説明

ヒトFGFR4ARG388多形のための齧歯類癌モデル

本発明は、制御されていない細胞成長、例えば癌及び改変したFGFR4に関連した分子機構及び生理学的プロセスを研究するための齧歯類動物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
先行技術
繊維芽細胞成長因子受容体(FGFR)シグナリングシステムは、4つのレセプター(FGFR1−4)及び20つより多くのリガンドから構成され、血管形成、有糸分裂誘発、分化及び発生を含む様々な生理学的プロセスの制御において関係している(1、2)。
【0002】
ヒトの癌においては、このFGFRsは過剰発現、例えば膵臓又は前立腺の癌腫(3−5)により、又は、異常な融合タンパク質又はヌクレオチド置換を生じる突然変異を活性化(6、7)することにより関係している。近年では、体性突然変異の他に、生殖細胞系突然変異、例えば、単一ヌクレオチド多形(SNP)が、癌のような疾病にとって、しかしまた、治療薬剤に対する応答の決定においても(8、10)、ますます重要性を認識されていることが明らかになった。
【0003】
ヒトFGFR4においては、コドン388における多形ヌクレオチド変化は、グリシン(Gly)をアルギニン(Arg)へと、このレセプターの膜貫通領域、疾病関連配列変形のためのレセプターチロシンキナーゼ(RTKs)におけるホットスポット、において置換する(11)。このFGFR4における単一置換は、様々な種類のヒト癌のプログレション及び不良な予後に関係することが示されている。ここで、Bange及び同僚らは、乳癌及び大腸癌の患者においてFGFR4 Arg388アレルを腫瘍プログレッションと関連させることができた(11)。同様に、FGFR4 Arg388アレルを有する軟組織肉腫患者は、不良な臨床的結果を有した(10)。メラノーマにおいては、このArgアレルは増加した腫瘍厚さ(tumour thickness)に関連し、一方で、頭部及び頸部の肉腫細胞癌腫においてはこのグリシン−アルギニン置換は減少した全体的な患者生存率及び進行した腫瘍段階を生じる。さらに、前立腺癌患者に対する最近の研究は、FGFR4 Argアレルを腫瘍プログレッションとだけでなく、前立腺癌イニシエーションとも強力に関連させる。乳癌研究は、Argアレルを、増進した疾病プログレッションとだけでなく、補助全身性又は化学療法(adjuvant systemic or chemotherapy)に対するより高い耐性とも初期の乳癌において相関させ、このことは、有意により短い疾病なしの及び全体的な生存を生じる(11、16)。
【0004】
これら研究の主たる結論は、個人のゲノムにおける1又は2のArg388アレルの存在は癌の発達(development)をイニシエーションさせないが、しかし、このキャリアーを、この疾病にかかった場合によりアグレッシブな形態にかかり易くさせることであった。残念なことに、この研究の、高度に複雑でかつ不均質な遺伝的バックグラウンドのために、時として限界(marginal)であり、患者の層別及び統計学的評価における差異のために、論争を生じた(17、18)。
【0005】
FGFR4の遺伝的改変の結果は、様々な癌(上記参照のこと)を患うヒトにおいて説明されているが、しかし、この後ろにあるこの分子的及び生化学的機構及びこの生理学的プロセスは理解されていない。腫瘍プログレッションに対するFGFR4 Arg388アレルの影響は、相関的な臨床的研究において示されているため、このようなFGFR改変の根底にある分子的及び生化学的変化の理解は、疾病の予後、治療的戦略の開発、更に、癌研究にとって根本的なものである。
【0006】
このようにして、新規の治療的戦略の開発のため、疾病治療に有用な診断マーカー及び剤を同定するため、そして、癌、しかしまた、FGFR4改変に関連する更なる疾病の発生及びプログレッションにおけるより多くの見解を得るために、アミノ酸置換を生じるFGFR4改変、特にSNPsの分子的及び生化学的作用を研究するためのモデルとしての動物について必要性が存在する。
【0007】
発明の概要
この必要性を満足させるために、本発明は、改変したFGFR4タンパク質をコードする内因性遺伝子を含む齧歯類動物であって、その改変が、配列番号1のアミノ酸位置385に相応するアミノ酸位置での前記齧歯類の野生型FGFR4におけるアミノ酸置換である齧歯類動物を提供する。
【0008】
一実施態様において、本発明は、改変したFGFR4タンパク質をコードする内因性遺伝子を含むマウス又はラットである齧歯類であって、その際、この改変が、前記マウス又はラットの野生型FGFR4におけるアミノ酸置換であり、その際、マウスの場合にはアミノ酸置換が配列番号1のアミノ酸位置385にあり、又は、その際、ラットの場合にはアミノ酸置換が配列番号4のアミノ酸位置386にある齧歯類を提供する。
【0009】
一実施態様において、本発明は、改変したFGFR4タンパク質をコードする内因性遺伝子を含むマウスである齧歯類動物であって、その際、この改変が、前記マウスの野生型FGFR4におけるアミノ酸置換であり、その際、前記アミノ酸置換が配列番号1のアミノ酸位置385にある齧歯類動物を提供する。
【0010】
更なる一観点において、本発明は、改変したFGFR4タンパク質をコードする内因性遺伝子を含む齧歯類動物であって、その際、この改変が、野生型FGFR4タンパク質、好ましくは配列番号1によるFGFR4タンパク質に比較して任意のアミノ酸位置での少なくとも1のアミノ酸置換であり、この改変が、ヘテロ接合又はホモ接合の方式で前記動物の少なくともいくつかの又は全ての又は実質的に全ての細胞において存在する場合には、腫瘍プログレッション及び/又は形成における変化、例えば、野生型動物に比較して増加した速度の腫瘍成長及び/又は転移形成に関連するフェノタイプを生じる齧歯類動物に関連する。好ましい一実施態様において、前記動物は、付加的に、少なくともいくつかのその細胞のゲノム中で、TGF−αタンパク質をコードする導入遺伝子を発現する。
【0011】
本発明は、さらに、改変したFGFR4ポリペプチド及びこのような改変されたFGFR4タンパク質をコードする核酸分子、また同様にプライマリー細胞及び細胞株にも関し、これは本願において説明されるとおりの非ヒト動物、例えば、齧歯類に由来する。
【0012】
本発明は、さらに、
(a)好ましくは乳癌、肺癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、前立腺癌、メラノーマ、及び/又は膵臓癌において、制御されていない細胞成長、例えば、癌及び/又は転移形成の、分子的機構、又はこれに関連する生理学的プロセスを研究する、
(b)好ましくは乳癌、肺癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、前立腺癌、メラノーマ、及び/又は膵臓癌において、制御されていない細胞成長、例えば、癌及び/又は転移形成の予防、改善又は治療において有用な剤を同定及び/又は試験する、
(c)好ましくは乳癌、肺癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、前立腺癌、メラノーマ、及び/又は膵臓癌において、制御されていない細胞成長、例えば、癌及び/又は転移形成についての、タンパク質及び/又は核酸診断マーカーを同定する、及び/又は
(d)前記改変したFGFR4の不所望な活性、発現、又は産生の、分子的機構、又はこれに関連する生理学的プロセス又は医学的状態を研究する
ためのモデルとしての本願において説明された動物、プライマリー細胞又は細胞株の使用に関する。
【0013】
図面の簡単な説明
図1:FGFR4 Arg385KIマウスの作成
(A)マウスのFGFR4ゲノム配列のエキソン2〜12にまたがるFGFR4 wt 座;FGFR4 Arg385KI遺伝子ターゲッティングコンストラクト、エキソン8は、特定の突然変異を介して確立したSNPを含む、Cre欠失のためのloxP部位により隣接される選択−カセットは、エキソン10及び11の間に導入される;Neo:ネオマイシン耐性;TK:チミジン−キナーゼ−カセット。
(B)1)遺伝子ターゲッティング後のES細胞クローンのサザンブロット分析:ポジティブなクローンは、5′外部試料により検出された更なる10kbを示す。2)PCR−制限断片長さ多形(RFLP)を介したES細胞クローンのゲノタイピング、ポジティブなクローンは96bpの更なる断片を含む。
(C)FGFR4 Arg385KIマウスの分離分析;FGFR4 Arg385KIは、戻し(1:1)及び相互交雑(1:2:1)においてメンデル比を受け継ぐ。
(D)1)FGFR4 Arg385 KIマウスのゲノタイピング:増幅産物をMval制限酵素により切断し、FGFR4アレルを区別するための特定のバンドを獲得する。2)TGFα導入遺伝子の確認;3)FGFR4 Arg385 KIマウス及びTGFαについてトランスジェニックなオンコマウスの交雑スキーム;導入遺伝子は、この雌の通常の授乳を確保するために雄によってだけ受け継がれた。
【0014】
図2:FGFR4 Arg385KIマウスの特性決定
(A)LightCycler(R)分析により定量化した成体FGFR4 Arg385KIマウスの様々な組織におけるmRNA発現レベル;発現レベルをHPRTハウスキーピング遺伝子に対して標準化し、絶対値としてプロットした:FGFR4は、様々な組織において発現する;様々なFGFR4アレル間で差異は検出可能でない。
(B)FGFR4の免疫沈降及びウェスタンブロットにより分析された成体FGFR4 Arg385KIマウスの様々な組織におけるタンパク質発現レベル;アクチンは負荷コントロールとして働く;様々なFGFRアレル間で差異は検出可能でない。
(C)成体FGFR4 Arg385KIマウスの様々な組織におけるFGFR4発現パターンの表:FGFR、免疫組織化学的に分析されたもの、は様々な組織において発現する:様々なFGFR4アレル間で差異は検出可能でない。
(D)FGFR4発現について、免疫組織化学的に分析された、成体FGFR4 Gly/Gly、Gly/Arg又はArg/Arg385KIマウスの肺及び乳腺組織;様々な組織において発現する:様々なFGFR4アレル間で差異は検出可能でない。
【0015】
図3:FGFR4 Arg385は、WAP−TGFα/EGFRマウス乳癌腫瘍モデルにおいて生じる腫瘍の質量及びサイズ促進する
図3(A−D)においては、全てのデータ点が1匹のマウスの値を示す。この値は体重に対して標準化され、様々な調査されたゲノタイプに対してプロットされている。この値の中央値を、非対称エラーバーとともにプロットした。
(A/B)調査した腫瘍の質量及びサイズの合計。FGFR4 Arg385を有するマウスは、FGFR4 Gly385に比較して有意に増加した腫瘍質量(Gly/Arg−p=0.03;Arg/Arg−p=0.002)及び腫瘍サイズ(Gly/Arg−p=0.01;Arg/Arg−p=0.0006)を示す。すなわち、FGFR4 Arg385は腫瘍成長を促進する。
(C/D)全体の乳腺に比較した生じる腫瘍の質量及びサイズのパーセンテージ。FGFR4 Arg385を有するマウスは、FGFR4 Gly385に比較して有意に増加したパーセンテージの腫瘍質量(Gly/Arg−p=0.05;Arg/Arg−p=0.005)及びサイズ(Gly/Arg−p=ns;Arg/Arg−p=0.002)を示す。
(E)FGFR4 Arg/Arg385及びGly/Gly385マウスの比較。白い矢印は腫瘍を指し示す。FGFR4 Arg/Arg385マウスは可視可能な、増加した腫瘍質量及び数を示す。
(F)免疫沈降したFGFR4のウェスタンブロット分析;FGFR4は、非腫瘍原性乳腺に比較してWAP−TG Fα/EGFR由来腫瘍において過剰発現している;FGFR4 Arg/Argは、FGFR4 Gly/Arg又はGly/Glyマウスに比較してより高いリン酸化速度を示し、このことは、WAP−TGFα/EGFR由来腫瘍におけるFGFR Arg/Arg385の増進した活性を示唆する。
(G)WAP−TGFα/EGFR由来の過形成乳腺及び腫瘍のHE及びα−FGFR4染色;様々なFGFR4アレルを有するWAP−TGRα/EGFRマウス由来の腫瘍においては明白な病理組織学的変化は見出されなかった。1)WAP−TGFα/EGFR由来の過形成乳腺FGFR4 Arg/ArgのH及びα−FGFR4染色は、FGFR4 Gly/Gly発現に比較して過形成乳腺において過剰発現している。2)1)WAP−TGFα/EGFR由来の腫瘍のH及びα−FGFR4染色;FGFR4は過剰発現し、様々なアレル間で差異を示さない。
【0016】
図4:FGFR4 Arg385は、時間にわたりWAP−TGFα/EGFRマウス乳房腫瘍モデルにおいて腫瘍プログレッションを促進する
図4(B−F)においては、全ての時間点が、少なくとも3匹の分析したマウスの値−中央値を指し示す。全てのゲノタイプについてこれらの中央値が時間に対してプロットされている。
A)FGFR4 Gly385及びFGFR4 Arg385における可視可能な腫瘍発症の時間点;Arg385を有するマウスは、有意により早期の腫瘍発症を示す(p=0.001);この値の中央値を非対称なエラーバーとともにプロットした。すなわち、FGFR4 Arg385は、可視可能な腫瘍発症を早発させる。
(B−D)FGFR4 Arg385を有するマウスはより多くの数、質量及びサイズの腫瘍を確立し、時間にわたりより迅速なプログレッションを示す。
(E−F)FGFR4 Arg385を有するマウスはより高いパーセンテージの腫瘍質量及びサイズを確立し、時間にわたりより迅速なプログレッションを示す。
【0017】
図5:FGFR4 Arg385は、WAP TGFα/EGFRマウス乳腺腫瘍モデルにおいて癌細胞転移を促進する
(A)調査した肺の癌細胞転移発症の時間点;Arg385を有するマウスはより早期の転移発生を示す(p=ns)。
(B)生じた転移の分析;各ゲノタイプについてサイズを転移の数に対してプロットする;FGFR4 Arg/Argは、全ての計算したサイズにおいて増進した数の転移を示す。
(C)生じた転移の分析;各ゲノタイプについてサイズを転移の数に対してプロットする;FGFR4 Arg/Argは、全ての計算したサイズにおいて増進した数の転移を示す。
【0018】
図6:FGFR4 Arg385は、マウス胚性繊維芽細胞(MEFs)において細胞形質転換を促進し、細胞生存を容易にする
(A)MEFsにおける焦点形成アッセイ(Focus Formation Assay);FGFR4 Arg/Arg385を有するMEFsは、全ての使用されたオンコジーンにおいてより多い数の焦点を実証する。
(B)MEFsにおける焦点形成アッセイ;焦点の成長を様々な時間点で決定した:FGFR4 Arg/Arg385 MEFsは、形質転換のより早期の時間点及び時間にわたりより高いプログレッションを示す。
(C)MEFsにおけるアポトーシス;MEFsを、0.5μMのドキソルビシン(dox)で48h処理した:アポトーシスをFACS分析を介して測定した;FGFR4 Arg/Arg385 MEFsは、FGFR Gly/Gly385に比較して有意に(p=0.03)減少した数のアポトーシス細胞を示す;類似して、Arg385を有するMEFsは、FGFR Gly/Gly385細胞に比較して、有意に(p=0.03)減少した数のアポトーシス細胞をシスプラチン処理48hrs後に示す。対照的に、タキソール、微小管相互作用薬剤での処理は、Arg/Arg385 MEFsに比較してFGFR Gly/Gly385 MEFsにおいて48hrs後にアポトーシス性応答において差異を引き起こさない。すなわち、FGFR4 Arg/Arg385は、DNA損傷薬剤に対する応答において、細胞生存を容易にするように見える。
【0019】
図7:FGFR4 Arg385及びGly385マウスは、同一の乳腺計量(Metric)を示す
図7(A/B)において、全てのデータ点は、様々な調査したゲノタイプに対してプロットした1匹のマウスの値を示す。この値の中央値を非対称なエラーバーとともにプロットした。
(A)FGFR4 Gly/Gly385、Gly/Arg385及びArg/Arg385マウスは、乳腺の同一の質量を示す。
(B)FGFR4 Gly/Gly385、Gly/Arg385及びArg/Arg385マウスは、乳腺の同一のサイズを示す。
【0020】
図8:FGFR4 Arg385は、FVBバックグラウンドにおいて、WAP−TGFα/EGFRモデルにおいて腫瘍発症の時間点を減少させる
図8Aにおいて、全てのデータ点は、様々な調査したゲノタイプに対してプロットした1匹のマウスの値を示す。この値の中央値を非対称なエラーバーとともにプロットした。
(A)WAP−TGFα/EGFRについてトランスジェニックなFGFR4 Gly及びFGFR4 Argマウスにおける腫瘍発生。WAP−TGFα/EGFRについてトランスジェニックな、Arg385を有するマウスは、FVBバックグラウンドにおいて、減少した腫瘍発生時間点を示す。
【0021】
図9:FGFR4 Arg385 MEFsにおける通常の増殖、寿命及び移動
(A)FGFR4 Arg385は、MEFsにおける変化した活性を示さない;FGFR4を免疫沈降し、かつ、この活性のあるレセプターの量をp Tyr抗体により分析した;異なるFGFR4アレル間で検出可能な差異は存在しなかった;
(B)FGFR4 Arg385 MEFsは、変化した増殖又は延長した寿命を示さない;MEFsを、老化が生じるまで継代培養し、集団二倍化速度を計算し、時間に対してプロットした;2)明らかに老化MEFsを、β−ガラクトシダーゼ発現について染色し、老化細胞の量を顕微鏡により計算した;異なるFGFR4アレル間の検出可能な差異は存在しなかった;
(C)FGFR4 Arg385 MEFsは、変化した移動を示さない;MEFsを、16hにわたり移動についてボイデンチャンバーにおいて分析した;異なるFGFR4アレル間の検出可能な差異は存在しなかった。
【0022】
図10:発癌性バックグラウンドなしの乳腺計量に対するFGFR4 Arg385の影響
(A)FGFR4 Gly/Gly385(n=12)、Gly/Arg385(n=17)及びArg/Arg385(n=12)における乳腺質量の分析。FGFR4 Arg385アレルを有するマウスは、FGFR4 Gly385アレルについてホモ接合なマウスに比較して乳腺の質量における差異を示さない;
(B)FGFR4 Gly/Gly385(n=12)、Gly/Arg385(n=16)及びArg/Arg385(n=13)マウスにおける乳腺サイズの分析。FGFR4 Arg385アレルを有するマウスは、FGFR4 Gly385アレルについてホモ接合なマウスに比較して乳腺のサイズにおける差異を示さない;
全てのデータを平均値±SDMとして示す。
【0023】
図11:FGFR4 Arg385は、MMTV PymTマウス乳癌腫瘍モデルにおける腫瘍プログレッションを促進しないが、WAP−TGFαについてトランスジェニックなマウスにおいてFVBバックグラウンドにおける腫瘍発症の時間点を減少させる
(A)MMTV−PyMTについてトランスジェニックな、3月齢のFGFR4 Gly/Gly385(n=8)、Gly/Arg385(n=13)及びArg/Arg385(n=11)マウスにおける腫瘍サイズの分析:FGFR4 Arg385アレルを有するマウスは、Gly385アレルについてホモ接合なマウスに比較して腫瘍のサイズにおける差異を示さない;
(B)MMTV−PyMTについてトランスジェニックな、3月齢のFGFR4 Gly/Gly385(n=8)、Gly/Arg385(n=13)及びArg/Arg385(n=11)マウスにおける腫瘍質量の分析:FGFR4 Arg385アレルを有するマウスは、FGFR4 Gly385アレルについてホモ接合なマウスに比較して腫瘍の質量における差異を示さない;
全てのデータは平均値±SDMとして示され、全てのp値はスチューデントT検定を用いて計算され、値≦0.03は統計学的有意と考慮される。
【0024】
図12:FGFR4 Arg385は過剰活性化され、WAP−TGRα由来腫瘍の発現パターンにおいてより攻撃的なフェノタイプを促進する
腫瘍プログレッション6ヶ月後の、FGFR4 Gly/Gly385(n=10)又はArg/Arg385(n=10)(WAP−TGFαについてトランスジェニックである)マウス由来の腫瘍の発現分析:ターゲット遺伝子発現をRT−PCRを介して分析した;GADPHは発現通常値として機能した;FGFR4 Arg/Arg385腫瘍の発現値を、Gly/Gly385腫瘍の発現値に対して相対的にプロットし、その生理学的機能に関してグループ分けした;FGFR4 Arg 385アレルの存在下で、腫瘍は有意に、移動、浸潤及び血管新生に関連する遺伝子を過剰発現した;p21は、FGFR4 Arg 385アレルの存在下で、有意に下方制御される(MMP14−p=0.02、MMP13−p=0.021、MMP−p=0.019、flk−1−p=0.02、CD44−p=0.02、CDK1−p=0.0091、p21−p=0.03);
全てのデータは平均値±SDMとして示される;全てのp値はスチューデントT検定を用いて計算され、値≦0.03は統計学的有意と考慮された。
【0025】
図13:EGFR又はv−srcで形質転換したMEFsにおける発現分析及び細胞増殖
(A)形質転換したFGFR4Gly/Gly385(n=3)及びArg/Arg385(n=3)MEFsのウェスタンブロット分析:EGFR及びv−srcは空のpLXSNで感染させたコントロールMEFsにおいて上方制御されていない;v−srcは、pLXSN−vsrcで感染させたMEFsにおいて過剰発現している;EGFRは、pLXSN−EGFRで感染させたMEFsにおいて過剰発現している;アクチンは負荷コントロール及び定量化のための標準化値として機能した;FGFR4 Arg385発現及び活性化は、EGFRで形質転換したMEFsにおいて上方制御されている。
(B)形質転換したFGFR4Gly/Gly385(n=3)及びArg/Arg385(n=3)MEFsの増殖アッセイ:播種したMEFsの細胞数を時間にわたりモニタリングして、集団二倍化速度を計算した;FGFR4 Arg385アレルの存在は、コントロールMEFs(空のpLXSN)においてもv−src又はEGFRで形質転換したMEFsにおいても増殖に影響を及ぼさない;
全てのデータは平均値±SDMとして示される。
【0026】
図14:FGFR4 Arg385は、細胞の形質転換、移動、足場非依存性成長及び分岐をEGFRで形質転換したMEFsにおいて容易にする
(A)安定にEGFR形質転換したFGFR4Gly/Gly385(n=3)及びArg/Arg385(n=3)MEFsの移動アッセイ:移動能力を、クリスタルバイオレット染色(20×)後に顕微鏡により分析し、ELISA分析を介して定量化した。EGFRで形質転換したFGFR4 Arg385 MEFsは、有意に(p=0.0005)増加した移動能力を示す;
(B)安定にEGFR形質転換したFGFR4Gly/Gly385(n=3)及びArg/Arg385(n=3)MEFsの軟寒天コロニー形成アッセイ:足場非依存性成長を分析し、示した時間点で顕微鏡により(20×)定量化した。EGFRで形質転換したFGFR4 Arg385MEFsは、FGFR4 Gly385 MEFsに比較して24〜96時間後に軟寒天中で足場非依存性成長の有意に増加した能力を示す(24h−p=0.00004;96hp=0.00003);
(C)安定にEGFR形質転換したFGFR4Gly/Gly385(n=3)及びArg/Arg385(n=3)MEFsのマトリゲルにおける浸潤アッセイ:マトリゲルにおける分岐を分析し、顕微鏡により(20×)示した時間点で定量化した;EGFRで形質転換したFGFR3 Arg385 MEFsは、FGFR4 Gly 385 MEFsに比較して96時間後にマトリゲル中で有意に増加した浸潤を示す(p=0.00009);
全てのデータは平均値±SDMとして示される;全てのp値はスチューデントT検定を用いて計算され、値≦0.03は統計学的有意と考慮された。
【0027】
図15:FGFR4 Arg385は移動、足場非依存性成長及び分岐を、v−srcで形質転換したか又は空のpLXSNベクターを安定に発現するMEFs中では促進しない
(A)FGFR4 Gly/Gly385(n=3)又はArg/Arg385(n=3) MEFs(v−srcで形質転換したか又は空のpLXSNベクターを過剰発現する)の移動能力;MEFsは、FGFR4アレルに関してその移動能力において差異を示さない。
(B)FGFR4 Gly/Gly385(n=3)又はArg/Arg385(n=3) MEFs(v−srcで形質転換したか又は空のpLXSNベクターを過剰発現する)の足場非依存性成長;v−srcで形質転換したMEFsは、FGFR4アレルに関して足場非依存性成長における差異を示さない。空のpLXSNベクターを安定に発現するMEFsは、足場非依存性成長できない。
(C)FGFR4 Gly/Gly385(n=3)又はArg/Arg385(n=3) MEFs(v−srcで形質転換したか又は空のpLXSNベクターを過剰発現する)のマトリゲル増生;v−srcで形質転換したMEFsは、FGFR4アレルに関してマトリゲル増生における差異を示さない。空のpLXSNベクターを安定に発現するMEFsは、マトリゲル中で分岐できない。
【0028】
図16:空のpLXSNベクター、pLXSN−FGFR4 Gly388又はpLXSN−FGFR4 Arg388のいずれかを発現するMDA−MB−231細胞におけるFGFR4相互作用パートナーを分析するための実験的構成の簡略化したスキーム;細胞株を、SILACラベル化について改変したアミノ酸を含有する培地中で継代培養した;FGFR4 Gly388及びArg388を発現するMDA−MB−231細胞の間でこの結果を確認するためにラベルスイッチを行った。細胞溶解の後に、ライセートを1:1にプールし、FGFR4及びその相互作用物質を免疫沈降させ、トリプシン及びLysCでインゲル(in-gel)消化させ、この後に定量的LC−MS/MS分析した。
【0029】
図17:EGFR/FGFR4相互作用の評価:A)空pLXSN、pLXSN−Gly388及び−Arg388を過剰発現するMDA−MB−231細胞中でのEGFR及びFGFR4の共免疫沈降:EGFR及びFGFR4 Arg388の相互作用は、EGFR及びFGFR4 Gly388に比較してより強力であるように見える;B)EGF刺激後のEGFR−FGFR4相互作用。EGFRの増加したリン酸化及び増進したFGFR4相互作用及び活性化、FGFR4 Arg388を発現するMDA−MB−231細胞中で;C)EGF刺激されたMDA−MB−231細胞のウェスタンブロット分析の定量化:FGFR4 ARg388を発現するMDA−MB−231細胞は、増進したEGFR及びAkt活性化を示し、全EGFR及びチューブリンは定量化のための標準化値としてそれぞれ機能した;共免疫沈降したFGFR4 Arg388は、EGFRに対して増進した結合及び増加した活性化を、共免疫沈降したFGFR4 Gly388に比較して示す。
【0030】
図18:EGF及びTGFα刺激後のEGFRで形質転換したFGFR4 Gly385又はArg385 ホモ接合マウス由来のMEFsのウェスタンブロット分析;A)EGFRで形質転換したMEFsは、FGFR4 Arg385アレルを発現する場合に、EGF及びTGFα刺激すると増加しかつ延長したAkt活性化を示す;B)EFGRで形質転換したMEFsは、FGFR4 Arg385アレルを発現する場合に、EGF及びTGFα刺激後に有意に増加したEGFR活性化を示す(EGF5′−p=0.000073、EGF10′−p=0.0025、TGFα5′−p=0.07、TGFα10′−p=0.01);アクチンは、定量化のための標準化値として機能した。C)EGFRで形質転換したMEFsにおいては、FGFR4はEGF及びTGFα刺激すると活性化し、その一方で、FGFR4 Arg385は、FGFR4 Gly385に比較して増加したリン酸化を示す;全てのデータは平均値±SDMとして示される;全てのp値は、スチューデントのT検定を用いて計算され、値≦0.03は統計学的に有意と考慮された。
