ヒト造血幹細胞のexvivo増殖
造血幹細胞の数を増大させる方法およびキットを提供する。この方法は、単離されたIGFBR−2およびアンジオポエチン様タンパク質(Angptl)を含む培地中で細胞をインキュベートするステップを含む。増殖させたHSC、ならびに合成培地中でヒトHSCを増殖させるための培地およびキットを提供する。増殖させたヒトHSCを個体に投与する方法、ならびに特定の成長因子およびサイトカインを投与することによって個体を治療する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府資金
この技術は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された交付金番号R01 DK067356−01、1 K01 CA120099−01および075/P−IRFTの下で、米国政府からの補助を受けて作られたものであり、米国政府は、本技術における特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
造血幹細胞(HSC)は、増殖および分化を通して、すべてのリンパ球様細胞、骨髄細胞および赤血球細胞を生じる。したがって、多分化能HSCは、骨髄移植の基礎であり、多くの臨床状態への造血遺伝子治療の魅力的な標的細胞と考えられている。しかし、これらの重要な臨床適用は、動物から取得できるHSCの数が少ないこと、ならびにin vitroでのHSCの培養、および後で患者に投与するためのHSCの増殖が難しいことによって厳しく妨げられてきた。
【0003】
造血幹細胞など、幹細胞の培養および増殖は、通常、幹細胞の生存および数の増加を可能にする未知因子の補充を必要とする。それらの未知因子は、未特定な一団の因子を分泌する支持細胞と共に幹細胞を共培養することによって供給でき、または未特定な血清産物を増殖培地中に添加することによって供給できる。そのような補充培地は、多くの未知因子を含有しており、したがって、化学的に特定されていない。
【0004】
in vivoで使用するため、とりわけヒトで使用するために幹細胞が調製されている場合、未知因子の存在は問題である。多くの場合において、未知因子は非ヒト供給源由来である(ウシ血清産物など)。非ヒト成分は、被移植者体内で免疫反応を引き起こしうる。または、未特定な成分には、プリオンまたはウイルスなど、幹細胞の被移植者に有害となる未検出の病原体が含まれうる。増殖させる細胞の多分化能を維持しながら、既知組成培地中におけるヒトHSCのin vitroおよび/またはex vivo増殖を可能にする方法および組成物が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
造血幹細胞をin vitroで増殖させるための合成培地(definedculture meium)をここに提供する。この合成培地は、相互に協力してヒトHSCの増殖を刺激する特定の複数の成長因子を含有する。驚いたことに、本明細書で明らかにするように、形質移入されていない293T細胞によって産生されたある因子がヒトHSCのin vitro増殖を促進した。その因子がインスリン様増殖因子結合タンパク質2(IGFBP−2)であることをここに示す。外因性IGFBP−2が有する、様々なIGF依存性細胞培養系における細胞増殖への抑制作用(Hoeflichら、Canc.Res.、61巻、8601〜8619頁(2001年))を鑑みると、IGFBP−2がヒト造血幹細胞の増殖を促進するという新知見は予想外である。
【0006】
本明細書で明らかにするように、IGFBP−2は、1または複数種のAngptlタンパク質との組合せで、合成培地中におけるヒトHSCの増殖を促進する。一部の実施形態では、合成培地中で、ヒトHSCが250倍以上に増殖する。
【0007】
一部の実施形態では、ヒトHSCを増殖させる方法は、合成培地中でヒト細胞をインキュベートするステップを含む。合成培地は、IGFBP−2およびアンジオポエチン様タンパク質(Angptl)を含みうる。一部の実施形態では、合成培地は、IGFBP−2、Angptl5、線維芽細胞成長因子1(FGF−1)、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)を含みうる。一部の実施形態では、この方法は、合成培地中で5日間ヒト細胞をインキュベートするステップを含む。
【0008】
一部の実施形態では、ヒト細胞は初代ヒト細胞である。一部の実施形態では、ヒト細胞は、1つまたは複数の血液細胞型に分化することができる細胞を少なくとも1つ含有している。一部の実施形態では、ヒト細胞は造血幹細胞を少なくとも1つ含有している。
【0009】
一部の実施形態では、ヒト細胞は、CD133およびCD34からなる群から選択された表面マーカーを発現する細胞として、インキュベートされる前に選択されたものである。
【0010】
造血幹細胞を個体に投与する方法も提供する。一部の実施形態では、その方法は、個体またはドナーからヒト細胞を得るステップを含む。一部の実施形態では、ヒト細胞の少なくとも1つが、1つまたは複数の血液細胞型に分化することができる。細胞は、ここで提示するように、in vitroで増殖する。一部の実施形態では、IGFBP−2と、アンジオポエチン2またはAngptlからなる群から選択された成長因子とを含む合成培地中で細胞をインキュベートする。インキュベートされた細胞は、その後、個体に投与する。
【0011】
患者を治療する方法であって、個体にIGFBP−2およびAngptlを投与するステップを含む方法を提供する。
【0012】
ここに記載の通りに、in vitroで増殖させた造血幹細胞も提供する。
【0013】
in vitroでヒト造血幹細胞を増殖させるための培地およびキットも提供する。一部の実施形態では、キットは、造血幹細胞を培養するのに適した合成培地と、単離されたIGFBP−2と、アンジオポエチン2またはAngptlからなる群から選択された別の成長因子とを含む。成長因子は、別々の成分として提供することも、カクテルとして提供することも、既にHSC成長培地と混合された状態で提供することもできる。
【0014】
加えて、造血幹細胞を含めた、培養中の幹細胞を、細胞を増殖させるのに十分な条件の下において、アンジオポエチン2などのアンジオポエチンを有効な量含有する培地中で、幹細胞を含有する細胞の集団を培養することによって増殖させる方法も提供する。アンジオポエチンに特異的に結合する単離された造血幹細胞も提供する。in vitroで造血幹細胞を増殖させるための培地およびキットも提供する。培地およびキットは、アンジオポエチン2などのアンジオポエチンと、造血幹細胞をin vitroで増殖させるための説明書とを含む。
【0015】
ここに提供した方法および組成物の結果として、多分化能を維持しながら、ヒトHSCを合成培地中で増殖させることができる。これらの細胞は、研究で使用するためにin vitroで増殖させることもでき、または、後で個体に投与するためにin vitroで増殖させること(本明細書ではex vivo増殖とも呼ばれる)もできる。
【0016】
ここに記載した様々な実施形態は、相補的でありえ、ここに含まれている教示に鑑みて、当業者によって理解される方法で組み合わせるか、または併用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】Angptl5(四角)またはAngptl3(菱形)の存在下における総ヒト臍帯血細胞の培養物の総細胞数対日数を示す図である。
【図1B】1×106の非培養ヒト単核臍帯血細胞(カラム1)、またはAngptl5(カラム2)もしくはAngptl3(カラム3)を足した無血清STIF中で培養された1×106の初期ヒト臍帯血細胞の子孫を移植された、NOD/SCIDマウスの骨髄におけるヒトキメリズムの量を示す図である。各シンボルは、移植の2カ月後にアッセイされた単一の移植マウスにおける生着を表す(n=5〜12)。(*レーン1の値から有意に異なる。スチューデントのt検定、p<0.001)。
【図2A】10ng/ml SCF、20ng/ml TPO、20ng/ml IGF−2および10ng/ml FGF−1を補充した無血清IMDM中(棒1)、または293T細胞から新たに収集した調整培地中(棒2)、または凍結/解凍した後の同じ調整培地中(棒3)で培養した後のマウスHSCを用いたパーセント再増殖を示す棒グラフである。
【図2B】上部パネルが、図2Aの棒2によって代表された状態からの培養細胞を受け取った、マウスの骨髄系統およびリンパ系統における、移植5カ月後の再増殖の代表的なFACS分析および棒グラフを示し、下部パネルが、図2Aの棒2によって代表される状態からの培養細胞を受け取った6匹のマウスから得られた、Tリンパ様細胞(棒1)、Bリンパ様細胞(棒2)および骨髄細胞(棒3)のパーセント再増殖データの概要を示す図である。
【図3】SDS PAGEゲルで分離し、抗IGFBP−2抗体でプロービングした、IGFBP−2(レーン1)、無血清3T3調整培地(レーン2)および無血清293T調整培地(レーン3)のウエスタンブロットを示す図である。
【図4A】Angptl3を足したSTIF培地中(カラム1および4)、Angptl3およびIGFBP−2を足したSTIF培地中(カラム2および5)Angptl3およびTimp−1を足したSTIF培地中(カラム3および6)で培養した後のマウスHSCをマウスに生着させた1カ月後(左パネル)および4カ月後(右パネル)のパーセント再増殖を示す図である。
【図4B】Angptl3を足したSTF培地中(カラム1および4)、IGFBP−2を足したSTF培地中(カラム2および5)、Angptl3およびIGFBP−2を足したSTF培地中(カラム3および6)で培養した後のマウスHSCをマウスに生着させた1カ月後(左パネル)および4カ月後(右パネル)のパーセント再増殖を示す図である。
【図4C】100ng/mlの精製Angptl3および500ng/mlのIGFBP−2を含有する調整STF培地中で21日間培養する前(左)および後(右)における、成体BM SP CD45+Sca−1+細胞の再増殖能力の限界希釈分析を示す図である。
【図5A】Angptl5を含有するSTF培地中(四角)、またはSTF培地中(菱形)で培養したヒトHSCの、時間(日)経過における細胞数を示す図である。
【図5B】8000の新たな細胞(カラム1)、15000の新たな細胞(カラム2)、STF培地中で培養した8000の細胞(カラム3)、またはAngptl5およびIGFBP−2STFを含有する培地中で培養した8000の細胞(カラム4)による%再増殖を示す図である。
【図5C】非培養(新鮮)または培養ヒト臍帯血CD133+細胞を移植された代表的なマウスにおける、2カ月目のヒト造血生着のFACS分析を示す図である。
【図5D】非培養細胞を移植されたマウス(左パネル)およびAngptl5およびIGFBP−2を含有するSTF培地中で培養された細胞を移植されたマウス(右パネル)から得られた、ヒト骨髄細胞(CD15/66b+、カラム1、4)、Bリンパ様細胞(CD34−CD19/20+、カラム2、5)および原始細胞(CD34+、カラム3、6)での%再増殖を示す多系列生着データの概要を示す図である。
【図5E】Angptl5およびIGFBP−2を含有するSTF培地中で培養され細胞(図5Bのレーン4)を移植され、亜致死放射線照射された二次被移植者体内に移植された、一次マウスからの骨髄を移植された二次被移植者の、ヒト総造血細胞(CD45/71+、カラム1)、骨髄細胞(CD15/66b+、カラム2)、Bリンパ様細胞(CD34−CD19/20+、カラム3)および原始細胞(CD34+、カラム5)での%再増殖を示す図である。
【図6A】低レベルのO2(菱形)および正常レベルのO2(四角)内で培養された、Angptl5およびIGFBP−2を含有するSTF培地中における、2×105のヒト臍帯血CD133+細胞の、時間経過における総細胞数を示す図である。
【図6B】低レベルのO2(菱形)および正常レベルのO2(四角)内で培養された、Angptl5およびIGFBP−2を含有するSTF培地中で培養されたヒトHSCについての、時間経過における、CD34+原始細胞の数を示す図である。
【図6C】培養前の細胞の再増殖能力の限界希釈分析を示す図である。
【図6D】低レベルのO2(四角)および正常レベルのO2(菱形)内で、500ng/mlのAngptl5および100ng/mlのIGFBP−2を含有するSTF培地中で10日間培養した後の細胞の再増殖能力の限界希釈分析を示す図である。
【図6E】20000の非培養CD133+細胞(左パネル、n=8)または正常O2における、5000の初期CD133+細胞からの培養子孫(右パネル、n=10)を移植されたNOD/SCID被移植者における多系列生着を示す図である。
【図7】1×105のCD45.1骨髄細胞と共に、アンジオポエチン2含有STIF培地中で培養された20のCD45.2骨髄SP Sca−1+CD45+細胞でCD45.1被移植者(n=4〜5)に移植された4カ月後のパーセント再増殖を示す棒グラフである。
【図8】例示的アンジオポエチン様タンパク質のアミノ酸配列である配列番号3〜6を示す図である。
【図9】例示的アンジオポエチン2タンパク質のアミノ酸配列である配列番号1と、例示的IGFBP−2タンパク質のアミノ酸配列である配列番号2とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
造血幹細胞(HSC)を増殖させる(propagating and/or expanding)方法と、これらの方法で産生したヒトHSCとを提供する。一部の実施形態では、ヒトHSCを合成培地中で増殖させる。ここに提供の方法の結果として、培養細胞内に通常存在している未知因子または夾雑物を含まないex vivo増殖させたヒトHSCが利用可能となっている。
【0019】
培地
本明細書に記載の通り、適した細胞は、合成培地(本明細書では、既知組成培地とも呼ぶ)中でインキュベートされる。合成培地または既知組成培地は、培地中に存在するあらゆる構成成分およびそれらの量が既知である、細胞を培養するための栄養培地を指す。一部の実施形態では、培地は液体である。他の実施形態では、培地は、錠剤もしくは粉末などの固体物質、またはゲルなどの半固体物質でありうる。さらに他の実施形態では、培地は、メッシュおよび多孔性ビーズなどの固体構造を含有する液体でありうる。合成培地は、ダルベッコのMEM、IMDM、X−Vivo15(Cambrex社)、RPMI−1640およびStemSpan(Stem Cell Technologies社)など、構成成分のベース混合物を含みうる。ヘパリン、血清アルブミン、インスリンおよびトランスフェリンなど、またはそれらの組合せなど、既知量の他の構成成分をベース混合物に補充することができる。一部の実施形態では、10μg/mlヘパリンを培地に補充する。添加される成分は、例えば、ヒト、ウシおよびマウス源を含めた、任意の適した動物源から得られたものでありうる。例えば、StemSpanは、ウシ血清アルブミン、ヒトインスリンおよびヒトトランスフェリンを補充したIMDMを含む。添加される構成成分および成長因子は、生物源(組織、血清または調整培地など)から単離することもでき、組換え産生させることもできる。組換え体成長因子および他の構成成分を産生するのに適した宿主には、例えば細菌、酵母または細胞培養が含まれる。細胞培養は、例えば、昆虫細胞培養または哺乳動物細胞培養でありうる。成長因子は、グリコシル化されたものでありうる。一部の実施形態では、成長因子は、天然に存在する成長因子と同じ様式、または実質的に同じ様式でグリコシル化されている。本明細書に記載の成長因子または他の添加構成成分は、例えば、マウス、非ヒト霊長類およびヒトを含めた任意の適した動物からのものでありうる。
【0020】
「単離された」または「精製された」構成成分または成長因子は、産生されたとき(例えば、生物源によって、または形質移入細胞内での発現など、組換え法によって産生されたとき)にそれが共在している他の物質を実質的に含まない。一部の実施形態では、単離されたとは、構成成分または成長因子が、産生されたときに共在している他の物質の0.1%未満、0.01%未満または0.001%未満が存在していることを意味する。別の実施形態では、合成培地は無血清である。
【0021】
本明細書に記載のGenBank受託番号を有する、成長因子の例示的配列は、これによって参照により本明細書に組込まれているものとする。
【0022】
IGFBP−2
一部の実施形態では、合成培地は、単離されたインスリン様成長因子結合タンパク質2(IGFBP−2)を含有する。IGF結合タンパク質(IGFBP)は、IGF受容体と同じかそれを超える親和性でIGF−1およびIGF−2に結合する循環タンパク質のファミリーである。IGFBP−2は、様々なIGF依存細胞培養系における細胞増殖への阻害作用を有することでも知られている(Hoeflichら、Canc. Res.61巻、8601〜8619頁(2001年))。驚いたことに、本明細書に明らかにするように、IGFBP−2は、ヒトHSCのin vitro増殖に正の効果を有する。
【0023】
例示的IGFBP−2タンパク質配列は、例えば、受託番号AAA36048(ヒトインスリン様成長因子結合タンパク質2;配列番号2、図9)としてGenBankで提示されている。IGFBP−2に加えて、適したIGFBP−2には、天然に存在するアミノ酸配列内に変化を有するタンパク質および/またはポリペプチドが含まれ、改変配列が天然IGFBP−2の少なくとも何らかの機能的能力を保持することを、当業者はさらに理解するであろう。適した改変には、保存性アミノ酸変化(例えば、あるアミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換すること)と共に、非必須アミノ酸残基に加える変化またはそれらの除去が含まれる。
【0024】
適したIGFBP−2は、配列番号9と少なくとも60%の配列同一性を共有する。他の実施形態では、適したIGFBP−2は、配列番号9またはその生理活性部分と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を共有する。
【0025】
IGFBP−2の適した類似体には、望ましい活性を保持する断片および関連分子が含まれる。IGFBP−2の対応する受容体に結合し、かつIGFBP−2受容体への結合に伴う1つまたは複数の生物学的作用を開始できる分子も、本明細書に提示の技術(例えば、方法、HCS、培地およびキット)の範囲内にある。
【0026】
アンジオポエチン様タンパク質
1または複数種のアンジオポエチン様タンパク質(Angptl)は、構造がアンジオポエチンに類似している分泌性糖タンパク質のファミリーの任意のメンバーでありうる(Oikeら、Int. J. Hematol.、80巻、21〜8頁(2004年))。Angptlタンパク質は、N末端コイルドコイルドメインと、C末端フィブリノゲン様ドメインとを含有している。アンジオポエチンとは異なり、Angptlタンパク質は、チロシンキナーゼ受容体Tie2に結合しない。Angptlタンパク質には、Angptl 1、2、3、4、5、6および7が含まれる。Angptlタンパク質には、ミクロフィブリル関連糖タンパク質4(Mfap4)ならびにその類似体および等価物が含まれる。Angptl2は、Kim,I.ら、J Biol Chem、274巻、26523〜8頁(1999年)によって記載されている。加えて、Angptlタンパク質は、商業的に取得可能である(R&D Systems社、Abnova Corp社)。一実施形態では、AngptlはAngptl3である。別の実施形態では、AngptlはAngptl5である。
【0027】
例示的Angptlタンパク質は、例えば、受託番号AAH12368(ヒトAngptl1:配列番号3;ヒトAngptl2前駆体;配列番号4)、受託番号AAH58287(ヒトAngptl3前駆体;配列番号5)、受託番号AAH23647(ヒトAngptl4;配列番号6)および受託番号AAH49170(ヒトAngptl5;配列番号7)としてのGenBankで提示されている。配列番号3〜7を図8に示す。他の適したAngptlタンパク質は、配列番号3〜7のうちのいずれか1つと少なくとも60%の配列同一性を共有するものである。他の実施形態では、適したAngptlタンパク質は、配列番号3、4、5、6または7などの例示的Angptl配列またはその生理活性部分と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を共有する。Angptl7の例示的配列は、Genbank受託番号AAH01881に見出される。Mfap4の例示的配列は、Genbank受託番号NP_002395に見出される。
【0028】
Angptlsについて上記に提示した配列に加えて、当業者は、適したAngptlに、天然に存在するアミノ酸配列内に変化を有するタンパク質および/またはポリペプチドが含まれ、改変配列が天然Angptlの少なくとも何らかの機能的能力を保持することをさらに理解するであろう。適した改変には、保存性アミノ酸変化(例えば、あるアミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換すること)と共に、非必須アミノ酸残基に加える変化またはそれらの除去が含まれる。
【0029】
Angptlの適した類似体には、望ましい活性を保持する断片および関連分子が含まれる。例えば、Angptlの適した類似体は、コイルドコイルドメインを含有するアンジオポエチン様タンパク質の断片である。例えば、アンジオポエチン様タンパク質のコイルドコイルドメイン。別の類似体は、フィブリノゲン様ドメインである。コイルドコイルドメインおよびフィブリノゲン様ドメインなどの、Angptlの断片は、完全長タンパク質と比較して、発現および精製するのが、より容易でありうる。Angptlの対応する受容体に結合し、かつAngptl受容体への結合に伴う1つまたは複数の生物学的作用を開始できる分子も、本明細書に提示の技術の範囲内にある。
【0030】
アンジオポエチン2
