説明

ヒンジ付き整形外科用人工関節

【課題】荷重伝達を支持するヒンジ機構の必要性を低減または除去することにより、ヒンジ機構の設置目的を主に安定性提供に向ける。
【解決手段】ヒンジ付きの整形外科用膝人工関節は、大腿骨コンポーネントと、脛骨コンポーネントと、大腿骨コンポーネントと脛骨コンポーネントとの間に配置されたベアリングコンポーネントとを含む。大腿骨コンポーネントの、脛骨コンポーネントに対する運動を制約するように、ヒンジ組立体が大腿骨コンポーネントに連結される。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本開示は、概して整形外科用人工関節に関し、より詳細には、膝人工関節(knee prosthesis)に関する。具体的には、本開示は、ヒンジ付き整形外科用人工関節に関する。
【0002】
〔背景〕
ヒトの天然の膝部の運動(例えば、屈曲および伸長)は、大腿骨および脛骨の運動を伴う。具体的には、屈曲および伸長時において、大腿骨の遠位端部および脛骨の近位端部は、一連の複雑な運動を通じて相互に関節接合する。損傷(例えば、外傷)または疾病は、膝部の骨、関節軟骨および靱帯を劣化させる場合があり、天然の膝が上述したように機能する能力に最終的に影響が生じ得る。その結果、膝人工関節が開発され、大腿骨および脛骨の外科的に調製された端部中へ植え込まれている。
【0003】
人工膝関節置換術用の典型的な膝人工関節は、例えば、患者の脛骨に連結された脛骨コンポーネントまたは脛骨トレイと、患者の大腿骨に連結された大腿骨コンポーネントと、ベアリングコンポーネントとを含む。このベアリングコンポーネントは、脛骨トレイと大腿骨コンポーネントとの間に配置されており、大腿骨コンポーネントの顆を収容するためにベアリング表面を含む。しかし、拘束された膝人工関節は、患者の側副靱帯が損傷された場合には使用可能であるものの、他の場合において当該膝部に適切な支持および安定性を提供出来ない。このような拘束された膝人工関節の1つとして、ヒンジ付き膝人工関節がある。このヒンジ付き膝人工関節は典型的には、大腿骨コンポーネントを、ベアリングコンポーネントおよび脛骨コンポーネントのうち1つまたは両方に連結して、これらの膝人工関節のコンポーネントを拘束し、かつ相互に機械的に結合するためのヒンジ機構を含む。そのため、ヒンジ付き膝人工関節は典型的には、関節荷重の多くを、ヒンジを通じて大腿骨から脛骨へと伝達するように動作する。あるいは、付加荷重を大腿骨コンポーネントから脛骨コンポーネントへと伝達するようにベアリングを動作させる場合もある。荷重伝達を支持するヒンジ機構の必要性を低減または除去することにより、ヒンジ機構の設置目的を主に安定性提供に向けることが可能になる。
【0004】
〔概要〕
本発明は、添付の特許請求の範囲に記載の特徴または以下の特徴のうち1つ以上、あるいはその組み合わせを含む。
【0005】
本開示の一態様によれば、ヒンジ付き膝人工関節は、大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントであって、前記大腿骨コンポーネントは本体を含み、前記本体は、内部に形成された細長スロットを有する、大腿骨コンポーネントと、脛骨に連結されるように構成され、かつキャビティを画定する脛骨コンポーネントと、前記大腿骨コンポーネントと前記脛骨コンポーネントとの間に配置されたベアリングコンポーネントとを含む。前記膝人工関節のヒンジ組立体は、ピストンおよびヒンジピンを含む。前記ヒンジピンは、前記脛骨コンポーネントのキャビティ内に受け入れられるように構成され、前記ヒンジピンは、前記ピストン中に形成されたボア、および前記大腿骨コンポーネントの細長スロットの双方を通じて受け入れられる。
【0006】
例示的に、前記ベアリングコンポーネントは孔を含み、前記ピストンは、前記ベアリングコンポーネントの孔を通じて受け入れられる。さらに例示的に、前記細長スロットは、前記大腿骨コンポーネントの第1の側壁中に形成され得、第2の細長スロットは、前記大腿骨コンポーネントの第2の側壁中に形成され得る。前記第1の側壁および第2の側壁は、互いに空間を空けて配置され、前記ヒンジピンは、前記第1の細長スロットおよび第2の細長スロットそれぞれを通じて受け入れられることができる。さらに、前記ピストンは、ヘッドおよび前記ヘッドに連結されたシャフトを含み得、前記ピストンのボアは、前記ピストンのヘッドを通して形成されようになっており、前記ピストンのヘッドは、前記大腿骨コンポーネントの前記第1の側壁と、前記第2の側壁との間に配置されるようになっている。
【0007】
例示的に、前記ヒンジピン、前記大腿骨コンポーネント、および前記ピストンはそれぞれ、金属から作製されてよく、前記ベアリングコンポーネントはポリマーから作製されてよい。前記ヒンジ組立体のポリマーベアリングは、前記ピンに連結され得、かつ、前記ピンと、前記スロットを画定する大腿骨コンポーネントの一部分または側壁との間に配置され得る。
【0008】
前記大腿骨コンポーネントに連結され、前記細長スロットを被覆するようにスロットカバーが設けられ得る。
【0009】
例示的に、前記細長スロットは、概して直線状または曲線状であり得る。前記細長スロットの後方端部は、前記細長スロットの前方端部から上方に配置され得る。
【0010】
本開示の別の態様によれば、ヒンジ付き膝人工関節は、大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントであって、前記大腿骨コンポーネントは、内部に形成された細長スロットを含む、大腿骨コンポーネントと、脛骨に連結されるように構成された脛骨コンポーネントと、前記大腿骨コンポーネントと前記脛骨コンポーネントとの間に配置されたベアリングコンポーネントとを含む。前記人工関節のヒンジ組立体は、前記大腿骨コンポーネントの細長スロットを通じて受け入れられたヒンジピンを含む
【0011】
例示的に、前記細長スロットは曲線状であり得る。よって、前記細長スロットの曲率は、前記大腿骨コンポーネントの顆状部材の曲率に追従し得る。あるいは、前記細長スロットは概して直線状であり得る。
【0012】
さらに例示的に、前記ヒンジ組立体は、内部に形成されたボアを有するピストンを含み得、前記ヒンジピンは前記ボアを通じて受け入れられるようになっている。前記ピストンは、前記ボアを画定するヘッドと、ステムとを含み得る。前記ステムは、前記ヘッドに連結され、かつ、前記脛骨コンポーネントの細長キャビティ内に受け入れられる。前記ピストンは、前記ベアリングコンポーネント中に形成された孔を通じて受け入れられ得る。
【0013】
あるいは、前記ベアリングコンポーネントは、前記ベアリングの内側ベアリング表面と外側ベアリング表面との間に配置されたとげ状突起(spine)を含み得る。よって、前記ヒンジピンは、前記とげ状突起中に形成されたボアを通じて受け入れられ得る。さらに例示的に、前記大腿骨コンポーネントは、前記細長スロットを定めるように形成された第1の側壁と、第2の細長スロットを定めるように形成された第2の側壁とを含み得、前記ベアリングコンポーネントのとげ状突起は、前記大腿骨コンポーネントの第1の側壁と第2の側壁との間に配置されるようになっている。前記大腿骨コンポーネントおよび前記ベアリングコンポーネントは、前記脛骨コンポーネントのステムを通る軸を中心として、前記脛骨コンポーネントに対して共に回転するように、構成され得る。
【0014】
本開示のさらに別の態様によれば、第1の骨と第2の骨との間の関節接合に対応するヒンジ付き人工関節は、前記第1の骨に取り付けられるように構成された第1のコンポーネントと、前記第2の骨に取り付けられるように構成された第2のコンポーネントとを含む。前記第1のコンポーネントは、細長スロットを定めるように形成された本体を含む。前記関節のベアリングコンポーネントは、前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントとの間に配置され、前記関節のヒンジ組立体は、前記第1のコンポーネントのスロット内に受け入れられるヒンジピンを含む。
【0015】
本開示の上記の特徴および他の特徴は、現在考えられる、本開示を実行する最良の形態を例示する例示的な実施形態の以下の詳細な説明および添付図面を鑑みれば、当業者にとって明らかとなろう。
【0016】
以下の詳細な説明は、添付図面を特に参照する。
【0017】
〔図面の詳細な説明〕
本開示の概念は、多様な改変および別形態が可能であるが、その特定の例示的実施形態は例として図面中に図示され、本明細書中、これらの実施形態について詳細に説明する。しかしながら、本開示は、開示された特定の形態に限定されることを意図しておらず、本開示は、添付の特許請求の範囲によって定められるような本発明の趣旨および範囲内の改変、均等物および代替物全てを網羅することが意図される、ことが理解されるべきである。
【0018】