【0031】
図19:空のpLXSN、pLXSN−Gly388又はpLXSN−Arg388を発現するMDA−MB−231の生物学的特性;A)MDA−MB−231細胞は、FGFR4を過剰発現することによりその増殖能力を変更させない;B)MDA−MB231細胞は、FGFR4を過剰発現することにより部分的に有意に増加した移動能力を示す(FGFR4 Arg388−p=0.001);FGFR4 Argアレルを過剰発現するMDA−MB−231細胞は、FGFR4 Gly388アレルを発現するMDA−MB−231細胞に比較して有意に増進した移動を示す(FGFR4 Arg388−p=0.001);全てのデータは平均値±SDMとして示される;全てのp値は、スチューデントのT検定を用いて計算され、値≦0.03は統計学的有意であると考慮された。
【0032】
図20:空のpLXSN、pLXSN−Gly388又はpLXSN−Arg388を発現するMDA−MB−231細胞における、増殖、アポトーシス及び移動に対するゲフィニチブの影響;A)FGFR4 Arg388アレルを過剰発現するMDA−MB−231細胞は、ゲフィニチブに対して増加した感受性(IC50=9.53)を、FGFR Gly388又はコントロール細胞(IC50=18.72)に比較して示す;B)MDA−MB−231細胞は、ゲフィニチブに対してFGFR4 Gly388に比較してFGFR4 Arg388アレルの存在下でアポトーシスにおける有意な増加を示す(20μM−p=0.012;10μM−p=0.0022);C)MDA−MB−231細胞は、ゲフィニチブに対する応答において、FGFR4 Gly388に比較してFGFR4 Arg388アレルの存在下で移動における減少を示す;全てのデータは平均値±SDMとして示される;全てのp値は、スチューデントのT検定を用いて計算され、値≦0.03は統計学的有意であると考慮された。
【0033】
図21:C57BL/6マウスのin vivoラベリング:マウスに天然の又は136置換したタイプのリシンを含む食餌を供給した;ラベリングの効率は、特定組織の細胞増殖速度に依存する:F2発生は完全にラベル化される(Kruger et al., 2008)。
【0034】
図22:in vivoSILACを介したFGFR4の肝性相互作用パートナーの調査:
A)遮断ペプチドの合成;HEK293を、GSTでタグ化したFGFR4の細胞外ドメインを含むベクターで一過的にトランスフェクションするために使用した。特定のシグナルペプチドを介して、この組み換えタンパク質はこの細胞培地に配送されることができる;トリプシン又はリシンいずれかでの消化後に、この遮断ペプチドの効率をFGFR4を用いた免疫沈降実験において試験した。
B)遮断ペプチドを介した肝性FGFR4の相互作用パートナーを分析するための実験的スキーム;定量可能な分析を可能にするために、このラベル化SILACマウスを内部標準として使用した;ラベル化及び非ラベル化マウスの肝臓を解剖し、溶解した;非ラベル化肝臓−ライセートを用いて、FGFR4を、遮断ペプチドの存在下で免疫沈降し、この場合に、非特異的結合パートナーの検出のためこの抗体とFGFR4との結合を妨げた;ラベル化肝臓−ライセートにおいて、FGFR4を、FGFR4結合パートナーを分析するために、遮断ペプチドなしに免疫沈降した。
C)特異的遮断ペプチドの作成のための配列分析
D)FGFR4 KOマウスを介した肝性FGFR4の相互作用パートナーを分析するための実験的スキーム;定量可能な分析を可能にするために、このラベル化SILACマウスを内部標準として使用した;ラベル化及び非ラベル化マウスの肝臓を解剖し、溶解し、FGFR4免疫沈降のために一緒に混合した。
E)肝性FGFR4 Arg385の相互作用パートナーを分析するための実験的スキーム;定量可能な分析を可能にするために、このラベル化SILACマウスを内部標準として使用した;ラベル化及び非ラベル化マウスの肝臓を解剖し、溶解し、FGFR4免疫沈降のために一緒に混合した。
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は、改変したFGFR4タンパク質をコードする内因性遺伝子を含む非ヒト動物、好ましくは齧歯類であって、その際、この改変が、配列番号1、すなわち、マウスFGFRのアミノ酸位置385に相応するアミノ酸位置での前記非ヒト齧歯類の野生型FGFR4におけるアミノ酸置換である非ヒト動物、好ましくは齧歯類を提供する。代替的に、この改変は、少なくとも、配列番号1又は任意の相応する配列の位置385でのアミノ酸の欠失、又は配列番号1又は任意の相応する配列の位置385での少なくとも1のアミノ酸の挿入であってよい。
【0036】
一実施態様において、本発明は、改変したFGFR4タンパク質をコードする内因性遺伝子を含むマウス又はラットである齧歯類であって、その際、この改変が、前記マウス又はラットの野生型FGFR4におけるアミノ酸置換であり、その際、マウスの場合には前記アミノ酸置換が配列番号1のアミノ酸位置385にあるか、又は、ラットの場合には前記アミノ酸置換が配列番号4のアミノ酸位置386にある齧歯類を提供する。
【0037】
一実施態様において、本発明は、改変したFGFR4タンパク質をコードする内因性遺伝子を含むマウスである齧歯類であって、その際、この改変が、マウスの野生型FGFR4におけるアミノ酸置換であり、その際、前記アミノ酸置換が配列番号1のアミノ酸位置385にある齧歯類を提供する。
【0038】
「相応する」との用語は、本願で定義される場合、FGFR4オルソログ、アイソフォーム、成熟形、又は、変異形(これは本願で定義される)のアミノ酸位置であって、これら配列における配列番号1の385位置を定義するものを示す。当業者にはこの文脈において、改変されたFGFR4の遺伝子が、配列番号1又は本願で言及する任意の他の配列によるマウスFGFR4タンパク質中の、アミノ酸レベルでの改変を反映することが明らかである。この改変に隣接するFGFR4遺伝子の配列が、上で定義したマウスFGFR4タンパク質のアミノ酸配列における相応する位置にあるものに同一なアミノ酸をコードしない場合に、当業者は容易に、この隣接配列によりコードされるアミノ酸をこのマウスFGFR4タンパク質の相応するアミノ酸と、好ましくは以下に挙げるアミノ酸配列同一性を決定する方法を用いて容易にアラインメントさせることができ、かつ、上述した種類のこのマウスFGFR4タンパク質における改変が前記遺伝子によりコードされるアミノ酸配列により反映されるかどうかを決定することができる。アミノ酸置換又は挿入の場合には、この改変は好ましくは、前記遺伝子によりコードされるアミノ酸配列により、同一のアミノ酸又はアミノ酸配列がこのアレルによりコードされるこのタンパク質の相応する位置に見出されるように反映される。アミノ酸欠失の場合には、この改変は好ましくは、前記遺伝子によりコードされるアミノ酸配列により、同一の又は対応するアミノ酸又はアミノ酸配列がこの遺伝子によりコードされるこのタンパク質の相応する位置で欠失されるように反映される。
【0039】
例えば、上述のタンパク質は、例えば、マウスの野生型FGFR4タンパク質であってよく、例えば、配列番号1に開示される配列を有する。この改変、例えば、アミノ酸置換は次に、グリシンである、配列番号1のアミノ酸位置385に影響を及ぼす。代替的に、この改変されたFGFR4タンパク質は、この動物に関して配列番号1によるマウスFGFR4タンパク質の任意のオルソログであってよく、例えば、脊椎動物由来、好ましくは哺乳類由来、より好ましくは齧歯類由来、例えば、ハツカネズミ属(Mus)(例えば、マウス)又はクマネズミ属(Ratius)(例えば、ラット)由来、又はアナウサギ属(Oryctologus)(例えば、ウサギ)又はゴールデンハムスター属(Mesocricetus)(例えば、ハムスター)由来であってよい。この場合に、アミノ酸置換は、配列番号1におけるアミノ酸位置385に相応するアミノ酸位置に影響を及ぼしてよい。例えば、例えば配列番号4によるラット配列において、マウス配列のアミノ酸位置385はアミノ酸位置386に相応する。
【0040】
一実施態様において、前記齧歯類、例えばマウス又はラット、請求項1又は4のいずれか1項記載の動物において、前記齧歯類動物において配列番号1のアミノ酸位置385に相応するアミノ酸位置はグリシンである。
【0041】
別の実施態様において、前記齧歯類、例えばマウス又はラットにおいて、アミノ酸置換はグリシンとは異なるアミノ酸を伴う。
【0042】
この非ヒト動物、例えば齧歯類の改変したFGFR4タンパク質は、本願で定義されるとおり、配列番号1及び配列番号4に記載のマウス又はラットFGFR4タンパク質の、又は前記オルソログの変形、アレル変形又は、その他であってもよく、この場合に特定のアミノ酸又は部分アミノ酸配列は、置き換えられ、付加されるか、又は欠失される。
【0043】
好ましくは、非ヒト動物、例えば齧歯類における、配列番号1による野生型FGFR4配列のアミノ酸位置385又はこの相応するアミノ酸位置は、グリシンとは異なるアミノ酸、例えば、異なるサイズ及び/又は極性を有するアミノ酸により置き換えられ、すなわち、非保存的アミノ酸置換である。非保存的置換は、1のアミノ酸の、以下に示す5つの標準的なアミノ酸群の異なる群に列記された別のアミノ酸による交換として定義される:
1.低脂肪族性、非極性又はわずかに極性の残基:Ala、Val、Ser、Thr、(Pro)、(GIy):
2.負に荷電した残基及びそのアミド:Asn、Asp、Glu、Gln;
3.正に荷電した残基:His、Arg、Lys;
4.高脂肪族性、非極性残基:Met、Leu、Ile、VaI、(Cys);
5.高芳香族性残基:Phe、Trp。
【0044】
保存的置換は、1のアミノ酸の、上で示された5つの標準的なアミノ酸群の同じ群内に列記された別のアミノ酸による交換として定義される:タンパク質構造におけるこの特殊な役割のために3つの残基がかっこ書きされる。Glyは、側鎖を有しない唯一の残基であり、したがってこの鎖に柔軟性を付与する。Proは、この鎖を固く拘束する異常な幾何学を有する。Cysは、ジルスフィド結合に関与する。
【0045】
本発明の一実施態様において、非ヒト動物、例えば、齧歯類において、配列番号1のFGFR4の位置385又は相応するアミノ酸位置でのグリシン残基は、グリシンとは異なる別の残基により、好ましくはAla、Val、Ser、Thr、(Pro)とは異なる残基により置き換えられ、好ましくは、荷電した側鎖を有する、すなわち、正に荷電した側鎖を有するアミノ酸、例えば、リシン、アルギニン又はヒスチジン、特に好ましくはアルギニンにより置き換えられる。
【0046】
好ましい一実施態様において、非ヒト動物、例えば齧歯類は、配列番号5又は配列番号6に示されるアミノ酸配列を発現する。
【0047】
本発明による非ヒト動物、例えば齧歯類は、配列番号1又は配列番号4によるFGFR4の位置385又は他のFGFR4オルソログにおける相応する位置にグリシン残基の改変を含むものに限定されない。むしろ、非ヒト動物、例えば齧歯類のFGFR4の「改変」との用語は、本願で説明される場合、これらが本願で説明されるフェノタイプを生じる限りはFGFR4における任意の改変を包含するものであり、例えばアミノ酸置換、欠失又は挿入である。挿入型アミノ酸配列改変は、1又はそれより多いアミノ酸残基がタンパク質の予め定められた部位に導入される改変であり、ただし、この生成物の適したスクリーニングを用いてランダムな挿入も可能である。欠失型改変は、例えばフレームシフト又はストップコドンの挿入を生じる、この配列からの1又はそれより多いアミノ酸の除去により特徴付けられる。置換型アミノ酸改変は、この配列中の少なくとも1の残基が除去され、この場所中に異なる残基が挿入されているものである。
【0048】
これに応じて、本発明の更なる一観点は、非ヒト動物、例えば齧歯類であって、改変されたFGFR4タンパク質をコードする内因性遺伝子を含有し、その際、この改変が上述のとおりのアミノ酸改変、例えば、野生型FGFR4タンパク質、好ましくは配列番号1によるFGFRタンパク質に比較して少なくとも1のアミノ酸位置でのアミノ酸置換であり、この改変が、前記動物の細胞の少なくともいくつか又は全て又は実質的に全てにおいてヘテロ接合又はホモ接合の方式で存在する場合には、以下にさらに説明されるとおりの腫瘍プログレッション及び/又は形成における変化、例えば、野生型動物に比較して腫瘍成長及び/又は転移形成の増加した速度、に関連したフェノタイプを生じる非ヒト動物、例えば齧歯類である。好ましい一実施態様において、前記動物は付加的に、少なくともいくつかのその細胞のゲノムにおいてTGF−αタンパク質をコードする導入遺伝子を、例えば哺乳類細胞において、適したプロモーター、例えば、WAPプロモーターの制御下の発現により、又は肝臓細胞、例えば肝細胞において、適したプロモーター、例えば、アルブミンプロモーター、α−1アンチトリプシンプロモーター又はTGF−αメタロチオネイン1プロモーターの制御下の発現により、発現する。
【0049】
好ましくは、本発明の非ヒト動物、例えば齧歯類においてこの改変されたFGFR4は、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%この動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳類、最も好ましくは齧歯類の野生型FGFR4配列、例えば配列番号1又は配列番号4によるマウス又はラットFGFR4と同一である。一実施態様において、この改変されたFGFR4タンパク質は、その野生型タンパク質と、配列番号1によるFGFR4のアミノ酸位置385に相応するアミノ酸置換を除いて、同一である。
【0050】
以下の定義は、本願明細書を通じて核酸又はアミノ酸配列同一性に対する全ての言及に適用される。
「配列同一性」との用語は、特定の比較領域にわたり残基から残基ベース(residue-by-residue)で2つのポリヌクレオチド、タンパク質又はポリペプチド配列が同一である程度を指す。
【0051】
「パーセントアミノ酸同一性」又は「%アミノ酸同一性」とのフレーズは、2つ又はそれより多いアミノ酸又は核酸配列の比較において見出される配列同一性のパーセンテージを指す。パーセント同一性は、例えば、MEGALIGNプログラム(DNASTAR, Inc., Madison Wis.)を用いて、電子的に容易に決定されることができる。MEGALIGNプログラムは、異なる方法による2つ又はそれより多くの配列間のアラインメントを作成することができ、このうちの1つはクラスター法である。例えば、Higgins and Sharp (Higgins and Sharp1988)を参照のこと。このクラスターアルゴリズムは、全てのペアの間での距離を調べることによりクラスターへと配列を分類する。このクラスターはペア毎に、次に群へと、アラインメントされる。2つのアミノ酸配列、例えば、配列Aと配列Bの間でのパーセンテージ類似性は、配列AとBの間の残基一致(match)の合計を、配列Aの長さ、マイナス配列A中のギャップ残基の数、マイナス配列B中のギャップ残基の数、で割り、100をかけることにより計算される。2つのアミノ酸配列の間の低ホモロジー又はホモロジーなしのギャップは、パーセンテージ類似性の決定には含まれない。
【0052】
パーセンテージ同一性は、容易にMultAlinソフトウェアを使用して電子的に容易に決定されることもできる(Corpet 1988)。
【0053】
本発明の目的のための2つのタンパク質配列の間のアミノ酸同一性の決定の別の方法は、「Blast 2 sequences」(bl2seq)アルゴリズムの使用であり、これはTatusova et al.により説明されている(Tatusova and Madden 1999)。この方法は、「BLAST」エンジンを使用する2つの所定の配列のアラインメントを作成する。「blasting two sequences」のオンラインアクセスは、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bl2.htmlでNCBIサーバーにより獲得されることができる。2つの配列のブラスト化(bl2seq)のために実行可能なスタンダロンは、NCBI ftpサイト(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/executables)から検索されることができる。好ましくは、2つのタンパク質の間の同一の又は類似のアミノ酸の数及びパーセンテージを決定するために使用されるプログラムblastpの設定は以下のとおりである:
プログラム: blastp
マトリックス: BLOSUM62
オープンギャップペナルティ: 11
エクステンションギャップペナルティ: 1
Gapxdropoff : 50
期待: 10.0
ワードサイズ: 3
低複雑性フィルター:オン。
【0054】
配列同一性の決定のための2つ又はそれより多いアミノ酸又は核酸配列の比較は、オルソログ配列間、好ましくはマウス及びラット配列間で実施されることができる。
【0055】
好ましくは、この改変されたFGFR4タンパク質の野生型残基は、その際、この改変は、野生型FGFR4タンパク質、好ましくは配列番号1によるFGFRタンパク質に比較して少なくとも1のアミノ酸置換であり、この改変は、本願で説明されるとおりの動物、例えば齧歯類の細胞の少なくともいくつか又は全て又は実質的に全てにおいてヘテロ接合又はホモ接合の方式で存在する場合には、腫瘍プログレッション及び/又は形成における変化、例えば、野生型動物に比較して腫瘍成長及び/又は転移形成の増加した速度、に関連したフェノタイプを生じるが、異なるサイズ及び/又は極性を有するアミノ酸により置換され、すなわち、これは非保存的アミノ酸置換であり、これは上で定義されるとおりである。 好ましい一実施態様において、前記動物は、付加的に、少なくともいくつかのその細胞のゲノム中で、TGF−αタンパク質をコードする導入遺伝子又は乳癌を誘発する任意の他の遺伝子を発現する。代替的に、前記動物は、付加的に、少なくともいくつかのその細胞のゲノムにおいて、肝細胞癌を誘導する遺伝子、例えばp53又はc−mycを発現する。
【0056】
「フェノタイプ」との用語は本願で使用される場合には、このゲノタイプ及び環境の相互作用から生じる、細胞又は生物により所有される、1又はそれより多い形態学的、生理学的挙動及び/又は生化学的形質を指す。このようにして、本発明の非ヒト動物、例えば齧歯類は、野生型動物に比較して1又はそれより多くの容易に観察可能な異常を示す。好ましい一実施態様において、本発明の動物は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3又は少なくとも4の異常なフェノタイプ的特徴を示し、これは上述のカテゴリーの任意のものから選択される。
【0057】
「腫瘍プログレッションにおける変化に関連したフェノタイプ」との用語は、本出願を通じて言及される場合、野生型動物と比較した、腫瘍成長及び/又は転移形成の増加した速度により特徴付けられてよい。このフェノタイプの定義に該当する更なる特徴付けは、以下において実施例において見出されてよい。この観点における好ましい腫瘍は、乳房の腫瘍(mammary tumor)又は肝臓(肝細胞)の腫瘍である。
【0058】
上述したとおり、FGFR4遺伝子又は導入遺伝子の内因性プロモーターは、非ヒト動物、例えば齧歯類と関連して、非相同性プロモーター、例えば、遺伝子上に発現の異なる組織特異性を付与するプロモーター、例えば、WAPプロモーター(乳房細胞のため)、ビリンプロモーター(結腸直腸細胞のため)、又はアルブミンプロモーターα−1アンチトリプシンプロモーター、又はTGF−αメタロチオネイン1プロモーター(肝細胞のため)、又は一過的に制御可能なプロモーター、例えば、化学的又は物理学的手段、例えばtet−CREシステムにより誘導可能なプロモーターによって置き換えられてよい。
【0059】
本願で使用される場合に「改変した」又は「改変」との用語は、この野生型に比較した変化を指す。本願で使用される場合に「突然変異」又は「改変した」との用語は、これに関連するFGFR4タンパク質配列及び核酸配列との関連において、この相応する野生型FGFR4に比較した配列中の変化を指す。
【0060】
本願で説明される場合に非ヒト動物とは、脊椎動物、好ましくは哺乳類であってよい。更なる好ましい一実施態様において、非ヒト動物は齧歯類である。
【0061】
特に、齧歯類は、ハツカネズミ属(Mus)(例えば、マウス)又はクマネズミ属(Ratius)(例えば、ラット)、又はアナウサギ属(Oryctologus)(例えば、ウサギ)又はゴールデンハムスター属(Mesocricetus)(例えば、ハムスター)から選択されてよい。特に好ましい非ヒト動物はマウス又はラットである。
【0062】
本願で説明される場合に本発明の非ヒト動物モデル、例えば齧歯類は、本願で説明されるとおりの内因性の改変したFGFR4タンパク質又は遺伝子又は本願で説明されるとおりの導入遺伝子を、少なくともいくつかのその細胞において、例えば、モザイク動物、例えばキメラ動物として発現し、又は、この改変されたFGFR4タンパク質は上で定義したとおりの非相同性プロモーターを有する遺伝子により発現される場合がある。本発明の非ヒト動物モデル、例えば齧歯類は、本願で説明されるとおりの内因性の改変したFGFR4タンパク質をその細胞の全てにおいて、例えば、このFGFR4をコードする核酸から普遍的に発現されるプロモーターの制御下にこのFGFR4タンパク質を発現することにより、発現してもよい。この改変したFGFR4タンパク質は、内因性FGFR4プロモーターの制御下で前記FGFR4タンパク質をコードする核酸をコードする核酸から翻訳されてもよい。説明されるとおりの非ヒト動物、例えば齧歯類の細胞は、本願で説明されるとおり、アミノ酸改変、例えば置換に関して少なくともヘテロ接合である。代替的に、この細胞はホモ接合であってもよい。
【0063】
本発明は、さらに、成熟した改変したFGFR4タンパク質を含む非ヒト動物、例えば齧歯類、又は、本願で説明されるとおりに改変されているその脊椎動物オルソログ、例えば、上述のとおりの特異的オルソログを含み、これは、本願で説明されるとおりのFGFR4タンパク質に相応するアミノ酸又はアミノ酸配列を含む。本願で使用される場合に、ポリペプチド又はタンパク質の「成熟」形とは、後翻訳改変から生じてよい。このような付加的なプロセスは、限定する例ではないが、タンパク質加水分解開裂、例えば、リーダー配列の開裂、グリコシル化、ミリストイル化又はリン酸化を含む。一般に、本発明による成熟ポリペプチド又はタンパク質は、これらプロセスの1の操作又は、これらの任意の組み合わせから生じてよい。
【0064】
本発明のアミノ酸置換をコードする核酸又は遺伝子は、非ヒト脊椎動物の生殖細胞又は体細胞又はこの両者において存在してよい。
【0065】
本願で説明される場合にこの非ヒト動物、例えば齧歯類は、本願で説明されるとおりのFGFR4の改変に加えて、制御されていない細胞成長、好ましくは癌及び/又は転移形成を示してよい。
【0066】
本発明において使用される場合に「制御されていない細胞成長」とは、制御されていない成長により特徴付けられる任意の状態、例えば癌に関する。癌の例は、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、前立腺癌、メラノーマ、及び/又は膵臓の癌である。「制御されていない細胞成長」との用語は、制御されていない細胞分割、すなわち、制御されていない細胞成長状態における同じ細胞の成長及び/又は分割を超えた成長及び/又は分割をも包含する。制御されていない細胞成長を決定するための技術は、当業者に知られており、これは例えば細胞の視覚的検査(組織学)である。
【0067】
制御されていない細胞成長は、細胞の制御されていない成長及び/又は分割を生じる当業者に知られた任意の方法又は処置によって引き起こされてよく、すなわち、照射、例えばUV光を用いた照射、又は、癌誘導剤、例えばジメチルヒドラジン(DMH)、アゾキシメタン(AOM)、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、N−メチル−N−ニトロソウレア(MNU)、エチル−ニトロソ−ウレア(ENU)又は12−0−テトラデカノイルホルボール−13−アセタート(TPA)を用いた処置によって引き起こされてよい。代替的に、これはオンコジーンを含む導入遺伝子、すなわち、脱制御され、この脱制御が癌の発生及び発達に参加する遺伝子の発現により引き起こされてよい。このような遺伝子の例は、TGF−α、TGF−β、HGF、IGF−I、PyV−mz、erB−B2、RET、サイクリン D1、EGFR、v−src、c−kit、HER2、Trp53、INK4a/ARF、E2F−1、サイクリンA、myc、p53、ras、Rb、特にTGF−α、TGF−β、EGFR、v−src、c−kit、HER2、erB−B2、p53、myc又はras、そしてとりわけTGF−α(配列番号74)又は/及びEGFR(配列番号76)である。この導入遺伝子は、全生物又は個々の細胞又は組織において、例えば、乳房細胞、肺細胞、直腸結腸細胞、肝細胞、前立腺細胞、皮膚細胞、又は膵臓細胞、特にβ−島細胞において発現されてよい。上述のとおり、全ての又は少なくともいくつかの細胞における導入遺伝子の発現は、適したプロモーターの使用により達成されてよい。
【0068】
本発明の更なる一観点において、改変したFGFR4タンパク質をコードする内因性遺伝子を含む非ヒト動物、例えば齧歯類動物であって、その際、この改変が、例えば、本願で説明されるとおりの配列番号1のアミノ酸位置385に相応するアミノ酸位置での前記非ヒト動物の野生型FGFR4におけるアミノ酸置換である非ヒト動物、例えば齧歯類動物は、本願で説明されるとおりの腫瘍プログレッション及び/又は形成における変化と関連したフェノタイプを発達させる。
【0069】
別の観点において、改変したFGFR4タンパク質をコードする内因性遺伝子を含む非ヒト動物、例えば齧歯類動物は、その際、この改変が、本願で説明したとおりの改変、例えば、野生型FGFR4タンパク質、好ましくは配列番号1のFGFR4タンパク質に比較して少なくとも1のアミノ酸位置でのアミノ酸置換であり、この改変が、ヘテロ接合又はホモ接合の方式で前記動物の少なくともいくつかの又は全ての又は実質的に全ての細胞において存在する場合には、本願で説明されるとおりの腫瘍プログレッション及び/又は形成における変化、例えば、野生型動物に比較して増加した速度の腫瘍成長及び/又は転移形成に関連するフェノタイプを生じるが、本願で説明されるとおりの腫瘍プログレッション及び/又は形成における変化に関連するフェノタイプを発達させる。 好ましい一実施態様において、前記動物は、付加的に、少なくともいくつかのその細胞のゲノム中で、TGF−αタンパク質をコードする導入遺伝子を発現する。
【0070】
本発明の更なる一観点において、改変したFGFR4タンパク質をコードする内因性遺伝子を含む非ヒト動物、例えば齧歯類は、その際、この改変が、本願で説明されるとおりの配列番号1のアミノ酸位置385に相応するアミノ酸位置での前記非ヒト動物、例えば齧歯類の野生型FGFR4におけるアミノ酸置換であるが、本願で説明するとおりのFGFR4の改変の他に、本願で説明されるとおりの制御されていない細胞成長及び/又は転移形成を示し、かつ、本願で説明されるとおりの腫瘍プログレッション及び/又は形成における変化と関連したフェノタイプを発達させる。
【0071】