一部の実施形態では、合成培地はアンジオポエチン2を含有する。例示的アンジオポエチン2タンパク質配列は、例えば、受託番号NP_001138(ヒトアンジオポエチン2;配列番号1、図9)としてGenBankに提示されている。加えて、当業者は、適したアンジオポエチン2に、天然に存在するアミノ酸配列内に変化を有するタンパク質および/またはポリペプチドが含まれ、改変配列が天然アンジオポエチン2の少なくとも何らかの機能的能力を保持することをさらに理解するであろう。適した改変には、保存性アミノ酸変化(例えば、あるアミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換すること)と共に、非必須アミノ酸残基に加える変化またはそれらの除去が含まれる。
【0031】
適したアンジオポエチン2は、配列番号1と少なくとも60%の配列同一性を共有する。他の実施形態では、適したアンジオポエチン2は、配列番号1またはその生理活性部分と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を共有する。
【0032】
アンジオポエチン2の適した類似体には、望ましい活性を保持する断片および関連分子が含まれる。アンジオポエチン2の対応する受容体に結合し、かつアンジオポエチン2受容体への結合に伴う1つまたは複数の生物学的作用を開始できる分子も、本明細書に提示の技術の範囲内にある。
【0033】
他の成長因子
IGFBP−2、アンジオポエチン2、または1もしくは複数種のAngptlに加えて、本技術の方法で造血幹細胞の増殖を促進するのに有用な他の成長因子またはサイトカインには、1または複数種の線維芽細胞成長因子(FGF)、インスリン成長因子、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)が含まれうる。したがって、別の実施形態では、培地は、FGF、IGF、TPOおよびSCF、またはそれらの類似体および等価物のうちの少なくとも2つを含有する。それらの等価物は、野生型または組換え産生されたサイトカインとしてのこれらの因子(すなわち、FGF、TPO、IGFおよびSCF)に類似の生物活性を有する分子が含まれる。類似体には、望ましい活性を保持する断片および関連分子が含まれる。例えば、TPOはmpl受容体のリガンドであり、したがって、mpl受容体に結合し、mplへのTPO結合に伴う1つまたは複数の生物学的作用を開始できる分子も、本技術の範囲内にある。TPOミメティックの一例は、Cwirlaら、Science、276巻、1696頁(1997年)に見出される。
【0034】
サイトカインおよび成長因子は、例えば、Amgen社(Thousand Oaks,Calif.)、R&D Systems社(Minneapolis,MN)およびImmunex社(Seattle,Wash.)など、いくつかの供給業者から購入できる。
【0035】
上述のように、サイトカインまたは成長因子の濃度は、約0.1ng/mLから約1.0μg/mLまでの範囲にある。別の実施形態では、約1ng/mlから約500ng/mLまでの因子が使用される。別の実施形態では、約10ng/mlから100ng/mlまでの因子が使用される。成長因子の他の有用な濃度は、本明細書に含まれている教示を用いて、当業者が容易に決定できる。
【0036】
別の実施形態では、培地中に、FGF−1、TPOおよびSCFも含有されている。別の実施形態ではSCFが10ng/ml、TPOが20ng/ml、FGF−1が10ng/mlで存在している。別の実施形態では、培地中に、IGF−2、FGF−1、TPOおよびSCFも含有されている。成長因子またはサイトカインの他の有用な濃度は、本明細書に含まれている教示を用いて、当業者が容易に決定できる。
【0037】
本明細書に記載の通り、所与のアミノ酸配との同一性または相同性は、2つの配列間の同一性パーセントとして決定できる。相同性は、GCGプログラムパッケージ内で提供されているGAPなどのコンピュータープログラムによるものなど、当技術分野で知られている方法を用いて決定できる(Wisconsinパッケージ用プログラムマニュアル、バージョン8、1994年8月、Genetics Computer Group、575 Science Drive,Madison,Wis.,USA 53711)(Needleman, S. B.およびWunsch, C. D.(1970年)、Journal of Molecular Biology、48巻、443〜453頁)。
【0038】
造血幹細胞のex vivo培養
細胞
培養する1または複数の細胞には、1つまたは複数の血液細胞型に分化することができる任意の細胞が含まれうる。例示的な血液細胞型には、貪食免疫細胞(例えば顆粒球)、単球(例えばマクロファージ前駆細胞)、マクロファージ、好酸球、赤血球、血小板形成細胞(例えば巨核球)、Tリンパ球、Bリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。適した細胞には、個体またはドナーから得られた初代細胞が含まれる。適した細胞は、自己複製できるもの、すなわち、数を増やしまたは増大でき、かつ親細胞と同じ発生段階のままでいられるものでもありうる。
【0039】
適した細胞は、例えば、限定されるものではないが、骨髄、末梢血、動員末梢血(MPB)、胎児肝および臍帯血を含めた、造血幹細胞の任意の既知供給源から単離できる。臍帯血について、例えば、Issaragrishiら、N.Engl.J.Med.、332巻、367〜369頁(1995年)で論じられている。骨髄細胞は、限定されるものではないが、腸骨(例えば寛骨から腸骨稜を経て)、脛骨、大腿骨、脊椎または他の骨小腔を含めた、骨髄供給源から得ることができる。幹細胞の他の供給源には、ES細胞、胚卵黄嚢、胎児肝および胎児脾臓が含まれるが、これらに限定されない。個体またはドナーから細胞を得る方法は当技術分野でよく知られている。
【0040】
骨髄を単離するには、許容できる緩衝剤と共に、限定されるものではないが、ウシ胎児血清(FCS)または他の天然に存在する因子を任意選択で補充した塩溶液を含めた、適切な溶液を用いて、骨を洗い流すことができる。一実施形態では、緩衝剤は低濃度であり、通常約5から約25mMまでである。好都合な緩衝剤は、HEPES、リン酸緩衝剤および乳酸緩衝剤が含まれるが、これらに限定されない。骨髄は、従来の技法に従って、骨から吸引することもできる。
【0041】
本技術の適した細胞および造血細胞は、造血幹細胞が存在する任意の動物から得ることができる。適した動物には、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、イヌ、ネコおよびマウスなどが含まれる。一実施形態では、細胞はヒト細胞であり、さらに別の実施形態では、細胞はマウス細胞である。
【0042】
候補ヒト造血幹細胞集団の長期生着能に関する動物モデルには、非肥満糖尿病/重症複合免疫不全症マウス(NOD/SCID)モデル、SCID−hu骨モデル(Kyoizumiら(1992年)、Blood、79巻、1704頁;Murrayら(1995年)、Blood、85(2)巻、368〜378頁)および子宮内ヒツジモデル(Zanjaniら(1992年)、J.Clin. Invest.、89巻、1179頁)が含まれる。ヒト造血の動物モデルに関する総説には、Srourら(1992年)、J. Hematother.、1巻、143〜153頁およびそれに引用されている参考文献を参照されたい。幹細胞のin vitroモデルは、5〜8週間後に間質共培養で産生されるコロニー形成性細胞の数の限界希釈分析に基づいた長期培養開始細胞(LTCIC)アッセイである(Sutherlandら(1990年)、Proc.Nat'l Acad. Sci.、87巻、3584〜3588頁)。LTCICアッセイは、別の一般的に使用される幹細胞アッセイである敷石状領域形成細胞(CAFC)アッセイ、およびin vivoでの長期生着能と相関していることが示されている(Breemsら(1994年)、Leukemia、8巻、1095頁)。
【0043】
本明細書で使用される場合、増殖(expansion or propagation)には、細胞数の任意の増大が含まれる。増殖には、例えば、培養を開始するのに使用される細胞集団内に存在するHSCの数を超える、造血幹細胞の数の増大が含まれる。ここで提供する方法は、造血幹細胞などの既存細胞の生存の増大を提供する。生存という用語は、生きているまたは機能している状態を継続する能力を指す。
【0044】
ここで提供する方法は、内皮前駆細胞(Shi、Q.ら(1998年)、Blood.、92巻、362〜367頁)、骨髄間質幹細胞(Owen,M.(1988年)、J. Cell Science、補10巻、63〜76頁)、間充織幹細胞(Pittenger, M.F.およびMarshak, D.R.(2001年)、Marshak,D.R.、Gardner, D.K.およびGottlieb, D.編集、Cold Spring Harbor, New York、Cold SpringHarbor Laboratory Press社、349〜374頁)および骨格筋幹細胞(Gussoni, E.ら(1999年)、Nature、401巻、390〜394頁)、胚幹細胞および他のものなど、他のタイプ成体幹細胞を含めた、アンジオポエチン2および/またはアンジオポエチン様タンパク質および/またはIGFBPの存在下で増殖する任意の幹細胞の増殖を刺激するのに使用できる。別の実施形態では、幹細胞は、HSCと同じ前駆体−血管芽細胞−を共有すると考えられている内皮前駆細胞である。
【0045】
ここで提供する方法では、細胞の亜集団も使用できる。例えば、骨髄または他の供給源から得られた精製「サイドポピュレーション」(SP)細胞を使用できる。HSCの他の濃縮集団も使用できる。HSCの濃縮集団を単離する方法は、当技術分野で知られており、例えば、SP細胞を取得する方法は、Goodellら、J. Exp. Med.、183巻、1797〜806頁(1996年4月1日)に記載されている。
【0046】
加えて、幹細胞が濃縮された細胞亜集団も、ここに記載の方法で使用できる。細胞集団からの幹細胞の分離は、細胞選別(例えば蛍光活性化細胞選別)、磁性ビーズおよび充填カラムを含めた、多数の方法によって行える。これらの方法は通常、幹細胞に特徴的な特定の細胞表面マーカーの存在および/または分化細胞に特徴的な特定な細胞表面マーカーの不在に依存している。これらの方法は、細胞集団の生着または分化能を測定する機能アッセイに依存するものでもありうる。そのようなマーカーおよび機能アッセイは当技術分野で知られている。
【0047】
幹細胞の濃縮の例は、米国特許第5061620号に記載の通り、CD34+Thy−1+LIN−表現型を有するものとして選択された細胞集団である。この表現型の集団は通常、約1/20の平均CAFC頻度を有する(Murrayら(1995年)同上;Lansdorpら、J. Exp. Med.、177巻、1331頁(1993年))。造血幹細胞の高濃縮集団を単離する方法は、米国特許出願第5,681,559号に提供されている。
【0048】
本明細書に記載の通り、造血幹細胞は、赤血球、ならびにリンパ様細胞および骨髄細胞を含めた白血球を含めた、いくつかのタイプの血液細胞のいずれにも分化する能力を有する。本明細書に記載の通り、HSCには、in vivoにおける長期生着能を有する造血細胞が含まれる。長期生着能(例えば長期造血幹細胞)は、動物モデルまたはin vitroモデルを用いて測定できる。
【0049】
細胞は、ここで提供する方法に従って培養する前に、例えば血液細胞系統の幹細胞または未成熟細胞を濃縮したものでありうる。幹細胞が高度に濃縮されている細胞集団およびそれらを得る方法は、国際公開第95/05843号;国際公開第95/03693号および国際公開第95/08105号に記載されている。一部の実施形態では、1つまたは複数の細胞は、造血幹細胞が実質的に濃縮されている細胞の集団を含む。他の実施形態では、ここで提供する方法による培養細胞は、間質細胞を実質的に含まない。
【0050】
一部の実施形態では、ここで提供する方法で使用される細胞は、細胞表面における特定のマーカーが存在または不在であるものとして選択され、またはそれについて濃縮される。例えば、一部の実施形態では、細胞は、一次組織の動物源に特有な幹細胞マーカーが存在するものとして選択される。他の実施形態では、細胞は、系統特異的マーカーが不在であるものとして選択される。一部の実施形態では、細胞は、特定のマーカーが存在し、かつ他のマーカーが不在であるものとして選択される。特定のマーカーを有する細胞、または特定のマーカーを有しない細胞を単離する方法は当業者によく知られている。
【0051】
系統特異的マーカーに関して、系統特異的マーカーの不在または低レベル発現は、系統特異的マーカーに特異的な抗体の結合の欠如によって特定できる。ここで提供する方法で使用するための細胞または細胞供給源は、ネガティブ選択技法にかけて、系統特異的マーカーであると発現する細胞を除去し、系統陰性(「Lin−」)である細胞を維持することができる。Lin−は通常、T細胞(CD2、3、4および8など)、B細胞(B220、CD48、CD10、19および20など)、骨髄細胞(Mac−1、Gr−1、CD14、15、16および33など)、ナチュラルキラー(「NK」)細胞(CD244、CD2、16および56など)、RBC(Teri19およびグリコホリンAなど)、巨核球(CD41)、肥満細胞、好酸球または好塩基球に関連するものなどのマーカーが欠如している細胞を指す。ネガティブ選択の方法は当技術分野で知られている。系統特異的マーカーには、CD38、HLA−DRおよびCD71が含まれる。
【0052】
最初に特定の系統の細胞または特定の表現型を有する細胞を除去することによって、細胞を分離する様々な技法を利用できる。分離の手順には、物理的分離と、磁力分離(抗体でコーティングされた磁性ビーズを用いる)と、アフィニティクロマトグラフィーと、モノクローナル抗体に連結されるか、またはモノクローナル抗体と共に併用される、限定されるものではないが、補体および細胞毒を含めた細胞毒性薬剤と、固体基質、例えばプレートに付着した抗体を用いる「パニング」と、エルトリエーションまたは任意の他の好都合な技法とが含まれうるが、これらに限定されない。正確かつ迅速な分離を提供する技法には、フローサイトメトリー(例えば蛍光活性化細胞選別)およびサイトスピンが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
物理的分離技法の使用には、物理特性(密度勾配遠心および対流遠心エルトリエーション)、細胞表面特性(レクチンおよび抗体親和性)、および生体染色特性(ミトコンドリア結合色素rho123およびDNA結合色素ヘキスト33342)の相違に基づくものが含まれるが、これらに限定されない。これらの手順は、この技術分野の当業者によく知られている。
【0054】
上述の通り、造血幹細胞の濃縮を用いて、または用いずに得られた細胞は、直ちに使用することも、液体窒素温度で凍結および保存することもできる。凍結細胞は、解凍して、本明細書に記載の方法で使用することができる。
【0055】
細胞培養
HSC細胞増殖の一部の実施形態では、例えば一次組織源または適した動物から得られた細胞を適した培地でインキュベートする。適した条件には、33℃から39℃、好ましくは約37℃におけるインキュベーションが含まれる。HSCは、1〜10%の酸素濃度で培養できる。一部の実施形態では、HSCが低酸素条件下で培養される。一部の実施形態では、細胞は、標準酸素条件下でインキュベートされる。標準酸素条件は、例えば、5%CO2および15%以上の酸素でありうる。一部の実施形態では、標準酸素条件が21%O2である。低酸素条件は、例えば、5%CO2および5%O2でありうる。
【0056】
培地は、培養時間中を通して置換できる。別の実施形態では、培地の半分を1週間に2回新たな培地で置換する。細胞が3から30日間培養されうる。別の実施形態では、HSCを含有する細胞集団を少なくとも4週間培養する。別の実施形態では、HSCを含有する細胞集団を最長2週間まで培養する。別の実施形態では、HSCを含有する細胞集団を7から14日間培養する。別の実施形態では、HSCを含有する細胞集団を10日間培養する。
【0057】
増殖容器内および適した培地容積で、1つまたは複数の細胞を培養またはインキュベートすることによって、HSCを増殖させることができる。細胞は、培養ウェルが1ウェルあたり約1〜100の細胞を含有するように培養できる。細胞集団が骨髄である場合、培地1mLあたり約1×102から約1×107細胞の密度で、細胞を培養できる。別の実施形態では、培地1mLあたり約1×105から約1×106細胞の密度で、細胞を培養できる。別の実施形態では、細胞集団はサイドポピュレーション(SP)骨髄細胞を含む。SP骨髄細胞は、より低密度、例えば、約1×102から5×103細胞/mlで培養できる。別々の態様では、細胞集団は動員末梢血から得ることができる。動員末梢血細胞は、約20000細胞/mLから約50000細胞/mLの密度で培養でき、別の実施形態では、動員末梢血細胞は、約50000細胞/mLの密度で培養される。
【0058】
12、24もしくは96ウェルプレート、12.5cm2T型培養フラスコまたは気体透過バッグなど、任意の適した増殖容器、フラスコまたは適切な管が、ここで提供する方法で使用できる。そのような培養容器は、Falcon社、Corning社またはCostar社から購入できる。本明細書で使用される場合、「増殖容器」は、自立的であるかないか、または増殖装置に組込まれているかないかに関わらず、細胞を増殖させるためのいかなるチャンバーまたは容器も含まれることが意図されている。
【0059】
本明細書に記載の通りにin vitroで増殖させた造血幹細胞も提供する。培養で増殖した幹細胞の子孫は、親細胞と完全に同じ(遺伝学的に、形態学的に、または表現型的に)ではない可能性があると理解されている。しかし、ここで提示する通り、幹細胞の子孫は、上述した1つまたは複数の血液細胞型に分化する少なくとも何らかの能力を有する。1つまたは複数の血液細胞型に発生する能力などの機能的特性は、例えば、本明細書に記載の方法および系統マーカーを用いて測定できる。
【0060】
ex vivo増殖造血幹細胞の使用
本技術の増殖培養造血幹細胞は、移植、創薬、遺伝子クローニング、遺伝子送達および遺伝子発現を含めた様々な適用に使用できる。
【0061】
移植
ここで提供する造血幹細胞は、対象または個体に投与できる。一部の実施形態では、ここで提供する方法で産生された造血幹細胞を、骨髄移植など、細胞ベースの療法に用いる。適した対象または個体は、上述の任意の動物が含まれる。対象または個体は、造血または細胞ベースの療法をin vivoで研究するのに適した任意の動物でありうる。脊椎動物。対象または個体は、細胞ベースの治療を必要とする任意の動物でありうる。一部の実施形態では、個体は哺乳動物である。哺乳動物には、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ウシ、ウマ、イヌおよびネコなどが含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0062】
移植幹細胞は、自系(処置される個体に由来する)または同種(同じ種のドナーに由来する)であるか、組織適合性が一致しているドナーから得られたものでありうる。一部の実施形態では、移植幹細胞は異種(被移植者とは異なった種の動物に由来する)でありうる。ヒト自家骨髄移植および異系骨髄移植は、現在、白血病、リンパ腫、および生命に危険を及ぼす他の疾患などの疾患の療法として用いられている。
【0063】
ここで提供する増殖細胞の、患者への投与に関しては、増殖細胞の有効な量が、わずか数百以下から、数百万以上までもの範囲でありうる。投与するべき増殖細胞の数は、医療専門家がよく知っている他の因子のなかでも、限定されるものではないが、処置するべきサイズまたは総容積を含めた、処置される障害の詳細、ならびに被移植者の必要性および条件に応じて異なることが理解されよう。一部の実施形態では、ヒト100kgあたり103〜1010の細胞を、対象または個体に投与または移植する。投与または移植の方法は、当技術分野でよく知られており、それらには、例えば注入が含まれる。ここで提供する増殖細胞は、例えば、静脈注入によって投与できる。
【0064】
一部の実施形態では、細胞の単回投与を行う。他の実施形態では、多回投与を使用する。多回投与は、連続した3〜7日間の初期治療レジメを行い、その後、複数回繰り返すなど、周期的な期間にわたって行うことができる。
【0065】
増殖細胞は、限定されるものではないが、放射線治療および化学療法などの処置の後、あらゆる範囲の造血細胞を個体で再構成するのに使用できる。そのような療法は、意図的に、または骨髄移植もしくはリンパ腫、白血病、および他の腫瘍状態、例えば乳癌の治療の副作用として、造血細胞を破壊する。
【0066】
ここで提供する増殖細胞は、特定の造血系統のための細胞の供給源としても有用である。増殖造血細胞の成熟、増殖、および1つまたは複数の選択された系統への分化は、限定されるものではないが、エリスロポエチン(EPO)、コロニー刺激因子、例えば、GM−CSF、G−CSFまたはM−CSF、SCF、Flt−3リガンド、インターロイキン、例えば、IL−1、−2、−3、−4、−5、−6、−7、−8、−13などを含めた適切な因子と共に、または幹細胞の再生、拘束および分化の原因となる因子を分泌する、間質細胞もしくは他の細胞と共に細胞を培養することによって実現しうる。
【0067】
創薬
本明細書に記載の方法によって得られる造血幹細胞は、創薬に有用である。例えば、幹細胞のそのような生物反応を促進または抑制する培養条件または成長因子は、試験される条件または因子に細胞を暴露することによって同定できる。このようにして、例えば、これらの因子の受容体またはその因子の生物活性を妨害する薬剤も同定できる。
【0068】
ここで提供する方法で産生された造血幹細胞は、幹細胞を様々な造血系統に分化させるアッセイで使用できる。これらのアッセイは、例えば、幹細胞の自己再生、拘束または分化を促進または阻害する因子などの物質を同定するために、容易に適合させることができる。
【0069】
遺伝子クローニング戦略
ここで提供する造血細胞は、例えば、サブトラクティブハイブリダイゼーションによって、またはこれらの生物学的イベントに関連しているか、または造血細胞型に特徴的な標的抗原に特異的なモノクローナル抗体を用いた発現クローニングによって、その発現が幹細胞または他の造血細胞の増殖、拘束、分化および成熟に関連する遺伝子を同定して、クローニングするのに使用できる。
