072】
繊維マトリックスに適用される細胞は、該マトリックスに接着されるもの、または一緒になって細胞外マトリックスもしくはメッセンジャー物質(ホルモン)を形成させるために、このマトリックス上に主に2次元で増殖するものである。繊維マトリックスは、好ましくは、特に本発明による繊維のフリースまたは織布の形態の表面構成要素を形成するものである。好ましくは、この繊維マトリックスは多孔質であり、その結果、導入/適用された細胞が貫入し、3次元分布を行い、遺伝的に決定された分化または添加された分化因子によって導入された分化に従って、組織および器官の空間的増殖を開始あるいはメッセンジャー物質を放出することができる。本発明の択一的な実施形態では、マトリックスは、導入/適用された細胞が貫入可能でないが、2次元の細胞分布の可能性と同時に「複合移植片」の意味の組織および器官の3次元増殖の可能性も伴う密な繊維網目として形成される。
【0073】
本発明によるインビトロ増殖方法は、好ましくは、細胞集塊、組織および/または器官のインビトロ製造に供される。
【0074】
本発明の好ましい主題は、上記の方法によって製造され得る細胞集塊、組織および/または器官に関する。かかる細胞集塊、組織および/または器官は、例えば、医薬-組織-器官の相互作用のためのインビトロモデルとして好適である。体外での組織の製造には、広義の用語「組織工学」で要約される種々の方法が使用される。このためには、組織型に応じて、細胞を、その存在組織集塊から単離し、培養する。その後、細胞を、種々の粘稠度の平坦な物質に適用するか、または多孔質もしくはゼラチン質の物質中に導入するかのいずれかとし、それにより、組織の熟成を誘導し、場合により分化因子によって刺激する。組織の熟成は、体外で行っても体内で行ってもよい。本発明による繊維マトリックスは、本明細書において、生分解性および/または生体吸収性である利点を有するが、実施例3に示すように、それでもなお、インビトロ増殖中、一定期間は2次元または3次元形態をほぼ保持している。したがって、本発明の好ましい主題は、好ましくは本発明による繊維から製造された、インビトロ細胞集団が繊維マトリックスの元の2次元または3次元形態と、最初に、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%一致してから4週間後に生分解性および/または生体吸収性の繊維マトリックスである、ポリケイ酸の繊維マトリックスを有する細胞集塊、組織および/または器官に関する。例えば、かかる実施形態の場合、本発明による繊維マトリックスは、好ましくは、動物またはヒトの体内への該細胞集塊、組織および/または器官の適用/組込み後でのみ、分解および/または吸収される。
【0075】
細胞の型に応じて、細胞は、そのマトリックス集塊から、酵素的消化もしくは機械的分離によって事前に遊離されたもの、または生理学的条件下での栄養培地への適用もしくは導入によって増殖するように刺激されたもののいずれかでなければならない。上記の繊維マトリックスは、本明細書において、細胞増殖ためのガイド構造または細胞外マトリックスおよび組織構成成分の蓄積のためのガイド構造としての機能を果たす。本発明によれば、該繊維材料は種々の構成で使用され得る。当業者には、製造対象の(細胞)組織に基づいて、どの構成を選択すべきかがわかるであろう。考えられ得る構成は、以下のものである。
【0076】
1)表面構成要素として、すなわち、本質的には、少なくとも原則として、2次元の細胞分布ならびに平坦な細胞、組織および器官の増殖の可能性のみ(だが、少なくとも主要である可能性)を伴う、実際に適用細胞の範囲を超えて広がる浸透を可能とするが、なお限定的な浸透のみを可能とする密な繊維網目としての構成(すなわち、孔/繊維または網目の間隙の平均サイズは、どのような場合であっても、培養対象の細胞の平均サイズよりも大きく、好ましくは小さい場合すらあり;したがって、細胞は、実際に「繊維内に増殖」することができるが、該繊維の支持体に充分に接着されるようになっているにすぎない);
2)3次元空間構成要素として、すなわち、3次元の細胞分布ならびに細胞、組織および器官の空間的増殖の可能性を伴う、細胞により浸透可能な多孔質繊維網目としての構成(すなわち、孔/繊維または網目の間隙の平均サイズは、どのような場合であっても、培養対象の細胞の平均サイズよりも小さく、好ましくは大きい場合すらある);3)「複合移植片」あるいは細胞、組織または器官および表面鞘組織(例えば、器官包)の組合せによる器官の意味における1)と2)の組合せとしての構成;