別の観点において、改変したFGFR4タンパク質をコードする内因性遺伝子を含む非ヒト動物、例えば齧歯類動物は、その際、この改変が、本願で説明したとおりの改変、例えば、野生型FGFR4タンパク質、好ましくは配列番号1のFGFR4タンパク質に比較して少なくとも1のアミノ酸位置でのアミノ酸置換であり、この改変が、ヘテロ接合又はホモ接合の方式で前記動物の少なくともいくつかの又は全ての又は実質的に全ての細胞において存在する場合には、本願で説明されるとおりの腫瘍プログレッションにおける変化、例えば、野生型動物に比較して増加した速度の腫瘍成長及び/又は転移形成に関連するフェノタイプを生じるが、本願で説明されるとおりのFGFR4の改変に加えて、本願で上述されるとおりの制御されていない細胞成長及び/又は転移形成を示し、かつ、本願で説明されるとおりの腫瘍プログレッション及び/又は形成における変化に関連したフェノタイプを発達させる。好ましい一実施態様において、前記動物は、付加的に、少なくともいくつかのその細胞のゲノム中で、TGF−αタンパク質をコードする導入遺伝子を発現する。
【0072】
前述の説明から明白であるとおり、本発明による非ヒト動物、例えば齧歯類は、当業者に知られている任意の技術、例えば、外因性遺伝子材料を組み込み/統合するゲノムを有する動物を生じる手順の適用により、例えば、この通常のFGFR4遺伝子又はタンパク質の機能を改変又は破壊するための様式で、又は、上述の改変したFGFR4を発現するための様式で、又は、遺伝子、例えば本願で説明されたオンコジーンを含む導入遺伝子の付加的なコピーを統合する様式で、産生されてよい。これら技術は、マイクロインジョクション、電気穿孔、細胞銃、細胞融合、無核細胞中への核輸送、奇形癌幹細胞の胚又は機能的等価な胚性幹細胞中へのマイクロインジョクションを含むが、これに限定されない。本発明の動物を作成するための手順の一実施態様は、更に以下に示される「材料及び方法」によるものである。
【0073】
上述のとおりのオンコジーンを含む導入遺伝子を有するトランスジェニック動物の産生の場合には、この導入遺伝子をコードする遺伝的材料は、受精卵の前核中へマイクロインジョクションされてよく、このプロセスは当業者に知られている。しかし、DNAの挿入はランダムプロセスである。この操作された受精卵は、レシピエント雌又は養母の卵管中に移送され、これは精管切除された雄との交雑によりレシピエントとして働くように誘導されている。この雌の生じる子孫は、同様に、この導入遺伝子を有する動物を決定するために試験されている。
【0074】
本発明は、さらに、事実上均質な遺伝的バックグラウンドを提供する利点を提供する、本発明の改変したFGFR4タンパク質をコードする核酸を有する動物の近交逐次系(inbred succesive line)を提供する。動物の遺伝的均質系列は、制御されていない細胞成長、腫瘍プログレッションにおける改変、及び/又は転移形成に関連する状態又は症状のための機能的に再現可能なモデルシステムを提供する。
【0075】
本発明の動物は、種々の組織からのプライマリー細胞、例えばマウス胚性フィーダー細胞(MEF)の供給源としても、細胞培養実験のために、例えば、この分野で知られている任意の不死化細胞株の産生、例えば、レトロウィルス形質転換(これに限定されない)に使用されることができる。
【0076】
本願で説明され、かつ請求された非ヒト脊椎動物のいずれか1つから由来する、このようなプライマリー細胞又は不死化細胞株は、同様に、本発明の範囲内にある。一実施態様において、このようなプライマリー細胞、例えばMEFsは、本願で説明されたような動物に由来し、これは、本願で説明されるような改変されたFGFR4をコードする遺伝子をその細胞の全てにおいて含む。このような細胞は、前記の改変されたFGFR4に関してヘテロ接合又はホモ接合であってよい。別の実施態様において、このようなプライマリー細胞、例えばMEFsは、付加的に、EGFRをコードする核酸(配列番号76又は配列番号77)又はEGFRタンパク質を含む。このEGFR核酸又はEGFRタンパク質は、一過的に、例えば感染により、又は安定に、例えば実施例に説明されるとおりに、存在してよい。これら動物からのこのような不死化細胞は、有利には、通常の及び形質転換した培養細胞の両方の所望の特性を示し、すなわち、これらは、形態学的及び生理学的に正常又はほぼ正常であるが、しかし、より長期間培養されることができ、そしてことによると、無期限の時間を有する。プライマリー細胞又はこれに由来する細胞株はさらに、本発明による動物モデルの構築のため使用されてよい。
【0077】
他の実施態様において、本発明による細胞株は、本発明の動物モデルに上述のフェノタイプを付与するコドンを含む本発明の核酸配列又はその断片を含む核酸コンストラクトの挿入により準備されてよい。挿入のための適した細胞は、動物また同様に細胞から回収したプライマリー細胞を含み、これは、不死化細胞株のメンバーである。本発明の組み換え核酸コンストラクトは、以下説明するとおり、この分野において知られた任意の方法により細胞中に導入されてよく、これは、トランスフェクション、レトロウィルス感染、マイクロインジョクション、電気穿孔、形質導入又はDEAE−デキストランを含むがこれらに限定されない。この組み換えコンストラクトを発現する細胞は、例えば、選択的発現を作成するために使用されるレポーター遺伝子を含む第2の組み換え核酸コンストラクトを使用することにより同定されてよい。本発明の核酸配列又はその断片を発現する細胞は、レポーター遺伝子発現の検出により非直接的に同定されてよい。
【0078】
本発明による非ヒト動物、例えば齧歯類が、腫瘍プログレッション及び/又は形成における変化に関連するフェノタイプの、制御されていない細胞成長の、制御されていない細胞成長に関連する医学的状態、例えば癌、腫瘍形成及び/又はプログレッションの、転移形成の、制御されていない細胞成長及び/又は制御されていない細胞分割の関連において、様々な観点で有用であることが理解されるはずである。
【0079】
したがって、本発明の一観点は、本願で説明されるとおりの非ヒト動物、例えば齧歯類、プライマリー細胞又は細胞株の、好ましくは乳癌、肺癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、前立腺癌、メラノーマ、及び/又は膵臓癌において、制御されていない細胞成長、例えば、癌及び/又は転移形成の、分子的機構、又はこれに関連する生理学的プロセスを研究するためのモデルとしての使用である。これは、制御されていない細胞成長、例えば癌を示す組織に対して、例えば、ディフェレンシャルプロテオーム分析を、例えば、2−Dゲル電気泳動、タンパク質チップマイクロアレイ又は、質量分光光度法を含む技術を用いて実施することにより、本願に説明されるように行われてよい。これはまた、核酸レベルで、例えばディフェレンシャルディスプレイ又はcDNAマイクロアレイにより行われることもできる。
【0080】
本発明の更なる一観点は、本願で説明されるとおりの非ヒト動物、例えば齧歯類、プライマリー細胞、又は細胞株の、好ましくは乳癌、肺癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、前立腺癌、メラノーマ、及び/又は膵臓癌において、制御されていない細胞成長、例えば、癌及び/又は転移形成の予防、改善又は治療において有用な剤を同定及び/又は試験を研究するためのモデルとしての使用である。試験すべき剤は、本発明による動物、例えば齧歯類に投与されることができ、当業者により知られている任意の技術が試験すべき剤の作用をモニターするために使用されることができる。この非ヒト動物、例えば齧歯類は、制御されていない細胞成長、例えば癌の様々な段階で試験すべき剤に曝露されてよく、そして、例えば、生じる腫瘍及び/又は転移形成のこの質量、領域及びパーセンテージ;この腫瘍又は転移が生じる全組織に比較したこの腫瘍又は転移の質量及び領域のパーセンテージ;腫瘍なしの同じ組織と比較される腫瘍内のFGFR4の発現プロファイル;非腫瘍組織に比較した腫瘍組織中のFGFR4のリン酸化状態、又は焦点形成アッセイが決定されてよい(例えば、以下の実施例も参照のこと)。
【0081】
また本発明の範囲内にあるのは、本願で説明されるとおりの非ヒト動物、例えば齧歯類、プライマリー細胞、又は細胞株の、好ましくは乳癌、肺癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、前立腺癌、メラノーマ、及び/又は膵臓癌において、制御されていない細胞成長、例えば、癌及び/又は転移形成についての、タンパク質及び/又は核酸診断マーカーの同定を研究するためのモデルとしての使用であり、このマーカーは、例えば、本願で説明されるとおりの制御されていない細胞成長、例えば癌に関連した医学的状態の早期相、中間相及び/又は後期相における役割を果たす遺伝子又は遺伝子産物に関連する診断マーカー、又は本願で説明されるとおりのFGFR4改変に関連した疾病のための診断マーカーである。
【0082】
このような診断マーカーは、このFGFR4遺伝子又はそのタンパク質産物に関連してよいことが理解される。しかし、本発明による非ヒト動物、例えば齧歯類は、FGFR4遺伝子又はタンパク質発現又は機能、又は、FGFR4タンパク質により影響を及ぼされる発現又は機能に影響を及ぼす他の遺伝子又は遺伝子産物に関連するマーカーの同定のために使用されることもできることが理解されるものである。さらに、本発明による非ヒト動物、例えば齧歯類は、本願で説明されるとおりの、制御されていない細胞成長、例えば癌に関連する医学的状態の病原の研究のために高度に有用なモデルシステムであるので、これは、FGFR4遺伝子又はタンパク質発現又は活性、又は、FGFR4タンパク質により影響を及ぼされない発現又は活性に直接的に影響を及ぼす遺伝子又は遺伝子産物に関連する疾病関連マーカーを同定するために使用されてもよいことが理解されるものである。上述の使用が、本発明の更なる観点を提示することが理解されるものである。これは、例えば、制御されていない細胞成長、例えば癌を示す組織に対して、ディフェレンシャルプロテオーム分析を、例えば、2−Dゲル電気泳動、タンパク質チップマイクロアレイ、SILAC又は質量分光光度法を含む技術を用いて実施することにより、本願に説明されるように行われてよい。これはまた、核酸レベルで、例えばディフェレンシャルディスプレイ又はcDNAマイクロアレイにより行われることもできる。
【0083】
本発明の更なる観点は、本願で説明されるとおりの非ヒト動物、例えば齧歯類、プライマリー細胞又は細胞株の、前記改変したFGFR4の不所望な活性、発現、又は産生の、分子的機構、又はこれに関連する生理学的プロセス又は医学的状態を研究するためのモデルとしての使用である。これは、制御されていない細胞成長、例えば癌を示す組織に対して、例えば、ディフェレンシャルプロテオーム分析を、例えば、2−Dゲル電気泳動、タンパク質チップマイクロアレイ、SILAC又は質量分光光度法を含む技術を用いて実施することにより、本願に説明されるように行われてよい。これはまた、核酸レベルで、例えばディフェレンシャルディスプレイ又はcDNAマイクロアレイにより行われることもできる。
【0084】
本願で使用される場合に「前記改変したFGFR4の不所望な活性、発現又は産生」との用語は、前記改変したFGFR4をコードするタンパク質及び/又は遺伝子の、任意の不所望な活性、発現、又は産生を指す。この不所望な活性、発現、又は産生は、任意の異常な活性、発現又は産生に関連してよく、すなわち、FGFR4の通常の活性、発現又は産生を超えた活性、発現又は産生、また同様に、FGFR4の通常の活性、発現又は産生を下回る任意の活性、発現又は産生に関連してよい。
【0085】
本願で説明されるとおりの非ヒト動物、例えば齧歯類、また同様にプライマリー細胞、宿主細胞又は細胞株が、本願で説明されるとおり、結合パートナー、特にFGFR4タンパク質のリガンド、又は上流又は下流の遺伝子、又はFGFR4タンパク質又はその遺伝子又はタンパク質活性により制御されかつ/又は改変したFGFR4の発現により又は改変したFGFR4タンパク質に関連した疾患において脱制御される遺伝子又はタンパク質のスクリーニング及び同定のためのモデルシステムとして高度に有用であることも理解されるものである。このような剤は、例えば、小分子薬剤、ペプチド又はポリペプチド、又は核酸、特に以下の第1表又は第2表に説明されるようなポリペプチドであってよい。特に好ましいポリペプチドは、タンパク質チロシンホスファターゼレセプタータイプF(PTPRF、LAR)、神経原性座ノッチホモログ2(NOTCH2)、エフリンタイプ−Aレセプター2(EPHA2)、上皮成長因子レセプター(EGFR)(配列番号77)、β−Klotho、ヒドロキシ酸オキシダーゼ1、プロパノイル−6AC−アシルトランスフェラーゼ、ホルミミデイルトランスフェラーゼ−シクロデアミナーゼ、及びヒドロキシメチルグルタリル−6A合成酵素からなる群から選択される。最も特に好ましいポリペプチドは、EGFR(配列番号77)である。
【0086】
本願で説明されるとおりの非ヒト動物、例えば齧歯類また同様にプライマリー細胞又は細胞株は、本願で説明されるとおり、本願で説明されるとおりの乳癌腫瘍においてFGFR4のアミノ酸改変が、他の癌の種類において、例えば肝細胞癌、肺癌、前立腺癌、結腸直腸癌、メラノーマにおいて、又は膵臓癌において、同じの又は類似の役割を果たすかどうかを研究するために高度に有用であるものであることも理解されるものである。
【0087】
本発明は、さらに、特に前記動物に関連して、本願で説明されるとおりの、この改変したFGFR4ポリペプチド及び核酸分子、例えば、このような改変したFGFR4タンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子に関する。
【0088】
したがって、本発明は、改変したFGFR4のアミノ酸配列、例えば、マウス及びラットの改変したFGFR4アミノ酸配列も提供する。この野生型マウス及び/又はラットFGFR4アミノ酸配列は、それぞれ配列番号1及び配列番号4に示されている。FGFR4、例えばマウス及び/又はラットFGFR4の好ましい改変された一態様は、位置385又は386のグリシンが非グリシンアミノ酸に突然変異されているアミノ酸配列である。マウス及び/又はラットFGFR4アミノ酸配列のより好ましい一態様は、位置385又は386のグリシンが、荷電したアミノ酸、例えば正に荷電したアミノ酸、すなわち、リシン、アルギニン又はヒスチジンに突然変異されているものである。マウス及び/又はラットFGRR4アミノ酸配列の最も好ましい一態様は、位置385又は386のグリシンがアルギニンに突然変異されているものである(配列番号5又は配列番号6)。
【0089】
FGFR4の別の好ましい一態様は、改変、例えばアミノ酸置換を、野生型FGFR4タンパク質、好ましくは配列番号1に応じたFGFR4タンパク質に比較して少なくとも1のアミノ酸位置に伴うものであり、この改変は、本発明による非ヒト動物、例えば齧歯類の細胞の少なくともいくつか又は全て又は実質的に全てにヘテロ接合又はホモ接合の方式で存在する場合には、本願で説明されるとおりの腫瘍プログレッション及び/又は形成における変化、例えば、野生型動物に比較して増加した速度の腫瘍成長及び/又は転移形成と関連するフェノタイプを生じる。好ましい一実施態様において、前記動物は、付加的に、少なくともいくつかのその細胞のゲノム中で、TGF−αタンパク質をコードする導入遺伝子を発現する。
【0090】
一実施態様において、この改変したFGFR4タンパク質及び核酸配列は、本願で説明されるとおり、単離されたタンパク質又は核酸配列である。本願で説明されるとおり、「単離された」又は「精製された」ポリペプチド又はタンパク質、又は生物学的に活性のあるその断片は、このポリペプチド又はタンパク質が由来する細胞又は組織の供給源からの細胞材料又は他の汚染するタンパク質を実質的に含まず、又は、化学合成された場合には化学的前駆体又は他の化学薬品を実質的に含まない。「細胞材料を実質的に含まない」との用語は、タンパク質が、このタンパク質が単離されたか又はこのタンパク質が組み換えにより産生された細胞の細胞性成分から分離された細胞FGFR4タンパク質の調製を含む。
【0091】
また本発明により包含されるのは、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも460、少なくとも470、少なくとも480、少なくとも490、少なくとも500、少なくとも550、少なくとも600、少なくとも650、少なくとも700、少なくとも750、少なくとも790、少なくとも791、少なくとも792、少なくとも793、少なくとも794、少なくとも795、少なくとも796、少なくとも797、少なくとも798、少なくとも799又は少なくとも800の連続アミノ酸を含むこのようなタンパク質の断片であり、これは、本願で説明されるとおりのアミノ酸改変、例えば、野生型FGFR4タンパク質、例えばマウスの又はラットのFGFR4において、配列番号1のアミノ酸位置385に相応するアミノ酸位置でのアミノ酸置換又は野生型FGFR4タンパク質に比較した少なくとも1のアミノ酸位置でのアミノ酸置換、好ましくは配列番号1又は配列番号4の386によるFGFR4タンパク質であって、この改変は、本願で説明されるとおりの本発明の非ヒト動物、例えば齧歯類の細胞の少なくともいくつか又は全て又は実質的に全てにおいてヘテロ接合又はホモ接合の方式で存在する場合には、本願で説明されるとおりの腫瘍プログレッション及び/又は形成における変化、例えば、野生型動物に比較して増加した速度の腫瘍成長及び/又は転移形成、に関連したフェノタイプを生じるアミノ酸置換を有する。好ましい一実施態様において、前記動物は、付加的に、少なくともいくつかのその細胞のゲノム中で、TGF−αタンパク質をコードする導入遺伝子を発現する。
【0092】
好ましい実施態様において、本発明のタンパク質は、配列番号5によるマウスFGFR4タンパク質のオルソログ、好ましくは脊椎動物オルソログを示す。代替的に、これは、哺乳類オルソログ、特にハツカネズミ属(Mus)(例えば、マウス)、クマネズミ属(Rattus)(例えば、ラット)、アナウサギ属(Oryctologus)(例えば、ウサギ)又はゴールデンハムスター属(Mesocricetus)(例えば、ハムスター)から選択された齧歯類、好ましくは配列番号6によるラットオルソログを示してよい。これは、配列番号5によるマウスFGFR4タンパク質それぞれの、又は前記オルソログの変形であってもよく、好ましくは、配列番号6による前記ラットオルソログ、アレル変形又はその他のものであり、その際、特定のアミノ酸又は部分アミノ酸配列は、置換、付加又は欠失されている。
【0093】
再度、好ましい一実施態様において、上述の改変は、配列番号1による前記マウスFGFR4タンパク質又は相応するFGFR4の、欠失又は少なくとも1のアミノ酸の別のアミノ酸による置換を生じる。代替的に、この改変は、マウスFGFR4タンパク質又は上述の相応するFGFR4のアミノ酸配列中に通常存在しない付加的なアミノ酸の挿入を生じてよい。
【0094】
この置換はさらに、1のアミノ酸の別のアミノ酸の置換であってもよく、これは、上述のとおり、マウス及びラットのFGFR4間の保存的アミノ酸置換である。このようなアミノ酸は、天然に生じないか又は天然に生じるアミノ酸であってよい。
【0095】
好ましくは、この改変されたFGFR4タンパク質の野生型残基は、上述のとおり異なるサイズ及び/又は極性を有するアミノ酸により置換されている。
【0096】
本発明はさらに、成熟した改変したマウスFGFR4又はラットFGFR4タンパク質、又はその脊椎動物オルソログ、例えば、上で言及した特定のオルソログであって、本願で説明されるとおりの改変に相応するアミノ酸又はアミノ酸配列を含むものを包含する。
【0097】
本発明はまた、改変したFGFR4を基礎とするキメラ又は融合タンパク質をも提供する。本願で説明される場合に、「キメラタンパク質」又は「融合タンパク質」は、FGFR4タンパク質であって、野生型又は本発明と一致して改変されたタンパク質、又は上述のとおりのこのようなタンパク質の断片であって、非FGFR4ポリペプチド(すなわち、FGFR4タンパク質又はその断片を含まないポリペプチド)、例えば、精製又はラベリングを容易にするために慣用されるアミノ酸配列、例えば、ポリヒスチジン尾部(tail)(例えばヘキサヒスチジンセグメント)、FLAGタグ、HSVタグ、β−ガラクトシダーゼタグ及びストレプトアビジンに連結されているものを包含する。
【0098】
本発明のアミノ酸配列は、この分野でよく知られているペプチド合成技術、例えば固相ペプチド合成(例えば、Fields et al. ."Principles and Practice of Solid Phase Synthesis" 、SYNTHETIC PEPTIDES, A USERS GUIDE, Grant, G. A. , Ed. , W. H. Freeman Co. NY. 1992, Chap. 3 pp. 77-183; Barlos, K. and Gatos, D. "Convergent Peptide Synthesis"、FMOC SOLID PHASE PEPTIDE SYNTHESIS, Chan, W. C. and White, P. D. Eds. , Oxford University Press, New York, 2000, Chap. 9: pp. 215-228を参照のこと)を使用して、又は、組み換えDNA操作及び組み換え発現(例えば宿主細胞中へ)により、なされてよい。既知配列を有するDNAにおける予め定められた部位での置換突然変異を作成するための技術は良く知られており、かつ、例えば、M13突然変異を含む。
【0099】
置換型、挿入型又は欠失型変形として表現される変形タンパク質を作成するためのDNA配列の操作は、例えば、Sambrook et al.中に適切に説明されている(以下参照)。
【0100】
本発明は、以上及び以下により詳細に説明されるFGFR4タンパク質をコードする核酸又は遺伝子配列を提供し、例えば、本発明(の動物、例えば齧歯類)に一致して改変されたFGFR4である。好ましい一実施態様において、本発明は、本願で説明されるとおり改変されたマウス及び/又はラットFGFR4タンパク質をコードする核酸配列を提供する。改変されたマウス及び/又はラットFGFR4をコードする核酸又は遺伝子は、例えば、コドン385又は385それぞれがもはやグリシンをコードしないように、この野生型のマウスFGFR4遺伝子のコドン385又はこの野生型のラットFGFR4のコドン386を変更することにより為されることができる。グリシンをコードしない、385番目又は386番目のコドンそれぞれの構築は、この分野において良く知られている方法により達成されることができる。
【0101】
グリシンは、GGA、GGC、GGG又はGGTによりコードされる。グリシンをコードしないコドンは、例えば、Phe(TTT,TTC);Leu(TTA,TTG,CTT,CTC,CTA,CTG);Ile(ATT,ATC,ATA);Met(ATG);Asp(GAC,GAT);Ser(TCT,TCC,TCA,TCG),VaI(GTT,GTC,GTA及びGTG);Pro(CCT,CCC,CCA,CCG);Thr(ACT,ACC,ACA,ACG),Ala(GCT,GCC,GCA,GCG);His(CAT,CAC),GIn(CAA,CAG);Asn(AAT,AAC);Lys(AAA,AAG);GIu(GAA,GAG);Cys(TGT,TGC);Trp(TGG);Arg(CGT,CGC,CGA,CGG,AGA,AGG);Ser(AGT,AGC);Tyr(TAC,TAT)、又はストップコドン(TAA,TAG,TGA)の1つをコードするコドンであってよい。やはり、部位特異的核酸突然変異の導入方法は良く知られている。
【0102】
代替的に、この野生型FGFR4の少なくとも1のコドンは、この改変が、本発明の動物、例えば齧歯類の細胞の少なくともいくつか又は全て又は実質的に全てにおいてヘテロ接合又はホモ接合の方式で存在する場合に、本願で説明されるとおりの腫瘍プログレッション及び/又は形成における変化、例えば、野生型動物に比較して増加した速度腫瘍成長及び/又は転移形成、に関連したフェノタイプを生じる限りは、野生型アミノ酸とは異なる別のアミノ酸をコードするように変更されていてよい。好ましい一実施態様において、前記動物は、付加的に、少なくともいくつかのその細胞のゲノム中で、TGF−αタンパク質をコードする導入遺伝子を発現する。
【0103】
本発明の、この改変したFGFR4タンパク質及びその断片をコードする核酸配列又は遺伝子は、単独で又は他の核酸配列、例えば、エピソーム要素、ゲノム、又はベクター分子、例えばプラスミド、例えば発現又はクローニングベクターと組み合わせて存在してよい。
【0104】
本願で使用される場合に「核酸配列」との用語は、ヌクレオチド塩基の任意の連続配列系列、すなわち、ポリヌクレオチドを指し、かつ、好ましくはリボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)である。好ましくはこの核酸配列はcDNAである。しかし、これは、例えばペプチド核酸(PNA)であってもよい。
【0105】
「単離された」核酸分子又は遺伝子は、本願で言及される場合に、核酸の天然の供給源において普通に存在する他の核酸分子から分離されているものを指す。好ましくは、「単離」された核酸又は遺伝子は、このDNAの天然(野生型)の供給源である生物のゲノムDNA中の核酸に天然に隣接する配列(すなわち、核酸の5′−及び3′−末端に位置する配列)不含である。
【0106】
FGFR4遺伝子分子は、標準のハイブリダイゼーション及びクローニング技術を使用して単離されることができ、これは、例えば、 Sambrook et al. (eds. ), MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL (2nd Ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989 ; 及びAusubel et al. (eds.), CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York, NY, 1993中に説明されているとおりである。
【0107】
本発明の核酸又は遺伝子は、標準的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅技術に応じてテンプレート及び適したオリゴヌクレオチドプライマーとして、cDNA、mRNA又は代替的にゲノムDNAを使用して増幅されることができる。このように増幅すべき核酸又は遺伝子は、適したベクター中にクローニング挿入され、かつ、DNA配列分析により特性決定されることができる。さらに、本発明によるFGFR4ヌクレオチド配列に相応するオリゴヌクレオチドは、標準的な合成技術により、例えば自動化DNA合成装置を用いて調製されることができる。
【0108】
本発明の別の観点は、ベクター、好ましくは発現ベクターであって、改変したFGFR4タンパク質、又はその誘導体、断片、アナログ、ホモログ又は融合タンパク質をコードする核酸又は遺伝子を含有するものに関する。本願で使用される場合に、「ベクター」との用語は、連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。
【0109】
適したベクターの1つのタイプは、「プラスミド」であり、これは、付加的なDNAセグメントがライゲーション導入される環式二重鎖環式DNA分子を指す。ベクターの別の適した種類は、ウィルスベクターであり、その際、付加的なDNAセグメントがウィルスゲノム又はこの部分にライゲーション導入されることができる。特定のベクターは、宿主細胞中で自律複製することができ、この中にこのベクターは導入される(例えば、複製の細菌性起点を有する細菌性ベクター及びエピソームの哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞中へ導入すると宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、これにより宿主ゲノムと一緒になって複製される。さらに、特定のベクターは、これらが操作可能に連結されている遺伝子の発現を指向させることができる。このようなベクターは、本願では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0110】