【0070】
遺伝子送達および発現
造血幹細胞は、対象における遺伝子送達または発現の重要な標的でもある。したがって、ここで提供する造血細胞は、細胞を個体に再導入する前に、遺伝子改変することができる。例えば、その発現が個体への治療効果を有すると予測されている遺伝子を、ここで提供する1または複数の造血細胞に導入することができる。細胞は、本明細書に記載の通りに、培養および/または増殖させる前または後に遺伝子改変できる。培養細胞に遺伝子を導入する方法は当技術分野でよく知られている。
【0071】
本技術の一部の態様では、治療遺伝子を発現する細胞で、欠損および/または損傷している細胞を補充、増強および/または置換することによって個体を処置できる。細胞は、正常な適合ドナーの細胞に由来するものでも、処置すべき個体からの幹細胞(すなわち自系)に由来するものでもよい。発現可能形態の正常遺伝子を導入することによって、そのような欠損を患う個体に、遺伝的欠損を代償し、症状の一部またはすべてを除去、緩和または低減する手段を提供できる。
【0072】
発現ベクターを自家または同種増殖造血細胞に導入して発現させることも、当技術分野で知られている方法による相同組換えまたは非相同組換えによって、細胞のゲノムを改変することもできる。このようにして、個体における遺伝的欠損を修正することも、幹細胞で天然に欠失している遺伝能力を与えることもできる。例えば、限定されるものではないが、β−地中海貧血症、鎌状赤血球貧血、アデノシンデアミナーゼ欠損、リコンビナーゼ欠損およびリコンビナーゼ調節遺伝子欠損を含めた疾患をこの方法で修正できる。造血細胞に関連していない疾患、例えば、限定されるものではないが、ホルモン、酵素および成長因子を含めた分泌タンパク質の欠失に関連した疾患も処置できる。適切な調節開始領域の制御下における、対象とする遺伝子の誘導発現により、天然でそのタンパク質を正常に産生する細胞におけるものと同様な様式で、そのタンパク質を産生(および分泌)することが可能となる。
【0073】
造血幹細胞培養の形質導入
ここで提供する造血幹細胞は、遺伝的に改変できる。造血幹細胞への遺伝子の導入は、標準的な技法、例えば、感染、形質移入、形質導入または形質転換によるものでありうる。治療遺伝子でHSC細胞に形質導入することができる。例えば、形質導入は、レトロウイルスベクター(例えば、実施例、国際公開第94/29438号、国際公開第97/21824号および国際公開第97/21825号に記載の通りに)、またはポックスウイルスベクターなどのウイルスベクターを介したものでありうる。形質導入がex vivoである場合には、それに続いて、形質導入細胞を被移植者に投与する。したがって、ここで提供する技術は、ここに開示する方法によって遺伝子をex vivoまたはin vivoで投与することによって、HSCへの遺伝子導入が適用できる疾患の処置を包含する。例えば、限定されるものではないが、β−地中海貧血症、鎌状赤血球貧血、アデノシンデアミナーゼ欠損、リコンビナーゼ欠損、リコンビナーゼ調節遺伝子欠損などを含めた疾患を、治療遺伝子の導入によって修正できる。遺伝子治療に関する他の適応は、正常な幹細胞が利点を有し、化学療法中に選択圧を受けるのを可能にする薬剤耐性遺伝子の導入である。適した薬剤耐性遺伝子には、多剤耐性(MDR)タンパク質をコードする遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
遺伝子導入方法の例には、例えば、裸のDNA、CaPO4沈殿、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞微量注入、ならびにウイルスベクター、アジュバント補助DNA、遺伝子銃およびカテーテルなどが含まれる。別の実施形態では、ウイルスベクターが使用される。
【0075】
対象とする1つまたは複数のポリヌクレオチドは、当技術分野でよく知られている方法を用いてベクターに挿入できる。例えば、インサートおよびベクターDNAを、相互に対形成し、かつリガーゼで連結できる相補的な末端を各分子上に生成する制限酵素と適した条件下で接触させることができる。代替として、制限ポリヌクレオチドの末端に、合成核酸リンカーを連結することができる。これらの合成リンカーは、ベクターDNA内の特定の制限部位に対応する核酸配列を含有する。さらに、例えば、以下のもの、すなわち、哺乳動物細胞の安定的または一過性形質移入体を選択するためのネオマイシン遺伝子などの選択マーカー遺伝子;高レベル転写のための、ヒトCMV前初期遺伝子からのエンハンサー/プロモーター配列;mRNA安定性のための、SV40からの転写終結シグナルおよびRNAプロセシングシグナル;適切なエピソーム複製のためのSV40ポリオーマ複製起点およびColE1;多目的多重クローニング部位;ならびにセンスおよびアンチセンスRNAのin vitro転写のための、T7およびSP6 RNAプロモーターのうちの一部またはすべてを含有するベクターに挿入するために、終止コドンおよび適切な制限部位を含有するオリゴヌクレオチドを連結することもできる。他の手段も、当技術分野でよく知られており、利用可能である。
【0076】
造血幹細胞の改変は、導入されるトランスジーンの構成的発現または誘導性発現のいずれかのために作製された発現カセットの使用を含みうる。そのような発現カセットは、プロモーター、開始コドン、終止コドンおよびポリアデニル化シグナルなどの調節エレメントを含有しうる。幹細胞内、または個体に注入した後に幹細胞から生じる細胞の中で作用可能である適したエレメントを使用できる。さらに、これらのエレメントがタンパク質をコードするヌクレオチド配列に作用可能に連結し、それによってヌクレオチド配列が幹細胞内で発現でき、かつ、それゆえタンパク質が産生できることが必要である。開始コドンおよび終止コドンは通常、タンパク質をコードするヌクレオチド配列の一部であると考えられる。
【0077】
導入された配列の発現を特定の細胞型で引き起こすのに使用できるプロモーターの例には、T細胞およびNK細胞における発現用のグランザイムA、幹細胞および前駆細胞における発現用のCD34プロモーター、細胞傷害性T細胞における発現用のCD8プロモーター、ならびに骨髄細胞における発現用のCD11bプロモーターが含まれる。加えて、調節可能プロモーターを使用できる。誘導性プロモーターなどの調節可能プロモーターは市販されている。
【0078】
調節エレメントに作用可能に連結したトランスジーンを含有する外因性遺伝物質は、機能的な細胞質分子もしくは機能的なエピソーム分子として細胞内に残留することも、それが細胞の染色体DNAに組込まれることもある。外因性遺伝物質は、細胞内に導入されて、プラスミドの形態の別離した遺伝物質としてそこに残ることもある。代替として、直鎖状DNAを細胞に導入してもよく、直鎖状DNAは、染色体に組込まれうる。細胞内にDNAを導入する場合、染色体へのDNA組込みを促進する試薬を添加してもよい。組込みを促進するのに有用なDNA配列も、DNA分子に含まれうる。代替として、細胞内にRNAを導入してもよい。
【0079】
選択マーカーは、本技術の造血幹細胞内への望ましい遺伝子の取込みをモニターするのに使用できる。これらのマーカー遺伝子は、任意のプロモーターまたは誘導性プロモーターの制御下のものでありうる。これらは、当技術分野でよく知られており、それらには、栄養物、抗生物質などの刺激に対する細胞の感受性を変える遺伝子が含まれる。遺伝子には、neo、puroおよびtk、ならびに多剤耐性(MDR)のものなどが含まれる。他の遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、ルシフェラーゼおよびLacZなど、それらを求めて容易にスクリーニングできるタンパク質を発現する。
【0080】
本明細書で使用される場合、治療遺伝子は、一遺伝子全体でも、欠損内因性遺伝子から生じる、患者における欠損を代償できる遺伝子の機能的に活性な断片のみでもありうる。治療遺伝子には、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンス抑制に有用な遺伝子、およびリボザイム媒介治療用のリボザイムも包含される。優性な抑制オリゴヌクレオチドおよびペプチドをコードする治療遺伝子、ならびに調節タンパク質およびオリゴヌクレオチドをコードする遺伝子もこの技術に包含される。通常、遺伝子治療では、単一の治療遺伝子を導入するが、特定の疾患の治療には複数の遺伝子が必要となりうる。治療遺伝子は、欠損遺伝子の正常コピー、例えば野生型コピー、または機能相同体でありうる。別の実施形態では、治療遺伝子は、野生型の優性抑制変異体である。ベクターあたり複数の遺伝子を投与することができ、または代替として、いくつかの適合性ベクターを用いて複数の遺伝子を送達することもできる。遺伝的欠損に応じて、治療遺伝子は調節配列および非翻訳配列を含みうる。ヒト患者の遺伝子治療用には、治療遺伝子は通常、ヒト起源のものであろうが、高い相同性と、ヒトで生物学的に同一であるか同等な機能とを示す、他の近縁種からの遺伝子も、その遺伝子産物が受容者に有害な免疫反応を誘導しない場合には使用できる。例えば、その遺伝子産物がヒトでグルコースをグリコーゲンに変換できる霊長類インスリン遺伝子は、ヒト遺伝子の機能的等価物であると考えられるであろう。処置で使用するのに適した治療遺伝子は疾患に応じて異なるであろう。例えば、鎌状赤血球貧血を処置するのに適した治療遺伝子は、グロビン遺伝子の正常コピーである。SCIDを処置するのに適した治療遺伝子は、正常ADA遺伝子である。
【実施例】
【0081】
結果
Angptl5またはAngptl3の存在下における総ヒト臍帯血細胞の培養はヒトHSCのex vivo増殖を刺激する。
【0082】
Angptl3またはAngptl5を含有するSTIF培地中で総ヒト臍帯血細胞を培養した(Conklin, Dら、Genomics、62巻、477〜82頁(1999年);Zeng, L.ら、J Hum Genet、48巻、159〜62頁(2003年))。
【0083】
100ng/mlのAngptl3またはAngptl5を含有する無血清STIF培地に2.5×107の総臍帯血細胞を1×106細胞/mlの密度で播種し、示された時間における総細胞数を計数した。23日間の培養の後、Angptl3存在下における総細胞数は、2.6±0.3×108にまで10倍に増加し(図1A、菱形)、Angptl5と共に培養した細胞は2.2±0.3×108にまで増加した(四角)。培養細胞は、主に懸濁細胞を含有し、少数の付着亜集団を伴っていた。
【0084】
ex vivo増殖細胞が生着できるかどうか試験するために、NOD/SCID再増殖アッセイを行った。図1Bは、1×106の非培養ヒト単核臍帯血細胞、または培養された1×106の初期ヒト臍帯血細胞の子孫を移植されたNOD/SCIDマウスの骨髄におけるヒトキメリズムの量を示す。各シンボルは、移植の2カ月後にアッセイされた単一の移植マウスにおける生着を表す(n=5〜12)。(*レーン1の値から有意に異なる。スチューデントのt検定、p<0.001)。したがって、1×106もしくは3×106の非培養細胞、または1×106の始原細胞の培養子孫を、亜致死照射されたNOD/SCID被移植者に注射した。Angptl5と共に19日間培養した9.2×106の細胞を(1×106の最初にプレーティングされた総臍帯血細胞の子孫である)、移植した場合、移植の2カ月後に8.8%の平均ヒト造血キメリズムが観察された(図1B、レーン2)。これは、同等な1×106の非培養細胞によって示された0.6%生着よりはるかに大きい(図1B、レーン1;p、<0.001、スチューデントのt検定)。Angptl3の存在下で23日間培養された細胞も、7.1%の平均キメリズムで被移植者に生着した(図1B、レーン3)。
【0085】
非形質移入293T細胞はHSCのex vivo増殖を刺激する。
【0086】
驚いたことに、ここで明らかにされるように、非形質移入293T細胞から収集された無血清調整培地がHSCのex vivo増殖を刺激する。
【0087】
10ng/ml SCF、20ng/ml TPO、20ng/ml IGF−2および10ng/ml FGF−1を補充した無血清IMDM中(STIF培地;図2A、棒1)、または293T細胞から新たに収集した調整STIF培地中(棒2)、または凍結/解凍した後の同じ調整培地中(棒3)で新たに単離された20のCD45.2骨髄SP Sca−1+CD45+細胞を10日間培養した。培養細胞は、1×105のCD45.1総骨髄細胞と共にCD45.1被移植者(n=5〜6)に共移植した。
【0088】
図2Bは、移植5カ月後(n=6)における、図2Aの棒2によって代表される条件での培養細胞の多系統貢献を示す。上部パネルに示すデータは、移植5カ月後(図1Aの棒2から)の1匹のマウスからの末梢血液単核細胞の代表的FACSプロットである。各四分画内の細胞のパーセントが示されている。図1Aの棒2のマウスから得られた、Tリンパ様細胞、Bリンパ様細胞および骨髄細胞のパーセント再増殖データの概要が下部パネルにプロットされている。
【0089】
HSCのex vivo増殖を刺激した潜在的候補タンパク質を同定するために、無血清293T調整培地を質量分析で分析した。いくつかのタンパク質に由来するペプチドが同定された。70kDより小さいタンパク質を含有していた、293T細胞の無血清IMDMベース調整培地の画分の質量分析で同定されたペプチドの部分的なリストを表1に示す。対照無血清IMDM試料と共通して見出されたタンパク質は示されていない。
【0090】
【表1】
ここで明らかにするように、IGFBP−2は無血清293T調整培地中に発現される。図3は、抗ヒトIGFBP−2ポリクロナール抗体で検出された、精製されたヒトIGFBP−2(陽性対照;レーン1)、無血清3T3調整培地(陰性対照;レーン2)および無血清293T調整培地(レーン3)のウエスタンブロット分析を示す。
【0091】
精製されたIGFSP−2はHSCのex vivo増殖を刺激する。
【0092】
ここで明らかにするように、IGFBP−2はHSCのex vivo増殖を刺激する。100ng/ml Angptl3を含むSTIF培地中(棒1および4)、500ng/ml IGFBP−2を含む同じ培地中(棒2および5)、および200ng/ml Timp−1を含む同じ培地中(棒3および6)で20のCD45.2骨髄SP Sca−1+CD45+細胞を5日間培養した(図4A参照)。その後、これらの細胞を1×105のCD45.1総骨髄細胞でCD45.1被移植者(n=5)に共移植した。移植の1カ月後または4カ月後における生着を図4Aに示す。(*棒4および6の値から有意に異なる。スチューデントのt検定、p<0.05)。
【0093】
10ng/ml SCF、20ng/ml TPO、10ng/ml FGF−1(STF培地)、および100ng/ml Angptl3を含む無血清培地中(棒1および4)、500ng/ml IGFBP−2を含むSTF培地中(棒2および5)、ならびに500ng/ml IGFBP−2および100ng/ml Angptl3を含むSTF培地中(棒3および6)で、20のCD45.2骨髄SP Sca−1+CD45+細胞を10日間培養した(図4B参照)。その後、これらの細胞を1×105のCD45.1総骨髄細胞でCD45.1被移植者(n=6〜7)に共移植した。移植の1カ月後または4カ月後における生着を図4Bに示す。(*および**はそれぞれ棒4または棒5の値から有意に異なる。スチューデントのt検定、p<0.05)。
【0094】
図4Cは、100ng/mlの精製Angptl3および500ng/mlのIGFBP−2を含有する無血清調整STF培地中で21日間培養する前(左)および後(右)における、成体BM SP CD45+Sca−1+細胞の再増殖能力の限界希釈分析を示す。照射されたCD45.1近交系マウスに1×105のCD45.1 BM競合者細胞および1、5、25もしくは100の新たに単離されたSP CD45+Sca−1+細胞(左;n=24)または0.2、1、4もしくは10のSP CD45+Sca−1+細胞の培養子孫(右;n=26)を注射した。100の新たに単離されたSP Sca−1+CD45+細胞および4または10の入力細胞の培養子孫はすべて、被移植者で再増殖した。これらのデータポイントはプロットされていない。注射された細胞の数に対する、移植4カ月後の有核末梢血細胞中に含有するCD45.2集団が1%未満である被移植者マウスのパーセントがプロットされている。
【0095】
Angptl5およびIGFBP−2の存在下におけるヒト臍帯血CD133+細胞の培養はHSCのex vivo増殖を250倍超刺激する。
【0096】
マウスHSCのex vivo増殖を補助するのに、IGFBP−2がIGF−2を置換できることは、驚くべき新知見であった。加えて、STF培地の存在下で、IGFBP−2はヒト臍帯血HSC CD133+細胞のex vivo増殖を250倍超促進した。
【0097】
1×105のヒト臍帯血CD133+細胞の培養を無血清STF培地中、または500ng/ml Angptl5および500ng/ml IGFBP−2を補充した無血清STF培地中で開始し、低O2環境(5%O2)で培養した。総細胞数を計数した。図5Aに示す通り、総細胞数は、無血清STF培地またはAngptl5およびIGFBP−2を含有する無血清STF培地のいずれかにおいて、11日間の培養の後に200倍超増加した。
【0098】
IGFBP−2およびAngptl5は、マウスモデルでヒト臍帯血細胞の生着およびキメリズムを促進する。
【0099】
8000または15000の非培養(新鮮)ヒト臍帯血CD133+細胞、またはAngptl5およびIGFBP−2を含むか、もしくは含まない無血清STF培地中で11日間培養された8000の始原CD133+細胞からの子孫を移植されたNOD/SCIDマウスの骨髄におけるヒトキメリズムの量を測定した。8000の非培養CD133+細胞は、移植の2カ月後に、7匹の被移植者のうち1匹で生着でき、平均キメリズムは0.2%であった(図5B、レーン1)。15000の非培養CD133+細胞は、増大したが、なお中程度の生着を示し、8匹のマウスのうち4匹の陽性生着があった(全細胞の平均キメリズム2.0%;図5B、レーン2)。著しく対照的に、Angptl5およびIGFBP−2を含む無血清STF培地で培養した培養の後の2.1×106の細胞、すなわち、11日間の培養の後の8000の始原細胞の子孫はすべての被移植者マウスに生着し、8000または15000の非培養細胞と比較して有意に増大したキメリズムを示した(平均39.5%)(図5B、レーン4;p<0.05、スチューデントのt検定)。Angptl5およびIGFBP−2を含まないSTF培地中で培養された同じ数の始原細胞(8000)の培養子孫(現在1.6×106細胞)は、それらの非培養対応物のものと同様に、乏しい生着しか示さなかった(図5B、レーン3)。したがって、Angptl5およびIGFBP−2は、合成培地中のヒトSCID再増殖細胞(SRC)のex vivo増殖を補助する。各シンボルは、移植の2カ月後にアッセイされた単一の移植マウスにおける生着を表す(n=7〜8)。(*レーン1〜3の値と有意に異なる。スチューデントのt検定、p<0.05)。
【0100】
図5Cは、非培養(新鮮)または培養ヒト臍帯血CD133+細胞を移植された代表的なマウスにおける、2カ月目のヒト造血生着を示す。(図5B)のレーン1によって代表される条件(新鮮)または(図5B)のレーン4によって代表される条件(培養)における、移植2カ月後の1匹のマウスからの骨髄細胞の代表的FACSプロット。各四分画内の細胞のパーセントが示されている。Angptl5およびIGFBP−2を含有する無血清STF培地中で培養された細胞での移植(図5Bのレーン4)は、非培養細胞を移植されたマウス(図5Bのレーン1)よりはるかに高い、ヒト総造血細胞(CD45/71+)、骨髄細胞(CD15/66b+)、Bリンパ様細胞(CD34−CD19/20+)および原始細胞(CD34+)の生着を示した。
【0101】
非培養細胞(図5Bレーン2)ならびにAngptl5およびIGFBP−2を含有するSTF培地中で培養された細胞(図5Bレーン4)を移植されたマウスの多系列生着の概要を図5Dに示す。8000の細胞の子孫は、培養の後、移植の2カ月後に骨髄系統およびリンパ系統を再増殖させた。これは、ヒト幹細胞活性の増殖を実証するものである。非培養細胞を移植された一部のマウスは、ゼロパーセントのドナー再増殖を有していた。これらのデータポイントはプロットされていない。(*値が非培養細胞の値と有意に異なる。スチューデントのt検定、p<0.05)。図5Dは、非培養または培養ヒト臍帯血CD133+細胞を移植された代表的なマウスにおける、2カ月目のヒト造血生着を示す。8000の細胞の子孫は、培養の後、移植の2カ月後に骨髄系統およびリンパ系統を再増殖させた。これは、ヒト幹細胞活性の増殖を実証するものである。
【0102】
培養ヒトHSCの増殖
SCID再増殖細胞(SRC)の自己複製能を測定するために、非培養細胞(図5Bのレーン2)またはAngptl5およびIGFBP−2を含有するSTF培地中で培養された細胞(図5Bのレーン4)を移植された一次マウスから骨髄を収集し、それらを亜致死照射された二次被移植者に移植した。一次被移植者からの1本の後足からの骨髄液を2匹の二次被移植者に移植するのに用いた。移植の5〜8週間後に、二次NOD/SCID被移植者における多系列生着をアッセイした(n=12のマウスが移植された)。非培養細胞は二次被移植者に生着できなかったが(示されていない)、培養細胞は、この場合も、二次移植の後に陽性生着を示した(図5E)。これらのデータは、最初の培養期間中におけるヒトHSCの正味の増殖を示す。2つの独立した追加の実験によって、本明細書に記載の方法を用いて、ヒトHSCが培養中に劇的に増殖したことが実証された。
【0103】
正常または低酸素濃度での培養の後に、NOD/SCIDマウスに移植されたヒト臍帯血CD133+細胞の限界希釈分析。
【0104】