3)このバリエーションは、数種類の細胞型で構成された組織構造で可能である。例えば、管は内皮と結合組織からなり、内皮は、血管の内層の機能を果たす平坦な構造を有するが、結合組織は、該管の支持体物質としての機能を果たし、3次元の中空構造を形成している。内皮の増殖のための表面構成要素としての1)と、結合組織の増殖のための3次元空間構成要素としての2)の組合せにより、最終的に管が再構成され得る。
【0077】
この3つのバリエーションのうちの1つによる増殖/製造に特に好適である、すなわち、本発明の好ましい組織型および/または細胞型の一例を以下に挙げる。
【0078】
適用1)には、好ましくは以下の組織:上皮、内皮、尿路上皮、粘膜、硬膜、結合組織;好ましくは、以下の細胞:多能性幹細胞、軟骨細胞(軟骨;軟骨細胞の増殖には2次元の培地が必要であるが、軟骨細胞の分化および軟骨マトリックスの形成には3次元の培地が必要である。ここで、軟骨のみに関しては、細胞は、脱分化して増殖する場合が意図される。分化は適用2)に従う)、骨細胞(骨;2次元または3次元のいずれか、この場合も、軟骨細胞と同じことがあてはまる)、神経細胞(神経)、毛髪細胞(内耳聴覚器官)あるいは任意の分化段階のその前駆細胞(例えば、多能性幹細胞)。
【0079】
適用2)には、以下の細胞:平坦増殖後の適用1)で記載の細胞、器官特異的細胞(例えば、肝細胞、腎細胞、心筋細胞、膵細胞)、内分泌機能を有する/有しないCNSの細胞、例えば、網膜、神経細胞、松果体、ドパミン作動性細胞、脈管形成細胞(例えば、血管細胞)、内分泌または外分泌機能を有する細胞(例えば、島細胞、副腎細胞、唾液線細胞、上皮小体、甲状腺細胞)、免疫系の細胞(例えば、マクロファージ、B細胞、T細胞、あるいは多能性幹細胞などの任意の分化段階のその前駆細胞)。免疫系の細胞は、組織内において、血液脳関門を通過した後、組織型に応じて3次元構造となり、その場所で3次元において作用を示すため、3次元で培養する。
【0080】
適用3)には、以下の線/組織/器官:気管、気管支、脈管、リンパ系組織、尿道、尿管、腎臓、膀胱、副腎、肝臓、脾臓、心臓、脈管、甲状腺、扁桃、唾液線、脳、筋肉(平滑、横紋)、椎間板、半月板、心臓、肺、胆嚢、食道、腸、目。
【0081】
本発明において使用される材料のさらなる適用の可能性は、内分泌または外分泌機能を有し、体内または体外で作用を示す活性物質(例えば、ホルモン、インターロイキン、炎症メディエータ、酵素)を放出する細胞を伴う材料の集団である。すなわち、本発明に従って使用される材料は、内分泌または外分泌機能を有する細胞を有する集団において、体外でも上記の活性物質の集団に対して有用なものであり得、これにより、既知のプロセスにより医薬として身体に利用可能になる。
【0082】
該マトリックスのさらなる使用は、器官および組織に対する外科処置の過程で皮下、粘膜下もしくはその平面で、または身体内部での内因性創傷治癒のためのガイドレールとしての生体吸収性埋入物としてのものである。このために、該材料を、可能であれば、直接、またはさらなる物質と一緒に創傷または器官/組織内に、例えば、医師が外科処置中に、表面構成要素または3次元空間構成要素として組み込む。本発明に従って使用される繊維の形態の生体吸収性で無機系の材料には、細胞を培養するための組織媒体において、小さな変化しか必要とされず、特に、酸性媒体は形成せず、結果として、組織および器官の分化に対するマイナスの影響が抑制される。さらに、組織のpHとは独立して、該物質の完全な分解がもたらされる。組織および/または器官の再構成が同時に起こる結果、生組織が常にみられ、望ましくない病原体集団(感染)の場合は、抗感染医薬の浸透の可能性を伴う。また、繊維マトリックスを、種々の物質群のさらなる活性成分でさらに処理してもよく、適用部位において活性で能動的な作用が示されるだけでなく、遠隔位置の作用部位においても作用が示されることにより、組織および器官の分化に対してプラスの影響の可能性を伴う。このためには、上記の治療活性成分は、特に、一方において抗感染成分を含むだけでなく、他方において創傷治癒、炎症反応および組織分化を補助またはモジュレートする活性成分も含む(例えば、一方において、増殖因子(IGF、TGF、FGFなど)を含み、他方において、グルココルチコイドおよびインターロイキンだけでなく、化学療法剤および免疫抑制剤も含む)。