ここで図1および図2を参照すると、ヒンジ付き人工関節デバイス、例示的にはヒンジ付き膝人工関節10は、大腿骨コンポーネント12と、ヒンジ組立体14と、ベアリングコンポーネント16と、脛骨コンポーネントまたはトレイ18とを含む。以下により詳細に説明するように、ヒンジ組立体14は、大腿骨コンポーネント12に旋回可能に連結され、脛骨トレイ18中に受け入れられ、これにより、大腿骨コンポーネント12とベアリングコンポーネント16との間の相対運動を安定させる。さらに、ヒンジ組立体14は、大腿骨コンポーネント12の細長ガイドスロット20を通じて受け入れられ、これにより、ベアリングコンポーネント16および脛骨コンポーネント18双方に対する大腿骨コンポーネント12の運動を誘導する。大腿骨コンポーネント12がスロット20およびヒンジ組立体14によって誘導されて運動することにより、屈曲位置と伸長位置との間の、膝人工関節10の運動時に、大腿骨コンポーネント12からベアリングコンポーネント16にわたって、さらには脛骨トレイ18に、重量荷重をさらに均等に分散する。
【0019】
やはり図1および図2を参照すると、脛骨トレイ18はプラットホーム30を含む。このプラットホーム30からは、ステム32が延びる。脛骨用ステム32は、患者の脛骨の調製された端部(図示せず)中に植え込まれるように、構成される。脛骨トレイ18の細長い円筒型キャビティ34が、プラットホーム30を通じて、かつ脛骨トレイ18のステム32内に形成される。例示的なベアリングコンポーネント16は、プラットホーム30の概して平坦な上部表面38上に載るように構成された、概して平坦な底部表面36を含む。例示的に、ベアリングコンポーネント16は、軸40周囲において脛骨トレイ18に対して回転可能である。この軸40は、脛骨トレイ18の細長い円筒型キャビティ34を通じて延びる。
【0020】
ベアリングコンポーネント16は、外側ベアリング表面42および内側ベアリング表面44をさらに含む。これらのベアリング表面42および44は、以下に説明するように、大腿骨コンポーネント12の外側顆表面52および内側顆表面54とそれぞれ関節接合するように、構成される。ベアリングコンポーネント16は、ベアリングコンポーネント16の本体を通じて延びる孔またはスロット60をさらに定める。例示的に、スロット60は、ベアリングコンポーネント16のベアリング表面42とベアリング表面44との間に配置されており、脛骨トレイ18の円筒型キャビティ34と整列するように、構成される。スロット60は、以下により詳細に説明するように、このスロット60を通してヒンジ組立体14の一部をスライド可能に受け入れる。例示的に、ヒンジ組立体14およびスロット60は、図1に示す軸40周囲におけるヒンジ組立体14の、ベアリングコンポーネント16に対する軸方向回転を回避するように成形される。よって、ヒンジ組立体14およびベアリングコンポーネント16は、軸40周囲において脛骨トレイ18に対して共に回転する。さらに以下に説明するように、大腿骨コンポーネント12もヒンジ組立体14およびベアリングコンポーネント16と共に軸40周囲において回転することができるように、ヒンジ組立体14は大腿骨コンポーネント12に連結される。
【0021】
大腿骨コンポーネント12は、患者の大腿骨の調製された端部(図示せず)中に植え込まれるように構成され、かつ、患者の天然の大腿骨顆(図示せず)の構成を模倣するように構成される。よって、大腿骨コンポーネント12は、本体56を含む。この本体56は、空間を空けて配置された一対の外側顆状部材および内側顆状部材58を有する。これらの外側顆状部材および内側顆状部材58はそれぞれ、ベアリング16と関節接合するように形成された外側顆表面52および内側顆表面54それぞれを含む。これらの外側曲線状表面52および54はそれぞれ、曲線状セグメントS1、S2、およびS3を含む。例えば図9中の同様の大腿骨コンポーネント312に関して図式的に示すように、これらの曲線状セグメントS1、S2、およびS3はそれぞれ、半径R1、R2およびR3を有する。これらのセグメントは、平滑な表面を形成する。この平滑な表面において、隣接する表面セグメント間の界面における半径は、共通接線を有する。よって、外側顆表面52および内側顆表面54は、天然の大腿骨の顆を模倣するように構成される(例えば湾曲する)。大腿骨コンポーネント12の前方膝蓋フランジ57は、顆状部材58の前方部分と一体化され、かつ相互接続される。
【0022】
大腿骨コンポーネント12のカムボックス62が、顆状部材58の間に配置され、かつ、顆状部材58に連結される。例示的に、カムボックス62は、第1の(または外側)側壁70と、第2の(または内側)側壁72とを含む。これらの側壁は、大腿骨コンポーネント12の本体56に連結され、かつ、この本体56から突出する。例示的に、第1の側壁70および第2の側壁72はそれぞれ、対応する外側および内側顆状部材58と一体形成される。各側壁70および72は、カムボックス62の上側壁74を画定し、カムボックス62の開口部76が、側壁70と側壁72との間に設けられる。
【0023】
図1および図2に示すように、細長スロットまたは溝20が、各側壁70および72中に形成される。例示的に、各細長スロット20は、各スロット20の前方/下側の前端部から各スロット20の後方/上側の後端部に向かって延びる想像線を定めるように、角度付けされる。換言すれば、各スロット20の長さ方向軸は、それぞれ上方に角度付けされ、これにより、各スロット20の後方端部は、各スロット20の前方端部よりも高く配置されるようになっている。さらに、大腿骨コンポーネント12のスロット20は、例えば、曲線状ではなく概して直線状である。しかし、曲線状であるスロット20についても、本開示の範囲内である。さらに、これらのスロット20が大腿骨コンポーネント12の他の特徴に対して特定の長さおよび幅を持つ様子が図示されているが、任意の適切な長さおよび幅を有するスロットを提供することも、本開示の範囲内である。以下により詳細に説明するように、ヒンジ組立体14の一部分は、カムボックス62に連結され、カムボックス62の溝20に沿ってスライドする。
【0024】
図示はしないが、大腿骨コンポーネント12、および図中に図示しかつ本明細書中に説明するような他の大腿骨コンポーネントはそれぞれ、概して顆状部材58の間の位置において本体56に連結されたロッド支持部(図示せず)を含むことが理解されるべきである。このロッド支持部は、例えば人工膝関節置換術外科手術を受けている患者の調製された大腿骨へ植え込むための安定化ロッド(図示せず)を受け入れるように、形成される。よって、図示しかつ本明細書に記載した大腿骨コンポーネントはそれぞれ、大腿骨コンポーネントを患者の大腿骨に連結するためにこのようなロッド支持部および/または安定化ロッドを含む。
【0025】
天然骨と係合する膝人工関節10のコンポーネント、例えば、大腿骨コンポーネント12および脛骨トレイ18は、例えば生体適合性金属、例えば、チタンまたはコバルトクロム合金)から構成され得る。これらのコンポーネントの骨係合表面は、当該コンポーネントの当該骨へのセメント固定を容易化するような質感であってもよい。このような表面に骨成長を促進するように多孔質コーティングを施して、永久固定をしてもよい。あるいは、ベアリングコンポーネント16は、ベアリングコンポーネント16と、隣接する大腿骨コンポーネント12および脛骨コンポーネント18との間の平滑な関節接合および回転を可能とするような材料から構成されてよい。このような材料の1つとして、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)がある。もちろん、ベアリング16を他の適切なポリマーから作ってもよい。
【0026】
人工関節10のヒンジ組立体14は、ヘッド82およびヘッド82に連結されたシャフト84を有する金属ピストン80を含む。このヘッド82は、2つの側壁、例示的には外側側壁86および内側側壁88と、上側壁90と、後側壁92と、前側壁94とを含む。例示的に、前側壁94と上側壁90との間に曲線状表面96が画定される。ボア98がピストン80のヘッド82を通して形成され、外側側壁86から内側側壁88へと延びる。換言すれば、ボア98は、ピストン80のヘッド82を通って、内側方向/外側方向に延びる。シャフト84は、概して円筒形を定め、ベアリングコンポーネント16の孔60を通って、脛骨トレイ18の細長い円筒型キャビティ34中へと受け入れられる。ピストン80は、任意の適切な金属、例えば、チタンまたはコバルトクロム合金から作製され得る。あるいは、ピストン80を任意の適切なポリマーから作ってもよい。
【0027】
ヒンジ組立体14は、ピストン80のヘッド82中に形成されたボア98を通じて受け入れられるヒンジピン100をさらに含む。図2に示すように、例えば、ヒンジピン100も、大腿骨コンポーネント12の側壁70および72内に形成された第1のスロットおよび第2のスロット20を通して受け入れられ、これにより、以下に、より詳細に説明するように、ピストン80を大腿骨コンポーネント12に連結させる。例示的なヒンジピン100は、ヘッドまたはキャップ102と、キャップ102に連結された本体104とを含む。この本体104は、概して円筒形を定める。キャップ102の反対側において、ピン100本体の104は、その本体の内部に形成されたスロット106を含み、ピン100の脚部または外側リム108が本体104に連結される。
【0028】