ここに提供する培養系は、いくつかの独立した追加の実験で実証されたように、ヒトSRCを劇的に増殖させる。1つの代表的実験では、2×105のヒト臍帯血CD133+細胞を、正常または低O2条件下に、500ng/ml Angptl5および100ng/ml IGFBP−2を含有するSTF培地中で培養した。総細胞数(図6A)およびCD34+細胞数(図6B)を計数した。10日間の培養の後に、これら2通りの条件における総細胞数は有意に相違しておらず、両方とも200倍超増加した(図6A)。それにもかかわらず、5日間の培養の後には、より大きな数のCD34+原始細胞が正常O2対低O2で観察された(図6B)。
【0105】
培養の前(図6C)および後(図6D)のSRC頻度を定量するために、限界希釈アッセイを行った。図6Bおよび6Cに実証されているように、10日間の培養の後に、Angptl5およびIGFBP−2を含有する無血清STF培地中で、低O2または正常O2で培養されたSRCの数は、それぞれ8倍または20倍増加した。注射された入力細胞または入力等価物細胞の数に対する、移植の6〜8週間後に、被移植者マウス骨髄に含有されるヒト造血集団が1%未満である被移植者マウスのパーセントがプロットされている。正常O2または低O2で培養された10000の入力細胞の子孫は、すべての被移植者で再増殖し、これらのデータポイント(ゼロパーセント陰性マウス)はプロットされていない。非培養CD133+細胞のこの特定の試料の再増殖細胞の頻度(CRU)は、64075細胞あたり1である(平均の95%信頼区間:1/23919〜1/171643、n=25)。すなわち、ポアソン統計から計算されるように、平均64075の非培養ヒトCD133+細胞の注入が、移植マウスの63%(=1−1/e)を再増殖させるのに十分である。Angptl5およびIGFBP−2を含有するSTF培地中で、低O2で細胞が培養された場合には、CRU頻度は1/7814入力等価細胞であった(平均の95%の信頼区間:1/3432〜1/17791、n=26)。これは、非培養細胞のものより約8倍大きい。驚いたことに、正常O2で細胞が培養された場合には、CRU頻度が1/3209入力等価細胞にまで増大した(平均の95%の信頼区間:1/1889〜1/5453、n=27)。これは、機能的SRCの総数が約20倍増加したことを示す。
【0106】
図6Eは、20000の非培養CD133+細胞(左パネル、n=8)または正常O2における、5000の始原CD133+細胞からの培養子孫(右パネル、n=10)を移植されたNOD/SCID被移植者における多系列生着を示す。非培養細胞を移植されたいくつかのマウスはゼロパーセントドナー再増殖を有していた。これらのデータポイントはプロットされていない。全造血系統(カラム1および5、CD45/71+)、骨髄系統(カラム2および6、CD15/66b+)、Bリンパ様系統(カラム3および7、CD34−CD19/20+)および原始系統(カラム4および8、CD34+)が示されている。(*値が非培養細胞の値と有意に異なる。スチューデントのt検定、p<0.05)。図6Eに実証されているように、これらの培養細胞は、非培養細胞よりはるかに大きいレベルの多系列生着を有した。
【0107】
低酸素がヒトSRCの増殖を改善することが示唆されている(Danetら、J ClinInvest、112巻、126〜35頁(2003年))。ここで明らかにするように、SRCの著しい増殖が低酸素条件で観察された。予想外に、SRC増殖は、標準酸素圧下ではさらに大きかった。
【0108】
Angptl5およびIGFBP−2の存在下で培養したヒト臍帯血CD34+細胞も、SRCの増殖をもたらした(データは示されていない)。
【0109】
ヒトHSCをex vivo増殖させるためのAngptlsおよびIGFBP−2の使用は、いまや合成培地中でヒトHSCをex vivo増殖できるので、骨髄移植用の臍帯血の臨床使用の増大を可能にする。ここに提供する技術は、HSCを用いた細胞および遺伝子治療の新規戦略の開発に有用であろう。
【0110】
アンジオポエチン2
競合的再構成分析
無血清調整STIF培地中、または500ng/ml精製ヒトアンジオポエチン1、ヒトアンジオポエチン2、マウスアンジオポエチン3もしくはヒトアンジオポエチン4を含有する同一培地中で、20のCD45.2ドナー細胞を10日間培養した。これらの細胞は、1×105の新たに単離したCD45.1競合者骨髄細胞と共に被移植者マウスに共移植した。その混合物を、事前に全量10Gyで照射されている6〜9週齢のCD45.1マウスの群のそれぞれに後眼窩経路で静脈内注射した。移植4カ月後の再構成を測定した。移植マウスの再構成を測定するために、移植後における、示された時間に末梢血を収集し、記載の通り(Zhang, C.C.およびLodish, H.F.、Blood、105巻、4314〜20頁(2005年))、リンパ様区画および骨髄区画内のCD45.1+およびCD45.2+細胞の存在を測定した。簡潔には、後眼窩出血によって末梢血細胞を収集し、それに続いて、赤血球を溶解し、抗CD45.2−FITCと、抗CD45.1−PE、抗Thy1.2−PE(Tリンパ様系統用)、抗B220−PE(Bリンパ様系統用)、抗Mac−1−PE、抗Gr−1−PE(抗Mac−1および抗Gr−1で共染色される細胞は骨髄系統であると考えられた)、 または抗Ter119−PE(赤血球系統用)モノクローナル抗体(BD Pharmingen社)とで染色した。図7に示す通り、アンジオポエチン2はHSCのex vivo増殖を刺激する。
【0111】
方法
マウス。C57 BL/6 CD45.2およびCD45.1マウスはJackson LaboratoryまたはNational Cancer Instituteから購入した。NODISCID(NOD.CB 17−Prkdcscid/J)マウスは、Jackson Laboratoryから購入し、Whitehead Institute動物設備で維持した。すべての動物実験は、M.I.T. 動物実験委員会(Committee on Animal Care)の承認をもって行った。
【0112】
培地。無血清STIF培地は、10μg/mlヘパリン(Sigma社)、10ng/mlマウスSCF、20ng/mlマウスTPO、20ng/mlマウスIGF−2(すべてR&D Systems社から)および10ng/mlヒトFGF−1(Invitrogen社)を補充したStemSpan無血清培地(StemCell Technologies社)である。無血清STF培地は、IGF−2を含まない同一の培地である。示された量の精製Angptl3(R&D Systems社からの贈与)、Angptl5(Abnova社、台湾)またはIGFBP−2(R&D Systems社)を添加した。調整培地は、終夜培養の後に、集密的な293Tまたは3T3細胞から収集した。
【0113】
マウスHSC培養。8〜10週齢のC57BL/6 CD45.2マウスから単離された20のBM SP Sca−1+CD45+細胞を、示された培地160μlと共に、U底96ウェルプレート(3799;Corning社)の1ウェルにプレーティングした。細胞は37℃、5%CO2および正常O2で培養した。競合的移植の目的には、少なくとも6つの培養ウェルからの細胞をプールし、示された数の細胞を各マウスに移植する前に、競合者と混合した。
【0114】
ヒト細胞培養。ヒト総臍帯血単核細胞はCambrex社から購入した。細胞は、100ng/ml Angptl3またはAngptl5を含むSTIF培地1mlあたり1×106細胞でプレーティングした。培地容積は、細胞密度を5×105〜1.5×106細胞/mlに維持するために、5、8、12、15および18日目に新たな培地を添加することによって増大した。細胞は37℃、5%CO2および正常O2で培養した。図5および6の実験で用いたヒト凍結保存臍帯血CD133+細胞は、Cambrex社およびStemCell Technologies社から購入した。細胞は、示された培地200μlと共に、U底96ウェルプレート(3799;Corning社)の1つのウェルに1×104細胞/ウェルで2日間プレーティングした。3日目に、細胞を個々のウェルからプールして、5×104細胞/mlで6ウェルプレートに移した。4および7日目に、細胞密度を2×105細胞/ml(4日目)または7×105/ml(7日目)に保つために、新たな培地を添加した。細胞は37℃、5%CO2、および正常O2または5%O2(低O2)レベルで培養した。
【0115】
NOD/SCID移植。ヒト総臍帯血単核細胞またはCD133+細胞の非培養または培養子孫を、示された日に収集し、亜致死照射された(350ラド)NOD/SCIDマウスに後眼窩経路で静脈内注射した。移植の6〜8週間後または示された時間に、移植された動物からの骨髄有核細胞を、フローサイトメトリーによって、ヒト細胞が存在するかどうか分析した。二次移植には、記載の通り(Hoganら、Proc Natl Acad Sci USA、99巻、413〜8頁(2002年))、一次被移植者の1本の後足からの骨髄液を用いて、2匹の二次被移植者に移植した。限界希釈実験におけるCRUの計算は、L−Calcソフトウェア(StemCell Technologies社)を用いて行った(Zhangら、ProcNatl Acad Sci USA、103巻、2184〜9頁(2006年))。マウスは、マウス骨髄細胞の中に少なくとも1%(一次移植用)または0.1%(二次移植用)のCD45/71+ヒト細胞が検出された場合に、ヒトHSC移植において陽性であると考えられた。
【0116】
フローサイトメトリー。ドナー骨髄細胞は、8〜10週齢のC57BL/6 CD45.2マウスから単離した。SP Sca−1+CD45+細胞は、Zhang, C.C.ら、Nat Med、12巻、240〜5号(2006年)に記載の通りに単離した。マウスHSCの再増殖を分析するために、被移植者CD45.1マウスの末梢血細胞を後眼窩出血によって収集し、それに続いて、赤血球を溶解し、抗CD45.2−FITCと、抗CD45.1−PE、抗Thy1.2−PE(Tリンパ様系統用)、抗B220−PE(Bリンパ様系統用)、抗Mac−1−PE、抗Gr−1−PE(抗Mac−1および抗Gr−1で共染色される細胞は骨髄系統であると考えられた)、または抗Ter119−PE(赤血球系統用)モノクローナル抗体(BD Pharmingen社)とで染色した。図1Bを除いたすべての図に示されている「パーセント再増殖」は、抗CD45.2−FITCおよび抗CD45.1−PEの染色結果に基づいた。すべての場合で、多系列再構成を確認するために、上記に列挙した系統のFACS分析も行った。
【0117】
NOD/SCIDマウスでヒト造血移植を分析するには、出版されているプロトコールに従った(Cashmanら、J. Exp Med、196巻、1141〜9頁(2002年))。簡潔には、総ヒト造血(CD45/71+)細胞集団、ならびにこの集団内における専ら顆粒球形成(CD15/66b+)細胞である部分集合を定量化するために、被移植者NOD/SCIDマウスからの骨髄細胞を、抗ヒトCD45−PE、CD71−PE、CD15−FITCおよびCD66b−FITCで染色した。ヒト前駆集団(CD34+)およびB系統集団(CD34−CD19/20+)を定量化するために、細胞を抗ヒトCD34−FITC、抗ヒトCD19−PEおよびCD20−PEで染色した。図1の実験では、総ヒト造血(CD45/71+)生着のみが測定された。抗ヒトCD34−FITCは、培養中のCD34+細胞を定量化するのに用いた。すべての抗ヒト抗体は、Becton Dickinson社から購入した。
【0118】
FACS選別。ドナー骨髄細胞は、8〜10週齢のC57BL/6 CD45.2マウスから単離した。SP Sca−1+CD45+細胞を選別するために、成体マウス骨髄SP細胞(以前の記載(Zhang, C.C.およびLodish, H.F.、Blood、103巻、2513〜21頁(2004年);Zhang, C.C.およびLodish,H.F.、Blood、105巻、4314〜20頁(2005年)の通りに染色した)を、抗Sca−1−PEおよび抗CD45−FITCでさらに染色し、その後、MoFlo(登録商標)ソーターで細胞選別を行った。
【0119】
競合的再構成分析。示された数のマウスCD45.2ドナー細胞を1×105の新たに単離されたCD45.1競合者骨髄細胞と混合し、その混合物を、事前に全量10Gyで照射されている6〜9週齢のCD45.1マウスの群のそれぞれに後眼窩経路で静脈内注射した。移植マウスの再構成を測定するために、移植後における、示された時間に末梢血を収集し、記載の通り(Zhang, C.C.およびLodish, H.F.、Blood、103巻、2513〜21頁(2004年);Zhang, C.C.およびLodish,H.F.、Blood(2005年))、リンパ様区画および骨髄区画内のCD45.1+およびCD45.2+細胞の存在を測定した。限界希釈実験におけるCRUの計算は、L−Calcソフトウェア(StexnCell Technologies社)を用いて行った。(Zhangら、ProcNatl Acad Sci USA、103巻、2184〜9頁(2006年))。
【0120】
ウエスタンブロット。4〜12%NuPage Bis−Trisポリアクリルアミドゲル(Invitrogen社)上での電気泳働によって、調整培地中の精製タンパク質または粗タンパク質を分析し、タンパク質をニトロセルロース膜にエレクトロブロッティングした。これらの膜を0.1μg/mlの抗ヒトIGFBP−2ポリクロナール抗体(AF674、R&D Systems社)で、その後、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ロバ抗ヤギ抗体でプロービングし、化学発光キット(Millipore社)によって検出した。
【0121】
本技術を特定の実施形態に関して詳細に示し、記述してきたが、当業者ならば、添付されている特許請求の範囲によって定義される本技術の趣旨および範囲から逸脱せずに、形態および詳細における様々な変化をそこに加えることができることが理解されるはずである。
【技術分野】
【0001】
政府資金
この技術は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された交付金番号R01 DK067356−01、1 K01 CA120099−01および075/P−IRFTの下で、米国政府からの補助を受けて作られたものであり、米国政府は、本技術における特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
造血幹細胞(HSC)は、増殖および分化を通して、すべてのリンパ球様細胞、骨髄細胞および赤血球細胞を生じる。したがって、多分化能HSCは、骨髄移植の基礎であり、多くの臨床状態への造血遺伝子治療の魅力的な標的細胞と考えられている。しかし、これらの重要な臨床適用は、動物から取得できるHSCの数が少ないこと、ならびにin vitroでのHSCの培養、および後で患者に投与するためのHSCの増殖が難しいことによって厳しく妨げられてきた。
【0003】
造血幹細胞など、幹細胞の培養および増殖は、通常、幹細胞の生存および数の増加を可能にする未知因子の補充を必要とする。それらの未知因子は、未特定な一団の因子を分泌する支持細胞と共に幹細胞を共培養することによって供給でき、または未特定な血清産物を増殖培地中に添加することによって供給できる。そのような補充培地は、多くの未知因子を含有しており、したがって、化学的に特定されていない。
【0004】
in vivoで使用するため、とりわけヒトで使用するために幹細胞が調製されている場合、未知因子の存在は問題である。多くの場合において、未知因子は非ヒト供給源由来である(ウシ血清産物など)。非ヒト成分は、被移植者体内で免疫反応を引き起こしうる。または、未特定な成分には、プリオンまたはウイルスなど、幹細胞の被移植者に有害となる未検出の病原体が含まれうる。増殖させる細胞の多分化能を維持しながら、既知組成培地中におけるヒトHSCのin vitroおよび/またはex vivo増殖を可能にする方法および組成物が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
造血幹細胞をin vitroで増殖させるための合成培地(definedculture meium)をここに提供する。この合成培地は、相互に協力してヒトHSCの増殖を刺激する特定の複数の成長因子を含有する。驚いたことに、本明細書で明らかにするように、形質移入されていない293T細胞によって産生されたある因子がヒトHSCのin vitro増殖を促進した。その因子がインスリン様増殖因子結合タンパク質2(IGFBP−2)であることをここに示す。外因性IGFBP−2が有する、様々なIGF依存性細胞培養系における細胞増殖への抑制作用(Hoeflichら、Canc.Res.、61巻、8601〜8619頁(2001年))を鑑みると、IGFBP−2がヒト造血幹細胞の増殖を促進するという新知見は予想外である。
【0006】
本明細書で明らかにするように、IGFBP−2は、1または複数種のAngptlタンパク質との組合せで、合成培地中におけるヒトHSCの増殖を促進する。一部の実施形態では、合成培地中で、ヒトHSCが250倍以上に増殖する。
【0007】
一部の実施形態では、ヒトHSCを増殖させる方法は、合成培地中でヒト細胞をインキュベートするステップを含む。合成培地は、IGFBP−2およびアンジオポエチン様タンパク質(Angptl)を含みうる。一部の実施形態では、合成培地は、IGFBP−2、Angptl5、線維芽細胞成長因子1(FGF−1)、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)を含みうる。一部の実施形態では、この方法は、合成培地中で5日間ヒト細胞をインキュベートするステップを含む。
【0008】
一部の実施形態では、ヒト細胞は初代ヒト細胞である。一部の実施形態では、ヒト細胞は、1つまたは複数の血液細胞型に分化することができる細胞を少なくとも1つ含有している。一部の実施形態では、ヒト細胞は造血幹細胞を少なくとも1つ含有している。
【0009】
一部の実施形態では、ヒト細胞は、CD133およびCD34からなる群から選択された表面マーカーを発現する細胞として、インキュベートされる前に選択されたものである。
【0010】
造血幹細胞を個体に投与する方法も提供する。一部の実施形態では、その方法は、個体またはドナーからヒト細胞を得るステップを含む。一部の実施形態では、ヒト細胞の少なくとも1つが、1つまたは複数の血液細胞型に分化することができる。細胞は、ここで提示するように、in vitroで増殖する。一部の実施形態では、IGFBP−2と、アンジオポエチン2またはAngptlからなる群から選択された成長因子とを含む合成培地中で細胞をインキュベートする。インキュベートされた細胞は、その後、個体に投与する。
【0011】
患者を治療する方法であって、個体にIGFBP−2およびAngptlを投与するステップを含む方法を提供する。
【0012】
ここに記載の通りに、in vitroで増殖させた造血幹細胞も提供する。
【0013】
in vitroでヒト造血幹細胞を増殖させるための培地およびキットも提供する。一部の実施形態では、キットは、造血幹細胞を培養するのに適した合成培地と、単離されたIGFBP−2と、アンジオポエチン2またはAngptlからなる群から選択された別の成長因子とを含む。成長因子は、別々の成分として提供することも、カクテルとして提供することも、既にHSC成長培地と混合された状態で提供することもできる。
【0014】
加えて、造血幹細胞を含めた、培養中の幹細胞を、細胞を増殖させるのに十分な条件の下において、アンジオポエチン2などのアンジオポエチンを有効な量含有する培地中で、幹細胞を含有する細胞の集団を培養することによって増殖させる方法も提供する。アンジオポエチンに特異的に結合する単離された造血幹細胞も提供する。in vitroで造血幹細胞を増殖させるための培地およびキットも提供する。培地およびキットは、アンジオポエチン2などのアンジオポエチンと、造血幹細胞をin vitroで増殖させるための説明書とを含む。
【0015】
ここに提供した方法および組成物の結果として、多分化能を維持しながら、ヒトHSCを合成培地中で増殖させることができる。これらの細胞は、研究で使用するためにin vitroで増殖させることもでき、または、後で個体に投与するためにin vitroで増殖させること(本明細書ではex vivo増殖とも呼ばれる)もできる。
【0016】
ここに記載した様々な実施形態は、相補的でありえ、ここに含まれている教示に鑑みて、当業者によって理解される方法で組み合わせるか、または併用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】Angptl5(四角)またはAngptl3(菱形)の存在下における総ヒト臍帯血細胞の培養物の総細胞数対日数を示す図である。
【図1B】1×106の非培養ヒト単核臍帯血細胞(カラム1)、またはAngptl5(カラム2)もしくはAngptl3(カラム3)を足した無血清STIF中で培養された1×106の初期ヒト臍帯血細胞の子孫を移植された、NOD/SCIDマウスの骨髄におけるヒトキメリズムの量を示す図である。各シンボルは、移植の2カ月後にアッセイされた単一の移植マウスにおける生着を表す(n=5〜12)。(*レーン1の値から有意に異なる。スチューデントのt検定、p<0.001)。
【図2A】10ng/ml SCF、20ng/ml TPO、20ng/ml IGF−2および10ng/ml FGF−1を補充した無血清IMDM中(棒1)、または293T細胞から新たに収集した調整培地中(棒2)、または凍結/解凍した後の同じ調整培地中(棒3)で培養した後のマウスHSCを用いたパーセント再増殖を示す棒グラフである。
【図2B】上部パネルが、図2Aの棒2によって代表された状態からの培養細胞を受け取った、マウスの骨髄系統およびリンパ系統における、移植5カ月後の再増殖の代表的なFACS分析および棒グラフを示し、下部パネルが、図2Aの棒2によって代表される状態からの培養細胞を受け取った6匹のマウスから得られた、Tリンパ様細胞(棒1)、Bリンパ様細胞(棒2)および骨髄細胞(棒3)のパーセント再増殖データの概要を示す図である。
【図3】SDS PAGEゲルで分離し、抗IGFBP−2抗体でプロービングした、IGFBP−2(レーン1)、無血清3T3調整培地(レーン2)および無血清293T調整培地(レーン3)のウエスタンブロットを示す図である。