【0083】
本発明に従って使用される生体吸収性で無機系の繊維により、使用される細胞の接着が可能になり、組織または器官マトリックスの形成の可能性を伴う。同時に、細胞の増殖または組織もしくは器官マトリックスの形成により、繊維構造の分解が起こる。理想的には、組織、器官または細胞の構築速度が、繊維の凝縮の差違による繊維材料の分解速度と相関している。本明細書において、縮合プロセス(すなわち、水の除去、したがって縮重合)があまり進行していないほど、ますます良好に該材料が分解され得るといえる。最も高いOH含有量、したがって最も急速分解性繊維は、後にエタノール中に配置される紡織可能な繊維を用いて得られる。さらに、縮合プロセスは、紡織パラメータ、すなわち、ドローオフ速度、雰囲気、防止温度などによって影響される。このようにして製造される繊維は、生分解性および生体吸収性であり、好ましくは2週間〜10週間の調整可能な期間で溶解され、分解速度は繊維のシラノール基の数と相関している。本発明のさらなる態様は、医薬および/または活性成分で処理した後の本発明による細胞、器官および組織の、医薬-組織-器官相互作用のインビトロモデルとしての使用に関する。この手段によって、動物実験による研究が最小限に抑制または回避される。
【0084】
本発明のさらに特に好ましい主題は、皮膚細胞を栄養溶液の表面に適用して培養し、該栄養溶液上には、本発明による繊維で製造された表面構成要素を配置する、皮膚移植片の製造方法に関する。
【0085】
本発明は、さらに、本発明の好ましい主題において、皮膚細胞と、本発明による繊維を用いた表面構成要素とからなる皮膚移植片に関する。表面構成要素(好ましくは、平面状)により、平坦な、したがって急速な皮膚細胞の増殖が可能になり、場合により、さらに、該繊維に添加されるさらなる含浸医薬の使用を伴う。
【0086】
本発明を、以下の実施例によってより詳細に説明するが、これらに限定されない。
【0087】
表示した粘度はすべて、Firma AntonPaar製の粘度計(Typ Physica MCR300およびMCR301)を使用し、4℃で、10s-1の剪断速度で測定したものである。
【0088】
実施例
実施例1
シリカゾルならびに生体吸収性および生分解性シリカゲル材料
加水分解/縮合の出発物質として、4molのTEOS(テトラエトキシシラン)を含むエタノールを、まず反応槽に導入し、0.01N HNO3溶液の形態の7molの水を添加し、攪拌しながら互いに混合した。混合物を室温で8日間攪拌した。続いて、加水分解/縮合反応による溶液を、ガラスビーカー内で70℃でのエバポレーションおよび縮合中に、概ね水-およびエタノール-無含有溶液に変換させた。この溶液は単相であり、固形物は含有されておらず、1Pa・s(剪断速度 von 10s-1、4℃)の粘度を有していた。この溶液を4℃まで冷却し、この温度での熟成に供した。18日間の熟成期間後、43Pa・s(剪断速度10s-1、4℃)の粘度を有する均一な単相ゾル組成物が得られた。このゾル組成物は、認識可能な固形物相の含有なく存在していた。この均一なゾル組成物は、紡織して繊維を得ることが可能であった。これを、紡織用組成物とも記する。
【0089】
繊維の製造は、慣用的な紡織ユニット内で行った。このために、該紡織用組成物を、-15℃まで冷却した圧力シリンダー内に充填し、これに20バールの空気圧を負荷した。これにより生じた力によって、ゾルをノズルを介して押し出し、それにより、単繊維を形成した。ノズルの直径に応じて、単繊維は、5〜100μmの直径を有した。
【0090】
流動性のハチミツ様の単繊維は、自重によって、圧力シリンダーの下部に配置した紡織シャフト内に落下し、そこで反応して、主に固形で剛性の単繊維を形成した。単繊維は、その表面上ではなお反応性であり、そのため、必要に応じて準備された可動式ベンチに当たると接触領域で互いに粘着する場合があった。可動式ベンチのストロークサイクルが調整可能なことにより、繊維とフリース間に、さらなる架橋がみられた。
【0091】