本発明の宿主細胞、例えば、培地中の原核性又は真核性の宿主細胞は、本願で説明されるとおり、改変したFGFR4を産生(すなわち発現)するために使用されることができる。
【0111】
したがって、本発明はさらに、本発明の宿主細胞を使用して改変したFGFR4タンパク質を産生するための方法を提供する。一実施態様において、この方法は、本発明の宿主細胞(この中に、改変したFGFR4タンパク質をコードする組み換え発現ベクターが導入されている)を、改変したFGFR4タンパク質が産生されるのに適した培地中で培養することを含む。別の実施態様において、この方法はさらに、改変されたFGFR4タンパク質、すなわち、組み換えにより産生されたタンパク質を、この培地又は宿主細胞から単離することを含む。
【0112】
本発明の宿主細胞は、非ヒトトランスジェニック動物を産生するために使用されることもできる。例えば、一実施態様において、本発明の宿主細胞は、受精した卵母細胞又は胚性幹細胞であり、この中に改変したFGFR4タンパク質をコードする配列が導入されている。このような宿主細胞は次いで、外因性FGFR4配列がそのゲノム中に導入されている非ヒトトランスジェニック動物、又は相同性組み換えにより作成された動物を作成するのに使用されることができ、この中で内因性FGFR4配列は変更されている(実施例、材料及び方法、以下を参照のこと)。
【0113】
この(宿主)細胞は、本願で説明されるとおりの改変したFGFR4タンパク質と、改変したFGFR4の結合パートナーとして作用する任意のタンパク質との間の相互作用を阻害する剤を同定するためにも使用されることができる。
【0114】
一実施態様において、この改変したFGFR4タンパク質は、配列番号1の位置385にあるグリシンが、グリシンとは異なるアミノ酸、特にアルギニンにより置換されているマウスFGFR4タンパク質、例えば、配列番号5である。
【0115】
一実施態様において、この改変したFGFR4タンパク質は、配列番号4の位置386にあるグリシンが、グリシンとは異なるアミノ酸、特にアルギニンにより置換されているラットFGFR4タンパク質、例えば、配列番号6である。
【0116】
一実施態様において、この改変したFGFR4タンパク質は、配列番号2又は配列番号8の位置388にあるグリシンが、グリシンとは異なるアミノ酸、特にアルギニンにより置換されているヒトFGFR4タンパク質である。
【0117】
本発明の別の観点において、本願で説明されるとおりの改変したFGFR4タンパク質の結合パートナーとして作用するタンパク質は、タンパク質チロシンホスファターゼレセプタータイプF(PTPRF、LAR)、神経原性座ノッチホモログ2(NOTCH2)、エフリンタイプ−Aレセプター2(EPHA2)、上皮成長因子レセプター(EGFR)(配列番号77)、β−Klotho、ヒドロキシ酸オキシダーゼ1、プロパノイル−6AC−アシルトランスフェラーゼ、ホルミミデイルトランスフェラーゼ−シクロデアミナーゼ、及びヒドロキシメチルグルタリル−6A合成酵素である。これに関して特に好ましいタンパク質はEGFR、例えば配列番号77のものである。
【0118】
例えば、このような(宿主)細胞は、本発明の方法において使用されることができ、この方法は上述したとおりの改変したFGFR4タンパク質と、上述したとおりの改変したFGFR4タンパク質の結合パートナーとして作用する任意のタンパク質、特にEGFRタンパク質、例えば配列番号77のもの、との間の相互作用を阻害する剤の同定方法であり、次の工程を含む;
(a)改変したFGFR4タンパク質を過剰発現する細胞の培養;
(b)試験すべき剤の培地への添加;及び
(c)同じ剤の存在下で培養された野生型FGFR4タンパク質を過剰発現する細胞の、増殖速度の減少、アポトーシスの増加及び/又は細胞移動の減少の決定。
【0119】
好ましい一実施態様において、この増殖速度は、MTT増殖アッセイを介して決定され、このアポトーシスはFACS分析を介して決定され(Nicoletti et al., 1991, J. Immunol. Methods, 139: 271-279)、かつ/又はこの移動は、ボイデンチャンバーアッセイを用いて決定され、例えばこれは以下実施例において説明されるとおりである。
【0120】
本発明の文脈において(宿主)細胞は、例えば、上述の方法において、MDA−MB−231細胞であってよい。
【0121】
本発明の更なる観点は、EGFR関連疾患、特にEGF及び/又はTGF−α媒介疾患、最も好ましくは乳癌又は肝細胞癌の治療のためのFGFR4の阻害剤に関する。
【0122】
FGFR4の阻害剤は、FGFR4に対して指向された抗体、例えば、以下に示される実施例において使用される抗体であってよい。一実施態様において、この阻害剤は、FGFR4に対して指向されたアプタマーである。好ましくはこのアプタマーは、25〜70、35〜60又は40〜50の長さの単鎖DNA−又はRNAオリゴヌクレオチドである。アプタマーの製造は、当業者に知られており、例えば、Tuerk et al.,1990, Sience 249: 505-510; Ellington et al., 1990, Nature 346: 818-822から知られている。代替的に、アプタマーはペプチドアプタマーである。このようなアプタマーは、例えば、10〜20のアミノ酸の可変ループからなってよく、これは、良好な溶解特性を有する足場タンパク質に対して両端で取り付けられており、例えばチオレドキシンAである。代替的に、この阻害剤は、FGFR4に対して指向されたアンチセンスオリゴヌクレオチドである。例えば、FGFR4タンパク質をコードするmRNAのコード鎖に対して相補的である単鎖DNA分子である。代替的に、この阻害剤は、FGFR4に対して指向されたRNAi分子であってよい。代替的に、この阻害剤は、FGFR4タンパク質のドミナントネガティブな突然変異体、例えば、FGFR4タンパク質の細胞外ドメインであってよい。FGFR4は、FGFR4タンパク質又はFGFF4核酸であってよい。これは、本願で説明されるとおりの、マウス、ラット又はヒトのFGFR4タンパク質、特に、配列番号2又は配列番号3のヒトのタンパク質又は前記タンパク質をコードする核酸配列であってよい。このFGFR4タンパク質は、本願で説明されるとおりの、改変されたヒトのFGFR4タンパク質又は核酸であってもよく、例えば、配列番号5のマウスタンパク質、配列番号6のラットタンパク質、又は、ヒトのFGFR4タンパク質であり、その際、この改変は、配列番号2又は配列番号3のアミノ酸位置388でのアミノ酸グリシンのアミノ酸置換又は前記タンパク質をコードする核酸配列である。好ましくは、このアミノ酸の置換は前記タンパク質においてアルギニンを伴うか、又は、このタンパク質をコードするそれぞれの核酸におけるコドンによる。
【0123】
本発明はさらに、
(a)EGFR遺伝子又はタンパク質の発現の決定;及び/又は
(b)FGFR4タンパク質及びEGFRタンパク質の間での相互作用の決定;及び/又は
(c)TGF−アルファ及び/又はEGFによるEGFRタンパク質の刺激の決定;及び/又は
(d)FGFR4が、野生型タンパク質又は遺伝子、特に配列番号2又は配列番号3の野生型タンパク質又は遺伝子又は改変したヒトFGFR4タンパク質であるかの決定、その際、前記改変が、配列番号2又は配列番号3のアミノ酸位置388でのアミノ酸グリシンのアミノ酸置換であり、好ましくはアルギニンでの置換である
による深刻な癌プログレッションの診断方法であって、
その際、EGFR遺伝子又はタンパク質の発現の上方調節;TGF−アルファ及び/又はEGFによるEGFRタンパク質の刺激の上方調節;及び/又は前記の改変したヒトFGFR4タンパク質の存在が、深刻な癌プログレッションの指標である
深刻な癌プログレッションの診断方法に関する。EGFR遺伝子又はタンパク質の発現;TGF−アルファ及び/又はEGFによるEGFRタンパク質の刺激;及び/又は前記の改変したヒトFGFR4タンパク質の存在は、この分野において知られている方法により決定され、これは例えば実施例において使用される方法である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、FGFR4 Arg385KIマウスの作成を示す図である。
【図2】図2は、FGFR4 Arg385KIマウスの特性決定を示す図である。
【図3】図3は、FGFR4 Arg385は、WAP−TGFα/EGFRマウス乳癌腫瘍モデルにおいて生じる腫瘍の質量及びサイズ促進することを示す図である。
【図4】図4は、FGFR4 Arg385は、時間にわたりWAP−TGFα/EGFRマウス乳房腫瘍モデルにおいて腫瘍プログレッションを促進することを示す図である。
【図5】図5は、FGFR4 Arg385は、WAP TGFα/EGFRマウス乳腺腫瘍モデルにおいて癌細胞転移を促進することを示す図である。
【図6】図6は、FGFR4 Arg385は、マウス胚性繊維芽細胞(MEFs)において細胞形質転換を促進し、細胞生存を容易にすることを示す図である。
【図7】図7は、FGFR4 Arg385及びGly385マウスは、同一の乳腺計量を示すことを示す図である。
【図8】図8は、FGFR4 Arg385は、FVBバックグラウンドにおいて、WAP−TGFα/EGFRモデルにおいて腫瘍発症の時間点を減少させることを示す図である。
【図9】図9は、FGFR4 Arg385 MEFsにおける通常の増殖、寿命及び移動を示す図である。
【図10】図10は、発癌性バックグラウンドなしの乳腺計量に対するFGFR4 Arg385の影響を示す図である。
【図11】図11は、FGFR4 Arg385は、MMTV PymTマウス乳癌腫瘍モデルにおける腫瘍プログレッションを促進しないが、WAP−TGFαについてトランスジェニックなマウスにおいてFVBバックグラウンドにおける腫瘍発症の時間点を減少させることを示す図である。
【図12】図12は、FGFR4 Arg385は過剰活性化され、WAP−TGRα由来腫瘍の発現パターンにおいてより攻撃的なフェノタイプを促進することを示す図である。
【図13】図13は、EGFR又はv−srcで形質転換したMEFsにおける発現分析及び細胞増殖を示す図である。
【図14】図14は、FGFR4 Arg385は、細胞の形質転換、移動、足場非依存性成長及び分岐をEGFRで形質転換したMEFsにおいて容易にすることを示す図である。
【図15】図15は、FGFR4 Arg385は移動、足場非依存性成長及び分岐を、v−srcで形質転換したか又は空のpLXSNベクターを安定に発現するMEFs中では促進しないことを示す図である。
【図16】図16は、空のpLXSNベクター、pLXSN−FGFR4 Gly388又はpLXSN−FGFR4 Arg388のいずれかを発現するMDA−MB−231細胞におけるFGFR4相互作用パートナーを分析するための実験的構成の簡略化したスキームを示す図である。
【図17】図17は、EGFR/FGFR4相互作用の評価を示す図である。
【図18】図18は、EGF及びTGFα刺激後のEGFRで形質転換したFGFR4 Gly385又はArg385 ホモ接合マウス由来のMEFsのウェスタンブロット分析を示す図である。
【図19】図19は、空のpLXSN、pLXSN−Gly388又はpLXSN−Arg388を発現するMDA−MB−231の生物学的特性を示す図である。
【図20】図20は、空のpLXSN、pLXSN−Gly388又はpLXSN−Arg388を発現するMDA−MB−231細胞における、増殖、アポトーシス及び移動に対するゲフィニチブの影響を示す図である。
【図21】図21は、C57BL/6マウスのin vivoラベリングを示す図である。
【図22】図22は、in vivoSILACを介したFGFR4の肝性相互作用パートナーの調査を示す図である。
【0125】
実施例
ここで我々は、遺伝的に「クリーン」なシステムにおいて、レセプターの膜貫通ドメインにおけるグリシンをアルギニンへ変換する、マウスFGFR4遺伝子のコドン385における単一ヌクレオチド差異の、in vivoにおける乳癌プログレッションに対する影響を示す。我々は、乳癌プログレッションに対する2つの異なるFGFR4アレルの作用を調査するために、FGFR4 Arg385ノックイン(KI)マウスモデルを作成した。この目的のために、我々はFGFR4 Arg385KIマウスを、WAP TGFα/EGFRトランスジェニックマウスに交雑した(19、20)。このモデルにおいて、TGFα過剰発現を、妊娠中期にある乳房上皮細胞中の導入遺伝子を特異的に活性化する乳清酸性タンパク質(WAP)プロモーターにより制御した(19)。このようにして、乳房発癌を、TGFα、上皮成長因子レセプター(EGFR)のリガンド、の構成的に高い過剰発現により促進した。乳房上皮細胞中のTGFαの過剰発現は、増進した胞発達(alveolar development)及び損なわれた細胞分化を生じ、これは、雌の泌乳の失敗を導く。さらに、乳腺退縮(mammary involution)が遅れ、いくつかの胞状構造は完全に退行しそこねる。結果として、これらの過形成胞状結節(hyperplasic alveolar nodule)は、続く妊娠とともに数が増加し、いくつかの場合には可視可能な組織の腫瘍へと進行する(20)。
【0126】
ここで、我々は、コドン385でのグリシンからアルギニンへの置換が、WAP−TGFαマウスの乳房癌腫モードにおいてこの生じる腫瘍の質量及びサイズにおいて乳癌のプログレッションを促進し、このプログレッションがin vivoで、マウス胚性繊維芽細胞において作成されるin vitroデータにより確認されることができたことを報告する。さらに、このFGFR4 Arg385アレルは、この生じる転移のサイズ及び数において肺転移を促進する。
【0127】
これら結果は、ヒトの乳癌プログレッションにおけるFGFR4 Arg385アレルの重要性にスポットライトをあて、したがって、この疾病を患う患者のための臨床的結果のための前診断的マーカーとして機能してよい。
【0128】
材料及び方法
マウスターゲッティングコンストラクト
マウスFGFR4のゲノム配列を、エキソン8〜10を検出する特異的cDNAプローブにより、SV/129遺伝的バックグラウンドのRPCIマウスPACライブラリー21において検出した(Celera,USA)。マウスFGFR4のエキソン2〜12(12.5kb)を次いで、SpeI/SacII制限(Biolabs, New England)を介してpBS−ベクター(Stratagene, California)中にクローニングした。GからAへの単一ヌクレオチド多形(SNP)が特異的突然変異を介して320bpのサブフラグメント中に導入された後に、これはpcDNA.3ベクター中にクローニングされた(Invitrogen, USA)(21、22)。このSNPを含有する断片を次いで、pBS−ベクター中に再クローニングした。この選択−カセットを最終的に、SeaI(Biolabs, New England)制限により統合した。胚性幹細胞の電気穿孔前に、このターゲッティングコンストラクトを、SalI(Biolabs, New England)制限により線状化した。
【0129】
胚性幹細胞(ES細胞)のターゲッティング及びポジティブなクローンの選択
ES細胞系列E14(23)をフィーダー細胞(すなわち、照射されたマウス胚性繊維芽細胞)上に、2mMグルタミン、1000U/ml LIF、0.1mM β−メルカプトエタノール及び20%の熱不活性化したウシ胎児血清を含有するダルベッコ変性イーグル培地(DMEM、高グルコース)中に維持した。
【0130】
トランスフェクションのために、4×107細胞を、PBS中で100μgの線状化したターゲッティングコンストラクトと混合し、800μlの最終容積にした。電気穿孔(240V、500μF、6msec)をGenePulser(BioRad, Germany)を用いて実施し、この細胞を、20%FCS、2mM グルタミン、1000U/ml Lif及び0.1mM β−メルカプトエタノールを含有するDMEM中で10cmの組織培養皿中に播種した。
【0131】
翌日、この細胞を、200μg/mlのG418で、このコンストラクトの統合について選択した。ネガティブ選択を2μMのガンシクロビルで実施した。
【0132】
耐性クローンを、サザンブロット(24)により、相同性及び非正統的組み換えについて、5′−外側プローブ及びネオマイシン特異的プローブそれぞれを介して分析した。キメラマウスを作成するために、ポジティブなES細胞クローンをC57BL/6芽細胞中にマイクロインジョクションし、偽妊娠レシピエント母の子宮に着床させた。
【0133】
マウス及びゲノタイピング
キメラマウスをC57BL/6マウスに戻し交雑し、生殖細胞系移行を有する創始者世代(founder generation)を育てた。neoR−選択カセットの除去のために、マウスをDeleter−Creトランスジェニックマウスで交雑した。Cre−delterマウスを再度C57BL/6マウスへ戻し交雑し、FGFR4 Arg385 ノックイン(KI)マウスの第1世代を作成した。FGFR4 Arg385KIマウスを、少なくとも10回C57/BL6マウスへと又は5回FVBマウスへ戻し交雑する。WAP−TGFα/EGFRトランスジェニックマウス(20)は、L. Henninghausen, NIH, Bethesda, USAから、混合したC57Bl/6及びFVB遺伝的バックグラウンドにおいて得られ、C57BL/6マウスに10回戻し交雑した。マウスを、通常状態下でMax-Planck-lnstitute of Biochemistryの動物施設において飼育した。
【0134】
MMTV−PymTトランスジェニックマウスを、ミュンヘンにあるMaxPlanck-lnstitute of BiochemistryのChristian Baderから、SV/129バックグラウンドにおいて獲得した(Guy et al., 1992)。
【0135】
ゲノタイプを、Qiagen Blood & Tissue DNeasy Kitを使用して製造者の推奨に応じて単離されたゲノム性末端DNA(tail-DNA)のPCRにより決定した。この選択カセットの除去を、neoR特異的プライマー(5'-AGGATCTCCTGTCATCTCACCTTCCTCCTG-3'及び5'-AAGAACTCGTCAAGAAGGCGATAGAAGGCG-3')を使用して検出した。Cre導入遺伝子の除去をCre特異的プライマー(5'-AACATGCTTCATCGTCGG-3'及び5'-TTAGGATCATCAGCTACACC-3')により決定した。FGFR4アレルのゲノタイプの検出のためのプライマーは、FGFR4−SNPに及び様々なFGFRアレルを区別するためのMvaI制限酵素を介したこの増幅産物の引き続く制限を有する168bpバンドの増幅に特異的であった(forward: 5'-CGTGGACAACAGCAACCCCTG-3'; reverse: 5'-GCTGGCGAGAGTAGTGGCCACG-3')。TGFα−導入遺伝子の存在を、TGF−αforward 5'-TGTCAGGCTCTGGAGAACAGC-3'及びreverse 5'-CACAGCGAACACCCACGTACC-3'プライマー(L. Henninghausen, NIH, Berthesda, USAにより提供されたプライマー配列)を用いたPCR分析の実施により確認した。
【0136】
PymT−導入遺伝子の存在を、PymT−forward 5'-TCG CCG CCT AAG ACT GC -3'及びreverse 5'-CCG CCC TGG GAA TGA TAG -3'を用いるPCR分析の実施により確認した。
【0137】
腫瘍分析
発生する腫瘍の分析のために、マウスを頸椎脱臼により屠殺し、腹部から切開した。全ての乳腺を、腫瘍測定のために除去した。腫瘍サイズ及び質量を腫瘍組織及び乳腺組織の計量的測定及び秤量により独立して分析した。生データを体重に対して標準化した。全てのデータは平均値±SDMとして示される。全てのp値を、ペアードスチューデントのT検定を使用して計算し、値<0.05は統計学的有意であると考慮した。
【0138】
マウス胚性繊維芽細胞(MEFs)
MEFsを13.5dpcの胚から単離し、10%のFCSを含有するDMEM中に維持し、3T3プロトコルに従って維持した(25)。
【0139】
EGFR、v−src及び空のpLXSNを安定に過剰発現するために、MEFsを感染24hrs後にG418を用いたゲノム統合について選択した。MEFsのトランス移動をボイデンチャンバー(Schubert & Weiss, Germany)中で分析した。1.5×104細胞を、0%FCSを含有する飢餓培地中に播種した。移動を4%FCSを含有するDMEMに対して16時間実施した。その後で細胞をクリスタルバイオレットで染色し、移動した細胞を巨視的に分析した。定量化のために、ボイデンチャンバー膜を5%酸性の酸において脱染し、ELISAリーダー中で染色強度について分析した。軟寒天アッセイのために、細胞(1×105)を10%FBS及び0.3%寒天を補給したDMEM3mlに添加し、60mm皿中の0.5%寒天床6mlの上に積層させた。24〜96時間後に細胞の足場非依存性成長を計算し、顕微鏡により定量化した。マトリゲルアッセイを実施するために、5×103細胞をマトリゲル(BD bioscience)−コーティングした96ウェル上に播種した。24〜96時間後に細胞の分岐を計算し、顕微鏡により定量化した。
【0140】
増殖アッセイの実施のために1×105MEFsを6cmの皿中に播種し、80%のコンフルエンスに維持し、カウントし、老化まで再播種した。集団二倍化速度を、log(N/N0)×3.33(N=成長期間の終了時の細胞;N0=蒔いた細胞数)により決定した。
【0141】
老化アッセイ(Cell Signalling, USA)を、6cmの皿中に播種した1×105細胞に対して実施した。24時間後に細胞を、製造者の推奨に応じてβ−ガラクトシダーゼ発現について染色し、光学顕微鏡下で分析した(Visitron Systems, Zeiss)。
【0142】
焦点形成アッセイを、オンコジーンv−src(ポジティブコントロール)、HER2、EGFR又はc−Kitを含むレトロウィルスを基礎としてpLXSN(Clontech, Palo Alto.USA)でのMEFsの感染(26)により実施した。感染24時間後に細胞を、4%FCS含有培地中で飢餓させ、21日間維持した。その後で細胞をクリスタルバイオレットで染色し、焦点を巨視的にカウントした。
【0143】
MEFsの寿命及び集団二倍速度を計算するために、1×105個のMEFsを6cmの皿中に播種し、80%のコンフルエントに維持し、カウントし、老化まで再播種した。集団二倍化速度を、log(N/N0)×3.33(N=成長期間の終了時の細胞;N0=蒔いた細胞数)により決定した。
【0144】
MEFsのトランス移動をボイデンチャンバー(Schubert & Weiss, Germany)中で分析した。1.5×104細胞を、0%FCSを含有する飢餓培地中に播種した。移動を4%FCSを含有するDMEMに対して16時間実施した。その後で細胞をクリスタルバイオレットで染色し、移動した細胞を巨視的に分析した。アポトーシスアッセイを実施するために、10%FCSを含有するDMEM中の1.5×104細胞を12ウェルプレート中に播種した。24時間後に細胞を0.5μMのドキソルビシンで48時間処理した。その後で細胞をヨウ化プロピジウムで染色し、アポトーシス細胞をFACS(FACScalibus, BD)分析において決定し、これは以前に説明されているとおりである(27)。
【0145】
RNA及びLight Cycler(R)分析
成体マウスのミンチにしたマウス組織の全RNAをthe RNeasy Kit(Qiagen, Germany)を用いて製造者の推奨に応じて単離した。この単離されたRNAの品質を、16S及び18S RNAを可視化するアガロース−ゲル電気泳動により確認した。RNAを、cDNAへと、Boehringer Mannheimの the first strand cDNA kitを介して製造者のプロトコルに応じて逆転写した。この得られたcDNAをLight Cycler(R) Technology (Roche Diagnostics, Mannheim)を介してFGFR4発現レベルについて分析した。生データを、ハスキーピング遺伝子HRPTの発現レベルについて標準化し、絶対値としてプロットした。データは平均値±SDMとして示される。
【0146】
生データを、ハスキーピング遺伝子HRPTの発現レベルについて標準化し、1又は100%に設定したコントロールに対して相対的にプロットした。RT−PCRを介した生データ分析を、ImageJ Softwareを介して定量化し、ハスキーピング遺伝子GAPDHの発現レベルについて標準化し、1又は100%に設定したコントロールに対して相対的にプロットした。
【0147】
免疫沈降及びウェスタンブロット
タンパク質ライセートの調製のために、腫瘍試料を液体窒素中で急凍結させ(snap freeze)、Ultratorax(Janke & Kunkel, IKA Labortechnik)によりミンチにし、ホスファターゼ及びプロテイナーゼ−阻害剤を含有するRIPA溶解緩衝液中で30分間溶解させ、遠心分離により事前保証(preclear)した。培養した細胞をホスファターゼ及びプロテイナーゼ−阻害剤を含有するRIPA緩衝液中で溶解させた。免疫沈降のために、ライセート(1000mgタンパク質)をタンパク質Aセファロースビーズ(GE Healthcare, San Francisco)及びこの一致した一次抗体(the according primary antibody)(α-FGFR4 H121 , Santa Cruz)で4℃で一晩インキュベーションした。その後で試料をウェスタンブロットにかけ、これは以前説明されたとおりである(28)。
【0148】
生データ分析を、ImageJ Softwareを介して定量化し、アクチン/チューブリンの発現レベルについて標準化し、このコントロールに対して相対的にプロットした。
【0149】
以下の一次抗体を使用した:FGFR4 sc9006(Santa Cruz)(α−FGFR4 H121と同一である)、4G10 (upstate)、α−アクチン/α−チューブリン(Sigma);二次抗体:α−ウサギ−HRPコンジュゲート(BioRAD)及びα−マウス−HRPコンジュゲート(Sigma)。
【0150】
組織学及び免疫組織化学
腫瘍試料及び組織を4℃で一晩70%エタノール中に固定した。翌日試料をパラフィン中に包理し、4〜8μMの切片をマイクロトームで切り出した(HM355S, microm)。この切片をキシレン中で脱パラフィンし、エタノールの段階的系列において再水和した。抗原賦活化(Antigen retrieval)を電子レンジ中でのクエン酸緩衝液(pH6)中での調理により達成した。免疫組織化学的染色を、the Vectastain Staining Kit(Vector Laboratories, Burlingame)を用いて製造者のプロトコルに応じて実施した。1時間の、3%Triton−Xを含有するPBS緩衝液中の10%ウマ血清でのブロッキング後に、この切片を一次抗体(α-FGFR4 Hs121 , Santa Cruz)で40℃で一晩インキュベーションした。この二次抗体(α−ラビット,VectorLabs, USA)を1時間、3%Triton−Xを含有するPBS緩衝液中でインキュべーションし、Mayer’sヘマトキシリン(Fluka, Switzerland)をカウンター染色として使用した。
【0151】
病理学的分析及び転移の定量化のために、肺を切片化し、800〜1000μm間隔で分析した。切片をヘマトキシリン及びエオシン(H&E, Fluka, Switzerland)を用いて染色し、光学顕微鏡下で肺転移を同定した。転移性負荷は、転移性結節の数及びサイズを基礎として計算した。
【0152】
使用したプライマー