【図4A】Angptl3を足したSTIF培地中(カラム1および4)、Angptl3およびIGFBP−2を足したSTIF培地中(カラム2および5)Angptl3およびTimp−1を足したSTIF培地中(カラム3および6)で培養した後のマウスHSCをマウスに生着させた1カ月後(左パネル)および4カ月後(右パネル)のパーセント再増殖を示す図である。
【図4B】Angptl3を足したSTF培地中(カラム1および4)、IGFBP−2を足したSTF培地中(カラム2および5)、Angptl3およびIGFBP−2を足したSTF培地中(カラム3および6)で培養した後のマウスHSCをマウスに生着させた1カ月後(左パネル)および4カ月後(右パネル)のパーセント再増殖を示す図である。
【図4C】100ng/mlの精製Angptl3および500ng/mlのIGFBP−2を含有する調整STF培地中で21日間培養する前(左)および後(右)における、成体BM SP CD45+Sca−1+細胞の再増殖能力の限界希釈分析を示す図である。
【図5A】Angptl5を含有するSTF培地中(四角)、またはSTF培地中(菱形)で培養したヒトHSCの、時間(日)経過における細胞数を示す図である。
【図5B】8000の新たな細胞(カラム1)、15000の新たな細胞(カラム2)、STF培地中で培養した8000の細胞(カラム3)、またはAngptl5およびIGFBP−2STFを含有する培地中で培養した8000の細胞(カラム4)による%再増殖を示す図である。
【図5C】非培養(新鮮)または培養ヒト臍帯血CD133+細胞を移植された代表的なマウスにおける、2カ月目のヒト造血生着のFACS分析を示す図である。
【図5D】非培養細胞を移植されたマウス(左パネル)およびAngptl5およびIGFBP−2を含有するSTF培地中で培養された細胞を移植されたマウス(右パネル)から得られた、ヒト骨髄細胞(CD15/66b+、カラム1、4)、Bリンパ様細胞(CD34−CD19/20+、カラム2、5)および原始細胞(CD34+、カラム3、6)での%再増殖を示す多系列生着データの概要を示す図である。
【図5E】Angptl5およびIGFBP−2を含有するSTF培地中で培養され細胞(図5Bのレーン4)を移植され、亜致死放射線照射された二次被移植者体内に移植された、一次マウスからの骨髄を移植された二次被移植者の、ヒト総造血細胞(CD45/71+、カラム1)、骨髄細胞(CD15/66b+、カラム2)、Bリンパ様細胞(CD34−CD19/20+、カラム3)および原始細胞(CD34+、カラム5)での%再増殖を示す図である。
【図6A】低レベルのO2(菱形)および正常レベルのO2(四角)内で培養された、Angptl5およびIGFBP−2を含有するSTF培地中における、2×105のヒト臍帯血CD133+細胞の、時間経過における総細胞数を示す図である。
【図6B】低レベルのO2(菱形)および正常レベルのO2(四角)内で培養された、Angptl5およびIGFBP−2を含有するSTF培地中で培養されたヒトHSCについての、時間経過における、CD34+原始細胞の数を示す図である。
【図6C】培養前の細胞の再増殖能力の限界希釈分析を示す図である。
【図6D】低レベルのO2(四角)および正常レベルのO2(菱形)内で、500ng/mlのAngptl5および100ng/mlのIGFBP−2を含有するSTF培地中で10日間培養した後の細胞の再増殖能力の限界希釈分析を示す図である。
【図6E】20000の非培養CD133+細胞(左パネル、n=8)または正常O2における、5000の初期CD133+細胞からの培養子孫(右パネル、n=10)を移植されたNOD/SCID被移植者における多系列生着を示す図である。
【図7】1×105のCD45.1骨髄細胞と共に、アンジオポエチン2含有STIF培地中で培養された20のCD45.2骨髄SP Sca−1+CD45+細胞でCD45.1被移植者(n=4〜5)に移植された4カ月後のパーセント再増殖を示す棒グラフである。
【図8】例示的アンジオポエチン様タンパク質のアミノ酸配列である配列番号3〜6を示す図である。
【図9】例示的アンジオポエチン2タンパク質のアミノ酸配列である配列番号1と、例示的IGFBP−2タンパク質のアミノ酸配列である配列番号2とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
造血幹細胞(HSC)を増殖させる(propagating and/or expanding)方法と、これらの方法で産生したヒトHSCとを提供する。一部の実施形態では、ヒトHSCを合成培地中で増殖させる。ここに提供の方法の結果として、培養細胞内に通常存在している未知因子または夾雑物を含まないex vivo増殖させたヒトHSCが利用可能となっている。
【0019】
培地
本明細書に記載の通り、適した細胞は、合成培地(本明細書では、既知組成培地とも呼ぶ)中でインキュベートされる。合成培地または既知組成培地は、培地中に存在するあらゆる構成成分およびそれらの量が既知である、細胞を培養するための栄養培地を指す。一部の実施形態では、培地は液体である。他の実施形態では、培地は、錠剤もしくは粉末などの固体物質、またはゲルなどの半固体物質でありうる。さらに他の実施形態では、培地は、メッシュおよび多孔性ビーズなどの固体構造を含有する液体でありうる。合成培地は、ダルベッコのMEM、IMDM、X−Vivo15(Cambrex社)、RPMI−1640およびStemSpan(Stem Cell Technologies社)など、構成成分のベース混合物を含みうる。ヘパリン、血清アルブミン、インスリンおよびトランスフェリンなど、またはそれらの組合せなど、既知量の他の構成成分をベース混合物に補充することができる。一部の実施形態では、10μg/mlヘパリンを培地に補充する。添加される成分は、例えば、ヒト、ウシおよびマウス源を含めた、任意の適した動物源から得られたものでありうる。例えば、StemSpanは、ウシ血清アルブミン、ヒトインスリンおよびヒトトランスフェリンを補充したIMDMを含む。添加される構成成分および成長因子は、生物源(組織、血清または調整培地など)から単離することもでき、組換え産生させることもできる。組換え体成長因子および他の構成成分を産生するのに適した宿主には、例えば細菌、酵母または細胞培養が含まれる。細胞培養は、例えば、昆虫細胞培養または哺乳動物細胞培養でありうる。成長因子は、グリコシル化されたものでありうる。一部の実施形態では、成長因子は、天然に存在する成長因子と同じ様式、または実質的に同じ様式でグリコシル化されている。本明細書に記載の成長因子または他の添加構成成分は、例えば、マウス、非ヒト霊長類およびヒトを含めた任意の適した動物からのものでありうる。
【0020】
「単離された」または「精製された」構成成分または成長因子は、産生されたとき(例えば、生物源によって、または形質移入細胞内での発現など、組換え法によって産生されたとき)にそれが共在している他の物質を実質的に含まない。一部の実施形態では、単離されたとは、構成成分または成長因子が、産生されたときに共在している他の物質の0.1%未満、0.01%未満または0.001%未満が存在していることを意味する。別の実施形態では、合成培地は無血清である。
【0021】
本明細書に記載のGenBank受託番号を有する、成長因子の例示的配列は、これによって参照により本明細書に組込まれているものとする。
【0022】
IGFBP−2
一部の実施形態では、合成培地は、単離されたインスリン様成長因子結合タンパク質2(IGFBP−2)を含有する。IGF結合タンパク質(IGFBP)は、IGF受容体と同じかそれを超える親和性でIGF−1およびIGF−2に結合する循環タンパク質のファミリーである。IGFBP−2は、様々なIGF依存細胞培養系における細胞増殖への阻害作用を有することでも知られている(Hoeflichら、Canc. Res.61巻、8601〜8619頁(2001年))。驚いたことに、本明細書に明らかにするように、IGFBP−2は、ヒトHSCのin vitro増殖に正の効果を有する。
【0023】
例示的IGFBP−2タンパク質配列は、例えば、受託番号AAA36048(ヒトインスリン様成長因子結合タンパク質2;配列番号2、図9)としてGenBankで提示されている。IGFBP−2に加えて、適したIGFBP−2には、天然に存在するアミノ酸配列内に変化を有するタンパク質および/またはポリペプチドが含まれ、改変配列が天然IGFBP−2の少なくとも何らかの機能的能力を保持することを、当業者はさらに理解するであろう。適した改変には、保存性アミノ酸変化(例えば、あるアミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換すること)と共に、非必須アミノ酸残基に加える変化またはそれらの除去が含まれる。
【0024】
適したIGFBP−2は、配列番号9と少なくとも60%の配列同一性を共有する。他の実施形態では、適したIGFBP−2は、配列番号9またはその生理活性部分と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を共有する。
【0025】
IGFBP−2の適した類似体には、望ましい活性を保持する断片および関連分子が含まれる。IGFBP−2の対応する受容体に結合し、かつIGFBP−2受容体への結合に伴う1つまたは複数の生物学的作用を開始できる分子も、本明細書に提示の技術(例えば、方法、HCS、培地およびキット)の範囲内にある。
【0026】
アンジオポエチン様タンパク質
1または複数種のアンジオポエチン様タンパク質(Angptl)は、構造がアンジオポエチンに類似している分泌性糖タンパク質のファミリーの任意のメンバーでありうる(Oikeら、Int. J. Hematol.、80巻、21〜8頁(2004年))。Angptlタンパク質は、N末端コイルドコイルドメインと、C末端フィブリノゲン様ドメインとを含有している。アンジオポエチンとは異なり、Angptlタンパク質は、チロシンキナーゼ受容体Tie2に結合しない。Angptlタンパク質には、Angptl 1、2、3、4、5、6および7が含まれる。Angptlタンパク質には、ミクロフィブリル関連糖タンパク質4(Mfap4)ならびにその類似体および等価物が含まれる。Angptl2は、Kim,I.ら、J Biol Chem、274巻、26523〜8頁(1999年)によって記載されている。加えて、Angptlタンパク質は、商業的に取得可能である(R&D Systems社、Abnova Corp社)。一実施形態では、AngptlはAngptl3である。別の実施形態では、AngptlはAngptl5である。
【0027】
例示的Angptlタンパク質は、例えば、受託番号AAH12368(ヒトAngptl1:配列番号3;ヒトAngptl2前駆体;配列番号4)、受託番号AAH58287(ヒトAngptl3前駆体;配列番号5)、受託番号AAH23647(ヒトAngptl4;配列番号6)および受託番号AAH49170(ヒトAngptl5;配列番号7)としてのGenBankで提示されている。配列番号3〜7を図8に示す。他の適したAngptlタンパク質は、配列番号3〜7のうちのいずれか1つと少なくとも60%の配列同一性を共有するものである。他の実施形態では、適したAngptlタンパク質は、配列番号3、4、5、6または7などの例示的Angptl配列またはその生理活性部分と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を共有する。Angptl7の例示的配列は、Genbank受託番号AAH01881に見出される。Mfap4の例示的配列は、Genbank受託番号NP_002395に見出される。
【0028】
Angptlsについて上記に提示した配列に加えて、当業者は、適したAngptlに、天然に存在するアミノ酸配列内に変化を有するタンパク質および/またはポリペプチドが含まれ、改変配列が天然Angptlの少なくとも何らかの機能的能力を保持することをさらに理解するであろう。適した改変には、保存性アミノ酸変化(例えば、あるアミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換すること)と共に、非必須アミノ酸残基に加える変化またはそれらの除去が含まれる。
【0029】
Angptlの適した類似体には、望ましい活性を保持する断片および関連分子が含まれる。例えば、Angptlの適した類似体は、コイルドコイルドメインを含有するアンジオポエチン様タンパク質の断片である。例えば、アンジオポエチン様タンパク質のコイルドコイルドメイン。別の類似体は、フィブリノゲン様ドメインである。コイルドコイルドメインおよびフィブリノゲン様ドメインなどの、Angptlの断片は、完全長タンパク質と比較して、発現および精製するのが、より容易でありうる。Angptlの対応する受容体に結合し、かつAngptl受容体への結合に伴う1つまたは複数の生物学的作用を開始できる分子も、本明細書に提示の技術の範囲内にある。
【0030】
アンジオポエチン2
一部の実施形態では、合成培地はアンジオポエチン2を含有する。例示的アンジオポエチン2タンパク質配列は、例えば、受託番号NP_001138(ヒトアンジオポエチン2;配列番号1、図9)としてGenBankに提示されている。加えて、当業者は、適したアンジオポエチン2に、天然に存在するアミノ酸配列内に変化を有するタンパク質および/またはポリペプチドが含まれ、改変配列が天然アンジオポエチン2の少なくとも何らかの機能的能力を保持することをさらに理解するであろう。適した改変には、保存性アミノ酸変化(例えば、あるアミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換すること)と共に、非必須アミノ酸残基に加える変化またはそれらの除去が含まれる。
【0031】
適したアンジオポエチン2は、配列番号1と少なくとも60%の配列同一性を共有する。他の実施形態では、適したアンジオポエチン2は、配列番号1またはその生理活性部分と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を共有する。
【0032】
アンジオポエチン2の適した類似体には、望ましい活性を保持する断片および関連分子が含まれる。アンジオポエチン2の対応する受容体に結合し、かつアンジオポエチン2受容体への結合に伴う1つまたは複数の生物学的作用を開始できる分子も、本明細書に提示の技術の範囲内にある。
【0033】
他の成長因子
IGFBP−2、アンジオポエチン2、または1もしくは複数種のAngptlに加えて、本技術の方法で造血幹細胞の増殖を促進するのに有用な他の成長因子またはサイトカインには、1または複数種の線維芽細胞成長因子(FGF)、インスリン成長因子、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)が含まれうる。したがって、別の実施形態では、培地は、FGF、IGF、TPOおよびSCF、またはそれらの類似体および等価物のうちの少なくとも2つを含有する。それらの等価物は、野生型または組換え産生されたサイトカインとしてのこれらの因子(すなわち、FGF、TPO、IGFおよびSCF)に類似の生物活性を有する分子が含まれる。類似体には、望ましい活性を保持する断片および関連分子が含まれる。例えば、TPOはmpl受容体のリガンドであり、したがって、mpl受容体に結合し、mplへのTPO結合に伴う1つまたは複数の生物学的作用を開始できる分子も、本技術の範囲内にある。TPOミメティックの一例は、Cwirlaら、Science、276巻、1696頁(1997年)に見出される。
【0034】
サイトカインおよび成長因子は、例えば、Amgen社(Thousand Oaks,Calif.)、R&D Systems社(Minneapolis,MN)およびImmunex社(Seattle,Wash.)など、いくつかの供給業者から購入できる。
【0035】
上述のように、サイトカインまたは成長因子の濃度は、約0.1ng/mLから約1.0μg/mLまでの範囲にある。別の実施形態では、約1ng/mlから約500ng/mLまでの因子が使用される。別の実施形態では、約10ng/mlから100ng/mlまでの因子が使用される。成長因子の他の有用な濃度は、本明細書に含まれている教示を用いて、当業者が容易に決定できる。
【0036】
別の実施形態では、培地中に、FGF−1、TPOおよびSCFも含有されている。別の実施形態ではSCFが10ng/ml、TPOが20ng/ml、FGF−1が10ng/mlで存在している。別の実施形態では、培地中に、IGF−2、FGF−1、TPOおよびSCFも含有されている。成長因子またはサイトカインの他の有用な濃度は、本明細書に含まれている教示を用いて、当業者が容易に決定できる。
【0037】
本明細書に記載の通り、所与のアミノ酸配との同一性または相同性は、2つの配列間の同一性パーセントとして決定できる。相同性は、GCGプログラムパッケージ内で提供されているGAPなどのコンピュータープログラムによるものなど、当技術分野で知られている方法を用いて決定できる(Wisconsinパッケージ用プログラムマニュアル、バージョン8、1994年8月、Genetics Computer Group、575 Science Drive,Madison,Wis.,USA 53711)(Needleman, S. B.およびWunsch, C. D.(1970年)、Journal of Molecular Biology、48巻、443〜453頁)。
【0038】
造血幹細胞のex vivo培養
細胞
培養する1または複数の細胞には、1つまたは複数の血液細胞型に分化することができる任意の細胞が含まれうる。例示的な血液細胞型には、貪食免疫細胞(例えば顆粒球)、単球(例えばマクロファージ前駆細胞)、マクロファージ、好酸球、赤血球、血小板形成細胞(例えば巨核球)、Tリンパ球、Bリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。適した細胞には、個体またはドナーから得られた初代細胞が含まれる。適した細胞は、自己複製できるもの、すなわち、数を増やしまたは増大でき、かつ親細胞と同じ発生段階のままでいられるものでもありうる。
【0039】
適した細胞は、例えば、限定されるものではないが、骨髄、末梢血、動員末梢血(MPB)、胎児肝および臍帯血を含めた、造血幹細胞の任意の既知供給源から単離できる。臍帯血について、例えば、Issaragrishiら、N.Engl.J.Med.、332巻、367〜369頁(1995年)で論じられている。骨髄細胞は、限定されるものではないが、腸骨(例えば寛骨から腸骨稜を経て)、脛骨、大腿骨、脊椎または他の骨小腔を含めた、骨髄供給源から得ることができる。幹細胞の他の供給源には、ES細胞、胚卵黄嚢、胎児肝および胎児脾臓が含まれるが、これらに限定されない。個体またはドナーから細胞を得る方法は当技術分野でよく知られている。
【0040】
骨髄を単離するには、許容できる緩衝剤と共に、限定されるものではないが、ウシ胎児血清(FCS)または他の天然に存在する因子を任意選択で補充した塩溶液を含めた、適切な溶液を用いて、骨を洗い流すことができる。一実施形態では、緩衝剤は低濃度であり、通常約5から約25mMまでである。好都合な緩衝剤は、HEPES、リン酸緩衝剤および乳酸緩衝剤が含まれるが、これらに限定されない。骨髄は、従来の技法に従って、骨から吸引することもできる。
【0041】
本技術の適した細胞および造血細胞は、造血幹細胞が存在する任意の動物から得ることができる。適した動物には、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、イヌ、ネコおよびマウスなどが含まれる。一実施形態では、細胞はヒト細胞であり、さらに別の実施形態では、細胞はマウス細胞である。
【0042】
候補ヒト造血幹細胞集団の長期生着能に関する動物モデルには、非肥満糖尿病/重症複合免疫不全症マウス(NOD/SCID)モデル、SCID−hu骨モデル(Kyoizumiら(1992年)、Blood、79巻、1704頁;Murrayら(1995年)、Blood、85(2)巻、368〜378頁)および子宮内ヒツジモデル(Zanjaniら(1992年)、J.Clin. Invest.、89巻、1179頁)が含まれる。ヒト造血の動物モデルに関する総説には、Srourら(1992年)、J. Hematother.、1巻、143〜153頁およびそれに引用されている参考文献を参照されたい。幹細胞のin vitroモデルは、5〜8週間後に間質共培養で産生されるコロニー形成性細胞の数の限界希釈分析に基づいた長期培養開始細胞(LTCIC)アッセイである(Sutherlandら(1990年)、Proc.Nat'l Acad. Sci.、87巻、3584〜3588頁)。LTCICアッセイは、別の一般的に使用される幹細胞アッセイである敷石状領域形成細胞(CAFC)アッセイ、およびin vivoでの長期生着能と相関していることが示されている(Breemsら(1994年)、Leukemia、8巻、1095頁)。
【0043】
本明細書で使用される場合、増殖(expansion or propagation)には、細胞数の任意の増大が含まれる。増殖には、例えば、培養を開始するのに使用される細胞集団内に存在するHSCの数を超える、造血幹細胞の数の増大が含まれる。ここで提供する方法は、造血幹細胞などの既存細胞の生存の増大を提供する。生存という用語は、生きているまたは機能している状態を継続する能力を指す。
【0044】
ここで提供する方法は、内皮前駆細胞(Shi、Q.ら(1998年)、Blood.、92巻、362〜367頁)、骨髄間質幹細胞(Owen,M.(1988年)、J. Cell Science、補10巻、63〜76頁)、間充織幹細胞(Pittenger, M.F.およびMarshak, D.R.(2001年)、Marshak,D.R.、Gardner, D.K.およびGottlieb, D.編集、Cold Spring Harbor, New York、Cold SpringHarbor Laboratory Press社、349〜374頁)および骨格筋幹細胞(Gussoni, E.ら(1999年)、Nature、401巻、390〜394頁)、胚幹細胞および他のものなど、他のタイプ成体幹細胞を含めた、アンジオポエチン2および/またはアンジオポエチン様タンパク質および/またはIGFBPの存在下で増殖する任意の幹細胞の増殖を刺激するのに使用できる。別の実施形態では、幹細胞は、HSCと同じ前駆体−血管芽細胞−を共有すると考えられている内皮前駆細胞である。