さらに例示的に、ヒンジピン100は金属である。しかし、他の適切な材料、例えば、ポリマーから作製されたヒンジピン100も、本開示の範囲内である。ヒンジ組立体14の第1のベアリング110および第2のベアリング112は、ヒンジピン100の外側端部(すなわち、キャップ102および外側リム108)に連結される。ベアリング110および112は、ポリマーから作製され、例示的に、金属ヒンジピン100と金属大腿骨コンポーネント12との間でベアリング表面を提供するように動作する。換言すれば、ベアリング110および112により、ヒンジピン100と、カムボックス62の側壁70および72との間の摩擦および摩耗が低減する。これらの側壁70および72は、ヒンジピン100が並進運動するスロット20を定める。
【0029】
人工関節10は、図1に示すようにスロットカバー114をさらに含む。これらのスロットカバー114は、大腿骨コンポーネント12のスロット20中に嵌めこまれ、スロット20を患者の周囲骨(図示せず)から保護する。各スロットカバー114は、概して楕円形の本体116と、各本体116の対向端部に連結された2個のフランジ118とを含む。例示的には、フランジ118は、曲線状、または概して「C字型形状」であり、各スロット20中に嵌め込まれるように設けられ、これにより、スロットカバー114を大腿骨コンポーネント12に連結させる。上述したように、スロットカバー114は、患者の天然の周囲の骨から開口スロット20を被覆または保護するように動作し、これにより、患者の骨がスロット20中に成長する事態の回避を支援する。よって、これらのスロットカバー114は、スロット20中への骨成長を回避または低減するように、動作する。
【0030】
上述したように、ヒンジ組立体14のピストン80のステム84は、ベアリングコンポーネント16の孔60を通って、脛骨トレイ18の細長い円筒型キャビティ34中へと受け入れられる。ピストン80のヘッド82は、大腿骨コンポーネント12の側壁70と側壁72との間のカムボックス62内に配置され、ヘッド82のボア98は、大腿骨コンポーネント12の各側壁70および72中に形成されたスロット20と整列するようになっている。ヒンジピン100は、大腿骨コンポーネント12の外側壁70中に形成されたスロット20と、ヘッド82のボア98と、大腿骨コンポーネント12の内側壁72中に形成されたスロット20とを通して受け入れられ、これにより、ヒンジ組立体14のピストン80を大腿骨コンポーネント12と連結させる。上述したように、ベアリング110および112は、ピン100と、細長スロットまたはガイド溝20を定める側壁70および72との間に配置される。
【0031】
人工関節10の、屈曲位置と伸長位置との間での運動時、ピストン80は、脛骨トレイ18の円筒型キャビティ34内において上方および下方に移動可能である。図2を参照すると、例えば、ヒンジ付き膝人工関節10は軸方向位置にあり、これにより、脛骨トレイ18および大腿骨コンポーネント12にそれぞれ連結された患者の脛骨および大腿骨(図示せず)が伸長する。換言すれば、患者の脚部(図示せず)は概して直線状である。この伸長位置において、ヒンジ組立体14のピン100は、大腿骨コンポーネント12の各スロット20の下側の前方部分内に概して配置される。ヒンジ付き膝人工関節10が屈曲すると(すなわち、患者の膝が曲がると)、ヒンジ組立体14のピン100は、大腿骨コンポーネント12に対して、スロット20に沿って並進運動する。図2中に透視図で示すように、例えば、ヒンジ付き膝人工関節10が屈曲位置にある様子が図示され、ピストン80は、ベアリングコンポーネント16および脛骨トレイ18に対して下方に移動するようになっている。さらに、ヒンジ組立体14のヒンジピン100は、大腿骨コンポーネント12の側壁70および72中に形成されたスロット20に沿って並進運動して、各スロット20の上方の後方端部に配置される。
【0032】
人工関節10が伸長位置と多様な屈曲位置との間を移動するにつれて、ピストン80は、脛骨トレイ18の円筒型キャビティ34内を必要に応じて上下移動することができる。人工関節10が伸長位置と屈曲位置との間を移動するにつれて、大腿骨コンポーネント12の細長スロット20は、大腿骨コンポーネント12およびヒンジ組立体14の、ベアリングコンポーネント16に対する運動を誘導する。
【0033】
大腿骨コンポーネント12が屈曲および伸長するにつれ、ヒンジ組立体14のヒンジピン100が付勢され、大腿骨コンポーネント12のカムボックス62中に形成された細長スロット20に沿って並進運動する。今度は、ヒンジ組立体14のピストン80は、大腿骨コンポーネント12が屈曲および伸長するにつれ、脛骨トレイ18およびベアリングコンポーネント16に対して上下移動する。上述したように、スロット20により、大腿骨コンポーネント12がベアリングコンポーネント16上で関節接合することが可能となり、これにより、ベアリングコンポーネント16は比較的静止状態のままであり、このような関節接合の間には前方方向または後方方向に、顕著に移動しないようになる。換言すれば、大腿骨コンポーネント12の回転軸は固定されていない。それどころか、大腿骨コンポーネント12のスロット20により、スロット20に沿って並進運動するヒンジピン100周囲における大腿骨コンポーネント12の回転の可変軸が得られる。ベアリングコンポーネント16上での大腿骨コンポーネント12のこのような回転運動およびスライド運動は、患者の天然の解剖学的構造の動作および運動を模倣するように機能する。大腿骨コンポーネント12は、ベアリングコンポーネント16上を前方および後方にスライドして、大腿骨コンポーネント12の顆表面52および54と、ベアリングコンポーネント16のベアリング表面42および44との間の関節接合を維持することができるため、ベアリングコンポーネント16の、脛骨トレイ18に対する任意の前方/後方運動が低減する。換言すれば、人工関節10が屈曲位置と伸長位置との間で移動するにつれ、ベアリングコンポーネント16は、前方および後方に若干移動することができる。しかし、ベアリングコンポーネント16の前方/後方の動きの低減は、患者の天然の解剖学的構造の動作および動きをより自然に複製するように機能する。
【0034】
さらに、回転の可変軸または回転の移動軸の周囲における、ベアリングコンポーネント16に対する大腿骨コンポーネント12のこのような回転運動およびスライド運動は、人工関節10が屈曲位置と伸長位置との間で移動するにつれ、人工関節10全域にわたる重量荷重を均等に分散させる働きをする。重量または応力荷重は、人工関節10の屈曲位置と伸長位置との間の動きまたは運動の全範囲において、大腿骨コンポーネント12からベアリングコンポーネント16にわたって均等に伝達されるか、または分散される。例示的に、人工関節10は、およそ145度の屈曲角度を持つことができる。上述したように、膝人工関節10のベアリングコンポーネント16は、付加される荷重の大部分または全体を大腿骨コンポーネント12から脛骨トレイ18へと伝達するように動作する。よって、ヒンジ組立体14は、膝人工関節10を安定させ、膝人工関節10の屈曲位置および伸長位置を通じた動きを誘導するように主に動作する。もちろん、ヒンジ組立体14は、コンポーネント全域にわたるいくらかの荷重を伝達するように動作してもよい。ヒンジピン100がスロット20を通じて並進運動する際に回転の可変軸を提供することにより、動きの範囲全体において、ベアリングコンポーネント16にわたってかかる重量荷重を均等に分散させることができる。
【0035】
ここで図3を参照すると、別のヒンジ付き膝人工関節210が提供される。図1および図2に示すヒンジ付き膝人工関節10と同様に、ヒンジ付き膝人工関節210は、大腿骨コンポーネント212と、ベアリングコンポーネント216と、脛骨トレイコンポーネント218と、ヒンジ組立体214とを含む。人工関節210の大腿骨コンポーネント212は、人工関節10の大腿骨コンポーネント12と同様である。よって、類似のコンポーネントを示すために、類似の参照符号が用いられている。詳細には、大腿骨コンポーネント212は、大腿骨コンポーネント212の側壁70および72内に形成された細長スロット20を含む。
【0036】
人工関節210のベアリングコンポーネント216は、プラットホーム220と、ステム222とを含む。このステム222は、プラットホーム220の底部表面236に連結されており、かつ、プラットホーム220から下方に延びるように構成される。例示的に、プラットホーム220の上側表面は、ベアリングコンポーネント216のベアリング表面42および44を画定する。概して円筒型のボア260は、ベアリングコンポーネント216のプラットホーム220およびステム222を通して形成され、以下により詳細に説明するように、ヒンジ組立体214の一部分をこのボア260を通して受け入れる。
【0037】
人工関節210の脛骨トレイ218は、プラットホーム230を含む。このプラットホーム230からは、ステム232が延びている。脛骨用ステム232は、患者の脛骨の調製された端部(図示せず)中に植え込まれるように、構成される。例示的なベアリングコンポーネント216の概して平坦な底部表面236は、プラットホーム230の概して平坦な上部表面238の上に載るように、構成される。ベアリングコンポーネント216のステム222は、脛骨トレイ218中に形成された細長い円筒型キャビティ234内に受け入れられる。ベアリングコンポーネント216は、脛骨トレイ218のキャビティ234を通って延びる軸40周囲において、脛骨トレイ218に対して回転することができる。
【0038】