【0153】
結果:
FGFR4 Arg385KI及びFGFR4 Arg385 WAP−TGFαトランスジェニックマウスの作成
腫瘍プログレッションに対するヒトFGFR4 Arg385アレルの影響は、相関的かつ一部論争となる臨床的研究において最近示されたので、in vivoにおいて、腫瘍プログレッションに対する単一ヌクレオチド多形(SNP)の影響を絶対的に明らかにする緊急の必要性が存在した。ここで、作成されたマウスモデルの定義された遺伝的バックグラウンドは、患者コホートの不均一性ひいては生じる矛盾する結論の原因を克服する。したがって、我々は、SV/129マウスの遺伝的バックグラウンドにおいてFGFR4 Arg385ノックイン(KI)モデルを作成し、これは、癌のプログレッションに対する単一ヌクレオチド多形の影響を検査するために最初に直接的にターゲット化されたKIマウスモデルを示す。マウスのFGFR4のゲノム性配列を達成するために、BACライブラリーをFGFR4遺伝子のエキソン8〜10を検出する特定のcDNAプローブを使用してスクリーニングし、ポジティブなクローンをサザンブロットにより分析した(データ示さず)。この遺伝子ターゲッティングコンストラクト(図1A)は、マウスのFGFR4のゲノム配列のエキソン2〜12(12.5kb)を含む。FGFR4 Arg385アレルを作成するために、エキソン8中のグリシンを、部位指向した突然変異作成によりアルギニンへと変更させた。loxP部位により隣接されるネオマイシン選択カセットを、エキソン10及び11の間にクローニングした。遺伝子ターゲッティング後来るべきネオマイシン耐性ES細胞クローンをサザンブロットにより分析した(図1B1)。ここで、5′−外側プローブを使用して、付加的な10kbバンドにより同定可能な正確な相同性組み換えを検出した。このポジティブなES細胞クローンのゲノタイプを次いで、ゲノムDNAのPCR−RFLPにより分析した。SNPは新規制限部位を挿入するので、この得られた増幅産物はFGFR4 Arg385を有するクローン中で、Mval制限酵素により切断されることができ、これは付加的な93bpの断片を生じる(図1B2)。
【0154】
次に、ポジティブなクローンを、キメラを作成すべく、偽妊娠したマウスの胚盤胞中に注入した。これらマウスを次いで、C57BL/6マウスに戻し交雑し、FGFR4 Arg385 KIマウスの第1世代を育てた。ネオマイシン選択カセットを欠失するために、このFGFR4 Arg385マウスを、Creリコンビナーゼ(Deleter-Cre)についてトランスジェニックであるマウスに対して交雑させた。
【0155】
FGFR4 Arg385 Cre欠失したマウスを、FGFR4アレルのメンデル遺伝について、マウスの統計学的有意な数の分離分析(segregation analysis)により分析した(図1C)。FGFR4 Gly/Gly385マウスに対する戻し交雑において、この子孫は、FGFR4 Gly/Gly385対FGFR4 Gly/Arg385からの1:1の期待された分布を示した。ヘテロ接合相互交雑は、FGFR4 Gly/Gly385対Gly/Arg385対Arg/Arg385からの1:2:1の期待された分布を示した。すなわち、このFGFR4 Arg385アレルは正確なメンデル比において遺伝される。
【0156】
乳癌プログレッションに対するFGFR4 Arg385の影響を調査するために、このFGFR4 Arg385 KIマウスを、WAP TGFα/EGFRについてトランスジェニックなマウスに対して交雑した(図1D3)。雌マウスの正常な泌乳を確保するために、この導入遺伝子は雄によってだけ受け継がれた。この子孫におけるTGFα導入遺伝子の存在を確認するために、我々は、外因性TGFαのための特異的プライマーを用いたゲノタイピングを実施した(図1D2)。異なるFGFR4アレルを区別するために、このゲノタイピングを、前述の付加的な制限部位によるPCR−RFLPにより実施した(図1D1)。
【0157】
FGFR4 ARg385KIマウスは、ヒトの対応物(counterpart)を模倣する
ヒトにおいては、このFGFR4Arg388アレルは、FGFR4 Gly388に比較していかなる差異もなく様々な組織において発現されるが、この生物自体に対するまだ知られていない影響を有する(11)。類似して、このFGFR4 Arg385KIマウスモデルは、Arg385からGly385を有するマウスを区別するまだ知られていない明白なフェノタイプを示す(データ示さず)。この作成されたFGFR4 Arg385KIマウスがそのヒトの対応物を、FGFR4発現、局在化及び分布においても模倣するかどうかを確認するために、我々はFGFR4 mRNA−及びタンパク質−レベル及び局在化及び分布を成体マウスの様々な組織において分析した。
【0158】
図2A及びBに示されるとおり、FGFR4は、乳腺、胚、脳又は腎臓を含めた様々な組織において発現される。mRNAに対するまた同様にタンパク質発現レベルに対する異なるFGFR4アレル間の差異は検出できなかった。次に、我々は、異なる組織のFGFR4の発現及び局在化を免疫組織化学的に分析した(図2C)。ここで、FGFR4は、様々な組織において検出可能であり、かつ、mRNA又はタンパク質発現レベルと同じように、FGFR4アレル間の差異は存在しない。FGFR4染色した組織のための2つの例が図2Dに挙げられている。肺において、FGFR4は、平滑筋、血管及び気管支上皮細胞において発現される。乳腺においては、血管及び管の上皮細胞は明らかなFGFR4染色を示す。これら結果は、ヒトの試料に対する以前に刊行されたデータと整合する(29)。
【0159】
このため、FGFR4 Arg385KIマウスは、mRNA及びタンパク質発現レベル、局在化及び分布において、そのヒトの対応物を模倣するようにみえる。
【0160】
FGFR4 Arg395は、腫瘍プログレッションを促進する
臨床的研究の以前の報告は、腫瘍イニシエーションにおけるFGFR4 Arg385アレルを示唆せず、むしろ、これを癌がイニシエーションした後の促進された疾病プログレッションと関連付ける(11、12)。したがって、我々は、FGFR4 Arg385KIマウスを、WAP−TGFα/EGFRについてトランスジェニックなマウスに対して交雑し、乳房腫瘍をイニシエーションさせ、かつ、初めて、マウスの乳房腫瘍プログレッションにおけるSNP FGFR4 Arg385アレルの影響をin vivoで調査する。
【0161】
この目的のために、我々は、この生じる腫瘍の質量、領域及びパーセンテージを分析した(図3A〜D)。ここでは、この腫瘍質量及び領域は、FGFR4 Gly385マウス(Gly385)コントロールに比較した場合に、WAP−TGFαについてトランスジェニックな、FGFR4 Arg385(Arg385)を有するマウスにおいて、有意に(Gly/Arg−p=0.03;Arg/Arg−p=0.002)増加している(Gly/Arg−p=0.01;Arg/Arg−p=0.0006)(図3A及びB)。これら結果は、FGFR4 Arg385アレルが、質量及び領域において、TGFα−誘発した乳癌腫瘍の有効なエンハンサーであることを示唆する。
【0162】
さらに、腫瘍の領域中でのより高い有意性は、このFGFR4 Arg385が、癌の細胞増殖のエンハンサーでないが、しかし、乳腺の増加した浸潤された領域を生じる移動を増進するようであることを示唆する。さらに、腫瘍領域におけるより有意な増加は、WAP−TGFαについてトランスジェニックな、FGFR4 Arg385を有するマウスにおいて、容易になった新生形質転換速度から生じてよい。これら結果は、in vitro結果と一致して、形質転換したMEFsを生じる。発癌性バックグラウンドのない、FGFR4 Gly/Gly385、Gly/Arg385及びArg/Arg385マウスの分析されたコントロール乳腺は、その質量、サイズ又は病理学におけるいかなる変化をも示さない(図10A−B)。
【0163】
さらに、我々は、WAP−TGFα/EGFRモデルにおける乳房腫瘍のイニシエーションに対するFGFR4 Arg385アレルの影響を調査した。これをするために、我々は、全乳腺に比較した腫瘍の質量及び領域のパーセンテージである形質転換した乳腺上皮の量を分析した(図3C及び3D)。ここでは、腫瘍質量のパーセンテージが有意に増加しており(Gly/Arg−p=0.05;Arg/Arg−p=0.005)、その一方で、腫瘍領域のパーセンテージは、Gly/Gly及びArg/Arg(p=0.002)が比較される場合にのみ有意な増加を示す。このようにして、FGFR4 Arg385アレルは、図3A及びBに示されるとおり腫瘍成長を促進するだけでなく、しかし、TGFα/EGFR−誘発された乳房腫瘍のイニシエーションを容易にするようであり、というのも、この腫瘍性質量及び領域のパーセンテージは、ヘテロ接合からホモ接合のArg385を有するマウスへと増加するからである。さらに、FGFR4 Arg385アレルの有効な腫瘍促進性の影響は、Arg/Arg385を有するマウスとGly/Glyコントロール(交配、これによる腫瘍プログレッション6ヶ月後に屠殺された)の比較により証拠付けられる(図3E)。対照的に、FGFR4が自体で癌イニシエーションに影響を及ぼすことができないことは図7A/Bに示されている。
【0164】
このWAP−TGFαマウスモデルに加えて、我々は、MMTV−PymTマウス乳房癌腫モデルにおけるFGFR4 Arg385の腫瘍促進性の影響も調査した。v−srcで形質転換したMEFsにおけるin vitro結果のために、我々は、FGFR4 Arg385の腫瘍促進作用が、発癌性バックグラウンドに依存しているかどうかを最終的に決定するために、FGFR4 Arg385アレルの腫瘍促進作用がin vitroと同様にin vivoで明らかでないかどうかを調査することを目的とした。
【0165】
したがって、3月齢の雌のFGFR4 Gly/Gly385、Gly/Arg385及びArg/Arg385マウスの腫瘍を分析した。腫瘍プログレッションのためのこの分析した尺度は、この分析した腫瘍の質量及び領域である。図11A及びBに見出されるとおり、MMTV−Pymtについてトランスジェニックなマウスにおいて、FGFR4アイソタイプ間で、腫瘍サイズにも腫瘍質量にも有意な差異は存在しない。このように、FGFR4 Arg385in vivoアレルの腫瘍促進作用は、発癌を引き起こす遺伝的バックグラウンドに依存的である。
【0166】
FGFR4 Arg385アレルの腫瘍促進作用の根底をなす機構をさらに調査するために、我々は、FGFR4アレルの可能性のある分子的相違を研究した。多くのヒト癌において、FGFR4の過剰発現は、腫瘍の一般的に観察される特徴である(1、4、30、31)。TGFα/EGFR由来の腫瘍におけるFGFR4発現を検証するために、我々はまず、全てのゲノタイプの腫瘍ライセートからのFGFR4の免疫沈降によりこの発現を分析した。ここで、FGFR4タンパク質は、非癌性乳腺に比較すると、腫瘍中で明らかに過剰発現しているが、しかし、この異なるアレル間での検出可能な差異は存在しない(図3F)。
【0167】
さらに、我々は、このArg385アレルがこのキナーゼ活性に対して任意の影響を有し、これにより腫瘍促進作用を生じるかどうかをチェックするために、このFGFR4の構成的リン酸化状態を分析した。図3に示されるとおり、FGFR4 Arg/Arg385は、よりリン酸化され、これによりGly/Gly−又はGly/Arg385よりもより活性化しているように見え、FGFR4 Arg385アレルの腫瘍促進性能力の可能性のあるヒントである。下流分子、例えばErk又はAktの活性化は、この発現されたFGFR4アレル間で有意な差異を示さなかった(データ示さず)。我々は、マウス試料中の全てのゲノタイプのFGFR4の発現レベルを免疫組織化学的に確認もした(図3C)。特筆すべきことに、FGFR4アレルの発現は、アデノカルシノーマにおける差異を示さない(図3G2)、しかし、過形成乳腺においてGly385に比較してArg385アレルの明らかに増加した発現を示す(図3G1)。ことによると、発癌におけるFGFR4Arg385の過剰発現は、グリシンアレルに相対的に増進され、これにより、より早期の発生とともに腫瘍プログレッションを促進する。さらに、TGFα/EGFR由来の腫瘍の所定の例(図3G)は、FGFR4Arg385アレル発現のために病理学的差異を示さない。
【0168】
プライマリー腫瘍におけるFGFR4発現に加えて、我々は、アグレッシブな乳癌パラメーター、例えば運動性、浸潤性及び血管形成に関連する遺伝子の発現を調査したかった(図12)。これらを、FGFR4 Gly/Gly385及びArg/Arg385マウス(WAP−TGFαについてトランスジェニック)からの6ヶ月の腫瘍においてこのmRNAレベルで分析した。ここで、FGFR4 Gly/Gly385を発現するWAP−TGFα−誘発された腫瘍におけるこの発現を100%に設定し、かつ、FGFR4 Arg385を発現するWAP−TGFα−誘発された腫瘍におけるこの発現はこれら発現レベルに対して相対的に設定した。最初に、我々は、FGFR4及びEGFRの発現を分析し、これは、この腫瘍のプログレッシブな影響がFGFR4 Arg385又はEGFRの過剰発現から生じることを除外し、そして、これら2種のタンパク質がこの調査されたマウスにおいて等しく発現されることを保証するためである。図12において見受けられるとおり、FGFR4及びEGFRの両者は、FGFR4 Arg385アレルの存在において過剰発現を示さない。腫瘍サプッレサーのうち、発現における唯一の有意な変化はp21について見出され、これは、FGFR4 Arg385を発現するWAP−TGFα誘発された腫瘍において有意に下方制御されている。この腫瘍サプッレサーは、高いEGFR発現と一緒に下方制御される場合は、最も不良な予後のための決定因子として知られている。細胞サイクル及び増殖マーカーに関して、この細胞サイクルの発現に依存性のキナーゼ(CDK)1、2及び4及びサイクリンBを測定した。FGFR4は強いマイジェン性活性を有することが知られているので、FGFR4 Gly385又はArg385を発現する腫瘍間で差異は期待されなかった。対照的に、FGFR4 Arg385を発現する腫瘍においてCDK1の有意により高い発現が存在した。CDK1は移動に強力に関連しているので、この有意な過剰発現はこの腫瘍細胞の移動作用を促進又は増加させるようであり、このことは、FGFR4 Arg/Arg385のよりアグレッシブなフェノタイプを有するマウスを生じる。浸潤マーカーの群のうち、転移及び血管形成に関連したタンパク質の発現を分析した。ここで、CD44及びflk−1遺伝子は、FGFR4 Arg385腫瘍において有意に過剰発現している。浸潤に対するCD44の影響がいまだ論争を呼んでいるものの、しかし、その転移促進作用は広く許容されている。flk−1の有意な過剰発現が、FGFR4 Arg385腫瘍のよりアグレッシブな可能性を示唆し、というのも、flk−1は、この腫瘍及びその転移性能力のよりアグレッシブな挙動を生じる血管形成を促進するからである。MMPs1のクラスターにおいて、MMP13また同様にMMP14はFGFR4 Arg385腫瘍において過剰発現し、このことはより高い転移可能性に寄与する。
【0169】
これらデータは、FGFR4 Arg/Arg385を発現するWAP−TGFα誘発した腫瘍のよりアグレッシブな挙動を強力に示唆し、このことは、増進した腫瘍プログレッションを生じる。
【0170】
FGFR4 Arg385は、腫瘍発症(Tumor Incidence)の時間点を減少させ、時間にわたり腫瘍プログレッションを促進する
FGFR4 Arg385の腫瘍促進作用をさらに分析するために、我々は、WAP−TGFα/EGFRモデルにおいて時間にわたりこれら3つの全てのゲノタイプの腫瘍プログレッションを追跡した。
【0171】
最初に、我々は腫瘍発症の可視可能な時間点をチェックした。図4Aに示されるとおり、FGFR4 Arg385(Gly/Arg385及びArg/Arg385をプールした)を有するマウスは、FGFR4 Gly385コントロールに比較してより早期の時間点で有意に(p=0.001)腫瘍を発達させた。加えて、我々はさらに、FVBバックグラウンドにおけるWAP−TGFα導入遺伝子により誘発されるGlyキャリアに比較したFGFR Arg385 KIマウスにおける腫瘍発生の時間点をチェックした。同様に、Argアレルを有するマウスは、図8Aに示されるとおり腫瘍のより早期の発生を示す(p=ns)。
【0172】
さらに、FGFR4 Gly/Arg385−又はArg/Arg385マウスは、より大量の腫瘍を同時に確立するだけでなく、しかし重要なことに、時間にわたり、FGFR4 Gly/Gly385マウスに比較してより迅速なその腫瘍の数を増加させる(図4B)。FGFR4 Gly/Arg385及びArg/Arg385−マウスの腫瘍質量及び領域もまた、FGFR4 Gly/Gly385マウスよりも顕著により迅速に進行する(図4C及びD)。
【0173】
特筆すべきことに、FGFR4 Arg385を有するマウスは、腫瘍プログレッションの早期の時間点で差異を示さないが、しかし、Arg385についてホモ接合のマウスは、6〜8ヶ月後に腫瘍成長の莫大な増進を示す。すなわち、ヘテロ接合なFGFR4 Arg385状態は、減少した腫瘍発症にとって十分であるように見えるが、ホモ接合なArg385キャリアーは、腫瘍形成が一度生じると明らかにより迅速なプログレッションを示す。
【0174】
次に、我々は時間にわたる乳腺中の腫瘍質量及び領域のシェアを分析した(図4E及びF)。ここで、腫瘍質量及びサイズの両方のパーセンテージは、FGFR4 Gly/Gly385へとGly/Arg385へとArg/Arg385マウスへと明白な増加を示す。これらデータは、このArg385アレルが、WAP−TGFα/EGFR誘発された乳癌の腫瘍イニシエーションを容易にするようであるとの事実を確認する。
【0175】
要約すると、FGFR4 Arg385アレルは時間にわたり、発生する腫瘍の数、質量及びサイズにおいて乳癌腫瘍プログレッションを促進し、かつ、発癌のイニシエーションを容易にし、これにより腫瘍発生の時間点を減少させるようである。
【0176】
FGFR4 Arg385は、癌細胞転移を促進する
癌の臨床的結果は、プライマリーな腫瘍の浸潤段階に依存的であるから、WAP−TGFα/EGFR由来の腫瘍の攻撃性及び浸潤性に対するFGFR4 Arg385アレルの影響を調査することが重要である。したがって、我々は、遠位の転移の発生について切開したマウスの肺を調査した。衝撃的なことに、Gly385マウスに比較した場合にFGFR4 Arg385マウスは肺転移のより早期の発症を示すが(図5A)、病理組織学的には異ならない(図5B)。この他に、FGFR4 Arg385アレルは、肺転移を、FGFR4 Gly/Gly385に比較した場合に、ヘテロ接合からホモ接合なFGFR4 Arg385を有するマウスに対して、サイズ及び数の両方において促進する(図5C)。この最も大きな差異は、80μm未満のマイクロ転移の数において見ることができる。これら結果は、FGFR4 Arg385アレルが、腫瘍細胞浸潤を容易にするようであることを示唆する。第2に、360μmよりも大きい転移において、FGFR4 Arg385を有するマウスにおいてより早期の発症及びより迅速な転移成長の可能性についての証拠が観察される。
【0177】
FGFR4 Arg385は細胞形質転換を促進する
in vitroにおける腫瘍プログレッションに対するFGFR4 Arg385アレルの腫瘍のプログレッシブな作用の可能性のある機構を更に調査するために、我々は、単離されたE13.5マウスの胚性繊維芽細胞(MEFs)に対する焦点形成アッセイを実施した。
【0178】
この細胞を幾つかのオンコジーンで形質転換し、これは、FGFR4 Arg385KIマウスから得られた結果はin vitroを確認するものかどうか、そして、腫瘍プログッシブな作用の機構についての示唆があるかどうかを確認するためである。FGFR4 Gly/Gly385、Gly/Arg385又はArg/Arg385を発現するMEFsを、HER2、EGFR(配列番号77)又はc−kitで感染させ、その一方で、v−srcはポジティブコントロールとして機能した。図6Aに示されるとおり、FGFR4 Arg385 MEFsにおける焦点の数は3つ全てのオンコジーンにおいて著しく増加し、このことは、FGFR4 Arg385アレルが、典型的なオンコジーンと共同して細胞形質転換を促進することを示唆する。特筆すべきことに、EGFR又はc−kitによる細胞形質転換は、弱いオンコジーンであると通常考えられるレセプターに、普通でないほど多くの数の焦点を生じる。この現象のための可能性のある説明は、FGFR4 Arg385と他のレセプターチロシンキナーゼとの間での未だ知られていないクロストークが存在することかもしれない。
【0179】
c−kitの次に、EGFRでのFGFR4 Arg/Arg385 MEFsの形質転換は、焦点形成アッセイにおいて普通でないほど高い活性を示す。したがって、我々は、EGFR(配列番号76)の安定な過剰発現によるFGFR4 Gly/Gly385及びArg/Arg385 MEFsの形質転換後のいくつかの病理学的プロセスに対するFGFR4 Arg385アレルの関与を調査することを目的とした。v−srcの安定な過剰発現はポジティブコントロールとして機能し、空のpLXSNベクターの安定な過剰発現はネガティブコントロールとして機能した。感染されたMEFsの間で等しい発現を保証するために、EGFR及びv−srcの過剰発現を、イムノブロット分析及び定量化を介して分析した。図13Aに示されるとおり、EGFR及びv−srcは、FGFR4 Gly/Gly385及びArg/Arg385 MEFsにおいて等しく発現している。興味深いことに、FGFR4は、EGFR形質転換された細胞においてv−srcで形質転換したMEFsに比較して明らかに上方制御されており、そして、Gly/Gly385 MEFsに相対的に、FGFR4 Arg/Arg385において、より一層上方制御されかつ過剰活性化されている。この結果は、EGFRウィルス発現ベクターで感染させたFGFR4 Arg/Arg385 MEFsの焦点形成アッセイにおける増加した形質転換速度についての可能性のある説明を生じる。さらに、FGFR4の上方制御は、これら2つのレセプターのこれまで知られていないクロストークについての更なる示唆である。我々はさらに、この、EGFRで形質転換したMEFsにおけるFGFR4 Gly/Gly385に比較したFGFR4 Arg/Arg385の上方制御が特定の生物学的プロセスに影響を及ぼすかどうかを調査した。増殖に関して、EGFRで形質転換したMEFsは、FGFR4アイソタイプ間で差異を示さない。すなわち、FGFR4 Arg385は、形質転換されたMEFの増殖に影響を及ぼさない(図13B)。次に、我々は、ボイデンチャンバーアッセイにおいて細胞移動に対するEGFRにより形質転換されたMEFsにおけるFGFR4アレルの影響を分析した。非形質転換MEFsとは対照的に、EGFRで形質転換されたFGFR Arg/Arg385 MEFは、Gly/Gly385 MEFsに比較して有意に増加した移動能力を示す(図14A)。移動の次に、我々は、足場なしで形質転換されたMEFsが生存できる能力を分析した。この足場非依存性成長は、癌細胞が転移することを可能にし、これは次いで、プライマリー腫瘍のよりアグレッシブなフェノタイプを誘発する。したがって、我々は、EGFRにより形質転換されたMEFsを用いた軟コロニー形成アッセイを実施した(図14B)。EGFR過剰発現により形質転換されたMEFsは、FGFR4 Arg/Arg385の発現により24及び96時間後に有意に増進された足場非依存性成長を示す。完全に悪性の癌細胞は、拡散し、この取り囲む組織に浸潤するために、これらを取り囲む細胞外マトリックスを分解する能力を獲得するので、我々は、マトリゲルアッセイにおいて浸潤に対するFGFR4 Arg/Arg385の影響を分析したかった(図14C)。EGFRにより形質転換されたMEFsは、FGFR4 Arg/Arg385の存在において24及び96時間後にマトリゲル中で有意に増進した分岐を示す。対照的に、マトリゲル中の移動、軟寒天コロニー形成及び分岐を含めた生物学的プロセスは、v−srcで形質転換されたFGFR4 Arg386 MEFsにより促進されなかった(図15)。
【0180】
これら結果は、MEFsにおいて、腫瘍プログレッションに全て寄与する、移動、浸潤及び足場非依存性を含めた生理学的プロセスに、FGFR4 Arg385が影響を及ぼすことを実証する。これらプロセスは、FGFR4 Gly385により影響されるものとは別個のものであり、さらに、このFGFR4 Arg385の影響は、悪性形質転換を引き起こす遺伝的バックグラウンドに依存的である。
【0181】
時間にわたる発癌を模倣するために、我々は、異なる時間点での焦点形成を停止することにより、付加的な焦点形成アッセイを実施した(図6B)。Arg/Arg−MEFsが顕著により迅速に形質転換するだけでなく、増加した数の焦点を作成することも明らかに示された。すなわち、時間にわたるin vivoでのこの促進され、かつより強力なプログレッションはin vitroにより確認されることができた。
【0182】
この観察を分子的分析方法により支持するために、我々は、FGFR4 Arg38アレルがMEFsにおいて過剰活性化され、これにより細胞形質転換を促進するかどうかを決定した。異なるFGFR4アイソフォームの発現はMEFsにおいてまた同様にリン酸化の基本状態において等しい(図9A)。次に、我々は、FGFR4 Arg385が、細胞生存を容易にするか又はMEFsの生理学的プロセスに影響を及ぼすかどうかをチェックしたかった。したがって、我々は、in vitroでこの細胞が老化するまで集団二倍の数を分析し、付加的に、30日間継代培養されたMEFsを、老化細胞を可視化するためにβ−ガラクトシダーゼについて染色した。しかし、我々は、異なるFGFR4アレル間で明白な差異を見出さなかった(図9B)。すなわち、FGFR4 Arg385アレルは、延長された細胞寿命を促進するようにみえない。さらに、我々は、生理学的プロセスに対するFGFR4 Arg385アレルの影響を調査したかった。FGFR4 Arg385アレルの運動促進性作用が既にBange及び同僚によりヒト乳房カルシノーマ細胞株を用いて示されているので、我々はMEFsにおけるこの観察を確認したかったが、しかし、図9Cに示されるように、Gly/Gly−をArg/Arg−MEFsに比較した場合に差異は観察されなかった。対照的に、Argを有するMEFsは、DNA損傷剤に対する応答において細胞生存を強力に支持するように見えた。ドキソルビシンでの処理48時間後に、Arg/Arg−MEFsは有意に(p=0.03)減少したパーセンテージのアポトーシス細胞を、Gly/Gly−MEFsに比較して示した。付加的に、我々は、他の化学療法薬剤を用いた処理後のFGFR4−Arg385の抗アポトーシス性の影響を調査した。3μMのシスプラチン(ドキソルビシンと同様に、DNAとインターカレーションする)の存在下において、Argを有するMEFsは、処理48時間後に減少したアポトーシスを示した。対照的に、タキソール(紡錘体の組織に干渉する)での48時間の処理後に、Gly又はArgを有するMEFsの間で差異は観察されなかった(図6C)。
【0183】
ことによると、このFGFR4 Arg385アレルは、化学療法薬剤に対するより高い寛容性により細胞がDNAの損傷を生き残ることを可能にし、かつ、DNA損傷又は−修復システムはFGFR4 Arg385アレルを発現するMEFsにおいてより迅速かつより効率的に応答する。
【0184】
新規のFGFR4相互作用パートナーの調査
FGFR4及びそのArg388変形の最も目立つ影響は、不良な臨床的結果と相関する癌におけるその関与である。さらに、FGFR4は、肝臓のホメオスタシスの維持に関与する。しかし、FGFR4が発癌又は肝臓代謝を支持する独特な機構はさらに明らかにされるべきである。この目的のために、我々は、in vitro及びin vivoでSILACを基礎とする質量分析により、FGFR4相互作用パートナーのプロテオーム分析を実施した。
【0185】
MDA−MB−231細胞における新規のFGFR4結合パートナーの調査
FGFR4は、例えばHERファミリーレセプターに比較してかなり低いレベルで発現し、この自然科学的ツール、例えば抗体は、このレセプターの調査における制限を示すので、我々は、Bange et al. (2002)により改変されたMDA−MB−231乳癌腫瘍由来細胞をモデルシステムとして選択した。ここで、FGFR4はそのGly388又はArg388変形のいずれかで過剰発現され、その癌プログレッション増進作用を発揮する(Bange et al. 2002 (35))。FGFR4過剰発現は、質量分析によるFGFR4タンパク質の検出を広範囲に簡略化し、そして、FGFR4アレル間のこの差異がこの同じモデルシステムにおいて分析されることができる。
【0186】
FGFR4相互作用パートナーの定量的質量分析の分析を実施するために、我々は、細胞のディフェレンシャル代謝ラベリングを達成するthe SILAC Technologyを使用した(Ong and Mann, 2006)。この獲得される相互作用パートナーを確認するために、我々は、いわゆる「ラベルスウィッチ」を実施した。定量的質量分析を、Arg0/Lys0また同様にArg10/Lys8ラベルにより、Gly388又はArg388変形のいずれかを発現するMDA−MB−231細胞で実施した。空のpLXSNベクターを発現する親のMDA−MB−231細胞は、ネガティブコントロールとして機能し、かつ、Arg4/Lys6ラベル化された(図16)。細胞のラベル化及び試料調製は、以前に説明されているとおりに実施した(Andersen et al., 2005; Shevchenko et al.)。
【0187】
第1表は、FGFR4の可能性のある相互作用パートナーである全てのタンパク質を示す。同定されたタンパク質は、空のpLXSNを発現するMDA−MB−231細胞においてその検出値に対して標準化されていた。ここから、ネガティブコントロールに比較して5倍の上方制御を有する全てのタンパク質は、FGFR4の推定的相互作用パートナーである。第1表はさらに、ネガティブコントロールと比較した上方制御により示される相互作用の強度、及び、相互作用において差異がないことを意味する値1でのFGFR4 Gly388及びArg385変形の間の差異を示す。このFGFR4 Gly388及びArg385自体は、MDA−MB−231細胞における過剰発現の結果として高度に上方制御されることが見出された。これら結果は、実験的構成また同様にこの過剰発現システムが適当に働いたことを示す。さらに、タンパク質チロシンホスファターゼ、レセプタータイプF(PTPRF、LAR)、神経原性座ノッチホモログタンパク質2(NOTCH2)、エフリンタイプ−Aレセプター2(EPHA2)及び最も興味深いことに上皮成長因子レセプター(EGFR、配列番号77)が、高度に上方制御されることが見出された。LARは、膜貫通ホスファターゼであり、かつ、様々なレセプターチロシンキナーゼの機能を制御することが知られている。その活性は、EGFRによりネガティブに制御されることが知られている(Ruhe et al., 2006)。LARの欠損は、cMETによる増加した肝細胞の細胞増殖、インスリン耐性及び増加した腫瘍細胞転移に関連している(Machide et al., 2006; Mander et al., 2005; McArdle et al., 2005)。LARの過剰発現は、哺乳類細胞においてアポトーシスを誘発する(Weng et al., 1998)。この上、LARは、FRS2と相互作用することによりFGF誘発されたシグナリングの制御に関与する(Wang et al., 2000)。EPHA2は、多くのヒトのアグレッシブな癌細胞上で上方制御される膜貫通レセプターチロシンキナーゼである。他のレセプターとは異なり、これは、腫瘍プログレッションを引き起こすリガンド結合なしのキナーゼ活性(EphrinA1)を示す。MDA−MB−231を含めた乳癌細胞において、EPHA2は細胞付着を誘発するリガンド又は抗体結合すると悪性癌細胞の挙動をネガティブに制御する(Carles-Kinch et al., 2002; Noblitt et al., 2004)。MDA−MB−231細胞におけるEGFR過剰発現は、癌発達及びプログレッションのいくつかの鍵となる特徴と関連し、かつ、様々な癌において有効なターゲットを示す。MDA−MB−231細胞において、複数の機構を介したEGFRの刺激は、その悪性挙動において増加を生じる(Wang et al., 2009; Zheng et al., 2009)。これらデータは、FGFR4 Gly388又はArg388変形を過剰発現するMDA−MB−231細胞が、乳癌細胞においてFGFR4の可能性のある相互作用パートナーを研究するために有用なモデルを提示することを示唆する。さらに、FGFR4は、様々なレセプターチロシンキナーゼと相互作用するようである。しかし、全ての可能性のある相互作用パートナーは、異なるFGFR4アイソタイプ間で差異を示さなかった。
【0188】
【表1】