【0045】
ここで提供する方法では、細胞の亜集団も使用できる。例えば、骨髄または他の供給源から得られた精製「サイドポピュレーション」(SP)細胞を使用できる。HSCの他の濃縮集団も使用できる。HSCの濃縮集団を単離する方法は、当技術分野で知られており、例えば、SP細胞を取得する方法は、Goodellら、J. Exp. Med.、183巻、1797〜806頁(1996年4月1日)に記載されている。
【0046】
加えて、幹細胞が濃縮された細胞亜集団も、ここに記載の方法で使用できる。細胞集団からの幹細胞の分離は、細胞選別(例えば蛍光活性化細胞選別)、磁性ビーズおよび充填カラムを含めた、多数の方法によって行える。これらの方法は通常、幹細胞に特徴的な特定の細胞表面マーカーの存在および/または分化細胞に特徴的な特定な細胞表面マーカーの不在に依存している。これらの方法は、細胞集団の生着または分化能を測定する機能アッセイに依存するものでもありうる。そのようなマーカーおよび機能アッセイは当技術分野で知られている。
【0047】
幹細胞の濃縮の例は、米国特許第5061620号に記載の通り、CD34+Thy−1+LIN−表現型を有するものとして選択された細胞集団である。この表現型の集団は通常、約1/20の平均CAFC頻度を有する(Murrayら(1995年)同上;Lansdorpら、J. Exp. Med.、177巻、1331頁(1993年))。造血幹細胞の高濃縮集団を単離する方法は、米国特許出願第5,681,559号に提供されている。
【0048】
本明細書に記載の通り、造血幹細胞は、赤血球、ならびにリンパ様細胞および骨髄細胞を含めた白血球を含めた、いくつかのタイプの血液細胞のいずれにも分化する能力を有する。本明細書に記載の通り、HSCには、in vivoにおける長期生着能を有する造血細胞が含まれる。長期生着能(例えば長期造血幹細胞)は、動物モデルまたはin vitroモデルを用いて測定できる。
【0049】
細胞は、ここで提供する方法に従って培養する前に、例えば血液細胞系統の幹細胞または未成熟細胞を濃縮したものでありうる。幹細胞が高度に濃縮されている細胞集団およびそれらを得る方法は、国際公開第95/05843号;国際公開第95/03693号および国際公開第95/08105号に記載されている。一部の実施形態では、1つまたは複数の細胞は、造血幹細胞が実質的に濃縮されている細胞の集団を含む。他の実施形態では、ここで提供する方法による培養細胞は、間質細胞を実質的に含まない。
【0050】
一部の実施形態では、ここで提供する方法で使用される細胞は、細胞表面における特定のマーカーが存在または不在であるものとして選択され、またはそれについて濃縮される。例えば、一部の実施形態では、細胞は、一次組織の動物源に特有な幹細胞マーカーが存在するものとして選択される。他の実施形態では、細胞は、系統特異的マーカーが不在であるものとして選択される。一部の実施形態では、細胞は、特定のマーカーが存在し、かつ他のマーカーが不在であるものとして選択される。特定のマーカーを有する細胞、または特定のマーカーを有しない細胞を単離する方法は当業者によく知られている。
【0051】
系統特異的マーカーに関して、系統特異的マーカーの不在または低レベル発現は、系統特異的マーカーに特異的な抗体の結合の欠如によって特定できる。ここで提供する方法で使用するための細胞または細胞供給源は、ネガティブ選択技法にかけて、系統特異的マーカーであると発現する細胞を除去し、系統陰性(「Lin−」)である細胞を維持することができる。Lin−は通常、T細胞(CD2、3、4および8など)、B細胞(B220、CD48、CD10、19および20など)、骨髄細胞(Mac−1、Gr−1、CD14、15、16および33など)、ナチュラルキラー(「NK」)細胞(CD244、CD2、16および56など)、RBC(Teri19およびグリコホリンAなど)、巨核球(CD41)、肥満細胞、好酸球または好塩基球に関連するものなどのマーカーが欠如している細胞を指す。ネガティブ選択の方法は当技術分野で知られている。系統特異的マーカーには、CD38、HLA−DRおよびCD71が含まれる。
【0052】
最初に特定の系統の細胞または特定の表現型を有する細胞を除去することによって、細胞を分離する様々な技法を利用できる。分離の手順には、物理的分離と、磁力分離(抗体でコーティングされた磁性ビーズを用いる)と、アフィニティクロマトグラフィーと、モノクローナル抗体に連結されるか、またはモノクローナル抗体と共に併用される、限定されるものではないが、補体および細胞毒を含めた細胞毒性薬剤と、固体基質、例えばプレートに付着した抗体を用いる「パニング」と、エルトリエーションまたは任意の他の好都合な技法とが含まれうるが、これらに限定されない。正確かつ迅速な分離を提供する技法には、フローサイトメトリー(例えば蛍光活性化細胞選別)およびサイトスピンが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
物理的分離技法の使用には、物理特性(密度勾配遠心および対流遠心エルトリエーション)、細胞表面特性(レクチンおよび抗体親和性)、および生体染色特性(ミトコンドリア結合色素rho123およびDNA結合色素ヘキスト33342)の相違に基づくものが含まれるが、これらに限定されない。これらの手順は、この技術分野の当業者によく知られている。
【0054】
上述の通り、造血幹細胞の濃縮を用いて、または用いずに得られた細胞は、直ちに使用することも、液体窒素温度で凍結および保存することもできる。凍結細胞は、解凍して、本明細書に記載の方法で使用することができる。
【0055】
細胞培養
HSC細胞増殖の一部の実施形態では、例えば一次組織源または適した動物から得られた細胞を適した培地でインキュベートする。適した条件には、33℃から39℃、好ましくは約37℃におけるインキュベーションが含まれる。HSCは、1〜10%の酸素濃度で培養できる。一部の実施形態では、HSCが低酸素条件下で培養される。一部の実施形態では、細胞は、標準酸素条件下でインキュベートされる。標準酸素条件は、例えば、5%CO2および15%以上の酸素でありうる。一部の実施形態では、標準酸素条件が21%O2である。低酸素条件は、例えば、5%CO2および5%O2でありうる。
【0056】
培地は、培養時間中を通して置換できる。別の実施形態では、培地の半分を1週間に2回新たな培地で置換する。細胞が3から30日間培養されうる。別の実施形態では、HSCを含有する細胞集団を少なくとも4週間培養する。別の実施形態では、HSCを含有する細胞集団を最長2週間まで培養する。別の実施形態では、HSCを含有する細胞集団を7から14日間培養する。別の実施形態では、HSCを含有する細胞集団を10日間培養する。
【0057】
増殖容器内および適した培地容積で、1つまたは複数の細胞を培養またはインキュベートすることによって、HSCを増殖させることができる。細胞は、培養ウェルが1ウェルあたり約1〜100の細胞を含有するように培養できる。細胞集団が骨髄である場合、培地1mLあたり約1×102から約1×107細胞の密度で、細胞を培養できる。別の実施形態では、培地1mLあたり約1×105から約1×106細胞の密度で、細胞を培養できる。別の実施形態では、細胞集団はサイドポピュレーション(SP)骨髄細胞を含む。SP骨髄細胞は、より低密度、例えば、約1×102から5×103細胞/mlで培養できる。別々の態様では、細胞集団は動員末梢血から得ることができる。動員末梢血細胞は、約20000細胞/mLから約50000細胞/mLの密度で培養でき、別の実施形態では、動員末梢血細胞は、約50000細胞/mLの密度で培養される。
【0058】
12、24もしくは96ウェルプレート、12.5cm2T型培養フラスコまたは気体透過バッグなど、任意の適した増殖容器、フラスコまたは適切な管が、ここで提供する方法で使用できる。そのような培養容器は、Falcon社、Corning社またはCostar社から購入できる。本明細書で使用される場合、「増殖容器」は、自立的であるかないか、または増殖装置に組込まれているかないかに関わらず、細胞を増殖させるためのいかなるチャンバーまたは容器も含まれることが意図されている。
【0059】
本明細書に記載の通りにin vitroで増殖させた造血幹細胞も提供する。培養で増殖した幹細胞の子孫は、親細胞と完全に同じ(遺伝学的に、形態学的に、または表現型的に)ではない可能性があると理解されている。しかし、ここで提示する通り、幹細胞の子孫は、上述した1つまたは複数の血液細胞型に分化する少なくとも何らかの能力を有する。1つまたは複数の血液細胞型に発生する能力などの機能的特性は、例えば、本明細書に記載の方法および系統マーカーを用いて測定できる。
【0060】
ex vivo増殖造血幹細胞の使用
本技術の増殖培養造血幹細胞は、移植、創薬、遺伝子クローニング、遺伝子送達および遺伝子発現を含めた様々な適用に使用できる。
【0061】
移植
ここで提供する造血幹細胞は、対象または個体に投与できる。一部の実施形態では、ここで提供する方法で産生された造血幹細胞を、骨髄移植など、細胞ベースの療法に用いる。適した対象または個体は、上述の任意の動物が含まれる。対象または個体は、造血または細胞ベースの療法をin vivoで研究するのに適した任意の動物でありうる。脊椎動物。対象または個体は、細胞ベースの治療を必要とする任意の動物でありうる。一部の実施形態では、個体は哺乳動物である。哺乳動物には、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ウシ、ウマ、イヌおよびネコなどが含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0062】
移植幹細胞は、自系(処置される個体に由来する)または同種(同じ種のドナーに由来する)であるか、組織適合性が一致しているドナーから得られたものでありうる。一部の実施形態では、移植幹細胞は異種(被移植者とは異なった種の動物に由来する)でありうる。ヒト自家骨髄移植および異系骨髄移植は、現在、白血病、リンパ腫、および生命に危険を及ぼす他の疾患などの疾患の療法として用いられている。
【0063】
ここで提供する増殖細胞の、患者への投与に関しては、増殖細胞の有効な量が、わずか数百以下から、数百万以上までもの範囲でありうる。投与するべき増殖細胞の数は、医療専門家がよく知っている他の因子のなかでも、限定されるものではないが、処置するべきサイズまたは総容積を含めた、処置される障害の詳細、ならびに被移植者の必要性および条件に応じて異なることが理解されよう。一部の実施形態では、ヒト100kgあたり103〜1010の細胞を、対象または個体に投与または移植する。投与または移植の方法は、当技術分野でよく知られており、それらには、例えば注入が含まれる。ここで提供する増殖細胞は、例えば、静脈注入によって投与できる。
【0064】
一部の実施形態では、細胞の単回投与を行う。他の実施形態では、多回投与を使用する。多回投与は、連続した3〜7日間の初期治療レジメを行い、その後、複数回繰り返すなど、周期的な期間にわたって行うことができる。
【0065】
増殖細胞は、限定されるものではないが、放射線治療および化学療法などの処置の後、あらゆる範囲の造血細胞を個体で再構成するのに使用できる。そのような療法は、意図的に、または骨髄移植もしくはリンパ腫、白血病、および他の腫瘍状態、例えば乳癌の治療の副作用として、造血細胞を破壊する。
【0066】
ここで提供する増殖細胞は、特定の造血系統のための細胞の供給源としても有用である。増殖造血細胞の成熟、増殖、および1つまたは複数の選択された系統への分化は、限定されるものではないが、エリスロポエチン(EPO)、コロニー刺激因子、例えば、GM−CSF、G−CSFまたはM−CSF、SCF、Flt−3リガンド、インターロイキン、例えば、IL−1、−2、−3、−4、−5、−6、−7、−8、−13などを含めた適切な因子と共に、または幹細胞の再生、拘束および分化の原因となる因子を分泌する、間質細胞もしくは他の細胞と共に細胞を培養することによって実現しうる。
【0067】
創薬
本明細書に記載の方法によって得られる造血幹細胞は、創薬に有用である。例えば、幹細胞のそのような生物反応を促進または抑制する培養条件または成長因子は、試験される条件または因子に細胞を暴露することによって同定できる。このようにして、例えば、これらの因子の受容体またはその因子の生物活性を妨害する薬剤も同定できる。
【0068】
ここで提供する方法で産生された造血幹細胞は、幹細胞を様々な造血系統に分化させるアッセイで使用できる。これらのアッセイは、例えば、幹細胞の自己再生、拘束または分化を促進または阻害する因子などの物質を同定するために、容易に適合させることができる。
【0069】
遺伝子クローニング戦略
ここで提供する造血細胞は、例えば、サブトラクティブハイブリダイゼーションによって、またはこれらの生物学的イベントに関連しているか、または造血細胞型に特徴的な標的抗原に特異的なモノクローナル抗体を用いた発現クローニングによって、その発現が幹細胞または他の造血細胞の増殖、拘束、分化および成熟に関連する遺伝子を同定して、クローニングするのに使用できる。
【0070】
遺伝子送達および発現
造血幹細胞は、対象における遺伝子送達または発現の重要な標的でもある。したがって、ここで提供する造血細胞は、細胞を個体に再導入する前に、遺伝子改変することができる。例えば、その発現が個体への治療効果を有すると予測されている遺伝子を、ここで提供する1または複数の造血細胞に導入することができる。細胞は、本明細書に記載の通りに、培養および/または増殖させる前または後に遺伝子改変できる。培養細胞に遺伝子を導入する方法は当技術分野でよく知られている。
【0071】
本技術の一部の態様では、治療遺伝子を発現する細胞で、欠損および/または損傷している細胞を補充、増強および/または置換することによって個体を処置できる。細胞は、正常な適合ドナーの細胞に由来するものでも、処置すべき個体からの幹細胞(すなわち自系)に由来するものでもよい。発現可能形態の正常遺伝子を導入することによって、そのような欠損を患う個体に、遺伝的欠損を代償し、症状の一部またはすべてを除去、緩和または低減する手段を提供できる。
【0072】
発現ベクターを自家または同種増殖造血細胞に導入して発現させることも、当技術分野で知られている方法による相同組換えまたは非相同組換えによって、細胞のゲノムを改変することもできる。このようにして、個体における遺伝的欠損を修正することも、幹細胞で天然に欠失している遺伝能力を与えることもできる。例えば、限定されるものではないが、β−地中海貧血症、鎌状赤血球貧血、アデノシンデアミナーゼ欠損、リコンビナーゼ欠損およびリコンビナーゼ調節遺伝子欠損を含めた疾患をこの方法で修正できる。造血細胞に関連していない疾患、例えば、限定されるものではないが、ホルモン、酵素および成長因子を含めた分泌タンパク質の欠失に関連した疾患も処置できる。適切な調節開始領域の制御下における、対象とする遺伝子の誘導発現により、天然でそのタンパク質を正常に産生する細胞におけるものと同様な様式で、そのタンパク質を産生(および分泌)することが可能となる。
【0073】
造血幹細胞培養の形質導入
ここで提供する造血幹細胞は、遺伝的に改変できる。造血幹細胞への遺伝子の導入は、標準的な技法、例えば、感染、形質移入、形質導入または形質転換によるものでありうる。治療遺伝子でHSC細胞に形質導入することができる。例えば、形質導入は、レトロウイルスベクター(例えば、実施例、国際公開第94/29438号、国際公開第97/21824号および国際公開第97/21825号に記載の通りに)、またはポックスウイルスベクターなどのウイルスベクターを介したものでありうる。形質導入がex vivoである場合には、それに続いて、形質導入細胞を被移植者に投与する。したがって、ここで提供する技術は、ここに開示する方法によって遺伝子をex vivoまたはin vivoで投与することによって、HSCへの遺伝子導入が適用できる疾患の処置を包含する。例えば、限定されるものではないが、β−地中海貧血症、鎌状赤血球貧血、アデノシンデアミナーゼ欠損、リコンビナーゼ欠損、リコンビナーゼ調節遺伝子欠損などを含めた疾患を、治療遺伝子の導入によって修正できる。遺伝子治療に関する他の適応は、正常な幹細胞が利点を有し、化学療法中に選択圧を受けるのを可能にする薬剤耐性遺伝子の導入である。適した薬剤耐性遺伝子には、多剤耐性(MDR)タンパク質をコードする遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
遺伝子導入方法の例には、例えば、裸のDNA、CaPO4沈殿、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞微量注入、ならびにウイルスベクター、アジュバント補助DNA、遺伝子銃およびカテーテルなどが含まれる。別の実施形態では、ウイルスベクターが使用される。
【0075】
対象とする1つまたは複数のポリヌクレオチドは、当技術分野でよく知られている方法を用いてベクターに挿入できる。例えば、インサートおよびベクターDNAを、相互に対形成し、かつリガーゼで連結できる相補的な末端を各分子上に生成する制限酵素と適した条件下で接触させることができる。代替として、制限ポリヌクレオチドの末端に、合成核酸リンカーを連結することができる。これらの合成リンカーは、ベクターDNA内の特定の制限部位に対応する核酸配列を含有する。さらに、例えば、以下のもの、すなわち、哺乳動物細胞の安定的または一過性形質移入体を選択するためのネオマイシン遺伝子などの選択マーカー遺伝子;高レベル転写のための、ヒトCMV前初期遺伝子からのエンハンサー/プロモーター配列;mRNA安定性のための、SV40からの転写終結シグナルおよびRNAプロセシングシグナル;適切なエピソーム複製のためのSV40ポリオーマ複製起点およびColE1;多目的多重クローニング部位;ならびにセンスおよびアンチセンスRNAのin vitro転写のための、T7およびSP6 RNAプロモーターのうちの一部またはすべてを含有するベクターに挿入するために、終止コドンおよび適切な制限部位を含有するオリゴヌクレオチドを連結することもできる。他の手段も、当技術分野でよく知られており、利用可能である。
【0076】
造血幹細胞の改変は、導入されるトランスジーンの構成的発現または誘導性発現のいずれかのために作製された発現カセットの使用を含みうる。そのような発現カセットは、プロモーター、開始コドン、終止コドンおよびポリアデニル化シグナルなどの調節エレメントを含有しうる。幹細胞内、または個体に注入した後に幹細胞から生じる細胞の中で作用可能である適したエレメントを使用できる。さらに、これらのエレメントがタンパク質をコードするヌクレオチド配列に作用可能に連結し、それによってヌクレオチド配列が幹細胞内で発現でき、かつ、それゆえタンパク質が産生できることが必要である。開始コドンおよび終止コドンは通常、タンパク質をコードするヌクレオチド配列の一部であると考えられる。
【0077】
導入された配列の発現を特定の細胞型で引き起こすのに使用できるプロモーターの例には、T細胞およびNK細胞における発現用のグランザイムA、幹細胞および前駆細胞における発現用のCD34プロモーター、細胞傷害性T細胞における発現用のCD8プロモーター、ならびに骨髄細胞における発現用のCD11bプロモーターが含まれる。加えて、調節可能プロモーターを使用できる。誘導性プロモーターなどの調節可能プロモーターは市販されている。
【0078】
調節エレメントに作用可能に連結したトランスジーンを含有する外因性遺伝物質は、機能的な細胞質分子もしくは機能的なエピソーム分子として細胞内に残留することも、それが細胞の染色体DNAに組込まれることもある。外因性遺伝物質は、細胞内に導入されて、プラスミドの形態の別離した遺伝物質としてそこに残ることもある。代替として、直鎖状DNAを細胞に導入してもよく、直鎖状DNAは、染色体に組込まれうる。細胞内にDNAを導入する場合、染色体へのDNA組込みを促進する試薬を添加してもよい。組込みを促進するのに有用なDNA配列も、DNA分子に含まれうる。代替として、細胞内にRNAを導入してもよい。
【0079】
選択マーカーは、本技術の造血幹細胞内への望ましい遺伝子の取込みをモニターするのに使用できる。これらのマーカー遺伝子は、任意のプロモーターまたは誘導性プロモーターの制御下のものでありうる。これらは、当技術分野でよく知られており、それらには、栄養物、抗生物質などの刺激に対する細胞の感受性を変える遺伝子が含まれる。遺伝子には、neo、puroおよびtk、ならびに多剤耐性(MDR)のものなどが含まれる。他の遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、ルシフェラーゼおよびLacZなど、それらを求めて容易にスクリーニングできるタンパク質を発現する。
【0080】
本明細書で使用される場合、治療遺伝子は、一遺伝子全体でも、欠損内因性遺伝子から生じる、患者における欠損を代償できる遺伝子の機能的に活性な断片のみでもありうる。治療遺伝子には、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンス抑制に有用な遺伝子、およびリボザイム媒介治療用のリボザイムも包含される。優性な抑制オリゴヌクレオチドおよびペプチドをコードする治療遺伝子、ならびに調節タンパク質およびオリゴヌクレオチドをコードする遺伝子もこの技術に包含される。通常、遺伝子治療では、単一の治療遺伝子を導入するが、特定の疾患の治療には複数の遺伝子が必要となりうる。治療遺伝子は、欠損遺伝子の正常コピー、例えば野生型コピー、または機能相同体でありうる。別の実施形態では、治療遺伝子は、野生型の優性抑制変異体である。ベクターあたり複数の遺伝子を投与することができ、または代替として、いくつかの適合性ベクターを用いて複数の遺伝子を送達することもできる。遺伝的欠損に応じて、治療遺伝子は調節配列および非翻訳配列を含みうる。ヒト患者の遺伝子治療用には、治療遺伝子は通常、ヒト起源のものであろうが、高い相同性と、ヒトで生物学的に同一であるか同等な機能とを示す、他の近縁種からの遺伝子も、その遺伝子産物が受容者に有害な免疫反応を誘導しない場合には使用できる。例えば、その遺伝子産物がヒトでグルコースをグリコーゲンに変換できる霊長類インスリン遺伝子は、ヒト遺伝子の機能的等価物であると考えられるであろう。処置で使用するのに適した治療遺伝子は疾患に応じて異なるであろう。例えば、鎌状赤血球貧血を処置するのに適した治療遺伝子は、グロビン遺伝子の正常コピーである。SCIDを処置するのに適した治療遺伝子は、正常ADA遺伝子である。