好都合には、本発明により得られる単繊維は、同等の紡織条件下で得られる繊維(DE 196 09 551 C1の方法によって製造)よりも乾燥していた。この手段により、その後のフリース製造において架橋が少なく、したがって、本発明により柔軟性のフリースが得られた。
【0092】
本発明に従って製造したフリースを、ISO 10993-5(1999);EN 30993-5(1994)による細胞毒物学的試験に供した。フリース材料をDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)で抽出後、抽出物を滅菌濾過し、FCS(ウシ胎仔血清;抽出物中10%FCS)で処理した。FCSで処理した抽出物を、滅菌条件下でL929マウス線維芽細胞に適用し、37℃およびCO2分圧5%で48時間保存した。
【0093】
Triton X 100を毒性対照物質として、細胞培養培地を非毒性対照物質として使用した。細胞数の計数のために細胞を固定し、メチレンブルーで染色した。メチレンブルーの酸性抽出後、色素含有量を光度計測によって測定し、色素の消衰によって細胞計数を求めるために、消衰を標準曲線と比較した。対照と比較した細胞計数の測定により、本発明によるシリカゲル材料は細胞傷害性をもたないことが示された。タンパク質含有量の測定(アルカリによる溶解後、ブラッドフォード法によりタンパク質含有量を測定)および乳酸デヒドロゲナーゼの放出(LDH;光度計測による方法)により結果を確認した。
【0094】
比較例
同じ条件下で、1.5時間の加水分解/縮合時間を用いたDE 196 09 551 C1の実施例と同様にして製造したフリース材料を使用し、毒性の測定を行った。この場合、反応バッチ全体の50%が紡織可能であるにすぎなかった。これにより製造された繊維材料では、細胞傷害性試験において細胞傷害性が検出された。
【0095】
実施例2
さらなる試験において、5種類の繊維質フリース(KG211、KG226、AEH06KGF553、AEH06KGF563およびAEHKGF565)を、吸収性の対照創傷治療剤(Promogran(登録商標))と、モルモットで3ヶ月間実施する創傷治癒試験において比較した。
【0096】
繊維質フリースにおいて、以下の表1に示す製造パラメータの違いによる差が生じる。
【0097】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0098】
試験のため、36匹のモルモットにおいて真皮表皮創傷を外科的に作出した。各動物において、脊柱の両側から約6.25cm2(2.5×2.5cm)の面積の真皮および表皮を取り出した。創傷はメスによって作出した。肉様層は傷付けなかった。創傷用包帯およびPromogran(登録商標)を、それぞれの創傷の上に置いた。該材料を、非接着性創傷用包帯(URGOTUL(登録商標))および半透過性の接着性ポリウレタンフィルム(TEGADERM(登録商標)またはOPSITE(登録商標))で覆った。粘着性絆創膏(ガーゼおよびELASTOPLAST(登録商標))により、創傷を覆った創傷用包帯を保護した。繊維質フリースまたは対照材料を5匹の動物(10例の創傷(n=10)に相当)において試験した。種々の時間間隔で、顕微鏡的、形態計測的および組織学的試験により創傷治癒を評価した。
【0099】
試験した創傷包帯すべての場合で、局所不耐性は観察されなかった。形態計測的検査により、Promogran(登録商標)で処理した創傷は、該フリースで処理したものよりも、いくぶん早く50%の創傷閉鎖が達成されることが示された。しかしながら、完全(100%)またはほぼ完全な(75%、95%)創傷閉鎖を達成するには、Promogran(登録商標)での時間は、ほとんどのフリースと比べて遅れていた。平均して約23日後に、KG211およびKG226で100%治癒が達成されたが、AEH06KGF553、AEH06KGF563およびAEH06KGF565では、平均して約24日後、Promogran(登録商標) では平均して26日後に達成された。
【0100】
KG211動物の組織学的試験では、創傷製造の28日後、良好な創傷治癒が示された(図1a参照)。マクロファージがなお散在的に観察されたため、局所組織反応のみ、依然として完全に安定しなかった。これとは独立して、肉芽組織は目立たず、通常の厚さを示し、新たに形成された閉鎖部上皮層で覆われていた。