上述したヒンジ組立体14と同様に、人工関節210のヒンジ組立体214は、大腿骨コンポーネント212に旋回可能に連結され、ベアリングコンポーネント216を通じてかつ脛骨トレイ218内に受け入れられ、これにより、大腿骨コンポーネント212とベアリングコンポーネント216との間の相対運動を安定させる。さらに、上述したように、例示的な人工関節210の大腿骨コンポーネント212は、ガイドスロット20を含む。これらのガイドスロット20は、人工関節210の大腿骨コンポーネント212の動きの範囲を誘導および限定し、かつ、ヒンジ組立体214のヒンジピン100を通じて回転の可変軸を提供する。同様に、この回転の可変軸により、大腿骨コンポーネント212がベアリングコンポーネント216上でスライドおよび回転することが可能となり、これにより、人工関節の屈曲位置と伸長位置との間の移動の際、大腿骨コンポーネント212からベアリングコンポーネント216にわたって、かつ脛骨トレイ218への重量荷重の均等伝達が支援される。
【0039】
ヒンジ組立体214は、金属ピストン280を含む。この金属ピストン280は、ヘッド282と、ヘッド282に連結されたシャフト284とを有する。例示的に、ヘッド282は、2つの側壁286と、角度付き上側壁290と、後方曲線状部分294において角度付き上側壁290に接続された角度付き底部壁292とを含む。例示的に、内側/外側方向に延びるボア298は、ピストン280のヘッド282を通して形成され、側壁286間で延びる。シャフト284は、概して円筒形を定め、ベアリングコンポーネント216の円筒型ボア260を通じて脛骨トレイ218の円筒型キャビティ234中に受け入れられる。
【0040】
ヒンジ組立体114は、ピストン280のヘッド282中に形成されたボア298を通して受け入れられるヒンジピン100をさらに含む。図3に示すように、例えば、ヒンジピン100は、大腿骨コンポーネント212の側壁70および72内に形成されたスロット20を通しても受け入れられ、これにより、以下により詳細に説明するように、ヒンジ組立体214のピストン280を大腿骨コンポーネント212に連結させる。例示的に、ヒンジ組立体114のヒンジピン100は、ヒンジ組立体14のヒンジピン100と同一または同様である。よって、類似のコンポーネントを示すために、類似の参照符号が用いられている。ヒンジ組立体214のブッシュ110および112は、ヒンジピン100の外側端部に連結可能である。さらに、図示していないが、スロットカバー114を設けてスロット20中に嵌め込み、各スロット20の開口部分を周囲の骨から保護することができる。
【0041】
上述したように、ヒンジ組立体214のピストン280のステム282は、ベアリングコンポーネント216のボア260を通って、脛骨トレイ218の細長い円筒型キャビティ234中に受け入れられる。ピストン280のヘッド282は、カムボックス62内において大腿骨コンポーネント212の側壁70と側壁72との間に配置され、ヘッド282のボア298は、大腿骨コンポーネント212の各側壁70および72中に形成されたスロット20と整列するようになっている。ヒンジピン100は、大腿骨コンポーネント212の外側壁70中に形成されたスロット20と、ヘッド282のボア298と、大腿骨コンポーネント212の内側壁72中に形成されたスロット20とを通して受け入れられ、これにより、ヒンジ組立体214のピストン280を大腿骨コンポーネント212と連結させる。
【0042】
ヒンジ組立体214は、ピストン280の遠位端部252に連結されたライナーまたはスリーブ250をさらに含む。詳細には、ピストン280のステム284の遠位端部252は、図3に示すように刻みを付けられ、これにより、ステム284の端部252上のライナー250を保持し、ピストン280とライナー250との相対運動を低減する。例示的に、スリーブ250は概して円筒形状であり、中央ボアを画定する。この中央ボアは、ステム284の遠位端部252をそのボアの中に受け入れるように、形成される。ピストン280のライナー250および遠位端部252は、脛骨トレイ218の円筒型キャビティ234内に受け入れられる。
【0043】
人工関節10のピストン80と同様に、ピストン280は金属であり、ベアリングコンポーネント216の円筒型ボア260および脛骨トレイ218の円筒型キャビティ234双方内において、上下移動する。例示的なライナー250は、例えばポリマー(例えば、UHMWPE)から作製され、そのため、ピストン280のステム284と金属トレイ218との間の金属同士の摩耗を回避するように動作する。上述したように、ライナー250は、ピストン280のステム284の遠位端部252に連結される。よって、人工関節10について上述したように、人工関節210が屈曲位置と伸長位置との間で移動するにつれて、ライナー250はピストン280と共に上下移動する。換言すれば、ライナー250は、ピストン280のステム284に連結されて、脛骨トレイ218およびベアリングコンポーネント216双方に対してピストン280と共に移動する。
【0044】
よって、ライナー250も、ピストン280の上方移動を制限するように動作し、これにより、人工関節210をさらに拘束する。例えば、人工関節210の伸長時においてピストン280が上方に移動するにつれ、ライナー250の上側表面254は、ベアリングコンポーネント216のステム222の下側表面256と接触し得、これにより、ライナー250およびピストン280がトレイ218およびベアリングコンポーネント216に対して上方に移動し続けるのを回避する。ピストン280の上方運動が限定されることで、人工関節210の伸長量がさらに抑制または限定される。例示的に、ライナー250およびベアリングコンポーネント216のステム222は、ピストン280の上方移動および下方移動の量を増加または低減させるようなサイズにすることができる。さらに、ステム222上でのライナー250の位置も、ピストン280の移動量を調節するように変更することができる。
【0045】
ここで図4および図5を参照すると、別の膝人工関節310が設けられる。膝人工関節310は、大腿骨コンポーネント312と、ベアリングコンポーネント316と、脛骨トレイ218と、ヒンジ組立体314とを含む。大腿骨コンポーネント312は、上述した大腿骨コンポーネント12および212と同様である。よって、類似の特徴を示すために、類似の参照符号を用いる。
【0046】
人工関節310のベアリングコンポーネント316は、内反‐外反拘束型(VCC)可動ベアリングコンポーネントであり、膝人工関節310に対する後方安定性を与え、これにより、大腿骨の前方亜脱臼または脱臼の可能性を低減する。天然の膝において、膝の後方安定性、または大腿骨に対する脛骨の後方運動に対する抵抗は、後十字靱帯によって得られている。後十字靱帯に欠陥が発生して生存不可能になった場合、人工関節310などの後方安定化膝人工関節を用いることができる。典型的には、後方安定化膝人工関節のベアリングコンポーネントは、とげ状突起(spine)、例えば、ベアリングコンポーネント316の関節顆42と関節顆44との間のとげ状突起350を含む。人工関節310の屈曲時、とげ状突起の後方表面は、大腿骨コンポーネント312後方面上のカムと相互作用して、人工関節310に後方安定性を提供する。
【0047】
患者が側副靱帯の欠陥を有する場合、内反/外反拘束型(VVC)インプラントを用いることができる。やはり、この内反/外反の拘束は、リフトオフを回避するか、またはリフトオフに抵抗するように動作する。よって、脛骨とげ状突起350を上昇および強化することにより、かつ、脛骨とげ状突起350の側壁と大腿骨カムボックス62の対応する側壁70および72との間のより強い嵌合を使用することにより、内反/外反の拘束が得られる。とげ状突起350の幅と比較してカムボックス62の幅は、顆のリフトオフの度合いが小さくなるように注意深く選択することができ、これにより、とげ状突起、および骨/インプラント固定界面への過度の力を引き起こすこと無く、膝に対する内反/外反安定性が得られる。
【0048】
ここで図4および図5を参照すると、ベアリングコンポーネント316は、プラットホーム320を含む。このプラットホーム320は、外側ベアリング表面42および内側ベアリング表面44を画定する。ベアリングコンポーネント316は、ステム322をさらに含む。このステム322は、ベアリングコンポーネント316のプラットホーム320の底部表面336に連結され、底部表面336から下方に延びるように配置される。例示的なステム322は概して円錐形状であり、脛骨トレイコンポーネント218の細長い円筒型キャビティ234内に受け入れられるように形成され、ベアリングコンポーネント316のプラットホーム320の底部表面336は、トレイ218のプラットホーム230の上部表面と隣接しかつ係合するようになっている。
【0049】
ベアリングコンポーネント316は、とげ状突起350をさらに含む。このとげ状突起350は、ベアリングコンポーネント316のプラットホーム320に連結され、プラットホーム320から上方に延びるように配置される。詳細には、とげ状突起350は、ベアリングコンポーネント316の外側顆表面42と内側顆表面44との間に配置される。とげ状突起350は、概して垂直の後方表面352、内側表面386および外側表面388と、角度付き前方表面390と、角度付きの上側または上部の表面392とを含む。このとげ状突起の後方表面352は、大腿骨コンポーネント312のカム表面66に対するカム従動子として動作する(これについては、以下により詳細に説明する)。例示的に、とげ状突起350は、とげ状突起350の内側表面386と外側表面388との間に延びるボア398を含む。よって、ボア398は、とげ状突起350を通って内側/外側方向に延びる。以下により詳細に説明するように、人工関節310のヒンジ組立体314は、ベアリングコンポーネント316のとげ状突起350を大腿骨コンポーネント312と機械的に連結または結合させるように、動作する。