【実施例】
【0081】
結果
Angptl5またはAngptl3の存在下における総ヒト臍帯血細胞の培養はヒトHSCのex vivo増殖を刺激する。
【0082】
Angptl3またはAngptl5を含有するSTIF培地中で総ヒト臍帯血細胞を培養した(Conklin, Dら、Genomics、62巻、477〜82頁(1999年);Zeng, L.ら、J Hum Genet、48巻、159〜62頁(2003年))。
【0083】
100ng/mlのAngptl3またはAngptl5を含有する無血清STIF培地に2.5×107の総臍帯血細胞を1×106細胞/mlの密度で播種し、示された時間における総細胞数を計数した。23日間の培養の後、Angptl3存在下における総細胞数は、2.6±0.3×108にまで10倍に増加し(図1A、菱形)、Angptl5と共に培養した細胞は2.2±0.3×108にまで増加した(四角)。培養細胞は、主に懸濁細胞を含有し、少数の付着亜集団を伴っていた。
【0084】
ex vivo増殖細胞が生着できるかどうか試験するために、NOD/SCID再増殖アッセイを行った。図1Bは、1×106の非培養ヒト単核臍帯血細胞、または培養された1×106の初期ヒト臍帯血細胞の子孫を移植されたNOD/SCIDマウスの骨髄におけるヒトキメリズムの量を示す。各シンボルは、移植の2カ月後にアッセイされた単一の移植マウスにおける生着を表す(n=5〜12)。(*レーン1の値から有意に異なる。スチューデントのt検定、p<0.001)。したがって、1×106もしくは3×106の非培養細胞、または1×106の始原細胞の培養子孫を、亜致死照射されたNOD/SCID被移植者に注射した。Angptl5と共に19日間培養した9.2×106の細胞を(1×106の最初にプレーティングされた総臍帯血細胞の子孫である)、移植した場合、移植の2カ月後に8.8%の平均ヒト造血キメリズムが観察された(図1B、レーン2)。これは、同等な1×106の非培養細胞によって示された0.6%生着よりはるかに大きい(図1B、レーン1;p、<0.001、スチューデントのt検定)。Angptl3の存在下で23日間培養された細胞も、7.1%の平均キメリズムで被移植者に生着した(図1B、レーン3)。
【0085】
非形質移入293T細胞はHSCのex vivo増殖を刺激する。
【0086】
驚いたことに、ここで明らかにされるように、非形質移入293T細胞から収集された無血清調整培地がHSCのex vivo増殖を刺激する。
【0087】
10ng/ml SCF、20ng/ml TPO、20ng/ml IGF−2および10ng/ml FGF−1を補充した無血清IMDM中(STIF培地;図2A、棒1)、または293T細胞から新たに収集した調整STIF培地中(棒2)、または凍結/解凍した後の同じ調整培地中(棒3)で新たに単離された20のCD45.2骨髄SP Sca−1+CD45+細胞を10日間培養した。培養細胞は、1×105のCD45.1総骨髄細胞と共にCD45.1被移植者(n=5〜6)に共移植した。
【0088】
図2Bは、移植5カ月後(n=6)における、図2Aの棒2によって代表される条件での培養細胞の多系統貢献を示す。上部パネルに示すデータは、移植5カ月後(図1Aの棒2から)の1匹のマウスからの末梢血液単核細胞の代表的FACSプロットである。各四分画内の細胞のパーセントが示されている。図1Aの棒2のマウスから得られた、Tリンパ様細胞、Bリンパ様細胞および骨髄細胞のパーセント再増殖データの概要が下部パネルにプロットされている。
【0089】
HSCのex vivo増殖を刺激した潜在的候補タンパク質を同定するために、無血清293T調整培地を質量分析で分析した。いくつかのタンパク質に由来するペプチドが同定された。70kDより小さいタンパク質を含有していた、293T細胞の無血清IMDMベース調整培地の画分の質量分析で同定されたペプチドの部分的なリストを表1に示す。対照無血清IMDM試料と共通して見出されたタンパク質は示されていない。
【0090】
【表1】
ここで明らかにするように、IGFBP−2は無血清293T調整培地中に発現される。図3は、抗ヒトIGFBP−2ポリクロナール抗体で検出された、精製されたヒトIGFBP−2(陽性対照;レーン1)、無血清3T3調整培地(陰性対照;レーン2)および無血清293T調整培地(レーン3)のウエスタンブロット分析を示す。
【0091】
精製されたIGFSP−2はHSCのex vivo増殖を刺激する。
【0092】
ここで明らかにするように、IGFBP−2はHSCのex vivo増殖を刺激する。100ng/ml Angptl3を含むSTIF培地中(棒1および4)、500ng/ml IGFBP−2を含む同じ培地中(棒2および5)、および200ng/ml Timp−1を含む同じ培地中(棒3および6)で20のCD45.2骨髄SP Sca−1+CD45+細胞を5日間培養した(図4A参照)。その後、これらの細胞を1×105のCD45.1総骨髄細胞でCD45.1被移植者(n=5)に共移植した。移植の1カ月後または4カ月後における生着を図4Aに示す。(*棒4および6の値から有意に異なる。スチューデントのt検定、p<0.05)。
【0093】
10ng/ml SCF、20ng/ml TPO、10ng/ml FGF−1(STF培地)、および100ng/ml Angptl3を含む無血清培地中(棒1および4)、500ng/ml IGFBP−2を含むSTF培地中(棒2および5)、ならびに500ng/ml IGFBP−2および100ng/ml Angptl3を含むSTF培地中(棒3および6)で、20のCD45.2骨髄SP Sca−1+CD45+細胞を10日間培養した(図4B参照)。その後、これらの細胞を1×105のCD45.1総骨髄細胞でCD45.1被移植者(n=6〜7)に共移植した。移植の1カ月後または4カ月後における生着を図4Bに示す。(*および**はそれぞれ棒4または棒5の値から有意に異なる。スチューデントのt検定、p<0.05)。
【0094】
図4Cは、100ng/mlの精製Angptl3および500ng/mlのIGFBP−2を含有する無血清調整STF培地中で21日間培養する前(左)および後(右)における、成体BM SP CD45+Sca−1+細胞の再増殖能力の限界希釈分析を示す。照射されたCD45.1近交系マウスに1×105のCD45.1 BM競合者細胞および1、5、25もしくは100の新たに単離されたSP CD45+Sca−1+細胞(左;n=24)または0.2、1、4もしくは10のSP CD45+Sca−1+細胞の培養子孫(右;n=26)を注射した。100の新たに単離されたSP Sca−1+CD45+細胞および4または10の入力細胞の培養子孫はすべて、被移植者で再増殖した。これらのデータポイントはプロットされていない。注射された細胞の数に対する、移植4カ月後の有核末梢血細胞中に含有するCD45.2集団が1%未満である被移植者マウスのパーセントがプロットされている。
【0095】
Angptl5およびIGFBP−2の存在下におけるヒト臍帯血CD133+細胞の培養はHSCのex vivo増殖を250倍超刺激する。
【0096】
マウスHSCのex vivo増殖を補助するのに、IGFBP−2がIGF−2を置換できることは、驚くべき新知見であった。加えて、STF培地の存在下で、IGFBP−2はヒト臍帯血HSC CD133+細胞のex vivo増殖を250倍超促進した。
【0097】
1×105のヒト臍帯血CD133+細胞の培養を無血清STF培地中、または500ng/ml Angptl5および500ng/ml IGFBP−2を補充した無血清STF培地中で開始し、低O2環境(5%O2)で培養した。総細胞数を計数した。図5Aに示す通り、総細胞数は、無血清STF培地またはAngptl5およびIGFBP−2を含有する無血清STF培地のいずれかにおいて、11日間の培養の後に200倍超増加した。
【0098】
IGFBP−2およびAngptl5は、マウスモデルでヒト臍帯血細胞の生着およびキメリズムを促進する。
【0099】
8000または15000の非培養(新鮮)ヒト臍帯血CD133+細胞、またはAngptl5およびIGFBP−2を含むか、もしくは含まない無血清STF培地中で11日間培養された8000の始原CD133+細胞からの子孫を移植されたNOD/SCIDマウスの骨髄におけるヒトキメリズムの量を測定した。8000の非培養CD133+細胞は、移植の2カ月後に、7匹の被移植者のうち1匹で生着でき、平均キメリズムは0.2%であった(図5B、レーン1)。15000の非培養CD133+細胞は、増大したが、なお中程度の生着を示し、8匹のマウスのうち4匹の陽性生着があった(全細胞の平均キメリズム2.0%;図5B、レーン2)。著しく対照的に、Angptl5およびIGFBP−2を含む無血清STF培地で培養した培養の後の2.1×106の細胞、すなわち、11日間の培養の後の8000の始原細胞の子孫はすべての被移植者マウスに生着し、8000または15000の非培養細胞と比較して有意に増大したキメリズムを示した(平均39.5%)(図5B、レーン4;p<0.05、スチューデントのt検定)。Angptl5およびIGFBP−2を含まないSTF培地中で培養された同じ数の始原細胞(8000)の培養子孫(現在1.6×106細胞)は、それらの非培養対応物のものと同様に、乏しい生着しか示さなかった(図5B、レーン3)。したがって、Angptl5およびIGFBP−2は、合成培地中のヒトSCID再増殖細胞(SRC)のex vivo増殖を補助する。各シンボルは、移植の2カ月後にアッセイされた単一の移植マウスにおける生着を表す(n=7〜8)。(*レーン1〜3の値と有意に異なる。スチューデントのt検定、p<0.05)。
【0100】
図5Cは、非培養(新鮮)または培養ヒト臍帯血CD133+細胞を移植された代表的なマウスにおける、2カ月目のヒト造血生着を示す。(図5B)のレーン1によって代表される条件(新鮮)または(図5B)のレーン4によって代表される条件(培養)における、移植2カ月後の1匹のマウスからの骨髄細胞の代表的FACSプロット。各四分画内の細胞のパーセントが示されている。Angptl5およびIGFBP−2を含有する無血清STF培地中で培養された細胞での移植(図5Bのレーン4)は、非培養細胞を移植されたマウス(図5Bのレーン1)よりはるかに高い、ヒト総造血細胞(CD45/71+)、骨髄細胞(CD15/66b+)、Bリンパ様細胞(CD34−CD19/20+)および原始細胞(CD34+)の生着を示した。
【0101】
非培養細胞(図5Bレーン2)ならびにAngptl5およびIGFBP−2を含有するSTF培地中で培養された細胞(図5Bレーン4)を移植されたマウスの多系列生着の概要を図5Dに示す。8000の細胞の子孫は、培養の後、移植の2カ月後に骨髄系統およびリンパ系統を再増殖させた。これは、ヒト幹細胞活性の増殖を実証するものである。非培養細胞を移植された一部のマウスは、ゼロパーセントのドナー再増殖を有していた。これらのデータポイントはプロットされていない。(*値が非培養細胞の値と有意に異なる。スチューデントのt検定、p<0.05)。図5Dは、非培養または培養ヒト臍帯血CD133+細胞を移植された代表的なマウスにおける、2カ月目のヒト造血生着を示す。8000の細胞の子孫は、培養の後、移植の2カ月後に骨髄系統およびリンパ系統を再増殖させた。これは、ヒト幹細胞活性の増殖を実証するものである。
【0102】
培養ヒトHSCの増殖
SCID再増殖細胞(SRC)の自己複製能を測定するために、非培養細胞(図5Bのレーン2)またはAngptl5およびIGFBP−2を含有するSTF培地中で培養された細胞(図5Bのレーン4)を移植された一次マウスから骨髄を収集し、それらを亜致死照射された二次被移植者に移植した。一次被移植者からの1本の後足からの骨髄液を2匹の二次被移植者に移植するのに用いた。移植の5〜8週間後に、二次NOD/SCID被移植者における多系列生着をアッセイした(n=12のマウスが移植された)。非培養細胞は二次被移植者に生着できなかったが(示されていない)、培養細胞は、この場合も、二次移植の後に陽性生着を示した(図5E)。これらのデータは、最初の培養期間中におけるヒトHSCの正味の増殖を示す。2つの独立した追加の実験によって、本明細書に記載の方法を用いて、ヒトHSCが培養中に劇的に増殖したことが実証された。
【0103】
正常または低酸素濃度での培養の後に、NOD/SCIDマウスに移植されたヒト臍帯血CD133+細胞の限界希釈分析。
【0104】
ここに提供する培養系は、いくつかの独立した追加の実験で実証されたように、ヒトSRCを劇的に増殖させる。1つの代表的実験では、2×105のヒト臍帯血CD133+細胞を、正常または低O2条件下に、500ng/ml Angptl5および100ng/ml IGFBP−2を含有するSTF培地中で培養した。総細胞数(図6A)およびCD34+細胞数(図6B)を計数した。10日間の培養の後に、これら2通りの条件における総細胞数は有意に相違しておらず、両方とも200倍超増加した(図6A)。それにもかかわらず、5日間の培養の後には、より大きな数のCD34+原始細胞が正常O2対低O2で観察された(図6B)。
【0105】
培養の前(図6C)および後(図6D)のSRC頻度を定量するために、限界希釈アッセイを行った。図6Bおよび6Cに実証されているように、10日間の培養の後に、Angptl5およびIGFBP−2を含有する無血清STF培地中で、低O2または正常O2で培養されたSRCの数は、それぞれ8倍または20倍増加した。注射された入力細胞または入力等価物細胞の数に対する、移植の6〜8週間後に、被移植者マウス骨髄に含有されるヒト造血集団が1%未満である被移植者マウスのパーセントがプロットされている。正常O2または低O2で培養された10000の入力細胞の子孫は、すべての被移植者で再増殖し、これらのデータポイント(ゼロパーセント陰性マウス)はプロットされていない。非培養CD133+細胞のこの特定の試料の再増殖細胞の頻度(CRU)は、64075細胞あたり1である(平均の95%信頼区間:1/23919〜1/171643、n=25)。すなわち、ポアソン統計から計算されるように、平均64075の非培養ヒトCD133+細胞の注入が、移植マウスの63%(=1−1/e)を再増殖させるのに十分である。Angptl5およびIGFBP−2を含有するSTF培地中で、低O2で細胞が培養された場合には、CRU頻度は1/7814入力等価細胞であった(平均の95%の信頼区間:1/3432〜1/17791、n=26)。これは、非培養細胞のものより約8倍大きい。驚いたことに、正常O2で細胞が培養された場合には、CRU頻度が1/3209入力等価細胞にまで増大した(平均の95%の信頼区間:1/1889〜1/5453、n=27)。これは、機能的SRCの総数が約20倍増加したことを示す。
【0106】
図6Eは、20000の非培養CD133+細胞(左パネル、n=8)または正常O2における、5000の始原CD133+細胞からの培養子孫(右パネル、n=10)を移植されたNOD/SCID被移植者における多系列生着を示す。非培養細胞を移植されたいくつかのマウスはゼロパーセントドナー再増殖を有していた。これらのデータポイントはプロットされていない。全造血系統(カラム1および5、CD45/71+)、骨髄系統(カラム2および6、CD15/66b+)、Bリンパ様系統(カラム3および7、CD34−CD19/20+)および原始系統(カラム4および8、CD34+)が示されている。(*値が非培養細胞の値と有意に異なる。スチューデントのt検定、p<0.05)。図6Eに実証されているように、これらの培養細胞は、非培養細胞よりはるかに大きいレベルの多系列生着を有した。
【0107】
低酸素がヒトSRCの増殖を改善することが示唆されている(Danetら、J ClinInvest、112巻、126〜35頁(2003年))。ここで明らかにするように、SRCの著しい増殖が低酸素条件で観察された。予想外に、SRC増殖は、標準酸素圧下ではさらに大きかった。
【0108】
Angptl5およびIGFBP−2の存在下で培養したヒト臍帯血CD34+細胞も、SRCの増殖をもたらした(データは示されていない)。
【0109】
ヒトHSCをex vivo増殖させるためのAngptlsおよびIGFBP−2の使用は、いまや合成培地中でヒトHSCをex vivo増殖できるので、骨髄移植用の臍帯血の臨床使用の増大を可能にする。ここに提供する技術は、HSCを用いた細胞および遺伝子治療の新規戦略の開発に有用であろう。
【0110】
アンジオポエチン2
競合的再構成分析
無血清調整STIF培地中、または500ng/ml精製ヒトアンジオポエチン1、ヒトアンジオポエチン2、マウスアンジオポエチン3もしくはヒトアンジオポエチン4を含有する同一培地中で、20のCD45.2ドナー細胞を10日間培養した。これらの細胞は、1×105の新たに単離したCD45.1競合者骨髄細胞と共に被移植者マウスに共移植した。その混合物を、事前に全量10Gyで照射されている6〜9週齢のCD45.1マウスの群のそれぞれに後眼窩経路で静脈内注射した。移植4カ月後の再構成を測定した。移植マウスの再構成を測定するために、移植後における、示された時間に末梢血を収集し、記載の通り(Zhang, C.C.およびLodish, H.F.、Blood、105巻、4314〜20頁(2005年))、リンパ様区画および骨髄区画内のCD45.1+およびCD45.2+細胞の存在を測定した。簡潔には、後眼窩出血によって末梢血細胞を収集し、それに続いて、赤血球を溶解し、抗CD45.2−FITCと、抗CD45.1−PE、抗Thy1.2−PE(Tリンパ様系統用)、抗B220−PE(Bリンパ様系統用)、抗Mac−1−PE、抗Gr−1−PE(抗Mac−1および抗Gr−1で共染色される細胞は骨髄系統であると考えられた)、 または抗Ter119−PE(赤血球系統用)モノクローナル抗体(BD Pharmingen社)とで染色した。図7に示す通り、アンジオポエチン2はHSCのex vivo増殖を刺激する。
【0111】
方法
マウス。C57 BL/6 CD45.2およびCD45.1マウスはJackson LaboratoryまたはNational Cancer Instituteから購入した。NODISCID(NOD.CB 17−Prkdcscid/J)マウスは、Jackson Laboratoryから購入し、Whitehead Institute動物設備で維持した。すべての動物実験は、M.I.T. 動物実験委員会(Committee on Animal Care)の承認をもって行った。
【0112】
培地。無血清STIF培地は、10μg/mlヘパリン(Sigma社)、10ng/mlマウスSCF、20ng/mlマウスTPO、20ng/mlマウスIGF−2(すべてR&D Systems社から)および10ng/mlヒトFGF−1(Invitrogen社)を補充したStemSpan無血清培地(StemCell Technologies社)である。無血清STF培地は、IGF−2を含まない同一の培地である。示された量の精製Angptl3(R&D Systems社からの贈与)、Angptl5(Abnova社、台湾)またはIGFBP−2(R&D Systems社)を添加した。調整培地は、終夜培養の後に、集密的な293Tまたは3T3細胞から収集した。
【0113】
マウスHSC培養。8〜10週齢のC57BL/6 CD45.2マウスから単離された20のBM SP Sca−1+CD45+細胞を、示された培地160μlと共に、U底96ウェルプレート(3799;Corning社)の1ウェルにプレーティングした。細胞は37℃、5%CO2および正常O2で培養した。競合的移植の目的には、少なくとも6つの培養ウェルからの細胞をプールし、示された数の細胞を各マウスに移植する前に、競合者と混合した。
【0114】
ヒト細胞培養。ヒト総臍帯血単核細胞はCambrex社から購入した。細胞は、100ng/ml Angptl3またはAngptl5を含むSTIF培地1mlあたり1×106細胞でプレーティングした。培地容積は、細胞密度を5×105〜1.5×106細胞/mlに維持するために、5、8、12、15および18日目に新たな培地を添加することによって増大した。細胞は37℃、5%CO2および正常O2で培養した。図5および6の実験で用いたヒト凍結保存臍帯血CD133+細胞は、Cambrex社およびStemCell Technologies社から購入した。細胞は、示された培地200μlと共に、U底96ウェルプレート(3799;Corning社)の1つのウェルに1×104細胞/ウェルで2日間プレーティングした。3日目に、細胞を個々のウェルからプールして、5×104細胞/mlで6ウェルプレートに移した。4および7日目に、細胞密度を2×105細胞/ml(4日目)または7×105/ml(7日目)に保つために、新たな培地を添加した。細胞は37℃、5%CO2、および正常O2または5%O2(低O2)レベルで培養した。
【0115】
NOD/SCID移植。ヒト総臍帯血単核細胞またはCD133+細胞の非培養または培養子孫を、示された日に収集し、亜致死照射された(350ラド)NOD/SCIDマウスに後眼窩経路で静脈内注射した。移植の6〜8週間後または示された時間に、移植された動物からの骨髄有核細胞を、フローサイトメトリーによって、ヒト細胞が存在するかどうか分析した。二次移植には、記載の通り(Hoganら、Proc Natl Acad Sci USA、99巻、413〜8頁(2002年))、一次被移植者の1本の後足からの骨髄液を用いて、2匹の二次被移植者に移植した。限界希釈実験におけるCRUの計算は、L−Calcソフトウェア(StemCell Technologies社)を用いて行った(Zhangら、ProcNatl Acad Sci USA、103巻、2184〜9頁(2006年))。マウスは、マウス骨髄細胞の中に少なくとも1%(一次移植用)または0.1%(二次移植用)のCD45/71+ヒト細胞が検出された場合に、ヒトHSC移植において陽性であると考えられた。