【0101】
Promogran(登録商標)の組織学的試験では、創傷製造の28日後の動物は、ひどく空胞が形成され、多形核細胞が貫入した肉芽組織を示した(図1b参照)。KG211とは対照的に、肉芽組織は、上皮層で覆われていなかった。
【0102】
したがって、この創傷包帯では、Promogran(登録商標)と比べ、創傷治癒の最初の4週間において、創傷治癒の短縮と同時に、より良好な肉芽の生成および炎症プロセスの最小限化が示される。
【0103】
実施例3
細胞支持物質としての生分解性および/または生体吸収性の繊維の繊維マトリックスKG119、およびコラーゲンとポリグリコール酸(PGA)を、γ線で滅菌し、インキュベータ内で完全培地中に1時間に入れた。繊維マトリックスKG119は、表面構成要素としてフリースに関与する。これは、表2に示したプロセスパラメータに従って製造した。切断は、スタンピングにより円環状に打ち出した(図3参照)。
【0104】
【表6】

【表7】

【0105】
細胞集団の前に、培地を新しく交換した。次いで、ヒト真皮線維芽細胞を添加した。細胞培養は、24穴Falcon 351147プラスチックプレートにおいて行った。培地は毎日交換した。細胞集団培地は、10%ウシ胎仔血清(FCS)および、抗生物質として100単位/mLのペニシリン、0.25μg/mLのアンホテリシンBおよび0.1mg/mLのストレプトマイシンを補給したGibco製ダルベッコ改変イーグル培地42430-250とした。細胞の培養中、最初に培地を交換後、50μg/mLのアスコルビン酸を培地に添加した。細胞計数の増加に鑑みると、培地を重炭酸ナトリウム溶液バッファー(7.5% Sigma)で処理することがさらに必要であった。細胞標準(細胞支持物質なしの対照細胞)は、一般的な組織培養皿およびガラス製底面のIwakiプレートで培養した。
【0106】
Serotec製の試薬を使用し、Alamar Blue Assayを行った。試薬は、HBSS(フェノール無含有)バッファーで10%に希釈し、37℃に調整し、滅菌濾過した。細胞を有する細胞支持物質をPBS中で洗浄し、次いで、元のプレートから取り出し、組織培養皿およびガラス製底面のIwakiプレートに入れた。
【0107】
Alamar Blue Assayを用いて測定された代謝活性は、細胞計数および個々の細胞の代謝活性の関数である。図2では、1週間(Wk1)、2週間(Wk2)および4週間(Wk4)の培養期間の場合において、種々のマトリックスコラーゲン、PGAおよび繊維マトリックスKG119ならびに支持体構造物のない細胞(対照培養,Ctrl)における真皮線維芽の活性(測定された蛍光値の形態で示す)を比較している。
【0108】
KG119に対する該細胞の一次接着は強力であり、コラーゲンのものと同等であった。KG119およびコラーゲンは、細胞接着に関してPGAを排斥する(データ示さず)。マトリックス上での細胞の増殖が長期であるほど、繊維マトリックスKG119の卓越性がより明白に見られる。図2は、KG119が、その他の細胞支持構造体よりも、細胞の代謝活性に関して勝っていることを示す。高い代謝活性は、測定期間全体(4週間)にわたって保持される。これとは対照的に、コラーゲン、PGAおよび細胞支持構造体のない細胞は、代謝活性を、この期間にわたって維持することができない。KG119のみが、期間全体にわたって代謝活性の保持を伴う高い細胞接着および細胞増殖を示す。
【0109】
図3は、ヒト真皮線維芽細胞との培養前、および4週間の培養期間後の、細胞支持構造体コラーゲン、PGAおよびKG119を示す。コラーゲンおよびPGA細胞支持構造体は、収縮し、かつ分解され、高密度の組織球をもたらす。KG119のみが、その元の形態を維持している。KG119内部では、高密度の真皮組織塊が形成されており、繊維が組織にしっかり結合されている。
【0110】
実施例4
治療活性成分を含むシリカゾルの製造
温度制御可能な反応槽内で、まず、5.4molのテトラエトキシシランをエタノールに導入した。この溶液を約15分間ホモジナイズした。続いて、121gの水で希釈した56gの1N硝酸を、攪拌しながら添加する。この混合物を18時間攪拌した。このとき、反応は、最初はオートサーミックに進行させ、酸の添加後は、37℃で2時間、温度制御した。