第1表:MDA−MB−231細胞におけるFGFR4の可能性のある新規の相互作用パートナーの要約:可能性のある相互作用パートナーは、「ラベルスウィッチ」により確認され、同定されたタンパク質の評価尺度は、上方制御≧5倍、レーザーペプチド(Razor Peptid)(=RPs)>2、PEP<0.03;この表はさらに、FGFR4アイソタイプ間で数倍の上方制御及び数倍の差異(fold of upregulation and fold difference)を示す;値1は、FGFR4アイソタイプ間の等しい相互作用を示す。
【0189】
EGFR/FGFR4相互作用の検証
興味深いことに、MDA−MB−231細胞における質量分析の分析から得られたデータは、FGFR4の相互作用パートナーとして特にEGFRを示した。EGFRは、癌において様々なプロセスの鍵となる制御因子であり、認容された治療的ターゲットであり、そして、我々の実験において使用されるWAP−TGFαマウスの乳房癌腫モデルにおける腫瘍プログレッションの主たる成分である。したがって、EGFRとFGFR4の間の可能性のある相互作用の検証は、この他の分析された相互作用パートナーの検証に先行した。
【0190】
第1に、我々は、FGFR4が、空のpLXSN、pLXSN−Gly388又は−Arg388のいずれかを過剰発現するMDA−Mb−231の細胞においてEGFRと一緒に共免疫沈降されることを示すことをもくろんだ(図17A)。これらデータは、これら2のレセプターの相互作用のための第1のヒントを示唆する。質量分析の分析とは対照的に、ウェスタンブロット分析は、FGFR4 Gly388に比較した、共免疫沈降したFGFR4 Arg388の増加した含量を示した。期待されたように、このネガティブコントロールは共免疫沈降したFGFR4を示さず、というのも、FGFR4は、MDA−MB−231細胞においてほとんど発現していないからである。にもかかわらず、タンパク質は、この膜にクラスターにおいて大抵局在化しているので、共免疫沈降は、2のレセプター間の相互作用のための最終的な証拠ではない。したがって、我々は、EGF刺激の際のEGFR−FGFR4相互作用を調査した。図17Bに示されるとおり、EGFRは、過剰発現したFGFR4の存在下において増加したリン酸化を示した。さらに、FGFR4 Arg388を過剰発現するMDA−MB−231細胞におけるEGFRは、FGFR4 Gly388の存在下におけるよりもより一層活性化されている。興味深いことに、この共免疫沈降されたFGFR4−Arg388は、FGFR4−Gly388に比較してより一層活性がある。この他に、FGFR4のリン酸化は、EGF刺激の際に時間を超えて増加する。これらデータは、ウェスタンブロット分析の定量化により確認された(図17C)。さらに、この下流のシグナリングタンパク質Aktの活性化は、EGF刺激の際にFGFR4 Arg388を過剰発現するMDA−MB−231細胞において増加している。Erkの活性化は、異なるFGFR4アイソタイプ間で相違しなかった(データ示さず)。この結果は、EGF刺激の際のFGFR4及びEGFRの生理学的相互作用を示唆する。同様に、このEGFR−FGFR4相互作用は、刺激されていない細胞においてはほとんど見受けられない。要約すると、FGFR4及びEGFRは直接的な相互作用パートナーである。ここで、FGFR4は、EGF刺激の際にレセプターリン酸化によりEGFR誘発されたシグナリングを支持するように見え、その一方で、FGFR4 Arg388はこのシグナルを促進する。
【0191】
MDA−MB−231細胞において得られたデータをさらに確認するために、我々は、EGFRで形質転換したFGFR4 Arg385 KIマウス由来のMEFsにおいてEGF及びTGFα刺激の際のシグナリングを調査した。EGFRで形質転換したMEFsは、EGF及びTGFα刺激の際にFGFR4 Arg385アレルの存在下において増進されかつ延長された、Aktの活性を示した(図18A)。Erkの活性化は、異なるFGFR4アイソタイプ間での差異を示さない(データ示さず)。FGFR4 Arg388を過剰発現するMDA−MB−231細胞に類似して、EGFRで形質転換し、かつ、FGFR4 Arg385を発現するMEFsは、pEGFRレベルにおいて、FGFR4 Gly385 MEFsに比較して有意な増加を示す(EGF5′−p=0.000073、EGF10′−p=0.0025、TGFα5′−p=0.07、TGFα10′−p=0.01)(図18B)。この他に、EGFRで形質転換したMEFsは、EGF及びTGFα刺激の際にFGFR4の活性化を示す(図18C)。MDA−MB−231細胞と類似して、FGFR4 Arg385アレルを発現するMEFsは、FGFR4の増加した活性を示す。これらデータは、MDA−MB−231細胞において得られた結果を確認する。FGFR4 Arg385は、EGFRの活性化及びこれに続く下流のシグナリングを明らかに支持する。
【0192】
FGFR4 Arg385は、MDA−MB−231細胞においてこの移動性挙動及びゲフィニチブに対する感受性に影響を及ぼす
EGFRとFGFR4の間の相互作用を更に調査するために、我々は、MDA−MB−231細胞の生物学的特性に対するFGFR4 Arg388の影響を分析した。我々は最初に、空のpLXSN、pLXSN−Gly388及び−Arg388を過剰発現するMDA−MB−231細胞の増殖を分析した。図19Aにおいて示されるように、この過剰発現したFGFR4は、通常の条件下でMDA−MB−231細胞の増殖に対して影響を有しなかった。図19Bにおいて示されるとおり、FGFR4の過剰発現は、移動において極めて大幅に増加し、このことは、細胞の移動挙動を促進するためのFGFR4の莫大な能力を示唆する(Gly388−p=0.001、Arg388−p=0.001)。その上、FGFR4 Arg388を過剰発現するMDA−MB−231細胞は、FGFR4 Gly388を過剰発現するMDA−MB−231に比較して増進した移動挙動を示す。Bange et al.によるデータとは対照的に、FGFR4 Gly388は、MDA−MB−231細胞の移動を抑制しなかった。これは、細胞−細胞接触よりむしろ走化性移動における変化をモニターするボイデンチャンバーアッセイに比較して異なる応答を生じる可能性があるBange et al. (2002) (35)のスクラッチアッセイのためであるかも知れない。
【0193】
EGFR及びFGFR4の間の生理学的関連をさらに分析するために、我々は、ゲフィニチブに対する曝露の際のMDA−MB−231過剰発現細胞における異なるFGFR4アレルの間の差異を調査した。この小分子チロシンキナーゼ阻害剤は、ATPとの競合によりEGFRリン酸化を遮断し、これにより、EGFR媒介された下流シグナリングを阻害する(Herbst et al., 2004)。したがって、EGFR及びFGFR4の二量体化を必要する生理学的プロセスは、EGFR阻害剤なしで得られたものと比較してゲフィニチブの存在において異なる結果を生じるはずである。我々は最初に、空のpLXSNベクター又はFGFR4 Gly388又はFGFR4 Arg388のいずれかを過剰発現するMDA−MB−231細胞の応答を、MTT増殖アッセイにおいてゲフィニチブ(0.025〜20μM)の増加する濃度に対して決定した(図20A)。興味深いことに、FGFR4 Arg388を発現する細胞は典型的な用量応答曲線を示し、その一方で、FGFR4 Gly388及び空のpLXSNベクタ−を発現する細胞は、ゲフィニチブ20μMまで応答を示さない。この分析されたIC50は、空のpLXSN又はFGFR4 Gly388を発現するMDA−MB−231細胞の両者に対して18.72μMであると見積もられた。対照的に、FGFR4 Arg388アレルを過剰発現するMDA−MB−231細胞について計算されたIC50は、9.53μMであった。これら結果は、ゲフィニチブに対するMDA−MB−231 FGFR4 Arg388細胞のより高い感受性を示し、かつ、これら細胞のより高いEGFR依存性を示唆する。さらに、我々は、この減少した増殖が、増殖の停止又はアポト−シス(ゲフィニチブにより誘発された)から生じるかどうかを決定したかった。したがって、我々は、MDA−MB−231細胞におけるゲフィニチブ処理に対する応答におけるアポトーシスに対するFGFR4 Arg388過剰発現の影響を調査した。図20Bに示されるとおり、FGFR4 Arg388を発現するMDA−MB−231細胞は、FGFR4 Gly388を発現するMDA−MB−231細胞に比較して、ゲフィニチブに対して96時間後に有意に増加したアポトーシス性応答を示す(20μM−p=0.012;10μM−p=0.0022)。これらデータは、FGFR4 Arg388アレルを発現するMDA−MB−231細胞が、細胞生存に関して、ゲフィニチブに対して増加した感受性を示すことを示唆する。MDA−MB−231細胞はFGFR4 Arg388アレルを過剰発現することにより、有意に増進した移動能力を獲得するので、我々は、ゲフィニチブ(2.5μM)の存在下でのMDA−MB−231細胞の移動挙動を決定した(図20c)。ボイデンチャンバーアッセイにおける移動15時間後に、FGFR4 Arg388アレルを発現するMDA−MB−231細胞は、DMSO処理したコントロール細胞に比較して移動の22.28%の阻害を示す。対照的に、FGFR4 Gly388アレルを過剰発現するMDA−MB−231細胞は、6.28%だけの阻害しか示さなかった。これら結果は、FGFR4 Arg388を過剰発現するMDA−MB−231細胞の移動能力がEGFRの分子作用に依存的であり、かつさらにゲフィニチブ処理に対して増加した応答を示すことを示唆する。
【0194】
結論として、ゲフィニチブでのMDA−MB−231細胞の処理は、細胞生存及び移動に関してFGFR4及びEGFRの間の強力な生理学的関連を示唆する。その上、FGFR4及びEGFRの間の分子的相互作用の依存性は、FGFR4 Arg388アレルの存在において増加している。
【0195】
in vivoでの肝性FGFR4の新規相互作用パートナーの調査
細胞培養中の安定なアイソタイプラベリング(SILAC)は、定量的な、質量分析(MS)ベースのプロテオミクスのための万能なツールである。全般的な相互作用及び関連を組織特異的にそして全生物の影響とともに調査するために、Kruger et al.は、マウスに天然の又は136置換したタイプのいずれかのリシンを含む食餌を供給することによりin vivoSILACを確立した(図21)。
【0196】
FGFR4は、肝臓において、脂質−、グルコース−及び胆汁酸代謝を含む様々な代謝プロセスにおいてまた同様に、肝臓発癌において関与している(Huang et al., 2008; Huang et al., 2007)。最近の刊行物もまた、FGFR4及びそのArg388変形の分子作用についていくつかの証拠を提供し、相互作用パートナーを含むこの独特な機構は未だ知られていない(Stadler et al., 2006; Wang et al., 2006; Wang et al., 2008)。
【0197】
肝性FGFR4結合パートナー及びFGFR4アイソタイプに関するその差異の定量的分析
肝性FGFR4の新規相互作用パートナーを調査するために、質量分析の分析を、FGFR4と共免疫沈降する全てのタンパク質を同定するために実施した。相互作用パートナーの定量的分析を可能にするために、このラベル化SILACマウスを内部標準として使用した(Kruger et al., 2008)。非特異的結合パートナーを除外するために、第1の実験的段階は、全ての非選択的バインダーを同定するため抗体−FGFR4相互作用を選択的に遮断するためにFGFR4遮断ペプチドを確立することであった。図22Aに見受けられるとおり、ホームメードα−FGFR4ex抗体(C. Stadler, 2005)を作成するために使用されるFGFR4過剰発現コンストラクトは、HEK293細胞中にトランスフェクションされた。この組み換えFGFR4タンパク質を精製し、トリプシン又はLysCで消化した。この得られる遮断ペプチドを、その遮断効力についてFGFR4免疫沈降において試験した。図22Aにおいて示されるとおり、特に、FGFR4遮断ペプチドのトリプシンによる消化が、この抗体−FGFR4相互作用を明らかに消滅させた。したがって、この合成された遮断ペプチドは、肝臓中の新規FGFR4相互作用パートナーの以下の質量分析の分析のために適用可能であった。
【0198】
図22Bは、in vivo SILACを介した新規FGFR4相互作用パートナーの調査に関する実験的構成を示す。SILACマウスは、定量可能な結果を達成するために内部標準として使用された。ラベル化されていないマウスの肝性FGFR4は、非特異的結合パートナーを検出するために遮断ペプチドの存在下で免疫沈降された。定量的LC−MS/MS分析において、FGFR4及びその特異的相互作用パートナーは、ラベル化分画において高度に上方制御されるはずである。非特異的相互作用パートナーは、1:1の比を、遮断ペプチドでインキュベーションされたラベル化されていない分画に比較して示すはずである。遮断ペプチドがウェスタンブロット分析において高い効力を示したにもかかわらず、質量分析の分析は、FGFR4の特異的結合パートナーとして〜300のタンパク質を検出した(データ示さず)。このような多数の結合パートナーは、生理学的に関連のある相互作用の結果であるはずはない。したがって、肝性FGFR4相互作用パートナーの定量的質量分析の分析は、これら実験において利用された遮断ペプチドを用いて実施されることはできない。この遮断反応の特異性を改善するために、我々は、特異的遮断ペプチドを合成するために、この得られた遮断ペプチド混合物を配列決定した(図22C)。トリプシン消化から得られた遮断ペプチドミックスとは対照的に、この合成された遮断ペプチドの全ては、ウェスタンブロット分析において不活性であった(データ示さず)。この理由から、肝性FGFR4相互作用パートナーの調査を、FGFR4 KOマウスの肝臓で実施した(Yu et al., 2000)。図22D及びEは、肝性FGFR4の相互作用パートナー及びFGFR4アイソタイプ間のその差異を同定するための実験的構成を示す。
【0199】
第2表は、全ての同定されたFGFR4アイソタイプ相互作用パートナーを示す。ここで、有意度(PEP<0.03)、レーザーペプチド(razor peptide)の量(RPs>1)及びFGFR4 KO実験における少なくとも3倍の上方制御は、可能性のあるFGFR4相互作用パートナーを同定した。FGFR4は、FGFR4 KOマウスに比較してSILACマウスにおいて高度に上方制御されている。したがって、この実験的ワークフローは、FGFR4の肝性相互作用パートナーの調査のための適当な設定を示す。さらに、このFGFR4は、FGFR4アイソタイプ間でディフェレンシャルに発現されず、FGFR4 Arg385 KIマウスの特性決定により既に示される事実である。βKlothoは、FGFR4の既知の高親和性相互作用パートナーである。この単一膜貫通タンパク質は、FGFR4のFGF19/15刺激の際の下流のシグナリング事象の活性化のための本質的なコレセプターである。したがって、強力な相互作用パートナーとしてのβKlothoの同定は、MS分析において「ポジティブコントロール」であった。第2表において見受けられるとおり、βKlothoは、FGFR4 KOマウスに比較してSILACマウスにおいて高度に上方制御されており、このことは、また再度、適当な実験的設定を示唆する。この他に、我々のマウスのin vivoSILAC分析は、FGFR4及びそのArg385/388変形の分子作用の推論に寄与することができるこれまでに知られていない相互作用パートナーを明らかにした。ヒドロキシ酸オキシダーゼ1(Hao1)は、引き続くH22産生とともにグリコラート及びグリオキシコラートを酸化し、かつ、肝臓及び膵臓において最初に発現される、主としてペルオキシソームタンパク質である。ラットにおけるHao1の下方制御は、酸化的ストレスと関連したタンパク質の上方制御を特に生じる(Recalcati et al., 2003)。プロパノイル−CoA C−アセチルトランスフェラーゼ(Scp2)は、コレステロール及びことによると他の脂質の細胞内運動において重要な役割を果たす。その欠失は、ヒトにおいて複数のフェノタイプを生じる(Ferdinandusse et al., 2006)。マウスにおいては、Scp2の損失は、バイナリーな脂質分泌及び肝性コレステロール代謝における変更を誘発する(Fuchs et al., 2001)。ホルミジドイル−トランスフェラーゼシクロデアミナーゼ(Ftcd)は、葉酸肝臓代謝をコントロールすることが示唆されている(Bashour and Bloom, 1998)。さらに、Ftcdは、自己免疫肝炎を有する患者の血清において検出される肝臓特異的抗原として認識されている(Lapierre et al., 1999)。その上、Ftcdは、肝細胞癌腫(HCC)において過剰発現し、したがって、早期段階HCCの診断に寄与することが示唆されている(Fuchs et al., 2001)。ヒドロキシメチルグルタリル−CoA−合成酵素(Hmgcs2)は、ケトンの体内産生の鍵となる調節因子であり、かつ、肝臓及び大腸において高度に発現している。Hmgcs2が、c−myc及びFKHRL1により転写的に制御されていることが知られており、これは、インスリン刺激の際にHepG2細胞においてHmgcs2の転写を示す横紋筋腫ファミリーにおけるフォークヘッド(forkhead)の一員である。さらに、Hmgcs2は、その下方制御を介して大腸癌に関与している(Camarero et al., 2006; Nadal et al., 2002)。これらの可能性のある相互作用物質のうち、Hao1及びScp2は、FGFR4 Arg385変形とのより強力な相互作用を示し、これはFGFR4 Gly385に比較したより高い比により示唆される。全ての前述の可能性のある相互作用パートナーは、まだチロシンキナーゼに関与していないか又はRTKsと相互作用することが知られていない。したがって、基本的な追跡実験が、レセプターチロシンキナーゼの分子作用の文脈にこれらタンパク質を最初に導入するために必要である。これらの可能性のある新規相互作用物質の次に、最も興味深いターゲットは、上皮成長因子レセプター(EGFR)である。EGFRは、FGFR4と有意に相互作用することが見出され、さらに、FGFR4 Arg385アイソタイプに対してより高い親和性を有する。この他に、EGFR−RAS−MAPKK枢軸は、肝臓中の細胞増殖のための最も重要な経路の1つである(Llovet and Bruix, 2008)。これらデータは、肝性FGFR4の様々な新規相互作用パートナーを示す。FGFR4との直接的な相互作用及びFGFR4−媒介シグナリングにおけるその関与は、さらなる調査の主題となるべきである。
【0200】
【表2】