【0050】
膝人工関節310の大腿骨コンポーネント312は、上述した大腿骨コンポーネント12および212と同様である。よって、類似のコンポーネントおよび特徴を示すために、類似の参照符号を用いる。さらに、大腿骨コンポーネント312のカムボックス62は、人工関節310が屈曲位置と伸長位置との間で移動するにつれてとげ状突起350の対応するカム表面と相互作用する、前方カム面64および後方カム面66を含む。例えば、とげ状突起350の後方表面352は、人工関節310が屈曲位置にある際に、カムボックス62の後方カム表面66と相互作用することができる。同様に、とげ状突起350の表面390および392は、人工関節310が伸長位置にある際、前方カム表面64と相互作用することができる。
【0051】
さらに、膝人工関節310の大腿骨コンポーネント312は、大腿骨コンポーネント312のカムボックス62の各側壁70および72中に形成された細長い曲線状スロット320を含む。換言すれば、大腿骨コンポーネント12および212のスロット20は概して直線状であるのに対し、図4および図5に示すように、膝人工関節310の大腿骨コンポーネント312のスロット320は曲線状である。
【0052】
一般的に、スロット320の曲線形状は、大腿骨コンポーネント312の各顆52および54の曲線状外側顆表面に追随する。例えば、図9中において、上述および図示したように、各顆状部材58は、外側の曲線状表面52および54を画定する。これらの外側の曲線状表面52および54は、曲線状セグメントS1、S2およびS3をそれぞれ含む。これらの曲線状セグメントS1、S2およびS3はそれぞれ、半径R1、R2およびR3を有する。これらのセグメントS1、S2およびS3は、平滑な表面を形成し、隣接する表面セグメントS1、S2およびS3の間の界面における半径R1、R2およびR3は、共通接線を有するようになっている。例示的に、大腿骨コンポーネント312の各スロット320の曲率は、顆状部材58の曲率に追随し、各スロット320は、複数の曲線状セグメントを同様に含むようになっている。これらのセグメントはそれぞれ、顆状部材58の半径R1、R2およびR3に対応する半径を有する。換言すれば、大腿骨コンポーネント312のカムボックス62中に形成された各スロット320の曲率は、顆状部材58の曲率に追随する。
【0053】
膝人工関節310のヒンジ組立体314は、ヒンジ組立体14および214について上述したヒンジピン100と、ブッシュ110および112と、スロットカバー414とを含む。例示的に、スロットカバー414は、スロット320の曲線形状に対応する曲線状本体416を含む。人工関節310のヒンジ組立体314は、ピストンコンポーネント、例えば、上述したピストン80および280を含まない。しかし、人工関節310のヒンジ組立体314は、大腿骨コンポーネント312をベアリングコンポーネント316と機械的に結合させるように動作し、これにより、大腿骨コンポーネント312の、ベアリングコンポーネント316に対する運動を拘束する。さらに、大腿骨コンポーネント312の曲線状スロット320は、大腿骨コンポーネント312の、ベアリングコンポーネント316に対する運動を誘導するように動作して、大腿骨コンポーネントの回転の可変軸を提供し、膝人工関節310の動きの範囲全体において、大腿骨の重量が均等に分散されることを可能にする。
【0054】
使用時において、脛骨トレイコンポーネント218は、患者の調製された脛骨(図示せず)に固定され、ベアリングコンポーネント316は、脛骨トレイコンポーネント218の細長い円錐形ボア34内に受け入れられる。詳細には、ベアリングコンポーネント316の円錐部またはステム322は、脛骨トレイコンポーネント218の細長い円錐形ボア234内に受け入れられ、これにより、ベアリングコンポーネント316のプラットホーム320の底部表面336は、脛骨トレイコンポーネント218のプラットホーム230の上部表面38と隣接し、係合するようになっている。例示的に、ベアリングコンポーネント316は、膝人工関節310の回転プラットホームとして動作し、これにより、ベアリングコンポーネント316は、脛骨トレイコンポーネント218のステム232を通じて延びる軸40周囲において、脛骨トレイコンポーネント218に対して回転することができるようになっている。換言すれば、例示的なベアリングコンポーネント316の、トレイコンポーネント218に対する回転の動きは、概して妨害または制約されない。しかし、ベアリングコンポーネントの、脛骨トレイコンポーネント218に対する回転の動きを制約すること、および/または脛骨トレイコンポーネントに対して概して回転することができない、固定されたベアリングコンポーネントを提供することももちろん、本開示の範囲内である。同様に、本明細書中に開示のいずれかの膝人工関節に対して、回転で固定されるか、または回転で制約されたベアリングコンポーネントを提供してもよい。
【0055】
ベアリングコンポーネント316のとげ状突起350は、大腿骨コンポーネント312のカムボックス62内に受け入れられ、これにより、とげ状突起350の内側386は、カムボックス62の内側側壁70と隣接し、とげ状突起350の外側388は、カムボックス62の外側側壁72に隣接するようになっている。ヒンジ組立体314のヒンジピン100は、カムボックス62の側壁70および72、ならびにとげ状突起350のボア398を通して受け入れられ、これにより、ベアリングコンポーネント316および大腿骨コンポーネント312を旋回可能に相互に連結する。具体的には、ヒンジピン100は、カムボックス62の各側壁70および72中に形成された細長い曲線状スロット320を通して受け入れられ、かつ、スロット320の曲率によって定められた経路において、スロット320に沿って並進運動することができる。上述したように、スロット320の曲率は、大腿骨コンポーネント312の顆状部材58の曲率と同一または同様である。よって、大腿骨コンポーネント312の、ベアリングコンポーネント316に対する運動は、スロット320によって定められた動きに制約される。
【0056】
従って、使用時においては、膝人工関節310が屈曲位置と伸長位置との間で移動するにつれ、大腿骨コンポーネント312の、ベアリングコンポーネント316に対する運動は、スロット320の形状およびサイズによって少なくとも一部に限定される。換言すれば、大腿骨コンポーネント312をベアリングコンポーネント316に連結させるヒンジピン100は、大腿骨コンポーネント312の動きを、スロット320のサイズおよび形状に効果的に抑制する。大腿骨コンポーネント312のその他の特徴に対して特定の長さ、幅、および曲率を有する例示的なスロット320を図示しているが、任意の適切な長さ、幅、および曲率を有するスロットを提供することは、本開示の範囲内である。
【0057】
いくつかの外科的適用において、大腿骨コンポーネント312をベアリングコンポーネント316にヒンジ止めする必要無く、膝人工関節310の、あるコンポーネントを典型的な内反/外反拘束型膝人工関節として用いることができる。換言すれば、膝人工関節310は、VCC膝人工関節からヒンジ付きのVCC膝人工関節に変換することが可能である。例えば、初期または第1の人工膝関節置換術外科手術において、ベアリングコンポーネント316、またはベアリングコンポーネント316と構造において類似するがベアリングコンポーネント316のとげ状突起350を貫通して形成されるボア398を含まない別のベアリングコンポーネント(図示せず)のいずれかを実施しつつ、図4および図5に示すトレイコンポーネント218、およびスロット付き大腿骨コンポーネント312を用いることができる。いずれの場合においても、外科医は、大腿骨コンポーネント312およびベアリングコンポーネント316を相互に結合するためにヒンジ組立体314を使用しないことを選択できる。このような膝人工関節は、膝人工関節が不安定になるまで、患者の体内の所定位置に存在し得る。
【0058】
この時点において、外科医は、さらなる拘束を付加することにより、膝人工関節の安定性向上のために修正の膝置換外科手術を行うことができる。このようなさらなる拘束は、例えばヒンジ組立体314であってよい。よって、予め植え込まれた膝人工関節のコンポーネントを全て置換するのではなく、当該外科医は、例えば、ヒンジの付いていない膝人工関節と共に用いられる代替のベアリングコンポーネントを除去し、ヒンジ組立体、例えば、ヒンジ組立体314を受け入れるのに適した、ヒンジ付き膝人工関節と共に用いられる別のベアリングコンポーネント、例えば、ベアリングコンポーネント316と置換するだけでよい。ベアリングコンポーネントの交換後は、外科医は、ヒンジ組立体314を取り付けて、ベアリングコンポーネント316を大腿骨コンポーネント312と連結させて、2つのコンポーネント312および316を共に結合させ、大腿骨コンポーネント312の動きを、大腿骨コンポーネント312のスロット320によって定められた動きにさらに限定することができる。もちろん、ベアリングコンポーネント316が患者の体内に既に植え込まれている場合は、外科医は、ヒンジ組立体114をそのコンポーネントに追加して、当該コンポーネントの相対的な動きをさらに制限するだけでよい。