【0111】
続いて、混合物を穏やかに混合しながら、12gのリドカインを添加した。この混合物を、予備加熱した温度制御可能な反応槽に移し、元の質量の約38.5%になるまで、6時間の期間にわたって約64℃で、軽く攪拌しながらエバポレートした。この溶液は単相であり、固形物は含有されておらず、約3Pa s(剪断速度10s-1、4℃)の粘度を有していた。この溶液を4℃まで冷却し、この温度での熟成に供した。
【0112】
実施例5
2l容フラスコ内で、1124.98gのTEOSを313.60のEtOHと、攪拌しながら15分間混合する。250ml容ガラスビーカー内で120.76gの水、55.62gの1N HNOおよび0.12gのナノ銀溶液(AgPURETM W 5%、rent a scientist GmbH)を充分に攪拌し、必要に応じて15分間、超音波にて分散させ、希釈したTEOSに添加する。このバッチを標準として、合計18時間(室温で2時間、続いて、40℃の温水浴中で16時間)攪拌する。18時間の反応期間後、少量の黒色粒子がゾル中に見られ、30分間の超音波処理後、濁度の非常に低いゾルが得られる。このゾルに、70℃の反応器内で61.7%の重量減損まで反応性エバポレーションを行う。所望のレオロジーデータが得られるまで、4℃で、ゾルを紡織用組成物に熟成させる。このゾルは、良好に紡織可能であり、創傷包帯は、ドープなしの創傷包帯と比べると、ごくわずかに灰色の着色を有す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I)
SiX4(I)
〔式中、基Xは、同一であるか、または異なっており、ヒドロキシル、水素、ハロゲン、アミノ、アルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニルおよび/またはアルコキシカルボニルを表し、1〜20個の炭素原子を有する、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖、分枝または環状の基であるアルキル基に由来し、酸素もしくはイオウ原子またはアミノ基により中断されていてもよい〕
の1種類以上のSi化合物の加水分解/縮合反応を、酸性触媒作用により、0〜≦7の初期pHで、場合により水溶性溶媒の存在下で、少なくとも16時間、0℃〜80℃の温度で行い、
b)続いてエバポレーションによって、4℃で10s-1の剪断速度で0.5〜2Pa・sの範囲の粘度を有する単相溶液を生成させ、
c)続いて、この溶液を冷却し、
d)速度論的に制御された熟成に供し、均一なゾルを形成させ、これに、工程a)〜d)の1つ以上において、好ましくは工程a)〜c)の1つ以上において、少なくとも1種類の治療活性成分を添加すること
で得られ得る、少なくとも1種類の治療活性成分を含むシリカゾル材料。
【請求項2】
酸性触媒作用のために、硝酸で酸性化したH2Oを、1:1.7〜1:1.9の範囲、好ましくは1:1.7〜1:1.8の範囲のモル比で使用し、加水分解/縮合反応を少なくとも16時間、好ましくは18時間、20〜60℃、特に好ましくは室温(20〜25℃)で行うことを特徴とする、請求項1に記載のシリカゾル材料。
【請求項3】
工程a)の加水分解/縮合反応を、20〜60℃、好ましくは20〜50℃、特に好ましくは室温(20〜25℃)で、少なくとも16時間〜4週間、好ましくは18時間〜4週間、特に好ましくは24時間〜18日間の期間、特に好ましくは3〜8日間にわたって行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
工程b)を密閉装置内で、約30〜約90℃の反応温度で進行させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の材料。
【請求項5】
工程c)の溶液が2℃〜4℃、好ましくは4℃に冷却されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の材料。
【請求項6】
工程d)の熟成が2℃〜4℃、好ましくは4℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の材料。
【請求項7】