【0201】
第2表:肝性FGFR4の同定された相互作用パートナー及びFGFR4アイソタイプ間でのその差異の列記:列記は、同定されたタンパク質のレーザーペプチド(RPs)、タンパク質及び遺伝子名、タンパク質IDs及びその有意度(PEP<0.03);さらに、この列記は、相互作用パートナーの強度及びFGFR4アレル間のその差異を示す。
【0202】
考察
本研究においては、我々は初めて、in vivoでの乳癌のイニシエーション及びプログレッションに対するコドン385でのレセプターチロシンキナーゼFGFR4アレルの影響を調査した。このFGFR4 Arg385 KI自体は、そのヒトの対応物を、FGFR4の発現、局在化及び分布において模倣し、かつ、未だ明らかでないフェノタイプを示す。乳房癌腫のプログレッションにおけるFGFR4 Arg385ノックインマウスの役割を調査するために、我々は、FGFR4 Arg385マウスを、WAP−TGFα/EGFRについてトランスジェニックなマウスに交雑させた。我々は、FGFR4 Arg385アレルは、質量及びサイズにおいて、生じるTGFα誘発された乳房腫瘍を直接的に促進することを示す。さらに、これら腫瘍はまた、異なるFGFR4ゲノタイプに依存して時間にわたり増加もする。さらに、これは、腫瘍発症の可視可能な時間点を減少させ、したがって、時間にわたりプログレッションにおいて、腫瘍原性の質量及びサイズのより高いパーセンテージにより実証される腫瘍イニシエーションを容易にするように見える。
【0203】
特筆すべきことに、FGFR4 Arg385アレルは、攻撃性を促進するだけでなく、しかし、肺転移の浸潤をも支持する。転移の時間点は実質的に減少し、かつ、FGFR4 Arg385アレルを有するマウス中の肺はコントロール動物におけるよりもより浸潤される。
【0204】
これらデータは、FGFR4 Arg385/388アレルを不良な予後とを強力に関連させ、これにより、乳癌プログレッションの可能性のあるマーカーとしてのこのレセプターを強調する。我々のin vivoの結果は、Bange 及び同僚によるFGFR4 Arg385アレルの発見後の既に刊行されたいくつかの臨床的報告と一致しており、これは、様々な癌、例えば頭部及び頸部、前立腺又は乳癌における腫瘍プログレッションとFGFR4 Arg388アレルを関連させる(12−14)。
【0205】
さらに、マウスにおける我々のデータは、in vitroで確認されることができた。Arg385アレルを有するマウス胚性繊維芽細胞は、焦点形成アッセイにおいて異なるオンコジーンで感染された場合に、コントロール繊維芽細胞に比較してより高い形質転換速度を示した。さらに、我々は、時間にわたり、Arg385MEFsにおいて形質転換された焦点の数及び成長速度における明らかな増加を示すことができた。
【0206】
c−kitの次に、EGFRの過剰発現を通じた焦点形成は、極めて多数の焦点を生じた。したがって、我々は、EGFRにより駆動される形質転換にFGFR4 Arg385アレルが寄与するかどうか調査したかった。この終わりに、我々は、EGFR過剰発現によりMEF FGFR4ゲノタイプ変形を安定に形質転換した。興味深いことに、FGFR4は、EGFR形質転換したMEFsにおいて上方制御され、かつ、このFGFR4 ARg385は、FGFR4 Gly385に比較してEGFRで形質転換したMEFsにおいて過剰活性化されることが見出された。これら結果は、HER2及びFGFR4について示されているとおり、これら2つのレセプター間の可能性のあるクロストークを示唆する。EGFR形質添加したMEFsにおいて、FGFr4 Arg385アイソタイプは、増進した細胞運動性、軟寒天コロニー形成及びマトリゲル中の分岐と有意に関連していた。これらデータは、移動及び浸潤に連結されたプロセスを介してFGFR4 Arg385が、細胞形質転換を促進することを示唆する。さらに、移動性作用は非形質転換MEFsにおいて検出可能でないので、これらデータは、FGFR4 Arg385が、オンコジーン自体ではなく、むしろ、関連する生理学的プロセスの促進によりオンコジーンを支持することを明らかに示唆する。さらに、FGFR4 Arg385の影響は、MEFsがv−srcで形質転換された場合には検出可能でなかった。これら結果は、FGFR4 Arg385の影響が、過形成的形質転換を引き起こす発癌性バックグラウンドに明らかに依存することを示唆し、かつ、FGFR4 Arg385アイソタイプの自律的というよりはむしろ支持的な作用を示唆する。
【0207】
にもかかわらず、腫瘍プログレッシブ性の作用の分子的機構は未だ知られていない。我々の研究は、FGFR4 Arg385アレルの腫瘍プログレッシブ性の機能についての説明となりうるいくつかの証拠を提供する。第1に、FGFR4 Arg385アレルは、他のアレルに比較した場合に分析された腫瘍においてより活性化され、このことはことによると、より強力なシグナリング及びさらにはより高い細胞増殖及び腫瘍プログレッションを生じる。第2に、c−kit及びEGFR誘発された焦点形成アッセイの普通でない数の焦点。FGFR4 Arg385アレルは、他のレセプター及びその下流のシグナリング分子に対する付加的な未知のクロストークを可能にし、このことは腫瘍プログレッションを駆動できる。第3に、Gly385アレルは、抑制的機能を有することが説明されていた(33)。この文脈において、Arg385アレルは、その抑制を達成しそこね、そして、これにより、他のレセプターチロシンキナーゼのシグナリングを放出するか又はこのシグナリングを増強する可能性がある。質量分析の分析は、付加的な結合パートナー及びアダプタータンパク質又は付加的な下流分子を定義するために使用され、これは、異なるFGFR4アレルの特異的刺激後に活性化される。
【0208】
さらに、我々は、腫瘍におけるFGFR4 Arg385アイソタイプ発現の分子的結果を、増進された腫瘍プログレッションの根底となる機構を調査するために、分析した。FGFR4 Arg385は、一般的にはプライマリーな腫瘍において過剰発現していないが、FGFR4 Gly385に相対的にその活性は上方制御されている。FGFR4におけるアミノ酸置換が、親水性アミノ酸への変換を生じるので、FGFR4 Arg385の構造は、ことによると、キナーゼドメインに対する天然の調節因子の結合を損なうか、又は、より高い親和性でもってアクチベーターが結合することを可能にする。例えばWang 及び同僚(36)は、前立腺癌細胞株におけるFGFR4 Arg388の増加した安定性を実証した。この、FGFR4 Arg385の遅延されたインターナリゼーションは、変更した構造の結果である可能性があり、これは比較的より高いリン酸化状態を生じる。さらに、2つの研究は、FGFR4 Arg388の存在下における細胞遺伝子発現プロファイルにおける変化を同定した。
【0209】
ここで、FGFR4 Arg388は、前立腺癌において転移関連遺伝子Ehm2及び移動促進性遺伝子LPAレセプターEDG−2の上方制御をMDA−MB−231細胞において促進し、これは、FGFR4 Gly388により抑制され、興味深いことに、これはEGFRの良く知られているトランスアクチベーターである。ここで、WAP−TGFα由来の腫瘍のマイクロアレイ分析は、癌細胞におけるFGFR4アイソタイプ誘発した遺伝子発現プロファイルにおける差異を調査することに役立つことができる。この研究において、我々は、腫瘍プログレッションに関連するいくつかの遺伝子の発現を分析した。ここでは、FGRR4 Arg385を有するWAP−TGFα由来の腫瘍は、より「アグレッシブ」な遺伝子発現パターンを示す。腫瘍サプッレサーp21の顕著な有意な下方制御は高いEGFR発現と一緒になって極めて不良な予後を予想することが知られており、かつ、細胞サイクル依存性キナーゼ(CDK)1の上方制御は、FGFR4を癌細胞の促進された移動能力に関与させる。この他の細胞サイクルタンパク質の変更しない発現は、細胞増殖におけるFGFR4 Arg385の関与の欠損を確認する。さらに、細胞浸潤性に関連する遺伝子は、FGFR4 Arg385を発現するWAP−TGFα由来腫瘍において上方制御されていた。例えば、CD44は、転移形成を促進し、このことは、腫瘍血管形成を制御するVEGFレセプターflk−1と同様である。したがって、MMP13また同様にMMP14は、より高い転移可能性に寄与するFGFR4 Arg/Arg385を発現する腫瘍において有意に過剰発現している。
【0210】
遺伝子発現における変化の他に、FGFR4アイソタイプは、他の機能的に関連するタンパク質に対するその親和性において相違することができる。この可能性に言及するために、我々は、FGFR4Gly388及びArg388の免疫沈降物のSILACを基礎とする質量分析の分析を、MDA−MB−231乳癌細胞株モデルにおいて実施した。ここで、我々は、FGFR4の強力な相互作用パートナーであるとEGFRを同定した。引き続く実験は、興味深いことに、EGFRのFGFR4 Arg388変形に対する有意に高い親和性を示し、このことは、促進された下流シグナリングを生じる。この相互作用は、FGFR4 Arg385の腫瘍プログレッション促進作用の鍵となる機構かもしれず、これは、過剰活性なEGFRが乳房の癌腫を駆動するKI WAP−TGFαマウスモデルにおいて我々の結果により支持されている。この他に、FGFR4 Arg385を発現するMEFsにおける形質転換アッセイは、c−kitでの形質転換による焦点の普通でない数を示した。これらデータは、可能性のある相互作用パートナーEGFRの次に、FGFR4 Arg388/385に対してより強力な親和性でもって、FGFR4にクロストークできる可能性のある更なるレセプターチロシンキナーゼ及びオンコジーンを示唆する。これら知見は、FGFR4シグナリングの関与する相互作用パートナー及びFGFR4アイソタイプに関連する差異を最終的に決定するための更なる調査の主題となるべきである。遺伝子発現の差異及び我々の予備的なEGFR相互作用仮説に一致して、FGFR4 Arg385アレルを発現するマウスの癌細胞は、in vivoで遠位の転移を生じる肺の浸潤における促進した可能性を示す。我々は、転移形成が、より早期に、かつ有意に増加した数の肺転移を伴って生じることを、WAP−TGFαについてトランスジェニックな、FGFR4 Gly385を発現するマウスと比較した場合に、観察した。これらデータは、FGFR4 Arg385/388アレルを不良な予後と強力に関連させ、これにより、乳癌プログレッションの可能性のあるマーカーとしてのこのレセプターを強調する。我々のin vivoの結果は、我々の研究室によるFGFR4 Arg388アレルの発見後の既に刊行されたいくつかの臨床的報告と一致しており、これは、様々な癌、例えば頭部及び頸部、前立腺、乳房の様々な癌、メラノーマその他における腫瘍プログレッションとFGFR4 Arg388アレルを関連させる。
【0211】
対照的に、FGFR4 Arg385は、腫瘍の質量又は領域において、MMTV−PymTについてトランスジェニックなマウスにおいて乳癌プログレッションを促進することができなかった。しかし、MMTV−PyMTモデルにおけるネガティブな結果は、FGFR4の癌細胞特異的な作用の非直接的な証拠を示し、というのもこれは、癌促進作用が非直接できるである場合にMMTV−PyMTにより誘発される哺乳類腫瘍プログレッションを促進するはずであるからである。これは、v−srcで安定に形質転換されたMEFsで得られた結果と良好に一致する。この場合に、FGFR4 Arg385は、分析された生物学的特性のいずれも促進できなかった。これら知見は、過形成性形質転換の特異的発癌性バックグラウンドに対するFGFR4 Arg385アイソタイプの影響の依存性を強調する。WAP−TGFα誘発された腫瘍が、過剰活性EGFRを含む一方で、このPymTは、腫瘍形成を生じるsrcを活性化する。質量分析により分析されるとおり、EGFRは、Arg388/385変形に対するより強い親和性を有するFGFR4の直接的相互作用物質である。この相互作用は、MMTV−PymTモデルに比較してWAP−TGFαモデルにおける異なる結果についての説明となるように見える。
【0212】
異例なことに、我々は、DNA損傷剤、例えばドキソルビシンに対する応答において増加した生存をArgを有するMEFsが示すことを示すことができた。ことによると、FGFR4 Arg388/385は、DNA損傷及び発生するゲノム性不安定性を細胞が生き残ることを可能にし、これは、細胞形質転換において典型的事象である。FGFR4 Arg385発現細胞が、容易にゲノム性不安定を取り扱うことができる場合には、これらは結果としてより容易に形質転換できる。さらに、このFGFR4 Arg385/388は、結果的に、DNA修復機構を支持し、これにより、より迅速かつより効率的なDNA修復を可能にする。すなわち、より低いパーセンテージの細胞はDNA損傷に対する応答においてアポトーシスに入る。
【0213】
しかし、我々のデータは、FGFR4 Arg385アレルが、in vivoにおける乳癌発達及びプログレッションの有効なエンハンサーであることを示唆する。すなわち、我々の作成したノックインマウスについての更なる研究は、他の癌、例えば肝癌においてもFGFR4 Arg385アレルの可能性のある影響を調査するはずである。ここでは、いくつかの最近の刊行物が、肝臓機能及びホメオスタシスにおいてFGFR4を示唆する(34)。さらに、FGFR4を遮断する治療的抗体の開発は、ことによると、付加的に、典型的な癌療法、例えば化学療法薬剤と一緒に使用されることができる。さらに、FGFR4は、付加的にターゲット化されることができるのみならず、このレセプターのゲノム性素因(disposition)は、一致した(according)患者での癌療法の決定において含められることも考えられる。この意見は、Thussbass及び同僚によっても強力に支持され、彼らは、異なる薬剤処理後の処理された乳房腫瘍の再発の異なる時間が異なるFGFR4アレルと関連していることを示すことができた(16)。
【0214】
総括すると、FGFR4の関与、及び特にArg385アレルの腫瘍プログレッシブ作用の影響与は不定されることができない。我々の報告は、乳癌プログレッション及び転移における不良な臨床的結果のためのマーカーとしてのFGFR4 Arg385アレルの役割を示唆する。さらに、これら観察は、生殖細胞系変更、特にレセプターチロシンキナーゼ遺伝子における単一ヌクレオチド置換の、癌の臨床的プログレッションのための影響を強調し、これによりFGFR4を、個別化された癌療法のためのプロトタイプ薬剤の開発のための可能性のあるターゲットとして有効にする。