【0059】
ここで図6を参照すると、別の膝人工関節410が設けられている。図4および図5に示す膝人工関節310と同様に、膝人工関節410は、ヒンジ組立体314を含むVVC膝人工関節である。よって、類似のコンポーネントを示すために、類似の参照符号が用いられている。膝人工関節410は、とげ状突起450を有するベアリングコンポーネント417を含む。このとげ状突起450は、膝人工関節310について上記にて開示されたとげ状突起350と異なるように成形されている。例えば、ベアリングコンポーネント417のとげ状突起450は、概して垂直の前方表面490および上部または上側表面492を含む。この上側表面492は、とげ状突起350の上部表面392よりも少ない度数に水平方向から角度を付けられている。とげ状突起450の概して垂直の前方表面452は、一般的に、大腿骨コンポーネント312がベアリングコンポーネント417に対して過度に伸長することをさらに防ぐように動作する。しかし、とげ状突起450は、このとげ状突起を貫通して形成されたボア398も含み、ヒンジ組立体314のヒンジピン100は、ボア398および大腿骨コンポーネント312のスロット320を通して受け入れられ、これにより、大腿骨コンポーネント312、およびベアリングコンポーネント417を共に連結させる。膝人工関節410の動作は、膝人工関節310の動作と同じではないにせよ、大腿骨コンポーネント312の動きが大腿骨コンポーネント312の安定化ボックス62中に形成されたスロット320のサイズおよび形状に限定される点において、類似している。
【0060】
ここで図7を参照すると、図4および図5の膝人工関節310の部分断面および部分断片図が図示されている。例示的に、上述したように、ヒンジ組立体314のヒンジピン100は、ベアリングコンポーネント316のとげ状突起350中に形成されたボア398と、大腿骨コンポーネント312のカムボックス62の側壁70および72中に形成されたスロット320とを通して、受け入れられる。さらに、上述したように、ヒンジピン100は、キャップ102と、本体104と、脚部108とを含む。さらに、スロット106は、ピン100の本体104中に形成され、これにより、ピン100の脚部端部が共に圧縮されるか、または締めつけられることが可能である。さらに、上述したように、ヒンジピン100および大腿骨コンポーネント312はどちらとも金属から作製される。プラスチックまたはポリマー製のベアリング110および112は、ピン100の各キャップ102および脚部108に連結され、大腿骨コンポーネント320のスロット320内に受け入れられて、ピン100とスロット320との間の金属同士の摩耗を回避する。従って、例示的に、ベアリング110および112は、ヒンジピン100を支え、大腿骨コンポーネント312がベアリングコンポーネント316に対して移動するにつれ、スロット320内において並進運動する。
【0061】
さらに上述したように、膝人工関節310(ならびに膝人工関節10、210および410)は、大腿骨コンポーネント312に連結されたスロットカバー414を含み、これにより、スロット320を被覆する。スロットカバー414は、スロット320を被覆するように動作し、これにより、患者の天然の大腿骨の開口スロット320中への骨成長を妨げるか、または低減するようにする。例示的なスロットカバー414は、曲線状本体416、および屈曲可能フランジ118を含む。これらの屈曲可能フランジ118は、図7に示すように、スロット320中に嵌め込むことができる。例示的に、大腿骨コンポーネント312の細長い曲線状スロット320を被覆するように設けられたスロットカバー414は、同様に曲線状であり、大腿骨コンポーネント12および212の細長く概して直線状のスロット20を被覆するように設けられたスロットカバー114は、同様に直線状である。換言すれば、各人工関節のスロットカバーの形状は、各人工関節の大腿骨コンポーネント中に形成されたスロットの形状に対応する。
【0062】
ここで図8を参照すると、別の膝人工関節510の部分断面・部分断片図が示されている。例示的に、膝人工関節510は膝人工関節310と類似している。よって、類似のコンポーネントを示すために、類似の参照符号が用いられている。膝人工関節510のヒンジ組立体514は、図7に示すポリマーベアリング110および112と同様のポリマーベアリング610および612を含む。しかし、ポリマーベアリング610および612は、スリーブ部分616をそれぞれ含み、これにより、ピン100の本体104がベアリング610および612のスリーブ部分616内に受け入れられ、かつこのスリーブ部分616により包囲されるようになっている。ベアリング610および612の双方、ならびにベアリングコンポーネント316は、ポリマーから作製されるため、ベアリングコンポーネント316とベアリング610および612との間にヒンジ組立体514の金属ブッシュ520を設けて、大腿骨コンポーネント312とヒンジ組立体514との間の摩耗を防ぐ。さらに、このようなブッシュおよびベアリングにより、コンポーネントが動かなくなる(locking up)のを回避するか、または軽減することができ、かつ、ヒンジピン100、ベアリングコンポーネント316、および大腿骨コンポーネント312が互いに平滑かつ容易に移動することを可能にすることができる。もちろん、図7に示すヒンジ組立体114、または図8に示すヒンジ組立体514を、本明細書中開示した膝人工関節のいずれかと共に用いることが可能である。
【0063】
本明細書中、膝人工関節10、210、310、410および510を開示してきたが、各人工関節の多様な特徴を、股関節部、肩部、肘部などを置換するためのあらゆる整形外科用人工関節組立体に組み込むことが可能であることが、理解されるべきである。詳細には、本明細書中開示した大腿骨コンポーネントのヒンジ組立体およびスロット付き特徴部は、任意の適切な整形外科用人工関節に組み込まれることができる。例えば、第1の骨と第2の骨との間の関節接合に対応するためのヒンジ付き人工関節は、第1の骨に取り付けられるように構成された第1のコンポーネントと、第2の骨に取り付けられるように構成された第2のコンポーネントとを含み得る。第1のコンポーネントは、本体と、上記本体中に形成された細長スロットとを含み得る。人工関節のベアリングコンポーネントは、第1のコンポーネントおよび第2のコンポーネントと、ヒンジ組立体、例えば、上述したヒンジ組立体14、114、214および314との間に配置され、第1のコンポーネントのスロット内に受け入れられたヒンジピンを含み得る。
【0064】
本開示の概念は、図面および上記記載において詳細に図示および説明されてきたが、このような図示および記載は、性質において限定的なものとしてではなく例示的なものとしてみなされるべきである。例示的な実施形態を図示および記載しただけであり、本開示の趣旨の範囲内に入る変更および改変が全て保護されることが望まれることが理解される。
【0065】
本明細書に記載した装置および方法の多様な特徴から得られる本開示の複数の利点がある。本開示の装置および方法の別の実施形態は、記載の特徴全てを含まなくてもよく、それでも、このような特徴による利点のうち少なくともいくつかから恩恵を受ける点に留意されたい。当業者であれば、本開示の特徴のうち1つ以上を取り入れ、かつ本開示の趣旨および範囲内に収まる装置および方法の、自身の固有の実行を容易に考案することができる。
【0066】
〔実施の態様〕
(1) ヒンジ付き膝人工関節において、
大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントであって、前記大腿骨コンポーネントは本体を含み、前記本体は、前記本体の内部に形成された細長スロットを有する、大腿骨コンポーネントと、
脛骨に連結されるように構成され、かつキャビティを画定する、脛骨コンポーネントと、
前記大腿骨コンポーネントと前記脛骨コンポーネントとの間に配置された、ベアリングコンポーネントと、
ヒンジ組立体であって、
(i)前記脛骨コンポーネントの前記キャビティ内に受け入れられるように構成された、ピストン、ならびに、
(ii)前記ピストン中に形成されたボアおよび前記大腿骨コンポーネントの前記細長スロットを通して受け入れられる、ヒンジピン、
を含む、ヒンジ組立体と、
を含む、ヒンジ付き膝人工関節。
(2) 実施態様1に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ベアリングコンポーネントは、孔を含み、
前記ピストンは、前記ベアリングコンポーネントの前記孔を通して受け入れられる、ヒンジ付き膝人工関節。
(3) 実施態様1に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記大腿骨コンポーネントは、前記細長スロットを含む第1の側壁、および前記第1の側壁から空間を空けて配置され、かつ第2の細長スロットを含む第2の側壁を含み、