工程d)において、熟成が、4℃で10s-1の剪断速度および2〜5(4℃,10s-1,1%変形)の損失係数にて、30〜100Pa・sのゾル粘度まで行われることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の材料。
【請求項8】
工程a)で使用されるSi化合物がテトラエトキシシランであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の材料。
【請求項9】
生分解性および/または生体吸収性シリカゲル材料の製造のための材料としての請求項1〜9のいずれかに記載の材料の使用。
【請求項10】
ヒト用医薬および/または医療技術における、特に、創傷処置および/または創傷治癒のための生分解性および/または生体吸収性繊維およびフリースの製造のための紡織材料としての請求項1〜8いずれかに記載の材料の使用。
【請求項11】
生体吸収性および/または生体活性の粉末、モノリスおよび/またはコーティングの製造のための材料としての請求項1〜8いずれかに記載の材料の使用。
【請求項12】
請求項1〜8いずれかに記載のシリカゾルから開始される少なくとも1つのさらなる工程によって調製されることを特徴とする、生体吸収性および/または生体活性の粉末、モノリスおよび/またはコーティング。
【請求項13】
請求項1〜8いずれかに記載のシリカゾルが、続いて、紡織プロセスにおいて紡織されることを特徴とする、生分解性および/または生体吸収性繊維材料。
【請求項14】
繊維材料が、繊維、エンドレス単繊維、フリースおよび/または織布を含むことを特徴とする、請求項13に記載の生分解性および/または生体吸収性繊維材料。
【請求項15】
a)式(I)
SiX4(I)
〔式中、基Xは、同一であるか、または異なっており、ヒドロキシル、水素、ハロゲン、アミノ、アルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニルおよび/またはアルコキシカルボニルを表し、1〜20個の炭素原子を有する、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖、分枝または環状の基であるアルキル基に由来し、酸素もしくはイオウ原子またはアミノ基により中断されていてもよい)
の1種類以上のSi化合物の少なくとも16時間の加水分解/縮合反応、
b)好ましくは、反応系の同時の穏やかな混合による単相溶液の製造のためのエバポレーション、
c)単相溶液の冷却
d)シリカゾル材料の製造のための速度論的に制御された熟成
により、全反応バッチの少なくとも70%まで紡織可能なシリカゾル材料の製造方法。
【請求項16】
細胞によって形成された細胞外マトリックスのための細胞支持物質および/またはガイド構造としての機能を果たす請求項13および/または14に記載の繊維の繊維マトリックスである、細胞のインビトロ増殖のための方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法に従って製造され得る、細胞集塊、組織および/または器官。
【請求項18】
インビトロ細胞集団が、繊維マトリックスの元の2次元または3次元形態と、最初に少なくとも60%一致してから4週間後に生分解性および/または生体吸収性の繊維マトリックスである、ポリケイ酸の繊維マトリックスを有する細胞集塊、組織および/または器官。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−527913(P2011−527913A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517774(P2011−517774)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004806
【国際公開番号】WO2010/006708
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(504142961)バイエル・イノヴェイション・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (22)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Innovation GmbH
【Fターム(参考)】