【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図2−1】

【図2−2】

【図2−3】

【図3−1】

【図3−2】

【図3−3】

【図3−4】

【図4−1】

【図4−2】

【図4−3】

【図4−4】

【図4−5】

【図5−1】

【図5−2】

【図6−1】

【図6−2−1】

【図6−2−2】

【図7−1】

【図7−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変したFGFR4タンパク質をコードする内因性遺伝子を含む齧歯類動物であって、その改変が、配列番号1のアミノ酸位置385に相応するアミノ酸位置での前記齧歯類の野生型FGFR4におけるアミノ酸置換である齧歯類動物。
【請求項2】
齧歯類がマウス、ハムスター又はラット、好ましくはマウスである請求項1記載の動物。
【請求項3】
齧歯類がマウスであり、前記アミノ酸位置が配列番号1のアミノ酸位置385である請求項1又は2記載の動物。
【請求項4】
齧歯類がラットであり、前記アミノ酸位置が配列番号4のアミノ酸位置386である請求項1又は2記載の動物。
【請求項5】
前記齧歯類中で配列番号1のアミノ酸385位に相応するアミノ酸位置がグリシンである請求項1又は4記載の動物。
【請求項6】
前記齧歯類においてアミノ酸置換が、グリシンとは異なるアミノ酸を伴う請求項1から5のいずれか1項記載の動物。
【請求項7】
前記アミノ酸置換が、荷電した側鎖を有するアミノ酸、好ましくはリシン、アルギニン又はヒスチジン、より好ましくはアルギニンを伴う請求項1から6のいずれか1項記載の動物。
【請求項8】
改変したFGFR4が、配列番号5又は配列番号6のアミノ酸配列を有する請求項1から7のいずれか1項記載の動物。
【請求項9】
前記非ヒト動物の少なくともいくつかのその細胞又は全細胞が、前記の内因性の改変したFGFR4コード遺伝子を含有する請求項1から8のいずれか1項記載の動物。
【請求項10】
前記の少なくともいくつかの細胞又は全細胞が、前記の改変したFGFR4に関してヘテロ接合又はホモ接合である請求項1から9のいずれか1項記載の動物。
【請求項11】
付加的に、制御されていない細胞成長、好ましくは癌及び/又は転移形成を示す請求項1から10のいずれか1項記載の動物。
【請求項12】
さらに、照射され、癌誘発剤で処置され、かつ/又は導入遺伝子を含み、前記導入遺伝子がオンコジーンを含む、請求項1から11のいずれか1項記載の動物。
【請求項13】
(a)オンコジーンが、TGF−α(配列番号74)、TGF−β、EGFR(配列番号76)、v−src、c−kit、HER2、erb−B2、p53、myc、又は/及びrasである;及び/又は
(b)癌誘発剤が、ジメチルヒドロラジン(DMH)、アゾキシメタン(AOM)、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、N−メチル−N−ニトロソウレア(MNU)、エチル−ニトロソ−ウレア(ENU)又は12−0−テトラデカノイルホルボール−13−アセタート(TPA)である
請求項12記載の動物。
【請求項14】
前記導入遺伝子が、乳房の細胞及び/又は肝細胞中で発現される請求項12又は13記載の動物。
【請求項15】
前記FGFR4の改変が、腫瘍プログレッション及び/又は形成における変化に関連するフェノタイプを生じる請求項1から14のいずれか1項記載の動物。
【請求項16】
腫瘍プログレッションにおける前記変化が、野生型動物に比較した、腫瘍成長及び/又は転移形成の増加した速度により特徴付けられる請求項14記載の動物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項記載の動物に由来するプライマリー細胞又は細胞株であって、前記プライマリー細胞が好ましくはマウスの胚性フィーダー細胞(MEFs)であるプライマリー細胞又は細胞株。
【請求項18】
前記細胞又は細胞株が、前記の改変したFGFR4に関してホモ接合又はヘテロ接合である請求項1から8のいずれか1項記載の齧歯類の細胞に由来する、請求項17記載の動物に由来するプライマリー細胞又は細胞株。
【請求項19】
前記細胞又は細胞株が、EGFRをコードする核酸(配列番号76)又はEGFRタンパク質(配列番号77)を含む請求項17又は18記載の動物に由来するプライマリー細胞又は細胞株。
【請求項20】
(a)好ましくは乳癌、肺癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、前立腺癌、メラノーマ、及び/又は膵臓癌において、制御されていない細胞成長、例えば、癌及び/又は転移形成の、分子的機構、又はこれに関連する生理学的プロセスを研究する、
(b)好ましくは乳癌、肺癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、前立腺癌、メラノーマ、及び/又は膵臓癌において、制御されていない細胞成長、例えば、癌及び/又は転移形成の、予防、改善又は治療において有用な剤を同定及び/又は試験する、
(c)好ましくは乳癌、肺癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、前立腺癌、メラノーマ、及び/又は膵臓癌において、制御されていない細胞成長、例えば、癌及び/又は転移形成についての、タンパク質及び/又は核酸診断マーカーを同定する、及び/又は
(d)前記の改変したFGFR4の不所望な活性、発現、又は産生の、分子的機構、又はこれに関連する生理学的プロセス又は医学的状態を研究する
ためのモデルとしての請求項1から19のいずれか1項記載の動物、プライマリー細胞又は細胞株の使用。
【請求項21】
配列番号5又は配列番号6に応じた、改変したFGFR4ポリペプチド。
【請求項22】
請求項21記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項23】
請求項22記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項24】
請求項21記載のポリペプチド、請求項22記載の核酸又は請求項23記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項25】
改変したFGFR4タンパク質をコードする内因性遺伝子を含む齧歯類動物であって、その際前記改変が、野生型FGFR4タンパク質、好ましくは配列番号1のFGFR4タンパク質に比較して少なくとも1のアミノ酸置換であり、この改変が、ヘテロ接合又はホモ接合の方式で前記動物の少なくともいくつかの又は全ての又は実質的に全ての細胞において存在する場合には、野生型動物に比較して増加した速度の腫瘍成長及び/又は転移形成と関連するフェノタイプを生じる齧歯類動物。
【請求項26】
付加的に、少なくともいくつかのその細胞のゲノム中で、TGF−αタンパク質をコードする導入遺伝子を発現する請求項25記載の齧歯類動物。
【請求項27】
前記導入遺伝子が、乳房の細胞において、好ましくはWAPプロモーターの制御下の発現により発現される請求項26記載の動物。
【請求項28】
前記腫瘍が、乳房の腫瘍である請求項25から27のいずれか1項記載の動物。
【請求項29】
(a)改変したFGFR4タンパク質を過剰発現する細胞の培養;
(b)試験すべき剤の培地への添加;及び
(c)この剤の存在下で培養された細胞の、同じ剤の存在下で培養された野生型FGFR4タンパク質を過剰発現する細胞に比較した、増殖速度の減少、アポトーシスの増加及び/又は細胞移動の減少の決定
を含む改変したFGFRタンパク質及びEGFRタンパク質の間の相互作用を阻害する剤を同定する方法。
【請求項30】
前記の改変したFGFR4タンパク質が配列番号5のタンパク質であり、前記の野生型FGFRタンパク質が配列番号1のタンパク質である請求項29記載の方法。
【請求項31】
細胞がMDA−MB−231細胞である請求項29又は30記載の方法。
【請求項32】
増殖速度がMTT増殖アッセイにより決定され、アポトーシスがFACS分析により決定され、かつ/又は移動がボイデンチャンバーアッセイを用いて決定される請求項29から31のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
EGFR関連疾患の治療のためのFGFR4の阻害剤。
【請求項34】
EGFR関連疾患が、EGF及び/又はTGF−アルファ媒介疾患である、請求項33記載のFGFR4の阻害剤。
【請求項35】
EGFR関連疾患が、癌、好ましくは乳癌又は肝細胞癌である、請求項33又は34記載のFGFR4の阻害剤。
【請求項36】
阻害剤が、FGFR4に対して指向した抗体、FGFR4に対して指向したアプタマー、FGFR4に対して指向したアンチセンスオリゴヌクレオチド、及び、FGFR4に対して指向したRNAi分子からなる群から選択される請求項33から35のいずれか1項記載のFGFR4の阻害剤。
【請求項37】
FGFR4タンパク質が、ヒトFGFR4タンパク質、特に配列番号2又は配列番号3のヒトFGFR4タンパク質である、請求項33から36のいずれか1項記載のFGFR4の阻害剤。
【請求項38】
FGFR4タンパク質が、改変したヒトFGFR4タンパク質であり、その際、この改変が、配列番号2又は配列番号3のアミノ酸位置388でのアミノ酸グリシンのアミノ酸置換であり、好ましくはアルギニンでの置換である、請求項33から36のいずれか1項記載のFGFR4の阻害剤。
【請求項39】
(a)EGFR遺伝子又はタンパク質の発現の決定;及び/又は
(b)FGFR4タンパク質及びEGFRタンパク質の間での相互作用の決定;及び/又は
(c)TGF−アルファ及び/又はEGFによるEGFRタンパク質の刺激の決定;及び/又は
(d)FGFR4が、野生型タンパク質又は遺伝子、特に配列番号2又は配列番号3の野生型タンパク質又は遺伝子又は改変したヒトFGFR4タンパク質であるかの決定、その際、前記改変が、配列番号2又は配列番号3のアミノ酸位置388でのアミノ酸グリシンのアミノ酸置換であり、好ましくはアルギニンでの置換である
による深刻な癌プログレッションの診断方法であって、
その際、EGFR遺伝子又はタンパク質の発現の上方調節;TGF−アルファ及び/又はEGFによるEGFRタンパク質の刺激の上方調節;及び/又は前記の改変したヒトFGFR4タンパク質の存在が、深刻な癌プログレッションの指標である
深刻な癌プログレッションの診断方法。

【図8】
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【図9−1】
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【図9−2−1】
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【図9−2−2】
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【図9−3】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2−1】
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【図13−2−2】
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【図13−2−3】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図14−3】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図15−3】
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【図16】
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【図17−1】
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【図17−2−1】
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【図17−2−2】
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【図17−2−3】
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【図17−2−4】
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【図18−1】
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【図18−2−1】
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【図18−2−2】
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【図18−3】
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【図19−1】
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【図19−2−1】
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【図19−2−2】
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【図20−1】
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【図20−2−1】
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【図20−2−2】
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【図20−3−1】
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【図20−3−2】
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【図21】
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【図22−1】
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【図22−2】
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【図22−3】
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【図22−4】
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【図22−5】
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【公表番号】特表2012−503978(P2012−503978A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528367(P2011−528367)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062648
【国際公開番号】WO2010/034845
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(390040420)マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ (54)
【氏名又は名称原語表記】Max−Planck−Gesellschaft zur Foerderung der Wissenschaften e.V.
【Fターム(参考)】