【0116】
フローサイトメトリー。ドナー骨髄細胞は、8〜10週齢のC57BL/6 CD45.2マウスから単離した。SP Sca−1+CD45+細胞は、Zhang, C.C.ら、Nat Med、12巻、240〜5号(2006年)に記載の通りに単離した。マウスHSCの再増殖を分析するために、被移植者CD45.1マウスの末梢血細胞を後眼窩出血によって収集し、それに続いて、赤血球を溶解し、抗CD45.2−FITCと、抗CD45.1−PE、抗Thy1.2−PE(Tリンパ様系統用)、抗B220−PE(Bリンパ様系統用)、抗Mac−1−PE、抗Gr−1−PE(抗Mac−1および抗Gr−1で共染色される細胞は骨髄系統であると考えられた)、または抗Ter119−PE(赤血球系統用)モノクローナル抗体(BD Pharmingen社)とで染色した。図1Bを除いたすべての図に示されている「パーセント再増殖」は、抗CD45.2−FITCおよび抗CD45.1−PEの染色結果に基づいた。すべての場合で、多系列再構成を確認するために、上記に列挙した系統のFACS分析も行った。
【0117】
NOD/SCIDマウスでヒト造血移植を分析するには、出版されているプロトコールに従った(Cashmanら、J. Exp Med、196巻、1141〜9頁(2002年))。簡潔には、総ヒト造血(CD45/71+)細胞集団、ならびにこの集団内における専ら顆粒球形成(CD15/66b+)細胞である部分集合を定量化するために、被移植者NOD/SCIDマウスからの骨髄細胞を、抗ヒトCD45−PE、CD71−PE、CD15−FITCおよびCD66b−FITCで染色した。ヒト前駆集団(CD34+)およびB系統集団(CD34−CD19/20+)を定量化するために、細胞を抗ヒトCD34−FITC、抗ヒトCD19−PEおよびCD20−PEで染色した。図1の実験では、総ヒト造血(CD45/71+)生着のみが測定された。抗ヒトCD34−FITCは、培養中のCD34+細胞を定量化するのに用いた。すべての抗ヒト抗体は、Becton Dickinson社から購入した。
【0118】
FACS選別。ドナー骨髄細胞は、8〜10週齢のC57BL/6 CD45.2マウスから単離した。SP Sca−1+CD45+細胞を選別するために、成体マウス骨髄SP細胞(以前の記載(Zhang, C.C.およびLodish, H.F.、Blood、103巻、2513〜21頁(2004年);Zhang, C.C.およびLodish,H.F.、Blood、105巻、4314〜20頁(2005年)の通りに染色した)を、抗Sca−1−PEおよび抗CD45−FITCでさらに染色し、その後、MoFlo(登録商標)ソーターで細胞選別を行った。
【0119】
競合的再構成分析。示された数のマウスCD45.2ドナー細胞を1×105の新たに単離されたCD45.1競合者骨髄細胞と混合し、その混合物を、事前に全量10Gyで照射されている6〜9週齢のCD45.1マウスの群のそれぞれに後眼窩経路で静脈内注射した。移植マウスの再構成を測定するために、移植後における、示された時間に末梢血を収集し、記載の通り(Zhang, C.C.およびLodish, H.F.、Blood、103巻、2513〜21頁(2004年);Zhang, C.C.およびLodish,H.F.、Blood(2005年))、リンパ様区画および骨髄区画内のCD45.1+およびCD45.2+細胞の存在を測定した。限界希釈実験におけるCRUの計算は、L−Calcソフトウェア(StexnCell Technologies社)を用いて行った。(Zhangら、ProcNatl Acad Sci USA、103巻、2184〜9頁(2006年))。
【0120】
ウエスタンブロット。4〜12%NuPage Bis−Trisポリアクリルアミドゲル(Invitrogen社)上での電気泳働によって、調整培地中の精製タンパク質または粗タンパク質を分析し、タンパク質をニトロセルロース膜にエレクトロブロッティングした。これらの膜を0.1μg/mlの抗ヒトIGFBP−2ポリクロナール抗体(AF674、R&D Systems社)で、その後、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ロバ抗ヤギ抗体でプロービングし、化学発光キット(Millipore社)によって検出した。
【0121】
本技術を特定の実施形態に関して詳細に示し、記述してきたが、当業者ならば、添付されている特許請求の範囲によって定義される本技術の趣旨および範囲から逸脱せずに、形態および詳細における様々な変化をそこに加えることができることが理解されるはずである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞数を増大させる方法であって、単離されたインスリン成長因子結合タンパク質2(IGFBP−2)およびアンジオポエチン様タンパク質(Angptl)を含む合成培地中でヒト細胞をインキュベートするステップを含み、該ヒト細胞の少なくとも1つが1つまたは複数の血液細胞型に分化することができる、方法。
【請求項2】
前記単離されたIGFBP−2が約1.0ng/mLから約5μg/mLの濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単離されたIGFBP−2が組換え産生される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト細胞が少なくとも5日間培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒト細胞が少なくとも10日間インキュベートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記Angptlが、Angptl3およびAngptl5からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記培地が、線維芽細胞成長因子(FGF)、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される少なくとも1つの追加の成長因子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記追加の成長因子が約0.5ng/mLから約5μg/mLの濃度で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒト細胞が、骨髄細胞、末梢血細胞、臍帯血細胞および胎児肝細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
CD133を発現する1つまたは複数の初代ヒト細胞を、該ヒト細胞を培養する前に選択するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
CD34を発現する1つまたは複数の初代ヒト細胞を、該ヒト細胞をインキュベートする前に選択するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法で産生された造血幹細胞。
【請求項13】
ヒト造血幹細胞数をin vitroで増大させる方法であって、単離されたインスリン成長因子結合タンパク質2(IGFBP−2)、アンジオポエチン様タンパク質5(Angptl5)、線維芽細胞成長因子1(FGF−1)、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)を含む合成培地中で少なくとも5日間ヒト細胞をインキュベートするステップを含み、該ヒト細胞のうちの少なくとも1つが、CD133およびCD34からなる群から選択される表面マーカーの発現に関して選択されたものであり、該ヒト細胞の少なくとも1つが1つまたは複数の血液細胞型に分化することができる、方法。
【請求項14】
造血幹細胞を個体に投与する方法であって、
a)該個体またはドナーからヒト細胞を得るステップであって、該ヒト細胞の少なくとも1つが1つまたは複数の血液細胞型に分化することができる、ステップと、
b)単離されたIGFBP−2およびアンジオポエチン様成長因子(Angptl)を含む合成培地中で該ヒト細胞をインキュベートするステップと、
c)該培養された細胞を該個体に移植するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記単離されたIGFBP−2が約1.0ng/mLから約5μg/mLの濃度で存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記単離されたIGFBP−2が組換え産生される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記Angptlが、Angptl3およびAngptl5からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
前記Angptlが組換え産生される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒト細胞が、骨髄細胞、末梢血細胞、臍帯血細胞および胎児肝細胞からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
CD133を発現する1つまたは複数の初代ヒト細胞を、該初代ヒト細胞をインキュベートする前に選択するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
CD34を発現する1つまたは複数の初代ヒト細胞を、該ヒト細胞をインキュベートする前に選択するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
個体を治療する方法であって、該個体にIGFBP−2およびAngptlを投与するステップを含む方法。
【請求項23】
前記Angptlが、Angptl3およびAngptl5からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ヒト造血幹細胞数を増大させるための培地であって、
a)合成造血幹細胞基本培地と、
b)単離されたIGFBP−2と、
c)Angptlと
を含む培地。
【請求項25】
前記Angptlが、Angptl3およびAngptl5からなる群から選択される、請求項24の培地。
【請求項26】
培養中の造血幹細胞の増殖を促進する方法であって、細胞の集団を、アンジオポエチン2を含む培地中で、該細胞の増殖に十分な条件下で培養するステップを含む、方法。
【請求項27】
前記アンジオポエチン2がヒトアンジオポエチン2である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞が10日間培養される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記培地が無血清培地である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記培地が、インスリン成長因子(IGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される少なくとも1つの追加の因子をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞がCD45+、Sca−1+骨髄細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞がサイドポピュレーション細胞(side population cell)である、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
造血幹細胞をin vitroで増殖させるのに適した培地であって、無血清培地およびアンジオポエチン2を含む、培地。
【請求項34】
前記アンジオポエチン2がヒトアンジオポエチン2である、請求項33に記載の培地。
【請求項35】
前記培地が、インスリン成長因子(IGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される少なくとも1つの追加の因子をさらに含む、請求項33に記載の培地。
【請求項36】
インスリン成長因子(IGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される少なくとも2つの追加の因子を含む、請求項33に記載の培地。
【請求項37】
前記IGFが1GF−2である、請求項35に記載の培地。
【請求項38】
前記FGFがFGF−1である、請求項35に記載の培地。
【請求項39】
IGF−2、FGF−1、SCFおよびTPOをさらに含む、請求項35に記載の培地。
【請求項1】
造血幹細胞数を増大させる方法であって、単離されたインスリン成長因子結合タンパク質2(IGFBP−2)およびアンジオポエチン様タンパク質(Angptl)を含む合成培地中でヒト細胞をインキュベートするステップを含み、該ヒト細胞の少なくとも1つが1つまたは複数の血液細胞型に分化することができる、方法。
【請求項2】
前記単離されたIGFBP−2が約1.0ng/mLから約5μg/mLの濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単離されたIGFBP−2が組換え産生される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト細胞が少なくとも5日間培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒト細胞が少なくとも10日間インキュベートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記Angptlが、Angptl3およびAngptl5からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記培地が、線維芽細胞成長因子(FGF)、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される少なくとも1つの追加の成長因子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記追加の成長因子が約0.5ng/mLから約5μg/mLの濃度で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒト細胞が、骨髄細胞、末梢血細胞、臍帯血細胞および胎児肝細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
CD133を発現する1つまたは複数の初代ヒト細胞を、該ヒト細胞を培養する前に選択するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
CD34を発現する1つまたは複数の初代ヒト細胞を、該ヒト細胞をインキュベートする前に選択するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法で産生された造血幹細胞。
【請求項13】
ヒト造血幹細胞数をin vitroで増大させる方法であって、単離されたインスリン成長因子結合タンパク質2(IGFBP−2)、アンジオポエチン様タンパク質5(Angptl5)、線維芽細胞成長因子1(FGF−1)、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)を含む合成培地中で少なくとも5日間ヒト細胞をインキュベートするステップを含み、該ヒト細胞のうちの少なくとも1つが、CD133およびCD34からなる群から選択される表面マーカーの発現に関して選択されたものであり、該ヒト細胞の少なくとも1つが1つまたは複数の血液細胞型に分化することができる、方法。
【請求項14】
造血幹細胞を個体に投与する方法であって、
a)該個体またはドナーからヒト細胞を得るステップであって、該ヒト細胞の少なくとも1つが1つまたは複数の血液細胞型に分化することができる、ステップと、
b)単離されたIGFBP−2およびアンジオポエチン様成長因子(Angptl)を含む合成培地中で該ヒト細胞をインキュベートするステップと、
c)該培養された細胞を該個体に移植するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記単離されたIGFBP−2が約1.0ng/mLから約5μg/mLの濃度で存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記単離されたIGFBP−2が組換え産生される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記Angptlが、Angptl3およびAngptl5からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
前記Angptlが組換え産生される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒト細胞が、骨髄細胞、末梢血細胞、臍帯血細胞および胎児肝細胞からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
CD133を発現する1つまたは複数の初代ヒト細胞を、該初代ヒト細胞をインキュベートする前に選択するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
CD34を発現する1つまたは複数の初代ヒト細胞を、該ヒト細胞をインキュベートする前に選択するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
個体を治療する方法であって、該個体にIGFBP−2およびAngptlを投与するステップを含む方法。
【請求項23】
前記Angptlが、Angptl3およびAngptl5からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ヒト造血幹細胞数を増大させるための培地であって、
a)合成造血幹細胞基本培地と、
b)単離されたIGFBP−2と、
c)Angptlと
を含む培地。
【請求項25】
前記Angptlが、Angptl3およびAngptl5からなる群から選択される、請求項24の培地。
【請求項26】
培養中の造血幹細胞の増殖を促進する方法であって、細胞の集団を、アンジオポエチン2を含む培地中で、該細胞の増殖に十分な条件下で培養するステップを含む、方法。
【請求項27】
前記アンジオポエチン2がヒトアンジオポエチン2である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞が10日間培養される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記培地が無血清培地である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記培地が、インスリン成長因子(IGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される少なくとも1つの追加の因子をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞がCD45+、Sca−1+骨髄細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞がサイドポピュレーション細胞(side population cell)である、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
造血幹細胞をin vitroで増殖させるのに適した培地であって、無血清培地およびアンジオポエチン2を含む、培地。
【請求項34】
前記アンジオポエチン2がヒトアンジオポエチン2である、請求項33に記載の培地。
【請求項35】
前記培地が、インスリン成長因子(IGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される少なくとも1つの追加の因子をさらに含む、請求項33に記載の培地。
【請求項36】
インスリン成長因子(IGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される少なくとも2つの追加の因子を含む、請求項33に記載の培地。
【請求項37】
前記IGFが1GF−2である、請求項35に記載の培地。
【請求項38】
前記FGFがFGF−1である、請求項35に記載の培地。
【請求項39】
IGF−2、FGF−1、SCFおよびTPOをさらに含む、請求項35に記載の培地。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2010−525836(P2010−525836A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507549(P2010−507549)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/062365
【国際公開番号】WO2008/137641
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(500482810)ホワイトヘッド・インスティテュート・フォー・バイオメディカル・リサーチ (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/062365
【国際公開番号】WO2008/137641
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(500482810)ホワイトヘッド・インスティテュート・フォー・バイオメディカル・リサーチ (7)
【Fターム(参考)】
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