前記ヒンジピンは、前記第1の細長スロットおよび前記第2の細長スロットを通して受け入れられる、ヒンジ付き膝人工関節。
(4) 実施態様3に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ピストンは、ヘッド、および前記ヘッドに連結されたシャフトを含み、前記ピストンのボアは、前記ピストンの前記ヘッドを通して形成され、
前記ピストンの前記ヘッドは、前記大腿骨コンポーネントの前記第1の側壁と前記第2の側壁との間に配置される、ヒンジ付き膝人工関節。
(5) 実施態様1に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ヒンジピンは、金属から作製され、
前記大腿骨コンポーネントは、金属から作製され、
前記ピストンは、金属から作製され、
前記ベアリングコンポーネントは、ポリマーから作製される、ヒンジ付き膝人工関節。
(6) 実施態様5に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ヒンジ組立体は、ポリマーベアリングをさらに含み、
前記ポリマーベアリングは、前記ピンに連結され、かつ、前記ピンと、前記スロットを定める前記大腿骨コンポーネントの一部分との間に配置される、ヒンジ付き膝人工関節。
(7) 実施態様1に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ヒンジ組立体は、スロットカバーをさらに含み、
前記スロットカバーは、前記大腿骨コンポーネントに連結され、前記細長スロットを被覆するように構成される、ヒンジ付き膝人工関節。
(8) 実施態様1に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記細長スロットは、概して直線状である、ヒンジ付き膝人工関節。
(9) 実施態様1に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記細長スロットは、前方端部、および前記前方端部から上側に配置された後方端部を含む、ヒンジ付き膝人工関節。
【0067】
(10) ヒンジ付き膝人工関節において、
大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントであって、前記大腿骨コンポーネントの内部に形成された細長スロットを含む、大腿骨コンポーネントと、
脛骨に連結されるように構成された、脛骨コンポーネントと、
前記大腿骨コンポーネントと前記脛骨コンポーネントとの間に配置された、ベアリングコンポーネントと、
前記大腿骨コンポーネントの前記細長スロットを通して受け入れられるヒンジピンを含む、ヒンジ組立体と、
を含む、ヒンジ付き膝人工関節。
(11) 実施態様10に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記細長スロットは、曲線状である、ヒンジ付き膝人工関節。
(12) 実施態様11に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記細長スロットの曲率は、前記大腿骨コンポーネントの顆状部材の曲率と同一である、ヒンジ付き膝人工関節。
(13) 実施態様10に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記細長スロットは、直線状である、ヒンジ付き膝人工関節。
(14) 実施態様10に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ヒンジ組立体は、ピストンであって、前記ピストンの内部にボアが形成された、ピストンをさらに含み、
前記ヒンジピンは、前記ボアを通して受け入れられる、ヒンジ付き膝人工関節。
(15) 実施態様14に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ピストンは、
ヘッドであって、前記ヘッドの内部に形成された前記ボアを有する、ヘッドと、
ステムであって、前記ヘッドに連結され、かつ、前記脛骨コンポーネントの細長キャビティ内に受け入れられる、ステムと、
を含む、ヒンジ付き膝人工関節。
(16) 実施態様15に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ベアリングコンポーネントは、前記ベアリングコンポーネントの内部を貫通して形成された孔を含み、
前記ピストンは、前記孔を通して受け入れられる、ヒンジ付き膝人工関節。
(17) 実施態様10に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ベアリングコンポーネントは、前記ベアリングの内側ベアリング表面と外側ベアリング表面との間に配置されたとげ状突起を含む、ヒンジ付き膝人工関節。
(18) 実施態様17に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ベアリングコンポーネントの前記とげ状突起は、前記とげ状突起の内部を貫通して形成されたボアを含み、
前記ヒンジ組立体のヒンジピンは、前記ボアを通して受け入れられる、ヒンジ付き膝人工関節。
(19) 実施態様17に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記大腿骨コンポーネントは、前記細長スロットを定めるように形成された第1の側壁、および第2の細長スロットを定めるように形成された第2の側壁を含み、
前記ベアリングコンポーネントの前記とげ状突起は、前記大腿骨コンポーネントの前記第1の側壁と前記第2の側壁との間に配置される、ヒンジ付き膝人工関節。
(20) 実施態様10に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記大腿骨コンポーネント、および前記ベアリングコンポーネントは、前記脛骨コンポーネントのステムを通る軸を中心として、前記脛骨コンポーネントに対して共に回転するように、構成される、ヒンジ付き膝人工関節。
【0068】
(21) 第1の骨と第2の骨との間の関節接合に対応するヒンジ付き人工関節において、
前記第1の骨に取り付けられるように構成された第1のコンポーネントであって、前記第1のコンポーネントは、本体、および前記本体中に形成された細長スロットを有する、第1のコンポーネントと、
前記第2の骨に取り付けられるように構成された、第2のコンポーネントと、
前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントとの間に配置された、ベアリングコンポーネントと、
前記第1のコンポーネントの前記スロット内に受け入れられるヒンジピンを含む、ヒンジ組立体と、
を含む、ヒンジ付き人工関節。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、ヒンジ付き膝人工関節の分解斜視図である。
【図2】図2は、図1のヒンジ付き膝人工関節の部分断面側面図であり、ヒンジ付き膝人工関節の大腿骨コンポーネントの動きを透視図で示す。
【図3】図3は、別のヒンジ付き膝人工関節の部分断面側面図である。
【図4】図4は、さらに別のヒンジ付き膝人工関節の分解斜視図である。
【図5】図5は、図4のヒンジ付き人工関節の部分断面側面図である。
【図6】図6は、別のヒンジ付き膝人工関節の分解斜視図である。
【図7】図7は、図4および図5のヒンジ付き膝人工関節の上断面図であり、このヒンジ付き膝人工関節は、ヒンジ付き膝人工関節の大腿骨コンポーネントおよびベアリングコンポーネントを相互に連結させるヒンジピン組立体を含む。
【図8】図8は、別のヒンジ付き膝人工関節の上断面図であり、このヒンジ付き膝人工関節は、別のヒンジピン組立体を含む。
【図9】図9は、大腿骨コンポーネントの線図であり、この大腿骨コンポーネントは、大腿骨コンポーネントの側壁内に形成されたスロットを有し、この大腿骨コンポーネントの側壁は、大腿骨コンポーネントの外側顆表面の曲率に追随する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジ付き膝人工関節において、
大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントであって、前記大腿骨コンポーネントは本体を含み、前記本体は、前記本体の内部に形成された細長スロットを有する、大腿骨コンポーネントと、
脛骨に連結されるように構成され、かつキャビティを画定する、脛骨コンポーネントと、
前記大腿骨コンポーネントと前記脛骨コンポーネントとの間に配置された、ベアリングコンポーネントと、
ヒンジ組立体であって、
(i)前記脛骨コンポーネントの前記キャビティ内に受け入れられるように構成された、ピストン、ならびに、
(ii)前記ピストン中に形成されたボアおよび前記大腿骨コンポーネントの前記細長スロットを通して受け入れられる、ヒンジピン、
を含む、ヒンジ組立体と、
を含む、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項2】
請求項1に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ベアリングコンポーネントは、孔を含み、
前記ピストンは、前記ベアリングコンポーネントの前記孔を通して受け入れられる、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項3】
請求項1に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記大腿骨コンポーネントは、前記細長スロットを含む第1の側壁、および前記第1の側壁から空間を空けて配置され、かつ第2の細長スロットを含む第2の側壁を含み、
前記ヒンジピンは、前記第1の細長スロットおよび前記第2の細長スロットを通して受け入れられる、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項4】
請求項3に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ピストンは、ヘッド、および前記ヘッドに連結されたシャフトを含み、前記ピストンのボアは、前記ピストンの前記ヘッドを通して形成され、
前記ピストンの前記ヘッドは、前記大腿骨コンポーネントの前記第1の側壁と前記第2の側壁との間に配置される、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項5】
請求項1に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ヒンジピンは、金属から作製され、
前記大腿骨コンポーネントは、金属から作製され、
前記ピストンは、金属から作製され、
前記ベアリングコンポーネントは、ポリマーから作製される、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項6】
請求項5に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ヒンジ組立体は、ポリマーベアリングをさらに含み、
前記ポリマーベアリングは、前記ピンに連結され、かつ、前記ピンと、前記スロットを定める前記大腿骨コンポーネントの一部分との間に配置される、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項7】
請求項1に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ヒンジ組立体は、スロットカバーをさらに含み、
前記スロットカバーは、前記大腿骨コンポーネントに連結され、前記細長スロットを被覆するように構成される、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項8】
請求項1に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記細長スロットは、概して直線状である、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項9】
請求項1に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記細長スロットは、前方端部、および前記前方端部から上側に配置された後方端部を含む、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項10】
ヒンジ付き膝人工関節において、
大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントであって、前記大腿骨コンポーネントの内部に形成された細長スロットを含む、大腿骨コンポーネントと、
脛骨に連結されるように構成された、脛骨コンポーネントと、
前記大腿骨コンポーネントと前記脛骨コンポーネントとの間に配置された、ベアリングコンポーネントと、
前記大腿骨コンポーネントの前記細長スロットを通して受け入れられるヒンジピンを含む、ヒンジ組立体と、
を含む、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項11】
請求項10に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記細長スロットは、曲線状である、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項12】
請求項11に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記細長スロットの曲率は、前記大腿骨コンポーネントの顆状部材の曲率と同一である、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項13】
請求項10に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記細長スロットは、直線状である、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項14】
請求項10に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ヒンジ組立体は、ピストンであって、前記ピストンの内部にボアが形成された、ピストンをさらに含み、
前記ヒンジピンは、前記ボアを通して受け入れられる、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項15】
請求項14に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ピストンは、
ヘッドであって、前記ヘッドの内部に形成された前記ボアを有する、ヘッドと、
ステムであって、前記ヘッドに連結され、かつ、前記脛骨コンポーネントの細長キャビティ内に受け入れられる、ステムと、
を含む、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項16】
請求項15に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ベアリングコンポーネントは、前記ベアリングコンポーネントの内部を貫通して形成された孔を含み、
前記ピストンは、前記孔を通して受け入れられる、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項17】
請求項10に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ベアリングコンポーネントは、前記ベアリングの内側ベアリング表面と外側ベアリング表面との間に配置されたとげ状突起を含む、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項18】
請求項17に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記ベアリングコンポーネントの前記とげ状突起は、前記とげ状突起の内部を貫通して形成されたボアを含み、
前記ヒンジ組立体のヒンジピンは、前記ボアを通して受け入れられる、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項19】
請求項17に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記大腿骨コンポーネントは、前記細長スロットを定めるように形成された第1の側壁、および第2の細長スロットを定めるように形成された第2の側壁を含み、
前記ベアリングコンポーネントの前記とげ状突起は、前記大腿骨コンポーネントの前記第1の側壁と前記第2の側壁との間に配置される、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項20】
請求項10に記載のヒンジ付き膝人工関節において、
前記大腿骨コンポーネント、および前記ベアリングコンポーネントは、前記脛骨コンポーネントのステムを通る軸を中心として、前記脛骨コンポーネントに対して共に回転するように、構成される、ヒンジ付き膝人工関節。
【請求項21】
第1の骨と第2の骨との間の関節接合に対応するヒンジ付き人工関節において、
前記第1の骨に取り付けられるように構成された第1のコンポーネントであって、前記第1のコンポーネントは、本体、および前記本体中に形成された細長スロットを有する、第1のコンポーネントと、
前記第2の骨に取り付けられるように構成された、第2のコンポーネントと、
前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントとの間に配置された、ベアリングコンポーネントと、
前記第1のコンポーネントの前記スロット内に受け入れられるヒンジピンを含む、ヒンジ組立体と、
を含む、ヒンジ付き人工関節。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−62030(P2008−62030A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−172619(P2007−172619)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(501384115)デピュイ・プロダクツ・インコーポレイテッド (216)
【Fターム(参考)】